文部科学省
道徳教育xHERO なぜ 道徳教育xHERO? ドラマ出演者インタビュー イベントレポート

ドラマ出演者インタビュー

小日向文世さん
末次隆之役

悲しい思いをしている子がいたら、一人でも多くの子が「何かあったの?」と思いやりや助け合いの心で接してあげられるような関係を築けるようにしていってほしいと思います。

小日向文世さん 末次隆之役

 小日向さんはこの「HERO」というドラマの中で、検察事務官・末次隆之を演じておられますが、文部科学省の道徳教育と「HERO」がタイアップするということを聞いて、率直にどうお感じになったか教えていただけますか。

 全国の学校にタイアップのポスターが貼られたということですが、ちょっと緊張しますね(笑)。
 僕が演じる末次や、八嶋君が演じる遠藤は2001年のころからキャラクターが変わっていないんですよ。合コン三昧だったり、ダンスのことで頭の中がいっぱいだったりで、仕事はどちらかというと二の次なんですけどね。
 しかし、この「HERO」という作品の芯の部分というのは、人として真っ当に、どうやって生きていくかということですよね。
 それは、僕ら世代が子供の頃から教えられてきた、人に迷惑をかけないようにするとか、最低限のモラルをもつとか、そういう大切な部分をしっかり守っていこうということに全部つながっていると思うのです。裁判などのシーンでは難しい言葉が出てきて、分かりにくいこともあるかもしれませんが、根底に流れているのは、「人間として他人に迷惑をかけずにちゃんと生きようよ」というシンプルなものであって、道徳というのも本来はそこにあるのではないかと思います。

 道徳という言葉自体には堅いイメージがあるかもしれませんが、本来、人間が日常生活や社会生活を送っていく上で気を付けていかないといけない基本的なものだとも言えますね。

 周りを見渡してみると、国内・国外を問わず、社会情勢は本当に複雑になっています。でも、一番の元をたどっていけば、「人にされたくないことは自分も絶対にしない」、「最低限のルールは守る」、「人に迷惑はかけない」ということが十分に共有・実行されていないがために起こっていることも多いような気がします。そういうことは、大抵は子供のときに親から学んでいくのだと思いますが、頭では分かっていてもそれらを守れなかったり、実行していけなかったりするのが人間というものなのかもしれません。
 大人になると、社会のいろいろなしがらみの中で生きていかないといけないので、単純なことなのに難しいということもありますが、そのためにも子供たちに教えるべきことはきちんと教えていかないといけないと思います。

 小日向さんがおっしゃっていることは、「人としてどうあるべきか」と言い換えることもできると思います。そのことを子供たちに自分自身のこととして考えてもらうきっかけにしてもらおうということで、道徳教育と「HERO」とがタイアップすることになったわけですが、小日向さんが受けた道徳の授業で覚えていることや印象に残っていることはありますか。

小日向文世さん 末次隆之役
 道徳の授業は、教科の授業とは違って、小難しいことを考えず気楽に受けていたように思います。僕の場合、道徳的なことは、むしろ父から受けた影響の方が大きいです。父から教えられたことは、「人に迷惑をかけてはいけない」ということ、「自分が嫌なことは他人にもするな」ということ、それと「平凡に生きなさい」ということでした。
 当時の僕は「平凡だなんて嫌だな」と思ったこともありましが、父は、平凡に生きることがいかに難しいか、また、平凡に生きることが一番幸せなんだということを伝えたかったのだろうと思います。というのも、実は、僕の父はお坊さんだったんです。戦争から帰ってきた後、数年間住職をしていたのですが、戦後間もない苦しい時代でしたので、家族を養うために住職を辞め、地方公務員になったんです。
 毎朝決まった時間に家を出て、仕事が終わるとまっすぐ家に帰り、食事をしながらニュースを見て、日曜日には家族そろって大河ドラマ、というように本当につつましく、ささやかで幸せな日々を淡々と生きていた父の姿に、僕は随分影響を受けたと思います。

 幸せのかたちというものは人それぞれ違うのかもしれませんが、お父様の生き方にはとても共感できますね。
 さて、小日向さんが子供の頃に抱いていたヒーロー像や具体的な人物などはいらっしゃいますか。

 僕にとってのヒーローは、小学生の頃からずっと長嶋茂雄さんですね。現役を引退されるまでずっと見続けました。野球という一つのことに喜々として打ち込んでいる姿を見て、すばらしいなと思いました。いつもスポットライトを浴びているような、陽だまりの中の人という感じがしましたし、人柄にも惹(ひ)かれましたね。見ているだけで幸せな気持ちになれるというか、やはり大スターだと思います。

 現在の小日向さんも、スポットライトを浴びる俳優というお仕事をされているわけですが、そのきっかけなどはどういうものだったのでしょうか。

 高校時代は美術部で油絵を描いていたので、美大に進学したいと思っていたのですが、美大は難しいだろうと言われたものですから、グラフィックデザインの分野に進みました。しかし、その後も紆余曲折(うよきょくせつ)があり、グラフィックデザインから写真の分野に移り、結果的に役者を目指していくこととなるのですが、当時、けがをして入退院を繰り返していたので、「平凡に生きなさい」と言っていた父も僕のことを不憫(ふびん)に思ったのか、役者を目指すことに余り反対しませんでした。
 父は、黒沢明監督の「生きる」という映画が大好きで、役者を目指すのであれば、その映画の主人公を演じていた志村喬さんのような役者になってくれと言われました。それが僕が役者人生を送っていく上での大きなことでしたね。
 役者を目指してからはチャップリンにとても影響を受けました。チャップリンの作品はたくさん見ましたが、人間愛のすばらしさを描いているものが多く、「街の灯」と「独裁者」はみなさんにも是非見てほしいと思います。

 今、多くの子供たちが「HERO」を見て、いろいろなことを感じていると思います。子供たちに特に注目してもらいたい部分はありますか。

 やはり、「正義」というものは確実にあって、それを人として、どんな誘惑があろうとも負けずに貫き通すということですね。それはとても勇気のいることですが、城西支部のチームは、ふだんは早く帰りたいとかいい加減なことを言いながらも、最終的に正義だけは絶対に守る。チーム一丸となって筋を通すというのかな。そこにこのドラマの魅力があるのだと思います。結局、「人としてどうなんだ」というものが「HERO」の中には常にあるんですよ。

 この「HERO」というドラマをはじめとして、小日向さんが様々な作品に参加される中で、特に大切にしていることや、心がけていることはありますか。

小日向文世さん 末次隆之役
 みんなで「いい作品をつくる」という一つの目標に向かっているわけですから、役者・小日向としては、撮影現場では最低限人に迷惑をかけないようにするとか、嫌な空気を出さないようにするとか、わがままを言わないということに気を付けていますね。

 一つのシーンを撮り終えた際に、小日向さんがモニター画面の前で、出来上がった映像を満面の笑顔でチェックしておられたのがとても印象的でした。

 カメラの前で演じて、結果的にそれがどのように撮れているのかを確認するのが楽しみですし、自分がこの「HERO」というすばらしい作品に携われていることが幸せだなと思っているからでしょうね。

 最後に全国の子供たちや先生方に、メッセージをいただけますか。

 大人が人間関係で悩むのと同じように、子供は子供なりの人間関係で悩むんです。 でも、本当に信頼できる仲間がいれば、きっと支えてくれるだろうとか、一人ぼっちじゃないんだという気持ちになれるでしょうし、多少走るのが遅かったり、勉強が苦手だったりしても楽しくやっていけると思うのです。
 しかし、現実にはいじめの問題などがあることも否定できません。ですから、悲しい思いをしている子がいたら、一人でも多くの子が「何かあったの?」と思いやりや助け合いの心で接してあげられるような関係を築けるようにしていってほしいと思います。
 また、先生方も子供たちが悩んだり苦しんだりしているときは、絶対に救いの手を差し伸べてあげてほしいと思いますし、どのようにすれば子供たちの心を育て、本音で意見を交換し合えるような道徳の授業ができるのかを、しっかり考えていただけたらいいなと思います。

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