キャストインタビュー

杉本哲太さん
吉田羊さん
馬場礼子 役
「自分に向き合って選んだことなら、つらいことや壁にぶち当たったとしても、あの時選んだ自分自身に力をもらえるんじゃないかという気がしています。」

今回、キャリア教育をテーマに映画とタイアップを行っているわけですが、検事という男性が多い職場の中で、女性の検事役として何か感じられたことはありますでしょうか。

吉田 女性としてというよりも、自分の仕事に誇りを持って楽しむこと、それって男女別を問わずに平等に与えられている権利で、だからこそ、ほかの男性たちと拮抗するのではなくて、常に自分の中に意識を向けて自己向上に努めていたのが礼子さんというキャラクターだったのではないかという気がしています。一方で、女性は男性のように力強くはなれないですけれども、特有のしなやかさというか、やわらかさみたいなものがあるじゃないですか。そういう女性ならではの長所を、最大限武器として使って自分の仕事を楽しみながら演じていました。それは礼子さんとしても、私自身としても同じだと思います。

第2弾のドラマから御出演されて、久利生検事を核とする城西支部の中で、馬場検事は、最初は少し斜に構えているような役柄でしたけれども、それがだんだんチームとしてぐっとなじんできて大きな仕事をされたというのが今回の映画だったように思います。馬場検事の演じ方で意識されたことはありますでしょうか。

吉田 今おっしゃったように、最初は礼子さんって、久利生さんのやることに対して斜に構えて向き合っていたところがあるんですけれども、今回、映画に入ったときに、礼子さんが、久利生さんが投げる球に対するリアクションが速くなったと台本を読んだときに思いました。それはもちろん去年のドラマシリーズで3か月間時間を共にしてきたということは多分にあるんですけど、それに加えてドラマが終わった後も、「あ、この人たちは城西支部で生きていたんだな」という時間のつながりを感じさせるものだったなと思っています。なので、そういう意味では久利生さんに対しても城西支部のメンバーに対しても、どこか距離が近いところで今回お芝居ができたなと思っています。

スクリーンやテレビを見ていて、城西支部のメンバーは役柄だけでなく、普段も仲が良いんだろうなと感じさせられました。仕事においても、チームワークや、コミュニケーションが大切だと思うのですけど、今回の映画の制作の中ですごく仲の良い現場だったなという感じはありましたでしょうか?

インタビュー画像1

吉田 ものすごく仲良かったですね。撮影の前に前室でみんなが集合してぺちゃくちゃおしゃべりをして、「準備ができました」と言われて、そのおしゃべりの延長線でスタジオに入って行って、お芝居をして帰ってきてまたしゃべるというような感じでした。本当にどこからがお芝居でどこからがそうじゃないのか分からないぐらいの距離感でみなさんと過ごしていましたね。

これまで多くの役柄を演じられてきて、色々な現場があったと思うのですけども、特にこの「HERO」の現場というのは特有なものがありますか。

吉田 特有ですね。キャスト・スタッフ全員が口をそろえて楽しいと言う現場はそうそうなくて、だれか一人か二人ぐらいは疲れていたり不満を持っていたりするものなのですけども。みんなが口をそろえて楽しいと言っていたし、終わってほしくないという現場、しかもそこに視聴率という結果がついてきて、そして全国的に愛される作品というのもなかなかないと思います。そういう意味でも、本当に奇跡的な、ヒーロー的な、この作品自体が「HERO」のようなものかなと思っています。

これまで俳優として御活躍されてきた中で、俳優という仕事に対して、どのように向き合ってこられましたでしょうか。

吉田 一つ、私が役を作るときに意識していることは、その役の日常が垣間見えたいということです。普段この人がどういう癖をするのか、例えば牛乳を飲むときのしぐさ一つでその人の日常が見えてくるというところがありますし、自分が視聴者として見たときに、その役の背景とか生活を想像させてくれる役、そこに興味を持たせてくれる役というのが観ていて面白いと感じるので、そこは常に意識していますね。

これまでたくさんの役者さんと一緒に仕事をされてきて、この役者さんの仕事への取り組み方がすごいなとか、良く観察されて自分を磨かれているなとか、そういう役者さんはいらっしゃいますか。

吉田 今回御一緒して、木村(拓哉)さんにはそれを多分に感じましたね。お芝居に対しては本当に一途で、一切妥協なく、かといって独りよがりではなくて広い視野を持ち、なおかつ他の追随を許さない第一線で活躍しながら今も努力をし続けていらっしゃる、その姿勢が素晴らしいと感じました。しかも木村さんは何事においても全力で目一杯楽しもうとして生きてらっしゃる。こういう生き方ができたら最高だなと思いますし、俳優の先輩としても、ただお芝居にまっすぐに、盲目に突き進むのではなくて、周りに気を遣いつつ、なおかつプライベートを楽しんでゆとりを持っているというのは理想的だなと思いました。

これからの吉田さんとしては、こういう作品や役柄にチャレンジしたいとか、あるいは、こういう俳優生活を今後送りたいとか、夢も含めてございますか。

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吉田 私は結構、作品が終わると、というか現場があるさなかでも、その日の撮影が終わるとぱっと役が抜けてしまうんですけど、今後もし機会があるのであれば、なかなか役が抜けない、役を引きずる役をやりたいですね。私生活にも役柄が入り込んでマネージャーさんに怒られるみたいな(笑)。プライベートにまで引きずってしまうような役に出会えたら嬉しいなと思います。

最後に、これから進路を考える高校生に、どのように仕事というものを捉えていったら良いか、メッセージをお願いできますか。

吉田 私がそうだったのですが、節目節目の時に、全然将来が見えてなかったんですね。ただそれに対して焦ったり、迷ったり、戻ったりという経験がないんです。それはどこか自分の中で、自分の心が動くことを一生やっていけばいいんだと思っていて、それをやり続けた結果、いつかそれが仕事になっていくと漠然と思っていました。多分、現段階で将来が見えている人、そうじゃない人がいると思うんですけど、あくまで、常に自分の心の声に耳を傾ける、常に自分と向き合って、自分は何をやりたいのか、何にわくわくするのかということを探していけば、それは早かれ遅かれ見つかるものだと思うし、また、自分だけの人生なので、人と比べるものでもないと思います。ですから、本当にそこはわがままに、自分が何をやりたいかということを意識して人生のチョイスをしていったら楽しめるのではないのかなというのが、自分の経験を振り返って思うことです。私の場合は好きなことを仕事にできたラッキーな例ですけど、それでもやっぱりつらいことはあります。でも、自分に向き合って選んだことなら、つらいことや壁にぶち当たったとしても、自分が選んだことだったら納得できる、「だって自分であの時選んだじゃないか」と言い切れる。もう一回自分を奮い立たせられるというか、あの時選んだ自分自身に力をもらえるんじゃないかという気がしています。そこを大事にしていただけたらと思います。