教育職員に係る係争中の争訟事件等の係属状況について-平成19年4月1日現在-

 平成19年4月1日現在における教育職員に係る係争中の争訟事件等の係属状況について概要を紹介する。  この調査は、各都道府県・指定都市(以下「県市」という。)から報告のあった教育職員(公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校の校長、教頭、教諭、助教諭、養護教諭、養護助教諭、栄養教諭、講師、実習助手及び寄宿舎指導員)に係る係争中の争訟事件等をまとめたものである。  前年との状況を比較すると、次のとおり。 a 行政事件(民事事件を含む。以下同じ。) 訴訟については、8件増加して117件、関係教育職員数は159人増加して2,705人となっている。人数の増加については、東京の国歌斉唱義務不存在確認等請求控訴事件(原告401名)や大阪の教員評価自己申告票提出義務不存在確認請求事件(原告87人)等が主な要因となっている。 b 不利益処分審査請求については、157件減少して497件、関係教育職員数は1,774人減 少して、212,442人となっている。件数については、東京都における卒業式等の国歌斉唱時の不起立など職務命令違反に係る懲戒処分の取消請求について人事委員会の判定が行われたことが主な要因となっている。  人数については、過去の請求事案の取下げが、福岡、宮崎等において進んだこと等により減少している。 c 刑事事件訴訟については、全て新規事案で、件数は昨年度と同じ10件となっている。 d 勤務条件に関する措置要求については、 40件減少して56件、関係教育職員数は39人減少して9,274人となっている。件数減少の主な要因は、愛知県の勤務時間に係る事案について一定数の人事委員会判定が行われたことである。

1 行政事件
(1)概要
 表1は、教育職員を当事者とする行政事件訴訟の県市別の係属状況をまとめたものであり、図1は、平成10年度以降の係属状況の推移である。
 行政事件訴訟を係属している県市は30県市で(前年比1県市増)、全体の係属数は117件(前年比8件増)、関係教育職員数は2,705人(前年比159人増)である。
 なお、平成18年度中に、新たに提起された行政訴訟の件数と関係教育職員数は、66件(前年比同)、844人(前年比443人増)である。
 表2は、行政事件訴訟の係属状況を請求内容別にまとめたものである。件数は、教育職員が原告になっている損害賠償等請求の事案が33件(28.2%)で最も多く、次いで、懲戒処分取消(無効確認)請求事案が30件(25.6%)、学校事故等で教育職員が被告になっている損害賠償請求事案が28件(23.9%)となっている。関係教育職員数は、その他の事案(北海道の時間外勤務手当等請求事件1,169人、東京、神奈川の国歌斉唱義務不存在確認等請求事件:東京401人、神奈川159人など)が、1,870人(69.1%)で最も多く、次いで、教育職員が原告になっている損害賠償等請求事案が323人(11.9%)となっている。

(2)内容別係属状況   
 1 懲戒処分取消(無効確認)請求事件
  ・争議行為に関するもの
   3件110人
   (北海道、札幌市)
  ・職務専念義務違反、職務命令違反及び信用失墜行為等に関するもの
   27件272人【新規22件201人】
   (千葉、東京、三重、大阪、広島、佐賀、熊本、宮崎、沖縄、札幌市、名古屋市、北九州市)

2 分限処分取消(無効確認)請求事件
  11件12人【新規4件4人】
  (東京、愛知、三重、京都、島根、千葉市、京都市、大阪市)
  (うち、指導が不適切な教員に係るもの:愛知、三重の2件2人)

3 地位確認請求事件
  2件11人【新規1件1人】
  (東京、兵庫)
  (うち、指導が不適切な教員に係るもの: 兵庫の1件1人)

4 損害賠償等請求事件(教育職員が原告となっているもの)
  33件323人【新規16件23人】
  (宮城、茨城、千葉、東京、神奈川、長野、愛知、兵庫、広島、沖縄、札幌市、横浜市、京都市、大阪市、北九州市)
  (うち、指導が不適切な教員に係るもの:宮城、神奈川の2件2人)

5 学校事故等に係る損害賠償請求事件(教育職員が被告となっているもの)
  28件107人【新規18件95人】
  (宮城、茨城、栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川、長野、岐阜、三重、大阪、兵庫、広島、熊本、さいたま市、京都市、大阪市)

6 その他
 ・時間外勤務手当等賃金支払請求事件
  3件1,219人
  (北海道、大阪)
 ・国歌斉唱義務不存在確認等請求事件
  5件560人【新規3件432人】
  (東京、神奈川)
 ・指導が不適切な教員の認定及び研修命令処分取消請求事件
  2件2人
  (静岡、島根)
 ・教員評価関係文書非公開決定取消請求事件
  1件1人
  (大阪市)
 ・教員評価自己申告票提出義務不存在確認請求事件 
  1件87人【新規】
  (大阪)
 ・不採用処分の取消請求事件
  1件1人【新規】
  (東京)

2 不利益処分審査請求
(1)概要
 表3は、不利益処分審査請求の県市別の係属状況をまとめたものであり、図2-1及び2-2は、平成10年度以降の不利益処分審査請求の係属状況の推移である。
 平成19年4月1日現在で不利益処分審査請求が係属しているのは36県市(前年比同)で全体の係属数は497件(前年比157件減)、関係教育職員数は212,442人(前年比1,774人減)である。なお、平成18年度中に新規に申立のあった事案は79件(前年比33件減)、105人(前年比91人減)である。
 表4は、不利益処分審査請求の係属状況を請求内容別にまとめたものであり、例年のように、懲戒処分取消請求事案が、439件で88.3%、関係教育職員数で212,251人で99.9%と大部分を占めている。

(2)内容別係属状況
 1 懲戒処分取消請求
  a 争議行為に関するもの
  ・勤務評定実施反対ストライキ
   3件13人
   (山形、埼玉、福岡)
  ・42.10.26いっせい休暇闘争
   1件2人
   (福岡)
  ・43.10.8いっせい休暇闘争
   4件6,009人
   (埼玉,福岡,北九州市)
  ・44.7.10,11.13ストライキ
   5件11,479人
   (埼玉,高知,福岡,北九州市)
  ・46.5.20,7.15ストライキ
   3件8,968人
   (福岡,宮崎,北九州市)
  ・47.5.19ストライキ
   8件7,683人
   (福島,埼玉,福岡,宮崎,北九州市)
  ・48.4.27,7.19ストライキ
   10件6,138人
   (福島,千葉,岐阜、大阪、 高知,佐賀,大分,宮崎、 大阪市,福岡市)
  ・49.4.11,4.13,5.23ストライキ
   17件26,836人
   (岩手,福島,埼玉,千葉,岐阜,大阪,高知,福岡,佐賀,大分,宮崎,大阪市,北九州市,福岡市)
  ・50.12.10,51.3.9,4.20ストライキ
   21件32,807人
   (岩手、福島,埼玉、千葉,大阪,福岡,佐賀,大分,宮崎,大阪市,北九州市,福岡市)
  ・52.4.15,11.24,12.20ストライキ
   12件18,217人
   (岩手,埼玉,千葉,和歌山,高知,福岡,佐賀,大分,宮崎,北九州市,福岡市)
  ・53.4.25ストライキ
   7件9,528人
   (和歌山,高知,福岡,大分,宮崎、北九州市,福岡市)
  ・54.4.25ストライキ
   7件371人
   (千葉,和歌山,高知,福岡,大分,北九州市,福岡市)
  ・55.4.16ストライキ
   9件442人
   (埼玉,千葉,大阪,高知,福岡,大分,大阪市,北九州市,福岡市)
  ・56.6.4,10.29,11.25ストライキ
   16件22,158人
   (福島,埼玉,千葉,大阪,高知,福岡,大分,宮崎,横浜市,大阪市,北九州市,福岡市)
  ・57.12.16,12.24ストライキ
   14件13,980人
   (福島,埼玉,千葉,大阪,和歌山,福岡,佐賀,大分,宮崎,横浜市,大阪市,北九州市,福岡市)
  ・58.10.7ストライキ
   6件20,638人
   (千葉,福岡,大分,宮崎,北九州市,福岡市)
  ・59.10.26ストライキ
   17件24,886人
   (岩手,福島,埼玉,千葉,大阪,和歌山,高知,福岡,佐賀,大分,宮崎,横浜市,大阪市,北九州市,福岡市)
  ・60.4.17ストライキ
   1件4人
   (千葉)
  ・63.5.24ストライキ
   1件6人
   (千葉)
  ・その他のストライキ
   30件177人【新規2件10人】
   (千葉、東京)
  b 学力調査実施反対に関するもの
    1件1人
    (高知)
  c 教育課程講習会阻止に関するもの
    1件1人
    (山形)
  d 学習指導要領違反に関するもの
    1件3人
    (福岡)
  e 指導計画違反等に関するもの
    5件8人
    (福岡)
  f 職務命令・職務専念義務違反・信用失墜行為に関するもの
    56件1,456人【新規7件9人】
    (宮城、茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、鳥取、広島、高知、福岡、大分、鹿児島、横浜市、北九州市)
  g 生徒指導・体罰等に関するもの
    3件3人【新規2件2人】
    (東京、大阪、福岡)
  h 校長着任拒否、校長排斥・執務妨害等に関するもの
    13件59人
    (福岡)  
  i 校長・同僚に対する暴行・監禁等に関するもの
    6件15人
    (福岡、北九州市)
  j 研修実施の妨害に関するもの
    15件53人
    (東京、広島、福岡、北九州市)
  k 交通違反に関するもの
    7件7人【新規3件3人】
    (青森、群馬、長野、鳥取、広島、横浜市)
  l 公職選挙法違反に関するもの
    3件5人
    (福岡)
  m 国歌斉唱等の実施反対に関するもの
    115件266人【新規36件47人】
    (東京、新潟、広島、福岡、北九州市)
  n 無断欠勤に関するもの
    4件6人【新規1件1人】
    (東京、愛知、福岡)
  o わいせつ行為等に関するもの
    9件9人【新規8件8人】
    (福島、千葉、東京、京都、広島、佐賀、熊本)
  p その他
    8件17人
    (宮城、愛知、大阪、広島、福岡、福岡市)

2 分限処分取消請求
 a 免職処分取消請求
   20件20人【新規10件10人】
   (北海道、福島、茨城、栃木、千葉、東京、山梨、愛知、高知、福岡、札幌市、仙台市、大阪市)
 b 降任処分取消請求
   2件2人
   (東京、北九州市)
 c 休職処分取消請求
   3件3人【新規2件2人】
   (千葉、東京、福岡)

3 転任処分取消請求
  33件166人【新規8件13人】
  (宮城、千葉、東京、新潟、愛知、広島、福岡、鹿児島)

3 刑事事件
(1)概要
 表5は、刑事事件の係属状況をまとめたものである。
 平成19年4月1日現在で、刑事事件が係属しているのは7県市(前年比2県市減)で、係属件数10件(前年比同)、関係教育職員数10人(前年比同)となっており、いずれも新規事案である。

(2)内容別係属状況
 a 業務上過失致死・傷害事件
   3件3人【新規】
   (香川、静岡市、広島市)
 b 道路交通法違反事件
   1件1人【新規】
   (埼玉)
 c 児童福祉法違反事件
   2件2人【新規】
   (宮城)
 d 強制わいせつ事件
   1件1人【新規】
   (埼玉)
 e 公然わいせつ事件
   1件1人【新規】
   (東京)
 f 詐欺事件
   1件1人【新規】
   (東京)
 g 殺人・死体遺棄事件
   1件1人【新規】
   (愛知)

4 勤務条件に関する措置要求
(1)概要
 表6は、勤務条件に関する措置要求の係属状況をまとめたものである。平成19年4月1日現在で、勤務条件に関する措置要求が係属しているのは9県市(前年比同)、係属数は56件(前年比40件減)、関係教育職員数は9,274人(前年比39人減)となっている。なお、平成18年度中に、新規に提起された事案は23件、関係教育職員数は25人である。

(2)内容別係属状況
 1 給与・諸手当に関するもの
  a 給与の振込先の変更を要求
    1件1人【新規】
    (東京)

 2 勤務時間に関するもの
  a 時間外勤務への適切な措置
    30件3,022人【新規14件14人】
    (埼玉、神奈川、愛知、広島、広島市)
  b 休憩・休息時間の保障及び回復措置等
    4件6人【新規1件3人】
    (愛知、大阪)
  c 研修等の承認
    1件1人
    (愛知)
  d 労働条件の明示
    1件1人
    (愛知)

3 その他
 a 組合主催研修への特免措置等
   2件6,220人【新規件1件1人】
   (岩手、愛知)
 b 職場環境の改善
   8件8人【新規2件2人】
   (愛知)
 c その他
   9件15人【新規4件4人】
   (埼玉、東京、愛知、広島、高知)

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-- 登録:平成22年04月 --