教育職員に係る係争中の争訟事件等の係属状況について-平成18年4月1日現在-

 平成18年4月1日現在における教育職員に係る係争中の争訟事件等の係属状況について概要を紹介する。  この調査は、各都道府県・指定都市(以下「県市」という。)から報告のあった教育職員(公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、盲学校、聾学校または養護学校の校長、教頭、教諭、助教諭、養護教諭、養護助教諭、栄養教諭、講師、実習助手及び寄宿舎指導員)に係る係争中の争訟事件等をまとめたものである。  前年との状況を比較すると、次のとおり。 a 行政事件(民事事件を含む。以下同じ。)訴訟については、13件増加して109件、関係教育職員数は886人減少して2,546人となっている。人数減少の主な要因は、兵庫県において係属していた減額給与支払等請求控訴事件(原告905名)が控訴棄却により確定したことである。 b 不利益処分審査請求については、19件増加して654件、関係教育職員数は21,049人減少して、214,216人となっている。件数については、東京都における卒業式等の国歌斉唱時の不起立など職務命令違反に係る懲戒処分の取消請求が主な増加要因となっている。人数については、過去の請求事案の取下げ等に伴い減少している。 c 刑事事件訴訟については、全て新規事案で、3件増加して10件となっている。 d 勤務条件に関する措置要求については、 49件減少して96件、関係教育職員数は103人減少して9,313人となっている。件数減少の主な要因は、愛知県の勤務時間に係る事案について一定数の人事委員会判定が行われたことである。

1 行政事件
(1)概要
 表1は、教育職員を当事者とする行政事件訴訟の県市別の係属状況をまとめたものであり、図1は、平成9年度以降の係属状況の推移である。
 行政事件訴訟を係属している県市は29県市で(前年比6県市増)、全体の係属数は109件(前年比13件増)、関係職員数は2,546人(前年比886人減)である。
 なお、平成17年度中に、新たに提起された行政訴訟の件数と関係教育職員数は、66件(前年比8件増)、401人(前年比1,307人減)である。

 表2は、行政事件訴訟の係属状況を請求内容別にまとめたものである。件数は、教育職員が原告になっている損害賠償等請求の事案が31件(28.4%)で最も多く、次いで、学校事故等で教育職員が被告になっている事案が24件(22.0%)、懲戒処分取消(無効確認)請求事案が21件(19.3%)となっている。関係教育職員数は、その他の事案(北海道の時間外勤務手当等請求事件1,169人、東京都、神奈川県の国歌斉唱義務不存在確認等請求事件:東京都403人、神奈川県129人など)が 1,804人(70.9%)で最も多く、次いで、教育職員が原告になっている損害賠償等請求事案が347人(13.6%)となっている。

(2)内容別係属状況
 1 懲戒処分取消(無効確認)請求事件
  ・争議行為に関するもの
   5件171人【新規2件22人】
      (北海道、札幌市)
  ・職務専念義務違反、職務命令違反及び信用失墜行為等に関するもの
   16件87人【新規10件36人】
      (東京、三重、大阪、広島、佐賀、熊本、札幌市、さいたま市、大阪市、北九州市)

 2 分限処分取消(無効確認)請求事件
   12件13人【新規11件11人】
      (栃木、埼玉、東京、三重、島根、札幌市、さいたま市、京都市、大阪市)

 3 措置要求判定取消請求事件
   2件2人【新規1件1人】
      (神奈川、名古屋市)

 4 地位確認請求事件
   2件11人(東京、神奈川)

 5 損害賠償等請求事件(教育職員が原告となっているもの)
   31件347人【新規17件61人】
      (宮城、茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、三重、兵庫、奈良、広島、札幌市、横浜市、京都市、大阪市、北九州市)

 6 学校事故等に係る損害賠償請求事件(教育職員が被告となっているもの)
   24件111人【新規12件88人】
      (宮城、東京、神奈川、長野、岐阜、愛知、兵庫、奈良、広島、熊本、大分、横浜市、京都市、大阪市、福岡市)

 7 その他
  ・時間外勤務手当等賃金支払請求事件
   5件1,233人【新規2件14人】
      (北海道、大阪、広島)
  ・退学処分取消請求事件
   1件1人【新規】(東京)
  ・転任処分取消請求事件
   2件2人【新規】(東京)
  ・国歌斉唱義務不存在確認等請求事件
   3件532人【新規2件129人】
      (東京、神奈川)
  ・指導力不足教員認定及び研修命令処分
   取消請求事件
   2件2人【新規】(静岡、島根)
  ・没収された性教育教材の返還請求事件
   1件31人【新規】(東京)
  ・自動車通勤禁止処分差止請求
   1件1人【新規】(横浜市)
  ・再雇用不採用に係る不服申立却下決定取消請求事件
   1件1人【新規】(名古屋市)
  ・教員評価関係文書非公開決定取消請求事件
   1件1人【新規】(大阪市)

2 不利益処分審査請求
(1)概要
 表3は、不利益処分審査請求の県市別の係属状況をまとめたものであり、図2-1及び2-2は、平成9年度以降の不利益処分審査請求の係属状況の推移である。
 平成18年4月1日現在で不利益処分審査請求が係属しているのは36県市(前年比同)で全体の係属数は654件(前年比19件増)、関係教育職員数は214,216人(前年比21,049人減)である。なお、平成17年度中に新規に申立のあった事案は112件(前年比131件減)、196人(前年比78人減)である。
 表4は、不利益処分審査請求の係属状況を請求内容別にまとめたものであり、例年のように、懲戒処分取消請求事案が、600件で91.7%、関係教育職員数で214,015人で99.9%と大部分を占めている。

(2)内容別係属状況
 1 懲戒処分取消請求
    a 争議行為に関するもの
  ・勤務評定実施反対ストライキ
   3件13人(山形、埼玉、福岡)
  ・42.10.26いっせい休暇闘争
   1件2人(福岡)
  ・43.10.8いっせい休暇闘争
   4件6,009人(埼玉,福岡,北九州市)
  ・44.7.10,11.13ストライキ
   5件11,481人(埼玉,高知,福岡,北九州市)
  ・46.5.20,7.15ストライキ
   3件8,977人(福岡,宮崎,北九州市)
  ・47.5.19ストライキ
   8件7,697人(福島,埼玉,福岡,宮崎,北九州市)
  ・48.4.27,7.19ストライキ
   10件6,175人(福島,千葉,岐阜、大阪、高知,佐賀,大分,宮崎、大阪市,福岡市)
  ・49.4.11,4.13,5.23ストライキ
   17件26,913人(岩手,福島,埼玉,千葉,岐阜,大阪,高知,福岡,佐賀,大分,宮崎,大阪市,北九州市,福岡市)
  ・50.12.10,51.3.9,4.20ストライキ
   21件33,094人(岩手、福島,埼玉、千葉,大阪,福岡,佐賀,大分,宮崎,大阪市,北九州市,福岡市)
  ・52.4.15,11.24,12.20ストライキ
   12件18,380人(岩手,埼玉,千葉,和歌山,高知,福岡,佐賀,大分,宮崎,北九州市,福岡市)
  ・53.4.25ストライキ
   7件9,630人(和歌山,高知,福岡,大分,宮崎、北九州市,福岡市)
  ・54.4.25ストライキ
   7件371人(千葉,和歌山,高知,福岡,大分,北九州市,福岡市)
  ・55.4.16ストライキ
   9件442人(埼玉,千葉,大阪,高知,福岡,大分,大阪市,北九州市,福岡市)
  ・56.6.4,10.29,11.25ストライキ
   16件22,402人(福島,埼玉,千葉,大阪,高知,福岡,大分,宮崎,横浜市,大阪市,北九州市,福岡市)
  ・57.12.16,12.24ストライキ
   14件14,174人(福島,埼玉,千葉,大阪,和歌山,福岡,佐賀,大分,宮崎,横浜市,大阪市,北九州市,福岡市)
  ・58.10.7ストライキ
   6件20,834人(千葉,福岡,大分,宮崎,北九州市,福岡市)
  ・59.10.26ストライキ
   17件25,109人(岩手,福島,埼玉,千葉,大阪,和歌山,高知,福岡,佐賀,大分,宮崎,横浜市,大阪市,北九州市,福岡市)
  ・60.4.17ストライキ
   1件4人(千葉)
  ・63.5.24ストライキ
   1件6人(千葉)
  ・その他のストライキ
   31件233人【新規6件81人】
      (千葉、東京) 
  b 学力調査実施反対に関するもの
   1件1人(高知)
  c 教育課程講習会阻止に関するもの
   1件1人(山形)
  d 学習指導要領違反に関するもの
   1件3人(福岡)
  e 指導計画違反等に関するもの
   5件8人(福岡)
  f 職務命令・職務専念義務違反・信用失墜行為に関するもの
   55件1,449人【新規4件4人】
      (北海道、宮城、埼玉、千葉、東京、大阪、広島、高知、福岡、大分、鹿児島、沖縄、横浜市、北九州市)
  g 生徒指導・体罰等に関するもの
   1件1人(福岡)
  h 校長着任拒否、校長排斥・執務妨害等に関するもの
   15件61人(福岡)
  i 校長・同僚に対する暴行・監禁等に関するもの
   6件14人(千葉、福岡、北九州市)
  j 研修実施の妨害に関するもの
   19件86人【新規10件10人】
   (東京、広島、福岡、北九州市)
  k 交通違反に関するもの
   8件8人【新規6件6人】
      (青森、秋田、広島、高知、熊本、横浜市)
  l 公職選挙法違反に関するもの
   3件5人(福岡)
  m 国歌斉唱等の実施反対に関するもの
   271件411人【新規59件66人】
      (東京、広島、福岡、北九州市)
    n 無断欠勤に関するもの
   3件3人(愛知)
  o わいせつ行為等に関するもの
   10件10人【新規8件8人】
      (東京、新潟、長野、三重、大阪、福岡、佐賀、横浜市)
  p その他
   8件8人【新規2件2人】
      (千葉、神奈川、愛知、大阪、福岡、福岡市)

2 分限処分取消請求
 ・免職処分取消請求
  18件19人【新規4件4人】
  (茨城、栃木、東京、山梨、京都、高知、福岡、札幌市、大阪市)
 ・降任処分取消請求
  1件1人【新規】(北九州市)
  ・休職処分取消請求
    3件3人【新規2件2人】(東京、福岡)

3 転任処分取消請求
  31件177人【新規9件11人】
    (宮城、東京、新潟、愛知、広島、福岡、鹿児島)

4 その他(指導力不足教員認定取消請求)
  1件1人【新規】(長野)    

3 刑事事件 
(1)概要
 表5は、刑事訴訟事件の係属状況をまとめたものである。
 平成18年4月1日現在で、刑事事件が係属しているのは9県市(前年比3県市増)で、係属件数10件(前年比3件増)、関係教育職員数10人(前年比3人増)となっており、いずれも新規事案である。

(2)内容別係属状況
 ・公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反事件
    2件2人【新規】(北海道、横浜市)
 ・業務上過失障害、道路交通法違反事件
  2件2人【新規】(茨城、さいたま市)
 ・強制わいせつ事件
  2件2人【新規】(佐賀、横浜市)
 ・公然わいせつ事件
  1件1人【新規】(東京)
 ・詐欺・収賄事件
  1件1人【新規】(新潟)
 ・器物損壊事件
  1件1人【新規】(新潟)
 ・偽造有印文書行使事件
  1件1人【新規】(静岡)

4 勤務条件に関する措置要求 
(1)概要
 表6は、勤務条件に関する措置要求の状況をまとめたものである。平成18年4月1日現在で、勤務条件に関する措置要求が係属しているのは9県市(前年比5県市減)、係属数は96件(前年比49件減)、関係教育職員数は9,313人(前年比103人減)となっている。なお、平成17年度中に、新規に提起された事案は43件、関係教育職員数は43人である。

(2)内容別係属状況
 1 給与・諸手当に関するもの
  ・給与の減額等の取消
   1件1人【新規】(東京)
  ・採用時の給与決定の取消
   1件1人(千葉)

 2 勤務時間に関するもの
  ・時間外勤務への適切な措置
   56件3,048人【新規31件31人】
      (愛知、広島、広島市)
   ・休憩・休息時間の保障及び回復措置等
   6件6人【新規1件1人】(千葉、愛知)
   ・職専免研修等の承認
    3件3人(千葉、愛知)
   ・労働条件の明示
    1件1人(愛知)

 3 その他
  ・組合主催研修への特免措置等
   2件6,220人(岩手、愛知)
  ・職場環境の改善
   9件9人【新規3件3人】(愛知)
  ・その他
   17件24人【新規7件7人】
    (宮城、東京、愛知、広島、横浜市、神戸市)


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-- 登録:平成22年04月 --