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2002/01/21「教育指標の国際比較」(平成14年版)について |
「教育指標の国際比較」(平成14年版)について
生涯学習政策局調査企画課
平 成 1 4 年 1 月
「教育指標の国際比較」は,日本,アメリカ合衆国,イギリス,フランス,ドイツ,ロシア連邦及び中国における教育の普及,教育条件,教育費等の状況に関し,当該国政府の統計資料に基づいて算出した統計数字によって示したものであり,昭和44年以来,毎年刊行している。
このたび,「教育指標の国際比較」(平成14年版)を取りまとめた。同資料の構成及び取り扱った指標は次のとおりである。なお,第3部教育費(14〜18)については,今年版からOECDが近年開発した指標を掲載することにした。同指標はOECD諸国が共通の定義の下で提出したデータをもとに算定したものである。
平成14年1月22日に財務省印刷局から刊行している。
第1部 教育の普及 |
1 就学前教育の在籍率
2 義務教育後中等教育への進学率
3 義務教育後中等教育の在学率
4 高等教育への進学率
5 高等教育の在学率
6 高等教育在学者の人口千人当たり人数
7 学部学生に対する大学院学生の比率
8 高等教育在学者の専攻分野別構成
9 学位取得者の専攻分野別構成
第2部 教 員 |
10 教員1人当たり児童・生徒数,学生数
11 1学級当たり児童・生徒数
12 1学級当たり本務教員数
13 女子本務教員の比率
第3部 教 育 費 |
14 国内総生産(GDP)に対する学校教育費の比率
15 一般政府総支出に占める公財政支出学校教育費の比率
16 学校教育費の公私負担区分
17 学校教育費の使途別構成
18 学生・生徒1人当たり学校教育費
19 大学の学生納付金
20 政府機関等奨学制度
解 説 |
いくつかの指標について,我が国と諸外国の教育状況を国際比較する。
1.義務教育後中等教育への進学率
図1 義務教育後中等教育への進学率
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○ | 我が国の進学率は高い水準を示している。 義務教育後中等教育への進学率は,日本が全日制進学者で94.0%,定時制・通信制(本科)及び専修学校(高等課程)への進学者を含めると97.3%(2001年),アメリカ合衆国88.6%(公立学校における第9学年から10学年への進級率)(1998年),イギリス71.2%(フルタイム在学者)(1999年),フランス87.7%(フルタイム在学者)(1998年),ドイツ82.5%(全日制普通教育・職業教育学校在学者)(1998年)であり,我が国は高い水準を示している。 |
2.高等教育の普及
(1) 高等教育在学者の人口千人当たり人数(全高等教育機関)
図2 高等教育在学者の人口千人当たり人数(全高等教育機関)
(注) | 1. | 日本のパートタイムは,大学・短期大学の聴講生・研究生等。 |
2. | ロシア連邦は,パートタイム学生を含めた数値。 | |
3. | 中国のパートタイムは,成人高等教育機関の在学者。 |
○ | 我が国の高等教育在学者の人口千人当たり人数は,フルタイム在学者でみると,フランスとアメリカ合衆国に次ぐ水準となっている。
大学院等を含む全高等教育機関の在学者の人口千人当たり人数は,日本が23.7人(聴講生・研究生等,通信制・放送大学の正規課程及び専修学校(専門課程)の在学者を含めると30.9人)(2001年),アメリカ合衆国31.7人(パートタイム在学者を含めると 53.8人)(1998年),イギリス21.2人(パートタイム在学者を含めると34.0人)(1999年),フランス35.6人(1998年),ドイツ22.0人(1998年),ロシア連邦28.5人(パートタイム在学者を含む)(1999年),中国3.4人(成人高等教育機関の在学者を含めると5.9人)(1999年)となっている。 |
(2) 高等教育への進学率
図3 高等教育への進学率
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○ | 我が国の進学率は高い水準を示している。
高等教育(大学及びその他の全ての高等教育機関・課程)への進学率は,日本が 49.3%(通信制・放送大学の正規課程及び専修学校(専門課程)への進学者を含めると71.8%)(2001年),アメリカ合衆国45.9%(フルタイム学生)(1998年),イギリス58.4%(フルタイム学生)(1999年),フランス約43%(1997年),ドイツ30.3%(1998年)であり,我が国は高い水準を示している。 イギリスでは,近年急速に進学率が向上しており,1985年の進学率は22.9%(フルタイム学生)であった。これは,1980年代後半から,高等教育の拡大政策に伴い,入学該当年齢(18歳)の進学者に加え,成人学生(21歳以上)の進学者が急増していることが主な要因とされる。なお19歳以下でフルタイムの高等教育課程に進学した者を18歳人口で除した1999年の進学率は34.7%である。 また,フランスでは,1980年代半ばから,バカロレア(大学入学資格)水準に到達する生徒を80%にするという目標を掲げ,後期中等教育以降の拡大政策をとった結果,1990年代に入ってバカロレアの取得率が大幅に上昇し,現在,同一年齢人口の約6割になった。バカロレア取得者は,原則として無選抜で大学に入学でき,大学入学者が急増した。 |
○ | アメリカ合衆国とイギリスでは,パートタイムによる就学者が多い。
アメリカ合衆国とイギリスでは,パートタイム就学の制度が発達しており,入学該当年齢人口に対するパートタイム進学者の比率は,アメリカ合衆国11.3%(1998年),イギリス37.8%(1999年)にのぼっている。
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3.教員1人当たり児童・生徒数(公立)
図4 教員1人当たり児童・生徒数(公立)
(注) | 日 本: | 校長を含む。中等学校は,中学校と高等学校の合計の数値。 |
アメリカ: | 校長を含まない。フルタイムに換算したパートタイム教員を含む。 | |
イギリス: | 校長を含む。フルタイムに換算したパートタイム教員を含む。 | |
フランス: | 初等学校教員には校長を含む。中等学校教員には校長を含まない。 | |
ド イ ツ: | 校長を含む。 |
○ | 我が国の教員1人当たり児童・生徒数は,累次の定数改善計画等により改善されてきており,欧米諸国の水準に近づきつつある。
初等学校における我が国の数値は,19.0人(本務教員。養護教員を含まない。以下同じ)(2001年)であり,アメリカ合衆国18.0人(1998年),ドイツ18.1人(1999年)よりも多く,イギリス22.7人(1999年),フランス19.1人(1998年),中国23.1人(1999年)よりも少ない。 中等学校については,我が国は15.3人(中学校16.1人,高等学校14.4人)(2001年)であり,アメリカ合衆国14.2人 (1998年),フランス12.6人(1998年),ドイツ15.0人(1999年)より多く,イギリス16.6人(1999年)と中国17.5人(1999年)より少ない。 |
4.学級編成基準
国 名 | 学校段階 | 学級編制基準(単式学級) | 備 考 | ||||||||
日 本 |
小 学 校 中 学 校 高 等 学 校 |
〔上限人数〕 40人 40人 〔標準人数〕 40人 |
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アメリカ 合 衆 国 |
〔上限人数〕 |
同報告書によると,1990年時点で学級規模 の上限を定めている州は24州である。このう ち,第12学年までのすべての学年について上 限を定めているのは12州,残りは初等段階を 中心に特定の学年について定めている。 |
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〔カリフォルニア州の例〕 | |||||||||||
第1〜3学年 第4〜8学年 第9〜12学年 |
32人 28人 25人 |
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〔オハイオ州の例〕 | |||||||||||
就学前教育〜第4学年 |
25人(学区平均) |
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〔ケンタッキー州の例〕 | |||||||||||
第 1 学年 第2〜3学年 第 4 学年 第5〜6学年 第7〜8学年 |
24人 25人 28人 29人 31人 |
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イギリス |
初 等 学 校 第1〜2学年 第3〜6学年 中等学校 |
〔上限人数〕 30人 なし なし |
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フランス |
小学校 中等学校 前期(コレージュ) 後期(リセ) |
大学区視学官(県レベルの国民教育省の 出先機関)が毎年決定する。 なし 〔上限人数〕 35人(第1学年30人) |
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ド イ ツ | 〔ノルトライン・ヴェストファーレン州の例〕 |
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初等教育 基礎学校 第1〜4学年 前期中等教育 ハウプトシューレ 第5〜10学年 実科学校・ギ ムナジウム 第5〜10学年 |
〔標準人数〕 〔範 囲〕 24人 18〜30人 24人 18〜30人 28人 26〜30人 |
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ロ シ ア 連 邦 |
初等・中等学校 |
〔上限人数〕 25人 |
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中 国 |
小学校 中等学校 前期(初級 中学) 後期(高級 中学) |
〔標準人数〕 45人以下 都市部 農村部 45〜50人 40〜45人 45〜50人 45〜50人 |
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5. | 国内総生産(GDP)に対する公財政支出学校教育費の比率 | ||
図5 国内総生産に対する公財産支出学校教育費の比率 ![]()
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○ | 我が国の国内総生産(GDP)に占める公財政支出学校教育費の比率は,OECD諸国の中で非常に低い。 | ||
国内総生産に対する公財政支出学校教育費(国と地方が学校教育に支出した経費)の比率は,我が国が3.55%であるのに対し,アメリカ合衆国4.82%,イギリス4.65%,フランス5.88%,ドイツ4.35%となっている(いずれも1998年)。 この要因としては,我が国の公財政支出全体(国と地方による総支出)が小さいこと(図7参照),また,就学前教育,後期中等教育及び高等教育において私立学校の比率が欧米諸国より高いことなどがあげられる。 |
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○ | 我が国の高等教育に対する公財政支出の比率は,OECD諸国の中で最も小さい。 | ||
高等教育への公財政支出の対国内総生産比は,日本0.43%,アメリカ合衆国 1.07%,イギリス0.83%,フランス1.01%,ドイツ0.97%であり,このほかのOECD諸国と比べても我が国の数値は最も小さい。 この要因としては,公財政支出全体が小さいことのほか,我が国の高等教育が私学を中心に普及していることなどが考えられる。これを全大学在学者に占める私立大学在学者の比率から見れば,日本が77.3%(2001年)であるのに対し,アメリカ合衆国は34.6%(1998年)であり,フランスやドイツでは私立が極めて少ない。また,イギリスの高等教育機関は,中世以来,大学が伝統的に国王特許の形で設立されているため,形式面では私立に分類される場合もあるが,運営費の大半を公財政で負担しており,実質的に国立として機能している。 |
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6. | 一般政府総支出に対する公財政支出学校教育費の比率 | ||
図6 一般政府総支出に対する公財産支出学校教育費の比率 ![]() |
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○ | 我が国の一般政府総支出に対する公財政支出学校教育費の比率は,アメリカ合衆国より低く,欧州諸国とほぼ同等である。 | ||
国と地方による公財政支出全体(一般政府総支出)に対する学校教育費の比率は,日本10.1%(1997年),アメリカ合衆国16.0%(1997年),イギリス 11.9%(1998年),フランス11.3%(1998年),ドイツ9.8%(1998年)であり,我が国の数値は欧米諸国とほぼ同等である。 | |||
(注) | 一般政府総支出(general government outlay) は,国民経済計算上の一般政府部門(政府または政府の代行的性格の強い機関)の総支出で,「中央政府」「地方政府」及び「社会保障基金」の支出の合計(純計)で表される。 | ||
図7 国内総生産に対する一般政府総支出の比率 ![]() |
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(生涯学習政策局調査企画課)
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