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平成17年 年頭の所感

 平成17年の新春を迎え、謹んでお慶びを申し上げます。
 昨年9月の就任以来、私は、「教育・文化立国」と「科学技術創造立国」の実現を目指し、教育改革、科学技術・学術の振興、さらに、スポーツ・文化芸術の振興に全力を挙げて取り組んでまいりました。新しい年の初めにあたり、国民各位の期待にこたえる文部科学行政の推進に向けて、決意を新たにしております。

 (「人間力向上」のための教育改革)
 諸改革の基盤は人材であり、主要先進諸国では、各国とも国家の命運をかけて教育改革に力を入れております。時代や社会の変化の中で、我が国が様々な課題を乗り越えて真に豊かで教養のある国家として更に発展していくためには、切磋琢磨しながら新しい時代を切り拓く、心豊かでたくましい日本人の育成を目指し、国家戦略として、教育のあらゆる分野において人間力向上のための教育改革を一層推進していく必要があります。
 このような観点から、昨年11月に私が公表した教育改革案である「甦れ、日本!」においては、「頑張ることを応援する教育」を目標として掲げ、第1に、教育の根本法である「教育基本法の改正」、第2に、全国学力調査の実施などを通じた「学力向上」、第3に、専門職大学院の設置や教員免許更新制などの「教員の質の向上」、第4に、「現場主義」に基づいた学校・教育委員会の改革、第5に、地方が、財源の心配なく創意工夫を生かした多様な取組を行えるよう国が保障することを前提とする「義務教育費国庫負担制度の改革」の5つの改革案をお示ししております。
 私は、これらの改革を今後2年で仕上げることを目標に、自ら先頭に立って、教育改革に全力で取り組んでまいりたいと考えております。
 教育基本法の改正については、新しい時代にふさわしい教育の基本理念を明確にするため、中央教育審議会の答申や与党における議論を踏まえ、国民的な議論を深めつつ、可能な限り速やかな改正を目指してしっかりと取り組んでまいります。

 (義務教育制度の改革)
 義務教育は、憲法の要請により、全国どこにおいても、全ての国民に対して、等しく無償で提供されなければならないものです。義務教育の根幹は、機会均等、水準の維持向上、無償制にあり、この3つの要請を国と地方が共同して確実に実施するため、義務教育費国庫負担制度があります。
 この制度については、昨年11月の三位一体改革に関する政府・与党合意において、義務教育制度の根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持するとの方針の下で、費用負担の問題も含め「義務教育の在り方について幅広く検討する」こととされたところです。今後、義務教育の制度や教育内容、教育委員会制度、全国学力調査や学校評価など全般にわたり、本年秋までに中央教育審議会においてご検討いただき、その中で、義務教育費の問題についても結論を出していただきたいと考えております。
 私としては、国の義務教育に対する責任を確実に果たしつつ、地方・学校の創意工夫を生かした教育が実現できるよう、義務教育の改革を力強く進めてまいります。

 (確かな学力、豊かな心と健やかな体の育成、信頼される学校づくり)
 初等中等教育においては、私は、子どもたち一人一人に「確かな学力」を身につけさせ、「豊かな心」と「健やかな体」を育むとともに、地域に開かれた「信頼される学校づくり」を進めることが極めて大切であると考えます。
 各学校では、新学習指導要領に基づき、特色ある取組が積極的に行われていますが、一方で、昨今の子どもたちの状況については、国民の皆様方から不安や懸念の声もあります。
 このため、次のような取組を一層強力に推進し、国民の皆様の期待に十分に応えてまいりたいと考えております。
 まず、我が国の子どもたちの学力は、国際的な調査結果から見て低下傾向にあり、読解力の低下や学習意欲・学習習慣が身についていないなどの課題も明らかになっております。このことを厳しく受け止め、今後、世界トップレベルの学力を目指し、小・中・高等学校を通じ、子どもたちに基礎・基本をしっかりと身につけさせるとともに、学ぶ意欲や自ら考え主体的に判断する力などの「確かな学力」を育むことが重要です。このため、教職員定数改善計画を着実に実施し、少人数・習熟度別指導や発展的・補充的な指導等を一層充実してまいります。また、学ぶ意欲の向上等をねらいとする「学力向上アクションプラン」を引き続き実施するとともに、「読解力向上プログラム(仮称)」を推進するなど総合的な学力向上策に取り組んでまいります。さらに、学習指導要領の全体の見直しに着手するとともに、全国学力調査の実施、評価システムの開発に向けて精力的に検討を進めてまいります。
 また、「豊かな心」の育成については、学校、家庭、地域社会が一体となって、善悪の判断などの規範意識や倫理観と、公共心や他人を思いやる心などの豊かな人間性や社会性を子どもたちに育むため、道徳教育の充実、奉仕・体験活動や読書活動の推進を図ります。すべての教育の出発点である家庭教育の支援にしっかり取り組むとともに、家庭や地域の教育力向上の観点から、地域の大人の力を結集し、子どもたちの居場所づくりやボランティア活動、スポーツ、文化活動を積極的に推進します。
 さらに、子どもたちの「健やかな体」を育むため、体育の授業の一層の充実、運動部活動の振興などに取り組むとともに、栄養教諭制度の円滑な実施など食育の推進に努めます。
 このほか、不登校や問題行動への適切な対応、職場体験などを通じたキャリア教育の更なる推進、LD、ADHD等の発達障害を含む障害のある児童生徒に対する特別支援教育を推進します。また、幼児教育の振興に取り組み、就学前の幼児の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設の設置に向け、関係省庁等と連携し、必要な準備を進めてまいります。
 また、「信頼される学校づくり」を進めるため、学校評価と情報公開の推進、「学校運営協議会制度」によるコミュニティ・スクールの設置促進など、保護者や地域住民の参画による学校づくりを進めます。また、教員評価の徹底や十年経験者研修制度の推進など、教えるプロとしての教師の育成を図るとともに、教員養成のための専門職大学院の在り方や、教員免許更新制の導入など教員免許制度の改革について検討を進めます。教育委員会については、地域の課題に主体的に取り組めるよう、制度の見直しについて検討してまいります。
 学校の安全管理について、ハード面及びソフト面の両面から組織的、継続的に取り組むとともに、非常災害時には地域住民の応急避難場所としての役割も果たす学校施設の耐震化の推進等、防災対策の充実に努めてまいります。

 (大学改革)
 21世紀の「知識基盤社会」の下で大学に期待される役割は、教育、研究とこれらを通じた社会貢献の3つであり、豊かな教養と必要な専門的知識を具えた有為な人材を養成するとともに、優れた研究により「知」の創造と発展を図り、産学官連携をはじめ、大学の持つ人的・物的な「知」の集積を活用して社会に貢献することだと考えます。
 各大学が、このような役割を十二分に果たしていけるよう、国公私立大学を通じ、各大学の個性・特色を一層明確化し、競争的な環境の下で大学改革への取組を支援してまいります。このため、世界的な研究教育拠点の形成、高度専門職業人の養成、地域貢献等の特色ある優れた取組に対する支援とともに、新たに、創造的な大学院教育の展開、国際化への対応、より資質の高い教員や地域医療を担う医療人の養成等、各大学が果たしていくべき多様な機能に応じた支援に努めてまいります。中央教育審議会において今月末に取りまとめていただく予定の「我が国の高等教育の将来像」をも踏まえ、今後とも、大学改革の推進に積極的に取り組んでまいります。
 また、昨年4月に法人化した国立大学が自主性・自律性を十分に発揮し、教育・研究の一層の活性化を図り、個性豊かな大学づくりを進めることができるよう、国として必要な支援に努めるとともに、施設整備についても「国立大学等施設緊急整備五か年計画」に基づき着実に実施してまいります。
 加えて、設置認可制度の的確な運用と、国公私立大学を通じた第三者評価制度の円滑な実施を進め、包括的な大学の教育・研究の質保証システムの充実に向けて積極的に取り組んでまいります。
 さらに、私立学校の一層の振興に努めるとともに、教育を受ける意欲と能力のある者の学習機会を確保するため、奨学金の充実など学生への支援にも精力的に取り組んでまいります。

 (科学技術・学術の振興)
 科学技術・学術は、日本の発展を支え、希望ある未来を切り拓く原動力です。「知」の世紀といわれる21世紀において、高い科学技術水準と豊かな知的資産は国力の枢要な源泉であり、国民の生活や経済活動を持続的に発展させていく鍵となるものです。
 政府における研究開発の中核を担う文部科学省としては、「科学技術創造立国」の実現を目指して、平成17年度が最終年度となる第2期科学技術基本計画の総仕上げのための取組を強化してまいります。
 このため、大学共同利用機関法人等におけるニュートリノ研究、加速器科学、天文学研究、南極観測等をはじめとした国際水準の独創的・先端的基礎研究をダイナミックかつ総合的に発展させるなど、新たな「知」を切り拓き、社会の発展にも資する基礎研究を着実に推進してまいります。科学技術基本計画における重点分野であるライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料分野の研究開発を強力に推進するとともに、融合領域の研究開発を積極的に推進します。また、安全で安心な社会を実現する科学技術を振興してまいります。
 さらに、国の存立の基盤となる原子力、宇宙、地震・防災、海洋等の研究開発を戦略的に推進してまいります。特に、宇宙開発については、信頼性向上のために万全の対策を講じ、我が国の基幹ロケットであるH‐2Aロケットにより運輸多目的衛星新1号等の打上げを確実に実施し、国民の期待に応えてまいります。また、本年10月に予定している我が国の原子力研究開発の中核的機関である独立行政法人日本原子力研究開発機構の発足に向けて全力で諸準備を進めるとともに、高速増殖原型炉「もんじゅ」をはじめとする高速増殖炉サイクル技術などの研究開発を進めてまいります。国際熱核融合実験炉(ITER(イーター))計画については、日本への誘致に向けて引き続き最大限の努力をするなど積極的に参画し、人類の未来のために主導的な役割を果たしてまいります。
 加えて、科学研究費補助金等の競争的資金の抜本的拡充、大学等における知的財産の戦略的な取得・活用の促進と大学発ベンチャーの創出支援など産学官連携の更なる推進を図るとともに、地域科学技術の振興、先端計測分析技術・機器の開発や世界的な先端大型研究施設等の活用促進など研究基盤の整備・強化を推進してまいります。また、科学技術創造立国を担う多様な人材の養成・確保、国際交流の推進、科学者等による社会への情報発信の支援等に総合的に取り組んでまいります。
 また、平成18年度からの新たな5か年計画となる第3期科学技術基本計画の策定に向けて、科学技術・学術審議会において、少子高齢化や知的資産の国際獲得競争の激化、中国をはじめとするアジア諸国の台頭、さらには科学技術に対する期待の多様化等の情勢の変化を踏まえた検討を進めてまいります。

 (生涯学習、スポーツ、文化の振興)
 人々が生涯にわたり自己実現を図ることができるよう、生涯学習の環境整備や大学・専修学校における社会人のキャリア・アップのための教育を推進してまいります。
 また、勤労観、職業観を育み、若者が明確な目的意識をもって職に就くことができるよう、「若者自立・挑戦プラン」を一層強化します。
 昨年のアテネオリンピック競技大会における日本選手団の活躍は、日本中に大きな感動を与えてくれました。スポーツの振興は明るく豊かで活力に満ちた社会を形成する上で不可欠であり、スポーツ振興基本計画に基づき、ナショナルトレーニングセンター中核拠点の整備など世界で活躍するトップレベルの競技者の育成等に取り組むとともに、国民の誰もが身近にスポーツに親しめる生涯スポーツ社会の実現を目指して地域のスポーツ環境の整備に努めます。
 また、子どもの目標やあこがれの地となるような全国的なスポーツ大会の拠点づくりを推進するとともに、子どもの体力向上を図るなど、スポーツの振興を進めてまいります。
 文化芸術は、人々に感動や生きる喜びをもたらし、豊かな人生を送る上での大きな力になるものです。日本社会の活性化のためには、経済力と並ぶ車の両輪として「文化力」の向上を図ることが極めて重要です。我が国の「顔」となる文化芸術を創造し、世界に発信していくため、映画の振興をはじめとする「文化芸術創造プラン」や「『日本文化の魅力』発見・発信プラン」を推進するとともに、国民が文化ボランティアなどにより自ら積極的に文化芸術活動に参加し、文化芸術を創造できる環境を整備します。また、文化的景観の保護など文化財の保存・活用、地域文化の振興、文化財分野における国際協力や国際文化交流に積極的に取り組みます。さらに、新しい時代に対応した著作権等の施策を推進するとともに、国語について国民一人一人が意識を高め、正しく理解するよう努めてまいります。

 (国際化等への対応)
 我が国が、国際社会において積極的な役割と責任を果たし、世界から信頼される国となることは極めて重要な課題であり、教育、科学技術・学術、スポーツ、文化芸術などの各般にわたり、日本の経験を生かした協力・交流に力を入れます。留学生受入れ体制の充実や日本人の海外留学の支援にも取り組んでまいります。また、「英語が使える日本人」の育成、教育の情報化、男女共同参画社会の形成、環境教育や人権教育の推進等に努めます。

 規制改革や構造改革特区については、今後とも引き続き、地方公共団体や民間の創意と工夫を活かし、教育・研究の活性化という観点から、できるだけ柔軟に取り組んでいきたいと考えております。また、個性ある豊かな地域づくりを支援するため、地域再生の観点から、地域の実情に合わせた制度の見直しや施策の連携を進めてまいります。このほか、公益法人改革、独立行政法人の組織・業務の見直し等の重要な課題に積極的に対応してまいります。

 私といたしましては、国民の強い期待を真摯に受け止め、文部科学行政全般にわたり誠心誠意取り組んでまいる決意です。関係各位の御理解、御協力をよろしくお願いいたします。


 平成17年1月


文部科学大臣
 中山 成彬



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