ここからサイトの主なメニューです

小学校児童用

放射線について考えてみよう

 放射線関連の絵を描いた黒板

小学生のための放射線副読本

はじめに

 平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(マグニチュード9)によって東京電力株式会社福島第一原子力発電所で事故が起こり、放射線を出すものが発電所の外に出てしまいました。
 放射線の影響を避けるため、この発電所の周りに住む方々が避難したり、東日本の一部の地域で水道水や食べ物などを飲んだり食べたりすることを一時的に止められたことがありました。
 このようなことから、放射線についての疑問や不安を感じている人が多いと思い、放射線について解説・説明した副読本を作成しました。
 この副読本では、放射線が身近にあることや色々なことに利用されていること、放射線による人体への影響、放射線の測り方や放射線から身を守る方法などについて紹介しています。

目次

◆放射線って、何だろう?

◆放射線は、どのように使われているの?

◆放射線を出すものって、何だろう?

◆放射線を受けると、どうなるの?

◆放射線は、どうやって測るの?

◆放射線から身を守るには?

◆放射線についての参考Webサイト

放射線って、何だろう?

これは、何を写していると思う?

スイセンから出ている放射線を写したもの

 「放射線」は、昔から身の回りにありながら、見たり触れたりできず、匂いも無いため、その存在を長い間知られていませんでした。
 放射線によって人の体を切らなくても骨の様子を見ることができるようになったのは、100年ほど前のことです。(コラム1)
 左ページは、スイセンから出ている放射線を写したものです。
 スイセンから、特に放射線がたくさん出ている訳ではなく、この他にも放射線は色々なものから出ています。

左ページは、スイセンから出ている放射線を写したものです。

コラム1 偶然から発見された放射線

 ドイツのレントゲン博士は、ガラス管を使った実験をしている時、黒い紙で管を覆っていても蛍光板が光ることを1895年に発見しました。
 光らせたのは、ガラス管の中から見えない光が出ているためと考え、これを不思議な線という意味でエックス線と名付けました。
 この発見により、博士は第1回のノーベル物理学賞を受賞しました。
 エックス線を使ったレントゲン撮影やレントゲン写真の「レントゲン」は、エックス線を発見した人の名前から付けられています。

手と指輪のエックス線(レントゲン)写真、ヴィルヘルム・コンラート・レントゲン(1845-1923)

身の回りの放射線

 放射線は、宇宙や地面、空気、そして食べ物からも出ています。また、皆さんの家や学校などの建物からも出ています。
 目に見えていなくても、私たちは今も昔も放射線がある中で暮らしています。

宇宙、地面、空気 食べ物

放射線って、どんなもの?

 放射線は、太陽や蛍光灯から出ている光のようなものです。
 薄い花びらを明るいところでかざして見ると、花びらが透けて光が見えます。これは、薄い花びらを光が通り抜けるからです。
 光と放射線の違いは、放射線が光より「もの」を通り抜ける働きが強いことです。

光と放射線の比較

調べてみよう

 放射線は、色々なところから出ています。放射線がどのようなところから出ているか調べてみよう。

放射線は、どのように使われているの?

 放射線は、私たちの暮らしの中で利用され、身近なところでは病院があります。
 この他、ものを作ったり、ものの中身を調べたりすることにも利用されています。

ものを通り抜ける働きを利用

 放射線を使って、人体を切らずに骨折や捻挫などの様子を見ることができることから、病院ではエックス線(レントゲン)撮影を行うことがあります。
 画像の白黒の影で骨の様子を確認することができます。
 これは、エックス線という放射線が使われており、放射線に「ものを通り抜ける働き」があるからです。
 この他、仏像の中の様子を調べることもできます。

足の骨を写したエックス線(レントゲン)写真

仏像の外観、内部を写したエックス線(レントゲン)写真、エックス線写真の拡大図

もの(材料)を強くする働きを利用

 放射線を使って、強くて丈夫なゴムを作ることができることから、自動車のタイヤなどに利用されています。
 これは、放射線に「もの(材料)を強くする働き」があるからです。
 この他、ビート板やお風呂のマットを強くすることにも利用されています。

自動車のタイヤ

細菌を退治する働きを利用

 放射線を使って、細菌の付いていないきれいなものにすることができることから、病院で使う注射器などに利用されています。
 これは、放射線に「細菌を退治する働き」があるからです。
 この他、食品を入れる容器をきれいにすることにも利用されています。

医療品

調査や研究に利用

 放射線を使って、色々な調査や研究が行われています。
 エックス線天文衛星「すざく」では、宇宙のかなたから飛んで来る放射線を観測して宇宙の謎の解明に利用しています。

エックス線天文衛星「すざく」 イメージ図

調べてみよう

 放射線は、色々なことに利用されています。放射線がどのように利用されているか調べてみよう。

放射線を出すものって、何だろう?

放射線を出すものと放射線

 放射線は、植物や岩石など自然のものやエックス線を出す装置など人が作り出したものからも出ています。しかし、色々なものから出ていることが知られる以前は、放射線がウランを含む石から出ていることくらいしか知られていませんでした。
 放射線がなぜウランを含む石の中から出ているのかを解き明かしたのが、ウランを含む石から初めて「放射線を出すもの」を取り出したキュリー夫妻でした。(コラム2)
 その後、「放射線を出すもの」には、色々な種類があることが分かってきました。
 「放射線を出すもの」は、放射性物質と呼ばれ、植物や岩石など自然のものに含まれています。
 放射性物質を電球に例えると、放射線は光になります。

電球・光と放射性物質・放射線の関係

コラム2 放射性物質を取り出した人

 フランスのキュリー夫人は、夫とともに放射性物質を取り出すために実験を行い、1898年、ウランを含む石から二つの放射性物質を取り出すことに世界で初めて成功し、一つを夫人の生まれた国であるポーランドからポロニウム、もう一つを放射線のラテン語であるラジウスからラジウムと名付けました。
 これにより、キュリー夫妻は、ノーベル物理学賞を受賞しました。

マリーキュリー(1867-1934)、ピエール・キュリー(1859-1906)

放射性物質の変化

 放射性物質は、放射線を出して別のものに変わる性質をもっています。
 元の放射性物質は、時間がたつにつれて減っていき、その減り方は、放射性物質の種類によって違います。

放射性物質の変化の考え方(1か月後に放射性物質の個数が半分になる例)

考えてみよう

 始めに1000個ある放射性物質が4か月で半分の500個になる場合、1年たつと始めにあった放射性物質は何個になるか考えてみよう。(答えは14ページ)

放射線を受けると、どうなるの?

 放射線の利用が広まる中、たくさんの放射線を受けてやけどを負うなどの事故が起きています。また、1945年8月には広島と長崎に原子爆弾(原爆)が落とされ、多くの方々が放射線の影響を受けています。
 こうした放射線の影響を受けた方々の調査から、どのくらいの量を受けると人体にどのような影響があり、どのくらいの量までなら心配しなくてよいのかが次第に分かってきています。

放射線の影響を測る単位

 長さや重さには、それぞれ大きさを表す単位があり、長さはメートルやセンチメートル、重さはキログラムやグラムなどです。
 放射線は、どのくらいの量を受けると人体にどのような影響があるか、ある単位を用いて表すことができ、その単位は、シーベルトといい、シーベルトの前にミリを付けたミリシーベルトやマイクロを付けたマイクロシーベルトを用いて表しています。
 長さを表す単位の「1メートル=1000ミリメートル」と同じで1シーベルトは1000ミリシーベルトです。
 マイクロは、ミリより小さい時に使い、1ミリシーベルトは1000マイクロシーベルトとなります。

シーベルト、ミリシーベルト、マイクロシーベルトの大きさの比較

自然から受ける放射線の量

 日本では、地面や食べ物などの自然から1年間に受けている放射線の量は、一人当たり約1.5ミリシーベルトです。

約1.5ミリシーベルトの内訳

身近に受ける放射線の量と健康

 私たちは、自然にある放射線や病院のエックス線(レントゲン)撮影などによって受ける放射線の量で健康的な暮らしができなくなるようなことを心配する必要はありません。
 これまでの研究や調査では、たくさんの放射線を受けるとやけどを負ったりがんなどの病気になったりしたことが確認されていますが、一度に100ミリシーベルト以下の放射線を人体が受けた場合、放射線だけを原因としてがんなどの病気になったという明確な証拠はありません。しかし、がんなどの病気は、色々な原因が重なって起こることもあるため、放射線を受ける量はできるだけ少なくすることが大切です。

がんなどの病気を起こす色々な原因

考えてみよう

 絵を見て健康的な暮らしのためには、どのようなことに心掛けるとよいか考えてみよう。

放射線は、どうやって測るの?

 放射線は、測定器を使って測ることができます。
 学校内の色々な場所を測定器を使って測ってみると、場所によって放射線の量が違うことが分かります。
 例えば、学校の教室や体育館などで測った放射線の量に比べ、石碑の周りで測ると高くなることがあります。これは、石碑の中に放射性物質が多く含まれているからです。
 また、水の入ったプールの上で測ると、他の場所より放射線の量が低くなることがあります。これは、プールの水に含まれる放射性物質が地面に比べて少なかったり、プールの底の方から出ている放射線を水が遮ったりするからです。
 このように、放射線の量は場所によって違います。

測定器での放射線測定

調べてみよう

 文部科学省は、学校に放射線測定器「はかるくん」を貸し出しています。「はかるくん」を使って学校の中や周りを測ってみよう。

 身の回りの放射線を測ってみよう。

色々なタイプの「はかるくん」

 見ることもできるよ。

霧箱

 真ん中から何本かの飛行機雲のようなものが見えます。これは、放射線が通った跡です。(放射線の通った跡を見る道具を「霧箱」といいます)

普段から放射線の量を調べる

 放射線や放射性物質は、どのくらいあるか調べることができることから、一部の放射性物質を利用している施設の周りでは放射線の量を測ることにより放射性物質が外に漏れていないかを調べていて、その情報は公開されています。

海の水の調査

 放射性物質を利用している施設で働く人たちは、個人線量計を身に付けて受けた放射線の量を測っています。また、受ける放射線の量を知りたい時にも使われます。

個人線量計

7ページの答え

折れているところ

10ページの答え

答え 125個
 4か月後に半分になるので、500個は次の4か月後(始めの時から8か月後)には半分の250個に、次の4か月後(始めの時から12か月後=1年後)には250個の半分の125個になります。

放射線から身を守るには?

事故の時に身を守るには

 放射性物質を利用している施設の事故によって、放射性物質が風に乗って飛んでくることがあり、この時に放射性物質から出る放射線を体の外からと体の中から受けることがあります。
 体の外から受ける量を少なくする方法があります。一つは放射性物質から離れること、もう一つは放射線を受ける時間を短くすること、そして放射線を通しにくい建物の中に入ることです。建物の中に入った時は、放射性物質が建物の中に入らないようにドアや窓を閉め、外から空気を取り込むエアコンや換気扇の使用を控えるなどの対策を取ることが大切です。また、長袖を着ることにより、放射性物質が体に付かないようにすることができ、服や体に付いても放射性物質を洗い流すことができます。
 体の中から受けることから身を守るには、体の中に放射性物質が入らないようにマスクをしたり、放射性物質が決められた量より多く入ったりした水や食べ物をとらないように気を付けたりするなど対策を取ることが大切です。
 なお、体の外から放射線を受けたことを原因として、人が放射線を出すようになることはなく、かぜのように人から人に伝染することはありません。

放射線から身を守る方法

放射性物質から身を守る方法

事故が起こった時の心構え

 放射線を使っている施設で事故が起こり、施設の周りへの影響が心配される時には、市役所、町や村の役場、あるいは県や国から避難などの指示が出され、この指示に基づいて、学校から児童や保護者に指示が伝えられることがあります。
 その際、うわさなどに惑わされず、落ち着いて行動することが大切です。
 事故後の状況に応じて、指示の内容も変わってくるので注意が必要です。
 また、時間がたてば放射性物質は地面に落ちるなどして、空気中に含まれる量が少なくなっていき、エアコンや換気扇などを使うことができ、マスクをしなくてもよくなります。
 このように、事故が収まってくれば、それまでの対策を取り続けなくてもよくなります。

退避・避難の時の注意点

話し合ってみよう

 退避や避難をする時、どのようなことに気を付けたらよいか、学校や家庭で話し合ってみよう。

放射線についての参考Webサイト

著作・編集

 放射線等に関する副読本作成委員会

【委員長】
 中村 尚司 東北大学名誉教授

【副委員長】
 熊野 善介 静岡大学教育学部教授

【委員】
 飯本 武志 東京大学環境安全本部准教授
 大野 和子 京都医療科学大学医療科学部教授/社団法人日本医学放射線学会
 甲斐 倫明 大分県立看護科学大学教授/日本放射線影響学会
 高田 太樹 中野区立南中野中学校主任教諭/全国中学校理科教育研究会
 永野 祥夫 世田谷区立用賀中学校主幹教諭/全日本中学校技術・家庭科研究会
 野村 貴美 東京大学大学院工学系研究科特任准教授/日本放射線安全管理学会
 藤本 登 長崎大学教育学部教授
 諸岡 浩 西東京市立碧山小学校校長/全国小学校生活科・総合的な学習教育研究協議会
 安川 礼子 東京都立小石川中等教育学校主任教諭/日本理化学協会
 米原 英典 独立行政法人放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター規制科学研究プログラムリーダー
 渡邊 美智子 茨城県土浦市立山ノ荘小学校教諭/全国小学校社会科研究協議会

(敬称略・五十音順)

監修

 社団法人日本医学放射線学会
 日本放射線安全管理学会
 日本放射線影響学会
 独立行政法人放射線医学総合研究所

(五十音順)

写真提供・協力

 独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、財団法人環境科学技術研究所、九州国立博物館、京都大学医学部附属病院、株式会社千代田テクノル、東北放射線科学センター、公益財団法人日本科学技術振興財団、財団法人日本原子力文化振興財団、財団法人日本分析センター

(敬称略・五十音順)

発行

 文部科学省
 〒100‐8959
 東京都千代田区霞が関3‐2‐2

 平成23年10月発行

著作・編集

放射線等に関する副読本作成委員会

お問合せ先

研究開発局開発企画課

-- 登録:平成24年01月 --