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宇宙開発委員会

2001/12/17 議事録
宇宙開発委員会  利用部会(第6回)議事録

宇宙開発委員会  利用部会(第6回)議事録

1. 日時  平成13年12月17日(月)14:00〜16:00
   
2. 場所  文部科学省別館11階大会議室
   
3. 議題
(1)   宇宙利用の推進方策について
    ・ 宇宙利用への期待・利用にあたっての問題点(推進側への要望)議論の中間整理
   
4. 資料
利用6−1−1   宇宙開発委員会  利用部会(第4回)議事録
利用6−1−2   宇宙開発委員会  利用部会(第5回)議事録(案)
利用6−2−1   宇宙環境利用の展望
利用6−2−2   宇宙利用分野における経済産業省の取組み
利用6−3   これまでの議論の中間整理(案)
   
5. 出席者
部会長   川崎  雅弘
部会長代理   栗木  恭一
宇宙開発委員長   井口  雅一
特別委員   秋山  千尋、小田原  修、斎藤  伸久、鈴木  敏恵、中嶋  暉躬、中野  不二男、日高  幹生、古濱  洋治、松本  紘、森谷  正規、山本  由起代
説明者   宇宙開発事業団  井口  宇宙環境利用研究システム長
経済産業省  滝澤  宇宙産業室課長補佐
   
6. 議事内容

【川崎部会長】  どうも、師走を迎えてご多忙のところを、第6回の利用部会のためにご出席をくださいまして、ありがとうございます。委員及び特別委員の皆さん方がおそろいでございますので、予定の時刻より若干早いんですけれども、後の議論を少し長めにやりたいという気持ちもございますので、開会をさせていただきます。よろしくお願いをいたします。
  本日は、先回に続きまして、いわゆる推進側に対して利用サイドというんでしょうか、あるいは産業としてというような観点でいろいろの見解をお持ちの経済産業省、及び、前回、かなり議論が十分ではなかったかと思われます国際宇宙ステーション問題についてお話を最初に伺いまして、残り1時間ほどで、前にお約束しましたとおり、中間取りまとめといいましょうか、これまでの議論の整理という方針につきまして自由にご議論を賜りたいと、かように考えております。
  まず最初に、事務局の方から配付資料の確認をさせていただきたいと思います。

【宗永室長】  それでは、配付資料の確認をさせていただきます。お手元に、宇宙開発委員会利用部会第6回議事次第を置いておりまして、その下に、利用6−1−1といたしまして、宇宙開発委員会利用部会(第4回)議事録、利用6−1−2といたしまして、宇宙開発委員会利用部会(第5回)議事録(案)、その下のA4横になりますが、利用6−2−1といたしまして、宇宙環境利用の展望、利用6−2−2といたしまして、宇宙利用分野における経済産業省の取組み、最後に、利用6−3といたしまして、これまでの議論の中間整理(案)を置かせていただいております。ご確認ください。

【川崎部会長】  よろしゅうございますでしょうか。皆様、おそろいでございますか。
  それでは、引き続いて議事録の確認に入りたいと思いますが、第4回につきましては、既にこれまでに皆さん方からコメントあるいは修正等のご意見を賜りまして、修正をいたしましたものでございますが、第5回につきましては、本日、皆さんの前に初めてお目にしていただくことになっております。内容につきましては、ここで読上げを省略させていただきまして、後刻、事務局の方に、ご意見あるいは修正すべき点があればご連絡を賜るということで、この議事録の確認を終わらせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
  それでは、早速でございますが、前回に引き続く第2部といたしまして、宇宙利用の推進方策、特に推進側への要望ということで、最初に、宇宙開発事業団宇宙環境利用研究システム、井口システム長をお願いしたいと思います。
  なお、先生のご説明に入る前にお許しをいただきますと、井口先生は、これまでの分子エレクトロニクスのご研究の成果を讃えられまして、この11月に栄えある文化勲章を受章されております。そういう意味で、ご説明の前に、大変失礼でございますけれども、ここで皆さん方から祝意を表したいと思います。心からおめでとうございます。(拍手)

【宇宙開発事業団宇宙環境利用研究システム井口システム長】  どうもありがとうございます。

【川崎部会長】  それでは、先生、ひとつよろしくお願いいたします。

【宇宙開発事業団宇宙環境利用研究システム井口システム長】  それでは、今、ご紹介を受けました井口洋夫と申します。私、専攻分野は化学でございますが、ちょうど5年になりますが、宇宙開発事業団に宇宙環境利用研究システムというのが発足いたしまして、そこのお世話をするということで参加させていただいております。
  お手元に利用6−2−1という形で提出させていただいておりますけれども、ページ数が多うございます。その中で数枚を使って、そこに出しました「宇宙環境利用の展望」と、ちょっと大上段に振りかざした題で、私、その任に耐えるかどうかわからないんでございますが、説明をさせていただこうと思っております。
  まず最初に、私たちがどういう目的でこのシステムで仕事を進めているかということでございますが、単刀直入な言葉でございますけれども、宇宙環境利用科学とい一つの学問分野を築くことがもしできれば、非常に我々としては嬉しいことだと思います。
  もちろんその分野は、基礎から応用まで広い範囲でございます。それを簡単に申させていただくと、私はこう理解しております。いわゆる教科書にしろ、本にしろ、それを書きかえることのできるような現象、プロセスあるいは概念というものが得られることを期待しているわけでございまして、それをさらに詰めますと、地上から離れて経験できる、もし重力がなかったらどうなるだろうかというような、一つの大きなテーマで動いていると、そのように私たちは考えております。
  既に日本では長い歴史、あるいは世界ではもっと長い歴史を持って研究を進めておりますが、時間が限られておりますので、早速4ページに移らせていただきます。ここで、私はこの席に今まで出ておりませんので重複かもしれませんけれども、お許しいただいて、宇宙環境利用とは何かということを既に1枚の表にまとめてきております。具体的にそれを詰めていきますと、この7項目になるかと思っているわけでございますが、先ほども言いましたように、最も大きな項目は、やはり重力は小さいということでございまして、地球の重力を1とした場合に、その1万分の1から100万分の1と。したがって、ちょっときざな言葉でございますが、もし重力がなかったらどうなるだろうかということを主体にやっていきたいと思っております。
  そのほかの項目も、各々の分野にとってはどれも重要な事項でございますが、特に私は自分自身が無学だったのですが、この環境利用システムに加わる前までは予想もしなかったように、下から3番目の周りの空気はすべて原子状の酸素でございまして、酸素はOでございます。Oが一つ一つ太陽の熱で分かれておりまして、非常にアクティブなものでございます。これは、今まで知りませんでした。それで、私、化学の者としては、逆説ですけれども、胸がわくわくするようなテーマになり得ると思っております。
  最後のところはやはり、今まであまり知られていない問題かと思うんですが、周りは真空でございます。その中で物体が飛んでおりますので、ちょうど魔法瓶の中に物体が入ったようなわけで、熱を取るよりも、捨てるのが大変だと。これがいろんなシステムでやっていく上に大きな研究課題になっていると、そう理解しております。
  これが、地球上、400から500キロを飛んでいる現在のスペースシャトル、さらにこれから今建設を進めている国際宇宙ステーションの置かれた環境を1枚の表にまとめたものでございます。
  その次の表は、5ページ目になりますけれども、私たちは、その研究をやっていく上に柱を立てておりまして、縦軸が柱で、7つございます。これがすべてを網羅しているとは思いませんけれども、一応、現在、先ほど言いました基礎から応用までのすべての分野を、基礎科学、微小重力、生物、宇宙医学、宇宙科学、地球科学、技術開発という形に考えております。先ほど申しましたように、今日、栗木委員もご出席いただいているんでございますが、1970年代から多くの仕事が積み重ねられておりますが、我々宇宙開発事業団といたしましては、1992年のFMPTに、私はそのときはおりませんでしたけれども、その頃からの仕事かと思っております。
  横に、先ほど言いました7つの宇宙環境を、縦に7つの分野をやりますと、その中にかなり濃淡がございます。やりやすい分野、なければならない分野等があります。これをにらみながら各分野で研究を進めていっているわけでございますが。では、今までどれだけのデータが出たかということで、6ページをご覧頂きたいと思います。専門用語も入っておりますが、先ほど言いました多分過去十数年の間の結果で、これは宇宙開発事業団で行ったのをまず整理いたしました。150ほどございます。私たちは、まずこれを解析しながら、どういうふうにこれを展開していくか、たとえマイナスな結果であっても、もう二度とする必要はないかなどの判断をすべてやっていくわけでございます。
  今後の進め方としましては、私は宇宙でやる実験を宇宙実験と略してここでお話しさせていただきますが、今はスペースシャトル、今後、おそらく数年後に宇宙ステーションが上がったときに、どういう課題をやるべきか。繰り返しですが、基礎から応用までどういう課題をやるべきかということを手落ちなく準備していくというのが、当面の我々の責任かと思っております。いろいろな状況が起こって、できない実験はあるかもしれませんし、また、長く待つために、内容が陳腐化するのもあるかもしれませんが。しかし、やれる環境が来たときにやれないという状況は、我々としては最も無責任になります。したがって、現在それを積み上げているわけでございますが、例えばその方法として、次の7ページにあるような三角の形で既に準備を始めているわけでございます。
  と申しますのは、私のように小さい分野で仕事をした者は数カ月で準備ができるんですが、これだけビッグプロジェクトになりますと、よほど準備をしていかないとやってまいれません。したがって、この数字は、三角形といいますのは、いわば幅広く一般のテーマあるいは先導的テーマを選びまして、それを何回かのフィルターにかけながら確実にやっていけると。
  やらなくてはいけないことは多くあると思うのですが、選ぶ際の基本は2つございまして、日本の特殊性を示すことのできるテーマと、地上で徹底的にやって、これをやれば勝負が決まるというテーマ。その辺はいわば選択になってまいりますが、非常に神経を使っているところでございます。
  念のため、下に公募地上研究と書いてありますが、今、5年間やらせていただきまして、約20%の競争率で選ばれたものでございます。トータル約400ぐらいございますが、具体的にそのうち15%ぐらいが一番上のフライトテーマになり得る。そういうデータは外には出しておりませんけれども、競争していって勝ち得るものが出てきているかと思っております。
  先ほど申しましたように、宇宙ステーション、これは今のスペースシャトルと違って、10年間あるいは20年間のプロジェクトでございますが、差し当たっては、とにかくこの基礎、応用の研究を主体にやっていくというための準備を進めているわけでございます。  こういうふうに申しましても、ちょっとご理解いただけないかと思いますが、専門用語を使うと、もっと混乱させてしまいますので、1枚だけ具体的な表として、先ほど言いました微小重力下で、無容器というのがございます。これは、地上ではどうにもならない、宇宙だけができる実験でございまして。ここにありますように、ご存じのように、毛利さんなどの実験でごらんになったように、水の玉が空中を浮くわけでございまして、気液がございません。
  欄外にもありますように、これは不純物が入らないということがあるのですが、私みたいに化学をやっていますと、気液のない状態ということが起こります。これはすばらしいことといいますか、絶対実験をやりたいところでして。すべての化学反応は気液から起こってまいりますので、先ほど言いましたように気液がないと、化学の教科書は全く書き直さなきゃいけないと。これはいわば基礎面でございます。それを使って、いろいろな反応のプロセスを見つけていくということを含めて、先ほど言いました公募研究も一、二動いておりますが、そういうことを組み立てながら、この階段を上がっていって、5年後あるいは4年後にフライト実験できるときに後ろに並んでいて、それで、結果がうまくいくかどうか、それは実験ですからわかりませんけれども、それを期待されるものを準備しているというのが現状でございます。
  時間をかなり経過してしまいました。こういうわけで、今、準備を進めているところでございますが。しかし、私、ここでもう一つ申し上げさせていただきたいことがございまして、それは、ページの9番でございますけれども、この宇宙ステーションができ上がるときには、5年先あるいは4年先かもしれませんが、それから約10年、20年というスパンでそれを活用していく必要があるかと思います。
  これは、そこにあります、私は3段階の利用というものが考えられるのではないかと。今、それを申し上げると、現在の私たちに与えられる仕事を逃げるのではないかとされると申し訳ないので。そうではなくて、今は懸命に積み上げていくんですが、それが知の探求、夢の探求という科学技術、技術開発でございますが、その次に起こるべき問題として、宇宙ステーションを使って、地球を守ることと私は考えているんでございますが、その理由は、いわばこの宇宙ステーションが1日14回、絶えず飛び回っているわけで、地上のいろいろな現象の司令塔になり得るのではないかと、そういう考えでございます。
  それは単に夢物語ではございませんで、既に行動を開始しているわけでございますが、ページに直しますと、14ページでございます。そこにありますように、実験プラットフォームというものを持っておりまして、4つのプロジェクトを既に数年かけて積み上げておりますが、その中で、下から2番目の地球大気環境の観測という、これは国立天文台の稲谷さんがこちらに来られまして、我々宇宙開発事業団の中で組み立てて、外と組んでやっていることでございますが、17ページに詳しく出ておりますのでここでは説明を申し上げませんが、日本の最も得意とする分子分光学を使いまして、空気の一番端をかすめながら、大気中にある非常にわずかの不純物を分光学的に濃縮してチェックするということでございます。
  私は特に申し上げたいと思っていますのは、言い過ぎなんですけれども、宇宙できっとこれだけ美しい星がないというのは皆さん共通した考えですが、エネルギーの方は、太陽がある限り、いずれ人間の英知が解くと思いますけれども、地球の持っている財産、水とか、あるいは空気などはかけがえのないものでございまして、その全体の分布や汚染度等をきちっとまとめるということは、地球が今後長く存在するための重要事項であろうと。それには、この宇宙ステーションというものが有効に役立つという考えを持っております。
  さらにこれから先を見ますと、夢といいますか、おまえは何を言っているんだと怒られるかもしれないんですが、今、少しずつ日本の持っている独特のが東洋思想と言うとおこがましいんですが、宇宙文化という言葉を五代先生は使っておられますけれども、この宇宙ステーションを使って、これを小さな地球と見立てて、いわゆる民族間の争いとかそういう問題が、いずれ宇宙ステーションの一つの時代になってくるのではないか。それは10年先、あるいはひょっとしたら20年先かもしれませんが、そういう考え方を持って、まず当面は、科学研究と技術研究に集中して、その具体的なことは、13、14、15ページ等に詳しく書かせていただいておりますが、研究を進めているのが現状でございます。
  時間が来てしまいましたけれども、最後に、3ページをちょっと見ていただきたいと思います。これは、私自身は宇宙ステーションの建設に加わっているわけではございませんで、強い関心を持ちながら、日々、これを耳にしているわけでございますが。これは8月、建設途上でございまして、完成図はしばしば美しい図が写真に載っているんですが、宇宙飛行士の言葉とか、あるいは建設に携わっておられる言葉を聞きますと、まだ40回以上のロケットを打ち上げて組み立てる宇宙遊泳8時間以上という、大変大きな仕事で、これはやはり21世紀の科学技術の粋で、宇宙ステーションをつくること自身が非常に大事な技術開発、科学開発で、そこから得られる知識というのは、私も共同利用研に長くいて、小さな共同利用をやっているわけですが、こういう本当のハードな面の国際協力は恐らく初めてだと思います。これで蓄積された知識というものは、今後、恐らく、21世紀は、大きな研究対象は全世界が挙げてつくらなければ到底できないこと、その先兵になっていると、そのように思います。
  非常に耳に残っていることは、毛利さんとあるとき話したときに、訓練でなぜ水中遊泳をやるか知っていますかと。目の先に出た場所が1ミリでも届かなかったら、地上だと、ちょっと体を前に出せばいいんだけれども、宇宙では、体が前へ出ませんと。だから、一遍手を下げて、足のところにある、いわば下駄みたいなものを前に1センチ出してということで40分かかりますということを言っておられました。
  すなわち、私は、非常に訓練を積んだ宇宙飛行士が組み立てているこの人間技を超えたような宇宙ステーションというものをやはり非常に大事な科学技術の粋だと考えて、その中でやらせてもらう実験というのは、よほど注意深くやらないと、時間と尽力がもったいないということで日々やっているところでございます。
  時間をオーバーしてしまいましたが、最後に一言、今申しましたように、今後、いろいろな難しい状況があることは十分担当者としては承知しているのでございますが、実際、できる段階が来たときに、それに見返るだけの優秀な課題がないということは極めて責任問題でございます。その点については緊張したつもりで日々過ごしているわけでございます。
  具体的なことはあまり申し上げませんでしたけれども、今の無容器でごらんのように、非常に新しいものが幾つも残って、その選択だけは注意深くやっていこうと思っております。
  なお、ここのちょうど書きました5ページの約150のテーマには、欄外に書きましたように、今回は宇宙開発事業団のテーマと実績としましたので、宇宙科学研究所で既にフロンティアあるいは先導的研究をなされた問題は含んでいないことをつけ加えさせていただきます。
  委員長、以上でございますが。

【川崎部会長】  どうもありがとうございました。大変時間をせかせまして恐縮をいたしておりますが。内容的には、お手元に配付してあります8ページから以降に、先生が後半でおっしゃられた宇宙ステーションにかける大きい期待というのをお酌み取りいただければ幸いと思うんですが。
  ご質疑等ございましたら、ご遠慮なくお願いいたしたいと思います。

【松本特別委員】  京都大学の松本でございます。
  宇宙ステーションに向けて、宇宙開発事業団が、特に宇宙利用という観点でかなりのエネルギーと人を割いてやっておられることに対しましては、敬意を表しております。
  質問は、この資料の14ページにもございますが、現在、ISSを利用した実験の初期段階ということで、4つのテーマを進行しておりますが、その次があるのかどうか。つまり、少し延び延びになっておりますのでね、我々大学からもたくさん初期には応募があったはずなのですが、先生ご存じのように、第1回目は、大学の人は関与はしておられますけれども、大学からはほとんど採用されなかった。それは多分予算的な側面、実施体制の問題があったんだろうと聞いておりますけれども。今後、この4つでもかなりなすべきことはたくさんあるとは思いますけれども、お金を用意しないと宇宙ステーションは参加できないのかどうかということを、大学人の中で随分と議論がその後ございました。その点について何かお考えをお聞かせ願えればありがたいんですけれども。

【宇宙開発事業団宇宙環境利用研究システム井口システム長】  私、答えられる範囲は限られているわけでございますが、松本先生、ちょっと説明不足でございました。これは、ご存じのように、実験プラットフォーム、いわゆるバックルームの仕様でございます。そのほかの、いわゆる与圧部というんですか、4.2メートルの器の中でやる実験はこの別にやっております。このプラットフォームの実験というのは、ご指摘のように、私の記憶間違いなければ、72のテーマから4つ、実際5つを選ばせていただいておりまして、今、懸命にこれを組み立てるところをやっております。
  中でもしばしば議論しておりまして、いわゆる、今言われた第2期募集というものをどういう形でやるのかということで、公募研究でその芽を出しつつあるのもございますし、また、中で議論しておるのが、私としては、その最終決定はまだ聞いておりませんけれども、やはり10年のスパンでやっていきます。この一つ一つについては大体2年ないし3年のプロジェクトと、打ち上がってからですね。その後続をきちっとしておきませんと、それはやはりプラットフォームの有効利用という面からすれば問題があろうと思います。
  したがって、現実にどういう予算的な措置とかそういうことは、私、無責任な発言でございますが、実際に課題を選ぶということにつきましてはしばしば議論をして、どういう形で第2期を行うかということは、中で議論しておりまして。私は、必ずそういうことをやらなければ、実験プラットフォームは十分使い切れないと思っておりますが、その時期については、申し上げるデータを持っておりません。申し訳ございません。
  以上でございますが。

【川崎部会長】  よろしゅうございますでしょうか。小田原さん。

【小田原特別委員】  東京工大の小田原でございます。
  先生にご質問というのも僭越ですので、認識として2つのことを先生の頭に入れておいていただきたいということで。現状、宇宙ステーションの組立てあるいはその利用について、滞在する宇宙飛行士の数、これも減ってきていると。それで、私が関連しております日米の会合におきましても、日本の対応というのが非常にマイルドであって、あまりにも紳士的であると。逆に言うと、カナダ、ヨーロッパは、アメリカに対して非常に批判的な意見を言っている。日本もそのようにしていただきたいというのが米国の研究者の意見でした。これは、井口先生、トップとして、何かありましたときにはそういう方向で若い者を動かしていただきたい。
  それと、もう一点は、宇宙開発事業団が今までやってこられたファンド、これは、確かに井口先生おっしゃるように、宇宙というのでは、微小重力なり何なりというものを使う上で、非常に繊細な考え方が要ると思います。しかし、宇宙は、それがあって宇宙なんだというのは、研究をやる人間は知っておると。そうしたら、これから若い者にファンディングをやるときには、むしろ宇宙開発であればこそ、気違いじみた研究にもファンディングをやるというような気持ちをトップの方には持っていただきたい。よろしくお願いいたします。

【宇宙開発事業団宇宙環境利用研究システム井口システム長】  小田原さん、どうもご指摘ありがとうございました。よく肝に銘じて実行いたします。

【川崎部会長】  今の松本先生と、それから小田原さんの質問の宇宙飛行士の問題、どれくらい常駐できるかどうかということになると思うんですが。これまでは、やはり宇宙ステーションが、ある意味で言うと、いわゆる10年なり20年というライフタイムでどういうふうに展開をしていくかという時間軸をあまり入れないで、当面何をするかということでのセクションで切ってきたということなので。宇宙ステーションの建設が軌道に乗って、具体的日程がスケジュールに上がるようになれば、第1段階は、今の井口先生のところでまとめられたものでスタートするとすると、後発の第2弾、第3弾を、どんな体制で、どんなふうにつくっていくかということについては、さらに宇宙ステーションの広い意味での利用ということは、この利用部会ではなくて、やはり何らかの対応を考えていかなきゃいけないと現在考えているわけですが。
  今、小田原さんがおっしゃったように、常駐する宇宙飛行士の数自身も含めて、まだ少し計画がぶれているところが、特にNASAの予算執行面の問題であるようでございますので。まだその段階が消えないというのが実情かと思っております。
  どうも、それでは、井口先生、ありがとうございました。

【宇宙開発事業団宇宙環境利用研究システム井口システム長】どうもありがとうございました。

【川崎部会長】  それでは、引き続きまして、経済産業省の方から、本日は、宇宙産業室の滝澤補佐がお見えでございますので、滝澤さんの方から、経産省の取組みをお願いいたします。

【経済産業省宇宙産業室滝澤課長補佐】  ただいまご紹介にあずかりました経済産業省の宇宙産業室の補佐をしております滝澤と申します。座って、このままでご説明をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
  短めに。わかりました。では、かいつまんでご紹介させていただきます。私がこれからご説明をいたしますのは、利用6−2−2と右肩に書いてあるA4横紙の資料でございます。タイトルは、「宇宙利用分野における経済産業省の取組み」です。
  まず、簡単に、宇宙利用産業の位置づけということで、もう皆様よくご存じかと思うのですけれども、私どもの認識を簡単に申し述べさせていただきます。3ページをごらんいただけますでしょうか。
  見なれぬピラミッドがお手元に書いてあるかと思うんですけれども、上に書いてございますとおり、宇宙産業というのは、ロケット、衛星、そういった宇宙機器産業と一般に呼ばれているものを頂点に、それを活用いたします様々な産業で構成されている、非常に裾野の広い産業であると私ども考えております。
  今、この場でご議論いただいているのは、真ん中とそれから下の方の斜線がちょっと伸びている部分が、宇宙利用産業でございますとか、宇宙関連民生機器産業、そういった利用の広がりのところだと私は理解をしております。衛星通信でございますとか、リモートセンシングデータの提供でございますとか、測位サービス、宇宙環境利用、様々なところに宇宙産業というのは非常に波及効果を持っておりまして、宇宙機器産業が成長して宇宙利用産業を育て、またその逆もしかりということで、お互いに連関し合って成長していく、非常に重要な産業であるということだと思っております。
  めくっていただきまして、4ページをごらんいただけますでしょうか。これはまた全体のご議論で申し訳ございませんけれども、1998年の世界の宇宙産業。宇宙産業というのは、今、最初にごらんいただきましたピラミッド全体でございますが、約10兆7,360億円と言われております。2002年には、これが15兆1,580億円と非常に大きく伸びると。成長産業と申し上げてよろしいかと思います。
  下の図をごらんいただきますと、何が伸びるかということがちょっとごらんいただけるんじゃないかと思います。よくご案内のとおり、テレコミュニケーション、固定通信でございますとか、移動体通信、ブロードバンド、そういったものは青いところで書いてございまして、1998年に3.7兆円だったものが、2002年には6.2兆円になるのではないかと。
  それから、インフラストラクチャーと書いてございますけれども、これはロケットでございますとか、衛星、宇宙ステーション、地上設備、そういったものの製造でございますけれども、そういったものも6.1兆円から7兆円、割合はちょっと低下しておりますけれども、全体として額は増えると思っております。
  注目すべきは黄色の部分、宇宙データ利用と書いてございますけれども、今、まさしく委員の皆様方にご議論いただいているところは、1998年、5%から2002年には10%、金額にして0.5兆円から1.5兆円と約3倍に大きく増えると。ここが、皆様方がこうやって出口のところを宇宙利用についてご議論いただいている最も大きな原因ではないかと思っております。非常に重要な分野だということが申し上げたいだけでございます。
  1枚めくっていただきまして、5ページをごらんいただけますでしょうか。ちょっと駆け足で申し訳ありません。宇宙データ利用市場の規模ということで、GPSなんかを除いて、リモートセンシングデータと、それからGIS、ソフトウエア、ハードウエアサービスといったものの市場の推計というものをお示しをさせていただいております。
  これは、実は今日ご欠席でございますけれども、この場に委員としていらっしゃる中川先生でございますとか、それから、今日いらっしゃらない石橋社長の下で取締役をされている山本さんと、そういった皆様方においでいただいて、私どもでリモートセンシング産業技術動向調査というのを今年から始めております。その場でいろいろと調べております数字でございますが、こういったように、1999年から2005年、大きく伸びるということがごらんいただけるかと思います。宇宙データの利用というのは、これからどんどん、どんどん成長していく成長分野であるということをごらんいただけるのではないかと思っております。
  また、6ページでございますけれども、こういった分野の適用の例、この場に中川先生がいらっしゃったらおしかりを頂戴するような、ちょっとミゼラブルなものがございますけれども、いろいろな分野に適用ができると考えております。あえてすべては申し上げませんけれども、防災・災害監視でございますとか、私どもがやっております資源探査、それから、農林水産業・資源の管理、環境・国土の管理、地図作成と、いろいろな分野で衛星のデータを利用して、これから産業が伸びていくのではないかと考えております。非常に有望な分野だと申し上げてよろしいかと思います。
  駆け足で恐縮でございますが、2枚ほどめくっていただきまして、私ども、資源探査をいろいろとプロジェクトとして実行させていただいております。どのようにリモートセンシング、衛星からのデータが使われているかということを簡単にご紹介させていただきます。
  まず、資源探査というのはどのようになされているかというのを書いたのが、この8ページの図でございます。もちろん現地に直接行って調べるのが最終段階でございますけれども、どういった有望地域があるのかというのを絞込みをするというのが、非常に大切でございます。
  まず、予備調査と申しまして、机の上で、例えば今ごらんいただいている衛星のデータでございますとか、それから地図、そういった様々なものを活用いたしまして、どこが有望かというのをあらあら絞り込みます。それから、さらに、概査、精査と申しまして、これもリモートセンシングデータをより詳細に使いまして、例えばスペクトルと申しまして、いろいろな波長データから読み取れる石のデータ、そういったものを活用して、後でちょっと簡単にご紹介いたしますけれども、どういった地域が有望かというものについてより詳細に絞り込みます。
それから、実際に現地に行きまして、重力、磁力などを活用いたしまして、地面の中に何があるのかというのを調べてみる。それから、実際にダイナマイトを爆発させて、地震波を計測して、地面の中の形状を調べてみる。そういった様々な調査をいたしまして、その後、例えば石油でございましたら、ボーリングと申しまして、地面の中に穴をあけて、棒を地中深く差し込んで、地中深く何があるのかということを実際に調べてみるというような様々な手段を講じまして、最終的に埋蔵量の評価、それから事業化の計画ということをやるわけでございます。
  重ねて恐縮でございますけれども、リモートセンシングは、今申し上げましたように、一番最初の、どういった地域が資源の有望地域であるのかというのを調べたり、それから、地震探査、地震波を測定する位置というのを決める際に、どういった地域が有望であるのか。それから、例えばパイプラインなんかの敷設するときに、どういった地域が安く敷設できるのかとか、そういったところをコストを勘案しながら調べるために使っているということでございます。これが資源探査におけるリモートセンシングの役割ということでございます。
  9ページをめくっていただけますでしょうか。最もよく使われております石油、それから天然ガス、そういったもので資源の探査にどういったふうに使われているかということでございます。もちろん地面の中までは衛星から見ることはできませんので、地表から判断するわけでございますけれども、大体、石油ですとかガス、そういったものは地下の堆積岩の中に広く分布をしております。そういったガスの石油の鉱床が成立するためには、いろいろな条件が地表から読み取れます。
  例えば石油ガスがそもそもできる元になります有機物を非常に多く含んだ根源岩と私ども呼んでおりますけれども、そういった岩がどのように分布をしているかとか、それから、右下の図を見ていただきますと、石油は赤で、ガスは黄色で書いてございます。それが貯まっている地層が見ていただけるかと思いますが、貯留岩と申しまして、油でございますとか、ガス、そういったものを地層の中に貯める、そういった岩でございますとか。一番上に帽岩と書いてございますけれども、油やガスが地表に逃げていかないようにそれをブロックする、そういった役割を持っておりますそういった岩がございます。そういったものそれぞれがそこに整っていると。それから、地形としてもそういった貯め込むことができる。要は、下に背斜構造と書いてございますが、お山のような形になっていて、石油やガスが貯まる、そういった部分があるというところを地面から探すと。こういった地質的な特徴をリモートセンシングデータを使って把握をいたしまして、有望地域の絞込みをするということをやっております。
  10ページはちょっと飛ばしていただきまして、どんなところに石油があるかということでございますが、ちょっと時間がないので割愛させていただきます。
  11ページでございます。私どものプロジェクトで実は石油が見つかった例がございまして。まだまだ欧米と違って、我が国では、石油資源の探査にリモートセンシングデータが有効に活用されているという事例は乏しゅうございまして、中国のトルファン盆地で、中国の国営石油と一緒に探しました、そういった石油がございます。その例を簡単にご紹介させていただきます。
  この写真を見ていただきますと、青いところが砂礫でございます。赤いところは森林でございます。白くなっておりますところは砂岩でございまして、ここが、実際に石油を生み出したり、それから貯めたりする、そういった地形でございます。その写真の下に書いてございます、ちょっと模式図がございますけれども、これが背斜構造と申しまして、左側に書いてある地形の褶曲が油やガスを貯めると、そういう非常に適した地形になっている、そういったところがこの写真から、私のような素人が見てもなかなかわからないんですが、プロの方がごらんになると、ここが背斜構造であって、ここに石油やガスが貯まっているのではないかということがわかるということでございます。
  実際に見つけましたのは、矢印が薄い紫色で書いてございますけれども、赤いところの上にありまして、ここのところにちょうど背斜構造と申しまして、帽子のように石油やガスを貯める地形があって、そこに油があるのではないかということが推察されたということでございます。
  次も同じでございますけれども、ここは非常にしわが寄っておりますけれども、12ページの写真をごらんいただきますと、このしわのところが、先ほど申し上げました背斜構造と申しまして、山になったり谷になったりして石油やガスを貯めるという、そういった地形であるということが衛星から読み取れるというものの具体例でございます。
  駆け足で恐縮でございます。ちょっと量が多うございますので、13ページに行かせていただきます。最初にパイプラインなんかを敷設するときのコスト削減だとかというのも、リモートセンシングデータから活用して引き出せるということをお話しさせていただきましたけれども。これ、実際にシベリアでパイプラインを敷設するときの計画図をちょっとつくってみたというものでございます。
  左側が写真で、右側がその模式図でございますが、右側の青い線、これは全部川でございます。これを渡るごとに、パイプラインは当然敷くに当たってコストがかかると。それから、ここは、永久凍土、ツンドラでございますので、夏になると溶けるというところが上の方で出てきますので、溶けない下のところまでパイプを打ち込むため、永久凍土を通るとすと、コストが非常に上がるということでございます。
  それから、森のところも、木を切るとか、そういった様々な諸条件を考慮いたしまして、右側にちょっと小さく書いてあるのは、これは実はどういったことがあるとプラス5点とか、マイナス5点とか、経済性を評価したものでございますが、そういった個々のパイプルートの敷設の諸条件を積分いたしまして、どういったルートが効率的かというのを判断するということにも活用されるということでございます。
  申し訳ございません、駆け足で恐縮でございますが、14ページに行っていただきまして。先ほどは、石油とガスの話をさせていただきましたが、金属でも同じことが申し上げられます。金属というのはいろいろなところにもちろん貯まっているわけでございますけれども、リモートセンシングなんかでよく探しておりますのは、実際に断層なんかを通じて、鉱床モデル図と書いてございますが、そこを通じて、この赤いのはマグマでございます。マグマがずうっと上がってきて、そして、その変質帯というのは、そのマグマの熱で岩が変化したというところでございますけれども、そういったところの鉱物がより濃く濃縮されて、濃度としては5%までいけば非常によろしいと言われているそうでございますけれども、そういった程度で濃縮をされて、そういった地形を探すことによって、有望地域というものを絞り込むということをやっているということでございます。
  次のページでございます。これもまた写真たくさんで恐縮でございますけれども、短波長赤外と申しまして、目で見えるところのちょっとより外側、赤外線を見てみると、いろいろなものが見えてくるということでございます。いろいろな岩石の名前が書いてございますが、要は、先ほど申しました変質岩と申しまして、マグマの温度で組成が変わってしまったもの、どういったものが存在するのかというのと、鉱物資源の有望地域というのは非常にリンケージがございます。より有望度の高いところとそうでないところというのを、こういったリモートセンシングデータで色分けをいたしまして、調べまして、そして、有望地域を絞り込むということをやっているという例でございます。
  これは、真ん中の図は緑色のところ、ちょっと下のところに赤、緑、青と有望度が書いてございますけれども、申し訳ございません、これ、緑、赤、青なんですけれども、緑、赤、青の順番で、非常に鉱物資源として、これは銅でございますけれども、有望であるという、そういった地域を表しているというものでございます。
  時間が過ぎてしまって申し訳ありません。次の図も同じでございますので、ちょっと割愛させていただきます。これも同じように、それぞれのスペクトル、波長帯に応じて、各岩がどういった状況に分布しているかというのを調べて、それと、金でございますとか、銅、クロム、そういった鉱物資源との関係というのをチェックをして、有望地域を絞り込むということをやっているということでございます。
  18ページ以降は、申し訳ございません、私どものところでやっている個々のプロジェクトの紹介でございます。いろいろな資源探査も衛星を上げておりまして、もちろん宇宙開発事業団さん、それからNASAさん、いろいろなところと提携させていただきまして、そういった資源探査衛星を上げております。
  それから、一番最後のページは、USERSプロジェクトと私ども申し上げておりますけれども、超伝導材料を宇宙でつくってみて、どのように地上への適用可能性があるのかというのを含めて研究をするというプロジェクトもやっております。
  ここに書いてございませんが、小田原先生と松本先生がいらっしゃいますので、あえて申し上げさせていただきますと、私どものところでも、宇宙対応発電の調査を、非常に小さな額でございますけれども、やらせていただいているということでございます。
  以上が、私ども経済産業省のやっております宇宙利用分野における取組みでございます。駆け足で申し訳ございませんけれども、以上でございます。

【川崎部会長】  どうも時間を急がせまして、せっかくの資料を十分ご説明いただけなくて申し訳ないんですが、どうもありがとうございました。
  それでは、皆さん、ご質疑等ございますでしょうか。森谷先生。

【森谷特別委員】  資源探査というのは、これはまさしく国際競争が非常に厳しい分野だと思うのですが、日本は、あまり強いようにも思えないんですね。アメリカ、ヨーロッパと競争力はどうかということと、その主体は、日本の場合、国が中心なのか。海外は、民間企業が資源探査の非常に強い力を持っている会社もあるんだろうと思うんですが、その辺……。

【経済産業省宇宙開発室滝澤課長補佐】  今のご質問は、まさしく先生がおっしゃるとおりでございまして。欧米では、例えば石油なんかでございますと、メジャーとよくお聞きになるかと思います。そういったところは非常に経営体力がございますので、例えば石油資源探査のボーリングなんか、地面に穴をあける、1本あけるのに数億円かかります。これを100本ぐらいやって、数本当たるとラッキーと。非常にばくち的な事業でございますので、それだけの経営体力があるところでないとできないというのが実際のところでございまして。日本では、まだまだこういったリモートセンシングデータを活用して、実際にボーリングをやってて自分でリスクをとるというところまではいっておりません。
  したがいまして、欧米でやっているようなことを、私ども国で、実は私どもの予算を使って、一生懸命そういった因果関係、どういった地形とどういったデータとがリンクしているのかと今、まさしく調査している段階でございまして。欧米では、恐らくもちろんそんなことは市場に出てこないのでわからないんですけれども、彼らが民間企業が既にやっているようなところを国で研究して、それを民間企業にお渡しをして、実際にリスクをとっていただけるように基盤を整えるという、そういった段階でございます。

【小田原特別委員】  私自身、経済産業省さんの方に、ご発表あるときにいつも言っているんですが、産業規模1.1兆円とおっしゃるんですが、この産業に従事している人の推移を欲しいんです。私の計算では大体1万人と聞いております。
  それで、先ほど井口先生に気違いじみた研究にもファンディングと言った意味は、今、あまりにも日本で、ぎしぎし、微小重力って何と決めると、若い人も応募しづらい。だから、研究をやる人には、突拍子もなくてもファンドをやることで、ご自身の、若い人を伸ばそうというのがあるんですが。逆言うと、経済産業省さんにお願いしたいのは、例えば今、大田区の数千社の中小企業は困っているんです。それは、経済産業省さんのマターだと思うので、宇宙産業室さんもそこへ踏み込む何か施策をご説明いただきたいと。
  例えばアメリカのNASAは、NASAキットということでおもちゃをたくさん売っています、宇宙という名で。そういうものを何か国内で紹介して、日本のいわゆる中小さんの匠の世界ででも出してくるものを売るような、細かいことですが、そういう世界にもちょっと踏み込んで頂きたいと常々思っておりますので、よろしくお願いします。

【川崎部会長】  コメントが何かありますか。

【経済産業省宇宙開発室滝澤課長補佐】  まず、先生がおっしゃいました1万人というのは、私が今、ご説明をさせて頂きました3ページを開けていただきますと、一番上に、宇宙機器産業とございます。これは大体3,500億円強の規模でございまして、日本で、1.1兆円のうちですね。ここに従事するのが大体9,000人と言われております。それが、今、先生がおっしゃっているものでございましてその下のサービス産業ですとか、それから宇宙関連民生機器産業、こういったところも含めました数字では、恥ずかしながら私ども実は調べ切れておりません。従いまして、もう少し多いのではないかというのが一つございます。
  それから、大田区の中小企業の話をちょうだいいたしました。ベンチャー関係のお話というのは、私どもも非常に重要だと思っております。これは省として重要だと思っていると申し上げさせていただきます。宇宙関係のベンチャー育成というのを、私どもぜひやらなくてはいけない課題の一つだと思っておりますけれども。今、例えばNASAでやっていらっしゃるように、私も初めてお伺いしたんですが、おもちゃをつくるということを私ども財務省に要求して通るかというと、なかなか難しゅうございますので、そこは、正直申し上げて、先生だからあえて申し上げますけれども、ちょっとお言葉甘えさせていただきますが、非常に厳しいのが実態であると。全般としてベンチャー育成は非常に重要であるということは、私ども省としていろいろとやらせていただいているところでございます。
  それから、もう一つ、この3ページ目の図で非常に重要だと私ども思っておりますのは、一番今、宇宙産業と申しますと、大体、一般の方は一番上の三角形のところだけを思い浮かべられるんですが、今、私がご説明申し上げましたとおり、利用の分野がこれからどんどん広がってまいります。こういった利用の分野を活用いたしまして、例えば今日もいらっしゃっていません石橋社長でございます、中川先生とか、そういった皆様方がやっていらっしゃるような分野に、どんどん、どんどんこれから企業が出てくるのではないかと。そういったところを育てていくというのも非常に重要な課題であると思っているところでございます。

【川崎部会長】  どうもありがとうございました。松本先生。

【松本特別委員】  京都大学の松本でございます。経済産業省さんが産業という立場から宇宙産業を育てるという観点で頑張っておられるということは、大変頼もしいことだと思っております。問題は、今、おもちゃの話が出ましたが、おもちゃは一例としておっしゃったので、実際には、宇宙産業といいますと、大企業の参加を、何社かありまして、そこへ行った注文が下の方へ、中企業、小企業へとお金が流れていって、技術を結集するという形が実態だろうと理解しております。
  私が経済産業省さんとして今後取り組んでいただきたいのは、既存の分野は非常に難しいと思うんですけれども、これからいろいろ。開発というような話もちょろっとされましたが、それに限りませんが、いろいろな新しい分野で、中小企業さんにコンペのようなチャンスを与えて、厳選をして、補助するというようなことをお考えいただいた方がいいのではないかと思うんですね。おもちゃは確かに難しいとおっしゃったのは、それなりの理由がおありだろうと思いますけれども、それ以外に固有の技術を持ったところはたくさんあるわけで。東京だけじゃなくて、東大阪の方にも随分技術を持った会社はおられますし、そういったところをフルに利用すると。
  それから、もう一つは、これはぜひお願い事でございます。もう一つは、リモセンの話、これはいつも資源探査衛星のことは、毎回、経済産業省さん、計画調整部会のときから言っておられるんですが。今、ご質問も出ましたけれども、どう使うのか、誰が金を出すのかという話で。これ、日本で、先ほど中国と石油の探査を一緒にやってうまくいったというお話がございましたが、やっぱりデータをどんなふうに使うかというポリシーを、これは経済産業省さん一省ではできないと思いますけれども、どんなふうにして日本の国民にそのフィードバックをかけるかと。もちろん企業を通してフィードバックというのも大きなファクターではありますけれども、ポリシーがないと、結局データを使ってくださいと。ただで配るというのはいかにも能がないというような気がしますので、やはりどうやるかということは、これからもう少しコンセンサスを得てやっていただきたいと。
  前にも同じことを申し上げましたけれども、これ、非常に重要だと思うんですね。国民から宇宙をサポートしてもらう意味では、これは一つの重要な、言ってみればソフトな外交手段と言ってもいいかと思うんですけれども。その点はどんなふうにお考えか、もし時間ありましたら、お答え願いたいんですけれども。

【川崎部会長】  今の松本先生の後段の方のお話は、中間整理のところでまた改めて全体像として議論をしていただきたいと思います。これは既に経産省のみならず、環境省、それから、国土交通省、農林水産省の方からも、アーカイブというようなことでいろいろご議論があったかと思いますので、まとめてお話ししていただこうと思いますので、前段の部分について何かあれば、経産省さんの方から。

【経済産業省宇宙開発室滝澤課長補佐】  済みません、私の認識では、ちょっと後段についてもお答えした方がいいかと思いますので、2つお答えさせていただきます。
  まず、ベンチャー、そういった中小企業育成のためのファンディングのお話でございます。これは今、この場で私が申し上げるとなかなか難しゅうございまして、課題としては私、個人といたしましても十二分に認識をしているところでございます。そこでお許しをいただければと思っております。
  後段につきましては、今、この場で、委員長からもお話があったとおり、ご議論いただいているというのは重々承知しております。それから、さらに、総合科学技術会議に宇宙開発利用専門調査会というのもできております。ご案内のとおり、内閣府は、各省の上に立って、すべてをすべからく調整する、資金配分を含めて調整するという役割を担っております。そこの審議会でご議論いただくということになっておりますので、こういった場でももちろんそうでございますし、そういった各省を取りまとめる場でも、今、議論が進んでいるということでご理解をいただければと思います。

【川崎部会長】  よろしゅうございますでしょうか。それでは、この言い方は少しおかしいのですが、推進側からのお話、そして宇宙開発を中心にやってこられた方のお話、及び、宇宙開発を利用して、様々な産業分野等に利用しようという立場からのご議論をこれで終わります。
  前回、最後の時間で、委員会としての今後の宇宙開発利用についての考え方というようなものについての素案を提示いたしましたが、本日は、利用部会として、現段階までのいろいろのご議論及び関係各省からのヒアリング等を通じまして、どんなふうに私どもの部会が報告としてどんな形のものを想定したらいいかということについて、取り急ぎ事務局の方で案をとりあえずまとめてみましたので、後半の1時間ほどをその議論にあてたいと思います。
  最初に、事務局の方から、それでは、中間整理の案についてご説明をいただきたいと思います。それから、なお、後ほどご紹介をしようと思いますが、この際、今、お手元に別途m資料番号のついていない形で、鈴木委員から1枚、資料を配付するということでお配りをさせていただいておりますが、これは後ほど事務局の方からの中間整理(案)が出た説明を終わりました後で、議論の中でご説明をしていただくと考えておりますので。鈴木先生、それでよございますか。

【鈴木特別委員】  はい。

【川崎部会長】  それでは、よろしくお願いします。

【宗永室長】  それでは、お手元、利用6−3、これまでの議論の中間整理(案)という資料に沿ってご説明させていただきます。この資料は、今、部会長の方からお話がありましたように、これまで第5回までの利用部会のご議論、各省庁さんのプレゼンテーション、また、今日の前半のプレゼンテーションを踏まえつつ、事務局でまとめたものでございまして、この後、この場での議論をいただくとともに、その後も引き続きましていろいろコメントをご提案いただきながら、報告にまとめていくための、いわば最初のたたき台というようなものとしてご理解いただければと思います。
  まず、1枚めくっていただきまして、2ページ目でございますが、まず最初のポイントといたしまして、宇宙利用推進の必要性について書かせていただいております。
  まず1点目は、現在、宇宙利用というものは、人工衛星、宇宙ステーション等々というものがこれまで進んできておりまして、ある程度、社会へ浸透しつつあるという認識が1点目でございます。
  次に、しかしということで、これまでの宇宙開発、技術開発、高度な技術開発が必要とされるということもございますが、これまでは、特に開発それ自体が目的ではないかなというような感じのものが多かったというような認識をしております。
  すなわち、利用といいますのは開発に付随すると、付随したものであるという考え方が強く、利用と一体となった宇宙開発利用のシステムとして開発を推進したという例は、初期の頃、具体的な利用が見込まれました通信放送気象といった分野に限られていたのではないだろうかということでございます。
  3点目、一方でございますが、宇宙開発は依然として非常に大きなリソースを必要とするということでございます。また、現在の国の財政事情、また、国民へのアカウンタビリティといったような状況を踏まえますと、今後、宇宙開発利用を積極的に推進していくためには、この宇宙開発の成果が、利用を通して新産業の創出でありますとか、災害の軽減等、国民生活に直接反映していくということが強く求められているものと認識しております。
  4点目でございます。そのために、宇宙利用の社会への一層の浸透を図るため、利用に係わる関係行政機関、地方自治体等との連携を強化し、効果的な利用システムの構築を図る必要があるということが、利用推進の必要性のスタートラインになると思っております。
  また、従来、宇宙利用に消極的であった分野においては、具体的な利用方法等の開発を進め、利用ニーズを発掘していくと、将来を見据えて発掘していくということも重要であろうと考えております。
  次の3ページ目に進めさせていただきます。一方、宇宙開発利用はこれまでの測位、気象等の例からも明らかなように、衛星だけで完結するものでは決してございません。そういう衛星等から得られる情報データの解析等を通じ、地上の利用システムとして増殖的に広がっていくということが期待されるものでございます。したがって、このような利用が利用を呼ぶ増殖段階まで持っていくための方策というのが極めて重要であろうと認識しております。
  次に、国際的な観点でございますが、一つには、国際的に衛星通信、放送等の宇宙利用ビジネスは、現在グローバルな競争環境下にございます。かなり厳しい競争が進められております。常に、コスト、品質、市場投入までの期間などについて、国際競争を念頭に対応する必要があるということが一つでございます。
  また、別の国際的な観点でございますが、地球観測や国際宇宙ステーション利用等の分野におきましては、世界全体として宇宙の開発利用を相互補完的に行っていく、拡大していくという観点から、国際的な協調や協力への要請が高まっていると認識しております。
  以上、2ページ、3ページ目が、この利用推進にあたってのスタートラインといいますか、必要性の認識でございます。
  4ページ目に進めさせていただきたいと思います。4ページ目から3ページにわたりまして、前回、前々回及び本日も含めまして、各省庁さん、また関係の方々からいただいたプレゼンテーションをもとに、各分野の現状について整理させていただいております。表は、左端が利用分野ということで、この分野の分け方はいろいろご議論あろうかと思いますが、とりあえずはプレゼンテーションに沿った形で事務局の方で整理しております。それを受けて真ん中で利用の現状について述べ、また、右端に利用の成熟度ということを書いております。これにつきましては、◎、○、△とつけておりますが、それは次の7ページ以降のところで若干説明させていただきたいと思っております。
  まず、利用分野、地球環境モニタでございますが、全地球的な森林の変化、海洋の基礎生産量、エルニーニョ現象のメカニズムの解明、オゾンホールや温室効果に係る気体成分の定量的把握等において現在または今後の貢献が期待されておるということでございます。
  また、熱帯降雨の観測、陸域・沿岸域の環境観測等が実施されております。
  一方で、この観測技術の成熟や各機関共同による定常的な観測、環境施策への貢献が今後とも求められているといった状況であると整理しております。
  次に、国土管理・災害監視でございますが、国土管理では、環境管理、施設管理、国土計画、地図整備等での利用というのが検討されておると。また、災害監視として、地震、火山、斜面災害、台風、洪水等での利用が、これもまた検討されておるということで、今後の利用に当たっては、観測データの配信時間の短縮であるとか、観測データの蓄積、配信、管理の一元化といったようなことが求められている状況であると整理しております。
  次に、農業・農地の観点でございますが、農作地の有効利用のため、収穫量予測等を目指す研究開発が実施されておるという状況でございます。
  今後、公的サービスとしての安定した衛星データの提供が必要であると整理させていただいております。
  次の5ページに参りまして、航空管制でございます。運輸多目的衛星、MTSATの導入により航空路の容量が増大していくという状況でございます。また、このようなことで増大する国際線需要に対応していくということでございます。
  言い忘れましたが、先ほどの4ページ目の利用の成熟度は○と。この5ページ目のものについては◎と印をつけさせていただいております。
  次に、気象観測でございますが、気象衛星というのは、台風等、天気の現状把握をかなり幅広く利用されておりまして、社会に広く利用されておるという状況でございます。
  また、運輸多目的衛星によって、気象予測の更なる精度向上といったものが期待されております。また、静止気象衛星の広域性を生かし、アジア太平洋諸国で、これも現に利用されておるという状況でございます。
  情報通信でございますが、これも広く、社会に深く浸透しておるという状況でございます。
  さらに、高度情報通信ネットワークの形成に向け、さらに高度な衛星技術開発が求められているということで。
  また、総務省さんからのプレゼンテーションにありましたように、情報通信インフラの特性に合わせた法令、技術基準の整備、財投出融資、助成金制度の整備といったものも順次、逐次なされておるという状況でございます。
  今後ということでございますが、次世代技術開発というものにつきましては、利用研究(アプリケーション実験)と二人三脚で実施していこうというような検討がなされておりますし、また、衛星通信の広域性を生かし、アジア太平洋諸国と国際的な共同利用実験を実施するという計画も検討されております。
  6ページ目に参ります。利用分野のところに、宇宙実験、教育活動等の有人宇宙活動を活かした利用ということで、念頭には宇宙ステーションの利用がございます。宇宙ステーション、何分、多目的な実験施設でございますので、様々な観点での利用があると考えております。その中には、本日ご説明ありましたように、微小重力環境等を活かし、基礎的な科学研究、先端的な技術開発を実施するというものが計画・検討されております。
  また、最近、近年になりまして産業化を指向した応用研究、またステーションと地上を結ぶ教育イベント、CM撮影実験等、有人宇宙滞在を活かした様々な、多様な利用分野を拡大するといった試みがなされております。
  さらに、宇宙実験への参加呼び掛けにより、アジア太平洋諸国へも利用拡大といった試みもなされております。
  次に、宇宙旅行でございますが、宇宙旅行の実現可能性について、この部会でもプレゼンテーションなされていましたように、研究者、技術者、さらにはより広い関係者の参加によって検討がなされておるといった段階です。採算がとれるといった宇宙旅行の企画をするためには、輸送コストの2桁ダウンといったようなものが必要ということがあると聞いております。
  また、次に、宇宙太陽発電でございますが、これにつきましても、発電システムのための要素技術開発が実施されておるという状況でございます。多くの技術開発がありまして、各種の実証機会が今後必要であると整理させていただいております。
  ただ、事業化するためには、今後、採算ベースに乗せる必要があるということで、この要求条件を満たす再使用型輸送の開発が必要ということで、この最後の宇宙旅行、宇宙太陽発電につきましては、利用の成熟度、△とさせていただいております。
  次の7ページに進めさせていただきまして、推進にあたっての考え方でございますが、宇宙利用、宇宙開発利用に関しましては、やはり時間軸をある程度、ある程度というか、意識した整理が必要であろうと考えておりまして、先ほどの表にありますような利用の成熟度ごとに推進の考え方を整理する必要があるのではないかなということで、7ページ、8ページ、9ページにわたりまして整理させていただいております。
  まず、7ページでございますが、先ほどの表で成熟度が◎という印をつけさせていただいたもので、普及段階にあるものでございます。すなわち、既に宇宙利用の恩恵が一般国民、社会にまで及んでおりまして、今後、より高度な利用に向けた推進が求められていくといったような分野でございます。具体的には、情報通信でありますとか、気象観測、航空管制等の分野が該当するのかなと考えております。このような分野につきましては、5年程度の短期的、中期的視野に立ちまして、サービス内容の向上、商業実用化を目指した次世代技術開発と当該技術の利用方法の研究を行うということが必要であろうと考えております。
  この普及段階にあります宇宙利用の様々な活動は、既に事業化しておるということから、その研究開発は常に利用者側、ユーザーや顧客と二人三脚で進める必要があると考えております。このため、当面の利用者の意見を汲み取ることや、さらには、長期的な技術進展を見通した上で、そういう利用とのマッチングを図ったような開発を行うといったような、そういうような利用と両立するような努力が必要であると考えております。
  また、政府と民間の役割分担といたしましては、政府が利用の一歩先を行くような技術開発、リスクの高い技術開発や制度整備等の環境整備を行いまして、民間側が成熟した技術による機器開発や衛星運用など、商業サービスによる社会への浸透を行うといったような役割分担かなと思っております。また、標準化活動のように、政府と民間が共同で行うといったものもあろうかと思います。
  このような事業化が進む情報通信分野は、国際競争が激化しておりまして、本分野の利用を推進することは、我が国の国際競争力強化にも資するものであると考えております。
  次に、8ページ目に進めさせていただきまして、先ほどの表で成熟度を○とつけたような分野でございますが、いわば普及段階へ移行する段階にあるといったようなものでございます。これまでの関係行政機関、研究機関等における技術開発やインフラ整備の結果、今後の実利用のめどがつきつつある、もしくは実利用が広がりつつあるというような状況、段階のものでございまして、適切な推進方策を講じることで、行政の実利用段階や民間における利用段階への進展が期待できるというようなものでございます。
  対象といたしましては、地球環境のモニタでございますとか、国土管理、災害監視の分野、農業・農地の観測、宇宙ステーション利用といったものが該当すると考えております。
  このような分野に対しましては、10年間程度の長期的視野に立ちまして、実利用可能な水準までの情報、その量の確保と、その密度や質の向上といったようなものを進め、また、解析技術等の向上、利用方法の高度化、利用経験の積み重ね等を行うことによって、先ほども申しましたが、地上から宇宙にわたる統合的な利用システムの構築を図るという観点が重要と思っております。
  また、開発機関と利用機関、あるいは政府と民間の役割分担を明確にした上で、両者共同で利用を促進する体制を確立するということが重要であろうと。また、その上で、利用の事業化を進めるということが必要であると考えております。そのため、開発機関側もしくは政府側として利用促進に必要な制度整備等を図る必要があろうと考えております。
  その結果としてですが、開発側もしくは政府側主導の段階から、利用側もしくは民間側主導という段階へ、その間、その両者の協働といったようなプロセスも経ながら、そういうような移行を円滑に進めていくということが重要であろうと考えております。
  地球観測の利用推進におきましては、国際的な観点でございますが、諸外国の保有する観測データをも共同して活用していくといったようなものが必要でございまして、国際的な協力、協調が重要になると考えております。
  9ページに進めさせていただきます。先ほどの表で成熟度を△と整理させていただいたものでございますが、これを潜在段階と呼ばせていただいております。現時点では、宇宙開発関係者もしくは宇宙開発関係者を中心としたチーム、コミュニティにおける検討にとどまっておりますが、今後の技術開発の状況や社会情勢によって、今後、利用の進展が考えられるものというものでございます。
  対象といたしましては、いろいろこれにつきましては、将来の可能性という意味からいって幅広いのでございますが、先ほどの表では、宇宙旅行、宇宙太陽発電等といったようなものが該当するのかなと考えております。
  こういう分野につきましては、30年間程度の長期的といいますか、超長期的といった長期的な視点に立ちまして、基礎的な技術開発や先端的な技術実証等を行っていく必要があると考えております。
  さらに、技術というものはいきなり準備するというものは困難でございます。したがいまして、技術の断絶を起こさない、継続的に発展させるという観点から、要素技術開発や軌道上の技術実証の検討等の研究開発を継続していくということが必要であろうと考えております。
  さらに、将来適切な時期におきまして、そういった技術開発の努力の成果を評価いたしまして、社会情勢等も勘案しつつ、宇宙利用の事業化へ進むか否かを判断して、適宜進めていくという考え方であろうと考えております。
  10ページに進めさせていただきまして、今、3.のところで整理させていただきました考え方に基づきまして、宇宙利用の推進方策、当面とるべき方策といったものでございますが、3つの段階、先ほどの言葉で言いますと、普及段階、普及段階の移行段階、さらには潜在的な段階ということでございますが、そのうち、普及段階への移行期を迎えている利用分野につきましては、早急に普及段階への進展を図る、そのための方策をとっていく必要があると考えております。
  したがって、ここでの4項では、主としてこの普及段階への移行期を迎えつつある利用分野につきまして、問題点及び対象方策について事務局の案として書き並べさせていただきました。
  まず1点目でございますが、開発と一体となって宇宙利用を促進する仕組みというのが、これまでの宇宙開発利用におきましては弱体であったのではなかろうかという問題意識でございます。これに対処するために、開発と利用が一体となった、統合的なシステム構築といったものを行うための仕組みと、こういったものを確立する必要があろうということが1点目でございます。
  また、宇宙利用の市場開拓的機能、営業的といいますか、市場開拓的といいますか、企画といいますか、そういった体制につきましても、そういう利用側の省庁、関係機関と連携しつつ整備する必要があるのかなと考えております。
  さらに、その上で、宇宙から得られる各種情報の統合的な利用システムの構築、先ほどお話ありましたような地球観測データのアーカイブ等、そういう支援をするシステム、利用するシステムですね、というのを構築する必要があるのだろうと考えております。
  2点目でございますが、開発(もしくは政府)側と、利用(もしくは民間)側の協働体制を構築するためのガイドラインでありますとか制度等が、現在整備されていないという問題意識でございます。これに対処するため、宇宙機関とユーザーが協働して利用推進の活動を行い得る枠組みを整理する。具体的には、例えば費用負担でありますとか、権利の帰属、協議の場の構築といったようなことでございます。
  また、費用負担については、利用の進展に伴い、段階的に利用者負担率が増大していくよう設定します。利用者負担率が増大というのとあわせて、指導的な立場が利用者(もしくは民間)側に移っていくということだろうと思います。
  また、権利の帰属については、利用(もしくは民間)側への移転や特許化、事業化といったものがスムーズに行われるような制度構築が必要であろうと考えております。
  最後の11ページに進めさせていただきまして、3点目でございますが、開発(もしくは政府)側と利用(もしくは民間)側が協働で具体的利用を先導・牽引するモデル事業がこれまで、現状、不十分ではないかという問題意識でございます。そのため、利用具体化の成功例を両者協働してつくってみせる実証プロジェクトといったものを、幾つかの分野で実施していく必要があるのではないかなと考えております。
  4点目でございますが、利用側における自己増殖的利用拡大を促すための情報発信拠点が未整備ということで、この部会でも、いろいろ繰り返しご指摘を受けている点でございますが、そういったものを整備しなきゃいけないなという問題意識でございます。
  そのため、宇宙利用のためのポータルサイトの整備や、情報提供機能の整備といったことをする必要があるのかなと考えております。
  また、宇宙利用のための技術的な支援機能、宇宙を利用するために、様々な技術的なハードルをなくすといったことでございますが、そういった支援機能の体制整備についても必要であろうと考えております。
  あくまでこれは、先ほども申しましたように、議論のためのたたき台という整理のものでございます。これに書いてあることもないことも含めまして、幅広くご議論いただければと思います。
  長くなりましたが、すいません。

【川崎部会長】  ありがとうございました。
  それでは、残りのお時間で少し議論をあるいは質問等、深めさせていただければと思いますが。森谷委員。

【森谷特別委員】  宇宙開発は、利用分野が非常に多岐にわたりますし、利用目的もいろいろありますので、その関係を整理していただくといいと思うんですが、利用の基本的な目的、私なりに今、整理して、5つ挙がったんですが。
  まず、社会、生活、産業、この場合の産業というのは農業とか漁業、主として国内のそういう分野に役立つというのが第1。それから新産業の創出、これは今日のレポートにも上がっておりました。3番目が国際社会への貢献。4番目が産業の国際競争力の強化。5番目が、未来的な科学技術進展への寄与と、私なりに5つに分けてみました。
  これを見ますと、例えば気象観測は、これは当然ながら生活に直接役立つという面と、国際社会への貢献ということも可能性あります。情報通信は、これも生活に役立つわけですが、これは産業の国際競争力の強化に非常に深く関係してくるという、マトリックスの形になると思うんですが、そういう表をつくってもらうと、何が何に関係しているのかと、よくわかると思いますので、よろしくお願いします。

【川崎部会長】  どうもありがとうございます。
  松本先生、どうぞ。

【松本特別委員】  今日、どういう議論があるのかなと思って、期待しながら参りました。一応、事務局の方でそのまままとめていただきましたので、これに沿って議論をやると思うのですが。先ほど経産省の方もおっしゃっておられましたが、この委員会と、総合科学技術会議で別に議論がやられているようであると、その辺の兼ね合いによって、この委員会がどこへこのまとめを持っていくのかはかなり違うと私は思っております。どなたかからも意見が出ると思いますが、この利用部会が適当かどうかわからないんですけれども、私もせっかく委員としてお招きき頂き、宇宙に関することを議論させていただいているわけですから、それを忘れて、ちょっとしばらくは発言をさせていただきたいんですが。
  宇宙の利用というのは、当然、国民のためにやるわけで、最終的には国民のためにやるわけですけれども、宇宙政策というものは一体どこで決まるのかと。何を中心に置くのかによって、評価は大分変わってくると思いますし、今後のやり方も変わると思うんですね。
  例えばここにも、今、5点、うまく森谷委員の方からおまとめいただきましたけれども、そういった観点は非常に重要だろうと思いますが、一番大元にある、なぜ宇宙が日本にとって必要かと。つまり国策としての宇宙の位置づけというのを、もうちょっとこの委員会でこのレポートに最初に書いて、書き込んでいただきたいという気持ちが非常に強くあります。
  つまり、例えばこの◎、○、△と成熟度について、割合的確なご判断を事務局はなさっていると思いますが、では、このままずっと続けていったら、国の政策として国が強く生き延びていけるかという、こういう観点からの視野が若干欠けていまして。国際協力に資するとか、地球環境問題はエルニーニョその他解明しなきゃいかんとこう書いてあるんですが、これはずっと言われておりまして、どこまで解明したら国策として強い国になるのか。その先々までやはり考えてもらわないと、たくさんの研究者がいて、たくさんの成果が出ている。だから続けましょうというだけでは、これからはだめだと思うんですね。
  ですから、その観点で言いますと、例えば地球環境モニタ、国土管理、農地観測、国土管理とか災害監視とか農地というのは、これは国内の問題でございまして、宇宙を利用して非常に重要な問題で、貢献も大きいと思います。
  それ以外に地球環境となりますと、途端にややこしくなりまして、COP3から始まりまして、今、COP7まで参りましたが、あの問題でCDMという考え方がございますよね、クリーン・ディベロップメント・メカニズムですか。要するに何か日本が技術で貢献をすれば、日本の炭酸ガスの排出量がかなり助かるといいましょうか、交換できると。それに宇宙が利用できないかということも非常に大きな問題で、その定量化をこの地球環境モニタに持ち込まないと、ずっと続けていくということが非常にしんどくなるだろうと思うんですね。学問だけですと、これは無限にお金がかかります。
  同じくその視点は宇宙太陽発電策に書かれておりませんで、これは炭酸ガスの抑制という観点から重要であろうと私は認識しておりますけれども、CDMのメカニズムという点をやはり書き込まないと、将来、多分、正当な評価ができないと。つまり、経済競争力だけで宇宙開発をやっていいかどうかというのは、甚だ私は個人的には疑問でございまして、国策としてやることが、何%か、これは人によって考え方は違うと思いますが、私は30%ぐらい国策として推進すべきであると。せめて30%、できればもう少し考えてもいいかと思いますが。
  日本が、資源、食糧、エネルギーで、どうせ世界中が50年もすれば、3倍近いエネルギー、食糧が要るようになるわけですよね。それが日本に十分に入ってくるという保証はどこにもありません。そういった意味で、この宇宙利用あるいは宇宙開発の立場を国策として取り上げるかどうかということが一番基本にあると思うんですね。日本の貿易立国も先々どうなるか、見通しも暗いですけれども、やはり高度な技術を活かして、領土とか領空、領海に左右されないこの宇宙技術こそがかなり有望ではないかと私個人は考えております。
  そういった意味で、ここに書いてあるものは、みんなそのポテンシャリティの高いものでございますけれども、その位置づけを整理をどこかでぜひ、マトリックスの中につけ加えていただきたいと思うんですね。さもなければ、なかなかお金は取れないし、宇宙開発が先々シュリンクしていくと。シュリンクするんだったら、これは多分大きなデフレスパイラルに入って、全滅してしまうと思うんですね、競争が激しい世界ですから。やはり国として宇宙開発をどうとらえるかという観点からの書込みが、各項目について必要だろうと感じました。

【川崎部会長】  貴重なご意見ありがとうございます。今の松本先生と森谷先生の方から出た意見については、これはあくまでどちらかというと紋切り型のフレーズで書いてあるので、全く修飾語があまり書いてありませんし、理由づけも十分書いていないので、ややそういうふうに読まれたと思うんですけれども、もう少しその辺については、これから深めていきたいと思うんです。
  ただ、宇宙政策を国策としてやることについては、やや鶏と卵の議論になるところがあるんですね。利用がこれだけあるから、やっぱり国家政策としてやらなきゃいかんというのと、宇宙をやらないと国は滅びるよと。だから、国家政策としてやる。やると、これだけいいよというのか、その辺はなかなか難しいところはあるように思いますが……。

【松本特別委員】  私はね、その後者の方の論理と前者の論理をやっぱり冷静に判断する、これも宇宙開発委員の先生方が判断されるのが適当かと思いますけれども、どう考えても、30年先の日本の状況の輸入輸出のバランス、資源のあり方と考えますと、苦しくなる方向しか答えは私は見つからないんですけれども。そのときに、宇宙がどういう役割を果たせるかということですね。先に宇宙の利用が高まっているから宇宙を使うよというのではなくて、ないものもつくっていかないといけないと思うんですね。そういう視点でぜひ議論を進めてほしいなという希望を私は持っております。

【川崎部会長】  ありがとうございます。それでは、古濱さん。

【古濱特別委員】  今の議論とも若干関係するんですが、広い意味でのナショナルセキュリティーといったことが、欠けているのではないかと思います。例えばGPSですが、今、日本はGPSを使うことでは世界一だと思うんですね、カーナビなどで。ヨーロッパは、ガリレオという、次期GPSみたいなものを計画しております。論点は課金の問題です。アメリカのGPSは今、無料で使えますけれども、ヨーロッパのシステムは、将来、課金する部分と課金しない部分をつくろうとしているわけです。それで、課金されると、GPSも課金することを検討するわけで。そうなってくると、日本はカーナビを有料で使わなくちゃならない事態も起こるかもしれない。起こらないかもしれないですけれども。
  そこで、日本も基本的な部分の技術開発をしておいて、第三世代のGPSを作るときには、それに加担できるような、声がかかるようなレベルに技術を高めておかないといけないと思うんですね。
  これは、ここの整理の国とユーザーの仕切りだけではできない。国がポリシーとして先行的に研究開発をやらないと、利用段階の技術開発はユーザーが実施するという仕切りの中では、なかなかできない。国が国民の利益を先取りする形で計画をつくって、先行投資をして、研究開発をやるべきものだと思います。
  ですから、利用の部分も、そういったナショナルセキュリティーを、広い意味のセキュリティーですが、国がポリシーとして持って研究投資をする、その部分が必要ではないかと思うんです。
  第三世代のGPSについて言いますと、第三世代のGPSを日本単独で持つということには、私は賛成はいたしません。世界に3つ以上システムがあってもしようがないですから。ローカルな、付加的なものはあっても構いませんけれども。トータルシステムとしては、共同でつくっていくべきだろうと思っています。
  以上です。

【川崎部会長】  どうもありがとうございました。
  どうぞ、中野先生。

【中野特別委員】    今のセキュリティーの話は非常に僕も大賛成でして、さっき伺いながら、消極的な内容になっているなという気が非常に強いんですけれども。例えば利用の成熟度、気象観測とか情報通信の利用の成熟度とありますが、確かに成熟してはいるんでしょうけれども、やっぱり同じ衛星を二つとしてつくってはいけないわけですよね。というか、遠慮してつくらないようにしているわけですよね。こういう状況で、本当に安心して次へ次へと回転していけるんだろうかと。やっぱりどこかに気を使いながら、また次の衛星をつくると。今まで、同じ衛星をきちっとつくってっきたなんていうのはもう過去の話であって、今はもうあちこちに気を使いながらやっているわけですね。それで、こういう成熟度を◎にできるのかなと。次のことを考えると、不安でしようがないですね。
  今回のMTSATは1個そのまま落っこちたから、同じのをつくるということになったんでしょうけれども、それに関してもまた別の問題が発生してきているわけですね。それで遅れているんでしょうけれども。こういう状態というのは、僕は、どこの技術派遣とは言いませんけれども、やっぱりとても安心して◎をつけられるような状況ではないと思いますね。こういうところは、先ほど古濱さんがおっしゃったように、やっぱりある種国策として技術を進めなきゃいけない部分もあると思うんですよね。そこを何か消極的にとらえて、利用が伸びるからどんどんやりましょうなんて、何か字面だけで並んでいる感じで、これでいいのかなという気持ちが非常にありますね。
  ましてや、太陽光発電なんていうのは、僕はもう大賛成ですし、どんどんこういうもので引っ張っていくべきだと思うんですね、ある種の旗を上げて。こういうものを旗にして引っ張っていくことは重要だろうと思うんですが。将来、適切な時期にという、この適切なというのもどういう意味を含んで、最初から及び腰になっているようなところがあると思いまして。またも基本戦略部会の蒸し返しかという気がしますし。こういう消極的な態度というのは、僕は、やっぱり国民は離れていっちゃうんだろうなと思いますね。
  今回の衛星、MTSATの件にしても、恐らく内幕をみんなが知ったら、やっぱり何だということになって、また熱が、今でも冷め切っているのに、ますます冷めるだろうと思いますね。だから、全体としてちょっとニュアンス違うのじゃないかなというのが印象としてあります。

【川崎部会長】  どうもありがとうございました。ニュアンスが違うというのは、結局どういうことでございますか。要するにもっと国が前に出ろという意味で……。

【中野特別委員】  そういうことですね。引っ張る部分も必要ではないかという。利用があるから進んでいます。では、これでいいですという感じになっちゃいそうで。

【川崎部会長】  ちょっと誤解があるようなんですが、実は利用の成熟度というのは、いろいろヒアリングなりプレゼンテーションの中で、いわゆる実利用に既に入っている、実利用をするための利用促進策が省として、行政としてとられていると。そういうのが◎なんですね。○というのは、利用の端緒で、例えば農林水産省は、ある研究所と北海道、市との間での共同としてやられている。部分的に走りが行われているだけで、まだ利用制度という形で、全国農協にそういうのを流すとか、各都道府県の農事試験場にそういうデータを供用して使うとかいう、そういうシステムは全くできていませんという。国内利用システムができていないかできているかというところで、◎と△と○と、そういう意味なのであります。進める進めないという話とは別なんです。そういう意味です。

【中野特別委員】  ええ、それはわかっています。

【小田原特別委員】  まとめ方という意味で、今、中野委員おっしゃったように、例えば前回おっしゃった「ひまわり」の件とかございまして、社会へ浸透しつつあるという最初の文言ですけれども、浸透しつつあるというよりも、浸透しちゃっているんですね、もう日本は。そうしたときに、先ほどの成熟度とかの切り口でいろいろ議論になっていますけれども、そういう問題ではなくて、私ですと、例えば4つに区分けしたんですが、例えば安心社会、この構築のためにはといったら、既に上がっている衛星は、これは国策としてやらなければいけない。つまり、国民がその恩恵をこうむっているわけですから。それをなしにするようなものを国としてやってはいけない。それが安心社会。
  それでは、次にはといったら、このいわゆる書き方の中に教育と出てきていますが、教育というのは、そんな一過性のものではできるはずのものではないわけです。そうすると、こういうものをとらえるときには健全社会、これをどうするか。
  それと推進。推進というのは、今進んでいるものをもう一つアドバンスする社会。
  それと開発社会。例えば太陽光発電、これは、30年かかろうが、50年かかろうが開発するんだというような、こういう4つの切り口。そうすると、事務局に小田原はまた言葉の遊びをやっているなんて言われるかもしれませんが、こういう4つの切り口で整理されて、それでは、国民が安心する社会のためにどういうものがあるか。既に衛星は上がっています。カーナビも必要です。それでは、これをどこまでやるんですか。そうしたら、文部科学省だけで追えない部分がでてきますので、それは提言として出せるはずなんです。したがって、成熟度とか、あと10年たてば実証できるとか、そのフレーズはどこかの省に任せればよくて、文部科学省たるものは、やっぱり国民あるいは若い人たちが育っていく中でどうなるかというフェーズを出していかなきゃいけないと思っております。
  だから、今言ったような安心、健全、推進、開発というような切り口で事務局が整理されたものを再度されると、多分、いろいろな委員の先生のご意見もうまく消化できるのではないかなと。そうしたら、国際協働というのはどこに入るんですかと。安心ですか、健全ですか。多分、健全じゃないですかというものですよね。そうしたら、アメリカにくっつくことが健全ですか。いや、健全じゃない。そうしたら、開発にすればいいわけです。
  だから、そういうような切り口をしていただかないと、先ほど私が井口先生にお伝えしたように、今、NASAは、例えば宇宙エレベーターなんていうののファンディングをやっています。それは何かといったら、静止軌道までエレベーターで衛星を持っていって、そこから飛ばしましょうという世界です。どう考えたって、すごい世界。しかし、そこにかかわる材料ですと、ナノテクのカーボンのあのチューブを使いますとか、そういうものを細かいことがどーっと出てきてファンディングできる。つまり、こういう開発フェーズというものをちゃんととらえていただいて、開発というのは気違いじみていてもいい、100年たってもいい、とにかくでかいことを出してくださいというようなことをやっていただければ、そうすると、変に微小重力がどうだ、真空がどうだとかとね、偉い理事の方がおっしゃるような世界ってできないはずなんですよ。だから、そういうものを開発フェーズに置けるような、それが国策というものだと私は思っておりますので、そういう切り口をやっていただくと助かるなと思っております。

【川崎部会長】  ぜひ重大な構想を一つお示しいただけると、我々、構想力がやや不足しているところがあるかもしれませんので、この部会で例をお示しいただけると、大変ありがたいと思っておるんですが。具体的にやはり一つのシステムとして大きいコンセプトを、それは皆さんのご意見にしたいんですが、太陽光発電しかないのか。ほかにもあるのか。ほかと比較して、比較考量で優先順位はどういうふうになるのかということまで、やはり部会で出す以上は考えさせていただかないといけないので。これはいいご意見をいただきましたので、各委員の方からも、またお正月休みのお年玉ではございませんけれども、お考えいただいて、ご提案をいただければ、大変ありがたいと思います。
  それでは、ちょうど難しい話になったんですが、これは評価と関連をするようなので、鈴木委員の方から。

【鈴木特別委員】  評価の前に幾つかなんですが。教育とかそういう分野に入るのかもしれませんが、宇宙が今、ここでいろいろな各省庁の方が発表してくださった以外に、多分、それ以外で、私たちが一番関係したり、何かこう思うのは、芸術とか、感性とか、ひらめきとか、直感とか。歌とか、絵って、宇宙から生まれているものはたくさんありますよね。何かそういう人間とか人類、歌とか踊りとか、何かクリエイティブなものというのは普遍性を持っているし、たとえ言語が違っても、神話も含めて、何かそこでそういうステージみたいなものもちゃんとあったらいいなという。
  例えば宇宙の色とか、音とか、においとか、あるかどうかわからないんですが、そういうものって何なんだろうと知りたい人っていると思うんですね。今、星を見て歌をつくる人も、絵をかく人もいると思うんですけれども。もっと、最近、NHKでずっと宇宙シリーズをやっているじゃないですか。もう見るだけでもひらめきがわき上がってくるような。それがビジュアルであんなに美しくて、すばらしいチャンスが、恐らくNHKでああいうふうにやるぐらいしかあまりなくて、いろいろなインターネット上にはあるんでしょうけれども、身近になってくるものがないということが一つ。
  それと、せっかく文部省と科学省が一緒になったので、教科書を、環境がそうですが、国語、算数、理科、社会とか考えたときに、ほとんど10年後もそんなに変わらないだろうというものと、日々刻々と変わっている人類の知があると思うんですね。ビッグバンというものが、私たちが何年か前に考えていたものとは全く違うという、吸い込むのではなくて、命を誕生させるみたいなところなんだとかね、そういうことというのは、全く知らないまま大人はもう大人になっていたりして。こういうことこそ、インターネット教科書というか、日々変化する教科書として挙げるとか、3年前刷ったものはもうさようなら。環境とか、特に宇宙物は必ずこれを使ってやってくださいねみたいな、サイト上で科学者たちが集まり、そして、とてもわかりやすい、そして使える最新のネタ。
  何でこれを思うかというと、縄文の発掘の問題で、あれは嘘本当がはっきりわかって、毎日ニュースでやっていますよね。教科書には古いまま載っているものもあると思うんです、既にね、回収するか、印刷し直すかありますが。それは、子供でも知っていますよ。「あれ、もう嘘だったって。へえ」なんて。でも、これはニュースでやってくれているからですよね。
  でも、ビッグバンに対する認識は知らないまま大きくなってきているというところがあると思うんですよ。新鮮な情報が行きやすいところと行きにくいところ。ミクロ、マクロというか、それは単に嘘とか本当だから、あれはとても発掘の場合は注目を浴びましたけれども、真実とか真理が日々新しくなっているんだというこの鮮やかな驚きをね、大々的にPRしながら、子供たちや一般の私たちにも目に触れたら、最もいい形で宇宙が私たちに触れてくれるんじゃないかなということを思うのですよ。
  私はイベントという言葉は好きではないですが、意識する日というのは、意識する時間、意識するきっかけ、宇宙のことを意識するきっかけというのは要ると思うんですよ。でも、宇宙の日ってないですよね(注:宇宙の日はある。9月12日)、みどりの日はあっても、あるとすれば、七夕のときも、まあ、毎年毎年同じことを言うじゃないですか。何か雨の日になったらどうのこうの。会える会えないとか。でも、そうじゃなくて、もっと宇宙のことをみんなで意識する日というのがあって、ネットワーク上で宇宙会議が世界で開かれるとか、そのときに、最も新しい教科書がサイト上に毎年1回、この7月7日に上げられるとかね、何かそういうような物語のあるような、未来神話のようなことが上げられないのかなと。
  必要性からこういうものを、今、必要性ということで挙げられていますが、必要じゃないんですよね。必要じゃないものから未来って生まれて、必要も発明の母だけれども、全く必要じゃないことに人間って時間を使って、だから生きることができるってあるじゃないですか。何かそこに意識を変えるようなことができないのかなということを思います。
  では、それは現実で何かといったら、まあ、まあ、このやっぱりインターネットというものが非常によく生きてくれるだろうと。やっぱりこのポータルサイトをちゃんとつくるということが要ると思います。前回と今回と、各省庁がいろいろな配付物と、すばらしい方たちが次々に言ってくださいましたが、これ、紙ですよね。私が思い出して、ああ、この切り口で、例えば石油という切り口で検索してみようと思ったら、めくってアンダーライン引くしかない。もちろんどこかのサイトにはこれはあるんだと思いますよ、宇宙、石油、スペースあけて何とかみたいな。でも、これが一堂に見られるチャンスが、ここの前回と今回で2回だけで消えてしまっていてもったいない。
  これこそがちゃんと構築されて、音声なり、動画なり、キーワードなりで、もうこんなブロードバンド時代にですよ、もう刻々と新しいものを上げて、何かニュースなり、事件なりという、未来神話みたいなことが、こういう会議から国民というか、私たちの中に普通にね、子供たちが、ああっと夢に見るような、未来や夢を見せるようなことがここから出なければ、何かけちけちしていますよ、利用というのがね。利用、とっても大事なんだけれども、そのためにはロマンがなくちゃ、この間毛利さんがおっしゃったみたいに、チャレンジャーであれという、それがなければ、必要性とチャレンジャーって意外に一致しないじゃないですか。何かそのことを強く思います。
  評価のことはもう何のこともないことで、そういうふうに俯瞰するときの何かのルーブリックというか、いうために、こんなものはお役に立ちませんかということを紙1枚、これは何にでも、実はこれは教育に使うためにつくったやつなんですが、何のためにみたいな素朴なところから、この1から10がある程度同じようなフォーマットがあって、そこにいろいろな省庁さんのがこう乗っかってくるとか、同じテンプレートで見ることによって浮き上がってくることとか、むだなこととか見えてくるはずだし。国民に知らせるだけじゃなくて、行って来い関係がちゃんとあるような、評価をどう活用するんだというところまで含めて、きっちりする必要はあると思う。
  そして、初めにも言ったけれども、この会議の評価はどうなるのだろうかということを思います。
  以上です。

【川崎部会長】  どうもありがとうございました。この会議の評価はどうなるかというのは、大変な問題ですが。今おっしゃったような感性とか、あるいは宇宙観とか、人生観とかというのがやはり、宇宙へ行かれた方と行かない人とでは差があるというのは、この間の毛利さんのお話でもおわかりになったと思うんですが。そういうことを全員がいずれ体験できるようになるのか、あるいは疑似体験あるいは映像での体験ということになっていくのか。そういうのはいろいろ考えられると思いますが。
  ただ、共通して、今おっしゃったお三方のお話では、やはりこの利用部会の報告として、もう少し国策として進めるべき、前向きの姿勢で、チャレンジ精神をどう組み込んでおくかということが共通のご意見だったかと伺っております。
  最初に、松本委員や経産省の方からもお話があったんですが、総合科学技術会議は総合科学技術会議でいろいろご検討になっているのは我々の方も十分承知いたしておりますが、私どもの方の宇宙開発委員会は、現在、文部科学省に属しているわけなんですが、文部科学省の設置法の中でうたわれていることは、いわゆる宇宙開発等利用についての取りまとめをやるような、総合調整をするというのが文部科学省の仕事になっております。ですから、それと宇宙開発委員会との関係が今のところまだよくはっきりしない点もあるかもしれません。そういう意味で、ここに出されている案の中で、推進策を文部科学省だけに限ったものとしてここでは記載しているのではない。したがって、関係各省がやはりこれらについては主たる責任官庁として利用の推進に当たっていただくことを期待をしている、そういうことも一応この中では考えておるわけです。現に文部科学省はこれから気象観測をやるわけではありませんし、これは当然、国土交通省の気象庁でどんどん考えていただく。問題は、その財源をどういう形で担保するかというのが、国策でやるというお話か、あるいはユーザーサイドの、同じ国費でもユーザーサイドの官庁が中心になってお進めになるのか、開発を担うべき宇宙開発事業団なりの予算の中でやるのかという、その辺はこれからのいろいろ議論のあるところだと私は理解しております。そんなところでよろしいでしょうか。

【松本特別委員】  ちょっと理解できなかったところが1カ所ございまして。宇宙開発委員会そのものは文部科学省の中にあって、私が古い知識しか持っていないのかもしれませんけれども、宇宙開発事業団の事業についてチェックをすると。そういうふうに2年ほど前に聞いたんですね。今おっしゃったことは、その下にある部会、この利用部会は宇宙開発委員会の下にあると考えてよろしいんですか。

【川崎部会長】  そのとおりです。

【松本特別委員】  その下にある部会は、文部科学省の枠を越えて、全省庁の利用に対してヒアリングをして、それでコントロールするんですか、何か聞くだけですか、どちらなんでしょうか。

【川崎部会長】  この利用部会は宇宙開発委員会の一つの部会として存在しているものです。宇宙開発委員会のマンデートは宇宙開発事業団のことについてやることになっております。しかし、その宇宙開発委員会はどこの省に属しているかというと、文部科学大臣の指揮下にあるということになっています。文部科学大臣の権限は、1月6日から施行された設置法によれば、宇宙開発と利用についての総合調整をやることになっているわけで、宇宙開発委員会設置法との間にはギャップがあります。
  私どもがここでやっておりますのは、そういう意味では、宇宙開発委員会として宇宙開発事業団の問題に関係する部分が一番重要なパートになります。しかしながら、だからといって、そのことと他の事業とが全く切り離された関係ではない限りにおいては、いろいろ関係省庁にお願いをすべきことがあれば、努力をしていただくようにお願いをしても差し支えないのではないかと考えております。これはあくまでそういう立場でございます。引っ張るとかどうこうということではございません。

【秋山特別委員】  今、委員長が日本の国策に合ったような利用分野とおっしゃいましたけれども、私は、やっぱり日本の国柄に合った利用分野ということをもう少し目線を低くして、今、皆様方の、先生方のお話は確かに非常にすばらしい高邁な話でございますけれども、やっぱりポテンシャルの高い分野の利用テーマはもうこれも大事でございます。しかし、それは時間がかかるわけでございます。今、我々は宇宙省庁の立場として考えるのは、全国の事業所650万、事業所があるわけです、個人も入れて。そうすると、その650万、事業所がある。これがもう本当に冷え切ってしまってもう大変な状況と、これは皆さん方ご存じだと思います。
  そういう中で、96%が中小企業、また個人事業所と、こういう事情の中で、もう製造業はどんどんどんどん中国あたりに仕事を取られてしまっている。今日の仕事が、明日来たら、もう中国へ行ってないとか、そういう事情ということもご存じだと思います。
  そういうわけで、もう我々はどうしても目線の低い分野での利用分野というのを考えをしてございまして、その点をやはりテーマとしても、新産業創生分野というものを何か設けていただきたいなと。それは具体的に言いますとどういうことかと言いますと、例えば私どもの会社なども、今、なるべく経費節減ということで、研究開発室の屋上に、今年の7月ですか、太陽光とそれから風力発電を取り付けました。100%研究開発の電気が賄えるという約束で実際稼働しましたけれども、現状、70%ですね。やっぱりこれは太陽パネルがどうしても出力しないとか、いろいろな問題が出てきます。風力にしても、例えば4メートル以下の風が吹かなかったら回らないとか、いろいろな問題が出てきています。
  そういうことも含めながら、やっぱり思うのは、今さっきここにも出てきたように、宇宙からレーダーを落とし込んで、このパネルも出力以上の倍増するとかそういうことに利用できないかとか。
  それから、今、我々中小企業、大企業を含めて、環境公害汚染というのは大変な問題でございます。それで、この規制というものは、大企業であっても、中小企業であっても一緒、一律なんですね。そうすると、この環境対策、公害対策に対する費用というのは莫大なものが、毎年、毎年、例えば今まで1ppmの規制値が、もう0.数ppmと、どんどん。そのためには、中小企業がその事業を続けるためには、やむなく借金してでもやっぱり設備しなきゃいけないと、こういう事情で非常に苦しんでおるわけでございます。
  そういうことを考えると、例えば我々、今、電子部品関係が日本の基幹産業、半導体電子部品が、これは電子部品、半導体を扱っているところなんかも、水質、大気、そういう規制項目をクリアするためには、皆さん方はどういうことをやっているかというと、例えば半導体関係などは、洗浄関係で塩素系有機溶剤、それからトリハロメタン、こういう対策をするためには、もう二重、三重のコードでもって絶対に土壌汚染をさせないとか、そういうものが日々、経費増大につながっていくと。
  そういうあたりがやはり今、このような太陽光も含めながら、宇宙開発利用のプロセスにおいての技術的なものをうまく応用できないだろうかとか。また、今、ダイオキシン問題、産業廃棄物、これも非常に大きい問題でございます。もう今、我々のところなんかも、焼却炉も全部それを廃棄しまして、業者に出ておると。業者が産業廃棄物に対して莫大なお金をつけて払っておると。
  こういう現状の中で、本当に中小企業は苦しみながら現状生き残って、また、成長していかなくちゃいけないという課題が課せられておるわけでございます。こういうことも含めながら、例えば今、我々も一生懸命ベンチャー指向、第二次創業と言われまして、TLを、これはご存じのように、技術移転機関、これが各都道府県に設けられました。そして、大学や公設機関の研究開発、またノウハウなどを民間に移転して、そのときにお金を払わなくちゃいけないんですね。そして、新しい創業、第二次創業、新しいベンチャー指向的なニュービジョンをつくっていくといったことに今、一生懸命やってもらっております。
  そういうことを含めながら、宇宙開発利用も、宇宙開発利用機関というものを各都道府県に設置してあげて、そして、我々が今まで本当にノウハウとして考えなかったものもうまく利用できるということはできないだろうかと。もう次から次へと、中小企業の立場として我々は考えるわけでございます。
  そういうわけで、そのようなことをぜひこの際、もっともっとこのポテンシャルの低い分野、要するに我々の中小企業の低いところに目線を移していただいた上での利用分野というものをぜひつくっていただきたいと。でなかったならば、我々は今、具体的に即効性のある、明日から食っていける、そのようなビジネスを、中小企業を含めながら小さな企業が求めておるわけです。やっぱりそこに落とし込まなかったら、10年、20年先のことも確かに必要でございます。しかし、明日、今日生きるためのやはり技術応用利用と、そういうところにぜひ目線を移していただきたいと、かように思います。よろしくお願いいたします。

【川崎部会長】  大変なお話、どうもありがとうございます。
  この報告の中で、まだ具体的な表現がやや不足しているとは思いますが、この気持ちの中では、利用が利用を呼ぶメカニズムという中で、いろいろの地上での機器なり、あるいは場合によれば、宇宙へ持ち込む機器なりの新しいものがどんどん膨らんでいくのではないかということを我々は期待しておるわけですが。ただ、具体的にどんな分野でどうなるかというあたりまでについては、なかなかまだ見えないところはあって、ちょっと秋山委員のご注文におこたえしにくいところがあるかもしれませんけれども。できるだけ私どもも、現在の冷え切った日本の経済構造を変えるためにも、何としても新産業、特に製造の方の分野を伸ばしたいと思っておりますので。
  松本先生、どうぞ。

【松本特別委員】  関連事項でよろしゅうございますか。今おっしゃったのは、先ほどちょっとだけ私申し上げましたけれども、日本が地球、気候変動枠組条約の中で、アメリカは脱退すると言いましたね。欧州に引っ張られて、日本がそちらの方向に行きそうだと。そうしますと、今、秋山委員おっしゃったように、中小企業はもちろんのことですけれども、すべての企業にかなり厳しい状況が生まれると。これは産業界あるいは一般の人もよく認識しておられるところでございますけれども。
  その中に、クリーン・ディベロップメント・メカニズムというのがあって、それは、炭酸ガスを減らす技術を開発すれば、それはお金になると、はっきり言うとそういうメカニズムなんですね。それに宇宙が利用できないかということも、当然宇宙利用として非常に重要なスタンスだと思います。
  アメリカは、アーリーアクションはとらないと。つまり、5年、10年で炭酸ガスを減らしてやると、企業が壊れちゃって、本当の意味の地球環境問題を解決できないんだと。だから、ディレードアクションをとります。つまり、10年、20年のスパンでしか開発できないことをやります。その中の一つに、太陽発電はもちろん入っていますし、原子力も、ブッシュは言っています。あるいは炭酸ガスの固定化、そういうものは5年、10年ではできない。だから、10年、20年かけてやりますと。したがって、今、入らないんだと。アーリーアクションはとらない、ディレードアクションをとりますと。CDMを明らかにねらっているんですね。
  ですから、日本も、宇宙利用を環境省とかあるいは外務省に働きかけて、CDMの効果があるよと。だから、いろいろなものを開発しますというファクターもぜひお考えいただければ、今言われたような即効性についてある程度議論ができるのではないかと思いますので、ご参考までに。

【川崎部会長】  ありがとうございます。
  はい、どうぞ、日高さん。

【日高特別委員】  ちょっと一つ、視点ということでお話ししたいんですが。基本的に私は開発という話と利用という話は、本当は利害対立があるものだと思っているんですよ。ですから、ある意味で、この部会が宇宙開発委員会での利用部会と。利用の方をもし主語にするのであれば、それは利用者にとっては何が一番ベネフィットかというと、選択肢が多いという環境をつくることが、要は最終的な目標になるんだと思うんですね。それは、ある意味では、開発サイドから見ると、本当に日本のインダストリーが日本側でつくったものをつかんでおくという話になりますし、利用サイドから見ると、それは日本でつくったものでなくても、海外でも調達できるものは、その方がいいんだという話になるんだと思うんですよ。
  ですから、そこのスタンスをある意味でははっきりさせた方がいいかなと思っていまして。私は、ここはやっぱり健全な緊張関係をつくるようなロジックを、少なくとも利用部会としては考えた方がいいのではないかと思います。
  先ほどの中小企業のお話にしても、要するに宇宙の技術とか、宇宙の、それこそさっきのNASAのおもちゃではないですけれども、そういうものをある意味では自由に利用することを推進するというのは、要するに言葉で言うとバイヤーのエージェントだと。要するにカスタマーエージェントとしてサポートをする機能だということでありますし、それから、もしNASAとかNASDAサイドのリソースを利用させるというのは、これはセラーズエージェントの話だと思いますから、ここは、ちょっと機能が基本的には違うと考えた方がいいと思いますので、ちょっとその一点だけ申し上げたいなと思います。
  ですから、私は利用というのは基本的には利用者ですから、その間に利用を推進するという何らかのファンクションが、バイヤー側に立つのか、セラーズ側に立つのかわかりませんけれども、機能として必要で、それを半官半民でやるのか、民を中心にやるのか、あるいは国策としてやるのかということを選択肢として考えるというふうにフレームを考えた方が、全体としては納得できるんですけれども。

【川崎部会長】  どうもありがとうございました。
  ほかにいかがでございましょうか。

【斎藤特別委員】  今日は、かなりいろいろな分野からのいろいろなお話を伺えたんですけれども、一つは、先ほどの井口先生のお話の中のキーワード、キーにはなっていないのかもしれないんですけれども、私にとって非常にショッキングだったのは、専門家が宇宙ステーションなり宇宙というものをわくわくする現場であるととらえていらっしゃるとおっしゃっていたんですが。ずうっとこの利用部会に参加してきて、だんだんその場としてのイメージというのがなくなってきている議論が進んでいるのではないか。何か非常に高価なものなんだけれども、いつもの空間をどう利用しようとしているのかというイメージがかなり強いなという気がしています。
  人類にとってという面では、私どもメディアにおりますので、実際の研究の専門家でもございませんし、先ほど鈴木先生がおっしゃっていたように、教育の現場でどう利用するかという現実性は持っていないんですが、メディアにとってはとんでもない現場が今、我々の手に入ろうとしているという形でとらえたいと思います。
  その場合には、メディアを利用して、この利用部会のもう一つの大きな側面である理解促進といいましょうか。なぜこんなことをやっているのか。政策評価というところにもかかわると思いますが、そういう部分で宇宙をもう一回とらえ直してみたいと。我々メディアにとっては、あそこに放送局をつくったら、必ず見られる放送が出ていくだろうと考えます。ですから、何の研究をやるか、どう利用するかという部分と、客観的にとらえた場合に、宇宙というものは一般の人間、あるいは我々メディアの人間にとってどういう場であるかというのをもう一回議論いただいて、つまり、具体的になればなるほど、先ほど、鈴木先生おっしゃっていたけれども、ちゃちなものになるのではないかなと思います。
  そういう意味では、国策という言葉はあまり好きではありませんけれども、言い直せば、戦略という形で宇宙を開発あるいは宇宙を利用するということに対しての周知あるいは理解ということが極めて重要な部分になってくるのではないかと思います。
  それから、この中に書いてあります宇宙データベースというものをどう利用するかということがそこにかかってくると思いますが、いろいろな状況を聞いていまして、この衛星利用あるいは宇宙利用ほど各省庁にまたがった重要案件というのはないわけですから、この中間報告の大きな部分として、国民にどう知ってもらうのかということを、逆に言えば大きなテーマとして考える必要があるのではないかなという気がいたします。
  その一つは、何回も言葉としては出ているんですが、教育にどう利用するかということが大きなキーワードになるのではないかなという気がしております。

【川崎部会長】  どうもありがとうございました。

【井口宇宙開発委員長】  大変いろいろなご意見が出てまいりましたが、私は、総合科学技術会議で今進んでおります調査会の委員を今やっておりますので、いろいろご意見を伝えたいと思います。
  いろいろなお話が出ましたけれども、総合科学技術会議と宇宙開発委員会との関係というのは確かに曖昧です。ただ、基本的には、総合科学技術会議がサイエンス全体を見た総合戦略を立てて、実務的なことは宇宙開発委員会がという分担ということで、両方とも大体は了解をとって認識しているんですが、個々の問題になりますといろいろな問題があるので、今の専門調査会が進めば、ある程度のところははっきりしたものが出てくるかもしれません。それが一つ。
  それから、国策の議論が出ましたけれども、私個人は、宇宙開発は国策でやっているんだと思います。ただし、国策が何であるかが今まではっきりしなかった。だから、専門調査会でもはっきりさせてほしいと思います。
  ただ、宇宙開発委員会としても、これからパブリックコメントで皆様方のご意見を伺いますが、将来の方向として3つ挙げてあります。1つは、安全・安心です。もう一つは、国民の生活を豊かにする。それは、ひいては産業競争力の強化、さらに雇用の創出、そういうものにつながっていきます。3番目に、知的資産の拡大について国際的に貢献、人類に貢献する。その3つが、これからの宇宙開発の主要な目的と一応決めてあります。これは、総合科学技術会議のフロンティアプロジェクトでの議論と同じにしてあります。
  あと、3機関の統合の話がありますので、それがどういう方向で、方針で進めるか、それも議論してありますが、今日は時間がありませんのでお話しません。
  ただし、これは半分ぐらい私の意見ですけれども、NASDAが30年という歴史がありながら、政府の金の2倍とか3倍ぐらいのマーケットにしかなっていないんですね。30年たったら、もうちょっと産業が大きくなっていなければおかしいではないかというのが私の個人的な感触なので。それで、これからは特に政府のお金がそう簡単に2倍、3倍とは期待できないので、民営化、民間が支えるような形になってこなければ長続きしないではないか。そういう意味で民営化というものをやるんですが。
  しかし、その前に、例えば宇宙科学でもって天文学をはじめ、世界をリードしている、これは国民の誇りでもあるわけです。それから、8月29日にH−IIAロケットが打ち上がって、あれは号外まで出たんですが、あれだけ日本全体が喜んでくれた。これはやっぱり国の威信というものにかかわっているわけです。ですから、そういう部分というのは、これは利益、あまり赤字にならない方がいいことは確かですけれども、完全に利益とは言えない部分、それこそが国策としてやるものであると。そういう認識をしております。
  そのほかに、さっき言いましたように、民営化、それから宇宙産業を育てるということがあります。それが一つと。
  もう一つは、古濱委員もおっしゃったGPSに対する認識が弱いというのか、いろいろな国際的な調査を見ますと、これから大きくなる市場というのは、放送通信がまず第一です。その次がGPS利用なんです。日本は、その中で最先端を切っているわけです。カーナビについては、私は自分が推進してきたものですから手前みそになりますが、あれは全く新しいマーケットをつくったわけです。しかも、世界をリードしているわけです。しかも、年間数千億円のマーケットにもう既になっています。
  そういうマーケットはこれからあり得るのじゃないか。GPSの利用だってもっといろいろあるんですけれども、GPSは、アメリカの衛星をただで使っているものですからね。これ、宇宙開発関係者が自分が開発したと思っていないだろうと思う。それは思っていないの当たり前で、やっていないんだから。自動車屋と情報通信関係者がやってきたわけでね。それは宇宙関係者がやらなくてもそういうものが育ってくれば、一番効率がいいのでね。そういうものは期待していいんですけれども。宇宙関係者としての、もうちょっとGPSについての何かやることによって大きなマーケットが育てられる可能性がある。
  そういう部分もありますし、もう一つは、中野委員がおっしゃったセキュリティーの問題もありますね。これは、アメリカがGPSを使いながら、GPSというのは非常に脆弱なシステムであると。微弱電波だから、すぐに妨害できると。特に交通関係でそんなものにプライマリーなファンクションを頼ってはいけないと言っているんです。ところが、日本はそんなこと知らずに、アメリカのをただで使えると、使っていますよね。そんなことでいいはずはないので。これから十分に考えていかなければいけないと考えています。
  いろいろ今日はお教えいただきまして、ありがとうございました。

【川崎部会長】  どうもありがとうございました。
  大体予定の時刻になりましたけれども。それでは、お時間をちょっと超過しておりますが、事務局の方から、今後のスケジュールと、また、皆さん方へ御願いさせていただこうと思いますが、よろしくお願いします。

【宗永室長】  先ほども申しましたけれども、この議論の中間整理に対するコメント、本日いただいたものに加えまして、また、本日、ご欠席の委員の先生方もいらっしゃいますので、また、後日も含めてコメントをいただきたいと考えております。大体年内と言いたいところなんですけれども、かなり厳しいので、1月半ばぐらい、別途期日はお知らせしたいと思いますけれども、を目途にコメントをいただきたいと思っています。
  それがまず一点と、それに加えて、今回のご議論でもいろいろ出た話といたしまして、今、宇宙開発委員会の方でも、全体の宇宙開発ということで、前回、芝田課長の方からもご説明させていただきましたけれども、ご議論があります。そこへの有効なインプットとするとともに、そこでなされている議論をフィードバックするために、そういういただいたご議論を含めて、宇宙開発委員会の場でもご議論いただいた上で、そのフィードバックをかけていきたいと思っております。
  そういうものを集めまして、大体2月か3月かになろうかと思いますけれども、もう少し膨らませたような資料ということでご議論いただいた上で、その後、報告書としてまとめていくといったようなステップをとらせていただきたいなと思っております。
  そういうことで、次回の部会につきましては2月から3月ということで、また、別途スケジュール調整をさせていただきたいと考えております。

【川崎部会長】  それでは、今の宗永室長の方からの説明のとおりでございますが。ただ、いずれかの段階で、先ほどの鈴木さんのご意見もありましたように、部会の報告自身が、ある意味で言うと、宇宙のPR、宇宙への関心を呼びよせる呼び水にもなろうかと思いますので、何らかの形で広くデジタルインフォメーションとして流れるようなことを考えていきたいと思っております。その時期については、皆さん方のご意見、それから、その他宇宙開発委員会としての意見等をいただきました上で、整理をした上で、また改めてご相談をさせていただこうと思います。
  本日は、どうも長時間ありがとうございました。

――  了  ――


(研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室)

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