付録1

光衛星間通信実験衛星(OICETS(オイセッツ))プロジェクトの評価票の集計及び意見

評価結果

  妥当 概ね妥当 疑問がある
1.成果 (1)アウトプット 11 0 0
1.成果 (2)アウトカム 7 4 0
1.成果 (3)インパクト 該当なし 該当なし 該当なし
2.成否の原因に対する分析 7 4 0
3.効率性 (1)プロジェクトの効果性 8 3 0
3.効率性 (2)プロジェクトの実施体制 7 4 0

  期待以上 期待通り 許容できる範囲 期待はずれ
4.総合評価 2 9 0 0

1.成果 (1)アウトプット

平成17年3月の第4回推進部会において、OICETS(オイセッツ)プロジェクトのサクセスクライテリアが了解されています。(別紙2参照)このサクセスクライテリアの各項目について、具体的にどのような結果が得られ、目標がどの程度達成できたのかについて評価してください。

  妥当 概ね妥当 疑問がある
成果 (1)アウトプット 11 0 0

評価根拠のコメント

【妥当】
  1. ミニマムサクセス〜エクストラサクセス(その2)まで全ての目標を達成している。
  2. 打上げが当初より大幅に遅れたにも係わらず、担当者のインセンティブが低下することなく、様々な成果を得た。特に衛星間光通信で重要となる十分高いポインティング精度を実証でき、この分野での我が国の技術力の高さを内外に示すことが出来た。
  3. ESA(イサ)との国際協力によりスタートした本プロジェクトは、主としてESA(イサ)側の理由により再三遅れが生じ、結果的には当初計画より8年遅れで目標としていた成果は100パーセント達成できたと考えられる。プロジェクトを中断した後の再立ち上げ等、関係者の苦労は並大抵のものではなかったと思われるが、End to Endの試験を事前に行うなどの努力により、プロジェクトを成功に導いたことは評価したい。
  4. 予め規定されたフルサクセスおよびエキストラサクセスの目標を達成し,光通信が宇宙空間での通信手段として実用可能であることを実証して、プロジェクトの当初の目的を十分に達成している。
  5. 目標は満たしていると判断できる。
  6. サクセスクライテリアの各項目について、目標毎に設定されていた評価基準を達成した結果を残している。アウトプットは妥当なものと評価できる。
  7. サクセスクライテリアの評価基準を十分に満たしていると判断される。
  8. OICETS(オイセッツ)プロジェクトが目指した実験は光衛星通信技術自体、また衛星の姿勢制御等を含めて、難度の高いものであったと認められるが、ESA(イサ)との協力のもとに衛星間双方向光通信に世界で初めて成功したことは高く評価される。成功基準に関しては、フルサクセスとして目指した目標、すなわち高精度の光捕捉追尾とデータ伝送、ならびにそれらの性能評価、を十分に達成するとともに、エクストラサクセスとして目指した実験に関しても目標を達成している。
  9. ミニマム・フル・エクストラサクセス、それぞれの目標はすべて達成されている。さらに、それ以上の成果を出しているので妥当。
  10. OICETS(オイセッツ)単独の実験、ARTEMIS(アルテミス)との衛星間通信の実験とも、エクストラサクセスまで含めて当初の目標を達成したことは評価でき、アウトプットとしては妥当である。

1.成果 (2)アウトカム

平成4年7月に開発研究への移行が審議された際、光衛星間通信は、電波による衛星間通信に比べ、機器の小型化及び通信能力の向上が図れ、他の通信との干渉の発生が少ない等の特徴を有し、将来の衛星間通信に重要なものとされています。OICETS(オイセッツ)プロジェクトは、この光衛星通信技術の実証プロジェクトとして位置付けられ、捕捉・追尾・指向技術、双方向光通信技術などの、光衛星間通信に必要な基盤技術を確立することを目的として実施しました。
このプロジェクトの目的に照らして、OICETS(オイセッツ)プロジェクトで得られた成果が、現時点でどの程度効果があるかについて評価してください。

  妥当 概ね妥当 疑問がある
成果 (2)アウトカム 7 4 0

評価根拠のコメント

【妥当】
  1. 光衛星間通信に必要な基盤技術を確立、今後の小型・高速化に効果がある。
  2. 高速・大容量通信に光通信が適していることは衆目の一致するところであるが、これをより小型化・高速化することで種々の衛星のデータ中継に役立つものと思われる。衛星間光通信は大気の影響がほとんどなく、このような環境下、例えば各種衛星間(観測衛星、宇宙ステーション、月面活動基地、等とデータ中継衛星間)、のような場合に極めて有効な通信手段を得たと考える。
  3. リアクションホイールの信頼性、リアクションホイールの回転による擾乱の測定、コンタミネーション管理技術等、今後の衛星技術に生かせるものである。
  4. 光衛星通信技術の実証プロジェクトとしての成果は認められる。今後、通信の大容量化、ターミナルの小型・軽量化に期待する。
  5. 中・小型衛星への高速衛星間通信機能付加の実現性、リアクションホイールの軌道上データ取得・評価などによる今後の衛星開発への寄与、他衛星への技術応用、光通信分野における国際的なイニシアティブ形成にも貢献しており、アウトカムは妥当なものと評価できる。
  6. 光衛星間通信は、将来的に宇宙において必要となる基盤技術の一つと見なされるが、OICETS(オイセッツ)プロジェクトは、捕捉・追尾・指向、双方向光通信など、光衛星間通信のための基本技術の実証に取り組み、大きな成果を挙げたものである。開発研究への移行がなされた平成4年7月から数えると、実験実施まで13年強の年月が経過していたが、ESA(イサ)のARTEMIS(アルテミス)とわが国のOICETS(オイセッツ)とによって計画された衛星間双方向光通信と競合するようなプログラムは、その間、世界的に、他にはなく、高い価値を保ったまま実験実施に至ったものと認められる。アウトカムとしてあげられている「中・小型衛星への高速衛星間通信機能付加の実現性」はOICETS(オイセッツ)プロジェクトの成果の意義を明確に要約したものとなっている。また、光衛星間通信の国際標準仕様の策定など、今後の光衛星間通信の分野において国際的なイニシアチブを取っていく立場に立てることも意義あることである。
  7. 光による衛星間通信は、小型・高速化により大容量電送が可能となる。新型国産ホイール技術は、他衛星への応用や技術蓄積にもなり、今後必要とされる科学分野での貢献にもつながる。
【概ね妥当】
  1. 通信相手衛星の高精度追尾が出来たこと、更に宇宙空間における光通信の実用化と衛星間光通信の効率化/軽量化の目処を得たこと等は有効であった。また副次的な目的としたリアクションホイールの軌道上実証が出来たこと、Sバンド帯衛星―地上高速通信方式、電波によるUSB/SSA共用トランスポンダ等他の衛星に応用できる技術開発が出来たこともアウトカムとしては有効であった。ただし人工衛星技術の目指すところは国際マーケットであるべきであり、アウトカムと言う以上国際レベルが何処にあり、そのレベルに対してどのような位置にあるかの認識と評価が必要である。また技術試験衛星である限り、次なるプロジェクトおよび衛星にどのように生かされるか、具体的なターゲットを欲しいところである。
  2. 平成15年度の計画評価部会での中間評価において評価されているように、本技術実証の意義は失われていないと評価されるが、開発・打ち上げ遅延による先進的な意義の弱体化は認めざるを得ない。しかしながら、プロジェクト遂行結果が今後の宇宙開発の進展に大きく役に立てば、その意義は高いものになると考えたい。今回の貴重な実証体験を生かして、次のステップ(ギガビットオーダー)の通信開発の実用化に繋げる努力を期待したい。
  3. 衛星間通信機器の小型化や、リアクションホイール、コンタミネーションなどの他衛星への技術応用等の結果は評価できる内容である。今後の光通信分野における国際的なイニシアティブをとるため、国際標準仕様の策定を是非行っていただきたい。

1.成果 (3)インパクト

本プロジェクトで得られた成果の波及効果として、目的として設定していた範囲を超えた、経済的、科学技術的、社会的な影響等についても、現時点で注目しておくべきものがあれば併せて評価して下さい。

コメント

  1. 1μrad(マイクロラジアン)は5キロメートル先の5ミリメートルの目標に相当する精度であり、測地・測距に適用した場合に現状の精度を大幅に上回る可能性がある。地殻変動などによる地表面の変化などへの応用が可能ではないか。
    また、今回はリアクションホイールの国産化についてあまり詳細に報告されていない。衛星のキー技術である本件については他の衛星プロジェクトにも波及する大きな成果と考える。
  2. 地上局(固定局、移動局ともに)との通信実験の成果に期待したい。
  3. 将来的には人工衛星から大量なデータを地上に送信するニーズが出てくると思われることから、衛星と地上間で光通信が可能であることを実証したことは意義が大きいと考える。従って大気の揺らぎの補正方法に関しても今後共研究を進めるべきではないか。
  4. 衛星―地上間光通信の軌道上実証の実施は、天候状態、大気による減衰・ゆらぎの影響など、光衛星間通信より実用化に至る課題も多いが、短時間で地球観測衛星の大量データなどを地上へ直接送れる点で、将来的に期待されている衛星―地上間光通信技術開発への端緒ともなる試みとして評価したい。
  5. 最終的には、地上局の体制や対応が重要であり、衛星と地上間の問題が大きくなる。さらなる通信技術や大気ゆらぎの影響などの研究成果が望まれるが期待したい。
  6. 光衛星間通信実験の成功により、高い技術力を示すことができたのは評価できます。光衛星間通信の国際標準仕様の策定においても中心的な役割を果たすことを願います。
  7. NICTからの要請を受けで共同で行った衛星―地上間光通信の軌道上実証を追加実験として行えたことは本プロジェクトで得られた成果の波及効果として評価できる。

2.成否の原因に対する分析

OICETS(オイセッツ)プロジェクトを通じて得られた成果のほか、明らかになった技術的課題に関し、成否の要因分析が実施され、OICETS(オイセッツ)プロジェクトの遂行に活かされたか、将来の光衛星間通信技術の研究等への教訓として有効なものとなっているかについて評価してください。

  妥当 概ね妥当 疑問がある
成否の原因に対する分析 7 4 0

評価根拠のコメント

【妥当】
  1. ARTEMIS(アルテミス)打上げ不調に対応した適切なプログラムマネジメントが成功に結びついたと評価される。
  2. 資料の推進3−3−3に示されているJAXA(ジャクサ)の見解に異議なし。
  3. 成否の要因分析が行われ、問題点は解決されている。
  4. 実験の成功は、技術課題への対処、外的要因による打ち上げ延期や衛星保管などの状況に的確に対応し、機会を逃さず打ち上げを判断した適切なプログラムマネジメント、それにJAXA(ジャクサ)/ESA(イサ)の両機関による適切な国際共同開発が実施された結果である。先端的ミッションの国際共同開発におけるモデルケースの一つともなっている。
  5. プログラム進行の過程を見ると、三つの大きなエポックがあり、それらへの対処が適切になされたことが認められる。一つめは「開発」での光通信機器開発における困難な課題への遭遇とそれらの解決、二つめはARTEMIS(アルテミス)の打ち上げ不調に伴い、完成していた衛星を長期間保存待機させなければならなかったこと、第三は打ち上げに向けての短期間での再立ち上げと打ち上げ準備、である。特に後者二つは特異な状況への対処で、そこでの対処経験はプログラムマネジメント上の教訓となりうるものを含むであろう。
    またARTEMIS(アルテミス)との共同実験成功に至る経過が分析されている。ここでなされた国際共同開発の進め方は、一つのモデルケースとして、今後有効に参照していけるものであろう。
  6. ARTEMIS(アルテミス)の打ち上げ不調に対する適切な対処により結果的にプロジェクトを成功へ結びつけたことは評価できる。また、JAXA(ジャクサ)とESA(イサ)が共同で技術仕様を設定し、その開発を適確に双方が開発を進めることにより軌道上での通信実験を行えたことは国際共同開発のモデルケースとして評価できる。
【概ね妥当】
  1. ほとんど全ての項目で「成功」となっているので、特に意見はない。
    一点、OICETS(オイセッツ)開発終了(平成14年3月)から打上げ(平成17年8月)までの約2年半、光学機器の保管にあたり様々な問題を解決しノウハウを蓄積したと思われる。この点を是非JAXA(ジャクサ)、あるいはメーカ内に資産として残して欲しい。
  2. 熱歪の影響、衛星微小振動等、抽出された課題に関して外部有識者の意見も取り入れて事前解決を図って衛星設計を行い成果を挙げたことは評価出来る。ただしその成果および更に改善を要する点等がどのように纏められており、またどのように生かされているか具体論が乏しいように思われる。
  3. 「きらり」での経験から、高出力ビーコン光源とビーコン光を広範囲に操作する機構が課題となり、「だいち」から「こだま」へのデータ伝送実現により次世代のデータ中継衛星として光通信単独かKaバンドと併用にするかなど検討されることになり次の研究課題が明確となった。

3.効率性 (1)プロジェクトの効率性

OICETS(オイセッツ)プロジェクトの計画段階において予定された予算やスケジュールに関し、軌道上での実験が効率的に実施されたか、外的要因による計画の変更に如何に適切に対処したか、その他特段の問題点が認められるかについて評価してください。
評価にあたっては、国際共同研究による効率性も考慮してください。

  妥当 概ね妥当 疑問がある
効率性 (1)プロジェクトの効果性 8 3 0

評価根拠のコメント

【妥当】
  1. 打上げ延期による経費増を極力抑えており評価できる。
  2. 計画変更に対しては良く対応できたと考えられるが、外的阻害要因がなければ、当初計画通り実行できたか否かは不明。
  3. 大幅なスケジュール変更があったにも係わらず、フレキシブルな体制で対処することによってほぼ当初予算通りにプログラムを遂行出来ている。また外国との共同プログラムで、打上げ済みのArtemis(アルテミス)とOICETS(オイセッツ)のミッション機器とのマッチング試験を実施したことはリスクを回避上有効であった。
  4. 国際共同研究に伴って発生したスケジュールの変更に対して、本プロジェクトは適切に効率よく対応しており、開発完了後の打ち上げ延期に伴う保管費用、打ち上げ再開に伴う衛星開発と地上設備・運用に関わる追加経費なども妥当なものとみなせる。国際共同研究によるミニマムな投資による効率的な成果は達成されたと評価したい。
  5. 打ち上げ延期を含む多くの問題への対処は適切なものである。特に、プロジェクト再立ち上げを成功に導いたマネジメントについては高く評価したい。
  6. 計画段階からのスケジュールの大きな変更は外的要因によるものであり、プロジェクトとしてはそれに適切に対処したと言える。経費に関しては、開発完了まではほぼ予定通りであって、打ち上げ遅延・再開によって追加分が発生している。この追加分はやむを得ないものと認められ、額も妥当な範囲であろう。
    ESA(イサ)との共同実験は、光衛星間通信への初の技術的取り組みとして、極めて有効に行われたといえる。効率性という観点からも、高く評価できるものである。
【概ね妥当】
  1. 少ない投資(約170億円)で大きな成果を上げたと思われる。また、我が国単独の実験計画とせず、欧州との協力関係の中で実施したことは衛星本体の開発もさることながら地上系の準備などでも効率的に計画が推進されている。
  2. 光衛星間通信は難易度が高く技術課題も多いが、衛星保管の環境対応、機器の寿命を考慮しての短期間での打ち上げなど、外的要因による計画変更はあったが、効率的に対処しプロジェクト推進ができている。
  3. ESA(イサ)との共同実験による投資の効率化や計画の変更に対する適切な対処の点は十分に評価できる。但し、ESA(イサ)側の打上げ延期という予想外の事態への対処とはいえ、プロジェクトの資金の内、例えば地上設備・運用関連の費用が開発認可時のほぼ倍額になった点に関しては、今後の開発へ向けた検討事項としていただきたい。

3.効率性 (2)プロジェクトの実施体制

プロジェクトの実施体制について、長期にわたる開発期間の中でどのように効率的に機能したかを評価してください。
評価にあたっては、関係機関及び企業を含めた連携、役割分担及び責任体制の明確さも考慮してください。

  妥当 概ね妥当 疑問がある
効率性 (1)プロジェクトの効果性 7 4 0

評価根拠のコメント

【妥当】
  1. 打上げ延期による経費増を極力抑えており評価できる。
  2. プロジェクト再立ち上げに際して、他衛星開発及び打上げ経験者をプロジェクトチームに結集できたことは成功要因の一つだと思われる。
    今般、スケジュール遅れがないプロジェクトにおいてもこのようなチーム編成をすることが望ましい。
  3. 国内研究機関・大学との連携で、わが国のリソースは効果的に有効に活用されている。技術達成度に応じた効率的開発計画が進められ、JAXA(ジャクサ)内人員の配置も適切で効率的だったと評価できる。
  4. 開発完了後、長期にわたっての待機状態に入り、その間大幅に縮小されたプロジェクトチームが、再開に当たって、極めて効率的なチームとして再結集され、短い期間をもって打ち上げを可能としたことは、異例のケースへの対応とは言え、評価できるものである。
    プログラムが長期にわたったことから、企業との連携には十分な配慮がなされ、最終的な成果に繋がったものと推察される。
  5. 国内研究機関や大学等のリソースの有効活用や、プロジェクトの状況に応じた人員配置の効率化は十分に評価できる。
【概ね妥当】
  1. JAXA(ジャクサ)、NICTなどの関係公的研究機関とメーカとが協力しプロジェクトを成功裏に導いたと思われる。また、打上げ延期(中止)にも係わらず関係者のインセンティブを維持できた点も評価に値する。
  2. 技術課題に関して得意技術を持った機関の協力の下に問題可決を図ったこと、Artemis(アルテミス)のスケジュール遅延および打上げトラブルに対応してフレキシブルな体制で臨んだことは、作業を効率的に実施したと評価できる。ただし技術試験衛星である限り将来の実用化が目標の筈であり、そのためには製造メーカの熱意と協力が不可欠であると思われる。その点の評価がなされていないのは片手落ちである。
  3. ARTEMIS(アルテミス)の軌道投入が遅れたことで3年間という延期によりプロジェクトに影響がでたが、実際は「だいち」や「きらり」等に技術が活かされ実験を重ねるなど、次に展開できる効果的な研究成果がでている。

4.総合評価

上記3項目を鑑み、総合的なコメントを記入下さい。その他、助言等があれば記載願います。

  期待以上 期待通り 許容できる範囲 期待はずれ
総合評価 2 9 0 0

評価根拠のコメント

【期待以上】
  1. 国際共同研究では避けられないスケジュールの変更、それに伴う追加経費の発生など、プロジェクト進行中に外部から巻き込まれた状況に、適切で効率良く対応し、目標を達成できたこと、国際共同研究のモデルケースの一つとなった事例として評価したい。
  2. OICETS(オイセッツ)プロジェクトにおいて達成された技術的成果は、その技術的難度の高さから見て、予想されるレベルを越えたものであり、期待以上の成果と考える。
    光衛星間通信が実利用上必要となる状況の到来に備えて、今後、OICETS(オイセッツ)で達成された技術を保持し、かつ次段階に向けての準備・検討を着実に進めていくのが適切であろう。
【期待通り】
  1. 本成果を今後のデータ中継衛星等へどのように生かしていくのか、更には将来の通信衛星の開発の進め方をどうするのか、その中でJAXA(ジャクサ)がどのように関与するのか、今後検討が深められることを期待します。
  2. 「成果」については全て「達成」したとあり、関係者の苦労が十分伝わってこなかった。そもそも目標が低かったのではないか、との疑問が出てくる位である。
    技術的に非常に困難な課題に挑戦し、成功させたのであるから、ポイントを絞って成果をアピールしてはどうか。
    装置の信頼性については、今回の実験で1万時間(約1年間)の寿命を確認出来たが、観測衛星、データ中継衛星などの寿命を5年程度と考えると約5万時間の寿命が必要となる。今後、研究を継続して実利用が可能な技術に仕上げて欲しい。
  3. 以上の項目はすべて妥当という評価をしたが、にも拘らず、十分なる満足感が持てないのは何故なのだろうか、と考えてみる。
    1. 当初計画より8年も遅れたにも拘らず、達成できたことは平成4年、5年当時考えられたことであり、平成9年度に達成できてもおかしくない事柄であるからか。
    2. 平成8年にARTEMIS(アルテミス)の打上げ延期に伴い、打上げを平成12年度に延期、更に射点整備及び追跡管制の都合で平成13年度に変更した。
      結局、平成14年のSACでの審議を経て15年7月に光衛星間通信技術実証を行うことは意義は失われていないとの判断により平成17年打上げが決まった。
    3. 平成13年は計画を中断しているので平成13年から15年のブランクは止むを得ないと思うが、平成8年から12年の間の判断として、実験内容そのものを、時代の技術進歩を勘案して変更するチャンスがあったのではなかろうか。例えば、
      • (1)衛星間通信はARTEMIS(アルテミス)の2〜50Mbps(メガビットパーセカンド)規格で変更できないとしても、地上局との間で2.5Gbps(ギガビットパーセカンド)の通信を試みる。
      • (2)更に小口径の光アンテナの実験
      • (3)回線を成立させるための技術として1高出力ビーコン光源と2ビーコン光を広範囲に走査する機構、等の実験
    4. 要するに本プロジェクトは外的要因によるとはいえ、8年も遅れたために得られた成果が見劣りする結果となってしまった、ということか。
  4. 当初目的を達成しているのでミッションとしては成功と言うべきであるが、ミッション期間が1年であり、それ以降はリアクションホイールの軌道上実証等の副次的目的はあるにしろ、更なるチャレンジが無いと言うのは相当の費用を掛けた技術試験衛星としてはいささか物足りない感じがする。OICETS(オイセッツ)の今後の活用計画を明確にすべきであり、もし計画があるとすれば後段階の運用計画を説明すべきである。
  5. 掲げた目的は達成している。今後、国内外の先端的なミッションとなることを期待する。
  6. ドイツのTerraSAR−XのLCTの今後の成果も気になるところだが、今後、必要不可欠な「光通信」であり、衛星間での追尾データ伝送では日本のOICETS(オイセッツ)に大いに期待したいところだ。
  7. 宇宙における双方向の光衛星通信を実現するために、ESA(イサ)の先端型データ中継技術衛星との間で、補足、追尾・指向、双方向通信などの要素技術の軌道上実験を国際協力の元で行い、目標とする成果を得たことは評価できる。今回得られた成果に関し、国内だけでなく海外からも高い評価や表彰を得られることを期待したい。

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