4.GCOM−C1プロジェクトの事前評価結果

(1)プロジェクトの目的(プロジェクトの意義の確認)

 GCOMは、「我が国の地球観測における衛星開発計画及びデータ利用の進め方について」において示された基本方針及び衛星開発計画に基づき、以下を目的として計画されている。

 この中で、GCOM−C1は特に、植生、雲・エアロゾル等の長期継続観測システムの構築を行い、長期気候変動の予測精度の向上に貢献するとともに、漁場情報提供、海路情報管理等の実利用に貢献することを目的としている。
 これらの目的は、第三期科学技術基本計画における国家基幹技術の海洋地球観測探査システムを構成する地球環境変動観測ミッションの一部をなし、我が国が過去に実施してきたADEOS(みどり)、ADEOS―2(みどり2)等の地球観測の流れの中で位置づけられ、国際的に重要な役割を担うものである。さらに、気候数値モデルの不確定要因の解明による、気温上昇量の予測誤差低減と環境変化予想の精度向上への貢献が期待され、地球環境変動観測ミッション(GCOM)の構成要素として、的確に詳細化、具体化されており適切である。

判定:妥当

(2)プロジェクトの目標

 上記の目的に対応し、プロダクトとしては、雲・エアロゾル特性・放射収支等の大気圏プロダクト、植生・バイオマス・地表面温度等の陸圏プロダクト、海面温度・海色等の海洋圏プロダクト、雪氷分布・雪氷面温度・雪氷面特性等の雪氷圏プロダクトが設定されている。また、これまで我が国が打ち上げてきたADEOS(みどり)等の衛星の長期間データの資産や経験の継承を考慮し、かつ晴天率の日中変動特性や漁業への実利用を考慮して、午前の軌道を取ることとしており、国際的な観測協力にも貢献できるものとなっている。特にエアロゾル及び植生観測に重点をおき、近紫外域観測機能及び偏光観測機能を備えるとともに、植生観測に適した多方向観測機能を有し、さらに陸・沿岸の詳細観測を行う250メートル分解能による観測機能といった、特徴を出す目標設定となっている。
 これらのプロダクトに対し、観測する対象と目標とする測定精度及びデータ配信時間等が具体的に設定されており、測定されたデータの配付先及び活用計画も明確となっており、適切である。

判定:妥当

(3)開発方針

 本目標を達成するための開発方針については、GCOM−W1と同様に、長期継続的な観測を実現するために、信頼性の確保が最も重要であると位置付けている。
 このため、衛星バスについての開発方針は、GCOM−W1と共通化設計を実施し、フライト実績、開発実績のある技術を採用することにより、信頼性と安定性を図るものであり、衛星開発に関する基本的な考え方に整合した方針である。また、観測センサについてはALOS(だいち)の技術を継承する電子走査式とADEOS−2(みどり2)の技術を継承する機械走査式に機能を分割し、大型・複雑化したGLIの反省を生かすと共に、高性能化とサバイバビリティの向上を図っている。このセンサについての開発方針は、新規開発要素が多いことを考慮し、衛星バスに先駆けて試作試験を実施することで開発リスクを低減する方針であり、適切である。
 なお、今後に向けた助言は以下の通りである。

判定:妥当

(4)実施体制

 実施体制については、JAXA(ジャクサ)がGCOM−C1プロジェクトマネージャの指揮の下に利用機関・研究者との調整、共同・協力体制の構築を行う。また、GCOM総合委員会が利用機関・研究者の要求をとりまとめ、東京大学、JAXA(ジャクサ)及び独立行政法人海洋研究開発機構がデータ統合・解析システムを構築する。衛星開発企業は、JAXA(ジャクサ)が設定する開発仕様に基づき、衛星システムの設計・製造・試験等を行うこととしている。
 これら、外部機関との連携、JAXA(ジャクサ)内の体制、衛星開発企業との責任分担については、的確に立案されていると認められる。また、衛星開発エンジニア、サイエンティストと、データを実際に利活用する各種研究センター等の研究者との共同体制は、打上げ後の観測・利用体制を視野に入れており適切である。
 なお、今後に向けた助言は以下の通りである。

判定:妥当

(5)その他

 以下の項目については、「開発」移行段階で評価するものであるが、「開発研究」への移行時点における検討の進捗状況を踏まえ、「開発研究」に向け配慮すべき事項として以下のような意見があった。

(6)総合評価

 GCOM−C1プロジェクトは、長期気候変動の予測精度を向上するため、植生、雲・エアロゾル等を全球規模で長期継続的に観測するシステムを構築しようとするものであり、漁場情報提供、海路情報管理等の現業分野への貢献が期待されることも踏まえると、極めて大きな意義を有している。今回の事前評価では、GCOM−C1プロジェクトの目的、目標、開発方針及び実施体制等について審議をおこなった。その結果、GCOM−C1プロジェクトについては、現時点で「開発研究」に移行することは妥当であると判断した。
 なお、「開発研究」への移行に当たっては、軌道上での高性能達成に向けて、機器レベル、コンポーネントレベルでの性能評価を徹底し、システムレベルでの評価に問題を先送りしない事による、確実な開発を実施するよう助言があった。また、GCOM−W1と共通化設計が計画されていることから、GCOM−W1との連携を、体制上如何に具体化するかについて指摘があった。JAXA(ジャクサ)においては、これらの助言について今後適切な対応がなされることを望む。

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