3.BepiColombo(ベッピコロンボ)プロジェクトを取り巻く状況

 水星については、太陽に近い高温・高放射線環境であることと、軌道投入に多大な燃料を要することから、探査の機会が少なく、米国のマリナー10号が水星近傍を通過した後、約30年間探査はなされなかった。このマリナー10号の探査は水星の磁場と磁気圏活動の発見をもたらしたが、地球との比較による惑星磁気圏の普遍性と特異性の解明や、水星の形成史につながる科学的データは極めて乏しい。
 このように水星に関する謎の究明は約30年間夢に留まってきたが、近年、耐熱技術の進展に代表される技術革新により、水星周回軌道からの探査が可能となってきた。
 日本では、高い実績を挙げてきた磁気圏分野の観測を中心とするスピン型探査機が平成10年に提案されたが、その後欧州宇宙機関(以下「ESA(イサ)」という。)の計画にJAXA(ジャクサ)が参加する事により、BepiColombo(ベッピコロンボ)プロジェクトが誕生するに至った。BepiColombo(ベッピコロンボ)プロジェクトは、水星の磁場・磁気圏・内部・表層にわたる総合観測で水星の現在と過去を明らかにする計画である。JAXA(ジャクサ)は、水星の固有磁場、磁気圏等の観測をおこなう水星磁気圏探査機(以下「MMO」という。)の開発を担当し、ESA(イサ)が開発を担当する水星の表面地形、鉱物・化学組成、重力場の精密計測をおこなう水星表面探査機(以下「MPO」という。)と共同観測を実施する。
 一方、水星周回軌道への最初の到着を目指す米国は、周回探査衛星「メッセンジャー」を平成16年に打ち上げた(平成20年1回目水星通過/平成23年到着予定)。このメッセンジャー衛星により多くの発見がもたらされると期待されており、BepiColombo(ベッピコロンボ)プロジェクトの総合観測による成果をより充実したものとするべく、サイエンティスト間の国際協力を進めている。

前のページへ

次のページへ