付録1

全球降水観測/二周波降水レーダ(GPM/DPR)プロジェクトの評価票の集計及び意見

評価結果

  妥当 概ね妥当 疑問がある
1.プロジェクトの目的(プロジェクトの意義確認) 11 0 0
2.プロジェクトの目標 9 2 0
3.開発方針 6 5 0
4.システム選定及び設計要求 6 5 0
5.開発計画 5 6 0
6.リスク管理 6 5 0

1.プロジェクトの目的(プロジェクトの意義の確認)

GPM/DPRプロジェクトの目的が、「我が国における宇宙開発利用の基本戦略」(総合科学技術会議)及び「宇宙開発に関する長期的な計画」(以下、「長期計画」という。)において規定されている我が国における宇宙開発利用全体の意義、目標及び方針等を踏まえ、長期計画のプログラム及び「我が国の地球観測における衛星開発計画及びデータ利用の進め方について」の開発計画に規定されているところに照らし、的確に詳細化、具体化されているかについて評価して下さい。

  妥当 概ね妥当 疑問がある
プロジェクトの目的(プロジェクトの意義の確認) 11 0 0

評価根拠のコメント

【妥当】
  • 1 GPM/DPRプロジェクトの目的が「我が国における宇宙開発利用の基本戦略」及び「宇宙開発に関する長期的な計画」において規定されている内容に照らし、的確に詳細化、具体化されている。
  • 2 五つにまとめて設定された目的は、「我が国における宇宙開発利用の基本戦略」及び「宇宙開発に関する長期的な計画」に基づいた国内の諸政策が求める衛星観測による水循環分野での地球規模変動の把握に必要とした要求を満たしている。また衛星観測によるモニタリングデータの利用コミュニティからの要望も踏まえ、TRMM/PRによる観測成果の課題に答える要望にも対応し、国家的国際的ミッション要求との関係にも充分配慮されたものと評価できる。
  • 3 GPM/DPRプロジェクトの開発移行に当たって設定された目的は、「基本戦略」、「長期計画」等に規定されている我が国における宇宙開発利用の目標、方針等に則るとともに、宇宙開発委員会地球観測特別部会において審議された「我が国の地球観測における衛星開発計画およびデータ利用の進め方について」を的確に踏まえて、詳細化・具体化されていると認められる。気候変動・水循環変動の解明のための高精度・高頻度の全球降水観測データの取得とその利用実証を目指すGPM/DPRは、わが国における多くの分野からの要望に応える形で、明確な目的設定を行っており、かつその内容は高い水準のものである。
    GPM/DPRは、国際協力ミッションGPMの一環として計画されているものであるが、そこでは、わが国の大きな国際貢献が期待できる。TRMMにおける多大な成果に見るように、降雨レーダの技術はわが国が世界に大きく先んじているものである。GPM主衛星に搭載されるDPR(2周波降水レーダ)はTRMMを更に発展させるものであり、GPMミッションを成立させる上で要となっている。マイクロ波放射計群と二周波降水レーダDPRによる全球降水観測システムを国際協力によって形成するというGPMのミッションは、統合的地球観測という世界の動きの中で大きな役割を担うものである。GPM/DPRプロジェクトが、GPMにおいて、リーダーシップを発揮して、大きな貢献をしていくことを期待したい。
  • 4 災害防止および水資源管理のために国際協力の下で地球規模水循環の総合観測システムを構築する、更に降水、土壌水分、水蒸気等の水循環要素の衛星観測能力を向上させるとの総合科学会議の方針に則ったプロジェクトである。また全球規模の水循環観測精度向上のためのキーとなる国際的な唯一のプロジェクトであり、わが国の科学研究能力と技術力によってこのプロジェクトを成功させることによって、大きく国際貢献出来る。更にその貢献を通じて、わが国の学問的優位さと技術力を発揮することが出来る、有意義なプロジェクトである。
  • 5 TRMMの長期観測の結果として、当初予期しなかった成果があった事が報告されている。
    GPM/DPRについてもできるだけ長期にわたり安定的で均質な観測をする事が新たな成果をもたらす事を期待したい。
  • 6 地球温暖化の問題がまったなしの状態の昨今、自然災害による洪水や渇水対策等、あるいは水資源の有効活用が急がれる。現在の衛星観測では、高緯度地方に対する観測等が不十分であったり局地的な洪水情報の分析に時間を要するなど限界があり精度向上が望まれる。今日、国際協力の下で全球降水観測及び二周波降水レーダ(GPM/DPR)プロジェクトが推進されることは、地球環境への貢献にもつながり積極的に取り組むべきである。
  • 7 地球環境データ取得とする本プロジェクトの意義は益々重要性を増している。NASA(ナサ)側の予算事情によって打ち上げ予定時期が遅くなったものの、その間のNASA(ナサ)や関係研究機関/利用機関との役割分担/インターフェースなどの調整を通じて、プロジェクト目的に適った検討が深まっていると感じる。また、センサー開発技術は今後の宇宙開発において益々重要性を増すものであり、DPRというミッション機器の開発を担当することを通じて、さらなる我が国のセンサー開発技術が拡大・増強されることを期待したい。
  • 8 全地球規模で生ずる様々な環境問題を考えると、地球環境・地球観測は衛星ミッションとしてきわめて重要で且つ他の手段に対し衛星の持つ優位性は極めて高い。我が国の宇宙開発戦略、長期計画に則った計画であると共に世界各国との協力の下本プロジェクトが推進されるにあたり目的は明確かつ具体的である。
  • 9 GPM/DPRは、わが国の宇宙から深海低下までの総合的安全保障に不可欠なシステムとして重要なプロジェクトであり、それを達成するために、現状のTRMM/PRの成果を継承し、諸々の課題を克服するための開発計画がなされていることは評価できる。
  • 10 GPMは、TRMMの遺産を引き継ぎ、発展させるための計画であり、国際的に評価の高いTRMM-PRの成果を発展させ、この分野での日本の立場を強化することにも寄与するので、妥当である。

2.プロジェクトの目標

1)GPM/DPRプロジェクトにおいて設定された目標が具体的に(何を、何時までに、可能な限り数値目標を付してどの程度まで)明確となっているか、2)設定された目標が設定された目的に照らし、要求条件を満たしているかを含め的確であるか、3)その目標に対する成功基準が的確であるか、について評価して下さい。
目標が複数設定される場合にはそれらの優先順位及びウェイトの配分が的確であるかを評価して下さい。

  妥当 概ね妥当 疑問がある
プロジェクトの目標 9 2 0

評価根拠のコメント

【妥当】
  • 1 GPM/DPRプロジェクトにおいて設定された目標が具体的に明確となっており、設定された目標が設定された目的に照らし、要求条件を満たし的確であり、その目標に対する成功基準が的確である。
  • 2 国際GPM計画の目標に基づくミッション要求条件を考慮し、プロジェクトの目的を達成するGPM/DPR総合システムのミッション要求条件を具体的数値目標で設定し、目標を明確にしている。DPRのサクセスクライテリアの目標も、二周波観測の意義を生かしており、目標に対する成功基準も的確であると思われる。
  • 3 DPRにおいて設定された目標は、ミッション要求条件に照らして、明確である。数値目標も具体的、明確に提示されている。DPRは、その名前が示すように、二周波数でのレーダ観測によって降水観測の能力・可能性の拡大を図るものであり、提案書においては、目標達成のために二周波数で観測することの意義が具体的に説明されており、それらの意義も明確である。DPRに関する成功基準も妥当である。
    また、二周波降水レーダDPR自体、難度の高い技術への挑戦という面があり、また世界で他に類を見ないものであり、軌道上において、かつ、開発過程を併せて、十分な技術検証・技術実証がなされることを期待したい。
    国際協力により達成されるミッション部分については、今回は評価の対象外とされたが、内容は実利用に深く関わるものであり、GPM/DPRプロジェクトとして、その達成に向けて大きな努力を払っていくものと、期待しておきたい。
  • 4 国内の関連研究組織および国際間の調整結果に基づいて基本要求仕様が定められている。更にフロントローディングによってその実現性の目処も得られており、プロジェクトとしての目標は妥当であると考える。
  • 5 全球合成降水マップの準リアルタイム配信によるデータ利用手法の技術開発にとどまらず、降水推定精度の向上、雨と雪との識別、高精度、高感度なる常時観測の実施、迅速なデータ処理等を期待したい。
  • 6 国内外からのミッション要求を満足する目標が定量的な評価基準として的確に設定されている。
  • 7 目標は具体的に記述されており、サクセスクライテリアも明確である。また、我が国が通信分野で培って来たKa帯の技術についても有効に活用されており、プロジェクト全体で明確な目標設定がなされている。
  • 8 プロジェクトにおいて設定された目標は適切である。実施に際しては、個々の技術開発の協力体制を強化し、高感度・高頻度・高精度な降水の観測等のための迅速な技術開発を期待する。
【概ね妥当】
  • 9 設計寿命に関してTRMMは、3年2ヶ月で燃料搭載が3年2ヶ月としていたが、軌道高度の調整等という努力もあり10年を超えようとしている結果をだしている。従って、GPMの燃料は、技術的な制約がありハードウエア本来の限られた寿命を設定できないとのことだが、TRMMでの結果もでており、大きな燃料タンクに5年分搭載するのであるのなら設計寿命も3年2ヶ月とせず5年と設定してもいいのではないか。
  • 10 定量的な表現は、地球科学の分野では、努力目標であり、それほど、細部にこだわらなくても良いと考える。最近、このような数値目標の細部にこだわりすぎている印象を持っている。
    全体として、妥当であろう。ただ、検証の手段に限りがあることに留意する必要があろう。

3.開発方針

GPM/DPRプロジェクトの開発活動全体を律する基本的な考え方ないし方針が、設定された目標の達成に対し的確であるかを評価して下さい。評価に当たっては、「衛星の信頼性を向上するための今後の対策について」で示された考え方を考慮してください。

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開発方針 6 5 0

評価根拠のコメント

【妥当】
  • 1 GPM/DPRプロジェクトの開発活動全体を律する基本的な考え方ないし方針が、設定された目標の達成に対し的確である。
  • 2 開発方針として掲げられた四項目の基本方針は大枠として妥当なものである。NASA(ナサ)の衛星に搭載するということによる技術面での配慮はDPRにおいて特別な留意点であることは理解される。
    二つのレーダの内の一つ、KaPRでは、研究開発段階において、そのハードウェアの主要部分をNICTが担当し、今後の開発段階では、そのPFM製作・試験をJAXA(ジャクサ)が担当する、となっている。NICT−JAXA(ジャクサ)間の協力体制の維持・強化の方策が具体的に示されており、十分な考慮がなされていると認められるが、特に、KaPRは新規のものであり、研究開発を担当したNICTの技術者が、今後も、定常的に、深く関わっていける体制が取られるものと期待したい。
  • 3 成功裏に継続実施されているTRMMの実績に基いて、ミッション機器はわが国の担当、衛星バスは米国の担当の日米の共同プログラムとして進められる。この開発方針は、技術の継続性および信頼性確保の点からも妥当な枠組みであると考える。
  • 4 開発研究段階にてフロントローディングの考え方が充分に取り込まれており、開発段階においてもその流れのもとDPR開発を確実に実施しようとする方針が明確になっている。なお、問題が起こり得るとすれば衛星バスとの整合性に関わることかもしれない。いうまでもないことであるが、NASA(ナサ)との密なる情報交換/調整をお願いしたい。
  • 5 開発の基本方針は妥当である。プロジェクトの実現にはJAXA(ジャクサ)-NICT-契約企業との協力体制が重要であることから、三者間のより一層の体制強化を期待する。また、信頼性のある既存技術を駆使し、開発期間の短縮化とコストの削減の努力を望む。
【概ね妥当】
  • 6 開発研究移行後に進められたNICTとのDPR開発分担の確定、NASA(ナサ)とのGPM主衛星打ち上げ分担の明確化、打ち上げ時期見直しに伴う開発スケジュールの設定を背景にして、ミッション要求の達成および確実な開発をめざす4つにまとめられたDPR開発の基本方針は概ね妥当だと思われる。特にNICTとの開発分担確定に基づくNICT-JAXA(ジャクサ)の連絡・開発体制の強化は、基本方針とされた信頼性の向上を保つ意味でも重要である。
  • 7 設計寿命はTRMMの3年2ヶ月よりながくすべきである。
  • 8 JAXA(ジャクサ)とNICTとの開発分担は明確になっている。今回は、GPM計画の副衛星であるNASA(ナサ)との連携が組み込まれていることから「開発方針」の中にもJAXA(ジャクサ)との連携を明確に記載すべきではないか。
  • 9 開発方針は具体的に記述されており、目標達成に向け開発分担などを含め的確な方向付けがなされている。
  • 10 特になし。ただ、打ち上げ計画が遅れに遅れており、今後とも、予断を許さない感じを持っており、その点に関する留意が必要であろう。

4.システム選定及び設計要求

システム(衛星を実現する技術的な方式)の選定及び設計要求(設計を固めるに当たっての骨格的な諸条件)が設定された目標に照らし的確であるかを評価して下さい。評価に当たっては、特に次の点に着目して下さい。

  • 1)関係する技術の成熟度の分析が行われ、その結果が踏まえられているか
  • 2)コストも含めて複数のオプションが比較検討されているか
  • 3)システムレベル及びサブシステムレベルで、どの技術は新規に自主開発を行い、どの技術は既存の成熟したもの(外国から調達するものに関しては、信頼性確保の方法も含めて)に依存するか、という方針が的確であるか

なお、上記諸点の検討においては、国内で実現可能な技術のみでなく、海外で開発中の技術をも検討の対象に含めます。

  妥当 概ね妥当 疑問がある
システム選定及び設計要求 6 5 0

評価根拠のコメント

【妥当】
  • 1 システムの選定及び設計要求が設定された目標に照らし的確である。
  • 2 DPRのシステムの選定、および機能・性能に関わる設計要求の内容は、設定された目標に照らして的確・妥当である。DPRのフロントローディング計画ならびにその実施状況の説明からは、アンテナ、送受信系などのハードウェア、および制御系に関して、高いレベルの技術開発が行われてきたことを読み取ることができ、開発移行のための新規技術評価が概ね完了していることが理解できる。今後のPFMにおいては、研究開発でのエンジニアリングモデルが部分試作であった機器もあることから、コンポーネントの製造とシステム製作、ならびに地上での機能確認と性能試験が、高い信頼度をもって行われることを期待したい。
    DPRの信頼性確保のために、KuPR又はKaPRの全損につながる単一故障点を極力避ける構成が検討されるとともに、同時制御されるKuPRとKaPRに関して、そのどちらか片方だけでも動作できるサバイバル性の確保が図られている。これらの点も評価しておきたい。
    プロジェクト内の利用研究に関する大きな課題は、DPRの処理アルゴリズムの開発と校正検証、および全球合成降水マップの作製であるとみなされ、それらの概略は地上システムおよび利用研究のデータ提供の流れの図から読み取ることができる。DPRの処理アルゴリズムの開発と校正検証は、TRMMの成果・実績をベースとし、特に二周波を用いた降水推定アルゴリズムに重点が置かれると見受けられるが、検証サイト等による検証も含め、関係分野の研究者の参加のもとに、充実した実行計画が立てられていくことを期待したい。
    また、全球合成降水マップの作製は今回の評価の対象外かもしれないが、GPMにおける国際協力に特に深く関わる部分であり、DPRを持つわが国として、リーダーシップをもってそれに関わっていくことを期待したい。
  • 3 レーダ観測の一般論から判断しても、KuバンドとKaバンドの2周波のレーダを使用して観測精度向上を目指すシステムの選定は妥当である。またフロントローディングに基いて実現可能な目標が定められており、更にその目標精度は国際的な研究者のコンセンサスになっておりその点からも要求仕様の設定は妥当であると考える。
  • 4 TRMM/PRでの経験と実績から技術力の信頼性を高めるための開発の差別化ができている。また、今回の優位性である「できるだけリアイルタイム」にデータ情報を提供することがポントなっていることから、KuPRとKaPRどちらか単一故障を避ける構成となっていることは、DPRの信頼性向上といえる。すでに、アンテナ系・受信系・システム制御データ処理部の新規技術の試作モデルで確認済みであり、今後は熱設計・電気的機能・性能の確認が順調に進められているようだ。
    しかし、地上システムでは、運用の低コスト化等の提案があるが、NASA(ナサ)との協力により共有ソフトウエア開発を分担する点では、いまひとつ不明瞭。
  • 5 関係技術の成熟度およびフロントローディング技術項目の実施状況が明確に示されて、信頼性向上についても具体的な検討策が示されている。
【概ね妥当】
  • 6 DPRシステムの技術成熟度及び評価計画は、TRMM/PRの実績を充分に生かして、システム選定および設計要求に対応した新規技術の識別を的確に進めている。DPRの信頼性向上を図るため、KuPRまたはKaPR全損につながる単一故障点を極力避ける構成の検討や、どちらか片方だけでも動作できるサバイバル性の確保などを考慮していることは評価したい。それに基づき進められているDPRのフロントローディング計画及びその実施状況については概ね妥当だと思われる。地上システムでの運用の低コスト化・信頼性向上のための試み、利用研究についての配慮もそれなりに評価できる。
  • 7
    • 信頼性の確保のため、特に製作現場に明るい信頼性技術の専門家の参画を望む。
    • きく8号の事故が示している2つの事は 1.信頼性は机上の理論だけでは駄目で、より現場に密着して考える必要がある事。2.サバイバル性の確保については徹底的に地上での実証実験をすべきである事。
  • 8 信頼性向上の視点から詳細な検討がなされている。ただし、2)のコストの点からの比較検討は提出された資料から把握することは不可能である。
  • 9 打ち上げの遅れにより、開発期間が長くとることになったので、開発などについては、問題がないと思う。

5.開発計画

スケジュール、資金計画、実施体制及び設備の整備計画等について、設定された目標に照らし的確であるかを評価して下さい。
特に、共同開発機関や関係企業との責任分担関係及びJAXA(ジャクサ)のプロジェクトチームに付与される権限と責任の範囲が明確になっているかについて評価して下さい。

  妥当 概ね妥当 疑問がある
開発計画 5 6 0

評価根拠のコメント

【妥当】
  • 1 スケジュール、資金計画、実施体制及び設備の整備計画等について、設定された目標に照らし的確である。
  • 2 スケジュール、資金計画、実施体制等、全般に妥当である。関係機関との協力関係や関係企業との責任分担関係も適切に設定されている。NASA(ナサ)が担当する衛星バスへの対応は、スケジュール上、特に留意するべき点の一つであろう。
  • 3 JAXA(ジャクサ)と開発企業との責任分担を明確にする事は必要だが、製造した物が開発仕様を満足するか否かを試験によってのみ立証することは不可能と思われるので両者一体となった活動が不可欠である。
  • 4 スケジュールや責任分担などは的確あるいは明確に示されている。
    ただ、資金計画の額そのものについての妥当性に関しては判断材料が少なくてよくわからないが、無駄を排除すための取り組み努力は十分になされていると評価したい。
【概ね妥当】
  • 5 資金計画、開発スケジュール、NASA(ナサ)−JAXA(ジャクサ)の分担に基づく国内協力機関の実施体制、対応する利用分野の利用機関との関係、JAXA(ジャクサ)社内での実施体制、いずれも概ね的確に明示されており妥当だと思われる。またJAXA(ジャクサ)と衛星開発企業の責任分担の設定も妥当なものだと思われる。
  • 6 フロントローディングでクリティカルポイントは識別されており、その成果に基いた開発計画となっている。開発体制としてはJAXA(ジャクサ)主導でNICTの協力の下で実施されると考えるが、電気的なグランドの採り方、部分故障発生時のSafety対策等は単にインタフェースでは片付かず、統一的なアプローチが必要である。従来インタフェースの相手側にはあまり立ち入らなかったために不具合が拡大した例もあることから、それぞれの機関の専門は専門として、一元的な設計とベリフィケーションを実施することの重要性を再度認識し直して作業を推進することを要望したい。
  • 7 開発スケジュール及びJAXA(ジャクサ)・NICT・NASA(ナサ)・GPM検討委員会及びサイエンティストによるアドバイザーの実施体制は検討されているが、NASA(ナサ)―JAXA(ジャクサ)との分担も含め資金計画の具体性に欠ける。
  • 8 実施体制において、個々の機関の責任分担の内容は評価できる。しかし、このプロジェクトの統括機関の権限と責任をより明確に記述すべきではないだろうか。
  • 9 打ち上げの遅れや、予算計画の変更など意外なことが起こりうるので、万全の準備をしておいてもらいたい。

6.リスク管理

プロジェクトの可能な限り定量的なリスク評価(リスクの摘出・同定とそれがどの程度のものかの評価、リスク低減のためのコストと成功基準との相対関係に基づく許容するリスクの範囲の評価)とその結果に基づくリスク管理について、採られた評価の手法、プロジェクトの初期段階で抽出された開発移行前に処置するべきリスクへの対処の状況、実施フェーズ移行後に処置するリスクに対する対処の方向性が明確であるかを評価して下さい。
なお、リスクを低減するための方法として、全てのリスクをそのプロジェクトで負うのではなく、プログラムレベルで、他のプロジェクトに分散し、吸収することも考慮して評価して下さい。

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リスク管理 6 5 0

評価根拠のコメント

【妥当】
  • 1 プロジェクトの定量的なリスク評価とその結果に基づくリスク管理について、評価の手法、プロジェクトの初期段階で抽出された開発移行前に処置するべきリスクへの対処の状況、実施フェーズ移行後に処置するリスクに対する対処の方向性が明確である。
  • 2 リスク管理の方針および実施計画は妥当である。主要なリスクの研究開発段階での処理状況は適切に整理されており、開発段階での対応計画も明確に示されている。
  • 3 リスクが現実に発生するとすれば出来るだけ早く予知出来る能力がプロジェクトマネージャーに要求される。
  • 4 総合プロジェクトに関する主要なリスク処置では、かかわる人々の連携の力が試される。GPM/DPR総合プロジェクトリスク管理計画書を制作することで安心感はあるが、実際に問題が起きた時に現場で要になるのはプロジェクトマネージャーであり、支持をだすリーダーの力量が問題となる。日本の組織団体の弱いところが管理計画書などを作成することにより迅速な対応の遅れにつながることもあり、場面場面での臨機応変さを望みたい。
  • 5 リスクの想定とそれらに対する対応方針が明確に示されている。
  • 6 開発段階で主要なリスクの処置状況と対応計画が詳細に検討されていることは評価できる。今後、プロジェクトの進展に応じて、更新されることを期待する。
【概ね妥当】
  • 7 リスク管理方針、リスク管理の実施計画で示されたリスク管理体制の構築、リスク管理実行プランはいずれも概ね妥当だと思われる。またリスク管理状況の把握とその対応に関し、リスク項目をカテゴリに分けた開発研究段階での処置に基づき、開発段階での対応計画を比較的具体的に構築している点は評価できる。
  • 8 プロジェクトとしてのリスク管理の他に、技術上のリスク管理も重要である。フロントローディングによって予めクリィティカルポイントを洗い出して事前に対策を採っていること、またSingle Pointを洗い出して対策を事前に検討していることは評価できるが、単に気をつけるとか念入りな試験を実施する等では無く、信頼性手法に基いた評価(FMECA等)或いはSingle Pointが避けられない場合には、ランダム故障を前提とした場合の信頼度は幾つ以上等の,定量的な評価を試みることも必要ではないか?
  • 9 基本的に、日米共同プロジェクトであり、日本のみならず、米国の影響を大きく受けることになる。TRMMの成果と経験を生かして、対処してもらいたい。

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