3.GPM/DPRプロジェクトを取り巻く状況

 人類は地球規模の問題として、地球温暖化や広域環境破壊といったその生存を脅かしかねない深刻な問題に直面している。このような地球規模の問題の発生を予測し、影響を防止・軽減する上で重要な役割を果たすため、GEOSS(複数の観測システムからなる全球地球観測システム)の構築が提唱され、第3回地球観測サミットにおいて「GEOSS10年実施計画」(平成17年2月16日)が承認された。
 我が国は、総合科学技術会議において、「地球観測の推進戦略」(平成16年12月27日)をとりまとめ、我が国が地球観測に取り組むに際して基本とするべき考え方、戦略的に取り組むべき重点課題等を明らかにし、地球温暖化・炭素循環変化、気候変動・水循環変動及び災害の3分野(以下「貢献3分野」という。)について特に積極的にGEOSSに貢献する旨を表明している。
 また、第3期科学技術基本計画に示された戦略的重点化の方針に基づき策定された分野別推進戦略においても、重要な研究開発課題や戦略重点科学技術として示された課題の中に、多くの地球観測に関係する課題が含まれており、さらには「海洋地球観測探査システム」が国家基幹技術として位置付けられるなど、地球観測の政策的重要性は、より明確な形で示されてきている。
 これを受け、文部科学省 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 地球観測推進部会では、毎年度、我が国における地球観測の具体的な実施方針を策定している。また、宇宙開発委員会は、地球観測特別部会を設置し、衛星による長期継続的な地球観測データの取得・提供に向けて「我が国の地球観測における衛星開発計画及びデータ利用の進め方について」(平成17年6月27日)をとりまとめた。
 このような状況を踏まえ、JAXA(ジャクサ)は、地球規模の水循環メカニズムの把握に貢献するために、地球温暖化・水循環観測の一環として、全球降水観測(GPM:Global Precipitation Measurement)計画に参加することとしている。この計画は、二周波降水レーダ(DPR:Dual-frequency Precipitation Radar)及びマイクロ波放射計を搭載した1機の主衛星と、マイクロ波放射計またはマイクロ波サウンダを搭載した米欧アジア各国の複数機のコンステレーション衛星(副衛星群)により全球降水の高精度・高頻度観測を行う、国際協力ミッションである。主衛星は宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))と米国航空宇宙局(NASA(ナサ))の共同開発であり、JAXA(ジャクサ)は情報通信研究機構(NICT)の協力を得て二周波降水レーダ(DPR)の開発を行う。
 この全球降水観測/二周波降水レーダ(以下「GPM/DPRプロジェクト」)は、国家基幹技術の海洋地球観測探査システムの衛星観測監視システムを構成するものであるとともに、GEOSS10年実施計画の中に位置付けられるものである。

前のページへ

次のページへ