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国家基幹技術としての「衛星観測監視システム」の推進の在り方について(見解)

平成18年5月24日
宇宙開発委員会

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 宇宙開発の国家基幹技術としての位置付けについては、宇宙開発委員会は、昨年7月に宇宙輸送、衛星による観測監視、衛星情報の解析利用から構成される「我々の生活の安全・安心を確保するための宇宙空間利用システム技術」を国家基幹技術と位置付けるべきとの見解をまとめた。今般、第3期科学技術基本計画及びそれに基づく分野別推進戦略が決定されたことから、昨年7月の見解を踏まえつつ、国家基幹技術「海洋地球観測探査システム」の重要な構成要素である「衛星観測監視システム」の推進の在り方について、国家基幹技術としての一貫した推進体制・評価体制等の有効性及び効率性の観点から、宇宙開発委員会としての見解を述べる。

(1) 計画の妥当性
   衛星観測監視システムは、地球規模の環境問題や大規模自然災害等の脅威に対する危機管理を自律的に行うとともに、GEOSS(複数システムからなる全球地球観測システム)構築に貢献するために、地球観測・災害監視を可能とする複数の衛星群による衛星観測監視システムを確立し、「海洋地球観測探査システム」の構成要素として全球の多様な観測データの収集・提供を行うことを目指している。
 衛星観測監視システムの目標は、「分野別推進戦略」、「我が国における宇宙開発利用の基本戦略」、「宇宙開発に関する長期的な計画」等を踏まえつつ、総合科学技術会議の「地球観測調査検討ワーキンググループ各部会報告」及びそれに則して宇宙開発委員会が平成17年6月にとりまとめた「我が国の地球観測における衛星開発計画及びデータ利用の進め方について」に基づき、将来の我が国全体の観測ニーズを見通して複数の衛星計画として明確に整理されている。これらの衛星計画は適切に役割分担がなされており、データ統合・解析システムにより適切に統合されれば、有効かつ効率的に成果が挙げられると期待できる。
 計画期間は、GEOSS10年実施計画の対象となる10年間としているが、これは実利用の技術実証のためのシステムの構築という目標に照らして妥当であり、当該計画期間終了後も、引き続き適切なシステムの運用が図られることを期待する。
 投入資金については、過去の宇宙開発プロジェクトにおいて開発費が当初計画に比べ増大する傾向にあり、このことは、宇宙開発を行う上で往々にして起こり得る問題であるが、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))の計画の当初見積り及びコスト管理の徹底が不十分であったことを示している。JAXA(ジャクサ)が、過去の反省に立ち、研究段階の充実による技術的リスクの低減、経営層によるプロジェクト進捗管理の監視強化等を通じての計画の当初見積り及びコスト管理の強化に組織全体で取り組むとともに、衛星バス技術の共通化や過去に開発したセンサ技術の活用等により効率化に努めていることについては一定の評価ができるが、衛星観測監視システムが大規模かつ長期的なプロジェクトであることにかんがみ、技術開発に係るリスクや不測の事態への対応に係るリスクにも十分配慮し、一層入念かつ精緻に不断のコスト管理を実施していくことを期待する。
 宇宙開発委員会ではこれまで、推進部会において「宇宙開発に関するプロジェクトの評価指針」に基づき、温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)、全球降水観測計画/二周波降水レーダ(GPM/DPR)、準天頂衛星システムを利用した高精度測位実験システムの事前評価を実施しており、今後もこの指針の下で適時適切に評価を実施する。
 本計画については、今後とも、衛星開発、打上げ、衛星運用、データ取得・解析、実利用を一つのシステムとして認識し、利用者と開発者の協働による計画の推進に心掛けることを期待する。

(2) 体制の妥当性
   衛星観測監視システムは、海洋地球観測探査システムの構成要素として、文部科学省がプロジェクト管理を行い、JAXA(ジャクサ)が、関係省庁及び研究機関等と協力してプロジェクトを実施する体制となっている。JAXA(ジャクサ)には、全体の実施責任を担う宇宙利用推進本部長(理事)の下に宇宙利用・国際協力・衛星システム開発を担当する統括がそれぞれ置かれ、各衛星プロジェクトについても衛星システム開発統括の下にプロジェクトマネージャが配置される等、明確な責任分担がなされている。今後は、管理階層の削減による組織の一層の平坦化を進め、担当者間の責任と権限を更に明確化するとともに、責任者間の直接対話による情報伝達と意思決定の更なる迅速化を期待する。
 また、共同開発を行う関係省庁及び研究機関等との協力体制及び役割分担については明確である。衛星観測監視システムを有効かつ効率的に推進するには、外部の利用者との連携が重要であるが、利用者からの要求は、宇宙利用統括の下で一元的にとりまとめられ、各衛星プロジェクトに反映される体制となっている。
 評価体制については、宇宙開発委員会の評価のみならず、JAXA(ジャクサ)における技術評価、文部科学省独立行政法人評価委員会におけるJAXA(ジャクサ)の業務実績評価が行われており、それぞれの役割に基づく階層的な評価システムが構築されている。これらの評価には、幅広い分野の有識者が参加しており、多様な観点の意見を取り込むことが可能な体制となっている。
 マネージメント体制については、平成16年度に宇宙開発委員会において「特別会合報告書」をとりまとめ、JAXA(ジャクサ)と製造企業の間の役割・責任を見直し、製造企業が一元的に詳細設計から製造までをとりまとめるプライム制を導入することを提言したが、JAXA(ジャクサ)においては、同報告書に沿って現在着実な取組が行われている。
 さらに、JAXA(ジャクサ)においては、システムズエンジニアリング(注)組織を新設する等プロジェクトを組織的に支援する体制を構築しており、マネージメント体制の強化に向けて組織を挙げた取組を行っている。特に信頼性の確保は、宇宙開発委員会として一貫して宇宙開発における最重要事項として掲げてきたが、JAXA(ジャクサ)においても信頼性改革本部を設置するとともに、製造企業と協働して信頼性向上に取り組む等、体制への反映を進めている。その成果は、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)の着実な観測運用につながっていると認められる。

(注)  システムズエンジニアリングとは、ミッション要求を達成するシステムを開発するに当たって、ライフサイクル全体を見通し、定められた範囲内で品質・コスト・スケジュール的にバランスの取れた適切なシステムを得るための専門分野横断的な一連の活動のこと。開発の初期段階でシステム全体を見渡した思考や内在するリスクの識別等を体系的に行うことにより、トータルコストの低減化を図る。

(3) 運営の妥当性
   我が国はこれまで、気象観測衛星、地球観測衛星、通信衛星等の開発により衛星観測監視技術を獲得してきた。その過程においては、軌道上の衛星の運用異常等を経験したが、宇宙開発委員会をはじめとする評価体制の活用により業務の在り方を検討し、改善を図ってきている。
 宇宙開発委員会としては、GOSAT、GPM/DPR及び準天頂衛星システムを利用した高精度測位実験システムについて、平成14年度から平成16年度にかけて事前評価を実施した。GOSATについては開発への移行は妥当であると判断し、GPM/DPR及び準天頂衛星システムを利用した高精度測位実験システムについては開発研究への移行は妥当であると判断した。平成16年度には、「衛星の信頼性を向上するための今後の対策について」において、実利用の技術実証を主目的とする衛星については既存技術を主に活用した概ね同一形態のバスを繰り返し使用し、信頼性と安定性のある中型バスの確立を目指すとともに、利用ニーズに対して即時的な対応を図るため5年程度以内の短期間で開発を行うとの方針を示しており、JAXA(ジャクサ)の衛星開発は、この方針に基づき計画されている。
 上記の開発経緯、評価結果及び評価に対する対応を踏まえ、衛星観測監視システムについては、適切な推進体制及び評価体制により計画、実行、評価、改善のマネージメントサイクルが有効に機能していると判断できる。

 宇宙開発委員会としては、衛星観測監視システムの推進の在り方については、「我が国の地球観測における衛星開発計画及びデータ利用の進め方について」及び「衛星の信頼性を向上するための今後の対策について」等のこれまでの宇宙開発委員会の提言を踏まえた取組が行われており、妥当であると判断する。
 文部科学省及びJAXA(ジャクサ)においては、引き続き、我々の生活をより安全で安心なものとしていくための宇宙空間の更なる利用に向けて、宇宙輸送システムとも連携し、国家基幹技術としての位置付けに適した推進体制・評価体制等により衛星観測監視システムを推進するとともに、利用者と開発者が一体となって円滑にプロジェクトを推進し、成果を早期に社会に還元することを望む。
 また、海洋地球観測探査システムにおいては、衛星観測監視システムが提供するデータを含む多様なデータが、観測手段の違いを越えて効果的に統合され、利用者の観測ニーズに高い利便性をもって応えるものとなることを期待する。

(研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付)

-- 登録:平成21年以前 --