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国家基幹技術としての「宇宙輸送システム」の推進の在り方について(見解)

平成18年5月24日
宇宙開発委員会

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 宇宙開発の国家基幹技術としての位置付けについては、宇宙開発委員会は、昨年7月に宇宙輸送、衛星による観測監視、衛星情報の解析利用から構成される「我々の生活の安全・安心を確保するための宇宙空間利用システム技術」を国家基幹技術として推進すべきとの見解をまとめた。今般、第3期科学技術基本計画及びそれに基づく分野別推進戦略が決定されたことから、昨年7月の見解を踏まえつつ、国家基幹技術としての「宇宙輸送システム」の推進の在り方について、国家基幹技術としての一貫した推進体制・評価体制等の有効性及び効率性の観点から、宇宙開発委員会としての見解を述べる。

(1) 計画の妥当性
   文部科学省においては、我が国が必要な時に、独自に宇宙空間に必要な人工衛星等を打ち上げる能力を維持するために、世界最高水準の基幹ロケットを確立・維持し、将来の基本的なニーズに対応できる自律的な技術基盤を保持することにより、自律的な宇宙輸送システムの確立を目指している。
 宇宙輸送システムは、H−2Aロケット、H−2Bロケット(H−2A能力向上型)、宇宙ステーション補給機(HTV)から構成されるが、各構成プロジェクトの目標は、「分野別推進戦略」、「我が国における宇宙開発利用の基本戦略」、「宇宙開発に関する長期的な計画」等を踏まえ、宇宙輸送システムの目標に則して明確に整理されている。
 また、各構成プロジェクトの開発期間は、世界最高水準の基幹ロケットの確立・維持、国際宇宙ステーション(ISS)への物資の輸送という意義・必要性を満たすように設定されている。
 投入資金については、過去の宇宙開発プロジェクトにおいて開発費が当初計画に比べ増大する傾向にあり、このことは、宇宙開発を行う上で往々にして起こり得る問題であるとはいえ、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))の計画の当初見積り及びコスト管理の徹底が不十分であったことを示している。JAXA(ジャクサ)が、過去の反省に立ち、研究段階の充実による技術的リスクの低減、経営層によるプロジェクト進捗管理の監視強化等を通じての計画の当初見積り及びコスト管理の強化に組織全体で取り組んでいることについては一定の評価ができる。H−2Bロケット及びHTVについては、ISS計画の今後の動向が外的要因として開発費に大きな影響を与え得る可能性があること及び我が国が知見を十分に有していない有人宇宙技術に係るリスクが存在することにかんがみ、従来のプロジェクト以上に厳しいコスト管理が必要である。
 JAXA(ジャクサ)においては、H−2Aロケットの基本技術の多くをH−2Bロケットの開発に活用する等により効率的な実施に努めているが、上に述べた諸点を踏まえ、技術開発に係るリスクや不測の事態への対応に係るリスクにも十分配慮し、適時に計画を見直すための限界投入資金の目安の検討・設定等を行い、一層入念かつ精緻に不断のコスト管理を実施していくべきである。
 宇宙開発委員会ではこれまで、推進部会において「宇宙開発に関するプロジェクトの評価指針」に基づきH−2Aロケット試験機の事後評価、H−2Bロケットの中間評価を実施するとともに、安全部会において「ロケットによる人工衛星等の打上げに係る安全評価基準」に基づきロケット打上げ前の安全評価を実施しており、今後もこれらの指針・基準の下で適時適切に評価を実施する。

(2) 体制の妥当性
   国家基幹技術は、国が主導する一貫した推進体制の下で実施するプロジェクトである。この点について、宇宙輸送システムは、従来からプロジェクト管理を行う文部科学省及びプロジェクトを実施するJAXA(ジャクサ)により一元的に推進する体制が構築されており、JAXA(ジャクサ)には、全体の実施責任を担う宇宙基幹システム本部長(理事)の下にH−2Aロケットプロジェクト(H−2Bロケットを含む)及びHTVプロジェクトのプロジェクトマネージャが配置される等、明確な責任分担がなされている。今後は、管理階層の削減による組織の一層の平坦化を進め、担当者の責任と権限を更に明確化するとともに、責任者間の直接対話による情報伝達と意思決定の更なる迅速化を期待する。
 評価体制については、宇宙開発委員会の評価のみならず、JAXA(ジャクサ)における技術評価、文部科学省独立行政法人評価委員会におけるJAXA(ジャクサ)の業務実績評価が行われており、それぞれの役割に基づく階層的な評価システムが構築されている。これらの評価には、幅広い分野の有識者が参加しており、多様な観点の意見を取り込むことが可能な体制となっている。
 マネージメント体制については、宇宙輸送システムを有効かつ効率的に推進するには構成プロジェクト間の連携が重要であるが、H−2Aロケット及びH−2Bロケットは同一の体制で推進され、HTVについてもJAXA(ジャクサ)宇宙基幹システム本部の下で、ISS計画との調整を含め、緊密な連携が図られている。
 また、平成16年度には、宇宙開発委員会において「特別会合報告書」をとりまとめ、JAXA(ジャクサ)と製造企業の間の役割・責任を見直し、製造企業が一元的に詳細設計から製造までをとりまとめるプライム制を導入することを提言したが、JAXA(ジャクサ)においては、同報告書に沿って現在着実な取組が行われている。
 さらに、JAXA(ジャクサ)においては、システムズエンジニアリング(注)組織を新設する等プロジェクトを組織的に支援する体制を構築しており、マネージメント体制の強化に向けて組織を挙げた取組を行っている。特に信頼性の確保は、宇宙開発委員会として一貫して宇宙開発における最重要事項として掲げてきたが、JAXA(ジャクサ)においても信頼性改革本部を設置するとともに、製造企業と協働して信頼性向上に取り組む等、体制への反映を進めている。その成果は、H−2Aロケット7号機以降の打上げ連続成功に現れていると認められる。今後とも、JAXA(ジャクサ)においては、設計余裕の増加、実証試験の強化、作業安全の強化、自律性の向上に向けた部品の国産化等のリスク管理に継続的に取り組むことを期待する。

(注)  システムズエンジニアリングとは、ミッション要求を達成するシステムを開発するに当たって、ライフサイクル全体を見通し、定められた範囲内で品質・コスト・スケジュール的にバランスの取れた適切なシステムを得るための専門分野横断的な一連の活動のこと。開発の初期段階でシステム全体を見渡した思考や内在するリスクの識別等を体系的に行うことにより、トータルコストの低減化を図る。

(3) 運営の妥当性
   我が国はこれまで、H−2ロケットにより着実に国産大型ロケット技術を獲得し、更なる信頼性向上及びコスト低減を目指したH−2Aロケットに発展させてきた。その過程においては、打上げ失敗を経験したが、宇宙開発委員会をはじめとする評価体制の活用により業務の在り方を検討し、改善を図ってきている。また、H−2Aロケットの輸送能力向上型のH−2Bロケットについては、平成15年度の中間評価により、民間の主体性を重視した官民共同開発に変更になった計画に基づき開発を進めることは適切であると判断した。JAXA(ジャクサ)においては、これらの評価における指摘事項に基づき、現在着実な取組を行っている。
 上記の開発経緯、評価結果及び評価に対する対応を踏まえ、宇宙輸送システムについては、適切な推進体制及び評価体制により計画、実行、評価、改善のマネージメントサイクルが有効に機能していると判断できる。

 宇宙開発委員会としては、宇宙輸送システムの推進の在り方については、これまでの宇宙開発委員会の提言を踏まえた取組が行われており、全体としては妥当であると判断する。ただし、ISS計画と関連が深いH−2Bロケット及びHTVのコスト管理の強化及び管理階層の削減による組織の平坦化による責任と権限の明確化に対する取組については、一層の努力が必要である。宇宙開発委員会としては、これらについて今後も関心を持って見守ることとし、プロジェクトの進捗状況について適時適切に報告を受けるとともに、必要に応じ、厳正な評価を行っていくこととする。
 文部科学省及びJAXA(ジャクサ)においては、引き続き、我々の生活をより安全で安心なものとしていくための宇宙空間の更なる利用に向けて、宇宙輸送システムと他のシステム等との連携の重要性についても十分に認識し、国家基幹技術としての位置付けに適した推進体制・評価体制等により宇宙輸送システムを推進することを期待する。

(研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付)

-- 登録:平成21年以前 --