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宇宙開発に関する重要な研究開発の評価第25号科学衛星(ASTRO-G)プロジェクトの事前評価結果

平成18年7月11日
宇宙開発委員会 推進部会

ダウンロード/印刷用(PDF:232KB)]

−目次−

1. 評価の経緯
2. 評価方法
3. ASTRO−Gプロジェクトの概要
4. ASTRO−Gプロジェクトの事前評価結果

参考1   宇宙開発に関する重要な研究開発の評価について
参考2 第25号科学衛星(ASTRO−G)プロジェクトの評価実施要領
参考3 第25号科学衛星(ASTRO−G)プロジェクトの事前評価に係る推進部会の開催状況
付録1 第25号科学衛星(ASTRO−G)プロジェクトの評価票の集計及び意見
付録2 第25号科学衛星(ASTRO−G)プロジェクトの事前評価について



1. 評価の経緯
   宇宙開発を効率的かつ効果的に推進するため、宇宙開発委員会においては、「宇宙開発に関する重要な研究開発の評価について」(参考1)に基づき、重要な研究開発の評価を行い、その結果を公開するとともに、宇宙開発委員会として独立行政法人宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA(ジャクサ)」という。)が実施するプロジェクトの実施内容や実施体制等に係る助言を与えることとしている。
 第25号科学衛星プロジェクト(以下「ASTRO−Gプロジェクト」という。)については、JAXA(ジャクサ)が平成19年度から「開発研究」への移行を予定しているため、平成19年度概算要求に向けて、宇宙開発委員会推進部会において事前評価を行った。

2. 評価方法
   評価は、ASTRO−Gプロジェクトを対象とし、推進部会が定めた評価実施要領(参考2)に即して実施した。推進部会の構成員は、参考1の別紙のとおりである。
 今回の評価は「開発研究」への移行のための評価であるため、以下の項目のうち、企画立案フェーズの早い時期に評価することが望ましい(1)から(4)について評価を行った。(5)については、「開発」への移行段階で評価するものであるが、今回は、「開発研究」への移行に当たり検討の進捗状況を確認し、必要に応じ助言することとした。
 なお、プロジェクトの目的及び目標については、宇宙科学研究のコミュニティの合意を経てプロジェクトを選定してきたことを念頭において評価を行った。
 
(1) プロジェクトの目的(プロジェクトの意義の確認)
(2) プロジェクトの目標
(3) 開発方針
(4) 実施体制
(5) その他
 
システム選定及び基本設計要求
開発計画(スケジュール、資金計画、設備の整備計画等)
リスク管理

   評価の進め方は、まず、JAXA(ジャクサ)からASTRO−Gプロジェクトについて説明を受け、各構成員に評価票(参考2の別紙1(PDF:165KB))により、評価項目ごとに意見、判定を求めた。各評価項目に対する判定は3段階表示として集計した。
 本報告は、各構成員の意見、判定を集約して、事前評価結果としてとりまとめたものである。
 なお、本報告の末尾に構成員から提出された全意見及びJAXA(ジャクサ)の説明資料を付録として添付した。

3. ASTRO−Gプロジェクトの概要
   ASTRO−Gプロジェクトは、平成17年11月に運用を終了した第16号科学衛星「はるか」の後継として、宇宙からのVLBI(超長基線干渉計)観測、即ちスペースVLBI観測を行うことを計画した電波天文衛星である。
 近年、ほとんどすべての銀河の中心には、超巨大ブラックホールが存在すると考えられているが、その周辺構造は謎に包まれている。また、銀河の中心で非常に明るく輝く活動銀河核や原始星を生み出している星形成領域等において、加速された荷電粒子が一方向又は双方向に高速で吹き出すジェットと呼ばれる現象が観測されているが、その発生のメカニズムは未だ解明されていない。
 このような未知の物理現象を解明し、宇宙の構造と進化を理解するため、ASTRO−Gプロジェクトは、史上最高の解像度で銀河や星形成領域の中心部から届く電波を観測することを目指している。
 ASTRO−Gプロジェクトは、JAXA(ジャクサ)宇宙科学研究本部が募集した第25号科学衛星の候補の一つとして提案された。JAXA(ジャクサ)は、複数の候補について宇宙科学研究のコミュニティの研究者から構成される宇宙理学委員会、宇宙工学委員会等による評価を行った結果、ASTRO−Gプロジェクトを第25号科学衛星に最適な計画として選定した。ASTRO−Gプロジェクトは、現在、平成23年度の打上げを目指して、平成19年度から「開発研究」への移行を予定している。

4. ASTRO−Gプロジェクトの事前評価結果
 
(1) プロジェクトの目的(プロジェクトの意義の確認)
   ASTRO−Gプロジェクトは、未知のフロンティアへの挑戦、宇宙の起源に関する根源的な知見の獲得を目指して、ブラックホール等の高エネルギー活動天体現象の観測研究に重点化したものであり、以下を目的として計画されている。
 
史上最高の解像度で、銀河や星形成領域の中心部を描き出し、その物理状態を解明する。
高感度化や偏波観測機能により、「はるか」より観測対象を広げ、さらに多くの天文学的成果を引き出す。
世界の研究者に、ASTRO−Gでしか取得することができないスペースVLBIデータを提供し、世界の天文学の発展のために貢献する。
そのための主たる研究として、以下のようなテーマを行う。
 
活動銀河核のジェットの構造や収束・加速の解明
超巨大ブラックホール周辺の構造の解明
原始星の構造の解明
   特に、世界初のスペースVLBIに成功した「はるか」を発展させた、世界で唯一のスペースVLBI計画であるASTRO−Gプロジェクトを我が国の独自性を発揮して実施することは、電波天文学における我が国の国際的なリーダシップや国際的地位の向上に大きく寄与すると考えられる。
 以上により、ASTRO−Gプロジェクトの目的は、「我が国における宇宙開発利用の基本戦略」及び「宇宙開発に関する長期的な計画」における宇宙科学の目的を的確に具体化したものと評価できる。

  判定:妥当

(2) プロジェクトの目標
   ASTRO−Gプロジェクトは、上記の目的を達成するために、「はるか」より高い周波数帯を利用した観測を行い、「はるか」の約7倍の高感度と70マイクロ秒以下の高解像度を実現することを目標に掲げている。また、得られた画像を利用した天文学研究の実施、公募観測や国内外の天文学者へのデータ提供を計画している。
 これらの目標は、「はるか」の実績を踏まえ、過度な飛躍とならないように配慮しつつも、世界初の水準として明確に設定されており、目標設定は適切と考えられる。ただし、成功基準については、一定の目標が設定されているが、現時点においてはミニマム・フル・エクストラの識別が明確化できていない状況であり、「開発研究」段階における詳細な検討を踏まえ、今後適切に設定することが必要である。
 以上により、プロジェクトの目標は、設定された目的に照らし的確であると判断する。
 なお、今後に向けた助言は、以下のとおりである。
 
成功基準については、「開発研究」段階において詳細な検討を行い、明確化することが必要である。その際には、ミニマムサクセスでは信頼性を重視し、エクストラサクセスでは挑戦的な目標を掲げることを念頭において設定することを期待する。

  判定:妥当

(3) 開発方針
   ASTRO−Gプロジェクトは、その目的が従来にない高感度かつ高解像度の観測であることに照らし、それに必要な新規技術については、地上試験や解析等により信頼性を確保することを方針としている。また、「はるか」や他の衛星プロジェクトで得られた既存技術をできるだけ活用し、信頼性を確保するとともに開発費の低コスト化を図る方針である。
 ASTRO−Gプロジェクトで開発する新規技術は、高感度かつ高解像度の観測に必要な高精度アンテナ鏡面技術、広帯域データ伝送等に絞込みがなされており、いずれも「はるか」の成果を基本としてさらに高性能化のための開発を行うこととしている。
 また、ETS−8の大型アンテナ展開技術の成果を最大限活用する方針は、JAXA(ジャクサ)統合による開発環境の改善を活かしている。
 ただし、これらの技術開発における信頼性を確保するための地上試験や解析等の具体的方策については、今後十分な検討が望まれる。
 スペースVLBIの観測運用システムについては、「はるか」の実績を活用することは適切である。
 これらを踏まえ、ASTRO−Gプロジェクトの開発方針は、「衛星の信頼性を確保するための今後の対策について」(平成17年3月18日 宇宙開発委員会推進部会)で示された考え方を考慮しており、目標の達成に向けて概ね的確に設定されている。
 なお、今後に向けた助言は、以下のとおりである。
 
本プロジェクトのように学術研究を主目的とする挑戦的なプロジェクトにおいても、信頼性の確保は重要であり、そのための地上試験や解析等の具体的方策については、十分な検討が望まれる。

  判定:概ね妥当

(4) 実施体制
   JAXA(ジャクサ)内においては、宇宙科学研究本部の下にASTRO−Gプロジェクトチームを設置し、プロジェクトの責任者であるプロジェクトマネージャを中心に、プロジェクトサイエンティストや関係部門と連携して業務を実施する体制となっている。
 ASTRO−Gプロジェクトのように挑戦的な目標を掲げるプロジェクトを成功に導くには、理学・工学に関わらずJAXA(ジャクサ)内の幅広い分野の関係者が密接に連携することが特に重要であり、旧宇宙科学研究所の伝統を継承しつつ、組織の統合効果が発揮されることを期待する。
 関係機関との連携については、「はるか」と同様に、JAXA(ジャクサ)と国立天文台が共同でプロジェクトを実施する予定である。また、国内及び海外の大学や研究機関等とはVLBI観測運用の協力や観測の提案及びデータの提供に関する連携を実施することとなっている。さらに、海外の研究機関とは、地上追跡局等について国際協力を行うこととしている。
 これらを踏まえると、関係機関との連携はかなり進んでおり、また、「はるか」の運用体制の活用により、体制の見通しが立っていることは評価できる。ただし、衛星開発企業との責任分担についてはまだ必ずしも明確でないため、「開発」移行段階までに明確化することが必要である。
 なお、今後に向けた助言は、以下のとおりである。
 
関係機関等の外部専門家による評価体制についても検討することが望ましい。
衛星開発企業との責任分担については、「開発」移行段階までに明確化することが必要である。

  判定:概ね妥当

(5) その他
   以下の項目については、「開発」移行段階で評価するものであるが、「開発研究」への移行時点における検討の進捗状況を踏まえ、「開発研究」に向け配慮すべき事項について助言する。
 
1 システム選定及び基本設計要求
  科学衛星においても衛星バスの共通化の考え方を考慮し、既存技術を活用する部分と挑戦的なミッションの実現のために新規開発する部分を明確化した上で、スケジュール、資金計画、リスク管理等を策定することが重要である。
2 開発計画(スケジュール、資金計画、設備の整備計画等)
  開発を進めるに当たっては、開発計画全体を見通し、課題を共有化することにより、多様なリスクを可能な限り早期に洗い出し、早期の対策につなげることが重要である。したがって、それを可能にするプロジェクト管理を実施し、開発の効率化を図るべきである。
3 リスク管理
  リスク管理は、明確な責任分担を定めることはもとより、プロジェクト全体を俯瞰して行うことが重要である。そのためにはミッションの実現側であるプロジェクトマネージャと要求側であるプロジェクトサイエンティストが柔軟かつ密接に連携することが不可欠である。さらに、開発計画で述べたプロジェクト管理により、資金も含めた多様なリスクを十分に考慮するように努めるべきである。

(6) 総合評価
   ASTRO−Gプロジェクトは、知的資産の拡大に向けて、スペースVLBIにより超巨大ブラックホールの周辺や活動銀河核のジェットの構造等の人類が未だ見たことのない宇宙の極限領域を描き出そうという極めて挑戦的な計画である。我が国のスペースVLBIは、「はるか」の数々の優れた成果により、海外からも高く評価されており、我が国が得意とする電波天文学の分野において世界最高水準の成果を目指すことは、我が国の宇宙科学の推進のみならず、我が国としての国際貢献、国際的地位の向上の観点からも有意義である。
 推進部会は、今回の事前評価において、ASTRO−Gプロジェクトの目的、目標、開発方針及び実施体制等について審議を行い、現段階までの計画は、具体的かつ的確であると判断した。
 以上を踏まえ、推進部会としては、ASTRO−Gプロジェクトについては、平成19年度から「開発研究」に移行することは妥当であると考える。
 なお、今回の評価においては、信頼性の確保のための地上試験や解析等の具体的方策の検討、外部専門家による評価体制の検討、衛星開発企業との責任関係の明確化、リスク管理におけるミッションの実現側と要求側の連携等について、意見が提出された。また、研究者の自主性を尊重した学術研究を主目的とするプロジェクトであっても、その期待される成果を国民にわかりやすく説明し、社会の理解を得ながらプロジェクトを推進することが重要であるとの指摘もあった。JAXA(ジャクサ)においては、これらの助言について今後適切な対応がなされることを望む。
 本プロジェクトが「開発」に移行する段階には、宇宙開発委員会において、今回の評価結果を活かして評価を行うこととする。

(研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付)

-- 登録:平成21年以前 --