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1.課題の抽出手法及びリスク評価手法と当専門委員会の技術的助言


1−1 課題の抽出手法について

(1)機構の実施内容
  1)課題抽出の全体的な進め方
     機構は、ロケット全体にわたり内在する課題を抽出・評価するため、過去の処置や予断にとらわれることなく様々な手法で課題の抽出を行った。
 具体的には、現在識別している課題の再評価(下記1)を行うとともに、潜在的な課題に関して以下に示す25の4つのアプローチにより、あらゆる課題が抽出されるよう配慮した。
  1 現在識別している課題の再評価
 今まで行ったリスク評価、技術判断の再評価
  2 詳細FMEA注釈1による潜在的課題の抽出
 故障モードの体系的な洗い出しと再評価
   
  注釈1詳細FMEA: 一般的にFMEAは「故障モード・故障因子の洗い出しを徹底した上で、それらを起因とする影響を詳細に解析する手法」のことであるが、今回については、事後的に監査・点検のためにFMEA手法を用いたもの。
  3 製造・検査・整備作業に係る潜在的課題の抽出
 設計要求に立ち戻った、ものづくりの再評価
  4 連鎖事象注釈2に係る潜在的課題の抽出
 ミッション達成確率向上への新しい視点(H−2A6号機打上げ失敗の教訓)による評価
   
注釈2連鎖事象: 致命的ではない初期事象を起点として連鎖的に発生する事象により、ミッション不達成に繋がり得る一連の事象
  5 審査会指摘事項に係る潜在的課題の抽出
 過去の開発の各段階における指摘事項全体の再評価

   特に、潜在的な課題の抽出にあたっては、4つの手法が互いに補完しあうことで網羅的なアプローチとなるよう配慮しつつ、一方で、課題抽出の検討対象を重大な不具合やミッション達成への影響度から重点化するなど、現時点でできる限り的確な課題抽出となるよう図られている。
 リスクは、設計・開発試験段階、製造・検査・整備作業段階、運用段階のいずれかに起因するものであり、詳細FMEAは、あらゆる故障モードを洗い出し、これら全ての段階に関わる課題を見出そうとするものである。
 このうち設計・開発試験段階に起因するリスクについては、詳細FMEAに加えて、連鎖事象の評価も行うこととし、また、製造・検査・整備作業段階に起因するリスクについては、それらの作業の再評価も行って、さらなる課題抽出を図っている。
 さらに、過去の開発の各段階における指摘事項(機構内の審査会によるもの)を全体にわたって、現在の知見・経験に基づき再評価することで、全ての段階について、課題の見落としがないかをさらに確認している。

  2) 個別の抽出手法の具体的な進め方
    機構が課題抽出のために行った各手法の進め方は、以下のとおりである。

  a) 現在識別している課題(中長期的課題や軽微な課題とされていたものや処置済みの課題等)の再評価
     機構は、これまでのH−2Aロケットの開発及び製造・運用を通じて確認されていた課題や、既に処置済みの不具合対策、宇宙開発委員会によるこれまでの助言への処置状況について、改めて再評価を行った。

  b) 詳細FMEAによる潜在的課題の抽出
     機構は、詳細FMEAを実施し、設計における検証や製造・検査・整備作業段階において、故障防止及び検出のための対処が不足している可能性のある点を潜在的課題として抽出した。

  c) 製造・検査・整備作業に係る潜在的課題の抽出
     機構は、製造・検査工程について、工程FMEA注釈の実施結果及び特殊工程(はんだ付け、溶接)の再点検と重要加工パラメータ/重要品質特性値に係る実績データの確認を行うとともに、工場及び射場における整備作業について、これまでに発生した不具合の再発防止策が手順書へ反映されているかの確認を行い、課題の抽出を行った。この際、あわせて現場作業者へのヒアリングも行い、潜在している課題の抽出を図った。
 また、機構は、課題抽出の対象を、過去に重大な不具合が発生している機器及び製造のばらつきがミッション達成に大きく影響を与える可能性がある機器に重点化することとし、衛星フェアリング、第1段エンジン(LE−7A)及び第2段エンジン(LE−5B)、アビオニクス、SRB−Aに絞って、課題の抽出を実施した。
   
注釈工程FMEA: 製造工程における潜在的故障モードを洗い出し、それに起因して将来故障に至る恐れがないかを検討する手法

  d) 連鎖事象に係る潜在的課題の抽出
     機構は、H−2Aロケット6号機の打上げ失敗を踏まえ、連鎖事象を引き起こす可能性のある初期事象として、「高温ガス・低温ガス漏洩」及び「電源系異常」を設定し連鎖事象に係る課題の抽出を行った。

  e) 審査会指摘事項に係る潜在的課題の抽出
     機構は、ロケットの機能・性能に係る技術的な指摘事項(開発中の各段階で実施された機構内等の審査会による指摘)への対処が適切であったかについて、現在の知見・経験に基づき再評価を行った。


  (2)当専門委員会の技術的助言
     当専門委員会は、機構が行った課題の抽出手法について、全体的な進め方とともに、個別の抽出手法についても、以下のとおり技術的助言を行った。

    1) 課題抽出の全体的な進め方について
      課題抽出の全体的な進め方について、当専門委員会は、機構に対して、以下のように技術的助言を行った。
      - 日常の開発業務に直接携わる人が感じている問題点等の集約に努めること。
      - 「打上げ再開に向けて対処を検討すべき課題」の選別理由を明確にすることは当然であるが、同時に、選別されなかった課題についても、選別されなかった理由を記録に残して将来にわたって確認できるようにすること。

    2) 個別の抽出手法の具体的な進め方について
       個別の抽出手法の具体的な進め方について、当専門委員会は、機構に対して、以下のように技術的助言を行った。
      (詳細FMEAによる潜在的課題の抽出)
      - 故障モードの検討においては、故障の有無だけでなく、部分故障も含めた検討を行うことが理想的であること。また、故障モードに対する知見の豊富な人材が検討に加わることが重要であり、また、その知見をFMEAを行う中で蓄積していくように配慮すること。
      - FMEAでの確認項目の適正化に努め、恒常的な活用が可能となるようなシンプルな構成とするとともに、参照文書をつけることも重要であること。

      (製造・検査・整備作業に係る潜在的課題の抽出)
      - 特性値のばらつきによる性能への影響が懸念されるが、課題の抽出にあたって、重要な特性値について過去の実績データとの比較を十分に行うことが必要であると考えられること。

      (連鎖事象に係る潜在的課題の抽出)
      - 一般に、重大なトラブルの多くの事例が連鎖事象であり、このような視点での検討を行うことの意義は大きいと考えられること。
      - 連鎖事象の検討にあたっては、適切な初期事象を選定することが重要であるが、本検討で想定するガス漏洩や電源系の異常は、過去に実例があることから、いずれも適当と考えられること。ただし、ガス漏洩については、損傷に起因する大漏洩は連鎖事象とは別種の問題であることから、正常な製造・検査工程を経ても起こり得る微小漏洩を前提として検討を行うことが適切であると考えられること。


1−2 リスク評価手法について

(1) 機構の実施内容
   機構は、1−1項に示される当専門委員会の技術的助言を踏まえ、課題を抽出し、これらの課題の中から「打上げ再開に向けて対処を検討すべき課題」を選別するため、発生可能性と発生時の影響度に基づくリスク評価を行うこととした。
 リスク評価においては、発生可能性と発生時の影響度が「高/大」「高/中」「中/大」のものについて、「打上げ再開に向けた対処を検討すべき課題」とした。
 また、従来は対処の検討対象ではなかった発生可能性と発生時の影響度が「高/小」「中/中」「低/大」のものについても、発生時の影響度が極めて小さい、あるいは発生可能性が極めて低いことが確認できない場合は、「打上げ再開に向けて対処を検討すべき課題」とした。
   機構が実施したリスク評価の概要は、図2のとおりである。

図2.機構が実施したリスク評価の概要
  機構が実施したリスク評価の概要の図
   従来は対処を検討していなかったが、発生時の影響度が極めて小さい、あるいは発生可能性が極めて低いことが確認できない場合には、「打上げ再開に向けて対処を検討すべき課題」とする。


(2)当専門委員会の技術的助言
    当専門委員会は、抽出した課題に対して機構が行ったリスク評価手法について、機構に対して、以下のとおり技術的助言を行った。
  - 今回のリスク評価については、「打上げ再開に向けて対処を検討すべき課題」を広範囲にとらえていると考えられること。
  - 必要な対処を施した結果として、当該項目に対するリスク評価は変わるものである。そのようなリスク評価の変遷の過程を追えるようにすること。


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