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別紙2
今後の衛星開発の進め方について

1.衛星開発の現状

(1)我が国の衛星開発の現状
  我が国においては、開発機関が利用機関と一体となって開発した通信衛星(CS)、放送衛星(BS)、気象衛星(GMS)等の成果により、世界最先端の衛星通信・放送分野の技術を獲得するとともに、それらの成果の国民生活への活用を進めてきた。しかしながら、1990年の非研究開発衛星の公開調達に関する日米合意によりその開発体制は大きく変化した。
  また、その後のETS−6、ADEOS等の不具合により、基盤的技術の未熟さが明らかになった。さらに相次ぐ打上げの失敗により、我が国の宇宙開発に空白期間が生じ、衛星開発に係わる技術力の遅れが顕著となってきている。

(2)商業衛星市場の動向
  東西冷戦構造の終焉に伴い、欧米では軍事技術の民生利用への転換により産業化が大きく進展してきた。その結果、商業静止衛星市場は欧米にほぼ独占されている。我が国の産業界においては、通信衛星用の送受信機等の一部の機器・部品について国際競争力を有するが、衛星システムとしての市場参入は緒についたばかりである。

2.今後の衛星開発の基本方針

  我が国の宇宙開発利用を拡大するため、衛星の研究開発に当たっては、常に利用者との連携を図り、利用開拓と一体となった衛星開発を行う。

2.1  地球観測分野における先導的基幹プログラム

(1)プログラムの目標
  衛星による地表・海面の観測は、災害情報監視等に利用され、国民の安全確保に大きく貢献し重要である。
  また、地球環境問題は人類全体の生存にかかる問題であるとともに、気候変動に関する政府間会合等国際的取り組みへの日本としての貢献が求められており、必要性、緊急性が高い課題である。
  これらの活動は、公共性、国際性が極めて高いため、国が中心になって行うべきである。
国内関係機関との連携・協力体制の下、今後10年後頃に、広域災害情報監視・利用システムの実証等を目指す。
  また、地球環境問題の中で特に必要性・緊急性の高い地球温暖化問題への取り組みに集中し、今後10年後頃に高頻度で継続的に観測できるシステムを、国際的な協力体制の下に構築することを目指す。

(2)対象となる観測分野と必要な要素技術
  各国との国際分担等を勘案し、今後10年の間に、新機関が関係省庁との協力・分担の下に観測する分野とそれを実現するため開発・実証することが期待される要素技術分野例は次のとおり。
    ○地表観測(高空間分解能合成開口レーダ、高空間分解能光学センサ)
    ○温室効果気体の観測(温室効果気体センサ、オゾン・広域大気汚染センサ)
    ○水循環変動の観測(2周波降雨レーダ、雲鉛直分布レーダ)
    ○気候変動の観測(多周波光学センサ、マイクロ波放射計)

(3)本プログラム達成のためのプロジェクト
  観測項目を効率的かつ重点的に組み合わせ、既存計画も含め、今後10年後頃までに、広域災害情報監視・利用システムの実証、地球温暖化問題、衛星を用いた全球地図作成・更新システムの実証、農作物・鉱物資源等の観測手法の確立を目指す以下の観測を行うプロジェクト及びそれらのデータを容易に利用するための技術開発に優先的な資源配分を行う。

1地表観測
  平成16年度打上げ予定のALOSにより地表観測を行い、発災時の初動体制の整備のための広域災害情報監視・利用システムの実証、衛星を用いた全球地図作成・更新システムの実証、農作物・鉱物資源等の観測手法の確立を行う。

2温室効果気体の観測
  地球温暖化の原因の解明のため、今年度打上げ予定のADEOS−2により、メタン等の温室効果気体の観測を試験的に行う。さらなる予測モデルの高度化のため、二酸化炭素、広域大気汚染物質の観測を行う。

3水循環変動の観測
  現在運用中のTRMMにより熱帯・亜熱帯地域の降水観測を行う。その後、小型衛星群を用いて、3時間毎の観測頻度で全球の降雨・降雪の観測を行う計画について、国際協力も踏まえ検討する。

4気候変動の観測
  ADEOS−2、ALOS等により、海洋、植生、雪氷域、雲・エアロゾル等の観測を行う。

5データ利用システムの構築
  利用者が容易にかつ効率的にデータを利用できるシステムを、利用機関との適切な役割分担の下で構築する。

2.2  通信・放送・測位分野における先導的基幹プログラム

(1)プログラムの目標
  我が国は、政府、産業界等の努力により、アンテナ技術、新しい周波数帯の開拓、広帯域・大電力増幅器等において大きな成果を得てきたが、規制緩和による衛星通信事業のグローバル化の進展等に伴い、宇宙機器産業も激しい国際競争に直面している。
  政府は、既存の地上系システムとの整合性を図りつつ、民間では対応できない不確定性の高い先端的・基盤的技術や将来の宇宙利用を見据えた先導的技術の開発・宇宙実証を行うことにより、実用化への橋渡しを行う。これにより、民間の衛星ネットワークの整備・サービス提供等が期待される。

(2)対象となる要素技術分野
  各国における技術開発の進展状況を勘案し、今後10年の間に、新宇宙機関が関係省庁等の協力・分担の下に開発・実証することが期待される要素技術分野例は次のとおり。
    ○高度なアンテナ技術
    ○高度な搭載通信・放送機器技術
    ○新軌道の開拓
    ○新周波数帯の開拓(光含む)
    ○搭載用原子時計等衛星測位技術
    ○高度衛星間通信技術
    ○通信ネットワーク技術
    ○高度地球局技術
    ○大型衛星バス技術

(3)本プログラム達成のためのプロジェクト
  上記(2)の要素技術を効率的かつ重点的に組み合わせて、開発及び宇宙実証を行う。そのため既存計画において既に進展が認められる衛星開発計画を、以下の順に優先的に実施するとともに、先端的・基盤的要素技術を早期かつ低コストで実証するため、小型衛星等を用いた宇宙実証を積極的に行う。

1先端的衛星通信技術の開発実証(1
  S帯大型展開アンテナ(携帯端末用)、パケット交換機、デジタル音声放送技術、3トン級通信衛星バス等の開発実証を目的とする大型衛星プロジェクト(ETS−8)を推進する。

2先端的衛星通信技術の開発実証(2
  e-Japan重点計画に掲げられている超高速インターネット衛星の早期実用化のための技術(Ka帯アクティブフェーズドアレイアンテナ、Ka帯マルチポートアンプ、衛星搭載ATM交換機等)の開発実証及び利用実証の場の提供を目的とするプロジェクト(WINDS)を推進する。

3新軌道開拓及び移動体通信・測位システム技術の開発実証
  新軌道である準天頂軌道による移動体通信・測位システムの開発とその運用性を実証する。その開発実証の進め方については、今後、産官が連携して検討し、具体化を図る。

4小型衛星等を用いた先端的・基盤的要素技術開発
    技術革新の速い衛星の先端的・基盤的要素技術の研究開発に当たっては、開発期間の短縮、早期の宇宙実証、開発コストの低減を図るため、技術リスクや実証時期も勘案の上、各プロジェクトの研究開発と並行して、小型衛星等による実証を推進する。

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