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宇宙開発委員会

2001/12/21
宇宙開発委員会 安全部会(第6回)議事録


宇宙開発委員会   安全部会(第6回)議事録

1.日時 平成13年12月21日(金)   10:30〜12:00  

2.場所 宇宙開発事業団筑波宇宙センター  宇宙実験棟2F  大会議室1

3.議題 (1) 国際宇宙ステーション計画の概要について
  (2) 日本実験棟「きぼう」実験装置の安全確保について
  (3) 国際宇宙ステーション搭乗宇宙飛行士の放射線被曝管理について
  (4) その他

4.資料 安全6−1−1 安全部会(第4回)議事録(案)
  安全6−1−2 安全部会(第5回)議事録(案)
  安全6−2 国際宇宙ステーション計画の概要について
  安全6−3 日本実験棟「きぼう」実験装置の安全確保について
  (SAIBOラック及びSEDA-AP)
  安全6−4 国際宇宙ステーション搭乗宇宙飛行士の放射線被曝管理について(報告)
  参考1 宇宙ステーション取付型実験モジュール(JEM)に係る安全評価のための基本指針
  参考2 有人サポート委員会 宇宙放射線被曝管理分科会報告書

5.出席者    
  部会長 栗木 恭一(宇宙開発委員)
  委員 川崎 雅弘(宇宙開発委員)
  井口 雅一(宇宙開発委員長)
  特別委員 熊谷 博、黒谷 明美、河野 通方、佐々木 進、佐藤 吉信、中島 俊、馬嶋 秀行、松尾 亜紀子、宮本 晃
  事務局 澤邊 技術評価推進官

6.議事内容

 栗木部会長     第6回の安全部会を開催いたします。
   本日はこの筑波宇宙センターを拝借いたしまして、遠路、特別委員の皆様にはご参加いただきましてありがとうございました。また、この会場を設定いただきまして、調整等いろいろご面倒かけました宇宙開発事業団の皆様、厚く御礼申し上げます。
   また、後ほど国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」のフライトモデルを見せていただくということで、こちらの便宜も図っていただきましたことを重ねて御礼申し上げます。
   また、去る11月29日と30日に私ども安全部会のメンバーで、ロケット打上げ施設、種子島、それから内之浦を見学させていただきした。特にセキュリティーの関係も充実して調整が整っているという具合に拝見いたしまして、当安全部会としても大変参考になりました。当日は、鹿児島を出たときは土砂降りの雨でしたが、種子島に着きましたら大変良い天気で、続く内之浦も穏やかな天気で、十分に施設の見学をさせていただきました。大変有意義に2日間過ごさせていただきまして、ご協力いただきました宇宙開発事業団並びに宇宙科学研究所の方々に厚く御礼申し上げます。
   それでは、議題に入ります前に、宇宙開発事業団の宇宙環境利用システム本部担当の池田理事から一言ごあいさついただければと思います。

 宇宙開発事業団・池田理事     おはようございます。きょうはようこそ筑波にお運びいただきました。宇宙開発事業団で理事を務めております池田でございます。今日は栗木先生から御紹介がございましたように、おかげさまで宇宙ステーションに日本から打ち上げます実験棟の建設が進んでまいりまして、今日、実際に打ち上げます装置自身がほぼでき上がってきておりまして、筑波で全体試験をやっておりますから、是非この機会に御覧いただきと思いまして、この部会を筑波でお運びいただくことをお願い申し上げました。後ほどそういう機会を持っていただきたいと思っております。
   それから、この打上げにつきましては、まだこれから予算措置その他いろいろな不確定な要因があって、若干不透明なところがございますけれども、現在では、2004年ないし2005年ぐらいには打ち上げられるものと思っております。私ども、これまで10年来取り組んできたものが、できるだけ早くとは思っておりますが、そういう意味で、こういう安全の対策でございますとか、それから、宇宙飛行士につきましても、これまではアメリカの計画で短期にシャトルフライトの経験はしているわけですが、長期に滞在するということにつきましての準備を今日の議題の中にも、その放射線管理等を御審議をいただくことになってございます。私自身、原子力の安全局長を務めたこともあるんですが、宇宙の安全については、よろしく御審議をお助けをいただきたいと願う次第でございます。
   今日は、私ども、貴重な時間をいただきましたから、効率的に進ませていただくように努めるつもりでいますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 栗木部会長     どうもありがとうございました。
   それでは、本日の議題でございますが、議事次第にございますように、1件目が「国際宇宙ステーション計画の概要について」、2件目が「日本実験棟『きぼう』実験装置の安全確保について」、3番目が「国際宇宙ステーション搭乗宇宙飛行士の放射線被曝管理について」でございます。
   まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

[事務局 配布資料の確認]

 栗木部会長     それでは、ご確認いただきたいと思います。議事録については、もしお気づきの点等ございましたらば、事務局に御連絡いただきたいと思います。
   それでは、1番目の議題でございますが、「国際宇宙ステーション計画の概要について」、これは現状の簡単なイントロダクションを、宇宙開発事業団宇宙環境システム本部堀川副本部長に御説明いただきます。

 宇宙開発事業団・堀川     宇宙開発事業団の堀川と申します。
   ご存じの方も多いかと思いますが、国際宇宙ステーション計画の現状についてご紹介させていただきます。
   国際宇宙ステーションは宇宙科学等の実験、あるいは天体観測、地球観測を含めまして、さまざまな目的に利用します多目的な有人施設としてここにお示ししましたようなコンフィギュレーションを完成の形態としまして開発を進めることになっております。日本、アメリカ、ヨーロッパ、カナダ、ロシアが参加して、高度400キロメートルに常時7名の宇宙飛行士が滞在して、10年以上にわたって運用しようと考えております。
   この計画は1984年(昭和59年)に米国のレーガン大統領が提唱しまして、計画を進めてまいりまして、途中、クリントン大統領が1992年に就任された以降、ロシアの参画を踏まえまして、平成10年に世界各国15カ国が参加する政府間協定が改定されて、署名をされて、現在の計画に至っております。平成10年の11月に最初の要素が打ち上げられて、組み立てが開始されております。これまでの宇宙ステーションのコンフィギュレーションの図がここに出ておりますが、ご参考にしていただければと思います。
   1998年から建設が始まったわけですが、途中、ロシアのプロトンロケットが2回続けて失敗したこともありまして、1年半ほど間があきましたが、その後は順調に組み立てが進んでおりまして、現在、このような形で宇宙ステーションが飛翔しておりまして、この宇宙ステーションには、昨年の10月以来、第4次の宇宙ステーションの宇宙飛行士が軌道上に滞在ということで、3名の宇宙飛行士が滞在しております。今年の4月にはカナダのロボットアームも取り付きましたし、7月にエアロックが取り付いて、宇宙ステーションの組み立て、あるいは宇宙ステーションをベースとした船外活動ができるような状況にまで至っております。
   順調に組み立てが進められていますが、今日、安全部会ということもありまして、これまでにこの宇宙ステーションで発生してきた主な不具合というか、問題についてここに列挙させていただきましたが、細かいのはいろいろありますが、大きなものとしては、昨年の12月に太陽電池パドルを展開するときに、展開するケーブルがリールから外れてしまった不具合が起きております。これは船外活動でケーブルをリールに戻して、太陽電池の展開が無事に行われております。
   それから、今年の4月、カナダアームを打ち上げたときですが、宇宙ステーション全体をコントロールします米国の要素にありますコンピューター、C&C MDMと言っていますが、これが3台冗長構成をしているんですが、それが次々と不具合を起こしまして、その主な要因は、コンピューターに入っています磁気ディスク、ハードディスクですが、これが不具合を起こしております。その後、予備にかえたり、その問題がワンショットだけで改善していることもあって、現状では正常に機能していますが、このコンピューターのハードディスクについては、地上でも幾つか不具合を起こしておりまして、またJEMでも同じものを使っておりますので、その辺、留意して、今、開発を進めているのですが、いずれ近い将来にこれを磁気ディスクではなくて、ソリッドステートのメモリーに換えようということで、今、検討を進めております。
   それから、3番目がステーションのロボットアーム、これが今年の4月、5月にかけて打ち上げましたカナダのロボットアームの運用のときに、アームが一時ブレーキがかかって動かなくなったことと、通信系に異常が起きたという不具合が起きております。ブレーキの方は、その後すぐに復旧しまして、現状は異常がないのですが、もしこれがまた再発しますと、軌道上にあります予備で交換することを検討しております。
   それから、通信系につきましては、コンピューターの間のデータのやりとりの中で不具合が発生したもので、これもワンショットで起きたものですが、その後、改善されているのですが、原因はプロトコルで非常にまれなケースで通信ができなくなることがわかっております。今のところ、そこをソフトウェアのパッチをあてて、そういう状況に陥らないように対策が立てられております。
   それから、つい先日の打上げで、宇宙飛行士が交代する前にプログレス補給船が宇宙ステーションに補給物資を持っていくわけですけれど、6Pというプログレスの補給船を打ち上げるときに、その前にプログレスの5Pというのがついていたわけですが、これが離れて、大気圏に離脱するときに、Oリングのシールを宇宙ステーション側に残してしまったために、それが間に挟まって、6Pが正常にドッキングができない不具合がございました。これについては、船外活動でOリングのシールを取り外して、正常にその後、6Pの方がドッキングできる、そういう経緯がございます。こういったような不具合が幾つか出ておりますが、全体としては非常に順調に宇宙ステーションの組み立ては進んでいると思います。
   宇宙ステーション全体の状況ですが、ことしの初めに米国で大統領府からNASAの宇宙ステーション計画がコストオーバーランをしていることで、予算を今後、従来の計画どおりの予算以上には出せないということで、本来宇宙ステーションは7人体制で組み立てが完了できるようなところまで計画をしていたわけですが、米国が開発すべき推進系であるプロパルションモジュールであるとか、7人の宇宙飛行士が滞在できますハビテーションモジュール、地上へ緊急帰還しますクルーリターンビークルの開発を凍結するという大統領府のブループリントが出されております。そういったことを含めまして、これまでのNASAのコスト管理、あるいはマネジメントの体制が適切であったかどうかということで、IMCEという外部評価委員会がNASAのアドバイザリーカウンシルのもとで開かれて、8月から11月までその評価が行われました。その後、報告書が出されまして、NASAアドバイザリーカウンシルに報告が出ているわけですけれど、これからNASAアドバイザリーカウンシルがNASAの長官に対してその結果を踏まえて、勧告を出す状況になっております。
   このプロセスの中で、国際パートナーとしまして、7人の体制が達成されなくて、現状の3人のままで宇宙ステーションが推移しますと、科学の成果を十分に上げられないということで、ほかのカナダ、日本、ロシア、ヨーロッパを含めて、米国に対してその辺の問題点の指摘をしております。その辺を踏まえて、今後NASAがどういうふうに宇宙ステーションを完成に持っていくかということが課題になっている状況にございます。
   ちょっと駆け足ですが、以上の状況にあります。

 栗木部会長     どうもありがとうございました。
   ただいまの概要で宇宙ステーション全体の不具合、あるいは計画の現状等を御説明いただきました。これに関して興味をお持ちの方からのご意見、あるいは質問等があるかと思いますが、関連する日本実験棟の話を伺ってから一緒にまとめてご意見等を伺います。
   引き続いて、2番目の議題でございます「日本実験棟『きぼう』実験装置の安全確保について」ということで、これにつきましては、宇宙開発事業団宇宙ステーション安全・信頼性管理室の長谷川室長に説明をお願いいたします。この件はちょうど『きぼう』と実験者との間を取り持つような格好での実験装置の説明かと思います。安全の確保はたくさんの項目について審査をされたと伺っておりますが、特に方法論について詳しくその中の一つを取り上げて説明いただければということを希望しております。

 宇宙開発事業団・長谷川     宇宙ステーション安全・信頼性管理室長の長谷川でございます。「きぼう」に搭載する実験装置の安全確保について、我々で審査した結果をご報告させていただきます。
   実験装置はたくさんあるんですが、個別に一つ一つご報告となるとかなりの量になりますので、ある程度まとめてご報告させていただくということで、今回は実験装置がラックという形でおさめられるんですが、その中のSAIBOラックにおさめられる実験装置についてまとめてご報告させていただきます。それから、ラックに搭載する実験装置ではないんですが、船外に搭載する実験装置もあわせてご報告いたします。
   それでは、この「きぼう」の実験装置について、安全の審査をするに当たりまして、我々指針といたしましたのは、宇宙開発委員会で示していただいておりますJEMの安全評価のための基本指針を実験装置の方にも準用して審査を行っております。この資料では、先ほど言いましたが、SAIBOラックと呼ばれるラックに搭載されるクリーンベンチ、細胞培養実験装置と実験支援機器であるユーティリティ汎用電源、そういうものについてご報告させていただきたいと思います。
   次のページですが、搭載の場所ですが、SAIBOラックと左側に書いてありますが、A2というところですが、ここに搭載される実験装置でございます。Aというのはアフターで後ろの方、Fが前の方ということで、後ろ側のラックです。それから、もう一つ、ラックに搭載されるものではないんですが、右側に暴露部に搭載される宇宙環境計測ミッション装置というものがございますが、それについてもご報告させていただきます。搭載場所は先端の部分でございます。
   次のSAIBOラックですが、全体の概要はこの図で示したとおりでございますが、このラックの中に詰め込まれていますものは、黄色で書いてあるのが実験装置ですが、それ以外に我々が評価しなければいけないのはラック構体ですが、それとか、実験装置の分電函とか、アビオニクスのエア・アセンブリとか、それから、煙探知機もついているんですが、そういうもの全部が一つのラックに入っているんですけれど、黄色で囲っていないものにつきましては、我々の開発の都合ですが、JEMシステムを開発するときにシステムの一部として開発しており、ラックに組み込むことで、安全はシステムの安全のときにやりまして、それは3年ぐらい前ですが、委員会にご報告させていただいております。
   個々の装置について簡単に説明させていただきます。クリーンベンチは、形はグローブボックスの形なんですが、滅菌のチャンバー、無菌状態を提供するということで、クリーンベンチという名前がついておりまして、滅菌するためのチャンバーと操作チャンバーと2つからなっておりまして、使用の仕方としては、温度を20度から40度でコントロールして、そこで顕微鏡等を使って観察実験する。観察をするのがメインでございます。安全上の問題といたしましては、実験する際に見るものに、試薬とか、そういうものが入っていた場合に、それが壊れたときに試薬が漏れて船内を汚染する可能性があるというハザードがあります。それから、滅菌を維持するためのチャンバーの中が汚染した場合に、直接船外に排気して中をきれいにする、そういう構造になっておりまして、そのために、意図しないで排気するところが壊れて働いてしまうと、全体的に減圧になるという、そういうハザードが存在し得ます。
   次に、細胞培養装置ですが、温度とか湿度、二酸化炭素濃度をコントロールして、細胞培養するのですが、特にここでは、回転テーブルがありまして、回転させることによって、0から2G相当の重力を発生させて、対照実験ができるというものでございます。特にここで安全上問題になるものは、回転体がありますので、それが壊れて飛散して人に被害を与える可能性があるということです。
   それから次に、ユーティリティ汎用電源、これは単純なものでありまして、120ボルトの直流を28ボルトの直流に変換して、実験装置に電源を提供するもので、構造的には簡単ですが、電流が通るということで、安全上の問題としては、過電流によって温度が上がって、それによって人がやけどをしたり、ひどくなると、火災にまで及ぶ可能性がある。そういうことで、そういうハザードが潜在しております。先ほどから可能性あると言っていますが、これは現象の方から考えるだけで、本当にそういうことが起こるかどうかは評価の過程の中で原因究明をしながら評価しております。
   それから、そのほかに細々としたものとして、ラックに組み込むためにファスナー類とか通信のケーブルだとか、ハーネスだとか、そういういろいろなものがここに書いてございます。こういうものを全体として個々に評価したのですが、それについて個々ご報告させていただきます。
   次のページに、これは実験装置とは違うんですが、実験装置と一体となって実験をするためのもので、実験の供試体と呼ばれているものです。これは、細胞培養であれば細胞そのもの、試料とある程度の機能を持ったものと考えていただければわかると思うんですが、それを実験装置の中に、先ほどのインキュベータとか、そういうところに入れて全体的な実験をするものです。これは供試体で、ある機能を持っておりまして、小さな実験装置のようなものですが、今日、御報告するのは、生物実験ユニットというもので、それはここにも書いてございますが、培地の中でセンサーとか、そういうものを持って自動的に培養する細胞実験、これは動物細胞ですが、それと植物細胞の実験ができるPEU。CEU、PEUを総称してBEUと我々は呼んでいますが、給水だとか換気、照明とか、カメラのモニター、そういう機能がついております。こういうものも同じように安全上の問題ということで2故障許容を要求しております。
   次が船外に取り付ける実験装置ですが、取付場所はここですが、次のページを見ていただいた方がいいかもしれませんが、名前としては、宇宙環境計測ミッション装置となっています。これは幾つかの装置の集合体でございまして、中性子モニターとか、原子状酸素、重イオン、プラズマ計測装置とか、高エネルギー軽粒子のモニターとか、電子部品の劣化を評価する装置とか、微粒子捕獲、材料曝露の実験をする装置とか、そういうものの集合体で我々はこう呼んでおりますが、打ち上げは上のような形でシャトルに積んで打ち上げまして、上に上がった段階で船外活動で、とめてある装置を外して、前の方に引き出したというか、押し出し、伸展させて実験を行うものです。安全上の問題としては、こういう形で船外活動をするということで、シャープエッジがあるかないかということと、それから、打ち上げのときの形態が閉じられた形態ですが、とめてある金具が外れて、ふいにこういうふうに伸びてしまって、シャトルに影響を与えないかという問題が考えられております。
   以上で安全上の課題と実験装置の概要について御説明しましたが、次に、それぞれについての安全対策について我々が評価したことを少し御説明させていただきます。JEMの基本指針というのは、文書でいろいろ要求されておりますが、まとめますと、左に書いてあるように、環境に対する対策とか構造体に対する対策、それから、安全・開発保証という管理をきちんとやりなさいとか、人間・機械系の設計について考慮しろとか、それから緊急対策について考慮するようにと、そういう形で述べられておりまして、それぞれについて、環境対策であれば環境でどういう問題があるかどうかということを個別に吟味しながら評価していくわけですけれど、それについての評価の仕方につきまして、次のページにございますが、手法といたしましては、NASAがずっと長年やっておりますハザードレポートを用いて、安全を評価するということをやっておりまして、それは安全評価を5段階に分けてやるわけですが、評価するに当たって対象をきちんと理解して、そういう対象に対して予測可能なすべてのハザードをまず識別しますが、これは基本的には、システムがこうだからこういうのがあるという考え方ではございませんで、過去に起こったいろいろな危険な事象、火事だとか、電気で感電したりとか、そういう事象からアプローチする方法でございまして、それに対してシステムの中にそういう事象が起こり得る原因が存在しているかどうかをピックアップしていくということで、まずハザードありきで、それに対して原因をシステムの中からピックアップしていく。それをむやみやたらにやるわけではなくて、いろいろな手法を使いまして、体系的に追及していく、そういうことをやります。
   ハザードと原因が識別できますと、そのハザードに対して原因を除去してしまう。そうすればハザードは起こらないんですが、除去するのが第一優先で考えまして、どうしてもミッション上の都合とか、システム設計上、除去はできないものについては、ここに書いてあります1、2、3、4の手順に従って、優先順位が決まっているんですけれども、この順番で設計で対応しますが、それを我々は制御すると呼んでいます。制御して、安全上問題がないような形で設計を進めていくという手順になっております。
   それで、制御した場合に、その制御がきちんと機能するかどうかを検証しなければいけないんですが、この3番のところでは、制御と検証方法とワンセットで検討して確定して、そういう形で開発を進める。そういう開発が進むことに従って、最終的には検証をきちんと決められた検証法に従って、通常は試験だとか解析だとか検査、デモンストレーション、そういうものを組み合わせたりしながらやるんですが、それできちんと確認をするという行為をやります。最終的にはそういうことをやった後で、どれだけのリスクが存在しているかという……。基本的に全部完了すればリスクはないことになるんですが、そういうことを評価して、問題が十分低いレベルにあることを確認する。そういう手順でやっております。
   次、14ページは、今申し上げましたことをもう一度書いているようなところがあるんですが、それをやるのに我々はフェーズという名前で呼びまして、フェーズ分けをしてやっております。ハザードの識別と原因の識別までをフェーズ?氓ニ呼んでおります。識別されたものに対して、これは大体、設計のレベルでいくと基本設計の段階ということですが、それに対してきちんと原因の除去と制御の方法、それから検証の方法までを確定するのがフェーズ?ということです。それで、最終的に検証するのがフェーズ?。ということで、ここでフェーズのところが最初からすべて?氈A?、?。というふうに線を引いてあるのは意味がありまして、通常はフェーズ?氓ノ続いてフェーズ?、続いてフェーズ?。という感じになるんですが、引いてありますのは、安全に関しましては、常にフィードバックというか、問題が起こったら最初までさかのぼってやることで、フェーズ?の段階に入ったとしても、そこで原因の識別で新しい原因が見つかったりとか、先ほど予想されるハザードについてと言いましたけれど、予想されなかったものが新たに出てきた場合は最初まで戻ってやる意味で、フェーズ?氈A?、?。、それぞれ?。は?をカバーし、?は?氓カバーするという形で書いてございます。
   制御の方法ですが、先ほど優先順位は述べましたけれど、制御の仕方について、2故障許容、つまり、三重の冗長系を持たなければいけないものと、それから、二重の冗長系、1故障許容のものと分けておりまして、その分け方はカタストロフィックなものとクリティカルなものに分けております。カタストロフィックというのは14ページに書いてございますように、能力の喪失、つまり廃人になってしまうとか、それから、死に至る、それから、システムが喪失する、これは間接的に死に至ってしまうわけですけれど、そういうものが致命的ということの定義になっております。クリティカルは、重症、大きいけがをする、そういうものをクリティカルと呼んでおります。システムについては一部の機能が失われるということです。
   この定義についてはこういう定義ですけれど、経験上、日本人はかなりコンサバティブでありまして、ほとんどがクリティカルではなくてカタストロフィックになるケースの方が多いようです。そういうことで、1故障許容、2故障許容の設計をやるんですが、物の性質によっては、構造のものとか、圧力容器とか、そういうものについては、冗長設計というよりも、そういうものになじみにくいということで、ミニマムリスクデザインと呼んでいるんですけれど、設計にマージンをもって設計して、それで、リスクの最小化を図る、そういう方法もとられております。
   それから、二重、三重になっているものに対してモニターを通じて、それで1つ、2つという形で安全対策が順次行われていくものもございまして、モニターと組み合わせて制御を行っているものもございます。物によっては、モニターと関係なく最初から二重、三重が同時に機能するようになっているものもございます。
   次でございますが、これから個別の話に入らせていただきますが、実験装置を一つ一つ、今の手法に従ってハザードレポートを1件1件やりますと、全部で100件ぐらいの事象と原因、方法が識別されておりまして、なかなか大変でございますので、今回は、先ほどの部会長からのご指示のように、全体にどういうものがあるかということを御説明させていただいて、その後で、例をとりまして、1件または2件御説明させていただきます。
   我々、ハザードを考える上で、通常2つに分けて考えておりまして、一般的なハザード、ジェネリックハザードと呼んでいるんですが、そういうもの、つまり、すべての装置とかシステムに共通する、これは過去の経験で考えるんですが、共通するようなハザードというものと、それから、システム固有のものに分けておりまして、ジェネリックなものについては過去の経験上、どういう制御が適切かというのがわかっておりまして、それが16ページに書いてございます。これは先ほど説明しました指針との対応で見ますと、宇宙環境対策をちゃんとやってくださいということに対して、ハザードレポートで識別したものとしては、使っている材料による汚染だとか、それから、電気を使っていますので、電磁気の適合性があるかないか、そういうことが問題になるということがピックアップされております。
   それから、構造についてきちんと設計をするようにという話ですが、そういうものについては、ここに書いてありますように、打上げ時とか、打上げのショックだとか、軌道上の運用におけるいろいろな荷重によって構造が破壊するというハザードが考えられて、それがシステムの中でどういうところで起こり得るかを検討しております。それから、圧力系が壊れて流体物が流れるというか、出るとか、そういうもの。配管が破壊する、そういうことが実験装置の中で識別されております。
   それから、人間・機械系の設計。人間と機械とのインターフェースの部分ですが、シャープエッジだとか、高温のものにさわってやけどをするとか、感電するとか、そういうものが識別されておりますが、これについて一番右に実験装置を書いてございまして、それに○とN/Aと書いてあるんですが、○に書いてあるのが、こういうハザードがシステムの中に潜在的に存在していると我々が識別したもので、N/Aと書いてあるのは、そういうものはこの装置にはそもそも存在していないと評価したものでございます。
   汚染とか、そういうものについてどこに原因があるかどうかというものが次のハザードの原因というところに書いてありまして、それに対してどういう制御をするかという制御方法と検証方法がここに書いてございますが、これは一般的なハザードで、先ほども言いましたように、大体、制御方法と検証方法が決まっておりまして、ここで一番重要なのは、ハザードの原因とか、原因の場所が網羅的にきちんと把握されているかということと、それから、それに対してきちんと検証されているかがジェネリックハザードでは重要かと思います。
   次がそれぞれ装置固有のハザードで、一番左側に装置の名前を挙げておりまして、ハザードタイトルというのはハザードの名前ですが、こういう形で整理させていただいております。先ほど装置の説明のときに述べさせていただきましたように、それぞれ装置の使い方とか構造によって特徴がありまして、それによるものですが、まずクリーンベンチを見ますと、実験試料、これはほかかから試料を持ち込んでやることなので、その試料による汚染がある。クリーンベンチはこういうもので、それから、先ほど汚れた場合に中のものを外に排気してやることで、排気のシステムはもともと装置として必要なものですが、それが壊れたりすると、実験室(JEM本体)そのものが減圧になってしまう。そういうものを一つ一つそれぞれ固有のハザードとして識別しております。
   主なものだけ見ますと、細胞培養実験装置は、先ほども言いましたが、回転体があるということが固有のことで、ここに識別されております。
   生物実験ユニットというのは、BEUと先ほど言いましたものですが、実験試料が漏れたりする汚染というものが考えられます。それから、宇宙環境計測ミッションですが、これは先ほども言いましたが、EVAをやることで、シャープエッジ、それから、把持機構が壊れて、突然伸展してシャトルを壊すようなことがハザードとして識別されております。
   それぞれについて、原因も含めて言いましたが、そういう原因に対してハザードの制御をどういうふうにするかということを1件1件審査してまいりました。例といたしまして、一番上の例を次のページに挙げております。実験装置というものについて、安全の対策をするのは少しほかのシステムと違いまして、実験装置はJEMのシステムとつないで動かして、なおかつ、その中に供試体を取り込んでいるというもので、システムと装置と供試体と、供試体はない場合もありますが、そういうものが3つで安全対策するという、ことになっておりますので、実験装置だけで3つの対策を持たなければいけないということでは必ずしもありませんで、組み合わせで3つの対策、カタストロフィックの場合、3つの対策がきちんとできていれば、我々としては問題ないと了解しております。
   それで、たまたまクリーンベンチですけれども、先ほども言いましたように、中に供試体を入れて、そこで観測する、観察するのがミッションですが、それで制御は、漏れた場合に汚染するということで3つの制御が必要になります。実験装置としては、ここに書いてございます青の部分を制御として自分で持っております。それで、白の部分については、供試体側できちんと持ってください、そういう制御を持ったものしか実験として受け入れませんよという考え方でございます。
   まず操作のチャンバーですが、汚染源として固体のものと液体のもの、それから気体のものが考えられるんですが、固体と液体、気体とで考え方が違っておりまして、まず固体と液体について御説明させていただきますが、まず次のページの概念図に、書いてあります。白抜きの部分が装置の中を示しておりまして、青い部分がJEMの室内をあらわしております。まず汚染に対してどういうことをやっておるかといいますと、まず実験チャンバーを密閉の容器の中に入れる、密閉の状態にすることがまず一つであります。汚染に対する対策は密封する、封じ込めてしまうのが対策でありまして、それを3つ使うということですが、封じ込めるとしてきちんと囲われたチャンバーの中に入れることで、それが一つですが、囲われている状態が壊れる場合、つまり、すき間から漏れることに対して、もう一つの封じ込めといたしまして、中の圧力を下げることをやっております。圧力を下げる方法といたしまして、真ん中のループのところで、色を塗ってあるループがありますが、そのループで?Bのところで循環ポンプがございますが、循環ポンプでループを回しまして、この循環ポンプそのものは中の空気の汚染を防ぐためにも使われているんですが、それで循環させながら減圧にするというシステムですが、それは?Cのところにバルブがついておりまして、このバルブを一時開けて、そこから空気を少し出すことによって内部の圧力を下げる。ここを開けるということは、先ほど封入する、シールをするということを壊してしまうんですが、液体と固体につきましては、ダイヤモンド(◇)になっておりますのが、これはHEPAのフィルターですが、プレフィルターとHEPAフィルターがあるんですが、フィルターで防ぐことで、密封は確保されていると考えております。密封と圧力を低くすることによって、傷ついたり何かしたときに防ぐという手法でございます。
   それから、もとへ戻っていただきまして、揮発性のもにつきましては、先ほど言いましたように、密封の状態にする一つのコンテーメントですが、2つ目の圧力を下げるためにとっております方法として、4番のところで、少し吹き出して圧力を下げる、そのときにHEPAフィルターは気体を通してしまいますので、これは使えないということです。したがいまして、実験装置といたしましては、液体及び固体に対しては、2つの安全装置を提供する。ですから、供試体側で1つの安全装置を持ったものを受け入れるということで、揮発性のある物質を扱う場合には、1つしか保証できないので、2つ自ら持ってください。そういうことで、全体として3つの安全を確保することになっております。
   それから、もう1つシステムとの組み合わせで持っているものについて、ご説明させていただきますが、これは同じく19ページの絵でございますが、チャンバーの中が試験をしていて汚れたときに、そこをきれいにしないと次の試験ができないという場合には、ここの黒い太い線で、ちょっと見にくいんですが、この太い線で書かれているところで、船外に排気することで、中をきれいにするようにできております。
   その排気する機能をつけたために、そこが今度はハザードとして存在するのでどうするかということですが、これは右のほうにAとBの弁がありますが、これはシステム側で提供している弁でございますが、Bの弁は通常開けておりまして、なぜ開けておるかといいますと、上に点々で線が出ているんですが、実験装置全部につなぐようになっておりまして、実験によっては開けた状態で外とツーツーで実験しなければいけないものとかありますので、ここは開けた状態になっております。
   それから、Aのところは、これはそれぞれ個別につなぐためのもので、通常は閉になっております。ここで閉になっていることによって1つの密封を提供することと、それから、Bのところですが、これは先ほどのモニターの話と関係するんですが、室内圧力をモニターして圧力がどんどん下がっていった場合に、ここを緊急で止めるという、自動で閉まる形になっております。
   それで、AとBで2つ安全対策ができておりまして、それで、通常のシステム側は2つしかないので、もう1つは何かといいますと、AとBを止めて、なおかつ3つ目は、そういう状態が起こったら止めると同時に逃げるということで、逃げるまでの3分間、空気が維持されていることを確認する。それで3つの安全対策になっております。
   我々、安全上、先ほど言いましたように、運用での安全対策は、一番最後の選択肢ということで、実験装置については、できるのであれば、逃げることではなくて、自らも1つ持ってくださいということで、ここに5番と6番の装置がつけられております。それで、5番と6番、2つついていると4つになることもあるんですが、これはシステム上の問題でありまして、5番と6番のバルブについては、径が大きいパイプになっておりまして、Bの緊急の閉に至るときにばっと開いてしまうと、緊急の閉になる前におかしくなる可能性もあるということで、これは実験装置側が大きい径を使っているということですが、それで、逃げるというのをやめることで、5番と6番で、こちらで自動閉が間に合わない可能性があるので、2つを要求しております。これはシステム側が1つを持って、こちらが2つ持つというものでございます。ほかの実験装置によっては、径が小さい場合は、システムが2つ持っているので、1つでいいですということにもなります。
   以上、安全について説明させていただきましたが、今後のスケジュールですが、我々が搭載する予定のラックは4つございまして、今回SAIBOラックという2つ目のラックですが、あと、KOBAIROとRYUTAIとTAIKIROという名前がついていますが、そのラックを順次、個々の装置については審査はやっておりますが、順次ご報告させていただきます。それで、最終的にまとめでございますが、これは実験装置について、今日は1つの例しか御説明できませんでしたが、こういうやり方で、ハザードすべてについて識別して、評価して、問題がないと我々は確認しております。
   23ページ以降、ちょっと参考として、責任関係の枠組みについての取り決め等について書いてございますが、時間の関係もありますので、これはもし質問があればお答えするということで御説明を省略させていただきます。 以上でございます。

 栗木部会長     ありがとうございました。
   ただいまの解説、説明等につきまして御議論いただきたいと思います。御意見等ございましたら、お願いいたします。

 馬嶋特別委員     JEMの計画は、国際宇宙ステーションの中でも、日本が担当して、10年間の実験をしていくということですから、世界的にも注目を集める、非常に重要な計画であると理解しております。
   それで、こういった安全対策をきちんとやられているということはよくわかったんですが、中身について質問してもよろしいでしょうか。数箇所あるんですが、クリーンベンチでの滅菌操作ということがありますが、滅菌操作はどういうふうにして行うんでしょうか。6ページの実験装置概要、クリーンベンチというところで、滅菌チェンバーで滅菌操作を行うことですが。

 宇宙開発事業団・長谷川     滅菌そのものは、我々、安全上の問題ではなくて、実験の手順の問題なので、システムをつくった側に説明していただきたいと思うんですが。

 宇宙開発事業団・藤本     宇宙環境利用研究センターの藤本と申します。ただいまの御質問ですけれど、このクリーンベンチを作りました目的が、軌道上で生物実験を行うときに、コンタミネーションを防止して、雑菌等の繁殖などがない環境で細胞培養実験をやりたいということでつくっておりまして、内部の滅菌方法としては2つ用意してございます。
   1つは、この操作チャンバーの中に紫外線滅菌灯を用意しておりまして、実験前に、この紫外線滅菌灯を点灯することによって内部の殺菌をすることができます。それから、先ほど説明の中にありましたが、エアロック構造をとっておりまして、下のチャンバーに一回ものを入れて、そこで基本的にはアルコール滅菌を考えておりまして、アルコールを染み込ませたスワップ等で持ち込むものを拭きまして、それで表面の滅菌を行います。その後、その滅菌された用具を実際の操作チャンバーの中に入れるという形で、ツール等を持ち込む際の表面についている雑菌等を滅菌することができるようになっております。この2つの方式によりまして、中の滅菌と、それから持ち込むものの滅菌を行って、クリーンな環境で実験ができるようにつくってございます。

 馬嶋特別委員     よくわかりました。医学系では、滅菌と消毒とを分けていますので、そういう操作は滅菌ではなくて、消毒のほうがいいかなと思います。文章になっているのでちょっと気がついたところですが。

 宇宙開発事業団・藤本     滅菌、殺菌、消毒と、言う言葉の使い分けの問題はありますね。

 馬嶋特別委員     はい。医学の方では滅菌と言わずに消毒という言葉を使います。

 宇宙開発事業団・長谷川     わかりました。言葉が混乱しているというご指摘だろうと思いますので、整理させていただきます。ありがとうございます。

 馬嶋特別委員     中身のことで、安全性については、この装置についてはしっかりやっておられるというのはわかったんですが、文章になっていますので、ちょっと質問してもよろしいですか。

 栗木部会長     どうぞ。

 馬嶋特別委員     10ページから11ページの宇宙環境計測ミッション装置というのがございますが、これは船外に取り付けるものだと書いてございますが、船内には、こういう装置は存在しないんでしょうか。船外に取り付ける装置というふうに記載をされていますね。

 宇宙開発事業団・長谷川     はい、そうです。

 馬嶋特別委員     船内のほうに、そういう装置は……。

 宇宙開発事業団・長谷川     船内にはないです。これは船外に取り付ける装置でございます。

 馬嶋特別委員     船内の……。

 宇宙開発事業団・長谷川     ええ。船内に、中性子モニターとか、そういうものをということの御質問かと思うんですが、そういうものは、ちょっとまた別に計画はあるかもしれないんですけれど、この装置自身は船外に取り付けるということで設計されているもので、我々は、そういう前提で審査、評価しております。

 馬嶋特別委員     それでは、今おっしゃいました中性子のことですが、船外に置いて、中性子をどうして測るのか、ちょっと教えていただきたい。

 宇宙開発事業団・堀川     船内で中性子をどう測っているかということですか。

 馬嶋特別委員     いえ、船外にそういう装置を置いて、どうして中性子線を測るのかを教えていただきたい。 【宇宙開発事業団・伊藤】  私は開発する側のほうですが、基本的に、これは宇宙開発事業団の技術研究本部のほうの提案という形で船外の中性子をモニターするということでやっておるんですが、私が答えてもちょっと正確ではないかもしれないんですが、基本的に、直接宇宙から来る中性子線に対して、正確に宇宙の中性子線が船内では測れないということで、なるべく船外の、障害物のない直接の環境で中性子を測るためにそういう計測をすると聞いております。その際に、この中性子モニターについては、先ほど説明があった伸展部を設けまして、なるべくステーションの構造物から離して、2次中性子の影響の少ないところで測るというふうになっております。

 宇宙開発事業団・池田理事     ご質問の趣旨とかみ合っていない感じがしますけれども。

 宇宙開発事業団・堀川     なぜ船外で測るかという御質問でしょうか。

 馬嶋特別委員     僕は、物理の専門家ではなくてむしろ生物のほうですが、宇宙のことをちょっとやっているので、僕の記憶では、宇宙線はほとんどが、70%以上がプロトンでありまして、それからX線ですね、あと重粒子がありまして、中性子はほとんどないのではないかと思っているんですが。
   要するに、壁に当たって、船内に重粒子が当たることによって中性子が出てくると。それで、船内では、微量の測定がありますが、かなり中性子が出てきて、これはリスクに問題があるということがわかっています。船外では、どういう……。

 宇宙開発事業団・堀川     おっしゃるとおりで、宇宙放射線にはさまざまな放射線源がありまして、それについて宇宙開発事業団は、これまで人工衛星、それからスペースシャトル等の実験も含めまして、かなりその辺の船外の放射線源、プロトン、それから重粒子等も含めまして、計測データを積み重ねてきております。
   そういう中で、中性子に関してデータがまだあまり取れていないものですから、そういう意味で、今回、この装置に中性子のモニターを取り付けているわけですが、船外の宇宙の中性子線がどのくらいあるかということと、二次中性子線の放射も含めまして、どの程度、船内で影響があるかということも計測の対象として考えておりまして、既に宇宙ステーション、今上がっていますUSラボというアメリカの実験室の中で、その中性子線の計測は、この春から秋まで半年かけて計測データを既にとっております。そういうことのデータの積み重ねの中で、今回この装置には船外のほうの中性子のモニターをしようということで搭載しているものです。

 馬嶋特別委員     ちょっともう少し、中性子を測定するというのは非常に難しい話でして、中性子だけを測定できる装置は、ほとんど存在しないのではないかと僕は思っているんですが。それと、もちろん重粒子がもし測れるんでしたら、重粒子を測っていただくとか、そういうことも考えていただいたほうがいいんではないかと思うんですが。

 宇宙開発事業団・堀川     もし詳しい話があれでしたらば、装置の担当の方とお話しください。

 宇宙開発事業団・長谷川     ミッションの目的のほうで、別途、個別に御説明させていただければと思います。

 馬嶋特別委員     要するに、11ページの中性子線等の宇宙環境データの取得となっておりますが、もし、ちょっとお伺いいただいて、本当に中性子線を測るかどうか。これはどこにも出ない資料だと思いますが。

 宇宙開発事業団・堀川     ええ。方式等も含めまして、御説明させていただければと思います。

 栗木部会長     ほかに何か御意見、御質問ございますでしょうか。

 井口委員長     今日のお話を伺っていて、設計については大変綿密にお考えになってこられたのはわかりました。いろいろなトラブルというのは、ロケットの場合もそうでしたけれど、設計と、それからもう1つの半分の仕事が製造で、製造の過程、品質管理も含めて、そこに問題があったということが少なくなかったわけです。
   ですから、これも設計のお話は、今よくわかったんですが、製造に対して、その後、もちろん部品検査とかいろいろおやりになると思うんですけれど、まず1つは、宇宙開発事業団にそういうことに関する製造も含めて、試験のマニュアルがあるのかどうかということが1つと、それから、三重系とか、いろいろ安全設計のレベルの高いものですから、例えばバックアップシステムであれば、プライマリーのものをわざわざ、ある意味では不具合を起こしてみなければ、バックアップシステムの機能というのは試験できないわけですね。そんなあたりまでどうやって試験をなさるのか、その辺もし、詳しくなくて、簡単で結構ですけれど、御説明いただければありがたいと思います。

 宇宙開発事業団・長谷川     品質管理、信頼性につきましては、安全とは別に、私のところの部屋は安全信頼性管理室という名前のとおり、信頼性、品質についてもやっておりまして、それは設計の進捗に合わせて、信頼性は設計の段階で、それから、品質管理は、製造の段階で、これとは別に通常の活動としてやっております。
   それから、17ページとか16ページにも書いてございますが、安全に直接関係するようなものについては、現品の検査だとか、そのものについて検査を、それはいわゆる通常の品質管理とは別に、安全という観点でまた特別に検査をしたり、試験をしたりということをやって確認しております。

 井口委員長     そういうマニュアルが、宇宙開発事業団でちゃんと決まっているんですか。どういうように試験するとか。

 宇宙開発事業団・長谷川     それはマニュアルというか、特に実験装置の場合は、それぞれ個別で固有のものでございますので、試験計画書とか検査計画書というのをきちんと出してもらいまして、それをレビューして、事前にきちんと確認して、次に、そのとおり試験をやっている、検査をやって検査成績をきちんと、立ち会ったりとか、そういう形で進めております。

 栗木部会長     委員長の今の御質問を私なりに解釈しますと、例えば3つなり、2故障許容という格好で、3つの状況を受け持っていたとします。いろいろな運用が考えられますが、言うなれば、限界試験みたいなこと、次々と何かが起きていって、3つ、本当にたどりつくまで全部が働くかということが、本当に最終的な検証として行われるかどうか、ここを確証しないと、3つという意味がないではないかという具合に私も受けとめましたが、そういう試験というのは、どのような格好で行われるんでしょうか。

 宇宙開発事業団・長谷川     それにつきましては、一つ一つの対策に対して個別で検査をする。試験をしたりというのもやりますし、それから、全体をつないだ、全体のシステムとして、別に壊してというわけにはいかないんですが、機能を止めて、それで、次の機能が働く、次の機能が働くというような形での、いわゆる、多少模擬ですけれど、そういう感じの試験とか、そういうのはやります。

 栗木部会長     単体ではもちろん連係しておるから……。

 宇宙開発事業団・長谷川     ええ、そうです。一個一個は当然。

 宇宙開発事業団・堀川     すべての系統に対して、このシステムでは確認します。

 川崎委員     私も、これは初めてなんですが、ずっとお話をお伺いしていると、ある意味で言うと、核燃料物質の取り扱いシステムと似ているんですね。いわゆる人との関係においては隔離するという絶対隔離になるわけなので、そういう意味では非常に似ているので、これからの手順として、作られる機器ごとに、台帳というとおかしいんですが、経歴書的なものを、試験結果から含めて全部作っていくようなシステム化をぜひやっておいていただいたほうが、このHEPAフィルターというのは、ときどきピンホールがあったりすることが、原子力の場合、動燃の再処理工場でかなり経験があるんですが、そういうことも含めると、取りかえ期間だとか、バルブについても同じようなとが言えるので、起こってからではちょっと大変なので、起こる前に、予防的に交換をするとかという意味の、危機管理台帳みたいな形の経歴書をつくれるようなシステムというのをお考えになっているかどうか。

 宇宙開発事業団・長谷川     それは、我々はNASAと最初にスタートしたときに言われております。この品質安全に関しては、第1はトレーサビリティーということがありまして、どこかで事故が起こったり、どこかで不具合が起こったりしたときに、原因究明がずっとできるように、最初まで遡ってトレースができるように体系をつくりなさいということで、トレーサビリティーは、こういう試験にしろ検査にしろ、第1のテーマとして、今、体系で各メーカーさんとかに要求はしております。
   それから、ものによって個別の一個一個、例えば寿命があるものとかがありますね。そういうものについては、寿命の管理というので別の管理。それから、クリティカルなものについて、特に重要なものついては重要品目の管理という形で、一般の管理とは別出しで管理するという形でやっています。
   それから、特性値が非常に問題になるものについては、特性値の管理ということで、体系的にはやっておりますが、多分、原子力もやっていたんでしょうが、落ちがあるとかはあるかもしれませんので、そういうことは肝に命じてきちんとやらせていただきたいと思います。

 栗木部会長     ほかに何かございますか。佐々木先生、どうぞ。

 佐々木特別委員     先ほど、最初にあった国際宇宙ステーションのトラブル、不具合例を見ると、不具合が発生して、それを、結局、人の手で、より大きくならないような伝播しないような作業をコンティンジェンシー的にやっていると思うんですが、ハザードコントロールというのは、あくまでもハザードが起きないための設計審査とか、そういうことだと思うんですが、それが万一起きたときに、どういうふうに、今回の場合は有人というのが非常に役立っている例だと思うんですが、有人を、どういうふうに対応するか、それを考えておくのも一つの安全の確保のために必要な気がするんですが、その手順的なものが考慮されているのかというのが1つと、もう1つは、全然別なんですが、アイテム別にハザードを分析して、一つ一つについてはきっちりできているように思うんですが、Aという機器が問題を起こしたときに、その影響がBに行って、Bがもっと影響を起こす、何か問題を起こすというシステム的な、システムとしての、あるいはJEMとしての全体としてのハザードの伝播を防ぐとか、そういうのと、この個々の審査と合わせてやらないといけないと思うんですが、全体としてのハザードコントロールといいますか、ハザードが伝播しないとか、AとBとの関連がどうなるか、そういった解析というのはなされているんでしょうか。この2つを。

 宇宙開発事業団・長谷川     宇宙ステーション全体につきましては、先ほどの、ちょっと後ろのほうを省略したんですけれど、まず、最後の伝播の話ですが、24ページに書いてございますが、全体については、それぞれのモジュールについては、それぞれのところが責任を持って、次に、NASAが全体について責任を持ってやりますということは、宇宙ステーション全体につきましては、それぞれの安全の確保と、それから、それがほかのモジュールとの関係で、どういうふうにインターフェースとか伝播とかいうのが、あるかないかということはNASAがやっております。それと同じような体系で我々も考えておりまして、個別のハードウエアについてのそれぞれのハザードと、それからインターフェイスと、それからインテグレーションという別の観点から見たときのハザードという観点でレビューをしております。
   今回の場合も、この実験装置、個別の審査と、それから実験装置をラックに組み込む、インテグレーションと呼んでいますけれど、インテグレーションについてのハザードのレビューもやっております。ですから、パーフェクトかどうかはわからないんですが、基本的には、そういう観点でのレビューはやっております。
   それから、先ほどご指摘がありました、人がいることによって対応ができる問題につきましては、まず、計画段階では、基本的には、我々は保全設計というのをやっておりまして、これは事故が起こる起こらないに関係なく定期的に保全することに。で、事故が起これば、当然それを直す保全活動ができるということで、そういう保全計画をつくっておりまして、ですから、設計では、二重三重で大丈夫なようにやっていますが、1つ壊れた状態で放っておくわけではなくて、きちんと保全でまた直すという手法も取り入れております。
   それから、FDIRというので、フェイリア・ディテクション・アイソレーション・リカバリーという、つまりそういう手法で、何かが起こったところに、それをアイソレッドするような形で分離して、そこをリカバーするという考え方で対応する。いろいろな観点で、人がいることによって、危険というか、ハザードは多いんですが、逆に言うと、それのメリットにもなるということで、それを最大限に利用して、安全をよりやっていこうという観点での対策もやっております。

 河野特別委員     今のことも関連していると思うんですが、幾つかお伺いしたいんですが、最初に、アメリカのほうの都合で規模が縮小される可能性もあって、7人から3人もあり得るという話をされたんですが、これについて、こういうふうに、もし3人なったら、なってから考えようというのもあるんでしょうが、これで「きぼう」とかの設計が何か変更されるようなことがあるのか、可能性があるのかどうかということと、それから、もう1つは、宇宙飛行士の安全も大事ですが、実験とか、そういったものがきちっとできることも非常に重要でして、宇宙飛行士が安全に、しかも使い勝手がいいようなものになっているのが一番効率的かなとは思うんですが、その調整はどこで行われるのかということと、それからあと、私が一番心配しているのは、先ほど委員長もおっしゃいましたことですが、企業の関連ですが、今度の「きぼう」については、全く同じものを地上には作られなくて、似たものが置いてあるということですが、何かトラブルがあったときには、製造に携わった方に直接聞くことが非常に重要かなと。それで、そういうことは宇宙飛行士がすべて知っておくわけにはいきませんから、地上の支援を、今のことも含めてどういうふうに行われるのかということ。
   それから、あと、一番最後の24ページにありましたけれど、参加機関の責任で要素の安全をするということですが、この辺が、一番上にNASAがあるので問題ないということもあるんでしょうが、これは、例えばアメリカの宇宙飛行士がJEMを使うこともあり得ると考えれば、向こうの宇宙飛行士が「きぼう」とかいったものの安全とか、それから、実験するための機構とかいったようなものを、どの程度理解させるのか、するのかというところはいかがなんでしょうか。
   以上、雑駁にお伺いしまして、申し訳ありません。

 宇宙開発事業団・堀川     それでは、私のほうから、ちょっと簡単になってしまうかもしれませんが。
   最初に、NASAの今の計画の動向ですが、先ほども言いましたように、コストオーバーランがあって、当面3人の状態を継続せざるを得ないかなという状況にあるんですが、NASA自身、すべてをやめてしまうということを決めているわけではなくて、クルーリターンビークルにせよ、ハビテーションモジュールにせよ、ほかのパートナーと協力をしながら、どこまで実現していけるかを今模索している段階で、とりあえず、この2年間、アメリカが国際パートナーのJEMや、ヨーロッパのモジュールがつけられる状態まできちんとやってみて、その状況を踏まえて、NASAの管理がうまくいけば、そういうことを続けやっていきますと。その間、追加的にそのコストを、ほかの機関と協力しながら、最終目的の姿にすることができるかどうかの検討を今進めている状況ですということが1つです。
   それから、今、当然、3人の状態で、宇宙ステーションのサイエンスの成果が挙がるわけではないことは皆さん承知しておりまして、その中で、どういうふうにその3人体制の中で、どこまでのサイエンスをやり、7人にするために、そのサイエンスをもっと、そういう実験をやる必要があるということで声をあげていくということは行っておりますし、国際間で、マイクロG、あるいはライフサイエンスというコミュニティーが軌道上での実験の計画をそれぞれ調整しながら進めましょうというメカニズムもできております。
   それから、製造段階で携わった人たちを運用の段階までどういうふうに維持していくかということですが、その辺については大変難しい問題がありまして、作った人が10年間ずっとそのシステムのモニターのためについて、そのために、その人を維持していくのは大変難しいところがありますので、結局、その運用をする人が、設計の視点で、あるいはシステムエンジニアという視点で運用者を養成しておくことが大事だと私どもは思っておりまして、そういう視点で、今の段階は、製造した人、設計した人と、運用を準備している人と連携して、その辺の技術をトランスファーできるように、今さまざまな処置をとっているところでございます。
   それから、宇宙飛行士は、さまざまなモジュールを操作するわけで、そのために、宇宙飛行士のトレーニングというか、訓練をしておりまして、現在も、それぞれのモジュールを作ったところに、将来、宇宙ステーションで活動する人たちのアドバンスと訓練と称しまして、訓練をずっと続けております。宇宙飛行士が、ある特定のフライトにアサインされた後は、そのアサインされたミッションの中でどういう操作をするかという計画に基づいて、またより詳細な訓練をすることで、訓練計画も、各パートナーと協力し、調整し合って作って、習熟していただくように考えております。

 栗木部会長     少し時間が厳しくなってきましたので。

 宇宙開発事業団・長谷川     2つ目の御質問にお答えしていなかったと思うんですが、ミッションと、それから安全性のトレードオフなんですが、ミッション上、どうしても不都合な場合というのは、NCRとかはあるんですが、最近あった例ですが、観測機器で、シャープにしなければいけないものがありまして、それをどこまでやるかということで、安全要求をそのまま適用するとミッションが成り立たないということで、それで実際に宇宙服の布をこすり付けて、要求は満足していないけれど、実際大丈夫ですという確認でやるというふうに、何でもかんでも要求どおりやってくださいというふうにはやっておりません。それはケース・バイ・ケースでございます。

 栗木部会長     次の議題も、重い議題でございますので、3番目の議題に入りたいと思います。少し時間がおしておりますので、プレゼンテーションを大体10分程度でお願いいたします。国際宇宙ステーションの搭乗宇宙飛行士の放射線被曝管理についてでございます。宇宙開発事業団の宇宙医学研究室の関口室長に説明をお願いいたします。

 宇宙開発事業団・関口     それでは、皆さんのお手元の安全6−4の資料に基づきまして説明させていただきます。宇宙医学研究開発室の関口と申します。
   国際宇宙ステーションに搭乗する、またはその搭乗予定の日本人宇宙飛行士、及びその候補者の放射線被曝に係る宇宙開発事業団取り組み等について報告いたします。
   バックグラウンドでございますが、先ほどから出ておりますMOUでございますが、MOUの規定によって、宇宙開発事業団というのは、搭乗宇宙飛行士の健康管理を行う責任がございます。このMOUに規定されておりますマルチの医学の会議がございますが、通称MMOP、マルチ・ラテラル・メディカル・オペレーション・パネルと言っておりますが、これの中に、健康管理の要求文書としてISS Medical Operation Requirements Documentというのがございます。これは、通称ISS MORDと言っておりますが、この中に放射線被曝管理についても記載されております。
   それから、一方、一般に日本の国内で職業上の放射線被曝の管理について規定しております法令には2つほどございまして、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律と、それから安衛法と通称言っておりますが、労働安全衛生法の電離放射線障害防止規則というものがございます。この2つとも、自然放射線は規制の対象外としておりまして、宇宙放射線というのも自然放射線でございますので、宇宙飛行士の放射線被曝管理には直接適用がされないことになります。ただし、この安衛法第3条第1項では、事業者は、職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならないと述べられておりますので、これを踏まえる必要があります。
   以上のことから、宇宙開発事業団といたしましては、宇宙飛行士の放射線被曝管理を適切に行う必要があると考えております。
   3番でございますが、放射線被曝管理の基本的考え方ということで、上記の背景から、宇宙飛行士の放射線被曝管理に係る宇宙開発事業団内規、宇宙開発事業団内の規定を作成しまして、放射線の被曝管理を行おうと。この規定の作成に際しましては、国内関係法令のもととなりました国際放射線防護委員会、通称ICRPといいますが、それの1990年勧告の考え方を参考にしております。
   そして、4番でございますが、宇宙開発事業団の理事長の諮問委員会でございます有人サポート委員会宇宙放射線被曝管理分科会というのがございますが、それの中で調査検討をしておるわけですけれど、この放射線の被曝管理指針を作成するために、この放射線被曝管理分科会を平成9年5月に設置しております。そして、数々の議論の結果、平成11年3月には、線量限度について中間報告を公表して、意見募集を行いました。その後、その寄せられた意見とか、それから実運用を考慮いたしまして、本年の8月の分科会で、当該指針(案)、それから、指針(案)の作成過程において、調査検討の内容を分科会報告書としてまとめてございます。これは、先生方のお手元に参考資料としてあると思いますので、かなり分厚い資料ですので、詳細は後ほどごらんになっていただければと思います。
   そして、次のページでございますが、図1のほうに、いわゆる宇宙飛行士の被曝管理の概要、体系といいますか、こんなふうにして管理指針をつくったのだという図がございます。先ほども申しましたように、国際放射線防護委員会ICRPの内容を参考にいたしまして、そして、もちろんISS MORDというものと整合性を確認しつつ、それと同時に、日本の放射線審議会、いろいろな国内法がございますが、そういったものも参考にして、それで評価しつつ、こういった指針を作成しているのだという図でございます。
   それから、その裏にございますが、こちらのほうは、いわゆる放射線被曝管理にかかわる主な規定を比較した表でございます。先ほどから先生方のお手元にあります報告書がございますが、その概略が一番左に書かれてございます。そして、この通称MORDと言われるものの国際的な共通技術要求の概要と、そして日本の国内法規の概要が比較表となっておると思います。
   時間もございませんので、簡単に説明いたしますが、被曝線量の制限というところに、いわゆる生涯実効線量当量制限値が決めてございまして、いわゆる年齢別に、それから男性、女性で違った値になっております。それから、組織線量当量制限値ということで、これは、骨髄、水晶体、皮膚、精巣で決めてございます。この上記の線量制限値というのは、主にICRP60のリスク評価・防護の考え方に準拠して作成しました。
   それから、次に、モニタリングや線量評価でございますけれど、宇宙環境は、定期的にも、もちろん監視いたしますとともに、線量を定期的に評価する。この太陽地球圏の宇宙環境が変動したときとか、それから、ステーションの放射線環境が変動したとき、それから、船外活動中は、随時モニターすることにしております。
   それから、次にまいりまして、いわゆる教育訓練が、今非常に大切だろうということから、初めてISSに飛行する前には、宇宙飛行士に6時間以上の時間数でもって教育訓練を行おうと。それで、1回行った人で、次回以降については、飛行の前に少なくとも1回は再教育を行うことにしております。
   それから、このような健康診断を実施する。特に問診ですね。被曝状況はどうだったのかということ、それから、目の検査、皮膚の検査、それから血液検査、それから妊娠検査と、それから、必要に応じて、男性の場合には精子数検査を健康診断としてやっていこうと考えております。
   それから、緊急時の措置でございますが、飛行中は、必要時には退避・飛行中止等の必要な措置が講じられるようにする。それから放射線障害が発生したとか、それから、線量制限値を越えて被曝したような場合には、もちろん必要な措置を講ずるとしております。
   それから、最後に、参考でございますが、宇宙開発事業団と、それからNASA、ロシアの宇宙ステーション宇宙飛行士の線量制限値の比較の表がございます。生涯実効線量当量制限値、それから、組織線量当量制限値で、ここにそれぞれ少しずつ異なった制限値の値が参考に示してございます。
   簡単ですが、以上でございます。

 栗木部会長     ありがとうございました。
   何か御質問等ございますか。宇宙ステーションの運用の場合には、上がってしまうと、次に帰れるのが何日以降、要するに、セミ・パーマネントに滞在する宇宙飛行士には時間が特定されていて、おそらく、帰りの足の便で制約があると思うんですが、万一、線量が極めて多くなったことが何かモニター等でつかまった場合は、宇宙ステーションのどこか一カ所に、一種のセーフ・ヘブンというんですか、退避すれば放射線を防ぐようなエリアがどこかに設けられているんですか。

 宇宙開発事業団・関口     現在のところ、私の理解では、特別に防護が強いといったようなところがなくて、例えば、クルークォーターといいまして、各宇宙飛行士のプライベートなエリアには、多少防護壁といいますか、特殊なものでつくったもので覆って、少し防護が可能かなというぐらいで、例えば、鉛のようなもので囲ってやるというものは今のところはありません。
   それで、どうしても線量、太陽フレア等でもってオーバーしてしまうということ場合には、各IPの専門家が検討して、場合によっては緊急帰還ということにも起こり得ると思います。

 栗木部会長     河野先生、どうぞ。

 河野特別委員     門外漢なんですけれど、表現が気にかかっているので、ちょっとどういうことなのかお伺いしたいんですが、図1がありまして、この前にも説明があったんですが、宇宙放射線は自然放射線であり、宇宙飛行士は規定の対象外と書いてありますが、これは、何か地上と同程度のものであるから、宇宙においてもこれは対象外とするという表現と同じことなんでしょうか。

 宇宙開発事業団・関口     いや、大分、それは違いますね。

 河野特別委員     違うんですか。

 宇宙開発事業団・関口     ええ。国際的な放射線防護の考え方が、これはもともと人工放射線について管理をしようという考え方です。地上でも、日本をはじめ、世界、行く場所によっては自然放射線というのは違いますから、太陽、それから地下、土壌その他ありますね。ですから、それは管理の対象にできないわけですね。
   宇宙の場合には、そういう放射性同位元素のような人工の放射線に対する規制の対象をしようと考えるのとは基本的に違いがあるわけですね。ですから、宇宙は宇宙の、自然放射線そのものですから。

 河野特別委員     でも、地上よりも、平均したものよりも強いとか弱いとかいう議論はなされないんですね。

 宇宙開発事業団・関口     基本的に強いです。

 河野特別委員     強いんでしょうね。

 宇宙開発事業団・関口     ええ。それは大気圏のように守ってくれるものがありませんから、普通に宇宙空間に行くと、1日当たり1ミリシーベルトという数量当たるとか、そういうことですから、基本的には時間で制限するしかないんです、この考え方は。宇宙飛行士の飛ぶ時間を制限しようと、あらかじめ、一生のうちどれだけ浴びていいかという考え方で、フライトのコントロールも、それぞれ日本なら日本の宇宙飛行士については、そういう時間の制限、フライトの割り当て等で考えようという、基本的にはそういう考え方です。

 河野特別委員     そうですか、わかりました。

 栗木部会長     自然放射線というのは、地上の自然放射線の場合は、これは人間が生存以来、その下で暮らしていることが前提になっている。おそらく、作業者の規定というのは、装置から漏洩するとか、装置の中の環境でということで、ある程度は計測可能な状況だと思うんですが、宇宙の場合は、先ほど来、計測装置のことが話題になっていたのは、まだ、宇宙の場合は、これから測るところが、しかも、これが太陽の活動によって、10年周期で変わったり、バーストが起きたりするので、まだ、そういう意味では蓄積量が足りないということで、多少、不確定さは残したまま動き出すということですから、宇宙ステーションそのものがまず稼働し始めて、並行に線量をモニターしていくことになるのではないか。それで、緊急の場合どうするかということが、多少問題になるということと理解しております。

 井口委員長     嫌なことを言うようですけど、8月29日のH−?Aの試験機1号機の打上げのときに、山内理事長が、自分が納得しなければ打上げないということをおっしゃいました。私はあの言葉を大変高く評価していまして、2つのことを言っておられたと思います。1つは信頼性第1である。責任者は、自分であるということをおっしゃったと思います。JEMの場合、自分が納得しなければ打上げないとおっしゃってくださる方はおられるんでしょうか。そうすると大変安心なんですが。

 宇宙開発事業団・池田理事     宇宙ステーションの計画自身が、日本政府として取り組んでいるわけですね。そういう意味では、これは宇宙開発事業団が全部を背負っていますということを申し上げるのはなかなか言いにくいところがありますが、ただ、今のような国の事業としてやらせていただいている実施機関として、宇宙開発事業団が、相当、政府間の取り決め、その下の了解運営その他責任を負っていますから、このJEM実験棟のつくり方から、それの打上げ管理、これは直接的には宇宙開発事業団が責任を負わせていただくわけですね。そういう意味では、今井口委員長の質問に対しては、宇宙開発事業団を挙げて、そういう責任を負うわけですから、その象徴的な役割は、今でしたら、山内理事長ということに……。

 井口委員長     理事長に……。

 宇宙開発事業団・池田理事     形式的にはそうなりますね。それは組織ですから、形式的なことを申し上げれば、そういうことになると思います。

 栗木部会長     この宇宙ステーションのもう1つの大事な点は、これによって有人システムの技術を学ぶということだと私は思っております。この有人に絡んで、今の議論と多少かかわりがあるかと思うんですが、将来、有人飛行システムをつくるとなったときは、どういう具合にして進めていくか。
   これまで、航空機のテストパイロットなんかを見ますと、実際にはテストパイロットの命がかかわっているということが非常に大きな問題になっております。私は宇宙開発委員会の委員に命じられたとき、まだ池田理事がおられたときだったと思いますが、私はあいさつのときに、潜水艦のデザイナーというのは、最初に海に潜るときには、デザイナーごとその潜水艦に入れて潜るんだそうであります。つまり自分が乗れるかということが、この有人システムの最大の根幹にあると思います。したがって、自信がないんだったら、むしろ、それはつぶしたほうがいいというぐらいの覚悟が必要なんです。
   そのことは、私もNASAへ行って、安全審査のパネル、あるいはそれに携わる人の決意というのを、並々ならぬものを感じておりますのは、自分が危ないと思ったら絶対に動かさない、そこが一番の勘所だと思います。したがって、ぜひこれは理事長に押しつけるだけではなくて、その開発に携わる方が、場合によっては、これは自分が入るんだというぐらいのことを、極端な場合には、自分の家族を入れてでも乗ってみせるというぐらいの決意が、私は必要ではないかという気がいたします。ぜひこの開発に携わる方は、そこをわきまえて、有人の重みというのを感じていただきたいと思います。

 宇宙開発事業団・池田理事     今、栗木先生がおっしゃった点は、宇宙ステーションの、特に与圧部ですね。与圧部というのは、人が入って作業をするという意味で、これはこの10年来、宇宙開発事業団がやらせていただいたのは、その有人の宇宙機をつくるという経験を初めてやらせていただいているわけです。今、この安全対策等を議論いただいていますのも、そうした観点から、日本人の宇宙飛行士ばかりではありませんが、そういう、人が中に滞在して作業をすることについての安全確保について、我々は、NASAをはじめ先進国から学ぶと同時に、日本としての対応づくりについて議論させていただいているわけですし、その過程では、つくる側のメーカーだけではなくて、実際に、今日筑波で見ていただきますが、これまでつくる過程でも、これから日本の宇宙飛行士、もう既に3人ほど新しくそのためにリクルートもしておりますが、そうした人たちも参加しております。ですから、使い勝手の問題ですとか、実際にどういう仕組みで動くようになっているかとか、それも実際に宇宙飛行士の立場からも、それも見て確かめるようなプロセスも踏んでおります。
   そういう意味では、そういうことを積み上げながら、かつ実際に、今日はどうかわかりませんが、NASAからもそういう経験を積んだ人たちが来て、現場で試験に一緒に立ち会うとか、そういうことも積み上げてきておりますから、そういう意味では、十分な経験を反映しながらつくらせていただくということは、しっかりやらせていただきたいと思っておりますし、今先生がおっしゃられたことは、また改めて、まだ何年かございますし、その間にも肝に銘じてやらせていただきたいと思います。

 馬嶋特別委員     そのときに、日本の宇宙飛行士はJEMのことをよく知っているんですが、外国の宇宙飛行士も使うわけですね。それはどういうふうに教育されているんですか。

 宇宙開発事業団・池田理事     訓練の過程で、外国の宇宙飛行士も、例えば筑波にも来てもらいますし、実際にJEMがどう出来上がっているかとか、それも見ていただいたり、そういう経験を積みます。

 馬嶋特別委員     では、日本と同じ程度にやっておられるんですか。

 宇宙開発事業団・池田理事     日本人宇宙飛行士には、実際につくった人もいますから、そういう意味では、若干の違いはあるかもしれませんが、日本と同じようなアドバンス訓練ですとか、実際、JEMに特有の訓練ですとか、それも習熟した上で、JEMの操作に当たることになります。そういう仕組みで動いております。

 栗木部会長     宇宙飛行士は非常に大きな権限を持っておりまして、自分が納得しない限りはノーと言える権利をいつでも担保しているという具合に理解しております。

 宇宙開発事業団・堀川     ちょっと蛇足ですが、井口先生のあれに一言つけ加えさせていただきます。私は、JEMの開発に約10年間、プロジェクトマネジャーをやらせていただきましたが、その間、私が納得しないものは、とにかく通さないという考え方でやってまいりましたし、後を継いでいます白木プロジェクトマネジャーもそうですし、先ほどの長谷川室長も、そういうマインドをみんな持ってやっていると思っておりますので。

 井口委員長     それを聞いて安心しました。

 川崎委員     今までの議論は、どちらかというと、設計段階での議論が多かったと思うんですね。放射線関連はちょっと別にしましても。いわゆる原子力でよくある、いわゆる設計工事認可レベルのチェックというのは、この25ページの図のどの中で開かれるんでしょうか。有人安全技術委員会なのか、NASDA有人安全審査会なのか、この辺、いわゆる設計工事の、これは先ほど委員長の冒頭の質問にあったことと関連するんですが。

 宇宙開発事業団・池田理事     今おっしゃったのは、詳細設計ですとか、作る過程で、約束通りできているかどうか、どう確かめているかということですね。

 川崎委員     そうです。その辺はどういう形になるんでしょうか。

 宇宙開発事業団・長谷川     ちょっとはっきり聞き取れなかったんですが、作る段階での確認といいますのは……。

 川崎委員      詳細設計と製作段階で、製作を。

 栗木部会長     工事が完了した後の確証といいますか、バリデーションはどういう……。

 宇宙開発事業団・長谷川     それは、それぞれフェーズごとにPDR、CDR、それからPQRとか、それからPSRというフェーズで分かれておりまして、私なので、安全の観点で言いますと、源泉検査といって、工場にまで行って、安全の問題に関してきちんとできているかどうか、現品検査、先ほどもちょっと言いましたけれど、現品を見て、きちんとできているかどうかは確認しておりますが、ミッション上のお話としても、同じようなことをやっていると思うんですが。

 宇宙開発事業団・堀川     審査の形態はきちんと決められたとおりにやっているんですが、それに対して、その審査会は、すべて国際パートナー、あるいは宇宙飛行士が全部参加できるようにしておりまして、必ず、JEMあるいは日本の実験装置に関しては、NASAの人たちも含めて審査を一緒にやっています。
   それから、NASAのほうで、有人的に、クリティカルな要素については、製造現場も含めて、オーディットをしたいという話がありまして、それも直接、NASAの人が工場に行って、クリティカルな部分の試験の確認等、あるいは製造の確認をしております。それから、クルーも、安全に支障のあるところは、実際に現役の宇宙飛行士が製造現場に行って、安全対策がきちっととられているかどうかの確認もしていただいております。

 川崎委員     そうだろうと思うんですが、この25ページの図では、そういう点が読み取れないんですね。

 宇宙開発事業団・長谷川     すみません。これはいわゆる審査の手順というのを示してございまして、審査としては、こういう会議体の形態でやっておりますが、それとは別に、宇宙ステーション安全信頼性管理室という私の部屋で、日常的にこういう審査会に出すために、我々がどういうことを確認して、どうしてきたかということは作業としてやっております。これは、ステーションだけ固有の話なんですが、宇宙ステーション安全信頼性管理室というのは、独立の組織ということになっておりまして、安全とか信頼性、品質に関しては、プロジェクト側が一義的に責任を持って、プロジェクト側で、まず同じようなことをやって、我々はダブルチェックという形で、もう一度同じような立ち会いとか、そういうことをやるという観点でこれは日常的にやっております。ここは会議体での審査の手順を書いただけで、すみません、舌足らずの資料で。

 川崎委員     開発担当から上がるのは、審査対象文書だけしか来ていないので、バリデーションまでを室が対応してやっておられるかどうかは不明だったのでお伺いしたんです。

 宇宙開発事業団・長谷川     これはやっております。この審査に入る前に全部やってございます。

 栗木部会長     それでは、大分時間を超過いたしましたので、ここで一応終わらせていただきます。最後に、事務局のほうから連絡等がありましたら。 【澤邉推進官】  この後、午後から日本実験棟「きぼう」の見学がございます。1時に、参加される安全部会の委員の方はこちらの場所にお集まりください。

 栗木部会長     それでは、熱心な御議論ありがとうございました。少し時間をオーバーいたしましたが、理解を深めたことと思います。これをもちまして、本日は閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

−−閉会−−




(研究開発局宇宙政策課)

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