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宇宙開発委員会

2001/05/14 議事録
宇宙開発委員会 計画・評価部会(第2回)議事録


宇宙開発委員会 計画・評価部会(第2回)議事録

1.日時 平成13年5月14日(月)
  10:00〜12:20

2.場所 文部科学省別館第1会議室(旧科学技術庁5階)

3.議題 (1) 地球観測全般について
  (2) 地球観測の将来計画について
  (3) 環境観測技術衛星(ADEOS−2)について
  (4) 陸域観測技術衛星(ALOS)について
  (5) 信頼性向上等について
  (6) その他

4.資料 計画2-0 宇宙開発委員会計画・評価部会(第1回)議事録(案)
  計画2-1 地球観測分野の活動状況
  計画2-2-1 将来計画のための準備
  計画2-2-2 傾斜軌道衛星搭載太陽掩蔽法フーリエ変換分光計
    (SOFIS)の概要
  計画2-3 環境観測技術衛星(ADEOS−2
  計画2-4 陸域観測技術衛星(ALOS)
  計画2-5-1 信頼性向上と品質保証の強化について
  計画2-5-2 高度情報化の取り組みについて
  計画2-6 招聘等職員の出向元内訳について
  計画2-7 宇宙開発委員会計画・評価部会のスケジュール

5. 出席者
     部会長 長柄喜一郎
     宇宙開発委員 井口雅一(委員長)、栗木恭一、五代富文
     特別委員 上杉邦憲、佐藤勝彦、澤岡昭、高柳雄一、冨田信之、中西友子、松野太郎、宮崎久美子、森谷正規、薬師寺泰蔵、八坂哲雄
     オブザーバ 斉藤勝利、稲田伊彦

  6.議事内容


 長柄部会長 

   おはようございます。
    それでは定刻になりましたので、第2回の計画・評価部会を開催したいと思います。あと出席予定の委員の方で、お2人がお見えになっていませんが、間もなくお見えになると思います。
    本日は皆様、大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。それでは、きょうは2回目でございますけれども、前回欠席されました委員で、今日お見えになりました方がいらっしゃいます。それでは最初に自己紹介をお願いしたいと思いますけれども、中西先生からお名前、所属、専門などについて簡単にお願いします。

 中西特別委員 

   東京大学農学生命科学研究科の中西でございます。昨年に引き続きもう一度宇宙関連の委員ということで、よろしくお願いいたします。
    もともとといいますか、正式には宇宙科学を専攻したものですから、非常になつかしくいろんなことを学ばせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 長柄部会長 

   ありがとうございました。
    それでは薬師寺先生お願いします。

 薬師寺特別委員 

   慶應大学法学部の薬師寺でございます。国際政治から科学技術をやっておりまして、宇宙は素人でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 長柄部会長 

   どうもありがとうございます。
    池上委員がお見えになる予定ですが、またお見えになった後で自己紹介をお願いしたいと思います。
    それでは、本日の議題に入る前に、まず資料の確認をお願いしたいと思いますけれども、資料は0番から7番まで、それで、2つ枝番がついておりまして、合計10種類あるはずでございます。もし不足の分がございましたら、事務局のほうにご請求いただきたいと思います。
    それから資料の2の計画の2−0でございますけれども、前回の議事録の案でございます。本件につきましては、特に読み上げなどはいたしませんが、何か修正意見がございましたら、今週中ぐらいに事務局のほうにご連絡願いたいと思います。次回の会合で修正した上で、確定版としてお配りしたいと考えております。よろしくお願いします。
    それでは、本日の主な議題でございます地球観測、宇宙からの地球の環境観測等について、そのレビューを行いたいと思います。また後で、宇宙開発事業団がおやりになっています信頼性向上等についての活動についても、説明願い、議論したいと思います。
    それでは最初に、地球観測全般について、宇宙開発事業団のほうから説明願いたいと思います。本日は、地球観測全般の現状の話と、過去から現在までの話と、それから将来計画のために今、どういう準備をしているかということ、特に現在、進めていらっしゃいます大きいプロジェクト、ADEOS−IIのプロジェクトとALOSについては、また別途説明願うということで、一応4つに分けて、この地球観測の話の説明ないし質疑・討論を始めたいと思います。
    もう1つお断りしなきゃいかんわけですが、地球観測の一種でございます内閣が中心で進めております情報収集衛星がございますけれども、本件につきましては、本日ではなくて、また別途、日を改めて、この情報収集衛星の現在の開発状況ないし将来計画について伺いたいと、こう思っております。それではお願いします。

 片木(宇宙開発事業団) 

   おはようございます。宇宙開発事業団衛星総合システム本部の衛星プログラム推進部長をやっております片木と申します。本日は地球観測分野の活動状況についてご報告いたします。
    内容ですけれども、活動内容、事業展開、そして国内・海外機関等との協力についてご説明いたします。
    宇宙開発委員会の基本戦略にうたわれておりますとおり、地球観測の目的といたしましては、社会経済への貢献を果たすということで、次の2つの大きな分野でのカテゴライズした形で活動しております。1つが地球環境観測、それからもう1つが地表観測です。以下、内容についてご説明いたします。
    これは、やはり地球観測におけるアウトラインといいますか、全体的なことなんですけれども、地球観測衛星を含めまして、地上あるいは大気関与のデータを取り、それを地上に送ります。地上で受信いたしましたら、そのデータを処理して、地球環境問題への適用ですとか、現業利用ですとか、あるいは地表観測ですとか、あるいはGISと言っているようなものに対しての情報提供するというようなこと、いわゆる配布をしております。
    このような配布の結果を皆様からお伺いをしまして、次の地球観測衛星、あるいはセンサーの開発のほうに寄与していくというサイクルになっております。
    それでは、2、3今まで得られた成果についてご紹介いたします。1つが、まず「ふよう」(JERS−1)という衛星がございますけれども、これに搭載されましたSAR合成開口レーダーによって取得しましたデータの一部なのですが、一番右側にブラジルのアマゾンの上流のほうのロンドニア地方というところで、1年間で極めて広範囲に伐採が行われました。下のほうに書いてございますけれども、ロンドニア地方の伐採面積が、大体九州の面積に相当するというようなことが、この衛星データといいますか、レーダーセンサーを使いまして、そういうことが定量的に推定することができるようになったということが1つの成果でございます。
    次に、みどり(ADEOS)という衛星ですけれども、それに搭載されました事業団で開発しましたOCTSという、これは海面水温と色を測るセンサーなのですけれども、これによりまして、海洋の海温・海色から、水産資源といいますか、魚資源の状況を管理するということがJAFICを通じてできるようになりました。これも1つの成果でございます。
    同じくみどりに搭載されました、NASAが開発しましたNSCATという海上の風速・風向観測ができるセンサーでございますが、これを用いまして、太平洋上の風の強さ情報が得られるようになりました。この情報は、数値予報モデルとして利用されまして、1週間後、北半球での予報精度が2〜3%、南半球では7〜8%向上するといったようなことが確認されております。
    これは、現在運用中の衛星、TRMM(熱帯降雨観測衛星)ですけれども、衛星自体はNASAが開発したものですが、そこにPRという降雨観測レーダーを事業団が開発して搭載いたしました。
    降雨観測レーダーといいますのは、1時間に0.5ミリ以上の雨の量を観測することができるレーダーでございまして、しかもそういうものを含んだ、いわば雨雲ですけれども、その観測が3次元的にできるビューセンサーでございます。その例として左側に台風8号のケースが画像として紹介されておりますけれども、台風の目に沿って赤いところ、つまりその降雨量の強いところが観測されます。右側のほうはハリケーンの例ですけれども、この場合はちょっと形が変わっておりまして、むしろ上空16キロから18キロの上のほうからの降雨のほうが強いというような観測データが得られております。このように、雨滴を含む雲の立体的な観測ができるようになったということも成果の1つでございます。
    同じくTRMMによるデータの1つですけれども、これは、近年よく言われておりますけれども、エルニーニョについて、1月1カ月間の降雨の分布を比較したものでございます。上がエルニーニョ、下が通常の年ですけれども、通常の年ですと、南米ペルー沖から西側に沿っての降雨があまりない、ところがエルニーニョの年には降雨が多いことが観測からわかってきております。
    これもやはりTRMMの例ですけれども、必ずしも雲だけではなくて、地上の水分もこのPRによって観測できるようになったということもの成果の1つでございます。
    事業団がやってまいりました地球観測の分野の活動ですけれども、3つぐらいのカテゴリーに分けることができるかと思います。第1期が1975年、最初の気象衛星ひまわりが飛んだのが1977年ですので、それよりちょっと遡るころぐらいから地球観測というものを事業団でも始めてまいりました。その時点では、自主技術開発に役立つ実利用のための技術導入というようなことがあります。
    それから第2期、それから約10年後、この年度はあまり厳密ではありませんけれども、このぐらいのスパンでというのですが、自主技術開発強化、それからデータ利用研究の推進ということを図ってまいりました。ちなみに、MOS−1の打ち上げは、最初のひまわり1号の打上げから10年後の1987年になっております。
    それから95年から現在までの第3期ということで、自主技術開発確立、それから地球科学研究への貢献、データ利用定着化促進、ユーザーコミュニティとの連携強化というようなことを現在図っております。この第3期については、もうちょっと詳しくご説明させていただきます。
    第3期なんですけれども、静止気象衛星は気象庁が直接調達する段階に至りまして、事業団事業は、地球環境等の観測を主体といたしました周回衛星の開発へ移行しております。
    それから、国際的には、地球環境問題が大きく取り上げられております。その中で地球観測衛星データへの期待が増大してまいりました。例えば、今年の4月にナイロビで開かれました気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の総会において、統合地球観測のための、統合という言葉はちょっとわかりにくいのですけれども、これは、いろいろな形でという、例えば地上観測、航空機観測、船による観測など、その中に当然衛星も含まれますが、それと1国ではなくて、世界的にというものも含めておりますけれども、そういう戦略の実施を含み、観測基盤を維持・拡大することが重要であるということが採択されております。
    そのような状況の中で、事業団では、ADEOSを打ち上げました。それからTRMMにつきましては、NASAと協力して現在まで運用中であります。そのような衛星から取得したデータの解析研究及び提供を行うとともに、現在はADEOS−II、後ほどご説明がありますけれども、それとALOSを開発中です。このような事業を通じて国際協力を実施しております。
    2番目の事業展開ですけれども、地球観測につきましては、大きく3つの分野に事業団としてはカテゴライズして展開を図っております。1つが地球科学研究への貢献、それから2つ目が実利用への促進、そして3番目がこれに必要とする技術開発の推進、それぞれの分野で衛星の開発をしてきております。
    別の側面からの切り口ですけれども、搭載されるセンサーの性能につきまして、簡単にまとめてございます。陸域観測、それから大気・海洋観測、それとTRMMからスタートとなりました降雨観測です。TRMMはまだ1機ですので、技術の発展というところは、ちょっとまだ言える段階ではございませんけれども、その前の陸域観測、いわゆる降雨精度の観測ですが、それと大気・海洋観測について、MOS−1から現在に至るまでの開発の技術能力向上の数値がここに書かれております。
    その中の大気・海洋観測衛星シリーズ、いわゆるADEOSシリーズですけれども、これは、ADEOS、ADEOS−IIとつながってまいりまして、これから先に向けては、これをGCOM(地球環境変動観測ミッション)と呼んでおりますが、こういうミッションという形で観測させるということが期待されております。これについては、また後ほどちょっと申し上げます。
    もう1つの陸域観測衛星シリーズ(ALOSシリーズ)ですけれども、これはJERS−1、それからADEOSを通じまして、現在ALOSの開発になります。これも将来的には、将来陸域観測ミッションというような方向でいろいろと発展を図っていきたいというふうに考えております。
    それから、TRMMですけれども、現在運用中ですが、これの後継機といたしまして、GPM(グローバル・プレシピテーション・ミッション)と呼ばれますけれども、これはNASAと共同で現在、検討中でございます。これも後ほど改めてご説明いたします。
    最後に国内・海外機関等との協力ですけれども、この地球観測につきましては、事業団だけの単独事業ではありませんで、いろいろなところと密なる連携を図りながら進めてございます。ここに書かれておりますのは、その一例でございますけれども、日本の中にいろんな機関といろんな形で連携を深めながらこの事業の展開を図っております。
    もちろん日本だけではなくて、世界のいろいろな国といろいろな形でこの地球観測についての作業、仕事の展開を図っております。
    ご説明は以上です。

 長柄部会長 

   ありがとうございました。過去から現在、また将来、どのようなことを考えているかという全体の説明がございましたけれども、質問ないしご意見がございましたら、どなたからでもどうぞ。松野先生、何かございますか。

 松野特別委員 

   それでは、若干コメントというか、感想を述べさせていただきます。
    地球観測分野、今、簡潔にご紹介いただきましたように、一番最初のひまわりまで遡りますと、ずっと前ですが、いわゆる総合的な地球観測に関しては、ここ15年余の間に、我々は前から地球科学、特に気象とか気候に携わっておる人間にとっては、想像できないような広範な観測ができるようになって、それによって、世界に対しても非常に大きな貢献ができるようになったことを大変喜んでおります。
    現在、ご存じのように、地球温暖化問題を中心として、環境問題が非常に重要な問題になってきて、それには、何と言っても観測が大事です。その分野で、日本がアメリカ、ヨーロッパと並んで、3つの極の1つになるというようなこと、これが先ほど申し上げたそのちょっと前まで、僕なんか全然そうなれるということが想像できなかったというか、そういうところが宇宙開発事業団や通信総研の努力で、こういうことになったということは大変うれしく思っております。
    一方、今の状況を考えても、だんだん、いわゆる温暖化という問題に関しては、温暖化防止とか言っていますけれども、それは完全に防止していくことができないわけです。現にいろんな形でIPCCなんかでやっていても影響が明らかに見られると言われるぐらい。それでしかも、アメリカなんかは必ずしも協力的でないということは、だんだんとその影響が今後出てくるわけですから、そういう環境の変化を常に監視し、それに対応してしかるべき対策をとるというようなことが、これから重要な問題になってくると思います。そういう観点では、実は昨年、宇宙開発委員会の基本戦略部会というので検討いたしまして、この問題について考えたときに、15年、20年後の姿を考えてごらんなさいと言われても、どう見ても、地球環境の監視、それも日米欧の3つの国際的な協力による定常的な監視、最後にALOSというお話がありましたが、それの一貫としての宇宙からの開発というような問題が、もう20年後ではなくて、非常に近い将来、重要になってくると思います。
    ということで、長くなりましたが、今のGCOMというのは、まさにそれに対応する計画だと思いますが、1つは、内容的にGCOMが今後ますますそれに向けて、実際に最終目的から見て、今の地球環境の監視という観点から見て、一体何をどのように監視したらいいのかということから考えていくというふうに、今後我々、研究者も協力して進めていきたいと思いますし、もう1つは、定量観測となると、今度は宇宙開発事業団の単なる技術開発ということではなくて、もちろん宇宙開発事業団の宇宙の技術が絶対に必要なわけですが、もっと政府として、日本の国として、環境を守るという観点からの制度的な違いというか、そういうものができていかなきゃいけない。これは、これからの非常に比較的近い将来に考えなければいけないことであるというふうに私は思っております。
    ちょっと長くなりましたが、コメントとしてお話ししました。

 長柄部会長 

   ほかに、どなたか質問かご意見。冨田先生、どうぞ。

 冨田特別委員 

   大変立派なご計画で関心いたしました。質問が3点ありまして、1つはデータ解析技術の現状です。まあ、ここに至る内容かどうかわからないのですが、世界水準から見てどういうレベルにあるのか、これが第1ですね。
    第2は、第3期に地球観測データ解析研究センターを設立されると書いてありますけれども、どういう技術がまだこれから開示され、何を重点的に、目的としてセンターをつくられるのか。
    それから3つ目は、これだけいろいろなデータがそろうと、商業利用というものが当然考えられるわけですけれども、商業利用に対してどういう計画をお持ちか、その3点について質問いたします。

 長柄部会長 

   では、お願いします。

 片木(宇宙開発事業団) 

   1点目は、日本の地球環境データの解析技術はどの程度かというご質問だと思いますけれども、例えば私が申しますと手前みそになりかねませんであれですが、松野先生補足していただければと思いますけれども。
    いい線をいっていると思います。それはなぜかといいますと、地球観測衛星を持っているか持っていないか、持っていないときには、どうしても、これは当然の話ですけれども、データ解析技術は落ちます。ちなみに、そのデータ解析とは何を指すのかということなんですけれども、物を測定する、長さを測る、あるいは違ったデータを融合させる。それから過去との比較をする。それから、何か物事を識別するというようなこと、焦点はその4つぐらいが解析のアウトラインになるわけですけれども、それぞれ対象とするというか、観測されるものによってそれがどういうふうに使われるかというのが、それぞれ異なってきます。ですから、センサーごとにそういうものの解析技術が必要になってくるわけですけれども、そういうものを事業団では、JERS−1、MOS−1から始まりまして、ADEOSを経て、現在ADEOS−II、あるいはALOSの解析なんですが、センサーを開発しながらということでしか、こういうある程度の先に進んだデータの解析技術は身につくことはできませんで、そういう意味で、逆にセンサー、あるいは衛星を持っているという日本は、かなり世界的にはいい線をいっているというふうに思っています。
    それから、2番目のセンターの設立という点ですが、すみません、地球観測センターですか、それともデータ利用研究センターですか。

 冨田特別委員 

   観測データ解析研究センターです。

 片木(宇宙開発事業団) 

   今言った、昨年度まで存在しておりましたEORCのことだと思いますけれども、六本木に現在ございますけれども、そこの作業は、先ほど申し上げました地球観測データ、観測したデータそのものは、例えば画像がひずんでいたりとか、それから場所が特定できないとか、あるいは大気がゆらいでいるとか、いろんな誤差を含んでおります。そういう誤差を取ることから始まりまして、異なったセンサーデータの融合ですとか測定ですとか、識別ですとか、プロデュースとか、そういうことを行うことが研究センターの役割になっております。
    それから3番目の商業利用ですけれども、ご存じのとおり、商業化されたIkonosというものが出てきております。それから、ちょっと残念ながら、失敗した衛星もございましたけれども、アメリカの先ほどのですが、そういう分野では、商業化が既に始まっています。事業団の衛星がその商業分野にどうかかわるかということは、これからの課題ではありますけれども、基本的にはそういうものはどんどん使っていただければ、というようなスタンスで事業団は考えております。以上でよろしいでしょうか。

 長柄部会長 

   ちょっと、EORCについて、何人ぐらい、どんな人がいて、どういう仕事をしているかというのを説明されたらいかがですか。

 片木(宇宙開発事業団) 

   EORCは、まずEORCのトップですけれども、名前を出して恐縮ですが、小川先生という研究ディレクターという方がいらっしゃいます。この方はまた東大の大気観測の権威の方でありまして、その方に来ていただいて、EORCの全体研究の取りまとめをしていただいております。それから、当然のことながら、小川先生はそういう方ですので、松野先生もそうですけれども、いろんな大学とか研究所の各いろいろな専門家の方と連携をとりつつ、EORCの仕事にそういうものを取り組んでいっているような形をつけております。
    それから人数ですけれども、正確ではないんですが、プロパーと、それからシステム研究というの、ある期間を決めて来ていただいている方と、両方いますので、全部合わせると、100人ぐらいいきますかね。もう少しいくかと思います。正確にはいろいろ、流動的ですので、あるいは150人ぐらいいるかもわかりませんけれども。そういう規模でやっております。

 長柄部会長 

   薬師寺さん、どうぞ。

 薬師寺特別委員 

   私は、文部科学省の大きな科研費の審査なんかにも関係しているのですけれども、そのときにいつも個人的に思いますのは、いろいろ外圧でこういうような空間領域に関するプロジェクトの申請が出てくるのですけれども、NASDAにおけるこういうようなものとの関係、利用とか、国全体で何か少し効率よくやっていただければ、国の予算的にも効率というものがあると思うんです。これを拝見すると、外国ではいろいろ外圧が一部分あるんですが、日本の場合にはどういうふうにそういう、例えば東京大学とかいろんなところと、慶應大学でもそういうことをやっておりますけれども、GISの研究所みたいなところの関係はどういうふうになっているのでしょうか。

 片木(宇宙開発事業団) 

   ここに書かれている組織なりほかのところとの連携といいますか、説明したいと思いますけれども、いきなりそういう組織対組織の話に、事業団といたしましては、地球観測委員会という外部の先生があって、それはいろんな研究所とか、それから大学とかの研究所の方たちに集まっていただいて、通称500人委員会と言っておりますけれども、いろんな機関のところから来ていただいて、そういう方たちからそのような情報、あるいは研究シェアとか、あるいは交流とかをできるだけ効率的にということを図りながらやってまいりました。
    その過程で、いわゆる機関として、宇宙開発事業団とそれからどこかの研究所とか、機関として協定なり共同研究なりというものをしたほうがより効果的であるというものについては、特別に共同研究あるいは協定を結ぶなりして研究を続けてまいりました、という状況でございます。
    ただ、おっしゃるとおり、日本はいろんな形で環境問題に対して、いろんなところが関係した部分が増えてまいりましたけれども、これからもやはりそういうところと、できるだけ密な計画をできるものと思います。

 長柄部会長 

   松野先生。

 松野特別委員 

   私が知っている範囲では、たしかADEOSとかTRMMは、センサーごとにいろんなサイエンスチームを募集して、そしてその募集の中にたくさん、ちょうど国研費の募集に当たるぐらいに、いろんなこういうことで、こういうふうにやりたいと、その中からいいものが選ばれて、それにスキームが与えられて共同研究しているという形があると思います。それから、こういう衛星のデータが使えるということを前提にして、大学の中で特別研究をいろいろ申請して、そういう研究も、ちょうど終わったところですけれども、ADEOSのところで、何かちょっとわかりませんが、その辺はあります。そういう形で研究をやっております。

 長柄部会長 

   冨田先生、どうぞ。

 冨田特別委員 

   さっきの私の質問の、最後の商業利用なんですけれども、データを利用してほしいというお話だったんですが、確かに大分前ですが、フランスのCNESが、地図をつくるとか、あるいは作物の収穫状況を予測するような、事業化して切り離して、20人ぐらいの小さな会社をつくって、独立させて商売していた時期があったんです。今はどうなっているかわかりませんけれども、そういう何か商売になりそうなものを切り離して、独立させて運営するというような見通しは持っておられるのでしょうか。

 片木(宇宙開発事業団) 

   この分野は商売になるだろうという確実な見通しは残念ながら今の日本、というか、事業団は、まだ持つに至っておりません。今、先生がおっしゃられた、例えば地図とか作付面積など一部につきましては、この後にも説明がございますけれども、ALOSというミッションがその1つなんですが、これは、現在のところ、国土地理院と、密に連絡をとり、どういうふうにしていくかというようなことを相談しながら進めてきておりますので、それが将来、場合によっては国土地理院サイドの仕事として、既にある部分があるわけですけれども、そちらのほうに移っていくことが言えるかもしれません。
    それから、国土地理院以外にGISという地理情報システムについては、わりあい民間の起業ができてきておりますので、ここに対してどうやって配布したらいいか、そのデータをどうやって使ってもらえばいいかというようなことは、これからの、今も検討しているのですけれども、さらに検討を進めていきたいと思っております。
    それから、作付面積のほうは、これは農水省が既に始められておりますので、今はALOSプロジェクトとしては、そちらの農水省の方とのいろんな協定ベースで、情報交換したり、方法についての検討を進めていくということでございます。これも実際にいわゆる民間委託、民間企業という形で進めていくということだけは、おそらく農水省のほうから、作業をまわしていただけるのではないかと考えております。

 長柄部会長 

   まだいろいろ質問があろうかと思いますが、ちょっと後にしていただけますか。
    現在進んでおりますADEOSとALOSのプロジェクトの現状については、ちょっと後回しにしまして、説明の都合上、将来計画のために現在、どのような準備をされているかということをまず伺いたいと思います。それにつきましては、最初に宇宙開発事業団のほうから、その後で環境省のほうから伺うことにいたします。それではお願いします。

 片木(宇宙開発事業団) 

   それでは、引き続きまして、将来計画のための準備ということで、とりわけ、地球環境変動観測ミッション(GCOM)それと全球降水観測ミッション(GPM)についてご説明いたします。
    人工衛星による地球観測への期待ということで、先ほど申し上げましたけれども、1つは例えば、1番目にあります京都議定書への対応、それから2番目は、ちょっと先ほどご紹介いたしましたIPCCの絡み、それ以外にも今年の4月にニューヨークにおきまして第9回国連持続可能な開発委員会(CSD)というのがありますが、この会合が行われまして、そこで、やはり、持続可能な開発のための情報収集として、統合地球観測の実施に向けたグローバルな観測システムの強化、得られた衛星データの共有などが採択されております。
    こういう世の中の流れにありまして、先ほど、社会経済への貢献ということで、2つの面だけ申し上げましたけれども、その2つについて、事業団はこれからこのようなことを考えております。つまり、まず1つは地球環境観測ですけれども、ADEOS−IIというシリーズを通じまして、これからはGCOMという名前のミッションのほうにだんだん発展させていくということが期待されております。それからTRMMにつきましては、GPMというミッションのほうに発展するということをNASAと共同で現在検討しておる段階でございます。それから、地表観測につきましては、ALOSを現在開発中ですが、これにつきましても、将来型の地球観測ミッションへとつなげていきたいというふうに思います。
    GCOMですけれども、ADEOS、ADEOS−IIの流れを汲むGCOMを、現在2つのシリーズに区分して考えていきたいというふうに思っております。1つはGCOMのAシリーズといいまして、これは、オゾン・温室効果気体の観測、特にGCOM−A1につきましては、京都議定書第1次評価期間であります2008年から2012年に対しての観測が間に合うような形で、現在研究を進めております。それから、Bシリーズのほうは、物質エネルギー・循環観測ということで、これも将来的な高精度の観測へ向けて発展させていきたいというふうに思っております。それからTRMMの後継機については、この欄外に書いてありますけれども、GPMというものを考えております。
    GCOM−A1の概念図ですが、1つの衛星、質量1.2トン、高度650キロのところに3つのセンサーを搭載して大気の観測を図りたいと思っているのですが、その3つのセンサーとは、1つはESAが研究いたしました成層圏の風の観測、それから事業団の開発しておりますODUSというセンサー、そして環境省が開発されておりますILAS−II後継センサー、SOFISと呼んでおりますけれども、この3つのセンサーを載せた衛星として、システムを構築されるというふうに考えております。
    次に、GPM(グローバル・プレシピテーション・ミッション)ですけれども、TRMMは1機の衛星で観測したものですが、このGPMミッションにつきましては、コアになります衛星と、それから右側のほうに書いてありますが、8機のコンスティレーション衛星群のセットをもって、GPMミッションというものを遂行していきたいというふうに検討しております。
    このコア衛星ですけれども、ここにはレーダーを搭載します。今のTRMMに相当するようなものですけれども、ただ1つ違うところは、TRMMではPRに搭載されたレーダーは1波のみだったのですけれども、このGPMミッションでは、KuとKaの2波搭載するということで、観測の精度向上を図りたいというふうに思っております。
    全球降水観測ミッションの全体的なシステム図ですけれども、まずコア衛星がありまして、それから8機のコンスティレーションがありまして、その8機は、アメリカ、あるいはヨーロッパが分担して、これを開発できないかというようなことをNASAも含めて共同で現在研究段階での検討を進めている作業中でございます。
    以上でございます。

 長柄部会長 

   ありがとうございました。
    環境省の方、見えておられますか。では、引き続き、GCOM−A1に将来搭載しようということで、環境省のほうでは、資料は計画2−2−2でございますけれども、今、センサーの開発をここ2年ほど前から環境省も進めておりますが、これについての説明をお願いします。

 小野(環境省研究調査室長補佐) 

   いつもご指導いただきまして、ありがとうございます。環境省の地球環境局の研究調査室の小野と申します、どうぞよろしくお願いいたします。
    資料の計画2−2−2という簡単な資料でございまして、先ほど来、将来計画のための準備ということで、GCOMのご説明をしていただいておりますけれども、これに搭載いたしますセンサーについて、環境省のほうでNASDAさんのほうと協調しながら開発を進めております。名称は長い名前なんですが、SOFISという名前でございまして、先ほど来ございましたように、地球温暖化の条約で京都議定書というのがございまして、これで削減目標が定められております。これによりまして、第一約束期間が2008年から2012年ということになっておりまして、ここに向けて、日本といたしましてもCO2を中心に観測体制を強化したいということでございます。センサー自体は、平成11年度から開発研究に着手いたしまして、できましたら、研究、開発の段階にフェーズアップをしていこうと思っております。温暖化の場合には、特に国際交渉ということでございまして、2008年から2012年の第一約束期間というところを目指して、各国ともいろいろと、もちろん対策もでございますけれども、研究のほうも強化がされていくと思います。特に第一約束期間につきましては、各国から当然ながら排出とか吸収につきまして、詳細な報告を条約事務局に提出して、ほんとに目標達成しているのかどうかということも報告をしなければいけない、排出・吸収のデータも出てまいります。それと、今回のセンサーによります開発、観測というのを合わせまして、いろいろとモデルの精密化、高度化を図りまして、CO2・地球温暖化問題のより詳細な把握、高度な把握ということができるのではないかと思っております。こういった結果につきましては、第二約束期間以降の国際交渉にも役立っていくと思いますし、特に交渉の場合に、国際的な協調もという面もございますけれども、その国際的な競争といいますか、各国がそれぞれの自国の立場を主張するという場面が多うございますので、我々といたしましても、独自のデータをぜひ持っていきたいと考えております。
    主な測定物質と書いてございますが、主に温室効果ガスを中心にやっていきたいと考えております。そういった関係上、2008年の前には運用をぜひ開始する必要があろうということで、先ほどご説明がございましたGCOM−A1のほうの衛星本体の打上げのほうがなければ、当然センサーのほうもできないわけでございますので、ぜひ、先生方にもそのあたりもご配慮いただきまして、今後、ご検討をいただければと考えておるところでございます。
    以上でございます。

 長柄部会長 

   ありがとうございます。
    それでは、宇宙開発事業団のほうから説明がございましたGCOMないしGPM、それから環境省のほうから説明のございました現在開発中のSOFIS等について質問ないしご意見を賜りたいと思います。その前に八坂先生何か。

 八坂特別委員 

   これはちょっと別の、むしろ全般的な話ですので、別の機会にお話ししたいと思います。

 長柄部会長 

   よろしいですか。
    それでは澤岡先生、どうぞ。

 澤岡特別委員 

   京都議定書からアメリカが抜けたということですが、NASAは、これに関して何か具体的に態度をあらわしているのでしょうか。このプロジェクトに協力しないとか、抜けたとか、それは非常に大きな影響を受けると思いますが。

 小野(環境省研究調査室長補佐) 

   まず、アメリカが抜けたということでございますが、抜けようと言っておりますが、まだ我々としては諦めておりませんし、大臣はじめ政府全体として、何とかアメリカを引き戻そうということで、ぎりぎりまでやるというのが前提として1つございます。

 澤岡特別委員 

   これは議定書のほうですか。

 小野(環境省研究調査室長補佐) 

   議定書のほうです。

 片木(宇宙開発事業団) 

   NASAのほうはそういう抜けるなんていう話は全くなくて、むしろ積極的にやっていきたいということを常に表明しております。

 長柄部会長 

   ほかにどなたか。冨田先生。

 冨田特別委員 

   非常に初歩的な話をするので恐縮ですが、環境省のご説明で、オゾン層というのは、かなり高度が低いのですね。あれは20キロとか25キロとか。衛星高度から見ると相当低いと思うんですけれども、衛星で測るという意味は、何かあるのでしょうか。また、それはバルーンなんかで測ったほうが、実際的ではないかというような感じもするのですが、いかがでしょうか。

 中島(国立環境研究所) 

   国立環境研究所の中島と申します。かわりに答えさせていただきます。
    衛星から、SOFISとかは太陽掩蔽法という手法を使っておりまして、太陽の日没の光線が大気を透過するということでもって、大気の下からの赤外線を利用している都合上、雲頂の高度から高さ100キロぐらいまでの鉛直方向のデータを全部とることができるという利点がありまして、バルーンですと、せいぜい高さ30キロぐらいまでしかとれないのですが、オゾン層のマキシマムが40とかもうちょっと上にありますので、衛星でとることが非常に有用な手段になっています。

 長柄部会長 

   松野先生、どうぞ。

 松野特別委員 

   SOFISについてちょっとコメントをさせていただきます。たまたまこのことは私自身も関心があって、この計画が何年か前にあったときから、いろいろとコメントしていたところなんですか、先ほどの環境省の方のご説明ですと、京都議定書に対応して、グリーンハウスガスをモニターするという感じのお話がありまして、確かに最終的には各国が条約を守っているかいなかを調べるためには、それぞれの申告ばかりではなくて、実際に大気中のCO2濃度をいろいろ測ってどれだけ放出されているかを感知する必要が生じるのだろうと思います。その目的にこれがなるというふうな印象を受けがちなので、その点が大変必ずしもそういう一体性はないということを申し上げたいと思います。
    この衛星では、今、お話がありましたように、太陽の光が透過してくる中で、いろいろな化学的な分子によって吸収されるのを測るということですが、CO2の場合、せいぜい高さは5キロぐらいまでしか測れなくて、その辺では大体空気の流れが早いので、ほぼ一様化しております。例えば工業地帯でたくさん出るというのは、地上から1キロから2キロぐらいのところで濃度の違いができて、それを見ることによって初めて、どこからどのぐらいたくさん出るのかということがわかりますので、5キロぐらいから上では、今の条約の監視という目的ではまだ役に立たないと思います。
    ただ、これと、たまたま私はGCOMにしても、外国からの公募衛星の審査にも当たらせていただきましたが、オーストラリアからGGM(グリーンガスモニター)、これは逆に、海面で太陽の光が反射されたのがガスで吸収されるのを測る。そのかわりこれは、全大気中をパスで積分したものしかわからないので、それだとどこで増えたかもわからないというようなことがあって、かつ技術的にも、まだ完成していないということで、それは作業になりませんでしたけれども、将来そういうふうないろんな違ったものと組み合わせて、今の最終目的であるCO2放出の監視ということになる、そのための一歩手前のところの段階であるというふうに私は理解しております。
    以上でございます。

 長柄部会長 

   環境省のほうからありますか。

 小野(環境省研究調査室長補佐) 

   我々、松野先生からいろいろとお教えを受けまして、勉強をいたしておりまして、認識といたしましては、先生がおっしゃったような内容だと思います。これで全部わかるということは考えておりませんし、ただ、モデルを精密にしていくとかそういったことで、非常に役に立つものではあるということは考えておりますし、またその後に先生がご指摘いただきましたような形で、開発を進めていければという方向で考えてございます。

 長柄部会長 

   ほかにございませんか。中西先生、どうぞ。

 中西特別委員 

   全体的な話で恐縮なんですが、環境省のされていることは、今、いろいろと経済効果と結びついて、トリッキーなところがあるかと思うんですけれども、そのほかの地球観測というのは、各国、日本が先ほどいい線をいっているとおっしゃったので、各国ですみ分けといいますか、ものすごくお金がかかるわけですね。それで、やらなくちゃいけない分野はたくさんある。それからあと、地球観測しなければいけないことが各国のコンセンサスはとれているので、すべて日本がするというのではなくて、協力というよりも、すみ分けをしていくというようなことは可能なのでしょうか。

 片木(宇宙開発事業団) 

   ご説明いたしましたけれども、総合地球観測戦略という中にCEOS(コミッティー・オン・アース・オブザベーション・サテライト)、地球観測衛星委員会という名前の、これは各国の宇宙機関が集まっていて、年に1回ないし2回会合をしていきます。そういう中で、どこの国でどういうセンサーをのっける、そうすると、こちらの国はこういうセンサーをこの時期にというような話し合いはそういう場を通じて行っております。ただ、それで全部決まるということでは必ずしもなくて、それのお国の事情がありますので、最終的に結論がそのまんま国の政策に反映するということでは必ずしもありませんけれども、そのCEOSという会合の場を通じていろいろな国の衛星の開発ですとか、あるいはすみ分けというものの議論もしております。

 長柄部会長 

   よろしゅうございますか。
    それでは、またいろいろご意見はあろうかと思いますが、一応次に進みたいと思います。
    それでは次に、ADEOS−2という衛星の開発の現状ないし今後の利用計画等について説明いただきたいと思います。

 黒崎(宇宙開発事業団) 

   ADEOS−2のプロジェクトマネジャーの黒崎でございます。1997年から、プロジェクトに携わっております。主にプログラムという体裁ではなく、プロジェクトのほうをどちらかというと中心にやらせていただいております。
    プロジェクトの概要と、それからミッション達成目標、データ利用計画、リスク管理計画についてご説明させていただきますが、リスク管理計画については、この後のALOSのほうで詳しくご説明しますので、ここでは説明を省かせていただきます。
    ADEOS−2は、一応社会経済への貢献を果たすということに沿った事業と位置づけられておりまして、地球規模の環境変動に対応するための宇宙からの地球環境モニタリング手法を確立し、天気予報の精度向上などの成果が期待される。
    まだ具体的な実務というには少し尚早であるというふうに考えております。先ほども説明がありましたように、ADEOSにおける地球観測、主に大気、海洋を中心として継承・発展するという目的で位置づけられました。
    1995年に宇宙開発計画において、平成10年度というのは、ADEOSが打ち上がった3年後という意味でございますが、打ち上げ目標として開発に着手いたしまして、その開発費が702億円でございました。この中には、一部のデータ解析費及び打上げ追跡管制等の費用も入っておりますが、外国のセンサーとか、コンピューティング関連の分は入っておりません。その後、ここに書いてございますようなさまざまな理由によって、現在のところ、来年の2月以降速やかに打ち上げるということで、現在は種子島へ移送前の最終チェックを行っている最中でございます。
    目的でございますが、ここに、先ほど説明いたしましたように、主に水・エネルギー循環のメカニズム解明に不可欠な地球科学データを取得するというのが主な目的でございます。これ以外にバイオマス量及び基礎生産量の推定等も一応目的としております。
    諸元でございますが、ここに書いてございますように、一応3.7トン、ADEOSと比べると200キロぐらい少し重くなっております。発生電力が4.5に対して5.3と、大幅に太陽電池の効率を上げて発生電力を増やしております。
    あと、大きな違いは、回帰日数が4日でございます。ADEOSの場合は41日間でございましたが、一応4日でグローバルな地図をつくれるということを目標にしております。そのかわり分解能がそれほど大きくないという戻りをつけておりますが、そういうことになっております。
    ミッションはここに書いてございますようにAMSR、GLI、環境省さんのILAS−2、それからNASAのSeaWinds、それからCNESのPOLDER、これ以外にCNESとの共同で、DCS(データ・コレクティング・システム)というのもミッションには入っております。センサーではないので、ここでは省きます。
    プロジェクトの主な技術課題ですが、ここに書いてありますように、ADEOS−2特有の新規技術開発要素、これは次のページ中央にございます。ADEOSと比べると、高精度の姿勢制度が要求されているというのが、データ量が多いというのが主な点です。
    それから24時間グローバル観測、これはADEOSの場合、必ずしも24時間の運用というものを目的としておりませんでしたが、ADEOS−2では一応実用も兼ねているということで、24時間観測し、それを準リアルタイム、すなわち3、4時間以内にデータを配信するということを目的として、それらの地上システムを構築する。それから、あとから出ておりましたが、ADEOSの事故が起こりましたので、それに伴う反映として、太陽電池パドルの設計変更、それから軌道上モニター、それから軌道上評価技術の確立というのが主要技術課題となっております。
    ここに書いておりますように、主にADEOSからの主要変更点、これは必ずしも全部ではございません。細かくなるので、一部割愛させていただいております。ADEOSの事故からの反映というのが、このモニタリング装置でございます。ADEOSは、必ずしも事故を十分測定できなかったということを反省しまして、一応、視覚モニター、動くものについてはCCDカメラで回転速とか振動速を測ろうと。それから加速センサー等をつけて、これらの振動係数をやはり軌道で評価しようということを目的としております。幾分かそういう意味で、実務衛星的な要素、それからパドルについては、ADEOSの事故を反映しておりまして、大幅な設計変更を実施しております。
    これが全体のスケジュールでございます。平成7年に開発が認められまして、当初は10年度に打ち上げる予定でございましたが、ADEOSが1年延びた、ADEOSはここで打ち上げる予定だったんですが、一部延びたということで延びた。ADEOSの事故で延びまして、あと、H−28号機で延びて、現在のところ、一応来年の2月以降ということです。一応打ち上げ後3カ月ないし4カ月で初期チェックアウトになりまして、それから約9カ月なり10カ月、校正・検証、これはデータがどの程度正しいのかというのの校正・検証、それから定常運用というものに入って、あと、後期運用というような……。
    寿命が3年でございます。燃料は一応5年分積んでございますが、一応3年が定常運用というふうに考えております。
    プロジェクトの全体の実施状況でございますが、ADEOS−2プロジェクトチーム、これは衛星のハードウエアを中心としておりますが、22名からなっております。これ以外に総合プロジェクトマネジャー制がとられてございまして、その下にこういう各組織で、それぞれ役割分担をしております。全体の取りまとめというのは、そこの管理の部分がまとめております。一方、衛星のほうは、一応これは、ADEOSでは必ずしもプライムではありませんでしたが、ADEOS−2では一応ADEOSの実績を踏まえてということで、プライム制を敷いております。三菱電機が主にバスの企業及び全体システムの取りまとめを実施しております。日本電気が通信系、それから姿勢制御なりパドル系を東芝が行っている。それからAMSRは別途三菱電機がつくってNASDAを経由して支給するという形でございます。それからGLIは富士通でございます。それからDCS、先ほど言ったデータ・コレクティング・システムは、NECとCNESとの共同作業で支給品という形でやっております。一応、各センサーとのインターフェースは、プロジェクトのほうで実施しております。
    ミッションでございますが、一応ここに6項目書かせていただいております。グローバルデータセットに関して、研究者への提供、それから国際地球変動研究へのデータ提供、それから定常運用機関へのデータ提供、グローバルデータ取得、それからAMSR、GLIの開発機能、次世代技術の開発及び軌道上実証。これは順番としては下のほうから後でまた説明いたしますが、技術的には次世代の技術開発は当然行う。AMSR、GLIもこれは完璧に実施されるということが目標でございます。
    ここから上に関しましては、どの程度ということが当然議論になると思っております。
    WCRPというのは、世界気候研究という計画でございまして、IGBPというのは、地球圏と生物圏との国際共同研究計画でございます。全体的に後でまたご説明しますが、これ以外に先ほどご説明しましたCEOSというものとの全体的な位置づけになっております。
    ミッションの達成目標でございますが、先ほど言いましたように、次世代の技術の開発というのは、目標としては低いというか、一応できるのは当たり前というふうに位置づけております。それからAMSR、GLIも当然できて当たり前、大きな我々の目標としてはグローバルデータをまずとる、それを研究者に提供する。それから国際地球変動研究にそのデータが行く、この間に、一応加工というものがございますので、これらの加工を含めた全体のミッション達成を含むということ。一方、これは、事業団の衛星の目的でございます。定常運用機関というのは、NASAとか、環境省さんへのデータ提供というのも、これとは別に他にご利用していただいているところもあるとは思いますが、これとは別に科学的な目標というのは、先ほど言いましたような水・エネルギー循環系の定常的な把握、それから地球温暖化に対する炭素循環に係わるバイオマス量及び海洋基礎生物生産量の定期的把握、それからADEOS観測の継続における長期的な気候変動シグナルの検出、この3つが大きく全体が達成した上での次の目標としての観測目標として挙げられているというふうに考えております。
    これらの今の科学的目標と各搭載ミッションとの位置づけでございますが、そういうふうに各センサーごとにそれぞれに役割分担をしてございます。一応ADEOSは、これら全部を同時期に測定するということで、これらの相互間による科学的目標に対する貢献が期待されておりますが、それは基本的にはまだまだこれからの分野であるというふうに考えております。
    データ利用計画ですが、ここは先ほど説明しましたので、次に、さっと一応海面水温、それから雪の深さ、雪の質とか、そういうのもわかるであろうというふうに考えております。それから水蒸気量、これはAMSRというのが非常に大きなアンテナを積んでおりまして、この分解能が、温度も含めた分解能が非常にいいというふうになっておりまして、今までにないデータが取れるのではないかというふうに期待されております。
    データ利用計画でございますが、こういうふうに一応衛星にテープレコーダー等を積みまして、それをキルナとか、アラスカ、ワロップス等ではき出しまして、それが通信回線で鳩山に送られる。そこからそれぞれNASAとか環境省さんとかに送られるというシステムでございます。 そこのユーザーでございますが、先ほど言ったWCRPがここでございます。それからここに水産庁さんのデータセンターがございます。ここにも一応私どもはPIシステムというのをつくっておりまして、PIとして各大学の先生なり、研究者等が参加しておりまして、それぞれ機関ということではなくて、PIを通してこういう機関にデータが行くようなシステムというのが現在考えられているということでございます。 リスク管理に関しましては、ここに書いてございますように、ミッション達成上支障となるリスク項目の明確化、それから各リスク項目に対する処置計画の明確化、処置結果の確実なフォローを目的としまして、リスク管理計画というものを制定し、それの妥当性について、NASDA内外、これはNASAのJPL、CNES等にもご説明しておりますし、事業団外の外部の先生方にもご批判をいただいて、この妥当性の評価をいただくといふうなシステムをやってでございます。詳細の内容については、次のページに書いてございますが、内容については、ALOSのほうで説明をいたします。 以上です。

 長柄部会長 

   ありがとうございました。ただいま説明いただきましたADEOS−2の計画につきまして、質問ないしご意見がございましたら。佐藤先生、どうぞ。

 佐藤特別委員 

   この種の、NASAとかESA、その他外国機関の同じような地球観測衛星との比較とかそういう話をちょっとお聞かせいただきたいのですけれども。役割分担みたいなことができているのかという話ですけれども。

 黒崎(宇宙開発事業団) 

   ADEOSではなくて、ほかの衛星のということですね。

 佐藤特別委員 

   まあ、そうですね。比較の上で教えていただきたいと思います。

 黒崎(宇宙開発事業団) 

   役割分担については先ほどご質問があったと思うんですが、一応今、ADEOSの場合は、SeaWindsというものがNASAにお願いして……。

 佐藤特別委員 

   機関の話ではなくて、衛星そのものの比較で教えてほしいのですが。

 長柄部会長 

   例えばNASAのEOS−PMとか、ESAのEnvisatとか、ああいうものとADEOS−2がどういう関係になっているか。

 佐藤特別委員 

   そうです、そうです。

 黒崎(宇宙開発事業団) 

   ADEOS−2だけの説明をさせていただければ、一応、EOS−PM1と、EOS−AM1というのがアメリカに現在ありまして、AM1は、我々と同じような軌道を、10時30分に取るようになっている。これには、私どものセンサーとあまり競合するものは載せていない。PM1は、1時30分に通るようになっているのですか、これには実はAMSR−Eという、AMSRと同じものを、ちょっと違うんですが、AMSRと同じものを載せて、基本的にはそういう役割分担をしておるというご説明です。

 佐藤特別委員 

   非常に具体的に、地球物理学的にこういう観測のこういうことはどこが分担しているとか、機械で何とか言われても、こちらはわからないんですね、専門家ではありませんので。地球観測のこういう、雨のここはここが、ここはだれが分担しているとか、こちらのこの衛星はこういう特色があるのだと。もちろん重ねていてもいいと思うし、総合的な角度があってもいいと思うんだけれども、それぞれの衛星が大きなお金を出して、それぞれやっているのだから、それぞれのウリがあるはずですね。ここはALOSが得意なところで、地球のこういう物理はこれでわかるのだとか、そういう物理とか化学の成果として、実際の実用の上でどういうふうにすみ分けができているのか、それをちょっと再度お願いいたします。

 黒崎(宇宙開発事業団) 

   大分政治的なんですよ……。

 石田(宇宙開発事業団) 

   ADEOSのプログラムを担当しております石田と申します。今の欧米の衛星プログラムについてご説明したいと思います。
    ADEOS−2は、ADEOSの後継ミッションということでございますけれども、ADEOSのミッションを選ぶ際には、欧米のいわゆるプラットフォームの衛星とのミッションの調整というのを行って、そのセンサーでの調整した絵がございます。ADEOS−2に対して、ADEOS−2とEnvisatと、それからEOSとの関係でございますけれども、基本的にはセンサーには2種類ございまして、1つは同じ物量をより多くの頻度で観測するというタイプのセンサーと、それからプラットフォームごとにそれぞれ得意な分野の観測をするというセンサーみたいなものです。最初のセンサーにつきましては、CNESの海面水温、それから海色、これについてはGLIというセンサーを積んでございます。同様のセンサーがEOS−AM、それからEnvisatにも搭載されてございます。
    同じようなことがマイクロ放射で、これについても言えます。定常的に水蒸気量、それから植生、それから降水の分布等でございます。ADEOS−2のトピックスで観測の目標がございますけれども、1つは海上の風の観測でございます。このトピックスの海上の風の観測はADEOSから始まっている観測でございますけれども、ADEOSは非常にいい結果が得られまして、それで、ADEOS−2もその搭載を継続したということになっております。
    それからADEOS−2でもう一つ挙げられるセンサーとしましては、POLDERというCNESの太陽光の反射によって、エアロゾルの特性を測る、こういうセンサーがございます。これもほかにはないセンサーです。
    それから環境省さんのILAS−2による保存のプロファイルを高精度でやったときに、ADEOSのほうが高精度であります。
    以上です。

 長柄部会長 

   今の説明では、よくわからないから、何か簡単に一覧表をつくって、ヨーロッパの大きい衛星と、それからNASAの2つの衛星、それから日本の衛星と、どんなセンサーを載っけててどういう運用をやることになっているかというのを、その特徴を次回までに一覧表で出してください、よろしいですか、先生。

 石田(宇宙開発事業団) 

   はい、わかりました。

 長柄部会長 

   上杉先生、どうぞ。

 上杉特別委員 

   先ほど、AMSRとかGLIというのはできて当たり前という言葉があったんですけれども、これはもう、開発済みだということでおっしゃったのでしょうが、新規のものですと、もちろんこれがなければ、このミッションが達成できないのは当然なので、そういう意味でおっしゃったのか、あるいはもう既に実績が開発済みだという意味だったのでしょうか。

 黒崎(宇宙開発事業団) 

   いいえ、開発済みだということではなくて、打上げによって当然開発が終了するというか、打ち上がった後3年間動いたということで、開発が終了すると思っておりますが、そこまで行くのは一応目標としては一番最低のレベルかなということで考えております。

 上杉特別委員 

   ちょっと言葉じりで申しわけないんですけれども、前に井口先生のほうからも、昔から宇宙開発者はそういうものができて当たり前だというようなことを言われていて、よく故障したではないかというようなお叱りも受けてたものですから、そういう意味で、だからこれはミッション、当然これができなければ成り立たないという最低限の欲求だという言い方だと思ってよろしいでしょうか。

 黒崎(宇宙開発事業団) 

   はい、そうです。ちょっと言葉を間違えて……。

 松野特別委員 

   先ほどの佐藤委員のご質問に対しても、ちょっと私なりの簡単な説明で言いますと、先ほど申しましたように、地球観測はかなり定常的に物を見ていくという状況に半分入りかけていますので、ほかにない、初めてのものとかというよりも、アメリカやヨーロッパと協力しながら、時間的にあるいは空間的に、継ぎ目なくいろんなものが観測できるというためのコントリビューションというのがあると思います。AMSRとかGLIというのは、そういう観点で基本的にそこに書いてあるようなマイクロ波で、雲・水関係はAMSRが非常に強いわけですが、そういうものを測る。それからGLIは非常に波長の広い範囲を可視から近赤外まで至る広い範囲ですから、もっとかな、いろいろなものが測れる、それで森林の体積とか、そういうものを見ていくと、それを常に監視する。それから水源量、これはどんどん、業務で、気象観測で、海の上の風というのは、これはこれの出現によって、今まで測れなかった海上の風が50キロ間隔で測れるという、非常に画期的なもので、これはある意味では定常的な気象観測になくてはならないもので、これが世界じゅうで切れ目なく今度は日本がやるというようなことになるのだと思います。
    ILAS−2は、これは環境省で、これは非常にユニークな、先ほどお話のありました太陽掩蔽法で鉛直分解能を詳しく見て、これは典型的なオゾン層の化学のいろんなメカニズムを解明するのに必要な多量な成分、それから始まったものが、ILAS−Tがそうだったのが2になって、その次のSOFISになると、今度はもっと下のほうの対流圏のほうで、かつCO2とかいう温室効果ガスのほうに重点を置いていくと、ただ、先ほどちょっとコメントしたようにまだ十分でないというふうに、それぞれ違った意味があると思います。
    ちょっと残念なのは、ADEOSを最初にやったIMGという、非常に高解像度のフーリエトランスフォーム分光計、これを初めて衛星に載っけて、そして、詳しい分解能で、この場合には雲が切れていれば、地上までの温度とか、それから温室効果ガスがかなりアルゴリズムを上手にやれば、天文学でよくやられるような形で、詳しく測れるもので、それに最終的には成功したのですが、大変やはり技術的に難しかったのか、ADEOS−2には載ってなくて、むしろ最初の野心的な試みの成功を見て、世界のほかの国がどんどんやっているのに、ここでは欠けたというのが僕は非常に残念に思っています。
    先ほどのお2人の質問に多少答えたつもりです。

 佐藤特別委員 

   もちろん部会長さんがおまとめになったように、きちんとまとめてお出しいただくのが一番いいかと思います。感触はわかりますが、全体の様子は、やっぱりすみ分けは見えません。

 高柳特別委員 

   ちょっと今のに関係があるのですが、私も今、松野先生がおっしゃられたように、切れ目なくデータが必要とされている状況というのはよくわかるのですが、逆にそれでいきますと、ADEOSとADEOS−2の間にぽっかり穴があいたり、新年度のデータが欲しいために、NASAはほかの手を考えるとか、それからCNESなんかも計画がこれだけ遅れると、そのプロジェクトを持っている研究者は、ほかのいろんな形で補完というか、別の形のデータの取り方等をせざるを得ない状況があると思うのですが、その近所がどうなっているのか、それから今後こういう開発で、常にリスクがあるわけですから、そういうバッチというか、保険的なことはどういうふうに考えていらっしゃるのかも、表のところに入れていただけると、すごく理解が進む、そういう気がいたします。

 黒崎(宇宙開発事業団) 

   表のほうに入れるのですね。

 高柳特別委員 

   ええ。

 黒崎(宇宙開発事業団) 

   それはぜひ待っていただきたいと思います。

 冨田特別委員 

   さっきの上杉先生のご意見にちょっと関連していますけれども、ミッション達成目標というのがありましたね。このものというのは、ここまで達成できれば、例えば衛星に何か起こったときに、ここまでやれば一応ある程度達成できたという順番に対応しているのでしょうか。6、5、4、3、2、1という番号は。

 黒崎(宇宙開発事業団) 

   ここまでというのは、衛星は一応重要なミッションについて、基本的にこの下にバスが成功するというのがあると思うのですが、バスは当然に冗長系を積んでおりますので、それからいろんなミッションというか、いろいろサブシステムを組み合わせて補完できるようになっております。ですから、最終的には、ある例えばODRが壊れてもデータが取得できるようなシステムというのを考えているわけなんで。

 冨田特別委員 

   私の質問は割合単純でして、そこに6、5、4、3、2、1とありますね。衛星に例えば上に行って何か起こった、つまり機能しなくなったというときに、ここまで達成すれば、最低限ここまで行けば、20分とか30分だけど、そういう評価をしてくるのに、6、5、4、3、2、1というふうになっているのですが、もしそうだとすれば、6と5というふうに軌道上実証とか機能確認というのが入っていますね。そうすると、これが3年間働かないといかんわけですから、だから次世代技術の開発というのがあって、その次に軌道上実証になって、だから開発が済んだら一応成果があると。軌道上実証されるのはさらに成果があると、そういうような説明にしておいたほうがいいのではないでしょうか。

 黒崎(宇宙開発事業団) 

   わかりました。その点数の配分については、またこれから検討していきたいと思っておりますが、今、おっしゃるような意味で、ちょっと行くバス部分を表に出さなかったりとかありますので、バス部分については、もう少し詳しく評価をできるようにしていきたいと思っております。

 栗木委員 

   実は、昨年の技術評価委員会で、専門家会合、ETS1−[の達成目標のクライテリアというようなものをつくりました。そのときに、まさしく10ページに書いてあります1、2、3、4、5、6、これがサイエンティフィックな目標の達成度といいますか、目標の理由に私は当たると思うのです。ところが、ハードウエアのほうからしますと、まずバス機器が働かなきゃ、いくらサイエンスを目指しても、それは達成できない。つまり火を入れていった順序で、ここまでが技術的な達成度であるという時間的なシークエンスで追うような形での達成度、これは2つがどうも一緒にはなかなかできないところがある。これも2つに分けてくださいというようなことで、事業団さんと上杉先生が骨を折られて、達成度とそれからミッション目的の優先度というのを2つに分けて表現したということです。私はこれを見せていただきますと、10ページのほうはまさしくミッションの優先度で並べられたのではないか。それから11ページのほうは、どちらかというと技術的なベースがある程度達成目標のほうの矢印の向きに下のほうから積み上げていって観測がなされる。そういうぐあいに書かれたのではないかなと、私はそう思っております。

 長柄部会長 

   ちょっと予定の時間をオーバーしましたので、次にALOSのほうに移りたいと思います。

 富岡(宇宙開発事業団) 

   ALOSプロジェクトチームの富岡でございます。陸域観測技術衛星ALOSの開発状況、並びに関連システムの進捗状況等についてご報告いたします。3ページをお開きください。
    位置づけでございますが、ALOSが我が国の中長期戦略におきまして、社会経済ヘ貢献を果たすことをミッションとされております。JERS−1、ADEOSによる陸域観測ミッションを継承・発展するものでございます。経緯等でございますが、平成8年にプロジェクト移行前審査を実施いたしまして、以降、各フェーズにおきまして、現在維持設計並びにPFMの制作に着手したところでございます。
    その目的でございますが、公共的ニーズの高い地図作成、地域観測、災害状況把握、資源探査への貢献を図ることを目的としております。
    下の図は、主力センサーの1つでございますPRISMの立体画像の生成イメージでございます。ミッション要求と観測センサーの関係でございますが、ALOSには3つの大型のセンサーが搭載されております。パンクロマチック立体視センサーPRISM、高性能可視近赤外放射計2型AVNIR−2、フェーズアレイ方式Lバンド合成開口レーダーPALSAR、この特徴のある3つのセンサーがミッション要求ごとに主または副という形で複合的に使用が予定されております。例えば地図作成のケースでございますが、標高抽出、地物判読等に関しましては主力としてPRISMが使われる予定でございます。AVNIR−2、PALSARに関しましては、土地被覆分類、PALSARに関しましては、特に雲の多い地域では、レーダーセンサーが活躍するわけですけれども、この2種を補完的に使う計画でございます。
    主要諸元でございますが、打上げ時期が平成15年度を予定しております。質量が約4トン、これはNASDAの地球観測衛星最大級になる予定です。それから設計寿命が3年以上5年を目標としております。
    ALOS特有の新規技術開発要素でございますが、先ほどの3つのセンサーの開発技術のほかに、高精度の地球指向安定性がALOSは要求されております。そのための技術といたしまして、低熱歪み機体技術、それから高安定度姿勢制御系技術と、それから3つのセンサーから大量かつ高速のデータが生成されるわけですけれども、そのデータの記録伝送のための技術等々、これまでの地球観測衛星技術を高精度化、または高機能化を図っております。
    開発スケジュールでございます。平成8年に予備設計、10年に基本設計、11年に詳細設計におのおの着手しております。現在、CDRの一部をへまして、一部のハードウエアに関しましては、維持設計に入っているところです。
    関連しまして地上システム、それから解析研究の関係ですが、ALOSの開発に合わせて現在開発が進められております。
    実施体制でございます。先ほどのADEOS−2の体制と同じつくりで進めさせていただいております。ALOSプロジェクトチームは右半分のところに書かれておりますが、11名ということで、若干少ない人数で苦労して実施しております。PALSARに関しましては、経済産業省さんとの共同開発体制を進めております。
    ミッション達成目標ですけれども、地球観測衛星は最終的に、エンドユーザーにどのようにデータが利用されるかというところが最終目標になるわけですけれども、それに対して、衛星開発の役割という形で、この図のように整理しております。センサーを含めます衛星、それから地上システムの開発、それから得られたデータの処理アルゴリズムの較正・検証、それから利用化研究、または応用化研究、この辺がエンドユーザーとの協力の作業になるかと思いますけれども、これの関連研究、それから最終的には、エンドユーザーに対するデータの配信のための運用という、このような分類整理をしております。
    達成目標の中で、地図作成以降、各ミッションに対して、おのおのの達成基準を仮に設定させて、研究開発を含めまして、現在進めているところです。例えば地図作成のケースでございますけれども、2万5,000分の1の地形図作成に必要となるオルソ画像、数値標高データを地理院さんの協力で、試作・検証・実証すること。
    地域観測の例ですと、全球森林分布図等を試作・検証すること等々の達成基準を仮設定して進めていくところでございます。
    利用計画の関係でございますが、成果例を、ちょっと時間の関係で詳細は割愛させていただきますが、地図作成のイメージ図でございます。同じく地域観測、特に農業の利用関係のイメージ図等でございます。同じく災害状況把握の成果イメージ図でございます。
    ALOSのデータ利用計画の現在推進状況、調整状況でございますが、15ページに示させていただいておりますのが、国内分の調整状況でございます。ALOSの性格上、公共機関が主なユーザーになるわけですけれども、国土交通省それから環境省、保安庁、農水省さん等が、現在協定もしくは共同研究契約を締結いたしまして調整を進めているところでございます。
    こちらのほうは海外分でございます。対インドネシア、東南アジア諸国に関しましては、農業利用を中心に現在調整が進められております。
    ALOSデータノード構想というものをご紹介させていただきたいと思います。ALOSのデータ量は1日当たり1テラバイト以上ということで、今までの大型の地球観測衛星のデータ量に比べて20倍以上と。大量のデータが地上に伝送されます。このため、NASDAだけで、それのデータ処理、配布サービスは極めて困難と考えております。特に高次処理に関しまして不可能と考えておりまして、このため、世界を、ヨーロッパ、アジア、オセアニア、南北アメリカ、この4つの地域に区分いたしまして、地域に則したデータの処理なり配布をやろうということで、いわゆるALOSデータノード構想を設定して、現在、調整を実施中でございます。
    最後になりましたけれども、リスク管理計画の概要についてご紹介してみたいと思います。開発方針とリスク管理の関係でございますが、ALOSは開発着手時に次のような方針を立てております。1つとして、ミッション要求の達成を最優先するとともに、確実な開発を目指す。新規技術開発要素はミッション要求を達成するために、最小限の必要技術に絞り込む。その他は既存技術、ALOSの場合ですと、ADEOS、ADEOS−2シリーズの技術を最大活用しようと考えておりますが、新規技術開発項目のうち、以下に示します4つの項目だけを指定いたしました。
    それから、やはり計画の一環でございますが、開発技術分類とリスク管理の関係をALOSは以下のように整理しております。
    新規技術を用いた新規開発コンポーネント、それから、既存技術を用いました新規開発コンポーネント、それから3つ目としましては、既開発コンポーネント、この3つにカテゴリーを分類しまして、おのおののコンポーネント、ハードウエアの開発なりリスク管理の基本方針を立てまして、開発計画に利用しております。
    このページは、リスク状況分析の1例を示しております。外的要因によるリスク、それから単一故障点の影響と対策、同一点二重故障等々を実施しております。
    最後になりましたが、ALOSの開発でこの1年間に、設計変更等の対策を講じた主な項目を示しております。1つ目としまして、リアクションホイールの変更、ETS−7の軌道上の不具合、ご承知のように、ETS−7はベアリングの潤滑異常による起動トルクの増加という不具合が発生しておるわけですけれども、ALOSはより高速回転を必要とするため、実績のある海外品を再選定いたしております。このため、関連のサブシステム設計の見直し、及び、より確実な開発のため、打上げ年度を14年度から15年度に変更しております。それからハンダ部の耐性向上、ショート故障モードの耐性向上等の対策を図っております。
    それから今後の追加評価の計画でございますが、さらなる開発の確実化に向けて、追加の地上評価試験、それから衛星が打ち上げた後の初期チェックアウト期間でいろいろなチェックをするわけですけれども、それの関係の技術評価のシミュレーター等々の準備を現在、計画、または実施中でございます。
    説明は以上でございます。

 長柄部会長 

   ありがとうございました。質問ないしご意見ございましたらどうぞ。では八坂さん、どうぞ。

 八坂特別委員 

   最初の全体の話とも関連したことでございます。この利用につきまして、エンドユーザー等が実利用、あるいは利用化研究をやるという話でございました。端的に言うと、このエンドユーザーというのは、どこまでスペシファイできているかということなんです。というのは、科学ミッションというか、あるいはグローバルな観測とか、この辺が地球観測全体についてあるのですけれども、やはりこういう実利用の促進、非常に国民に直結した話がたくさんあるはず、地球観測が一番多いのではないかと思います。だからそこをどこまで認識した上で、そのプログラムを進めていっていただいているかということなわけなんです。
    それで、エンドユーザーと今の資料あるいはご説明の中にありましたので、それからお聞きしたほうが早いかと思うのですが、これをお聞きしたら、いや、地方公共団体だとか、ここにいろいろありますとありますね、書いてあります。たくさん出ておるのですけれども、実は私は九州に住んでおりまして、宇宙利用をどうするかということをいろいろ考えさせられるというか、やらされるのですけれども、どこをやっていますかというとほとんどシラッとして手が挙がらないのです。確かにこういう共同研究とか、あるのでしょうけれども、つまりここに挙がっておる団体は、エンドユーザーではなくて、エンドユーザーに対するサービス機関だと思うのです。だから、ここの機関がほんとうに市民レベルまでのエンドユーザーにどういうサービスを提供できるかということが問題なのでして、実はそういったところが、どこまで答えを持っているか、私の見るところでは、大変困っているのではないかと思うのです。
    だから、そういった市民レベルまで実際こういうふうに役に立っているのですよということをどういうふうに示して、これはできるはずなんですけれどもね、やれるか、これは事業団としてそういう促進を図っていかなければいけないわけなんです。
    それで、最後に質問の形にいたしますと、最初の資料に関係省庁とのパイロット事業を始めたと、94年からありましたね。数年前に何か地方展開という話を聞いて、大変期待したのですけれども、そういった観点で、その地方展開というのは、一体どういうふうになっているのか、これからどうなっていくか。その辺、お聞かせいただきたいと思います。

 長柄部会長 

   稲田さん……、どなたが答えるの。

 稲田副本部長 

   かなりいろいろ難しい質問もございましたが、全体ユーザーとはだれか、どこに実利用、あるいは応用の分野ではどうかと。先生は我々に市民レベルまでいくのではないかというようなお話ですが。
    まず最初、実利用、あるいは応用の分野で、僕たちが1つターゲットにしたというのは多分、市民レベルの最初の段階では、あまりにも利用者が広過ぎて、どれかというのがなかなかできないのではないかということで、1つが行政利用というものがかなりいろいろあるのではないか。特に災害監視の問題、あるいは地図の作成とか、そういう問題がございまして、行政利用をターゲットにした形で、やはりだれがミッションを要求するのかという、僕らはいつもミッション・リクワイアメントというのを受けまして、それで、センサー、あるいは衛星のデザインをいろいろ始めるというふうな考えでおります。
    特に1つ例といいますか、ALOSのほうにつきましては、地図作成というので国土地理院というところがかなり国連での世界地図をいろいろつけましょうというような話でございまして、ここは1つ大きなミッションリクワイアメントができているところかなと。それで、特に行政利用になるのかなというふうな形でいろいろ進めてまいりました。
    それ以外に、先ほど一番最初に片木のほうから説明がありましたが、地球観測委員会というのがかなり大きな先生方、あるいは研究者、これはボランティアの集まりなんですが、そのあたりからのリクワイアメントを主にとりながら、どういう感じに進んだほうがいいのかというのを受けながら、こういうふうなミッション・リクワイアメントをいろいろ決めていきたい。
    もう1つは、各国ともいろいろ問題がございますが、各国をこの実利用、応用の方法などについては、なかなか国際協力というのは難しくて、やはり国内的な形で、最初は進めていくのだなという感じで進めてきました。
    その中で、やはり最終的に、当面は宇宙開発事業団が進めていくのですから、行政利用の分野で地方自治体に広げていったらいいのかな、そのあたりがかなり議論してもらう必要があるだろうと。ただ、常にオープンに出すことという形で、開発事業団だけで常にお金を出してやっていくことは難しいので、それぞれ最初の段階では宇宙開発事業団がある程度サポートしていきますから、やはり自主独立の形で、宇宙開発事業団からデータは供給しますが、解析、あるいは利用というのは、まさに地方団体が主体的にやってほしいという言い方でずっと始めてきました。
    現状につきましては、関係者のほうから話してもらいます。

 長柄部会長 

   できるだけ簡単にお願いします。

 森山(宇宙開発事業団) 

   ALOSの総合プロジェクトサブマネジャーをしております森山でございます。
    簡単に3つ目の観点でご質問に対してお答えしたいと思いますけれども。まず、私どもがいろいろな形、国ですとか、地方公共団体、あるいは国際協力で、利用の推進事業をやっておりますけれども、基本的には利用が最終的に定着するところまでのいわゆる橋渡しまでがパイロットプロジェクトの範疇であるというふうに考えております。つまり、ほんとうに国民がサービスで使うところは、例えば国であれば、各仕事を持っている省庁が、自分たちの責任の中でやっていただかないと、私もそこまで出ていくわけにはいかないと思っております。したがいまして、例えば農水省さんと今、やっておりますのは、衛星を使って農業作付面積を把握しようと。実はこれは2000年度から既に事業化が始まっておりまして、ALOSの時代では、欧州、あるいは東南アジアのほうまで広げてできるように、レーダーも使った新しいアルゴリズムの開発を今、共同でやっております。
    そういう形で実用化を目指したところまでは、一緒に実用化研究という名前でやらせていただく。同じように、地方公共団体に関しましても、例えば地方自治体、既に5年目に入っておりますけれども、群馬県ですとか岩手県ですとか、定着して利用するところまでの橋渡しは、何とかこの5年間の間にやってきております。最後はやはり、そういったところが地方も行政としてきちっとそういったものを定常的に使っていくところで落とし込んでいただかないと、そこまで我々の責任できちっとフォローしていかなければならないと思っております。ですから、その点に関しては今年評価、あるいはその県によっては3月31日でありますけれども、評価を入れて、その上で先生がおっしゃられたように全国展開になれば、まずテーマをきちっとデータベース化して公開をするところから始まる。その上で、ほかの例えば具体的に熊本県ですとか、福岡県からも、別の問題、地下水の問題で、一緒に共同のプロジェクトをやってほしいという話があるのですけれども、やはり具体化していくためには、成果をきちっと評価をしていただく。公開の場できちっと成果をきちっと評価をしていただくということを
含めて、次第に事例を出していこうかなというふうに考えております。

 長柄部会長 

   八坂先生、どうぞ。

 八坂特別委員 

   大変いいお答えだと思うのですけれども、だけど、まだ食い足りないのです。今、橋渡しをするのが事業団で、その後はそれぞれのところでやる、これはそうだと思うのですよね。ただ、その手段は、一体どうするのか、例えば衛星はどうするのか、事業団の衛星をずっと使うのか、あるいはそれぞれのところが使うのか、いろいろあると思うのです。でもALOSとかこういったものは、かなり定常的に観測して、それを実際に利用するわけなので、これはどう利用できますというのをもっと明確に、だから水利用だったら、これをいうのは簡単なんです。だけどこれをやるのは非常に難しいですね。どうすればいいかというのは、ほんとうに解があるのかどうかを含めて、これは事業団として橋渡しをするからには、命題を解いてみてやらないといけないわけですね。そうしないと利用というのは進まないと思います。だからこれはぜひ地域に密着した形で進めていただきたいと思います。それには、お問い合わせくださいというのを書いちゃだめなので、やっぱり売り込むというのがぜひ必要であると思うので、その辺、ご配慮いただけたらと思います。

 長柄部会長 

   冨田先生。

 冨田特別委員 

   今の八坂先生の補足みたいな話になるのですが、最初に私、前にCNESが切り離したということを言いましたね。結局、利用するところまでやって、あと、橋渡しというと、どうしても無責任になるから、最後まで面倒を見るという意味でやっているメンバーを切り離して、最後まで面倒を見させるというようなことを言っていましたので、そういう覚悟が要るのではないかなと私は思います。
    それと、ちょっと別件でよろしゅうございますか。
    このALOSの資料の実施体制を見ていますと、衛星バス開発が3社に分かれていますね。ところが、先ほどご説明しましたADEOS−2は、衛星バス開発が1社でございます。(プライム)と書いてある。これが、なぜこういう差ができているのか、一番最初の前回のときに、たしか衛星はプライム制に移行しつつあるというご説明を聞いたような気がするのですが、これが第1問です。 それから第2問は、リスクマネジメントをやっておられますけれども、これまでの不具合の中で、かなりの部分がインターフェースで起こっているのですね。こういうたくさんの会社が1つにかかっている。それに対して、そういうふうなインターフェースでトラブルが起きないようにどういう対策をとっておられるか。それを聞かせてもらいたいということです。

 富岡(宇宙開発事業団) 

   1つ目のご質問の契約開発体制というご質問ですけれども、先ほど、ADEOS−2が、プライム契約をしているということですけれども、ALOSは、先ほどのPALSARが通産省の外郭でございますJAROSさんと共同開発というような形をとっております。したがって、かなり相手方のノウハウに手を突っ込んだような形でやらざるを得ないわけです。それから、先ほどご説明いたしました3つのセンサーが、特にミッションデータ処理系、それから衛星軌道制御系とかなり相関を持つような形、設計情報として、かなりネットの数値をやりとりしなければ成立しない。非常に高性能を要求していますので、いわゆる仕様値と実力値というやつがあるわけですけれども、かなり実力値に近いところまで議論しないと、システムとしてなかなか成立しがたい等々の、今、インターフェースの煩雑さがNASDAに来てしまうという逆の問題が出るのですけれども、NASDAがインターフェースに、いわゆる設計なり実力の措置に関してかなり介在してシステムをまとめていく必要があるという判断で、いわゆるNASDAインテグレーター制をALOSの場合は採用しております。先ほどのADEOSシリーズの関係でありますと、ちょっと逆の流れという形かと思います。全体にプライム制をできるだけ敷いていきましょうというNASDAのプロジェクトのほうも理解をしておるのですけれども、これは平成9年度ぐらいから、かなりその方向づけの議論がなされたと思いますけれども、ALOSは大体、その判断がなされる前にメーカー設定が決定したといういきさつがございます。
    それから、2つ目のインターフェース上のトラブル、技術リスク管理という形での冨田先生のご質問ですけれども、先ほどの説明を含めまして、NASDAが陰に介在している形をとっているわけですけれども、現在、インターフェースに関しましては、ハードウェアのチェックとしましてFMEAをメインでやっております。回路の不整合等がないかどうかという形でやっております。
    それから、機能、それから仕様上の切り分けですね。これは、なかなか有効な手段といいますかツールはございませんで、インターフェース調整会議の繰り返しというような従来どおりの管理から、あまり進歩がないのですけれども、そういう体制で進めているのが実情でございます。

 長柄部会長 

   申しわけございません。ちょっと時間が、後のあれもございますので、もし何だったら、何かメモでも出していただいて、次回にNASDAのほうから答えてもらうようにしたいと思います。

 冨田特別委員 

   わかりました。

 長柄部会長 

   それから八坂先生のおっしゃいましたエンドユーザーまでの利用につきましては、実は宇宙開発委員会のほうに利用部会というのを今度設けることになっておりまして、エンドユーザーをいかに増やすかとか、エンドユーザーまでいかに情報を伝達するかとか、むしろ従来どちらかというと、開発中心にやってきたわけですが、むしろその利用部会のほうでは、ユーザーの立場から、開発はこうあってほしいとか、開発とエンドユーザーまでの間をこういう格好でつながないとうまくいかなよとか、そういうことを利用部会で議論してもらおうということで、近々発足することになっております。
    この地球観測データの利用だけではございませんで、通信とか、宇宙ステーションとかいろんな開発もございます。これの利用についての議論を別途別の場所ですることになっております。
    それでは、いろいろ質問・意見はあろうかと思いますが、事務局のほうに後でも結構でございますから、質問ないし意見を出していただければ、また整理した上で、次回に紹介したいと思います。
    それでは、宇宙開発事業団のほうで、信頼性向上、品質保証、また高度情報化の取り組みがいろいろ今、なされておりますが、それの概要について説明願いたいと思います。時間も限られておりますので、手短にお願いします。

 佐木(宇宙開発事業団) 

   私は、安全・信頼性管理部の佐木でございます。これから信頼性向上と品質保証の強化についてご説明申し上げます。
    まず最初に全体をどういうふうなことなのか、宇宙機というのはどういう特徴があって、なぜこういうリスク構成をやっているか。それからNASDAの中における品質保証に係る役割分担、それから企業への品質保証要求、それから問題点の改善方策、それから強化策の状況、あと、あわせまして、H−2A打上げ成功に向けた品質保証活動強化ということでご説明します。
    まず、非常に簡単ですけれども、宇宙機システムというのは、ここに示したような特徴がありまして、宇宙開発用の技術基準類がございます。NASDAとして、現在、技術標準ハンドブック、そういうものを設定しまして、宇宙開発ができるようにということで。それからもう1つは外部の専門化による審査とか、こういう総合的なことをやっております。技術標準ということにつきまして、それからスタンダードにつきまして、約トータル二十数件が両方とも出ていたみたいです。
    NASDAの品質保証に係る役割分担ですけれども、経営層を中心としまして、安全・信頼性管理部が全社的技術管理標準、ガイドラインの設定、それから教育、メーカーの監査、それから情報システムの整備、運用。あと、システム本部というか、衛星総合システム本部、輸送系の総合システム、システム本部が品質保証しているポイントというのがありまして、本部の品質システムの構築、維持。信頼性・品質の立場での個別指導・支援、それから品質問題の水平展開ということをやっておりまして、プロジェクトチームは実際に具体的な開発計画を進めております。
    企業に対しまして、NASDAとして品質要求をしておりますのは、ここに示した以下のものです。1番目としまして、品質プログラム標準、2番目としまして、信頼性プログラム標準、それから3番目としまして、コンフィギュレーション(形態)管理標準、大きなこの3つを、企業に対する信頼性・品質管理要求として示しております。品質システムにつきましては、ISO9001の考え方を一部取り入れまして、現在、宇宙機器として必要な品質要求を課してあります。
    それから宇宙機で、特に重要になりますのは信頼性管理になりますけれども、これにつきましては、信頼性考慮の観点、それから設計審査、そういうことで、信頼性の適用をております。
    あと、次にコンフィグレーション管理ですけれども、でき上がったものは確実にこういう形態になっていますということを、マイルストーンごとに確実にカッティングしてということが宇宙機器の場合非常にポイントになりますので、具体的なものを示しております。
    現在、我々が認識しております問題点としましては、設計上の問題点、製造上の問題点作業上の問題点ということで、ここに示したような問題点が現在あるということで、いろんな一連の考えの中で、我々としては理解しております。
    改善方法としましては、検証試験の充実、工程解析の強化、それからヒヤリ・ハット分析、フールプルーフ設計、こういういろいろ宇宙開発委員会、それから外部の先生方とかそういういろんな方のご意見を取り入れまして、現在こういう形で進めております。 具体的に、NASDA全体としてどういうことを教えるかということが、品質保証監督の強化という点でございます。まず1番目としまして、専門家による品質保証体制の再構築ということで、安全・信頼管理部の招聘開発部員として専門家を招致しまして、工場駐在及び信頼性評価機能を強化、高度化するということです。 それから2番目としまして、特殊工程技術のレベルの向上、基礎データの取得、これは特にロケットエンジンの問題がありましたので、非破壊検査技術、耐熱金属の鋳造・溶接技術、そういうような技術につきまして、研究を開始、また物質・材料研究機構と共同でデータの取得を始める。 それから3番目としまして、ISO9000シリーズの認証取得を現在進めておりまして、現在、実地審査まで進んでいるところがございます。 今、示したようなことが、品質保証の強化体制ということで、信頼性管理課以下3つの課がありますけれども、そのほかに招聘開発部員ということで、今、説明しましたような工場駐在員、それから特殊工程の研究ということで、現在約三十数名、専門の方に来ていただきまして、品質管理とか、そういう分野の強化をするものです。
    それから2番目としまして、製造現場における品質保証強化としまして、製造工程解析の充実、工程FMEAの詳細効率とか、それから重要品質特性・同加工パラメーターを抽出し、異常の有無を監視する。こういうことにつきまして、もう一つ。
    それから先ほどから何回も出ておりますけれども、リスク管理というプロジェクトを進めるということ、これは必須の作業で、むしろプロジェクトというのは、中で、リスクをいかに識別して、その対策を行いながら系統的に進めていくかという問ですけれども、海外の宇宙機関の現状調査も行いまして、既に各プロジェクトは実施済みですけれども、具体的なツールとか、そういうものについて検討いたします。
    それから4番目としまして、ヒヤリ・ハット情報の活用。他産業で行われている活動調査等も行いまして、ヒヤリ・ハットのハンドブックをつくりまして、このヒヤリ・ハットということで、表に問題としてあらわれないものについても、ちゃんと分析して、より品質の高いものをつくっていく面で、企業と合わせて考えていきます。
    最後になりますけれども、具体的にはH−2Aではどういうことをやっているかということについてご説明いたしたいと思います。
    H−2Aの品質確認対策チームというのを現在置いておりまして、溶接、ろう付け等の特殊工程部の点検、工程FMEAも含みます。それから大きな振動や衝撃が発生する可能性のある部位の再点検、それから品質確保に対する点検、不具合分析等、それから試験機1号機の確実性の向上、検査の充実、それから外部委員会の提言、不具合再発防止の観点から実施する管理の点検、それから各企業の現場から吸い上げた懸念事項、気付き事項の点検、これは、もちろん企業の方が中心になって、事業団のプロジェクト、それから安全性信頼性管理の要因、それから先ほどご説明しました招聘開発部員等含めまして、全体のチームとして、現在、こういう品質確認対策チームの活動を組んでおります。
    それからあと、これは当たり前だと言われますけれども、要処置事項につきまして、確実にフォローアップするような体制の強化が必要であろうと思います。それから、輸送本部では、ISO9001の取得につきましては、平成12年10月、種子島宇宙センターのISO9002取得。これは打上げ作業ですから、すきが入りませんので、9002に引き続き、H−2Aの打上げ整備作業も審査の上、ISO9001の取得を現在本部で進んでおります。来月あたりから、具体的な審査が始まる予定です。
    それから工場駐在員による製造、検査等の立ち合い、先ほどありました招聘開発部員を常駐化していまして、試験立ち合い、それからよりきめの細かい企業との間の話し合いをして、問題点等を考えるということを予定いたしております。
    それからあと、データ確認につきましては、X線の検査の専門家に来ていただきまして、8,000枚のデータを全部見直しまして、その問題点の有無、それから問題点になったところにつきましては、再撮影とかをやりまして直しております。それでまたその専門家のご意見を聞きまして、今後こういうふうに直したらいいとかということも全部いたします。
    それから、5番目になりますけれども、燃焼試験等の重要イベントに対して信頼性管理部より現地派遣、作業に参画、確認をしているということであります。
    簡単でございますけれども、以上で説明を終わらせていただきます。

 長柄部会長 

   ありがとうございました。
    どうぞ質問ないしご意見を。澤岡先生、どうぞ。

 澤岡特別委員 

   10ページのツールの準備というのは、具体的にどういうものを指しておりますか。

 佐木(宇宙開発事業団) 

   リスク管理のポイントといいますのは、リスク管理シートというものが必要になりますので、そのシートを現場の人たちが使いやすい、データを入れやすいというような格好で見やすくするなどの検討を現在進めております。
    これは情報化を行いまして、必要な方が、検索等を進めてみえれば、わかるようにしております。

 澤岡特別委員 

   リスク管理のある種のマニュアルを徹底するということですか。

 佐木(宇宙開発事業団) 

   まず、1つはマニュアルの設定はします。マニュアルは現在、最終段階になっております。それからもう1つは、情報化をしなきゃいけませんので、情報化のツールを整備しているということです。

 長柄部会長 

   ほかにどなたか。冨田先生。

 冨田特別委員 

   1点お伺いしたいのですが、この品質保証の強化体制図を見ますと招聘開発部員というのは、それほど重要な位置を占めておりますね。これが常駐駐在ということが言われているのですけれども、私はメーカーにおりましたから思うのですが、メーカーにいた人が招聘開発部員でメーカーに行った場合、お互いにかなりやりにくいことになるのではないかと思うのです。そうすると、お互いに役割分担というのでしょうか、例えば招聘開発部員の業務内容とか、そういうものはまず決まっているのでしょうか。
    それからもう1つは、それを決めるに際して、メーカーと相談して決める必要があると思います。ぜひそういうことをやっていただきたいと思います。

 佐木(宇宙開発事業団) 

   今、ご指摘のあったとおりだと我々も思っております。といいますのは、ほかの企業の方に見ていただくと、細かい現場まで入れませんので、どうしても工場の方、企業の方になるのが現状です。それで、非常にやりにくいということも我々了解しております。そういうことがありますので、まずは、招聘になっている方に我々とよく話し合いをしまして、どういう役割をするのだということを話し合いをするということ、それから、どういう問題点があるのだということを話し合いして、1つは我々お願いしておりますのは、ほとんど先輩の方が多いですから、落ち着いた立場で見て、現場に対してアドバイスをしてほしいと。それからもう1点は、問題点等については、直接その現場に言うのではなくて、ちゃんと事業団の中のルートを通して、しかるべき処置をしていくのだ。そういうようなことで日常的な話し合いをしております。
    今のご指摘については、我々も同感だと思っております。

 冨田特別委員 

   ぜひお願いします。結局、周りで見ている人が多くなって、やる人は1人で、周りから口を出す人が多くなると、だんだんやりにくくなってくるんですね。やはり、何か書いたものではっきりと、招聘開発部員はこうだと。会社側はこっちで招聘開発部員はこうだというようなことをやっぱり決めていただきたいと思います。

 佐木(宇宙開発事業団) 

   今の点につきましては、企業ごとによって違いますし、またそれから後、招聘された方の、会社になっていく立場と違いますので、基本的なのは文章になっているのですけれども、やはりそれ以上きめが細かい対策が必要だと考えております。

 長柄部会長 

   宮崎先生、どうぞ。

 宮崎特別委員 

   現状の主要な問題点と改善方策というところのページなのですけれども、現状の問題点の改善方法をさっと見て、検証試験の充実というのが挙げられています。おそらくいろいろな条件の上での試験の回数を増やすとか、そういう方法なのでしょうが、そういった場合、どんどんコストが上がると思うのですけれども、限られている予算内で、検証試験の充実をするためにはどういうことになっていらっしゃるのでしょうか。

 佐木(宇宙開発事業団) 

   具体的に1つの例を申し上げますと、幾つか問題を起こしますLE−7エンジンにつきましては、やはりある程度費用がかかってもしようがないと言ったらちょっと変ですけれども、試験を増やして、それから試験の範囲を減らして、より広い範囲で確認するということはやっております。
    それからあと、ソフトウエアにつきましては、ソフトウエアの検証を、1シグマとか、2シグマとか、9シグマまで広く振って作業をやっております。確かに費用については、その費用の枠の中で最適なことをやらなければいけませんので、その費用をいかにうまく使うかということがポイントになっています。1例だけですけれども。

 長柄部会長 

   ほかにどなたか。よろしゅうございますか、この信頼性と品質保証の確認につきましては。佐木さん、どうもありがとうございました。
    それでは、最後になりますけれども、NASDAの高度情報化の取り組みの現状について説明願います。

 田中(宇宙開発事業団) 

   高度情報化推進部長の田中と申します。我々の高度情報化の取り組みについて説明させていただきます。
    まず、高度情報化の目的でございますが、2つ掲げてございます。1つ目は、現在、進めております業務、これにつきまして、情報技術を活用しまして、事業、業務を高度化して改善していこうというものでございます。
    もう1つは、宇宙の分野以外にも適応できるような、そういうように視野を広めまして情報技術を研究開発していきたいと、この2つでございます。これまでの経緯でございますが、宇宙開発委員会の特別会合のほうからご指摘を受けております。それで、高度情報化への取り組みにつきましても、我々のアクションプランの中の1つとして入れてございます。それから、情報化への取り組みでございますが、平成11年の12月に、高度情報化推進委員会、こは外部の諮問委員会ですけれども、を発足させて、それから昨年の11月にその委員会から戦略ということで理事長に答申をいただいております。
    この答申いただきました戦略のポイントでございますが、ここに掲げてあります5つのポイントでございます。1番から4番までは、開発業務にかかわる内容でございます。5番目は体制に関するところでございます。
    それで、これから我々、情報化を進めてまいるわけですけれども、そのためには3つの柱を立ててございます。1つが開発業務におきます高度化ということでございます。2つ目がこれまで開発してきた技術ですとか、あるいは蓄積してまいりました経験なんかを、もっともっとみんなで使えるように、活用できるようにしようというものでございます。3つ目が、情報技術を使いまして、業務運営のところで改革をしていこうというようなものでございます。
    これを進めていきますときの方針でございますが、まず優先順位をつけてやっていかなければいけないだろうと。その優先順位の1つは、緊急性の高いプロジェクト、H−2A等でございます。それから、2つ目のポイントとしましては、先ほど申し上げましたけれども、実務といいますか、今、進行中の業務、それと先を見据えた研究、これはある程度分離して進めていこうというような問題がございます。
    それから、情報化に当たりましては、職員の理解と意識の改革が非常に重要ということですから、こういうことに配慮してやっていきたいということです。それからもう1つは、達成目標と、どこまでできたかという部分につきましては、客観的に評価をしながら進めていきたいというように考えております。
    この情報化を進めていくときの体制でございますが、昨年、この真ん中の左のほうに書いてあります高度情報化促進本部というのをスタートさせております。これは、本部長が理事長ということで、この本部の一番の任務は、情報化についての事業団内部での周知徹底をすることでございます。
    それから情報化につきましての実行については、昨年の10月に情報化の推進をしていただくために、東京工科大学の相磯先生を顧問として迎えておりまして、実行につきましては、理事長のほうから委任されております。それで、我々は顧問が招聘いたしましたそのアドバイザーと、顧問の指導を受けながら、情報化を進めていくというような体制をとってございます。
    それから、次のページの情報化の目指すところでございますが、真ん中のところに、目指すところということで、先ほどの3本の柱を書いてございます。左側には、どういう分野で情報化というのが有効かという分野を書いてございます。最終的には、これは情報ということでシステム化しなければいけませんので、ある程度くくってシステム化したときの構成を右のほうに書いてございます。
    目指すところですが、最初に開発の行動化というところで、目指すところを次の絵でかいてございます。ここにありますように、コストの削減、それからスケジュールを短縮できないか、それから品質を向上させること、それから皆さん税金をいただいているものですから、できるだけこたえたいというようなことを目指しているわけです。
    それで、開発、これは、大きく3つのフェーズに分けて考えてございますけれども、最初の段階、宇宙開発事業団とか、研究所等が中心になって実施します企画段階、それから宇宙開発事業団と企業とで役割分担しながら進めます製造段階、それから宇宙開発事業団とユーザーが中心となりまして実施されていきます運用利用段階、この3つの段階に分けて考えておりますけれども、情報化という観点では自立分散、それから協調していくような環境を構築しまして、開発の高度化を目指していきたいというように考えております。
    それから、開発の高度化も、一気に全部はなかなか難しいものですので、それぞれのフェーズごとにパイロットプロジェクトを指定しまして、それでまず進めていきたいというように考えております。まず、プロジェクトの企画段階、非常に早いフェーズのところでございますが、今年度から始まっております気象放送インターネット衛星プロジェクトで、このフェーズのところをまずパイロット的にやっていこうというふうに考えております。それから、製造段階でございますけれども、これは昨年度より進めておりますけれども、技術試験衛星の8型におきまして、情報化を進めているところでございます。
    それからまた、製造段階では、試験等におきまして、シミュレーションという形も非常に重要な位置を占めてまいりますので、まずその中でも環境ということで、その中の音響の部分から今、取り組んでいる状況でございます。
    それから、運用・利用段階に入りますと、現在、H−2Aは今年の夏の打上げを目指して準備を進めております。それと、宇宙ステーションのほうも、開発から運用に向けて、準備を進めております。それから、衛星の運用につきましても、このフェーズでの情報化を進めておりまして、このフェーズでは、この3つの違ったプロジェクトでパイロット的に今、現在進めているところでございます。
    次のページは、先ほど申し上げました環境試験シミュレーションの絵でございます。
    それから開発業務のIT化の進め方、これを1枚にまとめてみたものがこれでございます。縦のほうに各衛星のプロジェクトのフェーズを書いてございます。右のページには、H−2Aによる衛星過程が準備しているところでございます。
    製造段階では、ETS−8の開発、それから最初の企画段階では、超高速のインターネット衛星の開発が進んでおります。それで、細い点のところから前の状況を踏まえましてより一層情報化を図っていこうというような考え方でございます。
    それと、一番下側のところに書いてございますけれども、現在進んでおりますプロジェクトはもう1つ先のところ、それより先のところで高度な開発手法を展開していきたいということで、研究も立ち上げております。
    これが先ほどの3本柱の1つ目ですが、これが次が2つ目の柱であります情報の知識化・活用でございます。先ほども申し上げましたように、ここら辺まで事業を通して得られました情報知識を財産として蓄積して活用していきたいというようなことでございます。
    それで、優先順位ということでは、先ほどの佐木部長からも話がありましたけれども、トラブル等に関係するデータベースのところをまず最初に手をつけて整備していきたいというように考えております。
    これは、先ほどちょっと申し上げました研究のところでございますが、次世代開発指標の研究ということで、5年から10年ぐらい先の研究の開発のやり方、これを目指して、今、研究に着手したところでございます。これにつきましては、まずシナリオをつくりまして、それから産・官・学が参加できるようなオープンな場で研究を進めていきたいというふうに考えております。
    こういう情報化を進めていきますためには、情報のインフラの整備というのが非常に重要になってまいりますけれども、まず1つが、インフラということでは、ネットワークというのが大きなポイントではないかというように思っております。これの強化をこれを通して図っていく。
    それともう1つは、中核の情報から見た基盤センターの機能を、数年、2、3年後ぐらいまでには、構築していきたいというように考えております。
    それから、この下の部分に書いてありますものは、先ほどの3本柱の3つ目のほうでございますが、業務運営の改革をやりたいということで、それぞれの分野ごとに、例えば経営情報システムですとか、業務運営上のシステムというようなシステムを構築していきたいというように考えてございます。
    最後のページに、情報化がそれぞれのシステム構成ということで、関連を書いたものでございます。最終的にはこういうようなイメージのものを構築できるというように考えております。 説明は以上です。

 長柄部会長 

   どうもありがとうございました。 質問ないしご意見をどうぞ。上杉先生。

 上杉特別委員 

   小さな質問ですけれども、14ページに書いてあるトップダウン設計の人工衛星開発への適用研究、これは具体的にどういうことでしょうか。

 田中(宇宙開発事業団) 

   これは、もうちょっと具体的に申し上げますと、東京大学の野本先生、造船の先生なんですけれども、これまで造船の分野でトップダウン設計というやり方で、大変成果を挙げられております。それで、我々のほうでもこの手法を宇宙のほうに適用できないかということで、昨年度ぐらいから適用についての研究を始めているところでございます。

 上杉特別委員 

   内容がわからないのですけれども。

 田中(宇宙開発事業団) 

   なかなか、どこからどう説明したらいいのかわからないのですが、例えば人工衛星ですと、1つのものがあるわけですけれども、それを一つ一つ中身を分解していきまして、例えばバス系とミッション系とか、それをバス系であれば、各ごとにどんどん分解してまいります。それでその分解していったときに、それぞれの関係というのをはっきりここで定義していきまして、どんどん上から下まで、その関係というのを明確にしていく。それを1つのモデルとして持っておりまして、それで、各フェーズごとでいろいろな解析ですとか、積極的に進めていくのですけれども、それをこれでコントロールしていこう。
    まあ、私もあまり詳しいことはよくわからないのですが、ある先生がこれは1つのコンテレーションマネジメントのツールとしては、そういうふうにとらえてもらえるとわかりやすいかなあというふうな表現もされておられます。
    どうもすみません。

 長柄部会長 

   八坂先生、どうぞ。

 八坂特別委員 

   具体的に情報、相手を利用した設計システム、例えば最後のページの総合宇宙情報システムというか、いずれにしても、そのネットワークを使って製造試験をやると、NASDAと企業の間でそれをやると言われましたね。これにつきましては、私の知っている限りは、USEFのほうで非常に似たようなシステムをやっておられる。これはUSEFが中心となって、企業との間でデータをやりとりするという話で、実はその企業というのは、USEFの場合も宇宙開発事業団の場合もほとんどダブるわけですね。これをどうするのかですね。将来的には何か統一した形態のものを目指していくのか、あるいは2つで競争してどちらかいいのが残るか。どういうふうな感じでしょうか。

 田中(宇宙開発事業団) 

   現状で申し上げますと、向こうでどういうことをやっているかというようなことは、我々も情報としては得ておりません。それで、向こうのほうでも、ここから先はなかなか難しそうだなというようなことを我々も感じておりますので、できればもう1つ先をいった、あそこよりもっといいものをやりたいというのが、我々の今の構想でございます。ということで、現状では、まだ一緒にやるとかいうようなところまではいっておりません。

 薬師寺特別委員 

   相磯先生がおられるから、多分大丈夫だと思うのですけれども、ロケットとか衛星というのは、外国では、特にフランスとかイギリスでは軍事秘密みたいなものになっているわけですね。ですから、その辺の矛盾があって、常にNASDAを社会的に公共的に支援をしていただかないといけないのだけれども、そのためには外に出さなきゃいけない。失敗もちゃんと説明しなきゃいけない。そういうふうになってくると、どこまでが情報公開をして、ちょっと機密費みたいな話と似ているのですけれども、どこまでが情報公開をしないのかというのは、中でちゃんとご議論をされているのでしょうね、おそらく、それだけです。

 田中(宇宙開発事業団) 

   はい。情報化という面だけでなくて、宇宙開発事業団の中で、全体で情報公開に対します議論の場といいますか、検討チームをつくっておりまして、そこでそういう議論を進めているところでございます。これには、情報関係にも非常に関係があるところですので、一緒にやっていっていると思います。

 八坂特別委員 

   追加ですけれども、大変しつこいようなんですけれども、先ほどの衛星開発体制の話ですけれども、USEFのやっておるものの先を行くものをねらうとおっしゃるけれども、今のお話にありましたように、USEFのやっているものの中でも、難しいところがあるのです。確かにそうなんです。だから、その先を行くというのは、一体どういうことなのか、よくわからないのです。つまり、ほんとにやれるかということです。それから段階的にやるという話ですから。それで、これは、きちっとしていただかないと、混乱のもとになる可能性があると思うのですけれども、つまり企業から見たら2つのシステムが混在している場合に、一体それをどう管理するかという問題です。同じ国の予算を使っておって、そういった体制でやるというのは、極めておかしな話ですし、それからひょっとしたら、ジョイントで同じ衛星をつくるなんていうことになったら一体どうするのですかということになる。これはぜひ、どういうふうにするか明確に示していただかないといけないと思います。

 田中(宇宙開発事業団) 

   現状では、まだ連携等は考えておりませんけれども、これまででもUSEFとは一緒に仕事をしたことは当然あります。それから、今、お話にございましたように、平成2年から今回進めてまいりましたところ、あの範囲というのは、宇宙開発事業団も完全にダブッているところでございます。それで我々、もう1つ先ほど設定をしたいというような話をさせていただいたのですけれども、自立分散、それからコラボレーションというような話があったんですけれども、我々の守備範囲ですと、なかなかこういうところまではできていない。それで、次の研究の段階でこういうところでもうちょっと目立ちたい。そこは先ほども書きましたように、オープンな場でやっていきたいと思っておりますので、そういう場でできることでしたら入っていただくのも考えられるかなというようには考えております。

 八坂特別委員 

   だから求めてはコラボレートするつもりはないということですか。

 田中(宇宙開発事業団) 

   現在、別々に踏んでいるもので、そういうやり方を考えるというようなフェーズでは一緒にやられることがあるかなというふうには考えております。

 長柄部会長 

   斎藤さん、何かありますか。

 斎藤理事 

   基本的にはダブらないようにしたいと思います。

 八坂特別委員 

   そりゃ、そうでしょう。

 斎藤理事 

   これでよろしいですか。

 八坂特別委員 

   わかりました、じゃ、そういうふうになさいますね。

 長柄部会長 

   森谷さん、どうぞ。

 森谷特別委員 

   先ほどから話題になっていますデータの利用ですが、これは、観測データの利用等に関する情報化はあまり入っていないようですね。情報の知識化活用という13ページを見ましても、あれは宇宙開発の中での情報化ということで、アウトプットの得られたデータの利用は、これもできる限り、インターネットを通して、広く広報誌を利用してもらえるということは非常に重要だと思うのですが、それは、また別の問題として考えるということなのでしょうか。この中にはどうも含まれていないと思うのですけれども。

 長柄部会長 

   これは末端から直してください。きょうのお話はNASDAの高度情報化推進部がおやりになっている、特に開発なり運用のところの情報化、IT化をしようという話であって、多分そういうことですね。それで、最初にありました地球観測のいろいろなデータなり処理したデータを、インターネットで外に流すとか、エンドユーザーにいかに流すかですね。まあ、その他に通信なんかいろいろありますけれども、そちらのほうの利用の話は、このシステムでは一切考えていないと、こう思ってよろしいのですか、これは別のものだと。

 田中(宇宙開発事業団) 

   ここにありますように、一番右の端っこのところの利用サービスというのも含めて、事業団としましては、全体、まとめていきたいと思っているのですけれども、例えば、地球観測にしましても、宇宙ステーション整備にしましても、これまでかなりのところまで走ってきておりますので、それとどうやって協調をとっていって全体的にまとめていくかというのは、我々から見ますと1つの課題ではないかなと思っております。現状では、インターフェースをとりながらというような表現しかできないのですけれども、頭の中には置いてございます。

 森谷特別委員 

   何か隅っこにちょっと出ているようで、むしろ別の問題として考えるほうがいいのではないかなという気もいたしますけれども。

 長柄部会長 

   ありがとうございます。
    あと、予定の時間まで10分ほどございますけれども、きょうはどうもありがとうございました。話題になりました地球観測ないし今の高度情報化まで含めまして、何か質問ないしご意見、ございましたらどうぞ。
    それから、先ほど紙が配られたと思うのですけれども、きょう発言された内容でも結構ですし、発言されなかったことでもよろしいのですが、質問なりご意見がありましたら、この1枚紙で書いて、FAXかeメールで事務局のほうにお送りいただきたいと思います。そうすれば、次回に整理した上で、先生方にお配りないしご説明できるのではないかと思います。
   では、よろしゅうございますか。では、事務局からちょっと報告がございます。

 事務局 

   お手元のほうに、計画2−6招聘等職員の出向元内訳という資料が配られていると思いますが、これは前回、佐藤特別委員のほうから、こうなられた件で、既に佐藤委員のほうにはお配りして了解は得られているのですが、これは宇宙開発事業団の回答ということなんですが、ちょっと参考のために、ほかの委員にもということで、今回お配りしたものです。内容については、見ていただければわかると思いますので、ここでは省略させていただきます。
    それから、もう1つ、計画の2−7という資料も配られていると思いますが、これは、この計画・評価部会のスケジュールの最新版でございます。3回目までは前回までに決まっておりましたが、4回目以降の日程がございます。4回目が6月11日(月)、5回目が7月5日(木)、6回目が7月18日(水)、第7回目が7月28日(金)ということになっております。8月以降はまだ決定しておりませんで、また決まり次第、連絡したいと思います。
    以上です。

 長柄部会長 

   次回は、宇宙開発事業団の最大のプロジェクトでございます宇宙ステーション計画の現状等について説明を伺うと同時に、先端技術開発、これはどのプロジェクト分野でも、プロジェクトを支える基盤技術開発の現状、将来計画、これについて、説明を伺うことにしてございます。ひとつよろしくお願いいたします。
    それでは先生方、本日はどうもありがとうございました。次回もよろしくお願いします。

――了――




(研究開発局宇宙政策課)

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