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宇宙開発委員会

2001/12/05 議事録
第47回宇宙開発委員会議事録

第47回宇宙開発委員会議事録


1. 日時 平成13年12月5日(水)14:00〜15:45

2. 場所 宇宙開発委員会会議室(文部科学省別館11階)

3. 議題
  (1) 地球資源衛星1号(JERS−1)の再突入結果について
  (2) 「我が国の宇宙開発利用の在り方」について
  (3) その他

4. 資料
  委47-1 地球資源衛星1号(JERS−1)の再突入結果について
  委47-2-1 将来型輸送系研究開発の展望
  委47-2-2 我が国の宇宙開発利用の目標と方向性(中間とりまとめ案)
    (抄)
  委47-2-3 先導的基幹プログラムの検討について(案)
  委47-3-1 宇宙開発の現状報告
  委47-3-2 第46回宇宙開発委員会議事要旨(案)

5. 出席者
  宇宙開発委員会委員長 井口雅一
  宇宙開発委員会委員 川崎雅弘
           〃 栗木恭一
           〃 五代富文
           〃 澤田茂生
  文部科学省研究開発局宇宙政策課長 芝田政之

6.議事内容

 井口委員長 
    おそろいになりましたので、第47回の宇宙開発委員会を始めさせていただきます。
    最初に、地球資源衛星1号(JERS−1)の再突入結果について、宇宙開発事業団衛星総合システム本部の柏木部長さんにご報告をいただきます。よろしくお願いいたします。
   

 柏木 
    それでは、ご報告させていただきます。
    経緯でございますけれども、経緯の1から3につきましては、皆様、既にご承知ということで、経緯の4から報告させていただきます。
    人工衛星の軌道に関する解析データにつきましては、各機関に対して、NASAが情報を提供しております。宇宙開発事業団では、再突入直近の12月3日夕刻以降、以下のタイミングで更新されたデータを入手しまして、再突入解析を行いました。下のほうに、時刻、予測範囲、可能性の高い日時等を書いてございます。再突入につきましては、4日の午前0時10分ごろ最終データを用いまして解析しております。
    軌道から人工衛星が消滅したことは、NASAからのデータにより確認するのが唯一の方法となっております。このデータは、軌道上から衛星が消滅したことを確認後公表されるため、再突入からデータ入手まで約1時間半を要しております。
    再突入の結果でございますが、12月3日午後10時28分ごろ、南極沖南大西洋上空、南緯67度、西経20度、次のページに、この辺に落ちたということで、ワールドマップで示してございます。この地点において、大気圏に再突入し、軌道上から消滅したことを、NASAの情報により12月4日午前0時10分ごろに確認いたしました。
    報告は以上でございます。
   

 井口委員長 
    ありがとうございました。
    それでは、ご質問、ご意見をお願いいたします。
    これは、すべて燃え尽きたのか、そうでないのかというのはわからないんですか。
   

 柏木 
    事前の解析では、ご存じのとおり、チタンのタンク2個程度じゃないかと推定されていますけれども、実際に落ちたかどうかは、確認はとれていないと思います。
   

 井口委員長 
    落ちたとしても海上なのですか?

 柏木 
    はい、海上だと推測されます。
   

 井口委員長 
    よろしゅうございますか。じゃ、どうもありがとうございました。
    それでは、次に、このところ続けております、我が国の宇宙開発利用の在り方について、きょうは、輸送系につきまして、東京大学の工学系研究科航空宇宙工学専攻の久保田先生に来ていただきまして、将来型宇宙系研究開発の展望についてお話を伺います。3時まではよろしいんですか。
   

 久保田 
    はい。
   

 井口委員長 
    じゃ、ひとつお話をよろしくお願いいたします。
   

 久保田 
    久保田でございます。
    私ども、今、こういう所属になりまして、前は工学部航空学科と言っておりましたのですが、大学院重点化で、工学系研究科航空宇宙工学専攻という、大学院が主になって航空宇宙工学をやっているところであります。
    きょうは、こういう場所を与えていただきまして、大変ありがとうございます。宇宙開発利用の在り方というと、とてもテーマが大き過ぎるんですけれども、今、私が考えているような、将来型の輸送系の研究開発ということでしたら、少し話せるかなということで、来させていただきました。
   

 井口委員長 
    大学の先生にお話をお願いすると、大体90分かかるという噂がありまして、きょうは……。
   

 久保田 
    もう今5分ぐらいで……。私の悪いくせで、最初の前置きのほうが随分長くなって、最後、あわてるという、そうならないようにいたしたいと思います。
    釈迦に説法のところがいっぱいありまして、そういうところは、できるだけはしょらせていただきます。
    これは、1994年に宇宙開発委員会の長期ビジョン懇談会報告書に出ております。宇宙インフラストラクチャーの展開のイメージです。当時の30年後ですから、今から25年ぐらい前ですか、地球と低軌道の間の輸送及び静止軌道、及び月・惑星までを含めて、ここまでを地球圏宇宙として、ここの宇宙活動を活発にしましょうというものです。
    そうしますと、宇宙活動をやる上で、輸送系の位置づけが問題になりますが、私は、宇宙活動を推進する上のキーテクノロジーが宇宙輸送系だろうと考えております。目標としましては、独自性、自在性がある日本独自の輸送系を確保する必要があるだろう。それから、同時に、国際的な競争力を持ち得る高信頼性、経済性の実現。それで、輸送コストを低減させなきゃいけない、これは大きな目標だと思います。ミッション柔軟性、どういうミッションに対しても対応できるような性格が必要で、安全性を増していけば、将来に有人輸送系に発展するだろうということでございます。
    役割、同じようなことを書いておりますけれども、今考えておりますのは、地球と宇宙ステーションの間の高頻度の往復。将来的には、月・惑星までということになるんでしょうが、その間の物資と人員の輸送が必要で、信頼性が高くて安全性が高く、低コストということでございます。
    同時に、ユーザーの拡大の要請といいますか、ユーザーの要請に応える必要があるだろうと。これは、宇宙科学・地球科学、実利用、先端技術の開発、同時に、有人活動もということが出てくるでしょう。これも99年ですので、ちょっと古くなっておりますけれども、手元にありましたのがこのぐらいでして、これは低地球軌道への打上げ能力を横軸にとりまして、縦軸はその打上げの価格です。大体、トン15億、1キログラム当たり150万円のラインがこれで、トン当たり10億円、すなわち1キログラム当たり100万円というラインがここで、大体の使い切り型のロケットはこの辺に入っている。これを大幅に低コストにしようというのがこのラインで、H−2Aの標準型が、トン当たり7億円ぐらいを目標と言われていたんですね。
    そうしますと、この辺のコストよりも、かなり低コストできている。それで、これをどんどん下げる必要があると思います。
    ボーイングの資料ですけれども、その需要と打上げ価格の関係は、相互に影響し合うんでしょうが、打上げコストを、低地球軌道に、ポンド当たりのドルで書いています。ここが1万ドルですから、1キログラム当たりにすると200万円ですね。200万円、1キログラム当たり、ここが20万円、1キログラム当たり2万円というところで、したがって、その需要を見てみますと、100万円かかっていると、ほとんど需要はない。逆に見ますと、需要がないので高くなるということになるかもしれません。1キログラム当たり10万円になると、少しは出てくる。1キログラム当たり約2万円になれば、そうすると、かなりの需要が見込めるということで、そうしますと、今のこの使い切り型ロケットですと、ここが1キログラム100万円ですから、今のことで言いますと、1キログラム2万円まで来れば、この辺のラインまで来れば需要は増えるだろう。需要が増えるからこそ安くなると、そういうこともあるわけですね。
    そういう意味で、輸送系の満たすべき条件としては、低コスト化をする必要がある。低コスト化をして、今の使い切りロケットの1キログラム7万円ぐらいと言っていたのを、その5分の1にするとか、あるいは10分の1ぐらいにすると需要も増えてくる。需要が増えて、また低コスト化ができると、こういうことになるだろうと思います。同時に、高信頼性、安全性、自在性、環境適合性を満たす必要があって、そうしますと、使い切りロケットでは、今のは大体頭打ちになってくるだろうから、そうしますと、完全再使用型の宇宙輸送システムに期待が高まってくるだろうと思います。
    それで、安くなればユーザも増えると言いましたけれども、とにかくユーザーを探さなきゃいけない。それには、各種の衛星を打ち上げる。だけども、これも数は、そんなに飛躍的に増えないとすると、新しい何かを探さなければということで、有望だと言われているのは、これも釈迦に説法ですが、太陽発電衛星ですね。それから、人が乗ることができるようになると、宇宙旅行ということにも利用されることになると思います。
    これはNASAの資料で、宇宙ステーションに物資を運ぶ方法、ちょっと見にくいのですが、LEOにまず運んで、それから静止軌道までこれを運ぶような宇宙輸送系もつくる。ここで、ここまでだけじゃなくて、もっと軌道上まで上げようということにして、新しい技術ができれば、キログラム4万円以下ぐらいに、これはゴールですね。4万円ぐらいでやれればいけるだろうということであります。
    太陽発電衛星システムも、これもNASDAの方の絵をお借りしましたが、静止衛星軌道に太陽電池を浮かべて、そこで発電した電気エネルギーを地上に送ってくる。これは、アメリカの5GW級の衛星のシステムですけれども、そうしますと、輸送コストは、年間輸送量を、年間千数百トンぐらいの資材を運ぶことができるようになれば、そうすると、輸送コストは、トン当たり二、三億ですから、キログラム当たり2万円とか、そのぐらいになってきて、これは、まさに最初の輸送量とコストとの関係に大体マッチしていまして、キログラム当たり二、三万円ぐらいで運べるだろうと。
    しかも、この太陽発電衛星ですと、かなり、このぐらいの物資を運ばなければいけないということで、ユーザーとしては、大きいということであります。
    アメリカの宇宙輸送系の方向は、今、スペースシャトルで、あれは部分再使用です。それと、使い切り型ロケットを併用していると思いますが、スペースシャトルは、かなりコストが高いので、この第1世代の再使用型システムにかわる第2世代を、2010年ぐらいまでに開発したい。そうすると、1キログラム当たり20万円という低コスト化、今の10分の1ぐらいにしたい。それから、安全性を向上させるということで、実験機のX−33、34、37というのをやっていますが、どうもX−33がうまくいっていないらしいということで、あまり先行きがよくわかりません。
    さらに、第3世代の再使用型というのも考えていて、これは2025年ということですので、キログラム当たりですが、また、10分の1ぐらいにしたいということを考えておると聞いております。
    ヨーロッパの宇宙輸送系の方向は、FESTIPという将来型のヨーロッパの宇宙輸送系というプログラムがありました。これですべての可能性を検討したようで、そのうちの幾つかを選んで、FLTPというFutureLaunchingTechnologyProgramを提案していて、それで、2020年に二段式の型を実現することを目標にすると聞いております。
    日本はどうかと。これも宇宙開発委員会で話すには、全く釈迦に説法ですが、こういうぐあいにしてやってまいりました。昨年、97年に再使用型宇宙輸送システム検討会というのをやりました。このときは、私が座長をさせていただいて、再使用型ロケットで輸送システムをつくったらどうかというのをレファランスプランにしたんですが、その後、事情もいろいろ変わりまして、技術的なこともありまして、2000年、昨年6月に秋葉先生が座長で、将来型宇宙輸送システムに関する懇談会におきまして、エアブリージングエンジンを搭載した初段と、再使用型ロケットを上段に載せる2段式のシステムをレファランスにしようということで報告を出しております。
    そういうことを踏まえまして、昨年12月の宇宙開発委員会の中長期戦略に、輸送系のマイルストーンとして入れたのがこれですね。このときは、私も総案をつくる役割でしたので、 かなり前向きに書きまして、まず2020年ぐらいまでは、使い切り型ロケットを、現在のロケットを主体にして、機能・性能を向上して、高信頼性を確保して、徐々に民間に移行する。で、2020年ごろまでに、完全再使用型の宇宙輸送システムの研究開発をやって、2020年ぐらいには実用化したい。それができると、使い切り型ロケットと、完全再使用型宇宙輸送システムの二本立てになるわけですが、役割分担をして、併用することになるだろうということでございます。
    そうしますと、この完全再使用型の宇宙輸送システムも含めて、高頻度の打ち上げになりますので、どうしても射場のことも検討しなきゃいけないということで、しかも、環境適合性も確保するということで、新射場設置も検討という案を出しまして、その結果として、少し時間的に、それではちょっと無理ではないかという議論もありまして、こういうぐあいになりました。使い切り型ロケットについては、特には問題はないんですが、再使用型宇宙輸送システムについては、短期的、約10年後には、まず基礎技術の確立をしましょう。長期的には、20年後ですけれども、その確立された基盤技術に基づいて、実用機開発を行って、輸送システムの革新を目指すというマイルストーンになりました。
    当面の目標、今後5年ぐらいですが、これでは、ここで言われたような短期的目標、長期的目標を達成するために、技術開発を広い範囲にわたってやって、そのためには、具体的には、システム設計技術とか、再突入機体技術とか、再使用型推進系技術とか、こういう基盤技術の確立を推進する必要があるだろうと。そのためには、宇宙関連機関だけではなくて、大学、産業界が結集する必要があるだろうということになりました。
    宇宙研の稲谷先生の絵をちょっと拝借しました。宇宙輸送系のシナリオの、輸送需要、今の輸送需要はこういうもので、将来は太陽発電衛星みたいなものを視野に置いて、それにあわせる輸送系を考えると、使い切り型ロケットを実用化していって、再使用型の研究開発から実用化、こういうシナリオだと思います。
    今、再使用型のシステムの研究開発がどうなっているかというチャートですが、HOPE−Xがここに記されていまして、これは、高速飛行実証試験までをやるというぐあいに伺っております。既にOREX、HYFLEX、ALFLEXは成功していて、その技術がここに生かされる。さらにその再突入技術等が、将来型の宇宙輸送システムにつながっていくべきものだろうという方向でございます。
    将来型の宇宙輸送システムは、そういう意味で、地上から宇宙まで飛行する、いわば宇宙航空機になって、再使用するということであれば、空気が利用できる大気圏内では、空気吸込式エンジンを使って、大気圏飛行に適した飛行機で対応する。空気が利用できない大気圏外では、ロケットエンジンを再使用して、運用性、信頼性の向上を図る。そうしますと、航空ニーズと宇宙ニーズの融合というのが図れます。そしてお互いのニーズを利用して、同時に輸送コストの低減と信頼性、安全性、運用性の向上が図れるだろうというわけであります。
    エアブリージングエンジン(空気吸い込み式エンジン)の利点としては、大気中にある空気を酸化剤にしまして、重量が大幅に減るだろう。これは、昨年2000年の検討会のときに議論したことですけれども、スペースシャトルでは、67%液体酸素を持っていかなきゃいけなかったので、その分、重量増になっている。それは空気吸い込み式でやると軽くできる。同時に、システムで作動する重体の圧力、温度がロケット式よりも低いので、安全性、信頼性向上が可能である。これは1段式のエアエブリージング式のことでございます。
    じゃ、なぜ再使用型宇宙輸送系研究開発に取り組むのかというと、今までのように低コスト、高信頼性、安全性、環境適合性と、こう言っておりますが、そういう特性に優れた輸送系を実現するものの1つなのでしょう。
    同時に、機体システムの高性能化を図る。それから、自在性のある日本独自の輸送系というのは、ロケットの使い切り型もそうなんですけれども、再使用型もそういう特性がある。と同時に、私は、これもまた強調したいのは、研究開発ポテンシャルの向上が見込まれるんじゃないだろうかと。機体をつくり上げて運用する、同時に、例えば大学の研究開発ポテンシャル、研究所のポテンシャル、研究開発ポテンシャルを上げることができるだろうと思います。これも稲谷先生のものですが、横軸に再使用性、運用性、経済性をとって、縦軸に液体水素の高性能化をとりますと、使い切りロケットから再使用型の輸送システムというのがこういうことで、こういう特性を上げると同時に高性能化も図れると。
    昨年の報告書で、レファレンス・コンセプトとして、二段式のシステムを提案しております。私自身では、最終的には一段式SSTOになるべきだろうと思っておりますけれども、それをいきなりやるのは非常にハードルが高い。
    そういう意味で、段階的に技術を確立していくという意味で二段式をとっていまして、スケジュールとしては2000年の第1段階、第2段階ぐらいで、そのうち、今のは、これも釈迦に説法ですが、エアブリージングエンジンを搭載した初段と、再使用型ロケットを搭載した上段の組み合わせで、途中でマッハ数6ぐらいで切り離して、初段のほうは地上に戻ってくる。上段は宇宙ステーションまで行く、こういうシステムですので、その初段のエアブリージングエンジンと推進ステージというのと、上段のロケット推進ステージがありまして、これをそれぞれの技術開発をしようというのが第一段階で、それの実証機をつくるのが第2段階で、それを組み合わせてフルスケールの実証機にするというのが第3段階、ここまでくると先が見えるわけで、この実証をすることによって実用機をつくわけです。その先は3段式なり……、こういうことで、これが2010年代から2020年代ということで、先ほどの中長期戦略のシナリオでは、2020年代にTSTOの実用機をつくるというのを考えております。
    完全再使用型システムの特徴というのは、まず宇宙航空機だろうというのが大きな特徴であります。高度は地上からも宇宙ステーションまで飛行する。速度はゼロから宇宙速度、マッハ数30ぐらいまで。向かい角度も0度から40度ぐらいの大迎角をやります。そういう意味で、巡航順風状態はないと私は思っております。時々刻々飛行状態が変わっていく。ロケットももちろんそうですけれども、飛行機ということからいいますと、航空機からいうとかなり違った特性がある。それを先ほどの航空ニーズと宇宙ニーズをうまく融合させるというところが、完全再使用型システムをつくり上げるキーではないかと思っております。
    飛行機でないことは、空力加熱という熱の問題であります。そのために、技術課題、これも、空力力学から有人飛行技術までということで、こういうようなものがあります。
    二段式ですと、高速でマッハ数6ぐらいで分離というのは、これは非常な課題ではないかと言われていまして、この辺はまだ実証はできていないので、こういうのはこれからの課題です。
    そこで、完全再使用型の輸送系を実現するためのアプローチとしては、宇宙3機関、これから多分統合されるという話がありますが、そこでの活動の中核になる。同時に全国的な取り組みをしたいということで、全国的なネットワークをつくる。大学と企業間との連携、これが必要でして、これは宇宙研の棚次先生のほうで考えているATREXエンジンですね。これは初段のエンジンに適してかどうか。同時に、旧工業技術院でしょうか、で、プロジェクトがもう完了しましたが、HYPRという、超音速/極超音速推進システム、これもマッハ数5まではワリアブルサイクルにしてできるエンジンです。これも初段のほうにはなるかもしれない、こう思っております。
    そこで、私も大学におりますので、大学がこのシステムを研究開発する上でどういう役割ができるかということを今考えております。大学の使命というのは、人材育成をして研究開発、教育です。人材育成なんですが、同時に宇宙活動を教育に使う。その教育に使うことによって、さらに宇宙活動というのはこういうすばらしいものがある。で、若い世代の科学技術の進歩に役立てる、こういう役目もあるのではないだろうか、こう考えております。
    研究開発の方向、これも先ほどの報告書がありまして、具体的な検討を始める。同じことを言っています。昨年の6月にワークショップを行いまして、将来型宇宙輸送システムに関しまして議論いたしました。そこでは、さっき言いましたように、宇宙3機関を中核にして、企業、大学を結集した全日本的な体制をつくる必要がある。と言っている間に、宇宙3機関の連携で、再使用型の運営本部が設置されましたが、同時に、3機関統合の準備に入るということでしょうか。
    昨年の宇宙科学技術連合講演会で、こういうぐあいに宇宙関連の機関と大学と研究機関、企業がつながるような研究体制と組織づくりをしなければいけないという提案をいたしました。オールジャパンで、その中で大学も積極的に協力することになったわけです。設計までしたい。設計して実機をつくるようなところまでも、つまり、紙だけではなくて、実機までいきたい。そうすると、設計のネットワーキンググループをつくらなきゃいけないというのがこの懇談会でも言われておりまして、それを図に書いたものがこういうもので、それぞれの得意分野で協力しようということであります。
    そうしますと、このレファレンスコンセプトの2段式の機体を考えたときに、いろいろな設計があります。飛行経路設計、飛行制御設計、機械強度設計などがあります。ここで3機関、企業、それから大学という役割を考えると、大学がやれるところはかなりあるだろうということで、そうしますと、こういう多層構造にして協力するのがいいんじゃないだろうか。同時に、地域別のブロックをつくって、各ブロックで具体的な活動をしようと。これは大学について書いたもので、全国にいろいろな大学がありますので、そこの知恵を結集しようと、こういうことを提案しました。
    したがって、大学においてはそれぞれの基礎研究をやるんですが、まず分野グループというのがございます。空力とか、構造とか、制御、そういうグループの共同研究、設計活動、同時に、地域別ブロックで研究設計活動をやろうと、こういうことで、実は私がそれを取りまとめる役目になっておりまして、地域別ブロックを北海道、東北、関東、中部、関西、西部と分けまして、機械学会、航空宇宙学会というように見ておりますけれども。支部長というか、ブロック長にこういう先生方になってもらいまして、まずブロックの中で具体的な活動をしようということで、今年の4月の日本航空宇宙学会の年会で、まず各ブロックの紹介をしました。さらに、10月の宇宙開発技術全国講演会でも同じように分野別の話をしました。そういう状況です。
    各ブロックでいろいろな人がいるものですから、まず、どういうことをやっているかというのをピックアップしました。機体と軌道の最適化研究をやっているのが何人かいまして、これは東京大学の鈴木真二先生のところですが、ここでは、こういう機体を考えて、これは単段式で機体と軌道を最適にするという研究をしています。そうしますと、その結果としては、どうもエアターボラムからすぐにロケットに切りかえた方がよさそうだというような結果が出まして、スクラムはないんですね。
    ところが、日本大学の石川先生のところのグループでは、同じように単段式の最適化研究をやっていまして、これは遺伝的アルゴリズムに近いものですが、基本形状はこういうもので、軌道を見ますと、これはエアターボラムからスプラムジェットに切りかえて、さらに再使用型ロケットに切りかえると、こういうのが出てきました。というぐあいに、まだいろいろ研究段階で、最適化と言っても、それぞれ最適化があります。これはこれから研究していくわけです。
    二段式ですと、これは私どもの研究室の学生が、上昇のシミュレーションをやりまして、SSTOとTSTOの性能比較をしたのがあります。こういう飛び方をして、この赤いところは、1段目と2段目が結合して飛んでいるところで、高度28キロぐらいで分離して、分離した後、1段目は地上に行って、2段目が上昇をしていって宇宙までいくという、こういう上昇の軌道をつくっています。
    もう一つ、北海道では非常にユニークな活動をしておりまして、ハイブリットロケット研究会というのをつくっています。これは秋葉先生が種をまかれたそうですけれども、あそこには北海道大学と北海道工業大学と室蘭工業大学、その3つの先生と学生がチームを組んで、それぞれ分担をして、北海道大学ではハイブリッドロケットの開発をする。北海道工業大学では、誘導・制御、これは自動制御用のGPSを使って、こういう開発をしている。室蘭工業大学はパラフォイルを使って、機体回収技術をやっている。しかも、これを学生の教育に使っているということであります。
    もうそろそろ終わりにしたいんですが、宇宙輸送系が人類発展にどう貢献するか、ちょっと大上段にふりかぶっています。宇宙開発がどう貢献するかと読みかえてもいいのかもしれませんが、宇宙輸送系でいいますと、好ましい、宇宙輸送手段を提供する。これは先ほど言いました。それから社会経済基盤拡充に寄与する。実利用から宇宙産業を開拓するということに寄与するだろう。それから、人類の英知の進展に寄与というのは、技術のチャレンジ、バイオニア・スピリットの高揚とか、それから、若い人に希望を与えるというようなことが、輸送系にもできることだろうと考えていまして、そうしますと、完全再使用だと、どうしても最終的には人も運ぶ必要があるわけで、宇宙活動をしようと思うと、人を運ぶ必要がある。それには、これは宇宙インフラストラクチャー研究会という、NASDA、ISAS、NAL、それから大学の関係者でつくっている研究会で、昨年の5月にこういう報告書を出しておりまして、有人ということを考えますと、まず地球低軌道での活動の実施、それから、月面有人拠点と科学研究・実利用活動、それから、民間主導の有人活動、将来的には火星への有人探査、こういうことを考えて、世界の有人宇宙活動を見ますと、アメリカも既に戦略計画をやっていますし、ロシアもやっている。ヨーロッパもやっているし、中国も近々やるということで考えていまして、日本でも、将来的にはこういうふうなことが必要かと思います。
    有人宇宙活動を展望しますと、なぜ有人宇宙活動をするのか、これもまた課題でありますけれども、宇宙活動をすると、いろいろな意味で、無人ではやれるんでしょうけれども、人間の存在が必要、その場に行くということが必要。同時に、地球から宇宙に出ていくということで新しい地球観ができる。新しい文化の創造も可能だろう。新しい産業の創出、これも無人ではなくて、有人でやることが必要である。
    そういう意味で有人ということを考えますと、再使用型宇宙輸送系実現が必要で、それによって可能ということで、最後になって、有人というのを出しましたが、再使用型の宇宙輸送系の実現が有人宇宙活動の次期の展望にもつながるということで、一応私の報告を終わりたいと思います。
   

 井口委員長 
    どうもありがとうございます。それでは少々時間をいただいて、議論をさせていただきます。どうぞご質問、ご意見ございませんか。
   

 五代委員 
    久保田先生のお考え、私も全く同感でございまして、同じような動きもしています。HOPEというのだけど、皆さん紙の上の研究ばっかりしていまして、それで、やっぱり実フライト、実証というのでやってだんだん積み上げていかなければ自信もつきませんので、それで、さっきのOREX、HYFLEX、ALFLEXまで来た。で、来年から少しスケールは小さくなりますけれども、高速気候実証というのをクリスマス島とスウェーデンでやると。
    それで、実はその後にHOPE−Xがあったんですが、これは予算その他の、まあ、H-2Aにお金を集中するということで、開発凍結状態にあるんですね。実際にはHOPE−Xで設計が進んだとか、そういうことだけでなくて、実は井口委員長も御覧になっていますけれども、例えば実寸の機体の一体成形、複合材の一体成形、低温で安く作るという、今までから見ると、10分の1、5分の1で作るというような技術もあるんですね。
    ですから、そういうようなデモンストレーターというのが非常に重要で、それをやることによって、みんな自信になっていって、紙の上だけでやっていると、積み重なるのは紙の厚さだけでして、デモンストレーターをやることによって積み重なる、そういう信念なんですね。
    だから、HOPE−Xそのものか、まあ、それは別にして、やっぱりデモンストレーターを着実にやっていくシナリオ、そのときには、当然、大学、研究所のいろんな方が全部参加できる、あるいは民間の新しいアイデアが参加できる、企業が参加できる、そういう形態が非常に望ましいのであります。そこに行く基盤はほとんど今できているんですね。デモンストレーターをさらに進める。
    その辺で、日本と実はヨーロッパと比較しますと、ヨーロッパはその辺のデモンストレーターはほとんどなくて、いつも我々はアリアンロケットをうらやんだりしているんですが、彼らから見ると、再使用系で、少しずつだけどデモンストレーターをやっているのを非常にうらやましいと思っている。
    私はその辺を是非推進するには、オールジャパンでぜひ久保田先生を中心にやっていただきたいと思うんですが。
   

 久保田 
    ありがとうございます。
    全くおっしゃるとおりで、デモストレーターというか、実証しながらいかなきゃいけないことは、みんな切実に考えていまして、別に、かつての設計の領域とかも、単独じゃなくて、やはり作りながらいくという思想ですね。
   

 五代委員 
    さっき申しましたけれども、いろんなアイデアでいろんなところとやることによって、従来の例えばこういうものでも、試作機から1けたぐらい下げたものでもできると思うんですね。日本である種のベンチャーがやっているような複合材のものを活用するとか、あるいは陶芸家の先生にセラミックスを研究してもらうとか、そういういろんな、どこか限られた、単に1つの主体でやるんじゃなくて、そういう広くやれば、いいものはわりと安くできるんじゃないか。アイデアも出てくるんじゃないか、こう思うので、それには大学がやっぱり頑張っていかなくちゃならんですね。
   

 久保田 
    そうなんですね。我々議論しているときもそうなんですが、例えば、じゃ、それはどんなふうな形態でやろうかと。金はどこから出るのかというと、今のところないので、自分で持ち出してやろうということになっています。
    例えば、これスケジュールそのままできるかどうかわかりませんけれども、第1段階の中でもそれぞれの技術の実証をする。第2段階というのは、まさにもう実証機。それでもってやっているんですね。
   

 五代委員 
    さっき分野別と、それから規模別の、ああいう研究ブロック、それでネットワークを組む、これは、はいと命令して、すぐできるものではなくて、自発的、それから時間もかかる。あれは、確実に是非強力に進めて、皆さんが元気になるような。
   

 久保田 
    そうなんですね。おそらく歩調はいろいろずれてきたりするんですけれども、やはり推進しているところがやっていますと、みんなついていくんだろうと思っています。
    この前、実は、さっきの北海道の話は、北海道でもそういう話をしたんですね。室蘭工大で話をする機会がありましたので、室蘭工大の学長先生も、それは非常にいいことだと。学生の卒業論文とか修士論文とか博士論文とか、そういうにもなるのかと言われて、もちろんそうでして、それも修士論文を紙だけで、要するに理論だけでやらなきゃいけないわけではないんです。卒業論文もそうですね。最初は作ってみるということても、これはテーマとして採用するということも言っていまして、それで、全日本という中には、そういう学生も含めています。
   

 五代委員 
    そうですね。北海道は伊藤先生が行かれてから、去年ぐらいこういう活動が広がっていて、ですから、九大もそうですが、大阪が今度東先生のところでやっていこうということで、それを推進するということですね。
   

 久保田 
    そうです。秋葉先生あたりから実はしりをたたかれているのが実際なんですけれども。
   

 栗木委員 
    久保田先生も私も航空の出身なんですが、航空の歴史を見てみますと、ライト兄弟が飛んだら、いきなり海外旅行が出てきたわけではなくて、その間に約半世紀を経ているんですね。したがって、今後、ちょうどライト兄弟に当たるようなものが仮にデモストレーションとしてできても、やはりこの間にいわゆる郵便事業であるとか、そういったものでじわじわと商業活動に効果はあったと。そういうような、いわゆるこれが大衆化していくための、あるいはポピュラーになって、実質的に値段が下がるための標準的なロードマップというのは、どのようにお考えですか。
   

 久保田 
    具体的にはちょっとまだないんですけれども、実際に最後唐突に終わる、いきなり実用化に行っているんですけれども、今言われた郵便事業みたいなのは最初の活動で、最終的には人を乗せて宇宙旅行ということになるんでしょうけれども、じゃ、間にどういうことをやらなきゃいけないか。これには残念ながら、今ちょっと具体的に出ません。ただ、やらなきゃいけないということは考えております。だから、おっしゃった商業化のロードマップというのは、これから考えたいと思います。
   

 川崎委員 
    今のロードマップとこの技術の関連ですが、NASAのX30シリーズはずうっといって、大体今のところあんまり先行きないわけですね。この先生の書いておられるエアブリージングエンジンという概念は、X33も使っていたんでしょうか。
   

 久保田 
    いや、X33は……。
   

 川崎委員 
    X37までの間で。
   

 久保田 
    34は、エアブリージングだと思います。主体は33ですね。あれはロケットですね。再使用ロケットで、聞くところによると、コンポジットの低温タンクを作るというところが画期的だったにもかかわらず、そこでうまくいかないというのが大体のところじゃないかと思うんですがね。
   

 川崎委員 
    あれでおよそ10年ぐらいかかっているんですね、スタートから始めて。そういうことを考えてみると、先生のこれは2020年ぐらいに実用化というと、相当の加速をしないと、キーコンポーネントのエンジンの実証がなかなかならないような気がするので、ほかのアイデアを、例えばスクラムエンジンなり、いろいろなアイデアがあるとは思うんですけれども、その辺で何か新規性のものがパッと出てくるというような可能性はないんですか。
   

 久保田 
    今は、エアブリージングのほうは、エアターボラムですね。そこでスクラムでこれを入れるか、あるいはスクラムエンジンをやめてやる。2段式のスクラムジェットは今のところ考えてないんですね。だから、エアターボラムの階層型ロケットがうまくいくかということにかかっているんじゃないかと思うんですね。
   

 川崎委員 
    そうすると、これは完全に一体型でいくタイプを考えておられて、親子、親亀の上に子亀を乗せてという方式はあまり考えないんですか。
   

 久保田 
    これはそうです。1番目と2番目はそれぞれの技術をまず確立させる。第3段階になったところで、親亀、子亀を組み合わせさす、そういうふうにしようと思っています。
    ですから、おっしゃられたように、それも実は議論がありまして、これは一本道でいけるかどうかというのは難しいわけですね。だから、実験のプリロードというのも最初のうちは考えなきゃいけないですね。これを一本道で決めちゃいけないって思っていたので。後で事業的のときにもう核心に詰めていかないと、いつまでたってもプリロードしていると進まないで、難しいところかなと思っています。
   

 川崎委員 
    やるとなったら、しゃにむにこれでやるということしかないですか。
   

 久保田 
    もう一つの方法はそうですね。アメリカでさえあんなに手こずっているのに、こんな歴史に残る計画で大丈夫かという、確かにそれは危惧はないかというと、そんなことはないですね。でも、一般に言うと、加速させるといけないということだと思いますね。
   

 川崎委員 
    先ほど五代さんのおっしゃったデモンストレーターというのはそういう意味だろうと思うんですね。少しずつ積み上げていくということですね。
   

 五代委員 
    さっきX33の複合材がまずかった。あれは作りものではありませんけれども、変な格好をしていて、設計もよくないですよね。ですから、あれが最初案が出たときに、これで平気なのか、専門家サイドの中でも結構あったんです。だけども、実際の形をああいう格好で作っていったわけで、やっぱり威厳のある格好でと。
   

 井口委員長 
    サンプルは何か久保田先生が……。
   

 五代委員 
    極低温の複合材のタンクなんかは、そんな大規模じゃないけど、NALが試作しているんですね。
   

 久保田 
    ええ。
   

 五代委員 
    ああいうようなものももう少し進めるとか、あるいはデモンストレーターに何かするとか、目標を持ってやれば、もっとずっと加速されると思うんですね。普通、エンジンの方ばっかりつい見ていましたが、複合材のタンクなんか、そういう可能性があると思うんです。
   

 井口委員長 
    ほかに何か……。
    1つ伺いたいんですけれども、私は、大学を終わってから一般産業で厳しく金のことで鍛えられたものですから感じるんですが、計画というと、ここまで行くのに、幾ら開発費がかかるか。お金も一緒に出てこなければ、計画じゃないと言われていたものですから、当然、2000年の6月に出された将来型宇宙輸送システムに関する懇談会報告書には、ここまでには幾らって出ていますね。
   

 久保田 
    出ておりません。実はそれは昨年の中長期戦略のときに、実は幾らかかるのかという草稿をつくったときに考えました。かなり多額になるんですね。ちょっと言うのも恥ずかしいぐらいの。ですから、でも、それはまあ、それぞれ関係者は、今つかみでしか言えない面がありまして、やりながら把握していくしかないと思っております。だれもこれには幾らとはっきり言える人はまだ出てきてないです。
   

 井口委員長 
    もうそろそろ時間になりますので、ほかになければ、これで終わりたいと思います。久保田先生、長時間にわたりいろいろお教えいただきましてありがとうございました。
    それでは、その次に芝田課長さんに「我が国の宇宙開発事業の目標と方向性」について、まず、我が国の宇宙開発事業の目標の方向性の中間とりまとめができましたので、お話をいただきます。よろしくお願いします。
   

 芝田委員 
    資料の47−2−2でございますけれども、これは中間とりまとめ案と書いてございますが、最後に第4章というのが、6ページ以降空白でございますが、そこはついておりません。第4章は、今まで新機関の各分野の活動をチャートで、矢印で示しておりましたけれども、ああいったものを含めて記述しようというふうに思っております。そこはまだちょっと整理ができておりません。
    前回の宇宙開発委員会で、五代委員の方から新しい構想もご紹介いただきましたので、その辺も今日御議論いただいた上で、第4章をまとめたいと思っております。4章の前のところまで文章化しましたので、今日は御確認いただければと思うんですが、まず1ページの1の宇宙開発利用の理念というところは、これはもう幾度が御説明したので、その先の3行がコアでございますが、我が国は人類の繁栄と文明の発展に各国とともに貢献し、無限の可能性を秘めた宇宙を、国民のみならず人類共通のフロンティアとして最大限に活用することを目指す、こういうふうにしてございます。
    2番が、我が国の宇宙開発利用の目的と基本方針で、まず目的といたしましては、総合科学技術会議の議論も踏まえまして、1国及び国民の安全の確保、2国民生活の豊かさと質の向上、3知的資産の拡大というふうにまとめております。
    中側のほうは、後半のところはちょっと省略させていただきました。
    2ページ目をごらんいただきますと、(2)で、我が国の宇宙開発利用の基本方針ということになります。この辺は、今回新しい考え方を幾つもあると思いますので、ちょっと詳しめに御説明したいと思います。
    まず、(2)の前書きの部分が現状認識等でございますが、第2からごらんいただきますと、中長期戦略でも言っておられるように、宇宙開発は投入してきた資源量に比べて活動範囲が広がり過ぎていた傾向があることから、経験、ノウハウの蓄積は不十分であり、実利用を促進するためのシステム化について、なお改善の余地がある。また、一部の宇宙関連技術は、世界水準に達しているが、全体として見れば、信頼性を含む技術力の欧米との格差は歴然としている。それについて、国の厳しい財政事情についての記述がございます。
    最後のパラグラフをごらんいただきますと、我が国としてはこのような状況のもと、宇宙開発事業に係る研究開発が長期のリードタイムを要することに鑑み、今後30年程度の展望の下で、以下の基本方針に則り、我が国らしい特色のある宇宙開発利用の実現を目指す。
    1が、科学技術創造立国の立場から戦略的分野として推進ということです。
    次の3ページを御覧いただきますと、最初のパラグラフにございますように、宇宙開発利用は、国の存立基盤の確保、産業の発展・国民生活の豊かさと質の向上の実現、知的な国際貢献などにおいて大きな役割を果たす。宇宙開発利用は、先端科学を結集する総合的な科学技術分野であり、さまざまな分野の先駆けとして、それぞれのブレークスルーにつながるなどして幅広い技術革新の進展を促すものである。
    これらの観点から、今宇宙開発利用を科学技術創造立国の実現のための戦略的分野として国が継続的に投資していく必要がある。
    最後の3行は特に大事だと思っているんですが、その際、我が国は宇宙開発利用の経験が浅いことを踏まえ、失敗のたびにその取り組み姿勢が動揺することのないよう、確固たる信念のもとで宇宙開発利用を推進すべきであるというふうにしてございます。
    2が、世界トップクラスの技術力の獲得による先導的地位の確保と世界最先端の宇宙科学の推進による知的存在感のある国の実現で、ここは最初のパラグラフの最後の2行ぐらいに書いてございますように、トップクラスの技術力、信頼性を獲得し、国際社会から目標として評価されるに足る先導的地位を確保することと、もう一つは、世界最先端の宇宙科学を推進することにより、人類共通の知的資産の拡大に貢献し、国際社会において尊敬される国となり、国民が世界に向けて誇りを持つことができる国を目指す。
    3が自律的な宇宙開発利用活動を転換するための技術力を独自に保持ということで、これは最後の3行でございますが、他国に依存しないで宇宙開発利用活動を自律的に展開するための必要な技術力を独自に保持することを目指す。
    4ページが、国際協力の推進ということです。冒頭にありますように、宇宙開発事業は、本来、全地球規模のものであり、国家の枠を超えて各国が協調して人類の利益のために永続的に取り組むべき活動分野である。
    それから、中ごろにございますが、また、宇宙開発利用は、比較的大規模な経費を必要とし、リスクの高い活動であることから、その推進に当たっては、自律的な活動を損なわない範囲で国際的なコストとリスクの分担が必要である。
    最後の行にございますように、我が国と関係の深いアジア地域に対する特別の配慮を必要とするというふうに書いてございます。
    3は、我が国の宇宙開発利用の方向と新機関の役割でございますが、まず、(1)の基本的な考え方で、第3パラグラフにございますように宇宙3機関の統合に当たって、宇宙開発及び航空科学技術の中核的機関を目指すべきであるということをうたっております。
    それから、最後のパラグラフにございますように、最後の2行ですが、国においても各省庁がそれぞれの行政目的を効率的・効果的に達成するため宇宙開発利用を積極的に推進することが大切である。宇宙開発利用への公的投資の拡充が図られ、安全保障・危機管理、通信・放送、国土管理、交通、気象、地球環境、農林水産など多方面において公共サービス機能を向上させるとともに、民間サービスの発展、ひいては広範な宇宙産業の発展が期待される。関係省庁等によるこのような多角的な宇宙開発利用を促進する政策の展開が必要不可欠であるということです。
    (2)新機関の機能として、まずコアとなる研究開発の推進ということが1つは大切でございます。
    3番目にございますように官民の宇宙利用の拡大に資する技術開発の推進といったようなことも出ています。
    それから、社会との連携・協力ということで、この中には黒ポツで下から2つ目にありますように、利用の発掘というところも記述しておきました。
    それから、あと、国際協力、人材養成というふうに中間まとめをまとめてみました。
    以上です。
   

 井口委員長 
    どうもありがとうございます。3章までですけれども、きょうこれでご了承をいただければ、明日の統合準備会議にこれを資料として出すのでしたか。
   

 芝田課長 
    統合準備会議の方はこれを受けまして、独自にまた。
   

 井口委員長 
    いかがでしょうか。
   

 澤田委員 
    私もこれで結構だと思いますが、1つ、お願いというか、将来の課題なんでしょうけれども、国際協力の推進という意味で、1つは、宇宙開発というのは国威の発揚というような分野でとらえられた面があるんですが、軍事とか産業のための開発というのと違って、まさにここで言われている全人類的な地球規模での開発というのが必要になってくる。それはそれぞれの国で認識はしているんでしょうけれども、どういう形でやるかという仕組みというのがないですよね。少数の国の国威発揚の1つのあれとして任しておいていいものではないはずでしょうし、どういう仕組みが作られるのかどうなのか。日本の最小型ロケットをやるにも、各地方でどこか作って、またいろいろな疑問が出てくるというように、これは大変なのかもしれないけれども、それだけに全人類がそれぞれが持ち寄って、地球をどうするかということを考えていくということの1つの核にできればいいなという、言ってみれば、まさに宇宙の平和利用の進路みたいな話なんだろうと思います。何かそういうものは国際的なそういう仕組みというのはできないんだろうか。だれかが言い出さなければなかなか動かないだろうし、また恐らくそういう必要性も感じているんだろうと思いますけれども、リーダーシップをだれがとるか、いろいろ難しい問題があるかもしれないけれども、国際協力の推進ということでいろいろ書いてあるけれども、具体的にというと、はっきりしませんねということがあるような気がするので、それは何をということを今、決めるべきだと思いますが、ねらいとしてはそういうことをねらっていただければ大変ありがたいなという気がいたします。
   

 川崎委員 
    私も澤田さんのおっしゃったことには賛成なんですが、国連平和利用委員会という、宇宙平和利用委員会みたいなかなり政治的なスタンドプレーの多いところは別として、私自身は、どちらかというと具体的にIGOSとかこの間も御報告のあったCEOSとか、具体的に既に地球観測とか気象観測とか、そういうのは動いているんじゃないかなという気がします。
    それから、もともと日本のロケットのスタートは、IGYというインターナショナルグローバルイヤーだったと思いますが、国際地球観測年が契機だったので、そういう意味ではおっしゃる点はあるので、もし何か足りなければここへ、事例的に入れればIGOSとかCEOSであるとか、そういうものを1つ入れれば、かなりイメージは明確になるんでしょうか。
   

 澤田委員 
    いろいろな分野でのものをね。それと、その成果の全地球的な利用ということ。
   

 川崎委員 
    ええ、全地球的な利用というのは。
   

 澤田委員 
    そういう利用ができるような仕組みをどうするのかということも踏まえて、だれか金を持っているとか知恵があるところが、何かたまたまやっていますねという世界が今、ちょっと多過ぎるのではないのかなと。
   

 栗木委員 
    今、川崎先生がおっしゃったように国連も動いていますし、ただ、CEOS、IGOSは、もう少し自国に目が行っているような。確かに連合としては動いていますけれども、そのベネフィットはどうなっているかというと、やはり自分を見ているというところがあって、これを、宇宙を直接やっていない国へもどうこれを流布しようかというところが、少しまだ評価が浅い。国連がやっとそこは動き出したので、国連の弱さというのもありますけれども。
   

 澤田委員 
    ですから、国連の中でそういうのを日本が少しサポートして。
   

 栗木委員 
    おっしゃるとおりだと思います。
   

 澤田委員 
    いろいろ問題を投げかけていくという動きがね。
   

 栗木委員 
    ええ。外向きな話にどう発展させていくか。
   

 澤田委員 
    そうですね。
   

 栗木委員 
    キーワードとして入れるのだとすれば、国連とかいうことで。
   

 川崎委員 
    CEOSは別で、例えば地球観測年みたいなというのは1つのモーメンタムとしてあったとは思うので、いけるかなと思います。あれはデータは全部各国にあげたんですね。そういう意味では構想を先導するというのでは弱いですから、国際視野に立ったプロジェクト構想。
   

 井口委員長 
    現実の問題として日本と二国間でいろいろありますね。韓国、ロシア、ESA、もちろんNASAはありますし、そういったところと一緒にやろうという話し合いが進んでいますね。あれをうまく利用しながら統合、組織化していくということも考えられるので、宇宙に関する国際協力戦略というか、それを少しちゃんとした課題として検討してはどうかと事務局とも話しております。
   

 澤田委員 
    是非、そういう方向で取り組んでいただけさえすれば、私はここにどういう表現というのはございません。
   

 五代委員 
    今、そこに絡んで、我が国と関係が深いアジア地域に対することだけれども、アジア・太平洋地域だと私は思うんです。どっちが含まれているというのか。
   

 栗木委員 
    そうですね。ここのキーワードは中長期戦略にもアジア・太平洋という格好で赤道直下のいろいろな諸国に対しても、そういうニュアンスはありますね。
   

 井口委員長 
    ほかはよろしいですか。
    それでは、4章がついておりませんので、4章によっては、また前の修正をするということはあり得るということを条件に、一応3章までお認めをいただいたとさせていただきたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。
   

 川崎委員 
    結構です。
   

 井口委員長 
    では、そのようにさせていただきます。どうもありがとうございました。
    それから、その次に、「先導的基幹プログラムの検討について」、芝田課長から、お願いします。
   

 芝田課長 
    前回の委員会で、五代委員の方からフラッグシップミッションという構想を御紹介いただきまして、井口委員長等もその辺についていろいろ御意見をいただきましたので、それを踏まえて今回、事務局の方でこういう資料を作りました。
    ここに書いてあることは重点化というか、今後の特に新機関が発足した際の重点化の1つの手法としても使えるのではないかということでまとめてございます。ただ、重点化といいましても、ただ単に既存のプログラムを見直すということだけではなくて、新しい予算の投入があった場合には、それを重点的に使うプログラムというようなとらえ方も可能性としてはあると思っております。11月22日に総合科学技術会議の宇宙開発利用専門調査会がございましたが、尾身大臣の方も、必要がある場合には予算を増やすこともあるんだという御発言あったと記憶しておりますので、そういったことも踏まえまして、既存のプログラムを削って重点化ということだけではないという広い可能性を持ったものというふうにとらえております。
    趣旨でございますが、既存プロジェクトや構想中のプロジェクトを考慮に入れまして、世界の宇宙開発を先導する我が国の地位を確保するにふさわしい、国全体としての宇宙開発利用を促進するための「先導的基幹プログラム(仮称)」を構想する。
    このプログラムの具体的な考え方としましては、20年、30年の長期的な宇宙開発利用活動の展開を視野に入れつつ、10年ぐらいのところで一区切りして、一定の成果が出るようなもの、そして、国民にもそれがわかりやすいものという観点でプログラムを考えたらどうかということでございます。
    2番目が、欧米と伍していける競争力を向上し、産業の発展に資するものであること。
    3番目が、産業界、関係省庁と新機関との円滑な連携・協力体制を構築できること。
    4番目が、これは総合の方で5原則という形で示されておりますが、重要な分野を精選して、集中強化するものと、重点化ということでもございます。
    それから、利用まで、特に実利用まで視野に入れた研究開発・利用開拓が一体的となったものであること、統合方式としていること。
    それから、国民から幅広い共感が得られること。
    国際協力の戦略的発展が考えられること。
    さきにもございましたアジア・太平洋地域の発展に寄与し得ること。
    こういった観点で構想してはどうかということでございます。プログラムという名前を打ってございますのは、構成要素として幾つかのプロジェクトが含まれておるべきであろう。そのプロジェクトは1つの分野だけではなくて、できれば複数の分野にまたがっているものの方が望ましい。例えば地球観測とか情報通信とか、分野横断的なものである方が望ましいのではないかと考えております。
    具体的にプログラムをどう選定したり、あるいは立ち上げていくかということについては、中須賀先生のプレゼンテーションにもございましたように、各コミュニティーからアイデアを出してもらって競ってもらうというやり方もございましょうし、宇宙開発委員会でも議論していただくということもございましょうし、いろいろ可能性があるので、ここでは、そこはオープンにしてございます。
    以上でございます。
   

 井口委員長 
    どうもありがとうございます。いかがでしょうか。
   

 五代委員 
    前回は割と急にお話をしましたけれども、皆さんの前向きな賛同を得られまして、大変ありがとうございました。事務局も急にあれしたのにまとめていただき、ありがとうございます。
    こういうことをやるときにあと重要なのは、人なんです。こういうプログラムを、これは何人が集まってどうだというような、そういう前向きで、幅広で、よく考えた、そういう人たちがよく案を作るというのが重要ではないか。私は、最初1つがぽんと決まるとなかなか考えられない。まだ先、時間がないわけではないでしょうから、コンテストというとなんですけれども、こういう考え方なり何なりに基づいて、かなり議論して決めていく必要があるかな。ただし、いつまでも議論ばっかりしていてもしようがないでしょう、その間、進みませんから。私はそういう考えです。是非私がやる、ある分野なら私が何とかという、そういう人が大勢出てくることを望みますけど。
   

 井口委員長 
    前回、五代委員から、あのときにはフラッグシップという名前がついていましたけれども、ここでは仮称として先導的……。
    唐突に出された感じはしますけれども、皆さん、大体こんな方向で考えていたときにタイミングよく五代さんが出されたという。
   

 五代委員 
    もうそろそろいいかなと思って。
   

 井口委員長 
    決して無理してということではないと思います。
   

 川崎委員 
    今、五代さんのおっしゃったのは、私はこういうのをやるのは1人の人が決めたら、かなりその人に自由に腕を振るわせるぐらいの度量がないと、寄ってたかってあれを入れられたり、これを入れられたりというのはよくないので、むしろ新機関の中にもしやる人が出てきたとしたら、かなりその人に全責任を負ってもらって、そのかわり3年でだめだったら首というそれぐらいのことをやらないと、人次第だと思います。
   

 五代委員 
    総合プロデューサーかもしれない。
   

 川崎委員 
    はい。
   

 栗木委員 
    3番目の丸に書いてあります産業界。結局、産業界も将来はこれを十分に活用して腕を振るってもらうという基幹プログラムを期待しているわけですが、さっきおっしゃったように人が大事だというと、チームの中に案を練る中に産業界が入ってこないといけませんし、えてして、悪口を言っちゃうとまずいんですが、産業界が本当に欧米と伍していける。つまり先頭に抜け出るだけのすばらしいセンター的なあれを考えているだろうかというのは、私、そこはちょっと危惧があるんです。ですから、これをうまく産業界の中でも年齢層を選んだり、人を参加するチームにどういう人を選んで入ってもらうか。ここはうまく。
   

 五代委員 
    そうですね。それぞれの機関、企業の場合だと、そこの企業から縛られて、言えないみたいな、そういう人は来なくて結構なんです。
   

 栗木委員 
    終わりですね。アメリカの学会なんかですと、学会であの人は代表しているけれども、いいアイデアを持っている。そういう人が出てくれるといいんですけれども、結局、そういうチームづくりにかかわってくると思います。
   

 五代委員 
    そうですね。2年ぐらい前に、さっきの話も話していましたけれども、宇宙インフラストラクチャー研究会というのを作ったんですね。あのときに割とそれぞれの、あれは技術ですけれども、機関とか企業とか関係なく、すごいディスカッションがそれぞれありましたね。だから、そういうふうなフランクをやらないといけないですね。後ろに背負った人だけが出てきたのでは、そういう分野は最初から落とした方がいいんじゃないですか。それはちょっとオーバーかな。
   

 川崎委員 
    逆に言うとリーダーを募集するといいんですね。原案としてA4、2枚程度にコンセプトを書いてもらって、リーダーにふさわしいかどうか。あとは任せる。
   

 五代委員 
    リーダーであり、かつその……。
   

 川崎委員 
    実行責任者。
   

 五代委員 
    総合プログラムの草案ぐらい、コンセプトぐらい。
   

 川崎委員 
    ええ、コンセプトを出してもらって、そしてリーダーを選ぶ。あとは具体的にはその人に。
   

 栗木委員 
    次の戦略チームを作る。
   

 五代委員 
    それぞれが作ったらいいんじゃないですか。
   

 川崎委員 
    リーダーが選んだ人で作ればいい。
   

 澤田委員 
    最近、こういう重点化ということで、集中的に取り組んでいく。あらゆるものを集めてということが、これから是非必要になってくるので、受け入れる先の3機関というのが、今までのような形の規制なり条件があったのでは恐らくだめなので、民間でもびっくりするような思い切った体制ができるような裁量権というものを持たせないと、本当に死んでしまうだろうと思いますから、その辺は3機関の枠組みができてからの話ということよりも、そういうものができる3機関という形でお取り組みをいただきたいなと思います。今の事業団、できてしまうと、おまえ、何か不自由ないかと言うと、あそこに役所があるからといって、もごもごと言って、声が出てこない。陰ではいろいろあるというのがあるんですから、せめて作るときに思い切ってやってください。
   

 井口委員長 
    大学のベンチャービジネスを作るときにも問題になっているんですけれども、アイデアなり技術的には非常にという人が必要なのと、マネージャーが要るんです。これはよく言われるようにホンダがあれだけ伸びたのは、本田宗一郎さんのほかに藤沢さんという非常にすぐれたマネジメントをやる人がついていて、ペアでやっているんです。小さいプロジェクトで両方兼ね備えている能力のある人がいればいいんですけれども、なかなかそうはいかないので、すばらしい研究開発を進めていく能力を持っている人と、しっかりマネジメントしていく。こういう体制もじっくり見ませんと、必ずしもうまくいかない可能性があると思います。
   

 五代委員 
    企業なんかでもそうですね。企業はそれにプラス販売ですか。
   

 井口委員長 
    だから、その辺のビジネスセンスが必要だろうと。
   

 栗木委員 
    この考え方は大変よくまとまっていると私、思います。
   

 芝田課長 
    一言だけ申し上げますと、今、統合準備会議で新機関について議論されていますけれども、その中で産業界とか関係省庁との連携も視野に入れた統合司令塔的な組織を作ろうという提案もございますので、そういうところでもこういったことが、そこには企業の方も経営層も含めて入ってきてもらったりということも言われていますので、そういうところで議論するという可能性もあるかなと思います。
   

 井口委員長 
    1つ伺いたいんですが、しっかりしたものを作ろうとすると、ある程度時間がかかると思うんですけれども、どの程度のタイムスケジュールを考えておられますか。
   

 芝田課長 
    例えばの話ですけれども、例えば概算要求までに宇宙開発事業専門調査会の方でも、概算要求を念頭に結論を5月ぐらいに出すというスケジュールが立てられております。したがって、時間は多少短いですが、進みようによってはそれに間に合わせるようにといったことも可能性としてはあると思います。したがって、来年の夏の概算要求にといった可能性もないことはない。
   

 井口委員長 
    これは公募に近い形になるんでしょうか。
   

 芝田課長 
    それは、さっき申し上げたようにまだ決まってないです。
   

 川崎委員 
    むしろ、ただ単に公募ではあんまり、日本ではシステム的に考えるのが得意な人がそういないので、一例としてこういうような構想というのを委員会なり事務局に相談して、例として、確定的なものではないんだけれども、挙げてみるというのはあるかもしれないです、2月ぐらいに。それでむしろそれを出した上で、意見をいろいろいただいて練り上げるというステップはどうなんでしょうか。
   

 井口委員長 
    それもありますね。といいますのは、我々は3機関の統合ということと離れて、ビジョン。
   

 川崎委員 
    日本全体のビジョンもあるわけですね。そういう意味では1つでいいのか、3つになるのかというのも含めて、コンパラなプログラムが出てくれば、それで今度は優劣をつけるという議論。
    それから、もう一つお伺いしますと、五代さんのお話の中に出ていたのは、お金のスケールも一応ありましたね。
   

 井口委員長 
    そうですね。
   

 川崎委員 
    10年間で1兆5,000億円のうちの5,000億円ぐらいを投じちゃうという。だから、先ほど委員長のお話の計画という以上は、およその金額の総合計のめどをつけなければいかんわけですが、これは大体それぐらいをめどだと考えるというのは暗黙の了解になるわけですか。もうちょっとオープンで。
   

 芝田委員 
    そこまでまだ議論を詰めて、まだ1週間しか、まだ行政的にもいろいろ予算の行方というのも横目でにらまないといけない話ですので。
   

 今村局長 
    こういうことができる仕組みをどうすればいいかというのをまず、そういう仕組みがきっちり新しい機関に組み込まれていくと。
   

 川崎委員 
    非常に簡単といや簡単なんですよね。H−2Aが90億で上がれば、何回打つか。そういうふうに考えていったほうが、ゴールセッティングとしては易しいんじゃないか。
   

 栗木委員 
    答えは後からにいたしましょう。
   

 五代委員 
    あれ、10年間フラットという、そういうあれですから、実際に何年か後にフラットからじわじわと、あるいはこういうフラッグシップミッションが非常にいいとなれば、またそこに重点を少し置こうじゃないかとなってくれば、それより下がることはない。これはだめだとなったときには、そこで責任をとってもらって。
   

 川崎委員 
    プロジェクトごとの委員会とかね。そうすると、新機関のおよその予算の規模をどうするかというのも大体出てくると思うので、いずれにしても、来年の概算要求時点までにその辺はクリアにならないといけないわけですね。
   

 栗木委員 
    特に2003年度に立ち上げるような、もし何かありますと、そこは、だとすると、ある程度いいものが、めどがついていないと。
   

 五代委員 
    まあ、2つや3つぐらいのそういうコンセプトが出てくると思うんですよ。出てこなきゃ、今まで何していたんだということになるわけでして、これだけやっているわけですから、あとはいかにインテグレートして、こういう条件の中でいいプログラムを。大体コンセプトはできると思います。
   

 芝田課長 
    新機関の立ち上げは、まだ年度が確定しておりませんので、今年の概算要求というのが絶対ということじゃございませんので、その辺はちょっと弾力的にまた。
   

 川崎委員 
    でも、やっぱり新しい酒は新しい革袋に盛るので。こういうことをやるのには、早く新しい機関になったほうがいいよ。
   

 栗木委員 
    ちょっと1つ気がついた。まあ、書くか書かないかは別として、これまで各3機関がやってきたことはすべて御破算ではなくて、いいものはきっちり拾いましょうと。ただ単に惰性で継続するんじゃなくて、あれとあれはきっちりつなごうと、そういう発想はやっぱりこの中に、単なる継続性じゃなくて、いいものを忘れずに育てていくということも必要じゃないかな。今までのを忘れてではなく。
   

 芝田課長 
    3機関のやってきたことがこれにすべて集約されるということでは毛頭ないと考えておりますし、そこだけはちょっと……。
   

 井口委員長 
    まあ、この程度にしましょうか。まだ始まったばかりなものですから、またいろいろ検討を進めて、ここでの議論をさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
    その他に移らせていただきます。現状報告を、調査国際室の北村係長さんにお願いします。
   

 北村係長 
    それでは、この1週間の宇宙開発関係の出来事につきまして御報告させていただきます。
    まず宇宙開発委員会の活動でございますけれども、2つ、調査及び視察がございました。種子島の方と、それから内之浦の方の状況調査ということで、安全部会の方で行っていただきました。栗木先生、五代先生が参加しております。
    それから、USERS無人宇宙実験システムの視察ということで、鎌倉の方に行っていただきました。こちらは川崎先生と栗木先生が行っておられます。
    それから、海外のこの1週間の動向でございますが、かいつまんで報告しますと、ちょうど1週間前、28日でございますが、こちらは日本の新聞にもかなりたくさん取り上げられましたので御存じと思いますけれども、ハッブル宇宙望遠鏡の観測結果なんですが、太陽系の外の惑星の大気の観測に初めて成功しております。
    それから、12月1日でございますけれども、プロトンロケットの打ち上げに成功しております。
    それから、インドでございますけれども、ISRO(インド宇宙機関)というところがございますが、こちらの方で新しいエンジンの燃焼試験に成功しております。これまで使用しておりましたバイカスエンジンというのは増強型でございまして、11%ほどの出力増をしておるということでございますが、用途的には、極軌道衛星打ち上げ用のロケット、それから静止衛星打ち上げ用のロケット、それぞれの上段部分、それから静止のほうにつきましては補助エンジンとしても使うという予定だそうでございます。
    それから、3日でございますけれども、ISSとプログレス補給船、ドッキングが完全な形になっておりませんでしたが、こちら、間に挟まっておりました障害物の除去に成功しております。宇宙飛行士2名によります船外活動を行いましたけれども、予定よりかなり短く済んだということで、順調だったようでございます。付着しておりました障害物でございますけれども、これはまだ確定されたわけではございませんが、前についておりました、プログレス宇宙船の方についておりましたゴム製の密封用のOリングであるという可能性が高くなっております。
    それから、今後の予定としましては、エンデバーの打ち上げなんですけれども、今朝ということで予定されておりましたが、さらに24時間、打ち上げが延期されております。明日の日本時間での朝、打ち上げの予定で今、準備が進んでおります。
    以上でございます。
   

 井口委員長 
    ありがとうございました。よろしゅうございますか。
    さて、実は澤田委員が、12月10日にめでたく3年の任期が満了になりまして、御退任になります。きょうが宇宙開発委員会への最後の御出席になりますので、一言お礼の御あいさつをさせていただきます。
    皆さんもご存じかもしれませんが、御紹介も兼ねさせていただきます。
    澤田委員は郵政省の貯金局や大臣官房などの要職をお務めになった後、昭和59年に電気通信局長、昭和61年には郵政事務次官として、電電公社の民営化を皮切りに、現在の電気通信事業制度の礎を築かれました。その後、日本電信電話株式会社に移られまして、平成8年には代表取締役会長、昨年7月からは相談役を務められております。
    澤田委員はお若い時分に科学技術庁に御出向されたことがおありで、宇宙開発事業団の設立前から初期の宇宙開発に貢献されました。いわば、我が国の宇宙開発の父のお一人でもあります。澤田委員は平成10年に委員に御就任になったんですが、その10年といいますのは、私も記憶しておりますが、それまで日本の宇宙開発が非常に順調に発展してまいりましたのが、平成10年から坂道を転がり出したという、そういうときでございます。H−26号機の打ち上げが不成功で、また翌年のH−28号機の打ち上げに再び失敗しまして、いわば奈落の底に落ちたわけでございます。
    しかし、多くの方々の御努力で、今年、H−2Aの試験機1号機の打ち上げに成功いたしまして、V字型の回復を目指すとともに、宇宙3機関の統合を踏まえて、日本の宇宙開発が輝かしい未来へ飛躍するための基本方針ができ上がったところで御退任になられるという、そういう激動の3年間をお過ごしになりました。
    委員会での澤田委員は、皆様も御存じのように、他の委員の発言をじっくりお聞きになり、最後に鋭い一言を投げかけるという独特のスタイルで、我々の議論を間違いない方向に導いてくださいました。私もこれまで全員賛成というものが見事に間違ったという経験を持っておりまして、同じ意見ばかり出ますと、あえて澤田委員を指名させていただいて、御意見を承ったことが何度かございます。そのたびに違った観点からの御意見や、また反対方向の御意見をいただきました。逆に、澤田委員も「賛成だ」と言ってくださいますと、大変安心して、私は決定の正さを信じて決めることができました。このように、常に課題の本質を見失うことなく、正しい結論に導いてくださいましたことに対しまして心から感謝をいたします。ありがとうございました。
    これから宇宙開発委員会が重大な決定を迫られるというときには、また全員が賛成のときには、また御意見を承りに参るかもしれませんので、そのときにはよろしくお願いいたします。これまでの長い御貢献に対しまして心から感謝をし、お礼を申し上げます。ありがとうございました。
   

 澤田委員 
    どうもありがとうございました。一言お礼の言葉を、私もお時間をいただきたいと思います。ただいま大変過分な御紹介をいただきまして、大変恐縮に存じております。
    お話がありましたように、どうも少しひねくれた立場で物を言っていたのかなという、じくじたるものがあるんですが、まあ、あえて申し上げれば、私は、40年前は日の丸衛星を上げようということで、少しばかり走り回っていたこともございましたけれども、それからは本当に門外漢でございまして、ある意味では、ちょっと宇宙の常識と違ったことをもし言えるならばなというようなことで、まあ、とんでもないことを言っていたことが多かったのではないかと思って、申しわけなく思っている次第でございます。
    今、お話にございましたように、私がなってからの3年というのは大変厳しい状態でありました。私が入ったから運が悪くてこうなっちゃったのかな、私が運の悪い男で申しわけないことをしたのかなという、じくじたるものがあったんですが、幸い、この間、成功いたしまして、晴れ間が見えて愁眉が開いたという思いでございます。
    しかし、この3年の間、関係者の皆さん方は大変ご苦労いただいたわけでありますが、ある意味では1つの大きな試練であったし、また見直すいい機会でもあったのであろうなと思います。3年の苦しかった日々というものを無駄にすることなく、まだまだ課題が残されているわけでありますので、それを充実されて、是非、日本のロケットを立派に成功させていただきたいなと願う次第でございます。必ず成功するものと私は確信いたしております。
    また組織再編、省庁再編とか、それに続いて3機関の統合を含め、いろいろな課題が新たに出てきております。3機関統合、また国の財政の悪化という現況の中で、ある程度縮まざるを得ない、重点化ということで見直しをしなきゃならないという厳しい時代に来ているわけでありまして、いろいろ御議論をいただいているわけでありますが、まあ、これも、そんなに日本がいつまでも冷えっ放しでいるわけじゃなし、宇宙時間で見ればほんの一時期であろうと思います。是非、構造改革というときに、国のかかわりというものは一体どうあるべきかという議論なしに、ただやめてしまえとか、つぶしちまえという議論だけがどうも表に出過ぎでありますけれども、宇宙についても、宇宙開発と国とのかかわりというのは何であるかということを見据えていく、3機関というものを統合して見据えていくいい機会になってほしいな、また、そこから日本ならではの開発というものが出てくるのであろうなと期待をいたしているところでございます。
    また、余分なことかもしれませんが、20世紀というのは戦争の多い世紀でありまして、その反省に立って、21世紀は平和な世紀でありたいなと、こう願ったのは私1人でなく、多くの方がそう思ったと思いますけれども、まあ、不幸にして元年から血塗られてしまったということで、人間の知識とか知恵とか、あるいは技術というものは平和というものに対して大変無力なんだなということを痛感しているわけなんですが、先ほどもお話がございましたように、宇宙開発というのは全地球的、全人類的な取り組みというものが必要になってくるし、またそれがやらなければならないテーマというのは幾つもあろうかと思います。
    そういったものについての仕組みというものをお考えいただいて、地球人全部が手を携えて、宇宙開発、宇宙利用というものをやっていく、何か1つの目的のために手を携えてやっていくということが平和への一歩になるのではないかなというようなことを願っているわけでありますが、宇宙開発が平和の1つのシンボルになるように、皆様方の今後一層の御努力を御期待申し上げまして、今までの皆様方の御厚情に対して厚くお礼を申し上げます。どうも長い間ありがとうございました。
    また役所のほう、また事業団の皆様方にもどうぞひとつよろしくお伝えください。本当にこれからの御発展を心から念じております。
   

 井口委員長 
    ありがとうございます。
    前回の議事要旨につきましては、例のように後ほど御確認ください。
    以上で、第47回宇宙開発委員会を閉会にいたします。どうもありがとうございました。

──了──




(研究開発局宇宙政策課)

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