戻る

宇宙開発委員会

2001/11/28 議事録
第46回宇宙開発委員会議事録

第46回宇宙開発委員会議事録


1. 日時 平成13年11月28日(水)14:00〜15:50

2. 場所 文部科学省別館宇宙開発委員会会議室

3. 議題
  (1) 第9回日加宇宙パネルの開催結果について
  (2) 「我が国の宇宙開発利用の在り方」について
    1 地球観測について
    2 審議
(3) その他
    1 宇宙開発の現状報告
    2 議事要旨等


4. 資料
  委46−1 第9回日加宇宙羽ね掘るの開催結果について
  委46−2 『地球観測について−個人的な見解−』
  委46−3−1 宇宙開発の現状報告(平成13年11月21日〜11月27日)
  委46−3−2 第45回宇宙開発委員会議事要旨(案)

5. 出席者
  宇宙開発委員会委員長 井口雅一
  宇宙開発委員会委員 川崎雅弘
           〃 栗木恭一
           〃 五代富文
           〃 澤田茂生
  文部科学省研究開発局宇宙政策課長 芝田政之

6.議事

 井口委員長 
    予定の出席者がおそろいになりましたので、ちょっと早いんですけれども、第46回の宇宙開発委員会を始めさせていただきます。
    最初に第9回日加宇宙パネルについて、御参加になられた事務局の調査国際室の塩満室長さんの御報告をお願いいたします。
   

 塩満室長 
    それでは、資料委46−1に基づきまして、御説明申し上げます。
    日加宇宙パネルというものは、1986年5月に締結されました日加科学技術協力協定のもとで、1989年から現在まで9回開催されているものでございます。今回はカナダで開催されました。中心的な事務局をしていただいていたのはカナダ宇宙庁でございますこれは貿易産業省の下に設置されている政府機関でございます。
    日程につきましては、11月19日から20日。それから、ファシリティーツアーが1日、設けられました。場所につきましては、ここに書いてあるとおりです。出席者につきましては、一番後ろの紙に書いてございますが、日本側が文部科学省、宇宙科学研究所、宇宙開発事業団、通信総合研究所で構成されたメンバーで出席いたしました。カナダ側につきましては、CSA(カナダ宇宙庁)とカナダ・センター・フォー・リモート・センシング(CCRS)で、大体、カナダ側30名の参加者をもって開催いたしました。目的はここに書いてあるとおりでございます。会議の構成といたしましては、全体会合と、並列で行われます分科会を開催しております。日本側、カナダ側の座長は記載しているとおりでございます。
    それでは、「6議事概要」から御説明申し上げます。
    まず、オープニングセッションでございますが、開会の言葉、参加者の紹介、議事の採択、両国の現状について報告いたしました。カナダ側の関心事項といたしましては、日本の3機関統合につきまして関心があったようで、これにつきまして、若干長く時間を取って説明しました。それから、カナダ側としましては、先日、宇宙開発委員会に報告させていただいた、カナダ宇宙庁の予算というのがございますが、大体、日本円にしまして、総枠270億円ぐらいでございますが、この予算推移につきましては、当面は変わらないけれども、今後、スペース・サイエンスとか、それからあと、商用化に向けた活動につきまして、やはり競争が行われて、資源配分が変わっていくということも考えられるという御説明をいただきました。それから、クロージングセッションと書いてございますが、全体会合が2つありまして、オープニングセッションとクロージングセッションでございますが、クロージングセッションの方では、分科会からの報告をいただきまして、カナダ側から、日本というのは、非常にパートナーシップとしての位置づけが高い国であるということで、今後の協力の重要性について、これまでの感謝、それから今後の期待が述べられました。それから、次回会合につきましては、2002年で日本で開催するということが確認されました。
    それから、分科会につきまして、順次説明させていただきたいと思います。
    先ほど、1枚目に書いてございました分科会構成でございますが、これはパラレルで開催してありますが、宇宙科学分科会につきましては、「あけぼの」「のぞみ」「はるか」などによる地球磁気圏、火星上層大気、宇宙電波天文学における共同研究が行われております。それから、宇宙科学研究所が持っている観測用ロケットを飛ばしたオーロラ観測の協力についても、現状報告などが行われています。それから、小型衛星、金星探査ミッションにつきましても、搭載可能性についても検討が進められていることが確認されました
    微小重力科学分科会につきましては、カナダ側から、宇宙ステーションの装置の開発の現状、それからシャトルを利用した実験の現状などが報告されるとともに、日本側も同様なこと。それから、現在、国際公募選定というのが行われていまして、大体120件ぐらいの全体の国際公募の研究が応募されている状況でございますが、日本側からは、カナダを含めまして19ぐらいの応募をしているそうです。今後、選定が行われるということでございますが、この状況が説明されました。更に微小重力につきましては、ワークショップを共同で開催していますので、これにつきましても、第6回のワークショップの開催につきまして、今後の情報交換、計画を進めるということが確認されました。更に、たんぱく質の結晶成長実験の協力についても、今後、詳細を詰めていくことになりました。
    地球観測につきましては、これまでカナダのRADARSAT、日本側のJERS−1のデータを利用した研究が進められてきました。今後とも、地球観測の両国の共同研究の重要性が確認されたんですが、更に利用者の範囲が広まっているということをお互いに認識しまして、更に研究者、利用者、その両面を含んだ広範囲な協力について意見交換を行うことが重要ではないかということが確認されました。更に高精細エコレーダーを使った災害監視への応用に関する研究の継続性につきまして、カナダ側は、非常にその重要性を認識しているということでございまして、災害監視という観点、それから、その機器を活用して、大気科学分野での協力を行うことの重要性が確認されました。また積雪モニタリング、気候変動研究についても重要性が確認されるとともに、これまで長い共同研究の歴史があるということから、何か発行物を作って、その成果を公表したらどうかということについても、カナダ側から提案があり、検討が進められることになりました。
    次の3ページでございますが、宇宙技術分科会というところでは、新宇宙技術というかこれまで余りコンベンショナルに活用されてなかった部分で、新規性の高いものについて共同研究をしていこうということで、情報・意見交換が行われております。特に光衛星間通信、小型衛星、ロボティクス、スマート・ストラクチャー、雲レーダー、一番最後に書いてございますが、極低温技術、遠隔医療、太陽光発電などについて、コンタクトパーソンを決めたり、情報交換を続けていくことの重要性などが議論されました。特に中でも進展しているのが、光衛星間通信、それから小型衛星、ロボティクス分野につきまして、他の新技術に比べると、やや先行して共同研究が行われているという印象を受けています。
    それから、宇宙ステーション分科会につきましては、技術的な面、それからあと商用化方策の面が中心に意見・情報交換が行われました。カナダの宇宙ステーションにつきましては、やはり、カナダの持っているカナダーム2の活用など、それから研究開発の状況などが説明されております。更にカナダ宇宙庁が行っている宇宙飛行士の訓練についても、情報交換が行われてございます。あと、利用分野につながるものとしては、たんぱく質の結晶実験について、2002年に、カナダ宇宙庁の持つロッカーを用いて、実験を行うことについて検討が進められることになっています。更に商業化政策につきましては、これまでの経験をお互いに紹介する。特に、まだ商業化に具体的に参加の手を挙げている企業は決まっていないということではございますが、カナダ宇宙庁に対しては、幾つかの企業からオファーがあると伺っております。
    最後でございますが、11月20日、ちょうど11月21日に、これまで長く、1994年からカナダ宇宙庁の長官を務められましたエバンス長官の御退任のための式典がモントリオールの方でも開催されて−−次の日にオタワでも開催されるということでございましたが、ちょうど、これに招待されまして参加することができました。井口委員長からいただいた手紙をお渡ししまして、先方も非常に、これまでの日本の協力に感謝するとともに、今後ともよろしくお願いしたいということをお伝えいただきました。それからあと、新しいガーノン長官にもお目にかかることができまして、ごあいさつをする機会がございました。
    4ページ目でございますが、全体のスケジュールが書いてございます。
    以上、簡単でございますか、御報告申し上げます。
   

 井口委員長 
    どうもありがとうございました。御質問・御意見をいただきます。
   

 川崎委員 
    ISSの商業化は、カナダの宇宙庁が利用したいという企業を募集しているという状況ですか。
   

 塩満室長 
    そうですね。情報提供して、募集しているという状況です。
   

 川崎委員 
    企業の参加があるかどうかは別?

 塩満室長 
    そうです。カナダのリソースの説明、それから、ちょっと知的所有権までは、私、話が、分科会に参加できなかったので、わからなかったんですけれども、あと、レベニュー、つまり、どのぐらいのリターンをカナダ宇宙庁に対してするかということについての、お互いの意見調整をしているという状況を伺ってきました。
   

 川崎委員 
    まだ料金というか、そういったようなものについての話にはなっていないと?

 塩満室長 
    そうですね。レベニューが、やっぱり一番難しいところ、センシティブなところであると伺っています。まだ契約には至ってないと聞いております。
   

 井口委員長 
    ほかにいかがでしょうか。
   

 栗木委員 
    カナダは、確か遠隔医療と遠隔教育に大変熱心だから、そういうのは、どこかのグループで取り上げられましたか。
   

 塩満室長 
    先ほど簡単ではございましたが、宇宙技術分科会のところで。やはり、まだ日本側との協力という意味では、必ずしも進展はしてなかったということで、カナダ側の関心事項としては、この宇宙技術分科会の中で、遠隔医療がございました。遠隔教育については、こういうイメージが出てこなかったと思いますが、進んでいるとは思います。
   

 五代委員 
    エバンスさんの後任の方は、どういう経歴の方ですか。
   

 塩満室長 
    ガーノンさんとおっしゃいまして、宇宙飛行士をされた方でございます。カナダで初めての宇宙飛行士でいらっしゃいます。もともとは工学博士、イギリスで工学博士の課程を取られたようです。それで、海軍に入隊されて、1983年に宇宙飛行士に選抜されて、その後、1984年に、ペイロード・スペシャリストとして、スペースシャトル、STS41Gミッションに初めての宇宙飛行士と参加されてその後、海軍を退役されて、更にまた、NASAのミッション・スペシャリストに乗り、3回、スペースシャトルに搭乗されているということでございます。今年2月から副長官に就任されたということでございます。
   

 井口委員長 
    初歩的なことを伺いますけれども、宇宙に関しては、たくさんのオブジェクトに特化した国際会議がございますね。そのほかに2国間でも、日本は、アメリカとはやっていますね。ともかくNASAとは密接な関係がございますし、ロシアともありますし、個別に両国間では、イタリアもそうですか。フランス、いろいろあるんですけれども、何か全体としての国際会議と2国間のものとは、何か違う方針がはっきりしているんでしょうか。
   

 塩満室長 
    日ロにつきましては、日ロ宇宙協力協定に基づく開催で、今年は5月に合同委員会を、宇宙部門だけで行っていまして、この日加宇宙パネルにつきましても、2国間科学技術協力協定に基づきまして行っております。フランスにつきましては、NASDAとCNESの協力取り決めに基づいて開催しているという状況でございます。何か取り決めがあるものについては、私どもの方で、宇宙開発委員会に御報告するような形の政府機関間的な会合を開催しているところです。米国につきましては、そういう形の会議は開催してございませんが、頻繁に打合せを行っているということでございます。
   

 井口委員長 
    逆に言うと、大変でしょうと。たくさんあり過ぎてですね。もうちょっと、何と言うんでしょうか、リソースも限られているんで、効率よくということがあり得るのかですね。それは国際交流はあればあるほどいいという考え方もあるかと思いますけれども。
   

 塩満室長 
    カナダにつきましては、お気づきのように、宇宙輸送分野はございませんが、ほかの国は、幅広く行っている部分もございまして、そういう意味では分野ごとの協力実態につきまして整理いたしまして、今後、方針を検討してまいりたいと思っております。
   

 井口委員長 
    ほかに何かございますか。よろしゅうございますか。それでは、最初の議題、御報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。
    それでは、次に「我が国の宇宙開発利用の在り方」につきまして、今日は東京大学気候システム研究センター長の住先生にお出でいただきまして、地球観測についてお話を承ることにしております。どうぞ、よろしくお願いいたします。
   

 住センター長 
    ただいま御紹介いただいた東京大学の住でございます。
    私自身は、もともと気象学をやっておりまして、天気予報等をやっておりました。それから、現在の東京大学に移りまして、気候システム研究センターといたしましては、温暖化等、気候変動に関する研究を行っておりまして、基本的には数値モデル、いわゆる気候モデルというものと、衛星のリモートセンシングというもの、両方を結合してという形でやっております。
    今日、地球観測に関しては、組織的には、いろいろなところから御説明があったと思いますので、あえて建前的なことを繰り返しても余り意味がないと思いましたので、ここでは、ここに書きましたように、僕個人の、この間ずっとやってきました地球観測に関する見解を述べてみたいと思います。ですので、どこの組織も代表しておりませんので、そういう点でお聞きいただきたいと思います。
    まず第1枚目ですが、これは、やはり地球観測の意義ということは、私どもが非常に強調したいのは、人間が住んでいる地球というものの姿を知ることは非常に大事でしょうといろいろな意味で大事だということです。これは人類共通の財産としてもありますので、このことの意義を疑う人はないと思いますが、やはり、それは非常に大事なことと思います。それから、非常に地球観測で特徴的なのは、実利用というか、ある程度、お金がもうかってしまうところがあるというか、逆に言えば、非常に実利用的な側面も同時にございますので、ある意味では、例えば各省庁と書きましたけれども、事業的に衛星運用ができるような条件も一部あったりします。その点で、純粋に研究観測という形だけではなくて実利用が混在してくると。そこは観測の特徴があろうかと思います。
    それで、少し過去のことを見て、これは努めて僕の個人的見解ですので、異論がある方もあると思いますが、総じて、日本における地球観測というのは、ADEOS 以前と書きましたけれども、1980年以前というのを考えますと、基本的に、外国技術の導入であったと思います。それは、基本的には、実用という観点で非常に早くキャッチアップしていかなきゃならないということがございまして、例えば気象衛星は、79年に「ひまわり」を上げたんですが、上げてくれというニーズが先にあって、とにかく衛星が上がることが大事であって、それを今更、ごじゃごじゃ開発してやっている暇はないよということがあった。明らかにそういうことがあったので、非常に僕は、そういう点では外国技術の導入があったと。それから、気象衛星などは、ある程度、利用者がはっきりしておりますのでよかったんですが、宇宙開発事業団が上げているようなセンサー部分に関しては、以前に関しては、非常に利用者が不在であるというか、ある意味では、後から追いかけたための問題があっただろうと僕は総括をしております。
    でも、これは逆に言うと、悪いというわけではなくて、実は非常にキャッチアップの問題というのは大きいんですね。ですから、ニーズが非常にあって、目先にいろいろな問題があって、それを放っておいて開発するわけにはいかないし、それを追いかけなければならないけれども、かといって、ずっと導入だけではしょうがない。その間の、いわゆるキャッチアップのジレンマというのがあったんだろうと思います。その間、利用者側では、研究者サイドは、非常にアプリケーション側では、当然、あるデータセットを使いたいですから、逆に言うと、NOAAの衛星データとか、そういうものを利用した、いわゆる悪く言えば、衛星ただ乗り型の研究と言えば言えなくもないんですが、そういう研究が多く行われてきたように思います。
    そういう点で、ここに今述べたことで、基本的には、80年代までは、非常に外国のデータに依存する体質ができてきたということと、それは翻って言えば、衛星センサー、地球観測に関するセンサー部分の開発技術力というのは非常に不足をした。逆に言うと、既存の衛星データを持ってくればいいということで追いかけてきましたので、本当はアプリケーション側が伸びなかった。それは例えば逆に言うと、衛星開発に非常にすそ野が不足している。特に現段階になってみますと、キャリブレーションとか、バリデーションとかアルゴリズムとか、いわゆる衛星のアプリケーションとか、いろいろな分野におけるプロというのが、日本では非常に不足したなと。これはアメリカなどと比べてみると、非常に僕の実感とするところであります。
    それで、ADEOSを打ち上げる頃から、NASDAは変わってきたと僕は思います。それは1つは、経済力がついてきて、自主開発をしようということと、やはりスーパー301が大きかったと僕ははたからは見ているんですが、ある意味では、アプリケーションの研究指向に変わっていったと。それから、今、地球環境問題が非常に重要になってきて、それに対して取り組むことが必要だということ。それからやはり、ある程度、月日も経ってきまして、日本の技術力もついてきたということと、ADEOSに乗ったIMGみたいな、世界的に画期的な、例えばIMGなんかは、フーリエ干渉型のセンサーを、初めてではないんですけれども、宇宙用では画期的なのを上げたわけで、それは非常に世界的にインパクトがありましたし、TRMM-PRなんかでも、アクティブ・レーダーを載っけて上がる前までは、ほとんど、あんなにうまくいくとは、だれも、通総研の以外の人は、つまり、日本以外の人は余り思ってなかったところが、ざまあ見ろとは言いませんけれどもそれが上がった。そういう意味では、日本の地球観測のセンサー部分というのは、全部とは言いませんけれども、相当部分が、ある程度、少なくとも世界レベルに達したようなものが出てきたと思います。
    それからあと、NASDAも、少なくとも反省をしたかどうか知りませんが、やはり、いろいろな意味での意見を聞くことが大事だということがあった。それから、当時は、地球観測委員会というのをNASDAが組織して、新しいセンサー・コンフィギュレーションを、みんなで考えると。その当時は、研究者は非常に飢餓的な状態にありましたので、自分たちが考えるセンサーを上げてほしいという熱気があったと思いますが、そういうことを通すことができたというのは大きな変わり目だろうと思います。
    それで、いろいろな評価はありますが、僕の記憶でも、85年頃から、NASDAとか旧科技庁は、やはり、いろいろな意味で、そういうことを勘案して、当時としては、関連するいろいろな研究面を強化しようとしたと思っております。そこに書いてありますように、いろいろなことがありますが、地球観測は、単に衛星データを、衛星を上げて、センサーで取ればいいというわけじゃなくて、結構、すそ野が広いんですね。アプリケーションはさまざまでありますので、そういうある種の総合産業みたいなものがありますので、相当、川上から川下まで幅広い力がないと、完全にそのものができないというわけで、それに気がついて、ここにありますように、例えば従来ですと、NASDAが開発機関であったのを、一応、地球観測利用研究センターという、R(Research)が入ったんですね。研究が大事だということで、そういうのを設置したり、フロンティア、シミュレーター、そういうものとか、外部の意見を聞くとか、いろいろな努力をしたと思っております。それは僕は評価をすべきことだと思います。
    ただ、惜しむらくは、NASDAの設置法とか、法的な枠組みを変えない中で、時間がありませんので、割と実行上、ある意味ではやってきた部分がありますので、それが逆に今日みたいな事態になると、非常にウィークポイントになったのかなという感じを僕は持っています。
    ここで、今までのところを総括してみます。これは個人的な総括なんですが。
    やはり、人類の生存基盤たる地球の関する知見というのは不可欠でしょうと。これを知らなくてもいいということはないでしょうと思います。
    それから、「日本の国際的な地位のためにも」というのは、やはり、そういうグローバルに地球に関する知見が必要とされたときに、日本は、だれかがやってくれればいいですよとは言えないんではないか。少なくとも、GNPが世界2位か3位か知りませんけれども、そういう意味で、このグローバルな場であれば、応分の寄与というのは、やはり日本には求められるだろうと。
    それから、3番目も非常に大事なんですが、やはりデータ自前主義と書きましたけれども、全部、だれかが取ってくれたデータで商売をするというのは、いかにも危険ではないかと。やはり、日本は全部を自分でやることはないと思いますが、少なくとも自分たちのデータ、自国のデータで、判断をできるだけの準備というのは、少なくとも地球環境問題等は非常に、この間のCOP7を含めまして、将来の日本の経済も縛るような、すべての外交的な大きな柱になってきますので、そういうことで少なくとも日本国内で、独自の判断をできる材料を用意しておくということは、国としては非常に僕は大事なことだろうと思いますし、この点で、例えばアメリカなんかが、スーパーコンピューターで日本のやつを拒否している理由は、アメリカの国の決定機関にかかわるような重要な部分を、他国にいただくようなことはできないと。そういう理由で拒否しているわけですから、そういう点でも非常に大事なことだと思います。
    ただ、現在の状況を客観的に言うと、急拡張に伴う歪みが起きておりまして、これはどこでもそうなんですが、人余りの人手不足ということで、人は多いんですが、役に立つ人がいないね、みたいなところがある。これは多分、ある意味では、急速に事態が変わっていくときの特徴で、どの分野でも、どの時代でも多分あるんだろうと思います。だから、逆に言うと、環境がどんどん変わっていく中で、人余りの人手不足という状況の中で、いかにみんなが幸せに、かつ最適な人材を取ることが必要であると思います。
    最後に、この間、ここで強調しておきたいのは、ある種の責任ある研究者が地球観測センサーにくっついて、物事を進めていかないと、最後まで行くようなプロダクトが出てこないと僕は感じます。このことは非常に大事なことだと思います。
    次に、じゃ、今後、どうしましょうかということですが、「不景気に向かう以上」と書きましたけれども、別に無限の資金というのは割けないわけですから、当然、資金に限りがあるでしょうと。そういう点から、先ほどお話ししましたように、地球というのは、基本的に人類共通の基盤ですから、それを見ていくということに関しても、国際協力というのは非常に不可欠でしょうと。その次に書きましたのは、僕が見たところ、宇宙の分野というのは、非常に国際的に、ある意味では、仕事の標準化が進んでいるんだなという感じがしております。それは、基本的にNASAとか、アメリカが非常に大きく、業務というか、仕事の仕方とか、研究の進め方とか、いろいろなものの仕方というのが、割と標準化が進んでいる分野だなという感じがしておりますので、割とそういう意味では、今は標準化がしやすいんだなということ。その中で、アメリカや西欧もそうですが、非常に責任ある研究者の意向を聞く体制が、まあ、どこまで本音かは知りませんけれども、一応、非常に研究者の意向を聞いて、いろいろな運用をするということが確立しておりますので、それは僕は、いろいろな意味で非常に大事なんじゃないかと思っております。
    それから一つ、これは現在、我々が属している大学側の個別特殊な事情なんですが、主として地球観測は、気象庁、通総研、環境研というような国立研究所及び行政官庁等、NASDAを含めて、ある種の組織体で行われてまいりました。残念ながら、大学の中で、そういう地球観測等のことを推進できるような体制がないということで、個々の研究者というのが非常にフラストレーテッドになっております。それは、逆に言うと、ある個人がアイデアがあって、非常に意欲のある人の提案を、なかなか吸い上げてくれるようなフェーズがないねと。だから、どこかの組織に属するか、組織のフィルターを通さないと、なかなか行けない。そういう、いろいろな意味のストレスがあります。これは必ずしも、今日本の人が、それだけのあれがあるかどうかは別としても、やはり、少なくとも、一個人が、学部にいても何としても、非常にアイデアがあって、かつ、やる気があって、労苦を惜しまないような人がいたときに、そういう部分が、そのアイデアが生かせるような仕組みというのは要るんではないかと。それは多分、評価をきちんとすればいいし、最初から50億、100億という金は無理ですから。ただ、要するに、衛星のビジネスというのは非常に長い時間ですので、ほとんど研究者のワンライフかかるような部分がありますので例えば若い人で三十幾つぐらいの人が、本当に生涯賭けて、こういうことをやりたいという提案があれば、割と継続的にファンドしながら、やっていくような仕組みというのがあるといいんではないかと思っております。
    これはよく言われていることだと思いますが、僕もそう思いますが、基本的に、そう言えば言い過ぎかもしれませんけれども、やはり衛星とかセンサーの開発技術というのは、メーカーにあるんではないかと思います。だから、相当多くのお金が、過去においてはメーカーに行っておりますが、その一部でも、1%でもいいから、大学研究所に流れれば、それなりに蓄積がつくんではないか。だんだんと昨今、いろいろな部分で、大学でも技官等が減らせていますし、インハウスでの技術開発能力が落ちておりますが、やはり、ある種のインハウスの手作りのセンサーなり何かができるような能力というのが、すべての大学が持つ必要はないと思いますが、どこかの大学では、僕は要るような気がします。
    あと、2番目の項目は余分なことというか。ただし、メーカーが全くなくていいわけではないので、ある一定のメーカー等の維持が必要です。そのために、いろいろな宇宙ビジネスに関する技術を維持するためには、一定のサイズのマーケットというのが要るんだとここを、あるクリティカルな部分を切ってしまいますと、皆さん御専門の方もおられると思いますが、マーケットというのは量子化されておりますので、ある程度のサイズが要るそのことの配慮は、やはり国としても要るんではないかと。特にアルゴリズムとか、割と余り受けないようなマニアックな部分というのは、例えばカリブレーションとかあるんですが、そういう人材を一定程度抱えていくような腹づもりが、こういう分野では必要ではないかと思います。ですから、割と日本の場合、ほかの部分には、お金がすごい行きますが、割と地道な、かつ結構決定的な分野に関しても一定程度サポートするという覚悟が要るんじゃないかと思っております。
    それで、ここに書きましたのは、グローバルスタンダードにすべきだというのは、先ほどお話ししましたように、基本的に、こういう地球観測、宇宙ビジネスというのは、ある程度、国際協力が非常に進むでしょう。そうすると、ある意味では、仕事の仕方というのは、グローバルスタンダードにすべきではないかと思います。例えば、先ほどもお話ししましたように、NASA仕様と書きましたけれども、例えばNASAの場合ですと、研究プログラムでしたらプログラムディレクターがあって、責任ある研究者としてPIを公募してつけるとか、ある種のプロセスがあるわけですね。僕は、日本だって同じことができるはずだし、そうした方がいいと思います。例えば現在、NASDAでも、かなりお金を配りますが、それは委託業務みたいな形で配るわけですが、NASDAの中には、完全に研究費を配るというファンクションがないんですね。それは、過去にないというだけですので、全然、何の問題もないんですが、そういうことで、基本的に法的な枠組み等の整備等のことでありますので、少なくとも僕は、これからいろいろな物事を、グローバルに、国際協力でやっていくときに、相当多くの部分が、同じような仕方でやっているとすれば日本も、これから新しい宇宙機関を創造するときに、何も固有の日本古来の太政官布告令じゃないけれども、ああいうものに依ることはなくて、こういう部分は変えていった方がいいと思います。そうすると、今でも、NASDAなんかは、完全に研究費を補助する、研究費を出す機能を持っておりますが、日本の機関は、なかなか研究費を補助するということはできませんので、業務委託をする。そういう形になって、非常に煩瑣なトラブルが起きていると僕は思いますね。その辺も、新しい体制になったときには考えるべき。
    それから、小回りの効く組織と書きましたのは、僕は、割と小さなユニットにしておいて、分散化して、意思決定を効率よくした方が、これからの時代はいいような気がしております。だから、新しい体制で、宇宙機関を統合するときには、そうですね、三、四百ぐらいのユニットで、割と小回りが効くような部分にやらないとですね。日本って、管理コストが非常に大きいですから、調整とか、いろいろな意味で、そういうコストが増えていますので、その部分はやった方がいいと思います。
    それからやはり、基本的に、責任ある研究者の登用というのは非常に大事だと思いますですから、いろいろ見ても、例えば衛星計画でも、だれが提案したのかということが明確にすることが大事でですね。そうすると、何かわからないで、組織が提案しましたよという部分は、現業官庁等ならあってもいいと思いますが、少なくとも研究面で行きますと、だれが提案して、どういう計画でやったかということを明確にして、それを……。逆に言うと、その人、研究者の責任というか、権限というのは認めていくというような運営をしていく必要があろうかと思います。
    それから、マネージメント体制も、どうも、昨今、日本の経済状況がぎくしゃくしているんで、そうですが、アメリカ等でも、非常にドラスティックに変わったりしていますので、もちろん必要なんですが、例えば地球観測の中でも、ファイナルなプロダクトが研究だと考えますと、要するに研究成果をよく出すような、ある意味で研究経営というものは非常に必要になってくるだろうと思います。それは、そういうことがしやすいような枠組み整備を考えていただきたい。恐らく、今度の3機関統合の中でのマネージメントというのは非常に大きな問題があって、一方では、事業的なものをする場合と、研究オリエンテッドな場合と、いろいろなファンクションがあるだろうと思いますが、そういうのを同じようなことでやってしまいますと、結局、最も悪いところに並ぶみたいになりますので、少なくとも、それぞれが最もミッション・オリエンテッドで、最も効率よいようなマネージメントスキームが非常に大事だと思います。やっぱり結局、最後になって、研究者の場合、トラブルになる場合は、要は、瑣末な庶務系的なところの部分の事務の停滞等が結構いろいろな意味でロードになっておりますので、その辺のことを含めたようなクリアな視点が、僕は必要だろうと思います。
   

 井口委員長 
    どうもありがとうございました。我々が議論しております、これまでの日本の宇宙開発利用のあり方、それから、将来について、先生と大体、方向が同じとの印象を伺っていて受けました。少し時間をいただいて議論をさせていただきたいと思います。先生、よろしくお願いいたします。
   

 栗木委員 
    いただきました資料の後ろから2枚ぐらいは、拝見していて、まざまざと宇宙開発研究所のことを思い出しておりました。
    「今後の地球観測について」という後ろの下に書いてあります、「大学・研究所にも開発能力を」と。もし地球観測に、こういうことを要望されるということであれば、ちょうど天文とか、惑星観測を宇宙研がやっていたように、ああいうスタイルを希望しておられますか。つまり、ああいうことをやりますと、ある意味では責任、つまり単なる要求だけではなくて、その成果から評価に至る責任を取らなきゃいけない。それから、おっしゃっておられるように、マニアックな部分もやらなきゃいけない。それから、マネージメントとなると、必ずしも研究オンリーではなくて、泥をかぶるような仕事をやらなきゃいけない。そういうことを大学でやれるかどうか。そういうことも大変気になるんですけれども、大学のスキームで、どういう具合に、それをやられたらいいか。私も、3機関統合で、一番、ここが大事じゃないかと。宇宙科学研究所は大変よくクローズした、こじんまりしたスケールでやってきたんですけれどもおっしゃっておられる、これが結構、植えついておりまして、年齢層で区分けして、マニアックな部分は院生がやったり、シニアの人たちが泥をかぶったりとか、そういうことが割にやられていたんですけれども、大学組織として、もし新機関とつき合うときには、そういうところはどうやったらいいんでしょうか。
   

 住センター長 
    僕自身の個人的な意見ですが、やはり、僕自身も、宇宙研と同じような形の、地球環境による研究所というのはあって、それはできると思います。だから、結局、実際、現在、我々の部分の同業者でも、ほとんどのプロジェクトで泥をかぶって、NASDAあたりと協力しながらやっておりますので。だから、そういう点では、本当に泥をかぶるようなというのは、僕は学部に、というか、それは語弊がありますが、大学でやることは、事業としてやるということは非常に大学でできると思うし、そういう組織も必要だと思っております。
    ただ、一番、大学で大事だとみんなが言っていますのは、アカデミック・フリーダムでだれが決めるのかというところの意思決定の問題があって、それは、研究者の自分の意思でできるようなスキームが、そういう手だてが欲しいというのはあるわけです。例えば現在、これは多くの人が不満に思っていますのは、先ほどのお話のIMGというのは、初めてのフーリエ干渉型のセンサーを載っけて、世界的評価も高いので、フロンだって、40億ぐらいあればできるとみんなが言っていたのに、それが一切、予算がつかないんですね。何でつかないかというと、そう言っては何ですけれども、割といろいろな諸般の事情でつかないわけだけれども。だから、非常に評価があった部分が、もっと簡単に、センサーのお金がついたりしたら開発ができるとか、そういう自由なスキームがあった方がいいと思いますし、そういうスキームはできると思っております。
    だから、新しい3機関統合の場合に、僕の基本的な構想でいきますと、宇宙研相当での地球観測の研究所というのは、僕は別途あった方がいいと思いますが、大体、規模としては250人ぐらいの規模でいいと思っていますし、予算規模としては、地球観測のものはでかいですから、打上げを含めると500ぐらいの金は欲しいと、みんな言っておりますが、それぐらいのユニットがあると、僕は非常にいいとは思っています。ただ、地球観測で嫌らしいのは、省庁の部分というのがまたあって、ここは別の枠と言うと語弊がありますが、別のことが働く部分がありますので、そこのところがあって、やはりNASDA的な国全体としてミッションを考える。しかも、衛星は割と大きくなっているし、いろいろなセンサーの組み合わせとかということがありますので、国として、そういうミッションを考えるような機関があるといいと思いますので、そこのところは、非常に要ると思います。
   

 栗木委員 
    宇宙科学研究所の中で働いている方、あるいは共同研究として、外から参加される方も、完全に自由ではありませんでね。結局、理学委員会というところで、かなり激烈な議論があって、だれのを次の優先順位をつけて、実現させるかと。そういう場があって、それに伴う責任もあって行われるんですね。そういうものをやらないと、いかに個人で、個々の自由だといって、大学でやっても、なかなか力として、そういうものが実現されないんじゃないかなと。そういう気はしますが。
   

 住センター長 
    だから、我々の多くの人は、そういう責任が来るのは別にいとわない。実は、そういう責任を持たせてもらえないから、みんな、怒っているわけです。だから、本当の意味で、そういうセレクションがあるのは当然で、それは今までがなさ過ぎたというのが、むしろ問題なので、そういうのは全然問題ないと僕は思います。だから、問題は、非常にフェアで、クリアで、透明なあれがあって、一たん決まったら、そのPIの人が責任を持つんだから、その人が、できる限りやりたいようにやれるような体制作りというのは要るんだろうと思いますし、そういう新しい枠組みをやることには、僕はやぶさかではないと思っています。
   

 栗木委員 
    自発的に作られる意欲、動きはあるわけですか。
   

 住センター長 
    それは意欲はありますが、現在、いわゆるNASDAの地球観測利用研究センターを軸としたような研究者が集まっているんですが、要するに3機関統合のところの実態がよくわかってこないのがあって、その辺が非常に現実的に、いろいろな意見があって、難しいんですが。だから、我々の仲間内では、どうすべきかという議論をしたりして、アピールを出していこうとは考えています。
   

 川崎委員 
    今、先生が出されている全体の構想は非常にいいと思うんですが、ちょっとこんな見方をしているんですが。
    1ページ目にあった、事業的に展開可能で、一部、既に現に事業としてやっておられるのは気象庁なんですが。それからもう一つは、研究的要素として、各大学なり、それぞれの機関でやられている。逆に言うと、事業的であればあるほど、クローズドになっていくそれから、研究であればあるほど、個人のアイデアというのが尊重されて、これもクローズになっていて、横に広がって、全体としての地上での利用データの統合的な利用システムという観点からのコンセプトというのは、率直に言うと出てこないんじゃないかというのが私は不満なんですが、先生は、どんなふうに見ておられますか。
   

 住センター長 
    それは必ずしもそうではなくて、例えば気象庁のデータでも、かなりデータセットにして、アクセスできるようになれば、非常に利用者が増えてくるんですね。
   

 川崎委員 
    できるようになればですね。
   

 住センター長 
    やっぱり、そこのところが、例えば気象衛星の場合でも、気象庁がデータセットにするかというと、それは業務側ですねと。自分の仕事に、データを配るだけで手一杯で、とても、わけのわからないユーザーの面倒まで見切れませんねという話になるわけですね。そういうところが、パカッと落ちてくる。だから、地球観測に関して言いますと、むしろデータをアーカイブして、非常にボリュームのあるデータをアーカイブして、だれでもできような、そういうデータセンター・ファクンションというのが非常に大事です。これは、すべての報告書に書いてあります。今までも。ありとあらゆるときに必ず書くんですが、実際はやらない。ほとんどやらない。というのは、逆に言うと、その評価が低いからなんですね。日本の社会の中では。
    要するに、日本の社会というのは、特に研究コミュニティーもそうなんですが、割と、何かみんなのために尽くしてやるということに対する評価が低い部分があってですね。だから、結局、データ問題は、地震予知のところでも、どこでも問題になっている。膨大なデータがたまってきますね。それを非常にみんなが使いやすくするように整理し、アップデートし、いろいろなことをするというのは非常に地味だし、非常にクリティカルなことはみんな、わかっているんですが、自分はしたくはない。だれか、やってくれればいいねという話になって、どうしても、そういう部分が落ちていくんですね。それは、僕は、日本のサイエンス全体でね。例えば、本当に過去の地質の資料とか、鉱物のサンプルから、データから、いろいろなものが、どんどん雲散霧消してくる部分がありますので、その辺は衛星データも同じで。しかも、衛星データの特徴は非常に量が多い。
   

 川崎委員 
    そうすると、そういうインテグレーテッド・インフォメーション・システムみたいなものを、衛星も込みにして、全体で考えていくと。そういうことが一番欠けているわけですね。先生方に期待してもできないわけですから。ボランティアには。
   

 住センター長 
    だから、その点に関しては、例えば大学の場合ですと、東大の生産技術研究所、高木先生が中心になっているやつは、基本的に情報通信みたいなものとリンクしないと……。だから、高木先生の場合は、大容量データのアーカイブシステムとネットワーク、そういう観点でやられていまして。だから、大学としては、高木先生の、そういう観点の地球観測のデータ・アーカイブなんかは非常に大事だし、しかも、NASAも含めて、1カ所でまとめてやることできないので、分散的にデータをストアすること。それから、地球観測の場合のデータは、一たん取ってやれば、あとは、そのプロダクトにするアルゴリズムの開発は、常時、研究者が関与して、常に常にアップデートする必要がありますので、そういう点では分散型のディストリビューテッドなデータシステムというのが大事だと僕らも考えていますし、その方向は、地球観測の分野では非常に大きく議論されています。
   

 川崎委員 
    そうすると、もう少し、地球観測ではいろいろなセンサーがありますから、多元的なセンサーを統一目的に複合して利用するということが可能になってくれば、新たな知見が得られる可能性があると。立体構造とか。
   

 住センター長 
    はい。だから、我々の場合は、うちのセンターは、基本的に多元的な衛星データを、基本的には、数値モデル、我々の持っている大気大循環モデルとか、そういうモデルの情報なしにしては、なかなかとそういうのもまとめにくいだろうと考えています。
   

 川崎委員 
    政府が音頭取りとか、そういうことでやらないといかんわけですか。
   

 住センター長 
    逆に言うと、どっちが先か後かということにあるんですが、そういうようなプロポーザルに対して……。だから、逆に言うと、例えばある部分、ある機関が100億程度のプロポーザルを書けると。そういう競争的な環境であれば、大分変わると思いますね。結局、今は、大きなものは概算要求マターで、役所を通してしかないわけですね。だから、高木先生も生産研にいらっしゃるとき、生産研から出してはだめだと。それは宇宙研から出すとか何とか。要するに、だから、本当のプロポーザルそのものの価値ではなくて、おまえは、どこの機関に属しているかとか、そういう観点で従来の日本の場合、評価されていますので、そういう点では、みんなのフラストレーションがたまっていると僕は思いますよ。だから、逆に言うと、本当に日本のそういうプロポーザルベースが競争的資金が、1人のアイデアで、例えば1つの研究所が建てれるような自由度があるぐらいのダイナミクスがあれば、僕は、そういうこともあり得ると思うし、やりたいという人は、いくらでもいるとは思いますけれどもね。だから、今度の場合でも、そういう形の競争的で、かつ透明で……。だから、それは最初から、1人に50億なんてできませんからね。それはもちろん、FSから、ちまちまとやっていくんだけれども、少なくとも宇宙に関して言えば、ライフワークとして、自分は、例えば何かやりたいんだと。これぐらいのことをやるんだというプロポーザルを育てていく。そういうような積極的なファンディングがあれば、それは僕はそれでいいと思う。
   

 川崎委員 
    核兵器とか、地球変動プログラムだとか、あるいは文科省でいえば、科学技術振興事業団の戦略的基礎研究の環境育成とか、そういうところでの応募でもだめなわけですか。宇宙は、この場合、単なるツールとして利用しているに過ぎないんで。ある意味で言えば。
   

 住センター長 
    例えば地球変動を観測する場合は、宇宙はツールということもあるし、アプリケーションとか、利用するような部分に関しては、そういう部分のファンドも可能だと思いますね。ただし、はっきり言いまして、日本の競争的資金というのは、言っても、基盤的部分がないと、なかなか、それだけではワークしないので、5年という単位というと割と長いですし。例えば我々がやっているようなモデルの開発なんていうのは、これはとても5年で終わり、はい、御苦労さんというわけにはいかないんで、非常に長い蓄積が要りますので、そういう点では、ある程度の組織の運営体というのは僕は必要だと思います。基盤的な知識とか、そういう部分の習得というのは、かなり必要な部分があると思います。
   

 井口委員長 
    先生の2枚目の「実利用的な運用が可能」というあたりですね。今、私は外から来たものですから、外のいろいろな批判というものは耳に入り、また気になるんですけれども、今まで、日本の宇宙開発というのは、NASDAだけで言えば、これまで30年間で2兆円かけたと。何ができましたかと。気象衛星は、確かに幾つか、それから通信放送衛星なんかもありますけれども、それ以外に何がありますかと。つまり、投資した結果が社会にどれだけ役に立っているか。それを今求められているように思います。したがって、「実利用的な運用が可能」、この可能性を実現するというあたりに、相当シフトしていくことをやらないと、日本の宇宙開発は国民から支持されないんじゃないかという気がします。
    ただ、そのときに、先生がおっしゃった宇宙の開発利用というのは、総合事業だとおっしゃいました。そのとおりだと思います。つまりサイエンスがあり、エンジニアリングがあり、ビジネスがあり、そこでマーケットが大きくなる。その一体でやる部分を、これから大きくすることになるとすると、また予算の面でも、今突然、来年から今の予算の2倍になったら、先生のおっしゃることのかなりの部分が実現できると思いますが、そうはいかない。そうすると、かなりのところに重点化を置きます。そういった方向で行かざるを得ないだろうと思います。
    また、環境をターゲットにした地球観測は、同時に、地球観測の面では、国土管理、つまりジオメトリカルなやつですね。それとも相当オーバーラップしているところがあるしGISだって、いろいろな官庁でやろうとしているわけですから、そういうものと総合的にやっていくと。そういう方向に進まざるを得ないと思っているんですけれども、いかがでしょうか。
   

 住センター長 
    地球観測の実利用的なことを考えますと、やはり、それは非常に早い現象。だから、長い現象で、衛星は持ちませんからね。非常に短い。で、その特徴は、グローバルで、人がいないところでも、パッとなめて、早く情報が取れるということを考えますと、僕はもともと気象台を出ていますので、例えば気象衛星なんかは完全に支持されているわけですよね。やっぱり気象衛星なくしては天気予報もできないし、あのぐらいビジュアルにやらなくては。それから、例えば熱帯雨林の伐採とか、ああいう環境破壊の様子を見ていくということは、非常に衛星の得意な分野でありますしね。そういう点が、僕は非常にあると思います。だから、あとは、どの程度、みんながどう思うかという問題だと思う。
   

 井口委員長 
    ビジネスにどうやって結びつけるかという部分が、今まで欠けていたんですかね。いろいろな研究者にしろ、開発者にしても、やりたいことをやってきた。その後は知らないよというのがあった。まあ、それはちょっと言い過ぎですけれども、そういう状態だったと思うんです。だから、利用まで考えて、全体のシステムとして開発するそういう方向にシフトしていかざるを得ないだろうと思います。もちろん、研究で、大学では、個人の研究者の知恵を生かした部分というのは、これは生かさなきゃいけないと思いますけれども、それとは別に事業化といいますか、そっちの方向に相当力を入れてやっていくことになるだろうと私は予想しているんですけれども、そのあたりも、先生はいろいろ書いておられるんでですね。
   

 住センター長 
    僕は、その事業化のところは、自分の担当ではないんですが。
   

 井口委員長 
    いや、先生に担当していただいて、そっちを見ていただいて。
   

 住センター長 
    いや、ただ、現在、明らかに事業というか、例えば経済でもいいんですけれども、そういう部分にリンクしようとすると、衛星だけでは無理なんです。例えば衛星データに基づいた天気予報精度の向上とか、もう一発、ソフトが要るわけです。本来は、僕の意見は、その部分は気象庁は、相当、ポテンシャルがあるんですが、いかんせん、あそこのいろいろなこと、個人的にもいろいろなことがあって、なかなか拡張できていないんですが、それはある程度、非常にね……。
    それから、先ほどお話ししたように、計算機も非常に進歩しましたし、我々が現在やっているようなモデルも非常に進歩してきましたので、現在、気象庁でも、衛星データを利用したことによって、非常に短期の集中豪雨の予測精度が上がっています。だから、商売がどうかという観点で行きますと、長期予報の方がもうけ口は大きいんですね。これに関しては、もともとの問題が難しいですから、あれなんですが、少なくとも短期の防災とかまあ、その防災が金になるかどうか、それは判断ですが、少なくとも防災情報等に関して言いますと、衛星データがあることによって、日本に関して言えば、東シナ海上のデータが入ることによって、少なくとも九州とかの梅雨前線とか、ああいうことの精度は明らかによくなります。この間も、GPMのシンポジウムで、気象庁の数値予報官が言われたように、現在、気象庁なんかでは、完全に衛星を、数値予報の短期の予報にどんどん使っていて、精度を上げていくということが行われています。
    グローバルな場合でも、例えば海流の流れとかですね。だから、我々の場合、非常に重視しているのは、明らかに21世紀前半は、水問題が非常にクリティカルになるだろうと。そうすると、どこに降水があって、雨量がどのぐらいでと。そういう水資源管理というのはクリティカルだということと、日本は、アジアを後背地として持っていますので、少なくともアジアにおけるデータ提供と、そういう部分のリーダーシップというのは取っていく必要があろうと。
   

 井口委員長 
    おっしゃるとおりだと思います。でも、今までは、例えばどこかに集中豪雨が予測できたら、どれだけ得になるか。もしそれがなかったら、どれだけ、逆に言うと、損失が出たか。そういうものに対する数量的表現、成果の表現というのか、それを外に対して言ってないんですよ。だから、それも我々の仕事じゃないかと思うんです。だれか、ほかの人にやってくれといっても、それはやっぱり、ちょっと自分の責任を放棄しているんじゃないかという気がしますのでね。その点も含めて、これからやっていく必要があるんじゃないかと思っています。
   

 住センター長 
    まあ、日本の研究者全体的には、そういうお金のことを言うのは、何となくはしたないねみたいなところがあってですね。そういうことを言うと、何か、予算確保目当てに、下品だなと周りの人は、ちらちらと見るわけですよ。だから、大学の中でも、なかなか言いにくいことがあったんですね。やはり、これはピュアに学問的な名義があるんだと。そのために当然、日本の国としてはお金を使うべきだと。まあ、そういうことが非常に多い。
    だから、我々が一番危惧するのは、何でもお金ですかとなっちゃうと、非常に怖いという気があるんですね。最後は人命は幾らで勘定するんですかになっちゃうところがあってどうも、その議論を余りというか、わかりますけれども、どうも余りしたくない。何か、心の中に歯どめが欲しいなと。何でも金、金と。そうすると、逆に言うと、1人5,000万円払うから、何もしない方が得じゃないかという変な議論に、すぐ行きかねないんですよ。日本の場合、というと悪いですけれども。
   

 井口委員長 
    私は交通が専門なんですけれども、自動車交通の安全対策の場合には1人幾らと。それに対して、どのぐらい投資すればと。欧米だと、1人大体1億円なんですよ。1人助けられるんだったら、1億円投資する価値があると。そういう判断をしますだから、日本も、だんだんそっちの方向に行くことになるでしょう。実質的には、直感的にやっている可能性があるんですよ。まあ、それほどあからさまじゃなくてもね。ある程度は世の中に説明するには、そういうことも必要なんじゃないかと思いますね。
   

 住センター長 
    でも、それが非常にもろに出た例は、IPCの第3で、例えば南の国は1人幾らですよと。値段が違いますねという話になってくるわけですよ、必ず。そうすると、安い国の人が、じゃ、何もかけない方がいいんですかとなっちゃってね。僕らはそこのところを計量的にするというのは非常に意味があって、物事を整理するのに意味があるんだけれども、計量というのは価値観が入ってきますから、そこのところが一人歩きすることが非常に怖いので、何となく……。まあ、役所が言う分にはいいんですけれども研究者側から、そういう計量を使って、セールスをするというのは、余りやりたくないねというのが、本音のところだと思います。
   

 川崎委員 
    もう一つ、先生の説明の中に、私ももっともだと思っているんですが、法律的な整備をしないまま実行上で行ってきたというくだりがあったと思うんですが、具体的には、どんなような法律を、先生の頭の中ではイメージされていますか。
   

 住センター長 
    例えば、これはこういうことなんですが、この間、宇宙開発事業団法というのがありますね。そこは全然いじくらなくて。それは逆に言うと、すべての日本の法律事項は裁量行政と言われるように、基本的な法律はいじくらないで、適用をどんどん変えながら、現実にキャッチアップする。それは一面では効率よく行くわけです。法律を見直す手間がないから、いいんですが、反面、裁量行政になって、ころころ変わる。担当者が変わったり、情勢が変われば、ころころ変わる。だから、そこのところは、僕は、日本のすべての行政に関するジレンマだと思います。例えば会計法とか、いろいろな部分でもそうですが、ほとんど昔の明治以来のやつを変えないままで、運用で変えてきますから、それは非常にいいんですけれども、逆に言うと、日本の国から、これは本当かどうか割と順法精神がないのは、法律というのがあるんだよと。でも、実際は運用で、こんなに幅があるんだから、法律そのものを考える、杓子定規と言いますよね。現実は違うんだから、もっと酸いも甘いもかみ分けてやりなさいということは、逆に言えば、無原則でと。それは非常に効率的であったんですが、それは前提があって、ほとんど同質の日本人だけで、まあまあという間では非常に効率的だったんだけれども、もう、そう言っては何ですけれども、日本がもし国際的に開くとすれば、全然書いてないじゃないかと言われたら、ぐうの音も出なくなってしまいますよ。実際、そういうのはいっぱいありますよね。だから、どこにそれが書いてあるの? と言われたときに、ほとんど、それは当然ですよと。我々の分野で、こういうことはしない方が望ましいと書いた文章があったら、日本人は、大体、それはだめだと思うけれども、どうも、御苦労さん、ありがとうと。で、何が悪いの? と言われたら、もうぐうの音も出ないでしょう。そういう点では、日本も、国際社会に行ったときには、割と法律国家と言っては悪いけれども、別に好きではないんですがやっぱり……。全く価値観も言葉も違う人たちと共存していくとすれば、どういうことを書くかというのは非常に大切だと思います。
    それから、行政の観点から、やはりゲートをあけるわけでしょう、これから。多分、国際的な面で、ゲートをあけていくわけですよね。そうすると、任用等、すべてのプロセデュアが、少なくともドキュメントに基づいたようなプロシージャにしておかないと、違うんじゃないの? と言われたときに、相当まずいと思いますよ。
   

 川崎委員 
    私の頭の中のイメージは、さしつかえないというか、機密でない限りにおいての得られた情報の共用といいますか、公開とか、そういうことによって利用を開拓すると同時に、新しい利用分野を開くと。そういうようなものについて、はっきりしていないなという点では私も感じているんですけれども、今おっしゃったような総合的にはあると思います。
   

 審議官 
    すみません。今おっしゃっているのは、具体的には地球観測みたいなことを、法律上、ちゃんと記さなきゃいけないということですか。
   

 住センター長 
    例えばNASDAがやったときに、研究みたいな機能がNASDAに必要だといったときに、現行法は、研究はしないと書いてあるかどうか知りませんけれども、とりあえず、宇宙研から分かれたときとそのままなんですね。NASDAというのは開発機関です。やっぱり、そうしたら、必要だったら研究もできるように書き足した方がいいやと思う部分があるわけ。まあ、別にそれがなくても、実行でできるじゃんと。こうなるわけですよ、実際の今までのやり方は。それはもう、みなしてやっていけばいいでしょうと。だから、予算の点からでも、ある時期までは、特殊法人の方が予算が通りやすいと。それだから、全省庁がなだれをうって、出資金の方に行ったわけですね。それはなぜ行ったかというと、結局、金が取りやすいというだけなんですね。それは、もともと建設国債をどうするかとか、財政のもともとを考えれば、ちゃんと行くものを、ただ、こっちが金を取りやすいから、じゃ、ここに行きましょうと。ここが難しかったら、また、こっちへ戻すと。そういうことをやっていくと、だんだん限界があるんじゃないんですかねというのが、よそごとながら、僕はそう思っていました。やっぱり、筋としてはこういう事業が必要だったら、それが必要なふうな設置法を作って、それに対して予算措置をするとか、そういう行政をしていった方がいいんじゃないんですかねと、まあ、素人的には思っているということなんです。
   

 澤田委員 
    今、事業化の話についてお伺いしたいんですけれども、確かに事業化できるものは、大いに事業化していくと。日本なんかの場合、日本人のあいさつでも、天気からやるから、気象衛星というのは大変価値がある。それぞれ資格を持って、いろいろな人が、今日は天気がいいとか、悪いとか、いろいろなテレビで違ったことを言っている商売があるわけですけれども、それはそれで結構な話だけれども、長期展望となると、まだまだ日本の気象というのは、みんな、まゆつばで見ているんじゃないでしょうかね。これは日本の1つの衛星だけで、地球全体のあれを見て、長期なんていうのはできないんですね。まさに気象にだけ絞って見ても、生存基盤たる地球に関する知見というのは不可欠だと。まさにそのとおりであって、共通の知識であってしかるべきなんでしょうね。そういったものを事業化ということだけで、GNPは、日本は世界の何番目だとか、21番目に下がったとか、いろいろなことを言われるけれども、日本だからやらなければならないというだけでやるということも必要だけれども、グローバルな目で見て、何かやっていかなければ、とてもできないんじゃないんですか。それをもう少し……。今、気象衛星、情報を集める衛星が地球上に幾つ上がっているのか知りませんけれども、そういったものを一緒にしてやっていくということの方が、より効果があるんじゃないかということはね。
   

 住センター長 
    それは、全体調整でやられていますし、我々も、だから、何でも全部とは。日本は従来は、総合百貨店型で、全部、日本にそろえようとしましたですよね。それはベースラインが、やっぱり戦争がやる気があったから、一たん、ことがあれば、日本で全部持ってなければ勝てないと思ったから、そうしたわけでしょう。基本的なコンセプトは。だから、それは違うというので、国際協力が必要ですが。
   

 澤田委員 
    その国際協力という言葉はいいけれども、中身として、どういうものが必要だということを、学者グループの中では議論されているんだろうかと。
   

 住センター長 
    学者グループの中では、これは要らないから、こっちを通せという議論はしないんですね。残念なことに。やはり、これは必要だねと。まあ、ダブッているやつは一緒にしましょうねということはしますが、おまえのはだめだというふうには言えないものなんです。あとは、だれかに判断してもらいましょうと。それぞれ自分たちは、必要だと言いましょうという話です。ですから、国際的な枠組みの中では、少なくとも計画の重複はないねと。それから、明らかに同じようなものをやる必要はないし、むだなものはやめましょうと。そういう調整はしますが、実施面に関してまでのあれはありませんそれは各国の宇宙機関と相談しながらやる形になります。それから、宇宙機関は宇宙機関で、それぞれのお家の事情というのが、まあまあ、ありますし、そこはいわゆる2つの妥協点で決まると思います。
    ただ、僕は、アメリカが、あれだけ勝手なことをしながら、国際的に評価されているのは、例えば温暖化に関しても、温暖化は、ばかだ、何だと言っていますけれども、温暖化研究に対して使っている金は、アメリカが一番大きいんですよ。少なくとも。だからアメリカは、ごちゃごちゃ言っていても、例えばアメリカが、うちは温暖化対策はしないから、それだけ研究費を出すよといったら、それはうそではない。ただ、日本が、そういうことを言ったって、だれも信用しないわけ。そんなに温暖化なんかに出すわけがないとあの国が。こう思われるわけですよ。それはやっぱり、日本の信用というものだと思いますしね。少なくとも日本は、グローバルなトレードで飯を食っている国ですから、国際的な意味でも、全体に関与していくというのは何ら問題はないと思いますよね。
   

 澤田委員 
    まあ、問題はないんじゃなくて、もっと一歩進んだような形での国際協力というものを提案していくとか、何とかということが、そろそろ出てきてもいいのじゃないかなということを期待しているんですけれどもね。
   

 住センター長 
    国際協力は、それなりには、いろいろ……。
   

 澤田委員 
    ただ、さっきも話があったように、いろいろな2国間だとか何とかだとか、情報交換はやっているけれども、実際に運用という面でのあれというふうに、もう少し何か出てきてもいいんじゃないかなという気がするんですけれどもね。
   

 住センター長 
    国際協力の場合は、基本的に、上にお金がある。そういうインセンティブで両方とも動くから。だから、もし国際協力を本当にする場合は、僕は、インターナショナルなファンディングだと思いますよ。結局は、お金の出具合が、各国から出てくるわけでしょう。そうすると、結局、すべての人は、お金がどこから出てくるかを見ていますから、国際協力で自分のところから金が出る限りやるわけですよね。だから、どう考えるかによるんですが、ある意味では、インターナショナルにまとまって、やったところにファンディングソースがあることによって、まとまっていく形になると思いますね、それは。結局、研究者は結構、一事業者みたいなものですから、金がすべてとは言いませんけれども、金が結構大事なんですよ。そういう点では、何を言ったって、お金をくれるところに顔が向きますから。
   

 栗木委員 
    それがあれでしょうかね。データ自前主義という。
   

 住センター長 
    データ自前主義というのは非常に大事でね。アメリカだってそんなに信用できる国ではないと僕は思っていますから、全部、人の国のデータによったら、加工されたらアウトだと思いますよ。
   

 栗木委員 
    おっしゃるとおりですね。それがまさしくデータ自前主義というのは、国家的なレベルでもあり、個人的なレベルでもあるんですね。先般、省庁間のいろいろな地球観測のデータの運用に関して、一元的という言葉が随分出たんですよ。私は、そのときに、このデータ自前主義とコンフリクトするんじゃないかというのが随分気になりました。といいますのは、どこかに生データのアーカイブがあっても、それを使いこなせるかどうかというのは大変問題なんですね。センサーを作った人がだれで、その衛星がどういう環境に置かれて、そのデータを取ったかと。それを全部組み入れて、本当に正しい結果を出すというのは、かなり自前の開発をやった人じゃないとできない。宇宙研なんかですと、生データというのをストアしておくんですよ。よその大学からアクセスして、それを欲しいと言われるんですが、アーカイブした生データを出せば使えるかというと、使えないんですね。結局、そこにどうしても自前主義というのが入ってくる。また、入れないとそのデータは生きないというところがあるんですよ。私は、ここが一元化と自前主義のぶつかるところだなと。ですから、省庁のデータのアーカイブの一元化論というのが出たんですが、下手をすると、生のまま使われずに、ストックされちゃう。それが危険な部分としてあると思うんですね。そこをうまくやらないと、データが生きない。
   

 住センター長 
    だから、今でも、NASAでもそうですが、基本的に、研究者のそばにデータを置かないで。だから、データが製品みたいに、こういう本とすぐ思うわけですよ。データというは、本みたいに完成品があると。そんなのはボリュームがあって、不便だから、まとめてあげるよと思うんだけれども、実際はそうじゃなくて、手を変え、品を変え、磨いたり、こうやってよくしていかないと、データはよくならない部分がある。だから、研究者の人とつけておかないといけない。しかも、責任ある、本気で、それを自分がよくしようと思う意欲がある研究者とペアにして、データを置かない限り、なかなかデータというのは本当によくなっていかないというのは、すべての多くの人、ほとんどの人が認めているところなんで。
   

 井口委員長 
    おっしゃるとおりで、だったら、データを加工して、ある程度、利用しやすいところまでやっていただいて、1つのプロジェクト。それに対して、金を出すと。そこまで責任を持ってくれと。そういう出し方をすると。
   

 住センター長 
    ですが、日本の場合は、基本的に物作りだから、衛星が上がっちゃうと、プロセスが終わっちゃうわけでしょう。
   

 井口委員長 
    だから、そこを変えていかなきゃいけない。
   

 住センター長 
    日本の場合は、データ利用に関するプロジェクトがないんです。
   

 井口委員長 
    わかります。そういう気もしております。
    今日は、大変、本音の議論をさせていただいて、大変ありがとうございました。また、そのデータ利用というのは、これだけ問題があるんで、また先生にもいろいろ教えをいただきたいと思います。今日は本当にありがとうございました。
    それでは、我々の間での議論を進めたいんですが、五代委員が案を温めておられるんで最初にその話があったらどうかと思いますけれども、いかがでございますか。よろしいですか。じゃ、五代委員の方から。
   

 五代委員 
    まだ温めているというわけではないんですが、全く意味の住先生の表題にもありますが、個人的とありますが、これは全く個人的見解と提案でございます。したがって、委員の方にも、ついこの前、あるいは今日、お渡ししたようなもので、全く初めて聞く方が大半であるというか、全員という感じです。
    まだ、そんな個人的なものですから、資料としては、私はもちろん持っているわけですが、配付はいたしませんで、いろいろな説明をいたします。
    お役所の壁とか、いろいろなのがありますけれども、統合的に、ともかく宇宙開発委員会というのは、日本の宇宙開発利用というものを、これからどう持って行くかという、非常に今、折り目のターニングポイントのところで、少なくとも我々が、そういう方向とかあるいはもう少し具体的に何か示せればいいと。こう思っているわけで、それで個人的でありますが、書いたりしたわけです。
    宇宙開発委員会の6枚ぐらいの、後ろ2枚、カラーの絵がついたのがありましたね。提案というか、方向というものですか。あの一番後ろの方に、横に30年計画があるんですが、何となく、ただ並んでいるだけかなとも見られるし、一つは、ウェートがどこにあるのか。線の太さというけれども。それで私が思ったのは、皆さんも言っているかと思われますが、もう少しインテグレートしたものが要るんではないかと。今度の戦争ではないけれども、テロの後に、ショー・ザ・フラッグという言葉が出ましたけれども、いろいろな解釈があったようですが、私は、新しい機関が、統合したような宇宙プログラム、これを簡単にフラッグシップ・ミッションと以後言います。フラッグシップというのは、御存じのように、軍艦ですけれども、自動車でいえば、トヨタのフラッグシップといったら、セルシオですかね。知りませんけれども、まあ、そういうふうにあるわけですね。ともかくだれが見ても、トヨタのナントカとか、そういうショー・ザ・フラッグと。そういうものを作る必要があるんではないかと。本当は自然とできてくればいいんですけれども。いやそんなものは要らないという議論があるかもしれません。まあ、それはそれで、そういうことも皆さんに議論していただいたらいいと思うんですが。
    それで、この前も新聞を見ていたら、夢か、産業化かと、どこかに書いていた。私は、あれは違うと思う。夢も、産業化もと。中に科学技術というのがありますが、それがみんなできる。要するに、宇宙開発利用というのは総合システムですから、単に夢だけの話ではないですし、産業だけの話でもない。時期的なことで、早く産業化とか、そういうのはいろいろありますけれども、もっと統合化すべきものがあったらどうかなと。
    それで、宇宙開発委員会で、こういう案でみんなでどうですか、検討してみませんかという言い方もあるでしょうし、これだけ宇宙のコミュニティーがあるわけですから、機関だけじゃなくて、産業界もあるし、利用機関もある。そういう分野からの提案というのも大いに歓迎する。ただ、その分野−−幾つか分野があると思うんですが−−の間でも競争すべきである。あるいは分野の中でも、いろいろなプログラムがあるでしょうけれども、その中でも競争する。で、これぞというのを、その分野で提案してもらって、それで最高のものを作るというやり方もあるんではないかと。
    それで、このフラッグシップ・ミッションというのを、どのぐらいの期間で考えたらいいかなと思ったんですが、30年後はこうですよという成果も、余りにも長いでしょうと5年というのは目の前。だから、まあ、10年と仮定をいたしました。それで10年ぐらいたったところで、もちろん途中で評価とか、いろいろな途中の成果があるわけですが、10年後に、ちゃんと成果がわかる。それで、国民が、あるいは社会が望むと。あるいはスタートするときに、もう既に方向性も非常にわかりやすい。今、1つは、宇宙開発利用というのは、いろいろなのがあって、確かに総合システムだから、わかりにくいところもあると思うんです。それで同時に、世界に、その扱う分野ではトップになる。それから、せっかくの3機関が、ただ一緒になってやるというんじゃなくて、やっぱり3機関が、そこで活力を出して、そこが中心になって、周りに対しても存在感を示す。日本の宇宙開発利用を本当にリードする。こういうようなプログラムを、それをフラッグシップ・ミッションと。こう言ったんですが。
    いろいろなプログラムがあるけれども、今言われている中には、重点化というのがありまして、限られたお金の中で重点化する。それとも、もちろん密接な関係があるんですがこういうフラッグシップ・ミッションというのを、機関ができるのが2003年とか言われていますから、その辺から10年以内に、10年を目標に作ったらどうですかというのが私の提案です。
    それで、いろいろなところで、この新体制、それから21世紀の宇宙開発をどうしたらいいんだという議論が、いろいろされているわけですね。その中で一番目に、まず総合科学技術会議があります。総合科学技術会議では、御存じのように、安全・安心とか、国民の夢や産業とか、そういうたぐいが出ております。それから、文部科学大臣の5つの指針があります。もちろん、その中の1つは、お金はフラットですよということがありますけれども、欧米と伍して競争力を持てるような将来ビジョンを作りなさいと。重点化しなさいというのがありますし、いろいろな5つの項目があります。それから、宇宙開発委員会で、さっきの方向ですか、あそこに書かれているようなことがあるわけです。それから、3機関の間で、将来構想という合同チームが検討されているのがあります。更に、この前御紹介があったと思いますが、企業と経済界、経団連ですが、そこと文部科学省の合同の勉強会があって、産業界が中心ですが。そういう5つあると思うんです。その中で特に総合科学技術会議、文部大臣、この宇宙開発委員会、これは国の基本的な方針のところを審議しているわけですから、これは、そういう線に沿っていく。それから、3機関でもいろいろな検討をしていますが、これは参考にすると。というのは、余り全部を入れたら、これは妥協の産物以外の何ものでもないから。それから、企業と一緒のもの、これも参考にする。こういうようなことで、フラッグシップ・ミッションを考えたらどうかと。
    で、一体、お金はどこから出るのか。お金は、どれぐらいだという話になると、これは私個人的というので、ばっさりとあれしまして、フラット予算でも、10年間、合計してみたら、1兆5,000億あるんですね。それを毎年で分けてみると、先ほどの住先生じゃないけれども、40億だと。そういうのはないよとかという話にもなるんですが、そのお金を、今考えられる分野というのは、例えば宇宙環境の利用とか、地球観測とか、輸送系とか、衛星とか、通信とか、技術とか、いろいろありますが、その中にも一つ、フラッグシップ・ミッションという分野を1つ作ってみる。合計すると、大体、私はいい加減に書いたんですが、8つぐらいになるかなと。これで1兆5,000億を8つに分ければ、1分野10年間ですけれども、2,000億ありますねと。各分野についていえば、それを、その分野の中で計画的に年次によって重点も変わるでしょうから、そのあたりを見て、それぞれプロジェクト、プログラムを考えるわけです。このフラッグシップ・ミッションに対しては、何かが選ばれたとしますと。そうすると、例えば、固有名詞を挙げるといかんから、あれだけれども、例えば地球観測にしましょうか。地球観測分野。そこはもともと2,000億、10年間であるわけです。それにフラッグシップ・ミッション分を獲得するわけです。これで4,000億。それから、各分野、それぞれみんな独立に走っていたんじゃ困りますから、それぞれ協力関係を持つ。そのために、各分野2,000億のうちの、例えば10%は、みんな、密接な協力のために出すと。そうしますと5,000億になる。もちろん、行政・財政のいろいろな、めったやたらに難しいのがいっぱいありますが、そういうのは全部、柔軟に解決するようにしていただく。これは行政の方で、してもらわないといけないんですが、そこがかっちり固まっていて、人の動きもだめだ、何もだめだといったらできないんですけれども。そういう分野を作って、そこに集中的に5,000億を投じる。そうすれば、かなりのことができるはずです。5,000億を稼げというわけじゃないんです。5,000億を、さっきの国民・社会、いろいろなものの国のため、世界のために使うということですから、そういうミッションというのは、それに値するものであれば、サポートされるものであれば、それはいいと思うんです。
    そういうことで、その選定基準はどうするかというと、それはさっき5つの総合科学技術会議以下の説明をしましたけれども、あれをもう少し、あれはいっぱい書いてあるんであれを整理する。整理すれば、大体幾つかに分かれます。それが選定の基準だと思いますその中には、もちろんウェート付けをつける。それで、候補ミッションをどうしたらいいか。これはさっき言いましたけれども、我々宇宙開発委員会の方で、案を作るのも1つある。3機関それぞれのところもあるかもしれません。3機関の中のいろいろな事業分野があるわけですから、そこから案を作ることもあると思う。それでコンテストというと悪いけれども、競争的な状態のもとで、いいのを、さっきの基準に合ったものを選び出すと。こういうようにして重点化して、フラッグシップ・ミッションというのを、我が国としてほかの分野もやるんですけれども、ほかの分野は、その間は、次のために十分、力を蓄えて、戦略的に次の時代のフラッグミッションになるようにやる。もちろん継続性というのも非常に重要ですから、その辺、どういうふうにやったらいいかということは、いろいろ難しいことは山ほどありますけれども、こういう考えのものを必要なのか、必要でないのかを含めて議論して、やるならば、早くやらなきゃいけない。早くスタートしなきゃいけない。新機関ができるときには、そういう方向で行くんだというふうにならなきゃいけないんではないかと。
    非常に今まで、お役所絡みで、飛んでもないとか、大変だなとか、それは山ほどあるでしょうけれども、そういう考えで作ったらどうでしょうかと。
    最後に、公的な名前はきちんと、そういうプログラム、ミッションというのは作らなきゃいかんけれども、同時に、アピールするニックネームも必要でしょうと思いますが、これは選ばれてからと。
    以上が私の非常に個人的ですが、提案です。私は、45年ぐらい宇宙開発利用に関係していて、その間、企業にもいました。いわゆる東大ロケットも関係しました。国立研究所にもいました。研究をしました。それから、産業化を、その間、私は大変にいろいろ起こそうとして、何度もトライしてきた。それで、開発機関に来ました。そのときに、必ずしも輸送系、H2ロケットだけでは私は全くないんで、いろいろなことをしてきました。そういうような今までの経験、それからあと、国際的にも、いろいろな活動をしてきたんで何とか新しいブレークスルーしたい、したらいいんではないかという趣旨で、こういうことを申し上げたわけです。以上です。
   

 井口委員長 
    どうもありがとうございました。それでは、15分か20分、議論をしたいと思いますが。
   

 川崎委員 
    私は基本的に大賛成なんですが、今のフラッグシップ・プロジェクトなり、あるいは僕はもう少し広く、コンセプトと言ってもいいかなと思うんですが、そのときに、やはり先ほどの住さんの議論にもあったように、上に上がるものだけじゃなくて、グラウンドのサービスステーションといいますか、地上システムの利用系までを包含した大きいことを、この新機関なら新機関が、他の機関と共同してやるようなことを一つ、考えてほしいということですね。
   

 五代委員 
    そうですね。私、ちょっと途中で抜かしましたけれども、利用機関は積極的に参加していただく。そして、でき得れば、10年−−まあ、来年はすぐに出ないかもしれないけれども、それに対して、お金も出して一緒にやると。要するに、非常にすそ野も広がる。産学官、いろいろなところにすべて広がると。もちろん国際的にも、その中であるでしょうし、そういう趣旨でございます。
   

 川崎委員 
    要するに、持ち合いパーティーですよね。
   

 五代委員 
    多分、その中で旗を振る。これで、どうだと。
   

 澤田委員 
    大学の先生じゃなくて、研究者でいいんですが、例えば今、8つなら8つのフラッグを立てたときに、それを今実際にやっていらっしゃる先生、その研究室が使っている金というのは、どのぐらいあるんですかね。だれも、満足だという人は1人もいないんだろうけれども、トータルとしてのね。
   

 井口委員長 
    大学関係ですか。
   

 審議官 
    それは人によりますよね。
   

 澤田委員 
    トータルしてみたときにね。
   

 審議官 
    今、国立大学ですと、公費といって、生活費的な基盤的な研究費が来ますそれは、いろいろ差し引かれたりして、手元に残るのは数百万の単位と言われていますね

 井口委員長 
    1人ですか。
   

 澤田委員 
    いえいえ、トータルで。
   

 井口委員長 
    要するに、大学の宇宙に関係している先生で。
   

 澤田委員 
    そうそう。
   

 審議官 
    それは、科研費等でいろいろ取ってくれば、いくらでも増えますので。
   

 川崎委員 
    総務省の重要分野別研究費というのがありますね。それで一番新しい統計は、1999年までできていますが、IT関係の情報技術が数兆円のオーダーです。しかし、宇宙関係は総額が2,800億円くらいで民間分は500億円くらいです。
   

 澤田委員 
    それは大学のあれも入れて?

 川崎委員 
    大学も何もかも全部入れて。研究開発費という統計上はですね。
   

 澤田委員 
    なるほどね。そういう意味では、学の参加といっても、余り期待できないと見るべきなのか、むしろ、そういう先生方も、貧しいながら、何かやっているんですね。だから、こういうプロジェクトに参加することの方を選ぶのか、おれは研究室で好き勝手やっていたいよという方を選ぶのか。
   

 川崎委員 
    それは、たまにいる。宇宙開発予算とか、原子力予算というのがあると一般的な科研費の配分のときには割を食うんですね。あいつらは、ちゃんと別枠があるんだからと。そうすると、科研費からは天引きされちゃう。例えばの話、科学技術振興事業団でも、宇宙関連のプロジェクトが来ると、これは宇宙があるからなというのが、皆さん暗黙のうちに割り引いちゃうわけですね。
   

 澤田委員 
    まあ、数少ない人的資源を、何か集めて本当に有効に使う。研究室で、おれは一人でやっているんだという人は、それは別かもしれないけれども、実際、何かやってみたい、物を作ってみたいということの方が、若い人は希望が多いんでしょうね。
   

 井口委員長 
    数十億円あれば、相当のことができると思いますよ。
   

 澤田委員 
    何か、そういう仕組みというか、日本の学界という世界であってはできないんですかね。
   

 川崎委員 
    今のフラッグシップ・プロジェクトということで、新機関に集めておいて、全部、インハウスで使うんじゃなくて、一部をアウトソーシングというとおかしいんですが、外に、いい提案がないかということで公募するというようなことを新機関は考えるというのも、フラッグシップ自身がナショナルになることになる。
   

 澤田委員 
    それこそ、予算の使い方、身分だ、何だということを抜きにして、もっと自由にパッと集まってやるというスタイルさえできれば、何か知恵があるんじゃないかなという気もするんだけれども。どこか、点在している大学の研究室に、あの先生がいたとか、何かやっているそうだというだけで終わってしまっているというのは、もったいないなという気がするんだけれどもね。
   

 川崎委員 
    昨日の利用部会でも、いろいろ話があったんですが、一生懸命、農水省なんて、一番遅れていると思ったら、よくやっているんですね。研究レベルでは。ところが、それが全然、表に出てこないんですよ。ああいうのを見ると、本当に死蔵されている格好で、趣味になっちゃうんですね。もったいないですよね。
   

 井口委員長 
    五代さんの話ですけれども、私は交通システムというものをやってきたから、そういう観点から言うと、宇宙開発利用もシステムとしての見方が、まだ弱かったと思うんですよ。五代さんがおっしゃった30年のスケジュールを書いて、横線の棒を見ても、何本かあって、縦割りが横割りになっていると。ばらばらで、相互の関連が何かというのは、三菱重工の谷村さんにも指摘されたんですけれども。じゃ、あれで重点化するということを考えたら、じゃ、ロケットをやめるのか。衛星をやめるのか。そういう判断になりますよね。ところが、そうじゃなくて、今日の住先生の話にもあったように、工業化だとか事業化を考えたら、これはサイエンスから、エンジニアリングから、ビジネスから、営業までを含めて、1つのシステムとして扱う。日本がロケット技術だけ持っていたって、しょうがないでしょう。だれか乗るわけでもないしね。それは、毎回毎回、空打上げをやるだけなんて、意味がないですよね。衛星だけ持っていたって、だれかが上げてくれなきゃしょうがないし。衛星があったって、ミラーボールだけ上げたってしょうがないわけだから、利用しなければいけないつまり完全にシステムとして考えなければ、宇宙開発利用というのは意味ないんですよねそういう観点からの一種の統合化というんですかね。それで何をやるか。ロードマップを書いて、物すごい金がかかるようであれば、ホームランも必要だけれども、時々、安打もちゃんと打っていかなければ、世の中、信用してくれないから、そこでステージ計画、この1段階目では何をやるのか、2段階目は? そういう計画を立てていくということも、1つの考え方ですね。
   

 五代委員 
    井口さんのおっしゃるとおりで、私、やり方みたいな方から言いましたけれども、今みたいな話というのは、今まで、我々も、すごく議論してきていますね。何となく、3機関があれしている割に、どうも統合化がシステム化されていない。本当は、宇宙開発利用というのはシステムというものの典型だと思うんですがね。そういう意味でこういうフラッグシップ・ミッションということで、システムの役に立ち、あるいは日本の力を示す国際協力もでき、産業化もするという総合システムを作ったらどうですかということで、全く同じ意見だと思います。
   

 栗木委員 
    ですから、そのフラッグシップ・ミッションを選ぶときの選定基準が大変ですね。結局、いろいろな分野から少しずつ出させる。出したところが、納得してくれないと。それは自分たちにも、いずれリターンがあるんだねと。横断的なといいますか、全体としてインテグレートしたんだったら、自分たちも、結局、そのベネフィットに預かるんだと。そういうあれがないと、やはりサポートも得られない。つまり、それを選ぶときの基準が一番大事なんじゃないか。そういう感じがします。
   

 五代委員 
    そうですね。そこに、どの程度参加すれば、どの程度、自分の分野にもメリットがあるとかね。そういうことも含めて。
   

 栗木委員 
    出した分だけ返ってくる、あるいは倍になって返ってくるかどうか知りませんが、そういうような何かリターンを。
   

 川崎委員 
    いろいろなものがリング状のシステムだから、伝わり合っているから、一種の知恵の輪を置かなきゃいかんのですな。知恵の輪プロジェクトで。
   

 五代委員 
    ともかく宇宙開発利用というのはシステムそのものですから、一番本当は、そういうのをやるのは得意と言うとおかしいけれども、全部持っているんですよね。あり過ぎていかんのかな。
   

 審議官 
    ちょっと質問してよろしいですか。五代先生のおっしゃるのは、やり方から入ったとおっしゃったように、ある種、プロジェクトというか、ミッションの選び方の手法みたいなところで新しい考え方を導入しようというお話だと受けとめたんですけれども、さはさりながら、分野としては、書いてあるような8分野について全部、やめるわけではないから、並行しながら、その中で特に重点を置くところに、フラッグ・ミッションを作ると。そういう発想だと思いますけれども、一方で、井口先生がおっしゃった各分野を縦にインテグレーションするというか、システム化するというのは、おっしゃっていることが少し違うような気がするんですが。
   

 五代委員 
    いや、これは、さっき言いましたけれども、例示で地球観測と言いましたけれども、地球観測で5,000億と。で、地球観測という狭い話じゃないんですよね。そのためには、地上も要りますねと。衛星だって、当然要りますねと。観測のいろいろな技術が必要です。打上げるロケットが必要です。ですから、みんな、そういう意味では全部、インテグレートされている。どれ取ったって、大体はそうだと思うんですよ。そのためにネットワークが必要ですね、通信も要りますねと。ただ、そのウェートが違うと思うんですね。みんな、宇宙開発って総合システムだから、全部関係していますよ。だけれども、それぞれの分野で切磋琢磨していかなきゃいかんのがある。その部分は、ちゃんとお金は、それぞれ10年間で例えば2,000億なら2,000億持っているということですね。
    で、どこかにも私は書いたんですけれども、こういうのができるかどうか知りませんけれども、独立行政法人になって、お金の貸し借りというとおかしいけれども、そんなに壁があるわけじゃなくて、もう少し柔軟で、全体を見て、ここでは今、ここに重点を置かなきゃいかんとか、そういう非常に柔軟な財政会計システムとか、人事のシステムというのは、同時になきゃいけない。それは、これがあろうがなかろうが、3機関を統合するときには、当然、それは最低限必要なものだと思うんですね。
   

 川崎委員 
    今のシステムの五代さんのお話のと委員長が言っておられるのとは、僕はつながっていると思うのは、一つ具体的に言うと、例えば防災という観点からだけとらえると、防災衛星という構想はあると思うんだけれども、今の地球観測の中でやろうとすれば、地方自治体と気象台と全体をリンクする地上系のネットワークと同時に、防災である以上、災害に対する我々のアビリティーを上げておかないといかんわけですね。そうすると、バックアップしての衛星回線、それは何も自前で国のお金で上げる必要がないから場合によれば、民間で上げた通信衛星のトラポンを借りておくというのも1つの方法でしょうし、場合によれば、外国の上がっている衛星を借りるというのもあるでしょう。そういうようなことを考えていけば、全体としての、ある合目的なプロジェクトのための宇宙インフラができれば、それは共通にあっちこっちで利用できるようになっていくわけですそんなようなことを考えたらいいんじゃないかと思うんです。これまでは、どっちかというと、地上のことは忘れていたというか、余り比較もしてないんでですね。ですから、フラッグシップを選ぶときに、そういう利用系の利便性と便益性といったようなものが、どれだけ国民的に広がりがあるものかどうかというところから選定をしていくというような選定基準にも、一つは入ってくるとは思いますけれどもね。
   

 審議官 
    そこは開発から実利用まで一貫して視野に入れたようなミッションを作ろうという、川上から川下までの縦の流れと、分野間の広がりをちゃんとインテグレートしようという横の流れと両方おっしゃっているわけですね。
   

 川崎委員 
    はい。両方を。
   

 栗木委員 
    横の広がりを、まずコンセプトとして、選定基準として持つんです。だけれども、その横の広がり全部をやったら、これはもう、めちゃくちゃ金がかかってしょうがない。そこの横の広がりを知った上で、ある1本をやる。そこが一番の先発隊になるそれを横にだんだん時系列で広げていくと。そういうアイデアじゃないかなと。
   

 川崎委員 
    ちょっと似ているコンセプトは、僕はガリレオだと思っているんですけれどもね。ガリレオは、要するに上に上げるものについてだけは公のお金でやって、そのうち、デモンストレーションが進んでくれば、地上に対しては、企業からの一般投資が入ってくるだろうと。それによって収益が上がってくれば、更に多数個の衛星を民間企業がインベストするだろうと。そういう一応の見込みで、後で御報告があるかもしれませんが全体の構想が成り立っているんで、そういう大きいコンセプトデザインをしたものをフラッグシップとして取り上げていくと言わないと、何か3機関があるから統合したら、やっぱり機関がありますという話じゃ困るんで、統合したら、こういうことをやりますと。そういう形でフラッグシップを持っていかなきゃいかんわけですね。
   

 栗木委員 
    たまたま地球観測というのがサンプルとして出ましたけれども、そうだとすると、地球観測で具体的に何があるかというと、例えばレーダーを使って、電波を使って、観測をするわけですね。とどのつまりが、観測精度を上げたいわけです。あるいはカバーレッジを広げたい。そうすると、これは通信とどこが違うかというと、要素としては同じなんですね。ですから、まさしくカバーレッジを広げる、精度を上げるということが、フラッグシップを判定するときの横断的な基準ではないかなと思うんですね。
    たまたま、その1番バッターにどれを選ぶかということで、特定の分野というのが出てくるかもしれないけれども、それを選んだときに、1割を供出した分野も、いずれは、それが自分たちに返ってくると思わないと、それは横断的な要素を持ったとは言えないんじゃないかなと。
   

 川崎委員 
    欲を言えば切りがないんだけれども、そういうときに選ばれたA子さんというプロジェクトが非常に美人であればね。外国も仲間に入れてとなることを期待したいですね。ユニークなアイデアで。
   

 五代委員 
    それはそうでしょう。世界で一流のね。あるいは世界で一番速いのがいいかもしれませんし。
   

 井口委員長 
    いずれにせよ、1960年代、70年代で、日本は軍事がなかったから、優秀な技術者がみんな、自動車産業に行って、自動車産業が、だから、急速に伸びたという話があるんですけれども、宇宙も、日本がDODがないから、マーケットが小さいといっているのを逆に利用して、公が金を使わないかわりに、民間に何とか投資して、民間の方のマーケットを広げる。カーナビなんて、そうなんですよ。日本が最初に民間で大きくなったんですよ。だから、ほかのものだってできないことはないはずなんで、それを日本の特徴としていければ、1つの大きな成果になるんじゃないかという気がするんですけれども。
   

 五代委員 
    私は、たまたま例題で地球観測と言いましたけれども、地球観測をという意味では全くなくて、それは輸送系があるかもしれないし、太陽発電があるかもしれないし、有人があるかもしれないし、ともかく、その中で先までもずっと発展性もあるけれども、10年ぐらいのところで成果をバチッと出す。で、ある程度、世界の完全にリーダーシップの取れるというか、完全に並ぶか、抜くか、そういうものであり、産業化もできと、非常に選考基準は難しいんですけれども、別に地球観測だけでないということだけをさっき、例題で申し上げただけなんで。
   

 川崎委員 
    それは昨日の利用部会でも出たんですけれども、宇宙という新しいディメンジョンで作業展開をやった方が、より効果的、合理的だと思われている。今でき上がっている制度は、あくまで地上ベースの制度なんですね。これは気象業務もそうですし、測図もそうですし。そういう現在生き残っている制度が、通信放送のように宇宙化していないわけですね。国際化だけじゃなくて。ほかの制度は全部、地上のままなんで、あそこを変えるというところのダイナミズムが日本政府に残っているかどうかによって、今、委員長がおっしゃったように、カーナビ的に−−あのカーナビは、所管官庁がなかったから伸びたんですよね。規制がないから。
   

 栗木委員 
    私は、10年というのは大変いいと思いますよ。確かケネディーが、月へ行くぞと言ったのは1960年で、60年代には行ってみせるという10年で。
   

 五代委員 
    本当は2000年ぐらいに言って、2010年でと言いたかったんだけれども、今はちょっとゴタゴタしているから。2003年から13年と。
   

 栗木委員 
    発足後10年で、2013年。いいスパンだと思いますね。
   

 川崎委員 
    10年で、欧米に抜きん出るというのは、ちょっときついですね。
   

 五代委員 
    そういう弱気は言わない。
   

 川崎委員 
    まあ、30年で絶対と。
   

 栗木委員 
    いや、30年だと、少し霞んでくるんですよ。
   

 五代委員 
    だから、一般の人が宇宙旅行に行くあれは、日本の旅行業者でというのがあるかもしれない。その前の20年、10年には、どういうステップでというのもあるわけですよ。いろいろなのがあると思うんです。
   

 井口委員長 
    だんだん前向きの議論が出てきて、これからも続けていって、何とか具体化しようと思いますので、よろしくお願いいたします。
    それでは、今日はまだあるのか。現状報告をお願いいたします。
   

 事務局(星野宇宙政策課) 
    失礼いたします。先週に引き続き、北村の方が風邪で声が出ませんので、かわりに星野がやらせていただきます。
    まず国内の動きですが、宇宙開発委員会の主な活動については、ここに挙げられているとおりでございまして、26日には宇宙開発委員会の第5回利用部会が開催されております。
    次に海外の動向についてですが、順番に申し上げます。
    先週の水曜日に、ESA(欧州宇宙機関)が、アルテミスとスポット4との光衛星通信に成功したと発表されております。今回のテストは、先に実施されたアルテミスと地上局間の通信リンクのテストに続くもので、両衛星は4度にわたり、通信リンクを確立したということです。
    次に、22日の木曜日ですが、欧州委員会は、ガリレオ計画に関するコンサルタントの調査報告書を発表いたしました。この報告書の内容につきましては、ガリレオ計画というのは費用対効果に優れておりまして、潜在的な利益が非常に大きいとしているんですけれども、一方で、当面は運用費を市場からの収入のみでは賄えないため、ある程度公的支援が必要であるということが書かれております。
    次の2つに関しましては、打上げの報告です。
    今週の月曜日には、ロシアのプログレス補給船が、27日の火曜日には、アリアン4が打上げられております。どちらも成功いたしました。プログレス補給船については、国際宇宙ステーションへ向けて、アリアン4につきましては、アメリカのディレクTVの衛星の打上げということで、打上げられております。
    更につけ加えですけれども、今週の日本時間の金曜日の朝、現地時間、木曜日の夜になりますけれども、アメリカのケネディー宇宙センターより、エンデバーの打上げが予定されております。
    以上でございます。
   

 井口委員長 
    どうもありがとうございました。よろしゅうございますか。
    それでは、前回の議事要旨は、後ほど御確認をお願いいたします。
    以上で、第46回の宇宙開発委員会を閉会いたします。ありがとうございました。

−−了−−




(研究開発局宇宙政策課)

ページの先頭へ