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宇宙開発委員会

2001/11/21 議事録
第45回宇宙開発委員会議事録

第45回宇宙開発委員会議事録

1. 日時 平成13年11月21日(水)14:00〜15:01

2. 場所 宇宙開発委員会会議室(文部科学省別館11階)

3. 議題  
  (1) 「我が国の宇宙開発利用の在り方」について
  (2) その他

4. 資料  
  委45-1-1 我が国の宇宙開発の目指す方向
  委45-1-2 宇宙新機関と産業界との連携・協力の在り方
  委45-2-1 宇宙開発の現状報告
  委45-2-2 第44回宇宙開発委員会議事要旨(案)

5. 出席者  
  宇宙開発委員会委員長 井口雅一
  宇宙開発委員会委員 川崎雅弘
  栗木恭一
  五代富文
  文部科学省研究開発局宇宙政策課長 芝田政之

6.議事内容

 井口委員長 

 きょうはこじんまりしておりますけれども、それでは、第45回の宇宙開発委員会を始めさせていただきます。
 最初の議題が、「我が国の宇宙開発利用の在り方」について。最初に、このところ、何回か配られております資料を改訂いたしましたので、その説明を芝田課長から、お願いいたします。

 芝田課長 

 45−1−1についてご説明申し上げます。変わったところだけご説明申し上げます。3ページ目をごらんいただきたいと思いますが、「位置付け」として、「市場原理はなじまない公益性の高い活動を行う」となっておりましたけれども、「公益性」という言葉ですと、民間でもできる場合もございますので、ここははっきりと、パブリックでないとできないという意味で、「公共性の高い活動を行う」と直します。
 それから、その次の行ですが、「我が国の宇宙開発」というふうに「我が国の」がついておりましたが、これは、できれば、世界に冠たる中核機関をつくっていくという期待を込めまして、そこをとってございます。
 それから、5ページ目をごらんいただきたいと思いますが、ここは文言を幾つか変えておりまして、右の上のほうに、「安全保障・危機管理」とございますが、「危機管理」というのを追加してございます。大規模災害等への対応等もございますので、そういう面を追加してございます。
 それから、真ん中のところは、「交通・気象」となっておりますが、これは「運輸」となっていたのを、より中身がよくわかるようにということで、特に「気象」などは「運輸」という言葉からわかりにくいということで、こういうふうに直してございます。
 それから、絵の下のほうに、「多角化」となっておりますが、ここは「多極分散化」という言葉を使ってございましたが、これは、後でご説明申し上げます宇宙関係企業との勉強会を我々は行っておりましたが、その場でも、「多極分散化」という言葉では、新機関の機能を分散していく、リソースも分散していくというニュアンスが出てしまうので、それは困る。新機関には、引き続き、関係省庁等の利用の拡大の受け皿として、関係省庁、企業のコーディネーターをやっていただいて、プロジェクトを立ち上げたりするときに、その推進の中核的な機関としての役割を果たしてほしいという期待が寄せられております。
 我々も、「多極分散化」という言葉は、関係省庁等の利用を拡大することによって、予算面での拡充を図って、結果として、宇宙分野に流れ込んでくる予算が増えるということを期待しておったわけでございますので、そこで、わかりやすく「多角化」という言葉にしてございます。
 したがって、真ん中にございます卵のような絵のところにこの機関の機能が幾つか書いてございますが、それからにじみ出ているピンクの「通信・放送」ですとか、「測位」ですとかそういうところは、この中核的な新機関の機能を活用して、新機関の利用に対する貢献をする部分ということで、通信・放送とかの技術開発にも、新機関が取り組んでいくということでございます。
 この辺については、実際の利用官庁と連携を図りながら、ニーズに合ったことを研究開発、あるいはアイデアの企画立案等をしていこうということでございます。
 それから、6ページ目でございますが、ここで変わったのは、下の4つの矢印が、先のほうでかなり太くなっておりまして、これは、将来的には、宇宙開発関係、ここに書いてあるような分野の予算自体が増えることによって、こうした基盤的な活動、基本的な活動が拡充していってほしいという期待を込めたものでございます。
 以上です。

 井口委員長 

 何かご質問、ございますでしょうか。
 我々は何度も議論しておりますので、また、その次の宇宙新機関と産業界との連携・協力について、芝田課長にお話しいただきますが、あわせて、ご議論いただこうと思います。

 芝田課長 

 では、45−1−2の資料でございますが、この資料はきょう初めてごらんいただきますが、宇宙関係の企業8社、これは宇宙機器メーカー及び利用企業、例えば自動車メーカー等も入っております。そういうところの部長さん、課長さんクラスの方、そして、経団連の担当の方、それから、私と宇宙開発利用課長で勉強会をつくりまして、これは統合準備会議に出すことを前提に勉強をしてまいりました。その成果がまとまったので、きょうのこの後の統合準備会議に出しますが、事前にこの場でも少しご紹介したいと思います。
 資料の1にございますように、「我が国の宇宙産業の現状」ということで、ここは宇宙機器産業と宇宙利用産業に分けて記述してございます。宇宙機器産業については、平和利用の原則、あるいはスーパー301条の制約もあり、国内需要が非常に小さい。それから、世界的に見ても、今後の需給動向ということで、今後10年間程度は、潜在的供給可能数が需要数を上回る状況。静止の商業衛星が年30機程度を打ち上げというふうに、いろいろなところで報告もございますし、また、低軌道への衛星打ち上げは年に20機いかないぐらいじゃないかという報告もございます。
 一方で、宇宙利用産業につきましては、これは非常に大きな伸びを見せております。通信サービス、あるいは放送サービス、それから、チューナーやカーナビ等の地上機器関連、こういったものが非常に大きく伸びておりますが、その結果が、国内の宇宙機器産業への需要に結びついていないというのが最大の原因であろう、問題になっているというふうにも見れると思います。
 それから、2ページ目は、この報告書のメッセージが幾つかございます。1つは、産業化と商業化のプロセスをはっきり峻別して考えよう。これは、同じプロセスの上に乗っかっているものなんですが、ステージが違うということをはっきり認識しようということであります。産業化のステージでは、公的な宇宙開発機関から民間へ技術移転をするんですが、やはり官需で下支えしないと、民間レベルで自立することはなかなか難しいステージだろうと。その先に、商業化というステージが入ってくるということであります。
 産業界の方々は、この辺については、これは違う軌道をたどるものではなくて、同じ1つの上の軌道で、最初から商業化を見据えた産業化ということをやる必要があるということは常に認識しておく必要があるというご指摘がございました。
 それから、キャッチアップから次の段階へということなんですが、今までの技術開発は、先端を目指すあまり、産業化、商業化への視点が薄かったんじゃないかというご指摘がございますが、実は、これまでの過程は、産業化、商業化に乗り出すための自前の技術を獲得するというところに焦点があったために、そういうご批判も出てきたのかなという分析をしております。
 それから、新機関の基本的役割は、そこに書いてあるとおり、リスクの大きい研究開発を進めるということでございます。
 利用機関との連携ということで、これからは官需で産業化を支えるためには、関係省庁の行政目的を達成するための宇宙利用プロジェクトが増えなきゃいけないということです。それするために、新機関は積極的に宇宙利用のアイデアや技術を企画開発して、関係機関に働きかけていく、セールスしていこうということであります。
 それから、最後に、多極化の考え方ということで、さっきご説明したのと同じ考え方を述べております。
 それから、最後のページは、具体的に新機関が備えるべき連携・協力の仕組みということでございますが、1番目に、産業界等との連携・協力の戦略策定を行ったり、実際に総合調整していく総合司令塔的な組織を新機関の内部に備えるということが1つでございます。
 それから、2番目が、産業界等のニーズに敏感に反応できる仕組みを幾つかビルトインしようということで、人的交流、役員層から技術者層まで、産業界の人材を受け入れる。それから、流動人事制度といったようなものをつくって、そういう動きをやりやすくする。
 それから、産業界との連携会議ということで、経営に関する助言組織について検討してみよう。それから、文部科学省に、新機関が実際にできる前から、早ければ、来年の早い段階から、産業界等の関係者からなる連絡会議を設置してやろうと。産業界のご意向等をよく聞きながら、新機関の設計をしております。
 それから、新機関の中に産学官連携会議をつくりまして、宇宙利用のアイデアや実際のプロジェクト、研究開発テーマについて、一体的に相談してはどうかということであります。
 あと、ハードウェア、それから、技術移転について、一番下に、黄色いところにございますような提案もございます。
 以上です。

 井口委員長 

 どうもありがとうございました。
 それでは、2つの資料、並びに、A3の資料が配られておりますけれども、これは前に既に、たしか塩満さんから説明のあった、既に配ってあります資料であります。きょうは、アリアンスペース社東京事務所副代表の松さんにおいでいただきまして、特に、我々の認識では、フランスがこういう産業化に大変成功しておられるということを聞き、また、認識しておりますので、一緒にいろいろディスカッションさせていただくときの資料になればということでお配りしたものです。
 それでは……。あ、ないですか。2枚……、1枚しかない。

 芝田課長 

 それと、ごめんなさい。先ほど説明しました産業界との連携・協力については、本文が別途ございまして、それは今、間に合わなかったのですが、この後の統合準備会議のほうには提出する予定でございます。

 井口委員長 

 いかがでしょうか。最初に、我々、フランスのことをお伺いしたいんですけれども、逆に、松さんが日本の宇宙開発をごらんになっていて、あるいは、アリアンスペース社のいろいろなご経験から、NASDAを見てとか、何か忌憚のないご意見をいただけたらありがたいんですけれども、どうでしょう、突然のお願いで恐縮なんですけれども。

 松 

 昨日、芝田さんのほうからこの資料をいただきまして、全体的な検討結果というのを説明していただきました。あくまでもアリアンスペースが感じた印象といいますか、そういったことについて少しだけまず最初に述べさせていただきたいと思うんですけれども、細かなところはいろいろあるんですけれども、全体のトーンを見ていると、長い道があって、ずっと向こうにアメリカがいる。それで、真ん中辺に欧州がいて、少しおくれて日本がいる。したがって、随分おくれているから、この分前に進んで、活性化して、産業化、商業化を図らなきゃいけないという一つの雰囲気があるというのと、もう一つの流れとしては、まず、公的な活動というのがあって、公的な活動が今度は産業化になり、それが次のステップとして商業化になる。その進み方がどうであるかということは、今、少しお話にもあったんですけれども、ステージの流れとしては、まず公的活動があって、産業化があって、商業化がある。それをまとめてどう考えるかということなんですが、流れとしては、何となく時間的にこういうふうに進んでいくような感じがあったというのがまず最初の印象です。欧州が自分たちがやってきたことを見ると、少しそれとはやってきたことが違うというか、結果的に歴史が違っているということがあるんじゃないかと思います。
 日本から見ると、大体何を見ても「欧米の」と書かれていて、「欧」というのは、米のちょっとミニサイズという感じになっているんですけれども、実際、サイズは小さいんですけれども、先ほどのアメリカがいて、欧州がいて、日本がいてという方向の距離の問題もありますけれども、もう一つは、アメリカが向かっている方向と欧州が向かっている方向は、ベクトルが違っている。日本が向かっている方向もそれとはまた少し違うという、ベクトルの差というものをもう少し分析する時代が来るんじゃないかと思います。

 井口委員長 

 その中にロシアというのは入っているんですか。

 松 

 ロシアも当然入っておりますし、中国も入っております。

 井口委員長 

 ロシアというのは、今のお話では、どの辺に位置するんでしょうか。

 松 

 みんな違う方向を向いていると思うんですが、米国とロシアと中国の特徴的な点は、米国の場合は、軍需の下支えがある。日本はないということですけれども、米国、中国、ロシアは、その下支えがあるだけではなくて、それが完全にクローズドになっていて、そういった政府のミッションというのは、政府のロケットで打ち上げるんだという基本方針が非常にはっきりしています。
 日本は、ロケットそのものの開発が途上であるということもあって、そういったはっきりしたポリシーがまだ出ていない。もともと需要が少ないところに加えて、さらに、日本の政府ミッションは、日本のロケットで打ち上げるという、アメリカも、ロシアも、中国もやっていることを日本はまだ決めかねているといったような違いがあります。ヨーロッパも、これは同じ問題があります。
 それで、先ほど、フランスといいますか、ヨーロッパは商業化に非常に先行していると言っていただいたんですけれども、アリアンスペースとアリアンプログラム、プロジェクトというものは非常に成功したという認識があるので、この場に呼んでいただけたんだと思うんですけれども、実は、アリアンスペースとアリアンロケットのこれまでの歴史を見てみると、アリアンロケットが初めて飛んだのは1979年で、アリアンスペースが設立されたのは1980年なんですが、この時点で、すぐ商業化に入ったんですけれども、それは、官需の下支えがあって、非常に強い力を持って商業化に進んだというのではなくて、このときには、官需はほとんどなかったわけです。アリアンスペースが設立されてから最初の五、六年、1980年代の前半というのは、1年間の打ち上げが1機とか、2機とか、多くても3機と。日本のNASDAミッションの打ち上げが年に2回であるというのとほとんど変わらない状態でずっと商業活動を行ってきた。だから、力を持ってから商業活動といったわけではなくて、早い段階から商業活動をしてきたということはありますけれども、現時点から見ると、そのときにものすごく成功していたというわけでもありません。ただ、マーケットを広げていくということに関して、アリアンプログラム全体がユーザーの意見をよく聞いたということはあるんですけれども、その結果、その後の20年間で何が起こったかというと、商業打ち上げ市場においてはマーケットの50%から60%ぐらいのシェアを占めることができた。ただし、現段階においても、欧州の政府ミッションというのは、日本と比べて同等か、むしろ少ないぐらいで、ほとんど商業打ち上げがアリアンスペースとアリアンロケットがよってたっている基盤になっているという点が非常に特徴的なところだと思います。
 その結果、何が起こったかというと、欧州にとっても、宇宙への独自アクセスというのは、国のポリシーとして非常に重要なわけですが、そういった国の政策の根幹にかかわるようなものがアリアンスペースとアリアンロケットの商業市場での競争力に依存するという形になっています。したがって、公的な何かをやって、次の段階として商業化ができたというのと、むしろ逆のステップで、商業的な競争力に公的活動が依存するというのが今の、少なくとも宇宙輸送に関するヨーロッパの状況になっている。
 この20年間は非常に成功だったと言えるのは、アリアンスペースは会社ですから、法人税を返すわけですけれども、売り上げによって得た法人税を支払った総額を見ると、初期のアリアン1の開発費をカバーするところまではいかないんですけれども、アリアン1から2、3、4とマイナーチェンジをするためにESAが支払った開発費というものは、税金として全部ヨーロッパに返した。したがって、国民に対するリターンにはなっているということで、こういったことが成功だと呼ばれているんだと思います。
 ただ、これは2000年までの問題でして、過去20年とこれから20年というのは状況がすごく変わってくると思います。この成功の結果、どういうふうになったかというと、1年間の打ち上げが1機、2機、多くても3機だった20年前と比べると、1年間に10機ないし12機、要するに1カ月に1機のペースで打ち上げるという、非常にアクティブな活動をするようになっている。
 ところが、現段階でどういうふうになっているかというと、1年間に10機打ち上げても、アリアンスペースの赤字が200億といったような状態になって、契約件数も増え、活動も増えているにもかかわらず、商業化という観点では、今、設立以来、最も厳しい状況に追い込まれている。これは、一たん広がって成熟したマーケットが、また混乱してくるという通常のパターンですけれども、そういったパターンに世界中が入り込んでいる。そのあおりを受けて、アリアンスペースの商業活動そのものも非常に厳しいものになっているということが言えます。
 したがって、過去に例えばアリアンスペースとESAとCNESの関係はどういうふうにしてと、商業化と開発の振り分けをするということはありましたけれども、同じ20年前のやり方をやっていたら、これから20年の後、ヨーロッパはきっとうまくいかないということで、ヨーロッパも今の新しい市場の要求にこたえるように、全体のアリアンシステムといいますか、組織までも含んだアリアンシステムですけれども、それの見直しといいますか、要するに我々も変化しなくてはいけないというのが現在の状況になっております。
 ご存じのように、アリアンロケットというのは、ESAのプログラムとして、実際に開発するのはCNESが技術的な開発責任は持つわけですけれども、CNESは、国のミッションとしてやらねばならない特徴をロケットがそなえなきゃいけない。どういう特徴を持ったロケットにしなくちゃいけないかということを策定するわけですが、当時に、公的活動がアリアンスペースの競争力にかかわっているということからすると、商業的にも、同時に競争力を持ち得るようなロケットであるような形にしなきゃいけない。
 人的交流というお話が先ほどのご説明の中でありまして、産業界の人が新機関のほうにも来るということがありましたけれども、欧州も同じような考えがありますが、例えば、アリアンスペースでは、数年前にアリアン開発部という新しいディビジョンをアリアンスペースの中に設けているんですが、ここにいる人というのは、半分アリアンスペースで、半分CNES。名刺を見ると、ロゴが2つ入っているような、そういうふうな。したがって、人的交流というのは、作業内容によって、産業界から国のほうに来るだけじゃなくて、国の人間が、必要な場合は、そういったオペレーターのところに入り込んでくるというようなことも考えているというのが現段階の状況ということになります。
 この歴史的な今までの実績から、こういった宇宙産業のポイントが幾つか見えてると思うんですけれども、まず、1つ目のポイントは、市場があんまり大きくないんだと言われていましたけれども、それは当然なんですが、単に規模が大きくないだけではなくて、非常に不安定だ。宇宙産業というのは、衛星にしても、ロケットにしても、非常に傷つきやすいマーケットであるという点がほかの産業にない特徴のあるところだと思います。
 例えば打ち上げだけを見ると、打ち上げ市場というのがあるんだということがわかると、例えばロシアが参入するだとか、あるいは新しいベンチャー企業が参入するだとか。ベンチャー企業の中には、長期的に例えば国に対する責任といったようなものはありませんから、もうかるかどうかまずやってみて、だめなら引き上げるということができますから、非常に短期間、安い値段をつけることもできるわけです。
 ところが、日本の場合でも、ヨーロッパの場合でも、商業化でいくら頑張っても、国に対する責任がありますから、ある一定の長期にわたるコミットメントというものが必ずベースにありますので、低コスト化を図るにしても、限界がある。したがって、それが同じ土俵で闘っていいかどうかという問題もあります。
 それから、最近の例でいいますと、例えば軌道上の衛星が軒並み事故を起こしているということで、保険料率が非常に上がっている。テロの影響もあって、保険のマーケットが、例えば宇宙からすぐ引いてしまうということになると、今までせいぜい5か6%から10%ぐらいでフォローできていたものが突然20%とか30%ということになると、これは保険といっていいのか何だかわからないような、そういうふうな状況になる。こういったマーケットの外乱に対する不安定性というのが宇宙の分野での非常に特徴的なことだと思います。これがある一つの面です。
 もう一つの側面は、こういったマーケットは、したがって、それに関与する世界中の機関がその動向に影響を及ぼすということになりますから、その活動は必ず国際的なものになります。よく新聞などのトーンでは、日本はまだ途上なので、これから実力をつけて市場に参入するということで、何か市場というのが別のところにあって、力をつけて初めてそこに入るというイメージがありますけれども、実際は、日本が望むか望まないかということとは別に、宇宙のマーケットというものは、日本というのは非常に大きなパワーですので、今現在の日本というものを必ず考えて、そのマーケットが反応する。したがって、例えば新機関の位置づけだとか、あるいはロケットや衛星に対する今後の方針だとか、そういったものを決めると、必ずそれがマーケットの反応という形で返ってくる。スタティックなところに入っていくのではなくて、何かするとマーケットが変わるというインタラクティブな部分があるのが特徴的なところではないかと思います。
 それが商業活動で、そういった非常に難しいことをやりながら、同時に、新機関は国に対する責任も果たさないといけない。政府の重要なミッションの打ち上げだとか、そういったことをしなくちゃいけないということになると、商業活動と国の活動というものも、これは2つのものではなくて、必ずインタラクティブな活動になってしまうということで、あまりきれいに分けて考えることが実際上は難しくなるという点が特徴的だと思います。
 4つ目のポイントは、日本と欧州と米国というものを仮に見てみますと、こういったマーケットの中で、米国だけが自国の中で十分なオーダーを持っている。しかも、それをクローズドにしている。日本と欧州は、そういったクローズドマーケットがないだけでなく、十分な需要もない。さらに、日本は、H−<IMG src="/image/r02.gif" height="16" width="16" alt="2" border="0">Aというロケットだけが存在していて、欧州は、2003年にはアリアン4がなくなりますので、アリアン5という1機だけになります。そうすると、例えば国のミッションを考える、商業活動を考える、どっちの場合でもそうですけれども、アメリカですと、国内でもしロケットに問題があったときには、デルタがだめならアトラストといったような自国内でのバックアップ体制もとれますけれども、じゃあ、日本でH−<IMG src="/image/r02.gif" height="16" width="16" alt="2" border="0">Aが問題があったときにバックアップが要るから、新しいロケットを日本でもう一つ開発するかというと、実行上、非常に難しいということもあるんじゃないかと思います。ヨーロッパも全く同じだということで、方向としては、アメリカが向かっている方向と日本とヨーロッパが向かっている方向というのはちょっと違うのではないかというポイントがあるのじゃないかと。
 そういうふうにして考えてみますと、この新機関の資料をいただいて感じましたのは、公的活動があって産業化があって商業化という流れではなくて、公的活動と産業化と商業化というのは、一方通行ではなくて、行ったものが返ってくるというインタラクションがあるので、ステップとして進んでいくフェーズというよりは、全体の動きを同時に考えるといったことが必要になるんじゃないかと思います。
 それから、ここでは、公的活動の後の産業化、商業化というのは、自国で努力して頑張るというふうに見えますけれども、先ほどの、例えば政府ミッションの国際間のバックアップということを考えると、21世紀での全体の宇宙活動を見ると、国際協力というものを早い段階から考えるというか……。要するに、お互い不得手な点だとか、どうしても準備できない部分というのが、アメリカには準備できるが、日本には準備できない、あるいは欧州には準備できないが、日本には準備できるといったようなものができてくると思いますので、そういったところをまとめて、国際協力というものを使って、どうやって、例えば日本と欧州が足りないところを補い合って、しかも、世界的に見て、ユーザーのメリットになるようなことを考えられるかという視点が、新機関で3機関が統合されますと、そういったことも一括して考えることができるようになると思いますので、国際協力と公的活動と産業化、商業化というものを同時にコントロールできるような、そういった機能があるとさらに強くなるのではないかという印象を持ちました。
 ちょっと雑駁でしたけれども。

 井口委員長 

 大変貴重なお話をありがとうございます。
 いかがでしょうか。
 最近、何も宇宙に限らず、産業化へのパスというのは、昔は、おっしゃったように、公的なところが開発して、産業化し、それを商業化するという、リニアモデルと呼ぶ人がいますね。今は、コンカレントモデルというふうな、ほとんど同時に始まって、しかも方向がいろいろだ、何も一本につながっているわけじゃないという、そういう認識が大きくなってきましたね。

 五代委員 

 PFIみたいな。とにかく官が金がない、民間が先に金を出すとか。よくあるのは、建物ですね。それを国が返していく。全く逆というとおかしいけれども、そういうのもあるわけですね。先払いというか。だから、リニアでないことだけは確かだと思います。

 井口委員長 

 1つお伺いしたいんですけれども、今の宇宙というマーケットは、まだまだ非常に小さい。例えば放送・通信がかなり大きくなってるという認識ですけれども、ほかの、例えば地球観測の情報利用で相当大きなマーケットができているかというと、そうでもない。それから、災害、防災の問題もあります。ただ、私、自動車のことをやっていたせいもあって、GPS利用のカーナビだとか、あの辺のマーケットはかなり──まあ、日本が先導しているんだと思っているんですけれども、増えてきた。そういう意味で、宇宙利用のマーケットというのはまだまだ将来においてあるはずだと思います。そのあたりの開拓を、その辺でも、ヨーロッパは日本にとってお手本にできるんだということを教えられていますので、新しいマーケットを開発するような、そういうプロセスというか、努力というか、そのあたりのことで何かお教えいただくことがあるとありがたいんですけれども。つまり、マーケットそのものは、今は大したことないんですね。

 松 

 ただ、ヨーロッパもあまり成功してはいないんですね。低軌道衛星のものも、ヨーロッパもほとんど軒並み全滅しておりますし、地球観測もそうですね。じゃあ、次はブロードバンドのインターネット衛星がどうかというところは、まだクエスチョンマークですけれども、この点に関しては、それほどヨーロッパも成功してはいないと思います。ただ、GPSだとか、そういったものに関しては、当然米国だけに依存するのではなくて、独立性を持たそうという考えはあります。

 五代委員 

 ヨーロッパでいうと、この二、三年来、急激に、EUがリーダーシップをとっている。これが非常に強くなったように思うんですね。だから、アリアン、ロケットだ何だ、GPSだ何だ、アメリカが何だと、ヨーロッパでやるべきだというのの旗振りを結構EUが始めたということではないでしょうか。
 1社だけでは、産業化のところで、古いタイプの産業化なのかもしれませんね。

 松 

 もともとアリアンスペースというのをつくったというのも、要するにESAのままでやらなかったというのは、今言われたことと同じようなことがあったと思います。

 栗木委員 

 打ち上げにかかわって、アリアンスペース社が、今、お話しになったような、商業化と官需というようなのを、どちらかというと、並列、あるいは商業化が早かった場合もあるというお話を伺いましたけれども、アリアンスペースから離れて、ESA全体をごらんになって、衛星の開発も似たようなシナリオとごらんになりますか。また違ったアスペクトがありますか。

 松 

 例えば日本では、技術試験衛星がありますけれども、それに類するプログラム──最近は少し活発にはなってきたんですが、アリアンが成功していた時期というのは、実はヨーロッパの衛星というのは非常にスローテンポだったんですね。もともとは、アリアンを開発する前というのは、ヨーロッパはロケット開発が混迷しいて、衛星のほうは世界初の3軸衛星を打ち上げるだとか、そういったことで非常に衛星のほうがはっきりしているということがあったわけです。ロケットは、ヨーロッパ計画で失敗につぐ失敗で、要するに衛星はいいけどロケットはだめだと言われていたわけですけれども、それが80年から2000年ぐらいにかけては、衛星のほうが少し静かになってしまった。例えばNASDAプログラムだと、少なくとも年に1回ぐらいの技術試験衛星の打ち上げがあるというようなのは、ヨーロッパから当時見ていると、非常にうらやましいと。セントールの前というのは、何年あいていたか、ものすごくあいていたですね。今は、それではいけないということで、新たな衛星計画がやっと軌道に乗り始めたところだと思いますけれども。そういった意味では、ここ20年を見ると、国の技術試験衛星ということで見ると、むしろ日本のほうが着実だったと言えるんじゃないかと思います。

 栗木委員 

 ついつい隣の芝生は青く見えるというところがあるね。自分もよく見ないといけないなとは思っているんですけど。

 川崎委員 

 現在のアリアン4なりアリアン5なりの製作スタイルなんですが、日本の場合、ご案内のように、1品生産型ですよね、ずっと。アリアンも同じような製造プロセスですか。例えば6機とか4機とかというのは、年間の製造本数をある程度見込みで……。

 松 

 見込みでやります。

 川崎委員 

 見込みでやっているんですね。

 松 

 見込みでやる理由なんですけれども、もともとは、ロケットの発注をかけてからできるまでの期間と、打ち上げを受注してから打ち上げるまでの期間と、衛星をつくり始めてから衛星が出荷されるまでの時間、大体3年ぐらいだったんです、最初は。ところが、マーケットの要求はできるだけ遅く判断して、できるだけ早く打ち上げるということになりますから、これをどんどん圧縮しなくちゃいけなくなって、今は、発注を受けてから打ち上げるまでというのは、ロケットをつくる時間よりもはるかに短いんです。したがって、プリファイナンシングを行って、何十機かまとめてつくる。受注をもらう前に、一括発注を行う。これは2つ利点がありますが、1つは、コンティニュアスにつくるということは、コストを当然下げることができるというのと、それから、信頼性も上がりますね、同じ人がずっと継続していきますから。
 それからもう一つは、何十機も一括で発注しているということは、それは、もうからなくなったらやめるよという感じではなくて、アリアンスペースという会社は、打ち上げにずっとコミットしますよという市場に対する約束でもあるので、ユーザー側から見たときに、非常に信頼感を持ってもらえるということがあります。
 そういった意味で、アリアン5は、大量生産がまだ初期ロットですので、最初は8機ぐらいから、20機ぐらいからということでしたけれども、いずれ50機とか、それぐらいの発注になります。

 川崎委員 

 どうもありがとうございました。

 芝田課長 

 1つちょっとお伺いしたいんですけれども、初期のころは、年に二、三機ぐらいの打ち上げでもたせていたという話だったんですけれども、その段階におけるCNES側のサポートは、直接出資するなりのファイナンスの面でサポートし続けるということになるわけですか。

 松 

 これは、もともとの創立の概念に戻らなきゃいけないんですけれども、商業化しようという概念は、設立したときは、なかったというとあまりに言い過ぎなんですけれども、もともとアリアンロケットを開発──これは何度もご説明したかもしれませんけれども、最初は、プログラム全体で打ち上げ機数は6機だったんです。6機でアリアンプログラムは終了と。というのは、先ほどご質問にお答えしたときに申し上げましたけれども、そのとき、衛星はすごく調子がよかったんです。ロケットは全然だめだったので、打ち上げはアメリカとソ連がやるものだと。それを委託すればいいんだ。欧州は、もっと利用だとか、衛星に力を注ぐんだと。シンフォニーという3軸衛星の打ち上げをNASAに頼んだですが、デルタで打ち上げたんですけれども、そのときにNASA側が突きつけた要求が、打ち上げてあげるけれども、この衛星を商業利用として使っちゃいけない。こんな制約を課されるんだったら、やっぱりロケットを持っていなきゃ大変なことになる。だから、ロケットをつくろうと。ただ、ヨーロッパでの手痛い経験がありますので、ヨーロッパロケットを持ってきても、飛ばないロケットを持ってきても全然説得力がありませんから、確実に飛ぶロケットをとにかくつくろうということで、アリアンを。確実に飛ぶけれども、どうせ最終的にはアメリカかソ連に頼むだろうから、これはあんまりたくさんつくっても仕方がないから、6機で終わりだと考えたわけです。したがって、このときには、今のように百何機というふうになったときにどうしようという考え方がCNESにあったわけではなくて、要するに、欧州の宇宙に対するアクセスをキープするために、6機のものを維持しようと。うまくすれば、シャトルが思ったほど値段が下がらないという状況を横目で見ていましたので、契約もとれるかもしれないということで、スタートしました。
 したがって、CNESのサポートという意味では、一番大きかったのは、やっぱり株主になっていますから、ヨーロッパはこれができますので、日本は、いろいろ制限があって難しいと聞いておりますけれども、38%だったですかね、最大筆頭株主はCNESなんですけれども、筆頭株主になって、最初の製造に対するお金とかを出すといったような形がサポートだったと言えると思います。
 ただ、そのサポートは、今後、これを膨らませて、100機飛ばすようにするんだという長期的な考えがあった上でのサポートではなかったというところが大事な点ではないかと思います。

 五代委員 

 この勉強会の中で、一番最後に、人的交流の推進、これは今まで、よく言われているけれども、実際に日本の中では非常にできない。できていない。特に産業界との関係でいうと、やっぱりビジネスの心というのは、物をつくって、売って、もうけるんだというのが、それ以外の研究開発の人には基本的に欠けているところなんですね。だから、私は、ここが、これから、産業化とも商業化とも絡むんですが、かなりの人が相互に、人数的にも、早く交流をほんとうにするというのが非常に重要じゃないか。しかも、それは国内だけじゃなくて、ヨーロッパと──今でも仲よくお互いにやっているんですが、そこでヨーロッパの場合、全体的に人がいっぱいいるからできているのか、それとも、大学にしても、製造企業にしても、大学の場合でも、物づくりとか、そういうのに非常に、大学と企業間とか機関とか動きやすいというのがもともとあるのか。それから、もう一つ、製造企業の人たちも、アリアンスペースなり、ESAなり、CNESと非常に交流なされている。これは一つは、CNESは、あれができません、投資というか、自分の金で会社もつくれるわけですね、そこがNASDAとかアリアンと違うんだけど。その辺の交流、具体的に、日本は、ご存じのように、ほんとうに少ないですよね。ヨーロッパはみんなやっているんだけど。

 松 

 ヨーロッパは多いですね。非常に多いと思います。メーカーからアリアンスペースに来る人もいるし、CNESからアリアンスペースに来る人もいるし。例えば3年の期間つきの契約で製造メーカーからアリアンスペースのインダストリアルディビジョンに入るということもよくあります。それから、これは、欧州の人がそういうふうに自覚しているかどうかはよくわからないんですが、日本にいて、私が欧州を見ていると、日本の場合は、今、産業界というとやっぱりビジネスでというふうな話で、ビジネスの話と技術開発の話と国の安全保障の話といろいろタイプの違うものがありますけれども、みんな、本来その人の守備範囲にないところにも口を出したがるという傾向が欧州の場合はあって、要するに、ビジネスだけ考えていてもだめだ、安全保障だけ考えていてもだめだ、技術開発だけ考えていてもだめだと。ビジネスをやっている人も、自分は欧州の一番いいビジョンとして、どういうふうなものを考えているかというメンタリティーは、ある程度以上のレベルの人にはみんなあるような感じがします。
 したがって、組織の性質が違う人の間での話というものが非常に通りやすいということがあります。その弊害は、日本もそうだろうと思って、全然違うところに行って、全然とんでもない提案をして、恥をかいて帰るというパターンが非常に多いんですけれども、欧州の場合は、自分の範囲はこれというふうに、仕事としてはあるんですけれども、でも、その自分の範囲の仕事を考えるときに、もう少し広く見て、いろいろなことを判断しようとするというメンタリティーは、ヨーロッパ全体を見ていて非常にあるような感じがします。
 したがって、極端な場合、お役所からメーカーとか、逆も、天下りというのがありますけれども、欧州は天上りというのもたくさんありますので、その辺はかなり日本から見ると動きは激しくて、動いても、自分の考え方としては常に全体を見るような考え方で、その中での仕事がぱっぱっと切りかわるという感じなので、非常に上手にやっていると思います。

 栗木委員 

 象徴的なのは、プロフェッサーという肩書を持った方が企業におられますよね。

 松 

 おりますね。

 栗木委員 

 あれはまさにそれをあらわしているんだろうなと。

 五代委員 

 ある1人をとったときに、何回ぐらいキャリアパスじゃないけど、動くでしょう。全然動いていない人ももちろんいるわけでしょう。そのぐらいなら普通だと、例えば宇宙の中で。

 松 

 これは非常に難しい質問ですね。

 五代委員 

 それは全員じゃないでしょうからね。あるグループで……。

 松 

 やっぱり3回ぐらいは動くのかもしれませんが、アリアンスペースは例外的に非常に定着率が高い会社で、アリアンスペースはアリアンスペース一筋というのが結構多いですね。

 井口委員長 

 日本の場合、ほんとうに心配しているのは、自動車の世界から来ますと、日本の宇宙産業のメーカーというのは、官重視なんですよ。だから、ほとんどが役所で商売している。ほんとうのビジネスセンスというのは、持っている人が非常に少ない。自動車の場合には、一般大衆がユーザーですからね。そこで商売しなければいけないんですけれども。どうも日本の宇宙メーカーというのは……。

 五代委員 

 そこをともかく何か破らないと。

 井口委員長 

 だから、宇宙産業から持ってくるんじゃなくて、別なところから人を持ってこなければ、ほんとうの人的交流の成果が上がらないんじゃないかと思います。

 五代委員 

 宇宙ビジネスの人はみんな終わると、モノラルというか、単色かもしれないから。

 川崎委員 

 マネジメントに入る人の素養がない。はっきり言って。自分の専門以外のことについてまで物を言えるほど見識を養う期間がなかったのかな、受験勉強が忙しくて。どうもそんな感じがしますね。それは話をしていてもわかりますよ。ヨーロッパの人は間口が広いですよね、クラシックの話から最先端のナノテクの話まで。

 五代委員 

 その中で、最後の人的交流の推進というのを、これを何とかしないと、ほかのところに全然いかないんですね。

 川崎委員 

 昔の言葉でいうと、三寸五分の柱を何本集めても大黒柱にはならんのですよ。

 井口委員長 

 3時半から新機関の話が、そっちのほうで……。

 五代委員 

 やってください。

 井口委員長 

 私、一つ伺いたいんですけど、ちょっと話が飛ぶんですが、今のロケットは使い捨てですね。長期的には、再使用型に移っていくんだろうと思います。いつまでも使い捨てて、デブリを増やしたり、地上に落として危険を招くようなことは、これから発展するに従って、そんなことは許されなくなるだろうと思いますけれども。アリアンスペースはどう考えておられますか、使い捨ての先、次のステップは。

 松 

 完全再利用ができる輸送系というのが将来のものであるというのは世界中、みんなが考えているのと同じなんですけれども、問題は、アリアンスペースが具体的なアクションをとるぐらいのタイムスパンで見たときに、それにコミットできるかというと、それはやっぱりまだまだだと思います。

 井口委員長 

 それはCNESがやるんですよね。

 松 

 今はCNESですね。アリアンスペースは、むしろ今のアリアン5の発展型だとか、そういったところを見るような形になります。

 井口委員長 

 それは使い捨て型。

 松 

 はい。使い捨てです。
 というのは、用途というか、輸送系を支えるミッションが何なのかということを見ると、相変わらずクラシックなんですけれども、静止衛星の打ち上げというのがどうしてもベースにあるわけです。そうすると、今、標準静止トランスファー軌道に打ち上げていますけれども、これを例えば直接静止軌道に打ち上げたほうがいいのか、もう少し別の軌道に打ち上げたほうがいいのかということすら、将来的な方向として、これが今の標準静止トランスファー軌道にかわるものだということがわかっていないような。現実のビジネスとしての打ち上げのレベルというか、状況は、まだそんな感じなんですね。したがって、そういった投入軌道の問題だとか、単独打ち上げか、デュアルの打ち上げか。じゃあ、デュアルの打ち上げでスケジュールを守るにはどうすればいいかといったようなオペレーションの部分というのをまだまだやることがたくさんあって、使い捨てロケットは、技術的には、基本的に成熟していて、次は再利用だというのは確かにそうなんですけれども、今の、きょうの活動を見ていると、使い捨てロケットでもやらなきゃいけないことが山のようにあって、この10年ぐらいはやはりそれを中心にやることになると思います。

 井口委員長 

 もう一つ、話がかなり飛ぶんですけれども、日本のロケットというのは、シリーズで5つなり、最初は成功するんですね。最初というのは、大変難しいんだろうと思うんですけれども、成功して、何回か成功して、その次になるとだめになるというところが、アリアンロケットでも、中国のあれでも、最初は失敗するけど、あとは着実に打ち上げが進んでいくんですね。松さんは、日本の経験もおありだから、両方見て、何が違うんだろうか。製造技術にいろいろな問題があるのではないかと思うんですけれども、製造システムなのか、マネジメントなのか、日本人かたぎと違うのか、何でそういう違いが出てくるんだろうか、不思議に思っているんですけれども。

 松 

 それは不思議に思っていて、私も、これが答えだというのは実はわかりません。完全に個人的な意見になりますけれども、日本人かたぎと今言われましたけれども、これはかなり大きいと思います。開発費をごらんになっても、非常に少ない開発費で効率的に打ち上げているわけですね、日本の場合は。じゃあ、組織全体のサポートだとか、そういったものがほんとうにそういった効率的な開発を可能にしているかというと、必ずしもそうじゃなくて、結構個人の努力によっているようなところが、特にメーカーに行ったときは、感じるわけですけれども、そうすると、最初はやっぱり緊張感がありますから、ある程度は進むんですけれども、やっぱりシステムとして確立していない、個人の努力に大きく依存しているものというのは、やっぱりどこかで疲れが出てくるような感じがあると思います。
 欧州の場合は、見ていると、頑張るときは頑張るんですけれども、システム全体として受け入れる長期的な安定というものに対して、何をやらなきゃいけないかと。長くコミットするということはどういうことなのかということをシステマティックに考えるような文化がかなり強いと思います。この差はひょっとしたらあるのかもしれません。ただ、日本で一番誤解されているのは、日本はそれである程度いくと失敗するということもあると。ただ、アリアン1からアリアン4までの最初のシリーズを見ていますと、H−<IMG src="/image/r02.gif" height="16" width="16" alt="2" border="0">が2回失敗したのは、あれは全部足すと、日本全体で36回ぐらい打ち上げたときだったですね。そのときに、アリアンというのは3回失敗しているのです、そこまでをカウントしていくと。だから、最初の10回、20回を見るといろいろありますけれども、オーバーオールに見ると、欧州もやっぱり同じぐらい失敗していて、そういったところでは、特に技術レベルに差があるとか、そういったものはないと思います。

 井口委員長 

 日本は失敗に対して非常に厳しいという文化の差はあるのかもしれません。
 それでは、どうもきょうはありがとうございました。
 先ほどのお話にもありましたように、欧州と日本とはいろいろなところでこれから連携をして進んでいくのが両方にとって得策ではないかという気がいたしますので、これからもどうぞよろしくお願いします。
 それでは、現状報告をお願いいたします。

 星野(宇宙政策課・事務局) 

 本日は、調査国際室の北村が風邪のため声が出ませんので私がかわりにやらせていただきます。
 まず宇宙開発委員会の主な活動に関しましてですが、今週の月曜日に第44回の委員会を行っております。議題については、そこに掲載されているとおりでございます。
 次に、宇宙開発に関する国内の動向についてですが、先週の金曜日と今週の月曜日に、LE−7Aエンジン技術データ取得試験を行っております。計画どおり終了いたしました。
 次に、海外の動向についてですが、先週の水曜日、アメリカのブッシュ大統領が次のNASAの長官としてショーン・オキーフ氏を指名したということが発表されております。オキーフ氏は、今後、上院の承認を経て、正式にNASAの長官に就任することになっております。まだ承認はされておりません。これに対する見方としましては、国際宇宙ステーションのコスト超過問題にかかわるさまざまな予算関係の問題を解決したいという大統領の意向のあらわれというふうに受けとられております。
 先週の水曜日と木曜日に、ヨーロッパのESAの閣僚級理事会がイギリスのエジンバラで開催されました。ここでの主な議題としましては、ESAとEUの協力の拡大ということがございました。この点については各国の了解が得られまして、ガリレオのみならず、GNSSでの協力を図っていくことが了解されております。
 最後に、ここには載せておりませんけれども、情報として入手したものをお伝えいたします。8月21日に、ロシアのプログレス補給船で、日本のパイロットプロジェクトとして、コマーシャルの撮影のためのビデオテープが打ち上がっているんですが、それのビデオテープが10月31日に、ソユーズTM宇宙船にて11本地上に回収されたということでございます。ロシアからの輸送後、撮影状況の簡単な確認が先週になって終了いたしまして、医学実験、航法実験、パイロットプロジェクト、これはコマーシャルの撮影でございますけれども、あとは、材料実験にかかわる映像がそれぞれ予定どおり録画されていることが確認できたそうです。詳細の報告は後日行われるということでございます。
 以上でございます。

 井口委員長 

 どうもありがとうございました。最後の情報は大変結構な情報だったと思います。
 松さん、ESAの閣僚級理事会の話が出ていますが、ガリレオというのは、完全にEUで承認されたんですか。

 松 

 まだですね。

 井口委員長 

 ほかに何かご発言ございますか。よろしゅうございますか。それでは、前回の議事要旨は後ほどご確認いただくことにいたします。
 それでは、第45回の宇宙開発委員会を閉会いたします。
 松さん、どうもありがとうございました。

─── 閉 会 ───



(研究開発局宇宙政策課)

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