戻る

宇宙開発委員会

2001/11/19 議事録
第44回宇宙開発委員会議事録

第44回宇宙開発委員会議事録

1. 日時 平成13年11月19日(月)14:00〜15:15

2. 場所 宇宙開発委員会会議室(文部科学省別館11階)

3. 議題  
  (1) 第15回地球観測衛星委員会(CEOS)本会合及び第8回統合地球観測パートナーズ(IGOS−P)会合の開催結果について
  (2) 運輸多目的衛星新1号機(MTSAT−1R)の打ち上げ遅延について
  (3) 「我が国の宇宙開発利用の在り方」について
  (4) その他

4. 資料  
  委44-1 第15回地球観測衛星委員会(CEOS)本会合及び第8回統合地球観測 戦略パートナーズ(IGOS−P)会合の開催結果について
  委44-2-1 運輸多目的衛星新1号機(MTSAT−1R)の打ち上げ遅延について
  委44-2-2 H−<IMG src="/image/r02.gif" height="16" width="16" alt="2" border="0">A上段の再々着火実験実施時期の見直しについて
  委44-3-1 宇宙教育について
  委44-3-2 我が国の宇宙開発の目指す方向
  委44-4 第43回宇宙開発委員会議事要旨(案)

5. 出席者  
  宇宙開発委員会委員長 井口雅一
  宇宙開発委員会委員 川崎雅弘
  栗木恭一
  五代富文
  文部科学省大臣官房審議官 素川富司
  文部科学省研究開発局宇宙政策課長 芝田政之

6.議事内容

 井口委員長 

 第44回の宇宙開発委員会を始めさせていただきます。
 最初に、第15回地球観測衛星委員会本会合及び第8回統合地球観測戦略パートナーズ会合の開催結果について、宇宙開発事業団の古濱理事に御報告をお願いいたします。どうぞよろしくお願いします。

 古濱理事 

 古濱でございます。
 それでは、資料44−1に基づいてOHPを主に使って説明いたします。地球観測衛星委員会(CEOS)及び統合地球観測戦略パートナーシップ(IGOS−P)の京都会合の開催結果について、御報告いたします。
 会議は先々週11月6日から8日まで3日間にわたって開催されまして、最初の1日半がCEOSの本会合、それから2日目の午後にIGOSのオープンセッションを一般向けに行いました。8日に第8回のIGOSの会合を行いました。場所は京都国際会議場でございまして、CEOSの参加者は文科省、NASDA、文科省からは素川審議官も議長として参加されました。それからNASA、ESA、そのほか41の宇宙機関とかNOAAのようなユーザー機関、合計約110名の参加がございました。
 IGOSの方は、今度はCEOSは1メンバーでございまして、CEOSの議長としてNASDAは参加いたしました。それから国際組織、UNEP、UNESCO、WMO、GCOS、GTOS、そのほかIGBPのような国際地圏・生物圏研究プログラムのような国際研究計画等の代表、13の国際組織となっていますが、それらの代表が参加いたしまして総勢約80名でございました。
 これは前々から出しているCEOSの委員会の構成なんですが、本会合がありまして、現在メンバーは23カ国になっています。それで主にCEOSとIGOSの関係を取り持つ戦略実施チーム、それからCEOS行政事務局。それからCEOSのアクティビティーを一言で申し上げますと、地球観測データのキャリブレーションとかベリフィケーションみたいなものを取り扱う作業部会と、それから情報システムの作業部会、WGISSと言っていますけれども、こういったアクティビティーがございます。詳しくは省略いたします。
 それで今回の京都でのCEOSの5回目の会合の審議概要の結果でございますが、一つとして、CEOSの体制の強化をいたしました。CEOSは当然IGOSの構成メンバーでありますが、IGOSがだんだん発展してきますと、その発展状況に応じてインターフェイスが変わってきますので、体制強化のためにさまざまな工夫をいたしました。その一つが、CEOSの中には戦略実施チームSITがございますが、これがCEOSの会合ごとに設立されるアドホックな委員会であったものを常設機関といたしました。それで格段に強化をいたしました。SITの議長は2年間にいたしました。
 それから、CEOSへのアジア関係機関の参加でございますが、先ほど23カ国のメンバーと申し上げましたけれども、今回、韓国の航空宇宙機関KARIがメンバーとして、タイの地理宇宙技術機関GISTDAがアソシエートメンバーとして参加いたしました。これは過去1年以上にわたって日本とコンタクトがございまして、日本が議長職の役割を演ずるのを契機に参加していただきました。それでメンバーが22から23になったということであります。
 いま一つのCEOSでのエポックというのは、WGISSというワーキンググループが、情報サービスのテストファシリティーを作りまして、これのデモを行いました。会議の期間中フロアーで、日本とタイ及びドイツでしたでしょうか、現地のデータを組み合わせて、このときのデモンストレーションは、森林火災の情報を処理して合成して実況を把握するといったものでした。こういったものがテストファシリティーとして、日米欧タイの協力のもとで行われまして、こういった手法は、これから申し上げますさまざまなところで応用が可能であると。ですからWGISSのこのテストファシリティーのデモンストレーションは、こういったやり方で実用化ができますという例を、このCEOSの会合を契機にCEOSの参加者に示した。ですからWGISSがこれまでやってきたことの成果をCEOSのメンバーに知らしめたということになります。ですからIGOSで水循環というのが今回テーマになりましたけれども、その中の一部の協調集中観測計画というのがございますが、こういったCEOPのテストファシリティーとして、今回のデモの様子がそのまま使えるということであります。テストファシリティーの内容はこういったデータのアーカイブ要塞、それから検索サービス、データの提供や加工をしたり、そういったものを含んだものを持っております。これはデモ会場で当日行われたものの内容でありまして、データ取材の入手、そしてカタログの検索、データの入手・確保・解析、両者の情報を重ね合わせまして、特定のところに森林火災があるといったことを現地に通報する、そういった仕組みであります。
 CEOSの今後の取組みでありますが、CEOSは主に宇宙の部分の担当でございますが、CEOSで培われた衛星データの校正・検証やテストファシリティーの技術は、今度は海上の観測システムと統合したIGOSへ、この手法をトランスファーいたしましてこういった技術を使っていただくといったことで、CEOSがIGOSに貢献できる。それからCEOSの組織の見直し及び戦略策定のためのCEOSレビューチームの活動を継続すると。今回、CEOSのSITの見直しをやりましたということは最初に申し上げましたけれども、CEOSはSITだけではなくてワーキンググループを含むCEOSの正統的な活動と、それからCEOSの戦略をどうするか、将来CEOSとして何を戦略的なターゲットとするかといったことを検討するレビューチームを今後とも続けましょうということであります。
 それから関連の情報といたしましては、来年の春に、CEOSの情報システムサービスの作業部会を行う予定であります。これはアメリカの9月のテロ事件のために東京開催が延びたものを、この時期にやるということであります。それから16回のCEOS本会合は、来年の11月にイタリアで行われることになりました。
 次にIGOSでございますが、IGOSは1994年の7月に当宇宙開発委員会の長期ビジョン懇談会の報告の中に、新世紀の宇宙時代の創造に向けてというのにおいて、全球の観測システムを日本で国内向けに作ったわけですが、それは当時の内田理事長がCEOSの場で発表されたと伺っています。そういったことが契機になって、それが熟成してIGOSの成立になるということでありまして、ですから我が宇宙開発委員会はIGOSの成立にかなり大きな寄与をしているということであります。IGOS自体は1998年に、宇宙からの観測と国際的な組織等による地上観測システムの計画調整を行うために、統合地区観測戦略パートナーシップ、Integrated Global Observing Strategy Partnershipということで設立されて、まだ生まれてせいぜい4年でございますけれども、最初の萌芽的な成果が出てきたということであります。主な目的や観測データのギャップ、観測が欠落したところですとか、あるいは重複のないような効率的な全球の観測計画を策定しましょうと。そして研究と定常業務の橋渡しをするような全球観測システムを作りましょうと。で、観測から理論まで一貫した計画を、このような性格の違う4つの団体、宇宙機関、それから地球変動プログラム、それから全球地球観測システム支援機関、それから地上観測システム、それぞれドライビングホースも違うわけですけれども、こういったものが持続的な全球の観測という1点で集まってパートナーを組んで行いましょうといったことであります。今回、GOS/GAWという地上システムが新しいパートナーシップの14番目のメンバーとして参加いたしました。
 それから、IGOSの最初に、今回初めての試みとしてオープンセッションを行いました。これはIGOSの構成メンバーだけではなくて、マスコミですとか、あるいは関係の先生方、大学の先生方、専門家、あるいはポリシーメーカーという行政担当者にIGOSの中身を知っていただきましょうということで、主にIPCCとIGOSの橋渡しをする。IGOSというのは全球の観測計画のストラテジーなんですが、IPCCはIntergovernmental Panel on Climate Changeという気候変動にかかわる政府間パネルでありまして、これからいろいろCOPに決めるようなさまざまな方針のドラフトが決まりますので、そういったところの結びつきを強くする、ひいてはIGOSの活動の重要性を周知しようということで、オープンセッションを企画いたしました。そして、そのIPCC側からポール・メイソン博士、これはGCOSの委員長でありますが、それからIGOSの方からティルマン・ムーア、これは現在のSITのチェアでありますけれども、そのお二方の基調講演。それから現在のこの総会までのテーマは3つのテーマがございます、海洋テーマ、炭素循環テーマ、大気化学テーマ。海洋テーマはさることながら、炭素循環はカーボンサイクルといいますか、地球温暖化で焦眉の急のテーマでありますし、大気化学はこれ自体オゾンでありますとか微少ガスなんかも含んで、大気汚染の分野であります。そういったものが現在テーマになっております。それに関する報告。それから最後にパネルディスカッション。
 それから一番最後に、私の方から議長声明ということで、このオープンセッションの成果を世に周知するためのメッセージを発信いたしました。これはインターネットでNASAのヘッドクオーターでも見ることができましたけれども、パネルディスカッションのメーンであります。アジア工科大学にも中継したということです。
 IGOSの京都での審議の概要ですが、4つ目のテーマといたしまして、水循環に関するテーマの準備をすることになりました。テーマペーパーを策定することが承認されまして、いよいよこの水循環がテーマになることが決められました。そしてそのWCRPが中心になりまして、日本が推進するCEOP(協調集中観測計画)が、NASA及びNASDAが検討中のGPM計画、せんだってTRMMをフォローする計画としてGPMを計画いたしましたけれども、それが一つのCEOP、あるいはこの水循環テーマの構成部分になっております。そうしたものが正式にテーマとして採択されたということであります。
 ちなみに現在実施のテーマは3つございまして、海洋テーマ、炭素循環テーマ、大気テーマであります。ですから水循環テーマは4つ目のペーパーであります。ステータスは、海洋テーマが実施中、炭素循環テーマ・大気テーマはテーマペーパーを策定中ということであります。
 それからIGOS−Pでの新概要でもう一つの大きな特徴は、気候変動枠組み条約の支援であります。ときを同じくして、第7回のCOP7の会合がマラケシュで開かれておりまして、全球の観測関連に関して責任を持っているGCOS(全球気候観測システム)が、COP7内に向けて全世界の観測システム総点検と、衛星・地上の統合を含む行動計画の策定を行うことが決定されたということが結果の一つなんですが、GCOSはこの報告の中で、IGOSが主要な役割を果たしているということを明確に言っている、そういったリポートをCOP7に対して出したのですが、あわせて次のCOP9についてもそういった報告書を提出することが任務づけられております。
 それからこれに関連して、IGOS−PはGCOSの行動計画の策定を今後とも支援していくことをこの会合で決定いたしました。
 それから次のステップなんですが、来年南アメリカで、世界サミット(World Summit on Sustainable Development)がございますが、それに向けてIGOSのビジビリティーといいますか存在を訴えようということで、現長のリーダーシップのもとに、Agenda21の実施のための新たな提案を準備することを決定いたしました。
 このサミットに向けた事前の会合では、持続的な開発委員会(Committee on Sustainable Development 9)では、大気に関する統合地球戦略を実施するための戦略を共同して企画実施すること。それから統合地球観測のためにグローバルな観測システムと研究プログラムとの間の協力度調整を強化する。そういったことがこのCSD9の中でうたわれておりまして、IGOS−Pの役割がこういった会合で認められた。あわせて、こういった会合を通じて、ワールドサミットへの大きな道筋といいますか、役割が重要であることが認識されてきたということです。
 IGOS自体の今回の会合の成果の一つに、新しいメンバーとしてWMOの傘下のGOS/GAW、全球観測システム及び全球大気監視計画のプログラムオフィスがIGOS−Pのメンバーとして加入することが承認されました。それから今度はIGOSの組織自体としては、CEOS議長とその他CEOS以外のIGOS−Pの機関から選出された議長との2名の共同議長制になることが導入されまして、IGOS自体はこれまで6カ月に1遍行われましたけれども、来年6月以降、会期が1年になるということになりました。
 それから今後の取組みでありますが、気候変動枠組み条約(COP7)において、衛星と地上の観測を統合するアプローチが今後の組織的観測の発展を支えていくというような結論になってきまして、そのCOP7とIGOSのリンケージを強化するということが再度認識されたということであります。
 それからIGOS−Pの取組みに世界が結集する中で一層の協力が必要だということで、こういった全球の炭素循環ワークショップの開催、あるいはIGOS−P9の開催、それからCOP内に向けての報告及び世界サミットへの協力といったことが確認されました。
 以上、3日間にわたる会合というのは非常に短かったわけですが、これまでにない充実ぶりでありまして、2年分ぐらいの仕事をしたのではないかということで、関係者から大いに感謝されました。
 以上であります。

 井口委員長 

 どうもありがとうございます。
 それでは御質問、御意見を伺います。

 川崎委員 

 大変重要な仕事をやっておられるのですが、いま一つ見えないのは、今回以降のアクションプログラムの中で、日本の中のそれぞれの機関がどういう分担でその役割を果たすのかというあたりの仕組みが、もし差し支えなければ教えていただきたい。

 古濱理事 

 全体的な枠組みはIGOS−Pの国内対応機関がございまして、そこでこういったトップダウン式の情報の周知、対応機関の参加協力というのは以前からありまして、今後とも強めていきたいと思っています。それからテーマと申し上げましたけれども、テーマにつきましては、水循環テーマでその中の集中観測プログラムCEOPのようなものでありますと、東大の小池先生が、言ってみればナンバー2として世界的に活躍されていまして、現在の地上観測ネットワークと、現在及び将来の全球の衛星による地球観測計画がちょうどかみ合っているので、そこを調整して、宇宙から地上からの観測を合わせてCEOP計画を推進していくといった役割を担っておられます。
 それから先ほどのWGISSの中で森林の計画についての報告をいたしましたけれども、その中でも日本は、特にNASDAは、今回のデモンストレーションのみならずWGISSのメンバーとして大いに活躍しております。それから海洋の方も当然、宇宙セグメントはNASDA自体にとってみますと、NASDAがその中でユーザーに的確に情報を提供することが一つの任務でありますから、IGOS自体は非常に緩いコミットメントという、こういうことをやりますという約束でもってやることでありますから、自分の持っているソロプロパティー、財産とかマンパワーとかそういったものを提供して寄与するということになってまして、先ほど申し上げました海洋とか水循環、アトモスフィア・ケミストリーにつきましても、海洋が一番進んでおりますが、次のカーボンサイクルですとかアトモスフィア・ケミストリーはまだテーマペーパーを詰めていく段階でありまして、具体的なものはIGOSのイメージ全体としてはこれからなんですが、方向性が見えてきたと。海洋自体は今回IOC−UNESCOから報告があるはずなんですが、6カ月ぐらいのスパンではさしたる成果は見えないということで、正式な報告はIGOSとしてはなかったのですが、全体としてはこのようなテーマペーパーが1年前から報告されまして、これは全球の観測関係について、どういう役割を分担するか、どういう研究項目が必要かということが全部網羅されていまして、これを着実に実施していくという、インプリメンテーションと言っていますが、そういう段階になりまして、NASDAのみならずそのほかの対応機関が寄与していると。

 川崎委員 

 今の御説明だけど、この参加者を見ると、オブザーバーとして経産省と気象庁だけなんですが、今のようなお話になってくると、COP7であるとか6であるとかとなれば、環境庁であるとか、つかさ、つかさがあるんで、あるいは水循環になれば当然のことながら国交省もかなり大きいし、農林水産省も大きいのですが、そういうあたりは国内体制は何か連絡があるのかどうか。

 古濱理事 

 ございます。参加者も今回は、テキストの方には書いてあると思いますが、オブザーバーとして総務省、経産省、国土交通省、気象庁、国土地理院が、2ページ目の3.2のところに書いてございますが、対応者が参加いたしまして、それぞれ成果を持ち帰ってやっています。環境庁からは国立環境研からも参加しているということであります。

 川崎委員 

 国内的には意見調整をする場がそこで文科省を中心にしてできているということですね。

 古濱理事 

 IGOSの関係省庁連絡会というのがオフィシャルにはあります。それは文科省さん管理です。

 栗木委員 

 川崎委員とNASAのアスラーさんとお会いしたときに、こういうアクティビティーが幾つかあるわけですが、これによって出てきたアウトプットがどのぐらい実際に役に立っているか、何に反映されたか、炭酸ガスであればそれの抑制にどれだけ貢献したか、定量的な表現というのはこういう組織の中では考えているんでしょうか。あるいは出てきたものをだれかが評価する、結局導入したものに対してアウトプットが有効であったかどうかということを評価するのは、だれがやるのでしょうか。

 古濱理事 

 それは、そのこと自体が非常に重要なテーマでありまして、殊に限られた資源の中でどう有効利用するかということが、テーマ設定の段階から今、問題になっている。CEOS側からいうと、それはSITという戦略チームが、これは実施を見るチームなんですが、結局SITは評価もしないといけないだろうという議論がございます。だけどIGOS自体は98年にできまして、2000年の11月にやっとテーマの1号がこの会合でできて、まだ実施まで1年しかありませんから、なかなか具体的に定量的にというのは今後の話と思いますけれども、評価の必要性というのは言われています。

 栗木委員 

 このCEOSのメンバーを見ると実施機関が多いわけでして、具体的にはこの実施機関が投資をしているといいますか、そのファンドを持ち寄っている格好になるわけですね。

 古濱理事 

 おっしゃるとおりです。

 栗木委員 

 そうすると、そのファンドを出したところは国なり何なりに仰いでいるとすると、そこが評価を受ける。国の何らかの機関として評価を受けるという、そういう格好になるんですか。

 古濱理事 

 そうですね、先ほどの御質問で、どういう評価を受けるか。一番大きなものは、観測をして観測結果をいろいろな格好でわかりやすいデータにするんですが、使ってもらうところがないといけないだろうと。その相手がIPCCだということを鮮明にして、IPCCとIGOSの間の橋渡しをしっかりやろうと。これは1年前に議長職をやりますというときに、山之内理事長が、IPCCとIGOSが結び付けないようなIGOSだったら要らないだろうと。だから逆に言って、IPCCとの橋渡しをやりなさいというわけで、これは全く日本のリーダーシップでそういうことを申し出まして、to increase IGOS visibilityということで、IGOSの成果がIPCCに反映するようにというのが一つの旗印です。

 井口委員長 

 ほかにいかがですか。よろしいですか。
 ではどうも、御苦労さまでした。
 それでは次に、運輸多目的衛星新1号機(MTSAT−1R)の打ち上げ遅延について、国土交通省総合政策技術安全課の山尾技術開発推進官に御報告をお願いいたします。

 山尾技術開発推進官 

 国土交通省の総合政策技術安全課の山尾でございます。井口委員長はじめ宇宙開発委員会各委員の先生方におかれましては、当省の宇宙開発技術の推進に御理解、御支援を賜りましてまことにありがとうございます。
 当省からの本日の御報告事項でございますが、委員長から御紹介がございました運輸多目的衛星新1号機、MTSATと呼んでおりますけれども、これの打ち上げの遅延についてでございます。既に御存知のとおり、MTSAT新1号機については、平成14年度中の打ち上げということを目標にいたしました諸準備を進めてきたところでございます。お手元の資料44−2−1の1.のところを見ていただけますでしょうか。この打ち上げ準備につきましては、米国の衛星メーカーと製造契約を締結いたしましてこれまで進めてきたわけでございますけれども、この中で米政府からの輸出ライセンスと、衛星ということで輸出ライセンスの取得が要るわけでございますが、このライセンスの取得に思いのほか時間を要してしまったということで、おおよそ5カ月程度、当初見込みより遅れてしまうということになりました。まことに遺憾ながら、平成15年の夏、約5カ月程度でございますが、遅れるということのやむなきに至った次第でございます。
 当然のことながら、これに対しての措置ということが必要になるわけでございますが、MTSATにつきましては、大きく2つの機能がございます。1つは気象観測のための機能、それからもう一つは航空管制という機能と2つございます。気象観測につきましては現在、静止気象衛星ひまわりというものがございまして、このひまわりの後継ということに位置づけられるものでございます。ひまわりは既に現在でも1年半設計寿命を越えておりまして、本件の遅れによりまして3年半程度の設計寿命の超過ということになってしまいます。これまでも慎重に運用管理をしてきたわけでございますけれども、さらに一層の寿命延長のための慎重な運用を心がけるということに加えまして、現在検討しておりますのが、米国の極軌道気象衛星といったような外国の衛星を活用した雲の画像解析ということでございます。またそのほかの外国の静止気象衛星というものを活用して、ひまわり5号で現在行っております気象観測と同レベルの観測に支障がないようにということを心がけてまいりたいと思っているところでございます。
 さらにもう一つの大きな柱でございます航空管制のミッションでございますけれども、これにつきましては、当初から平成17年度に1号機2号機の打ち上げを予定してございまして、2機の体制で航空ミッションは実施する予定でございます。したがいまして、遅れ自体は遺憾なことではございますけれども、1機目と2機目を16年度に予定しているところでございますが、これを打ち上げることによりまして、当初予定しておりました平成17年度の2機体制による運用ということに支障のないようにと考えておるところでございます。
 簡単ではございますが、報告は以上でございます。

 井口委員長 

 どうもありがとうございます。私は旧運輸省で、この旧1号機に関係しておりまして、これが無事に上がっていればこういう苦労をしなくても済んだということで、大変残念でございますが、それに基づいて、次のH−<IMG src="/image/r02.gif" height="16" width="16" alt="2" border="0">A上段の再々着火実験実施時期の見直しにつきまして、宇宙開発事業団H−<IMG src="/image/r02.gif" height="16" width="16" alt="2" border="0">Aプロジェクトサブマネージャーの遠藤さんに御報告をお願いいたします。
 何か今の件で御質問があれば、資料に問合せ先が書いてありますので、そこにお願いいたします。どうもありがとうございました。
 では遠藤さん、お願いいたします。

 遠藤サブマネージャー 

 遠藤でございます。
 当初14年度に、H−<IMG src="/image/r02.gif" height="16" width="16" alt="2" border="0">Aの第2弾の再々着火実験を、このMTSATの打ち上げ機体を利用して実施するということで計画を立てておりましたが、今御説明がありましたように、MTSATの打ち上げが約半年間、5カ月間延びるということでございますので、当面の打ち上げ計画の中では、この再々着火実験ができる余力のある機体としてはこのMTSAT−1Rの打ち上げのみでございますので、この再々着火実験につきましても、MTSATと同様に延期して実施させていただきたいと思っております。資料の44−2−2に再々着火実験の目的・概要等をつけておりますが、これは以前にも御説明したことでございますので、説明は割愛させていただきます。
 以上です。

 井口委員長 

 どうもありがとうございました。いかがでしょうか。国産技術でできていれば、こういう事態は生じなかったのかもしれませんが、技術がないためにいたし方ないということであろうと思いますが。再々着火実験実施時期につきましては何か御質問がございますでしょうか。
 よろしゅうございますか。それでは、どうも御苦労さまでした。
 それでは、我が国の宇宙開発利用の在り方につきまして、的川さんからどうぞ。最初に宇宙教育について、宇宙開発研究所の的川教授にお話を伺います。

 的川教授 

 混んだスケジュールの中で時間を割いていただきまして、ありがとうございました。
 資料の44−3−1で大体の筋は書いておきましたけれども、宇宙教育というコンセプト、あまり耳慣れないことかもしれませんけれども、国際的にはいろいろな学会で既にスペース・エデュケーションという言葉が随分と大きなセッションを作ってやっておりますので、日本でも少し活動の柱にそういうものを入れる必要があるのではないかと。とりわけ新しい機関が誕生するときに、活動の大きな柱の一つとしてそういうものを一つ打ち立てることが必要ではないかということで、お話しさせていただきたいと思います。
 宇宙という分野は、国民の間で今、日本の国で多少忘れ去られているような、夢を育むという点で大変大事な分野であると思いますけれども、なかなかこの半世紀間、ペンシルロケットから半世紀たちましたけれども、夢を育む、日本人の大きな夢の中心になかなか座ることができにくかったという点があると思います。ペンシルのころに比べますと、大変大きく育ってきたわけですけれども、まだまだ宇宙が大変好きな人たちの活動というのが中心になっていて、社会に対する責任という、大変大きな予算を使う中での、根こそぎの国民に対する責任という点では、もっと積極的な貢献ができるだろうという感じがしております。
 特に宇宙に関する教育というのは、今まで広報という概念の中でやられていたような気がするんですけれども、教育という議論をするときに、一つは直接宇宙の後継者を育てるということで大学生とか大学院生とか、高齢ではないですが若いですけれどもそれほど小さくない、そういう人たちへの教育というのが非常に大きな問題になっておりました。現在の統合の議論の中でも、国民のための宇宙開発というのが前面に押し出されておりまして、その中にはもちろん教育に対する責任というのは含まれていると思いますけれども、特に小・中の子どもたちに対する教育という点に重点を置いた宇宙教育というのが非常に大事ではないかという感じがするわけです。宇宙教育というのは、そこに書きましたけれども、IAF国際宇宙航行連盟、それからCOSPAR、宇宙理学と工学の世界で一番大きな学会でも、それぞれスペース・エデュケーションというセッションがありまして、年々各国からいろいろな報告が寄せられております。
 整理しますとその3つのような側面がありまして、直接に宇宙開発あるいは宇宙科学の後継者を養成するというものが第一、それからもう少し広く、各国で進行している理科嫌いという傾向を克服するために宇宙という夢のある分野を積極的に活用していくというものが第2、それから3つ目にはもっと広く、それぞれの国での子どもたちに生きる力とか夢とかを与えてエンカレッジしていくという側面でのもの。こういう3つの側面が大体考えられると思いますけれども、日本で行われていた宇宙についての広報というのは、どちらかといえば今までは別々に分かれておりましたけれども、我々はこんな立派な業績を上げました、こんな国際的な活動をしております、ですから皆さん宇宙をサポートしてください、予算ももっと欲しいですというような組織宣伝というのが割と重点になっていたような気がします。ただ、広報をやりながらどうしても子どもたちに接する機会は多くて、その中からある程度自然発生的に有意義な活動が出てきているということは確かで、それをもう少し意識的な、組織的な取組みにしていく必要があるのではないかなという気持ちでおります。
 一方で、宇宙の側からではなくて国民の側から見た場合に、やはり子どもたちの小・中・高での心のすさみ方というのはかなりひどい状況にあると現場からの報告もされていますし、実際に宇宙に関連した学校の現場の先生方と一緒に取り組んでいる中でも、そういうことが非常にビビッドに報告されております。総合学習というふうなことが始まって、カリキュラムの面でも非常にたくさんの新しいものが求められるようになっておりますけれども、宇宙というテーマというのは大変総合的な側面を持っていて、単に理科とかそういうことだけではなくて、もっと非常に多彩な側面を持っておりますから、総合学習がしばらくは学校の先生に対して大変負担になるだろうと思いますけれども、そういうカリキュラムについても宇宙が積極的に役に立てる分野ではないかと考えています。
 全体として見ると、科学技術振興事業団とか日本宇宙少年団とか日本宇宙フォーラム、あるいは日本惑星協会、いろいろなところで科学技術教育あるいは宇宙に関連した子どもたちの育成ということが取り組まれておりますけれども、そういう人たちと学校の現場の先生たちとのつながりというのは、一つのプロジェクトがあれば、そのプロジェクトごとに単線でつながっているような形で、一本釣りという言葉はふさわしくありませんが、そういう非常に心細いつながりで行われているのが現状で、学校の現場と宇宙の現場というのが四つに組んで子どもの教育に貢献していくという意味での、司令塔になる部分が今どうしても必要であろうと、これまでの実践の経験から感じている次第です。そこで理念とか、あるいはどういう活動をすれば本当に子どもたちの理科教育あるいは心の教育というものに役立つのかということを、宇宙という大変子どもたちが大好きなものをトリガーにして組み立てていくということが、国の取組みとして是非やるべきではないかと思います。
 先ほど申し上げました、いろいろな自然発生的な取組みの中からでも、例えば宇宙開発事業団、宇宙科学研究所それぞれの取組みの中から、例えば不登校だった子が学校に行き始めたというふうな例は大変たくさん寄せられておりますし、いろいろなキャンペーンで数十万人の人が応募するようなケースも、火星のキャンペーンとか向井さんの俳句のキャンペーンでも寄せられておりますし、人々の宇宙への期待というのは非常に強いものがあります。それはやはり日本の子どもたちとか、それからおそらく大人も大変な閉塞感を持っているような状況の中で、宇宙への夢というのを生かそうと思えば、相当我々は生かし切れるのではないかなと。そういう宇宙への憧れを、みんなをエンカレッジしていくものに系統的につなげていくということが大事で、新しい組織がおそらく将来輸送系とか、宇宙科学もそうでしょうし、宇宙ステーションもそうでしょうし、幾つかの柱をそのうち提示しなければいけませんけれども、国民の側から見て、今までの宇宙開発のバラバラでやっていた組織とは違って、こういうフレッシュな面を持っているのだなというようなことをアピールするためにも、子どもたちの問題に新しい組織がこれだけ関心を持っているのだということを明確に示すことが非常に大事ではないかという感じがしております。
 アメリカでは、御存じと思いますがNASAとそれからNSTAという組織がありまして、全国の理科の先生の組織ですね、これが大変緊密な連携を保ちながら、いろいろなカリキュラムの編成だとか取組みを進めておりますけれども、それがアメリカの基礎になっているコミュニティーの教育に非常に大きな影響を及ぼしております。日本はNASAほど、国民は宇宙そのものの市民権というのは大きく持っておりませんので、同じようにはいきませんけれども、おそらくこれまでにある程度自然発生的に行われていた取組みの中から、もう少し系統的に教訓を酌み出せば、日本としても大変効率のいい宇宙教育というのはできるのではないかと思います。ちなみに昨年、ヨーロッパで物理教育シンポジウムというのがやられまして、これは十数カ国が参加してフランスで大きなシンポジウムがやられたのですが、その前段に各国がそれぞれまた物理教育シンポジウムというのを予選のように行って、その積上げとしてヨーロッパ全体の教育が話し合われました。ヨーロッパが一塊で、アメリカを意識したかどうかはその報告書には書いてありませんけれども、やはり理科離れが非常に進行していて、このままではヨーロッパを作り上げていくための後継者が危ういということで組織されたもので、これにはESAも入っております。そういった取組みが各国で行われているところで、特に日本のような国で、なかなか中国とか韓国とかと連携していくというのはいきなりは無理ですけれども、宇宙教育というものを少し新機関の大きな活動の柱にしてはいかがかなという考えです。
 できれば、そこにちょっと書きましたけれども、宇宙教育センター的なものを創設して、先ほど挙げました3つの宇宙教育の側面を理論化し組織的に実行していくということがやられればいいのですけれども、なかなか予算の点もあって、いきなりは無理かもしれませんが、とりあえず系統的な取組みをしていくための柱を確立していくといいのではないかという提案です。
 以上でございます。

 井口委員長 

 どうもありがとうございます。
 この次に説明があります、これまでに何回も議論しています、我が国の宇宙開発利用の目指す方向での教育というのは、宇宙機関の重要な役割の一つとして入っているわけですけれども、教育と言ったってピンからキリで、お話のようにいろいろな面がありますので、全部できるかどうかというのはわかりませんが、いかがでしょうか。

 川崎委員 

 一つ大変大事なことなんですけれども、我々の立場は宇宙開発について議論すればいいんでしょうけれども、日本全体について宇宙以外の分野も大事なのではないかという気もするんですね、こういう意味の試みは。これは制度の問題と関連するんですが、カリキュラムというのはどこか特定のところが作られるので、こういうところで一生懸命カリキュラムを作ってもそれは絶対に正規にはならないんです。

 的川教授 

 教材は作れますね。

 川崎委員 

 教材にはなっても、副読本にはなるだけで、そういう制度のイメージがある。そういう意味で、なかなか成果にはなりにくいというのが一つあるのと。もう一つ私の疑問は、新機関でというのも一つのアイデアなんですが、既に物理学会とか日本化学会では、学会の中に教育関係の部会があって、日本化学会の場合には、ことしの8月に高島屋で一種の実験をやることをずっと長年計画してきて実験やられているので、日本航空学会あたりがやってそれを政府が何らかの形でサポートするというような、全分野について何かそういうスキームというのはどうなんでしょうか。宇宙だけというのも何かちょっと。ありがたいけれども、ちょっといささか気が引けるなと。

 的川教授 

 気が引けるというか、宇宙の分野で宇宙の機関が教育に向けて。

 川崎委員 

 それはもう当然そうだと思うんですね。

 的川教授 

 例えばNASAはやっていますね。

 川崎委員 

 ええ、NASAはサマーキャンプを。

 的川教授 

 活動体としてサマーキャンプをものすごくたくさんやっていますね。NASAほどやることは当面無理だと思いますけれども、その視点でいいのだと思うんですが、物理教育とか化学教育に口を出せというわけではありません。ただ、子どもたちに物理学に興味を持てといってもそれはいきなりはなくて、宇宙という分野でやれば、小学校の物理や化学が何もわからない人たちでも大変興味を持つという精神的な動機がありますので、宇宙の現場と学校の先生とが手を組めば、非常に子どもたちをいい方向に導いていく大きな力になるのではないかと。それはおそらく宇宙開発の現場の機関がやればもっとも強力にできるのだろうと私は思うのですが。

 井口委員長 

 現在でもやっているわけですね、ある程度。先生のこの資料に書いてありますけれども。

 五代委員 

 それぞれの宇宙機関が独立し、あるいは協力して、特にNASDAでいいますと、前は教育なんてとんでもないといわれていたのが非常に協力してできるようになったけれども、いま一つコアというか、そこまでできてないんですね。

 井口委員長 

 だからどういう形でどの程度できるのか、やれるのか、またやるべきかというのは、これからの新機関の機能として議論していくことではないかと思います。ただ川崎委員がおっしゃったように、学会側はもっと担うべきだと思うんです。日本機械学会は私が会長をやりましたけれども、そういう活動はかなり熱心にやっています。

 的川教授 

 航空宇宙学会がやってくれればいいですが。

 井口委員長 

 何でやらないんですか。

 的川教授 

 私に聞かれてもしようがありませんが。

 五代委員 

 私も航空宇宙学会の会長をやったことがありますけれども、まだ宇宙というのは航空宇宙学会の中ではメーンでない。残念ながら。

 井口委員長 

 よくわからないですけど。

 五代委員 

 航空の方がウェートがあるということです。

 井口委員長 

 そうですか。だって今度は、宇宙と航空が一緒になるんですよ。
 学会と一緒になって学会のそういう活動を支援するということもあり得るだろうし、いろいろなケースがあり得るだろうと。それはこれから議論していくことではないかと思いますけれども。

 的川教授 

 いろいろとあれですね、宇宙教育といっても、各国でそれぞれの事情があって、主体になっているものが大分違うという環境があります。日本でそれをいろいろと吟味した場合に、航空宇宙学会が筋としてはかなりやらなければいけないと私も思うんですが、現状をよく知っておりますので、訴えて非常に価値があるのは宇宙開発委員会だろうと。

 井口委員長 

 よく理解はできますけれども。

 的川教授 

 五代さんもおっしゃったように、今までの体制の延長でやると、たぶんそれ以上のパワーは出てこないのではないかという感じがするんです。ですから、ワーキンググループなり何なり、これから立ち上げてやっていけばいいのですけれども、その中でもう少し系統性を持つためには、大枠で教育というものが柱となって立っていれば、おそらく議論に参加する人ももう少し気合が入ってくるのではないかなと、そういう感じがします。

 川崎委員 

 私が最初に申し上げたのは、ちょっと背景として言うと、センターと書かれているのに私は抵抗したんです。組織維持論になって、いつの間にかセンター長というのはあまり教育が好きでない方が、そして2年ずつ交代。こうなると形骸化するので、その悪い例がいっぱいあるものですから。

 的川教授 

 それは私はもう十分知っております。

 川崎委員 

 むしろ、先生みたいな方がいる間は一生懸命やると。嫌いな人が来たからやらなくていいとか、むしろそっちの方じゃないかと思うんですけれども。

 的川教授 

 悩みはありまして、こういうものを国として作れば、いわゆる言葉はあんまり嫌だけど天下りというのがありますね。それからNPOのように作ると、金がないわけですよね、なかなか。これはたぶんやはり予算もそれぞれ要るし、そうすると財団といってもやはり、どうやって作ればいいのかわからない。民間の篤志家か何かがいれば、何かいいものができるかもしれません。

 川崎委員 

 素川審議官から何か御意見が。

 素川審議官 

 来年度から総合学習の時間。私も義務教育を担当しておりましたけれども、その場合には先生の負担が非常に大きいということ。毎週、週ニ、三時間あって、それぞれ総合学習というと環境教育だ、何とか教育だということで、一日一回の一時限の授業をするのにその何倍も事前に準備をしなければいけないと。教育委員会も認識しておりますけれども、先生方をサポートする態勢。教材教具から始まって個別の、先生もオールマイティではございませんから、いろいろなノウハウを提供する。そういうサポート態勢がいろいろな場で必要だといった場合に、例えば宇宙だけでなくてもいいんです、例えば宇宙をとれば、宇宙にかかわる本物の機関が本物に触れる本物の情報を提供する。そういう支援態勢をどうやって、身近なところでは地域の博物館とかございますけれども、国全体で見て本物の情報を、第一次情報を持っているようなところが、教育委員会とかそういうところに情報を流してやる、資料を提供してやるということによって学校側の負担が軽くなる。そういうサポート態勢ができているところに、先生方がトピックを環境にしようか、何にしようか、宇宙にしようかというときに、やはりそういうサポート態勢があるテーマを取り上げる。何のテーマを取り上げても、子どもたちは問題解決する力をつける、考える力をつけるということが目標ですから、テーマは何でもいいわけです。そのときにやはり、そういう環境が整備されているサポート態勢があるところに流れていくのではないかと考えますので、本物に触れるという支援をしていくということは、機関として非常にいいことではないかと思います。

 井口委員長 

 これから十分議論をさせていただくことになると思いますが、どうもいろいろ貴重なお話をありがとうございました。
 それでは、我が国の宇宙開発利用の目指す方向につきまして、芝田課長より御説明をお願いいたします。

 芝田課長 

 資料の44−3−2でございますけれども、これは21日に開催されました、宇宙3機関統合準備会議の第3回目に提出するということを念頭にお作りしてございます。
 1ページを開いていただきますと、宇宙開発利用の理念というところは、前回お示しした内容と同じでございます。
 それから次のページを開いていただきますと、我が国の宇宙開発利用の目的と基本方針といたしまして、まず目的については、これは目的と基本方針と2つ書いてございますが、この2つの関係はどちらが上位概念かというのがなかなか難しうございまして、言ってみれば縦糸と横糸ではなかろうかということで縦と横に書いてございますが、目的の方は以前お示ししたものと同じでございますが、ただ表現として2番目に国民生活の豊かさと質の向上という、豊かさということを書いてございます。
 基本方針の方も、上から3つは前回お示ししたものと同じでございますが、一番目が科学技術創造立国の立場から、戦略的分野として、科学技術創造立国を実現するための主要な分野として宇宙開発利用を推進するということ。国としてのそういう意志を表明するという主旨でございます。2番目が世界のトップクラスの技術力の獲得による先導的地位の確保と世界最先端の宇宙利用科学の推進による知的存在感のある国の実現。特に前半の技術力の獲得といいますのは、幾つかの分野あるいは領域でピークになるような技術力を持とうじゃないかということであります。3番目が独自に自律的な宇宙開発利用活動を展開するための技術力を独自に保持しておこうというものであります。4番目が、新しく加わりました国際協力の推進ということでございます。これは科学技術そのものが発展するためには国際協力を必要とするということが、むしろ内在的要請であろうと思いますし、そういった意味で、国際協力をしながらこういった目的を達成していこうということであります。それからもう1点は、特にアジアにおける日本のポジションを考えますと、アジアへの貢献ということも考えますと、国際協力というのは大変重要な課題ではないかということで書いてございます。
 それから次のページで、新機関の機能と役割でございますが、位置付けの中の上の方の四角でございますが、これは以前は公的機関の役割ということで1ページを使っていろいろ細かく書いておりましたが、要すれば、市場原理にはなじまない公益性の高い活動を行うということに集約されるだろうということで、細かい部分は省略しました。それから2点目は、統合準備会議でも、中核期間であるということを明らかにしようという意見が出ておりますので、この2つを取り込んでおります。
 具体的な機能・役割といたしまして、まずは研究開発の推進ということで、これがやはりコアになる活動でございますが、マルの1番目を見ていただきますと、宇宙輸送系技術の完成と維持、現在の使いきりロケットによる輸送系について、技術を完成してそれを保持し続けようということであります。そして次代の打ち上げ手段の確保に必要な射場等の整備を図る。2番目が、宇宙3機関が有する人材、科学技術の蓄積を十分に活用した強力な技術的基盤の構築をしようということであります。技術的基盤の概念の中には、技術力そのものもございますし、そうした技術力を支える人材の層を確保するといったような環境整備もございます。具体的には、基盤技術の開発の部分と先端技術開発との部分で、特に技術的基盤を構築しようということであります。この部分はロケット・衛星を問わず、こうした将来につながるような基盤技術・先端技術を開発していこうという意志が込められております。3番目が、官民の宇宙利用の拡大に資する技術開発の推進ということであります。これは後でちょっと出てまいりますが、これからは関係他省庁の宇宙利用あるいは民間での宇宙利用をどんどん拡大することが必要であります。そのために必要な技術開発については、新機関においても貢献していこうという主旨であります。例えば地球観測のセンサーの高性能化といったようなものが考えられるかと思います。それから次が、情報・通信等の衛星による技術実証の推進。これは特に、産業化・商業化にも貢献できる分野でございますが、実際に宇宙に衛星を上げて実証するということであります。それから宇宙科学・航空科学技術の推進です。
 次のページが、社会との連携・協力ということでございます。特に今回の新機関の発足に当たりましては、産業界からも産業化・商業化への貢献ということについて強い期待が寄せられております。そういったことにこたえるためもあり、まずは産業の発展に資する強固な産学官の連携・協力体制の構築ということを掲げました。中身としては、人的交流、共同研究開発、それから宇宙実証も含めてより広い意味での技術実証機会の提供、それから技術移転や民間委託の推進、大型試験施設・設備の供用。それから利用の発掘というのは、具体的には新しい宇宙利用のアイデアを企画立案し、これを関係機関に積極的に働きかけていくといったようなことをイメージしております。それから全般的に社会あるいは産業界等の意見がよく反映できるような、開かれた柔軟な研究開発体制を構築していこうということでございます。もう一つの大きな柱が、今も的川先生からございました宇宙教育を初めとする国民理解の増進等、社会とのコミュニケーションの推進です。それからあとは国際協力、そして人材養成を掲げてございます。
 次のページを御覧いただきますと、これが今回新たなコンセプトとして、メッセージとして発信したいと思っておりますものでございます。宇宙利用と新機関というタイトルが打ってありますが、一番下に、多極分散化による宇宙利用の拡大ということがございます。この背景には、一つにはNASDA等の予算自体が、非常に厳しい財政事情のもとでなかなか大幅な拡充を望みにくい状況にございます。そういったことも含めまして、これからは関係省庁・産業界による宇宙利用を大幅に拡大することによって、結果として宇宙分野に流れ込む、投入されるリソースを増やすようにしていこうというのが一つの考え方でございます。中心に卵がございます、この卵の中が新機関のコアになる活動でございます。情報通信等技術試験衛星による宇宙実証、利用の発掘、そしてさまざまな機関との連携・協力というのがまずございます。それから人材養成、国際協力。それからさっきもございました宇宙輸送系、基盤技術開発、航空科学技術、それから宇宙科学。こうしたコアの活動というのがございます。
 そして、その周りに薄い黄緑で、通信・放送とか測位利用とか観測技術の高精度化というのが出ておりますが、これはこの審議官の能力を活用して宇宙利用の拡大につながるような技術開発に貢献していこうという主旨でございます。したがって、このコアの部分からにじみ出てこういう技術開発が出ております。こうしたものを基盤にいたしまして、安全保障でありますとか運輸でありますとか、地球環境、農林水産、通信・放送等々の分野の宇宙利用の拡大につなげていこうということであります。その結果として、産業界にも産業の発展という形で裨益し、さらにその結果が社会一般に裨益するというふうになっております。この周りの部分をどんどん増やす。それは、関係省庁においてはそれぞれの行政目的がございますので、その行政目的を達成する上で宇宙を使ってもらうということを拡大したいという主旨でございます。
 最後のページが、新機関が取り組むべき研究開発の方向でございます。これは2030年代までを視野に入れまして、今後の見通しという意味で線が引いてございます。一番上の地球観測は、衛星ミッション自体が非常に汎用的な情報データを取得できるものでございますので、ある意味で多目的の衛星ミッションというふうにも言えるかもしれません。そういった意味で、一元的に新機関が行うことで非常に効率的な事業ができるだろうということでございます。そういう意味でこれはおそらく非常に長く担当していく分野ではないかと考えています。ずっと先の方になりますと、利用機関の方の技術力も高まり、考え方もいろいろ変わってきて、利用機関中心の事業推進という形になる可能性がある。その辺はよくわからないという意味でちょっと色が抜けております。
 それで、その次の実用衛星、通信・放送等をはじめとする実用衛星の分野ですが、90年の日米合意以降、国際的な市場で公開調達するということになっておりますので、この部分は関係機関・民間ともに、既に国際調達でやっておられる分野でございます。そこと、その下の情報収集、情報通信分野等の先端技術の技術実証が関連しておると考えています。こういった技術実証、先ほどの言葉で言いますと宇宙実証を含めた技術実証については、これからも新機関が担当していく分野だろうと思います。が、将来は先ほどの多極分散化の考え方に従いまして、利用機関の自主的な活動が増えていくだろうということで、将来紫の部分が増えておりますように、新機関はそういった利用機関からの受託による事業をやったり、あるいは部分的にいろいろな形で協力するということが活動の大きな部分を占めるようになるのではないかということであります。そういう意味で、このブルーの利用を見据えた技術開発という部分は、先に行くにしたがって、これはよく見ないとわからないのですが、若干細くなっています。それで、その上の矢印が2つ、丸い矢印がついておりますが、こういった形でニーズを踏まえ技術開発をし、そして先端技術の技術実証をしていくというフィードバックを行っていくということです。
 宇宙ステーションについては国際協力で進めておりまして、運用というのが間もなく始まる。その結果として有人技術の基礎を獲得するというのは、将来の活動にも備えて大変重要なことであるということで線が引いてございます。ただしこの部分については、米国でも見直しが行われているようでございますので、若干ペンディングの要素がございます。
 それから輸送系につきましては、新機関においても、コアの中でも非常に重要な活動ということで、大きなブルーの線が引いてございます。打上げ手段の確保、それから国際競争力の強化ということを当面の目標に、信頼性の向上に向けて頑張っていこうということであります。その評価というのが途中で見えておりますが、この評価の時点で、その次の段階をどうするかということをきちっと考える必要がある。ただしそれは、ずるずるといつまでもやっていくのではなくて、どこかの時点でしっぽを決めて評価をやる必要があるだろうと考えています。そしてその評価に基づいて、再使用機、これはコストの低減あるいは信頼性の向上、それから川崎委員からもございましたように環境の適合性ということで、デブリ問題あるいはデブリの落下問題あるいはリサイクルという面での資源の有効活用、こうした主旨を踏まえて再使用機に進むということを視野に入れて評価を行う。それからその先には有人ということも視野に入ってくるだろうということであります。
 それからその次は、航空科学技術と宇宙科学は、唯一の、こうした物を中心に大規模に行う手段として将来も残っていくものである。
 それから全体を通じて底辺を支えるものとして基盤技術、それからその他技術移転とか人材養成とか国際協力という活動が、これは横串の部分でございますが、横断的な活動としてあるということで線が引いてございます。
 以上です。

 井口委員長 

 どうもありがとうございました。今までの議論が大体まとまってきたという段階ではないかと思いますが、さらに御議論いただきたいと思います。
 五代委員は前回御欠席で、前回の分は御覧になってないのではないかと思いまして、何か新たな御意見がありましたら伺いますが、いかがでしょうか。

 五代委員 

 全体に結構だと思います。非常に細かいところで言うと、産学官というのは、これからも官なのですか。産学コウって言わないんですか。

 井口委員長 

 コウってどんな字ですか。

 五代委員 

 公。官庁というのはいいんです。

 川崎委員 

 強いて公っていう概念で整理すると、日本の場合、学が非常に難しいんですよ。国立大学とか県立大学がみんな公です。あれは単なる行政機関の一つにすぎないんですけどね。

 五代委員 

 そういう法的というかそれはあれだけど、感覚的にはやはり官なんですかね、これからも。

 井口委員長 

 わかりませんけど、審議官、どうなんですか。この辺は私は全くわかりません。

 素川審議官 

 まあ一般的に今まで使われている言葉ですから。

 五代委員 

 1回だけ、産学公って書いてあったことがありますよね。

 素川審議官 

 そうですか。だんだんそういう意識になってきて。

 川崎委員 

 地方自治体を意識するとそうなるんです。

 五代委員 

 いや、私も産学官って使ってるけれども、そうでない産学公というのも散見されます。大したあれじゃあないんですけど。

 栗木委員 

 同じく大したことではないんですが、5枚目の国際協力、ここに人的交流などと書いてありまして、国際協力というともう少し大きな項目があった方がキーワードとしてはいいかなと。特定のISSとか地球環境とかアジア太平洋とかと書くと、これはまた長くなっちゃうと思うんです。人的交流だけを特出しにするというのがちょっと違和感がします。

 井口委員長 

 じゃあ、何と言ったらいいですか。

 栗木委員 

 わかりません。何かいい表現があれば。

 五代委員 

 逆に言うと、人的だけをわざと出した。

 栗木委員 

 そうそう、それだけが交流じゃない。

 五代委員 

 もちろん非常に重要なことなんです。

 井口委員長 

 今まで国際交流はやってるんだけど人的交流は少ないじゃないかという意味で、人的交流をわざわざ入れてあるんだろうと思うんです。

 栗木委員 

 開発協力とかあれですね。

 五代委員 

 非常にいい、プログラムにしても計画にしても研究にしても、やれば自然と集まってきますよね。

 井口委員長 

 人がですか。

 五代委員 

 人も、要するに参加者も機関も。国際協力に自然となるんですよね。

 井口委員長 

 だけど、なかなかそうなってないような気がするんですけど。

 五代委員 

 だから今はなってないです。だから、それだけ魅力が……。

 川崎委員 

 それはこの4枚目の中核機関ていうのが、日本で中核機関というと何か麻痺しちゃうんではないか。何かやはり、世界に誇るとか、そういう気持ちが欲しいですね。ただ日本の中でお山の大将になってもらったんじゃ困るんです。そんな機関は要らないんで。やはりアジアの一角で世界に声を出す、そういう中核機関になってほしい。前に僕はCOEという言葉を入れたら、それは学問の世界のCOEとごっちゃになって困るという御意見があったようなんですが、できの悪い中核機関なら、ない方がいいですよね。だからやはり、国際的にピカッと光る機関にしたいという、そういう気持ちをどこか出していただければ。

 井口委員 

 では、今ここでいい言葉が出てこなくても、2つ、国際協力のところと中核機関のところと問題点の指摘がございました。

 川崎委員 

 これからはやはり国際マーケットで売れるかどうかというのが主題であって、国内の評価よりも国際市場での評価が、学問の世界でも同じだろうと思いますけれども、そこのところに視点を据えれば、おのずと国際協力のところも出ていくんだろうぐらいの話になっていくと思うんです。

 井口委員長 

 ほかにいかがですか。
 審議官、これを21日の3機関統合準備会の資料として出しますけれども、そういう観点から何か御意見はございますか。

 素川審議官 

 結構わかりやすくなってきたのではないかと、私自身思っております。特に3ページの基本方針のところなどは、表現も読みやすく、光っている言葉もございますし、よろしいのではないかと個人的には思っております。

 川崎委員 

 もう一つ、こういう言い方をすると嫌らしい意見ですが、公益性が高くても、プライベートメカニズムにゆだねた方がある程度うまくいくという、例えば廃棄物処理とかマテリアルのリサイクルなんていうのはそういう部類だと思うんで、むしろ市場原理になじまない公共性という言葉の方がいいんじゃないかと。おおやけ、ともにという。何かあまりトランジスターの商人みたいなことばかり言わないでという感じ。公共性の方がいいような気がするんですけれども、どうでしょうか。

 井口委員長 

 その2つの意味の差がよくわからないですね。これもまた少し検討をお願いします。
 あとはいかがでしょうか。
 これは宇宙開発委員会の決定ではありませんので、今3箇所ばかり用語について再検討の御意見が出ましたので、それを検討してまた、最終的には12月末までに、解説も含めてまとめることになりますかね。そのようにしたいと思います。
 それではよろしゅうございますか。では、どうもありがとうございました。大体まとまりました。
 それではその他でございますが、前回の議事要旨の御確認を後ほどお願いいたします。
 それでは以上で、第44回の宇宙開発委員会を閉会にいたします。ありがとうございました。

─── 閉 会 ───



(研究開発局宇宙政策課)

ページの先頭へ