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宇宙開発委員会

2001/11/14 議事録
第43回宇宙開発委員会議事録

第43回宇宙開発委員会議事録

1. 日時 平成13年11月14日(水)14:00〜16:17

2. 場所 宇宙開発委員会会議室(文部科学省別館11階)

3. 議題  
  (1) H−IIAロケット試験機2号機の打上げ計画と安全対策について
  (2) 地球資源衛星1号(JERS-1)の大気圏再突入について
  (3) 「我が国の宇宙開発利用の在り方」について
  (4) その他

4. 資料  
  委43-1-1 H−IIAロケット試験機2号機による民生部品・コンポーネント実証衛星(MDS-1)等の打上げ及び高速再突入実験(DASH)に係る安全対策について(報告)
  委43-1-2-1 H−IIAロケット試験機2号機の打上げについて
  委43-1--2 H−IIAロケット試験機2号打上げ及び追跡管制計画書
  委43-1-3 民生部品・コンポーネント実証衛星(MDS-1)の準備状況
  委43-1-4 高速再突入実験(DASH)計画概要
  委43-2 地球資源衛星1号(JERS-1)の大気圏再突入について
  委43-3-1 宇宙3機関統合後の将来事業構想案の検討状況について
  委43-3-2 我が国の宇宙開発利用の目指す方向
  委43-4-1 宇宙開発の現状報告(平成13年11月7日〜11月13日)
  委43-4-2 第42回宇宙開発委員会会議録要旨(案)

5. 出席者  
  宇宙開発委員会委員長 井口雅一
  宇宙開発委員会委員 川崎雅弘
  栗木恭一
  澤田茂生
  文部科学省研究開発局宇宙政策課長 芝田政之

6.議事内容

 井口委員長 

 定刻になりましたので、第43回の宇宙開発委員会を開催させていただきます。
 本日は、重要な議題がたくさんありまして、3時間ぐらいかかる可能性がありますので、ひとつよろしくお願いいたします。
 最初に、H−IIAロケット試験機2号機の打上げの計画が固まりましたので、その件について、御報告を伺います。
 最初に、H−IIAロケット試験機2号機による民生部品・コンポーネント実証衛星等の打上げ及び高速再突入実験にかかわる安全対策について、栗木委員から御報告をいただきます。お願いいたします。

 栗木委員 

 資料の委43−1−1に基づいて御報告申し上げます。
 今、委員長からお読みいただきましたちょっと長いタイトルの書類でございますけれども、これの内容をかいつまんで御報告いたしたいと思います。
この1−1の中身でございますが、かなりの部分は1号機と重複しておりますので、時間が限られていることでもありますし、2号機の特徴を中心に報告させていただきたいと思います。
 まず、1ページ目でございます。
 1ページの1、保安及び防御対策というところには、新しい安全評価基準に基づきまして、ロケット打上げに際し、その整備段階から打上げ目的が達成されるまでの間、破壊・妨害行為に対して、適切な対策をとるということを、地上並びに飛行安全の計画をつぶさに検討いたしまして、その対策が講じられているということを確認いたしました。
 それから、2ページ目でございます。その他の対策というところに、新たに、電波の放射時の危険区域の立入の禁止、それからヒドラジン等の漏洩がないかというようなことも特別委員からの指摘がございまして、ここに対しての対策をとっているということを確認いたしました。
 それから、今回の打上げにプロパーな項目といたしましては、3ページの中ほどにございます保安距離が1,900、それから最大2,600m、それから運用性から3km、この保安距離をとったということがその次の6ページに出てまいりますが、今回H−IIAの2号機につきましては、4本の固体補助ロケットSSBを搭載するということで、その保安距離が若干大きくなったということで、前回の数字よりやや大きめになっております。
 なおかつ、そのSSBに付随しまして、海上の警戒区域等が30ページに出ておりますが、落下物につきまして、ロケットブースターの落下域の数が増えているということが御覧いただけるかと思います。ここを想定しているということで、なおかつその前の26ページに図の8というのがございますが、ここも一部新しいSSBのノズルにつけるキャップ(ノズルクロージャ)が落ちるということで、その警戒区域を広げております。
 それから前回の1号機の打上げのときにございました飛行中の状態監視につきまして、冗長系の1系が不ぐあいが生じ、バックアップの副系に移ったということがあり、さらに万全を期すために現行の冗長システムに加え、現行とは異なった別系統の監視状態システムを整備しました。7ページの上のところでございます。飛行中の状態監視というところに、その追加のシステムが加わったということを記載してあります。それを確認いたしました。
 それから、そのすぐ下、7ページの真ん中よりやや上のあたりに、飛行中断というところがございます。これは新しい安全規定にのっとりまして、今まで破壊限界線という言葉を使っておりましたが、これを落下限界線という言葉に置き換えまして、この確保がなされているということも重複して確認をいたしております。
 それから、その次の8ページでございますが、今度は再突入機のDASHが搭載され、これがモーリタニアに落下するということを踏まえまして、その3.のところに再突入飛行の安全対策というところが報告の中でうたわれております。
 なおかつ安全が確保されているということを確認いたしました。ノミナルな正常飛行時の再突入着陸予想域が設定されておりまして、図の17、36ページでございますが、36、37を、後ほど宇宙科学研究所の方から詳細な説明があるかと思いますが、アフリカ西海岸の西の方から入ってまいりまして、モーリタニアの海岸から内陸に突入いたします。そのときの落下分散域というのが、図の17、3σの着地点分散というのが解析によって求められておりまして、ここの中にノミナルな場合には落下するということでございます。この経路は、人口稠密地帯から離れて通過するようにセットされているということも、先ほど37ページに出ておりました18図から御覧いただけるかと思います。
 再突入飛行時の可否判断でありますが、再突入の飛行直前には軌道、位置、姿勢、姿勢制御系の機能、それから推進機能等について、この状態が完全であるということを情報により確認ができた場合のみ、地上からの指令によって離脱モーターに点火をするということになっております。また、その離脱に関しましては、8ページの下の方に書いてございますが、モーリタニアの上空を管轄する管制当局に直前に連絡をするということになっております。
 9ページの上の方に書いてございますが、その再突入飛行に関しましては、DASH全体が軌道離脱して、これが地上に達する部分と、なおかつ大気中でこれが燃えるものと、両方からなっておりますので、デブリの発生はないということを確認いたしました。
 それから次の10ページでございますが、宇宙科学研究所の体制としまして、今回新たにDASHの再突入がございます。そのDASHの運用保安体制、図−21でございますが、運用その他、技術的な作業は、真ん中に書いてございます鹿児島宇宙観測所本部、ここにおいてなされます。しかしながら、ここにおいて最終的な安全判断等が行われるわけでございますが、この11ページに書きましたように、緊急時の対応としましては、各班から宇宙科学研究所相模原本部の長に伝達されて、これが最終判断が行われるということになっております。
 以上をまとめまして、宇宙開発事業団及び宇宙科学研究所の安全対策に対する所見ということで、安全部会としては以下のように所見をまとめました。
 読み上げますと、
 「以上のとおりH−IIAロケット試験2号機の打上げにおいて、宇宙開発事業団が実施しようとしている保安及び防御対策、地上安全対策、飛行安全対策、及び安全管理体制は、安全評価基準に規定する要件を満たし、所要の対策が講じられており、妥当であると考えられる。
 また高速再突入実験DASHにおいて、宇宙科学研究所が実施しようとしている再突入に係わる飛行安全対策及び安全管理体制は、同じく安全評価基準に規定する要件を満たし、所要の対策が講じられており、妥当であると考える。」
 以上報告をまとめましたので、御報告申し上げます。

 井口委員長 

 どうもありがとうございました。
 続けて報告を伺わせていただきます。次に、H−IIAロケット試験機2号機の打上げ計画につきまして、宇宙開発事業団の山之内理事長、三戸理事、それから山本プロジェクトマネジャーに御報告をお願いいたします。よろしくお願いします。

 山之内理事長 

 それでは、私の方から、冒頭御説明をさせていただきます。
 ただいま栗木委員の方から、H−IIAに載せます気象衛星のMDSとMDS−1とDASHの安全対策について、評価していただきまして、ありがとうございました。これを受けまして、いよいよ、H−IIAの2号機の打上げ2機が最終決定をいたしましたので、本日御報告をさせていただきたいと思います。
 2項から入らせていただきますが、打上げ期日は平成14年、来年1月31日の11時40分から12時50分ということにさせていただきたいと思います。
 この冬期の打上げは、1月と2月でございますけれども、過去の例を見ましても、冬期の打上げというのは、2週間程度延びることは決して珍しくないということを踏まえますと、今回まだH−IIA2号機でございますので、かなり十分な余裕をとった方がいいという判断と同時に、8月の末に打上げました1号機のいろいろなトラブルを含めた教訓を最大限生かすべく、製造過程に起きた問題を全部克服すべく、万全を期したつもりでありましたので、1月上旬というのを1月30日まで持ってきたという両方のちょうど接点で、こういう日時にさせていただいたというふうに御理解を賜りたい。万全の準備を取りたいということと同時に、適当な余裕をとるということで、この1月31日という日を決めさせていただいたというのがこの背景でございます。
 今回の2号機は、率直に申し上げて、試験機の性格と本格的な衛星を打上げるという二重のミッションを持っていると考えております。経緯を申し上げますと、昨年の夏の宇宙開発委員会から、インデューサー改良を御指摘いただき、御決定いただきました後に、インデューサーを改良するまでの過程で、試験機、飛行実証のためのロケットを2機打てという勧告を賜りまして、それを受けまして、今年の夏に旧型インデューサーを使いました1号機を打たせて打上げに成功いたしました。
 改良型のインデューサー、水素側だけでございますけれども、かなり順調に開発が進んでまいりまして、試験段階では非常にその成績が旧型に比べていいことが判明いたしましたので、これを初めてこのロケットに積むという意味では、これは試験機の性格を持っております。と同時に、今、栗木委員からの安全対策について御承認を賜りました、民生部品コンポーネントが、宇宙空間において十分実用に足るかどうかをテストするための衛星MDS−1と、高速再突入実験機DASHを積んでおりますが、そういった意味では、比較的軽い衛星ではございますが、やはり本格的なミッションを持った衛星という意味では、今回は単なる試験機ではなくて、はっきりとしたミッションを持ったロケットを打上げているというふうに考えております。俗に言う空打ちではないということでございます。
 それからもう1つ、冒頭に書いてございますが、これからいろんな大型の衛星を打上げようとしますと、標準型だけではなくて、サブロケット、SSBをつけることが必要になってまいりますので、今回程度の衛星を載せるためには、必ずしも必要ないのでありますか、この機械にSSBを4本つけて、十分に安全に飛行できるかどうかということをテストして、そのためにはこの方もまた試験機の性格を持っておりますので、今回の打上げは、くどいようですが、一応本格的に衛星を打上げると同時に、試験機の性格をあわせ持ったというふうに御理解を賜って、3月31日に打上げたいと思います。
 現在、3項に書いてございますけれども、領収試験は順調に終わりまして、今、機体に取り付けまして、最終的な地上でのテストをメーカーで行っておりまして、下の図に書いてございますように、12月初旬には工場から種子島に移しまして、発射の整備作業、それから今回も極低温点検を1月の中旬に行いまして、すべて順調にまいりました場合には、きょう御提案申しましたように、1月31日にH−IIAの2号機を打上げたいと思っています。よろしくお願いいたします。

 三戸理事 

 では、ちょっともう少し、こちらの厚い方で御説明の追加をいたしたいと思います。この厚い方のページの4ページですけれども、今回の打上げ及び追跡管制隊としての組織図になっております。
 今回の打上げ及び追跡管制実施責任者は理事長でございます。前回と同じでございます。打上げ実施責任者代理と、追跡管制実施責任者代理は、それぞれの担当理事が当たります。あと、右側にそれぞれのロケット、衛星追跡管制のおもだった方の顔写真がありますけれども、こんなような方々がそれぞれの主任として担当いたします。
 それと5ページ目ですが、どのような軌道に入れるかということですが、5ページの下の表があります。遠地点、近地点と書いてあります。このような軌道に投入する計画でございます。
 以上でございます。

 井口委員長 

 山本さん、何か。

 山本 

 では、私の方からも、委43−1−3の資料をもちまして、MDSの概況と準備状況をごく簡単に説明させていただきます。
 1枚目をめくっていただきまして、2ページ目、衛星システムの概要というところからでございますが、MDSのミッションといたしましては、さきのテストフライト2号機がトランスファー軌道、静止遷移軌道に入りますものですから、そこの非常に強いバンアレン帯の放射線を利用することによりまして、民生部品の宇宙適用のための評価技術を確立すること、それから先端的な衛星搭載ミッションの事前実証を行うことと、それに付随いたします宇宙環境を計測して、そのモデル化をきちっと行うということが3つの大きな柱になってございます。
 次のページに行きまして、特徴的な項を述べますが、衛星のシステムとして、これはNASDAとしてはおそらく初めてだと思いますけれども、これは3軸制御のやつではございませんで、約1m 立方の箱、次のページに出てまいりますけれども、でございまして、太陽志向の低速スピン衛星ということでございます。それが非常に特徴的なところでございます。その中に6つのミッション機器が積んでございます。
 4ページの方に絵が見えますが、これが太陽の方向から見た絵でございまして、こういう姿勢でもってゆっくりと回っているということでございます。
 その次に5ページの方に絵が載ってございますので、御覧いただきたいと思います。バンアレン帯が6ページにございまして、これは、放射線の被曝が、前のコメッツ、通信型技術衛星がこういうところにあって、非常に早く衛星が死んでしまったわけでございますけれども、逆にそこを利用するということで、10倍の加速でもって評価するということでございます。
 ミッション機器の概要が7ページに述べてございまして、★とか●とかで分類してございますが、この3つの柱に対応した機器がこういうふうなものでございます。詳細は付録の方にもっと詳しいものがございますので、後で御覧いただければと思います。
 MDSのミッションは、先ほどの繰り返しになりますので、一応はしょりますが、民生部品といたしましては、半導体部品と太陽電池ということでございます。コンポーネントはバッテリーとかそういったものでございます。その辺が、9ページの一覧表の中に整理してございます。
 続きまして、10ページの方で、このMDSのミッションサクセスクライテリアはどうかということの概要が整理してございまして、さらにこれに基づきまして、個別の機器ごとにサクセスクライテリアの詳細が設定されてございます。これは大きな考え方ということでございますが、当然のことながら、フルサクセスとしては、そもそもの1、2、3の大きな柱のものについての評価技術が確実にできることなり、コンポーネントがちゃんと動くことと、そういう形で設定されておりまして、それに対してエクストラと、それに対して音の部分があるものについてはミニマムサクセスという整理でございます。
 最後に、準備状況でございますが、10月の初めから輸送前点検を行ってございまして、種子島には11月18日に搬入する予定でございます。12月末まで射場で射場搬入後試験を行いまして、ロケット側の作業としての射場整備作業に引き渡すことが年内に可能であるということでございます。
 それから打上げに向けての衛星の運用でございますけれども、それにつきましての訓練とかリハーサルでございますが、これも9月から計画的に実施をしているところでございます。
 最後に、衛星全体の状況でございますが、輸送前点検、これは実はきょうまでの日付で引いてございますが、昨日、輸送前点検の結果の確認会、レビューを行いまして、最後に1点書いてございますが、それを除きましては、すべて正常ということを確認してございます。
 その最後のところを御説明いたしますと、この民生部品実証のために、民生半導体部品の実験装置がございまして、その中に15億個の半導体素子が搭載してございますが、その中の1つの論理回路の評価部に、この輸送前点検中に不ぐあいが発見されてございます。そうでございますが、今般の目的といたしまして、半導体部品の地上における評価技術の確立ということに鑑みますと、他の14個の素子で、そのミッションは達成であると判断をしてございますことと、この箇所を今の時期から修理を行いますと、衛星とかロケット打上げ全体のさまざまな意味のリスクが増加いたします。そういうことから総合判断いたしまして、この部品のデータ取得は行わないと、評価の対象にしないということで、判断してございます。
 以上でございます。内野の変更は、和歌山のところでまた後刻参照願います。

 井口委員長 

 ありがとうございます。
 続きまして、高速再突入実験DASH計画の概要について、宇宙科学研究所の安部教授に御報告をいただきます。よろしくお願いします。

 安部 

 それでは資料の委43−1−4に基づきまして御説明したいと思います。1ページをちょっと御覧いただきたいと思うのですけれども、ミッション概要が書いてございます。ミッション概要としては、ここに書いてあるとおり、かいつまんで御説明したいと思います。
 将来計画としまして、惑星探査ということを考えますと、さまざまな工学的な課題があります。その中でも、惑星からの地球大気圏再突入というふうな最も難しいものがあると考えられております。実際問題、火星とか小惑星からのサンプルリターン計画みたいなものを考えてみた場合、必要な超高速再突入ということを考えてみても、熱環境がはるかに厳しくて、国際的にも実績がないというのが現状だと考えております。
 ということを背景にいたしましてDASHというのは考案されたわけですけれども、DASH実験におきましては、カプセル型の再突入機体を静止遷移軌道に打上げまして、2つのことを検証したいと考えております。1つは耐熱技術の検証ということです。2番目は回収関連技術の検証ということをしたいと考えております。長期検証に必要なデータというのは、パラシュートによる緩降下中にすべてテレメトリにより取得されるということを考えてございます。
 それで、ちょっとページは飛びますけれども、5ページの方にDASH全体の概念図というのがございます。これがDASH全体の図でございまして、大きさがそこに書いてあるとおりのぐらいのものでして、約70cm、50cm、60cm程度のものでございまして、重さが86kgでございます。そこの図に書いてございますカプセルという部分が、再突入飛行体ということになってございまして、これが約16kgというものでございます。
 飛行経路等を少し御説明したいと思いますけれども、ページが飛びまして、9ページの方にまいりますと、静止遷移軌道に投入されました後、DASHが飛びます軌道の投影図がかかれてございます。鹿児島から打上げられまして、7回ほど地球を回った後に、再突入するということをこれは示してございますけれども、その間の運用というのは、鹿児島の方で行う。内之浦局の方で行うということを考えてございます。幾つかのイベントがございますけれども、1つは軌道の修正を行いたい。それからそれに伴います姿勢の変動を修正をするということがございます。最終的には、DOMと書いてございますけれども、再突入軌道へ遷移するためのエンジンを吹かすということがございまして、その後再突入に至るということになります。再突入して地上に落下する場所でございますけれども、先ほど御説明ありましたように、アフリカ大陸、モーリタニアという国の砂漠地帯を考えております。
 また少しページが飛びまして、そのあたりの詳しいことですけれども、14ページに書いてございます。これも先ほど御説明ございましたけれども、3σ相当で考えますと、この範囲に落ちてくるということになります。アユン、ネマというのは、その地方都市の名前でございまして、この間が約250kmぐらい離れてございます。
 それで、カプセルから出てきます電波の受信ということに関しましてはアユン、及びネマに受信局を設定をする。それから砂漠地帯の方、少し楕円の範囲ですけれども、そのあたりに、第3局としまして移動局を設定しまして、3つの受信局で電波を取るということを考えてございます。
それから15ページにまいりますけれども、これも先ほど御説明ありましたけれども、このDASH実験の運用に関しましては、宇宙科学研究所の相模原が本部ということになってございまして、そのもとに鹿児島、それから種子島での作業、それからモーリタニアでの作業ということが行われております。
 現状ですけれども、12月に種子島でのフライトオペということを考えておりまして、現在、それに向けまして最終的なチェックをしている最中でございます。
 以上でございます。

 井口委員長 

 ありがとうございました。
 それでは、以上の報告につきまして、御質問、御意見を伺います。
 なお、今回の打上げは、理事長みずから実施責任者を務められるということで、御苦労さまでございます。

 山之内理事長 

  はい。

 井口委員長 

 それから前回、1号機のときに、ともかく信頼性を第一にするという意味で、理事長が十分に納得しないものは打上げないという、極めて単純明快なメッセージを内外に表明されましたが、今回はいかがですか。

 山之内理事長 

 まず私は、このH−IIAの体制について、一番最初に重大なのは1号機が成功するかどうかということが、技術論を離れてパブリックコンフィデンスですか、そういった意味では、極めてクリティカルな状態だし、何としても成功させるという原点としてそういうメッセージを出したと思いますが、そういった意味で最初の山は越えたと思いますが、次の目的として、さきのことは別として、3機は打上げたい。3というのは、かなり大きな意味で、正確に両方一括しているわけではありませんけれども、3機成功すれば航空技術では認められているようなお話をよく承りますので、やはりこうやって見ますと、1号機は完全な試験打上げ、2号機は半分半分、3号機は本格ミッションになりますけれども、ここで全部いくと、大体一応H−IIAの開発の段階がクリアできたというか、私は少なくとも先は別として、3号機まではそういう態勢で、臨みたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 井口委員長 

 今回、メーカーの方はおいでになりませんでしたけれども、メーカーの準備並びにその状況というのはどんなのですか。

 三戸理事 

 準備状況といたしましては、今回1号機の反映については着実な状況だと判断しております。
 それから、その作業工程について、非常に無理をしているということがなくなった。それなりに、ある程度のマージンをもって行っているということで、特に1号機と遜色はないと考えております。

 井口委員長 

 是非ともメーカーの品質管理についてのマネジメントもぬかりなくやってくださいますようにお願いいたします。
 ほかにいかがですか。

 栗木委員 

 質問ではなくて、MDS−1のミッションサクセスクライテリアというのが出ておりますので、是非今後とも衛星につきましてはこういうものを事前にいただけると、大変わかりやすいと思います。よろしくお願いいたします。

 川崎委員 

 私もお願いいたします。初めての試みで、サクセスクライテリア……。

 井口委員長 

 ほかにいかがでしょうか。
 それから、今回のロケットで新しい部門というのは資料の43−1−2−1にあるこの図の、説明が書いてある部分ですね。

 三戸理事 

 そうです。矢印が、特に箱の中で記述してあるところが主要特徴になるものです。

 井口委員長 

 このSSBというのは、かなり実績があるものなんですか。

 三戸理事 

 これそのものは、設計変更ですね。というのはちょっと長くしたりとか、アメリカのある、固有名詞を言ってはいけないと思いますけれども、あるデルタで大分飛んでいる、こういったモーターのそれの設計はほとんど同じで、能力アップしているということで、我々とすれば、この実績の方もあると同等と考えます。

 井口委員長 

 ああ、そうですか。
 私が5、6年宇宙に関係してきた間の経験では、こういう新しい部分で失敗したことはないのではないかと思うのですけれども。何かトラブルがあるとすると、思いもよらないところというのが常の例ですので、ひとつまた1号機の場合と同じように、全般的に気を配っていただきたいと思います。

 三戸理事 

 承知いたしました。

 井口委員長 

 ほかにいかがでしょうか。
 それでは、幾つか御報告をいただきましたが、すべてについて、この宇宙開発委員会の了承を得たいと思いますけれども、了承してよろしゅうございますでしょうか。
 御異議ありますか。
 それでは、宇宙開発委員会として了承ということにいたします。どうもありがとうございました。御成功をお祈りします。

 山之内理事長 

 繰り返し万全の体制で臨みたいと思いますが、よろしくお願いいたします。

 三戸理事 

 よろしくお願いします。

 井口委員長 

 それでは、急遽議題に追加ということでございまして、環境観測技術衛星、ADEOS−IIと呼んでおりますが、その打上げの時期につきまして、三戸理事から御報告をいただきます。

 山之内理事長 

 冒頭私の方から申し上げます。
 先ほどの件と実は関連があるのでございますけれども、本年度、要するに平成14年の冬期は、きょう現在、また2機打上げることになっております。先ほど御説明いたした2号機MDS−1と、きょうこれから御説明しますADEOS−IIですが、きょうの宇宙開発委員会の御了承を得ない限りは、こちらのことになっておりますけれども、諸般の条件から考えますと、ちょっと不可能に近いと判断しておりますので、御了承を賜りたいと思います。
 なぜかと申しますと、1つは、1号機が、仮に1月のしょっぱなに上げまして、最低1カ月以上は次の衛星を上げないとしますと、やはりこの2月の、先ほど申し上げた気候の不安定等考えますと、最低限1カ月を見ますと、現時点でADEOS−IIを2月中に打上げることは非常に可能性が低いと思わざるを得ないことになるわけです。最悪の場合、2号機が、ADEOS−IIが、3月に乗り込んだとしまして、今の感じとしては、1月31日と言っても、実態的には2月中旬になる可能性が非常に高いと思います。そうすると、それから1カ月とりますと、計画段階で、順調にいったとしても3月中旬になってしまいます。 それがまた諸般の事情で延びますと、4月に入ってしまう可能性がある。偏西風が弱くなるその他の条件で、ADEOS−IIは非常に重たい衛星なものですから、打上げが不可能になるという非常にリスキーな条件がございます。
 冒頭申し上げましたように、私は、3号機はやっぱりH−IIAのコンフィデンスも非常に実は大事な条件といたしますと、そういう状況で綱渡り的なものをやりたくないし、事務的に詰めてみても、3月末までに打てる可能性というのは、非常に低いと思わざるを得ないという意味で、先ほど2号機の打上げが1月31日に決定したことと連動いたしまして、今回のADEOS−IIの打上げは、今年の冬期から平成14年度の秋以降に、夏はちょっとこれは重たいせいで不可能でございますから、秋の遅い、来年の今ごろ以降に延ばさせていただきたいというのがお願いの筋でございます。
 今、実はそれ以外に付帯的なことはメモで書いてございますが、それと合わせまして、ちょうどこれは偶然になるかもしれませんけれども、ADEOS−II打上げ用の3号機のエンジンの酸素ポンプの異常振動が試験段階で出てまいりまして、現在、急遽それを原因究明をいたしまして、やや原因がわかりかけてきておりますので、いずれにせよこれはポンプをかえなければいけない。これもまたいろんな意味で打上げを非常に難しくしているファクターの追加の部分であります。合わせてADEOS−IIの打上げにつきましては、当初予定を変更して、来年度秋以降に打上げるということであります。来年度中に打上げるというふうに考えますので、御了承を賜れば幸いかと思います。

 三戸理事 

 今、理事長のおっしゃった説明は、2号機の打上げが非常に順調で、2号機の結果として反映が非常に少ないという想定でのお話でございます。ただ、我々、1号機の経験からいきますと、もう少し反映事項があるだろうと。当初考えておりましたのは、種子島でマイナーな変更は考えておりました。ただ、本当に2号機を打ったときに、それで済むのかどうかと考えたときに、やはりある程度悪いケースも考えると、種子島で立った状態での変更というのは難しい可能性が出てまいります。そうしますと、工場にやはり置いておいて、工場での変更ということも最悪考えなきゃいかんということを考えますと、ここに書いてありますように、試験機2号機打上げ後、やはり数カ月を意図を期しておられるだろうということでございます。
 あと、2の(3)で書いてありますのは、太陽同期軌道の場合は、陸地に沿って南側に飛んでいきます。そうしますと、指令破壊等で破壊されたときは、破片が陸地に落っこってくるわけですけれども、冬の場合は、西風が吹きまして、それを押し戻す形になるということで、わりと理想に近い軌道をとることができる。ところが夏だと、東ですから、陸方向に破片を持ってくる形なので、それを防ぐために、少し遠回りをしなければいけない、ということで、打上げ能力に影響を与えているということで、今のH−IIAのADEOS−IIのコンフィギュレーションにおいては、春及び夏期は行っていないということでございまして、ここに書いてありますように、後半に準備をしたいということでございます。

 井口委員長 

 例のロンチウインドウというのは、あれは設定はいつでもできるのですか。私はよく知らないのですけれども。打上げの期間、漁業権の問題とかで限られていますね。それで切られてしまうということもあるのですか。

 三戸理事 

 ございました。要するに1年間における打上げ期間というのは、もちろん決まっております。そういう意味では、春期は打上げ期間にはなってはおりません。ただ、私が言いたいのは、いわゆる技術的な面においてでさえこういう状況であるということを御説明したいと思います。
 あと、ADEOS−IIにつきましては、現在、種子島に入っておりまして、点検をしております。このような事態になりましたので、きりのいいところまで点検いたしまして、あと保管し、来年に備えるということでございます。
以上です。

 井口委員長 

 いかがでしょうか。

 栗木委員 

 OTP、酸素のポンプの振動、これは、1号機のときは、出ていた。

 三戸理事 

 いや、出ておりません。それから2号機のポンプについても出ておりません。ということで、3号機特有の問題と考えております。

 澤田委員 

 1つ確認したいのですが、この変更後というので、ずれ込んだ場合、ほかの打上げについては影響がないということでよろしいのですか。

 三戸理事 

 はい、そうです。

 澤田委員 

 これは、まだゆとりのある時期変更ということになるのですか。それともこれはギリギリ、ここに持ち込んできたというのは、その位置というのは、ぎりぎりのタイミングという、少しほかがずれれば、これもおかしくなるねというような時期なのでしょうか。

 三戸理事 

 この3号機の件ですか。

 澤田委員 

 そうそう。

 三戸理事 

 3号機をここに置いていたのは、打上げが可能な時期という……。

 山之内理事長 

 澤田委員のお話ですけれども、平成14年これをやりますと、冬期に3機打つことに相成りますので、率直に言ってかなりタイトなスケジュールと言わざるを得ないと思います。ただ、現時点では、まだ今回、このADEOS−IIが半年か1年延びたように、来年、1年先の状態と言ったら、まだ非常に不確定要素がございますので、そういう条件の上でこういうふうにしたというふうに御理解をしていただければ、もうちょっと詰めた議論は、もうしばらくお待ちいただきたいと思います。

 井口委員長 

 ただ、打上げがルーティン化すれば、3機ぐらいはまあ、当然という。

 澤田委員 

 そういうふうに思います。ただ、初めての経験ですから、やっぱりそうタイトでない方がいい。それから先ほど三戸が言いました技術的なフィードバックはまだある段階でございます。

 川崎委員 

 コンベンショナルな状態では、射場全体として見れば、猶予期間はどれぐらいと考えておられるのですか、1カ月ぐらいあればいいわけですか。大崎なら大崎射点で考えて、そこの準備という。

 三戸理事 

 いや、1カ月あればいいです。

 川崎委員 

 1カ月あればいいですか、そうすると……。

 三戸理事 

 要するに、1つの機体ともう1つの機体があって、それが平行して準備ができています。ただ問題なのは、前の機体の飛行解析結果というものを待たずに行っていませんので、そこが一番のネックでございます。

 川崎委員 

 量産タイプで押し寄せていればもっと打上げやなんか……。

 三戸理事 

 ルーティン化しますと、例えば前の機体を打ってから1週間後に2本目を打てます。

 山之内理事長 

 ただ、これを見ていただきますと、来年の冬というのですが、どれもこれも絶対落としてはいけない衛星だものですから、そういった意味では、非常に重たい時期になる。

 井口委員長 

 いずれにせよ、最初に理事長がおっしゃったように、成功確率を最大限に上げるということ、つまり御自分が納得しないものを打上げないというポリシーを続けられるということですので、妥当な判断ではないかと思いますが。

 川崎委員 

 そのとおりだと思います。

 井口委員長 

 よろしゅうございますか。
 それでは宇宙開発委員会からは了承させていただきます。
 ありがとうございました。
それでは次に、地球資源衛星1号JERS−1の大気圏再突入について、宇宙開発事業団の片木衛星総合システム本部副本部長さんに御報告をいただきます。

 片木 

 片木でございます。
 それでは、地球資源衛星1号の大気圏再突入につきまして、資料に従いまして御説明いたします。
 まず2ページ目でございますけれども、地球資源衛星1号、ふようと呼んでおりますけれども、ふよう1号は、平成4年の2月11日に目的に書いてありますような資源探査、国土調査、農林・漁業、環境保全等を目的といたしまして、地球全般の主に陸域ですけれども、観測を実施するために打上げられました。
 搭載しておりますセンサーは、合成開口レーダー、それから光学センサーでございます。
 経緯でございますけれども、2年間の定常運用の後、後期運用段階といたしまして、その後も引き続きまして運用してまいりました。平成10年の10月12日には、かっこ内にも書いてございますけれども、設計寿命ということでありますけれども、太陽電池パドルとパドル駆動機構との間の電線が破損いたしまして、電源が落ちるというような不ぐあいになりました。そこのところで、運用を停止しました。
 主な成果ですけれども、ミッション期間は、もともと2年間想定していたのですが、約6年にわたりまして、いろいろなデータを取得いたしまして、これらのデータを通しまして中国のトルファン盆地における石油ですとか、それからアマゾンの熱帯林の森林伐採の実態ですとか、岩手山の火山活動などの地殻変動に関する成果を得ております。
 次のページに、そのふよう1号の外観図と質量、大きさが書いてございますけれども、総質量が約1.3t、それから大きさでございますが、本体が箱型であります。写真の方で、右側に広く開いているパネルがございますけれども、これは、太陽電池パドルでございまして、長さが7m、幅が3mほどのものでございます。それから左側に同じようなパネルが何枚か連なっておりますが、これは合成開口レーダといいまして、レーダーのアンテナでございます。長さが約12m、幅広いが2.5mのものでございます。そういうものが飛んでおります。
 4ページ目にまいりますけれども、この軌道がだんだん下がってまいりまして、当初は、もっと高いところにあったのですけれども、現在軌道がだんだん下がってきておりまして、12日現在の予測といたしましては、今月の末から来月の初め、11月30日から12月10日ぐらいの間、ノミナルとしては12月4日ぐらいというふうに計算されておりますけれども、このころに落ちてくるであろうと。大気に再突入があるというふうに見ております。
 この落ちてくる、大気に再突入する時間、日にちにつきまして、若干幅がありますのは、注意書きといいますか、黒丸で書いてありますとおり、太陽活動の変動によりまして、大気抵抗が衛星落下に及ぼす影響に予測誤差がございますので、こういう状態でありますので、その幅が生じます。ちなみにこの幅ですけれども、再突入の1週間ぐらい前ですと、±1.5日ぐらい、それから1日前でも5時間程度の誤差がどうしても残ります。
 現在、NASA経由で入手いたします米国からのふように関する軌道予想を中心に、それから美星スペースガードセンターというのがございますけれども、そこからのデータも用いまして、軌道状態をモニターしております。
 次のページにまいりますが、落下の安全性ということでございますけれども、再突入いたしますと、大気抵抗にあいまして過熱されます。そういうことで、落下の溶融解析を行いました結果では、ほとんどが落下途中に溶融消失するであろうと思われております。ただし、1つの解析結果なのですが、チタン合金製の推薬タンクが2個、これは直径が約55cm、それから質量が1個につき7kgですけれども、それが消失せずに地上まで到達する可能性がございます。このときのいわゆる危険性につきまして解析いたしましたところ、世界で破片に接触する1人当たりの確率というのは、3×10のマイナス15乗、ちょっとこれはピンとこないといいますか、イメージとして湧きにくいかと思いますけれども、日常生活で、例えば交通事故ですとか、航空機事故ですとか、そういう事故に遭遇する1人の確率でいいますと、いろんな計算方法があるのですが、おおむね、10のマイナス7乗とか8乗とかいうオーダーですので、それに比べれば、十分に低いというふうに結果としてはなっております。
 それからもう1つ、ちなみにですけれども、米国で定められておりますところの基準に比べましても、それの約25%以下というような値になっております。ちなみに、宇宙機体の大気圏再突入は、全世界でも年間約150回ぐらい発生をしておりますけれども、国連の報告書によりますと、これまで重大な被害はもたらされていないということであります。
 それから今回と同様な事象に対しては、各国とも、いわゆる特段の対応はとられていないというのが現状でございます。
 7ページにまいりまして、今後の対応といたしまして、NASAからのデータ、それから美星スペースガードセンターからのデータを日々更新いたしまして、落下の予測といいますか、落下のだんだん大気再突入していく状況をモニターいたします。それから落下が確認された場合には、速やかに関係方面に連絡をする予定となっております。
 御説明は以上でございます。
 最後の8ページに、ふようの中の分解図がかいてございますけれども、今回落ちてくるかもしれないと思われておりますので、真ん中にかいてあります推薬のタンクでございます。以上でございます。

 井口委員長 

 御質問、御意見いかがでしょうか。

 澤田委員 

 各国とも特段の対応はとられていないのが現状、それはとりようがないからないということですか。

 片木 

 モニターはするということです。

 澤田委員 

 モニターはするけれども。

 片木 

 はい。

 澤田委員 

 どのようなところに落ちているかというような、今まで年間250個も落ちているならば、何かやっぱり燃え残りみたいなものが落ちているということになるのですか。

 片木 

 はい、結果としてそういうものは検出されたことはございます。

 澤田委員 

 どういう地域に落ちているというような統計みたいなものはあるのですか。

 片木 

 統計値はございませんけれども、人が見つけることができる場所でしか見つけられないわけですから、海に落ちているとちょっとこれはわかりませんけれども、例えば平野部ですとか、森林部ですとか、そういうところから発見されたという記録はございます。

 澤田委員 

 大体どの辺に落ちるというところまではつかまえられるのですか。

 片木 

 なかなか最終的には難しいと思います。

 澤田委員 

 それはわからない。

 井口委員長 

 昔、交通事故のことを計算したことがあるのですけれども、我々がその辺歩いているときの危険の方がこれよりはるかに、その10のマイナス5乗よりはるかに高い危険率からすれば、まあ、こういうのは、ある程度無視してもいい確率になるだろうとは思うんですが。ただ、説明で、飛行機のときは10のマイナス8乗とか何とかおっしゃいましたね。飛行機というのは、自分がそれでいやだったら乗らなければいいわけですね。ところがこれは、他人様が乗る機械であるわけだから、ちょっと説明のときにそういう例を引くのは……。

 片木 

 飛行機でということではなくて、飛行機とか自動車とか、そういうものを見たときに大体10のマイナス7乗というふうに申し上げたのですけれども、その航空機の例は、必ずしも乗っている人のことではありませんで、それが飛行機が落ちたことによって受けるそちらの方を一応数値としては使っております。

 井口委員長 

 あ、そう。

 澤田委員 

 非常に難しい、というのは大体わかるのだけれども、これからもずっと宇宙物体を打上げていくわけですね。それで、この間のときも、どこに落ちるかわからないと大騒ぎした話もあるのですが、幸い150個も年間落ちているならば、もう少し何かそういうものの確率というか、ここは危ないところに落ちる可能性だってあるわけですよね。そこは避けて飛んでいるわけではないんだから。何かそういうふうなものについて、少し頭を使っていくということを考えた方がいいのではなかろうか。ほかがやってないからやりませんというだけの言い方では、ちょっと先々の安全運行ということを考えたら、ちょっとそれは無責任だとまでは言わないけれども、何かとるべき態度があるのではないかなという気がするのです。

 片木 

 はい、まず1つは衛星の設計の問題があります。それからその設計にかかわってくる被害を最小にするという観点から、例えば国際的な宇宙機関の人たちが集まって、定期的に会合しておりますけれども、そこでこういう危険のディスカッションといいますか、今、各国、特にそれぞれ必ずしも持っているわけではありませんので、お互いにそういうのを出し合いながら、今後どうしていくべきかというようなことのディスカッションを既に始めておりまして、日本ももちろんここに参加をしております。

 川崎委員 

 1つ今のに関連してですが、確率論的にこういう数字でやられるというのは、原子力でもいろいろ試みられてきて説明しているのですが、専門の方は別として、一般の方にはこれはなかなかわかりにくい概念なので、先ほど澤田委員のおっしゃったことと合わせて、どういうふうな説明をするかというか、実態を説明するということを少し考えていただけないか、今回、それを願っております。

 片木 

 はい。

 川崎委員 

 まあ、どうなるかわかりませんけれども、ISSをどうするかというようなでっかいのが落ちてくるということもあり得るわけですから。

 片木 

 はい。

 井口委員長 

 前回ロシアのミールが落ちたときには10のマイナス8乗というあれで、これは副大臣が万万が一だと、10の4乗かける10の4乗は確かに10の8乗なんで。まあ、その二乗だという説明されましたけれども、まあ、わかったようなわからないような気がしましたが。まあ、だけど1つの説明かもしれません。こういう御報告でございますが、これは、最後までできるところまで追跡するということですね。

 片木 

 はい、追跡いたします。

 井口委員長 

 ということでよろしゅうございますか。
 では、どうもありがとうございました。
 それでは、もう1つの主要議題であります我が国の宇宙開発利用の在り方について、最初に宇宙3機関の検討の結果を、宇宙開発事業団の斉藤理事と、宇宙開発研究所の松本教授にお話をお伺いします。それから、航空宇宙技術研究所の永安理事のお3方からお話を伺います。よろしくお願いします。

 松本 

 宇宙科学研究所の松本です。
 最初に私から全般的な状況を説明させていただきまして、個別にはまた別途報告させていただきたいと思います。
 宇宙3機関の統合に関しましては、副大臣の統合準備会議で議論が進んでおりますが、我々はその統合される当事者でありまして、正規の議論とは別に、我々自身として日本の宇宙開発はどうあるべきか、日本の将来の宇宙はどうなるであろうか。そういうことを考えて、それなりの発言をすべきではないかと、そういうことを考えました。宇宙3機関の中で、各2名ずつ出しまして、委員会を作り、その委員会の下に幾つかのワーキンググループを作りまして、かなりの人たちを集めて議論を組織してまいりました。
 きょう報告するのは、その中間まとめになります。
 ワーキンググループを作ったのが全部で4つあります。その4つは、当面大きな問題だろうと予想したものでありまして、1つは輸送系とそれから衛星系、ただし衛星系と言いましても、これは宇宙利用関係のものです。それから基盤技術、国際宇宙ステーション、この4つにつきましては、現場の方々を含めて、広く議論を行い、ある程度の報告書をまとめてございます。ただし、将来、宇宙構想全般といいますと、この4つだけにはとどまらないものがありまして、当然宇宙科学は入りますし、それから工程に関してもそれなり シンクタンクを持つ必要があるという議論がありました。
 そういうわけで、ワーキンググループの議論とは別に、宇宙科学については、私どもの宇宙技研、それから航空技術に関しては航技研のところで、それぞれ提案をまとめました。そしてまとまったのが今回お渡しした資料でございます。そういう意味では、これは本来は全体を取りまとめて一つの整合性を持った報告をすべきものなのが、まだそこまでいっていない段階の報告書でございます。そういう意味で、きょうはいろいろと御意見を承った上で、さらにもう少し議論を深めて、最終的には1つの文章として、3機関のオーソライズした文章にしたいと考えております。そういう意味で、お聞き願えればと思います。
 経緯のこともありますので、報告に関しては、1から4のワーキンググループでの議論を経たものについては、事業団の斉藤理事から、宇宙科学については私、それから航空に関しては航技研の永安理事、この3名から御報告させていただきたいと思います。よろしいでしょうか。

 斉藤理事 

 それでは、2ページから説明させていただきます。
 まず、輸送系でございます。輸送系の我々が議論しました考え方のところが前半のところに書いてございます。国及び国民の安全の観点からは、日本が主体的に運用できる世界レベルの輸送系を確保するとともに、国としてこの輸送系の基本技術を保持することが必要であると我々は考えました。あと、このほか、国民生活の質の向上であるとか、知的資産のためにもこういう観点が必要かと思います。
 次に、使いきりロケットの開発の面でございます。世界におきましても、日本におきまてしも、向こう二十数年程度はこうした使いきりロケットが使用されると予想しております。
 現在、浮揚しております、または開発中のロケットにつきましては、統合によりまして、充実されます強化されました体制のもと、大幅な基盤技術の向上を通じまして、世界に誇れる対価信頼性を有した輸送機に早い時期に仕上げることを第一優先にしたいと考えております。また、民間の方と協力して運用コストの逓減であるとか、運用性の向上にも取り組んでいきたいと思っております。
 開発が進みましたロケット及び技術につきましては、順次民間に移転することを考えてございますが、その際、産業界が競争力を確保するために必要となります基盤技術でありますとか、さまざまな施設、及びそれに関します技術、それから解析関係の技術についての保持と高度化を図っていきたいと思っております。
 次に、将来輸送系技術の研究開発の進め方でございます。この中で、まず再使用型輸送機についてでございますが、世界的に見ますと、将来、高い信頼性と大幅な低コストが実現し、再使用型へ移行し、結果として打上げの競争であるとか、宇宙利用に質的な変化を及ぼすと予見しております。
 また一方、こうした再使用型というのは、先ほどデブリの問題も出てまいりましたが、宇宙環境保全の面からも重要な課題になっていると認識しております。こうした状況を踏まえまして、日本が将来にわたりまして、世界的に運用できる世界レベルの輸送系を保持するためには、先ほど申し上げました使いきりロケットの技術との交流を図りつつ、平行してかつ3機関統合によりますロケットと航空技術の融合を生かした形で、再使用型輸送機の研究開発を推進することが重要と考えております。
 次に、どういう目標を立てるかと議論したわけでございますが、現在の日本の状況を考えますと、二十数年後に世界のレベルの競争力を持つ完全再使用型を完成することを目標といたしまして、ここ十数年の間は小型機による飛行実証等を通じまして、革新的な基盤技術を確立するということを目指したいと考えております。
最終的にこうした完全再使用型の輸送機というのは、国際協力になるという可能性もあるわけですが、いずれにしても、当面はシステム技術を含めまして、デザインオーソリティの確保を可能とするような形の独自の技術力確保を目指したいと、また、研究開発に当たりましては、有人輸送への発展を考慮したいというものでございます。
 次に、有人輸送機についてでございますが、世界的に見ますと、航空機がそうでありましたように、長期的には十分な信頼性と大幅なコストが下がることによって、宇宙飛行は一般化すると考えております。
 一方、我が国の輸送系で自由に宇宙に行きたいという国民の期待もございまして、こうした中で、長期的には有人輸送機も輸送系の中の研究開発の重要な対象であるのではないかと考えております。
 それでは、この有人の取り組みについてですが、宇宙ステーション計画参加を通じまして、このシステムにつきましては、先ほどの再使用型輸送機の研究開発の成果を生かした形でもって、こうしたシステムの基盤的な研究を行いたいと考えております。以上が輸送系の分野でございます。
 次に、宇宙利用にかかわります衛星系の分野でございます。
 まず、全般的な認識でございますが、安全の確保に関します衛星の基本技術については、基本的には国がこれを開発して保持する必要があると認識しております。一方、衛星開発に当たりましては、宇宙利用のニーズというのが非常に重要でありまして、これを定めた上で、ミッションの設定が必要と考えておりますけれども、このニーズというのは、当然社会のいろんな状況によりますので、長期的に予想するのは非常に困難でありますけれども、中期的な観点からしますと、地上で進んでおりますいろいろなシステムと連携補完のもとで、宇宙のシステムの特色を生かし形で、情報収集でありますとか、観測、それから通信・放送、測位などの分野におきまして、国民の皆さんが快適で安心、安全な生活ができるような社会を実現することが重要と考えております。
 一方、産業界におきましても、技術的優位性が世界的に保たれるような方策も考えていかなければいけないと認識しております。長期的に見ますと、これらの分野のほかに宇宙のエネルギーを利用する面などのニーズが将来的には考えられるところでございます。
 次に、研究開発の進め方の点でございます。先ほど冒頭に申し上げました安全確保に関します衛星につきましての基本技術の確保につきましては、新機関においても、この実務につきまして、重要な役割を補いたいと考えております。
 次に、社会ニーズを踏まえました宇宙利用のミッションにつきましては、そのミッションの提案を行うとともに、関連します利用機関、産業界等と連携いたしまして、先導的な技術開発等を行いたいと考えております。こうした中で、利用機関や民間機関との役割分担でございますが、技術的成立性が明らかなもの、あるいは特定目的に限定されるものにつきましては、それらの機関でやっていただいて、新機関では、より幅広くかつ技術的にリスクの高いものに重点を置きたいと考えております。
 一方、産業界がそれぞれの目的を目指して行います軌道上のいろんな技術の実証でありますとか、大学等で行います教育を目的といたしました実験等のために、実験機会を設けるべく努力したいと考えております。
 また3機関統合によりまして、科学の分野、応用の分野、それぞれさまざまいろいろな技術が集約されますので、それらを有効に生かした形での実際の研究開発の業務を進めたいと考えております。
 次に、分野の中で、どの分野、これまで先進国にキャッチアップということも含めまして、先進国との協力がかなり強かったわけでございますが、我々日本の置かれている地域的な考えとか、現在の宇宙システムの状況を考えますと、もう少しアジア太平洋地域のところに重点を置いたミッションとか技術開発に力点を置く必要があるのではないかと考えております。
 次に、研究開発の重点対象でございますが、まず地球観測の分野でございます。この分野につきましては、安全の確保のほかに、災害等の監視、それから気候予報でありますとか環境変化の影響の検知でありますとか、さまざまなニーズがございますが、そうしたニーズに対応していくためには、観測頻度の向上でありますとか、分解能の向上、それから観測波長域の拡大でありますとか、アルゴリズムの改良とか、こうしたさまざまな分野をさらに高めていく必要があると認識しております。
 一方、通信放送、測位の分野につきましては、既に商業化が進行していることを踏まえつつ、新しい機関では、民間が行うにはリスクが高い先端的な技術とか、ミッションの高度化を行って、国民生活の利便性の向上にこたえていきたいと思っております。その具体的な例についてはそこに書いてあるとおりでございます。
 このほか、衛星の小型化、高機能化を目指した技術開発を行いまして、宇宙開発事業がの水準をより効率的に高めて、さらにその範囲を拡大するのに努力をしたいというものでございます。このほか、先ほど申し上げましたような新しいエネルギーの分野の新たなミッションの開拓のための先端技術についても取り組んでいきたいというものでございます。
 次に、基盤技術につきまして説明させていただきますが、ここに書いております基盤技術につきましては、主として衛星系の基盤技術ということをかなり意識しておりまして、輸送系につきましては、一番最初に申し上げました輸送系の部分で触れております。
 それからこのほかに一番最後のところで、航空技術の関係がございまして、最終的にこれらの全体を統合した基盤技術という概念があるわけですが、今回は、ここのところのまとめは主として衛星系の基盤技術を意識した形でまとめてございます。
 宇宙開発利用の高度化と確実化を推進するためには、高いレベルの基盤技術が必要でございまして、3機関統合後に、それらの力を結集することによりまして、これらの中核的な基盤技術開発の中核を担いたいと考えておりますし、さらにその高度化を図っていきたいと思っておりますが、その高度化を図るに当たりましては、先端的なミッション達成に必要な技術の開発を通じて行うのが適切ではないかという議論でございます。
 次に、基盤技術の開発の進め方の点でございます。それぞれ3機関が持っております技術を体系化いたしまして、全体として最も効率的でそれが活用されやすく発展できる体制を組んだ上で、2番目に書いてありますような先ほど申し上げました高いレベルのミッションを実現するために必要な技術、そしてそれらのミッション達成を通じて、技術の発展を図っていきたい。
 また、一方、インハウスでの能力を高めるということも必要ではないかと考えております。さらに利用機関、大学等との連携を進めて、基盤技術の裾野の拡大を図っていきたいということと、やはりタイムリーな軌道上の実証のためには、小型衛星の活用が必要であろう。これまでのところ、先端という言葉が随分並んでおりますが、先端のみならず、産業界からも期待されておりますが、もう少し基礎的な部分、そうした部分のデータを蓄積して提供を行うという行為もしていきたいと考えておりますけれども、ただし、民間でできる技術開発であるとか評価につきましては、原則として民間にお任せしたいと考えております。
 このほか、蓄積された技術の成果につきましては、これを広く活用していただけるための活動にも大いに取り組んでいきたいと思っております。
 次に、基盤技術開発の重点の対象でございますけれども、高度なミッション達成を支えるための技術、そこに例が書いてありますが、このほか、ミッション達成に直結している例えばセンサーとか、そういうような技術、それから他機関からの要望が高い技術など、このほかさらに、信頼性であるとか、安全性を高めるための技術、例がそこに書いてありますが、そうしたものに取り組みたい。
 そのほか、日本の独自な、日本が得意な分野で、世界をリードできるような技術、それから日本のさまざまなところで宇宙開発利用が行われておりますが、それらに必要となりますような共通的な設備の高度化でありますとか、いろいろな活動をやっていく上に必要となります情報システムの高度化を図っていきたい。このほか、宇宙の環境安全に関します技術につきましても、取り組んでいきたいというものでございます。
 次に、宇宙ステーション計画でございます。この宇宙ステーション計画につきましては、人類の将来にかかわります重要な国際プロジェクトと認識しておりまして、我が国が知的創造への貢献及びそれに関連します国際地位の確保、そしてまた皆さんが、次世代に夢と希望と誇りを抱けるプロジェクトとして期待されているところでございまして、新機関においても、国民の共通的な資産であります実験棟であります「きぼう」の確実な開発と運用できる状態にするということと、利用の促進、有人宇宙活動などを実施していきたいと考えております。
 次に、2番目のところでございますけれども、これは日本として国際的に約束しております例えば「きぼう」でありますとか、補給機の部分でありますとか、生命科学実験施設につきましては、確実にこれを開発して、安全でかつ低コストの運用を実現し、運用におきましては、国が持っております安全性と運用性を担保するための活動を、この新機関がして、定常運用の段階になりましたら、これを段階的に民間に移管していきたいというふうに考えております。
 次に、利用の分野でございますが、この分野につきましては、主として、日本がどういうふうにするかということを考える分野でございますけれども、この分野につきましては、それぞれさまざまな理由が考えられますので、それぞれの利用目的に応じて適用できる枠組みというのを国の方で提案をしながら整備していただいた上で、利用者と明確な役割分担のもとで、利用の実施をしていきたいと。この中で、特に新機関が中心となりますのが、科学の部分でございますが、幾つかの宇宙科学をはじめとしまして、微小重量科学等々がございます、そのほか、将来の宇宙開発のための先端的な技術開発の部分がございますが、この分野につきましては、中心的な役割を果たしたいという、ただし、この分野の仕事の進め方とか研究の進め方につきましては、研究者の活力が生かせて、研究者が責任を果たせるような何らかの新しい枠組みを整備する必要があるのではないかと考えております。
 次に、広範な利用を開拓するためには、民間のアイデアを活用した利用をそれぞれの民間の方と新機関が協力して開拓をしていきたいということと、それからエンターテインメント等をはじめ、幾つかの分野について、共同の事業を現在も事業団がやっているわけですが、これらにつきましては、民間が主体となっていただいて、新機関についてその活動を支援するということを考えてございます。
 それから、一般利用のうち、公共的な利用、例えば教育等につきましては、それに一番適した機関と連携して、積極的に対応していきたいと考えております。
 次に、有人宇宙活動の部分につきましては、先ほど「きぼう」の開発運用利用を通じましての技術でありますとか、それから宇宙飛行士の活動を通じまして、こうした技術につきましての研究開発を行ってまいりたいと思いますし、さらに、「きぼう」が10年から15年とか長期にわたって運用されますので、そうしたいろんな活動を通じまして、そこに書いてありますような知の探求であるとか夢の追求、それから国際的な意味において、地球社会への貢献であるとか、結果としてさらに新しい地球社会の実現に貢献するための活動にも参加していきたいというものでございます。

 松本 

 それでは私から、宇宙科学に関して説明させていただきます。
 宇宙科学につきましては、人類の知的資産の形成ということが統合の目標の1つでありますので、引き続き重点的に続けられるべき課題であると考えています。宇宙科学自身は、それ自身で完結しているわけですが、一方で大変チャレンジングなミッションを宇宙科学は目指しておりまして、その結果として先進的な工学技術が向上し、日本全体の宇宙技術の水準が上がるだろうと、そういうことも期待されていると考えております。
 さらにNASAで見られますように、宇宙科学の成果がNASAに対する国民の理解を引きつけていると同じように、やっぱり科学が日本の国民の期待にこたえるという部分もあるのだろうと思っております。
 具体的にこれから宇宙科学をどう進めていくかということでありますが、お手もとに資料がございますが、これは実は、昨年度の宇宙研の中の組織で、これから10年、あるいは20年後にどんな科学ミッションがあるだろうかと、そういうことを検討してきたものをまとめたものでございます。
 きょうは時間がありませんので、詳しくは述べませんが、今後10年、20年にわたっていろいろミッションが考えられておりまして、天文学及び太陽系開発、探査、それぞれについても意欲的なミッションが幾つか考えられております。これがすべてできると思っているわけではありませんが、私どもとしては、今後とも、宇宙科学については十分やるべきミッションがたくさんあると考えております。これをベースにミッションを具体化していきたいというのが我々の考えでございます。
 それからミッションの進め方につきましては、宇宙研で、これまでやっておりましたように、ボトムアップで、大学をベースとしてやっていく。そういうことを続けていきたい。それを保障するための大学共同利用機関の性格を残していただきたいというのが一番重要なところでございます。
 もう一つ、宇宙研の特徴といたしましては、宇宙研の言葉で言いますと理学と工学といいますが、科学目的と先進的工学技術開発を融合して進める、これが宇宙研の衛星を開発する特徴でありますので、これは是非維持させていただきたいと思っています。
 それから、先ほど言いましたけれども、宇宙研の宇宙科学のための技術は、当然なことながら日本全体の宇宙開発に大変プラスになるものでありますのて、それを審議会の中で是非積極的に技術向上に役立てたいと思っております。
 もう一つは教育でありまして、教育に関しては、宇宙科学の最先端の現場で学生が育つということは大変重要なことでありますので、これは是非続けたいと思っております。
 それとやっぱり新機関になったことによるメリットというのは十分生かしてこれからのサイエンスを進めていきたいと思っております。その幾つかをそこに書いてございますが、1つは打上げ手段の多様化というものがありまして、これまで宇宙研の衛星は、N5主体で進めてきたわけですが、これからはH−IIAを使ったような科学衛星、あるいはまたH−IIAのピギーバック衛星で小さな実験をするだとか、そういういろんなことがこれからはできるのではないかなと期待しております。
 それからさらに、宇宙科学にこだわらず、今、現在、セレーネのような共同ミッションというのがございますが、そういうたぐいの新しい新機関としての新しいミッション、そういったものを創出できるのではないかと考えております。さらには、惑星科学と地球観測の連携、協力というのがございまして、今、提案している金星ミッションがあるのですが、それは金星の大気を研究します。実はそれは地球大気と将来的には結びつくものでありまして、地球環境で深く結びついた観測になると考えてございます。さらに実際の観測についても、地球観測をやっておられる方との共同研究がこれから進むということも期待しておりまして、そういう意味では、新しい組織の中で、宇宙科学もさらなる発展ができるのではないかと思っております。
 以上です。

 永安 

 それでは、航空科学技術につきまして最後にご報告させていただきます。
 航技研は、例えばHOPEですとか、SELENEとか、そういうものについては既に3機関で協力して宇宙分野で進めておりますが、航技研は設立以来、航空科学技術について一貫してその設備整備と、それから科学技術の研究開発を進めてきております。そういう活動を新機関で引き続き位置づけて進めていくことが必要だろうというふうに考えております。
 全般としましては、特に航空科学技術は付加価値が高い分野でありまして、産業の高度化や、それから地球環境保全、国民の安全、国民の生活の質の向上等に寄与する戦略的な分野でありますので、新機関でも引き続きその施策を進めていきたいと考えております。
 2番目ですが、既に前の方で将来型宇宙輸送機の説明がございましたが、航空科学技術というのは、とりわけ空気の中を飛んでいく、また翼を持って宇宙へ行って帰ってくるような次世代の宇宙輸送機の研究については、航空技術が基盤になって進めておるわけであります。新機関におきましても、日本の航空科学技術研究開発の中核の機能として、その役割を今後とも担っていくことが必要と考えます。
 実際の仕事の中身としましては、社会的な要請が多々あるわけですが、それと合わせて、関係省庁の航空政策、航空機の運航の安全ですとか、事故が起こった場合の事故調査、こういうのが航技研で技術検討を行っておりますし、将来の航空機開発ですとか、それから環境計測、それから排ガス・騒音逓減等の環境保全、こういうような施策に対して、航技研が果たしていく役割は、大きいと考えております。
 それから、先ほど申し上げました基盤的なものですが、宇宙分野で御説明がありましたけれども、それと同様に、飛行試験などの航空科学技術開発や、施設設備等の基盤を維持、発展させて、関係機関等に供していくということも現在の大きな役割の1つであります。
 こういうことで、新機関の中でも、もちろん宇宙については3機関が一体になって進めていくわけでございますが、航空プロパーの業務につきましても、基盤となる技術設備等、引き続き新機関の中で一体的に進めていきたいというふうに考えております。
 以上です。

 井口委員長 

 どうもありがとうございます。
 それではしばらく、時間をいただいて、少し我々と一緒に議論をさせていただきます。いかがですか、まず。はい、どうぞ。

 澤田委員 

 端的にお伺いして、今までやっておられたことを、これはやらないとか、あるいはそういうようなものはまずないようにお見受けしたので、そういう理解でよろしいですか、3機関とも。原則に中堅化、スリム化というのがあるのですけれども。

 井口委員長 

 どれが必要だとか必要でないとかという議論をここでするつもりはさらさらない。ただ、これを議論するに当たって、反対にプラスαの部分というか、というのは、2番目の最後のところでちょっと解説がありましたけれども、例えば事業団としては、何か新しい機関になったがゆえに、という分野というのは、どういうものなんでしょうか。

 松本 

 新しく起こす分野という意味ですか。

 井口委員長 

 まあ、こういう……。

 松本 

 例えば基盤技術というのは、3機関の共通な部分がありまして、それは新しいものだと私は理解しています。
 それから輸送系ですね、これもまた新しいプロジェクトを立上げることを提案しているわけでございます。

 澤田委員 

 新しいプロジェクトを提案しておられる。

 松本 

 だと私は理解しております。

 斉藤 

 お答えになっているかどうかわからないのですが、ここに書いてありますのは、パッと見た感じ、何でも書いてあるではないかということの御指摘だと思います。それで……。

 澤田委員 

 それならそれでいいんですね。別に、それが悪いとは言ってないですからね。

 斉藤 

 それで、実は重点化の話をすごく意識して、いろんなところで議論をして、そうなるようになるべく努力をし、表現をしつつあるのですが、ではどれがばさっと、あるもの、例えばあるフィールドを完全にやめたかというと、それなりに意義があって、あとはだからやり方も含めて相当工夫をしていく必要があるのではないかという意味において、幾つかのところは工夫はしたつもりなのですが、ちょっと見づらくなっているところはあると思います。

 澤田委員 

 ではちょっと、私、よくわからないのであれなのですが、例えば、実用通信放送衛星などは外国に打上げてやってもらっているわけですね。この間は気象衛星を国で上げると言ってやったけれども、失敗してしまった。例えばこれをあのぐらいの金で外国に頼んで上げてもらうということは可能ですか、不可能ですか。そういう受け皿はない。

 斉藤 

 おっしゃっているのは、MTSATのことでしょうか。

 澤田委員 

 何でもいいのですけれども。例えば、日本に気象衛星がなくなってしまうと困るというのがあれになってくるから、では、どこかで調達してくればいいと。それは可能なのか可能でないのか。

 斉藤 

 可能という意味は、日本の技術基盤としてではなくて、あくまで例えば今おっしゃったような……。

 澤田委員 

 基盤でなくて、だからどこかで上げてやるよと、何百億かで。100億なら100億で上げてやるよというようなものがあり得るのでしょうか。

 斉藤 

 今の技術レベルですと、ここである程度の、例えば衛星の小型化であるとか、高機能化と言って、投資をしないと、今の状態では例えば競争力を非常に高めた形でやれる、例えばほかの国とやって競争できるという状態にはなっていないと。

 井口委員長 

 MTSATは、日本がだめなら打上げてあげますよというところはあるのです。

 澤田委員 

 あるでしょう。

 井口委員長 

 はい。

 斉藤 

 外国のロケットが。

 澤田委員 

 ロケットでも弾でもみんな作ってくれるのではないでしょうか。

 斉藤 

 それはありますね。

 澤田委員 

 だからそこでちょっと、これを読んでいて、今までは宇宙開発事業団なりこの3機関が、日本の宇宙は集中的にできるだけやって、技術の蓄積をやりましょうということできたのですね。

 井口委員長 

 ああ、そうですか。

 澤田委員 

 そうでないですか。

 井口委員長 

 そうだったら、もうちょっと重点化しているのではないかと私は自動車の世界から来て、そういう印象を受けたのですけれども。だから大臣も重点化とおっしゃっているし、ここでお呼びした専門家の方々はほとんどがこれから重点化しなければだめだとおっしゃった。

 澤田委員 

 いえいえ、重点化の話ではなくて、今まで日本でとにかく宇宙の開発の金も少ないから、せっかく宇宙開発事業団というのを中心にそこでまとめてやってきましたよという思想でやってきたのではないですかということを聞いているのです。そうではないのですか。

 澤田委員 

 ところが商売で世界で売っているものは買ってこいということになってそこが変わってきた。それで、今度のところは、よそでやりたかったらどうぞおやりなさいという姿勢なのかどうか、そういう変更を考えておられるのかどうかという。これは事業団、3機関なのか、国の機関としてどうあるべきかを本当は決めなければいけないのかもしれない。

 川崎委員 

 そうですね。委員会でもちょっとあれなので、政府なのでしょうね。私もそこのところが一番のポイントだと思いますけれども。

 澤田委員 

 その辺のところは、ここに、何か出しておられるのかどうなのかということをちょっとお聞きしたい。

 井口委員長 

 宇宙開発委員会としてはそっちの方向の議論を今までしてきた。

 川崎委員 

 そうです。委員会としては、我々、国としては、ある宇宙開発能力を持たないといけないという意識は強くあるわけですから。

 井口委員長 

 それと同時に、ディセントラリゼーション。

 川崎委員 

 ディセントラリゼーションをしながらいくということですね。

 斉藤 

 そこは意識しながら、文章とかそういう、考え方を議論はしていますけれども。そのときの中で新機関がどうあるベきかという議論はもちろん意識して、それとそんなに大きくは矛盾はしてないと思うのですけれども。

 川崎委員 

 澤田委員の意見とも少しつながるところがあるのは、もっとユニークネスを出さなければいかんわけです、我が国の宇宙開発は。あの国がやっている、この国もやっているからやるというのはやめましょうよというのが、ある意味では1つのこれからのスタンスなので、そのときには集まって仲間同士というと語弊がありますけれども、お知り合いのファミリーだけでいくらアイデアを出しても似たようなアイデアしか出てこないから、ディセントラリゼーションで、広くいろいろな知恵をあさって、我が国のユニークなコンセプトを出していくという、何かそういうメカニズムは必要ではないかなと。そのことがうまく新機関の中に生きていくようなメカニズムを作らないと、ただ集まればいいというものではないという気が私はしておりますけれども。
 というのは、あの国でやっているというので、何か横を縦に直したようなものばっかりをやっていても、それは、先ほどの澤田委員のおっしゃったように、よその国から買ってくれば済むではないかという議論にはやっぱり負けるわけなので、そういう独自性を、あるいは我が国の地勢上とか、国際社会の位置づけだとか、もろもろの日本の置かれている状況を考えた中での独自性だろうと思います。それは……。

 川崎委員 

 そういう意味でざっき1つありましたのは、どちらかというと、アメリカとかヨーロッパというのはもともと国が大きいのでグローバルなのですね。グローバリズムの中で全体が動いていますから、やはりグローバリズムを追いかけていても、それは国際協力という意味では必要なのかもしれないですが、戦略という意味からすると、もう少し日本に直結したというか、地域的に直結した方が方向としてはいいだろうと。

 川崎委員 

 それは考え方としてある。これは従来、昨年の長期構想から、基本計画から議論はずっと続いてきていて、ここに書いているのはそういう意味も含めてですが、それはそれで意識はしているわけです。

 川崎委員 

 そういう意味での国際分担というのが、今、御説明した全体を通じて見るとはっきりしないのです。このビジョン、要するに……。

 斉藤 

 そこのところは、さっき言いましたように、例えばグローバルの国際的な協力はもうやめましたというのはいずれにしても過激過ぎるので、そこまで現実にはできないですから。

 栗木委員 

 私は出かかっているような気がするのですけれども。ちょっと読んでみますと、1つ、いわゆる重点化が見えないという御意見があって、私も多少そういう感じがあるのですが、せっかく出かかっているのに、これが何でというところがちょっとありまして、指摘させていただきますと、輸送系とそれから衛星系と、宇宙ステーション、仮にこの3つをとって眺めてみますと、これは横につながる、横断的な技術というのが歴然とあるのに、何でこれを主張しないかという、私はそういう無念さが、これを読んでいてするのです。
 例えば輸送系の一番最後のところをお読みになると、有人輸送系は宇宙ステーション参加を通じて有人宇宙技術を習得しつつ云々と、こうありまして、輸送システムなり再輸送系につなげると、こうあるわけです。これを受けて立つ格好で宇宙ステーションの方にそういう軸があるのかなと見ますと、最後のページに、有人宇宙活動の在り方というところに、要するにこれで得た技術というのを通じて将来、この4.のところ、長期の有人活動を支えると、こうあるのです。これを輸送系に反映させるというはひとつも書いてないのです。これは非常に大事なことで、一番大事なのは、JEMよりも私は個人的にはHTVだと思っています。なぜかというと、輸送系を含む有人システム、有人のクォリフィケーションを持っているシステムというのは、これからもう計画の中に入っているわけですね。それを何で横断的に表現しないか、つまりそこに力点を置くべきではないかという、まあ、これは1例です。つまり横断的に、横につながる横糸みたいなものを1本選び出すとすれば、そういうものが選べるのではないかと。そういうところを強調すると、もう少し重点化が見えてくるのではないかなという気がするのです。
 それから同じようなことが、衛星系についても言えまして、5ページ、リスクの高い先端的な技術開発を行うと書いてありまして、複数衛星系の機能的な連携によると書いてあります。複数の地上システムの組み立てというようなことは、まさしくHTVがランデブードッキングで、これから腕を磨こうとしておりますし、既にNASDAは、ETS−7で投資をしているのです。なぜこれを有効に活用して、その投資を回収しようとしないか。つまり複数の衛星の連携、あるいは物理的なドッキング・ランデブーという技術をもっとここにあらわして、横断的な、つまりISSで得られる、もう既に計画の中に入っているノウハウが、フィードバックして、輸送系なり衛星系にはね返ってくるのだという表現が、強さとして出てくべきではないか。そういうところが幾つかあれば、私はそこに重点を置きますということが、このシナリオをもう少し強くする中身ではないかなという気がします。特に、宇宙科学の方からも、これは工学の方に寄っていただいた表現ではないかなと思うのですが、例えばフォーメーション衛星の技術だとか、そういうものも地上システムに活用していくという横断的な表現もあれば、せっかくこういう技術を持っているのだ、あるいはこれからやるのだというところをもっとはっきり書けばと思います。

 松本 

 多少弁解させていただきたいのですけれども、これは一応ワーキンググループで議論して、それがまとまった段階です。本当はそれを全体横に並べて、全体に共通するものを取り出して、統一した整合したものを作りたいと思っていたのですね。栗木先生のおっしゃるとおりのことがありますので、それをこれから是非やりたいとは考えております。

 栗木委員 

 是非幾つかでもそういう横の糸を引きずり出しますと、極めて重点的なところが見えてくると私は思うのです。

 斉藤 

 科学衛星と、先ほど言いました応用とか記録とか、そういうアプリケーションを目指したところについてとは、かなり意識して議論して、用語がほとんど同じようなのが出てきているという、それが……。

 栗木委員 

 ほかのISSと、輸送系とか、衛星系が、もう少し、一番最後のくだりでもよろしいのですけれども、横断的に、ここを貫くような技術はこれですというようなことを、キーワードだけでも入れていただくと、非常に強みを持ってくると思うのです。そうすると、読む人にとっては重点化というのはもう少しわかってくる。しかも、これからやりたいことだけではなくて、特に科学なんかは過去の実績が相当ありますので、是非宣伝していただきたいです。投資はこれから回収するのだという姿勢を示していただきたいと思います。よろしくお願いします。

 井口委員長 

 サイエンスは、5原則の中でちゃんと尊重するように。それで、我々は、サイエンスについては、ここでは議論しておりません。

 栗木委員 

 ところがサイエンスを支えている工学が一緒にあって、それはおそらく3機関の統合とともに、極めて有機的な宇宙科学技術……。

 松本 

 輸送系に関しても、宇宙研の中には先生方がいらっしゃいますので。

 井口委員長 

 それで、輸送系には、重点というのが、ほかは衛星系と基盤には重点というのが一番最後に書いてあるのですが。

 澤田委員 

 輸送系の重点は、先ほど第一優先とするというのが重点です。ストレートに書いてあります。

 井口委員長 

 これを第一優先ですね。

 澤田委員 

 第一優先と書いてある。

 井口委員長 

 わかりました。

 澤田委員 

 ほとんどそうです。

 井口委員長 

 これさえ満足に今はしてないのに、何で先のことをどうこう言えるだろうかという批判をする人がいますね。わかりました。
 それで、重点でないからいいのですけれども、再使用型で、2ページ目の下から6行目ぐらいに、将来の世界の宇宙輸送系は高い信頼性を確保していきつつ、大幅なコスト逓減が可能なと書いてあるのですけれども、ほとんど失敗しているではないかとある人が言っていたのですけれども、シャトルの後のことを考えながら、何十年考えても結局出てこないではないか。ほんとに高い信頼性と大幅なコスト逓減、たしかNASAも2020年に、安全性が100倍高いのでしたか……、コストは100分の1……。まあ、アメリカならできるけれども、日本は本当にできるのですか、ああいう論理で。こんなのは夢ではないかという人がいるのですけれども。とすると、こんなものは後追いだけではないか。是非とも反論してほしいのですけれども、私はやっぱり、世界の方向はこっちなのだろうと思うのです。
 委員長として何かまとめたものを人に説明するときには、それはこうですという理由が欲しいのですけれども、だれも教えてくださらないのです。やりたい、やりたいだけの話で。なぜやるのですか、私は理由を聞きたいのです。批判をしているのではなくて。どなたも明快な答えを教えてくださらないのです。再使用って何なのだ、もしわからなければ、今の時代はちゃんと勉強しておきましょう。再使用型にしてもいろいなな型があるのだという話も聞いておりますし、今からすぐ、これは重点ではないから、そういうお考えなのだろうとは思いますけれども。

 斉藤 

 それで、専門の者が、それぞれ来ていますので、それぞれ詳しく説明いたします。

 井口委員長 

 あまり長く説明せず、手短に教えてくださいますか。

 NASDA 

 まず、なぜ再使用型を日本がやるのかというような話をされました。前提は、最初に書いてありますように、国及び国の安全を保つために、日本が主体的に運用できる輸送系が必要であると。

 井口委員長 

 要するにセキュリティですね。

 NASDA 

 ええ、それがまず最大の理由です。将来にわたってその条件を保つためには、将来というのは、私たちの考えでは、世界レベルのものは二十数年後には再使用型のシステムになっていると思っておりまして、将来にわたっても我が国が世界レベルの自由に使える輸送系を確保する必要があるのであれば、今からスタートしないと、とても実現いたしません。

 井口委員長 

 ただ、予算の問題だとか、重点は使い捨てであるという、これは数年かかるでしょうね。だから今は、できるとすれば、しっかり勉強しておいて、ある時点で取り組むということであれば人に説明できる気がするのですけれども、そういう考え方でよろしいのですか。

 NASDA 

 ですから、金額をここで言うのもあれですけれども、しっかり勉強できる程度の予算配分をいただいて、しっかり勉強の中にごく小さいものを飛ばしてみるとか、飛ばしてみないと実証できない分野も、今、その辺までいっている部分もあるわけでして、そういう小さなものでも飛ばしながら、しっかり勉強させていただきたいというのが、ここでございましてそれから段階的にしっかり勉強しながら、ある時点で方式も見きわめて、それで徐々に実現に向けて、ある時点ではシステム実証、それからもう随分先になると思いますけれども、実機開発という、そういうステップを進んでいきたいと思います。でも今、スタートしないと大変厳しいことになる。

 井口委員長 

 スタートという意味では、要するに勉強のスタートはもう既にやっておられるわけです。

 NASDA 

 もっと本格的に。

 川崎委員 

  その考え方で、ずっと昔からその考え方なのですが、今、要求されているのは、例えばリサイクリングソサエティとか、循環型社会とか、省エネルギーとかというような話があるわけですね。そういう観点から、やはり、国全体、世界全体が、対環境負荷をどうするかというような見地から考えていったときに、エクスペンダブルなロンチングシステムというのは、極めて環境負荷の大きいやり方ですね。資源浪費型である。そういうような時代要請を超えて、受けた視点で、だからこれをこういうふうにセッティングするのだという発想がないと、今のやつというのは、もう10年前から同じ理由で言っていたので。

 斉藤 

 そういうところが環境保全のために……。

 川崎委員 

 これはだから、デブリみたいなこととか。

 斉藤 

 いやいや、必ずしもそうではなくて、基本的には同じことで。

 川崎委員 

 保全ではなくて、むしろリサイクルを徹底的にやっていくという、そういう意味の超効率型の輸送系を日本独自でやっていくのだというようなことを少し考えるのなら、というのがどうかなと私は思うのですけれども。

 澤田委員 

 ちょっと1つ教えてほしい、いいですか。
 日本ではとうとう航空機ができなかった。今、日本は自分で飛行機を飛ばしてないかと言ったら、外国から買って飛ばしていますよね。再使用型も、うんと需要がなければ安くなって、観光旅行ができますというような話にはならないのでしょうから、そういうときには、どこかから買ってきて、自分のところに置いておけば、自分の好きなように上げられるのではないですか。今から一生懸命になって自分で、ピンからキリまで日の丸で固めたやつでなければだめだということになるのでしょうか、将来とも。

 NASDA 

 ちょっとよろしいですか。確かにそれは国の技術的なセキュリティも含めた範疇かもしれませんが。今、航空機と同様に、輸送系についてもそうなのですが、先ほど、なぜリユーザブルか、これは設計後の結果論なのでありまして……。

 井口委員長 

 何の結果論。

 NASDA 

 要するに今の使い捨てをどういうふうにしても、例えば1桁コストを減らすデザインというのは、なかなか難しいと思います。その結果、1回当たり繰り返しを使うことで減らしていこうという発想がもちろんここには説明しておりませんが、その再使用という中のデザインの結果としてあるのです。
 ちょっと戻りますけれども、技術的な設計ということで申し上げれば、今のエクスペンダブルというのは、ある意味で、計画需要がかなり使い捨てという意味で棲み分けができております。
 再使用というのは、逆に繰り返し使うことで、1回当たりのコストを下げていくということ、これはセキュリティ的に言えば、例えば国際社会における競争と強調なのです。例えば今の世の中のロンチャーの時代で、1桁コストの低いシステムが出てくれば、多分世界の市場を全部商社が取ってしまう。つまりそれはなかなか棲み分けできないような……。

 井口委員長 

 ほかの話に移りますけれども、いかがですか。
 それで、私の個人的な感想を言えば、我々は最終的には、アカウンタビリティというか、外に向かって説明ができなければいけないので、それが欲しい。
 それと、やはり5原則というものが与えられて、重点化、スリム化、効率化、いろいろ要請をされていますので、その要請にこれでこたえているのか、どうなんだろう。

 斉藤 

 ちょっと取り組み直さないと、おっしゃった効率があるのはどれとどれとか、何かやらないと、ちょっと、全体を書いてしまっているから、余計わかりづらくなっているかもしれませんけれどもね。

 井口委員長 

 クリアカットに分けられるかどうかも難しいだろうと思うのですけれども。

 川崎委員 

  ただ、僕自身も、やっぱり横で見たときの印象で、これは中でそうでないのかもわからないのですが、宇宙科学の方は、この新機構でやるというのが非常に強く出ているのですね。それに対して、そのほかの系は、外との連携の中でやっていきましょうという、要するに開放型ですよね。そういう思想の違いが1つの機構の中で、組織として存在するためにどういうことになるのかなという、これを超えたところでの1つ疑問、質問点が出てくるので、そこをどういうふうに。

 斉藤 

 組織を作るときに別の形を作って、それと一般の方が、例えば産業界も含めて、もっと商業的利用に近い形のサポートというのは、体系が違うので、宇宙ステーションのことで典型的に書いてあるのですが、多分、それを分けないと、一緒にやるとごちゃごちゃになってしまう。宇宙ステーションという何となく1つのインフラがあって、それを全部進めるためにという1つにやるから、余計それがわかりづらくなるのですが、事業全体も多分そういうグループが分かれてくるのだと思いますけれども。

 川崎委員 

 それは次の段階。

 斉藤 

 次の議論だと思います。

 井口委員長 

 澤田委員、いかがですか。さっきの御質問は……、出ないのですが。

 澤田委員 

 いいですよ。おそらくそういう事態になれば、そういう道もあるのだろう。だからここでいう、まさに国策として何が何でも、何回失敗しようと、とにかくトライするのだというのが。

 井口委員長 

 輸送系は何としても手段としては持っていたいというのは。

 澤田委員 

 持てればいいねという話で、それ以外に方法がないのかどうか。これはうまくいけばいいのですよ、それに越したことはないのですよ。しかし、ずうっとそのために、本来やりたいことがこんなに今、あるわけです。それだ全部できていかなくなって、それでもいいのですかということに対して、責任が持てるのですかねという、私もちょっと疑問なのです。だからそこのバランスを考えていかなければいけない。だから、将来夢で、有人宇宙旅行ができるために今からやっていくのだという以前に、地道なやつをきっちりやって、その上のバランスて考えていくということが私は正道ではなかろうかという気がしています。

 川崎委員 

 ある意味で言うと、今の澤田さんのおっしゃっているのと共通なのですけれども、私は分岐点だと思います、日本の位置が。非常に大ざっぱな言い方をすると、日本というのは、つい1980年代までは1割GDP国家で、世界をリードする国だったという、そのときの状況でロシア、アメリカに対抗する1極としてやりにいくか。もうとても日本は3流国になったのだから、カナダ、オーストラリア並みの宇宙のケイパビリティでいくか、国としての選択を迫る。それは予算の規模とか、いろいろなことを考えた上で、国家の長期的な戦略として、国の礎はそんなところですよというふうに、ボタンを押すか押さないかだと思う点があるのですね。宇宙開発委員会としてはそうあってほしくないというのが私の気持ちですけれども。やっぱりESA型をせめてねらうべきではないか。そのためには、ESAのようなお仲間もどこか考える必要、視野に入れる必要があるというのが。ただ、国策としてどう選ぶのかは我々の宇宙開発委員会の役割かもしれない。

 井口委員長 

 それではどうもありがとうございました。
 それではその次の、43−3−2の資料の方に移りますので、これは事務局から。

 芝田課長 

 それでは43−3−2の資料について御説明申し上げます。
 この資料の性格は、前回の統合準備会議第2回目におきまして、宇宙開発委員会と事務局との共同作業的な資料として、我が国の宇宙開発事業の目指す方向という資料を統合準備会議にお出ししました。これの構成は、宇宙開発利用の理念から始まって、宇宙開発利用の中長期目標、公的機関の役割、宇宙開発利用における新機関の役割という4項目を、かなり詳細に書いたものでございましたが、いろいろ御議論がありまして、青山副大臣の方からこれについて宇宙開発委員会でさらに議論を深めて、もう一度次の準備会議に出すようにという御指示があったというふうに理解しております。
 そういうことで、今言った資料をリバイスするための全段階の資料として、きょうお出ししている資料がございます。この議論を踏まえまして、次回の統合準備会議は21日でございますので、その際にさっきの資料をリバイスして出そうと思っております。そういう意味では、きょうの資料は、その統合準備会議に出すべきコンポーネンツが、できるだけ網羅的に書かれていればいいという資料でございます。
 1番の、宇宙開発利用の理念につきましては、そこに書いてあるとおりで、これは以前からこういう議論があったということで、ほとんど変わっておりません。
 それから、2番目は我が国の宇宙開発利用の基本方針、これは統合準備会議で、人類全体の理念から、いきなり3番目の目的に飛ぶのはちょっとおかしい。その間に、国としての理念といったものが欲しいということで、これは今回新たに出したものでございます。中を見ていただきますと、21世紀は、宇宙へ本格的に進出する時期、宇宙の世紀との認識のもとに、次の3点を国の基本方針とするということでございます。
 1は、我が国が標榜しております科学技術創造立国実現のための戦略的な分野が宇宙開発利用であるという認識に立ちまして、これを推進する。この分野は、他の科学技術の創出と利用発展の促進にもつながるという意味でも、非常に戦略的な分野として、国としてこれをやっていくのであると。ロケットが失敗したりすると、すぐ、ロケット開発をやめてはといったような論調になりがちであるのはおかしいと。国としてやるのかやらないのかはっきりすべきだという意見が統合準備会議でも出ておりましたけれども、そういう意味ではここで、確立創造立国の主要な分野として、これからも宇宙開発利用をしっかり推進していくという姿勢を明らかにしてはどうかということであります。
 2番目が、これはESAでも掲げておりますが、他国に依存しないで、独自に必要な宇宙開発利用活動を行うための技術力を保持し続けるということであります。これは、もを一歩いきますと、おそらく最低限必要な技術力だけは持とうではないかというふうに考えられると思います。
 それから3番目が、特に重点化した幾つかの分野においては、世界に誇れるような技術力、あるいは信頼性を獲得しまして、国際社会における先頭的地位を確保しようと。それから宇宙科学につきましても、これまでのような世界のトップクラスの地位を確保して、そのことによって、知的存在感のある国を実現し、国民もそのことを誇りに思えるような国づくりをしたいということであります。
 それから3番目が、これは以前から御議論のありました、我が国宇宙開発利用の目的で、3点、国及び国民の安全の確保、それから産業の活性化と国民生活の質の向上、それから知的資産の拡大への貢献といったような3点、これは以前からございました。この部分につきましては、統合準備会議で市川先生から、科学技術というのは必ず社会との関連で見る必要があって、社会の方からどういう光を当てるかによっていろんな意義が見えてくるという御指摘がございまして、この各項目に具体的に、どんな、例えば情報ですとか、測位ですとか、そういった領域分野を当てはめていくかというのは、社会から当てる光の方向を変えると、同じ測位が安全であったり、あるいは国民生活の質の向上であったり、いろいろな分野にわたるという可能性もございますので、厳密に分野をここに当てはめていく作業は、必ずしも生産的ではないのではないかと思っておりまして、次回の準備会合では、その辺はできるだけ簡素な資料にしたいと思っております。
 それから4番目が公的機関の役割といたしまして、これは以前から議論が出ております、とおりの整理がしてございます。
 それから5番目が、審議会の役割ということでございます。5番目と6番目は、6番目は3ページにございますが、新機関の活動分野ということで列挙してございます。この5番目と6番目あたりが、新機関の役割としてきちんと整理していく必要があろうかと思いますが、とりあえずきょうはコンポーネンツレベルで、できるだけ網羅的に書いてございます。
 そこにございますように、(1)が宇宙科学、航空技術、それから宇宙開発利用に関する基盤技術研究開発のCOEを形成すると。それから、(2)が産学官共同の場と技術実証の場を提供して、産学連携協力を支援するということであります。
 具体的に中身としてはそこに書いてあるような事項がございます。特に、遠山大臣から指示のありました5原則の関連でいきますと、できるだけ民間への技術移転を行い、それからまるの5にございますような民間委託もできるだけ促進していこうといったようなこともそこに書いてございます。
  それから(3)番目が人材の養成、(4)が国際協力の推進、(5)が社会とのコミュニケーションということで、国民理解の増進等もここに入ろうかと思います。
それから6番目は、これは新機関独自の課題であろうかと思います。新機関が独自に定められればいいことかもしれませんが、例えばこういった具体的な活動方針を掲げていくべきではないかということでございます。
 それから6番目が新機関の活動分野として、そこに書いてあるような分野が拾えるのではないかというふうに思っております。この辺を合体して新機関の役割として整理を今後して、21日に備えておいてはどうかと思います。
 以上です。

 井口委員長 

 どうもありがとうございました。今までの議論をまとめたものなのですけれども、舌足らずのところもあるし、足りないところもあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。特に……。

 澤田委員 

 ちょっと1つよろしいですか。
 1枚目の2の(2)のところと3のところなのですが、他国に依存しない技術力を持つということ、世界に誇れる技術力を獲得してというのは、これが別の技術力を言っているのでしょうね。

 芝田課長 

 別のことです。分野としては重複する部分もありますが、2番目は最低ラインをキープしようと。

 澤田委員 

 最低ラインをキープする。

 芝田課長 

 それから3番目は、その中で幾つかの重点分野でピークを作っていこうと。その分野では、世界的な信頼性、技術力を確保して、世界に誇れるものにしていこうということです。

 澤田委員 

 2番目は最低レベルの。

 芝田課長 

 最低レベルの。

 井口委員長 

 最小限これだけはということ。

 澤田委員 

 ああ、そうか、そういうこと。
 うーん、ちょっとそういう表現がこれでわかるのかな、依存しないというと、独立独歩ですよという感じ、それは最小限度でも……。

 芝田課長 

 これは表現は。

 川崎委員 

 オートノマスになっているやつなので。多分自立とか自在性とかという言葉で書けば。

 芝田課長 

 それはもう少し書きくだしますので。

 澤田委員 

 そうですね。何でここでひっかかったかというと、私は宇宙開発というか、そういうものは、本当に地球レベルでやっていくことが非常に多いのではないのかなと。どこかの1民間機関が商売がてらにやるとか何とかという話のものでは到底あり得ないだろうと思うのです。そうすると、少なくとも、何かもっと別な形の国際協力を推進していく必要というようなものを提案していくことが日本としても必要なのではなかろうか。ということと、その依存しないというのは、ほかはなくたっておれはおれでやれるんだというところで、ちょっとひっかかるという感じがしたものでね、話をしたのですけれども。
 だから、宇宙開発を目指す方向、3機関ということに限定しないで物を言うとすれば、私はいまひとつべースを対立の時点から抜け出た今日において、まあ、テロ撲滅以上に、もっと国際的に、地球としてまとまり得る分野なのではなかろうか、そういうことに対しての提案というのを日本がやっていくということは、もっと意味があるのではなかろうかなと、日本自体もそれで困っている部分があるわけですからね、これは。何かそういうことをもう少しアピールできればという感じがするのですが。
これは3機関の技術開発とそれぞれには結びつきませんけれども。

 川崎委員 

 一種の南極条約みたいなフレームワークですね。

 澤田委員 

 何か、コンソーシアムみたいなものを具体的に作ってやっていくというようなものかもしれませんね。

 川崎委員 

 そういう意味で言うと、2と3の順序をむしろ逆にしておいた方がある意味ではいいのかもしれませんな。要素として持っていないと、そういう発言力もないですから。

 澤田委員 

 それをやるのに、日本も独自のものを提供していけば、よりよい開発ができるでしょうねというね。地球人としての貢献で、まあ、日本の旗を立てるとか立てないとかという話でなしに。

 井口委員長 

 そこに書いてある1、2、3は、すべて内向きの話ですから、今、おっしゃったものを。

 川崎委員 

 ちょっと入れる。だから3が世界的な視野でよろしいのではないでしょうか。国際社会で発言力を有するというような意味ではないのではないか。

 栗木委員 

 ページの2の一番下にあります、わかりやすい研究開発目標という、先ほど課長がこれは実施機関がある程度主体的にやられると。まさしくきょうの発表にもありました、これはかなりディーテールに当たっておりますけれども、これが短い格好でここに納まるのか、あるいはこれを引用するのか、将来そういうような格好でここでもって実施機関と整合がとれていないと、これはうたい文句に終わってしまう、つまり実施機関がやる気になっているということが極めて大事だし、実施機関ができるということが極めて大事なので、そこの整合性を何らかの格好で表現していかないと、字だけがうわすべりにならないかなという。精神的には大変結構なんですけれども、そういう感じがします。

 川崎委員 

 むしろ、これは、今度の新機関で選んでくださいと、この中のどれをねらいますか、当面という、新機関で1から4までオプションが……。

 栗木委員 

  自発的にかなり高い目標を掲げてもらえると、こういうところにスポッと入るのではないかと思います。

 川崎委員 

 当面の5年間は、まる1で行くのだと。

 栗木委員 

 まあ、きょう発表があったこれかなと、こう思うものですから。これのサマリー版みたいなものがここに入ると。

 川崎委員 

 でも、さっきの理事長のお話を聞くと、当面ねらうのはここ3、4年はやっぱりまる1ではないでしょうか。

 井口委員長 

 ええ、と思いますけれどもね。

 川崎委員 

 その後、10年ぐらいたつと、まる2が顔を出してくるかどうかというような……。

 澤田委員 

 まあ、ちょうど瀬戸際みたいなものですね。

 川崎委員 

 瀬戸際で、何か分岐点のような気がしますね。国全体もそうですけれども。

 井口委員長 

 それから最後の3ページ目に、ずらずらっと。

 栗木委員 

 いっぱい書いてあるね。

 井口委員長 

 思いつくままに挙げているだけかもしれませんが、事務局がやったのにそんなことを言っては申しわけないのですけれども。これで重点化されているかと聞かれたときに、何と答えるのかなと。

 栗木委員 

 是非これは、縦糸と横糸に分類してもらいたいなと。

 井口委員長 

 分類すると、またこれ、議論が大変で、簡単にはまとまらないのではないかと思って、多分この先のことは書いてないのだと思うのです。

 川崎委員 

 これだと、この範囲に入っていれば何をやってもいいというから今の委員長のような御質問になるわけでしょう。要するに輸送システム、宇宙輸送システムを有人から無人まで至るところ、全部入りますから、まさに何でもやるということに見えるので。

 澤田委員 

 反対にこれは、どれかを阻害していますかという質問に対して、阻害していませんとは言えないのではないですか。何かあるのですか、除くものが。

 川崎委員 

 何となくあるのです。

 澤田委員 

 縦か横かにどこか、どこかにひっかかっているというあれでしょう。

 川崎委員 

 最大公約数的なやつですかね。公倍数か、最小公倍数ではなくて、最大公倍数みたいな。

 井口委員長 

 いずれにせよ、来週に統合準備会議がありますので、そこに出す必要があります。

 川崎委員 

 むしろ先ほどの3機関の方からの考え方と、この紙とで相いれない思想というのがあるかどうかという点を聞いた方がよろしいのではないですか。

 井口委員長 

 私の感じでは、あんまりないのではないかという感じがするのですけれども、どうでしょうか。

 川崎委員 

 この新しい機構は、どんなような位置づけのものにしたいかという点。
 要するに世界に冠たる航空宇宙技術研究機関になるのだという気概が見えないのです。というのが、この2は、そう書いてあるのです。COEになれと書いてあるのだから。

 芝田課長 

 19日に臨時の宇宙開発審議会を、申しわけないのですが、もう1回、2時−4時でやらせていただいて、そこで統合準備会議に出す資料に、今、お出しした資料をインテグレートしたものをお出しして確認していただきたいと思います。

 川崎委員 

 1つよろしゅうございますか。僕は、栗木さんからいただいた素川さんからのあれもあるので、教育問題について、ここで考えておられる教育のフレームワークというのはどの程度のことをお考えになっているかというのを。例えばドクターコースの院生の指導というのが、助っ人であると同時に指導対象と考えられるのか。あるカリキュラムを持った1つの連携大学院の1講座を持つとか、2講座を持つとかという、そんなようなことになるのか、そこはどういうふうに基本的にお考えになっているかによって大分違うでしょう。

 芝田課長 

 事務局のレベルでは、今、宇宙科学研究所が担っている大学院系の教育というのが非常に大きな役割を果たしていますので、その部分と。それからもう1つは、今おっしゃったような連携大学院的な形での大学院への教育。これは3機関共通だと思いますが。その2つのレベルのお話だと思っております。

 川崎委員 

 もう少し底辺に7つぐらいたしか講座があるはずなので、旧帝大のあれで。そういうところで広く航空宇宙だとか、そういうことについても研究する芽を次々と生んでこないと、そこのところをやはりここでは考えざるを得ないのではないかと思います。

 芝田課長 

 そういうレベルの、例えばCANサット的なものを支援していくとか、その程度の話は視野に入っていると思っています。

 井口委員長 

 3機関の代表の方、一緒に議論させていただけますか。

 川崎委員 

 今の大学院というお話になってくると、これからの新しい独法型の大学院はどうなのかわかりませんけれども、従来型ですと所定の単位が何とかだとかって、やたらにコース設定の複雑極まりないルールがあるので、それと、こういう臨機応変にいろいろやっていくタクティクスのある宇宙科学研究とか、かなり裁きが、一つの組織の中でやろうとするのは難しいのではないかという。オフキャンパスなら別ですけれどもね。

 松本 

 そうですね。今、総研大というのはオフキャンパスですね。センターは葉山の方にあるのですけれども、それぞれの大学教育機関が講座を持っているわけです。だから、学生は総研長いけれども、形は総研ですけれども、実際に研究教育するのは宇宙研でやるわけです。宇宙研の特徴は、1つは理学・工科と一緒にあって、理工学が一緒に勉強できるところがありまして、そういうことがほかの大学ではできないように見えているということがあります。

 川崎委員 

 そうすると、ほかの大学院におられる先生と同じような気持ちで宇宙開発研にその先生が来られると、大分機構が違うのではないですかということになるのではないかと思います。また悪しき伝統がそこではびこるのはよくないのではないかなというのが私の心配なのですけれども、率直に申し上げて。

 井口委員長 

 例えば、ちょっと話が飛ぶかもしれませんけれども、ITSという、何度も言いますけれども、自動車の情報化ですね。あれが世界的に始まったのは、5、6年前ですけれども、そのときにアメリカで、だからITS技術者というのはいないのです。いろんなエレクトロニック技術者だとか、自動車技術者、それから通信技術者を集めて、そういう教育をして、その人たちを急速に育てなければいけない。そのときには、アメリカのDOT(連邦運輸省)が、あのときはアイスティだったか、まあ、それはいいのですけれども、そういうプロジェクトを作って、そうすると何百億円のプロジェクトの中の何億円かを、教育というものに割くのです。それを例えばミシガン大学に出して、急速にそこで学生を募集して育てるわけです。そういうことをやっているのです。
 日本はそういうシステムがないので、これからはできるかもしれませんけれども、今までは、文部省はほかの、運輸省の金なんていうのは受け入れないという、今はなくなったでしょう。そういうことが、例えばこの3機関であるファンドがあって、どこの大学に、教育のための金を出す、それで、学生を急速に何人か、ある部分欲しいというときがある。育てるということが、今、できないのですか、もうできるのでしょう。

 松本 

 やろうとしました。バイオインフォマティクスで宇宙講座をやろうとしたのですが。

 井口委員長 

 大学が受け入れるかどうかなんです。

 松本 

 バイオインフォマティックスをやろうとしたのですが、私立大学でやる場合でも、認可を得るまでに1年半ぐらいかかります。

 川崎委員 

 だから、大学があるのだったら。

 松本 

 いや、大学もありますし、いろいろ。

 川崎委員 

 ただ、今の大学の中の議論は、5年間縛られるというのは大変なので、途中で見直すことが是非必要であるという議論が通ってきていますので。5年間縛られたら大変なことなんですよね。

 安永 

 1点だけよろしいですか。独立行政法人を経験した行政サイドからの見方ですけれども、中期計画はやはりこの分野で5年間、4、5年なり確固たる不動のものというのは非常に難しいと。これは、技術的、研究開発的に見てもそうですし、リソースが予算という形で決まってくる以上、やっぱり5年間不動というのは、なかなか難しい。したがって現実には、独立行政法人制度1年目ですけれども、おそらく1年たったところで中期目標をある程度見直さざるを得ない機関が大分出てくるだろうと。おそらくそういう制度になるだろうと思います。だから、5年間不動であるという前提でやる必要はなくて。

 川崎委員 

 この機関は、今から作るのだから、そうできるのでしょうし、大学もそうしてもらえれば、ローリングプラン的なことが長期計画に入ればいいと思うのですけれども。

 安永 

  実際そうならざるを得ないのではないかと思いますけれども。

 井口委員長 

 ありがとうございます。。
 ほかに何かありますでしょうか。
 ふだんであれば、2時間で解散しているときなので、特に皆さん方の方でなければ、わざわざこっちに来ていただいて申しわけありません。
 戻っていただきたいと思いますが、事務局の方はいいですか。何か……。

 芝田課長 

 では、さっき申しましたように19日にリバイスしたバージョンを出しまして、そこで確認したいと思います。

 井口委員長 

 それでは、この議題はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。
 その他で、宇宙開発の現状報告を塩満室長にお願いいたします。

 塩満 

 1枚目は、宇宙開発委員会の主な活動を記載させていただいております。御視察、それからあと、NASAのアスラー局長との意見交換、それから国連宇宙部との意見交換がございました。さらに、12日には安全部会と宇宙開発委員会が開催されています。そのほか、各関係者の方々との打合わせを行っております。
 2枚目でございますが、外国の動向といたしまして、11月7日にESAの閣僚級理事会に対するESA側の提案内容というのが公表されました。この中では、2002年から2006年を対象とするプロジェクトの予算要求案のようなものが出ています。
 詳細比較まではしておりませんが、11月14日から15日のESA側の閣僚理事会が開催された後に、詳細な分析を進めていきたいと思っております。
 それから、11月8日には、NASAの予算が上院・下院を通過しております。この中で、総額は147億9,300万ドルということで、大統領の予算教書の要求時よりも2億8,200万ドル増えているという状況でございます。
 ただ、単純な比較は、まだ項目が少し変わっているみたいなので、できておりません。今後進めてまいりたいと思っております。
 ISSの関係につきましては、CRBの予算措置も含まれておりますが、全体的には若干ISSの予算が減っているというふうに見ております。
 それから11月9日、これはESAのプレスリリースに書いてあったものでございますが、技術移転プログラムを応用して、オランダの学生がソーラーセルをカーレースに使うという内容が記されていました。このソーラーセルは、2002年の後半、あるいは2003年の初頭に打上げ予定の月探査機スマート1というものに使われるという予定のもので、こういう大学生にも使ってもらうということを知らせるということで、プレスリリースされたものと思います。
 11月10日には、NASAの方で、ISSのプログラムにつきまして、その利用をNGOがマネジメントできるかどうかということに関して、コンセプト開発という内容の報告書案を作ってみました。これに対するパブリックコメントを求めるということで、11月10日に公表しています。この報告書自体は6月に作成されたもののようです。この中では、今後マネジメントについてNGOに委託することは基本的には可能であろうけれども、国際パートナーとの合意事項、それからその運営能力について、事前に評価すべきたということが記載されています。
 以上でございます。

 井口委員長 

 どうもありがとうございました。
 NASDAでは、技術移転プログラムの活用は、多いのですか。

 NASDA 

 ベンチャー企業に、うまく企業化できないかというようなファンドはある程度持っておりますが、まだ実際にそうなったものというのは数少ないと思います。もうちょっと大きなのは、例えば太陽電池とか、そういうものは若干使われておりますけれども、いわゆるこういった形の全然他分野に転用されたみたいなのは、まだ多くないと思います。

 川崎委員 

 今のNASDAのお話だと、今、NASAでやっているのは逆でしょう。養成するシステムが、何かドミナントで、スピンオフしていく話の方は、あまりそういう数がないのではないかと。

 NASDA 

 そんなことはないと思います。

 川崎委員 

 この間報告があったのが、外から手に入れるという。

 NASDA 

 それももちろんあるのです。むしろ民間の人たちがいろいろ考えてくれませんかということに対する。

 川崎委員 

 私が知らないぐらいだから、世間さまは知らないわけです。

 NASDA 

 あ、そうかもしれない。

 川崎委員 

 いや、スピンオフって、ファイナルレポートが出ているじゃないの。  中身は大したことないのも書いてあるけれども。

 井口委員長 

 日本も是非ともそういうのを出して。

 NASDA 

 そういうのはどんどん増やしていくべきだと。

 井口委員長 

 国民の税金を投入してこれだけの成果が上がったと。
 どうもありがとうございました。
 前回の議事要旨につきましては、御確認をお願いいたします。
 以上で、第43回の宇宙開発委員会を閉会にいたします。

閉  会

(研究開発局宇宙政策課)

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