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宇宙開発委員会

2001/11/12 議事録
第42回宇宙開発委員会議事録

第42回宇宙開発委員会

1. 日時 平成13年11月12日(月)14:00〜

2. 場所 宇宙開発委員会会議室(文部科学省別館11階)

3. 議題  
  (1) 「我が国の宇宙開発利用の在り方」について
  (2) その他

4. 資料  
  委42−1 「衛星測位システムの在り方」について
  委42−2 第41回宇宙開発委員会議事要旨(案)

5. 出席者
  宇宙開発委員委員長 井口雅一
  宇宙開発委員 川崎雅弘
  宇宙開発委員 栗木恭一
  宇宙開発委員 澤田茂生
  宇宙開発委員 五代富文
  文部科学省研究開発局長 今村努
  文部科学省研究開発局宇宙政策課長 芝田政之

6.議事内容

 井口委員長 

 第42回の宇宙開発委員会を始めさせていただきます。
 きょうは、東京商船大学の安田教授においでいただきまして、衛星測位システムについてお話を伺い、その後少し議論をさせていただきたいと思います。それでは、安田先生、よろしくお願いいたします。

 安田 

 東京商船大学の安田と申します。
 情報通信ということで、情報通信工学の授業を担当しています。研究として、海事通信ということで、衛星を使った通信とかをこの十数年前から始めまして、その後、測位ということに目を向けまして、そうこうしているうちにGPSが実用化してまいりましたので、そちらの方に研究の軸足を相当強く踏み出すことになって、現在、いろんな学会等を引っ張ってやっているつもりです。
 お手元にシンポジウムの御案内を差し上げましたけれども、これは今週の14日からということで、一応申し込み締め切りというのはもう過ぎておりますけれども、私の方に御連絡いただければ、適当に取り計らわせていただきますので、もし御関心がありましたら、おいでいただきたいと思います。
 本日は、衛星測位システムのあり方ということで、実は先週、その関係で韓国で学会がありまして、そちらの方に出ておりまして、学生が大体こういうような感じのものを作ったので、これを軸にして話をします。少し整合性のない話が出てくるかもしれませんが、一応将来、衛星測位システムに関連してどういう方向に研究を進めていったらいいだろうかというような話のシナリオのつもりでおります。
 2枚目は、きょうのお話の目次になりますけれども、現在の衛星測位システム、GPS、GLONASSに関して簡単に御紹介して、それが将来どんな方向へ進んでいくだろうかということ、それから、現在どういうところに利用されていて、ある程度先を見越した話も入りますが、そのほか、今、ホットな話題で、仮想基準局方式、それからスードライト(Pseudolite)、こういうものが今、盛んに我が国で実用化研究というのがなされています。世界的に見ても、この実用化研究に関して言うと、かなり肩を並べて進んでいるところだと思います。
 それから最後に、というか、私は本当はこれを言いたかったのですけれども、我が国の衛星測位システム関連として、どのような分野の研究があり得るだろうかというようなことを御説明いたします。
 御存じのように、アメリカの、米軍が作りましたGPS(グローバル・ポジショニング・システム)、これは、24機で6軌道面に各4衛星を配して、イメージ的にはこんな感じになります。衛星はこんなにでかくないですけれども、6,300kmの半径の地球、それに2万6,000kmぐらいの1日に2回地球の周りを回る軌道、それを6つの軌道面に4つずつ配置して、24機でもって、所要の性能を維持するということになっていますけれども、現在、それよりも多い28機でもって稼働しております。
 それから、ロシアのGLONASSですけれども、アメリカのは1993年からフル稼働、これは95年にフル稼働に入ったのですけれども、今は6機まで落ちてきてしまいました。我々は、一昨年から、向こうの宇宙局の関連なんかありまして、GLONASS関係のいろんな情報を持っておりますけれども、一応今年3機上げて、二、三年のうちにこの体制にもっていきたいということで、この2つはもう既にあるシステムです。
 それからGALILEOというのが欧州、前の2つは軍用であったわけですけれども、欧州は民間で独自に作るということで、30機、3軌道面で開発中という、軌道面も大体これと同じです。これはきっちり1日2回回りますけれども、この2つはそうではない。GPSもGLONASSも、大体地上2万km前後の軌道面を持っています。
 あと、補強システムというのが今、世界で準備されていまして、静止衛星を使って、GPSあるいはGLONASSの測位システムを補強していこうというもので、日本ではこのMSASですね。一昨年でしたっけ、ロケットの打上げに失敗して上がらなかったんですが、でも、これも2004年ぐらいには運用に入る予定です。ほかのところも、既に初めの予定から言うととっくに運用しているのですけれども、今は試験運用中ということで、いろいろまだ解決すべき問題があって、この補強システムは航空用です、洋上を飛行する航空用にサービスをするということで準備が進められているということです。
 次は、GPSが現状どうなっているかというと、一般に使われるのは、L1帯のC/Aコードです。このPコードというのは、軍用で使えません。それからそれは、近い将来、2008年に運用開始ということで、こちらのL2帯にも使えるようにする。L1、L2、周波数を2つ使うことによって、電離層の影響を正確に測定できて、測位精度が大幅に上がる。さらに、2012年を目指して、L5帯というところにも、周波数で言うと、これがこういうふうな、順番に下がっていくような感じですけれども、まあ、Lというのはリンクということで、リンク1、リンク2というような形で呼ばれていまして、GPSは3周波で測位ができる。そうすると、さっきの電離層の補正の問題、それからあと、キャリアフェイズで、数cmの、1cmとかの精度で位置が特定できますけれども、それの解を求めるのに、波が多ければ多いほど有利であるということで、将来的には、今、いろいろ問題になっている問題がクリアされて、非常に使いやすいものができてくるだろうというふうに思っています。
 次に、これが大体、実際どのぐらいの精度のものかというと、C/Aコードの単独測位というのが36mと言われています。これも、実際に使ってみると、5mとか10mぐらい、5m前後の精度が得られるということです。船舶とかカーナビなんかですと、これだけの精度があれば十分なわけですけれども、それに対してそれを補正して精度を上げようと、これがディファレンシャルGPSと呼ばれているもので、精度が1mで、物によっては1mを切っているという受信機もありますけれども、これが航空機の航法、先ほどのMSASとかというのは、この広域のサービスをねらっているわけです。これは、現在は日本では海上保安庁の中波ビーコン、それからFM放送のカーナビ用に、オプションとなっていますけれども、FM放送でもってデータを流すということで、これだけの精度を実現しています。
 それから、先ほどお話ししましたキャリア、搬送波の位相を使う、搬送波の長さは約19cmですので、それの100分の1ぐらいの精度の位相が読めるということで、位置にするとmmからcmぐらい、これは全国に国土地理院が展開している947点の電子基準点というのがありますが、それでもって日本の地殻の変動とか、ひずみとか、そういうものを観測して、地震の予知に役立てるというようなことで、これは日本が一番広く、面積割合でいうと、一番インテンシブにやっているということ、そういう予算がついたということなんでしょうけれども、地震国ということで、そういうものに予算がついているということだと思います。それが将来的には、先ほどのリアルタイム・キネマティックというか、これを実時間で実現する。1cmとか、そのぐらいの精度で実時間で自分の位置がわかる、移動体に使えるようになります。
 それから、先ほどちょっとお話ししましたシュードライト、あとからもう1回出ますけれども、これは、空の衛星が受からないようなところ、室内とか地下街、あるいはビルかげになるようなところでも使えるということで、あと、携帯電話なんかでの適用も考えられておりますけれども、まだこれも現在現在開発・発展中のシステムです。
 仮想基準点というのは、先ほどこの辺のリアルタイム・キネマティックで使えるのを、基準局というのが必要ですが、それから10km以上離れると、精度が非常に悪くなってくるということで、仮想基準点というのは、複数の基準点のデータを面補正、面平均して、それによってかなり離れたところ、数十km離れたところでも、高性能測位ができるようになるということ、これも現在実験が進んでいるところです。
 次のページです。これは、先ほどの実際の話ですけれども、航空に使われているWAAS(Wide Area Augmentation System)、これが一般的な用語で、その中でMSAS(MTSAT Augmentation System)、それからヨーロピアン・グローバル・ナビゲーション・オーバーレイ・サービスとか、その名前は、ヨーロッパ、日本、アメリカによってつけ方が違いますけれども、洋上を飛行する航空機に対して、数mの精度のサービスをする。補強するための静止衛星を使ったシステム、これが先ほど言ったように、もう間もなく世界的に展開されるようになります。
 それから、着陸時に使おうということで、これはDGPS地上局と言っていますけれども、これも疑似衛星の1つなんですけれども、空港の近くに、疑似衛星を使いまして、そこから航空機に情報提供する。ローカル・エリア・オーギュメンテーション・システム、それからグランド・ベースト・オーギュメンテーション・システム、こちらは、サテライトベースト(SBAS)ですね。こっちはGBASというような言われ方をしておりますけれども、そういうのがあります。航空用への応用で、これから非常に開発される技術です。
 それから、GPS自体は日本が作ったものではないのですけれども、カーナビは、この辺で御覧いただくとわかりますけれども、現状では日本がほとんど。これが、アメリカとかヨーロッパでも次々と、これは予測ですからあてになりませんが、大体日本で200万セットぐらいが稼働しているということで、これがさらに高精度にしようということで、FM多重で、補正データを流す、DGPSをやっているということで、自動車への応用、それから、私なんかから見ると、これが精度がもうひとつなので、こういうのの研究というのもこれからの課題ではないかと思います。
 次のページです。これは携帯電話に載せるという、日本でももう準備ができていますけれどもアメリカのE911ですが、これはここに書いてあるように、電話、緊急通報のときには、それがないと受け付けられない、自分の位置がわかってない……、自動的に通報できるようなシステムです。これがFCCが携帯電話会社に求めているということで、これも近い将来すべての携帯電話にGPSが載ることになるということです。
 次のページです。これのための新しい受信機システムというのがアメリカで開発されて、日本にも随分今、入ってきております。それから船の場合は、専門家の話になるのですけれども、RTK測位でもって、湾内誘導、接岸の研究もやっていますけれども、こういう研究。あるいはここに書いてあるのは中波ビーコンですね。これは、DGPSですから、1mとかの精度の測位が可能です。すべての日本沿岸でもって測位が可能になっています。
 それから次は、測量の関係ですね。これがちょっと電子基準点の図面は、普通ですとこういうふうに例えば10kmのエリアに限られてくるのが、例えば離れた複数の基準局のデータをもとに、この真ん中辺ではどんなふうになるかというような情報を流してやって、あたかも、そこに真の電子基準点があるかのようにということで、Virtual ReferenceStationということで、今、世界で、ドイツに2社、それからカナダに1社ですか、そのシステムを日本に持ち込んで、去年の暮れから実験をいろいろやっています。それで、国土地理院としては、どれか1つの方式でもって、電子基準点を使ってサービスするということを今、考えているようですけれども、まだまだ開発費とかいろいろあって、これも発展途上にあります。こういう研究ですね。
 測量の関係と、それからリアルタイムの実時間での測量ということです。
 AHS研究組合というのがありまして、そこで例えば高速道路の自動車の自動運転とかやっているのですけれども、山かげとか何かになると、衛星がとれないということがあるので、疑似距離、スードライトと言いますけれども、疑似衛星を使ってサービスをするということで、今、自動運転の実験をやっております。そのほか、これも間もなく、今月の終わりぐらいから始まると思いますけれども、スードライト、これはGPS衛星が受けられないところにいる、ビルの角に小さな疑似衛星を配置して、歩行者とかにサービスする、あるいは室内でも使える。これは今、物流関係で、倉庫内物流とか、あるいはコンテナヤードなんかでも、コンテナーを高く積み上げるますから、衛星からの電波を受信できない。そういうところに疑似衛星を配置して物流にも活用しようということで、これもまだまだいろんな問題があって、これからの研究対象、市場として大きな需要も見込まれます。
 あとは、日本がもし衛星測位システムを持つとしたら、どんなことになるだろうかということで、現在考えられているのが長楕円軌道衛星と静止衛星を組み合わせる。私のイメージとしては、MSASが2004年ぐらいからサービス開始ということで、こういうものも利用した形で、こういう長楕円軌道衛星を打上げて、それとリンクしたような形の測位システムが可能ではないか。ただ、当面はGPSにかわるものというよりは、GPSを補強するような形で、衛星が増えれば増えるほど精度が上がるわけです。だからGPSプラスGLONASS、プラス我が国独自のシステムというものがあると、非常に高精度で安定な測位が得られる。今も、非常にいいときはいいのですけれども、実際にお使いになったことがある方はおわかりかと思いますけれども、数mとかのジャンプがある、それからさっきのRTKで1cmの精度だとかと言っても、数cmあるいは数十cm飛ぶことがあります。そういう問題は、やっぱり衛星の数が少ないというようなことから起因している。そういう問題もクリアされてくるので、こういうものがあれば、補強にもなるし、もしGPSに何かあったときには……、もしGPSに何かがあったらどういうことが起こるかというと、非常に我々の生活にも、カーナビはともかくとしても携帯電話もかけられなくなるとか、そういうような非常に不便なことが起こってくるということで、そういうもののバックアップにもなり得るということになります。
 そういうことで、独自の形式の開発とか、それからもしこれが8の字衛星であれば、オーストラリアとの協力ということも可能になってくると思われますので、ここに1つ何かこういう、当面はバックアップ、さらに進んでいざというときには、ある程度の精度が保証できるようなシステムを開発研究をしていくというのが一番重要ではないかと思われます。
 次のページです。管制部分というのは、地上からの管制部分ですけれども、MSASの監視、衛星の位置精度と測位精度は非常に密接な関係がありますので、MSASの監視局を活用して、管制部分を補強する。これはアメリカではもうやっているわけですけれども、そういうのも日本で独自にやっていく。それからいろんなデータ更新のやり方もGPSと同じにする必要はなくて、GPSで学んだことをもとに、日本独自の新しいシステムを作っていくといいのではないか。航法メッセージにしてもそうですし、それから双方向通信というのがGPSはないわけですけれども、SAR機能(サーチ・アンド・レスキュー)海での遭難に対する、海、山のサービス、サーチ・アンド・レスキューという機能のついた、GALILEOはそれを入れようとしていますけれども、日本独自でそういうシステムを作っていったらいいのではないかということです。
 次のページです。地上インフラとしては、先ほどの仮想基準局方式ですね。これが広域のサービスになる。これも解決すべき問題はいろいろあります。それから、GLONASSに関しては、まだこの開発は進んでいませんので、GLONASSもこれから復活するということであれば、この辺も研究対象になります。
 それからDGPSの陸上部へのサービスは、FM多重がちょっと弱いですので、これを新しく改善していくような形が研究対象としてあり得る。これは、ガバメント・インダストリー・パートナーシップ(GIP)ですね、これも公共投資が必要であるということで、GIPという言葉が使われています。
 次のページです。その2つ目としては、今度は疑似衛星を使って、地下街でも家の中でも、それから倉庫内でも……。今、あるのはアメリカ製のが1社あって、それを使っていろいろテストしています。新しいものも当然これから出てくるべきものです。
 それから、これもそうですね。今の話、これも疑似衛星関係です。それから受信機の研究、これも、信号形式はいろいろ提案がありまして、妨害を受けにくいものとか、妨害しにくいものとか、いろいろなものがある、そういうものもこれからの通信工学の研究の1つだと思います。
 それから、測位アルゴリズム、これは、先ほどのキャリア、搬送波の位相を使ったもので、これもアンビギュィティというか、19cmの100分の1の精度で、相対的には位置はわかりますけれども、これは衛星までの距離が何波長プラス100分の何波長という、その100分の何波長というのは正確なのですが、これを決定しなければいけないですね、アンビギュィティ・レゾリューションといいますが、これを一瞬にしてできるテクニックというのは、まだ、ないことはないのですけれども、いろいろ眉つばで、各社出しているけれども、なかなかいいものがない。こういうものもこれからの研究対象になると思います。
 それから、そういうものを、今度は高速に計算するということで、高速移動体の実時間測位、実際に今、あるものというのは、100ミリセカンドぐらいかかって位置が出てくるわけですね、1cmの精度というような場合でも。そうすると、その間の時間遅れによる位置は変わってきますから、その辺もやっぱり測位の新しいアルゴリズムの開発とか、それから携帯電話に載りますから、今度は携帯電話の波との統合化によって精度を上げるというような問題もあります。
 次のページです。いろいろ開発すべきことがある。それから受信機については、現在、ロシア側から、GPS+GLONASS受信機に協力してくれという話があります。これは宇宙庁の方からの話ですけれども、民間ではある程度、台湾とか韓国もやっています。そうすると、今、日本のメーカーにいろいろと声をかけているのですけれども、あるのに今さらということになってくるわけですね。それで、宇宙庁としては独自のシステムでやりたいのだけれども、日本側では、もうからないのではないかということで、なかなか立上がってこないのです。まだ今、すったもんだやっているのですけれども。その辺もやっぱり、多少なりともこういうものの公的資金を入れて。そうすると技術が残りますから、今みたいに韓国から買ってくればいい、台湾から買ってくればいいと、それだけではそれで終わってしまいますので。
 そのほか、さらにこれから、GALILEOを入れたもの、それから私が勝手に言っている……、サテライト・ベースト・ローカル・エリア・オーギュメンテーション・システム、これはさっき言った日本独自の補強システムと混ぜたような新しいタイプの受信機の開発、それからあと、受信システムそのものについてもいろいろとあります。それから高感度受信機というのは、今、アメリカから携帯電話用に入ってきているシステム、こういうものも、もう既にありますけれども、あるから買ってきてとやってしまうと、日本に何も残らない、お金だけ出ていくということになりますので、その辺はやっぱり今後開発プログラムに入れられたらいいと思っております。
 次のページが資料の最後ですけれども、やはりこういう高度科学技術に結びつくような部門をこれからやっていっていただければということで、基幹技術の海外流出を食い止めるための施策をしてほしい。それとあと、理系の学生はいつも頑張って勉強しているけれども、経済学部を出た銀行マンは30代で1,000万もらっているのに、その辺はやっぱりこれからもう少し政策的に考えていってほしいというようなことがありますので、ちょっと僣越ですけれども、日ごろ思っていることを書かせていただきました。
 ちょっと、大あわてでお話ししましたので、おわかりいただけないところがあったら、御質問等いただければと思います。

 井口委員長 

 どうもありがとうございました。
 それでは、ちょっと質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 御質問、御意見をどうぞ。

 澤田委員 

 GPS、あるいはそれの応用に関して、日本の研究レベルというか、その研究がどこにまた向いているか、特許がどの程度とられて、結構いいところを押さえているのか、押さえていないのか。このカーナビの市場予測なんかを見ますと、日本よりむしろヨーロッパとかアメリカとか、その先はアジアが増えるのでしょうけれども、そういうときに、今みたいな観点から、結構日本は押さえていけるのでしょうか、それとも……、というのが質問です。

 安田 

 基本的なところは、すべてアメリカとロシアに押さえられておりまして、日本で何か新しい受信機を作ろうとかというと、なかなか今、そういうところの特許にひっかかって、新しいものができないところがあります。ただ、カーナビに関して言えば、各社カーナビメーカー、いろんなアプリケーション、GPSから出てきたデータを利用して、例えばINS、管制航法とか、マッチングとか、そういうようなところで、皆さんいろいろ工夫されて、いろんな特許は出ています。ですから、そういうものがどういう形でこれから海外の方に行ってお金を稼いでくるかというのは、ちょっと予測がつきませんけれども、カーナビに関して言うと、GPSというところではなくて、それを活用したアプリケーションとか、アプリケーションソフトでもって、そういう特許をいろいろとっているというふうに聞いています。

 川崎委員 

 GPSの利用について、利用系として何が、どういうシステムが改善されたら、よりもっと広範に普及するのかというような点について、何かお気づきの点があったらお教えいただければありがたいのですが。

 安田 

 そうですね。GPSというか、衛星部分についてかなりまだ改善する余地があると思います。それは、空がどうしても開けていないところとかそういうところで使いますから、そういう問題もありますし、それから……。

 川崎委員 

 衛星面での改善点というのは、例えば周波数帯域の問題とか、そういうようなことになるわけですか。

 安田 

 帯域もあると思います。そういう意味では帯域の問題もありますし、それから衛星のモニタリング、管制部分というお話をしましたけれども、その管制でもって、実際放送されているものは、かなり衛星の位置がずれています。意識的ではなくて、それはモニターが弱いから、そういうのも補強……、近い将来、そういうのは改善していこうということをアメリカでは言っています。アキュラシー・インプルーブメント・イニシアティブ(AII;Accuracy Improvement Initiative)とかと言ってやっています。
 そのほか、そういう問題を補強システムがカバーしようということでやっています。
 ただ、それでも、実際、なかなか、そういうものを含めて、まだまだ発展途上であるということで、例えば補強システムだったら、どういうふうに伝送するかということを1つとっても、今、FM多重とか中波ビーコンとかありますけれども、そういうものがいつも自由とは限らないとか、そういう伝送の方の問題もありますし、そういうような補強システムの改良とか、一見できたできたと言っていいデータばかり見せられがちですけれども、実際に使ってみると非常に問題が多いです。実際、私もカーナビを使っていますし、カーナビを使っていらっしゃる方は御存じだろうと思いますが、私は、九段下の方から入ってきますと、今まで何回か、1年に数回は、皇居の中を突っ切るということが起こる。私のカーナビだけかと思って、レンタカーを借りるときにはカーナビのついたのを借りるのですけれども、やっぱり同じような動きをしますので、そういう意味では、それは衛星の数が少ないという問題もありますね。
 上空が完全に開けていれば問題ないのですけれども、そういうような都市部で使う場合の補強、それはさっきの疑似衛星であったり、そういうようなことで、まだまだ改良すべき点がたくさんあります。

 川崎委員 

 ケーブルTVとか、携帯電話の場合も、いろいろ地上局の問題、ここで言う基準局ですが、国内的に見れば、その辺はもう十分にあるということですか。

 安田 

 基準局……。携帯電話とかは、今のところ話の中に入っていません。そういうものも使おうという動きはありますけれども、実際にまだそれでサービスしているということはないと思います。

 栗木委員 

 アメリカのGPS、それからGALILEO等が既に登場し、あるいはしつつありますが、デファクトスタンダードとして、オプションとしては、もう出尽くしたという感じですか、それともまだいろんなオプションといいますか、ありという感じでしょうか。後続として何か……。

 安田 

 もちろん初めのころは、GPSというのはこんなに大きかったです、それで1チャンネルしかなくて。それが今、この親指の先ぐらいに、それも高性能ですね。だから、衛星自体にしても非常に大きかったのが小さくなっていますし、それから、技術予測というのがなかなかあれなんですけれども、当面、GPSもブロック2、ブロック2R、2F、それからブロック3というところまでは、一応計画の上に乗ってやっているわけですけれども、それが終わったらもうそれですべて終わるというわけではなくて、当然、技術が進めば衛星も小さくなるということで、もっと例えば低軌道衛星を使えば、受信機も非常に楽になる。ただ、低軌道衛星は周波数が大きく変わるから、今の技術だとなかなか打ちにくいかと思います。
 ところが、将来的にそういうものも克服できるような技術が開発されてくるかもしれない。そうするともっと低軌道で、使いやすい。そうすると、今の疑似衛星の問題もひょっとしたら解決できるようになる。やらなくても、それで済むかもしれないし。だから、まだまだ研究する余地は山のように残っているというふうに、だからそれが、2020年とか2030年ぐらいになってくると、もう私たちは生きていないかもしれませんけれども、そうなるとまた新しいものができて、これはインフラとして必須なものになってきていますから。もっとも、それまでにまた新しいほかの技術ができてきて、GPSでなくてもできるようなものも出てくるかもしれません。
 例えばさっきの時刻同期の問題、今、携帯の基地局で時刻同期を使っています。だけどそれでも、廉価な高性能の周波数標準が開発されるかもしれない。そうすると、GPSでなくてもいいという話になってくるかもしれないし、それはどうなっていくかわかりませんけれども、そういう意味で、当面はGPSによるところが非常に大きい。
 さっきちょっと抜かしましたが、GISの問題ですね。あれも三次元のGISというのが今、研究されていまして、そうすると、これもGPSなしでは今の段階ではあり得ない。けれども、平面の地図から三次元の地図に今、変わりつつあります。そういうようなものに対応してもGPSは、もっともっと高精度で使いやすいものにならなければならないと思います。

 今村局長 

 この衛星測位には、これからの研究開発課題があるという話を承ったわけですけれども、どれぐらい公的資金を投入すべきか、額というのは大体わかりますか。

 安田 

 それはちょっと私……、いや、わかりません。そのつもりになって今回調べてこなかったのですけれども。
 ただ、実は先週韓国へ行ってきたのですけれども、韓国は日本に比べて劣っているかどうかというのは、ちょっとあれなんですけれども、かなりのお金が大学に流れていまして、大学が作ってほしいものというのは、一般企業というか、ベンチャービジネスに流れていまして、それで、これはどうしたの、どこどこから買ってきたのと言ったら、いや、韓国で作っていますと、そのメーカーですね。それは、国から出たお金が大学を通してそっちへ流れていく。相当なお金が動いているのではないかなと思います。
 そういう意味では、大学とベンチャービジネスと一緒になって新しいものを開発する。それで、結構な数の大学で、若い研究者がGPSに関する勉強をしています。技術レベルはどうかと言われたら、それはまだちょっとアメリカには劣るだろうけれども、日本より先に行っていると。
 私も大学の人間として、何とか引っ張っていこう、引き上げていこうと思っているのですけれども、残念ながらやっぱりちょっとお金が……。科研費あたりも、ひところGPSと書くとどうも入らない、だめみたいだと。やっぱりGPSというのは兵器だから、そういうイメージでとらえるのか何か……。そういうことで、まあ、私ども毎年毎年出していますけれども、なかなかGPSということではお金が取れない。最近になって少し状況が変わりつつあるかなという気はいたしますけれども。

 井口委員長 

 1つ伺いたいのですが、聞き落としてしまったと思うのですが、オーギュメンテーション・システムのMSASというのは、日本をカバーする。これは、衛星をどこかが打上げるのですか。

 安田 

 ええ、MTSATというのが、2年ぐらい前に打上げ失敗しまして。

 井口委員長 

 ああ、それに組み込んであるのですか。

 安田 

 それで、あれはひまわりのかわりにもなりますし、それから同時にそういう補強の信号を出す予定になっています。

 井口委員長 

 それから、どこかで、GPS利用のセキュリティについて研究しているところはありますか。

 安田 

 セキュリティというのは、広い意味ではあると思います。

 井口委員長 

 例えば妨害されやすいと聞いているのですけれども。つまり微弱電波だから、すぐ妨害されると。それに対してどうするかというのは、日本はあなた任せ、アメリカのものを使っているだけですから、もうそのときはしようがないと。GPSが使えなくなったら、もうしようがないですよね。

 安田 

 まさにそうです。そういうことです。

 井口委員長 

 お手上げ、そのときにどうするかということを考えているところというのはあるんでしょう。

 安田 

 新しい衛星を打上げようというグループはありますね。打上げたいということで、NASDAあたりの人は、一応、打上げたらこんなになるというのは、今度の学会、別称情報通信学会の論文誌の12月号に出ますけれども、そういう研究をしているグループはあります。ただ、セキュリティという面では、そういう意味ではあまり話を聞いたことはありません。

 井口委員長 

 きょうは、この後で議論に加わっていただくつもりで、宇宙通信株式会社の江名社長さんに来ていただいていますが、何かこのGPSに関して、御意見とか御質問はございますか。

 江名 

 いいえ、特にございません。

 井口委員長 

 ほかに何か。

 五代委員 

 韓国のお話を今、お伺いしたのですけれども、そのほか、世界でこのGPSについての研究とかそういうものは、何か相互の連絡体制みたいなものがあってやるとか、そういう形にはなっていないのですか。
 それと、日本と韓国で、韓国では金が潤沢に行っているみたいだという話ですが、日本の場合は、先生のところだけやっておられるのか、そのほかにもあるのですか。

 安田 

 そうですね。大学としてはあまりないですね。みんな私ぐらい、高専とかそういうところの30代ぐらいの若い先生が、私のグループになるわけですけれども。大学では、アプリケーションに関して言うと、地震の方とか地殻とか、いろいろありますけれども。あちらの方はわりと潤沢にお金が行っているようで、かなりそういう意味ではアクティブな、理学部関係、地球科学ですか、そういう関係のグループ。我々の方は、どちらかというと航法ですから、ちょっと違うのです。たまには一緒に勉強会をやったりはしていますけれども。お互いに似たようなところに問題点を持っていますね、GPSをもうちょっと何とかならないかとかですね。
 企業から少し援助いただくとかという感じでしか、今までのところではできてないです、我々のグループの中では。科研費もなかなか来ませんので。
 それと、先ほどの世界規模で言えば、アメリカの航法学会というのが、年に1回ミーティングをやっていまして、それは、何千人という、全世界から集まって、何百という研究発表もやります。それからヨーロッパは、先ほどのは9月だったのですけれども、ヨーロッパでは5月、6月ぐらいにやっています。それは、我々もたまには参加するのですけれども、ヨーロッパがほとんど中心になっております。今回、韓国の話は、韓国、中国、日本、それから香港ですね、台湾が入ってもいいのではないかということで、これから、韓国の場合、今年8回目と言っていましたけれども、我々が積極的に参加するようになったのは去年ぐらいからなので、来年は中国でやり、再来年は日本でやってくれという話になっています。
 そういう、韓国でやったのですけれども、西欧人が20人ぐらい、我々が5、6人か。それからあと、シンガポール、香港あたりから、それから中国ですね、そういうところから来ました。

 井口委員長 

 ほかにいかがでしょうか。

 川崎委員 

 もう1つ、先ほどのと関連しますが、地形と地勢データとの共用というような1つのアプリケーションがあると、すごく便利だろうと思うのですけれども、その辺は何かやられているわけですか。

 安田 

 GIS関係の話でしょうね。

 川崎委員 

 いや、よく私もそこはよくわからないのですが。

 安田 

 地勢というか、例えば植生であるとか。

 川崎委員 

 ええ。

 安田 

 あるいは野生動物の。

 川崎委員 

 あるいは道なき道を行けるか行けないかとかですね。今のところは、要するに、ある意味で言うと、カーナビの場合にはソフトで、地形図はさらに打ち込んでおいた上での位置ですね。

 安田 

 まあ、いろんなところで、そういう基盤データというのですか、地方自治体、例えば何とか市が、自分のところの道路に、マンホールがどこにあってというようなことを緯度・経度で入れて、必要な場合にはすぐに行けるような、そういう基本的なデータを作っているという話は聞いています。

 川崎委員 

 地方自治体でですか。

 安田 

 ええ。

 江名 

 では1つ、せっかく御指名がありましたので。

 井口委員長 

 どうぞ。

 江名 

 GPSは、いろいろ新しいシステム、日本で何があるかというお話を聞いたのですが、やっぱり日米業者の問題とか、安全保障の問題が絡んで、GPS以外のものを独自で日本でやるという可能性というのがどのぐらいあるのか、あるいはもう日本というの、今のGPSありきで、それの補完システムで精度を上げていくと、そちらの方向に進むべきなのか、その辺、これからはどうでしょうか。

 安田 

 私自身が体験しているわけではないのであれなのですけれども、やはりNASDAの方のお話ですと、独自のシステムということはちょっと言い出しにくいところがあると、CRLの方もそういうようなことをおっしゃっていました。GPSの補完システムということであれば許されるのではないだろうかと。
 場合によっては、GPSが何かのあれで使えなくなったときには、それでも今の最低限のサービスをできるような形を、というようなところが落としどころかなという話を聞いております。

 井口委員長 

 それでは、これで安田先生のお話をお伺いし、質問させていただくところを終わらせていただきたいと思います。
 きょうはどうも、わざわざおいでいただきましてありがとうございました。
 またいろいろ考えるところもあると思いますので、その節はいろいろ御教授くださいますようお願いいたします。どうもありがとうございました。

 安田 

 どうもありがとうございました。

 井口委員長 

 それでは、次に、衛星通信会社の江名さんを囲んで、審議を行います。前回は、中須賀先生に輸送系の将来の開発方向などのお話を伺いました。
 それは、どちらかというと供給者側の方々の御意見が主なものですから、その資料は、江名社長さんにお送りしたと事務局から伺っておりますが。それを踏まえて、実際の産業サイドからの御意見を伺ったり、我々と一緒にディスカションさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 最初に、中須賀教授のまとめについての御意見を承らせていただけますでしょうか。

 江名 

 それでは、ちょうど私どもの会社で、先月、次期の衛星ロケットを発注したのですが、その過去半年以上の先行作業がありました。したがって、ロケットの商業化という観点で、日本のロケットが世界のマーケットで売れていくのかどうかという点について、率直な現在の考え方、現状を御説明したいと思います。
 97年にH−IIAが成功を重ねて、その延長線上で、4トンクラスを85億で打つという提案は、H−IIAの計画というのは、当時は衛星のクリエーター、我々を含めて、魅力のある提案でした。その当時は、オペレーターにとって魅力のある提案だったと思います。現に、アメリカの衛星メーカーに10機発注したり、私どもも去年、2機打ったのですが、その後、10月に打った衛星には、そのロケットを採用するという方向で随分検討しました。結果的にやっぱりだめだったんですけれども。それから3年たって、今、どうなっているかといいますと、欧米のロケットというのは、もう次の世代のロケットに入ってきています。御存じと思うのですが、日本は今までコマーシャル、準コマーシャルも含めて、24機打っていますけれども、アメリカの合弁ロケットですね。私どもが7機、JSATさんが7機、それからBS関係が8機、それからNTTが2機打っております。
 24機のうち、18機がアリアンロケット、それもアリアン4という、これは100機以上打って成功しているのですけれども。5機がアトラスで、1機だけ、当時コマーシャルタイタンというロケットなんですが、今はタイタンはやめましたけれどもタイタン、それで24機。
 1年前までは、アトラス2というのと、アリアン4という、非常に信頼性の高いロケットがあったものですから、我々はもう文句なく、文句なくというか、ほとんどアリアン4、たまにはアトラス5を選択していたのですけれども。ところが、もうアリアン4は生産停止している、アトラス2も生産停止ということで、もう今、次世代に入ってきている。アトラス3、アトラス5、アリアンはもう5になってしまった。
 こういう状況の中で、次世代のロケットがどういう視点で作られているかというと、もちろん裏ではいろんな政府の支援というのがあるのでしょうけれども、やはりコマーシャルロンチマーケットの競争が非常に激化していますので、それを考慮したロケット開発という方に進んできています。なるべくシンプリファイするような格好で、なおかつ値段も下げるという。現にアトラス3は、従来のアメリカのエンジンではなくて、今度ロシアのエンジンを持ってくるとか、シーロンチはもう、1段から上段まで全部ロシアのエンジンを採用するとか、いかに安くかつリライアブルなロケットを、端的には競争力のあるロケットを作るかという視点で作っているわけでございます。値段も今、非常に下がってきていますので、端的に言いまして、仮に今、85億という提案をロケットシステムさんがしても、競争力がないと言えると思います。
 もちろん下げれば別ですけれども、どこまで下げられるかという問題が1つあるのですが、一番大きな問題はやはり、ユーザー側からしますと、その時期にロケットを必ず打ってくれるということが一番大事で、やっぱりリライアビリティの問題がある。リライアビリティは、何で反響するかというと、やっぱりそれまでの飛行実績というのがどれだけ成功しているか。その中には、どのぐらいの間隔で打っているのか、仮に前のことが失敗したとしても、どのぐらい迅速にそのトラブルシュートして、次のやつを予定どおりに打つかという、そういった全体的なリライアビリティの問題があるわけです。そうなると、やっぱり実績をたくさん持っていないと、なかなかユーザー側の方は使いにくい。まあ、半額でいいから打ってくれとか、そういう非常にポリティカルな値段が出てくればまた別なのですけれども、普通の競争ベースでは、なかなか使わない。
 今、ロンチサービスの会社が提案している内容は、大体、もし打上げに失敗した場合には、リロンチをただでやりますと、というのは、自分たちで保険をかけて、失敗した場合には次のロケットをただで提供しますという、そういうプロポーザルが非常に多いです。H−IIAのプライスにはそれが入っていないで、当然もしそれを提案しようと思えば、ロケットシステム自身がみずから保険をかけて、その失敗に備えなきゃいけないという問題があるので、価格的にさらに厳しくなるのではないかと思います。
 それともう1つ、一番大きいのは、ユーザーから見ると、リロンチで、仮にロケットの打上げが失敗しても、ただで打ってくれるだけでなくて、我々はまたその100億円のペイロードを上に積んでいますので、それもアウトになってしまう。そうすると、これに対しては、ユーザー側が保険をかけなければいけないという問題があるわけです。
 ところが、下に乗っているロケットによって、保険会社の料率が全く違ってしまうという問題があるわけですね。極端に言えば、倍ぐらいの料率、さらに悪く言えば、保険は受けられないという保険会社の対応もあり得るわけです。ですから、ユーザー側としては、自分たちの選択で、うんと安ければいいという判断もある程度あるのですが、やはり保険会社が認めないロケットというのは、いかなる場合でもなかなか使いにくいということで、これはどうすれば解決するかというと、やっぱりこれは何回も打って、実績を積むしかないということだろうと思っております。
 そういう中で、一番直近の調達の中で感じたのは、もしH−IIAが当初の計画どおり85億という提案をしても、もうこの3年の間に競争メーカー、相手もロケットも変わってきていますし、値段も下げてきているということで、なかなか難しいというのが判断です。
 では、これをどうするかということになると、これは私は全くユーザーの立場で勝手なことを申し上げるのですけれども、H−IIAというロケットは、何かほんとにドラスティックに値段を引くような態勢がない限り、なかなか世界のマーケットで売るということは極めて難しいと言えるのではないかと思います。
 日本の宇宙開発を振り返って、日米交換公文でNASDAの初めの実用衛星を打つというのでNロケット、その後、Nロケットはほとんどアメリカのデルタの技術導入でやったのですけれども、2段エンジンだけ共同開発と。そこで、CS、BS、GMSの3機の実用衛星を一刻も早く打たなければいけないと、そのロケットということで、暫定的にということでN2ロケットが開発されたわけですけれども、これは、共同開発した2段エンジンまで、アメリカから自前に切り換えてしまったという過去の歴史があるわけですね。だけど、言うなれば、そのときの宇宙開発というのは、一番商業化の視点があったと私は思っております。なぜかというと、目的を達成するために一番安い方法、国産とかそういうことを一切忘れて、世界にあったアベイラブルなものを持ってきて作ったというわけですから、そういう意味では一番商業化とか産業化という視点では、経済効率的には一番正しい選択であったのだと思っています。
 ただ、結局、そのときの日米交換公文の中で課せられた、三国衛星をあまり打ってはいけないとか、技術的な制約とか、そういうことで国産主義に走ったということで、結果としてすべて100%国産でというのでできたのがH−IIロケットですから、H−IIロケットの中には、初めから商業化という視点は全く入ってないロケットだというふうに思っております。R&Dで国内で全部やるということで作ったわけですから、これを1機成功したら、あるいは大幅に改良してすぐ商業化できるかというと、なかなかそうではないのではないかと思います。
 さっき申し上げましたアトラス3、アメリカのELBでソ連のロケットを1段に使うなどというのは、昔は全く考えなかったわけですが、今でも国防上の問題とかいろいろアメリカで議論があったようですけれども、しかしやっぱり、みんなそっちの方向に行っている、アベイラブルなもの。
 ですから、この前ちょっと先生方に対して、産業化と商業化というのを切り分けるのかという質問をしたことがあるのですが、あくまでもH−IIは日本のガバメントペイロードでいくんだという位置づけで、それを民間でやるということで、すべて100%官需でやるのを産業化というのなら、それは成り立つと思うのですけれども、商業ベースでということになると、大変難しいのではないか。むしろ本当に日本が将来そういう世界のロンチマーケットへ出ていくというのであれば、今、欧米の次世代ロケットみたいに、もう1回スクラッチから、いかに安く経済的なロケットを作るか、すべて国産という考え方てはなくて、アベイラブルなものを集めてきて作るかとか、そういうスタンスでロケットを作っていかないと、商業化というのは非常に難しいのではないか。
 ただ、商業化を追求するだけのマーケットがあるかというと、これまた全然別問題で、商業用の衛星の打上げというのは、過去1年で30機ぐらいしかないわけですから、そこに、何回も申し上げますけれども、デルタは4が出てくる、アトラスは3、5、シーロンチもあれば、アリアンには5があって、プロトンもある、それから長征もあると。そこにまた日本のロケットということになると、世界の打上げマーケットというのは、せいぜい1機100億しても3,000億ぐらいの市場ですから、そんなに商業的にリスクを打って出ていくという魅力のあるマーケットではないのではないかと思います。ですからその辺を総合的に考えて、日本のロケットはどういう方向に持っていくのかということを議論する必要があるのではないかと考えています。
 あとは、また御質問にお答えする格好で。

 井口委員長 

 はい、どうもありがとうございました。
 すみませんが、江名社長さんのバックグラウンドというか、要するにビジネスですか、それとも技術ですか。通信関係なんですか、輸送なんですか。
 私は全然実は存じ上げないものですから、失礼なことを伺いますけれども。

 江名 

 私は、初め三菱商事におりまして、宇宙開発事業団ができたときからずうっとNロケットの、68年、9年から、N1ぐらいまでずうっとやっていましたので、その間の開発経緯とかあれはよく理解しているのですが、今は、宇宙通信という会社で、衛星通信の事業をやっています、通信会社です。ですから、衛星を軌道上に持つために、定期的に衛星を発注し、打上げロケットを発注するという、全くユーザーの立場でございます。

 井口委員長 

 あと、いかがでしょうか。

 川崎委員 

 今の江名社長の御発言はよくわかるのですが、お話しにならなかった部分で、こういうことは考えるかどうかですが、一種のH−IIなりあるいはH−IIAなりを我が国が、今の状態ではなくて、もう少し確固たる安定性の高いものとして持った場合に、いわゆるバーゲニングパワーとしての対外交渉というのでしょうか、そういうような意味でのメリットというのは、全くないのでしょうか。

 江名 

 国としてですか。

 川崎委員 

 国としてなり、あるいはそれから一企業としても、選択にですね。

 江名 

 国としては当然あると思います。ただ、企業としては、全く同等であれば、もちろん国産の方を取りますけれども、結局、パンナムサットとかインテルサットとか、我々の競争相手がいるわけですね。日本にもJSATさんがもちろんいる。その中で、通信が本来で、そこで競争するわけですから、いかに安くインフラを手に入れるかということで、そこにはもう、国産主義とかそういう考えは全くない。もしそんなことをやっていると、本業の方の競争力がなくなってしまいますので、その辺はもう全く世界じゅうのアベイラブルの、一番ベストなものを選択するというのが基本的な立場でございます。

 川崎委員 

 ただ、そういう極論的な議論をすると、そういう観点で言うと、今の日本も、土地代だとか税制だとか人件費といったようなものをもろもろ考えると、既に作っているものを日本の国内産で調達するというのは、どだい無理だという話が全部について言えるのではないですか、特別のものでない限り。要するに日本でしか作れない、例えば木工の漆工芸製品とか、特別なものは別としまして、いわゆるスタンダードな近代的な工業製品というものの大半は、そういう意味では日本は、ある意味で言うと不利だということになりそうですが。自動車という特別にすぐれた製品もありますけれども。

 江名 

 すべて価格競争力だと思います。それが、対応できるかどうかというところにかかっているのではないですか。
 ただ、宇宙の場合はやはり、普通の産業と違って、非常にリスクも高い、コストもかかりますので、商業化というのは、よほど……、諸外国もそうですけれども、例えば政府の一定の発注保証、そういうものをしていただかないと、民間側はなかなか踏み切れない面があると思いますけれども。

 川崎委員 

 いや、それはよくわかります。大体、用途の如何を問わず、官需がアンカーテナントとしてあるベースを保証した上において、いわゆるコマーシャルベースの取引が成り立っているわけでしょうから。アリアンにしろ……。アリアンはちょっと官需ではありませんけれども。

 江名 

 一番理想的な姿というのは、そういうベースで宇宙産業が育っていって、その結果として世界のマーケットに出ていける力をつけていくということだと思います。ただ、ちょっと私が心配したのは、85億でH−IIが打上がれば、世界で売れるという3年前の話が、今度また成功したら、それで売れるんだという理解で進んでいってしまうと、ちょっと問題があるのではないかということで、ユーザーの立場で申し上げたのですけれども。

 井口委員長 

 それは、円単位が200円ぐらいのときですね。

 澤田委員 

 ある時期、もっとコストを半減とは言わないけれども、そういうことをしなければならない。問題は、日本の場合ですと、本当に数が出ない。アンカーテナントがない。それからトラブルが必ずあるわけです。トラブルの後のリカバリーが滅法遅い。そういうようなマイナス面がある。
 それからもう1つ戻ってみると、H−IIロケットの目標というのは、当時の国の方針で、ともかくアメリカから締めつけられていると、だから、純国産品ですね。
 そのときにただ、当時の為替レートでは、十分競争力があるものであったはずです、240円ですから。ところがあの後120円になる。だから高いロケットになってしまう。それでそのときに、もう少し小回りのきく産業でしたら、あるいはそういうものであれば、それに追随するということが可能な産業もあったわけですね。まだ開発の途上であった。したがってでき上がったときには高くなってしまった。
 H−IIAというのは、これはもう完全に国際的にしようというので、日本でできる技術はもうH−IIでできるところは実証されたと。だから、H−IIAでは、同じもの、あるいは同等のものがあったらば、全部日本でやるというのではなく、場合によってはどんどん外国から買いましょう。実際にもうかなりの需要ポイントはそういう方向にもっていったわけですね。
 問題は、開発なり打上げまでにすごく時間がかかって、その間に社会情勢が変わっていく、経済情勢が変わっていく。それに追随していくだけの政策というのですか、あるいは国の体力か、経済の体力か知りませんが、そういうものの変化に追随していくというのはできない。それで、さっき言ったように遅くなってしまうというのがあるんです。それでマイナスのフィードバックみたいになっていると、こう思っています。
 ですから、私は、あの85というのは、3年より前には競争力が非常にあったと思います。今は、それこそそういう意味で、何かバーゲンされるというような、何か特別あれば別ですが、アリアンなんかは特別なものがあるみたいですが、それは日本ではできないから、非常にきついなと思っています。

 江名 

 確かに為替レートは非常に大きな問題で、逆に97年というと100円を切っていて、我々は97年に打上げたロケットというのは、90円ちょっとの為替レートで、今、120円ですから、10円違っても10億円違うというたぐいのあれで、非常に大きいのですね。ただ、為替レートは確かに非常に大きな問題なのですが、今、120円で逆に円安になっているので、その分、競争力があるような格好になるのですけれども、欧米のロケット自身が3年間でドルバリューで下がってきている、そこの環境の変化というのは非常に大きい、プラス、リロンチを含めて安くするというようなことで、非常に競争が激化していると思います。

 澤田委員 

 H−IIAと能力は違いますけれども、小型ロケットというのを計画しているわけですね。ミッションがどうだ、ミッションがあるのかないのかとか、そういう話はもちろんあります。日本から見れば、ミッションは、世界の中では少ないかもしれないけれども、ないわけではない。この場合には完全にアメリカの技術、ロシアの技術、そういうものも活用して、透き間のシェアかもしれないけれども、そういうところなら入っていけるかなと。特に民間がそういうつもりでおれば、民間だと技術的にビジネスプランをやって、打って出るにも、国よりはそういうところ、リスクも覚悟する準備もするということがあります。もちろん先行きは不透明だけれども、そういう流れの方もないわけではないと思っています。
 まあ、H−IIAだけではないのですが、ともかく私もこの前本を書きまして、その後ろに年表を出したのですけれども、日本が圧倒的に打上げの頻度は少ない。昔、外国は結構少なかったのですが、どんどんそのときに増やしました。日本は残念ながら昔、20年前、30年前と同じパターンです。ですから、どうしても少しおいていかれているのかなと、そのように思っております。

 栗木委員 

 きょう、伺いたいと思っていたのは、むしろロケットの値段比較よりは、ペイロード側で、その値段がもっともかどうかということだと思います。ちょうどM1を御担当のころに、私も随分前に、ロケットというのは値段を下げる必要があるのではないかという話は、もう十数年前に聞いた話で、それは、下がらない理由というのを私も聞いたことがあります。それは、1つには、どちらかというと通信、放送、測位が中心でミッションを形成しますと、結局は通信、放送にかかわるいろんな技術というのは日進月歩で、データの圧縮から何から、どんどん進んでいく。それからエレクトロニクス・コンポーネントにしましても、当時その話が出たころのパソコンと今のパソコンでは桁違いに圧縮度が違う。そうなるというと、重量当たりの能力というのは、日進月歩というか、桁違いによくなっていくということになると、衛星もまさにそういったものの集積であると考えると、要するにロンチコストというのはあまり気にならないという話を私は聞かされたのです。そのトレンドがもしずうっと続いていくとしますと、衛星の方の進歩になかなかロケットが追いついていかないということになりますと、いつまでたっても衛星側に出し抜かれてといいますか、値段が気にならない。ということで、新たな市場価値を持つような物流でもない限りは、下げてくれというもっと切実な要望は出ないのではないかなと、そういう気がするのです。当時聞いた話が、グラム当たり大体数千円、ちょうど金の目方ぐらいのものを、宇宙軌道上でプロフィットとして生産すれば、大体ロンチコストに見合うというのが、15年だったか20年ぐらい前の話だったような気がする。ちょうど、環境利用が出始めたころにそういう値段のあれがあったと思います。
 そうすると、ロンチコストに見合うプロフィットというのは、大体今、申し上げたように、通信の世界でも、1機打上げて、それによって生じて提示する利益が、そのロンチコストとどういうバランスにあるのか、それを圧倒するほど、ロンチコストというのは、例えば10分の1ぐらいで済むから、したがって赤字にならないでもうかるというような、そういうユーザー側のバランスシートみたいなものというのはどうなっているのか、ちょっと知りたい。
 それによって、開発側、ロケット側もやっぱりもっと頑張らなければいかんと感じるのか、今まででも結構間に合ってしまうといいますか、そうしないと、その状況が続く限りは、一向にロケット側で安くしようというあれに追いつかない、そういう感じがするのですけれども、どんなものでしょうか。

 江名 

 まだロケット打上げ産業がそこまで成熟してない。割合にそういう意見を言うような状況にないのではないかと思います。ですから、ロケットは幾らだと言われれば、大体衛星が丸めて100億円、ロケットが、最近ちょっと下がっていますけれども、大体丸く言って85億か90億か。それに15%ぐらいの保険料がかかるというのが軌道上のコストになるわけですけれども、そのコストを初めからありきで、それで通信料を幾らにするのかと。

 栗木委員 

 通信料の方が逆に決まるんですね。

 江名 

 結局、総括原価方式的なことを考えると、やっぱりそれがコストであって、では、妥当な数字、料金は幾らだと、こういう発想になっています。
 では、ロケットをたたけば値段が下がるかというと、今はそういうあれではなくて、非常に数少ないサービス会社から、一番ベストなものを選ぶという、ほかにあまり選択肢がない、価格を値切ってどうのこうのというブームがあまりない業界だと僕は思います。

 栗木委員 

 ただ、通信料金に話を絞れば、結局は地上のネットワークに比べて、軌道上のネットワークを使うのは高いということになれば、これはやはり、地上との競争という格好でロンチコストに価格、低コスト化を迫るというロジックに、そうだとすると今度は逆に衛星は要らんということになりかねませんけれども。もし必要であるということが生まれてくれば、そちらの方から逆にロケットのコストが決められる、そういうロジックとも違うんですよ。

 江名 

 むしろ輸送系のコストというのは、もちろん商業化されているのは通信、放送分野の方でありますけれども、やっぱり宇宙ステーションとか、その他ガバメントの何回も行って使うという、再利用できるロケットとか、そういったようなものの方向が一番コストを下げていく方向であって、我々も需要の中で、今、先生がおっしゃられたような理論というのは、あまり当てはまらないのではないかというふうに考えていますけれども。もちろんおっしゃるとおり、ロンチコストが下がれば下がるほど競争力が出るわけですけれども。ロケットコストが高いから地上との競争で今、不況にさらされているというようなことを痛切に感じたことはありません。むしろもっとオーバーオールに、コスト、それを超えて、光が非常に高速大容量化して、ネットも広がっていますので、そういう一般論の中で、衛星の特異性と今後の地上との棲み分けをどうしていくのかという議論は、あるいは検討は、随分しております。その中で、打上げコストが高いからどうのこうのというようなことは、あまり議論になってないと思います。

 五代委員 

 今、通信衛星の世界、アメリカなんかで、1つの衛星でトラポンが実稼働されているというか、商売として使われている率というのは大体何%ぐらいというふうに見ればよろしいのでしょうか。

 江名 

 これが非常に難しいですね。昔のようにアナログの時代ですと、1つの映像部分にトランスポンダーを1本フルに使ってくれる時代があったものですから、非常にカウントしやすかったのです。ですが、今、デジタル化で、帯域をみんな共有して使いますので、1つのトランスポンダーに3社が少しずつ入っている。そうすると、お客が乗っているという意味では、回っているということになるのですが、帯域がすごくあいているということになりますので、それをどういうふうにカウントするのかという問題があるのです。ですから、稼働率という計算が、非常に今、難しいのです。
 ただ、例えば今、JSATがやっているスカイパーフェクトテレビ、こういうお客さんは、フルフラットに使ってやりますので、これは非常にカウントしやすいのですけれども、デジタル化が進んでからは、1つのトランスポンダーに非常に小帯域のお客様がいっぱい乗っておられるということが多くなっております。

 五代委員 

 反対に、そこにもう少し小さい、少ししか使わない人をぼんぼん詰め込もうと思ったら詰め込めるという状況なのか、それだけのトラポンは確保しておかなければならないと、実際稼働はどうでも、というような規約上の問題というのがあるのでしょうか。

 江名 

 ある程度の制限がありますが、我々としては、干渉を起こさないで使えるものはなるべく詰めていきたいという。ただ、今、やっぱりキャパの方が多いですから、ものすごく混んでくれば、もっと詰めるのでしょうけれども、そういう意味では、残念ながらまだ余裕がありますので、そう無理しないで。

 五代委員 

 大体世界的に眺めてみて、アメリカなんかのマーケットを見ても、余裕は、昔の状況だと50%、60%待っていればいい方だという話もあったのですが、最近は、そんな状況でもないわけですか。

 江名 

 ちょっとアメリカのオペレーターでも違うだろうと思います。

 五代委員 

 なるほど。

 井口委員長 

 1つ、輸送系ではなくて、通信衛星について伺いたいのですけれども、澤田委員などは、通信、放送というのはマーケットがある程度ある、問題は日本の通信衛星には国際競争力がないとおっしゃる。少ない予算で、国際競争力をつけるには、何をやったらいいですか、日本の場合。

 江名 

 衛星通信サービスという。

 井口委員長 

 レベルがね。ハードウエアも、それからサービスもあるのかもしれませんけれども。
 つまり何から何までやってくれと言っても、そんな予算があるはずがないので、これから通信、放送という分野で、日本の国際競争力を高めるには、最も効率のいい投資のポイントとかやり方というのは、何でしょうか。

 江名 

 おっしゃっているのは、サービス業での競争力という、通信業、あるいは放送業という……。

 井口委員長 

 何でもいいです。それのどこでも結構ですから、得意なところで、何をやったらいいのでしょうか。

 江名 

 それは、新しい技術の衛星云々という話になれば別だと思いますが、今の通信サービスとか、そういう中で申し上げますと、国際競争力が我々はないというふうには考えておりません。それはなぜかといいますと、私どもJSATさんとうちが立上がったころは、衛星通信というのは、国内しかやってはだめですよという規制があったのですね。ですから、我々の初めのフリートは全部、ビームをわざわざ日本だけに絞ってやっていた。ちょうど5年ぐらい前に規制緩和で、出ていってもいいけれども、向こうも入ってきますよと、こういう規制緩和が起きた。それ以降に打ち上げる衛星は、軌道権益があれば、もちろんそういうものを積んで商売になればあれしますけれども、ビーム的にアジア地域を照らす衛星がぼつぼつ出てきているけれども、そういう後発的な意味で出遅れているということがありますけれども、競争力という点では、そんなに差があるとは思っておりません。なぜかといいますと、世界のオペレーターが全部、さっきの話で、衛星は例えばロラールとかヒューズとかの衛星を買いますし、ロケットだったらアリアンを買うと言って、地上設備も保険も大体同じでから、各社が軌道上へ上げるときは、みんな同じような簿価になっているわけですね。ですからそこで大きな差があるとは思えない。あとはオペレーションコストとか、持っている軌道権益ですね、こういったものでどこの地域にサービスするかという問題になるわけですけれども、ですからサービスという点では放送は特に、もっと、これは逆に電波が表へ出ていくと、文化侵害とかいろんな問題があるわけですから、国内に限っての中でやっていますから、そういうサービスの中では、国際競争力という面はあまり当てはまらないのではないかと思います。

 井口委員長 

 ハードウエアといいましょうか。衛星本体そのものということになりますかね。日本で調達できない、ロラールからは、日本からなぜ買えないか。やっぱり高いからですね。

 江名 

 衛星の方は、ロケットよりはもっと商業化に近いところにいるのではないかと考えていますけれども。それは1つには、ロケットの場合は、前にちょっと申し上げたことがあるのですが、アメリカの場合は、もともと戦略ミサイルのソー、デルタ、アトラスというそれぞれ三者が、ジェネラルダイナミックスとか、当時のダグラスとかおりまして、それが、液体ロケットの戦略ミサイルなんかとうまく組んで、ユニットが固体に変わったときに、残った液体ロケットのミサイルを宇宙ロケットに切り換えていったというあれがある。各社みんな戦略ミサイルのプライムがいたわけです。だから、68年の交換公文で日本がソー、総デルタの技術まで導入するということで、N0を作ったときも、それのプライムはアメリカ、当時のダグラスでしたから、ダグラス1社で全部やってきたということで、その延長線上で今、アトラスが今でもやっています。ダグラス、今はボーイングになっていますけれども、会社単位でやっていますね。
 それに比べて日本は、ロケットが1個しかなかったから、各社が相乗りしていて、なかなかプライム的に動くということはできない。それがまた、商業化をさらに難しくしている1つの面があると思うのですが。だけど衛星は例えばGMS、CS、BSになったときに、東芝さん、日電さん、三菱電機さんと、1つずつとって、ロケットに比べれば、どちらかというとプライムコントラクター的なファンクションで来ています。
 だから衛星の方がもっと産業化、商業化という面では、ロケットよりは、はるかに近いところにいるのではないかと思います。さっき私が申し上げたのは、あくまでロケットの方のことを申し上げたのです。

 井口委員長 

 ほかにいかがでしょうか。
 もしなければ、この辺で終わりたいと思いますけれども。どうもきょうはわざわざおいでいただきまして、ありがとうございました。
 それでは、その他に移らせていただきます。
 その他は、前回の議事要旨の確認だけです。後ほど御確認くださいますようにお願いいたします。
 それでは、第42回の宇宙開発委員会を閉会にいたします。ありがとうございました。

── 了 ──



(研究開発局宇宙政策課)

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