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宇宙開発委員会

2001/11/07 議事録
第41回宇宙開発委員会議事録

第41回宇宙開発委員会

1. 日時 平成13年11月7日(水)14:00〜16:00

2. 場所 宇宙開発委員会会議室(文部科学省別館11階)

3. 議題  
  (1) 「ロケットによる人工衛星党の打上げに係る安全評価基準」の改訂について
  (2) 月周衛星(SELENE)へのカメラ搭載及び搭載提案公募について
  (3) 「我が国の宇宙開発利用の在り方」について
  (4) その他

4. 資料  
  委41−1 「ロケットによる人工衛星の打上げに係る安全評価基準」の改訂について(案)
  委41−2−1 月周衛星(SELENE)へのカメラ搭載及び搭載提案公募について
  委41−2−2 SELENE搭載カメラの募集について
  委41−3−1 科学技術政策の今後
  委41−3−2 「宇宙輸送系への対応」
  委41−4−1 宇宙開発の現状と報告(平成13年10月31日〜11月6日)
  委41−4−2 第40回宇宙開発委員会議事要旨(案)

5. 出席者  
  宇宙開発委員委員長 井口  雅一
  宇宙開発委員 川崎  雅弘
  宇宙開発委員 栗木   恭一
  宇宙開発委員 澤田   茂生
  宇宙開発委員 五代   富文
  文部科学省研究開発局長 今村   努
  文部科学省研究開発局宇宙政策課長 芝田   政之

6.議事内容

 井口委員長 

 澤田委員は、ちょっと遅れるということですので、始めさせていただきます。第41回の宇宙開発委員会を開催いたします。
 今日は、このところ続けております「我が国の宇宙開発利用の在り方」について御議論いただきますが、その前に2件、議題がございます。最初は、安全部会にお願いいたしました「ロケットによる人工衛星等の打上げに係る安全評価基準の改訂」につきまして、栗木先生から御説明をお願いいたします。

 栗木委員 

 宇宙開発委員会の安全部会としましては、委員会の方から調査委託の付託を受けまして、ロケットによる人工衛星等の打上げに係る安全評価基準(以下、安全評価基準)の改訂について審議を行ってきましたが、部会としての結論を取りまとめましたので、以下のように御報告申し上げたいと思います。
 この基準は、本部会としては、ロケットの開発・打上げに関して、技術的な進歩を踏まえまして、継続的な見直しを行っているところでございます。今回の改訂箇所は、記の下の方に書いて、後ほど御紹介いたしますが、2項目について改訂を行いました。
 前回までの、この評価基準は平成12年12月に策定されたものでございます。今回の審議の足取りは、その2項目めに書きましたように、10月11日の部会でもって、これを御審議いただき、その結果をインターネット、宇宙開発委員会のホームページに載せまして、意見募集を行ってまいりました。特段の意見はございませんで、再度、第4回の部会にかけまして、再度ここで御意見をいただいて、最終版を得ました。この内容について御報告いたします。
 その内容の概要・論点は2つございまして、1つは保安及び防御対策についての追加ということで、ロケットの打上げに際して、意図的に行われる破壊・妨害行為に対して対策を講じること。それからもう一つは、飛行中断の基準につきまして、用語がはっきりしないという箇所がございまして、その下に書きましたように「破壊限界線」という言葉を「落下限界線」ということに訂正いたしまして、その定義をより明確にしたというのが、この2つの内容でございます。
 その中身でございますが、本文の方に、どのように、それが表現されているかというところを御覧いただきたいと思いますが、1ページのIIの「保安及び防御対策」というところでございます。セキュリティーにかかわることでございますので、むしろ詳しく書き過ぎるとセキュリティーの中身も失われるというところもあって、なかなか、ここの表現は難しいところでございますが、そのアンダーラインを引きましたように、「ロケットによる打上げに際し、その整備作業段階から打上げ目的が達成されるまでの間」、これは、一応、射場にロケット並びに打上げられるペイロードが持ち込まれた後の作業を、この安全基準でもって、評価基準で規定しておりますので、その区間を区切っております。もちろん事前に発生するものもございますが、これは契約者が、その調達の段階で行われるということで、その方に規定されるという了解でございます。「ある意図または結果として破壊・妨害公開のおそれがある場合、適切な対策を講ずること」。このような比較的簡素な表現にいたしております。この詳細は、むしろ実施体制あるいは実施機関において手を打っていただくということで、そこに含みを持たせております。
 これが第1件目でございます。2件目が、7ページ、これに対応します図が、更に後ろの方にまいりまして、添付の図がございまして、14ページに図1というのがございますこれの両方を見ながら御説明申し上げますと、7ページのところには、やはりアンダーラインが引いてある箇所でございますが、「飛行中断」というところで、アの項を読みますと、「安全確保のために設定するロケットの飛行を中断した場合に危害を及ぼしてはならない限度を示す線(落下限界線)の設定」ということで、従来、「破壊限界線」という言葉を使っておったんですが、この方が定義がはっきりするということで、これを採用しました。その下の方で、たびたび同じ言葉が繰り返し出てきますので、一つ読みますと、「1)ロケット及びその破片の落下予測域が落下限界線を越えるとき」に飛行中断を行う。そのほか、「ロケットの監視が不可能になり」云々、それから「ロケットの飛行中断機能が喪失する可能性が生じ」たとき。いずれも、そのアンダーラインが引いてございますように、その破片の落下予測域が落下限界線を越えるときに、飛行中断を行うと。
 中身はこの図1を御覧になっていただきますと、これは前になかった絵でございますがこれは新しく添付いたしました。飛行経路がノミナルと書いてあるのが、仮に陸地とかかわらずに飛んでいた。これが何か故障があって、このノミナル飛行経路を外れたとしたときに、これが陸地に向かっているというような事態が生じましたときに、陸地にあらかじめ、陸に沿って設けられました落下限界線、これに落下予測域が触れると予測された場合には飛行を中断をすると。飛行の中断の中身は、エンジンを止める。それから、指令破壊を行う。両方がございます。エンジンを止めた場合でも、空力的な効果を持って、ある分散が考えられる。それから、指令破壊を行ったときは、その破片等が分散し、なおかつ、それが空力的な効果で広がりを持つ。その最大広がりが、落下予測域で示されておりますそれの最先端部が落下限界線に触れるという予測値が出た場合に、これが指令破壊あるいはエンジン中断ということが行われるというのが、この規定になっております。
 ということで、一応、図と言葉の定義をより明らかにしたということで、今回の改訂を行ったわけでございます。
 以上が本文の方の説明で、この内容をもちまして、今回の改訂の審議を終わりましたので、御審議をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 井口委員長 

 ありがとうございます。今週の月曜日でしたっけ。安全部会で決定されたものでございますが、いかがでしょうか。何か御質問・御意見はございますでしょうか。
 澤田委員は、その席に出ておられなかったんで、何かもしありましたら。

 澤田委員 

 いいえ、結構です。

 井口委員長 

 それでは、宇宙開発委員会で了承ということにいたしたいと思います
ありがとうございました。
 次に「月周回衛星(SELENE)へのカメラ搭載及び搭載提案公募について」、宇宙科学研究所の加藤教授と宇宙開発事業団のSELENEプロジェクトマネージャーの長島さんに御説明をお願いいたします。

 加藤 

 御説明いたします。SELENEは宇宙研とNASDAの共同プロジェクトですので、私の方から御説明いたします。
 SELENEは実は平成10年4月に宇宙開発委員会で開発が了解されまして、基本設計が13年3月に終わりまして、現在、詳細設計を実施中ですが、実は平成12年7月に、NHKより、ハイビジョンカメラをSELENEに搭載してくれないかという申入れがありました。それ以降、NHKが独自技術で技術的なフィジビリティースタディーを実施してきました平成13年4月ですけれども、SELENEの共同プロジェクトのチームの中で、このNHKのスタディー結果を評価しまして、何とか搭載は可能であろうと判断いたしました。しかし搭載機会の公平性を持つために、NHKの提案を含めまして、搭載提案を公募(AO)して、最終的にカメラを選定することとしようとしました。
 それで、平成13年5月には、宇宙研の理学委員会で、動画を写すカメラの搭載については了解されました。ただ、NASDA側はちょっと遅れまして、打上げ等いろいろございましたので、昨日、NASDAの理事会にて、カメラを搭載すること、あるいはAOを発出することについては了解を得られました。
 NHK提案のハイビジョンカメラの概要を御説明しますけれども、いわゆるカメラ部と電子装置部を一体化した、こういう格好になっております。カメラは2台くっつけてございまして、カメラは200万画素のCCDが入っております。それから電子装置部については、1分間の−−これはいわゆる月面から地球が出るアースライズを写すというのがメーンの目的ですので、約1分間ぐらいです。それの動画、これは2ギガバイトぐらいありますけれども、これを処理・記憶して、データ処理系へ転送するようになっております。諸元ですけれども、全体として非常に集積度がものすごく高くて、全体で約16.5キロという非常に軽量なものになっております。電力としましては、動画取得時に約50ワット。サイズとしては、この図にありますように、460×420×280という非常に小さなものになっております。
 これはもしSELENEにくっつけた場合の場所なんですけれども、下側が月面になっておりまして、そこにハイビジョンカメラを、SELENEの表側にくっつけるということで、非常にインターフェースをクリーンにした格好でくっつけるという格好になります。
 我々プロジェクトチームの中で、搭載の意義について議論しまして、一番大きな意味としては、広報的な意義があるんではないかということです。月面から「地球の出」の動画これは世界でも最初になります。もし、これがあれば。それで、月探査及びSELENEプロジェクトの普及啓発、あるいは広く言いまして宇宙開発と科学技術への国民の関心を起こすんではないかということです。それから、広報的な意義の背景としまして、昨年12年12月に、宇宙開発委員会で制定されました中長期戦略の中にも、国民に、こういう普及啓発ということが必要ではないかということがございました。それから実は、SELENEにつきましては、開発研究フェーズへ移行するときに、宇宙開発委員会から、いわゆる月探査についての広報的な意味で、もっと広めるようにということを勧告されておりましたので、そういうことにも合致するんではないかと思っております。そのほかに、これは将来の月利用の可能性の調査にも貢献するし、あるいは非常に集積度が高いということもございますので、そういうことの宇宙実証、民生品の宇宙実証ということにもつながるんではないかと思っております。
 NHK提案のハイビジョンカメラをもしSELENEに搭載した場合の影響を調べまして、技術的な実現性としては、実は非常に集積度が高くて、使っている部品類は、ほとんどがいわゆる地上のものです。そういうことなので、宇宙用部品を使うというわけにはいきませんから、保証される運用時間、SELENEは約1年間のミッション運用ですけれども、何とかそれには持ちそうですけれども、若干制約はあるかもしれませんけれども、技術的には、広報用に十分使えると我々は見込んでおります。それから、非常にインターフェースをクリーンカットにしておりますので、搭載は可能であろうと。スケジュール的にも、現在、SELENEは17年度打上げということになっておりますので、これにも何とか間に合うでしょうと。実は大きな問題として資金面ですけれども、実はNHK等が搭載にかかわる追加の費用についてはすべて、カメラ提供者が負担するということを前提に話を進めております。そこら辺についても、SELENEへの影響を与えないだろうと思います。
 NHKのカメラが搭載できるということがわかりましたけれども、やはり搭載の機会の公平性ということを確保するために、AOを発出したいと思っております。その基準としましては、選定基準といたしましては、NHKの提案と同等以上の搭載機器の提案というものを公募したいと思っております。応募の資格としましては、放送事業者を対象としたいと思っています。これは広報的な意義を満たすためには、こういうものを広く放送できる能力のあるところでないとあれですから、一応、放送事業者と限定したいと思っています。それで、NHK以外からもし応募があった場合には、宇宙研とNASDAで、仮称ですけれども、搭載カメラ評価委員会というものを設置して、そこで判定したいと思っています。
 もし選定された場合、実施の形態ですけれども、宇宙研とNASDAと提案機関、ここはわかりませんけれども、その3者で協定を締結します。それから、非常に大きな問題として、取得したカメラの取得映像の取り扱いについても、覚書を3者で取り交わしたいと思っております。
 今後の進め方ですけれども、本日の報告の後、AOを発出したいと思います。NHKと民放連等に通知をいたします。それから約1ケ月間待ちまして、AO締切りをいたしますその後、応募があった場合は、選定委員会を開催して、例えばNASDAの理事会とか、宇宙開発委員会等に御報告したいと思います。ただ、応募がNHK以外にない場合は、締切りの段階でNHKの提案を選定したいと思っております。
 それでもう一つ、お手元に、「SELENE搭載カメラの募集について」というのがございます。これは御参考にお読みいただければと思っております。
 以上で説明を終わります。

 井口委員長 

 ありがとうございます。御質問・御意見をいただきます。

 栗木委員 

 これは、宇宙ステーションのハイビジョンカメラと同じようなものですか。

 加藤 

 あれよりも、更にレベルが進んでいます。

 井口委員長 

 もちろん画像はテレメトリーで送るのでしょうか。

 加藤 

 はい。

 井口委員長 

 いつでも撮れるんですか。

 加藤 

 やはりすごい量なんで、大体30分。1分間、衛星でためたものを約30分ぐらいの時間をかけて下へ持って来ます。それで、ほかのミッション機器も14個ありますので、そういうことで中でうまく運用してやると。なるべく撮影は初期にやってしまいたいと思っております。

 川崎委員 

 全体のSELENEの電源容量はどれぐらいなんですか。

 加藤 

 それは数キロワットありますから、十分あれすると思います。

 川崎委員 

 そうすると、すべてのセンサーが、この映像装置とともに稼働するということですか。

 加藤 

 これをやっているときは、ほかのものが動いているかといったら、ちょっとあれなんですけれども、少なくとも50ワットぐらいは、これは50ワットですが、全く問題がないと。

 五代委員 

 これはズームはあるんですか。

 長島 

 ありません。2つカメラがありますので、それはワイドとテレと2つつけるということになっていますが、稼働部があると、やはりなかなか難しいことがあるものですから。

 五代委員 

 それから、対象に対しては、姿勢制御の方でねらうわけですね。

 長島 

 そうです。今のところ、ちょっと見積もった段階ですが、多分、テレビの画像の中に、地球が3分の1ぐらい入ると。それぐらいの画角になっています。

 栗木委員 

 SELENE本体をオビットしているわけですけれども、出てくるときに動画という感じの地球画像が出てくるスピードと自分が動いているスピードとで、どんなぐあいに見えるんでしょうか。結局はコマ撮りのような感じになってしまうとか。

 加藤 

 1分間にグーンと地球が上がってくる。こういう感じになります。

 栗木委員 

 そんな感じになるんですか。

 加藤 

 はい。大体撮像時間が1分間ですから。

 栗木委員 

 そうすると、かなりダイナミックになると。

 加藤 

 だから、ハイビジョンで、意味があると思います。

 川崎委員 

 SELENE衛星本体の振動は無視できるんですかね。結果として映像上からは。

 長島 

 それはもちろん大丈夫なんですけれども。画像処理の方で、そういうのはものすごくお得意らしくて、任せてくださいと言ってました。

 澤田委員 

 こういうカメラはNHK以外のところで、実際に持っているところというのはあるんですか。

 加藤 

 AOを出しますけれども、これほど高集積度のハイビジョンカメラというのは、私の聞いている範囲では、世界でもここ、NHKだけだと聞いています。

 川崎委員 

 この件について、事前に民放連とかその他には少しお話をされたりはしているんですか。AOという形ではなくて。

 加藤 

 事務局の方に、事務局長の方に、ちょっと内々にお話をしています。それで実は来週の月曜日、この話をしようとは思っている予定でおりますけれども、こういうことでAOを出すことはいいでしょうと。

 川崎委員 

 ただ、技術的に詰まった段階ですから、それについて変なむくれ方でもされたら、逆効果になるかなと。事前に大人の世界でやるわけですね。

 加藤 

 まあ、何とか、そこら辺は……。ただ、取得した映像については、特に報道用にはオープンだということが前提になっていますから。

 川崎委員 

 それはNHK以外の社でも同じということですか。

 加藤 

 そうです。ですから、全部オープンにしようということを前提として、NHKさんとは話をしています。

 井口委員長 

 よろしゅうございますか。それでは、お進めくださるようにお願いいたします。どうもありがとうございました。
 次に、我が国の宇宙開発利用のあり方について、議論をいたしたいと思います。
 今日は宇宙開発政策を考える上で、いろいろ御示唆をいただこうと思いまして、東京工業大学名誉教授の市川先生にお出でいただきました。短い時間で恐縮ですが、最初に15分ぐらい、科学技術政策の今後につきまして、先生のお話を承り、あと質問の時間を取らせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 市川 

 それでは、私が持っております仮説のようなものを申し上げたいと思います。ここには科学技術政策の大権威がいらっしゃいますので、その前で、大変、試験を受けるような感じでお恥ずかしいんですけれども、一とおり、お話をさせていただきます。したがって、かなりエレメンタリーなところから始めますので、お許しをいただきたいと思います。
 今お見せしております、この図でございますけれども、これは科学の方法として非常に有名なものです。これが実証のループであり、こちらが仮説形成のループということになっております。ところが、これは科学の方法というのは全くの偽りでございまして、一般的に経験知を獲得する方法なんですね。科学に固有ものではありません。例えば私が佐藤さんというのは非常に信頼を置ける人だというモデルを持っているとしますと、彼に、かくかくしかじかの仕事を頼めば、うまくやってくれるだろうと。うまくやってくれたら、やはり、そのモデルは強化されるわけですし、うまくやらないときには、あれ、どうしたんだろう? と。彼は何か心配事があったんだと。じゃ、そういうときは……として、モデルが修正されるという、ごく普通の、いわゆる経験を通じて獲得する経験知の方法なわけです。
 そういたしますと、私の佐藤さんモデルと、いわゆるサイエンスにおけます方法とは、一体どこが違うかといいますと、サイエンスの場合には、このループを任意の観測系について回すと。すなわち、いつ、だれが、どこで、どのような方法を使ってやっても、その間に矛盾があれば、そのいずれかが否定されるという形になるわけであります。ですからこういうことが可能であるということは、実は知を形成しようとする対象に矛盾が存在しないと。すなわち対象は無矛盾な存在であるということを前提としているわけであります
これは信仰として、信じ込んでいるわけです。裏返して言えば、対象は、そういうものであるとして、じゃ、どれだけ、その無矛盾が知を作り上げられるかと。それを試みているわけでございます。
 ここで無矛盾と言いますと、例えば量子論なんかは、最近、矛盾を認めているという言い方をなさる方がいるんですが、矛盾を認めたら、量子論が出てこなかったんですね。波であると。ああ、そうだろうと。粒子であると。それもそうだろうと。で、矛盾を認めておしまいですから、それがおかしいよということで一段上がるところに量子論が出てくるわけであります。ですから、要するに矛盾を含まない説明の体系を作り上げていこうとする努力、整合的な知を求めようとする努力があるわけです。
 もう一つ、制約がございまして、科学の場合には、このモデルでございますが、これは過程論的な知である。すなわち、ある現象は、どういうプロセスによって起こるかということを議論する。決して、ある現象は何のために起こるかということは言わないと。目的論はとらないということになります。目的論をとりますと、順番に上位の目的へ行っちゃいまして、最後は神様に行っちゃって、議論がそれ以上できなくなるものですから、必ず過程論を求めるということであります。
 そういたしますと、先ほど言いましたような、その中に矛盾を含まないで、過程論的な経験知というものが覆っている知の象限はどれだけあるかということになりますと、まずもし我々が矛盾を否定している社会に住んでいるといたしますと、矛盾を否定しているこの社会でございますから、経験知で過程論の知という4分の1象限。質的には4分の1象限の世界に住んでいるわけでございます。矛盾している社会というのは、どんな社会かというのは言うまでもないんですが、法治国家、法治社会というものを前提としたら、それは矛盾否定社会でございます。法には矛盾の存在が許されないわけですね。
 したがいまして、通常の法治国家というのは、矛盾を否定して初めて成立するわけでございますが、なかなかそうもいかない社会がございまして、矛盾の存在を容認する社会がございます。そういう社会におきましては、今度は無矛盾の世界だけを対象とすることでありますから、8分の1象限の知ということになるわけでございます。矛盾容認社会で、かつ法治社会・法治国家は一体どうしているかというと、実に巧みに法の整合性・無矛盾性と現実の矛盾の存在を調和させているわけです。どうするかというと、法の運用を文章どおりやらないという形で処理するわけです。まあ、それはどうでもいいんですが。
 そういたしますと、私はシステム屋なものですから、こういう余計な言葉を使わせていただきますが、進化システムを形成していることになるわけでございます。進化システムと申しますのは、御覧のように遺伝形と表現形があって、遺伝形側で、恒常性を維持して遺伝形と表現形というのは1対1の対応があって、表現形が生まれると。2番目といたしまして、この遺伝形というのは、何らかの意味のシステム構造を持っている。DNAであれば、二重らせん構造を持っているわけでございまして、そのシステム構造と形質とかが対応するという形になっている。かつ、そのシステム構造が変異する可能性がある。当然そのシステムのエレメントである、この場合は遺伝子の変異を起こす。それは結局、表現形で見れば、形質の変異を起こすと。4番目といたしまして、そうして生まれたいろいろな変異体の中で、互いに表現形の発生の頻度、すなわち遺伝形から表現形が生まれてくる速度、頻度に関しての相互作用が存在する。で、5番目といたしまして、それ全体を支えるリソースがある。この5つの要件を満たしているものは進化をいたします。
 進化システムの特徴というのは、当然のことながら、目的を持たない。過程だけを持っているわけです。結果として起こります。すなわち相互作用の結果として、どちらかが勝ったり負けたりするということでございます。それから、環境・部分の変化に対して頑健である。それから、非常に大きな変化を起こす分岐と徐々に改善する漸進的進化、これを繰り返すことになります。それから、一部分が相互作用による抑制から外れると、爆発をするということがあります。それから、非常に重要な、これからの論点になりますのは、2つ以上の進化システムの間に相互作用があると、実は1つになってしまいます。それをいわゆるコエボリューション(共進化)と呼ぶわけでございます。
 で、申し上げるまでもなく、科学というのは、進化システムを作っております。まず、モデルというのが遺伝形です。それからの推論結果が表現形として予測という形でございます。変異は、その予測が実態と合わないときに、モデルが変わるという形で起こります
それで、変異したモデルの間に競争があります。すなわち、推論結果のどちらが、より観測と一致するかということ。それから、世の中からの資源投入と。
 ということで、科学は、申すまでもございませんが、実は科学それ自体には目的はないんです。先ほどのループが回るという過程だけが存在して、知が獲得されていくわけでございます。念のため申しますが、科学者は目的を持っておっても結構です。それで金をもうけたいといっても、名を上げようと思っても、あるいは、崇高なる人類の知を増やすことだけを意図しているとおっしゃっても結構ですが、科学それ自体にはない。それから、結果として起きる。新しい分野の発生・改善研究等々があるわけでございます。
 技術も全く同じでございまして、システム技術というのは2つの言い方があるんでございますが、要素技術を含んだ人工システム全体を作り上げる技術。例えば橋を作るとすれば、橋梁工学みたいなものがシステム技術だと考えているんです。それの表現形が人工システム。技術改善で変異をいたしまして、それは人工システムの、いわゆる進歩というものであります。進歩と進化は全然意味が違いまして、進化の方向に何らかの目的性を外からつけた場合に、それが進歩と言われたり、退歩と言われたりするわけでございます。それから、遺伝形の淘汰。すなわち、作られた人工システムが、世の中に受け入れられるかどうかでもって決まる。で、経済システムからの資源投入があるということになってまいります。で、技術という知は進化システムと。としますと、当然、科学と共進化して、科学技術になるわけでございます。そういう意味で、「科学技術」という言葉の方が表現として適切でございまして、「科学・技術」とか、「科学/技術」とか、「科学&技術」よりは、この言葉の方が適切であると私は考えます。
 そういたしますと、科学と技術の関連はどうなるかと言いますと、結局あるのは、整合的な過程論的な経験知を求めようという営み全体があるだけだと。それを仮に、わかるという平面に投影をいたしますと、それが科学の成果と呼ばれるもの。できるという平面に投影いたしますと技術と呼ばれるものになるわけです。典型的な例を申しますと、例えばイギリスのロスリン研究所のウィルムット博士のドリー。あの営みは何だったんでしょうか。あれは科学の営みでしょうか。技術の営みでしょうか。結果を見ますと、生体の成熟した体細胞の核の中にある遺伝子が全能性を保持しており、かつ、それを回復できるという20世紀初頭からの科学の問題を解決した科学の成果と。しかし同時にお金を出してくれたPPLテラピューティクス社が、ホルモン製造のための均質な動物工場を作りたいと。それを実現する技術でもあるわけです。ですから、投影したときに初めて科学とか技術が出てくるんであって、営みそれ自体を、これを科学の営みであるとか、これは技術であるかとかというふうに区別することは、今やナンセンスになっている。もちろん、この投影面積の大小がある。こちら側が非常に大きい場合は、これを仮に科学の営みと呼んでもいいでしょうし、こちらが非常に小さくて、こちらが大きいときは、技術の営みと呼んでもいいかもしれませんが、本質として、そういうものだという前提で議論するということです。
 科学技術だけではございませんでして、いわゆる文明を構成している要素として、行動様式とか、例えばインダストリーが乗っかっている市場経済とか、更には安全保障と。この世界を見ますと、対応するものを書き出してみるとわかりますが、ことごとく、これはそれぞれ進化システムである。かつ、これらの間に相互作用がございます。行動様式としては市場での選択があり、安全保障では競争があるという形で。これが科学技術と共進化いたしまして、結局、できたものは何かといいますと、現在、科学技術文明と言われているものでして、科学技術と行動様式と市場経済、安全保障と共進化しているシステムというのが、我々が今住んでいる科学技術文明という文明形態なわけです。文明というのは、ある種の普遍性を持ってなきゃいけないわけですが、科学技術文明の普遍性は、科学技術によって支えられています。キリスト教文明の普遍性はキリスト教によって支えられているのと同じように、科学技術文明の普遍性というのは科学技術によって支えられているということになるわけです。
 結局、生態的な言い方をいたしますと、科学技術文明というのは、ヒトの拡大された表現形であると。ですから、ヒトそれ自体は、ヒトの個体は、ヒトという種の表現形であると同時に、その外側に科学技術文明という拡大された表現形を持っているわけです。こういう構造になるわけです。
 そういたしますと、その科学技術文明社会におきます科学技術というのは、もはや分離不可能なんですね。ちょっと余りいい絵じゃないんですけれども、白を科学技術、ちょっと色の濃い方が、それ以外のと言ってもいいんですが、要するに、渾然一体となってしまって、今や、科学技術の営みなのか、あるいは安全保障の営みのか、行動様式の変化なのか、そういうものを一々区別して議論することが意味がなくなってきているわけです。したがいまして、こういう科学技術社会という全体を、どちらかから光を当てますと、それぞれ、こういう姿が見えてくるわけです。例えば、これは、この営みから光を当てて、安全保障という世界になるかもしれませんし、これは産業というものになるかもしれませんし、これは社会の維持・保全ということになるのかもしれませんし、そういうふうに投影して初めて何らかの目的が見えてくると。そういう営みの総体として、科学技術文明社会というものがあるだろうと。
 あえて科学技術の寄与によって分類いたしますと、自律科学。これまで純正科学と呼ばれたものでございますけれども、Science for extending science とか、あるいはScience for scientists, -sをつけると怒られるかもしれませんが。それから、よく言われますScience for industry、あるいはScience for producing wealth。更には、個体維持科学技術、Science for sustaining individuals。それから、Science for sustaining society と。それぞれ皆さん、イメージというか、何がこれに落ちてくるかということは御理解をいただけると思います。
 こうなったときに、じゃ、科学技術政策と一体何だろうかということを考えてみますとこれは明らかに米国の例を取ると、急展開をいたしております。
 戦後のところだけ言いますと……まあ、戦前には、実は科学技術政策というものは存在しなかったんで、戦後から言いますと、47年に、バネバー・ブッシュの有名なScience;Endless Frontierと。一言で言えば、戦争中、科学者に金が入ったそのメカニズムというものを、どのようにして戦後も保存するかと。そういう手だてが確立したわけです。科学技術政策というのは何かというと、科学技術活動へ資源を投入する政策であったわけですこのときには、いわゆるリニアモデル。基礎があり、応用があって、開発があると。これが前提となって、したがって、基礎にもお金を入れなきゃいかんという言い方で出てきたわけです。日本では、ちょうどこのころ、科学技術庁もできて、推進をしていた。ところが、ここで経済摩擦が起こりました。要するに、米国は産業技術において敗退を始めたわけです。これは大変なことでして、日本へは基礎研究ただ乗り論というのを突きつけると同時に、みずから大変に研究を始めました。クリントン大統領になりまして、Science in national interestという有名なものを御存じだと思いますが。それから、National Critical Technogy というような概念が出てきたわけです。結局、このレベルにおけるPolicy for Scienceから、Science for Policyに転換する。要するに、科学技術文明の総体をサイエンスという光を当てて、一体どういうふうに見えるかということを見ていこうということになったわけでございます。
 で、日本の場合は、基礎研究ただ乗り論があって、答申第11号で大転換−−と言ってはいけないんですが、基礎研究は大事であるぞよということで急遽振ったわけでして、84年に実は、米国で言えば、ブッシュのポリシーに乗りかえたと言っていいと思います。で、申しわけない文章ですが、ぶんどり合戦がありまして、ぶんどり合戦のメンバーの1つとして、文部省とか科学技術庁があったと。そういう姿でございます。
 結果として、摩擦が解消されてしまいました。結果としてと言ってはいけないんですがまあ……。で、現在、どうなっているかというと、かつてはOSTPとNRCだけだったんですね。そこに1993年に、Natinal Science and Technology CouncilとPresident Comittee Advisors on Science and Technology ができた。これは何かと言いますと、先ほどの私流の言葉で言えば、科学技術を取り込んだ科学技術文明に光を当てると、そこにおける新しく導入しようとしている科学技術システムというものが、どういう意味を持ってくるかということが見える。そういうことで、PCASTなんかも典型的ですけれどもいろいろな分野の人を取り込んで、大統領にアドバイスしているという格好でございますこういう形に変わりました。
 日本は非常におもしろくて、こういう流れでもって変わったというよりは、何か行革という流れがポーンと飛び込んできまして、総合科学技術会議になりました。実は、私も隅っこの隅っこのまた隅っこにいるんでございますけれども、環境研究については、少し、このやり方を考えてみたらどうかということで検討中でございます。ということで、ここでは、私のかつてのマネージメントの対象だった環境研究の例を申し上げます。
 先ほどのNSTCでございます。これが下に5つ、コミッティーがございます。環境と天然資源、それから国際科学エンジニアリングとテクノロジー。それから、ナショナル・セキュリティー。サイエンスとテクノロジーと。こういう5つがございますが、ここが、要するに環境について光を当てているという形になるわけでして、このコミッティーの下にサブコミッティーが、Global Change Researchというのがございます。それが、1990年の法律を受けまして、USGCRP(US Global Change Research Program)というプログラムを作る。それは、こういう次元で、先ほどの光を受けて、受け止めるスクリーンに相当する次元として、こういうものを持ってこなければならないということになりますそれがUSDAから始まりまして、たしか全部で11だったと思いますが、その省庁に割りつけるということをやったわけでございます。
 これが今年の予算です。USGCRP、要するにGlobal Change の研究費は、総額が1,734ミリオンドルです。それで、先ほどのちょうどスクリーンに相当する7領域について、それぞれの省庁のなすべき仕事が書き出されておりまして、その表は非常に煩雑なんで、ここには書いておりません。ここでは、その結果として割り当てた金だけが書かれているという格好でございます。こちらに御関係のありますNASAを見ますと、NASAはすごい金を持っていっています。252と896ですから、千百幾つですね。トータルで千七百幾つのうちの千百幾つを持っていっている。六十数%を持っていっているわけです。これはNASAの特殊事情でして、要するに、軍用を除いて、空から見るものは全部NASAが面倒を見るということになっていますから、環境衛星その他、気象衛星から何から全部、省庁ではなしに、ここが面倒を見るという形式になっておるわけです。
 で、申し上げたいのは、こういうような科学技術政策の立て方というのをしていかなきゃいけないんではなかろうか。宇宙政策に関しても、どこかの省庁が宇宙担当というよりは、やはり宇宙というアクティビティーが社会の中に入ったときに、それは、それぞれの平面にどう投影されて、どういう効果を持つか。それを一々区分して議論してみても意味ないんですね。というふうにして、宇宙政策というのは今後は立てざるを得なくなるんではないだろうかと。こう思った次第です。
 以上でございます。

 井口委員長 

 どうもありがとうございます。いろいろ質問させていただきたいのでそれに従って、またいろいろ詳しく御説明をいただきたいと思います。どうぞ。

 川崎委員 

 基本的には、私は、最後に示された宇宙開発利用までを入れたのが、スコープとしてあり得るんだろうと思うんです。ただ、残念なことは、環境問題と違って、各省の意欲とか取り組みが、必ずしも歩調が合ってはいないという点が、一つ、宇宙については言えると思います。
 それからもう一つ、宇宙開発利用のバジェットが、しがらみから、どうしても、NASAに限ったところになってきていて、NASAから分配を、おこぼれをもらうという発想が各省は多いわけですね。積極的にソースから配分をもらうんじゃなくて、一たん配分されたところから分け取りしたいというのが比較的多い。そのモーメンタムとして、やはり1990年から発効している例のスーパー301条があって、相乗り関係は一切だめですよと。そういう話が出てきているというのが大きかったんじゃないかと思うんです。

 市川 

 今お話の熱の冷めている省庁、環境の場合にも、DOCなんかはそうなんですね。たしか、ここには入ってなかった。

 川崎委員 

 入ってないんです。DOCはありますが、NOAAがやっているんですね。

 市川 

 で、金額それ自体も、そんなに大きくないと思うんです。ですから、非常に彼らはドライでもって、やれることしか頼まない。それに見合う金しか渡さないんだと思うんですね。
 それから、念のために申し上げますと、NASAは非常にいろいろなたくさんのものを背負っていますけれども、それの人は、ほかの省庁からかき集めてくるんですね。実際やるときの人は。その辺のチームの作り方なんかも非常にうまいですね。

 川崎委員 

 本拠のEPA自身は非常に少ないシェアですね。

 市川 

 少ないんです。要するに、そういう意味での力がないんでしょうね。アメリカのEPAというのは、いわゆる公害については非常に強いんですけれども、GCRP的な活動では弱いんですね。

 栗木委員 

 今の市川先生のお話は、実は実施3機関の、あの場で伺っておけばよかったなと実は思ったんですよ。といいますのは、先ほど、平面に投影したときに、科学と技術というところに、科学技術が投影されるというお話を伺ったんですが、まさに出ておられる方が、投影面をいろいろ自己流の投影面で話されるんで、議論がかみ合ってなかったような印象を私は受けました。
 特に私自身、個人的にその経験がございまして、元の東大の宇宙航空研究所が東大から出て、宇宙科学研究所になったときに、このタイトルでものすごくもめたんです。というのは、宇宙「科学」研究所というタイトルですと、今の市川先生の説明ですと、1つの平面で投影されているだけで、別の平面に投影される技術工学が入っていないではないかということで、この看板にこだわる方が相当あって、最終的には、実は科学というのが、先ほどおっしゃっておられた科学技術に相当するんだと。そういう了解で看板が決まった。その看板が決まるのに1年ぐらい、物すごい議論をしてですね。
 そのときには、例えばこういう議論も出ました。ライト兄弟が飛行機を飛ばしたときに最初のデモンストレーションがあった。あれは科学と呼ぶのか、技術の呼ぶのかと。あるいは科学技術と呼ぶのか。場合によっては、おっしゃっておられた科学というのが、宇宙科学研究所の定義では、理学という名前で呼んでおります。したがって、あれは理学と呼ぶのかと。ライト兄弟というのは、ただ単に飛ばしただけでなくて、風洞実験をきちんとやって、極めて理学的な研究もやっておったと聞くので、私どもは、あれこそが科学だとしたがって、ライト兄弟が飛ばすような、ああいうフェーズ、極めて萌芽的な研究をやりたいというのが望みでして、それで、あの科学研究所という名前をつけたといういきさつがございました。
 理学、科学、工学、技術という言葉が、前回の実施機関の中で、いろいろな思惑を持って使い分けられていたものですから、そこでちょっと混乱が起きますので、こういうことはきちんと定義しておきませんと、議論が集約しないなという感じがしたわけです。これは科学技術並びに今の投影面というのは、かなり、少なくとも国内では、エスタブリッシュしたものということでよろしゅうございましょうか。

 市川 

 この絵でございますが、まず言いわけから言わせていただきますと、3機関統合のときにも、私は発言をしかかったんですが、いかにも時間を取っては申しわけないと思って、舌足らずになっちゃいまして、むしろ皆さんをパズルに追い込んだという気がいたします。それで、そのパズルをもう少し時間をかけてやらせていただこうと。そういうつもりです。
 この認識は、私は、日本の社会で完全に定説となっているとは思えません。大体、お年を召した方で、殊に科学者ほど、非常に、こちらの営みとして、区分されるというのがございます。で、科学と技術は違うんだと。営みとして違うんだと。更に激しい方は、科学があって、それの知識を応用して技術が生まれるんだというおっしゃり方をされる。そういう方は、やっぱりお年を召していて、口が大きいものですから、影響力がおありで、したがって、徐々に私は広めていきたいと。こういう認識を広めていきたいと思っております。そこまでしか申し上げられません。

 川崎委員 

 一つ、比喩的に宇宙のことを考えていると、先生がおっしゃられた、この資料で5ページ目にある「進化システムとしての文明要素」のところの行動様式、市場経済、安全保障と。過程論的に、段階で進化のフェーズが違うわけですね。行動様式と市場経済と。特に宇宙開発利用の分野では、かなりそこにギャップがあるような気が私自身はするんです。そういうときに、いわゆる本当に共進化というシステム効果になるのか、それが負のシステム効果になるのかというあたりが問題かなという気がちょっとしていたんですが。

 市川 

 御指摘のとおりでございまして、例えば行動様式の変化なんていうのは非常に速く変わる。市場も結構速いんですけれども、安全保障なんていうのは比較的時間がかかりますし、技術も、その中にも速いものもあれば、製鉄みたいに非常に遅いものもあると。そういう時定数が違うものが混ざっているわけでして、したがって考えるタイムスパンによって、それ全部を考慮しなきゃいけないのか、あるいはもし考えるタイムスパンが短ければ、全部を考慮しなければならない。長ければ、速く収束するものは収束しちゃって、少ないものの共進化だけ考えればいい。通常の安定系と同じでございますね。さっと減衰してしまうものは定常状態と見ていいと。そういうようなこともきっちりと見通す必要が恐らくあるんだろうと。

 川崎委員 

 そうすると、先生のお考えですと、そこの辺の違いを見極めて、フェーズの違いを見極めて、どう調整するか、あるいは取捨選択をするかというのが政策行為だと考えればいいわけですか。

 市川 

 はい。ただ、その次元でなしに、もう少し意味のある次元に投影した上ででございますけれども。

 井口委員長 

 一つよろしいですか。私のいた世界は自動車の世界で、先生のお話のこっちの端の方かもしれないと思っているんですけれども、自動車の世界では、サイエンスというのは余りやっていないと思うんです。一般の人が言うサイエンスは。むしろ技術が中心だと思います。技術とむしろ産業というのと関係で見ることが多いんですが、産業がなければ技術もないだろうと。自動車産業が大きければ、自動車技術も大きくなるし、自動車産業が小さくなったら、自動車技術自体もだんだん小さくなって、だんだん存在し得なくなってしまう。
 そういう観点から見ますと、例えば宇宙の問題も、これから産業という目で大きくしていかなければ、宇宙のサイエンスもそうだろうと思いますが、特に技術の関係は育っていかないだろうと思っています。つまり、政府の金だけで何かやろうと思ったって、アメリカの10分の1ですから、そんなに大きくなれるはずはない。そうすると、これから、どうやって宇宙産業を育成していくか。昔は、産業政策という言葉もあり、産業政策というものが実際にやっていたわけですが、現在では、産業政策というのは、むしろ悪であると市場経済に任せろと。それが今、世の中の大勢なんですが。だから、したがって、産業活性策と言いたいんですが、これから宇宙の中でも、その産業活性策をやらなきゃいけないだろうと思っています。
 そのときに、じゃ、どういうふうにしたらよろしいのか。特に産業というのも、人間と似たところがあって、インファント、生まれたばかりのころというのは保護しなければ、これは死んでしまいます。保護が必要なんですが、だんだん成長するに従って、外に出して、自分でトレーニングをしていくと。30になれば自立させる。人間のスケールと、スケジュールのタイミングが合っているかどうかわかりませんが、宇宙も、NASDAができてから三十何年たつんです。だけれども、ある人に言わせれば、相変わらず政府におんぶに抱っこじゃないかと。経済的な面で。だから、それではまずいんで、今からでも遅くないから、自立の方向に持っていきたいんですが、そのときの、言うならば、産業化政策というのはどう考えたらいいのか、先生のお考え方の見方からすると、何か御示唆をいただければと思いますが。

 市川 

 私は産業政策という視点で、この問題を徹底的に考えたことはないんですが、まず一番最初に立てられた、いわゆる産業化してないと技術は伸びないだろうというお話は、ある程度本当だと思いますが、そうでもない部分もあると思うんですね。この例をとらしていただきます。
 個体維持科学技術、これは医学や生理学、その他の世界というのは、ここに入ってくるんだろうと思うんですけれども、それは裸のままでは、産業技術的な意味のお金の投入は望めないところなんですね。それを産業化するからくりというのは、別途作られているわけです。例えば日本の場合ですと、共済組合その他が健康保険というシステム。アメリカの場合には、それが「私」の世界でやられているわけでして、通常の個人が加入する保険でカバーすると。それから、最も、その中で、そういう意味で独り立ちできないのは、ここだと思うんですね。ここで最もあからさまなものというのは、ナショナル・セキュリティーですけれども、これはどうも徴兵制度かなんかは別といたしまして、そういうことも国として徹底的に面倒を見ない限り、できない問題ですし、更に安全保障とは言わないまでも、最近、世の中、大分物騒になっているからというんで、社会を維持するための技術みたいなものを考えますと、それは、やっぱり何かうまいぐあいに産業化するようなからくりをくっつけてやらないと産業化しない。例えばセコム、名前を出して恐縮ですけれども、ああいうものというのは、非常に巧みに産業化しているわけでございますね。そこにおける社会維持技術というのは、セコムのあれは非常に大したものです。
 ですから、何が言いたいかといいますと、先生が最後に言われましたインファント・ベービーというものが、ちゃんと将来大きくなるかどうかをまず見極めなければいけないわけです。金ばっかり食ったあげく、のたれ死にするようなものは別といたしまして、それを見極めて、育つプロセスを考えると同時に、産業化するというか、商業化が成功するようなメカニズムをうまく作ってやることなんだろうと思うんですね。宇宙の場合、非常に残念なのは、米国の場合ですと、社会安全保障というか、国の安全保障というものを通じて、そのメカニズムが働くようになっている。それがないというのは非常に残念なんですけれども、私は、どうも、いつまでも同じようには済まないよと。こんなことを言ってはいけないんですが、この委員会では。済まないような気がしますんですね。少なくとも宇宙からの監視、それから、いろいろなディテクションというのは非常に大きい。先ほども言いました、それを偵察衛星とかなんとかという平面に投影するとおかしいんですけれども、営みとして見たところは、同じものが別の平面に投影されて、こっちはこっちで全く民生的に、あるいは社会維持のための意味を持つわけですね。ですから、そういうからくりをお考えいただくと。無責任な言い方で申しわけございませんが。

 井口委員長 

 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

 今村局長 

 非常に示唆に富んだお話をいただいたわけですけれども、先ほど、地球環境の話がありました。要するに、新しいシステムの健全性をどうやって、どういう形で健全なシステムを作るかという1つの視点に言及されたと思うんですけれども、ややちょっと皮肉れた意見かもしれませんが、アメリカの地球環境のこういうシステムの中で、どうして、例えば京都議定書から脱落するということが、いわゆるきちんとした説明なしに行われるのかと。そういうことに対して、サイエンティストといいますか、科学技術の分野の関係者は、どういう形でかかわっているのか。その辺はどうなんでしょうか。

 市川 

 まず、アメリカの大統領があれから下りる前に、これは形だけだと言うと、しかられるかもしれませんが、私は形だけじゃないと思うんですけれども、NRC(National Reseach Council)にちゃんと照会状を出しているんですね。要するに、IPCCの第3次か4次になるんですか。あの報告の信憑性というと変ですけれども、温暖化につながるメーンというのは、あそこに書かれているものだけであるかという照会を出していまして、NRCというのは、下にAcademy of Scienceとか、Academy of Engineering と、Institute of Medicine と3つを抱えていて、そこの学者たちが議論をした結果、何とも言えないという返事を一遍したらしいんですね。ところが、それじゃ、大統領としては判断できないということがあって、再度、御下命があったのは、あれだけが原因であるかという形で入った。そうすると、学者としては、あれだけが原因とは言えないと。要するに人の営みによるCO2あるいは温室効果ガスだけが原因とは言えない。自然の営みもまだ残っているから。もちろんIPCCの中には自然の営みの割合なんかも入っているんですけれども。そういうことを答申した結果として、根拠は意味があるかどうかは別として、IPCCの分析というものは、現在、直ちに政策決定を行って、制限をかけて、産業を弱くするに十分な根拠となっていないというのが大統領の判断ですね。
 日本の場合、非常におもしろいと思いますのは、日本は、今回、米国抜きの批准に応じようとしているわけですけれども、前回のボンでの決着の場合に、少なくとも、そういう照会を学者にはしなかったんですね。日本の学者よりはIPCCのある種の権威というものを、日本の政府としては信用なさっていたということです。ただ、日本の学者に照会したら、どんな返事が出てくるかは、私は読み切れませんけれども。
 したがって、局長の御質問には、一応、そういう関係というのは行政と学者の間にできている。学者というのは、どうしたって単純明快な回答はできなくて、ある留保を持った回答をする。その幅の中で、今度は行政は政策的な決定をしたと。それが今回の米国の反応だと。こういうふうに私は理解しております。決して無視をしたとか、そういう話ではないと。

 栗木委員 

 そうすると、行政は、怪しきは罰するか、それとも怪しきは白とするか黒とするか。そういう判断をみずからが行うと。そういう位置にあると。

 市川 

 そのとおりです。責任は、結局、その判断のもとで、こっちを取るか、こっちを取るかというのは、完全に政策決定の問題なんですね。そこは、現在の科学の知を越えているところで、それは政策が決めるということですから、あの決定は大統領の責任になるだろうと。

 井口委員長 

 ほかにいかがでしょうか。

 栗木委員 

 その文明要素でもう一つ伺いたいんですが、安全保障に代表されるのかどうかわかりませんが、いわゆるノーブリス・オブリジェというようものですね。これだけの経済力を持っているんだから、宇宙のちゃんと責務を果たせよと。こういうのは一体こういった中で、市場経済……必ずしも全部が安全保障でもない。どう読んだよろしいんでしょうか。多分に宇宙開発をやっていますと、ロケットを持ってないと、宇宙の仲間に入れてもらえないよというような極めてシンプルなロジックがありまして、それをどう表現したらいいのかと。

 市川 

 そこに書きましたのは、日本なら日本の社会の中の、いろいろなうごめき、行動様式にしろ、市場経済にしろ、安全保障にしろ、あるいは科学技術にしろ、中のうごめきでございますが、先生のお考えは、日本という国を1つの人格と見立てて、これは国際社会の中の日本という人格が、どういう意味を持つかというお話だと思いますね。その時点では、恐らく国際社会レベルでの、また進化モデルというものがあり得るだろうと思いますが、先ほどのようなモデルとして経済につながるか、あるいはウィルソンがやったような国家の威信にかかわる部分とか、ノーブリス・オブリジェとおっしゃいましたけれども、要するにアメリカは、なぜ加速器を置くんだというときに、それはアメリカ国家というのは守るに足る国家であることで、加速器を作ると。そういうロジックとか。そういう世界で、結局、少数者の意向というものによって、大きく振れる世界なんですね。少数者という意味は、国という意味もあり、国の政策を決定している少数者という意味と両方あります。
 そのときに、うまく、かなりの大量のものが相互作用をして、物事が動いていくというモデルがあるかどうか、どうもよくわかりません。ただ、最近は、経済モデルにしても、おっしゃったように節約しようとかなんとかというサイコロジカルな効果というのが非常に大きいということになってきていますから、あえて無理やり入れれば、行動様式の中に入れるかと思いますけれども、そこも考慮しなければいけないだろうと思います。したがって、国を代表される方が、どういう御見識をお持ちになるかというのは、ここでは入ってないということです。

 澤田委員 

 まさにおっしゃるとおりで、アメリカの政策自体だって、同じような技術に対して180度変わっている。しょっちゅう変わる。どこの国でも、恐らく、そうなんですね。それに対して、先生がおっしゃった、今、いろいろ分析をされた科学技術というのは、どういう力を持ち得るんだろうかと。ただ客観的に、そこにあるだけのものであり、ある一部の学者が、たまたま知っているというだけで済まされているというのが、今日の科学技術と国の政策決定の仕組みの基本的なものなんだろうかなと。その辺はいかがなんでしょうか。

 市川 

 かなりデリケートな話になりましたが、私は、公式論的回答としましては、学者というのは、その時点でわかっていて、言えることをきっちりと言うこと。それができるだけ振れないように。政策判断とか、いろいろなことで振れないようなことをきっちりと言う。振れるとすれば、それは科学の知に大きな変革があったときこれは振れるのはしょうがない。それ以外の原因で振れない知というのを与え続けておこうと。それをベースにして、上の政治あるいは行政の方、これは、もう世界情勢その他から振れざるを得ないんでしょうけれども、振れたときに、下の振れないものから、どれだけ乖離したかということを意識していただく。それが一番大事なんだろうと思いますね。

 井口委員長 

 まだ次の議題がありますので、また市川先生のお話は、我々は準備会議で伺うことができるんですが……。
 本当に今日はありがとうございました。先生のお話を伺ったおかげで、我々の議論も一段と高いところで話せるようになると思いますので、またいろいろと御指導くださいますようにお願いをいたします。ありがとうございました。
 それでは次に、「宇宙輸送系の在り方」について、東京大学工学部の中須賀助教授に。10月の最初のときにも来ていただきましたよね。

 中須賀 

 ええ。あのときは宇宙開発の将来について私見を話させていただきました。
 今日は、宇宙輸送系の将来のあり方に関しまして、ワーキンググループというものができまして、そのメンバーというのが、お手元の41−3−2の資料の2ページ目にございますが、ロケットの専門家、衛星の専門家、輸送系の需要を提供する側で衛星の専門家、それから私は全体を見るシステム的な立場で参加させていただいたと。こういうメンバーで2回ほど会合を持ちまして、更にメール会議等でいろいろ検討しました。まだ2回ほどの会議ですので、完全にこなれてはいないんですけれども、現在までにいろいろ議論した事柄をかいつまんで、今日、紹介させていただきたいと思います。
 資料をずっと読みながら、途中で少し補足をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、「宇宙輸送系の現状」の認識ということでございますが、使い切りロケットの機能実証は概ね達成できているものの、インテグレーションや信頼性評価を行うためのシステム技術が不十分であり、その強化が重要である。
 ここでシステム技術というのが出てきますが、これがやはり非常に大事ではないかという議論がなされました。ご存じのように、宇宙システムというのは極めて多くの部品が複雑に絡み合った、大規模・複雑システムでありまして、そのマネージメントをしていく困難さというのは、恐らく部品の数のエクスポーレシャルぐらいに比例して難しくなっていくだろうと。現在のロケット、衛星というロケットですね。そのレベルまで、もう達しているんじゃないだろうかと。非常に難しいレベルまで達している。これをマネージしていく技術をしっかり作っていかないと、現状のロケットの信頼性向上とか、新しいロケットを作っていくときに対応できない。その早急なる確立が必要であろうと。そういう議論がなされました。
 で、システム技術の中には、例えばサブシステムで、バランスの取れた負荷を配分したり、それから、評価基準というのは必ずしも1つではないと。ISPを上げるとか、フェードレーションを上げるといった性能というのは1つですけれども、それ以外の信頼性だったり、コストであったり、運用のしやすさとか、さまざまな評価基準がある。そういったことを考えて、それでもしながらよい設計を探っていくと。こういう技術が必要であると。1つの例として、委員会の中で出された具体例としては、例えばLE7、LE7Aに関しては、ポンプの圧力がマリアエンジン、アリアンの1段のエンジンに比べて1.6倍ぐらいあって、非常に無理がかかっている。それに比べて、ISPがわずか2%ぐらいしか変わらない。これは性能を上げるという、ISPを高めるという目的からしたら、確かにそういう必要があったんですけれども、そのためにある意味で犠牲にしたものもある。非常に負荷がかかっている部分もあるということで、やはりバランスの取れた設計をしていかなければいけないんじゃないか。そういう意見も出されました。
 じゃ、どうやって信頼性管理を含めたシステム技術を高めていくかということなんですが、やはり耐久性能ぎりぎりまでの試験を含めて、数多くの試験を行うと。やはり試験を行うことがまず大事だと。現象の理解に努めることが重要であると同時に、継続的な打上げ及びエンジンの一定基数ごと、または定期的な認定試験の実施による実データの獲得と解析が必要である。更にそれを、できるならば実機に反映して信頼性を上げていくということが必要でしょうと。
 恐らく、信頼性確保というのは、なかなかそうきれいにできるものではなくて、やはりある意味で泥くさく、多数回試験をして、枯れた技術にしていくということが大事だろうと。それから、適材適所にディレーティングを施す。つまり、最高の性能ではなくて、少し楽なところで使うということが必要であると。更に冗長化が必要だろうと。しかし、このディレーティングをやるためには、エンジンのいろいろなところで起こっている現象を十分に理解して、どこなら楽をしていいのかと。あるいはどこを楽にすると非常に効率的なのかということを、やはり把握しなければいけない。そういう意味で、現象の理解ということをしっかり行わなければいけないと。それが今のところ、少し弱いんではないかということだと思います。そういう意見が出されました。
 例えば例として、多数回試験という例で言うと、ロシアのSL4というロケットは、1段は32基のエンジンがクラスターになっていまして、1989年までに、何と1,345回打上げたと。そうするとエンジンの台数が4万3,000台ということで、これぐらい作ると、こなれて壊れない。エンジンが故障しないんですね。しかも、32基もクラスターになっていますから、二、三基のエンジンが打上げ途中に死んでも、軌道上まで行っちゃうと。そういうことで現在、非常に信頼度の高い、世界最高水準の信頼度を達成しているこういう例もございます。やはり多数回試験をする。あるいは実データを取るということで、枯れた技術にしていくということが信頼性確保のために必要欠くべからざることだと思います。
 また、国際協力を創出できる柔軟性あるロケットラインアップの構成、及びそれを支える産官学の一体となった協力体制の構築が不足している。
 ということで、ラインアップに関しましては、H−2Aの増強型等、いろいろ検討しているということで、これに対応していくということだと思います。それから、協力体制の構築に関しては、最後にまた出てきますので、そこで改めて述べさせていただきたいと思います。
 2番にまいります。宇宙輸送系の1つの柱である使い切りロケットについての対応はどうかということですが、まず、H−2Aをベースに商業化するかどうかということについても、いろいろ議論がございました。H−2A及びその増強型をベースに打上げ市場で競争力を発揮するためには、信頼性、アベーラビリティー、低コスト化の面で相当な努力が必要であるということを考慮に入れた戦略が必要だということです。
 今のロケットは、要はコストと能力、どの軌道に何トン、それから信頼性。アベーラビリティー。これは要するに行きたいときに打ってもらえるかということですね。この4つぐらいのパラメーターに恐らく集約できる。ロケットの能力はですね。そのほかに、恐らく乗り心地がいいとか、内装が優れているとか、そういったようなことはなかなかつきにくい。そうすると、世界でどういうことが起こるかというと、ベルロケットは、どんどんコストが下がって、Winner takes allの現象が起こって、もしかしたら、ここ数年のうちにベストセラー二、三本に集約されるような現象が起こるんじゃないかと。こういう予想もあります。
 そうすると、そこに食い込んでいくためには、相当強烈なセールスポイント、優位性がないとだめだと。じゃ、この優位性をどこに取るのかということを考えた戦略が、恐らく要るだろうということです。市場自体が、しかも、打上げロケットの市場が3,000億から4,000億であるということを考えます。ここ10年程度はですけれども。そうするとそういう市場の中に食い込むために相当の努力をする投資効果ということが、果たしてあるのかということも含めて議論していく必要があるんではないかということです。
 しかし、技術の維持・発展及び国民の安全の確保などのため、日本として自在に利用できるロケットを持つこと、そのための技術開発を続けることは国策として必要である。これは非常に大事なことで、やはり技術を守るという意味で、ロケットの開発を続けるということが大事だということでございます。
 そして、次はもう一本の柱である再使用輸送系に関しての議論でございますが、打上げコストの大幅な低減により、今までの宇宙科学、地球観測、通信・放送、測位等に加え、太陽発電衛星等、新たな宇宙利用が加速度的に拡大する可能性がある。宇宙輸送系は、今後の大量の輸送需要下において、信頼性と費用対効果に優れた再使用型に移行していくものと思われ、自在に利用できる再使用輸送系の研究開発を進める必要があるということです。
 輸送系は、輸送系だけで考えたらいいというものではなくて、やはり運ぶ物、要するに輸送需要というものとの対比で常に考えていく必要があるだろうということです。そうすると、現在の輸送需要を考えたら、恐らくまだ再使用型が登場する場面ではない。しかし将来、大量かつ、例えば有人が起こってくる。有人の安全性というのと再使用型の壊してはいけないというのと非常に方向性が似ているわけですね。更に上から下へ、つまり宇宙ステーションのようなところから地上に運んでくるような輸送需要が出たら、これは再使用型が出てくる場であると。そういう将来の輸送規模の中では、恐らく信頼性と費用対効果から考えて、再使用型というのが必須であろうと考えています。
 その再使用輸送系が出てきたときに、恐らく最終的には、何らかの形の国際協力になるだろうということが予想されますが、その国際協力になったときに、日本は、いわゆるサブコン、例えばボーイングに対して羽根を作るだけとか、そういうのではなくて、やはりシステムとして提案できるだけの技術を持っていないといけないだろうという意見が多うございました。
 じゃ、再使用型は、どういう設計思想で作っていけばいいかということなんですけれども、異常時にも安全に帰還できるシステム構築・保守性等、多くの点で使い切り型とは目指している設計思想が異なると。これがまず基本認識として必要だろうと思います。つまり、一発物の使い切り型と何度も繰り返して使うものが同じ設計であるはずはないと思われます。例えばエンジンなどの先ほどディレーティングと言いましたけれども、再使用するには、ぎりぎりではなく、より楽な作動条件で使う必要があるでしょう。それから、メンテナビリティーという概念が出てきます。保守性ということですけれども、これはシャトルでは、ある意味で大きな失敗で、例えば下りてきて、飛行機のように簡単にドックで修理して、また飛び込んでいくということを予想していたのが、現在のような相当大きなお金をかけて、メンテナンスしなきゃいけないという状況になっている。そういったものも含めて、再使用型の設計思想を考えていかなければいけないだろうと思われます。
 しかし、使い切り型の技術のうち、利用できるものは利用しましょうと。使い切り型と再使用型の違いを理解することが、逆に使い切り型の信頼性向上にも役立てる。なぜ使い切り型の信頼性のレベルは、このレベルなのかということを考えるときの参考になるということです。
 要は大事なことは、使い切り型の延長線上に再使用があるという考え方は、やっぱり間違っている。使い切り型のテクノロジーの流用を考えていけばいいんだという考え方は間違っている。そうなると、恐らく中途半端な設計になってしまうだろうと。あくまで別のものだということを認識して、設計して、ただし、使えるものは使いましょうという、その考える順番ですね。優先順位を間違えないということが大事だと思います。
 開発戦略に関しては、小型実証機による多数回の実験などを通して、基盤技術の充実を行い、評価を経て、段階的な実証機実験により実用に近づいていくといった長期的視点に立った無理のない計画の立案が必要である。
 ここで大事なのは、基盤技術の充実であります。現在の状況では、再使用型にもさまざまなスタイル、エンジンにもさまざまなスタイルがございますが、どんなスタイルがいいのかということを、先ほど言ったシステム技術的に評価するための基礎データがまだ不十分だと思います。したがって、今、何か具体的な案を作るというのではなくて、まずそれに向けた基盤技術を充実させていくというプロセスが必要で、それをとにかく早急にスタートする必要があるだろうということです。
 最後の長期的視野に立った無理のない計画、これも非常に大事でありまして、例えば日本の場合に、どうもタイムスケールの計画の立て方が非常にまずくて、非常に短期的にできるようなイメージを持つ計画を立てたりする。そうすると、無理があって、途中で頓挫とか、フリーズするというのが恐らく最もまずいことでしょう。つまり、そうなると意欲の低下が起こり、技術者がいなくなる。それからデータが失われる。またやり始めようとしても、2度目というのは、やはり1回目に比べて、どうしてもモチベーションは下がってしまう。そういうことが起こらないような長期的視野に立った計画、無理のない計画というのが必要だということです。
 以上が、使い切り型及び再使用型についての対応でございます。
 4番にまいりまして、有人輸送系ということですが、今後の宇宙活動の発展により、月・惑星の有人探査、有人による宇宙機の修理等、有人活動の活発化が想定される。また安全で手軽な有人輸送手段が実現すれば、宇宙旅行等の経済活動も一般化する可能性があるということで、有人宇宙旅行は、それ自体が恐らく大きな市場になるでしょう。それだけではなくて、その前に、恐らくさまざまな関連産業が生まれてくるということで、宇宙の産業化・商業化にとって非常に大きなインセンティブを与えるものだと思われます。またこれによって宇宙への関心が高まる。あるいは自分が行けるかもしれないという期待感というのが、企業等の宇宙への投資のインセンティブを生むだろうと思われます。
 当面、国際宇宙ステーションの有人技術、再使用輸送系の高信頼性技術に加え、有人飛行に際して最も重要となる安全技術を統合させて統合的な有人システム技術の研究の進め方について検討すべきである。30年後を目安とする一般人のための有人再使用輸送系の実現の可能性及び必要性について調査研究を実施する必要がある。
 ここで大事なのは、やはり安全技術でございます。これをいかに獲得するかが大事です。恐らく無人の場合に比べて、比べものにならないぐらいの安全性の厳しさ、それから、システム技術というのが必要になってくるでしょう。例えば信頼性99%というのは許されないわけですね、ここでは。ロケットが信頼性95%、つまり、5%は失敗するよと。ただ、失敗しても、アボートして無事に帰って来れるということをいかに保証するか。そういう普通の無人と違った安全の保証の仕方、安全の確保の仕方というのを考えていく必要があるだろうということです。
 それから5番で、「軌道上システムの研究・開発との連携」ということですが、当面、視野にある大型衛星等の打上げは、増強型を含め、H−2Aロケットにより対応可能と考える。当面は、世界中の計画を見ても、大体GTOで10トンクラス。そこまでいかなくても、その多くはH−2Aの増強型で対応が可能ではないかということです。
 しかし、将来、更に大型の軌道上システム、これが出現する可能性が考えられるということで、大きなものに対応するロケットを作るというのも1つの道としてはあるんですがただし、新しい流れとして、中小型の軌道系の軌道上組み立てとか、あるいはフォーメーションフライトによって、協調的な動作によって、ある決められたミッションを実現すると。そういう可能性もある。したがって、そういう新しい軌道上アーキテクチャーについての研究も、合わせて強化していく必要があるだろうと。これも先ほど言いましたけれども、輸送系というだけではなくて、何を運ぶかということも合わせて検討していく必要があるだろうと。
 ここで、フォーメションフライトという概念が出てきましたが、これは最近、アメリカやヨーロッパで盛んに研究されている概念でありまして、幾つかの衛星の協調動作によって、あるミッションをやりましょうと。例えば大きなアンテナの素子のかわりになって、1キロクラスの大きなアンテナを宇宙空間に展開しようとか、同時刻に違った場所で何かを観測しましょうと。そういった目的のために検討が進んでおります。低軌道であれば、GPSによる非常に精度の高い航空情報が得られるということも利用して、今、アメリカ・ヨーロッパでは、実ミッションがたくさん計画されていて、実際に飛んだものもございます。こうなると、リスク分散とか、システムをだんだん大きくしていく。つまり、あるレベルでうまくいったら、更に衛星を加えて強化していくと。そういうこともできるということで、ミッションによっては大きな衛星でやるよりは、こちらの方がいいんではないかという指摘もございます。
 こういったものがあると、恐らく輸送系の需要自体が変わってくるということで、そういうことも視野に入れた輸送系の検討が必要でしょうと。また、新たな輸送インフラとして、これまでの打上げロケットは、基本的には地上からLEOまで想定したものが多いんですけれども、LEOから上の輸送インフラというものの可能性も考えていく必要があるだろうと。例えば日本はHTVを今、一生懸命研究していますけれども、HTVベースにしたものを考えるとか。あるいはインテス7の引き続きにある軌道上サービスミッションというのも、これも1つの輸送インフラと非常に密接の関係のあるものであろうということでそういった輸送系・軌道系一体となったスタディーをやっていく必要があるでしょうということです。
 最後に、「研究体制の拡充と設備の整備」ということで、最初に述べましたとおり、宇宙開発機関、大学、研究所、学会、民間等が一体となった研究ネットワークを構築し、課題の提起・解決・適用の生きた連関を迅速に形成することにより、活力ある研究を進める必要があるということです。
 これは、大学においても、なかなか航空宇宙に関しては、研究すべき方向が見えてこない。そうすると、やはり個人の趣味によって、どうしてもサイエンス側の研究に走る傾向がある。方向がバラバラで、なかなか大きな研究領域とはなってこない。それに対して、こういう大学の人たちをうまく使っていただきたい。我々、人に任せるというわけじゃないんですけれども、そういう方向性を示していただきたい。効果的な連携をすることによって、大きな研究の方向を示し、成果を効果的に利用していくという道筋は、恐らく大学等としても非常に有効であろうということで、こういうネットワークを作るということは物すごい大事なことだと思います。
 それからもう一点は、これから宇宙という分野で日本が世界で勝負していける、何らかの優位性を示さなきゃいけない。それは、日本人の能力ということ。それから、仕組みですね。つまり個人の能力が最大限発揮できる仕組み・体制、それから個人と個人のインタラクションが、何らかの新たな価値を生み出す仕組み。こういう仕組みを1つの売りにしていく必要があるんじゃないかと。仕組みで勝負していく必要があるんじゃないかと思います。
 例えば例として、スカンクワークというアメリカで非常に成功をおさめた開発体制がございますが、これは非常に短期間にアイデア、設計・製造・試験・結果解析・修正のループを短期間に回して、そこに理論家の意見や技術者の創造力を効果的に反映していくと。そのプロセスを、とにかく短期間に、しかも非常に狭い場所で、距離が離れないところで繰り返し回していくというループ。これが非常に大事だということです。その実現を第一に考えたような組織論というのが、この宇宙開発においても大事ではないかと。
 そうすると、1つのプロジェクトのときには、わっと人が集まってくる。そうすると、そのプロジェクトが終わったら、また人は別れて、別のプロジェクトに行くと。そういう人材の流動性というのを許さないと、なかなか、これはできないということで、そういった流動性も含めた組織のあり方についての検討が必要ではないかと思います。
 最後に、現状の打上げ施設は種々の制約により、宇宙輸送系の発展を阻害する可能性を有するため、将来を見据えた代替宇宙輸送基地インフラの検討が必要であるということでこれは例えば打上げ時期の問題であるとか、ロケットの規模の問題、そういったものについて、それからロケット打上げの方向の問題とか、何らかのデメリットがある場合には、それは、もしかしたら発展を阻害する可能性がある。それにかわるようなインフラを考えていく必要があるでしょうと。
 それから一番最初に言いましたけれども、エンジンの信頼性確認、特に限界性確認試験つまり壊れる寸前までエンジンを動かしてみると。壊れるときというのは、システムは一番多くの情報を出すと思います。そういう壊れるところまで、とにかくやってみれる試験ができるような、安全に実施できるような施設というものの整備が急務であると思われます。
 ざっとですが、以上です。

 井口委員長 

 どうもありがとうございました。あとは一緒に議論させていただきたいと思います。どうぞ。

 五代委員 

 今まで日本で、宇宙輸送系というのは40年、もうちょっとですか、ありまして、これから21世紀ということで、非常にそういう意味で、今回のこのペーパーはよくまとまっていて、大変ありがたいと思っています。
 それで、宇宙輸送系というのは特にそう思うんですが、いわゆるシステム技術の粋と言ってもいいんでしょうけれども、非常に高度なシステム技術。その中には、システム技術というか、技術の組み合わせというか、その管理とか全部をひっくるめたもので、その中で特に使い切りから、これから再使用と、更に安全ということを入れた有人輸送システムとなると、これはシステム技術の、多分、最高峰のもの。要するに非常に厳しい。挑戦的であるけれども、非常にいろいろなものが磨かれるチャンスでもある。そういう意味で、こういう方向の−−これは、お金を出したら、すぐできるというものでは全くなくて、今おっしゃったように、きちんとやっていくというのが極めて重要。だけれども、それをスタートしないのも、また、これも非常にまずい。ということで、きちんとした研究をスタートする。
 その場合に、今、6番で言っていた研究体制ですね。使い切りロケットあたりの人というか、研究機関とか、そういうものの広がりと、再使用・有人というもののことまで行きますと、広がりがもっともっと広がって、厚くなきゃいけない。したがって、基盤技術を獲得し、データ充実し、それをうまくまとめるという意味で、今言った再使用あるいは有人といったようなもの、これが日本の基礎体力というか、技術技術というものを上げる可能性が十分あるし、また、そういうものを実現するためには、そうしないとだめだと思うんで、非常に今までの範囲の狭い人たちだけでやっていたんでは絶対だめだと。この機会に、ちょっと時間がかかるかもしれませんが、その辺の体制というか、そういうものを作っていくことが重要だと思います。
 私、前にも話したかもしれませんけれども、アポロをやっているときにちょうどアメリカにいて、こんなとんでもないところまで、アポロにみんな、人が絡んでいる。多分、それがシステム技術だと思うんですが、それがその後のアメリカの猛烈なパワーのもとになったと思っています。アポロ自身の問題よりも、アポロの広がりといいますか。そういう意味で、将来の21世紀、新しい世紀の輸送系の方向をよく示していただいたかなと思っております。どうもありがとうございました。

 井口委員長 

 いかがですか。

 澤田委員 

 おっしゃるとおりなんですよ。産官学共同というのは、随分昔から、言葉だけはある。まず、いまだにある。ということは、いまだに成功してないと。成功していれば、今さら、そんな言葉を使うわけはないんであって。さて、宇宙という世界を眺めたときに、宇宙が産官学ができやすいねというね。今までも、先生方も、いろいろ産官学と最近もしてこられたのかもしれない。宇宙という分野については、こうすればできるんじゃないかというものを、何かほかと違ったものがあると幾つか特徴みたいなものは何かあるんでしょうか。やっぱり難しいなという話になるんですかね。

 五代委員 

 それには1つは、前に宇宙インフラ研究会というのもやりましたけれども、マトリックスじゃないけれども、どんな技術とか、どんな科学がどうだというようなことを示すと言うとおかしいんですけれども、それは要ると思うんですね。ただ、何かぼうっと言っても難しい。いわんや、どこかの大学のどこかの研究室のどこというと、宇宙のこういうこともあるというと、そんなのは、おれのところと関係ないんじゃないかと思うかもしれないけれども、実際には、こういう意味で関係しているとか、非常におもしろいことがあるとか、そういうようなつながりを持たせないといけない。

 澤田委員 

 日本の大学なり研究のシステムというのが、産官学的に、余りぴったり似合わないと思うんだね。

 井口委員長 

 それは、大学側も変えていくようにしています。それと、中須賀先生は前に、少しばかりの金はNASDAからもらいたくないと。自分が自由にやりたいんだと。

 中須賀 

 おっしゃるとおりです。

 井口委員長 

 そうでしょう。本音を言っていただいた方がね。じゃ、どうしたらいいですかと。今おっしゃった産官学にうまく協調するには、中須賀先生みたいな、もう自分の分はいいんだと。うるさいことを言われたくないという人を、どうやって巻き込むかその抵抗になっているものを除いてやらなければいけないのね。そこのところは、どうですか。

 五代委員 

 金は出すけれども、口も出すでしょうね。

 川崎委員 

 中須賀さんも、委員長もおっしゃっているけれども、やはりカリスマ的ボスが出てきて、「おれは、このプロジェクトをやるけれども、君も入らないか」と言うと、やるということになっちゃいますよね。まさに、私は、そういうカリスマ的というと、ちょっと悪いんですが、あるビジョンがあって、リーダーシップがあるような方が、それは産から出てきてもいいし、官から出てきてもいいし、学から出てもいいんですが、だれか、その人がリーダーになって、こんなプロジェクトとなると、かなりそれに関心を寄せる方は集まる。日本は、残念ながら、新幹線のときの島さんとか、そういうような人がいたときあるいはNTTのマイクロウェーブがそうだったろうと思いますし、そういうような一種の柱、軸になる人がいたときに、あるいは自動車もそうなんですが、決定的な産学官の体制ができるんで、機械的にいくら役所が、やれ、やれと言ったって、これは絶対にだめなんですね。みんな、あっちを見て、背中を合わせると。おしりを突き合わせぐらいの産官学はできるんですが、四つに取り組むようなことにはならんのだと思いますよ。

 井口委員長 

 10月10日に先生の話されたのを持ってきたんです。これはメモで私は、目からうろこから落ちたような気がするんです。そこに先生が、まず国民に訴える強烈な目標を作れと。まあ、いろいろありますね。それを、なぜこれに書いてくださらなかったのか。これは、まあ、人と一緒だったからできなかったということですか。これを言ってほしいんですよ。将来のビジョンとして。

 中須賀 

 ちょっと早急に……。気持ちは同じです。

 栗木委員 

 今の産官学なんですが、おもしろいのは、私、宇宙研時代にやっていたのが、電気推進というか、プラズマ関係の推進をやっていた。これの初期、極めてプリミティブな段階というのは、産官学の官もなくて、産学だったんです。しかも、その学の中も、工と理があるんですが、工も飛び越して、理学部の先生が産と一緒になって研究していた。これが極めて理想的な研究体制だった。つまり、2者でしかない。どうして、それが産官学となり、理工と分かれると、それができなくなってくるか。これが不思議でですね。極めて階層的になっちゃって、しかも、だんだん仕切りが厚みを増してくる。
 ですから、この産官学というとらえ方を、本来の筋に戻りますと、産も実は研究をやるべきじゃないかと思い、学も商売をやるべきじゃないかと。そういう精神に立ち戻らないと、本当の意味の産官学は出てこないんじゃないかなという気がするんですね。ですから本当は2者でやると。

 川崎委員 

 それは政策論的に言うと、組織論で議論すると、そういう議論になるんですね。僕は、これは中にいる人が集まればいいんですよ。人のグループができるかどうかだと思うんです。そのグループができるためには、グループの求心力のセンターになる人がいればいいと。だから、たまたまその人が出てくるのは、産ばっかりでもいい。だから、組織でかためようという発想がある限りは大体だめなんです。

 栗木委員 

 それはだめですね。

 川崎委員 

 というのは、余り言うといけないんですが、鉱工業技術研究組合みたいに、維持することに目的があるようになっちゃってですね、中で何をやるかというのは二の次というね。

 中須賀 

 今おっしゃった求心力がある人がというのは、すごく大事でその人は待っていても出てこない。じゃ、そこをどうやってやるかというところですね。

 川崎委員 

 そうすると、ここのポイントで大事なのは、一応、2、3、4、5というのは、ステップワイズなロードマップだと考えると、そのすそ野を作るというところがここの6に入るんだろうと思うと、宇宙だと種子島しかない。例えば大学の校庭でちょっと上げるとか、要するに、有人コンセプトで、ミニをやってみようとかと。糸川ロケットの走りみたいなことを、どこででも、ひょいひょいとやれると。そういうような環境を、どういうふうに作ってあげるかと言わないと、いいアイデアが出てこないですよね。固定のわかりきったアイデアしかやれなくなっちゃうんで。

 中須賀 

 アメリカなんかは、今おっしゃったようなことが実際に行われていて、あっちこっちで、ロケットの打上げキャンペーンみたいなのが年に3回、4回あるんですね。そこにみんな、手作りの自慢のロケットを持ってきて、競い合うわけですよ。そういうところは、それなりにすごいロケットを持ってくるんですよ。2段とか、3段のロケットとかですね。時々、2段が下を向いたまま噴射して、地面に向かって飛んだなんていうのもありますけれども、そういうところで、みんな、すごい鍛えている。それは、ある意味でプロジェクトマネージメント的にも、自分たちだけでやるんじゃなくて、それにはスポンサーをつけ、何々して、自分でお金を集めてきてやっているんですよね。そういう人たちが、自然にそこでトレーニングされて。

 川崎委員 

 システム技術のね。

 中須賀 

 ええ。システム技術、それから、そういうプロジェクトマネージメント、お金を取ってくる技術、すべてマネージメントされる。そういう人たちが大きくなると、それには学生なんかもいるんですけれども、宇宙開発に入っていくという非常に大きな力になる。
 日本は、何かいろいろな意味で、例えばロケットなんかもやりたいんですけれども、制約が多過ぎるんですよね。場所もないし、いろいろな規制があって。

 井口委員長 

 さっき、スカンクワークとあったけれども、あれがかなりできるような雰囲気作りが必要ですよね。

 川崎委員 

 ジョージア大学ですか、ジョージ・ワシントン大学ですか、3年かけて衛星を作りましたよね。学生が。卒論学生と院生が集まって。ああいような試みがね。

 中須賀 

 衛星は、やろうと思えばできる。

 川崎委員 

 ええ。64億のロケットでは、とても打てませんと。だから、そういうのをやる場、活動するグラウンドを広げないと。日本で、硬式テニスがいつまでたっても弱いのと同じように、狭い場所だから、軟式ばっかりやるようになる。卓球とかね。そういう貧乏人根性になっちゃうんだな。

 井口委員長 

 今はビジョンの議論を。何とかビジョンをまとめたいと思っているんで、そっちの方の議論にしたいんですけれども、実は、先生の前の10月10日のやつを何度も読み直しているんですけれども、例えば今日の資料の1、2はわかります。3の再使用と。なぜ再使用なんですか。なぜ有人になるんですか。先生は、利用からのプルでやるべきだと。つまり、利用ニーズ・オリンテッドで考えるべきだということから、無謀な基礎研究計画ができて、最初はいいが、そのうちにしりつぼみする例が多いと。実現可能な計画でなければ、ない方がましだとか、極めて強烈な、私は、ガツーンと殴られたような表現がありましてね。それから、もしロケットにしても、現在のロケットの後追いではなく、いきなり究極の低コストロケットを10年程度をかけて作ると。その間、ロケット開発は、全く金をかけない程度の勇気が必要だとか、非常にインパクトのあるご提言をくださって、なるほど、このとおりやりたい、ビジョンを作りたいと思っているんですけれども、それから見ると、これは何のためにやるんですかということがよくわからない。有人輸送は、私も、素人の直観として、多分、宇宙旅行というのはマーケットができるんじゃないかと。それに対してどうするかということを直観的に言っているんですけれども、専門家の方であるならば、なぜ有人なのか、もうちょっと利用からのプルだというのをはっきり書いていただける方がね。
 それから、再使用も、打上げコストの大幅な低減が目的であるならば、先生は、有翼のやつは、今まで失敗してばかりいるじゃないかと。

 中須賀 

 私が、それを言ったのは、ちょっと誤解されたかもしれませんけれども、非常に短期間でやろうと。要するに、長期的なスパンに立った計画じゃなきゃいけないよということを言ったんです。非常に無理な計画だということを示唆したかったわけです。

 井口委員長 

 ただ、長期計画といいましても、20年、30年先というのは、なかなかわからないし、日本はリーダーシップを取れるわけじゃないから、世界のトレンドがどうなるかを……何て言うか、世界次第なんですね。欧米次第、ある意味では。ですから長期目標もいいんだけれども、しょっちゅう訂正していかないといけませんね。

 中須賀 

 もちろんそうですね。

 井口委員長 

 だから、日本は、長期計画を一度作ると直さないという悪い癖があるまあ、これからはそうじゃないと思いますけれどもね。ですから、長期的な視野はいいんですけれども、ある部分を完全に決めちゃうというわけにはいかないんだろうと。
 ですから、先生のこれを拝見していて、私の直観的には、しばらくは先生のおっしゃる基礎的な基盤技術の勉強をしっかりやると。そこでは、いろいろな選択肢を捨てないで持っている。で、ある時点、将来、ある程度、その方向がわかってきたときにスタートするというようなことかなと思うんですけれどもね。そういう理解でもいいんですか。

 中須賀 

 そうです。おっしゃるとおりです。今おっしゃった最後の、プルである市場という意味で言うと、僕は、有人というのはマストだと思っているんですけれども、なぜと言われると辛いんですけれども。

 川崎委員 

 委員長のおっしゃった中で、私は、ここに書いてあるいろいろな路線の方は置くとして、ニーズとの関連でニーズ決定というので、ものを考える必要があるのかもしれませんが、今の産業化とか、商業化というのをある程度意識するとすると、もう少しグラウンドを広げるという意味で言うと、そういうことを意図しながら、津々浦々で研究する人の人口が増えていくと。そういう研究体制作りというのを一回、3機関から離れて、統合機関とは離れて、そういうのも考えるというのも1つのビジョンだと。こんなことを言うと語弊がありますが、辺境の大学にいても宇宙研究ができると。

 井口委員長 

 ただ、予算なくしてやれというわけにもいかないですから。

 川崎委員 

 ですから、手作りで科研費を取ってやるとか、いろいろな手段をみんな考えながら、あっちこっちでやられるような。

 五代委員 

 その辺境というので、そんなに金がかかる……。ただし、ネットワークを作って、人と人をテーマであれする。それの方が難しいですね。トータル金額は、まずそんなに大きいものではない。

 川崎委員 

 そうですね。中には、奇特な方が出て、ドーンというのもあるかもしれませんし。国が声をかけてやるよりも、そういう信頼を受けた研究をされる方を集めるという方が意味があるかもしれませんしね。何かそういう意味で言うと、ここのところは、もう少し考えてみる必要があるんじゃないかなという気がしますね。何か今まではどっちかというと、集約的にやらなきゃいかんということで、寄せ過ぎたんじゃないかという気がするんですが。

 澤田委員 

 寄せ過ぎたのか、僕はどっちかというと、まだ寄せが足りなかったんじゃないかなという気の方が強いんですよね。ここにも出てくるんですけれども、再使用なり、有人をやれば、安全性が上がります。それは使い捨てのままの技術じゃ、有人なんかできるわけがない。だけれども、使い捨ての安全性も十分に配慮できないで、どうしてできるんですかと。むしろ、そっちの方を僕は疑う。順序からしても、やはり使い捨てというのを徹底的にやっていく。まだまだ今までの事故なんかを見ていても、モグラたたき的ですよね。何か出ましたと。そこだけ、こうですという形なんだけれども、本来は、もっと積み上げというのがあってしかるべき。それは実際の打上げにもつながって、いろいろなことがあるでしょうけれども。だから、そういうことが足らないというものを、一体どうやっていくかということをやらない、また30年遅れで、よそがこんなことをやっているそうだと、再使用型をまねしてみたって、僕は、やっぱり失敗の方が多いんじゃないかと。それだけの失敗の積み重ねて、そこまで来ているわけですよね。そこのプロセスを忘れて、あっちやればこっちがうまく行くよと。どこの大学を受ける勉強をやれば、高校ぐらい入るよと。それはそうかもしれないけれども、高校に入る実力がないのに大学の試験の勉強をやってもしょうがないんですよね。何かそんな感じがするんですけれども。

 井口委員長 

 その点は、1、2でちゃんと書いてありますから。

 川崎委員 

 3、4は、かなり一方で距離を置いていますから。

 栗木委員 

 まあ、私の感触だと、3、4がかなり、さっきおっしゃっておられるように信頼性なり、アボート・ケーパビリティーなんかを持たせますと。まさにディレーティングをやらなければいけないと思うんですよ。したがって、1、2、つまり使い切りロケットよりも、軌道上への輸送能力というのが落ちると思うんですよ。一時的に。そうだとしたときに大事なのが5番ではないかという気がするんですよ。ですから、これは時系列で戦略として考えますと、この3、4というのを心置きなく、スカンクワークでも、いろいろなオプションを検討する。それを焦らないでやるがゆえに、5番が大事ではないかなと。しかも、2番目の使い切りロケットでも、かなりの時間を要するでしょう。十分に枯れた技術に育てるまでは。そういう意味で、これを組にしてやらないと、戦略としては弱いんではないかなと。そういう気がするんです。

 中須賀 

 おっしゃるとおりですね。

 川崎委員 

 今までを見れば、確かにH−2Aというのはいい選択だったと思うんですけれども、N1にしろ、N2にしろ、H−1にしろ、七、八機でしょう。5機とか。まだ初期故障が出尽くさないうちに終わっているわけですね。とにかく駆け足で階段を昇ろうとしたものですから。だから、H−2Aは、そういう意味では初期故障が全部、出尽くして、澤田さんがおっしゃった安定的に信頼性の高いものを完成させるということ。そうすると、それは1本の柱ができれば、それを3本組み合わせるとか、4本組み合わせるとかというふうにどんどん展開ができるという考え方もあるんだと思うんですね。

 澤田委員 

 何か天才的な人が、第2の五代さんみたいな人がいて、再使用型なんかぱっと今できるかというと、それだけの体制も金も、今の現実では、やっぱりちょいと無理だねという話になってくれば、今やっているやつを確実にやるということから出発していく。その延長線の中で、日本独自のものを一体どう色合いを出していくのか、得意分野をどうしていくのかということを詰めていった方が、やはり産業化にもつながっていくんじゃないのかなという気がしますよね。

 五代委員 

 1、2は、大体、皆さんがおっしゃるように、これはともかくH−2Aの、あるいはその上のファミリーみたいなところをまずちゃんとやりましょうと。これが1つですよね。で、3、4の部分というのは、実はこれは研究者、技術者、あるいは思いもかけない人にも興味がある。だから、これは脱兎のごとくやるというんではなくて、興味を持つそういうような人の数は飛躍的に、私は増えると思うんですね。いや、増やさないと、実際にはこれはできない。

 川崎委員 

 増やす努力を、どう政策的にするかと。

 五代委員 

 そういう意味では、地方のコアとかですね。地方のコアを、またあれして、ネットワークを組むとか。そのときに、余り縛りをかけるというのは、とにかくよくないですね。ただ、日本は結構制約が大きいものだから。こんな話がありましたね。ずっとロケットを打ちたいから、種子島で試したいと。実は種子島というのは、ロケット打上げに一番制約があるところですと私が言ったことがある。

 井口委員長 

 別なところで打てばいいわけですね。

 川崎委員 

 内緒で、ある夜、打っちゃうとかね。

 井口委員長 

 今の特に有人に関しては、ここでも何回か申し上げたんですけれどもともかく五代さんもよく言われるように、子供相手に宇宙の話をすると、いつごろ行けるかと。その子供だけじゃないと思うんですけれども、一般の国民の期待というのは無視できるほど小さくはないんじゃないかと思うんです。それに対して、我々は一言も答えてないんです。ただし、はっきり答えられるだけの技術もベースもないことも確かなんです。その間の回答って、どうしたらいいか。ですから、川崎さんの提言で、スケジュール表は今日は出ていませんけれども、2030年とか40年、何をやっていくかというグラフがありますね。あの一番右に、有人というのを私としては入れたいんですが、やっぱり中須賀さんがおっしゃるように、ニーズがない、市場がないところに、そういうものを入れるというのは、またこれはいろいろ問題があるので、その辺、どういう結論を出すかですかね。

 中須賀 

 有人のニーズがないということは、本当にまだそれは確かめられたわけじゃないんで。

 井口委員長 

 あるとも確かめられてないんで。

 川崎委員 

 旅行だけではなくて、もっと「新大陸」でのいろいろな人間の活動というのはあるんで、有人というのは、何か定例文句になっているんですけれども、一般の人にはわかりにくいんですね。宇宙部落の人だけが、マン・アクティビティーズだとか、マン・テンデッド・アクティビティーズというのを、こういうふうな日本語に訳したんで、人の宇宙での活動を保証できるシステムというのができたときには、それは単に旅行のみならず、いろいろなことをやってみたいと思う人がいる。じゃ、お手まりをつけるかとかいっぱいあると思うんですね。だから、私は、それは1つのドリームとして提示するのはおかしくないんじゃないんでしょうか。

 井口委員長 

 宇宙開発委員が全員、そうおっしゃってくだされば……。

 川崎委員 

 私は、そう思いますが。

 澤田委員 

 私は、夢としてするのはいいんですよ。それを政策目標だというのは、ちょっとやっぱり乖離があるんじゃないかと。鉄腕アトムにみんな憧れて、戦艦ヤマトを見ましたと。よかったねと同じ程度に、宇宙旅行という話は出ていますよ。だけれども、今、この時点で、政策目標として、それはどのぐらいの期間が要るんですか。どこまで行けるんですかといったって、どう人間がひっくり返ったって、50年も3代にわたって宇宙船に乗って、宇宙の果てまで行くなんていうことはあり得ないんですからね。まあ、そんなことは夢としては、物語としてはあるんだけれども、それはそれで夢というのはあったっていいんじゃないんですか。だから、夢は夢でいいんです。それまで否定はしませんけれども、政策目標として、何か現実なものと、これとをどうやって結びつけるかということの方が私は難しいなという気がするんです。
 ただ、先は、僕も否定しないんです。確実なものからできれば、その過程になって、人間でも、犬でも、何でも乗っかっていけばいいんであってね。

 川崎委員 

 これは、ちょっと言葉の遊びかもしれませんけれども、やっぱり、そういう夢を実現するステップとして、有人飛行の可能性についていろいろ検討するんだというような考え方は、政策目標足り得るとは思うんですけれどもね。

 栗木委員 

 先ほどの炭酸ガスと地球温暖化と同じで、科学者に細かく問えば問うほど、科学者は良心に基づいて、これはできますとは断言できませんよね。そうしたら、そこを判断するというのは政策なんですよ。先ほどの京都議定書にサインするかしないか。この判断だと私は思いますね。ですから、その判断のレベルは、それはできるとは言わないまでも、進めようとか、ゴー、ノーゴーという判断は政策議論じゃないんですか。

 川崎委員 

 これは別に澤田さんに反論するわけじゃないんですけれども、実は、東大の北沢さんが中心になりまして、日本政府が国民に夢を与えられなくなったのは何だろうというんで、「若者と夢」という題で、心理学者から宗教学者から、科学者から全部集まって、異分野フォーラムを今年の3月にやることになっているんです。要するに、今までは政策的に夢を与えたと。それはいい悪いはいろいろある。例えば陸軍大将になるとか海軍大将になるとかですね。あるいは弾丸鉄道とかですね。それは新幹線で実現するわけでしょうけれども。何か私は、少しみんなが期待する−−低迷する中から、芥川龍之介のクモの糸ではありませんけれども、やっぱり一条の光を、夢を実現するという形で、そのステップとして、いろいろなことを準備するというような。まあ、だから、目標にするというんじゃないんだけれども。

 澤田委員 

 僕は、若い人というのは、いっぱい夢を持っていると思うんですね。だから、昔のころの我々の夢と今持っている夢というか、将来ビジョンというのがなくてもいけると。満足しているわけですよ。持たなきゃいけないとか、何とかというのは、要らんお節介だと言いますよ、彼らに言わせれば。そんなもの、おまえ、今から何を夢として持てなんて、それは、おまえさんたちじいさん、ばあさんたちの時代は必要だったかもしれないけれども、今は要らないよと。おれたちは夢が実現できる。世界中、どこでも行きたければ行くんだから、放っておいてくれということなんじゃないんですか。

 中須賀 

 委員会の中で、ある先生がすごく、私の心に残っているのは要は、今、いろいろ客観的なこととか、将来的なことですね。今さっきおっしゃったように読めないことがたくさんあると。今やることは、客観的に何かを解析して示すことではなくて、意思を示すことだと。それがすごく今、印象に残っていて。要するに、意思を示すことだと思うんですね。すべてが、まずジャスティフィケーションというのはあり得ないと思うんですよね。すべてにジャスティフィケーションを求めたら、恐らく何もできなくなるんだと思うんですよ。そういう意思を持って何かをやるということ、そこから始まるんじゃないかという気がするんですよ。だから、有人をやると……。

 井口委員長 

 アカウンタビリティーというのが今求められていますからね。やっぱり世の中で、それを受け入れてくれないのは……。

 中須賀 

 もちろん、それはだめだと思いますけれども、受け入れてくれるというあれのもとに。というのが、すごく心に残っているんです。

 川崎委員 

 比喩的に言うと、昭和35年に高速道路が1センチもないときに、自動車もまだ、翌日にバッテリーが上がっているような自動車ばっかりだった時代に、高速道路建設法というのを作ったというのは、まさにビジョンだったんですね。

 井口委員長 

 では、また……。今日は、大変議論が進んだと思います。
 それでは、その他がございます。宇宙開発の現状報告を北村さんにお願いします。

 北村 

 それでは時間も余りございませんので、駆け足で御説明いたします。
 今週1週間、宇宙開発委員会関係の活動でございますけれども、先日月曜日ですが、第4回の安全部会がございました。栗木先生の方から御報告があったものでございます。
 それから、内外のいろいろなニュースでございますけれども、10月30日でございますけれども、米ロの合弁企業なんでございますが、一応、アメリカのロッキード・マーチン社が中心でございます。こちらのインターナショナル・ローンチ・サービス社が、日本の宇宙通信株式会社のスーパーバード6の打上げを受注いたしました。宇宙通信株式会社の方のホームページ上を見ますと、もう少し前に決まっていたようなことも書いてあるんですが、我々のニュースとしては30日に入手しています。予定としましては、2003年10月にアメリカのケープ・カナベラル空軍基地から、アトラス2ASを使いまして、打上げられる予定になっております。
 それから、2日金曜日でございますけれども、国際宇宙ステーションのコスト超過の問題につきまして、NASAの方で設置しておりましたタスクフォースが報告書をまとめまして発表いたしております。こちらは、NASAのISSの予算管理につきまして、かなり厳しい指摘をしておりますが、内容的には、管理上の改善点があるという勧告。それから、技術的な成果につきましては、ちゃんと上がっているけれども、もっともっと科学研究上の役割というのが一番大きいんであるから、それに注力しなさいというような内容になっています。
 それから、これは余りニュースという関係ではございませんけれども、一応、11月2日で、ISSの長期滞在が始まりまして1周年ということになっております。
 それから、先ほどのILSの打上げとちょっと似ておりますが、こちらはドイツとロシアの合弁になりますユーロコット社というところがございますけれども、こちらが日本の財団法人であります無人宇宙実験システム研究開発機構が、NEDOの方から委託を受けて開発しておりますけれども、民生用の部品等の実証をしていますSERVICE-1という衛星を作っております。こちらの打上げについてロコットロケットというものを使うということになっております。御参考までに、このロコットというものは、なかなか耳慣れないかと思いますので御紹介いたしますと、これまで、一応3回の打上げをやっておりまして、すべて成功しておりますが、もともとはロシアのSS19というICBMの1段目、2段目に3段目をつけ加えるという形で作られたロケットでございます。もともとのSS19につきましては、140回以上の発射実験の実績があるということで、これまでのロコットとしての打上げというのは、たった3回なんですが、実態上は物すごい実績を持っているというロケットになっております。
 それから、11月6日でございますけれども、これはサイエンス系の問題でございますが、NASAの方から発表がございまして、地球の温暖化の関係につきまして、若干発表がありました。この100年間の気温の上昇が、地球全体で平均すると、約0.6度という発表をしております。地球観測衛星から撮りましたいろいろな画像をもとにしまして、普通に地上で気温を計っているものの補正をして、かなり詳細で正確なデータを導き出すことに成功したという発表をしております。
 以上でございます。

 井口委員長 

 ありがとうございました。よろしゅうございますか。
 ところで、この資料は何ですか。

 芝田課長 

 それは前回の統合準備会議に出した資料でございまして、御参考までに置いてあるだけです。

 井口委員長 

 では、前回の議事要旨につきましては、いつもと同じように、後ほど御覧くださいますようにお願いいたします。

 澤田委員 

 ちょっと中身について。
 運用及び国民の安全の確保というので、災害とかなんとかというので、衛星通信というのは、例の国防上の問題もある。それは大変大きなウェートを持っているんですね。ある意味ではね。それが入ってない。

 川崎委員 

 いや、22日に同じ御議論は、委員の中から出ました。ですから、議題に、いずれされるんでしょう?

 芝田課長 

 これから、ちょっとします。

 澤田委員 

 それなら結構です。

 井口委員長 

 では、以上で第41回の宇宙開発委員会を閉会します。

−−了−−


(研究開発局宇宙政策課)

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