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宇宙開発委員会

2001/09/26 議事録
第34回宇宙開発委員会議事録



第34回宇宙開発委員会議事録

1. 日 時
平成13年9月26日(水)13:45〜15:26

2. 場 所
宇宙開発委員会会議室

3. 議 題  
  (1) 角野宇宙飛行士候補者の基礎訓練終了及びISS搭乗宇宙飛行士認定について
  (2) 「我が国の宇宙開発利用の在り方」について
  (3) 「ロケットによる人工衛星等の打上げに係る安全基準」に関する調査審議について
  (4) その他

4. 資 料  
  委34-1 角野宇宙飛行士候補者の基礎訓練終了及びISS搭乗宇宙飛行士認定について
  委34-2-1 「宇宙開発の方向性について」
  委34-2-2 「我が国の宇宙開発の目標と方向性(たたき台)」
  委34-3 ロケットによる人工衛星等の打上げに係る安全基準」に関する調査審議について(案)
  委34-4-1 宇宙開発の現状報告
  委34-4-2 第33回宇宙開発委員会議事要旨(案)

5. 出席者
 
  宇宙開発委員会委員長 井口雅一
  宇宙開発委員会委員 川崎雅弘
  栗木恭一
  五代富文
  澤田茂生

  宇宙開発事業団宇宙環境システム本部副本部長 堀川康
  宇宙開発事業団宇宙飛行士候補者 角野直子
  九州大学教授 八坂哲雄

  文部科学大臣官房審議官 素川富司
  文部科学省研究開発局宇宙政策課長 芝田政之
  文部科学省研究開発局調査国際官 北村武紀


6. 議事内容

 井口委員長 

   それでは、皆さんお集まりのようですので、第34回の宇宙開発委員会を始めさせていただきます。
   きょうは最初に、角野宇宙飛行士候補者の基礎訓練終了及びISS搭乗宇宙飛行士認定についての角野宇宙飛行士をご紹介するというのが最初の議題でございます。   
   どうぞ。

 宇宙開発事業団 

   最初に、私のほうから。宇宙開発事業団の堀川ですけれども、本日、角野直子宇宙飛行士候補者をISS搭乗宇宙飛行士として、宇宙開発事業団で認定しましたので、ご報告申し上げます。
   前回、1月に古川、星出の2人の宇宙飛行士を認定いたしましたけれども、前回の2人も含めて、日本でプログラムしました基礎訓練に基づきましてこれまで訓練をしてまいりまして、過日、ロシアでの水上サバイバル訓練を終えて、一応基礎訓練を一通り終了しましたので、その後、事業団内の規定に基づきましていろいろ審査をいたしまして、宇宙飛行士の認定をいたしました。細かい基礎訓練の内容については、角野のほうからご紹介させていただくことにしたいと思います。
   ではよろしくお願いします。

 角野宇宙飛行士候補者 

   このたび、宇宙飛行士に認定されました角野と申します。お世話になった皆さんに深く感謝申し上げたいと思います。

 井口委員長 

   おめでとうございます。

 角野宇宙飛行士候補者 

   ありがとうございます。そして今後ともよろしくお願いいたします。
   簡単ではありますけれども、これから基礎訓練、どんなことをやってきたかをご紹介いたします。
   これが、開校式のときの写真です。1999年、平成11年4月に筑波宇宙センターで行いました。基礎訓練は日本がカリキュラムを作りまして、日本が独自にプログラムを作って行った訓練なのですが、とはいいましても、国際間の合意に基づいて、いろいろな国の協力を得て行った訓練でありまして、このときにもアメリカ、カナダ、ヨーロッパの方々が参加してくださいました。
   基礎訓練は合計1,900時間、分類としましては一般教育訓練600時間、語学、英語、ロシア語400時間、技術・教育400時間、環境適応500時間の内訳です。
   まず最初に、一般教育訓練の概要をご説明いたします。
   まず、基礎工学、これは主に筑波宇宙センターで行いましたが、制御、誘導、電子、通信、計算機、またライフサイエンスなどを座学で行いました。そして、ガイガーカウンターなど、これは中性子線を観測するものを、はんだづけで作ったりいたしました。ライフサイエンスは、同じく筑波宇宙センターの実験室にて、細胞の中の核酸分析、電気泳動などの実習を行いました。
   そして地球観測は、鳩山の地球観測センターにてフィールド実習を行いました。また、微小重力化学の分野では、筑波宇宙センターの同じく実験室で、このときは氷の結晶成長実験を行いました。氷の結晶板も3次元的なものがありまして、等方性でなくて、いろんなパラメーターで重力がどのように影響するかというようなことを行いました。そして、もう一つ健康の保持、増進ということで、体力づくりと、それから緊急蘇生の訓練を行いました。
   語学訓練はちょっと写真がないので割愛させていただきますが、次に、技術教育訓練を説明いたします。これは日本の実験棟「きぼう」、JEMですね、そのシステムの訓練を筑波宇宙センターで行いました。基礎訓練は各国宇宙飛行士によって、レベルにばらつきが出るといけませんので、国際間で最低これだけは要求を満たしましょうという合意をしています。その国際要求に基づいて日本がカリキュラムを作ったわけですが、最低限の要求を満たすだけでは味がないということで、日本が独自に考えた訓練というのも幾つかあります。その内の一つがJEMの訓練、JEMには詳しくなろうという目的で行いました。
   そして、これは米国、ジョンソン宇宙センターにおけるスペースシャトル及びステイステーションの訓練、左側がスペースシャトルの座学を行いまして、右側が、これはロボットアームを実物大のモックアップを用いて操作の訓練を行いました。
   次に、ヨーロッパ、カナダでもステーションの訓練を行いました。ヨーロッパではコロンバスモジュールなどの概要を受けました。カナダはスペースシャトル、宇宙ステーションのロボットアームを開発している国です。ですから、ロボットの分野にかけては非常に高い技術を持っておりまして、その本場で学ぶことができました。
   そしてロシア、星の街、ロシアが担当をしておりますFGBやサービスモジュール、そしてロシアの宇宙服の概要などを行いました。
   次に、環境適応訓練のほうに入りますが、まず、筑波宇宙センターの中にはご存じのように、直径10メートル、深さ10.5メートルの巨大な水槽があります。その中に日本の実験棟の「きぼう」の実物大のモックアップを水の中に沈めまして、船外活動の訓練を行いました。これは大体、2回に分けて行い、それぞれ1回、3日間、計2回行いました。
   そして同じく無重量体感なんですが、水の中ではなくて、今度は飛行機、ジェット機の中で体感訓練を行いました。これはパラボリックフライトと呼んでいるんですが、いわゆるフリーフォールの状態です。その間、30秒間無重力を体感できます。その後、また飛行機を引き起こして、そのときには2Gの重い重力がかかるんですが、それを40回ほど繰り返して、無重力での体の動かし方を体感しました。
   これが飛行機操縦訓練、アメリカで行いました。我々、パイロットになることが目的ではないので、飛行機を操縦すること自体が目的ではないのですが、機体の整備の仕方ですとか、英語で通信をしながら、複数のパネル・計器をモニターしながらコントロールする、動作を行うということは、宇宙ステーションの運用にとって非常にいい訓練になります。特に、ロボットの運用に非常に近いものがありまして、下2つの写真は計器飛行を行っている訓練なんですが、計器飛行というのは、目の前をこういうサングラスのようなもので覆いまして、そうすると外の景色が見えないんです。目の前のパネル、計器だけを見て、その複数の計器から機体の状態を的確にリアルタイムで判断して操作を行うという訓練で、非常にロボットの訓練につながるものだと感じました。
   そして冬期サバイバル訓練、これはロシアのモスクワ郊外の雪原の中で行いました。マイナス20度、風が多いときにはマイナス30度近い中で、2泊3日野宿をしました。大きい写真の端っこに、バックに見えているオレンジ色の丸いもの、あれがソユーズのカプセルです。宇宙と地球とを往還するソユーズのカプセル。3人乗りですのでこのときはロシア人のコマンダー1人と、古川飛行士、私の3人で1グループになりました。そして、下の写真にあるようなシェルター、これを自分たちで斧で木を切って作るんですね。あとはたき火をたいたりしながら、2泊3日行いました。
   これが先ほど行いました、水上サバイバル訓練です。ロシアの黒海で行いました。このときは、同じソユーズのカプセルを使いまして、ロシア人のコマンダー1人、ベルギー人の宇宙飛行士1人、そして私の3人で行いました。宇宙服のまま、カプセルの中に入るのですが、狭い空間なのですが、そこの中でオレンジ色の防水服のほうに着がえます。そこで海の上で、下のほうにあるサバイバルキットの、発煙筒ですとか、ライフル、水、非常食などを扱ったものを行いました。
   以上で、ざっと駆け足でなんですが、基礎訓練の概要を説明させていただきました。
   すみません。先ほど日本の特色と言いましたものが、1つがJEMの訓練、そしてもう1つが船外活動、筑波宇宙センターにある水槽の設備を使用した船外活動の訓練が日本で特色となっております。
   以上です。

 井口委員長 

   せっかくの機会ですので、何か質問がありましたら。
   ソユーズのカプセルというのは、入ったまま、上から落とすようなことをやるんですか。それともあれはもう、ただ地上に置いてあるものの中に入るだけなんですか。

 角野宇宙飛行士候補者 

   実際、宇宙から帰ってきました実物のお古を訓練用に使っているわけなのですが、訓練用として、新たに、雪の上に、トラックで運んで、そこでぽんと置きまして、じゃあそこから訓練開始という形で。

 五代委員 

   宇宙服というのは温かいんですか。零下20度をそれだけで大丈夫?

 角野宇宙飛行士候補者 

   冬のときには宇宙服だけですとやはり寒いんです。ですから防寒具、スキーウェアのような綿や空気が入ったものに着がえて。

 栗木委員 

   NASAの訓練などですと、よく予想しないような問題をぱっと出すわけですけれども、サバイバルの最中にそういう問題もあるんですか。予告されないで、急に勝手の違うような。

 角野宇宙飛行士候補者 

   勝手が違うということはありませんでしたけれども、冬のサバイバルのときに、氷の張った湖の上を歩く訓練をしたんです。万が一割れても大丈夫なように、長い杖を持ちまして、人が落ちても杖で支えられるようなという状態で行ったんですが、あるときコマンダーがふっと自分で倒れたふりをしたんですよ。そのときに我々がどう反応するかを見ていて、一生懸命引き上げるんですけれども、もっと早く引き上げないと沈んじゃうんじゃないかみたいな形で、そういったことはありました。

 澤田委員 

   角野さんが一番最初に選ばれたときに「火星探査があったら行きますか」という質問をして、もちろん行きますというお話でした。お若いですからまだこれから十分チャンスがあるわけですが、今はもちろんまずは宇宙ステーションの搭乗員なんですけれども、そのときにはそういった作業をするコマンダーとして働きたいですか。。

 角野宇宙飛行士候補者 

   それは夢ですね。今は宇宙ステーションに日本が参加していますけれども、もっとそれで日本独自の宇宙輸送システムをつくって、そのコマンダーになれるというのは、また、新たな時代の夢でしょうし、私としましてはもしできるのであればそうなれるようにと思っていますが、まずは地道に訓練を。

 澤田委員 

   そうですね。我々もその夢を何とか実現する方向に持っていきたいと思います。

 井口委員長 

   だけど行けるとは思えない。我々自身は行けるとは思えない。

 澤田委員 

   我々は行ってらっしゃいのほうですから。

 角野宇宙飛行士候補者 

   いえいえ、そんなことはないです。ジョン・グレンさんも。

 澤田委員 

   グレンさんが。また行きたそうだし。

 川崎委員 

   委員長の日ごろ言っていることですと、宇宙飛行士を卒業されて、コマンダー兼社長として宇宙旅行会社でもベンチャーでつくられるというのはどうでしょう。

 井口委員長 

   20年ぐらい後になりますかね。

 川崎委員 

   20年ぐらい。時々社長みずからコマンダーとして、またはガイドを兼ねて。そのようなことになったらいいですね。

 栗木委員 

   今、見せていただいたようなカリキュラムを受けられて、大学に持って帰ってこれはやってみたいというようなことはございましたか。大学でむしろこういうカリキュラムを教えるべきだとお感じになったようなものはございますか。
   田辺研におられたと聞いたものですから。どういう仕事をやっておられたのかは存じませんけど。

 角野宇宙飛行士候補者 

   私自身、航空学科の出身でして。ただ飛行機そのものに触れる機会はなかったものですから。自分で小型の飛行機を操縦するということや、整備から運転から全部やる、そういう機会はありませんでした。

 栗木委員 

   航空学科は買うべきですね、飛行機。

 井口委員長 

   細かいことですけど、略歴を見ますと修士に3年おられたのですか。

 角野宇宙飛行士候補者 

   はい。

 井口委員長 

   1年は宇宙のための準備か何かしておられたんですか。

 角野宇宙飛行士候補者 

   ずっと1年間休学をしておりまして、その期間、アメリカのメリーランド大学というところに留学していました。

 井口委員長 

   そうですか。それはもうNASDAに入ることが決まってからですか。

 角野宇宙飛行士候補者 

   いえ、決まる前です。

 井口委員長 

   そうですか。五代委員と栗木委員は大学の大先輩であられるわけで、何か激励の言葉でも何かありましたら。

 五代委員 

   大いに期待していますし、学生もただ座学だけでなくて、もっと幅広い、いろんな航空のことや、そういうことだけではなくて広い学問を……。

 井口委員長 

   文化的な。

 五代委員 

   文化的なものも含めて、やっぱり広げていただきたい。

 栗木委員 

   後輩にたくさんおみやげを持って。

 角野宇宙飛行士候補者 

   そうですね。はい。

 栗木委員 

   航空学会に入ってください。

 井口委員長 

   それでは以上で第1の議題を終わらせていただきます。どうもご苦労さまでした。これから頑張ってください。

 角野宇宙飛行士候補者 

   はい、どうもありがとうございました。

 井口委員長 

   第2番目がきょうの主要議題でございます。「我が国の宇宙開発利用の在り方」について。九州大学の八坂先生に来ていただいております。どうもありがとうございます。
   それでは最初に、八坂先生に我が国の宇宙開発ビジョンについて、先生のお考えを承りたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

 八坂教授 

   どうもきょうはこういう時間を与えていただきありがとうございます。
   実は日ごろ、部会の席で専ら質問をする立場でして、それで言いたいこともあまり言えない、あるいは聞きたいことも聞けないという、大分腹にたまっていることもありまして、きょうは好き勝手を言わせていただきたいと思っています。

 井口委員長 

   質問の立場に回りますので、よろしくお願いします。

 八坂 

   それで、まず最初に少し、青臭いことも申し上げますので、資料にございませんけれども、どういったことをやるか、話しておきます。
   まず最初は、私たちと宇宙のかかわりというのを、私の考えなんですけれども、少し述べてみまして、それから宇宙開発の宇宙活動、これは一体だれが担うものかなということを考えてみます。それから産業としての宇宙ということを考えました。国の役割をこの中からピックアップすればよいかと。最後に、類型化の視点ということで幾つかまとめたいと思っています。
   ここにありますのは、我々といいましても生物から個人までいろいろなレベルで分けまして、宇宙とどう関連するかについて書いておりますが、これは勝手な言い方なんですども、この中で一番感じますのは、人類というものが宇宙と非常に密接にかかわっているということです。文明発祥のときから科学技術の進歩、これは宇宙というものと切り離せない。今から見れば、もし「心(元気さ)」というのがありますけれども、元気さが宇宙かというのはよくわかりませんけれども、逆にその宇宙ともしアクセスできないということになったら、我々人類は非常に元気をなくすのではないかということで、そういう意味では元気のもとというふうに考えております。
   これは個人の考え方にも実は直結するわけでして、一番下にもありますけれども、それぞれの人は豊かさや安全といったものを求めますけれども、今、宇宙は生活の利便さとか、こういったのを提供するようになってきているわけですね。
   それからもう一つは、科学技術への興味、これに宇宙というのは大変大きな役割をしているし、それから未知への好奇心というのは、これは個人が、どうしてかわかりませんけれども、みんな非常に持っている。宇宙というものが、これを満足させる非常に大きなものになっているわけです。だから、個人と人類というものは実は、グルグルッと回って確認できるんだと思うんです。ただ、この中で国家、あるいは企業というレベルになりますと、一体、宇宙とどういうふうにかかわるかというのはあまり自明じゃないように思うわけです。
   まず、だれが活動を担うのかというのは、全般的なことを考えていきますと、これは宇宙に限らず、あるものの初期の発見、研究というのは個人が大体やるでしょう。それをその企業が利用するということで、自動車、飛行機、こういったものは全てそういった経緯をとっているんです。
   ただ、あるものは国家目標というものがありまして、これを国が管理する場合がある。例えば明治のころに鉄鋼でありますとか、繊維とか、こういったものは国の管理でやった。それがそのうち私企業に移管されたということがありました。
   宇宙はどうかといいますと、これはもう国の管理下で発展してきたわけです。ただ、ご存じのように1920年代には、特にドイツの個人的なグループが非常に活発に開発活動をやった。それが最終的にはナチスのほうに吸収されていったわけですけれども、その後、冷戦の時代ではもちろん、国家が宇宙をやるということが定式化したわけです。これは考えによっては非常に不幸な時代といいますか、軍用としてどうしても宇宙を使うという時期に当たっておりましたので、自然的に国の管理下で発展したということになったのではないかと思います。
   よく言われるのは、非常にコストが高いから国でなければできない、といったことがありますけど、むしろこれは付随的なものではないか。ただ、現在、世界的にはかなりの部分が民間シフトしてきているわけで、これはほかの産業と同列に復帰しつつあるということ、つまり、国の管理下でやってきたということは、ある意味ではいびつな発展の仕方じゃないかなと思うわけです。
   したがって、下にありますように「宇宙開発は国が主体」ということは、実は自明ではないのです。国というのはやはり税金を取るとか法律をつくる、外交、軍事、教育、こういったものは国が専らとすることです。その中で宇宙はやはりそれとは多少違った意味合いを持つのではないかと考えます。そうすると、先ほどありました宇宙をだれが担うかということになると、やっぱり産業に非常に期待が持たれるわけですけれども、では、宇宙というものは本当に投資の対象として成り立つか、つまり産業として成立するかということです。そのためには、需要がどうであり、それを満たして利潤を生むかどうか、つまり需要とそれを満たすための利用可能な資源、この関係で産業として成り立つかどうかが決まってくるように思うわけです。
   まず、需要のほうを見ますと、ここに挙げましたのはいわゆる現在、何とか産業として定着しつつあるような狭い意味の宇宙産業と書きました。それに対してもっと広いものがあるのではないかと思うわけです。これを周辺産業と呼ぶことにいたします。今、周辺産業までなかなか広がっていない。実はこういったプライマリーな産業は、最終的にはこういったところまで広がってきて、そこに非常に大きな需要を見出すのではないかと見るわけです。
   例としてGPSを挙げてございますが、これは軍用でできたシステムが、特に日本では非常に大きな産業を産業を生み出している。これは思いがけなかった現象かと思うのですが、こういったものをこれからどんどん見つけ出す、開拓していく必要があるのではないか。大変口幅ったい言い方なんですけれども、需要がもしないならば、宇宙開発というものも大変疑問であると思っています。
   一方、利用可能な資源というのは人材、技術、資本といったものがあるかと思いますが、国内ではこれは絶対的、相対的に他の国に比べて不足している、とはよく言われることです。このようなことで「国内での自立が困難」、これが残念ながら現状かと思います。
   では、そのことを踏まえて、国はどうかということですが、国というのはやはり非常に大きな立場に立つわけで、一番下にありますが、宇宙のコミュニティ、これは大変失礼ながら宇宙開発委員会そのものもこの一部かと思いますが、これらの利益のさらに上位に位置する国家目標などがあって、その中で宇宙というものがどう位置づけになるか、というふうに見るべきではないかと考えるわけです。
   国家目標とは一体何があるか、これは勝手に並べてみました。技術立国というのは既に言われていることで、これは問題ないと思います。あるいは文化立国、教育立国、環境、軍事、軍事は日本では適応されないことと思います。右のほうは勝手に設定しましたものですが、これらの国家目標があるとするならば、宇宙はこれに対してどういう費用をなすか、あるいはどういうことに関連するかということを挙げたつもりでございます。
   そういったことを踏まえて、では重点化についてどういうふうに考えるか。左のほうに挙げましたのは、今年の6月28日に設定されました国の基本計画に当たるものです。その方向性としてここにある4つの項目が挙げられております。それで、実はこれを諸外国の同様なレベルといいますか、ニュアンスの文章、言い方と比べてみますと、もう少しストレートに言ってもいいのではないかなという気がします。そしてもう一つは、こういう国の方針というものは、ある意味でその国自身のエゴが出ても構わない、あるいは国がやるからには国のエゴというものは当然、あってしかるべきだと思うんです。そういう意味で1つは「産業力強化」ということで、国がやる宇宙のポリシーとして非常に大きな意味合いがあり、これを明確に位置づけたらいいのではないか。これは今の基本計画の中にもちろん含まれております。ただ、それをもう少し明示的に示すのがよろしいのではないかと思うのです。
   それから2つ目は、「科学、技術、文化の発展」ということで、これは申すまでもないことですが、最後に成果の国民還元ということを挙げてございます。これはやはり、国がやった施策に対しては国民がその益を受けるというのが当然なわけで、これをしっかり考える必要があるのではないか。
   3つ目に、「環境の保全」ということを挙げておりますけれども、実は私はこの専門ではないのでよくわからないのですが、おそらくこれが非常に大きなキーワードになるのではないかと見ています。
   次に、「産業支援」について見ますと一体何があるのかということです。まず、最初に挙げましたのは、国の基本方針として宇宙産業強化という、これは国全体としての取り組みということで、文部科学省だけではなくて、やはり国全体としてこのような方針を出すのがよろしいのではないかと考えます。それから2つ目に、需要ですけれども、これは先ほど言いましたように、狭い意味の宇宙産業だけでは需要というのは十分ではないということがはっきりしております。そこでそれを支える周辺産業まで需要を開拓する。ただし、これは「もちや」への条件づくりでありますが、国はやはりあまり得意ではないのではないか、これは企業などが需要を見きわめて、それを評価する。「もちや」というのはそういう意味でして、それに対する条件づくりを国がやる。
   例えば、インフラを整備する、それから利用条件の設定、例えば宇宙ステーションも端的にはそうですが、一体どれだけのプライスでやるのか、あるいはそのプライスに対して国はどういう姿勢でやるか、こういった条件を提示して需要を生み出す、そういうものをつくっているのではないか。結局これは社会的には雇用の創出ということにつながると思うのです。これは非常に大きな意味合いがあるのではないか。宇宙で雇用創出というのはまだまだ、とつい考えがちですが、やはりここまで視野に入れる必要があるのではないか。
   それから具体的なことで、私は得意ではございませんが、税的な優遇措置など、国としてのいろんな産業誘導の施策があると思っております。
   それから、再利用を主眼としたシステム開発。これは国が何か技術開発するのは当然で、ただしそれは開発のための開発ではなくて、これはやはり何かに使っていくもの、再び使っていくもの、であるべきだと思います。それで、企業で可能な開発はぜひ企業独自でやってしまう。国の開発は、どこまで再利用を視野に入れたものかは、私から見れば多少疑問が残ります。例として衛星バスと書いてますが、技術試験衛星のシリーズがございましたが、あれはどれを見ても衛星バスの開発が入っております。なぜ開発が入るか。これは開発の要素がないと国としてやるべきではないという、一つの答えが確かにあったかと思うのです。必ずしもこれは開発が必要ではなく、すぐさま使えるバスやいろんなふうに使えるバスをつくってしかるべきではないか。残念ながら技術試験衛星のバスが2度使われた例は今までないと思います。
   そしてよく言われる「国の最低需要量の確保」、これは当然あるかと思います。
   最後に、301条の呪縛からの脱出とありますが、これはいろんな意味で「301条があるから」と考え方に制約を受けることがあるように感じます。これは、もうそろそろ見直してもいいのではないか。その見直し方にはいろいろあると思いますが、これは細かいことを言う必要はないかと思います。
   それから次の「科学、技術、文化」。これは国がやるべき非常に大きな項目になりますが、まず最初にあります「宇宙探査による新しい科学知見の獲得」、これは当然のことでして、従来以上の重点化と書いてございますが、これはいろいろな場面で取り上げられると思いますので、ここではこれ以上述べません。
   「先端技術開発」についてはやはり従来どおりやっていくものだと思いますが、やはり産業化へのインパクトを十分考慮したやり方、そしてこの技術開発はゆくゆくはある具体的なプロジェクトがあり、それへの先行投資として見るべきであって、そうなるとプロジェクト自体の効果、それに要する費用、これらを厳密に見て、評価し、その上で開発項目を選定する。現在、宇宙開発委員会で一応評価を聞いて審議されるわけですが、評価についてはもう少し科学的に耐え得るといいますか、もう少し厳密な意味の評価が必要ではないか。欧米ではこの評価を重要視してやっております。ある意味で、あれはただの数字の遊びだという見方もございますが、それでもやはりもう少し厳密な評価が欲しいように感じます。
   そして最後、実はこれは今までの宇宙開発においてあまり強調されていないことで、「教育の成果の国民還元」。これは幾つかあると思いますが、ここに2つばかり挙げてございます。まず、若い世代への教育ということで、こういった教材を作成して配布、あるいは教官の講習をやる。つまり学校の先生が、これは文部科学省ではそんなことは突然言われても困るということかもしれませんけれども、若い人にこの成果をぜひ広める、これが結局は科学マインドあるいはチャレンジ精神の醸成につながってくる。だから若いうちにやるのが効果的であり、やはり税金を使った、義務といいますか、こういった還元の仕方があるかと思います。
   それから大学に対しては、例えば宇宙センターというものを設置したらどうか。これは例としてNASAのやっておりますSpace Grantがございます。米国大学のおよそ十幾つの大学にこういうSpaceGrantコンソーシアムをつくりまして、そこで自主的なプロジェクトを設定させている。これは非常にいい例かと思います。この場合、日本で一番問題になるのは実は人材です。こういったものをつくるとして、一体誰がその面倒を見るかということ。例えば大学の教官がやるか。これはできないことはないですが、非常に苦しいです。できる大学がかなり限られてくる。では若い人を育てるかというと、もちろんそれはいいのですが、私はここにOBの活用ということを提案したい。つまり、宇宙開発で非常に経験を得た人がたくさんいらっしゃいます。そしてこのような方はメーカーにもいらっしゃいます。そういった方が退職された後にこのような若い人の教育に従事していただくと、一石二鳥といいますか、我々大学側にとってはそういった方に来ていただくと大変ありがたいと思うんです。
   それから「環境保全」につきまして、実は先ほど言いましたように専門家ではないのですが、地球観測の成果について、これは地方公共団体がもう既に使っていらっしゃいますよといったことをよく説明されます。私が九州で話をして県や市に行きますと、「実はあれはどうやっていいかよくわからない。ほんとうに使いたい人にまでこれを下ろすにはどうしたらいいかよくわからない。」とおっしゃるので、果たして地方自治体にまで届いているということだけでよいのかどうか。最終の利用者まで届くような施策が必要ではないかと考えます。
   そして、環境といっても地球環境だけではなく、宇宙環境から逆にもっと身近な生活環境までということで、今、私がたまたまデブリをやっておりますので、こういったものを挙げております。
   それから個人の生活との接点ですが、これは先ほどのことにも絡んで、例えば有明海のポリューションなどは非常に大きな社会問題になっているわけですが、そこに関して地球観測衛星から観測したものが使われて、それがどうだといったことは一向に述べられない。これは大変残念なことで、実はやっていらっしゃるらしいのですが、なかなか自信を持って言い出すところまで行っていない。例えばこのようなところが非常に衛星が使えるところ、ほんとうに個人の生活で役に立ったなと思われるところ、かと思うのです。ぜひそこまで行くべきではないか。
   あとは、これからやるものに対しての評価は必要だということで、当然のことです。
   それでまとめということで、実はこれはまとめではないのですが、今まであまり言われていないことが少し書いてあります。
   まず最初は、宇宙開発ということについて、これは産業化が可能なものは移行させるということは当然ですが、さらに国は積極的に国内産業強化を支援するという立場を出すべきであろう。これが最終的には雇用拡大につながっていきます。
   それから「宇宙開発」という言葉ですが、これはアクティビティの代名詞になっている。ただこれはある意味では非常に重い。例えば産業支援であるとか文化科学、そういったことは「開発」なのかという疑問がある。そして現にNASDAでは、開発項目でないものは大変やりづらいということがあるので、今後おそらく法整備などがなされるでしょうが、「開発」という言葉の使い方は、十分注意いただきたいと思っています。
   それから実用面の「開発」ですが、これは最終的な産業化がどうかということも含めて定量化して優先度も設ける、これは当然のことです。
   それから「人材の育成」、これはバックグラウンドを申し上げますと、宇宙プロジェクトのためだけでなく、と書いておりますのは、ご存じのように宇宙開発事業団設置法では人材の育成という言葉はございますが、これは宇宙開発のプロジェクトをやるための人材の開発ということに限られているわけです。しかもそれを括弧しまして、大学における教授研究を除くという書かれ方になっているわけです。これはぜひ改めていただきたい。やはり人材の育成というものはもっと広く国の力、これを強める意味での人材というふうに見ていただきたい。そういう意味で、宇宙の成果を国民にそのまま教育の場で還元するということをぜひお願いしたいわけです。
   それから、最後にだぶりますが、人材層の薄さ、これは痛切なものがありますので、これはOBの積極的な活用ということが重要かと思います。
   最後に、書き物にはなっておりませんが言いわけを。このことはよく聞かれることでもございます。これは言いわけではあるけれども全く事実なわけですが、これからのことを考えるためには、これらをどう克服するかということを考えていくと、おのずからやるべき方向が出てくるのではないかと考えますので、大変蛇足ながら、最後につけ加えさせていただきます。
   以上でございます。

 井口委員長 

   どうも大変示唆に富んだ、また、我々を勇気づけてくださるお話、ありがとうございました。質問させていただきたいのですが、今やりますと先生おひとりを我々5人がつるし上げるということになってもいけませんので、我々が前回まで議論しましたことをもとに、事務局が我々の案をつくってくれていますので、そちらも簡単に説明させていただいて、一緒に議論させていただきたいと思います。かなり先生の内容に近いというか、そういう内容ではないかと思いますが。では、芝田課長お願いします。

 芝田宇宙政策課長 

   資料の34−2−2でございますが、我が国の宇宙開発利用の目標と方向性(たたき台)というものでございます。総論に近い部分をまとめようと思ってたたき台をつくりました。
   冒頭ですが上から3つの○についてですが、これは中長期戦略でも言われておりますように、資源量に比べてこれまでの宇宙開発活動、宇宙開発事業の活動範囲が広がり過ぎていた傾向がありますので、国の厳しい財政事情も踏まえまして、重点化を図っていくことが必要であるということです。その重点化を図るに当たって、目標を明確にすることが必要ということで、5番目の○にございますようにまとめてございます。「宇宙開発利用の究極的な目標は、人類の文明の発展を目指して宇宙空間での活動を展開し、未知なるフロンティアを開拓すること」。そして重点化を行うに当たりましては次の○にございますように、「国民にとって優先度が高く、国民の理解が得られるものを提示していくことが必要」ではないか。その第1といたしまして、これは総合科学技術会議の推進戦略でも掲げられております、国及び国民の安全の確保、そして情報収集について明記してございます。
   2ページ目の冒頭の○は、その安全ということにかかわりまして、こうした宇宙関連技術は安全保障にかかわるので、独自に確保しておくことが必要ということです。次の○が、重点化の視点といたしまして、国民の生活の質の向上ということでございます。1つ飛びますが、中でも地球環境観測、これは人類の生存基盤である地球環境の保全に大きく貢献するということで、特に重要性が高いのではないかということでございます。それからその次に、宇宙関連産業をはじめとする宇宙開発利用を通じた産業の活性化も経済成長、そいて雇用・所得の増加に貢献するということです。これはひいては国民生活の質の向上に寄与するということで括れるのではないかと思います。最後に、人類の知的フロンティアの拡大ということで、国民の夢やロマンに応える。それから知的国際貢献を通じた国際的地位の確保及び国民の士気の高揚。
   こういう大目標を掲げた上で、国の公的機関が公的資金で重点的に行う分野を明らかにすることが必要であるということで、2ページ目の一番下の○がその考え方を示しておりますが、市場原理では提供されないものを公的機関が提供するのであるということで、1が安全のこと、それから地球環境観測等の公益性の高い活動。3ページ目の2が、長期的には産業化できるけれども、現段階ではリスクが高い先端的な技術開発や技術実証。将来的には産業化できるという場合には、公的資金により長期的な先行投資を行うことにより、市場競争力を持つ可能性があることが必要ということで、その見きわめが大事ではないかということです。最後に、宇宙科学であります。
   4ページ目は、今の分類を表的にあらわしたものでございますが、一番右側に方向性ということで、今の考え方に沿って今後重点化していくべきもの、あるいは民間に移すという形で、国が少しフェードアウトしていくべきものというのを少し整理してみたいということで、考えてみました。
   まず、1番目の国及び国民の安全の確保につきましては、情報収集的なものは、これは継続的に今後も国が行う。支えるという意味での輸送系も国が低コスト化、高信頼性化を図っていく。それから測位につきましては、これまで以上に積極的に国が推進していく。
   2番目の「国民生活の質の向上」ということでは、先ほどございました地球環境観測は今後も継続的に国が行っていく。情報通信につきましては、これはむしろ民間のほうに移行していくべき分野ではないか。宇宙環境利用も同様でございます。地表観測については、情報収集と統合したような形で継続的に国が実施していくべきではないか。宇宙滞在、これは30年後ぐらいには観光として商業化できるのではないかという見通しのもとに、将来は商業ベースで行われるということを前提に、その先導的な部分を国が実施していってはどうか。
   最後に、知的資産の拡大ということは、継続的にこれは国が行う分野ということです。
   5ページ以降は平成6年に作成されました長期ビジョンの表が書いてございます。何年ぐらいにはこういうことが実現するのではないだろうかという、これは網羅的、ある意味総花的に全分野にわたって予測が書いてございますので、これをもとにして特に重点化を行うべき分野というのを考えていくべきではないかということで提示してございます。
   以上です。

 井口委員長 

   どうもありがとうございます。それでは八坂先生のお話と、今、芝田課長から話がありましたたたき台を含めて、ご議論いただきたいと思います。
   八坂先生、何かご質問ありますか。今のたたき台について、方向はかなり似ているような気がするのですが。先生ほど全てを網羅したという議論にはなってませんが。

 八坂教授 

   いや、私のほうがむしろ網羅し尽くしてないわけなんですが。
   1つ感じましたのは、民間に移行できるものはやっていくということですね。それは当然なのですが、国は「移行するだろう」ということを見たらそれをやらないというだけなのか、それとも今やっていることをもっと積極的に移行するという立場をとるのかどうかということですね。僕はそれが非常に大きな差だと思うのです。

 井口委員長 

   私の個人的な考えでは、少なくとも今までよりははるかに積極的に民間に移していくということではないかと思っておりますが。

 川崎委員 

   特にこういう技術は、特許が移ればいい、と人が言うほどそんなに単純なものではなく、あくまで人の異動まで伴うものなのです。そういう意味で言うと、今のトランジェントの時期にどういうことをやるかというと、まずお互いが経験を共有できるような実証、民営化できる実証のためのデモンストレーションプロジェクトみたいなものをつくるというのも1つの中間的な段階として必要で、その後に税制的な優遇措置といったような助成を行うのだろうと思います。それが大体、WTOのルールから見ても、ルール違反ではないやり方だろうと思います。
   そしてもう1つは、一企業の立場で考えた場合になかなか整備できない、つまり地上で一回試験してみるというような試験設備をもう少し使いたい企業、あるいは使いたい大学の学生が使えるような環境づくりが必要で、同じものを何度も繰り返しつくるという体系ではまだないと思いますので、そこは必要だろうと思います。そういう意味では、先生がおっしゃっていた「アンカーテナントはやはり依然として国だ」というのは、これは何も日本だけではなくて、アメリカだってそうですし、ヨーロッパだってそうなので、ちょっと日本の議論のほうが民間企業のレベルも評価しないで、先走り過ぎていると私は思っています。

 八坂教授 

   よろしいですか。もう1点ございまして、教育についてはいかがでしょうか。私が聞いてもよろしいのでしょうかね。

 五代委員 

   教育は全部直さなければならない。

 井口委員長 

   大学の先生にいつも言われるのは、宇宙関係の学科を出る卒業生がたくさんいるのに就職先がないということで、今までで一番言われている感じがするのですが、そういうことであればやはりまずマーケットをつくる、そしてそれを拡大していくということ以外に吸収する先はないわけですね。そういう意味から言うと、今の宇宙産業というのは、これは私の個人的な感じですけれども、今の日本の宇宙産業というのは開発産業であって、利用産業ではないんです。利用するマーケットや分野が大きくなって初めて、宇宙産業が大きくなるということではないかと思います。では、利用産業をこれからどうやって拡大していくかというと、それがそう簡単ではない。そこに我々の知恵が必要なのではないかという印象で、あまり答えにはならないのですが、そう考えています。

 八坂教授 

   確かにごもっともなご意見でして、痛いところなんですね、就職先がないのは。実は、私としては、それはもう割り切っておりまして、つまり、我々のところを出た学生は実は宇宙産業でなくても、ほとんどどこに行っても非常に好評を持って迎えられるわけですね。こういったシステム的な思考をする教育をやっていれば、どこにでも対応できるわけです。そういう意味では、何も宇宙をやるための人間をつくるのではなくて、そういった何かプロジェクトをきちんとやっていく、そういう人間を育てるのが我々の使命だと思っておりまして、確かに宇宙関係で就職があればよろしいのですが、今でも、我々としては十分役割を果たしていますし、よいのではないかと思っています。むしろそういう機会をもっと増やして、そういったことをやるチャンスを多くの学生に与えていかなければいけない。それをもっと若いレベルまで落としていく。これが一般には広報活動ということで行われておりますけれども、やはり広報活動ともっと踏み込んだ形の教育をするという、そういった面にものすごく積極的な意味があると思います。

 川崎委員 

   この宇宙開発委員会に十何年ぶりかに戻ってきて、今までの世界とちょっと違うと思ったのは、私が前にいた科学技術振興事業団で言われていたことで、「日本の研究者の中には、いろいろ研究テーマがあるが、いわゆる思いとか志というのが見えない。」というのが、反省点として非常に強くうたわれていまして、この宇宙開発の分野でもいろいろお話はあるんですが、宇宙飛行士の角野さんみたいな、ある志とか思いを持って何かやろうといったことは単純な教育カリキュラムで伝わるものではないんですよね。私はそこのところで、日本の人材教育の欠陥と言いますか、あらゆる分野の問題と一緒で、どうやってその高い志とか清い志とか思いというのを伝えるかというところを、やはり宇宙でもその思いの一つとしてあこがれの対象となる「フロンティア宇宙」があるのだといった、何かちょっと次元を超えたものを感じられないことが、この宇宙開発委員会で扱うべき問題ではないのですが、ちょっと寂しいなという気がします。

 井口委員長 

   ほかの方、澤田さんどうですか。

 澤田委員 

   私も八坂先生のもう一つのペーパーで一番違うと思うのは、下のほうの教育、ここの部分だと思うんですね。これは世界どこでも宇宙と教育というのは結構議論されているんですが、日本では実際の活動はされていますが、もとのところできちんと理念がない。ここは文部科学省で、教育を担当するところでありますし、そして宇宙開発委員会も文部科学省内にあるわけですから、この辺りをこれからもう少し議論して、どこがネックになっていてうまくいかないか、どういう理念でやっていくか、どういうやり方でやるべきかというその辺りを、これは八坂先生というよりも事務局のほうに伺ったほうがいいのかもしれませんが、これから議論していかないといけないのではないかと思うのです。

 栗木委員 

   八坂先生のお話も伺って、それからの産業とは何ぞやという話もふだんから考えているんですが、1つは現在のあり方を、研究、開発、そしていわゆる商業利用と、3つのフェーズをで並べてみますと、日本の場合には研究は大学が中心、開発は実施機関が中心、利用と商業利用は企業が中心、と極めて縦割りになっているような、壁があるような、もう皆さんの意識がそうなっているような気がします。実際にご存じのように、元気のいい国に行きますと、企業の中でも研究をやっていますし、その研究のモチベーションが商業利用から発するような研究であって、大学の先生が思いつかないような研究も出てきている場合があるんですね。そうすると、今言ったような「機関の縦割り」というのは何ぞやということになります。今後おそらく大学も独立行政法人化して、特に工学部の場合は、ある意味では工学の社会的な置かれ方として、やはり最終的には「社会へのいろいろな技術の還元」が念頭にあると思いますので、「大学は研究だけ、開発はやらない、利用は考えない」ではなくて、むしろ研究以外からのモチベーションがないと大学自身が活性化しないのではないか。
   企業の場合も、例えば需要開拓は産業そのものに任せるというようなことがありましたが、これについては実際に国がファンドをつぎ込む場合に性善説と性悪説との両方を感じてまして、性善説でいきますと企業の能動的な立場で「これは自分のところに任せてほしい、国がかえって邪魔してくれないほうがいい」という考え方になりますが、一方で人材を養っていくために、ただただプロジェクトがもらえるとか、うちが食いつないでいけるといった、やや腰の引けた性悪的な産業のスタイルも、またときとして目に入るのですが、そういった点では産業界にも望むべきことが多々あるのではないか。
   それが一番如実にあらわれるのが学会でして、学会のあの活性度のなさといいますか、全く学会の発表というのは大学の持ち物みたいになってまして、産業のほうからも自分がこういう研究をやって、むしろそこから先は大学にゆだねたいといったことがあまり見当たりませんね。それはある人に言わせると、会社から見ると「学会活動というのは余分な仕事をしている」ぐらいに言われるそうですが、もっとそういう人事交流まで含めて、その垣根を取っ払うべきではないか。そうしないと一体となった国の政策やトータルとしての戦略というのは縦で割っている限りは出てこないのではないかと、常々そう感じています。大学におられてどんな感じでしょうか。

 八坂教授 

   いろいろな見方がありますけれども、やはり研究だけというのは非常に少なくなってきているんじゃないかと思います。最終の需要まで見越したような研究が好まれるといいますか、少なくとも推奨される。やっているかどうかは別としまして。そういう方向に行かざるを得ない情勢でもあるし、我々もできるだけそういうふうにやろうと思っています。
   学会につきましては確かに、これはまた痛いところでして、学会そのものの見直しも必要だと思います。

 井口委員長 

   日本機械学会は何とか変えようと思って努力しましたし、今でも続いていると思います。その議論まで行きますとちょっと。もっとほかにもいろいろ議論する点があると思うんですが。
   芝田課長、教育というキーワードを入れておいていただけませんか、忘れないように。

 芝田宇宙政策課長 

   もっとも全分野が最後に行き着くのは教育になりがちでございまして、そういう問題があるんですけれども。

 井口委員長 

   そういう意味で、教育の問題というのは非常に広い問題なんですけれども、宇宙教育に関してはどうでしょうか。
   触れたいとは思うのですが、宇宙3機関についても議論がきょうから始まるんですけれども、そういった場でどの部分を受け持つかという議論はしたほうがいいのでしょうね。

 川崎委員 

   ただ、教育というとやや制度論的になるので、私は人材養成などの話のほうがより広い感じになるのではないかという気がしますけれども。

 五代委員 

   今お話があったように、先生のお話を聞いて「国について」と言うけれども、その時にすぐにここで我々が議論して、宇宙開発事業団がやるべきことと、国がやるべきことというのが何かごちゃまぜになってしまって。国はこれからこうあらねばならないといったときに、我々の議論はどうもNASDAに重点を置いた形で議論しているのですが、本当に「国はここからここまでをやらない」と宣言していいのかどうかについてはやはりいろいろ問題があると思う。今おっしゃったように研究と純粋研究と開発利用を含めたようなものに対する取り組みも、もちろん大学もやってもらわなければいけないでしょうし、国の研究機関もいろいろありますし、この分野はもう民間に任せるんだから一切やりませんよという話でいいのかと。安易に「国」というのが何か漠然と使われ過ぎているような気がするのです。そこの部分を少し誤解を招かないように区別しておかないといけないのかなという気がします。

 川崎委員 

   英語にするとき、いつも困るんです。

 五代委員 

   困る。国の宇宙のかかわりはこうですよと言ってしまった途端に大きく矛盾することになる。

 栗木委員 

   政策を立てないと。

 川崎委員 

   多分、日本人が一般に「国」と使うときは、大部分は「政府」と置きかえるのではないかと思います。そうするとどうなのかというと、これは国家論になるんですが、国民より政府が先なのかという議論になって、例えば芝田課長のほうから出されたもの、1と2の大目標があるとしたら、まず一人一人の国民生活の質の向上、それを守る者としての国家機関という考え方なのか、国家機関があってこそ国民の生活が守れるのか、ということになる。ニワトリと卵の議論が難しくなるのは事実ですね。

 井口委員長 

   ここまでの議論というのは政府なのか3機関なのか、でしょうね。

 五代委員 

   3機関はこうやるんだという議論にするのかどうか、そこをはっきりしないと。

 川崎委員 

   排他的なわけではないのですから、大学の中で個々に行われてもいいし、産業界でプライベートに行われてもいいのです。ただ、宇宙開発委員会なり文部科学省という行政の中において、宇宙開発利用を、一元的にとは言わないですが、取り扱う「主たる官庁」であるという位置づけだけは間違いないと思うので、そういう意味で言うと、委員長のおっしゃる場合には、これをもし我々が考えるのだとすれば、草の根運動的な宇宙開発の考えるラショナルというベースで考えるべきではないかなという気はいたします。そうしないと、国民に対する説得力がないのではないか。

 五代委員 

   この問題は3機関に限定するとなったら、教育などの問題は欠けた話になってしまいますね。それをトータルとして取り上げるのかどうかを整理しておかないと。

 井口委員長 

   やはり全体として、そこに「国」という言葉がどこに入るのかはわかりませんが、全体のイメージを考えながら3機関がこの部分を受け持ちます、という話なのだろうと思います。全体を何と表現するのか、ではそれを「国」と表現するのか、ですね。

 五代委員 

   国は国でもいいんですが、国はこれをやっちゃいけないとか、これはもうやらないという言い方は気をつけないと、本当にこれからトータルで、長い目で見たときにそれで間に合うのですかというと、私はそうはいかないだろうと思いますね。どこかで何かをやっていくということは必ず必要になってくるのでしょうから。また、やれる体制がなければ、今あるものだけであとは全然やりませんというならそれでもいいのかもしれないけど、そこまで見きわめはつけられないのではないかな。体制の問題と実際に今手をつける問題というのはやはりそこで一つの区分けをしないといけない議論が出てくるのでしょうね。

 井口委員長 

   総合科学技術会議の基本構想から宇宙開発委員会との……

 川崎委員 

   あの話だって厳密に言うと、新聞がどこかで取り上げてましたけれども、それをめぐって議論があって、この「国」とは「政府」のことなのか、国家機関を代表する言葉なのか、「国民」なのかといった問題は、やはり日本政府の出す文書の中に全てそういう混同があって、あるときは「政府」であり、あるときは「国民全体」であったり。そういう意味では意識が低いのではないですかね。フラッグがなくてこういう委員会を開けるような状況ですから。

 五代委員 

   やれやれと言っている分には漠然と言っていればいいんです。だれが言っているかわからないから。

 井口委員長 

   我々のビジョンというのは、どういう立場でまとめるんですか。

 川崎委員 

   我々はやはり一応我が国全体のありようを考えた中で、国民的な立場で。

 栗木委員 

   きっと出たときに読めばそう読むと思うんですよ、私は。

 川崎委員 

   そのうちで政府は何をやり、企業は何をやり、そういう役割になるんだろうと思うんです。

 井口委員長 

   いかがですか、先生、そういう我々の考え方で。

 八坂教授 

   私も大賛成で、大変参考になりました。ありがとうございます。

 栗木委員 

   1つだけよろしいですか。一番のキーワードになっております「安全」という言葉ですが、安全というと「守る」というイメージと対になって頭の中でわいてくるのですが、おそらく宇宙という活動を考えますと、内向き、守るという、みずからを守って安全という意識よりは、もちろん攻めるではないですが、「開く」という感じではないか。つまり、ボーダーレスであるこの活動を安全とどう結びつけるかは、極めて難しいと思います。ですからそこに、もう一つその言葉の意味で、おそらくいろんな意味で、開いていく、ボーダーレスのアクティビティである、ということがかえって安全に結びつくというような、そういういわゆる国際協力的なニュアンスがやはり要るのではないか、と私は思うのですが。

 八坂教授 

   安全ということをどういうふうに取り扱うか、私も念頭にあったんですけれども、実は、アメリカなどの施策で安全や安全保障といった言葉がよく出てきます。「安全」と出したときにそれと混同するような見方があるかなと思って、実は意図的にその言葉は使わなかったんです。だから、この中では環境というような感じでいいかげんな言い方をしたわけなんですけれども、栗木先生のおっしゃるとおりの問題点と同じです。

 栗木委員 

   環境というのはまさしくボーダーレスですね。一国だけの環境というのはあり得ないですよね。

 井口委員長 

   先生の重点化への視点(1)、これの新しい視点の重みづけとたたき台の方のものとはかなり似ているのですが、強いて違いを言うと、我々は重点化の最重点項目に安全、安心を置いています。そのあたりのご意見はいかがですか。先生は今おっしゃったように、別な言葉でもってその意味合いは入っているんだという理解でよろしいでしょうか。

 八坂教授 

   私は古いのか新しいのか知りませんけれども、大変個人的な見方ですけれども、最初に置くのはどうかなという気はするんです。国民一般から見たときに何を期待するか。安全というのは日本ではただ、と言われている。でも、それはそうではないということがだんだんわかってきましたが。でも、今の日本で一番求められるのはそれよりも「利便性」ではないかと思います。だから、少なくとも対にしたような形で出すものではないか。私の感じとしては利便性というか、そういった世俗的なことですが、それが国民から宇宙を見たときの今の感覚だと思うので、そちらのほうも強調して、まあ、強調されていると思いますが。

 井口委員長 

   我々のほうでは生活の質の向上ですと・・・。

 川崎委員 

   2ページ目の○の3つ目。これはどっちをどうするかというのは非常に難しい。

 井口委員長 

   そういうような表現にしておりますけれども。

 八坂教授 

   これは私の意見でございまして、もちろんこれは国というか政府としてということでしょうか、国としてこういうふうにするんだということになれば、そういうふうに明確にお書きになったらよろしいのではないかと思います。

 五代委員 

   先生、この重点化の視点(2)のところで、産業支援ということで幾つかの項目が書かれてございます。産業強化ということは、ずっといろいろと言われてるのですが、雇用は出てきているが最低需要量の確保ができないと産業はできませんよ、と。しかし、もともと小さな金でやっていかないといけない。その矛盾にずっと悩んで、産業も開発も遅々として進まないというのが今までだったんだろうと思います。そこは何か名案をお持ちでしょうか。

 八坂教授 

   完全に満足することはないと思いますが、多少はそこに向かっていけるなと思うのは、例えば衛星を例にとりますと、衛星の開発において、今まで使ったETS−6のバスを、ETS−8にも使う、しかしこれだけでは非常に足りないのですが、そういったやり方があると思います。結局はここで最低需要量を確保するということは、それによって競争力を起こすということです。だからそこまでどうするかということで、これだけあればそれは全部やれるんだというものではない。だからそこまで持っていくステップとして、もう少しいろいろやり方があるのではないか。だから例えばロケットにしても、国の衛星を年に何機上げればいいといった話がありますけれども、それだけだったらいいかという話ではないですよね。そこに至って、一応の競争力のある生産、再生産ができる。こういったものまで持っていく。だからそこがどのレベルか。なかなか完全に足りるとは思いませんけど、やっぱり一つずつ増やしていくんだろうと思います。

 澤田委員 

   地球観測の点でこの2つのペーパーで若干違うところは、八坂先生のほうは生活環境もあるという感じで、そしてこちらのたたき台のほうは地球としての環境という言い方で、そちらのほうを大きく言っているわけですね。しかし、実際にはもっとローカルな部分があるし、日本もあればアジア地域もあり、それぞれの生活がある。例えば災害についてもいろいろな種類がありますが、そういったことは安全、安心につながるわけですね。たたき台のほうはどうも地球環境の保全ということだけを言っているような感じがして、先ほど八坂先生は有明海の話もされましたけど、我々は現実にもっと、宇宙を使うという観点で、我々の安全・安心を確保するという意味で有用な点があると思いますね。私は八坂先生のこういった視点まで広がっている方がいいのではないかと思います。別にその目的のための人工衛星が必ずしも必要ではなくて、その利用のやり方でかなりその辺りがカバーされるだろうと。もちろん体制づくりなどもありますけれども。そういうふうに考えました。

 井口委員長 

   芝田さん、いいですか。

 芝田宇宙政策課長 

   今の災害対策などを含めまして、4ページ目の表の中に書いてございますが、「情報収集」の中で、情報収集というのは外交等に使われるものだけではなくて、災害対策等にも使われていると思いますし、産業の発展と創出の中に地表観測というのがございますけれども、これも情報収集と一体のものとして、生活に密着した情報を集めるという観点で、少し分散して書いてありますけれども、入ってはおります。整理の仕方の問題だろうと思いますが。

 井口委員長 

   よろしいですか。最後にまとめのときに、もう一度チェックすることにしましょう。

 川崎委員 

   八坂先生のお話の中で、あまり触れられてなかったと思いますが、日本の場合、衛星が単発ですね。そうすると、五代さんもおっしゃったんですが、それを利用する地上のいわゆるグランドシステムをどういうふうな形でつくるかというところあたりを、本来はプロジェクトと並行して民の力でやっていただきたい、と我々は期待をするのですが、その辺りについては何か特別お考えはございますか。

 八坂教授 

   実はデータについては、NASDAのセンターでとって、これをレシーブするというシステムが完全にできております。それから、あちこちで独自にデータをとるという設備もございまして、それは九州にもあります。ところがその一次データをどう使うかということになると、大変難しくなる。もちろんだいぶ進んではおりますけれども、先ほど言った有明海に関するところまで本当に扱えるかというと、それはできないのです。ですからグランドのネットワークはもちろんですが、それを利用するためのソフトウェア、もちろん専門にやってらっしゃる方はたくさんいらっしゃるのですが、これも先ほどの研究と開発、利用の話かもしれませんが、本当に市民生活までを結びつけたような研究まではなかなか遠いわけです。そこの部分をうまくやればいいのではないか。地方にいてそういうふうに思います。県や市の方は困っております。

 五代委員 

   日本の各県の国立大学は、これを言っては悪いのですが、好き勝手な研究をやっていて、地元との関係というのは全くない感じですね。どこかに自動車産業があるから自動車学科がある、というような大学があるのかどうかは知りませんが、そこはおそらく無関係。だから、今、佐賀かどこかの大学に有明海に関連して、一生懸命研究している先生方がいっぱいいるんだろうけれども、では、それを宇宙に結びつけて宇宙の情報を処理する技術とそれを実際の研究に結びつける技能など、そういうようなことについて開発していこうといった動きはないんですね。だから、それぞれみんな困っている、困っている、だれもいないというけれど、いないというのではなくて、受け皿がほんとはあるのだが、受け皿が受け皿の機能を果たしていないのではないか。これは私の持論なのですが、各地方における国立大学の運営は県の産業会なり知事なりも入れて、大学運営をやっていくぐらいのことをやって、こういうテーマをやりましょう、それには必要な先生をどこかから呼んできましょうぐらいのことをやらないと、ほんとうに駅弁大学もだれも食わない駅弁大学になってしまっているのかなと。これは申しわけない。

 井口委員長 

   独立行政法人になれば多少、体質が変わってくるだろうと思いますよ。

 五代委員 

   ぜひ変わってもらいたいと思います。

 川崎委員 

   志のない研究と言ったのはまさにそういう研究のための研究なんですよ。

 栗木委員 

   最近、宇宙開発事業団で、タイのほうから地球観測データの配信を受けた後これを自分でプロセスする、あるいはそれをプロセスする道具が手に入ったときにそれを使いこなせる人材を養成するために人員派遣をしてほしいということで、たしか来年度、エルエステックのほうから2人ぐらい行くというような計画がある。むしろ私はアジア・太平洋の方にそういうサービスをするということばかり頭にあったのですが、日本の中でそういうことをやらなければいけない。まさに足元が暗い、灯台もと暗しという感じがあります。

 井口委員長 

   私は、今までは技術開発中心だったが、加えて利用システム開発と市場開拓の3つを一体的に進めるべきであるという提言を入れたいとは思ってます。

 五代委員 

   その地域、地域に立脚した、どういうものをやっていくかというのは、何もないわけではなくて現にあるのですから、どういうふうに活用するかという方法論だと思いますね。

 芝田宇宙政策課長 

   僕は八坂先生にご質問させていただきたいのですが、具体的に産業力の強化に宇宙開発の側からも積極的に取り組むべきだということで、例えば大学の中でオープンラボラトリーみたいないろいろな取り組みがあると思いますが、特に宇宙関係でのそのような取り組みの例を、九州大学に限らずご存じでしょうか。

 八坂教授 

   すみません、つまり大学の方で直接利用でですか。

 芝田宇宙政策課長 

   利用サイド、あるいは需要サイドまで見通したような研究開発への取り組みの仕組みといったような、そういった取り組みが。

 八坂教授 

   これは少し遠いかもしれませんが、宇宙環境といっても電離層の宇宙なんですけれども、その状況が実は地上に降ってくる放射線に関係してくるわけですが、磁場が今減りつつあるということで、それを放っておくと、数百年、数千年のオーダーかもしれませんが、放射線がもっと増えるわけです。これこそ生活を守るという意味からそういうものを観測しようという、実はこれは九州大学の地球惑星科学科というところでやっておりまして、それを今度、大学のセンターに格上げするということになりました。ついでに工学部のほうからはスペースデブリも含めて、そのセンターを立ち上げていく、ということになっております。まだ、非常にピタッとはいきませんが、何かやるときにやはり生活レベルまで下ろして、だからこれが必要だというふうな考え方は非常に浸透してきているように思います。ただ、残念ながら宇宙関係の工学そのものでそこまでなかなかいかないのですが、我々がやっているのは学生の力をつけるために小さな衛星をつくるといったこと、これは後ほどまたそういうテーマの話があると思いますが、そういったこともまだもう少しやりたいと思っております。まだおっしゃるところまではいっていないところがあります。

 栗木委員 

   九州では北九州にかけて、例えば新日鉄の傘下にあったような数多くの企業があると思いますが、そういうところへの宇宙、航空研究の波及というのはございませんか。

 八坂教授 

   それを実に願っていまして、実は企業のほうもそれを願っているわけなのです。ただ、残念ながら今のところ非常にマッチングするところはありませんね。非常に限られたところで材料関係はあります、素材関係は。ただ、もう少しシステムレベルまでということになると、それは地域としても非常に欲しいところなのですが、なかなかそこを取り扱うような企業体が見当たらない。だからみんな望んでいることですが、なかなか現実は遠いです。

 井口委員長 

   恐縮ですけれども、3時半から次の3機関統合の会議が始まりますので、25分ぐらいまでに終わりたいのですが、そうしますとあと、七、八分この問題を議論できますが、何か別の視点からのご質問とかご意見ございますか。

 川崎委員 

   もう少し八坂先生のほうで「評価」についてお聞きしたいのですが、絶対評価というものがあるんですが、先生のほうでどんなものを絶対評価の際の尺度にとるのか。マネータームなのか、あるいは雇用人口をとるのか、どういうふうなものをイメージしておられますでしょうか。

 八坂教授 

   通常、欧米で言いますのはマネータームですね。インプットに対してアウトプットはどうなるか。インプットにもつまり、幾つも選択肢があるわけです。どういうふうな選択肢でやるとあとでマッチングになるか、そういったような解析ですね。

 井口委員長 

   ただ、開発して、これが実際に使われて成果が上がるまでに、非常に長い時間がかかるものがありますね。そういうときの予測というのはうまくできるものなんですか。
   私は交通事故のことをやっていまして、こういう安全対策を打てばどれだけ人が助かるか、事故が減るかという予測を今までやってなかったんですけど、非常に難しくて、結局鉛筆を投げてこれくらいかなということになってしまうことが多いものですから、何かうまい方法があれば。

 八坂教授 

   それはおっしゃるとおり、私は今、そのスペースデブリの予測をやっておりまして、鉛筆を投げればどうにでもなるんです。それで絶対評価というのは難しいのですが、でもやらなければいけない。それはどう使うかというと絶対評価ではなくて相対評価に使う。こういう選択肢とこういう選択肢をとったらどちらがどれだけ有利かという話、これは言えますね。だから少なくともそういうふうに使えるということです。

 井口委員長 

   よろしいですか。まとめのところで先生がご説明してくださったんですが、まだよく理解できないのが、2番目の宇宙開発という言葉を安易に使うべきではないという、その意味がよくわからないのですが、もうちょっと具体的に説明していただけませんか。

 八坂教授 

   例えば、宇宙開発ではてなと思ったのですが、宇宙開発委員会、これは英語では何と言うか。

 井口委員長 

   Space Activity Commission。

 栗木委員 

   developmentという言葉はないです。

 八坂教授 

   まずその辺りからあるのですが、宇宙開発という言葉は何となく当たり前の言葉になっている。だけど本当のことを言うとこれは開発行為を指すわけでして、あるいはこういうふうに言う人もいます。宇宙開発というのは「宇宙を開発すること」だと。だから宇宙を開発するための手段の開発というのとはまた別の意味になる。要するにかなりあいまいなわけです。しかも開発行為ではない、例えば、今、「開発利用」という言葉をよくお使いになります。

 井口委員長 

   我々も使おうと思ってるのですが。

 八坂教授 

   ただ、それでもやはり科学技術的なものは含めようがないですね。

 栗木委員 

   これは私もこの前申し上げて、「利用」がない表題になっていたものですから、「利用」がくっついたわけですが。

 井口委員長 

   では開発利用をやめて別な言葉を先生一言。

 栗木委員 

   活動。

 井口委員長 

   宇宙活動。アクティビティ。アクティブ。

 栗木委員 

   Activities Commissionなんですよ。

 川崎委員 

   実は英語は私が訳したんだ。スペースをディベロップするということはできないんだ。

 栗木委員 

   そうなんです。スペースをディベロップすることはできないんですよ。

 井口委員長 

   わかりました。

 川崎委員 

   SACはそういう意味ではたしか英語を一律につくったときに。

 八坂教授 

   すばらしい訳語ですね。

 川崎委員 

   空間で働くんですから、何もないところで。有人か無人かということで。

 栗木委員 

   explorationとか、expeditionというようなニュアンスがなかなか「開発」からは出てこないんですよね。

 八坂教授 

   あるいはもう一つ、産業化ということを考えると、これもやはり相反するイメージが出てくる。

 井口委員長 

   といいますと。

 八坂教授 

   つまり、reproductionするようなものは、これは普通「開発」ではないですね。

 井口委員長 

   何か新しい技術が生まれて、それを使える形にして、産業に渡し、その次にcommercializationといいましょうか、商業化があるという、その場合のワンステップであると。

 八坂教授 

   ですから、私の言いたいのはこういうことです。大変近い話題といいましょうか、これでちょっと困られる方もいらっしゃるかもしれませんが、あえて申しあげますと、先ほど言ったように、衛星の開発をやるというときには、国のつくる、つまりNASDAがつくる衛星はやはり新しいものが入らないといけない。開発という言葉があるので。本来ならばそういうことではなくて、今までどおりのある部分は使って、それでその目的とするミッションを達成することができる。そうすればトータルコストも安いし、その技術もmatureになってくる。だけどそれはやらないんですね、開発ではないから。

 井口委員長 

   それは301条にも関係しているわけですか。

 澤田委員 

   いや、衛星だけではなくてロケットなどもそうですよね。例えば1号機、2号機、3号機とあって、定常なはずの3号機が開発、そういう予算項目・予算要求でしたね。もう既にそのときから開発、すなわち何か新しいことを必ず入れないといけないというイメージが入っていたと思いますね。

 川崎委員 

   予算のフェーズで何もタイトルがない時代が研究、しばらくたつと開発研究で、いよいよプロジェクト化、ネーミングが与えられると開発段階に移行、と予算がそうなってますね。

 澤田委員 

   後ろがずっと全部開発なんですよね。

 川崎委員 

   ただ、H−2の4号機、5号機というのはあまり話に入っていないけれど。

 澤田委員 

   例えば入れないようにしようと思っても、H−24号機の開発とか。

 川崎委員 

   言葉は開発と使いましたけど。

 澤田委員 

   使いますよね。

 井口委員長 

   それはお役所、行政上の。

 川崎委員 

   いや、たまたま予算項目がそうなっているから、あまり。

 傍聴席 

   現状どうなっているかといいますと、試験、研究機までは開発、3号機以降はいわゆる調達になっていて、いわゆる製造ということになります。2号機までは開発です。

 井口委員長 

   それははっきりしてますね。

 栗木委員 

   一つのプロジェクトを見て、ライフサイクルを見ましても、後ろは運用なんですね。そこは開発という言葉は私もライフサイクルを全部あらわすので使わなかったのですけどね。むしろやっている当事者もそこからは運用ですねというふうに言うものですから、ではそこは何だろうなと。

 川崎委員 

   八坂先生の提起されたのは、我々が産業化という言葉を安易に使うわけですが、かなり誤解があるということですね。市場があって、というなら産業化は何となくわかるんですが、むしろ我々が今している議論というのは公的ベースで行くか私的イニシアチブでいくかという話ですので、その私的なものが産業かどうかというのはまだはっきりしないかもしれない。そっちのほうがより正確で、パブリックベースかプライベートイニシアチブかという、そのほうが使い分けとしてはいいのかもしれませんね。

 澤田委員 

   産業化と商業化というのもまた混同して使ってますね。

 川崎委員 

   混同して使ってますから、非常に広くなってしまったり。

 井口委員長 

   ではその辺りの言葉を十分に考えて使うことにいたします。

 川崎委員 

   ヨーロッパで言っているパブリックサポートという言葉はまさにそうですね。やっぱり最後のアンカーとしてのパブリックファンドといった言い方をして。

 澤田委員 

   川崎さん、いろいろな名前を日本語にされたから、この機会にいい日本語をつくっていただけたら。

 川崎委員 

   いい日本語はだめなんですよ。

 井口委員長 

   それでは特に何かほかにご質問、ご意見ございますか。なければこの議題を終了させていただきたいと思います。
   先生、どうもありがとうございました。

 八坂教授 

   どうもありがとうございました。勝手なことを申し上げまして。

 川崎委員 

   いいえこちらこそ。

 井口委員長 

   それでは、次の3番目の議題に移らせていただきます。「ロケットによる人工衛星等の打ち上げに係る安全基準」に関する調査審議について、栗木委員お願いします。

 栗木委員 

   安全部会のほうからこの審議の付託をお願いしたいと思います。
   審議の趣旨でございますが、12年12月に制定しておりますロケットによる人工衛星の打ち上げに係る安全評価基準についてロケットの打ち上げに係る安全評価を現在行っております。それに関しまして、その2番目の段落に書きましたように、「ロケットの開発、打上げに関する技術的、社会的な変化等を踏まえて」、この中身はより射場におけるセキュリティを高めたいということから、より的確な安全評価を行うため、継続的見直しが必要であるということで、安全部会において改定を行いたいということでございます。
   今、申し上げましたように、調査審議を行う事項としましては、ロケットによる打ち上げに際して、外部からの妨害行為等に関して必要な対策を講じさせること。こういう事項をこの安全評価基準の中に盛り込みたい。その他必要とされる事項、これは字句等の定義があいまいになっているというところがこれまでにも指摘されたところが若干ございますので、そこを改定したいということで、この審議を行いたいと思います。11月中旬をめどに宇宙開発委員会に報告させていただきたいと思います。構成委員は次のページのとおりでございます。よろしくご審議をお願いします。

 井口委員長 

   このような審議を安全部会に付託したいと思いますが、よろしゅうございますか。

 川崎委員 

   ちょっと一つ、「打ち上げに際し」の範囲が、これは日本の特殊事情なんですが、ある地点からある地点まで船上輸送だったりと、間に輸送機関が入りますね。ここで言われているのはいわゆる一種の原子力でいうフィジカルプロテクションに相当する問題だろうと思うんですが、その輸送機関もやはり対象として……。

 栗木委員 

   射場。

 川崎委員 

   射場だけに限って。

 栗木委員 

   はい、射場。

 川崎委員 

   輸送機関はない。

 栗木委員 

   ございません。

 川崎委員 

   それは燃料が入っていないから。

 栗木委員 

   その部分の管理は現在の安全部会のというか、この基準では埒外になってますね。

 澤田委員 

   委員会ではそうですよね。ただ実際には今おっしゃった・・・。

 栗木委員 

   コントラクトとしてはこれはどうなっていますか。私はよく知らないのですが。

 井口委員長 

   どこが。メーカーでしょうか。そしてどこで。

 澤田委員 

   射場で納入ということで。

 川崎委員 

   しかし、それは明確にして。

 澤田委員 

   委員会としては射場で作業が始まってからということに。

 川崎委員 

   持ち込まれてからの話ですか、それとも保管中から。

 栗木委員 

   そういうことです。そこまで社内だと見るんでしょうか。

 井口委員長 

   それでいいかどうかという議論はする必要はないのですか。もし、それがあったら一緒にしましょう。

 栗木委員 

   ただ、社内にまで立ち入って……。

 川崎委員 

   どちらかというとこの安全部会は外部に対してどれだけ被害を与えるかなのです。外部というのは近隣住民が中心になります。そうすると燃料を積んで輸送はしていないから、それはアルミの塊のようなもので別に特別被害はないよという判断はありますね。ただ、それが何かの目的で別のところで使われて何かに害を及ぼすというところまで考えると、少しやっかいなことになるので、どこまでにするかだと思います。

 井口委員長 

   それとセキュリティの問題、この間議論しましたよね。あれは射場、輸送の過程ももちろん含まれるわけですね。それは別な機会に議論すればいいですか。一緒に考えていただくのが、ついでと言っては失礼ですが。

 栗木委員 

   ちょっと埒外だと思いますね。つまり、それをやるとしますと……。

 澤田委員 

   委員会としては外かもしれないけど、実際には非常に重要だと思うのですが。

 栗木委員 

   もちろんそうですね。それは頭の中にありますが、そうだとすると、製造を行っている企業の中でのいろいろな管理はどうなっているか、というところまで宇宙開発委員会が踏み込んで・・・。

 芝田宇宙政策課長 

   その点は、おそらくいろんな法規制の範囲でカバーされている部分が多いのではないかと思いますので、それを少し調べまして、それから考えたほうがいいと思います。

 川崎委員 

   車両運搬規則にのっとってやっているんだろうと思います。それから、車両安全基準とか。

 井口委員長 

   警察もちゃんと見てるのでしょう。確か、見てると言ってましたよね、地元の警察が、輸送の途中は。

 澤田委員 

   例えば種子島に行ってですか。それは見てますけどね。そのもっと前からあるわけですね。

 芝田宇宙政策課長 

   いろいろな法規制をかぶってますので、それでカバーできているのではないかと思いますけれども、少し調べさせていただきます。

 井口委員長 

   ではこの安全部会に付託する審議内容につきましては、今、ここに書いてあります範囲内のことをお願いするということにさせていただきます。どうもありがとうございました。
   その次に、その他でございますが、最初にH−2Aロケット1号機打ち上げ後のレビューについて。
   8月29日に打ち上げが成功いたしまして、その次の週に速報としていろいろご報告いただきました。データのまとまりました時点でレビューをいたしたいということであります。NASDAのほうで、10月12日にワークショップを開くことになっております。そこにH−2Aロケットの、言うなれば事前の検討をしていただきました専門家会合のチームが、もう解散しましたけれども、存在していました。その先生方が5人おられるのですが、その先生方にもそのワークショップに出ていただいて、そこでレビューをしていただきます。10月22日にこの宇宙開発委員会の拡大委員会を、打上げを了承しましたときにも拡大委員会を開かせていただきましたが、そのときと同じように、秋葉先生をはじめ5人の専門家にまた来ていただいて、そこで専門家会合の主査を務めていただきました宇宙科学研究所の棚次教授にその結果をお話しいただいて、そこでこの拡大委員会でレビューを行うということにいたしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
   これはプログラムが終わった時点で、つまり、プログラムが終わるというのは試験機の2号機が終わった後にプログラムの評価が行われると考えてよろしいのですか。

 芝田宇宙政策課長 

   今のところ、そういう予定です。

 井口委員長 

   今のところそういうスケジュールになります。よろしくお願いいたします。それから宇宙開発の現状報告を、北村さんお願いいたします。

 北村係長 

   それでは、簡単にこの1週間の宇宙開発でのいろいろな出来事につきまして、ご報告させていただきたいと思います。
   宇宙開発委員会につきましては、国内外がございますが、国内の動向でございますけれども、こちらとりあえず特になしとしておりますが、若干ニュースとしまして、詳細はまだこちらにあまり入ってきておりませんけれども、BSデジタル放送をやっておりますBSAT−2aという衛星でございますけれども、姿勢が少々乱れまして、昨日、放送が一時ストップしたという状況になっていると聞いております。今のところ、バックアップ用の衛星BSAT−1bがございまして、そちらを運用しまして、放送自体はうまくいっているようでございますが、原因等また何か情報が入りましたらご報告させていただきたいと思います。
   それから、海外の動向でございますけれども、21日金曜日でございますけれども、アメリカのオービタル・サイエンシズ社というところがございますが、こちらが打ち上げましたトーラスロケットが打ち上げに失敗しております。トーラスロケットですが、第1段の切り離しの後に、姿勢がどうも乱れたようで、一旦は正常に戻ったようですが、その乱れた間に当然推進力を無駄にしておりますので、最終的に予定しておりました軌道まで持ち上げることができなかったということで、搭載しておりました衛星が落下しております。
   搭載しておりましたのは、NASAが開発しましたオゾン層を観測するQuickTOMSという衛星と、民間の地球観測衛星で、オーブイメージ社がつくりました高分解の地球観測衛星OrbView−4、それから大きなものを積んでいるわけではありませんが、アメリカのセレスティス社というベンチャー企業が既に何回か宇宙葬ということで、亡くなった方々の遺灰を小さなカプセルに入れて打ち上げるという事業をやっております。こちら3つの衛星などを積んでいたということでございます。
   それから、9月22日土曜日でございますけれども、NASAの探査機でありますディープ・スペース1が、ボレニー彗星に最接近しまして、いろいろな観測をしております。現地の25日に再度観測しました結果についてNASAのほうで発表がどうも行われておりまして、実際に水星の核の部分の映像なども発表されたようでございます。インターネット上で見られるようになっているようでございます。後ほどご紹介したいと思っております。
   それから9月25日、昨日ですが、日本時間で本日の朝になりますが、アリアンスペース社のアリアン4ロケットの打ち上げをまた成功させております。搭載しておりました衛星ですが、欧州の通信衛星をいろいろ打ち上げております。欧州通信衛星機構EUTELSATのATLANTICBIRD2という衛星を搭載しまして打ち上げに成功しております。
   以上でございます。

 井口委員長 

   どうもありがとうございます。ご質問がありましたら直接北村さんのほうにご連絡くださいますようお願いいたします。
   前回の議事要旨につきましては後ほどご確認をお願いいたします。
   それでは第34回の宇宙開発委員会を閉会にさせていただきます。ありがとうございました。

−−−閉会−−−



(研究開発局宇宙政策課)

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