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宇宙開発委員会

2001/07/11 議事録
第26回宇宙開発委員会議事録



第26回宇宙開発委員会議事録

1. 日 時
平成13年7月11日(水)14:00〜15:54

2. 場所
特別会議室(旧科学技術庁5階)

3. 議 題  
  (1) 国際宇宙ステーション組立ミッション(STS−113)等について
  (2) CNESとフランスの宇宙政策について
  (3) 自在性確保を目指した基盤技術の強化策について
  (4) 種子島宇宙センターへの落雷について
  (5) 第8回アジア太平洋地域宇宙機関会議開催について
  (6) 第7回アジア太平洋経済社会委員会/政府間諮問委員会の開催結果について
  (7) その他

4. 資 料  
  委26−1 国際宇宙ステーション組立ミッション(STS−113)
  委26−2 CNESとフランスの宇宙政策
  委26−3 自在性確保を目指した基盤技術の強化策
  委26−4 種子島宇宙センターへの落雷について
  委26−5 第8回アジア太平洋地域宇宙機関会議の開催について
  委26−6 第7回アジア太平洋経済社会委員会/政府間諮問委員会の開催結果について
  委26−7 第25回宇宙開発委員会議事要旨(案)

5. 出席者
 
  宇宙開発委員会委員長 井口雅一
  宇宙開発委員会委員 長柄喜一郎
  栗木恭一
  五代富文

6. 議事内容

 井口委員長 

   それでは、時間にもなりましたし、第26回の宇宙開発委員会を始めさせていただきます。議事次第にございますように、議題が7件、そのうち6件が報告事項でございます。盛りだくさんでございます。
   最初の議題、国際宇宙ステーション組立ミッション等について、宇宙開発事業団の宇宙環境利用推進部長の小沢さんと、宇宙飛行士の野口さんがわざわざおいでくださいまして、御説明くださいます。
   それでは、よろしくお願いいたします。

 小沢(宇宙開発事業団) 

   委員長、ありがとうございます。
   今年の4月にこの委員会の席上にもちまして、今日参っております野口飛行士の国際宇宙ステーションの組立ミッションへの搭乗割り当てということで御報告をさせていただきましたけれども、本日はたまたま野口が帰国している折りでもございますので、この機会を利用させていただきまして、先だって御紹介いたしました組立ミッションの詳細な内容と、ふだん宇宙飛行士って何をやっているんだろうという声もございますので、ふだんの宇宙飛行士の活動ぶりなどにつきまして、ちょっと御報告をさせていただければと思いますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。

 野口宇宙飛行士 

   よろしくお願いいたします。宇宙開発事業団の野口聡一と申します。
   本日はお時間をいただきまして、国際宇宙ステーション組立ミッションの概要を説明させていただきます。大きく分けまして3点ほどお話ししたいと思います。
   まず、国際宇宙ステーション計画の概要、組立の現状とこれからの予定といったことをお話しいたします。次に、私が割り当てになりましたSTS−113組立ミッションに関する内容を御報告させていただきます。最後に宇宙飛行士のふだんの生活、訓練、担当業務といったことに関して簡単に説明させいただきたいと思います。

(スライド)


   国際ステーション、これは世界16カ国、アメリカ、ロシア、ヨーロッパ諸国、カナダ、日本5極が協力して、高度400キロの宇宙空間、地球系軌道に宇宙実験を行う施設をつくろうという計画です。1998年から組立が始まりまして、現在までに10回ほどの打上げを繰り返して、既に3名の宇宙飛行士が常駐しております。アメリカ人2名、ロシア人1名という組み合わせで現在も回っておりますけれども、このままあと5年ほど組立を進めまして、完成時にはそちらに出ているような100メートル×80メートル、ちょっとしたサッカー場程度の大きさですね。それくらいの大きなものが宇宙空間で稼働することになります。完成時には7名の宇宙飛行士が常時滞在して、高度は約400キロで軌道傾斜角51.6度という軌道を回ることになっております。

(スライド)


   組立の様子ですけれども、先ほど御説明したとおり、1998年の冬から打上げが始まりまして、これまでに10回以上の打上げが行われておりまして、3名の定常の運用が行われるようになっております。そして、これから5年間にわたりまして、少しずつ部品を組みつけていきまして、スペースシャトルでのロボットアーム、それから、宇宙ステーションの方にありますスペースステーション・ロボットアーム、さらには宇宙飛行士の船外活動による組立作業等を繰り返しまして、最終的にはこのような宇宙ステーションが2006年ごろに完成する予定になっております。
   この中には日本の提供しますきぼう実験モジュール、船内活動室とさまざまな物資を保管する船内保管室、そして、宇宙空間に直接さまざまな実験物質をさらすこともできる船外実験プラットフォームといったような構成要素でございますけれども、これらの組立も予定されております。
   全般的には進行方向の前半がアメリカが提供する、後半はロシアが担当する。そして、大きく張り出した太陽電池パネル、こちらはアメリカが担当しておりますけれども、これによって各インターナショナルパートナー、参加国への電源及びリソースの配分を行うという形になっております。

(スライド)


   今の組立の流れをざっと表の形でまとめさせていただきました。私が乗る予定になっておりますのは、これに入っておりますけれども、来年の夏に打上げ予定の利用補給フライトということになっております。私のフライトでは、長期滞在をしてくるクルーが3名おりますけれども、その新しい交代用に打上げて、それまで4カ月間宇宙に滞在していたクルーをおろすということをもあわせて要求されております。
   その先に、ここに3カ所ありますけれども、きぼう実験モジュールの組立、打上げが3回に分けて実施される。最終的にこの表では2006年になっておりますけれども、日本が組立を担当しておりますセントリフュージ、生命科学実験施設の打上げをもって、国際宇宙ステーションの組立を完了ということになっております。

(スライド)


   こちらは現在の国際宇宙ステーションの状況です。4月に6Aというフライトがありまして、ここに見えておりますロボットアームが打上げられました。これによりさまざまな、これまではスペースシャトルについておりますロボットアームだけを使って組立をしていたんですけれども、これからは例えばスペースシャトルから大きなモジュールを組み上げて、スペースステーションのロボットアームでそれをつかんで、非常に遠くのところに物資を運ぶ。スペースシャトルから離れたところにモジュールを組み立てるということも可能になってまいりますので、非常に複雑かつ大規模な組立がこれから始まるものと期待しております。
   米国の実験棟がこちらに見えていますが、実験棟という名前がついておりますけれども、宇宙ステーションのシステム、軌道修正システムでありますとか、生命維持システムでありますとか、宇宙船を動かすための中心となるシステムがこのモジュールに入っておりまして、そういう意味ではかなり3名の宇宙飛行士を常駐させて、さまざまな本格的な活動が始まっていると言えると思います。

(スライド)


   これが、これから1年の間に何回かフライトが予定されておりますけれども、このような大きなトラスと言われる太陽電池パネルを支えるS0と言われておりますはりの構造がデスティニーモジュールの上に組みつけられて、これを基礎にして左右に太陽電池パネルを広げていくという状況になっていくところです。

(スライド)


   次に、私のフライトの内容を簡単に御説明させていただきます。
   フライト名は利用補給フライトという名前がついておりまして、国際宇宙ステーションへの補給と、それから、さまざまな実験設備を運び込んで実験を行うということが主目的になっております。スペースシャトルの通し番号ではSTS−113号、使用する機材は、現在のところエンデバー号ということになっております。
   打上げ予定は2002年7月ですけれども、御存じのとおり、宇宙ステーションは毎月のように新しいモジュールが上がっておりまして、実は明日の夕方に新しい7Aというフライトが上がることになっておりますけれども、新しい部品が上がるごとに状況を組みかえて、もし不具合があれば、またその以後の打上げ計画を見直すということが続いておりますので、今後の作業の進捗により変更される場合があるということです。
   打上げ場所はNASAのフロリダにありますケネディ宇宙センター、51.6度の宇宙ステーションの軌道に打ち上げられることになっております。飛行予定は11日間で、宇宙ステーションには8日ドッキングをすることになっております。
   実際に行います業務内容ですけれども、スペースシャトルとしては通算16回目の組立ミッションになります。スペースシャトルの貨物室に、ここに出ておりますけれども、イタリアが提供しております多目的補給モジュールというものを乗せて上がります。この中には標準サイズの実験が16個入りまして、その中には新しい実験装置ですとか、宇宙飛行士が軌道で使用する補給物資といったものが入っております。それを宇宙ステーションにロボットアームを利用してくっつけまして、あとは宇宙飛行士が手作業で荷物の運搬を行うということになっております。最終的に、それまで使っていた実験設備ですとか、不要になりました補給品等を詰めて地上に戻るということになっております。
   それ以外に、国際宇宙ステーションの船外で使いますさまざまな補給部品があるんですけれども、その補給物資を仮置きするためのプラットフォームというのを新しくつけることになっております。もう既に3年以上にわたって国際宇宙ステーションを運用しておりますので、少しずつ外側の部品の交換作業も生じてくるわけです。例えば太陽電池パネルの充電装置とか、耐用年数が決まっておりますので、3年あるいは5年おきに交換する物資が出てくるんですけれども、そのようなものを外側で仮置きするスペースが必要になってきているということで、私のフライトで仮置き場所のプラットフォームをやります。
   先ほど御説明したとおり、滞在クルーの交代ですね。新しく宇宙ステーションに滞在する3人のクルーを打ち上げまして、それまで滞在していたクルーを地上に帰還させるといったことが予定されております。

(スライド)


   キャッチフレーズですが、これは国内向けなんですけれども、私にとって最初のフライトということで、「翔べ!きぼうの未来圏へ」というキャッチフレーズを宇宙開発事業団で考案しております。来年のフライトに向けての意気込みと、きぼうという名前が入っておりますけれども、きぼう実験モジュールへのつながりといったことをイメージしてメインにしています。

(スライド)


   次に、宇宙飛行士の生活を簡単に御説明したいと思います。
   私、今回日本に帰ってきて、いろいろな方とお話しするときに、宇宙飛行士はふだん何をしているんですか、あるいは宇宙に行っていないときというのは何をしているんですかという質問を非常に多く受けまして、このような形で整理させていただきました。
   まず、表の一番右側にありますけれども、募集・選抜ということで、一般公募により宇宙飛行士は選抜されます。私は1995年に宇宙開発事業団が募集したミッションスペシャリスト候補者募集ということで応募いたしまして、1996年夏に選抜されました。その後、すぐに私の場合にはアメリカに行って訓練が始まったんですけれども、国際宇宙ステーション時代に入りまして、各国が自国の宇宙飛行士を養成する形に少しずつ変わってきておりまして、私の次に選抜されました3名の宇宙飛行士は、選抜後2年かけて、日本で基礎的な、ここにありますけれども、候補者訓練という名前になっておりますけれども、宇宙飛行士になるための、宇宙飛行士として認定されるための訓練を行っております。
   その間はほかの関連業務といったことは特に担当はしないで、訓練に集中して、宇宙飛行士になるための訓練をさまざまな形で実施するんですけれども、認定を受けた後は、訓練と担当業務というのがありまして、開発支援業務という形でここに書いてあるんですけれども、有人宇宙飛行にかかわるさまざまな地上業務ですね。エンジニアの方と共同で行うといったことが課せられます。
   私の場合も、1998年に認定を受けて以来、今に至るまで、開発業務と今まで勉強してきた宇宙飛行士の訓練の内容の復習、そして、少しずつレベルアップしていくといったことを並行して行っております。
   実際に搭乗しますミッションが決まってからは、そのミッションに固有の訓練、もし船内活動が割り当てられれば、その船外活動に絞っての訓練、あるいはロボットアームの担当になれば、ロボットアームの技術をアップするといったことで、ミッション固有の訓練を行いまして、実際の飛行となる。
   飛行の後は、そのフライトでの成果を皆様にお伝えするためのデブリーフィングという時間と、長期滞在の場合には、身体的な無重力空間での影響をもとに戻すためのリハビリテーションといったようなものが組まれまして、また通常の勤務に戻る。訓練と開発支援業務を両立させながら、次のフライトの機会を待つといったことを繰り返すというふうになっています。
アメリカ人飛行士の場合は、大体このサイクルを3回とか4回繰り返して、少しずつ違ったフライトを行っていくわけですけれども、日本人の場合には、現在のところ毛利飛行士、向井飛行士、若田飛行士が2回目で、私は今回初めてということで、このサイクルが少しずつ蓄積していくことになると思っています。

(スライド)


   訓練の様子ですけれども、代表的なものをこちらに示しました。NASAでの訓練では、上段の一番右にありますけれども、T−38型ジェット機飛行訓練というのがかなりの時間を占めております。アメリカの宇宙飛行士の基本的な考え方として、よい宇宙飛行士はよいパイロットである。アビエーターとしてのスキルが宇宙飛行士としての技能に直結するという考え方でございまして、そういう意味で、飛行機に実際に乗って、操縦のテクニックもありますけれども、例えば地上との交信が宇宙空間での交信に非常に似ているとか、計器飛行を利用して、機体の複雑な状況をパネルを見ることで瞬時に判断するといった能力も非常に重視されております。このジェット飛行訓練はほとんど毎週のように行っております。
   そして、こちらは私がロシアで行った訓練なんですけれども、宇宙ステーションの運用を行う上で、アメリカとロシアのどちらも非常に大切なパートナーで、やり方が微妙に異なりますので、ロシア流のやり方、アメリカ流の訓練、その両方をうまく取り入れて、これから国際宇宙ステーションに生かしていきたいと思っております。
   下の方は、一番向こうは船内活動訓練ですね。無重力経験を地上でやるためには、プールに入って、浮力を利用して作業を行うのが一番簡単ですので、そのような訓練を繰り返しております。
   こちらは新人訓練の一環ですけれども、サバイバル訓練ですね。飛行機が海や山中に落ちた場合に、救助隊が来るまで1人で生き延びるということが大事ですので、そのためのサバイバル訓練です。
   こちらはかなり地味ですけれども、ふだんの生活の中で、スペースシャトルの、例えば生命維持装置だけに絞って、異常事態が起きたときにどう対処すればいいかといったようなことを、シュミレーターを利用しまして、インストラクターと1対1で練習するということを毎日のように行っています。

(スライド)


   こちらは開発支援業務の例を何枚か持ってまいりました。私はきぼう実験モジュールのアメリカ側の担当者ということで、きぼうモジュールが計画どおりできているか、そのきぼうモジュールを宇宙空間に持っていったときに、不具合、不利なこととかはないかということを確かめる業務を行っておりまして、具体的には、きぼうの船内に入りまして、何か構成部品が故障した場合に、それをマニュアルどおりほんとうにボルトを回して外すことができるか。そうしたときに、手前に何か邪魔なパネルがついていたりしないかとか、そういうことを一つ一つ確認する作業ですね。
   あるいはこちらは外壁のパネルですけれども、パネル一つ一つが設計書どおりできているかどうか。それから、例えばパネルの端っこに、シャープエッジといいますけれども、とがった角がありますと、宇宙飛行士が作業をするときに手袋をカットして、そこから空気が漏れるといったことが起きてしまいますので、外側にそういうとがった場所がないかということを確認するということを行います。
   こちらはきぼうの船内で使用されることになっております共通実験装置の例ですけれども、同じように実験装置を軌道上に持ってきたときに、宇宙飛行士が作業をしやすいか。仕様書どおり、あるいは作業手順書どおりにスイッチを動かしてみて、手順書どおりに書いてあるような動きをするかどうかというのを、ワンステップずつ確認するといったような業務を行っております。
   大体以上のような形で我々宇宙飛行士は日夜訓練と開発業務と両立させてフライトに向けて準備をして進めているということであります。
   簡単ですが、私の方からの説明は以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

 井口委員長 

   どうもありがとうございます。
   何かつけ加えられることは。

 小沢(宇宙開発事業団) 

   今、野口の方から御説明させていただきましたけれども、宇宙ステーション計画は順調にいっておりますし、国際的な協力のもとで進んでいるわけでございますけれども、今回、実はお手元に資料がお配りしてあるんじゃないかと思いますけれども、この国際宇宙ステーションがスペイン皇太子賞というものを受賞させていただくという名誉なことがございましたので、少し御紹介させていただきたいと思います。
   スペインの皇太子財団というところから、国際宇宙ステーション計画に参加しております米国、欧州、カナダ、日本の宇宙機関に対しまして、スペイン皇太子賞を授与したいという連絡が届きました。
   スペイン皇太子賞は1981年から芸術とか、文化とか、国際協力とかいう8つの部門について、スペイン国内外のそういう活動で優秀な成績をおさめられたところに対して贈られている賞でございまして、今回、宇宙ステーション計画が人類の科学技術開発並びに平和的な国際協力のシンボルであって、人類の将来にとって非常に重要な役割を果たしている、そういう理由で受賞の運びとなったそうでございます。授賞式は本年10月にスペインにおいて行われるということでございます。
   なお、この賞につきましては、日本人としましては、私どもの向井飛行士が、1999年に同時に飛びましたジョン、グレン飛行士などとともに同じような賞をいただいております。日本としてはいただくのは2度目ということになりました。
以上でございます。どうもありがとうございました。

 井口委員長 

   どうもありがとうございます。
   最近、日本の宇宙開発は暗い話題が多かったんですけれども、非常に明るい話題で、これからもこういう喜びが続くといいと思います。
   せっかくの機会でございますので、野口さんに何か質問がありましたら、その時間をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 栗木委員 

   ロシアとアメリカのNASAで訓練を受けておられて、何か特徴的な違いというのはございましたか。

 野口飛行士 

   私は最初、アメリカ流のトレーニングを受けまして、その後ロシアに行ったんですけれども、最初に向こうに行って驚いたことというのは、ロシアというのはかなり理論重視なんですね。最初に分厚いロシア語の教科書をばんと渡されて、読んできなさいと。読んできてからと。

 栗木委員 

   ロシア語でですか?

 野口飛行士 

   そうですね。基礎的な理論を身につけてから、少しずつ実技に移っていく。それに対して、アメリカはやはりプラクティカルなんでしょうかね。とりあえずシュミレーターに入って経験してみなさいと。わからなかったら、ここにマニュアルがあるからというような形で、実技面から少しずつ取り上げていって、理論を後で追いかけていくということで、そういう意味で、最終的に宇宙飛行士として必要なスキルというのはほとんど同じだと思うんですけれども、そこに至るアプローチが、片や理論重視で、教科書から積み上げていって、少しずつシュミレーターに入っていく。片や、シュミレーターで少しずつ自分の体験を通じて理論を重ねていく。アプローチがかなり違うなと思いました。国際宇宙ステーション時代に入って、今、訓練の世界もかなり双方のいいところを取り合う形で訓練計画を見直そうということが進んでおります。

 井口委員長 

   ほかにいかがですか。
   私から1つ。野口さんは技術者でもおありになるので伺いたいんですが、日本はこれまで大体無人を前提に宇宙開発をしてきたんですが、無人と有人ではけた違いにいろいろな問題、コストの問題もあると思いますし、信頼度の問題もあると思いますけれども、今、日本は、1つは閉塞状態という心理状態にもあるんだろうと思うんですけれども、もう有人宇宙というのはあきらめるべきだという意見もあるんです。だけど私は自動車屋ですので、自動車の技術から言えば、トラックはできるけれども乗用車はできないなんていうのは、自動車技術が日本に定着したなんて言えないんですね。その辺、日本が、例えばもう有人というのはあきらめてしまったような場合に、これからの日本の宇宙開発は、技術面で本当にうまく成熟していくのか。無人だけでいいとしていいんだろうか、その辺の感触というのはありますか。

 野口飛行士 

   非常に難しいお話で、私の経験の範囲で話させていただきますけれども、やはり委員長のお話のとおり、有人と無人とでは求める安全値が全然違うわけですね。そういう意味で、チャレンジが非常に多いと思うんですけれども、それから、今世紀の宇宙開発の中で、世界的に宇宙開発大国と見なされるためには、有人活動というのは避けて通れない道であると思います。おそらくこの先、中国も、どういう形で入ってくるかわからないんですけれども、有人宇宙活動に入ってくると思いますし、そうしたときに、日本が世界に冠たる科学技術立国、あるいは宇宙開発大国でいるためには、有人宇宙活動というのはどうしても避けて通れない道ではないかなと思っております。

 井口委員長 

   どうもありがとうございました。
   せっかくの機会ですので、質問のある方はないですか。特に宇宙飛行士の野口さんへの質問があったら。よろしいですか。
   本日はどうもありがとうございました。ミッションの成功をお祈りしております。

 野口飛行士 

   ありがとうございます。

 井口委員長 

   それでは、次に移らせいただきます。
   次は数回前も御出席いただきました、フランス国立宇宙研究センター駐日代表のパルーシュさんに、フランス国立宇宙研究センター、CNESとフランスの宇宙政策について御説明をいただきます。よろしくお願いいたします。

 パルーシュ氏(CNES) 

   日本語でのプレゼンテーションをしますけれども、私の日本語はまだ上手ではないから、本当に済みません。
   これからCNESを簡単に紹介します。CNESは1962年に設立されました。フランスは1966年に人工衛星を打上げました。それはロシアとアメリカに次いで世界で3番目です。
   フランスの宇宙開発とヨーロッパの宇宙開発は切り離せないものです。フランスはヨーロッパの宇宙開発で最も重要な位置を占め、その総予算の約40%を占めています。フランスは自国の宇宙開発予算が多いことで、ヨーロッパのパートナーと異なっています。ESAでもフランスは最大の拠出国で、予算の30%を負担しています。フランスにドイツ、イタリアが続いています。
   ヨーロッパの宇宙産業界は、現在統合期に入っています。これは特に2つの大きなグループ、EDASとアルカテル・スペース・インダストリーができてからです。活動の重要部分はフランスに集中しています。売上高から見ても、従業員数から見てもそうです。
   CNESは研究省の管轄にあり、予算のほとんどは研究省から出ています。国防省もCNESの活動に資金を出しています。CNESはほかに実施のためにESAに分担金を出しています。そして反対にESAのために行っているアリアン計画予算を受け取っています。CNESは公的研究センターと民間企業にも資金を出しています。
   CNESの職員は約2500人で、主に4カ所に分かれています。本部はパリで250名、エブリセンターは打上げ機の開発を専門とし、やはり約250名います。打上げセンターであるクールーセンターにはCNESの職員は300人います。ESAとヨーロッパ産業界の関係者も多数クールーで活動しています。
   センターの中で最も重要なものはトゥールーズセンターで、1700名を擁しています。同センターは特に基盤技術、衛星システムの開発とオペレーションを専門としています。トゥールーズの近くに気球を打上げるところがあります。CNESはワシントンと東京のフランス大使館内に代表事務所も持っています。東京の事務所は2000年2月に開設されています。
   CNESは2001年に研究省から13億5000万ユーロの予算を受け取りました。この予算は3つの部分からなっています。1番目はESAへの拠出金、後は強化プログラム経費及びESA以外の国家プログラムとCNESの人件費を含む運営費です。
   CNESは国防省からも補足的な予算を得ています。さらにCNESはESAからヨーロッパの打上げ機の開発プログラムに対応する予定を受け取っています。
   支出は3種類に分けることができます。ESAへのフランス拠出金、ESA以外のプログラムとCNESのプログラムのメンテナンス・オペレーションと、それにヨーロッパ・アリアン計画にかかる支出です。
   この図はCNESの活動の分野別であらわしたものです。メンテナンスとオペレーション経費は5億4400万ユーロです。プログラムは11億2300万ユーロです。その内訳ですが、打上げ機開発は一番多く、43%です。地球観測は34%。宇宙科学と研究開発が19%です。最後に通信、テレコミュニケーションは4%です。
   CNESは宇宙開発計画の実施と利用のために基盤技術、設計、宇宙プロジェクト開発のレベルで、宇宙開発の全段階に関わっています。CNESは産業界との連携も進めています。連携には2つの大きな形があり、1つは、子会社の設立とCNESの資本参加、もう一つはデータの有効利用に関する契約です。
   これはCNESの子会社と資本参加をしている企業を示したものです。例えばアリアンスペースは打上げ機を商業化、スポットイマージュはスポット衛星から発生するデータ配信サービス、スコットコンセイユはリモートセンシングに関するコンサルタント会社、インテスパッソは打上げ前の衛星のテスト、ノベスパッソは飛行機の放物飛行による微重力化活動、メデスは宇宙医学、セレスはアゴスサービスの運営、ジェディテアは研修などです。
   CNESは宇宙開発のためにさまざまな分野の会社との連携をさらに進めています。例えば遠隔医療推進化などの分野です。
   この図は静止探査軌道への打上げに関するアリアン5の性能の2分の1を占めたものです。アリアン5はアリアン4と同じように、同時に2つの衛星を打上げるように設計されています。能力の向上と同時に、生産コスト、つまり打上げコストの引き下げを目指し、絶えざる改良が行われています。
   宇宙科学の分野では、ヨーロッパの幾つかの衛星、特に天文学ミッションや火星ミッション・マーズエクスプレスのためにペイロードや実験を供給することで、CNESはESA科学プログラムに全面的に参加しています。
   CNESはアメリカとマーズサンプルリターン計画に関する協力を予定しています。またミニ及びマイクロ衛星Corot、Picardを使ったミッション、そしてPharao計画も進めています。
   火星からのサンプルリターン計画は、NASAとの協力で2007年の打上げの予定です。これは今、ミッションの絵が出ています。CNESとNASAのサンプルリターンの計画です。
   地球観測分野ではSpot計画が15年にわたり続けられています。Spot1号が1986年、2号が90年、3号が93年、4号が98年に打上げられました。これらの衛星の分解能は10メートルです。2002年打上げ予定の5号では2.5メダになります。Spot衛星シリーズの開発は国防省のHELIOS衛星開発と提供し、密接に連携して進められました。
   Spot5以降は、フランスはイタリアとプレアデス衛星群、サテライトコンステレーションを開発する予定です。これは民生用と防衛用の高分解能の高度レーダー衛星システムです。
   Spot4と5はVEGETATION装置も備えています。地球生物圏を研究するためのものです。これはヨーロッパ連合、イタリア、ベルギー、スウェーデンと共同のプロジェクトです。
   CNESはNASAと共同でJASON衛星も開発しています。これはアメリカとフランスの海洋観測計画、Topex/Poseidonの後を継ぐものです。打上げは今年の夏の予定です。
   ヨーロッパ連合はGMESイニシアチブ、環境と安全のための地球モニタリングを立ち上げました。これによりヨーロッパは国際条約など確認作業を進め、地球レベルの環境問題のモニター、産業公害と自然災害のモニターができるようになります。フランスはSpotとPleiadesシステムを通し、この計画に貢献します。
   CNESとESAは去年6月、大規模災害時に行政の持つ衛星へのアクセス調整を目指し、宇宙と災害という国際憲章を出しました。カナダはこの憲章に署名しました。今後もさまざまな組織の参加が期待されています。
   CNESはヨーロッパ連合とESAが協力し進めている、衛星によるナビゲーション「GALILEO」プロジェクトに積極的に参加しています。このプロジェクトはヨーロッパの自主独立と同時にサービスと端末の開発を目指すものです。開発コストは官民で分担されていくことになっています。
   通信実証衛星STENTORは今年打上げられます。この衛星の目的は、運用条件下で技術を開発し、新しいアプリケーションを実証することです。STENTORの後、CNESの新しいプロジェクトTCS−21を始めます。企業向けテストシステムを実現し、7〜10トンのプラットフォームで、新しい技術を開発することを目的としたものです。
   フランスはCNESを始め、アメリカ、カナダ、ロシアとともにサーチ・アンド・レスキュー、COSPAS−SARSATシステムを共同で設立しました。このシステムで1982年以来1万1500人を救助することができました。
   CNESは次の2つのシステムについても開発に参加しました。
   「ARGOS」システム、これは全世界をカバーする測位・環境データ収集システムで、1978年から機能し、幾つかの衛星に搭載されています。CNESの子会社CLS−ARGOS社によって運用されています。
   もう一つの「DORIS」システムは高精度軌道決定・測位システムで、90年から幾つかの衛星に搭載されています。ミッションのコスト削減を重視したCNESの新しい方針は、「提携への新しい好機」を生み出しています。CNESはコンクレントエンジニアリングとコストによる技術の選択を奨励し、標準フレキシブル・プラットフォームを開発し、実質的な進歩をもたらす技術開発を奨励し、産業界との協力を通し、内部の能力を高めています。
   「PROTEUS」プラットフォームは、CNESとアルカテルが共同で開発したプラットフォームです。さまざまな分野でたくさんのミッションが予定されていまして、JASON、COROT、SMOS、PICASSO、とMEGHA/TROPIQUESなどのプロジェクトがあります。
   ミニプラットフォームは低価格、短期開発、最大打上げ質量120キロのプラットフォームで、いろいろなミッションを行うことが考えられています。

 井口委員長 

   どうもありがとうございます。
   それでは、御質問をいただきますが、いかがでしょうか。

 五代委員 

   どうもパルーシュさん、ありがとうございました。
   フランスはヨーロッパの半分弱ぐらいの宇宙開発をされているんですが、産業とか雇用とか、そういうことは非常にヨーロッパの中で重要視されている。先ほど委員長がおっしゃいましたけれども、有人活動について、フランスというのか、あるいはヨーロッパというのかなんですけれども、今までいろいろな流れがあって変わってきています。この先、どのような方向にいこうという議論をしているのか、議論はまだされていなくて、政権がかわると方針がかわるというようなことなのか、その辺の状況はどうなんでしょうか。

 パルーシュ氏(CNES) 

   まず、フランスは有人というのを続けておりますし、また、近々フランス人宇宙飛行士がロシアの女性陣と一緒に宇宙の方に飛び出すことになっております。まずそれが1点でございます。
   それと、有人というのは、ヨーロッパでの宇宙開発枠内でも認められておりまして、これに関しましては、11月にダンブルで開かれます会議の中でも重要事項となっているものでございます。
   その一方、現在、フランスの宇宙開発関係で一番重要と見なされていることは、企業あるいは市場に関する応用、アプリケーションの開発、これが一番重要とされていることです。
   政策としましては、そのような有人の活動レベルを維持していくということは考えておりますけれども、それが最重要事項とはされてはおりません。ESAを通しましてアメリカと署名をしております提携がありますので、この提携を続けていくということ、これは提携で要請されている活動というものは今後も維持していくということを決めています。

 五代委員 

   どうもありがとうございました。

 井口委員長 

   ほかにいかがでしょうか。

 今村室長 

   1つお伺いしたいんですが、ヨーロッパの中でフランスが大きな役割を占めているわけですが、なぜフランスがヨーロッパの宇宙開発の中で大きな役割を占めるようになったのか、その理由はどこにあるんでしょうか。

 パルーシュ氏(CNES) 

   戦後、航空といいますか、推進というような関係で重要であったドイツが敗戦ということがあって去ってしまって、その後で軍事的な応用と並行的にこの宇宙の開発が進んできましたので、ドイツがなくなってフランスが重要位置を占めるようになったということがあります。
   それと、宇宙だけに限らず、フランスの政策というのは、アメリカあるいはソ連に対して自主独立を維持していくというところがありました。

 今村室長 

   どうもありがとうございました。

 井口委員長 

   ほかにいかがでしょうか。

 長柄委員 

   国防省の宇宙関係予算は大体どのくらいなのでしょうか。そのうち国防省からCNESに入ってくるのはいくらくらいなのでしょうか。

 パルーシュ氏(CNES) 

   2001年CNES予算という表がございますけれども、このその他の資金というのがございますが、ちょっとずれていますけれども、5億4800万ユーロ、これが国防省からCNESに来ている予算で、国防省の宇宙関係の予算はほとんどこれになります。

 長柄委員 

   ほとんどCNESに入っていると見てよろしいですか。

 パルーシュ氏(CNES) 

   済みません、失礼いたしました。今のは間違いです。この5億4800万という金額は国防省から来る予算なんですけれども、国防省はみずからも宇宙開発関係予算を持っておりまして、これがどのくらいに当たるかわかりません。
   例えばHeliosですが、これは国防省のなんですが、ちょっと数字的には私は持っておりませんので、わかりません。

 長柄委員 

   ありがとうございました。

 井口委員長 

   ほかにいかがでしょうか。
   1つ伺いたいんですが、宇宙科学とか火星科学というサイエンスに使っているお金というのは、ここに科学研究開発19%と書いてあるんですけれども、大体これと考えていいんですか。それともサイエンスというのはこのうちの一部で、もっと少ないのでしょうか?

 パルーシュ氏(CNES) 

   この宇宙開発、火星探査、もちろんこの19%に入っていますけれども、そのほかにも今十数の研究開発というのがこの中にあるわけです。

 栗木委員 

   遠隔医療という話が先ほど出ましたけれども、あれはフランス国内で必要なアプリケーションなんでしょうか。

 パルーシュ氏(CNES) 

   フランス国内でもそのアプリケーションを必要と考えている、政府の方針として考えているところでありますが、国内だけではなく、ギアナとかもと植民地とか、あるいはアフリカ諸国の方ですね。インフラがまだ十分にできていないところ、そういうところに応用できるかなと考えております。

 井口委員長 

   もう一つよろしいですか。この表ですけれども、オペレーションセンターの人件費と運転費が5億4400万ユーロ、人件費がかなりの部分、ほとんどだろうと思うんですが、そのうちにアリアン開発43%と書いてあるのは、このCNESの2500人いるという人たちの中で、アリアン開発のアクティビティをやっているということなんでしょうか。それともアリアン開発を全部アリアンスペースでやっているのでしょうか?

 パルーシュ氏(CNES) 

   すみません。今の御質問に直接お答えする前に一言申し上げますと、この表の中のこの5億4400万ユーロという金額の内訳がこれというわけではありません。申しわけありません。
   それと、2500名の職員の中で、アリアン開発にかかわっているのは250名です。エブリセンターの方でやっています。それで今の御質問ははよろしいでしょうか。

 井口委員長 

   そうすると、この部分が43%というわけなのでしょうか?

 パルーシュ氏(CNES) 

   この「CNES予算」とありますのは、その前の表のESA以外のプログラムとCNESが委託したアリアンプログラムを指してまして、その内訳がこれになります。
   もう少し簡単に言ってしまいますと、このアリアン開発43%というのが、このCNESに委託したアリアンプログラムに当たるものです。こちらのESA以外のプログラムというものが、あとの残りのテレコムとか地球開発とかに当たります。

 今村室長 

   もう一つちょっとお伺いしたいんですが、ヨーロッパ宇宙産業の御説明がありましたが、宇宙産業の将来性、どの程度の成長性のある産業分野であるというふうに見ておられるか。数値目標のようなものは何かありますのでしょうか。

 パルーシュ氏(CNES) 

   難しいですね。まず、今後も将来も成長の可能性のある産業だとはとらえられておりますけれども、具体的に何%とか、そういうことは出ておりません。それと、このヨーロッパでの宇宙産業というのは、先ほどもお話の中にありましたけれども、今後もいろいろな企業間での統合が繰り返されていかなければならないと考えております。それはただヨーロッパ内だけではなく、ヨーロッパ以外の国、産業とも手を結んでいかなくてはならないだろうと考えられております。

 井口委員長 

   ほかにいかがですか。よろしゅうございますか。
   どうもありがとうございました。また機会がありましたら、いろいろお教えくださいますようお願いいたします。
   それでは、次に移らさせいただきます。3番目ですけれども、自在性確保を目指した基盤技術の強化策について、宇宙開発事業団の研究総監、狼先生、よろしくお願いします。

 狼氏(宇宙開発事業団) 

   狼です。座ったままで失礼します。
   それでは、資料26−3に基づきまして、今御紹介にありました自在性確保を目指した基盤技術の強化策について御説明したいと思います。
   内容につきましては、この表紙にございますように、「基盤技術、先端技術強化の考え方」「宇宙用部品に関する自在性の確保」「諸外国の宇宙技術に関する輸出規制」「輸出規制に伴う影響」最後に「宇宙用部品に関する自在性の確保」という順番で御説明したいと思います。
   プロジェクターの用意ができましたが、お手元の資料で御説明したいと思います。
   次のページですが、1.先端基盤技術の強化の考え方につきましては、既に一度御説明をした記憶もございますが、重要な点ですので、再度説明をさせていただきたいと思います。
   これは技術研究本部並びに宇宙開発事業団全体としてこういった先端基盤技術への強化をどういうふうに考えているかという考え方を述べたものでございます。1行目に書きましたように、それは我が国の宇宙開発の安定的、継続的な遂行に必要な技術、これを基盤技術といたしまして、それを支える体制の強化を含めまして、これを事業団内、あるいは日本全国、オールジャパン体制で遂行していくということでございます。
   基盤技術強化に加えまして、さらに次世代でのフロントランナーを目指し得る技術、これを先端技術というふうに定義いたしまして、これに挑戦するということが私どもの基本的な態度でございます。
   下の方に表が左右に分かれておりますが、基盤技術強化の方策といたしまして、最初に私どもが行いましたのは、基盤技術の識別、技術マップの作成でございます。これは重複いたしますので説明は省略いたしますが、衛星系、輸送系並びに共通技術に分けまして、おのおのどういう技術が必要かというマップを作成いたしました。
   それに基づきまして、基盤技術強化の三本柱として、1番目、プロジェクトの確実化、信頼性の向上、これは私ども、プロジェクト協力と呼んでおりますが、こういった面での体制を含めた強化を行っております。技術研究本部の現在の仕事はH−2Aの初号機打上げの成功を目指す支援を含めまして、ここのプロジェクトの確実化につきまして、70〜80%の精力を割いております。
   2番目、宇宙用部品に関する自在性の確保、これが本日のメインのテーマになるかと思いますが、これにつきましては、今後数年間の非常に大きなテーマとして取り上げております。これは次の3、競争力のある共通技術開発ということに直結しておりますが、ここで2と3で扱うものは、電気系の部品のみならず、飛行部品や材料、そういったものも含めた自在性の確保、あるいは競争力のある共通技術というとらえ方で進めております。
   なお、これだけでは現状維持ないしは現状の改良ということにとどまりますので、さらに新しい先端技術へチャレンジするという研究活動をこれに加えて遂行しております。
   なお、右側に書きましたように、こういった研究の遂行におきましては、単に大学や他の国立研究機関の研究と違いまして、先行研究から始まって、試作試験、宇宙での事前実証というものを踏まえまして、ここで使えるということを実証した上でプロジェクトに採用、そして、初めて一通りの技術が確立するという基本的な考え方に立っております。
   この実験運用を通しまして得た知見、経験をもとに、さらに新しい研究テーマを設定して、このサイクルをまた繰り返していく。これが私どもの基本的な考え方でございます。
   これを支える体制としまして、NASDAの技術研究本部だけでは当然力不足でございますので、宇宙科学研究所、航空技術研究所を含めた3機関の連携、あるいは数多くの大学との連携、協力関係及び、さらに重要な企業の専門家集団との綿密なコンタクト、こういったものを通しまして、技術が蓄積継承される体制を整備するという目標に向かって進んでいるところでございます。
   従来はとかくプロジェクト単位で技術が切れていたという弊害といいますか、そういうおそれがあったわけですが、それをプロジェクトで得た非常に高レベルの技術を蓄積継承しながらさらに進めていくというのが、非常に重要なポイントだと思います。
   では、左側の2の「宇宙用部品に関する自在性の確保」について次のページで御説明したいと思います。
   (1)に書きましたように、ETS−6及びH−2Aロケットの開発にあっては、国際的水準に到達すべく自主開発を標榜いたしまして、国産部品の採用をいたしてまいりました。その後は、自在性を損なわない範囲で国産にこだわらず、低価格部品の使用を進めてまいりました。これをもう少し補足いたしますと、H−2Aロケット及びETSというのは純国産の人工衛星でございますが、これによりまして、システム技術を含めまして、かなり高度の技術レベルを確保できたというふうに私ども考えております。
   これはシステムレベルのみならず、例えばコンポーネントでいいますと、静止軌道用の地球センサー、これは既に全世界的に多数のユニットを販売しておりますし、それから、太陽電池セルという電子部品も世界的な市場占有率が高い。こういうものも既にこの努力の中で生まれた一つの結晶だと思います。そのほかにニッケル・カドミウムバッテリ等も非常に信頼性が高いということで、世界各国で市場性を持っているという状況でございます。
   しかしながら、この後の情報といたしまして、より市場性を重視した開発、あるいはグローバル化に伴うオープン性の要求、あるいは産業分野−−民生分野と言ったほうがよろしいかと思いますが−−におきます技術的な発展が非常に顕著なものがありまして、こういった従来型の宇宙開発の純国産化といった路線のみには、どうしても今後の競争的な宇宙開発についていけないだろうということで、ここに書きましたように、自在性を損なわない範囲で、国産にはこだわらず、効率的なコスト効率の高い部品の使用を行ってきて、現在に至っているというふうに考えております。
   (2)ですが、しかしながら、宇宙用部品の国際間取引に関する規制等、これは緩和されたり、また規制が強化されたり、ポリティカルなタービレンスの影響を当然受けるわけでございますが、そういったものの影響、あるいはそういうものに左右されながら進んでまいりまして、自在性を確保するという意味で、やはりある種の重要な部品、コンポーネントにつきましては、しっかりと調達性を確保する必要があるだろうというのが現在の認識でございます。
   3番目に入りまして、諸外国の宇宙技術に関する輸出規制に関してでございますが、一番私どもが恩恵を受けているというのは、言うまでもなく米国でございますけれども、通信衛星及び衛星関連技術の輸出に関しましては、従来商務省の担当でございましたが、この商務管理リストから国務省の軍需品リストに移管されたという事実がございます。これが1999年、おととしの3月になります。
   国務省におけます審査期間の問題、あるいは技術支援契約の審査範囲の拡張、拡大などの観点から、宇宙技術の輸出管理が非常に厳しいものであるという一般的な受けとめ方をされております。具体的に申しますと、例えばリバース・エンジニアリングの禁止ですとか、国産化をする際の制限ですとか、そういったものがございます。
   この点につきまして、例えば一般的にスペース・ニューズ等で報道されている記事によりますと、米国内の企業においてもこの審査期間の延長によって非常に困った状態になることが懸念されている、ということです。つまり米国から見ると輸出になるわけですが、その輸出の額がそれによって減ったということになれば非常に困るので、もう少し緩和するべきであるという意見があると同時に、調達側、それを輸入する側からも、少し厳し過ぎるのではないかという声が上がっているということが、ニュース等で報道されております。
   これはあくまでも「ニュースソースがそういった一般的な新聞等である」という話でございまして、一方で米国の会計検査院−GAOと呼んでおりますが−の最近出されたレポートによりますと、全データをとってみますと、実はそんなことはないという結果が示されています。商務省、国務省、1993年3月以降のデータによりますと、むしろ国務省の方が平均的に見ると審査期間は短いのだというレポートが、昨年の12月に出されております。
   さらに、審査期間のみならず、採択率ですとか、突き返されて、もっと改定せよといった、そういう要求に関しても、むしろ商務省より国務省の方が緩いのだというGAOのレポートが出ておりまして、一般的な新聞ニュース等の間に大きな隔たりがある、というのが私どもが今受けとめている事態でございます。
   これはある意味では両方正しいというふうに私は個人的に思っておりまして、その理由は、国防に関する技術の流出に関して、世界全般的に厳しくなっている、そういう影響があるということは全体的傾向としてあります。同時に、市場競争の激化ということもありまして、特に日本に対して非常に厳しい審査をしているという事実は、今のところないというふうに考えられます。ただ、期間が以前より長くなっているということはある程度否めない事実だと思います。日本は依然として最恵国待遇というポジションを維持していることは従来どおりでございます。
   フランスにつきましては、これは輸出規制がございまして、それにのっとって個別に審査しているということがここに出てございますが、フランスから直接部品を購入するというのは、あまり最近ではございません。
   次の4.輸出規制に伴う影響でございますが、今申し上げました事情によりまして、輸出許可手続に時間がかかり、輸出スケジュールにおくれが生じているということも実際に起こっております。これは開発スケジュールに影響を及ぼしておりますが、例えば各種衛星の電子部品、これは個々に数え上げたらきりがないんですが、そういった電子部品が典型的な例でございます。
   2番目、部品に関係した技術データが入手できないという問題がございます。先ほど申しましたように、リバース・エンジニアリング、つまり綿密な試験をして、中の特性を調べて、そして、言ってみれば内容を外から暴き出すというようなことに関しましては、それを禁止することが最近非常に強く要求されております。したがいまして、場合によりますと、試験は米国でのみ可能で、最終結果だけを日本に知らせるというようなことも起きております。実際にはおりひめ/ひこぼし、ETS−7で起きましたスラスターのバルブに関しまして、そういうような事態が起こっております。これはそういうことがあるということを御説明しております。
   最後に5.宇宙部品に関する自在性の確保という面で、技術研究本部がどういうストラテジーを持っているかということがここに書いてございまして、まず、部品研究開発プログラムを打ち立てまして、12と2つの方法で進めております。
   1つは、国内に技術を確保すべきコンポーネント並びに部品を識別いたしまして、それに関して資金を投入して、研究開発をここ数年、大体において3年をめどにでございますが、集中化したということでございます。その中のカテゴリーとしましては、不具合が多発する輸入部品・材料といったもので、たとえて言いますと、このスラスターの中のバルブ等ですね。それから、ホイールもこれに当たるかと思います。
   2番目は機能・性能を制する重要部品・材料。これはコンピュータ、MPU、マイクロプロセッサー及び半導体のメモリ、あるいは太陽電池セル、ガリウムアーセナイド等でございますが、そういった今後間違いなく重要になる部品・材料等でございます。
   3番目は長納期部品・材料。これは非常に納期がかかる。しかも、日本で調達しようと思えばできないことはないというものにつきましては、これはそれほどハイテクなものではございませんが、例えばここに書いてありますようなトランスですとか、あるいは電子部品で言いますとセラミックコンデンサ、そういったものにつきましても国内調達をできるようなシステムをプログラムの中に組んでございます。
   2番目、海外からの輸入で代替するコンポーネント・部品に関しましては、評価技術の確保、つまり信頼性、安全性といったことを確認する評価技術をしっかり確保していくという考え方でございます。特にコスト効果の低い、つまりお金を投入してもさほど効果の上がらない部品で、なおかつ複数の供給源があるといったものにつきましては、みずから開発する必要はないという判断を下しておりまして、こういうものにつきましては評価の技術、特に対放射線性に関する保証の技術といったものがこの中心になるかと思います。
   なお、この辺の部品につきましては、現在、宇宙開発事業団の安全信頼性度技術部を中心にいたしまして、部品検討チームを構成して、現在作業を進めております。この作業の内容は、まず、目標としてはどういう部品、どういうコンポーネントに集中すべきかということを、アウトプットとしてもう少し網羅的に出すということが最終目標でございますが、やり方としましては、人工衛星のシステムメーカーすべて、それから部品供給メーカー、これは100社を超える非常に膨大な数に上りますが、こういったところに書面並びに面談によりまして綿密な調査を行っております。従来方式のアンケートのみの調査では、どうしても真の情報は集まりにくいということで、面談によりまして、かなり時間と手間をかけて、詳細な調査を実行中でございまして、現在、約3分の1程度が完了した段階でございますが、さらに鋭意この作業を進めまして、これをまとめ、そして分析した上で、何らかの報告書の形にまとめたいと思っております。それが大体今年いっぱいかかる予定でございますが、もちろん先ほど御説明いたしましたように、これと並行いたしまして、先ほど申し上げましたようなMPU、メモリを中心とした部品につきましては、既に研究開発に着手しているところでございます。
   雑駁ではございましたが、以上です。

 井口委員長 

   どうもありがとうございました。
   御質問、御意見をいただきます。

 長柄委員 

   1ページ目に3機関、大学、企業の専門家を集めるとありますが。集めるのはいいですけれども、要するにこれは公募を原則とするんですか。だれにどの技術の開発を担当してもらうのかというのは。

 狼氏(宇宙開発事業団) 

   技術全般につきましては、広報も含んでおりますが、この広報にいたしますのは先端技術の部分でございまして、基盤技術に関しましてはNASDA主導という形で進めております。主導といいますのは、どういう技術をどういうふうにやっていくか、というところについてです。

 長柄委員 

   NASDAが「この技術はだれにやってもらう」と決めるのですか。公募ではなくて。先端は公募ではないのですか。

 狼氏(宇宙開発事業団) 

   NASDAが決めるというのはちょっと言い過ぎかと思いますが、例えば学界等に、こういう問題についての検討をする一番いいグループに対してこの問題を投げかけてくださいというようなやり方をとっております。問題を識別し、範囲を規定するのはNASDAの仕事だというふうになっておりまして、テーマそのものについてはNASDA主導というふうに考えております。

 長柄委員 

   先端技術の方はテーマから公募でいくのですか?

 狼氏(宇宙開発事業団) 

   完全にまでそこまで踏み切っておりませんが、大枠としてはその方向、つまり先端技術としてはそういう方向にいくというふうに思っております。

 栗木委員 

   ここでも信頼性が取り上げられていますけれども、NASDAのH−2Aのグループと「エンジンの信頼性というものを計量的に評価できるか」という話をしていたときに、コンポーネントレベルの、つまり基盤技術としての信頼度の積み上げというのは要るのではないか、という話になって、つまりエンティティとしての信頼性を評価していくしか方法はないのだというような意見がありました。ここでもって基盤技術の評価対策というのが、もともと基本戦略でも打ち出されたときには、まさしくエンジンの中でもコンポーネントレベルから積み上げるということがまず第一という具合にとらえていたんですけれども、狼先生が面倒を見ておられる技術研究本部での積み上げ、あるいは基盤技術の信頼性評価は、そういうことは含まれないんですか。

 狼氏(宇宙開発事業団) 

   それにつきましては、ここの1ページ目の「技術を支える体制の強化」の部分におきまして、3機関の連携の中でそのテーマは取り上げられております。

 栗木委員 

   「連帯責任」になると、どこがしっかりと責任を負ってやるというのはだいたい無理な話で、この場合どこかがきちんとやりますと言わないといけないんじゃないですか。しかもH−2Aのエンジンとなれば、NASDAがやらざるを得ないというのは明々白々だと思うんですけれども。

 狼氏(宇宙開発事業団) 

   これは若干言い訳めいたことになるんですが、もともと技術研究本部は輸送系、つまりロケットにつきましても元来研究をしていたわけなんですが、あるときから、これがいつからかはよくわかりませんけれども、衛星技術に特化するというふうに変わりまして、その流れがいまだもって完全には修正されておりません。したがいまして、今日お話ししたものの中の大部分は、ほとんどが人工衛星系のものでございます。一部技術基盤の識別の中で、ロケット関係もございますが、ロケットエンジンそのものの研究につきましてはほとんど含まれておりませんで、これはどちらかといいますと、NALの角田研究センターと新しく名前が変わったんですけれども、主として信頼性を含めて、そちらでの研究テーマになっているというのが現状でございます。したがいまして、栗木先生の御質問に対してまともにお答えできるような体制は今はないというふうに申し上げてもよろしいかと思います。

 栗木委員 

   しかし「中長期戦略」で指摘された基盤技術の評価というのは、トータルとしての評価だったと私は思うんですね。ですから、そこが一元的にそういうことをやっている活動が見えてこないというのは、ちょっとトータル引くことの輸送系だけがここだというのは、このタイトルとまさしく合っていないじゃないかという気がしまして、それはそういう所掌になっているというのであれば、いずれレポートがそちらの担当から出てくるのかもしれませんけれども、これから増強型のような、エンジンを幾つか複数で用いてミッションを達成するようなときの、まさしく以前に井口委員長が指摘されたように、単体としての評価が定まっていないと、複数用いたときの増強型全体としての信頼度というのが定まってこないんじゃないか、そういう状態で開発できるか、極めて不安な感じがしますけれども、これは狼先生には受けられないということであれば、どこに言っていいのか私もよくわかりませんけれども、タイトルとすると基盤技術強化となっていますので、ぜひお持ち帰りいただいて。

 長柄委員 

   今の件は狼さんじゃなくて、3機関連携でやるという話ではないですか。

 狼氏(宇宙開発事業団) 

   3機関連携の中で、その一部を、ということです。

 長柄委員 

   エンジンの中核何とかという組織がやる、狼さんのところではそれはやらないということで、この前説明を計画部会で伺ったんですけれども。

 栗木委員 

   でも、エンジンのグループがやれないという返事を聞いておりますが。

 長柄委員 

   いや、エンジンのグループじゃないんです。あれはNALなどの主に角田の人たちがやるということで、NASDAの今の1号機をやっているような人たちがやるわけではなくて。

 栗木委員 

   1号機をやっているような人こそやらないと、わからないじゃないかなと私は思いますが。その方たちが一番よく知っているわけですから、何をやるべきかということを。

 狼氏(宇宙開発事業団) 

   輸送系システム本部の研究レビュー会に私も出席したんですが、確かにそういう問題は着々と、個別的ではございますが、テーマを挙げて、今年も含めまして、そういう研究をかなりまじめに進めておりました。

 栗木委員 

   そうしましたら、それはだれが、ターゲットデートがいつで、といったことをやはり出してもらわないとまずいんじゃないですか。どなたにアクションをかけていいかわからないですね。

 狼氏(宇宙開発事業団) 

   現段階で私がこうしますというお答えはもちろんできませんが。

 長柄委員 

   そこの責任者は冠さんなんです。そうですね。冠さんが責任者でやるということで。

 栗木委員 

   じゃあ、それは宿題にして、ひとつターゲットデートを出してください。

 井口委員長 

   今のことで、確かに信頼度という数値そのものもそうですけれども、今のやり方だと、エンジンというのは非常にたくさんの部品からなっているにもかかわらず、アセンブリの状態でないと試験ができないんです。部品ごとに試験をしようと思っても、試験法がわからないし、施設もないんです。ないから、しようがないから、と非常に複雑なものを全部アセンブリして、それで試験している。まあ、うまくいったからいいやとしている。部品の本当の限界性能や何かはわからない。そういう開発ポリシーでいいかどうか。基本的なところなんです。それも冠さんのところでやってくれるならいいけれども、私はどうもそういう考え方じゃないところをついているんじゃないかという気がするんですが。
   だから、例えば今の二、三週前に、今度打上げるロケットの準備状況をNASDAの理事長はじめ責任者の方から伺ったんですが、半年間でいろいろなことをおやりになっていると伺ったんですけれども、そのときに、要するに今の理事長というのは、最初の開発ポリシーを変えたんですね。まず、スケジュール維持というものをかなり守ろうというポリシーから、理事長が自分が納得したものでなければ打上げない。信頼性というものを最優先に考えていこう。だから延ばしたわけですね。そういうレベルのポリシーなんだと思うんです。そのあたりのディスカッションをこれからしたいと思うんです。もうエンジンは開発しないというのなら、それはそれでいいのかもしれません。でも、開発のそのポリシー自体が何か問題があるんじゃないかという感触を私は受けます。それを狼先生のところでやらないのであれば、どこかでやっているのか、一度そういう関係の方々、理事長も含めてだと思いますけれども、議論をさせていただきたいと思います。

 狼氏(宇宙開発事業団) 

   委員長なり栗木先生の御指摘の点はよくわかりましたので、今、責任ある答えはできませんけれども、何らかの格好で関連部署にインプットをして、しかるべき対処をしたいと思っています。

 井口委員長 

   ほかにいかがでしょうか。
   なければ、どうもありがとうございました。
   次に、種子島宇宙センターへの落雷について、宇宙開発事業団副本部長の丹尾さんに御説明をお願いいたします。あまり時間がありませんので、簡単にお願いいたします。

 丹尾氏(宇宙開発事業団) 

   7月6日、先週の金曜日ですが、種子島宇宙センターの総合司令塔と言っていますが、打上げのときには総合指令センターになるところです。そこの設備等に落雷がありまして、被害がありました。その状況を簡単に御説明いたします。
   3ページを御覧ください。3ページが種子島宇宙センターの図でございます。落雷のあった場所は、下の方が南でございますが、黒くポツが打ってあるところがありますが、総合司令塔屋上以下4カ所、北の方では大型ロケット組立棟と書いてございますが、ここに1カ所、合計5カ所に落雷が感知されております。
   被害の状況でございますが、6ページと7ページにまとめて書いてございます。6ページは射点系の設備、射点系といいますか、ロケットの整備に直接関係する設備でございますが、合計7件ほど被害がございました。現在はほとんど復旧してございますが、1点まだ処置が完了していないものがございます。7ページ目が射場系でございまして、合計6項目ほど被害がございまして、現在3項目ほどまだ処置中のものがございます。
   1ページに戻りまして、被害がございましたが、8月25日に予定しておりますH−IIAロケットの試験機1号機の打上げについては、現在のところ影響ないものと考えております。
   今後の予定としましては、3.1、3.2と2つ書いてございますが、大型ロケット発射設備については、制御をモニタするすべての系統について健全性の確認を行います。それから、総合司令塔などの射場設備につきましては、7月16日から19日にかけて射場飛行安全システム系の試験を再点検することとしております。
   2ページに参考までに避雷とか耐震の基本的な考え方を書いてございます。まず避雷の設備でございますが、ロケットにつきましては、飛行中及び地上において直接雷を受けた場合は被害を受けますので、必ず建屋の中、あるいは射点におきましても避雷設備を設けてございます。
   4ページが、まず射点にあります場合のロケットの避雷設備でございます。真ん中にねずみ色にかいてございますのはアンビリカルタワーといいまして、ロケットに液体窒素や酸素、あるいはフェアリングの空調のラインを供給しますアンビリカルトース、この上に避雷針、その横に高い塔が建ってございますが、これは専用の避雷塔でございます。この4つの避雷針によってロケットをカバーしています。これまでのH−IIまででは一方の避雷針で避けていたんですが、こういう4カ所の避雷針で囲むことによって、雷からの保護効率は98%ぐらいあるという具合に言われております。
   次の5ページは組立棟の中の避雷針の状況でございます。屋上の方に避雷針が設けてございまして、合計9本ございます。ここには6本しか描いてございませんが、今回、この右の図の上の左側のところに避雷が確認されております。
   ということで、ロケットとしては建屋、あるいは射点におきましては避雷針がカバーして、直接ロケットに落ちないようにカバーしてございます。
   それから、2ページの4.2項の耐雷設備でございますが、地上設備、それからロケットに雷からの誘導電流が回らないように、耐雷の保護装置(サージ・アブソーバ)というものをつけてございまして、なるべく設備とかロケットに誘導電流が回らないような対策を講じてございます。
   ロケット本体でございますが、先ほど言いましたように、飛行中、あるいは特に雷が落ちた場合は避けられませんが、できるだけロケットの構造間の電気の導通性をよくすることによって、なるべく雷の影響を避けるような設計、それから火工品、SRBの点火、あるいは1・2段分離、あるいはデストラクトシステムの火工品には、誤着火の防止のため、電源ラインを切るためのセーフ・アーム装置を搭載してございまして、安全を確保しているという状況でございます。
   以上です。

 井口委員長 

   どうもありがとうございます。
   いかがでしょうか。たまたま栗木先生、私、芝田課長はじめ5人でお邪魔していたときに落雷がありまして、びっくりしました。そのあとの御説明でもありましたが、3ページ目にもありますように、ここには危険物がたくさんあるんですね。液体水素はもちろんでしょうけれども、液体酸素も危険物じゃないですか。

 丹尾氏(宇宙開発事業団) 

   あと高圧ガスですね。

 井口委員長 

   そういう重要な点には全く被害がなかったということですね。

 丹尾氏(宇宙開発事業団) 

   直接はなかったです。一部モニタラインとかはありましたけれども。

 井口委員長 

   幾つかは障害があったわけですけれども、これも完全に避けろというのは、技術的にもコスト的にも非常に大変で、小さい確率ならば、何かあったらすぐ対策をとるというプリンシプルだと伺って、安心したわけです。
   雷が1カ所にたくさん落ちたということは今までなかったんでしょうけれども、そこにはアンテナの数をこれから増やされるということで、私も直接行っていたという手前、相当気になっていたんですけれども、適切な措置をとっていただいたなと思いますが、いかがですか。

 栗木委員 

   1つ、4ページのこの絵を確認させていただきたいんですけれども、これは移動中の台車の写真ですか。

 丹尾氏(宇宙開発事業団) 

   この写真の位置は第2射点のときのものです。今、第1射点もこれと同じような避雷塔を建ててございまして、今工事中でございますが、7月末に完成です。

 井口委員長 

   先だって見せていただいたときに、第1射点の方はこれがずっと移動していて、台車が入る一番奥に古い建屋が残っていて、たしかモニタするカメラがのぞいておりましたけれども、これが一番奥の2本の避雷針に。

 丹尾氏(宇宙開発事業団) 

   さらに奥に。

 栗木委員 

   奥なんですが、その建屋の影響というのは静電界も上げますので、奥の方の避雷針に影響はないですか。

 丹尾氏(宇宙開発事業団) 

   正確に言いますと、奥の建屋の避雷針と、合計5本にプロテクトされるような形になります。

 栗木委員 

   もう一本あの奥にはついているんですか。

 丹尾氏(宇宙開発事業団) 

   はい、そうです。

 長柄委員 

   こんどのこの被害は、誘導台なんですか、ヒューズが飛んだとかなんか。

 丹尾氏(宇宙開発事業団) 

   実際に落雷がありましたので。

 長柄委員 

   落雷があって、そのために誘導電流が流れて、だから、ヒューズが飛んだとか、リセットしたとか、そのためにヒューズがついているようなものだけれども、直接雷の電流が流れたわけじゃないわけですね。

 宇宙開発事業団 

   ただ、RCCの壁が傷ついたぐらいだと思いますけれども、これについては仮設のトリムのためのアンテナの仮設工事をしてありますが、どうもそこに雷が落ちたようです。

 長柄委員 

   直接?

 宇宙開発事業団 

   直接落ちたようです。その影響でRCCなんかはかなり問題が起きています。これにつきましてはチェックすれば直りますので特に問題とは思っておりませんけれども、ただ、この仮設が影響して、建屋に電流が流れて、そのために建屋とそのアースの間の電位差が出て、問題が起きたんじゃないかというふうに考えております。

 長柄委員 

   みなさんはこのあたりにおられたんですか。

 井口委員長 

   我々はこっちの方にいたんです。

 宇宙開発事業団 

   それから、先ほど言われたように、射点の設備を設計するに当たって、まず一番危険物のある火薬庫だとか、液体水素だとか、そういうものにつきましては、それだけの安全策とか、基本的な落雷に対する設計をして、アースをアテンションから直接アクセスするとか、射点全面アースとか、火薬庫の面については電線を張って、絶対に落ちないようにしています。そういうような対策をとっておりますので、100%はできませんけれども、危険なところについてはちゃんとそういった設計をしてあります。

 長柄委員 

   そこでは何ら被害はなかったんですか。その火薬があるとか、燃料があるとか。アースとか、どこかに電線を張ったりしたとか、そういうところはよかったんですか。

 宇宙開発事業団 

   はい。

 井口委員長 

   あと、8月25日打上げとなりますと、台風シーズンになるんですが、台風というのはかなり前からいつ来るというのがわかりますから、そのときは避けるということでしょうけれども、台風によって地上施設が被害を受けた例というのはあるんですか。今までにも相当大きな台風が来ていたと思うんですけれども。

 宇宙開発事業団 

   基本的には、大きな構造物、建屋につきましては、風速60メートル以上で安全な設計でつくっておりますので、まず基本的には台風で大きな被害が出るということはありません。

 井口委員長 

   今までもありませんか?

 宇宙開発事業団 

   ありません。ただ、小さなものが飛んだり、そういうことはありますので、打上げの前に台風の来る前にロープで固定したりということをしないとやっぱり問題が起きます。それは台風の予報ができますので、事前に対策をとったりしています。

 井口委員長 

   いかがでしょうか。まだこれから何があるかわかりませんので、どうかひとつ慎重に進めてくださいますようにお願いいたします。どうもありがとうございました。
   それでは、引き続きまして5、6を一緒にやっていただくことでよろしいですね。塩満さんに第8回と第7回アジア太平洋地域宇宙機関会議の開催についての御報告をいただきます。

 塩満調査国際室長 

   1つは5番目の資料の方ですが、こちらはAPRSAFと通称しているアジア太平洋地域宇宙機関会議でございます。1993年以降、毎年開催しております。今回はマレーシアで7月23日から26日に開催する予定にしています。
   開催のテーマは「New Space Age in the Asia and Paciffic Region」ということで、かなり幅広い中身を取り扱える内容になってございます。
   2ページ目のところに御紹介させていただいております、今回、日本側の共同議長ということで栗木先生に、それから、マレーシア側の主催者を代表しまして、マレーシア・リモートセンシングセンターの代表のニック・マームード所長に総合議長をお願いしております。そのほかセッションが4つございまして、地球観測、教育・普及、宇宙環境利用、通信放送のセッションがございます。
   次のページ、アジェンダを紹介させていただいております。オープニングセレモニー、プレナリーセッション、今、申しましたセッションと、それからあと分科会を開催する形で進めさせていただきたいと思っております。地球観測、通信放送、教育・普及につきましては、分科会を並列して開催する予定にしてございます。最後、25日にクロージングセッション、26日にファシリティーツアーを予定してございます。
   最後のページから2枚目がこれまでの実績で、これまで海外で開いた例は第5回、モンゴルで開いた例、それから今回、第8回目がマレーシアで開くということになって、そのほかはつくばと東京で開いてございます。
   一番最後が参加実績一覧ですが、こちらはかなりアジア太平洋地域の多くの参画を得まして進めてきた過去の経緯がございます。今回も多くの方々が御出席いただける予定になっております。
   26−6、次の資料でございますが、こちらは第7回アジア太平洋経済社会委員会/政府間諮問委員会、ちょっと長い会合の名前なんですが、国連アジア太平洋経済社会委員会の方は通称ESCAPといっておりますが、国連の中にこのような委員会が設置されて開かれております。
   一番最後のページが機構図になっています。ESCAPというのはいろいろな幅広い食糧問題とか、いろいろ取り扱うことになっていますが、その中に宇宙技術応用セクションというのがございまして、その中に1994年の北京宣言の採択から始まった持続可能な開発のための宇宙技術利用地域プログラム(RESAP)というのがございます。これが1994年からスタートしていますが、さらにRESAP2というのがインドのデリー宣言に基づきまして立ち上げられまして、今回の会合ではこのRESAPフェーズ2の実施状況のレビューをするということで会合が開かれました。こちらは過去形になります。日時は6月28日から6月30日、ベトナムのハノイで開催され、ここに書いてございます参加者で開催されました。
   特に大きく重要なポイントとしましては、2の(3)のところで「衛星通信応用地域作業部会」とか、それからリモートセンシング、気象衛星、宇宙科学、それぞれの作業部会というのが、先ほどの機構図にも示されていますが、開催されていまして、その実施状況の報告、それから、RESAPのレビューとしまして、特に中核をなす「ミニマム・コモン・プログラム」というのがございます。これは参考のところに簡単に紹介させていただいてございますが、参考5ページでございまして、8項目ございます。環境とか天然資源管理、食糧安全保障、能力開発、天気予報とか自然被害の軽減、健康管理、衛生確保など幅広い分野がございます。このミニマム・コモン・プログラム、MCPといっていますが、このMCPを実現するために、さらに「コモン・デノミネーター・プロジェクト」というのが15テーマございまして、これを進めていくというのがRESAPのフェーズ2の実施方法になっています。このおのおのの実施状況について説明があったという状況でございます。
   しかしながら、日本側としましては「RESAPワークプランの貢献のアナウンス」というのが(7)に書いてございますが、必ずしも日本自身はこれに積極的に参加するという形での貢献ではなく、むしろ先ほど御説明しましたAPRSAFを日本の主催という形で開催することで、情報交流に努めたり、個別のバイラテラーの関係を築くという形で、この地域での研究交流、共同研究を実施している状況でございます。
   最後でございますが、3ページ目(8)に書いてございますが、このESCAPの次回ICC会合は中国で開催され、次がマレーシアで開催されるという状況でございます。
   もう一つつけ加えますと、このESCAPのダイヤログフォーラムというのが併設されて、アジア太平洋地域、宇宙機関会議と併設する形でESCAPのダイヤログフォーラムも開催されるということで、こういう形での情報交流の場の提供という形で、日本としては貢献していくという状況でございます。
   以上、簡単でございますが、説明を終わらせていただきます。

 井口委員長 

   どうもありがとうございます
   栗木先生、共同議長としておいでになりますが、何か補足されることはございますか。

 栗木委員 

   私も初めてなので、これまでの会議の本筋と、今回特別にどういうところにフォーカスするかというようなことがまだよくわからなかったんですが、NASDAの池田理事にも一応お話を伺いまして、こういう方向でいこうかというようなことはトピックスとして煮詰めつつあります。私の個人的な感触としては、1つは地球観測を用いた自然災害の防御、それからもう一つ、池田理事も力説されておられたんですが、宇宙をインフラとして使ったときの教育活動、そんなところが今回主な力の入れ場所かなと私は現在思っております。まだこれから1週間なので、少し付け焼き刃のような感じもありますけれども、中身を出し物を煮詰めていこうと思います。
   従来はインフォメーションの単なる交換の場であったと聞いているんですが、もう少し何を使って何をいつやるかというようなことを具体的にそろそろ詰めていくような場に使いたいというようなことが、事前の準備でもって議論されております。

 井口委員長 

   どうもありがとうございます。

 五代委員 

   ちょっとよろしいですか。

 井口委員長 

   昨年は五代委員が。

 五代委員 

   ずっと出ていますけれども、これは理事長がいないから私が出ています。
   1ページ目の下の方に、今、栗木さんがおっしゃった教育・普及活動支援云々、ここは何か具体的に提案を出すんでしょうか。今まで全く提案がなかったわけではなくて、何年か前には、例えば「日本はアジア太平洋地域の小型衛星というものをやりたいならば、それを受けて打ち上げる用意があります」とかありましたが、反応はあまりなかったのでしょうか。そういうようなことも提案がないわけじゃないんですね。今度、教育・普及活動というのは私はよいと思うんですけれども、ここでどんなグループをつくりましょうか、どういうプロジェクトを考えましょうか、とか具体的に何かあるんでしょうか。

 塩満調査国際室長 

   そうですね。やはりユニスペース3との関係というのがございまして、1つはこのプレナリーセッションでも出てくるんですが、災害監視、復旧及び遠隔医療のところで、カナダの取り組みとか、後ろの方にもフランスの取り組みとかが出てきますので、日本側として先日も御説明させていただきましたフェローシップとか、そういう人材育成、あるいは研究開発能力、ポテンシャルの活動とか、そういう形のことにつきまして、幾つかこの3カ国でもユニスペース3の関係で提案がございますので、そういうものの実現に向けて、関係機関のニーズ、あるいは方向性を確認して提案ができるものについては提案していきたいです。特に今、栗木先生がおっしゃったような2つのテーマというのは、何か実現に向けた提案ができるといいなと思っているところでございます。

 栗木委員 

   もう一つ、池田理事との話し合いでも出ておりました、宇宙ステーションの利用という話で、拡張版の一種の放送大学みたいなもの、インターナショナルな放送大学みたいなことができないかというようなことも話題に上りまして、「宇宙を使って」というようなことを考えると、そういうメリットもあるんじゃないでしょうか。

 五代委員 

   まあ、アジア太平洋地域は難しいわけですけれども、何か具体的なプログラム、みんなが大体満足しそうで、そういうのから始めるといいですね。

 長柄委員 

   何人くらい登録されそうなんですか。

 調査国際室 

   一応招待状を出している中で出席するという回答は大体70名程度、日本から大体20名程度、外国から50名。マレーシア、現地の方がほとんど参加されると思いますので、プラス20、30ということで、大体100人ぐらいじゃないかなと思っております。

 塩満調査国際室長 

   一部分は招待する形ですが、大部分は自費でいらっしゃるみたいです。

 井口委員長 

   よろしいですか。じゃあ、どうもご苦労さまでした。
   それでは、最後に前回の議事要旨の確認でございますが、後ほど御確認くださいますようにお願いいたします。
   それでは、以上で第26回の宇宙開発委員会を閉会といたします。どうもありがとうございました。

−−−了−−−



(研究開発局宇宙政策課)

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