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宇宙開発委員会

2001/06/19 議事録
第23回宇宙開発委員会議事録


第23回宇宙開発委員会議事録

1.日時 平成13年6月19日(火)
  10:00〜

2.場所 第3会議室

3.議題 (1) Hー2Aロケット試験機1号機の準備状況について
  (2) Hー2Aロケット試験機1号機の打上げに係る安全の確保に関する調査審議について
  (3) 「宇宙開発に関する基本計画」の議決について
  (4) その他

4.資料 委23-1-1 H−2Aロケット試験機1号機の開発状況について
  委23-1-2 H−2Aロケット試験機1号機の飛行試験について
  委23-1-3 ロケット打上げ及び追跡管制計画書(案)
  委23-1-4 H−2Aロケット試験機1号機の理解増進活動について
  委23-2 H−2Aロケット試験機1号機の打上げに係る安全の確保に関する調査審議について(案)
  委23-3-1 宇宙開発に関する基本計画(案)
  委23-3-1 「宇宙開発に関する基本計画(案)」についての意見に対する対応
  委23-4 第22回宇宙開発委員会議事要旨(案)

5.出席者
    宇宙開発委員会委員長 井口雅一
    宇宙開発委員会委員 長柄喜一郎
              〃 栗木恭一
              〃 澤田茂生
              〃 五代富文
    東京大学名誉教授 秋葉鐐二郎
    東京大学生産技術研究所長 坂内正夫
    国立情報学研究所長 末松安晴
    東京都立科学技術大学長 原島文雄
    文部科学副大臣 青山丘
    文部科学省研究開発局長 今村努
    文部科学大臣官房審議官 素川富司
              〃         宇宙政策課長 芝田政之

6.議事内容

 井口委員長 

   予定の時間になりましたので、始めさせていただきます。
    おはようございます。本日は、第23回宇宙開発委員会でございます。時間は12時15分までいただきます。
    本日は重要な懸案事項でありますH−2Aロケット試験機1号機の開発状況の報告を受けますので、青山副大臣にご出席をお願いいたしました。後ほどごあいさつをいただきます。
    それから、これまでにも重要な局面でいろいろご意見をいただいております4名の外部有識者にご出席をお願いいたしました。ご紹介申し上げます。秋葉鐐二郎先生、元宇宙開発委員会委員・元宇宙科学研究所の所長でいらっしゃいます。それから坂内正夫先生、東京大学生産技術研究所の所長でいらっしゃいます。それから末松安晴先生、国立情報学研究所所長・元宇宙開発委員会委員でいらっしゃいます。それから原島文雄先生、東京都立科学技術大学の学長でいらっしゃいます。どうぞよろしくお願いいたします。
    それでは、青山副大臣にごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
   

 青山副大臣 

   文部科学副大臣の青山丘といいます。よろしくどうぞお願いいたします。
    宇宙開発委員会におかれましては、日ごろより宇宙開発政策に熱心にご審議をいただきまして、まことにありがとうございます。また、本日は工学の分野において我が国を代表される先生方にご参加いただき、感謝申し上げたいと思います。ありがとうございます。
    私自身も、ほんとうに最近、皆さん方が尽くしてくださるこの役割の重さ、とりわけH−2Aロケットの果たす役割について深く理解できるようになってきましたが、まことに国家にとって大切な事業でございまして、今さら申し上げるまでもないことですが、必要なときに必要なものを宇宙空間の所定の位置に展開すること、このことは我が国の安全のためにも必要不可欠なことでございまして、H−2Aロケットの開発は我が国にとってぜひとも完遂しなければならない最重要課題でございます。このH−2Aロケットの開発に当たっては、宇宙開発委員会からのご指導を踏まえて、宇宙開発事業団において品質管理の徹底、エンジンの地上燃焼試験など、打上げ成功のかぎとなる信頼性の向上に向けた措置が講じられてきたものと承知しております。
    本日は宇宙開発事業団のほうからH−2Aロケットのこれまでの開発の状況をお聞きいただいて、夏に予定されております打上げの成功に向けて総合的視点からご議論を尽くしていただきたいと思います。関係者全員が緊張感を持ち、打上げ準備に万全を期するようお願い申し上げますとともに、宇宙開発委員会の一層のご支援をお願い申し上げて、私のあいさつとさせていただきます。ありがとうございます。
   

 井口委員長 

   どうもありがとうございました。
    青山副大臣は、国会の関係で途中で退席されますので、ご了承くださいますようにお願いいたします。
    それでは、第1の議題、H−2Aロケット試験機1号機の準備状況についてご報告を承ります。ご報告くださいますのが宇宙開発事業団理事長の山之内さん、理事の三戸さん、宇宙輸送システム本部副本部長の丹尾さん、H−2Aプロジェクトマネージャーの渡辺さんでございます。組織については、最初の厚い資料23−1−1がございますが、その最後に写真入りで担当部署が出ておりますので、お顔とよく見比べてご認識くださいますようにお願いいたします。
    それでは、ご報告をお願いいたします。
   

 山之内(宇宙開発事業団) 

   それでは、ご報告をさせていただきます。
    本日の会議は極めて重要な会議だと認識いたしております。先ほど副大臣からお話がございましたように、私どもの宇宙ロケットが成功するかどうかというのは、日本の安全から、国威から技術のシンボルと考えております。なかんずく、今回、H−2Aの初号機の打上げが成功することは、日本の宇宙の将来を左右しかねない極めて重要な問題、特に国民の信頼回復という意味と、技術立国日本の技術のシンボルのような感じを持たせておりますので、私ども、正直申し上げて、かなりいろいろな問題に直面をいたしましたが、納得がいくまでは打上げないことを原点に準備をしてまいりまして、もちろん100%ということはあり得ないんですけれども、納得をするまでいったらば打とうということを合言葉に進めてまいりまして、ある程度、今日現在で納得できる格好で最終的な準備に入ることをご提案できるのではないかと思いましたので、その経過を報告させていただきたいと思います。
    先ほど、副大臣からちょっとお話がありましたけれども、H−2というのが日本で最初の本格的なメイド・イン・ジャパンのロケットだったと理解をいたしておりますが、5機はうまくいったのでありますけれども、最後の2発が失敗をいたしまして、大変大きなショックとご批判を賜りました。
    それを受けて、平成8年からH−2Aという格好でH−2の改良型でありますけれども、実態的には完全に新型ロケットと言っていいほどのロケットを開発してまいりまして、一つは、性能的に世界最先端の技術のロケットであるということ。それから、価格的にも国際競争に耐え得るということ。それから、H−2で取得したさまざまな技術的な知識をベースにあらゆる改良を加えたということでもってこの開発を進めてまいったわけでございます。
    それで、昨年の夏ぐらいまでは比較的、従来のロケットと比べますと、初期の試験は順調に推移してまいったと理解をしておりますが、昨年の8月に、従来はあまり行われなかったような厳しい条件で、実際の飛行ではそうは起きないような厳しい条件で試験したところ、トラブルが二、三発生いたしまして、宇宙開発委員会から、本質的な、特にエンジンの中心部であるインデューサという部分について基本的に設計変更したほうがいいというご助言をいただきました。かなり内部でも激論いたしましたが、ご忠告を受けて設計変更することにいたしまして、今、新型エンジンの中心部の開発がかなり順調に進んでおりますが、これは間に合いますが、どうしてももう少し遅れますので、昨年の宇宙開発委員会において、それまでに技術実証として2発程度、今のエンジンを使って飛ばすほうがいいというご勧告をいただきました。
    一つは、今のエンジンでも、ある程度、運転条件といいますか、飛ばすときのロケットの条件をやや緩和いたしますと十分に飛ぶ可能性が大きいということと、ロケットといえども、ほかのものもそうですが、最終段階、実際に打ってみないとわからない技術的な部分がございますので、そういった意味で、ありがたいことですけれども、宇宙開発委員会から、2発ほど旧型エンジンを使っていいから飛行実証試験をやれという勧告を昨年の8月にいただきました。それを受けて私どもは、まず、今年の2月に旧型のエンジンを使った第1号の試験フライトをする計画で進めてまいりまして、いよいよ昨年の10月に最初の打上げるロケットのエンジンの、領収試験と申しますが、要するに受取の最終的確認をやったところです。ちょっとびっくりしたのでありますが、従来の試験では発見できなかったようなトラブルが3つほど見つかりました。個々のトラブルについては、それぞれ解決策がございまして、それなりに打ったのでございますけれども、私ども自身、最終段階においてまだ技術的な問題が残っている、あるいは品質管理上の問題が残っているという事態が起きたことを非常に深刻に受けとめまして、対策は可能であったんですが、これはもう一度立ちどまって、抜本的にロケット全体の問題点を洗い出したほうがいいと考えまして、あえて半年ほど打上げを延期させていただきまして、さらに打上げ予定のエンジンも試験用のエンジンに切りかえまして、追加試験を行いまして準備をしてまいりました。その結果、幾つか貴重な問題点と改良点が見つかりまして、後ほど内容についてはご説明いたしますが、そのすべてについて私ども、先ほど申し上げたように納得ができるような対策を打ったつもりでございます。
    と同時に、私どもが一番心配いたしておりましたエンジンの中心部分、インデューサとかポンプですね。過去の5号機、8号機の失敗もエンジン部分で起きておるものですから、この部分の受取試験がうまくいくかどうかというのは極めて深刻に考えておりましたが、今年の4月の新型のエンジン受取試験は極めて順調にいきました。その点と、先ほど申し上げました秋以降に見つかった幾つかの問題につきましても、ある程度納得のいく対策が打ち終わりまして、その後、今、すべての部品を工場に持ち込みましてロケット全体を組み立てまして、エンジンに火はつけませんけれども、指令系統等がほんとうにうまく働くかどうかというチェックを実は今日終わる予定でございます。
    この結果を分析いたしまして異常がなければ、いよいよ最終的にこれを打上げ場に持っていって、最終的な打上げに臨む時期を判断すべき時期に来たと思いますので、本日、その経緯をご報告いたしまして、ご相談をしてご意見を賜っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
    では、内容につきまして説明させていただきます。
   

 渡辺(宇宙開発事業団) 

   H−2Aプロジェクトのマネージャーをしております渡辺です。OHPを使わせていただきますので、立って説明させていただきます。
    これから報告させていただきます内容は大きく2つありまして、開発試験及び品質確認の結果、それから打上げに使います1号機の機体準備状況です。資料の後半には添付資料が6点ほどございまして、この中には、これまでの特別会合あるいは専門家会合などで事業団から提案いたしましたこと、それからご指摘をいただきましたこと等、アクションアイテムとして管理しておりましたが、それに対する対応が、簡単ですけれども、要約して用意してございます。
    これらの内容は開発試験等の中に含まれておりますが、代表的なところをピックアップして説明いたします。なお、説明の内容は、開発試験は非常に大規模ですが、ここで取り上げてありますのは、打上げ失敗後、開発強化をいたしました、それに関する内容。それから、繰り返しになりますが、品質の再確認作業というのを今年の1月から実施しておりますので、その状況、結果です。
    経緯に関しましては、先ほど理事長が説明いたしましたので省略いたしますが、開発の強化をしてきたと。それから、今年に入ってからは品質の再確認作業を実施したというところが、これからに関係するキーポイントでございます。
    開発試験及び品質確認の結果ですが、1号機の確実な打上げに向けて実施したことを要約しますと3点。開発試験の強化、これは試験の回数の強化。理事長の話にもありましたが、その試験を厳しい条件のもとで実施する。従前の開発では、実際使う範囲が明確になっておりますので、その範囲内の確認というところに主眼がありましたが、それを超えてより広く余裕を確認する、厳しい条件で確認試験を行う。こういうところに全体の考え方の変更をしております。
    それから、製造中の問題で幾つかのトラブル等がありまして、これが重要な課題と認識しておりまして、製造試験、品質プロセス等の信頼性の確認ということが次の要点になります。
    それから、この開発を緊張感を持って実施するということで、意識面の徹底に関する改良の視点でございます。
    2番目は、改良型インデューサの件ですが、これも理事長からの説明がありましたので省略いたします。
    開発結果ですが、これから次のシートでそれぞれのサブシステム、また全体システムとしての開発強化の内容の要点を説明させていただきます。
    地上では可能な限りの試験をしたんですが、実際の飛行でしか厳密には確認できないという部分もございます。それは後ほどまとめて説明する予定ですが、この試験機1号機の打上げの目的、技術データを取得するということでございます。
    各サブシステムごとの開発結果の要点の概要を書いてございますが、これは1段エンジン、LE−7Aエンジンの開発結果です。8号機の失敗以前は、2台の認定エンジンで開発をするという計画でしたが、開発強化ということで、このエンジンの供試体をもう2台追加して、全体では倍の開発試験になりました。下に実際の飛行状態も書いてありますが、地上で調整の試験をします。領収燃焼試験と呼んでおりますが、その後、打上げが約400秒ということで、実際使う秒時は600秒程度ですが、その約4倍の耐久性を実証するという目標を掲げておりまして、4台すべてのエンジンで実証しております。
    繰り返しになりますが、特に下の2つのエンジンに関しては厳しい条件、これはエンジンを作用させる温度や圧力のことを指しておりますが、そういう条件での試験をして、もし虫が潜んであるのであれば、確実にそれを取り出すようにという観点の試験でございます。
    これは、黄色で書いてあるところはH−28号機の打上げ失敗の原因です。旋回キャビテーションが発生した。それから、インデューサの逆流が整流ベーンと干渉して、それが大きな振動につながった。また、製品は多少なりともばらつきがありまして、それが作用した。また、こういう要素が複合的に作用して、さらにインデューサには表面に加工痕がありまして、実際にインデューサが破壊したところは、この加工痕が起点になっております。ここに応力集中が発生して亀裂が発生し、またそれが進展して失敗につながってしまったということです。
    赤い字で書いてありますところは、それぞれの項目に対応してどのような対策をとったかということです。対策と書いてありますが、H−2からH−2Aロケットへ改良を進めていった過程でのことですので、この失敗以前に処置をしていた部分も、ここでは対策として記述しております。その代表的なところは整流ベーンですが、これはH−2からH−2Aの改良で整流ベーンを使わないことになっておりまして、それも対策としての効果があるということで、この対策に載っております。それぞれの要素に関して、国立の研究所等の協力を得まして、試験あるいは解析評価等で確実な対策がとれているということを確認しております。
    これは2段エンジン、LE−5Bエンジンの開発結果ですが、1段エンジンと同じでございます。目標としております設計寿命は2,400秒ですが、その倍以上を超えるような耐久性も実証されております。
    これは機体の横に2本装備しております固体ロケットブースタ、SRB−Aと略称で呼んでおりますが、その開発結果です。都合、実機サイズモータ5回の燃焼試験を実施いたしまして、地上燃焼試験でその推力の特性、それから推力の方向制御装置、これは電動アクチュエータで駆動するシステムのことですが、これの特性の妥当性を確認しております。代表的なデータで、地上燃焼試験時の推力を換算して真空推力に換算したもの。
    それから、こちらはアクチュエータの駆動パターンを実施したもの。実際の飛行ではこれほど大きく舵角をとることはないという予想ですが、ここにもできるだけ厳しい条件で試験をしたいという思想を取り入れております。
    この都合5回の燃焼試験の段階で幾つかのトラブルがありまして、それぞれに処置をいたしましたが、大きなトラブルをここにリストアップしております。最終的には、ここの直径の一番小さいところ、スロートと呼びますが、そのスロートの少し後ろのところ、ここが最も大きな浸食を受ける場所ですけれども、最終的な仕様といたしましてはこの部分になりますが、後ほどのチャートにもう少し詳しい図がございますが、外側にアウタパネルと呼びますものを装着して、万が一の対策にしております。
    固体ロケットブースタはCFRP製で、内圧を、従前のH−2のモータに比べますと、2倍の圧力にしておりまして、点火したときに急激に伸びます。その伸びは実機モータで約5センチですが、燃焼の立ち上がりもほぼ瞬時ですので、瞬間的に5センチ程度伸びるという課題がありまして、この開発強化の中で、その過渡的な、ダイナミックな荷重の評価を実験で行いました。従前の解析に加えて実験で行いました。
    供試体は4分の1スケールモデルですが、ここに書いてございます。こちらが機体を模擬した部分で、機体に取りつける場所は2カ所。もう一つつながっておりますのは、この太いロットは固体ロケットブースタの推力を機体に伝えるところでございます。
    それから、これは上面ですが、中央にもう一つ接しているところがありまして、この図でいきますと、ここは上下方向の位置を固定するものでスライドできる、レールの間をスライドするようなメカニズムになっております。このアームはそれぞれリングになっておりまして、回転軸になっております。このモータに点火しますと、実機では瞬時に5センチ伸びますので、その過渡的な応答実験で計測いたしました。ちなみに推進薬は水で代替しておりまして、そこにガス加圧を制御するということで、固体モータの特性をシミュレートしております。
    そのダイナミックな荷重は、解析結果に対して40ないし70%程度、試験条件によって多少のばらつきがありますが、そのような結果になっておりまして、この分離機構の設計、開発は安全側にできているということがはっきり出ました。
    これは先ほどのノズル補強部の拡大図です。最終的にこういうものを装着し、そこにリストアップしてありますような評価、確認、点検をいたしまして、これを最終仕様としております。
    もう一つ、新しく電動アクチュエータを開発いたしましたが、その駆動は熱電池を使います。約300ボルトの電圧を発生できる強力な電池ですが、新しく開発したもので、これの信頼性向上をこの開発強化の中で実施いたしました。
    ちなみに、開発試験の中でトラブルがありまして、トラブルが起きると、正常な場合よりは着火が遅れるということがあります。また、その際に、このセルを損傷するというような危険もございまして、これを確実に取り除いておくことが必要です。
    ちなみに、この電池は打上げ前に作動させまして、正常に作動していることを確認した上で打上げるということになっておりますが、この品質確認のキーポイントは中央にあります。ここで中心導火材と呼んでおります一種の火薬ですが、これが一様に発火しないと多層になっております発熱体のすべてに点火することができないということで、このようなことにつながるわけですが、さまざま試験をいたしましたが、一言で申し上げますと、この中心導火材を製造する製造パラメータをパラメトリックにつくりまして、パラメトリック・スタディの結果、確実に点火する最も安定した品質のものを見つけることができまして、それをもちまして認定試験を実施いたしまして、最終的な仕様を設定をしております。
    構造系の開発試験ですが、構造系はすべて実際の機体をつくりまして強度試験を実施しております。その一例が段間部強度試験。それから、構造系で重要な課題は、1段機体に設置されている固体ロケットブースタをつなげておくところで、こちらに分離試験の様子の図がありますが、この部分の写真がここでございますが、切断する際、火薬で切断するわけですが、衝撃が機体の中に入り、この内部にある各機器に作用いたしますが、従前は、この機体構造の伝達関数を求めて、また火薬の作動の衝撃を求めて、その両者を解析的につないでおりましたが、この開発強化の中で、それを直接両方組み立てた状態で確認するという試験を行っております。こういうふうにして、従前解析で行っていたものを試験でも実施するということを、この開発強化の中で実施いたしました。
    アビオニクス系の開発結果ですが、写真にありますのは、この中で誘導制御系システム試験と呼んでいるもので、開発試験強化の中では、その第2シリーズを実施する、それから、動作マージン確認試験を実施するなどを追加しております。こういう追加した試験の中では、故障ケースの試験を充実させるなど、やはりここにも従前の使う範囲での確認だけでなく、余裕がどれほどあるのかというところに主眼を置いた試験を充実させております。
    全体システムの開発試験ですが、これは種子島の実際に打上げる射場で、射点で、実際の機体を使い試験をしたものですが、全体で4回の燃焼試験、それから推進薬注排液点検などを4回実施いたしました。このときにも幾つかのトラブルがありますが、それぞれにこの表にあるような処置をして、その対策の結果を確認しております。
    次に高度情報化ということですが、このプロジェクトでは、もっと情報システムを活用するということを旗印にしておりましたが、新たに開発しました情報システムのキーポイントはここです。打上作業管理システムという名称をつけておりますが、このシステムで打上げ作業時の手順書、それから射場では文書改訂をいたします。新たな点検をするということであれば、その新たな手順書を発行しなければいけませんし、そのための検査基準なども発行しなければいけません。そういった作業がかなりの領域で起こりますが、これを電子情報化いたしまして、また、射場で行いました整備の記録も情報で収録できるように行っております。
    もう一つのこのシステムの役割は、整備のときのデータ、それからロケットから飛行中に送られてくるテレメータデータなどの処理、解析をするということですが、それをリアルタイムで収録し、配信できるようにしております。
    こういったシステムの効果で、従前、打上げ後3カ月程度を要しておりました最終報告書を1カ月以内に発行しようという目標を掲げております。図でわかりますように、このシステムを介して、NASDAの各事業所、それから企業等が接続されておりますので、必ずしも射場に行かなくても、あたかも射場にいるようにデータを取得し、評価することができます。
    ここからは今年の1月から行っておりました品質再確認作業の結果ですが、一部の確認が射場に行ってからという部分もありますので、状況等を書いております。目的は、試験機1号機の製造試験及び品質管理のすべての段階が設計の意図と整合しているということを確認する、こういう目的で実施しております。体制は、企業、それからその下請企業と一体となってチームを編成し、作業を実施いたしました。抽出された課題に対しては、大部分は処置が終わっておりますが、射場に行ってからという部分も一部ございます。
    この作業は4つに大きく区分して実施いたしました。網羅的に実施するのではなくて、できるだけ深く実施するためには目標を明確にして、範囲を明確にしてという意図でございますが、特殊工程などにより製造する部位の再点検。
    それから、大きな振動、衝撃が発生する部位の再点検。振動、衝撃はとかくトラブルのもとですので、こういう点検項目を設けております。
    それから、品質確保に関する点検。これは過去に幾つかの不具合が発生しておりますが、それを再発させないためには、不具合の直接的な原因を取り除くということだけではなくて、その背後要因にもメスを入れて、できるだけ深いところで原因を取り除いておくということが必要と考えておりまして、そういう観点での作業を実施しました。
    それから、試験機1号機の確実性に関する点検ですが、これは製造中間工程における監督検査の評価をしております。NASDAの監督項目は大分増強いたしましたが、全部で291点、中間検査の工程がございます。これはH−2時代から比べますと、NASDAから見ますと倍増と言っていいオーダーでございます。
    それから、企業の設計・生産技術者は、図面を出荷し、要求を出したら、あとは物ができてくるということではなくて、その製品の製造及び検査等に立ち会うということを実施しておりまして、これもかなり顕著な効果を上げていると考えております。1号機のエンジンは新規に製作いたしまして、昨年、機体全体の機能点検は終わっておりますが、改めてもう一度実施しております。
    これは前のチャートの例を幾つか示したものですが、特殊工程における故障モードの影響解析。ここに掲げました例は、実は特殊工程ということではないので、ちょっと恐縮ですが、特殊工程に重点を置いて実施したということで、この範疇に入っておりますが、対象とした品目は段間部、1段と2段の継ぎ手、シリンダー状の構造部ですが、ここにどのような可能性が潜んでいるかという分析を、シートを作成して実施いたしました。
    ブラケットを取りつけるというところがありますが、このブラケットには、射場用の治具の取りつけが行われます。もしここにトラブルが、このブラケット位置決め不良ということが仮にあったとしますと、これは射場でのことですので、射場作業ができないというフェイタルなことになります。それから、そういうことが発生する可能性はどうか、そういうトラブルがあったらそれを事前に検出できる可能性はどうか、という3つのパラメータを掛け合わせまして、RPN(リスク・プライオリティー・ナンバー)という数字を計算しております。これが15点以上ですと、何かしらの処置をして、このリスクを下げる必要性がある。この場合は45ですので処置が必要です。治具の改修などを実施して、15以下のリスクに下げております。
    切断検査ですが、これは従前から行っておりましたが、もっと網羅的にほとんどエンジンのあらゆる場所に関して実施するということで強化を図っております。
    エンジンの振動解析ですが、複雑な系ですので、全機をモデル化いたしますと、なかなかの膨大なものになりまして、計算時間も大変ですが、厳しい箇所に関しては個別のモデルを別につくるということなども入れ、また、全体のモデルもより精密化をし、解析評価をしております。これにより疲労寿命の評価を実施しまして、余裕の確認をいたしました。
    ここから試験期1号機の機体準備状況。機体は工場で保管中、あるいは現在、工場で最終的な試験中としていますが、この1号機の機体の製作、試験の段階でのトピックスを次のシートから数枚で説明いたします。
    まず、LE−7Aエンジンの運転余裕の確保。これは現設計のインデューサを使いますので、ポンプの入り口の圧力と実際使われる圧力との、ポンプの実力との余裕をできるだけ高くしておく必要性があるということで実施しているものですが、従前ですと、タンクから供給される圧力の範囲のさまざまなばらつきを考慮しますと、この範囲です。エンジンの実力は黄色の範囲ですが、両者の余裕は30メートルでしたが、これをタンク圧を少し上げる、これで40メートル、それから水素温度を低減する、少し下げるということをやりましたので、それで3メートル。それから、エンジンの運転調整で、42,000rpmというノミナル回転数より少し低い値に設定いたしまして、これで3メートル。それぞれが足されまして76メートルの余裕があります。どんなことがあっても、ここに近寄るということはないと考えています。
    1号機の機体準備状況における特記事項ですが、水素タービンポンプ、FTPと略しておりますが、その軸振動の低減、それから軸振動の発生するメカニズムに関してかなり踏み込んだ評価を実施いたしまして、打上げ用の水素タービンポンプを初めて試験したときには、やや振動が高かったんですが、規定でいきますと、これもアクセプタブルではあるんですが、やや高いということで、もう一度再調整し、フェアリングを取りつける部分の寸法などを調整して、再度、組み立て試験をして振動軸を低く抑えております。
    これはフェアリングに関する機構ですが、フェアリングの分離機構を確認したものです。横軸が分離機構の火薬の量ですが、ここからここの範囲で使う仕様になっておりまして、実際の打上条件はこの位置になります。それより薬量の少ないもので分離試験をし、黒いところは分離できないということですが、余裕がこのあたりになるということを確認いたしました。
    機体の整備作業時に液体水素供給配管、エンジンをつなぐここに見えているこの配管ですが、この配管内に清浄度不良があることが明らかになりました。この水素供給配管、機体メーカーは三菱重工業ですが、その下請会社である横浜ゴムが製作したものですけれども、この会社の製作したこの配管以外のものにも清浄度規定を満たさないというものがあることが判明いたしまして、その原因は、検査工程の不備など、また、この手順を承認した機体メーカーの審査が不十分であったということですが、新しい部品と交換する、あるいはエンジンを洗浄するなどの処置をしまして、現在、清浄度は確保された状態でございますが、問題の認識といたしましては、下請メーカーの検査に合格したものに不合格品が混在していて、それをその後の工程で検出できなかった。こういうことに着目いたしまして、H−2Aロケットは部品件数が約27万件ございますが、その全数に関して点検をいたしまして、こういうメカニズムで網の目をくぐって来る可能性のあるものを抽出いたしますと26品目、加えてこれがありますので、総計では35品目ということになりますが、幸いに点数が少ないので個々に点検を行いまして、現時点で、ここに挙げたような問題は内在していないということが確認済みでございます。これに関しては、NASDAとしてはさらにその内容を分析して、どのような今後の長期的対応をとるかということが検討課題として残っていると考えております。
    これは全段システム試験の概要と書いてありますが、三菱重工の飛島工場にある現在の状態を書いたものです。全段と書いてありますが、一部ないものがあります。固体ロケットブースタはシミュレータになっております。それから分離系などの火工品は、やはりシミュレータになります。この状態で最終機能試験をしております。固体ロケットブースタなどは別の場所で、種子島宇宙センターですが、別途同等の試験を現在進めておるところです。
    新たに製作しましたエンジンを取りつけて、その後、全段システム試験を進めているわけですが、先ほど理事長の説明にありましたが、今日の午後、最終機能確認点検を実施し、そのデータレビューをし、関連する工事が多少ありますが、打上げ準備が整う、出荷準備が整うということになります。
    これまでに幾つかの代表的な例を説明させていただきましたが、打上げ延期による期間を利用して品質の再確認作業を行うとともに、これまでのトラブルの再発防止策を講じていることも再度網羅的に確認いたしました。それから、これまで各種部会で指摘やご助言をいただいたことに関しても、それぞれの対応を図ってまいりました。
    また、製作している機体も打上げ用の機体も最終確認の段階になりまして、その進捗状況及び結果から考えまして、本年度夏期の打上げが可能とNASDAとしては考えております。
    以上です。
   

 井口委員長 

   あと、資料がたくさんありますけれども、これは説明なさらないということでいいんですか。
   

 渡辺(宇宙開発事業団) 

   続けて説明させていただいてよろしいでしょうか。
   

 井口委員長 

   お願いいたします。11時前ぐらいまでに全部をご説明いただけますでしょうか。
   

 渡辺(宇宙開発事業団) 

   次の資料を10分程度で説明させていただきたいと思います。
    試験機1号機の飛行試験についてですが、その内容は次のページのようになっております。試験機1号機打上げの目的、それから形態。打上げる目的は飛行実証、新しく開発した機器あるいは技術の飛行実証をしたいということです。それのサンプルが4点ほど。それから、こういう飛行実証をするために追加の装備、ペイロード等を搭載しております、その概要を説明いたします。
    1号機の打上げの目的ですが、静止トランスファ軌道への飛行を行い、その機能、性能を実証するためのデータを取得するということです。打上げる機体は、標準型ロケットには2種類ございまして、そのうちの最も簡素な基本的な形態のものでございます。2号機も試験機ということで計画されておりますが、それと比較すると違いがわかりますが、フェアリングに関しては、これは2機同時打上げの衛星ですが、試験機1号機では衛星は1個打上げられるシミュレーションのものです。
    それから、このロケットには固体補助ロケット2本、ここにある細いもの2つがそうですが、この裏側にもう1セットありますが、全部で4本装備できるところがあります。それを装着しない形態。それから改良型のインデューサの開発をしておりますが、これは2号機から採用する計画で現在進めております。この最も簡素な構造のものというのが今回の打上げロケットでございます。
    飛行実証は2つのステップで実施いたします。まず第1段階は打上げそのもので、これは説明するまでもないことですが、ロケットの飛行シークエンスが進むにつれて順次ロケットからのデータを取得する。第2ステップは、その結果を解析などで評価し、所期の性能が確保されていることを確認するということですが、これは打上げ後の作業でございます。
    飛行実証する技術の要点をマトリックスにしてみました。縦軸は時刻です。打上げから2段エンジン終了までは1,670秒、それぞれのイベントがここに入っています。横軸は技術項目ごとに区分しましたが、液体エンジン、それから推進系の性能。これはエンジンの起動に始まりタンク圧の制御、それからエンジンを停止するメカニズム、推進薬がなくなったことを検知して停止するメカニズムになっております。2段エンジンも基本的には同じですが、飛行時間が長いこと、それから無重力状態を経験することなどもあります。固体ロケットブースタは約100秒の燃焼ですが、その間の燃焼特性、それから分離ということが重要な問題です。構造性能、分離性能等に関しましては、打上げますと音速を通過し、それから最大荷重、空力、動圧最大地点等を通過いたします。空気との摩擦等もありまして、曲げ荷重やプルーム加熱がありますが、空気の影響がなくなったところでフェアリング分離、1段の機能が終了した時点で分離、こういうようなことでございます。ペイロード部環境、それから制御系等は、打上げの全期間を通じて重要な技術項目がございます。
    前のチャートの幾つかのサンプルをもう少し丁寧に説明いたします。これはLE−7A1段エンジンとその推進系に関する飛行実証する技術の内容ですが、機体の上のほうに酸素タンクが搭載されておりますが、その酸素タンクの圧力のヒストリーがこの図に示されております。飛行中の加速度の変化によりまして推進薬の比重が高いということで、飛行中の加速度の変化によりこの圧力が変化いたしまして、その結果が……。失礼しました。これはタンク圧ではなくてエンジンの入り口の圧力です。タンク圧は一定ですが、加速度の影響でこのような運動をいたしまして、固体モータの燃焼終了から分離にかけて急激に低下し、ここが最も低い圧力になります。
    一方、水素側は非常に軽い推進薬ですので、加速度の影響はありませんが、タンクが大きいために、打上げのときから真空中に行くまでの間、内外の差圧を一定にしたい、定量化を図りたいということですが、圧力を下げるプログラムをしております。その後、飛行中に水素の温度が上昇するという課題がありまして、最も注目している点はこの燃焼終了時点でございます。
    2段エンジンですが、打上げた後、初回の着火をいたしますが、そのときにも予冷などの課題がありますが、第1回目の燃焼が終了した後は、無重量状態で約740秒飛行いたしますが、その間、タンクの底部に液面を保持しておきませんと、推進供給配管の中にガス等が入ってフェイタルなことになる可能性があります。そのために、慣性飛行中は微小加速度を加えて液面の制御を行いますが、ここに赤いハッチングで示したところが液ですが、もう少し厳密に申しますと、非常に微小な加速度ですので、表面張力でタンクの壁面に接しているところなどはずっと上のほうに吸い上げられているものと考えられます。
    今回、CCDカメラをタンクの外側に搭載し、透過窓を設けまして、タンクの中を透視できるようにしております。それで、画像データを取得しまして、この液面状態を正確に把握したいと思っております。
    その後、もう一度エンジンに着火いたしますが、その条件は推進薬の温度が上昇しているということが大きな課題として残ります。
    それから、2段エンジンの停止は、誘導によってカットオフいたしますので、多少の誤差はこの誘導が吸収してくれますが、誘導でエンジン停止信号を送出した後、エンジンは直ちに停止するわけではなくて、多少の停止遅れがございます。それは制御できませんので、それが軌道投入精度に直接影響いたします。静止衛星打上げの場合の遠地点で見ますと、このロケットの投入誤差はスリーシグマレベルでプラス・マイナス200キロメートル程度と推定しております。そこに重要な影響を与えるパラメータがあります。
    これはSRB−Aの分離のところですが、これも画像データによる取得を行います。テレメータデータで従前からこのような評価を行っていましたが、画像データを併せて用いて、メカニズムの検証をしたいと考えております。
    姿勢制御系の例ですが、ロケットが曲がって書いてあります。これは非常に誇張して書いたものですが、ロケットの飛行中は決して剛体ではありませんで、これに機体の振動が加わっております。慣性センサーでは、姿勢変化率等はこれらが合成されたものを検知いたしますので、この検知したものに直接反応いたしますと、必ずしもロケットを正しい地点に送ることはできません。それを搭載のソフトウエアと誘導計算機で修正して、正しい推力方向制御を行うというのがこのメカニズムで、安定性、応答性がよいこと、それから機体振動や推進薬の動揺、推進薬がタンクの中で揺れますと、これも安定を乱す原因となるのですが、そういうものに連成しないこと等を確認するのが重要な評価項目でございます。
    この飛行実証をするためにロケットに追加装備をしております。通常、標準装備ではロケットのテレメータ装置は2台ですが、さらに2台追加して、都合4台の送信機を搭載しております。追加した送信機は、高周波の情報を収集するということで、例えば振動、それから画像データを送信します。この画像データ、それから性能確認用ペイロードの概要が次のところに書いてあります。
    画像データは、地上のカメラ、光学追跡局のほかに4台搭載しておりまして、ここの表にありますようなイベントをカバーいたします。
    性能確認用ペイロードの概要ですが、質量約3トンありまして、フェアリングの中に搭載されている環境データ、温度、加速度等を計測いたします。それから、ここにドップラ測距装置、それから、その横にレーザ測距装置を搭載しておりまして、これで軌道を測定して、この精度の認証に資することにしておりますが、このドップラ測距装置では、2キロメートル程度の測定精度があります。
    これはレーザ測距装置、レーザ反射体等を搭載した球形のものです。これはロケットから分離いたしますが、200メートル程度の決定精度ですが、この遠地点というのは3万6,000キロメートルありますので、3万6,000キロメートルに対して200メートルの精度で観測できる。これは単にロケットの検証だけでなくて、将来の衛星の高精度軌道決定のための事前実証という目的も持っております。
    最後になりますが、LE−7Aエンジン、それからSRB−Aのノズル部には音響ビーコンを搭載しております。これは海に沈んでしまいますが、その落下点の探査実験を行うということにしております。
    以上です。
   

 井口委員長 

   どうもありがとうございました。
    資料で23−1−3と1−4がありますが、これは後ほどごらんいただければよろしいということでしょうか。
   

 三戸(宇宙開発事業団) 

   ポイントだけ一言申し上げます。
    H−2Aロケット試験機1号機の計画書につきましては、従来どおりのフォーマットで記されておりますが、従来と違うところを2点ばかりご紹介いたします。
    まず第1点は、今回、打上げ実施責任者は理事長です。従前はロケット部門の本部長がしておりましたが、今回は全責任を持って行うということで理事長になっていただいているわけでございます。
    それから、従前は打上げ隊と追跡管制隊を2つに分けておりましたが、今回はロケットの飛行実証ということで、それを一つにしまして、打上げ隊として組織して行うことになります。
    それから、今回提案させていただきますのは、1号機の打上げを夏期ということを提案したいと思います。
    以上です。
   

 山之内(宇宙開発事業団) 

   今、一連の準備作業の中身をご説明いたしました。その背景として私どもが極めて重要と考えておりますのは、昨年の12月12日に町村前文部科学大臣から私と三菱重工、石川島播磨重工の社長がお招きをいただきまして、極めて本質的な3点のご意見をいただきましたことでございます。今まで認められていた不具合の原因究明を徹底的に検討して再発防止を期する。それから、初号機にかかわる部品の装置とかソフトウエアについて、品質管理について信頼性の徹底した再確認を行う。3番目に、関係者全員が緊張感を持って開発に取り組むというご指摘を受けまして、ただいまご説明した内容はすべてその線に沿ってやったつもりでございますので、その点を含めてご検討いただければありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
   

 井口委員長 

   それでは、ご質問、ご意見をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。秋葉先生、いかがですか。
   

 秋葉 

   大変真剣に取り組まれておられます。これからお進めになることでございますので、特に責任者も理事長ご本人がなられたそうで、しっかりと進めていただくようお願いいたしたいと思っておりますが、一番上に立つ方へ情報がしっかり集まるように。これだけは緊張感を持っていますと、なかなかそういう情報が流れにくくなるわけでございますので、ぜひその辺、適度な緊張感というところで臨んでいただかなければいけないんではないかなと考えております。
    それから、技術的な話は専門家会合の指摘した内容に沿って、その線よりも悪くはなっていないという印象は受けておりますので、その限りにおいて、この一件に臨むということは妥当ではなかろうかと思っております。特に今までに、そして前回起きたような同じ失敗をしてしまうというのは、これは大変反響も大きなものでございますので、その辺はいろいろな方からもご意見を伺った後でまいったわけでございますが、前回起きたような振動の条件というのもわりとはっきりしたといったようなこともあるようでございますので、その点はクリアできているのかなという気はいたしております。
    ただ、その点の設計でNPSHという、これが数字としては大きいんですけれども、絶対値としてはそう大きくはない話でございますので、その辺、例えば蒸気圧等の変動、最後のご説明あたりのところで温度上昇が起きるというお話がございましたね。その辺がどの程度しっかりできているかという点は、細かい点ですが、ちょっと気にはしております。
    いずれにしても、これから適度な緊張感を持って臨んでいただければよろしかろうと私は思っております。
   

 井口委員長 

   ありがとうございます。
    秋葉先生が前に言っておられた延期を助言するときに、これは実験機だから、実験データをちゃんととることが一番重要だというご指摘をいただいたのを私記憶しているんですけれども、先ほどの説明でかなり丹念にそれは考えているように認識しましたけれども、その点はいかがですか。
   

 秋葉 

   最大限におやりになったのではないかと思います。これも欲を言えばきりがないところでございますし、それから、このシステムがともかく一歩でも前進するということが大事だと思いますので、その意味である程度の納得がいったという形で生まれるということはよくわかります。
   

 井口委員長 

   ありがとうございました。
    ほかにいかがでしょうか。前に専門家会合からいろいろご指摘をいただいたわけですけれども、今回は専門家会合の先生方というのは今日以降いつか、後ほど専門家とのシンポジウムがあるんですか。
   

 三戸(宇宙開発事業団) 

   ワークショップがあります。
   

 井口委員長 

   そこでいろいろ意見を交わされるということですけれども、専門家会合で指摘された問題点に関しては大体チェックされていると私は認識しているんですけれども、専門家である秋葉先生とか、栗木先生、いかがですか。
   

 栗木委員 

   秋葉先生が既に触れられておりまして、専門家会合での指摘は私大きく2つあったと思います。一つが、先ほど秋葉先生が触れられましたNPSH、つまり、キャビテーションが起きるまでのタンクタービン入り口圧の余裕がどれだけあるか。ここが実は専門家会合が開かれた時点では、数字的に根拠は、これから試験をするということでまだ確証が得られてなかった。当時は50メートルという数字もざっと与えられていたと思いますけれども、これが実験を行って七十数メートルという数字が先ほど出ておりました。これが、一つは、定量的に固まった数字であるということが一つの答えになっているかと思います。
    それからもう一つは、SRB−Aの切り離し、これが今回、1号機のH−2Aの大きな変更、H−2からの変更点ということで、この切り離しの試験を十分に行うということがその関心であったと思います。フルスケールの全体の伸びに対する衝撃試験というのはまだこれから本番ではありますけれども、4分の1のスケールの試験を行って、これが解析結果とよい一致を見た、十分な余裕があるということを確認したということで、私は以上2点については専門家会合の助言といいますか、一番関心を持たれた点についての答えが出された、そう考えております。
    そのほか、専門家会合では、誘導系に関する幾つかの問題点がありました。これは大きな問題というのは私はなかったと記憶しておりまして、新しい点といいますのは、誘導系が2段目のほうに集中的に集められたということもあって、これは特に問題があったからということではなくて、十分な確認試験を行うことというのが助言にあったからかと。そういうようなことで、大きな2点は私、今回、十分な確証が得られたと認識しております。
   

 井口委員長 

   ありがとうございました。どうぞ、澤田委員。
   

 澤田委員 

   あるいは言わずもがなの話かと思うんですが、これから行われる一連のロケット打上げというのは大変な意味を持っていると思います。熱心に取り上げてこられたということを評価したいと思います。課題がわかれば、これを解くというのはできることなんですけれども、問題は、問題をどうやって抽出するかということが一番の問題なんだろうと思うんですね。問題がわかれば、問題を解くというのは昔からみんなやっていることではありますので。しかし、何かが出てきました。じゃ、それがなぜ出てきたのかという原因の追及はできるんですが、それが起こるかもしれないということについて、どの程度事前に認識をされていたかというのが私は一番気をつけなければならないことなのではないかなという気がいたします。
    いろいろ今ご説明いただいて、幅広い対策というものをとってきていらっしゃる。また、現場でのいろいろなグループをつくって、問題抽出から解決に向かってやっておられるということで、かなり進んでいるんだろうなと思うわけでありますが、そこのところでどういうことが起こって、それがなぜ見過ごされていたかということについてのご説明がなかったような気がいたします。それはあえてご説明いただかなくても、今後のこととしてすべての問題についてそういう取り組みをしていただきたいなということが私のお願いでございます。
    あと一点、そういう意味で、現場でこれから緊張感を持って取り組んでいらっしゃるわけですが、先ほど秋葉先生からも、情報が最高責任者に上がるようにということであります。現場で、問題点として認識されたものが、そのまま隠れたままになっていないのか、あるいは日々、毎日さわっている、毎日見ている人たちの現場からの声というものがどういうふうに把握されるのかというのが、これからの一日一日にとって大変貴重なものなのではないかなという気がいたします。
    そういうことについてのご配慮をぜひお願いしたいと思いますし、また、打上げなければわからないということはあると思います。そういうことについてこういう実験をやるんだということでありますから、まさにそのとおりだと思いますが、打上げなければわからないということをどこまで認識するかということも重要な点であろうと思います。そして、それがわかっているならば、現時点のこれから打上げるものについて、どの程度それが予知されているのか、それに対する対応がされているのかということも、実験ですから100%というわけにはいかないですし、もちろん予知ができないから100%は無理としても、ぜひそういうことを配慮して、これからお取り組みいただければなと思っております。
   

 井口委員長 

   何かコメントございますか。
   

 山之内(宇宙開発事業団) 

   極めて本質的なご指摘をいただいたと思います。先ほど栗木さんからお話があった「NPSHの問題」、「分離機構」のように大別いたしますと、ここに一番注目をしなければいけないという本質的な問題が一つございます。これについて総力を挙げて、インデューサの改良を含めてやってきたつもりでございます。
    また、その段階ではなかったけれども、今日ご説明いたしましたような、例えば燃料電池の問題やフェアリングは思ったほどではない、など実験の最終段階で思ったとおりいかなかったということが出てくると思います。これについては、やっぱりそこで徹底的な解析をして、できるだけの手を打って、ここまで打てばまず大丈夫だろうというところが、さっき申しました納得する点までいこうということでございます。
    もう一つ最後には、そのつもりでやっていたけれども、どこか抜けていたということも皆無ではないんですね。最後に出てきた例のごみの問題なんかそうなんですけれども、これなんかは、ある意味で言うと、下手をすると、私の過去の鉄道会社の経験だと、どこかでごまかして情報が上がってこない可能性がありまして、今回、ある意味で非常によくできている。裏返しではなくて、あそこで見つかってちゃんと報告してくれたということはある意味で非常にプラスですし、逆に言うと、あそこであんなものが出てきたとはけしからんと両方あるんですけれども、こういったものはまず絶対ないようにということは、最終的に私は、極端に言うと神様の啓示かなと思っていますので、そういった方途を含めて、できる限りの万全を尽くしたいと思います。よろしくお願いいたします。
   

 井口委員長 

   澤田委員が今おっしゃったことは大変重要と私どもも認識しておりまして、今日の、まず先生方のご意見を伺いたいのは、目前に迫っております夏期の打上げに対する意見なんですが、その後、まだいろいろやることがある。今日時間があれば、その後のことも伺いたいと思いますので、そのときにもう一度、今のことを話題に挙げたいと思いますが、まずは夏期に上げるということに対してはいかがでしょうか。先生方、ご意見をいただければと思います。
   

 原島 

   先ほど理事長から、すべての人がすべてのことに納得、大変感銘を受けたのでございますが、もちろん、地上試験ではコンピューターシミュレーションなど、おそらく考えられることを全部おやりになると思いますし、試験自体人間が企画することですのが、やっぱり上げなきゃいけない。私の感じでは、最初にH−2が5回成功して2回失敗しましたが、打上げの数が足りないと思うのです。やはり年に数回上げないと、大体打上げの手順さえ、熟練を忘れてしまうんではないでしょうか。幾ら日常的な訓練をしていても、本格的な作業や全体の数のほかに頻度を確保するということが必要だと思います。今回の1年半たってしまったことはある程度はやむを得ないと思うんですけれども、これ、1機100億円ぐらいでしょうか。
   

 山之内(宇宙開発事業団) 

   約90億です。
   

 原島 

   90億円。数百億円のミッションの衛星を打上げるわけですから、たくさん上げても間違いないものにしないと、5回成功して2回失敗したその次に数百億円のものを乗せるというのは相当つらい話でございますので、たくさん上げるというのはかなり重要ではないかと思います。今回、再出発の第1回の打上げということで、日本の宇宙開発の将来がかかっているような考え方もあるかと思いますけれども、緊張感は必要ですがあまり悲壮にならないで、というのが私の印象でございます。あくまで実験機でございますので、衛星を上げるのではなくて回収できるかもしれないような話でございますので、データ収集が最大の目的だということで割り切ってよろしいんではないかという気もします。
    タックスペイヤーとしての一言ですが、8月に上げるかどうかの問題もあります。ご存じかもしれませんけれども、理工離れの中で、宇宙航空と名前のついている学科は最も優秀な大学生を集めているんです。これはどの大学でも、宇宙航空とあったら必ず一番いい学生が来る。それほど若い人、二十前の高校生は宇宙に対して夢を持っている。ですから、この場が悲壮的でそのため貧乏くさいことが始まると、若い人の日本の科学技術の将来も危うくするということも考慮の中に入れておいていただきたい。これはお調べになるとわかると思いますけれども、一番いい学生が来ています。我々年寄りでも、国際的な学会活動をして、日本のロケットは全然上がらない、宇宙に上がらない、何となく元気が出ないものですから、そういう面からも、日本の科学技術の重要なフィジビリティの一つであるということをご認識いただければと思います。
    あと、宇宙というのは、我々、タックスペイヤーにとって夢があるということを、経済性だけにとらわれない精神的なサポートがあるということをぜひご考慮いただいて、いい技術だなと思いますのは環境を破壊しないということと、人命に影響ない技術であるということ。これはかなり重要な、今後の人間の技術にとってまず必要条件でございますので、それで、かつ夢があるということでぜひ。8月といっても、もっとたくさん上げてもいいんではないかというのはほんとうに個人的な感じでございます。
    以上でございます。
   

 井口委員長 

   ありがとうございます。大変元気づけていただいたと思いますけれども。
   

 山之内(宇宙開発事業団) 

   これは逆かもしれませんけれども、左のほうは極めて冷静にたくさん上げないといけないと思っていますが、右のほうは極めて深刻でありますので、お答えさせていただきます。
   

 井口委員長 

   ほかにいかがでしょうか。
   

 坂内 

   短期的な対応と中長期的な対応が一緒で、現時点では、今度のロケットに関しては背水の陣でやらなければいけない。その短期的なシチュエーションで一番重要なことは、すべてのプロジェクトがそうですけれども、ミッションがあって、それに対して投資が行われる。それに対して最大限の努力が払われたかということと、それから、それを国民が納得するかというところがポイントだと思うんですね。ここに関して、私もここ2年ぐらい、このミッション、失敗して以来入れていただいたわけですけれども、一言で言って、関係者の目の色が変わってこられたという意味では、こういうふうに近くでいつも報告を受けていると、最大限の努力しているということはある程度納得できるんですけれども、国民に対してはそういう説明が十分に行われているだろうかということになると、先ほどの「こういうことがありました」、「こんな失敗があります」、「それはこう直しました」といったことをどう扱うかということだと思います。
    ある一つの見方をすると、いっぱい出てくるのねと、こういうような見方もあって、そうすると、今回は目の色が変わっているということを、ある種説得性を持って言う努力というか、過去のことと比較するなり、あるいは今回は実験とは言え、国民にとっては実験機と実用機の境目というのは必ずしも明確ではないので、今回は何をするんです、ということを説明するなりすべきではないでしょうか。幸いいろいろなところで画像データをとっていて、例えば飛んでいるロケットの中でこういうことが起こっているということを我々見たこともないわけですから、例えば実験機だけれどもそれを国民に対する出力にするとか、要するに今やっているプロジェクトに対して最大限の努力が行われているということをわかるようにすることが今必要で、これは短期的なことだと思うんです。
    ところが、あまり短期的なことばかりではなくて、原島先生も言われたことですけれども、全体のことも常に考えなければいけない。今、科学技術は重要ですというようなあまりゼネラルなことを言うと、失敗しないでちゃんと打上げてからにしろというフェーズですから、中長期のお話になると思うんですけれども、大げさな言い方をすると、原島先生と少し違う視点で申し上げると、我が国は今、このミッションもそうですし、いろいろなことの見直しが聖域なく行われているわけですけれども、そのときに危惧されるのが、我々にとって重要な「最も大きなターゲットとして何を置くか」ということが議論の外にあって、私個人的に言うならば、例えば我が国というのは資源もない、結局突き詰めれば人と知恵で食わざるを得ない国であると思うのです。
    例えば欧米を見ると、資源も豊かで国土も豊かでインフラも豊かなところが、日本の倍の科学技術の研究者を出している。今、我々も倍にしてくださいと言っているわけですけれども、資源が豊かでインフラが豊かなところが倍ならば、我々は4倍出しましょうという、ある意味では長期的な戦略をターゲットに置いてそれでやる、というような大きなグランドデザインをゼネラルに置かなきゃいけないと思います。
    その中で宇宙開発というのを見てみると、短期的にはもちろんロケットを上げてビジネスにもコントリビュートする、あるいは安全保障にもコントリビュートする。また先ほど原島先生が言われたように、宇宙のことは国民に対してロマンと夢を与える。あるいは先端技術のキャリングビークルになる。大きくはこの4つのターゲットがあるのではないかと思うんですが、それぞれのターゲットがあるとしたら、それに対してどのぐらいの出力を出してどのぐらいの投資を国としてすべきかという、そういうグランドデザインにしていかないと、私もいろいろ申し上げておりますが、一つは競争環境において、世界でやってくれるようなメーカーあるいはそういうものが育っていかないといけないときに、いろいろ聞いてみると、先ほど何本も挙げなきゃいけないと言われましたけれども、メーカーにとっては、競争環境に置くほど市場が大きくなっているのかなということもあると思います。じゃ、それでいいんですか、そうすると国としてどうするんですか、ではもっと十分な投資をしましょう、そのかわり最大限の努力を担当者はやる、そういう図式を中長期的にやっていかなきゃいけないんではないか。とにかく、短期的には最大限の努力をやっておられることを、もっと説明する努力をされたほうがいいのではないかと。
   

 井口委員長 

   ありがとうございます。わかる努力をという点については、23−1−4、広報担当者というのをNASDAがつくられて、積極的に広報に努めておられたということで、私も失礼とは思いながら、この宇宙開発委員会で「NASDAというのはブラックボックスじゃないか」と言ったことがあるんですけれども、最近かなり変わりまして、例えば責任体制でも、こういう表が出てきたのは初めてなんですね。ちゃんと中が見えるように、顔が見えるようにという方向に努力しておられることは。広報担当者の丹尾さんがおられまして、何かコメントはありますか。
   

 丹尾(宇宙開発事業団) 

   今、委員長からご紹介いただきましたスポークスマンを務めます丹尾です。事業団のほんとうの意味のスポークスマンは山之内理事長でありますけれども、技術的にスポークスマンのサポートをさせていただいております。
    それで、今、坂内先生からお話がありましたけれども、NASDAで広報活動、国民の皆さんに我々が今何をやっているのか、それから何をやってきたのか、今後何をするのかということをお伝えするときにツールは今のところ2つしかありません。一つは、報道機関を通してお知らせして、それを書いていただく、あるいは放送していただく。もう一つはインターネットです。これを大いに使いまして、これは自己で発信できますので、打上げの状況とか、デイリーの作業の状況とか、そういうものをインターネットを使って発信していこうと思っています。
    それから、プレスの皆様については、7月の上旬から打上げ作業が始まりましたら、デイリーに今何をやっているか、それから開発作業はどうやっているかというものを常時発表していこう、そういう計画をしてございます。
   

 坂内 

   ホームページでオープンにするのはどこでもやらなきゃいけないことですけれども、スピードと量というか、NASAのホームページなんか非常に楽しい。だから、そういうロマンも与え、アクセス数が何十万ということをターゲットに置いて定量的にやらないと、オープンにしてはいますけれども、あまりアクセスがありませんねということでは広報したことにも何もなっていないということになってしまうでしょう。
   

 井口委員長 

   宇宙開発委員会としても、開かれた宇宙開発というのを一つのターゲットにしております。
   

 五代委員 

   そういう説明をされるときに、先ほど坂内先生がおっしゃいましたけれども、短期的にはこのロケットを打つというのももちろんあるんですが、もう少し中長期的に宇宙開発、あるいはその中でロケットをどういうふうにやるか、日本にとってどういう意味があるかというのも易しく、難しく言われてもこれはわからないですから、その辺は間に混ぜて説明していただいたらと思うんですが。そして手前の話ですが、秋葉先生も適度な緊張とおっしゃった。私も時々言っていたんですけれども、人によって適度な緊張というのが難しいので、最大限の努力はしているはずですから、場合によってはゆとりを持ってくださいというようなことも重要です。
    それからあと、ひと頃はやりましたけれども、「ほう・れん・そう」という言葉ですね。要するに情報の交換ですが、「ほう・れん・そう」は非常に重要だろうと思います。NASDAの中だけ、どこか周辺だけということでなくて、企業がいろいろな細かいところは作業するわけですから、その企業の元請、下請、さらにその下というところのこの辺の情報がすぐに行くようにしなければならないかと思います。
    あとは、今日はあまりご説明ございませんでしたけれども、実際にはロケットを打上げるには、それまでの地上設備といいますか、その辺のものの整備、準備がどうなっているか、そういうところの故障でちょっとしたこと。これは宇宙のものよりももっと一般製品を使っているわけですから、その辺のところのご注意もお願いしたいと思います。
   

 井口委員長 

   今現在の、将来に向かっての理解しやすい易しいロードマップを世の中に提示するという役割は、宇宙開発委員会の仕事でもあるんですね。今、私、この場に来ますと、ある意味思考停止なんです。要するにH−2Aをとにかく成功させなければ、それだけに完全に集中していまして、ちょっと思考停止の部分がありまして、そんなことを今言ったって、失敗している状態では信用してくれないよと。そういう状態ですから、五代委員も今こちらの委員なんですから、これから我々もNASDAと一緒になって、その辺の構築をしていきたいと思いますけれども。
   

 末松 

   大体私申し上げたいことは、ほとんど皆さんから出まして、宇宙開発をやっているということは、国の将来に関して非常に大きな成果を還元する“もと”をやっているんだということは、皆さんおっしゃったように、ぜひはっきり発信をしていただきたいと思います。
    それから、一、二、あとは大した話ではありませんけれども、そうは言っても、リスクがある仕事をやっているわけですね。原島先生がおっしゃいましたけれども、緊張し過ぎて百発百中いくものではないと思います。9発上げれば1発はうまくいかないというのが世界の趨勢なんだ、そういう中でやっているんだ、ということを一方で理解しておく。こういうことを言うと、今発言すべきことではないと思いますから、皆さん黙っておられると思いますけれども、もしうまくいかなかったらどうするんだということではなくて、そういうリスクの中で我々はやっている、最大限努力をして一番いいものをつくろうとしているんだということを周りにあらかじめわかっていただいて、その上でぜひやっていただきたいと思いますし、それは今回は理事長が自分が打上げ隊長になるんだということを宣言されてやっておられるということからも十分わかってくることだと思いますので、ぜひその点は百発百中ではないんだぞ、この仕事というのは十発に一発が危ないんだ、その中で最大限やっているんだ、ということは周りに理解していただく必要があると思います。
    それから、先ほど来話が出ておりますけれども、今の時点で1年半以上、打上げがブランクになっているわけですね。連続でやっていれば、いろいろ話をしなくても伝わっていくところですけれども、1年半切れているというのは相当なことだと思いますので、この辺は非常に綿密な、一番の指揮系統のトップの方に一元管理ができるような仕組みを皆さんでもう一回再確認をしていただいたほうがいいのかなと、そんな気がいたしました。
    それから、最後にもう一言だけ。第1段ロケットあるいはSRB−Aが海に落ちる、それをちゃんとどこに落ちるかを今度は探せるような仕組みを導入していただいたというのは、これは非常にありがたいことでありまして、予定通りに上がったには違いないけれども、拾ってみたら何か思わぬところがあったとか、うまくいっていたということが確認されますし、もう一つは、もし回収ができましたら、それをいろいろな博物館等に、日本にいっぱい北海道から沖縄まで博物館がありますので、そういうところへご寄附をいただいて、先ほどのPRですね。これだけのものがちゃんと宇宙から帰ってきたんですということをPRに使っていただくと同時に、大学等の方々に、そういうものの分析というんでしょうか、そういういろいろな役割があると思いますので、ぜひ回収をしていただきたいなと。それに努力を払われていることに私は大変感謝を申し上げたいと思っております。どうもありがとうございます。
   

 井口委員長 

   ありがとうございます。
    いかがですか。あまり深いところに落ちたら引き揚げられないということがあるんだと思うんですけれども。
   

 三戸(宇宙開発事業団) 

   今回、先ほどちょっと説明がありましたけれども、まず「探す」という技術的な問題についての検証を行いたいと思います。その上で、先ほどもありましたけれども、どういうところに落ちたかによって、回収できるかできないかということを、その時点でもうちょっと検討してみたいと思います。
   

 井口委員長 

   それから、末松先生ご指摘、また先ほど原島先生も言われた、間隔があくと、これはどなたか言っていましたけれども、アリアンスペースでも、それから中国でもアメリカでも、間隔があいた後というのは失敗率が増える。我々、間が2年あくわけですので、その辺の対策というのはどうしておられますか。
   

 渡辺(宇宙開発事業団) 

   打上げは確かに長く間隔があいておりますが、開発試験の中でその間をどのように補うかということも、できるだけの配慮はしたつもりでおります。それは、先ほど1枚だけチャートがありましたが、射場で燃焼試験を4回実施したというものがありますが、その後半のシリーズは昨年実施しておりますので、1年半というブランクの間を、打上げとは完全に同じとは言えない部分が確かにありますので、そういうところは要注意なんですが、そういうところへ入れております。
    それから、射場に機体を輸送するのも久しぶりということになるんですが、H−2の7号機の打上げをやめまして、その機体の輸送を昨年行いました。その輸送そのものは間隔があいたのでというつもりではなかったんですが、ちょうどいい訓練というか、練習になったと思っております。こういう限られたところですので、実際の打上げとは違いますけれども、我々のできる範囲でいろいろ工夫してきたと思っております。
   

 三戸(宇宙開発事業団) 

   もう一つつけ加えますと、NASDAを含め、メーカーもそうですけれども、過去の打上げ経験者を、たとえ今OBになったとしても集めて支援していただくよう考えております。
   

 秋葉 

   確かにさっきの話が一番大事なので差し控えていたわけですが、理解増進ということになりますと、聞く側は必ずしも短期的な意味ではないということもあるので、一つ申し上げますが、もともとこのH−2の事故が起きた背景に、これを開発していた時代が大変順調に話が進んでおりまして、安くしろ、安くしろという話があって、それによってかなりそういった状況が出てきてしまったということがあるように思うんですね。一方、安くしろというのは、これは世界的にもそういう趨勢にあるわけでございまして、最近のNASDAのスペースウォッチイニシアティブ、あと数年のうちにはコストを10分の1にしようという目標を持って進んでいるわけですね。そういう目標のもとで今やっている努力がどうつながっていくのかという説明を、理解増進というレベルでやっておきませんといけないのではないか。それを一つだけ申し上げたかったんです。
   

 井口委員長 

   ありがとうございます。
   

 長柄委員 

   今、秋葉先生がおっしゃったように、私は今回のH−2Aがうまくいって、90億円で信頼性がある、となったときに、じゃそこで終わりかというとそうではなくて、これも将来の再使用型の輸送機などに向けての、今おっしゃった「コストを10分の1にする」といった話は一通過点にすぎないと思うんですね。ですから、今回のものの信頼性がちょっと悪いとか、コストが仮に100億とか110億になったから失敗だ、やめるとか、そういうものではなくて、将来の10分の1とか高信頼性による輸送システムの開発の一つの過程にすぎないんだということをよく言っておかないと、それが終点ではないということだと思います。
   

 井口委員長 

   ほかにいかがでしょうか。
   

 栗木委員 

   今回、この直近の試験機1号機の打上げでいろいろ問題が見つかりましたが、長期的な観点に立ってもこれは問題かと思われるのは、先ほど報告の一部が紹介されました異物の混入であります。これはマネジメントにかかわる小さな事項のように思いますが、極めて重要な中身を含んでいるのではないか。現在、極めて緊張感を持ってやっておられるということで、もしもH−2時代から行われていた作業工程でこういったものが潜んでいたということになりますと、緊張感がなくなったとき、淡々と10機なり20機なりを将来上げていくといったときの体制を考えると、こういったものの混入というのがシリアスな影響を及ぼさないかということが大変気になります。
    今日の議題はH−2Aにかかわるところでございますけれども、H−2の事故に絡んで、もしこういう異物等がインデューサに傷をつけたということになりますと、15ミクロンの加工痕を10ミクロンに減らしたということがほんとうに競合的な原因であったかどうか。私、10ミクロンで仕上がったインデューサを見てまいりましたけれども、ほんとうに曲面を鏡のように仕上げているというすばらしいインデューサでした。しかし、これも今後、経済性ということを将来の視点に立って考えていくのであれば、10ミクロンにするという努力は、これにかかる費用というのがものすごく、15ミクロンからの加工の努力というのが値段に響くということになりますと、長期的な視点に立って、そういった加工の精度についてどれだけ余裕があるかということを見きわめませんと、淡々とした持続につながらないのではないかということを感じました。
    そういうわけで、これが直接どうかということではなくて、マネジメントをやると同時に、そういったマネジメントでコントロールできる範囲内でどれだけ余裕を持ってコストを下げられるか。これが今後の問題ではないかということで、ぜひ事業団でもお考えいただきたいと思います。
   

 井口委員長 

   ありがとうございます。
    まだ時間がありますから、その問題を議論したいんですが、その場合に、よろしければ、今日の我々の意見をもしまとめられればまとめたいんですが、それは先ほど申しました最初の資料の28ページのまとめにありますが、最後の3行、本年度夏期の打上げが可能と判断され、今後、試験機1号機の準備作業を進めるとともに、打上げに関する手続に入りたいという、そういう希望が述べられておりますが、それに対して反対はございますか。なければ、この委員会として夏期の打上げに向かって慎重に準備を進められることを希望しますと。そういう意見でよろしければ、NASDAに対してそう申し上げたいと思いますが、よろしゅうございますか。それでは、その件に関しましては、今申しましたように夏期の打上げに向けて慎重に準備を進めてくださいと申し上げますので、よろしくお願いいたします。
    その次の問題、今おっしゃった「異物の問題」というのは衝撃的だったというか、私も重要と感じておりまして、一つは、そういうものをチェックするポジションというのがあったのかなかったのか。なかったとすれば、これからつくらなければいけない。つまり、夏期の打上げに向けて、ちょっと話が前後しますが、是正措置はとられたと思います。それで、先生方、まあ、いいでしょうというご意見だったわけですが、今度は予防措置です。将来起こらないようにそういう予防的な措置をどうとるか。これはちょっと長期的な話になるので、今は打上げに全力を挙げていると思いますから、打上げ成功の後でもいいんですが、少々時間がありますので、その後の話になるかもしれませんが、先ほど澤田先生がおっしゃったことでもあるわけですが、そのあたりのことを少し議論してみたらいいかなと思うんです。
    例えば私の自動車屋のセンスでは、メーカーがいろいろなものを出荷するときに信頼性を確保する、証明する責任者のサインがあって、それで受け取る側が信頼性を、責任を持つ人がいて、受領の責任、要するにサインをして、それで初めて受け渡しができるものだと私は一般的な常識を持っているんですが、その辺のシステムはどうなっているのか不思議なんです。
    それで、技術が不足で異物が検出できなかったというのであれば、それまた技術開発すればいいんですけれども、マネジメントシステムの中で欠落している部分があったのかなかったのか。その辺のかなり奥まで入った原因究明、これをやらなきゃいけないと思いますし、必要があれば宇宙開発委員会でもやります。その辺はどうお考えになっているんでしょうか。後の話でもいいんですけれども、現在はどうなっているんでしょうか。
   

 宇宙開発事業団 

   今、いわゆる製造メーカーが下請メーカーに部品を発注しているという状況でこういうことが起こったわけですけれども、下請メーカーの工程、いわゆる物づくりの工程については、元請メーカーが一応その手順を全部出してもらって、それを審査して承認しているという行為で下請メーカーの工程がフィックスされています。
    それで、実際、物の受け取りのときには、現実にはずっと下請メーカーに元請メーカーが張りついて工程に立ち会っているわけではなくて、実際に製造工程の履歴の証拠書類を見て確認するということで物を受け取るということになります。ただし、物を見るのは、それと最終の姿の状態の物を見るということで、その最終の姿で物のできあしの発見できる部分はそこで弾かれますけれども、途中の段階での物は証拠書類によるということになります。
   

 井口委員長 

   いや、私が伺っているのは、最終的にはNASDAが受け取るわけです。ですから、その辺はどういう契約になっているのか、例えばこの場合には、プライムコントラクター制ですべて任しているというのだったら私まだよくわかります。これはインテグレート方式でしたでしょうか。NASDAがまとめる責任を持っているわけですね。各メーカーとある契約をされているんですが、その契約はどうなっているのか。つまり、今日お話を伺ったのを、そのまま正直に言うと、全部メーカーの責任ですというような受け取りを私はするんですけれども、最終的な責任というのはNASDA側にあるわけです。
    というのは、私、6年間、技術評価部会の部会長として原因究明をやってきたんです。そのときは、最終責任はNASDAだからNASDAがすべて説明しますという話で理解しています。メーカーには責任が、まあ、ないとは言いませんけれども、その次の段階です。ところが、今日のお話だと、これ、文書を見ても、どうもメーカーの責任だ、責任だとばかり言っているような印象を受けるんですけれども、それは私はちょっとおかしいんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。
   

 宇宙開発事業団 

   まず、開発の責任、それから、例えば1号機でも全体の取りまとめの責任はNASDAにあります。ただし、個々の物づくりに関しては、いわゆる実機フライトフェーズのものはメーカーにあるということだと思います。
   

 井口委員長 

   しかし、一般の世の中の考えでは、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーというのは実務の全部の責任を持つんです。そのときにはメーカーがどういうことをやっているのか、十分働いているかどうかの責任まで負うというのが自動車リーダーとしての常識です。だから、今のようなお話というのは、契約上でメーカーとNASDAとの責任関係がはっきりしていればいいと思いますけれども、どうもそのあたりが抜けているのではないかという気がいたします。
    同様に、最初の資料の「監督を強化した」とか、そういう表現がどこかにありますね。今まではあれだけど、NASDAの監督を強化しなくては、とどこかに書いてありました。「監督」という言葉、これは行政上、そういう言葉しか使えないんだという話は聞きましたけれども、完全に設計が決まって仕様が決まって、そのとおりにメーカーがつくるのであれば、これは監督でいいと思います。だけども、開発段階ですから、いろいろと新しく挿入するようなものも出てくるわけです。そのときにはすべての人が、メーカーが責任を負うところも一緒になって解決しなければいけないので、一方的に上から監督する話ではないんです。ところが、すべて監督、監督という言い方で、すべてNASDAが上位にあるようなことでは、ほんとうの技術問題の解決にはならないと思うんです。その辺も含めて、今ここで十分議論はできないので、これは後でも結構なんですけれども、NASDAと十分に話し合いたいと思います。
    そのご意見はどこですか。
   

 渡辺(宇宙開発事業団) 

   17ページの下から4行目に書いてあります。
   

 栗木委員 

   私も同じところを聞こうと思っていました。
   

 渡辺(宇宙開発事業団) 

   「監督」という言葉を使っておりますが、先生ご指摘のとおりという認識をしているつもりでございます。ただ、今差し迫った打上げがあったりして、このあたりのことをどのように今後していくかという検討は若干遅れていると正直に申し上げざるを得ないところでして、ちょっと残念ですけれども、単に言葉どおりの監督をしているということではなくて、さまざまな技術課題がこの政策の中でやはり起きてきます。図面どおり淡々とつくるというような状況では決してございませんで、そういうところでは技術課題をどのように処理するか、最終的にはだれが承認するか、というようなシステムはできております。
    これは最終的にはプロジェクトマネージャーである私の責任ということになりますが、特別会合でも提案いたしましたが、エッセンスはこういうことだと思っておりまして、それをこれから具体化して実際に活動に生かしていくというのがこれからの状況だと思います。特別会合では、H−2の例は試験機が上がった時点でプロジェクトチームを事実上解散に近い状態にいたしました。これで実証もできたので、あとは決められたものに沿って生産するんだ。こういうような形でわりあいドラスティックに整理してしまいましたけれども、今度、H−2Aプロジェクトでは試験機が終わっても、「当分の間は」というような言葉が前置きで入っていたかと思いますが、プロジェクトチームを維持する、NASDAとしての技術活動を継続するんだということをお約束しております。
    まだ試験機が上がっていない段階ですので、具体的にそのフェーズにはなっていないと思いますが、今の段階からそういうところを認識して、今後どのようにしていくか。今まで実害がなかったので気がつかなかったというような問題をどう検出するかというところは重要な課題として認識しておりまして、この資料では、この当該のページの一番最後のところに「NASDAとしての対応を」という言葉を入れておりますが、具体的にはどうするか。これは、これだけ長い間気がつかなかったということをもってしても非常に難しい問題で、簡単にすればのぞけますという名案が現在ないのが実情です。いろいろな先生方のお知恵も拝借しながら、ここはきちっと取り組んでいきたいと思っています。
   

 井口委員長 

   委員長が発言ばかりしているのでよくないんですが、一言だけ言わせていただきたいんですが、これは澤田委員が一番最初におっしゃった、事故が起きれば原因を究明してある部分がわかりますけれども、潜在しているリスクをどうやって予想するか。よく何か事故が起きますと「想定外」という言葉が出てきて、たたかれるわけですけれども、想定外でなくするにはどうしたらいいか。
    その一つは、インシデント分析ということを言われています。鉄道事故の調査の基本はインシデント分析にあります。インシデントというのは、要するに未然の事故です。要するに事故にまでは至らなかった状況を指すわけで、今日いろいろ実験の過程で問題点が明らかになって、これはインシデントだということもあります。インシデントは未然に防ぐためですから、罰を与えるということじゃなくて、むしろ褒めてもいいことですよね。あまり表だって褒めるということもできない部分もありますけれども、基本的には防いでくれたんだから賞賛していいようなところです。だから、素直な原因調査と言いましょうか、責任を問われるとなったら隠しますけれども、隠さなくてもいいという部分がかなり多いことになりますから、原因調査がしやすいということもあります。
    もう一つ、宇宙開発でインシデントがいいという理由には、「物」がある、ということがあります。要するに証拠の物が目の前にある。今まで宇宙開発でトラブルが起きますと、H−28号機は海底から引き揚げたから物があったんですが、あとは全部ありません。言うならば、テレメータデータからの想像です。ところが、インシデントではすべてあるんです。だから、これを生かさない手はないと思います。ですから、インシデント分析をどうするかというのは、またこれも打上げた後でいいんですけれども、これは真剣に我々とNASDAとで話し合いたいと思います。
   

 山之内(宇宙開発事業団) 

   今の件、幾つかポイントで、渡辺が申しましたように、今回の事件というのは非常に貴重な、ある意味では出てきた教示だと思います。昨日も三菱重工とかなり激しく議論しましたけれども、今お話しにありましたように、今回だけ起きた話じゃなくて、下手すると10年前からあったという話でございます。とりあえずのことを申し上げますと、今回打上げロケットについては徹底的にやっている。当該部分以外、全部ごみを当たってみて影響がないかをチェックいたしましたし、当該箇所はもちろん全部つくりかえて、中はきれいになっていることも確認をいたしまして、当該の今回の打上げについては、さっきも言いました納得できる手は打ったと思いますが、そうではなくて、今言った、これは一つの例示でありまして、この手の問題の背景に何があるかということを言わないとどうにもならない。
    一つは、最終的にはNASDAの責任ですから、ここをどうするかということは私の責任でありますけれども、一つ本質的な問題として、大メーカーが大メーカーに下請を出したときに起きたような感じがします。はっきり申し上げるのですが、三菱重工さんが横浜ゴムさんという大メーカーだからある部分をお任せをする。もし町工場だったら徹底的に見たでしょう。その部分で起きた。これからその辺を根本的に見直す。これは一つ大きな進歩だと思います。
    それからもう一つは、井口先生がおっしゃったように、インシデントが出るというのは、私は鉄道に四十何年いましたけれども、大事故が起きて振り返ってみると、大抵予兆があったと思わざるを得ない。そういうことで、この打上げ後にお願いしたいんですが、そこは徹底的にやりたいと思います。
   

 井口委員長 

   少し時間がなくなりましたけれども、先生方、いかがでしょうか。ほかにご意見ございますでしょうか。
   

 末松 

   一つだけ。今関係がない話題なんですけれども、こういう機会に、なかなか出させていただくチャンスがないと思いますのでお願いをしたいのは、H−2の場合には、初めてああいうすばらしいものができて、5発目は完全に成功して、最後にちょっといろいろ起こったわけですけれども、ただ、ロケット全体で見ると、実はかなりいろいろ変わっていたわけですね。太陽電池が変わったり、電池が変わっていたり、あるいは2段ロケットが変わっていたりですね。いわば別のロケットのようなものが一つのくくりの中で行われていたんですけれども、今回は、少なくとも10発ぐらいは、2回目でインデューサを改良されるということで、これはすばらしいことになると思いますが、多分それ以降は変わらないという渡辺チームリーダーの意思表示なんでしょうか。いや、一方では改良しようという話になっても、そこに改良は入れないということでしょうか。
   

 渡辺(宇宙開発事業団) 

   今後も改良していきたいと考えておりますが、それには条件があると考えております。地上で徹底的に試験した上で、その改良を取り入れていく。ずっと変えないということは進歩がとまるということでもあると思いますので、そこをきちんと確認した上で、開発試験を行い、あるいは今回のように試験飛行をした上で取り入れていくという、こういうステップを慎重に踏んでいくということが重要ではないかと思います。
   

 末松 

   今おっしゃっていただいたような試験飛行をやって、これはいいからというふうに取り込んでいただくというのは非常にアクセプタブルですけれども、少しずつ変わっていって、いつの間にかもととは変わってしまっていたということであれば、その場合は新しいプロジェクトにぜひやっていただきたいとお願いをいたしまして、大変口幅ったい発言で恐縮でございます。
   

 井口委員長 

   大変重要なことで、NASAの言葉に「ベター・イズ・アン・エネミー・オブ・グッド」、つまり、「手直しは改良の敵だ」。つまり、ちょっとずつ手直しして、実証もしないでいれば、問題が起きるのは当たり前だというわけですね。ある意味では絶対変えるなということですよ。ほんとうに変えるんだったら、ちゃんと今回のような宇宙実証までする必要があるかもしれない。その辺を今後の問題として我々とNASDAとで話し合う必要があるかと思います。
   

 坂内 

   先ほど井口先生がご指摘された問題、少しゼネラルに考えると、今度の打上げに関しては、言ってみれば根性でカバーしているというところがかなりあって、これを長期的な宇宙計画の中でシステム化していかないと、本物にはならない。さっき五代さんも肩の力を抜くというような言葉で同じことを言われたのだと思うんですけれども、今何か一つのトラブルがあったら、特別会合で桑原さんも指摘されたんですけれども、原因を何でもいいから、とにかく過去3段ぐらいにわたって検証して、そうすると、何十もの「原因かもしれないこと」が出てくる。それを徹底的につぶしていくことで、1個の虫によって多くを知るという、そういうようなシステムを少し入れておられるみたいですけれども、それも徹底的にシステム化していき、また今回ある意味で背水の陣で根性でカバーされているところをシステム化していかないと、今回のは実質的なコストも高くなっているという意味では、そういうふうに中期、今あまりのんびりしたことを言うと、直近のことをとにかくクリアしなければいけないんですけれども、中期的にはそういうふうにシステム化をしていき、できる限り特殊な人間の根性にかかわらないような形で持っていくということが大きな課題ではないかと思います。
   

 井口委員長 

   ありがとうございます。名前を変えてやっているというのは、みんな情熱がありますし、成功率が高いんです。最初に青山副大臣と五代さんが「プロジェクトX」の話をしていましたけれども、あの段階というのはいいんだと思うんです。今度も名前を変えてやっていますから成功率がほんとうに高いと思います。問題は、さっき言ったように変えないということを維持する。つまり、そこには挑戦的なファクターもありませんし、うまくいって当たり前と外からも評価されない。その過程をどうやって信頼度を維持していくかというのは、これはマネジメントだと思うんですね。先生がおっしゃるとおりだと思いますので、NASDAとも、また先生方にも来ていただいて、いい議論をさせていただきたいと思います。
    大体予定の時間になりましたけれども、第1の議題につきましては、ほかに特に先生方、せっかく来ていただきまして、お集まりいただきまして、よろしゅうございますか。
    それでは、繰り返しになりますけれども、夏期の打上げにつきましては慎重に準備を進められることを希望いたしますので、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
    先生方、貴重な時間をいただきまして、どうもありがとうございました。あとは事務的な議題がございますので、先生方、ご退席くださいますようにお願いいたします。どうもありがとうございました。
    それでは、時間も限られておりますので、2番目の議題に移らせていただきます。H−2Aロケット試験機1号機の打上げに係る安全の確保に関する調査審議について、これは決定を必要とする議題でございます。栗木委員からご説明をお願いいたします。
   

 栗木委員 

   H−2Aロケット試験機1号機の打上げに係る安全性の確保に関する調査審議についてということで、この1号機での性能確認用ペイロード(VEP−2)等の打上げがこの夏期に予定されておりまして、この打上げによる安全を確認する必要がございます。このため宇宙開発委員会が昨年暮れに制定いたしました安全評価基準に基づいて、安全部会において次のとおりに調査審議を行うということで、その審議内容につきましては、1.の下に書きましたように、地上安全、飛行安全、それからこれを実施するための安全管理体制がどうかという視点でこれを実施したいと思います。
    ただ、先ほど来、H−2A1号機の話に関連しまして、前回の打上げから時間があいたということも指摘がございまして、したがいまして、今回のこの安全につきましては、その間を埋めるべくどのような手順の復習を兼ねて、いろいろな訓練等が行われたかということもあわせて審議したいと思います。
    また、前回打上げてから今回打上げの射場、あるいは飛行安全にかかわるシステムについて、どのような新しいシステムが導入されているか。これを初めて機体と組み合わせて試験をするということも新規の点にありますので、この2点も含めまして安全の審議をしたいと考えております。
    この内容は7月上旬までに当委員会に報告いたしたいと思います。構成委員は、別紙2ページにございますように、長柄委員、五代委員のほか、私が部会長を務めさせていただきます。特別委員は以下のメンバーでございますが、射場並びに飛行の安全の専門家、あるいは推進、それから燃焼の専門家、火薬爆発の専門家。それから、このメンバーの中には他の視点から、宇宙ステーションにかかわる安全評価も今後行っていくということで、有人安全システム信頼性システムの観点から意見をいただく方を含めまして、このお1人ずつのご専門の紹介は省略いたしますが、そういった方たちにこの特別委員を引き受けていただきたいと思いまして、このメンバーで実行いたしたいと思いますので、ご審議いただきたいと思います。
   

 井口委員長 

   これは決定を要する議題でございますが、いかがでございましょうか。このように決定してよろしゅうございますか。
    (「異議なし」という声あり)

 井口委員長 

   ご異議ございませんので、このように決定させていただきます。ありがとうございました。
    それから、その次に、宇宙開発に関する基本計画につきましてはパブリックコメントを求める。それが大体まとまりましたので、その要旨を報告していただきたいと思います。これは芝田課長にお願いいたします。
   

 芝田課長 

   大分時間も過ぎましたので簡単にご説明申し上げます。
    今までの手続を簡単に申し上げますと、約2週間、パブリックコメントに出しておりました。これはもともと中長期戦略がベースにございますので、そのときに周到なパブリックコメントの手続をやった関係で、今回は若干短くしてございます。
    この場で議決いただくためには、NASDAの主務官庁でございます総務省、国土交通省、それから文部科学省と3省の決裁を経まして、議決を要請するという手続が必要でございます。パブリックコメントの調整、そして各省との調整に最終局面で若干手間取った関係がございまして、今、関係省庁のほうで最終決裁を手続中でございます。関係省庁のご了解を得まして、この場ではパブリックコメントをご説明申し上げまして、仮にそれをご承認いただければありがたいと。万一変更等がございました場合には、軽微なものを除きまして、重要なものにつきましては、持ち回りでまたご決裁をいただこうと思っております。
    パブリックコメントの結果でございますが、資料23−3−2でございます。ここにまとめてございますのは、パブリックコメント計5人、それから経団連の1団体からございました。その結果をまとめて、それに対する対応を整理してございます。これがすべて先生方のご了解を得られれば、インターネットで公表いたしたいと思います。
    方針にかかわるような大きなものだけ、ごく簡単にご説明申し上げます。
    まず、1ページ目のJEMの成果を本音でレビューし、運用資金の拠出について冷静に判断すべきというのがございます。これは今、米国で計画の見直しが議論されていることもございますので、適切な時期に検討をしたいと思っております。文書自体は特に変更の必要はなかろうかと思います。
    それから3番目に、GPS及び太陽発電衛星について我が国でも開発に取り組むべきというのがございます。これは文書の中で、測位については要素技術の開発を行うという旨を記述してございます。それから、太陽発電については、さらにこれはまだ成熟度が低うございますので検討が必要であるため、文書には現段階では記述できないと考えております。
    それから「C別添計画一覧で完了済みのものは削除すべき」。これは打上げは終わっておりますが、運用フェーズのものを記述しておりまして、その辺はどうも誤解があったかなと思います。
    次ページをごらんいただきたいと思います。一番上の「@経営方針の刷新等について、実施時期や具体案を明記すべき」でございます。これについては、これからこの基本計画を受けてNASDAで策定していただきたいと思います。当然それは公表されることとなると思いますが、そういう回答にしたいと思います。
    それから2番目、「NASDAにおいてみずからの開発責任の認識をしっかりしてほしい、醸成してほしい」ということでございます。これは先ほどのいろいろなご議論にも関係していると思います。これについては、文書を見ていただくのは省略いたしますが、2−1−3というところで、メーカーとNASDAの責任関係をはっきりしなさいと。また、さらにはプライム契約をしなさいということが書いてございます。
    それから「BNASAの広報システム等いいところを取り入れたらどうか」ということで、これは8ページでございますが、社会との連携の冒頭に、NASAの手法を参考にするということを書き込まさせていただきました。
    それから、少し下がりましてナンバー5のところをごらんいただきたいと思います。中長期戦略でも指摘されております民間に対する宇宙実証、実証機会の提供の促進を図るということを書いてほしいということでございましたので、これは全くそのとおりだと思いますので、3ページの下から8行目に書き込んでございます。
    それから、次のページをごらんいただきたいと思います。一番上の「J−1以降、中小型ロケットについて事業団としての計画、方向なりを本基本計画に記述する必要がある」ということで、これについては、今後適切な機会をとらえて検討していきたいということで、現段階ではその議論が十分詰まっていないという回答にしてございます。
    それから、一番下の「国際宇宙ステーションの利用フェーズへの移行に向けて、その利用促進を図ると追記してほしい」ということでございます。これはその旨、記述してございます。2−1−3というところですが、日本実験棟をはじめとする諸要素が企業、研究者云々と書いてございまして、これはこなしていると考えております。
    それから、次のページをごらんいただきたいと思います。下から3つ目の「E宇宙環境保全のためにデブリを除去するなどの軌道上サービス衛星の研究を進めると書いてほしい」ということでございますが、デブリ対策については、国連の場でも現在いろいろな手法について議論されているということで、軌道上サービス衛星以外にも優位な手法があるかもしれないということで、これは書けませんという回答でございます。
    それから一番下の「Gロケットの不具合がペイロード開発に影響を与えない体制を立案する」。これは先ほどもいろいろ議論がございましたけれども、10ページにその旨、明記してございます。これは重要な文でございますのでご確認いただけると思いますが、10ページの下のところに、最先端の先端的ロケットの開発といつでも打上げられる体制というのは、区別してこれから立案していこうということが書いてございます。
    それから、最後のページでございますが、上から2つ目の「準天頂衛星システムの研究開発を進めると書き込んでほしい」ということでございますが、これも現段階では議論が熟しておりませんので、今後検討になろうかという回答にしてございます。
    それから、最後に「先端科学技術開発の方向性を示し、透明性を確保するために先端科学技術開発のロードマップを制定・公開、維持・改訂すると書いてほしいということでございますが、これはそういうことをこれから実際にやる方向で検討していきたいという回答にさせていただいております。
    基本計画はあまり立ち入った細かいことまでは書き込めない部分が性格上ございますが、これからNASDAがつくられる具体的な実施計画といったようなもので、このフォローアップをしていきたいということでございます。
    以上でございます。
   

 井口委員長 

   いかがでございましょうか。非常にいいご意見をいただいたと思います。これに基づいて今日入れた部分もございます。ということで、今後、総務省との関係で何か大きな問題があれば、また議論させていただきますが、そうでないときにはこれで決定ということで議決をさせていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。
   

 長柄委員 

   確認したいんですが、パブリックコメントを求めたのは、宇宙委員会の案をまとめたわけですか、それとも、総務大臣とか文部科学大臣、国土交通大臣が、案に対してパブリックコメントを求めた、どっちですか。
   

 芝田課長 

   これは官庁側がパブリックコメントを求めたという形になります。
   

 長柄委員 

   宇宙委員会の案ではないですね。
   

 芝田課長 

   ではないです。
   

 長柄委員 

   役所の仕事ですね。
   

 芝田課長 

   役所の仕事でございます。
   

 長柄委員 

   だから、それをどう聞くか、どうかというのは、建前から言えば役所の話ですね。
   

 芝田課長 

   役所の判断でございますが、実際にはそこはあまり齟齬がないというのが前提でございますので。
   

 長柄委員 

   わかりました。
   

 井口委員長 

   具体的にはどうしたらいいんですか。
   

 芝田課長 

   大きな変更があった場合には、先生方に持ち回りでご承認いただくということを前提に、一応この場でご承認いただければありがたいということでございます。
   

 井口委員長 

   よろしゅうございますか。それでは議決をさせていただきます。4番目にその他で、前回、第22回宇宙開発委員会の議事要旨の確認でございますが、後ほどよろしくお願いいたします。
    今日は長時間、どうもありがとうございました。第23回宇宙開発委員会を閉会いたします。ありがとうございました。

−−閉会−−




(研究開発局宇宙政策課)

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