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宇宙開発委員会

2001/06/06 議事録
第21回宇宙開発委員会議事録


第21回宇宙開発委員会議事録

1.日時 平成13年6月6日(水)
  14:00〜

2.場所 特別会議室(旧科学技術庁5階)

3.議題 (1) 「高度情報通信ネットワーク社会の形成に向けた宇宙通信の在り方に関する研究会」の開催について
  (2) 全球降水観測ミッション(GPM)日米合同作業部会/ワークショップの結果について
  (3) 調査部会の構成員について
  (4) その他

4.資料 委21-1 「高度情報通信ネットワーク社会の形成に向けた宇宙通信の在り方に関する研究会」の開催
  委21-2 全球降水観測ミッション(GPM)日米合同作業部会/ワークショップの結果について
  委21-3 調査部会の構成員について
  委21-4 第20回宇宙開発委員会議事要旨(案)

5.出席者
    宇宙開発委員会委員長 井口雅一
    宇宙開発委員会委員 長柄喜一郎
              〃 栗木恭一
              〃 澤田茂生
              〃 五代富文
    文部科学省研究開発局長 今村努
              〃         宇宙政策課長 芝田政之


6.議事内容

 井口委員長 

   それでは、いつもより1時間早いのですが、第21回の宇宙開発委員会を始めさせていただきます。
       最初に、総務省の方で、「高度情報通信ネットワーク社会の形成に向けた宇宙通信のあり方に関する研究会」を始められましたので、そのお話を総務省情報通信政策局の宇宙通信政策課長石川さんに承りたいと思います。
       どうも、突然のお願いにもかかわらず、おいでいただきましてありがとうございます。よろしくお願いいたします。
   

 石川課長 

   総務省の宇宙通信政策課長の石川でございます。
    実は、本来でしたら、この宇宙開発委員会は2時からということだったそうですが、私の都合で、きょう、ちょうど2時から別の会議がございまして、急遽早めていただいたということで、御迷惑をおかけしたかと思います。
    それで、この研究会でございますが、どういった趣旨で開いたかというのは、ここに書いてあるとおりでございます。高度情報通信ネットワーク社会の形成に宇宙通信がどれだけ寄与できるかと、どういうふうに寄与すべきかという観点でこの研究会を開きまして、関係の方々から、いろんな意見をいただこうということでございます。
    構成メンバーは、ここの2ページに書いてありますように、26名という非常に大きな研究会になっております。これは、総務省としましては、旧郵政省でございますけれども、大体研究会といいますと20名以内で開くのが通常でございまして、こんなに26名もということで、若干問題になったのですが、これは、この研究会の開催の趣旨がここに反映されておりまして、すなわちこれまでの研究会ですと、どうしても、事業者側、それからメーカー側といったところが、いわゆる宇宙通信の関係者が集まって、言ってみれば仲間内で論議をしていくという形になっていたのでございますが、この研究会は、構成員の、分類というと怒られますが、分けていないので、ちょっとわかりにくいかと思いますが、いわゆる宇宙通信のユーザー関係、これからユーザーになってくれるであろうというところ、そういうぐあいに予想されるところということで、そういった関係者を多く取り入れているということでございます。
    例えばと言ってはあれですけれども、下から3人目の方、山口先生いらっしゃいますが、これは、有識者ということではありますけれども、実はインターネットのワイドプロジェクトというのを、これは慶應大学の村井先生が中心になってやっているところですが、そのワイドプロジェクトというところで、中心的な活躍をなさっているということで、例えばこのワイドプロジェクトの方から宇宙通信に期待するというところは何か、そういった意見を聞きたいということでございまして、そういった意味で、山口先生をこのメンバーに入れたということでございます。
    同様に、そのほかにも、上から言っていきますと、株式会社日本テレソフトさん、それからインターネットイニシアティブさん、それから株式会社ファルコンさん、そういったところが、いわゆるインターネット関係といいますか、そういったユーザーグループということで入っていただいたということでございます。そのほかにも、座長をお願いいたしましたNTTデータさん、これも言ってみればユーザーとしての位置づけと考えております。それからこちらの方では、NHKエンタープライズ二十一というのが入っておりますけれども、これは、コンテンツ関係ということで、これも宇宙通信を利用していただけるのではないかということで、そのユーザーを代表してもらうという位置づけだということでございます。このほかにも、自治体衛星通信機構さんとか、国立大蔵病院の方、それから放送大学学園、これもやはりいわゆる衛星通信のユーザー候補といいますか、そういった位置づけて入っていただいているということでございます。
    したがいまして、先ほど趣旨を若干説明いたしましたけれども、検討事項といたしましては、こういったユーザーのニーズというものをきちっとまず聞きましょうと、それで、今後の高度情報通信ネットワーク社会形成にどうやって宇宙通信が寄与できるかということを考えていこうということでございます。
    ということで、その辺の考え方は、一番最後のページに書いてありますように、これからそういったところについていろいろと御意見をいただいて、提言を出していっていただければというふうに考えているところでございます。
    若干補足してといいますか、説明を加えますが、どうしてもこういう研究会を開催しますと、これでまた全体を総務省がやる、宇宙通信もしくは宇宙開発といったものについて、全体取りまとめるのかということでございますが、先ほどから説明しておりますように、ユーザーニーズを把握した上で、宇宙通信のあり方を検討するということでありまして、これ以外にもいろいろと従来から、旧郵政省の時代から、通信放送関係での宇宙開発ということについてはいろいろ寄与してきたわけでございます。それは、もちろん今後とも継続していくという考えでございますし、そういったところは、例えばいわゆる研究開発といった面で、技術力の確保とか、そういった面での研究開発というのは当然続けてやっていく考えでございます。
    そういったことは、この研究会の範疇にはちょっと入っていないと考えております。その辺は、今、独立行政法人になりましたけれども、通信総合研究所が従来からやっておりますし、これからも進めていくだろうということでございまして、そういったところの長期的な展望等については、通信総合研究所の方で、また十分検討して考え方を出していくというふうに聞いておりますので、それに期待しているところでございます。
    それから検討課題の中にありますように、具体的にはということで、宇宙通信のあり方ということを検討していくわけでございますけれども、地上系が、ここで考えますのは、言ってみれば近未来、せいぜい5年から長くても10年程度の短期的、もしくはせいぜい中期的な課題等について検討するというものでございまして、特に、今後必要とされる技術的課題は何であるかと、短期的に解決すべき技術的課題は何であろうかと、それから研究開発の体制等、いわゆるタイムリーな研究開発の体制というものを検討していきたいというものでございます。
    以上でございます。
   

 井口委員長 

   どうもありがとうございます。
    ちょっと伺いたいことがあると思いますので、よろしくお願いします。いかがでしょうか。
    次の議題のために、古濱理事がおられるのですけれども、NASDAの体制図とどういう関係になるのですか。
   

 石川課長 

   実は、旧科技庁さん、今、文部科学省ですが、その予算でありますi−spaceでございますけれども、これは、郵政省、今、総務省のスペースインターネット技術の研究開発というものと連携した施策でございまして、i−spaceというものと地上系と相互補完する形で、言ってみればインターネット網をどう構築するかということを考えて、いろいろ研究開発をやっていこうと、こういうことでございます。
    それは、そういう一連の定性的な流れというものを我々の方で検討しまして、いろんなところで説明をいたしまして、予算を獲得したということでございます。それが実は、e−Japan重点計画でしたかに盛り込まれておりまして、したがってちょっと前後になってはいるのですけれども、これがネットワーク社会の形成にきちっと位置づけられたわけでございます。そこのところをもう一度、後先になりましたけれども、言ってみればニーズという面から理論武装といいますか、定量的にといいますか、そういった形でどういうふうに寄与できるのかといったところをここで少し我々の方でも検討してみたいという考え方でございます。
   

 井口委員長 

   よろしいですね。
   

 五代委員 

   この体制のところに関係があると思うのですけれども、近未来、5年から10年ということですけれども、官民というとおかしい言い方ですが、官が中心でそれに民がついていくという格好もありますけれども、いまや民が主導した、民だけがやるという、民に官がついていくというのもあると思うんですね。その辺はどのように考えられているのでしょうか。
   

 石川課長 

   なかなか難しいのですが、きょう、もしかしていらっしゃっていたら問題なんですが、実はいろんな研究開発という名目で、名目というとちょっと怒られますが、宇宙開発といった観点から、官主導でいろいろと先導してやってもらいたいという話がございます。この研究会を開催したのは、官主導でやると言ったって、それはやはり、遠い将来のお話でしたらまだ技術的向上といった面でよろしいかと思いますけれども、近い将来のことを考えているのだとしたら、やはり民間のニーズに沿った研究開発をしなければならないということで、そういった官主導でやるべきものは何なのかといったところにきちっと理論づけをしたいという趣旨でございます。逆に言いますと、いろんなそういう期待する向きに対して、こういった研究改革をやることによって若干の意識改革をしていただこうかという趣旨がございます。
    民主導で、それを官が追っかけるといった考えとか、それから官主導で民がそれについてくるとか、そういったところの、どっちがどうあるべきか、どういう分野でどうあるべきかというのは、これからよくいろいろと意見を聞きながらやっていきたいと思います。
   

 五代委員 

   私が伺ったのは、官の方がそう簡単に最初にお金がなかなか出てこないということがあって、最初の方がフェーズとしては結構重要ですから、今までと違うやり方もあるのかなと思ったわけです。
   

 石川課長 

   実はこれからいろいろ提言が出てくると思うんですけれども、その中で峻別をして、こういったものは例えば官民共同で、官は、官主導でやるべき分野はここだ、だけれども、民がやるべきところはここだと。それが合体して一つの施策になるとか、そういった形で、これは案件を、プロジェクトみたいなものを一つ一つちゃんと考えてみなければいけないのですが、そういうことをちょっと出していければよろしいのかなというふうに考えております。
   

 栗木委員 

   最終的なアウトプットとしては、何か具体的なプログラムとか、プロジェクトとかいうような形での提案になるのですか。それとも、もっと広いユーザー開拓をしようとしたということですか。
   

 石川課長 

   なるべく具体的に、プロジェクトという形で出していければよいと考えております。ただ、とは言っても説得力がないと困りますので、やはり、幅広く検討して、先ほど言ったようなあるべき姿をとらえて、それを論じた上で、具体的なプロジェクトといったものを出していければよろしいのではないかと考えております。
   

 井口委員長 

   私は自動車の世界にいて、この5、6年、ITSの推進をしてきたのですけれども、ITSを推進するのには、役所の方が5省庁連絡会議、今、4省庁になりましたけれども、もちろん総務省さんも入っておるのがありますね。それから民間の団体としては、今までVERTISと言っておりましたけれども、今度はITSジャパン、2日前に改名しました。そこの初代の理事長の役なんですけれども、こういう宇宙通信のユーザーとして、自動車とか道路交通というのは、また鉄道も入ると思いますけれども、相当大きな分野になるだろうと思うんですが、今、GPSというのは、あるものとしてただで使っているのですが、それではまだ宇宙に対する関心というのですか、薄いんですね。宇宙はどう使えるかという方の議論というのはあまりないんです。むしろ、技術としてどんなのがこれから出てき得るのかということと、ユーザーのニーズとがうまくかみ合えば、そこに新しいアプリケーションというふうなものが開ける。新しいビジネスが開ける可能性はあると思うんです。
    ですから、ユーザーの方も知らない。だから両方がうまくかみ合うことが一番大事だという印象を受けておりますので、幸い、見ましたらメンバーの中にトヨタ自動車の人が入っていますので、ひとつそういう方もいろいろ開拓してくだされば大変ありがたいと思います。
   

 石川課長 

   ありがとうございます。実は、この研究会を開く前に、いろんなメーカーさんとか事業者さんに対しまして、いろんなことをヒアリングをいたしました。その中で、私の方でも逆にびっくりしたのですけれども、自動車のGPSのように、いわゆる自動車に対するサービスという面では、まだまだ新しいサービス分野というものが衛星を使ってでもあるのではないかという話がいろいろと出てきまして、したがって、そういうことも論じてもらおうということで、その際には是非ともトヨタさん入っていただかないと困るということでこれを入れたものでございます。御意見といいますか、今の発言に対して、よくかみしめて、事務局として、うまくもっていきたいと思います。
   

 芝田課長 

   事務局からなんですけれども、長柄部会長のもとで利用部会というのが最近立ち上がりまして、これはもっと広義な意味での宇宙利用というのを議論してもらって、どんな可能性があるかというのを議論していただき始めたところなんですけれども、そういう目で見ると、利用は一つのエリアかと思いますので、連携よくやっていきたいと思いますので、ときどきインプットしていただくとありがたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
   

 井口委員長 

   宇宙開発委員会の、今までどちらかというと供給者側を中心に、技術開発をした後でどう使うかという、利用の方が第2段、第3段の考え方だったと思います。それを変えよう、まずニーズが何であるか、それに対して利用システムはどうつくったらいいか。それを踏まえた開発をやるという、一足飛びにはいかないにしろ、そういう方向を変えようという努力をしておりまして、利用部会というところでニーズ側の意見を伺い始めましたので、そういう活動がいろんなところにあるというのは悪くないことで、ある意味でそこで切磋琢磨してもいいわけですね。
    そういうことですので、今、芝田課長がおっしゃいましたように、ひとつこれからもよろしく情報交換させてくださいますようにお願いいたします。
    ほかに何かありませんか。
   

 長柄委員 

   総務省は、宇宙開発事業団の監督官庁でございますので、宇宙開発事業団の事業ないし、今の財政といいますか、経理、経営、要するに今のプロジェクトがあって、予算が非常に窮屈で、しかもこれから宇宙ステーション関係が予算がさらに増えるというようなことで、非常に経営的に苦しいということを御存じだと思うのですが、去年の中長期戦略をやったときも、畚野さんあたりの方から、宇宙開発事業団に頼っていたのでは宇宙通信はなかなか伸びないから、郵政省の管理でやろうやとおっしゃって、どうぞどうぞと言ったんですけれども、利用者側と開発側が共同でやるとか、特に今回の場合、5年とか短期的ですが、特に宇宙開発事業団の場合、この5年ぐらいは御存じのとおり、経営的に新プロジェクトで取り上げるような余裕がほとんどないという状態でございますので、やはり、このプロジェクト等を提案されるような場合に、じゃ、特に国がやるような場合に、総務省はどこまで負担するかとか、特に利用関係とか、例えばミッション機器みたいなものはその省がやるよとか、そういう財源の出どこまでよく検討していただく。とかくこういう研究会というのは、こういうことをやれ、ああいうことをやれということで終わってしまって、結局実現しないというケースが多いかと思うんです。ですから、そういうことも十分……、ちょうど総務省がNASDAの監督官庁でもありますから、その実情に合ったような提案をしていただきたいと、こう思うのです。
   

 井口委員長 

   ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
    それでは、きょうはどうもありがとうございました。またよろしくお願いいたします。
   

 石川課長 

   どうもありがとうございました。
   

 井口委員長 

   それでは次に移らせていただきます。
    全球降水観測ミッション(GPM)日米合同作業部会/ワークショップの結果について、宇宙開発事業団の古濱理事と、独立行政法人通信総合研究所電磁波計測部門長の増子さんにお話を伺います。よろしくお願いいたします。
   

 古濱理事 

   それでは、資料の21−2に基づいて、きょうはビューグラフで説明いたします。全球降水観測ミッション(GPM)日米合同作業部会及びワークショップの結果について、発表は宇宙開発事業団の古濱と独立行政法人通信総合研究所の増子部門長でございます。
    この委員会は、5月15日に合同作業部会が、それからワークショップは16、17、18の3日間にわたって行われました。そのときの結論からまず先に申し上げます。
    全球降水観測ミッションというのは、グローバル・プレシピテーション・ミッションというものの略称でありまして、これは、TRMMのフォローオンの衛星構想でございまして、TRMMの成果につきましては、前回の4月4日の当委員会で報告いたしましたが、そのときに一番最後の部分で、GPMのほんの一部を紹介いたしました。きょうは、その内容について、少し詳しく報告したいと思います。
    TRMMの3年間の観測経験に基づきまして、それの精度の向上でありますとか、観測頻度を向上させるということについて、非常に強い要求がございまして、TRMMフォローのGPMというミッションでは、まず第1点として全地球の、提案は熱帯とか亜熱帯地域にプラスマイナス35度までしかカバーしませんでしたけれども、それを、赤道を含めて温帯から寒帯まで、言ってみれば、ここにありますが、軌道傾斜角にして70°ぐらいまで拡大してほしい。それから高頻度化につきましては、TRMMの衛星は周回衛星でございまして、なかなか全球をカバーするには足りない。
    それでこの全球降水観測ミッションは、後ほど申し上げますが、1つのコア衛星と8つぐらいのコンステレーション衛星の衛星群でございまして、それによって3時間置きに観測できるような、観測頻度を高頻度化する。それから3つ目に、精度を向上する。2周波レーダーを用いまして、降水、降雪の粒径分布を測定するとか、弱い雨に対して感度をもたらすとか、降水と降雪の区別をするとか、こういったものを機能として持ちたいと、そういったことで、トータルとしましては、これは拡大してありますが、こういうコア衛星の部分と、それからコンステレーションと呼ばれる8つの衛星群、そういったもので構成されております。コア衛星は、太陽非同期で傾斜角が70°ぐらいで、TRMMが350キロメートルの高度でしたけれども、それを400キロメートルぐらいの高度にいたしまして、主要センサーは2周波降雨レーダー、2周波降雨レーダーは、かねて日本がATMOS−A1というプログラムのときに検討してまいりましたけれども、KuバンドとKAバンドの2周波を使う。テレビはKuバンドでございました。観測幅はTRMMは220キロでございましたが、高度が少し高くなるので、少し観測幅が少ない。水平分解能は少し悪くなる、そういった感じでございます。
    それからコンステレーションの方は、太陽同期の小型衛星でございまして、マイクロ波の放射計、パッシブなセンサーを搭載しております。コア衛星の方は、2周波降雨レーダーと、やはりパッシブのマイクロ放射計もあわせて搭載しております。それで、トータルとしまして、これは目標でございますけれども、ミッションを5年間ぐらいで、協力機関としてはNASDAが、CRLも含みますけれども、2周波降雨レーダーへと、できれば打上げも担当したい。これは検討中であります。それからNASAはコア衛星の部分と小型衛星の部分、それからNASA、NASDAの協力のもとに、今度はESAその他の機関が加わって、小型衛星群をもう少し数を増やしていこうと。NASAの当初の計画には小型衛星群は4つぐらいのセンサーを考えておりますが、他の組織の参加によって8つぐらいにしたいというのが構想でございます。これがこれからお話をするGPMの概要でございます。
    それでは、経過を含めて少し復唱いたしますと、このGPMの直接のきっかけになりましたのは、昨年11月、TRMMの打上げ3周年記念シンポジウムで関係者が集まりまして、NASAの方から局長が日本にまいりまして、その結果、私との間で科学協力にかかわるNASA、NASDAの共同声明を行いました。これは地球観測一般について共同して研究開発をしていこうということでございました。
    それから、本年の1月、TRMMの運用の3周年ということで、当初の予定が終了いたしましたのでミッションの達成について報告会をいたしました。その結果の概要につきましては、先ほどの4月4日の委員会でも触れました。
    それから今年4月、山内NASDA理事長が訪米されたときに、NASAのゴールディン長官とお会いになりまして、両者の間で会談が持たれまして、その中の話題の1つといたしまして、両機関がGPMについて鋭意プロジェクトを推し進めようということで合意をした、非常にホットな話題として取上げられたということでございます。
    それからTRMMフォローオンについて、我が国のこれまでの取組みでございますが、平成8年4月には、NASDAにおける降水観測技術衛星の研究に着手いたしました。これはATMOS−A1と呼んでいた衛星でございます。
    それから今年度から、通信総合研究所におきまして、2周波降雨レーダー(デュアル・フリークエンシー・プレシピテーション・レーダー)の研究に着手しております。それから、一方、米国における計画は、NASAは2000年からフェーズAからBに着手すると、A&Bと言っておりますけれども、そういったレベルになっております。
    それで、今回の5月15日の作業部会では、双方の計画の考え方及び当面の計画の進め方について議論いたしまして、両者内での調整をいたしました。参加者は日本側からNASDA、通信総合研究所、気象庁、それから名古屋大学と東京大学から参加をいたしました。それから米国はたくさん書いてありますが、これはちょっと間違いでございまして、NASAのみでございます。本文の方はそのようになっております。NASAと大学の関係者であります。結果といたしまして、日本のTRMM後継機ミッション計画、ATMOS−A1のデュアル・フリークエンシー・レーダーという主要センサーと、それから米国のGPMのコア衛星計画をマージいたしまして、改めてそれを米国のコア衛星計画としようと。結果として、TRMMの例にならいまして、日本側が主要センサーを提供する、それを全体としてGPM計画と呼ぼうと、そういった合意に達しました。それから今後共同のサイエンス要求、それから実施計画書を作成することについて合意をいたしました。
    こういった作業部会の結果をもちまして、翌日から3日間、GPMワークショップを行いました。これはNASAの長官と私との呼びかけで開催したものでございまして、世界16カ国、24機関から200名を超える参加者がございまして、非常に熱心な検討がなされました。また大きな期待が寄せられました。
    各機関がGPMの貢献への参加の可能性を発表いたしまして、例えばTRMMの場合は研究開発を主要な任務とした衛星でございましたけれども、GPMは実用衛星ではありませんけれども、実用への移行を強く認識した計画になっておりまして、天気予報精度の向上でありますとか、これは日米欧の気象機関がそういったことを強く感じております。
    それから気候変動、地球温暖化への寄与、それから水資源管理、降水予測、農業、雨を測るわけでありますから、水資源について非常に大きな貢献ができるであろうと。そういったことで、非常に大きな期待がございました。こういったものを日米共同のプロジェクトとして立上げまして、そして日米が中心になってコアを形成して、さらに諸外国の参加を呼びかけようと、そういった仕組みになっておりまして、まず今後の予定ですが、日米共同作業チームによるフェーズAないし、これは玉虫色になっておりまして、日本がフェーズAでありまして、アメリカはフェーズA&Bというふうな実情になっております。
    そういった調整が必要ですけれども、でき得れば、今年の8月ぐらいにはアグリーメントを結びまして、作業の前進を図りたいと考えております。そして、そういったアグリーメントのもとに、共同のサイエンス要求書を今年の9月ごろドラフトをつくりまして、第1版を来年の2月ごろには仕上げたいと、あわせて共同の実施計画をつくりたいと考えております。
    次回の作業部会は今年の11月ごろ、それから次回のワークショップは、でき得れば日本で来年行いたいと考えております。私の報告は以上でございます。
   

 井口委員長 

   どうもありがとうございました。
    御質問、御意見、どうぞお願いいたします。
   

 長柄委員 

   GPMに関して、ヨーロッパと米国、ないしヨーロッパと日本というのは、どういう枠組みに。
   

 古濱理事 

   今のところ、TRMMの計画を土台にいたしまして、GPMの場合も米国と日本の間で、基本的な合意に達したら、それに対して、例えばヨーロッパとアメリカの間でバイラテラルで契約を結ぶとか、あるいは日本、アメリカの中に、3番目の参加者として入る、さまざまな形態がありますが、中心は、そのコアの部分は日米がという、そういう構想で合意ができております。
   

 五代委員 

   今、予想されているトータルの支援、並びに少なくとも日米欧その他を含めまして、どのぐらいの想定ですか。
   

 宇宙開発事業団 

   お答えいたします。日本の想定が約100億、それからアメリカ側が350億程度だと思います。
   

 長柄委員 

   今のは打上げ代も含めてですか。
   

 宇宙開発事業団 

   はい、そうでございます。
   

 長柄委員 

   日本は、打上げですね。すると、100億というと、打上げも含めて日本の負担が100億、この最後のページにあるようなコンステレーション8機で、それにコア衛星があって、それを全部打上げる。それで……。
   

 宇宙開発事業団 

   失礼いたしました。NASA側が想定している負担が2周波降雨レーダーとそれからロケットの打上げでございますので、2周波の降雨レーダーが60億程度、それから打上げロケット、H−IIAを打上げるということで、それを相乗りで打上げると考えました場合に、100億と……。
   

 長柄委員 

   2周波降雨レーダーの打上げ。それではほかの衛星とか何か、コンステレーションの小さい衛星を日本国が打上げ分担だというのではなくて。
   

 古濱理事 

   違います、コア衛星だけを。
   

 長柄委員 

   コア衛星の打上げなの。
   

 古濱理事 

   コンステレーション衛星は、4つぐらいはアメリカで考えている小型衛星でありまして、マイクロセンサーを乗っけたものであります。
    それから、マイクロ放射計という意味では、ADEOS−IIのAMSRでありますとか、アクアに乗っかるAMSR−Eでありますとか、それから現在、気象衛星で計画されておりますさまざまなセンサー、そういったものが候補に挙がっております。そういったものを有効に利用していく。そういった軌道を考えながら小型衛星を打上げる、そんな構想になっております。
   

 増子部門長 

   通信総合研究所においても、応分の負担という程度しか言えないのですが、ある程度の資金負担を考えております。
   

 五代委員 

   日本は小型衛星はやらないのですか。
   

 古濱理事 

   今のところ……、いや……。
   

 五代委員 

   あったような気がしたけれども、そんなにいっぱいではないにしても。せっかくの機会だから、コンステレーションの実験等はなかったんですか。
   

 古濱理事 

   現時点では具体化しておりませんが、将来は小型衛星はスコープの中に入れないといけないと考えております。
   

 井口委員長 

   TRMMの成果については、この前御報告いただきましたように、内外で高い評価を受けていますけれども、さらにその情報利用を進めようというような計画はおありになるんでしょうか、要するに利用システムですけれども。
   

 古濱理事 

   TRMMでしょうか、それとも……。
   

 井口委員長 

   これもそうでしょうけれども、これはまだこれからの話で。
   

 古濱理事 

   これはやはり、高頻度化というのは、やはり実際の天気予報には3時間置きぐらいのデータがないと、その役に立たない。ですから、そういった強い要請がありまして、完全な実用のためではありませんが、実用一歩手前までは、このGPM衛星構想でいこうということになっております。ですから、今以上に実用ということを意識した計画になっております。
   

 栗木委員 

   コンステレーションという意味の中には衛星間の通信というのは。
   

 古濱理事 

   あれはインディペンデントです。
   

 長柄委員 

   ワークショップに参加された方々、関心のある方々ですけれども、大体気象関係とか、気候関係ですか。気候と気象。
   

 古濱理事 

   はい。
   

 長柄委員 

   その他はいるんですか。
   

 通信総合研究所 

   水文、水資源。
   

 長柄委員 

   水文ですか。
   

 井口委員長 

   水文って何ですか。
   

 増子部門長 

   ダムの管理ですとか、河川の管理ですとか、あるいは積雪等の、まあ、水資源の管理です。
   

 長柄委員 

   この前TRMMで、土壌の質分のあれがありましたね。予想外といいますか、当初の予想にはなかったのでしょう。あったかどうか知りませんが、あれは非常によくわかるということだったんですが。
    そういう意味で、水資源管理みたいなことにもこれは、かなり……。
   

 古濱理事 

   非常にそれは大きな期待が。
   

 長柄委員 

   空気中の質分だけ見ているわけではなくて、土壌中の質分もかなり見えそうなという意味ですか。
   

 増子部門長 

   まだそこまでのアルゴリズムは確立しているとは言いがたいのですけれども、今後それを視野に入れてやっていきたいと思います。
   

 井口委員長 

   最初の宇宙通信のときにも申し上げましたように、ユーザー側と供給者側とのアンテナがまだ離れていて、ユーザー側はこういうことができたらと思っていながら、それが両方使ってできるか考えもしていないということがあり得るわけですね。ですから、こういう情報が提供できます。これを使えばこうなりますというような間をつなぐ、それが利用技術であり、利用システムなんだろうと思いますけれども。
    その辺にこれから宇宙開発委員会としても力を入れていきたいと思っていますので、NASDAとかこちらの方もよろしくお願いいたします。
   

 古濱理事 

   わかりました。
   

 長柄委員 

   ADEOSの場合でも、気候の先生……、ちょっと、名前を今……。要するにADEOSができて、こういうデータを集めて、こういう解析をしたらこういうものがわかったと。要するに気象とか気候の人は、そんなものまでわかるはずがないと。今、先生は、ニーズをおっしゃっている。気象学者から言ったらそんなものがわかるはずがないと。しかし実際にやってみたら、とんでもなく撮れていたと。潜在的ニーズはあったかもしれませんが、そんなものわかるはずがないというものがADEOSではわかるようになったというふうなことで、ですから、利用者側のニーズ、潜在的ニーズというのも、供給側から掘り起こすわけですけれども、そこらあたりが非常に難しいといいますか。利用者側がどういう潜在的ニーズを持っているかというのを掘り起こすのは実は顕在化していないから、すぐにこういうことをやってくれというのは楽なんですよ。ところが、そんなことができるとだれも思っていない、心の中でこういうことがわかったらいいんだがなあというのと、それからADEOSならADEOSのセンサーとの間がうまく結びつくような仕組みですね。うまい仕組みというのができれば……。
   

 古濱理事 

   そういう意味では、PIの中には、ここに今、ポインターで示しておりますけれども、研究者が、やはりこれは研究要素のある衛星ですから、この2周波降雨レーダーは始めて搭載するわけですから、新しい事情がわかるわけで、定性的に新しい知見が獲得できる可能性が大いにあるわけです。もちろん、オペレーションのことも考えていますけれども、両方の性格を持っております。
   

 増子部門長 

   ちょっと補足させていただきますと、TRMMにしましても、GPMにしましても、スターティングポイントは、地球温暖化等の気候変動、あるいは環境問題だったと思うんですが、ここでリアルタイム、3時間ごとの観測というのを持ち込みましたのは、やっぱりかなりアメリカが実用化サイドに寄っているということだと思います。それによりまして、実は日本だけではなくて、アメリカ、あるいは世界じゅうが、先ほど申し上げました水文、水資源管理、そういう視点の研究者なり実用サイドの人が、かなり興味をもって見るようになってきています。
    おっしゃっていただいたとおりだと思うんですが、今後、そういう人たちのニーズを発掘して、それを役立てていくという作業が必要になると思っております。ですから、新しい広がりが出てきたというふうに思っております。
   

 五代委員 

   そういう意味で、通総研も独立行政法人になりましたので、私は動きやすいと思うんです。だから積極的にユーザーとのつなぎまで含め、宇宙開発事業団はもともと特殊法人だから、そういうのができるはずなんですが、大いにやっていただいたらね。
   

 増子部門長 

   できる限り努力したいと思います。
   

 井口委員長 

   防災とか、災害対策にも使えますね。3機関は比べられる。
    ほかに、よろしゅうございますか。
    では、どうもありがとうございました。
   

 古濱理事 

   ありがとうございました。
   

 井口委員長 

   次は、決定を要する議題でございます。
    調査部会の構成員について、栗木委員からお話しいただきます。
   

 栗木委員 

   宇宙開発委員会におきまして、去る1月31日の会合で、宇宙開発における事故、トラブルの原因究明及びその対策に関することを審議する調査部会を常設部会として設置することを決定されました。その部会の構成員は以下のようにしたいという提案でございます。
    以下のメンバーでありますが、調査を行うべき事故、トラブルの内容に応じて、部会長判断で、必要な分野の専門家を構成員として適宜追加したいという内容でございます。委員としましては、委員3名のほかに特別委員としまして、そのコアになる6名の名前を挙げております。一番上の上杉宇宙科学研究所教授並びに八坂教授の2人は、衛星関係の専門家、棚次、冠両先生が輸送系関係。松岡、小林両先生が材料、破壊力学等の専門家ということで、この方たちをコアにしまして、専門家を随時テーマ、トラブルの内容等に応じて加えて、部会の審議に当たりたいと思います。よろしく御審議のほどお願いいたします。
   

 井口委員長 

   既に委員につきましては、決定をさせていただいております。
    きょう決めていただくのはこの特別委員でございますが、いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。

(「結構です」の声あり)

御異義ございませんので、この特別委員で決定させていただきます。
    どうもありがとうございました。
    あとはその他でございまして、前回の議事要旨を後ほど御確認くださいますようにお願いいたします。
    以上で、第21回宇宙開発委員会を閉会にいたします。ありがとうございました。

──了──




(研究開発局宇宙政策課)

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