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宇宙開発委員会

2001/04/25 議事録
第16回宇宙開発委員会議事録


第16回宇宙開発委員会議事録

1.日時 平成13年4月25日(水)
  14:00〜

2.場所 特別会議室(旧科学技術庁5階)

3.議題 (1) 米国航空宇宙局(NASA)の国際宇宙ステーション(ISS)に関する予算状況について
  (2) 国連宇宙空間平和利用委員会法律小委員会第40会期の開催結果について
  (3) 「我が国ロケット産業の発展に向けた基本的方向について」の報告について
  (4) 「宇宙開発に関する基本計画」の策定に向けた審議について
  (5) 宇宙利用の推進方策に関する調査審議について
  (6) その他

4.資料 委16-1 米国航空宇宙局(NASA)の国際宇宙ステーション(ISS)に関する予算状況について
  委16-2 国連宇宙空間平和利用委員会法律小委員会第40会期の開催結果について
  委16-3-1 我が国ロケット産業の発展に向けた基本的方向について(ポイント)
  委16-3-2 我が国ロケット産業の発展に向けた基本的方向について
  委16-4 「宇宙開発に関する基本計画」について
  委16-4 (参考)「宇宙開発に関する基本計画」に盛り込むべき事項のポイント
  委16-4 (参考2)第15回宇宙開発委員会(平成13年4月18日)「宇宙開発に関する基本計画」の策定に向けた審議における
    指摘事項
  委16-5 宇宙利用の推進方策に関する調査審議について
  委16-6 第15回宇宙開発委員会議事要旨(案)

5.出席者
    宇宙開発委員会委員 長井口雅一
    宇宙開発委員会委員 長柄喜一郎
              〃 栗木恭一
              〃 澤田茂生
              〃 五代富文
    文部科学省研究開発局長 今村努
              〃         宇宙政策課長 芝田政之

6.議事内容

午後2時開会

 井口委員長 

   第16回の宇宙開発委員会を始めさせていただきます。
   きょうは6件ございます。
   最初が、「米国航空宇宙局の国際宇宙ステーションに関する予算状況について」、宇宙開発事業団宇宙環境利用システム本部副本部長の堀川さんに御報告をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

 宇宙開発事業団(堀川副本部長) 

   宇宙開発事業団の堀川と申します。
   それでは、米国NASAの国際宇宙ステーションにかかわります予算の状況について御説明させていただきます。
   米国NASAの予算につきましては、公式の情報と予算案に基づいて、現在、計画の一部見直しを行っておりますが、その内容につきまして、いろいろ憶測であるとか、うわさであるとかということもありますので、ここでは公式の情報に基づいて御報告させていただきたいと思います。
   これまでの予算の状況でございますが、2月28日に米国ホワイトハウスの方から2002年度の予算要求に関する指針、ガイドラインが出されております。
   米国の予算は10月1日から実行されるわけですけれども、それに対しまして、4月4日にワシントンの方で、下院の科学委員会の公聴会が開催されまして、いろいろ議論がなされた後、4月9日にNASAの詳細な予算案が米国議会の方に出されております。
   それを受けまして、4月19日に、その予算案の内容の一部を実施していく上で、米国NASAとイタリアの宇宙事業団(ASI)というところが、米国の従来開発する予定でありました居住モジュールの開発に係わりまして、二国間の協力の枠組みを締結しているという事実がございます。
   米国の予算の概要について、まず御説明したいと思いますが、2月28日にホワイトハウスの方から出されました2002年の会計年度に当たるNASAの予算要求のガイドラインにつきましては、お手元の資料の3枚目にまとめてございますので、まずそちらから簡単に御説明したいと思います。
   NASA全体の予算としましては、2002年度の予算として145億ドルを供給しますという話になっております。これは2001年度のNASA全体の予算に対しまして2%増という数字になっております。
   その中で、国際宇宙ステーションに係わります予算につきましては、NASAの方で今後の5年間の予算を予測しましたところ、2001年・2002年で約10億ドル、2003年から2007年を含めまして約40億ドル、コストが膨らむという可能性が示唆されておりました。
   そこで、最優先目的を維持して、今後5年間、従来の予算の額に収まるように予算案を作りなさいというガイドラインが出ております。
   そこでは、恒久的有人宇宙滞在を実現すること。それから、世界水準の宇宙研究をやること。それと、国際パートナーの提供要素を組込むことということが述べられております。
   国際パートナーの主要ハードウェア、日本でありますとかヨーロッパでありますとか、のモジュールがついたところで、米国の基本部分を完成とします。具体的にはノード2という部分がついたところで、米国のコア部分を終わりたいというガイドラインになっております。
   今後、将来のコスト増分の可能性のある米国の要素でありました居住モジュールであるとか、クルー・リターン・ビークル、クルー・レスキュー・ビークルとも言いますが、それから、推進モジュールを想定していました資金を部分的に相殺して、計画を見直すようにという形になっております。
   米国の要素の開発は、コストの見積制度の問題、技術的問題の解決を行って、将来の部分については検討した上で判断をしていきたい。
   さらに加えて、NASAは幾つかの改革を実施しなさいということで、特に、コストのマネジメントの関係、それからプログラムのマネジメントの関係について改革を行いなさいということが言われております。
   さらに、スペースシャトルに関しまして、次のページにございますように、計画を維持できるレベルで打上げは従来年7回であったわけですけれども、年6回に縮小しなさい。ただし、安全性の向上には資金を供給します。また、民営化を推進して、安全性と運営の効率化を改善しなさいというガイドラインが出ております。
   これに基づきまして、1ページの下の方に戻っていただきますが、2002年度の国際宇宙ステーションの予算としまして、20.87億ドルで、2001年度のほぼ同額の数字をNASAの方として提示しております。
   ここに今後の5年間のフォアキャストをお示しいたしますが、2001年度、今年度ですけれども、今年度の予算に比べまして、約2億3,000万ドルの増額の数字になっております。
   今後5年間の宇宙ステーションの予算につきましては、2001年に計画されました予算、昨年5年間のフォアキャストしているわけですけれども、それから見て約10億ドルの増額になっております。先ほど申し上げましたように、約40億ドル増になっているものに対しまして、約30億ドルの減額ということになっているわけです。
   この予算に合うように、計画の見直しをNASAが行っているわけですが、この見直しの内容としましては、国際パートナーの主要ハードウェアの要素、つまり日本とヨーロッパのモジュールがつきますノード2の打上げ、これが2003年の予定になっておりますけれども、そこで米国のコア部分の建設を完了する。
   それから、米国の推進モジュール、従来、プロパルジョンモジュールと言っておりましたが、これにつきましては、開発を中止する。完全にやめてしまうという案になっております。このプロパルジョンモジュールをやめることによりまして、ロシアのプログレスであるとか、シャトル自身の推進機能を使うとか、欧州が予定しておりますAutomated Transfer Vehicle、アリアンによります自動輸送機によって軌道を保持することを考えております。
   それから、米国の居住モジュールの開発につきましては中断をするということで、完全にやめたという意思表示をしているわけではございませんで、いろいろな方策を模索したいということで、先ほど申しましたイタリアの宇宙機関と居住モジュールの開発に係わる二国間協力の枠組みを締結しております。具体的には、今後、詳細を詰めて協議をしていくということになっております。
   さらに、搭乗員の帰還機、Crew Rescue Vehicleですが、これも中断ということで、まだやめたという意思表示ではありませんが、当面、緊急時の帰還につきましては、宇宙ステーションにドッキングしていますロシアのソユーズに依存するということで、CRVの開発につきましては、ESAと協力をすることを今現在、調整し検討しております。
   さらに、このNASAの予算の中で、リサーチ・コミュニティ、宇宙ステーションに係わるリサーチの部分の予算が40%削減されているというのが現状でございます。
   具体的に、これらの計画につきまして、6月に、先ほど申し上げましたノード2まで、ノード2の後、幾つかユーザーフライトがございますが、そのユーザーフライトの打上げがなされるところまでの組立シークェンスについては、6月ごろまでに定めようということで、将来の部分につきましては、ことしの秋までに最終的に確定したいという予定になっております。
   現在、4月末までにNASAによる6月に向けての具体案が検討されておりまして、今月、それから来月にかけては、私ども、国際パートナーとの調整を行い、今申し上げましたように、6月に日本のモジュールが上がるあたりの部分までの組立スケジュールを、現在F改訂になっておりますが、G改訂として組立シークェンスを設定し、ことしの秋に組立完了までのスケジュールを改訂していくという予定になっております。
   以上が、現在の米国の方の状況と我々との関係になります。
   以上でございます。

 井口委員長 

   どうもありがとうございます。
   それでは、御質問、御意見をいただきます。

 長柄委員 

   CRVができなかったら、居住者は3人になっちゃうんですか。

 宇宙開発事業団(堀川副本部長) 

   はい、もう1つのオプションとしては、ソユーズを2機つけるというオプションもございまして、その場合には6人までが滞在できることになります。また、シャトルの軌道上での滞在期間を延ばすということで、現在、10日から11日ぐらいですが、これを18日に延ばすのを年3回ぐらい予定することによって、居住の可能性をふやすということも検討のオプションとしてやっていくということでございます。

 長柄委員 

   NASAのリサーチ・コミュニティの予算って、リサーチ・コミュニティというのは、民間企業とNASAが一緒になって共同して何かやるような、地上でいろいろ研究するようなのがあって、ああいうお金ですか。

 宇宙開発事業団(堀川副本部長) 

   はい、そういう部分も含まれますし、主としてヒューマン・リサーチ、将来の火星に向けてといったリサーチも含んだところだというふうに思っております。

 井口委員長 

   ほかにいかがでしょうか。
よろしゅうございますか。
では、どうも、堀川さん、御苦労さまでした。
次に、「国連宇宙空間平和利用委員会法律小委員会第40会期の開催結果について」、文部科学省宇宙政策課の塩満室長さんの御報告です。よろしくお願いいたします。

 塩満調査国際室長 

   よろしくお願い申し上げます。
   それでは、資料委16−2に基づきまして御説明申し上げます。
   一番後ろのページをまず御覧になっていただければと思いますが、国連宇宙空間平和利用委員会法律小委員会の日程が書いてございますが、4月2日から4月12日に開催されました。資料は16−2でございます。
   この中で、特に活発な議論が行われましたのは、議題6の「宇宙空間の定義」、それから議題8、4月9日と書いてございますが、「国際可動物件担保条約及び同宇宙物体議定書」の部分、それからやはり「打上げ国の定義」、議題9でございました。
   1枚目に戻りまして、「参加国・機関」は、49カ国及び11の国際機関が参加しております。
   「当方出席者」といたしましては、外務省、文部科学省、宇宙開発事業団から担当の者が参加いたしております。
   「結果概要」でございますが、2.から御紹介させていただきたいと思います。
   (1)「宇宙諸条約のステータス及び適用」という議題4につきまして報告がございました。現在の批准、それから署名国についての報告がございまして、その中で、特に批准、署名が低いレベルにとどまっている理由、これは恐らく開発途上国におきまして宇宙利用自体が進んでいないということから、開発途上国に加入するインセンティブが少ないということからかと思いますが、これに関して、広範な支持を得るための方策を検討することにつきまして、ワーキンググループを設置しようという話がギリシャから提案されました。日本は、月条約以外は加入しているという状況でございます。
   それから、(2)でございますが、「宇宙法に関連する国際機関の活動状況」につきまして、ここに記載してあります各機関から活動内容が報告されました。
   それから(3)「宇宙空間の定義」につきまして、やはり宇宙空間の定義は重要であると主張しているのはロシア、それから定義がなくても特段法的な問題は生じないとする米国的な考え方の主張がありまして、これにつきましては議論は平行線に終わったということでございまして、閉会後、今後また継続的に議論されるということになるかと思います。
   それから、2枚目でございますが、「原子力電源(NPS)原則」につきまして、これにつきましては、2月に行われました科学技術小委員会の方で安全基準等の技術的検討を行うまで、法律小委員会におきましては検討を行わないということになっていまして、本年は特段の議論は行われなかったということでございます。
   それから、(5)「国際可動物件担保条約及び同宇宙物体議定書」、これにつきましては、国境を越えて物件が移動するというものに対してのファイナンスを促進するための担保権につきまして、国際的な登録制度を設けて、優先的に一律に画するということを目的として、今、現在、私法統一国際協会、UNIDROITと訳されてよく呼ばれていますが、そこの政府間国際機関で検討が行われているものでございます。国連の委員会からは独立して検討を行っているものですが、今回の法律小委員会におきましては、ここの検討内容につきまして説明が行われました。関心国において、まず非公式で検討を行って、来年の法律小委員会に結果を報告するということがコンセンサスを得られたということでございます。これにつきましては、物件、例えばロケットとか衛星とか、担保がついて所有者が変わってしまう、移転してしまうということも、抵当権を付与した場合あり得ると思いますので、そうした場合の登録国、打上げ国はどうなるかという課題が生じるということで、検討の重要性が指摘されたということでございます。
   それから6番目、「打上げ国の定義」でございますが、これにつきましても、やはり宇宙損害責任条約、それから宇宙物体登録条約におきまして、打上げ国の概念を整理すべきではないかという意見のある国と、必ずしも熱心に検討を進めるということの必要性を主張しない国とありましたが、特に民間活動が活発になっている現状におきまして、例えばロケットの打上げ1つとっても、複数のプレーヤーが関与するということになりますので、そうした場合の打上げ国の概念、さらに公海とか、打上げが行われたときの打上げ国についてどのように考えるかということにつきましても、意見が提出されたということでございます。
   それから、「新規議題」といたしましては、先ほど(4)で御紹介しました「原子力電源原則」、それからUNIDROITで検討が進んでいます可動物件に対する国際的担保条約等につきまして次期会合で、次期会合というのは法律小委員会におきましても継続して議題とすることがコンセンサスを得られて決定いたしました。
   そのほかといたしましては、「宇宙法に係る紛争の平和的解決」、これは損害賠償責任条約に関する話題が主となりましたが、ここにつきまして、国際宇宙法学会、それから欧州宇宙法センター共催のシンポジウムが開催されたということでございます。
   以上、出席しました磯部がこちらにおりますが、何かつけ加えることはありますか。
   以上でございます。

 井口委員長 

   どうもありがとうございました。
   御質問、御意見をいただきます。

 五代委員 

   質問ですが、「打上げ国の定義」ということで、ここの議論の対決というのか、それは具体的にどんなことが課題であって、どんなところに落ち着きそうだという、まだ2年目ということですが、その辺のところを教えていただければと思います。

 磯部調査国際室係長 

   打上げ国の定義、ここで何らかの整理をしなければいけないというようなコンセンサスといいますか、その会議の場で、定義がはっきりしないのは問題であるという雰囲気は若干ありますので、今特に問題になっているのは、実際、例えば民間の活動が非常に活発になっている。その民間の活動によって生じた損害に対しても、今、国が責任を負う形になっているという状況があります。実は、民間活動は非常に広域というか、いろんな形態が生まれている。例えばシー・ロンチ社がやっているように、公海上で打上げる宇宙物体もある。もしくは飛行機から打上げるような宇宙物体もある。そういった場合には、打上げ国、現在の定義で行きますと、その国の領土から打上げる国が打上げ国である、実際、その領土ではないところで打上げる場合も出てきているという問題が1つ。
   また、「打上げを行わせる国」の定義に関して、従来であれば国ぐらいしか打上げ能力のあるところがなかったが、民間活動が次第に活発になって、私企業がいろんなところで宇宙物体を打上げるようになってきている。例えばAという国において、Aという国と全然関係ないB国の企業がA国で打上げたりする場合、本当に、そのBという国が打上げ国になるのかどうかとか、そういった場合に、実際どこが打上げ国になるのか、ちゃんと整理しなければいけないのかというような問題意識です。

 五代委員 

   まだ議論が始まったところですね。

 井口委員長 

   例えばアリアンなんかはどこの国というんですか。

 磯部調査国際室係長 

   フランスの領土内で打上げていますので、フランスは当然打上げ国になるんですけれども。

 塩満調査国際室長 

   一応中国、オーストラリア、ベルギーとか、フランス、イギリス、ロシア、そういう国々が非常に熱心に議論を行っているという状況で、これについては、まだ統一した解釈を作成するまではいっていないということで、議論の継続が話し合われたということでございます。

 井口委員長 

   ほかにいかがでしょうか。
素人質問なんですけれども、ここでは、問題点として、宇宙空間の定義、国際可動物件担保の問題、打上げ国の定義とか原子力電源などの課題が挙げられておりますけれども、どういう問題がほかにあるんですか。、例えばデブリの問題などは、ここで扱われる話なんですか。

 塩満調査国際室長 

   デブリについては、こちらでやはり議論をしたいという、例えばチェコとかそういう国があったんですが、スコープには入っていますが、次年度の新規議題として新たに加えられるということは、コンセンサスに至らなかったということでございます。ですから、スペースデブリについては、やはり科学技術小委員会が、まず基準的なもの、これは国際機関宇宙デブリ調整委員会というIADCと呼ばれているものが、デブリ低減基準案を策定しようという動きがありますので、そこの議論を待ってからというふうに落ち着いています。
   それから、あと、この前、御報告申し上げました天文学観測に支障を及ぼす宇宙広告規制とか、包括的宇宙条約の検討などありますが、今これにつきましては、次年度の新規議題ということで、コンセンサスが得られた状況ではございませんでした。ですから、幾つかほかにもスコープに含まれるものはあるということでございます。

 栗木委員 

   今のデブリの提案というのは、来年に入らなかったということなんですが、次回に入らなかったということなんですが、そのテーマの中には、「プランドリエントリー」も入っているんですか。

 磯部調査国際室係長 

   いや、今、科技小委で議論が行われているところなんですが、これはとりあえずIADCでひとまず議論しましょうということが決まった段階でして、そこにリエントリーの基準までスコープに入るかどうかというのは、これから科技小委の方で検討いただくと思います。

 塩満調査国際室長 

   2002年の環境小委員会では、デブリの衝突の危険性と防御法に関する検討が……

 栗木委員 

   防御法?

 塩満調査国際室長 

   はい、その検討が先のようですので、リエントリーも含まれるとは思いますが。

 栗木委員 

   防御法の一手段であるとしてですか。

 塩満調査国際室長 

   はい、そうです。むしろ、再突入より宇宙空間のデブリの方が先という印象はあります。

 磯部調査国際室係長 

   ひとまず、来年の単年度議題としては防御法ということで、デブリのバンパーとかそういう話になると思います。

 栗木委員 

   どう処理するかという話にはまだ至っていない?

 磯部調査国際室係長 

   まだ、そこには、そうですね。

 塩満調査国際室長 

   先ほど、ちょっと申しましたが、デブリ低減基準案につきましては、IADCの場で議論が行われていることですので、リエントリーも恐らく将来の話として……。

 磯部調査国際室係長 

   その基準案の中に入る可能性はあると思います。

 塩満調査国際室長 

   詳細確認してまいりたいと思います。

 栗木委員 

   処理に入れば,必ずデオービットの話は出てくると思いますね。

 磯部調査国際室係長 

   そうですね。

 井口委員長 

   ほかにいかがですか。
   よろしゅうございますか。
   では、どうもありがとうございました。
   先ほど忘れておりました、結構話題になっております、チトー氏が第1号の宇宙観光客になるかどうかという話題ですが、宇宙利用推進室長の宗永さん、お願いいたします。

 宗永宇宙利用推進室長 

   急な話で、資料番号も振っていない資料になりますけれども、昨晩、宇宙ステーションに参加しております各極間の会合がございまして、その場でいろいろな条件、措置を講じることで、一部報道等で流れておりました、アメリカの実業家のデニス・チトー氏がロシアのソユーズで国際宇宙ステーションに行くということに関する了解が行われたということで御報告させていただきます。
   このソユーズの打上げでございますけれども、先ほど、議題の最初に、NASDAの堀川副本部長の方から話がありましたように、宇宙ステーションには、搭乗員の緊急帰還用にソユーズが現在1機常備されております。このソユーズにつきましては、半年、180日ごとに交換する必要がございまして、半年ごとに新しいソユーズを上げ、そのソユーズで行った搭乗員が古いソユーズで戻ってくるといったような運用がなされます。
   ロシアの方では、従来より予算が不足しておるということもあり、このソユーズの交換のチャンスを利用して、一般人もしくは商業ベースで宇宙飛行を行うということを検討しておりました。それで、本年の1月末に、米国の一般人実業家でございますチトー氏と契約が行われました。
   その契約の前にも一部サウンディングがあったんですけれども、この契約を受けまして、この宇宙ステーション計画に参加しております各極間で、安全面でありますとか、手続面、技術面、基準面といったような観点から、これをどういうふうに処理するかというような議論がここ2カ月ほど引き続き行われておりました。
   当初、この期間、4月末というタイミングでございますけれども、現在、スペースシャトルのエンデバー号が行っておりまして、カナダのロボットアームが取りつけられ、チェックが行われていることでありますとか、例えば宇宙ステーションの管制がロシアの方からアメリカの方に移るような措置が行われるということでございますとか、実験装置のチェック等々が行われるという、かなり忙しいワークロードがかかっている時期でもあり、また一般人の方が宇宙ステーションに行く基準でありますとか手続といったものが未整備といったようなこともあり、そういう安全面の観点及び基準でありますとか、そういう手続面の観点から時期尚早ではないかといったような議論がございました。
   そういう議論を続けてきたところでございますけれども、先週の末でございますが、4月20日付で、ロシア側より、安全の確保及び必要な手続を実質的に講じる、もしくは将来的に問題がないようにするといったことを前提といたしまして、今回のフライトを例外的な特例的なものとして承認してもらうよう、この宇宙ステーションの多極間の調整委員会に提案がございました。
   これを受けまして、一昨日の夜及び昨日の夜といったタイミングで、この協力機関、具体的に言いますと、日本におきましては文部科学省、アメリカのNASA、ヨーロッパの欧州宇宙機関、カナダの宇宙庁、ロシアの航空宇宙庁でございますが、におきまして、その安全の確保に必要な措置でありますとか、将来への備えといったような議論が行われまして、必要な措置を講じるといったことを前提といたしまして、今回、例外、特例としてチトー氏が国際宇宙ステーションへ飛行することが承認されました。
   この必要な措置といいますのは、まず1点目は、こういうようないろいろな議論が必要になったという原因であります、こういう一般人を含むすべてのカテゴリー、長期滞在、短期滞在もろもろございますけれども、そういう宇宙飛行士の認定の基準でありますとか、手続といったものを早急にパートナー間で協力し合って確立するというのが1点でございます。
   2点目、3点目は、安全をいかにして確保するかということでございますが、チトーさんはロシアの方で訓練が行われておりまして、ロシアの方のモジュールにつきましては十分な訓練、またロシアの方の基準に照らし合わせても十分なものがなされているところでございますが、アメリカのモジュールにつきましては訓練等々が行われていないということもありまして、チトーさんの軌道上での活動を制限する。この制限といいますのは、例えばアメリカのモジュールには1人で入らない。
   その前に、宇宙に行った直後に、アメリカの長期滞在のクルーの支援を受けまして、安全面のブリーフィングを受ける。例えば消火器でありますとか非常灯でありますとか、そういうようなものがどうであるとか、問題が起きたときにはこうやりましょう、あれにはさわってはいけないといったような軌道上での訓練を受けた上で、そういう活動に若干の制限を受けるといったようなもの、もしくは、宇宙ステーションの搭乗員の守るべき行動規範等々ございますけれども、それを遵守することといったようなこと。
   3点目は、NASA側の措置でございますが、チトーさんが滞在している間、従来いろいろな作業が計画されておりましたけれども、そこら辺を最低限必要な作業に限定いたしまして、長期滞在のクルーの負荷を減らし、その分をチトーさんをサポートするといったように回すということで、万が一の事態に備えるといったようなことを行うと。そういったもろもろの措置、特に安全の確保といった措置を行うことを前提といたしまして、チトーさんの飛行を了承したということになっております。
   最後になりますけれども、チトーさんの打上げは、日本時間で今週の土曜日に予定されておりまして、確定したものはわからないんですけれども、宇宙ステーションへの滞在日数が6日間ということで、そういう飛行が計画されております。
   ちょっと長くなりましたけれども、以上です。

 井口委員長 

   どうもありがとうございました。
   御質問、御意見はいかがでしょうか。

 五代委員 

   コメントというか、ともかくいろいろな経緯はあったにしても、結果として一般人が搭乗するという方向に道を開いたというのは非常に意義があると思います。
   日本でも、私もよく言っていますが、必ずしも理工学に限らず、もっと広い意味で人文系のいろんな方たち、いわゆる長期ではないけれども、こういう程度の滞在とか訪問をするという可能性も道が開けるんではないか、そう思っております。
   これと全然別ですけれども、これは若干やり方としてはいろいろあるんでしょうけれども、日本も何か望むこと、国際的にこういうことというような提案があったら、率先して提案するということがあってもいいんではないか、これと全く別な話ですけれども、と思っております。
   以上です。

 宗永宇宙利用推進室長 

   今回、いろいろごたごたあったんですけれども、おっしゃるとおり、1点目は、一般人の搭乗という観点で、今回を契機としてさらにいろいろな基準でありますとか、プロセスでありますとか、そういうのを急いで整備しようという契機になったというのが1つあろうかと思います。
   もう1つは、いろいろな観点で参加している関係各極が、いろいろな観点で食い違うところも、予算の事情等々あるんですけれども、それを乗り越えて、そういう建設的なステップに、前に出たということは意義があろうかと思っております。

 井口委員長 

   新聞情報なんかによりますと、つい最近まで、NASAが強硬に反対していたというような印象を受けたんですけれども、パッと変わったというのは、ロシアがこういう条件をつけたということなんですか。何がかぎなんですか。

 宗永宇宙利用推進室長 

   新聞に出る部分と、実際の中身は、この結果を見ていただければわかりますように、ロシア側にも幾ばくかの制約がつくと。NASA側も、従来予定していた部分をやめてサポートに回るという、ここら辺のかけひきというか、調整のプロセスというのが実質的に行われた。一番大きく変わった部分は、恐らくロシアとアメリカの間では、各論レベルではいろいろな議論があったんだと思いますけれども、先週末になって、ロシア側から、こういうようなことを考えるのでチトーさんの飛行を認めてもらいたいという建設的な提案があったと。これが大きなトリガーになったのかなという気がしています。

 井口委員長 

   ほかにいかがでしょうか。

 栗木委員 

   先ほど、軌道上でもってクルーから直接ブリーフィングみたいなことを受けるというお話でしたけれども、クルータイムというのは極めて貴重で、時間単価で行くと数億円とかいうような話だったですね。しかも、ロングスパンの、日本に割り当てられたクルータイムが余り十分でないとかいうようなことを考えると、そういうことに使うというのはどういう形で合意されたんでしょうかね。

 宗永宇宙利用推進室長 

   まず、クルータイムのカテゴリーといたしまして、利用の部分というのとオぺレーションの部分、運用の部分というのがありまして、各極が活用できるというのは利用の部分というのがある。当然のことながら、現在、組立期間中ですので、運用のクルータイムということで、これは別にだれのものということではなくて、みんなでやると。ただ、おっしゃられるとおり、今回予定されているチトーさんの滞在は数日間でございますけれども、予定されていた作業の一部が実施できなくなる。これをどういうふうにしてカバーしていくかというような議論というのはありますし、引き続き、かなり事務レベルでは米ロ間での課題も含めて議論されるのかなという側面もあります。

 栗木委員 

   それからもう1つ、安全面という安全なんですが、これは御本人の身に及ぶ安全と、それから御本人がいることによって周りに及ぼすインパクトと両方含んでいる安全。

 宗永宇宙利用推進室長 

   そうです。

 井口委員長 

   よろしいですか。
   ほかにいかがでしょうか。ございませんか。
   どうもありがとうございました。
   それでは、その次に、経済産業省「我が国ロケット産業の発展に向けた基本的方向について」ということで、航空機武器宇宙産業課の宇宙産業室課長補佐の吉澤さんにお話をいただきます。よろしくお願いいたします。

 経済産業省航空機武器宇宙産業課宇宙産業室(吉澤課長補佐) 

   吉澤でございます。本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
   それでは、お手元の16−3−2と16−3−1を用いまして説明させていただきたいと思います。
   まず、報告書自体の16−3−2の方の表紙を見ていただきますと、今、委員長から御紹介ありましたとおり、「我が国ロケット産業の発展に向けた基本的方向について」ということで、ロケット産業あるいは商業ロケットの面から見た場合の今後のあり方といいましょうか、政策の基本的な部分をここでまとめたというものになってございます。
   1ページあけていただきまして、裏の部分でございますけれども、本報告書の位置づけといたしましては、(注)の部分でございますけれども、平成11年度及び12年度にかけて当省が社団法人日本航空宇宙工業会に対して作成を委託したものでございます。その同工業会の中に設置されました「次世代商業ロケット産業調査委員会」という委員会において取りまとめられたものになっております。
   さらに、1ページめくっていただきまして、名簿が載ってございますけれども、広島工業大学教授の中山勝矢先生に委員長になっていただきまして、各メーカー、衛星メーカーですね、こういったところと、あと宇宙科学研究所の教授などに委員になっていただきまして取りまとめたものでございます。
   中身につきましては、A3横の16−3−1の方で御説明させていただきたいと思います。
   本報告書は、第1章から第4章までに分かれております。
   まず第1章「ロケット産業の歴史と現状」ということで、現状分析をしている部分がございます。4つ箱がございますが、左の上の方の箱、まず「商業ロケットの需給分析の開発の趨勢」を論じております。
   世界的に見ますと、今の商業ロケットの状況については、一般的に見ますと、潜在的な供給可能数、供給できそうな、メーカー側で供給できる数、量が、よく言われている需要を上回る傾向で今後10年間推移する可能性が、大型でも中型の場合でも高かろうということが分析されております。したがいまして、国際市場においても非常に厳しい競争が今後行われるのではないかという現状認識がまずございます。
   このため、商業ロケットの開発につきましては、今よりもさらに一層「高信頼性」あるいは「低コスト化」、さらに顧客が望む時期に打上げられるという意味での「打上げ時期の柔軟性」、こういった要素を追求する動きが非常に顕著になっているということでございます。
   例えば、例といたしましては、アメリカでご案内のとおり、新たな新型の使い捨てロケットであるEELVと申しておりますものが、さらなる低コスト化と高信頼性を目指した開発を今行っているというところでございます。
   さらに、欧州について、アリアン5が数年前にデビューしたわけでございますが、それもその次の2010と言っておりますが、次世代の構想が既に動き始めてございまして、例えば今のアリアン5のコストを30%減、トランスファー軌道に15トンなどという、相当意欲的なプログラムを次々と打ち出してきているといったようなところが現状でございます。
   さらに、右の方の箱に移ってまいりますと、商業ロケットの場合には、そういう実際の機体といいましょうか、技術的な側面のみならず、マーケティングという事業面が今非常に重要な要素を占めております。ここに書いています、単にロケットの打上げ能力や重量単価のみならず、お客様、打上がる方ですね、顧客からの要求を総合的に満足させることができるロケットが、世界的に見ましても、競争力を有する傾向が顕著となっております。
   例えば、一番大きいところでは、その顧客に対するファイナンスという、要するにお金でございます。例えば資金の貸付であるとか、あるいは衛星のプロジェクトに対する投資であるとか、こういったものを、打上げ契約をとる見返りとして提供していかないとなかなか契約がとれないといった状況がございます。
   アリアンスペースなどは、子会社を設けて貸付を行っているというようなこともしておりますし、ボーイングなどがこの辺に非常に積極的でございまして、スカイブリッジが、動くかどうかわかりませんが、スカイブリッジであるとか、エリプソとかいうプロジェクトがあるんですが、こういったところに出資して打上げ契約をしているというようなことがございます。
   さらにもう1つの特徴といたしましては、世界では非常に国際的な連携、アライアンスというのが非常に進んでおるところでございまして、この例には非常に事欠かないわけですが、例えば1つとしては、ロシアの宇宙資産、例えばソユーズであるといったものについて、アリアンスペース社が出資したスターセンという会社が運用を行っているとか、あるいは、ロシアの余剰ICBMであるSS19、こういったところをドイツの会社が買い取ったりとか、そういった動きが非常に強くある。あるいは、先ほどちょっとお話があったシー・ロンチ社はそれの先駆けということになろうかと思いますが、こういったアライアンスの動きが非常に多うございましたし、さらに最近も続いているということであろうかと存じます。
   そして、そういう中で、左側の下の箱の「民間の役割拡大への動き」ということで、先ほどもちょっとお話があったかと思いますが、諸外国においては、引き続き開発面では政府がロケット開発を推進するという責任を持ちつつも、実際の開発あるいは運用、打上げですね、こういったところにおける主体というのは、民間が相当その役割を果たしてきているという状況であるかと思います。
   これは、いろんな例があるわけですが、例えばアメリカのデルタ3、アトラス3、これは先ほどのEELVへのちょうど移行期に当たる間のつなぎのロケットに当たるわけですが、こういったものについては民間の方で主体的に用意をするということ。あるいはアリアン2010、アリアンロケットについては従来からCNES、ESA、こういったところの国側が中心に開発してきたという経緯でございますが、その次期開発については、当初からアリアンスペース、この事業体が、一応企業でございますが、こういったところがCNESと共同開発チームをつくって推進していくといったような体制も見られるところでございます。
   右側の「各国の支援策」のところでございますが、若干申しましたが、あとはやはりロケットというのは相当リスクが大きいということもございますので、欧米においては、民間による商業の打上げ事業に対して手厚い制度的な支援策を講じているというところもございます。
   例えばアメリカで非常に顕著なものといたしましては、アンカーテナントあるいは国産のロケットを優先的に利用しようという、ある意味での原則の明確化、あるいは射場の施設などを比較的自由に使わせるといったポリシー、こういったところがあろうかと思います。
   さらに、そういう制度的な支援策に加え、やはりアメリカも含め各国政府の支援策の中核は引き続き開発費用、お金という面で国が相当面倒を見て支出しているということでございます。
   例といたしましては、これは予測、推測の面も入っているわけでございますが、アメリカのEELVについては、ボーイング社、ロッキード社それぞれ5億ドルというふうに言われております。アリアン5については、近年開発は終息しつつありますが、83億ユーロという非常に巨額が入っているという話でございます。
   こういう状況を踏まえた上で、第2章といたしまして、「我が国独自のロケット開発の必要性」、ここは我が国というのは必ずしも政府ということではないわけでございますが、国として独自にロケットをやはり持つ必要があるという必要性を整理している章でございます。
   まず1つ目は、もう言わずもがなでございますが、ロケットはやはり宇宙へのアクセスを確保するという宇宙活動の中核となる手段である。この宇宙活動を進めていく上で、国家として確実に保有し、維持していく資産であるという点を明確に位置づけております。
   さらに、ブレークダウンして、ロケットの意義として5つほどここで整理をしておるわけでございます。
   1つとしては、先ほどもお話がありましたが、宇宙空間でさまざまな商業利用の活動が今後広がると思われる中での低コストな輸送機関としてのインフラとしての位置づけ。
   さらにAが、国のそういう宇宙開発、こういったものを他国に依存せず、幅広くかつ自由に自在に行えるという意味での宇宙開発を推進する手段としての位置づけ。
   さらに、ロケットといいますのは、従来から非常に厳しい要求を与えてきたということもありまして、その材料などを含めた産業を技術として高度化してきたという意味において、我が国産業全体を高度化していくという意義。
   それからもう1つの意義といたしまして、安全保障上の意義、これは2つほどございますが、1つは、やはり技術的な安全保障、すなわちロケット技術の特殊性から、なかなか各国から、おいそれと技術としては自由に移動できない。そういった面で、技術を維持し、育てていくことが必要という意義と、それから、もちろん情報収集などございます。そういった国家安全保障上必要な衛星を上げる技術の手段という意味においての安全保障。こういう2つの意義がございますが、いずれにせよ安全保障上、重要だということでございます。
   さらに、5つ目として、他国との国際協力のツールとして重要ということでございまして、他国の衛星をもちろん打上げるという意味もございますが、ロケット開発において、アライアンスなり、あるいは共同開発といったところで結びつきを強めていくという意味もあります。
   こういった5つほどの意義を整理した上で、このようなさまざまな側面からなる多くの意義を有するロケットは、技術立国たる我が国の国益にとって極めて重要な技術分野の1つであるということを明確にしている。したがって、こういったところから、やはりロケットは我が国の重要技術として確保していくことは強く求められるものであり、切れ目なくロケットを保有すべく計画的に開発を進め、これを維持していくという営みが必要不可欠であるということを整理しているわけでございます。
   さらに、そういったロケットの必要性を踏まえた上で、では、第3章、我が国ロケット開発というか、ロケット産業自体として、どういう現状と課題があるのかというところを書いているわけでございますが、3つほど箱がございまして、まず1つ目が、「商業化戦略及び重点的なロケット開発思想」、こういったものが必要ではないかということで、それぞれについて従来のロケット開発という考えと今後の課題ということで整理をしているわけですが、「従来のロケット開発」の1つとしては、我々が言うべきことかどうかわかりませんが、いずれにせよ開発すべき技術内容自体といったところを非常に重視してきた。その結果、打上げのビジネスというものも当然視野に入っているわけでございますが、いわゆる開発された、でき上がったロケットを前提とするというところが、どうしてもそういう手法を採用せざるを得ないという状況。
   これに対して、「課題」といたしましては、もっとそういうマーケットリサーチの側面を強く打ち出して開発から当たっていくということが重要ではないかということで、正確な供給予測及び需要予測、それらに基づいた開発目標時期、すなわち市場投入時期でございますね、それと、そこで市場競争力を持てるであろう打上げ能力、価格等を明確に設定していくという手法。それに加え、こういった設定目標を達成するために、開発の諸方面でも必要な外国技術の活用も含め、あらゆる手段を、かつ迅速に採用していくという計画的な開発の思想を持って進めていく必要があるのではないかということ。
   さらに、先ほど申しましたとおり、技術開発の側面のみならず、当初からこのロケットをどういうふうに売るんだという意味において、将来商業的に成功させるためのマーケティング上の手はずも初めからとっていく必要があるのではないかという点でございます。
   こういう基本思想に基づき、それぞれ個別の分野といたしまして右、左に個別の課題を挙げているところでございます。
   1つ目が、「技術基盤の構築による信頼性向上」ということで、従来のロケット開発としては試行錯誤の対象を絞り込みつつ最先端科学技術を迅速に追求するという色彩が強かったために、必ずしもすべての分野で十分技術的に成熟しているとは言えない。また、周辺技術の習得や基礎データの蓄積といった幅広い技術基盤が十分に構築されていないということで、ここは特別会合でも御指摘のあったところですが、さらなる信頼性技術基盤構築に向けた取り組が必要ということ。
   さらに、重要な点として,「国際競争力強化の必要性」ということで、従来としては世界最高水準の科学技術の達成を目指して努力してきたが、一方で、先ほど言いました「低コスト化」、「打上げ時期の柔軟性」、それと開発スケジュール、市場投入時期の厳守といった商業ロケットとして、非常に重視される点について十分ではないということで、「課題」としては、コスト低減、打上げ時期の柔軟性の確保を重視した取組を進めることによって、商業打上げ実績をとにかく重ねていくことが重要であろうと思います。
   ちょっと時間が長引いておりますが、第4章といたしまして、「我が国ロケット産業の今後の対応方針」ということで幾つか述べさせていただいております。
   1.で書いております「官から民へのパラダイムシフト」と若干大仰に言っておりますが、ここは使い切りロケット分野について、このような考え方で考え方を転換していったらいいのではないかということで書いております。
   左が、従来のパラダイムといいましょうか、考え方。右が新しい考え方ということで、従来、専ら政府衛星の打上げに必要なロケットという観点から、政府が我が国のロケット開発計画を一括して立案し、技術開発目標や打上げ能力等を設定していた。これに対して民間企業に業務を委託しながら、みずから主体的に政府が技術開発を指揮し、取りまとめ、その成果を民間に移転。そして、民間企業はその成果を用いて打上げビジネスを開始するということでございましたが、今後、そういう中で、民間が主体となった対応が必要かということで、1つが、商業市場参入を明確な目的とした産業界の商業化戦略及びそれに基づく開発あるいは運用計画を民間自身が持つ。
   さらに、民間企業がそれを健全な競争を展開しながらということでございますが、やはり政府の資金負担、基盤整備、こういった支援策を得ながら、より主導的にスピーディーな開発を推進していくということが必要。
   これによって、民間企業における信頼性あるいはコスト競争力というものが保て、商業市場参入という我が国の目標が達成できるのではないかということでございます。
   2.が、その中での政府の役割をもう1回整理すると3つほどあるということでございまして、1つが、資金負担、やはりリスクが高いということで、民間が立案するロケット開発・運用計画に対して、各々の政策的観点を十分に相互連携させる形で、開発リスクの高い部分を中心に資金負担による支援を行っていくことが必要であろうというのが1つ。
   さらに、こういう資金負担に加えまして、民主導のロケットの開発あるいは運用を進めていけるような基盤整備が必要ではないかということで、例といたしましては、1つとしては、民間への技術移転の円滑化、これは政府が作ったものを受け入れて、自分で改良していくといったことも今後必要でございましょうから、そういったことが円滑に行われるような技術移転の円滑化。
   あるいは、1つの大きな問題として平和利用原則、これについてはいろいろ議論がございますが、解釈というのはいろいろあり得る、あるいは移り変わり得るということでございまして、こういったところを常に明確化していって民間側がどこまでできるのかできないのか、そういったことを明らかにすると、民間側の需要促成というのが高まってくるのではないかという考えでございます。
   さらに、国としては、やはりロケット産業も競争を入れることによって活力が出てくるのではないかということで、各企業の開発・インテグレーション能力や技術信頼性を向上させていくためには、各企業間でやはり適切な競争が維持されるように努めることが必要ということで、これも従来から宇宙開発委員会で御議論がございましたプライム契約化の促進、あるいは企業内でもそういう設計・製造について内部で切磋琢磨しながら信頼性を高めるような組織内運用が必要なのではないかという考え方でございます。
   3.といたしまして、「今後の対応方針」ということで、次のページにわたって若干細かく書いてございまして、これを説明していくとちょっと時間がないんですが、「商業化戦略の基本的方向性」として、システムレベルと、その下のコンポーネントレベル、それからマーケティングについて基本的な方針を整理しております。
   1つ目としては、「システムレベル」では、やはり我が国が独自に競争力の源泉たるロケットのラインアップを整備・維持するという大原則が重要でございますが、それと同時に、やはり個別ロケットレベルでは、海外の打上げ会社等と幅広に協力していって、共同で販売する、あるいは打上相互補完契約、これは片方のロケットを打上げられない場合、もう片方で打上げるということで顧客を確保するということでございますが、こういった幅広いマーケティングをどんどん我が国も他国同様推進していくことが必要であろうというのが1点。
   さらに、コンポーネント、従来からその技術はあるものの、なかなか輸出が進んでいないということがございますが、我が国が得意とする技術を核として、海外にそういうロケットメーカーへどんどんコンポーネントなりマーケティングを推進する。この結果、サブシステム・コンポーネントで規模のメリット、量が出てくるわけでございますので、そういったことがシステムレベルの競争力の強化にもつながってくるのではないかという循環を作っていく必要があるのではないかということ。
   もう1つとして、重要な点としてのマーケティングはなかなか今の財政というか、景気で難しい面もございますが、顧客に対してやはりそういうフアイナンスを付与できるような資金力といいましょうか、そういうものをどうにかして我が国企業で結集していかなくてはならない。
あるいは衛星の会社とうまく結びついて、打上げサービスと衛星を売り込んでカップリングさせてマーケティング活動を展開していくような考え方も重要ではないかということを述べた上で、さらに規模別で、じゃあ、どうかということでございますが、大型ロケットといたしましては、当然ながら今H−2Aがあるわけでございますが、仮に先といたしましても、H−2Aの標準型の次といたしましても、やはりさらなる能力増強を図って、静止衛星のダブルロンチ能力の獲得、あるいは一層の低コスト化を図ることによって重量単価を引き下げていくということが必要。あるいは、非常に客先ニーズが多様化してまいりますので、こういったものに的確に対応できるような品ぞろえというものがやはり必要ということで、H−2Aのロケットの増強型の方についても早期に市場投入し、さらにその先もさらなる打上げ能力を有する大型ロケット、あるいは運用コスト低減をねらった一部部分回収型のロケットみたいなものについても検討する必要があろうということ。
   それから、中小型ロケットについても、今、日本では余りないわけですが、ここの需要側の非常にさまざまな要求に対して、幅広く低価格でこたえられるようなサービスを提供できる、こういったものは派生とか増強が簡単でございますが、こういったものに展開可能な商業用の中小型ロケットの開発も検討する必要があるのではないかといった点。
あるいは、開発思想といたしましては、他産業において培われた、あるいはこれまでのロケット開発の成果によって我が国が優位性を発揮し得る技術分野に重点を置いた開発遂行ということで、日本の素材産業は強みがあると言われておりますが、あるいは情報技術、こういったものを活用して競争力を高めていく。
   ただ、その他の技術分野については、先ほども申しましたステージレベルも含め、幅広い国際連携を図っていって、あるいは我が国の既存ロケットの設計などもふんだんに活用することによって、低コスト化、信頼性を確保するという考え方が必要であります。
   長くなりましたが、最後のページを若干簡単に申し上げますが、左側が技術基盤、信頼性向上の具体的な考え方、右側が国際競争力の強化ということで、簡単に中身だけ申しますと、まず1つは、「企業の技術基盤の維持・向上」が必要ということで、これも特別会合の方で御議論ございました基礎技術あるいはデータ、こういったところの蓄積を効率的に高めていくことが必要ではないかというのが1点。
   さらに、従来から、余り我が国企業が経験を積んでいないシステム設計・インテグレーション、こういったものを情報化基盤を整備することなどによって信頼性を高めていくことが必要ではないか。すなわち、設計インターフェイスの透明性あるいは解析精度の向上などをねらっていくことが必要ではないか。
   さらに、「信頼性向上に向けた商業用改修等の実施」と書いてございますが、これまでに政府が蓄積してきました技術開発成果を受けて、もし仮に信頼性の維持・向上をさらに図るという必要があるとすれば、これを民間が主体に改修なり追加試験を実施していくことが必要ではないか。
   1つとしては、技術的な成熟度が低いと思われる部位については、事によっては設計の見直し、さらに信頼性向上改修ということで、推力を下げて燃焼圧を低下して若干設計の厳しさを緩和してあげるといった考え方などでございます。
   最後に右側、「国際競争力強化」ということで、先ほど言いましたシステム設計・インテグレーション、これをもう少し効率化を図ることによって、低コスト化あるいは開発期間の短縮を図れるのではないかということ。
   それから、要素技術レベルでも低コスト化に向けた開発を進めることがあるということで、幾つかのアイデアを書いてございますが、いずれにせよ海外の幅広いロケットとのコンパティビリティを念頭に置きつつ、低コスト化の開発を進めることが必要であろうということで、幾つかのアイデアが書いてございます。
   さらに、1つ、「クラスタ技術」と書いてございますが、これは幅広い衛星打上げ需要をカバーし、弾力的にこたえるためには小型から大型まで切れ目のないバランスのとれたロケットラインアップを我が国で整備する必要があるという中で、既存のロケットのステージあるいは固体モータといったサブシステムを共通に使っていって切れ目のないラインアップを作っていく。こういったものを計画的に能力向上を図っていくことで、計画的な低コスト化競争力維持というのが図れるのではないかという考え方があろうかと思います。
   さらに、3つ目、射場の問題がございます。これについては、さらに効率的な打上げシステムの整備ができないか。これは、例えばロケット機体あるいは射場設備の自律機能の向上あるいは自動化、こういったところが図れないか、今やっていらっしゃると思いますが。さらに、空港、これは若干緩和されてきましたが、インフラ整備が必要。あと、打上げ時期の自在性といった問題が従来からございます。こういったところをどうするのかという問題。
   そして、最後の項でございますが、需要側でも何らかのことをやはり考えなければいけないという声が強うございまして、政府需要の下支えという点がやはり重要ということで、政府は、商業ロケット需要の一定部分を占め得る衛星需要に係る方針、例えば国産ロケットの優先利用等というものを本当に明確にできるかどうかですが、こういったものを明らかにして民間における予測可能性を高めていくことが必要。
   さらに、政府が中長期的な確度の高い宇宙開発計画を策定し、提示していって、それに基づいて民間側がロケットのビジネスをやっていくというようなことができないか。
   さらに、政府としては、さらなる本格的な宇宙利用促進に向けた取組をどんどん行っていくことが、副次的効果でございますが、基盤強化というところにつながるという考えで、政府がやはり宇宙開発自体に需要側でもしっかり取り組む必要があるというところで、最後を締めくくっている報告書でございます。
   若干時間も過ぎてしまいまして、大変恐縮でございました。とりあえず、私からは以上でございます。

 井口委員長 

   どうもありがとうございました。
   御質問、御意見いかがですか。

 五代委員 

   21世紀新時代に向かってのロケットの開発あるいは発展に向かって、非常によくまとめていただいたと思っております。いいまとめだと思っています。
   それで、産業にポイントを置いておりますけれども、実は産業が発達しないと、技術の方も脆弱になってしまう。そうしますと、例えば科学ミッションとか、そういうものに対しても基盤が弱くなるということで、これは産業、技術、サイエンスすべての宇宙活動のもとになりますので、こういう方向あるいはそこに出ているいろんな課題ですね、これは今後多いに議論して解決していかなければならないものだと思っております。
   幾つもなかなかいい点がございますけれども、その中で、1つ柔軟性というのがあるんですが、これは日本のことよりもむしろアメリカあたりのことを言っていると思うんですが、アメリカの射場では、民間はよっぽど柔軟性があるかというと、実は彼らはないと思うんですね。やっぱり政府、軍、そういうものの制約があって、我々から見たら「すごく柔軟ではないか。別に打上げの時期の制約もないし」と思っていますけれども、ビジネスから見ると実際には、飛行安全も含めて、必ずしもいろんな規約等でなかなかビジネス時代にはそぐわないと思うのです。そういう点から見ると、日本はもう1つ、2つ遅れて、そういう点も考えねばならないかなと思っております。
   いいレポートで、ありがとうございます。

 井口委員長 

   ほかに。

 栗木委員 

   1枚目の冒頭あたりのお話の中に、国際的なアライアンスあるいはグローバリゼーションと私は理解しましたけれども、そういう状況下に置かれたときに、ここでは「技術立国たる我が国の国益」とも書いておられますけれども、問題は、グローバリゼーションと基盤技術の国にとっての確保というものは、極めてうまくバランスをとらないと難しいのではないか。特に、技術導入というのは、場合によっては技術購入になってしまって、金だけは出ていくけれども技術は残らないというようなことがあると、これは何のために政府が国費を投入するのかという議論にもなりかねませんので、どこがどういうぐあいにしてそのかじ取りをするのか、そこの難しさではないかなという気がするんです。
   それは、まあ企業、お任せでよろしいのか、それともやはり国としては何かガイドラインを作っていかれるのか、そのあたりはどういうふうに……。

 経済産業省航空機武器宇宙産業課宇宙産業室(吉澤課長補佐) 

   国として、そういう企業の活動方針について、話すというのはなかなか難しい点がございますが、この報告書の中で重視しているところといたしまして、システムインテグレーションという言葉が随分出てまいるわけでございまして、今のロケットビジネスでも、もう部材みたいなものはとにかく何でも買ってきてもいいと。ところが、やっぱりそれをシステムとして組み立てられる能力というところが、これはだれにも教えてもらえないし、長年の蓄積が必要な部分でもございます。特に商業ロケットになると、それを安く、しかし信頼性高く作り上げていくというノウハウというのはなかなか得がたいものでございますので、こういったところをまずはしっかり確保するということが大前提であるのではないかという考え方のもとに、この報告書は書かれているところだというふうに理解しておりまして、そういったところについては、民間企業もそういう考え方でこの委員会の中に入ってまとめていただいているのではないかと思いますので、我々といたしましては、そういう取組を進めていただければなというふうに思っているところでございます。

 栗木委員 

   私、けさの新聞を読みまして、三菱電機の谷口社長が、「100メートル競争をするのに自分は50メートルまでしか走り切る余裕しかない。あとの50メートルは、自分が体を鍛えて100メートルに臨むのか、それとも、残りの50メートルはだれか外国から助けを借りてでも100メートルの最前線へ出なきゃいけないのか」そういうようなことを書いておられたんです。自分がその50メートルのところにいるのか、30メートルのところにいるのか、いろいろ難しいところがあると思うんですが、その戦略というのが、やっぱり一番この紙面を読んでいて、バランスのとり方の難しさかなとちょっと感じたものですから。

 澤田委員 

   こうあればいいなということなんでしょうけれどもね、いつ本当にどうなるんですかねというのが一番の課題だろうと思う。本当に民間企業自体がしっかりしてきてくれなければ、なかなか日本のロケットは上がらないねというのが現状なんだろうと思います。
   いろいろ御議論の中で、民間企業も宇宙ロケット開発について、商業ロケット開発についての意欲というようなものは持っているなというふうにお感じになったのかどうなのか。それを持たせるためには、国から金が欲しいというのが、金があればだれでもやるのかなという話も1つあるけれども、いろいろな議論の中で、現状の民間企業から見て、こういうふうにしてもらいたい、こうすれば我々は元気が出て、こういう方に向かって頑張れるんだというようなことについて、ここに出てこないいろいろな議論があったんではなかろうかと思うんですが、もし、それを紹介してもらえれば……。

 経済産業省航空機武器宇宙産業課宇宙産業室(吉澤課長補佐) 

   我々、オブザーバーの立場でございますが、ただ、私がいろいろ聞いている範囲で、そういう民間が自主的に取り組まなければならない意欲、こういったものは当然おありになられるというふうに思います。
   ところが、やはりどうしても下支えする政府需要といったものがしっかりとしてある部分があって、それで事業の見通しというものが立てばやりますよということだろうという、鶏と卵の状況がございますが、そこを何かうまく変えていって連携をとって、歯車をかませ合いながら向かっていくような形にすれば、今おっしゃられたとおり、民間も走り出せるのではないかなというような感触を議論の中で私としては感じたところでございます。

 井口委員長 

   ほかにいかがでしょうか。

 澤田委員 

   鶏と卵でいつもじっとしていたら困るんだけれど。

 長柄委員 

   この報告書を見て、経済産業省などは何かこう、この方向に新しい施設がどうされているのか、また企業も、このロケット産業界の方も、本当に口あけて走るのかなと若干疑問があるんですけれども、例えば政府需要の提供というようなことで、宇宙開発事業団あたり、自分の衛星をというのはもちろんありますけれども、何か経済産業省の方で政府需要を提供するために何かやろうかとか、何かそういうものはございますか。

 経済産業省航空機武器宇宙産業課宇宙産業室(吉澤課長補佐) 

   そういうふうなところというのは、これは我々で、もちろんすべてできるとか、そういうふうな考え方で書いているところというわけでは必ずしもございませんで、今まさにお話し申し上げたとおり、宇宙開発事業団なども含めて御協力を仰がなければいけない面というのは多々あろうかというふうに当然思ってございます。
   したがって、我々ももちろん宇宙開発を進めていくという立場でやっていきたいというふうに思っておりまして、そういったところ、今すぐ何ができるかという、なかなか申し上げにくいところもありますが、前向きに取り組んでまいりたいということ。
   それから、13年度といたしましては、このロケットのシステムインテグレーションの信頼性向上あるいは効率化を図るための情報化基盤整備ということで、昨年の検討調整部会の御報告をさせていただいたということがございまして、この報告書を一応受けて始まるという形になっております。
   そういったものをとっかかりとして、我々としても前向きに取組を進めてまいりたいというふうに存じております。

 井口委員長 

   今、我々のところでNASDAの基本計画を議論しておりまして、私の感じでは、この中のかなりの部分は取り入れることになるんではないかという気がしています。
   ただ、文部科学省ですと、きょうお話を伺ったものよりは多少技術開発の方にウエイトが寄るかもしれません。しかし、実用化だとか産業化というのは、そちらの方向にもベクトルを向けていくという方向での議論が今されております。
   例えば、ここで商業化となると、今度はこれは経済産業省の方がお得意の分野かもしれません。いずれにせよ、宇宙開発に関しては、文部科学省、きょうお話を伺った経済産業省、それから総務省、国土交通省、そのほかもまだあるかもしれませんけれども、環境省もありますかね、関係する省庁がたくさんあるわけですから、それらが連携して、かつ分担することもあると思いますし、さらに省庁間の競争があってもいいと思うんです。
   私、経済産業省も参加しておられましたけれども、カーナビだとか、今、自動料金収受のETC、全部集めてITSと呼ばれていますけれども、あれを10年ぐらい一生懸命仲間と一緒に立ち上げてきたんですが、5省庁、今はもう国土交通省と幾つかが一緒になりましたから少なくなっていますが、確かに一本化した方が効率がいいというところはあるんですが、方向を間違えると、とんでもないところに行っちゃう可能性があるんですね。多省庁が担当していると、どこか1省が間違えても、ほかの省庁が正しい方向へ向けるという機能もあるし、またお互いに省庁間が競争するという面があるんですね。ITSなどは、その競争の面が非常にうまくあらわれて、非常に早く立ち上がったような印象を私は持っています。もちろん経済産業省はそのうちの1省ですけれどもね。
   ですから、確かに宇宙開発というのは一本化ということも求められますけれども、なかなかそれが難しいとすれば、今幾つかの省庁があるという現実の中で、連携と分担とさらには競争という面を生かして、これから大いに日本の宇宙開発を発展させることができたら、大変結構ではないかと考えておりますので、またひとついろいろ御協力をお願いしたいですね。

 経済産業省航空機武器宇宙産業課宇宙産業室(吉澤課長補佐) 

   大変ありがたいお言葉をいただきまして、ありがとうございます。頑張りたいと思います。よろしくお願いいたします。

 井口委員長 

   ほかはよろしゅうございますか。
   では、吉澤さん、どうもありがとうございました。
   それでは、その次に「「宇宙開発に関する基本計画」の策定に向けた審議について」、これはNASDAの側からの意見でございますが、宇宙開発事業団理事の斎藤さんにお話しいただきます。よろしくお願いいたします。

 宇宙開発事業団(斎藤理事) 

   斎藤でございます。
   それでは、基本計画について宇宙開発委員会の方で御議論いただいているわけですが、宇宙開発事業団の方からも何かコメントがあれば出してくださいということで、資料16−4をまとめてみました。早速ですが、ちょっと要点だけ説明させていただきます。
   2ページ目の方に、基本計画の御議論の中で、幾つか大体対比するような形でまとめようというふうにしてございますので、御参考に配付されてあります資料と対比しながら御覧いただければと思います。
   「基本的考え方」の中で、NASDAとして認識しておりますNASDAの役割とNASDAの改革の考え方につきましてそこに書いてございます。
   NASDAとしては、宇宙開発の中核機関として関係の研究機関、利用機関、それから産業界との適切な役割分担と連携のもとで、以下の3つの分野について役割を果たしていきたいというものでございますが、プロジェクトの企画立案から実施と成果の還元。
   次に、日本の宇宙開発の中核的基盤センターとして機能を発揮し、その成果を広く日本におけます宇宙開発を推進するいろんな方々に使っていただくということで、専門家による能力、次に、さまざまな情報の集約によってそれを使っていただくこと。
   もう1つは、試験とか打上げとか運用とか、かなり大きな国の投資が必要になるわけですが、そうしたものの整備と維持と提供というのが大きな柱かと思います。
   3つ目として、宇宙開発事業団におきましても、専門技術としてマネジメント技術を初め幾つかの点がございますので、そうしたものによりまして宇宙開発を牽引し、日本全体としての底上げ、また必要に応じてお教えするというのが、非常に我々としてその役割を果たしたいとして願っているものであります。
   次に、NASDAの現在の置かれております状況から、何を思って改革を進めているのかというのが3つ書いてございます。
   1つは、現在進行中のプロジェクトにつきましては、確実にそれを遂行すると同時に、技術基盤の強化に一層取り組んでいきたいということ。それから、より先に向けましては、ニーズを十分に踏まえつつ、フロントランナーとしての先端的な技術であるとかミッションの開拓に挑戦していくこと。そしてまた、得られた成果の利用の促進と、技術移転、先ほど経済産業省さんのお話もございましたが、こうした技術移転に取り組んでいくということでございます。
   3ページ目に参りますが、「事業の運営に関する基本的事項」という項目がございまして、「確実なプロジェクトの遂行」ということでございますが、まず、どういう方策をとろうとしているか、3つそこに掲げてございますが、大きくは、プロジェクトでございますので、プロジェクトを実施する体制とか方法等の強化というのが1つの柱になりますし、信頼性向上と品質保証の強化というのが2番目でございます。それから3番目が、技術基盤の形成の強化でございます。
   このほかに、事業団と企業の役割分担というのは非常に重要であると認識しておりますし、またプライム契約についても、基本計画の中で御議論いただいておりますが、その重要性については我々も認識しておりまして、衛星は既にそれに取り組んでいるところでございますけれども、ロケットにつきましても可能な限りそちらに進むべく、第一歩としてできるだけ情報が交換できるような形に取り組んでいるところであります。
   一方、事業団に置いております事業団の改革に関しますいろいろな御意見を賜る改革委員会におきまして御意見をいただいております点として、完全なスペックというのは不可能であって、NASDAからの、どちらかというと、トップダウン的なアプローチと企業現場のボトムアップ的な提案というのは両方とも必要で、それらが整合性をとれて一体となった取組というのがどうしても必要だと。先ほど役割分担の話を大分いたしましたんですが、基本的には役割分担をしつつ、全体として一体となった取組が必要だということの御指摘を受けておりますし、我々としてもそういう気持ちでもって取り組んでいるものでございます。
   次に、「サクセスクライテリア」と「リスクマネージメント」の話がここに書いてございます。この2点につきましては非常に重要だと、もちろん我々としては認識しているわけでございますが、これまでどうしても定性的になる部分がございましたので、これまでの御議論がございますように、可能な限り定量的に費用対効果、お金をたくさん投資すれば当然それなりの効果が出てくるわけでございますけれども、費用対効果との関係も含めて定量的な分析というのは当然必要だというふうに認識しておりますし、世界的にも、特にアメリカ等でもこういう動きというのは当然あるわけで、我々としては、そういう認識のもとでこういうことに可能な限り目指していきたいと思っております。
   それから次に、第3者評価の点でございますけれども、これにつきましては、宇宙開発委員会の方で指針の検討をされているということで、それを踏まえて第3者評価につきまして、さらに改善すべき点については改善していきたいと思っているんですが、第3者評価に当たりまして、評価のポイントとしては、技術の面と社会的な、もう少し投資効果という、もっと広い意味と2つの点が大きくはあるかと思います。
   事業団としましては、技術の面におきましては当然自分たちの問題ですので、それはきちっとやることとして、社会的な問題につきましては、宇宙開発委員会の方でも御検討されるという御議論もございますので、この辺につきましては、同じようなメンバーで同じようなことをしても仕方がないという面もございますので、指針と宇宙開発委員会の方のお考えを聞かせていただきながら、どこまで我々として範囲を広げるか、ということにつきましてもう少し検討していきたいと思っております。
   「人材育成・教育」の方面でございますが、人材の面で、特に専門性を高めるということは非常に重要なことと認識しておりまして、これまでもいろいろな面で御説明しておりますが、「技術ユニット制」を導入して専門性を高めるための制度を導入しておりますけれども、このほか、さまざまなほかの方法、例えば中途採用等でもこうしたものに取り組もうとも思っております。
   それから、プロジェクトマネジャーの育成の問題を御議論いただいておりますが、これまでプロジェクトマネジャーにつきましては、事業団の中では、システム技術にたけた人間の中から一番適した人間を選別して担当させてまいったわけですが、現在の置かれている状況を考えると、さらに踏み込んでもう少し体系的なをアプローチとか教育というのも実施していく必要があると認識しております。
   次に、この人材育成の中で、次の世代を支える若手科学者や技術者に対する教育という意味において、さまざまな機会を提供する教育プログラムというものも必要だというふうに、これも認識しております。
   それから、4ページ目の方に参りますが、「事業の重点化と効率的運営」でございますが、これは特に最近の置かれている状況におきまして、事業の優先順位をつけまして資源の重点配分に取り組んでいるところでありまして、こうした経営上の問題というのは、今後とも、その置かれている状況、起きている状況を踏まえてやっていく必要があると思っております。
   そのほか、「高度情報化」とか「アウトソーシング」による事業の効率的運営。それから、冒頭に申し上げましたNASDAの役割としての情報の集約と一元管理と、それを多くの方に発信して使っていただくということは当然必要なことと考えております。
   それから、「国際協力の推進」におきましては、御議論のあったような対等な立場であるとか、従来、国際協力については、どちらかというとグローバルな点の、例えば衛星ミッション等が多かったわけですが、もう少し中長期的には、ここで地域国際社会、リージョナルな問題への取組というのは重要だというふうに認識しております。
   それから、「社会との調和の強化」の中で、「説明責任」という問題もございまして、この説明責任というのは、これを当然のことながら果たさなければいけないと考えておりますし、このためにも積極的な説明に今後とも努力をしていきたいと考えております。
それから、国民の支持を得るための活動、それから関係機関との連携のもとでの、やはり説明とか普及活動とか広報活動というのは必要かと思います。
   次に、「利用の拡大と成果の還元」でございますが、やはり宇宙開発というのは利用というのがなければ開発というのは意味がないわけでございまして、利用の開拓には特に未成熟の利用の分野につきまして、十分その開拓に努力をしていきたいと思っております。それから、成果の公開、技術移転、利用というのは当然のこととしてございます。
   それから「環境保全への配慮」、これも特に宇宙開発委員会の御議論で異論はございません。
   次に、5ページ目の方に、中核的事業の進め方についてでございます。
   まず、大きく分けまして、「宇宙活動基盤の強化」という部分でございます。
   この部分は4つで構成しておりますが、まずその1つ目として、輸送系がなければ活動が始まらないということもありまして、宇宙輸送分野のH−2Aロケットの開発を事業団としては最重要課題として位置づけて、組織を上げて取り組んでいるところでございまして、このロケットを信頼性と経済性の面で実用的なものとして仕上げて、産業界への移転を進める。これは、先ほど経済産業省さんの、今後のより中長期的ないろんな課題についても整理されて御指摘されているところでございますけれども、我々としては、本格的に次のステップにどこまで進んでいくかという点が、多々検討課題が残っているということは十分認識しておりますが、現在の置かれている状況につきまして、H−2Aロケットの開発に全力を注ぐという関係もありまして、その次の輸送系について、実はここで何も触れておりませんけれども、試験機を成功させて第一歩を踏み出してから、基本的に次のステップを含めた形で、もっと整理した形で道筋を整理していきたいというふうに考えてございます。
   次に、「国際宇宙ステーション」でございますが、現在、開発の最終段階にございますが、これを確実に開発して打上げること。そして運用利用の体制を確立すること等が重要課題と認識しております。
   次に、「基盤技術」の点につきましては3点ございまして、信頼性向上に係る技術開発。これは3機関連携、3機関だけではなくて、大学、一部におきましては、当然のことながら産業界の方にも入っていただいておりますが、信頼性向上に係る技術開発をやっていくこと。
   次、2番目として、基盤技術の確保ということで、戦略的にやはり日本として必要なものについてと、それからすべてを国産とか国内でやるわけにはいきませんので、購入するものとかそれ以外のものもございますので、評価技術というのが非常に重要となってまいりますので、そうしたものに取り組んでいきたい。
   3番目として、これは我々としてもう1つの課題であります信頼性のある宇宙部品をいかに確保するかというのが非常に大きなもう1つの課題になっておりまして、世界的にも1つのトレンドとして、従来は認定部品という制度でずっときたのが、大きくそれが1つの意味で一角が崩れてきておりますので、新しい意味で、どういう形で信頼性のある部品を確保していくかというのは大きな課題で、例えばこういう形、こういうものをより確実に検証するために、MDS1とか、宇宙で打上げた実証機械等もふやしながら、かつ、地上におけますいろんな部品を評価する技術を開発しようとしているものでございます。
   4番目につきましては、宇宙活動の基盤となる施設設備及び情報化の部分でございます。これは地上のインフラはもちろんでございますが、データ中継衛星等の宇宙のインフラの部分についてもこれの中に含めて必要と考えております。このほか、ライフサイクルにわたって開発を行います情報化の環境の整備、それから情報発信のための一元化と発信のための情報化というのがこのエリアに入ります。
   それから、6ページ目に参りますが、次に「社会経済への貢献」という分野で、この分野では3つの分野が入っておりますけれども、「地球観測」につきましては、大きく2つになっておりまして、環境問題の環境モニタリングの問題と、もう1つは、よりもう少し実用的な地図作成であるとか、災害監視等の分野でございます。
   次に、通信・放送分野につきましては、政府の掲げておられます「IT革命の推進」の一環として行います先端的通信衛星の開発を通じまして、移動体通信及びギガビット級の固定通信の技術を実証していきたいという問題があります。このほか、測位に関します基礎技術の習得というものもございます。
   次に大きく3番目として、「国際宇宙ステーション利用」でございますけれども、ここに書いてございますような各分野の科学技術の分野、そしてそれ以外のより広い分野の利用の問題、そのほかに文化・教育の問題というのが大きく3つのカテゴリーから成っているものと思っております。
   次に、7ページ目でございますが、「先端科学技術への挑戦」でございます。
   まず、どちらかというと技術の面でございます。これは軌道上で実施します、例えば日本が強い光通信でありますとか、それから日本が地上の民生技術として強いいろんな計算機でありますとか、自動化とかロボット技術だとかそういうような要素技術等の、日本として得意とする分野をさらに伸ばして、国際的な面でも優位性を確保しようというものでございます。
   (2)の、宇宙科学の分野につきましては、宇宙科学研究所、国立天文台等と協力のもとで月の探査と進化の解明等に取り組んでいこうというものでございます。
   簡単でございますが、以上でございます。

 井口委員長 

   どうもありがとうございました。
   しばらく我々と議論をしてくださいますようにお願いいたします。
   それでは、御質問、御意見お願いいたします。
   基本的には大変賛成なんですけれども、1点ですね、競争原理を基本的に、なかなかそう言っても難しい問題があるんですけれども、導入することを考えたらどうだろうか。具体的にとなると、そんなにコストも資本投下の多くないものであれば、競争発注、競争公募、それから中でも、例えばプロジェクトマネージャーなどは大変魅力のあるポストにして、競争的にそれを公募するとかですね、基本的にすべてに競争原理を、まあ、すべてと言ってもなかなか現実は難しいんだろうと思うんですけれども、そういうプリンシプルがあってもいいような気が、私個人はしているんですけれども。

 宇宙開発事業団(斎藤理事) 

   企業との契約につきましては、可能な限り競争、競争でもいろんな形態があると思いますけれども、極力競争原理が働くように事業団としても努力してきたところでございますけれども、あと残っておりますのは、御指摘の事業団内での競争ができないのかという、人事面ではもちろん、ある意味では競争なんですが、それがさらにもっと透明性のある形で競争したらどうかという御指摘等があるかと思いますけれども、その辺につきましては、限られたリソースの中で今どういうふうにしたらいいかというのを含めまして、もう少し検討していきたいと思います。

 長柄委員 

   ここに書いてある基盤技術開発とか先端技術開発の欄では、大きいプロジェクトではございませんし、どちらかというと、個人の力が非常に能力を発揮するところですね、集団ではなくて。ですから、そういうところを所内公募にしろ、所外に対して公募して、いろんな大学なり企業なり、そしてNASDAの中の技術者なりが応募して、そしてオープンな場でそれを審査して、競争に勝ち残った人にその仕事を分担してもらうというふうに、やはり競争といいますか、所内公募ないし所外に対する公募によって、いろんな審査会で公平に扱うと、そこに資源を配分するというのはかなりあると思うんですね、やる範囲が。宇宙ステーションの地上研究なんていうのは、ああいうのはもともと公募になってますけれども。

 宇宙開発事業団(斎藤理事) 

   そうですね。地球観測とか宇宙環境利用については既に競争的なものになっています。どちらかというと、サイエンスというか、基礎科学技術的なところが多いんですけれども。

 長柄委員 

   先端技術開発とか基盤的な技術開発なんというのも、中の人に限らず、中にも外にも公募して、そして応募してもらうと。そういうふうなことができると思うんですね。

 宇宙開発事業団(斎藤理事) 

   そうですね、一部はベンチャー制度とかいろんな、ある意味では形態が類似かもしれないんですが、そういうのもありますし、大学の先生とか、もう少し幅広い競争というのは取り入れるべく努力していきたいと思います。

 長柄委員 

   それから、部長への昇格なんていうのは公募でいいと思うんですよね、所内公募で。それで35歳以上であることとかいって、あとはだれでも立候補しろといって、自分の業績を、私はこれだけの業績を持って、これだけのものがあるから、ですから、研究部門の部長というのと事務部のとは違うかもしれませんけれども、やはり公募というのは、人事で「ことしは部長、3人上げるよ、3人だけ合格させるよ、何人でも応募していらっしゃい」というふうなことで、みんなセミナーでもやって、自分で業績を発表させて、そこで合格した人が部長になる。役所から今までよく部長が来たりしていますけれども、ああいうのはだめになるな。だから、そういうことは非常に透明になると思うんですね、少なくとも。

 五代委員 

   競争原理というのはやっぱり非常に重要なポイントじゃないでしょうか。今人事のお話がありましたけれども、さっきの技術研究、そういうことでも、例えば7ページあたりにも書いてあるけれども、特に芽出しの研究みたいなのはお金もかからんのですよ。やはり芽出し研究というのを常に促進すると、競争的に。そういう必要があると思います。そのときに、さっき言ったように戦略をどういうふうに入れるかですけれども、余り入れても最初は難しいでしょうし、そうかといってというところもあるし、その辺は難しいところがあるんですが、その辺は皆さんも意見は大体同じだと思うんですが。

 長柄委員 

   というのは、宇宙関係というのは非常に特殊技術であるし、企業にしても研究所にしても、非常に限られた人しかいない。非常に狭い空間で、社会で仕事をされているから、外との行き来が非常に少ないというようなことがありますから、オープンにして、特に基礎研究とか基盤研究とかそういうところで、どんどん外の才能を取り入れると。

 五代委員 

   宇宙は余りクローズの問題は本当はなくて……。

 長柄委員 

   あってはいかんのですよ。

 五代委員 

   逆なんですよね。ですから、この機会に、今のような視点を入れられるといいと思います。

 栗木委員 

   特に、本格的な開発着手前、つまり今までの開発研究段階ですか、なるべくオプション検討をやるいい場なわけで、やはり幾つかの並列のシステムがオプションとして検討されるべきではないかという気がします。今後はそのフェーズアップの最終的な開発にゴーをかける前には、なるべくその前に十分なことをやるというのが基本戦略の中にも書いたことですし。できれば、どのオプションを選ぶかというプロセスもできるだけ透明にして、技術的な評価を大学の人なんかも含めて受けるべきではないかな。宇宙研の場合なんかですと、シンポジウムに必ず幾つかのたたき台をパラレルで出せということになっていまして、たたかれるというのが前提になっていますので、職員の中にはA社さんと組んで出した案とか、B社さんと組んだ案とかいうのが出てきまして、それはそれなりに競争原理が働いていたというようなことが、スケールの大小はありますけれども、なおかつ、それが、学会あるいは学会に準ずるシンポジウムで報告されるということがやっぱり大事ではないかなと思います。

 五代委員 

   サイエンスの分野というのは、割合とディベートというのが活発に行われますが、技術の分野というのは、どうしても大体読んでしまうか、わかってしまうみたいなのがあって、特にコミニティが小さいとますますその傾向が大きい。宇宙はやはりそうでないようにすべきだと思うんですね。

 宇宙開発事業団(斎藤理事) 

   衛星につきましては、どちらかというと、最初は競争しているんですが、比較的早い時期から1社というのが従来であったわけで、それを、要するにフェーズをNASDAの責任でまとめる以上、競争をできるところを広げていきたいというのは、いろんな改革委員会等でいろいろ御説明しているところであります。

 栗木委員 

   それからもう1つ、最後の7ページの科学研究なんですが、これも今のオープンにどうするかということにかかってきまして、例えば月探査等は、宇宙科学研究所の中に理学研究委員会というのがあって、そこはまさしくディベートの強烈な場で、宇宙科学研究所自身が共同利用研であるということもあって、かなり、かんかんがくがくの議論がされるんです。したがって、事業団と一緒にやるこのミッションについても、科学の中身というのは、やはり理学委員会で宇宙研の中でやる月のミッションもありますから、どっちが優先度が高いんだ。同じ文部科学省の中で2つあるミッションで、同じ理学屋さんの強烈なコンペティションの中にさらされるべきではないかなと私は思うんです。その経緯は、私はよく知りませんので、是非、今後もそういうプロセスの中で組み込んでいただければと思います。

 宇宙開発事業団(斎藤理事) 

   そうですね。宇宙科学につきましては、多分、宇宙科学研究所さんとずっと協力が続くと思いますので、そこの科学の部分については、かなりそういうメカニズムが続くと思いますけれども、いろいろとおっしゃられているのは工学のというか、技術開発の分野でも、そういう形をできるだけふやしたらという御指摘だと思います。非常に重要な御指摘だと思いますし、努力していきたいと思います。

 五代委員 

   もう1ついいですか。2ページのあたりに、NASDAはいろんな施設を作っていって使っていくというのが重要なんですが、その後の維持とか提供とありますが、この辺のところで、後ろの方に「アウトソーシング」という言葉があるんですけれども、もっと徹底的にやるとか、民間にとりあえず任す、物によっては移管できればいいのかもしれませんが、自由に使わす、独立行政法人だともっとやりやすいのかもしれませんけれども、人材もそこからほかへ回せると思いますが、そういう民間による運用、活動というような、一層ここを進めたらどうなんでしょうか。

 宇宙開発事業団(斎藤理事) 

   そうですね。どちらかというと、アウトソーシングみたいな形では進んでいるんですが、事業団の資産を丸ごと完全に任せてしまうという、おっしゃっているのはそういう御意見だと思いますが、いろんな制度上の問題もありますので、検討していきたいと思います。

 長柄委員 

   やる気になればやれるんで、アウトソーシングというと、何となく自分の今の能力が不足しているから頼むという感じがするけれど、そうではなくて積極的に頼んじゃうと。積極的に全部一元的に運用。それは1つは、宇宙運用産業といいますか、宇宙研究か、開発か、運用産業というようなものが育つという意味で、ある程度、もうめどがついたものはどんどんもう、お金は要りますけれども……。

 宇宙開発事業団(斎藤理事) 

   1点としては、宇宙通信とか追跡関係の施設で、もう既に無人化で丸ごと職員がいなくてお願いしているところもございますので、もう少し広げられるかどうかという。

 長柄委員 

   今度、宇宙ステーションもかなりの分の運用を、でき上がった後、運用しようと。だから方針として、そういう後で仕事がめどついたものは、原則として民間に運用をお願いしちゃうという原則はあるんじゃないでしょうか。

 五代委員 

   民間は、でき得ればほかの活動にもそれを使うようなビジネスを行うというようなことだと思うんです。

 栗木委員 

   3ページの真ん中あたりに、「完全なスペックの作成は不可能であり、」云々とあって、「一体となった取り組が重要」、ボトムアップとトップダウンをうまく組み合わせるということがあるんですが、1つは、これを事業団とメーカーというぐあいに読んだときに、先ほどのちょっとプライム契約のことがすうっと頭に浮かんできまして、どちら側がデザインを決めるのか。デザイン・オーソリティーはどっちなのかということが一体となったときに、逆にグレーになってしまうという危惧がちょっと感じられるものですから、そういう意味で、ボトムアップとトップダウンというのは、うまく機能すればいいんですけれども、そこを極めてクリアにしておかないとネガティブな影響が出るのではないか。
   それからもう1つは、やはり「スペックの作成は不可能であり」というのは、これはもう技術の世界では当然でして、むしろこれをやってみて結果が出たときに、スケジュールと、それからそのために費やしたコストというのを、むしろ、その次のラインにあるリスクマネージメントのところにあらかじめ読み込んでおくというのが、トータルのリスクマネージメントではないかなと、上のその不確定さというのも入れてですね。

 宇宙開発事業団(斎藤理事) 

   ここのロジックとしては、役割は基本的に分けた上で、ただ分けているだけで物事は進まない。例えばアメリカのロケットの失敗のいろんな報告書が出ていますけれども、アメリカでもいろんな方法で、どうしたら信頼が上がるかといっぱい苦労しているわけですね。口を出し過ぎたらいいか、任せ過ぎたらいいか、いろんなやり方でやって、結果として任せっきりになったら必ずしもいいという結果が出なかった、ある程度は、きちんと見えるところは見ないといけない、そういういろんな組み合わせをとらえる中で行われてますので、そこは役割は役割で分担して、トータル的に信頼とかそういう製品の質が上がるような格好をやっぱりやっていかなければいけないというふうに理解してます。
   当然、開発ですからリスクというのは残りますので、それはお互いに識別して、ここに書いてあるような形できちっとそれをフォローできるようにアセスしていって、フォローしてモニターして対策をとる必要があると思っていますけれども。

 栗木委員 

   ネガティブな方にとりますと、先ほどのように、どこに責任があったか、あるいはどこにオーソリティーが存在したか。

 宇宙開発事業団(斎藤理事) 

   これは、あくまで上に書いたことが前提としてと、そういうことだと思います。

 栗木委員 

   もう1つ、それを前提としてということになりますと、やはりトップダウン自身の指示を与える、あるいはそのデザインを決めるというような責任者というのは、やはり製造現場というのをかなりよく知っている人じゃないと図面が書けない、と思うんですね。そういう体制が、やはり企業並びに事業団の中に必要ではないかなと。そこではないかなと。デザインを決める人というのは、やはりかなり先々の作業まで知っている人ということを是非プロジェクトマネージャーのアサインメントあたりで励行していただければと思います。

 澤田委員 

   この文章にいろんなものが混じっていると思うんですね。重点化だとかあるいは競争の話とか、アウトソーシングとか、あるいは職員に対するインセンティブをどうするのかとか、そういうことについて、私も事業団の実態運営というのがよくわからないんですが、やはり特殊法人ということでいろんな制約があるんではなかろうか。だから制約のある中で、それをやれということを言ってるのでは、私は、余り期待できないのかなという気がするんですよ。したがって、皆さん方で実際、運営に当たって、ここをこういうふうに直さないと、我々は手足を縛られただけで、言われるだけ言われたって動けませんよという部分がかなりあるのではなかろうかと。
   ですから、むしろ私は、きょう期待したのは、皆さん方がこうやりますと、ほとんど似たような文章で出てきているだけではなくて、これをやれと言うんだったら、ここをこうしてくれとか、そういうような要望というのが出てきて、それをサポートする意味でのこの基本計画というならば、私は意味があるのかなという気はいたします。今回すぐいきなりということには間に合わないところもあろうかと思いますけれども、是非そういう、今までの枠の中での「こうですよ」ということではない形のものを是非ひとつ御提案いただければと思います。

 長柄委員 

   私ども、理事長が自由裁量がかなりあるなんて言ってはいますが、建前はそうなっていますけれども、実際は何かやると新聞あたりは、裏金だとか何とか言って、こわがってしまうと。あれ、裏金でも何でもないんだけれども、とにかく世の中は悪いことをしたというようなことで、給料なんかは、別に裏金でも何でもなくて、ああいう仕組みになっているんですね。ああいう仕組みになっちゃっていて、それは仕組みが悪いのかというようなことでですね。

 澤田委員 

   だから世の中に通ずるような形で運用できるようにしてやらなければいかんですよ。

 長柄委員 

   非常に口で言うのは易しいんですけれども、実際はかなりの制約があって、ああいうことをしないとうまく運用できないということになっているわけです。

 井口委員長 

   行政改革が行われつつあり、特殊法人も何か検討の対象になっているというときですから、チャンスなんですね。予算制度、人事制度、給与制度、私、今のままじゃだめだと思うんです、はっきり申し上げて。そのあたり、ひとつ澤田委員から大変貴重な的確な御意見をいただきましたので、そういう御意見いただきたいと思います。
   それから、我々、2度ほど基本計画について議論したんですが、斎藤さんはおいでにならなくても、多分どなたかから伝わっていると思いますが……。

 宇宙開発事業団(斎藤理事) 

   はい。うちのこれを担当している者が……。

 井口委員長 

   何かそれに対する意見、反対とかございますか。

 宇宙開発事業団(斎藤理事) 

   ここで対比して見ていただくと、細かいところではちょっとずつニュアンスが違うところがありますが、大筋では、いろいろとこれまでの意見を出させていただいたりしていますので、そんなに大きなずれはないというのが今の我々の見解です。

 井口委員長 

   我々が一番心配していますのは、組織というのは、つぶれるメカニズムがないと、どうしても安易になるんですね。
   私も6年前まで大学におりまして、しかし、大学も今や学生数が少なくなりましたから、競争原理でうっかりするとつぶれつつあるところがあるんだろうと思いますけれども、その後、自動車産業に行きまして、これまた極端に、もう幾つかつぶれているわけですからね。ですから、もちろん真剣さが違うんですね。
   その点、NASDAは、申しわけないですけれども、予算もちゃんと与えられるし、つぶれる心配はないし、その中で緊張感をどうやって高めていくかというマネージメント、これはやっぱりさっき申し上げた競争原理も含めてアクティブに考えていかないと、難しい感じがするんですね。もっとも自動車産業のような、余りにも厳しい条件というのはいいのか悪いのか、余りにもひど過ぎるよということは言えるのかもしれませんけれども。

 宇宙開発事業団(斎藤理事) 

   多分、世の中の言われている厳しさというのと、我々の中で、確実にプロジェクトをこなすための苦しみというか、厳しさというのは、多分なかなかそこはうまく表現できていないとかいろいろあるんだと思いますけれども。

 井口委員長 

   それからもう1つ、ちょっと話が飛ぶんですが、経済産業省の方で、ロケットラインアップの整備とか、いろんな種類のロケットを持つということが望ましいだろうと思うんですけれども、例えば自動車で言うと、フルラインメーカーと言いまして、小さい安い車から高級車まで全部持つというのが自動車会社の理想なんですけれども、小さい会社はそうはいかないんですね。まさしくNASAはフルラインメーカーかもしれないけれども、日本は1車種か2車種ぐらいしか作れない可能性があるわけですね。そういう条件の中で、日本独自の道は何かという課題があります。これを見ると、基本的にはNASAと変わらないかもしれないんですね。

 宇宙開発事業団(斎藤理事) 

   ここで申し上げたのは、少なくとも1つは基幹ロケットを持っていないとどうしようもないという、それが1つ。

 井口委員長 

   だから、その1つというのは何なのかという。

 宇宙開発事業団(斎藤理事) 

   今、少なくとも、H−2Aを仕上げることに全力を注いでいると。では、ずっと永遠にそれかというと、当然そうではないと認識しておりますので、それなりの研究とか検討というのは並行してやっているわけですが、そこを見極めるのには、もう少し今のロケット技術の、まさにエンジンであるとかいろんな、いかに仕上げるのが難しいかということを今実感しながら、それを乗り越えようと努力しているわけですけれども。

 井口委員長 

   ロケットだけじゃなくて、衛星とか。宇宙開発というのはいろんな部分がありますね。その中で、日本はすべてができるわけではなくて、どの道を行くんだというあたり、我々も考えなければいけない課題なんですけれども……。

 宇宙開発事業団(斎藤理事) 

   これはもう我々としても考えておりますけれども。

 井口委員長 

   ほかに何かございますか。

 長柄委員 

   今のNASAがリンゴや夏ミカンみたいにやっているとすると、日本はイガグリみたいに、全部がソリッドになっているわけではなくて、ところどころが飛び出しているという姿だと思いますね。ですから、イガグリみたいに、飛び出しているところは高いレベルだけれども、しかし間がいっぱいあると。これ、やむを得ないと思うんですね。イガグリでも球の形のイガグリなのか、4分の1のイガグリなのか、そこらあたりはあるんですが、今のところは一応丸いような形のイガグリを考えているわけですね。

 宇宙開発事業団(斎藤理事) 

   そうですね。

 長柄委員 

   地球観測は一切やらないという選択もあり得るんだけれども、地球観測の中でも地球環境監視だけはそれなりにやろうと。

 宇宙開発事業団(斎藤理事) 

   基本的には、重点の置き方はだんだんその時代とともに、例えば利用機関の方にシフトできるものはシフトするし、だんだんシフトが変わっていくと思いますけれども、少なくとも、その分野の重要性を全部否定するという段階ではないし、今置かれているのを伸ばしていくという形が必要なことだという、それが宇宙開発の中核機関としてまだ果たさなくてはいけない役割だと思っています。

 井口委員長 

   ほかにいかがでしょうか。

 芝田宇宙政策課長 

   では、連休明けにテキストの方、本文を今の御意見も踏まえまして出させていただきたいと思います。それを見て、また御論議いただければと思いますが。

 井口委員長 

   それから、また先ほどのNASDAとして、こうしてくれという要求がありましたら、お聞かせくださいますようにお願いします。
   それでは、この件に関しましては、きょうは以上にさせていただきます。どうもありがとうございました。
   あと1点、次に「宇宙利用の推進方策に関する調査審議について」、これは決定を要する事項でございます。

 長柄委員 

   では、私の方から、この1月に部会の編成について審議願いまして、宇宙利用部会というのを設けるということが決まっているわけですが、具体的にどういうことをやるか、どういうメンバーでやるかということを詰めてきたんですが、審議事項は、宇宙利用の拡大、新たな宇宙利用の発掘・具現化、国際的な宇宙利用協力、宇宙開発機関と宇宙利用機関との協力、こういうことを調査審議しようということで提案しております。
   メンバーでございますけれども、私と栗木委員と澤田委員、それに約20人近くの特別委員の方に入ってもらいたいということで、御覧いただきますと、従来いろんな宇宙開発の専門委員等で活躍された先生はその中では3人か4人しかおいでになりませんで、むしろ今まで宇宙利用とか宇宙開発に余り関係なかった先生方、専門家に参加願って、宇宙開発の成果をどのように利用に生かしていくかという観点から議論したい、こう思っております。
   中小企業の方とか、天気予報の会社とか、コンテンツの配信関係の仕事をされている方とか、それから地理情報とか、ITSとか、地球観測のデータをビジネスにしようというふうな方とか、ベンチャー企業の方とか、気候変動の先生方も入っております。そういう意味で、非常にいろんな分野の方に入っていただいて、幅広い視野から宇宙開発の成果をいかに利用に結びつけるかということを議論したいと考えて提案したわけです。
   来年の3月までに報告書を提出したい、こう思って提案したわけです。

 井口委員長 

   宇宙開発委員につきましては、もう既に御了承をいただいていることです。特別委員としてこれだけの方をお願いしたいということでございますが、御了承いただけますでしょうか。
   御異議ございませんので、御了承いただいたとさせていただきます。
   それでは、その他としまして、前回の議事録を御覧いただきまして、問題がありましたら事務局にお教えくださいますようにお願いいたします。
   以上で、第16回の宇宙開発委員会を閉会にいたします。どうもありがとうございました。

午後3時56分閉会




(研究開発局宇宙政策課)

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