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宇宙開発委員会

2001/04/18 議事録
第15回宇宙開発委員会議事録


第15回宇宙開発委員会議事録

1.日時 平成13年4月18日(水)
  14:00〜

2.場所 特別会議室(旧科学技術庁5階)

3.議題 (1) X線天文観測衛星「あすか」の成果について
  (2) 米国航空宇宙局(NASA)の2002会計年度予算要求の概要について
  (3) 「宇宙開発に関する基本計画」の策定に向けた審議について
  (4) その他

4.資料 委15-1 X線天文観測衛星「あすか」の成果について
  委15-2 米国航空宇宙局(NASA)の2002会計年度予算要求の概要
  委15-3 「宇宙開発に関する基本計画」に盛り込むべき事項のポイント
  委15-3 (参考)第14回宇宙開発委員会(平成(参考)年4月11日)
    「宇宙開発に関する基本計画」の策定に向けた審議における指摘事項
  委15-4 第14回宇宙開発委員会議事要旨(案)

5.出席者
    宇宙開発委員会委員 長井口雅一
    宇宙開発委員会委員 長柄喜一郎
              〃 栗木恭一
              〃 澤田茂生
             〃 五代富文
    文部科学省研究開発局宇宙政策課長 芝田政之

6.議事内容

午後2時開会

 井口委員長 

   それでは、第15回の宇宙開発委員会を始めさせていただきます。
   お手元に議事次第が配られていると思いますが、本日は、その他を含めて4件議題がございますが、最初の1、2件は報告で、3件目が審議でございます。
   最初に、「X線天文観測衛星「あすか」の成果について」、宇宙科学研究所宇宙圏研究系主幹の井上教授から御報告をお願いいたします。よろしくお願いいたします。10分ぐらいでお願いできますでしょうか。

 宇宙科学研究所(井上主幹) 

   わかりました。ちょっとOHPを使わせていただきます。中身はお手元の資料のとおりです。
   X線天文観測衛星「あすか」は、宇宙科学研究所の第15号科学衛星になります。私ども、X線天文学の分野にとりましては4番目の天文衛星で、1993年の2月20日に打上げられまして、ほぼ8年、具体的には8年と10日になります。軌道で大きな成果を上げてもらったんですが、残念ながら、3月2日に大気圏に突入して、その寿命を終えました。
   これが具体的な軌道変化になります。ちょっと字が薄くて申しわけありません、上がった当初は、520キロ、610キロぐらいの軌道に投入したわけですけれども、御存じのように、最近、太陽の活動が激しくなりまして、太陽の活動が激しくなると、地球大気が少し膨らんで、抵抗がふえて少しずつ落ちてくるということで、落ちて行きますと、ますます濃いところに入りますので、ある種の悪循環でどんどん落ちまして、3月2日に、最終的には大気の濃いところに入って燃え尽きたということです。
   「あすか」は、基本的にはX線の軌道天文台として働いてくれました。そこでは、X線の反射望遠鏡というものを、エネルギーの高い方を、「keV」という、キロ電子ボルトという単位でX線の波長を測りますけれども、その波長の短い方、この単位で言って3から10といった波長の範囲では、世界で初めてのX線の反射望遠鏡を搭載しました。
   さらに、焦点のところには、これも世界で初めて撮像型のX線分光装置ということで、X線のCCDカメラと撮像型のガス蛍光比例計数管というのを搭載しました。これは当時としては非常に最高性能のもので、これらを使って非常に大きな成果を上げてきました。
   これが、実際のもう少し細かい「あすか」の履歴ですが、上がってしばらく、半年ほどは衛星自身の性能、観測装置の性能を評価する、それから、私ども、衛星を作った、観測装置を作るのに参加した人たちの、ある意味では専有期間という意味合いも含めまして、半年の試験観測を行いました。その後は、完全公募制をとりまして、一部いざ何か起こったときのための観測時間は除きました残りの時間を、ここに書きましたような割合で、日本側が50%、アメリカ側が15%、日米というのは、これはある意味では玉虫色の時間帯として両者の共同時間としてとってあります。
   それから、この衛星を作るところには、ヨーロッパは参加してもらっていないんですけれども、これまでのいろんな経緯もあって、ヨーロッパに10%を、日本時間を割いてヨーロッパから観測提案を受け付けました。このようなことで、完全にそれぞれ宇宙研、NASA、ESAで観測提案の募集をして、その審査を通ったものを順次、観測するという方法で、ほぼ2000年の1月ぐらいまでそういう運用を続けました。
   2000年1月ぐらいには、太陽活動が激しくなったこともあって、軌道寿命がまああと1年程度であろうということになりましたので、それまでの観測を総括しまして、むしろ、こういうところはやり残しているのではないかというようなことを、我々「あすか」を運用してきたチームが特別な運用をするということに移行して、具体的にはアメリカでチャンドラ衛星とか、ヨーロッパでニュートン衛星という衛星も上がってきたこともありますので、少し特色を出して、1つのものを非常に長い時間をかけて観測するというようなことの運用に移っておりました。
   そうこうするうちに、7月15日に、非常に大きな、いわゆるマグネティック・ストームというものが地球を襲いまして、そのときに「あすか」の姿勢制御系に大きな外乱を受けて姿勢を崩しました。不幸なことに、電源系も電池が非常に大きな放電をしてしまって、その回復が難しい状態に陥ってしまいまして、いろいろ努力はいたしましたけれども、事実上、この時点で、観測運用は断念せざるを得ませんでした。その後、高度がさらに落ちて、3月2日に大気に突入して消滅したということです。
   この間、観測運用はすべて宇宙研の中で、毎日の衛星、きょうはどういう観測をするかという指令を飛ばす、我々、コマンド作りと言ってきましたけれども、コマンドを作って衛星に上げる作業は、我が国の中のいろんな機関の人たち、ここに挙げましたような方々がやってくださいました。大学院生まで含めて総勢約160名の方々が毎日の運用をやってくださいました。衛星を作るときには、ここに挙げましたような日米の機関で衛星を作ってきております。
   それから、日本側のこの製作にかかわった部分の方々がここにダブッて入っていますが、アメリカの方々もNASAの方でデータを、アメリカ側、あるいはヨーロッパの研究者に配る部分でありますとか、それから、これはNASAがJPLの「Deep Space Network」を使った衛星受信の支援をずっとしてくださいました。
   簡単に、それによります観測成果をお話ししますと、項目としては、ここに挙げたようなものがありますけれども、1つ1つ詳しくお話ししている時間もございませんでしょうから、非常に大きなテーマとして我々が考えてきて、その成果ということを簡単にお話しします。
   1つは、これはX線天文学の1つの大きなテーマになりますけれども、ブラックホールという、ブラックホール自身は何も出てこないということになりますけれども、ブラックホールのすぐ近くは非常に高温なプラズマができてX線で光っています。そういうようなものの観測的研究をこれまでもやってきましたし、「あすか」が随分、その観測の最前線を広げてくれました。
   ここに書いてあるのは、我々が知っているブラックホールというのに、大きく言って2種類ありまして、太陽の10倍くらいの、普通の星の中のある一部の星が進化の最後にブラックホールになると思われているもの。
   それからもう1つは、いわゆる銀河系という星の集団の中心に太陽の1億倍ぐらいのブラックホールがあって、そこにものが落ち込んで光っていると言われているもの、の2種類がこれまで知られてきましたけれども、「あすか」の観測によりまして、ちょっとこれ詳しい絵で専門的なことが一部分かいてありますけれども、実はその100倍、あるいは、もうちょっと大きいものも見つかってきています。今まだすぐに、どうしてこういうものがたくさんいるんだろうかというのはまだわかりません。太陽の100倍以上の質量を持っているようなブラックホールが比較的たくさん見つかってきています。これは、「あすか」の後、アメリカの衛星のチャンドラ衛星というのでも観測が進んでいますが、まだ完全にはよく理解できておりません。
   それからもう1つは、ブラックホールの数倍のところまで観測がいっている証拠というのも見つかってきておりまして、これは普通で見ますと、鉄の蛍光X線というのが、ここの単位でいくと6.4というところに、ただポッと鋭い線が出るだけのはずのものが、光の速度の数分の1というもので回転運動しているために、どうやらこう広がって見えているらしいということがわかってきております。
   それから、もう1つの観測対象は銀河団といいまして、実は観測の結果、宇宙の中で観測にかかる物質、まあいろんな温度の物質があるわけですけれども、実は、高温のガスが宇宙の中では一番多いということがわかってきています。さらに、御存じかと思いますが、一番の主役は、暗黒物質という観測にかからない物質が80%ぐらいいるわけですけれども、いずれにしろ、これらのものの観測というのは、X線の観測で随分、そういう分布なり起源なりの観測が進んできております。これもあまりそれ以上詳しい話をしてもあれでしょうから、この辺で……。
   最後に、それらの成果がどういう形でまとめられているかといいますと、今のようないろんな成果を上げながら、ほぼ2,500近いX線源をほぼ8年近い寿命の間に観測いたしました。その成果をもとに、1,000を超える査読付学術論文として出すことができました。これが、毎年ごとの棒グラフになっていまして、この赤い線が積分していっている数で、ことしはまだどこまでいくかわかりませんけれども、ほぼ1,000を超えるものが生まれ、刊行することができました。その中を見てみますと、日本がほぼ3分の1、外国が3分の1、両者が共同したような形になっているのが3分の1ということで、国際貢献という意味でも大きな寄与ができたと思っております。
   それから、これ、ちょっと私は誤解をして、すみません、「国内のみ」と書いてありますけれども、ことしまで、この3月までで90人近い博士論文が出ていまして、そのうち20人ぐらいは外国の方の数が入っておりまして、国内では70人近いというのが正確なところになります。
   それから、これにあわせて国際研究会というようなものも、2年に一遍ぐらいずつ行うことにしてきておりまして、1994年、1996年、1997年、1999年、この3月にも、当初、これには、ASTRO−Eという次の衛星の成果を発表する予定で研究会を組んでいたわけですけれども、残念ながら、その成果はつけ加えられませんでしたけれども、「あすか」の成果もここへ最後のまとめのような形で出させていただいて、いつもほぼ外国からは150人ぐらいの方々が参加した国際研究会をすることができてきております。
   それから、この間、いただいたある種の評価としては、文部省の学術審議会の宇宙科学部会と言われているような分科会で、我が国における最近10年間の科学衛星の評価の一環として、「あすか」を評価していただきまして、非常に高い評価をいただきました。
   それから、アメリカの方では、これは具体的にはアメリカの中で、1997年から2000年にかけて、実際にアメリカの中の予算をどれくらいのミッションに出していくかというような観点からの評価として、1996年に評価をいただいて、その直前に上がった赤外線天文衛星の「ISO」というものに次いで第2位の評価をいただきました。高い評価をいただけたものと思っております。
   以上でございます。

 井口委員長 

   どうもありがとうございました。時間が短くて申しわけありません。
   御質問、御意見ございましたら、お願いいたします。

 栗木委員 

   X線のグループは大変アクティブに国際的に活躍しておられますけれども、大体NASAの天文衛星も含めまして、衛星1つ上げると、今おっしゃっておられたように、これが2番目とおっしゃいましたけれども、大体このぐらいの論文数であるとか、学位の取得者というのは生まれてくるものですか。極めてこれはパフォーマンスがいいなと私は思ったんですけれども。

 宇宙科学研究所(井上主幹) 

   私たちも、ほかのこれまでに上がってくる天文衛星の学術論文の数というのをちょっと調べてみたことがあるんですけれども、天文衛星で、80年代にアインシュタイン衛星という衛星が上がっておりまして、それはこの「あすか」のものよりは2倍、3倍、トータルには長い年限ありますので。
   それから、ほかの波長で言いますと、「Hubble Space Telescope」というのもたくさん、あれは全部で5,000ぐらい論文が出ていました。ただ、単純に波長が違いますと、直接比べられない部分が少し出てきますけれども、そんな状況だと思います。

 長柄委員 

   ASTRO−Eがああいう状態で非常に残念で、あのときには、私の記憶では、ESAの方から、ニュートンの時間を日本に割り当てていいよとかいう何かあいさつの書状が来たということだと思いますが、チャンドラの方には、日本の研究者というのは今何人かは参加されているわけですか。

 宇宙科学研究所(井上主幹) 

   はい、いわゆる公式な、そういう特別な時間をいただいているということはありません。しかし、完全に、「あすか」のときにもお話ししましたけれども、公募制ですので、我々もみんな観測提案を書いて、それに採択された人は自分でちゃんと観測時間を得られます。
   一方、アメリカで、そういう採択をする委員会の採択委員みたいなところにも、日本の研究者は何人もこの作業には加わってやっています。ですから、日本だから、アメリカだから、ヨーロッパだからというよりも、今はそういう意味では、共通にデータは共有しているということがあります。
それから、そうやって観測提案が受け取られても、占有期間は1年になっておりまして、1年たつと、だれでもいじれるようになります。そういう意味で、一番おいしいところはもちろん一番最初にデータをいじった人が権利がありますけれども、データとしてはどんどん共有になっていっています。

 栗木委員 

   宇宙研出身者で、こういうことを聞くのは恥をさらすことになるかもしれませんが、宇宙研の衛星でX線という波長の分野を研究されて、一方で赤外がやはり、例えば宇宙背景放射の測定なんかをやりますと、そういう波長範囲の違う可視光を挟んで、両極端のところでとらえたデータというのは、エンティティーとしてといいますか、一体として1つの結論が出されるようなそういうことは、宇宙研なり天文学全体としてあるんでしょうか。

 宇宙科学研究所(井上主幹) 

   もちろんあります。今、背景放射という特定のことをおっしゃると、実は、X線で見えている背景放射と、赤外線で見ているものとはちょっと違う部分はありますけれども、ただ宇宙を理解するという意味では、どこかでもちろんつながりますし、それから、例えば星が生まれてくるところを赤外線で見ると、よく見えるわけですけれども、それでも実は一番、ここの成果の中にも1つ挙げてありますけれども、X線で見ることで初めて、本当に生まれたてのすぐの星が逆に見つかって赤外線の観測が進むということもありますし、その逆に、赤外線等の観測で動機を得て、X線で観測をしてみて新しいことが見つかることもありますし、その辺は、もう本当に、研究としては一体となっています。

 栗木委員 

   星が死滅するところから生まれてくるところというのは、頭としっぽがつながっているようなところがあると私も聞いているので、その辺が、まあ一方が赤外だけで見ていて、一方がX線だけで見ているというものでもないんだろうなと思っていたものですから、ちょっと伺ってみました。

 宇宙科学研究所(井上主幹) 

   そういう意味では、「はるか」という衛星がジェットといわれる現象で、さっき私が見せたブラックホールの数倍というところは、X線で、これは、ただ像として分解できているわけではなくて、観測結果の解釈でありますけれども、100倍とか1,000倍というところは、「はるか」が実際の像として見え始めていますので、いろいろ多角的に……。

 栗木委員 

   さらに長い波長でも。

 宇宙科学研究所(井上主幹) 

   はい、そういう研究を一緒に進んでいると言えると思います。

 井口委員長 

   私、機械工学が専門なものですから、宇宙に関しては弱いんですけれども、宇宙全体の宇宙サイエンスの中で、これからどういう道を進めていくのか。ちょうど先月ぐらいだと思いますけれども、日経に鳥居さんという論説委員がいろいろ書いていまして、「「あすか」によってどんなことがわかったのか、一般社会は理解していない。言いかえれば、社会はX線天文学のおもしろさを共有させてもらっていない。」これは何もISASだけではなくて、宇宙全体に言えることだと思うんですけれども、我々も努力して、一般の人に、こういう研究が全体の中でどういう位置づけになっていて、何がわかったのかということを、もう少しわかりやすく説明するというのか、そういう努力をしたいと思っておりますが、先生の方で何かお考えはありますか。

 宇宙科学研究所(井上主幹) 

   そこの記事に書かれたようなことというのは、我々としても、我々できる範囲で精いっぱいのことはやっておりますけれども、それでも少しまだ足りないというのはおっしゃるとおりだと思います。
   ただ、残念ながら、限られた人間と限られた費用なり何なりですので、その範囲では精いっぱいのことはやらせていただいていると思います。

 井口委員長 

   この記事にもそう書いてありますけれども、したがって、限られたもの以外に何かを、これからISASだけではなくて、全体として考えていかなければいけないのではないかなと思います。

 宇宙科学研究所(井上主幹) 

   そういう意味で言いますと、我々の研究していることの私自身が思っている大きなテーマは、1つは、まだ我々自身の知らない物理法則でありますとか、我々観測をこれまでやってきて、それまで思ってきたとおりのものが見えたということはほとんどありませんで、大抵思っていることと違うことになって、新しいことを見つけてきているわけで、宇宙というのはまだそういう意味で、我々の知らないものをたくさん含んでいる。特に、物理の非常に根源的な理解という点では、宇宙は非常に大きな対象として大事なものだと思います。
   それから2番目は、広い意味で言って、我々のいる環境といいますか、宇宙がどのようにして生まれてきて、地球というものがどういう位置づけであるかというのは、やはり宇宙研究の大きなテーマだと思っています。その部分は、あすには役には立たないかもしれませんけれども、長い目で見れば、我々とって非常に大事なことだと思っています。

 井口委員長 

   まあ、その辺に、これからご一緒に努力していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
   それからもう1つは、これはISASとNASDAとの共同プロジェクトのような形のものでしょうか。NASAですか、そうすると、NASDAももちろん入っているんですね。

 宇宙科学研究所(井上主幹) 

   NASDAさんには、衛星の受信の追跡というところではお手伝いいただいていますけれども、衛星そのものを作るところ、打上げるところは宇宙研の責任になります。それから、衛星の一部の機器については、日米協力でNASAと協力して作り上げました。それから、受信についてもNASAの協力もいただいております。

 井口委員長 

   それから、もう既に平成10年に文部省の学振から高い評価を得られ、それからNASAからも高い評価を得られていると思いますが、それでは日本のこういうプロジェクトとしての最終評価というのはこれでおしまいなんですか。それとも、また後で、これからおやりになるんですか。

 宇宙科学研究所(井上主幹) 

   そういう意味で、終わったミッションの1つ1つを改めて評価するということは、まだきちっとシステムとしてはできていないんです。
   ただ、例えば我々の「あすか」の前の「ぎんが」という衛星、その前の衛星等については、宇宙科学研究所として第3者評価という形で、1992年だったか1993年だったかに、その中で評価をいただきました。
   それから、今回の「あすか」、「ようこう」という衛星も、もうほぼ長い年月をやっておりますし、「GEOTAIL」という衛星も随分長い年月働いていますし、そういうものを含めて、今年度、第3者評価という形でやっていただきたいというのを今から組織しようとしております。

 井口委員長 

   目標が3年くらいの寿命のつもりが8年もっているのは、それだけで、当初の計画の何百パーセントの成果を上げたと言ってもいいんだろうと思うんですけれども、その最終評価が出ましたら、またお話を伺うことになるかもしれません。よろしくお願いいたします。
   大変立派な成果を上げられたことにお祝いを申し上げます。

 宇宙科学研究所(井上主幹) 

   どうもありがとうございました。

 井口委員長 

   ほかに何かありませんか。よろしいですか。

 長柄委員 

   これはちょっとつかぬことかもしれませんが、よく、例えば今度の天文台の電波の干渉計ですね、あれで例えばハッブルの何倍だとか、片一方を可視光で見て、電波で見たら、あれで何倍見えるなんていう比較しちゃいかんのですね、本来ね。ハッブルの何倍見えるなんていうのは、ああいうのは、やっぱり新聞が悪いのかどうかわかりませんけれども、先生方がよく説明されて、何倍見えるというのも、意味が全然違うわけですね、あれは。

 宇宙科学研究所(井上主幹) 

   それぞれの見ていくところが違う。もちろん同じものも見えますけれども。

 芝田宇宙政策課長 

   我々素人がお願いしているところもございまして……。

 長柄委員 

   富士山の上のパチンコの球がどのくらい見えるとかね。

 井口委員長 

   よろしいですか。
   井上先生、どうもありがとうございました。
   それでは、議題の2番目、「米国航空宇宙局(NASA)の2002年会計年度予算要求の概要について」、宇宙政策課調査国際室長の塩満さんに御報告いただきます。よろしくお願いいたします。

 塩満調査国際室長 

   それでは、資料の委15−2に基づきまして御説明させていただきたいと思います。
   先日、3月の後半に、ブループリントというのを御説明させていただきまして、「予算要求の指針」と訳させていただきまして、そのときも簡単に2002年会計年度の予算要求の概略を御説明させていただきましたが、そのときに、出ていました145億ドルという数字につきましては、変わりなくNASAの予算額総額として今回の予算教書にも示されていました。
   1.の概要につきまして簡単にご紹介させていただきます。4月9日に、NASAが発表に伴いまして同時に行われました記者会見で、長官から御説明がありましたのは、NASAの活動の優先づけを行って焦点を絞って、科学と技術の発見(discoveries)によって国を前進させるための効果的な努力を行っていきたいという方針でした。
   ここの予算教書におきましてハイライトとなったプロジェクトが幾つかございますが、その中で、先日御説明しましたSpace Launch Initiativeがやはり1番目に出てきまして、4億7,500万ドルで64%の増額、それから火星探査計画、これにつきましても4億3,100万ドル、これは額自体は割に多くないと思われますが、重要課題としてハイライトとして提示されています。それから、Earth Observing System Follow-Onという「次世代地球観測衛星計画」につきましても、ハイライトとして位置づけられていました。
   若干予算の積み上げ方の異なりがあると思われるんですが、もう1つ数字がございまして、一般科学・宇宙・技術分野に位置づけられる予算として136億ドルという数字もございます。この内訳は、宇宙科学に28億ドル、地球科学15億ドル、航空・宇宙技術15億ドル、有人宇宙飛行73億ドル、それから生物・物理研究4億ドルという内訳になっています。これにつきましては、ブループリントのときには、若干並び方が違った形で示されていましたが、内容的にはほとんど同じになっています。
   それから、ブループリントを御紹介したときにも、NASAは、やはりマネジメントの改革に力を入れていくということで、市場原理に基づいた活動を実施する、それから、技術革新の推進、競争の導入、研究開発の水準の向上を目標としていくということで、特に、国際宇宙ステーション、スペースシャトル、宇宙輸送イニシアティブ、重要能力・将来性の育成について提言を行っています。
   大体概況はそのようなところですが、一番後ろの表3のところをお開きになっていただければと思います。
   ここでは、全体のアメリカの政府予算について示されていますが、ここの「FY2002要求額(B)」というところが、今回の予算教書で新しく提示された要求額でございまして、6,600億ドルという形で合計額が出ています。これは、裁量的歳出予算でございまして、全歳出予算は2兆ドルということです。前年度比では全歳出予算2兆ドルが5.9%の増額で、今申しました裁量的歳出予算の方は4%の増額ということになっています。
   お気づきいただけるかと思いますが、この中で、一番最後から3行目、航空宇宙局の予算は145億ドルということで書いてございますが、やはり国防総省の予算が、上から3行目「DOD」として書いてございますが、これが多いということでございます。これが全体の形でございます。
   それでは、中身の説明をするに当たりまして、表の1をお開きいただければと思います。本文で申しますと2ページ目でございますが、簡単に御紹介させていただきます。
   比較をして見ていただきたい欄というのは、最初の項目が書いてある欄から3つ目の「FY02要求」というところがございます。ここの一番下の合計を見ていただければ145億ドルが書いてございます。それで、大きな項目は「有人宇宙飛行」、「科学・航空及び技術」、「ミッション支援」、「監察総監」という4つに分けられています。
   1.8%の増加というのは対FY01認可との比較で、欄としましては右側から3番目のところに1.8%増ということで書いてございます。特に、国際宇宙ステーションの予算につきましては、ブループリントでも幾つか指摘があったので注目していたんですが、若干2001年度認可額に比較しますと2,550万ドルの減少ということで、マイナス25.5というところがございますが、2,550万ドル減少していますが、昨年2月、予算教書が出たときの前年見通しと比較しますと、2億2,890万ほど増加していますので、そういう意味では、必ずしも減少方向にあるという位置づけではないように思いました。
   その中で、どのような形で、オフセットが行われて、国際宇宙ステーションの予算が確保されるかということも、ブループリントでは若干言及があったんですけれども、今回の予算教書の中では特にはっきりしていませんが、額的には228.9見合いというのと、この科学・航空及び技術の226.2対前年見通し、ここが少しオフセットに近い額になるのかなとも考えられますが、ここのプライオリティーづけにつきましては、どちらが重要分野として位置づけられているかということにつきましては、今回の予算教書では必ずしもはっきりしませんでした。
   額につきましては、今申しましたように、「S・A・T」、科学・航空及び技術の方が対前年見通しから比べると減ってはいるんですが、先ほど申しましたように、内訳として最初に書いてある部分で宇宙科学があったり、宇宙輸送イニシアティブ、これは「科学・航空及び技術」の中の航空宇宙技術の中に、AEROSPACE TECHNOLOGYの中に含まれている部分ですので、そういう意味ではS・A・Tが必ずしも優先順位が低いということではなく、額は減っているものの、将来に向けてこちらに投資をする方向もうかがえるかと思います。
   それから、今回1枚目の一番下に書いてございますが、会計区分については新しいNASAの試みが行われていまして、これまで先程申しました「有人宇宙飛行」、「科学・航空及び技術」、「ミッション支援」、「監察総監」という4会計区分が行われていましたが、この「ミッション支援」の部分を「有人宇宙飛行」と「科学・航空及び技術」に振り分ける形で、よりプロジェクトにどれぐらいの額が投入されているかというのがわかるような仕組みがとられていて、これがニュー・ストラクチャーという位置づけで記載されていることが、今回の新しい試みと思いました。
   2ページ目の3番目でございますが、「ベースライン見通し」、これは、将来、NASAはどの分野に投資していくか、あるいはどのような規模で額を伸ばしていこうとしているかという政府の考え方がある程度わかるものですが、4ページ目の図1のところを御覧になっていただければ、「NASA長期予算見通しの比較」というところがございまして、これを見ていくと、1999年2月、予算教書が出た時点では、フラットな推移を予算的に見通しを立てられていたようでしたが、2001年要求時点、それから今回の4月時点では、毎年2から3%台の伸びを見通した予算積み上げが行われているかと思われます。
   それから、次の図2でございますが、では内訳はどうなっているかということで整理させていただきましたが、これを見ると、余り大きな変化はなさそうには思われるんですが、やはり先ほど申しましたように、若干航空宇宙技術、Space Launch initiativeの部分と、それから宇宙科学、火星探査が代表的な例として挙げられていましたが、宇宙科学の部分が少し伸びていると思われます。一方で、国際宇宙ステーションにつきましては、これまでブループリントでも若干指摘されていましたが、今後5年間で40億ドルのコスト増が見込まれるという中で、そのコスト増を抑制する形で研究開発予算のマネジメント、それから積み上げを行っていくというような考え方を述べられていました。10億ドル程度のコスト増が見込まれるということで、コスト増自体は抑える形で、かつ予算を伸ばしていく形でという戦略が立てられているように考えられました。
   簡単でございますが、以上でございます。

 井口委員長 

   どうもありがとうございました。
   御質問、御意見ございましたら、どうぞ。

 長柄委員 

   塩満さんは生物学ですね。

 塩満調査国際室長 

   はい、そうです。

 長柄委員 

   この「BIOLOGICAL&PHYSICAL RESEARCH」を「物理研究」と訳すのはちょっとおかしいんじゃない。physicalは、まあPhysical Educationの、まあ体のという意味だから。

 塩満調査国際室長 

   生物・物理研究と訳しましたが。

 長柄委員 

   人間の心なり体なりの、生物医学じゃないんですけれども、物理と言うと日本語の何というんですか。

 塩満調査国際室長 

   physical、ああこれはphysicsではなくて、確かにphysicalですから、生理学の方がよいかもしれません。

 長柄委員 

   これは生理ですか、physiologyじゃない、まあ人間の体でしょう、これ、要するに。昔はライフ・サイエンスと言った部分ですね。

 井口委員長 

   幸いなことに、アメリカ大使館、科学アカデミーでも使われているんですけれども。

 塩満調査国際室長 

   「物理」と訳さない方がよいかもしれません。

 カーカム氏 

   そのとおりなんです。どっちかというと、physicalの、人間の、physicalの方の言葉として使われています。

 塩満調査国際室長 

   すみません。

 長柄委員 

   来年から、何かいい訳を考えてください。

 塩満調査国際室長 

   はい。以前の項目がOffice of Life and Micro Gravity Science and ApplicationsでMicro Gravityに少しとらわれてしまい「物理」としましたが、確かに御指摘のとおり、今後気をつけたいと思います。

 井口委員長 

   4ページ目で、当初1999年2月の時点では、将来ほとんど伸びないだろうというのが見通しが変わったというのは、これはブッシュ政権の基本的な考え方。もちろんこの原点がゼロじゃないから、ものすごく伸びるような錯覚を持つんですけれども、そうではなくて1%ですか。

 塩満調査国際室長 

   そうですね、2から3%で。

 井口委員長 

   それでもかなりの伸びを示されているわけですけれども。

 塩満調査国際室長 

   これは、クリントン政権で2000年2月時点の予算教書で、既にこのような伸びを、この赤がそうですね、2001年4月ではどうなるかなということも注目されていたんですが、これは同じような伸びを示しているということで、前政権を引き継いだ形で、NASA予算としては伸びが予測されているというのが、政府の予算要求になっていると思われました。

 井口委員長 

   全然別なんですけれども、最後の表でもってDODが非常に……

 塩満調査国際室長 

   そうですね、これは非常に額自体も大きく、300になっています。

 井口委員長 

   これ、何が伸びているんですか。ご存じなければ結構ですが。

 塩満調査国際室長 

   中身は存じませんが、やはりブッシュ政権のプライオリティー分野というのが幾つかあって、エデュケーションと社会保障、その次がミリタリーときてますので、やはりここに何が伸びたかはまだ分析しておりませんが、増額を考えられているのかと思いました。
   あともう1つ、全体的には、NIHの関係で、「保健」の「健」が間違っていますが、厚生省関係の予算が伸びています。

 長柄委員 

   多分、表3というのは、書いてないけれども、要するに、これは科学技術予算でしょ。要するにDODの予算全部ではなくて、これは科学技術予算を各省のものを引っ張りだしたらこうなると。

 塩満調査国際室長 

   いえ、研究開発予算はまた別の数え方があって、それはまだ十分分析していなかったものですから、単純に省庁予算をここに載せました。したがいまして、研究開発予算のみではないということです。

 井口委員長 

   ほかには何か。
   カーカムさん、全体として何かコメントございますか。

 カーカム氏 

   全体としては、コメントをつけ加えることはないんですけれども、我々がどうしても気にするのが、そちらに出ていないかもしれないですけれども、ちょっとウェッブで調べられることはできるんですが、コングレッショナル・イヤマークと言うんですけれども、議会からつけ加えた予算要求なんですが、これは法律的には、NASAが受け取らざるを得ないという形なんですが、それをつけ加えると、NASAの全体的な予算が、この145億ドルではなくて、141億ドルになるというふうに理解していただければと思います。それがこれから議会と交渉したりするにつれて、ふえたり減ったりする可能性もありますが。

 井口委員長 

   どうもありがとうございます。

 塩満調査国際室長 

   あとは、6ページで紹介していなかったんですが、表にNASAの各センターごとの予算配分額がございまして、フロリダのケネディ宇宙センター、それからテキサス、ヒューストンですか、ジョンソン宇宙センターの伸びがあって、あとほかのところが減っている理由については、今後分析していきたいと思っておりますが、幾つか特徴があるように思っております。

 井口委員長 

   こういうことをお聞きすることは大事だと思うんですけれども、何分にもNASDAの予算とは1けた、けたが違うわけで、こういうものを見て、じゃ日本はどうしたらよろしいのか、何か特に塩満さんの方でコメントがありましたら伺いたいんですけれども。同じ方向を追いかけるのがいいのか、追いかけたところで、けたが違うんだから、別な方向を目指すべきであるとか、何か読み取れるところがありましたら。

 塩満調査国際室長 

   この資料の中に入っていませんが、5つのキーエリアというのがあって、やはり経済成長と社会保障安定、科学技術の理解増進、地球環境の保護、教育のエクセレンスを高める、それからあと、平和利用をしながらも新しいものに挑戦していくというこの5つのエリアをNASAとしては打ち出していらっしゃるということも、今後、それは日本の宇宙政策との関連で、幾つか重要な示唆があるように思っております。

 井口委員長 

   ありがとうございます。
   ほかはいかがでしょうか。
   それでは、その次に、少々時間を要する議題がございますので、終わらせていただきます。
   どうもありがとうございました。
   それでは、議題の3番目の「「宇宙開発に関する基本計画」の策定に向けた審議について」に入らせていただきます。
   芝田課長さんから御説明をお願いいたします。

 芝田宇宙政策課長 

   委員会資料の委15−3と、それに附属してございます委15−3(参考)という2つの資料が関連でございます。参考の方は前回御指摘いただい事項を整理したものでございますので、これはちょっと省略させていただきます。15−3の方の資料は、指摘していただいた事項を踏まえまして、事務局の方で追加したものでございます。追加の部分が波線を付してございますので、そこの部分のみ簡単に御説明申し上げます。
   まず、「基本的考え方」の中で、下の方に波線を付した部分がございますが、これは、全体として宇宙開発事業団の役割をもう少し明らかにしようということで、1つのベクトルは、特に関係省庁との公的研究開発機関との役割分担のことをはっきり書こうということです。
   それからもう1つのベクトルとしては、民間との役割分担、これは以前から少し書いてございます。5番目の○のところに書いてございますけれども、それに追加して、「速やかに事業を民間に移行する。」というベクトルをここで出してございます。
   それから、1ページ目の一番下でございますけれども、特別会合でも指摘されております「「プライム契約」を推進する。」ということを書いてございます。
   それから2ページ目の一番上の波線は、これは評価指針の特別部会の方でも議論が進められておりまして、おおむねこういう方向が出てくるということで、歩調を合わせてこちらの方にも書いてございますが、外部評価をNASDA自身が行っていただくわけですけれども、特に大規模かつ重要なプロジェクトについては、宇宙開発委員会が第3者評価を行う。この第3者評価は、開発の入り口と出口、終わったところでやっていただくということかなというふうに今のところ考えております。そのことを明らかにしようということで、第3者評価を行うということを書いてございます。
   それから、「人材の育成」というところでは、特に宇宙ステーションの利活用ということで、宇宙授業の実施等、それから宇宙実証機会の提供、支援というようなことで、大学の機関等に教育プログラムを支援するという体制を強化するということです。
   それから、「経営の効率化」につきましては、優先度を柔軟に見直すということが1つと、もう1つの○は、これは最後の行に「効率化を図る。」と書いてございますが、これはミッションの有効性を確保する、あるいは技術開発が、せっかくしたものが陳腐化しないうちに、例えば民間に技術移転されるというようなことをねらって、スピードを上げるという趣旨でございます。
   それから、5番目の「社会との調和」というところでは、できるだけ成果あるいはいろんな活動を国民に対して説明していくということをはっきり書きたいということで幾つか項目が挙げられております。
   1番目の○にございますように、特にプロジェクトの達成目標とリスクを国民一般に対してきちっと明らかにして説明していこうということです。
   そのほか、普及・啓発活動についてでございますが、3番目の○にございますように、国民一般の期待、関心が、星といったようなところから、地球近傍の宇宙開発だけではなくて、かなり全宇宙的なところから導入があるのかなと、興味、関心の始まりがあるのかなということで、天文台、宇宙研とも連携・協力をして広報に務めるということです。
   それから、その次の○にございますように、ちょっとこの「スポークスパーソン」というのは、いずれ文書を書くときには、きちっとした日本語を考えなくてはいけないと思っていますが、広報担当の顔の見える人を確保する必要があるということです。
   3ページ目に行きまして、「今後の中核的業務」の柱書きのところを御覧いただきますと、当面はH−3Aと基盤技術の開発を優先する。一方で、国際宇宙ステーションについては、重要な国際協力プロジェクトとして着実に推進するということを書いてございます。
   それからあと、「宇宙輸送システム」については、そこに書いてございますように、民間への技術移転、そういったようなことが書いてございます。
   それから2つ目の波線ですが、ここはちょっと読ませていただきますが、「将来、先端的ロケット(エンジン)の技術開発プロジェクトを策定する場合には、一方では我が国としての輸送手段を保持することの必要性を踏まえて計画を検討する。」先端的ロケットエンジンの技術開発が実利用に必要な輸送手段までとめてしまう、技術開発が終了するのを待って輸送システムが確立するということでは困るということで、こういう記述をしてございます。
   その辺が、主な追加事項でございます。

 井口委員長 

   それでは、ご審議をお願いいたします。

 澤田委員 

   「プライム契約」のことですが、随分何回もプライム契約の推進という言葉自体は出てるんですけれども、実際問題として、何か動いているのか、動いていないからこういうことを改めて書こうというのか、その辺のところはどうなんですか。

 藤木宇宙開発利用課長 

   プライム契約自体は、基本的には、もう世の中の流れはそういう方向だということで、いろんな契約がプライム契約の方向に全体として動きつつあることは、その方向で間違いないということで、いろんなことが進んでいると思います。例えば衛星関係の契約なんかは、ほとんどプライム契約に全部なってきているという実態があります。
   一番ここで話題になっておりますのが、特別会合の報告書なんかでも出てきた、いわゆるロケット開発のプライム化の点がどうなっているのかというのが、一番世の中の関心事項にあると思います。
   そのプライム化自体は、特別会合の議論のときにもそうだと思いますが、現在のH−2Aロケットは、もともとが分担開発という役割分担の発想のもとで、ある部分をあるメーカー、ある部分をあるメーカーという形で開発してきたという実情がありますので、そういった実態を踏まえて、どういった形でプライム契約のねらいとするところ、例えばインターフエースをできるだけ改善するとか、お互いこの情報のやりとりをどうするかとか、一体感をどうやって出すのかとか、その辺の実態の問題をどうやって改善できるかという観点から、特別会合報告書では、合同チームをまず作りなさいということだったと思います。それはもう合同チームは作ったと。ただ、それだけではなく本当の改善までにまだまだやるべきことはあるんじゃないかということで、最近では、複数のメーカー間の情報流通を促進するような契約を結んで、より情報共有を進めるといったような形で進んでいるということはございます。
   しかしながら、本当の意味でのプライム契約が進展しているかというと、このH−2Aロケットに関しては、実際にはなかなかプライム契約そのものにはなっていないというのが実態だと思います。ただ、そのプライム契約が目指しているところは、できるだけいろんな制約状況にあるところで達成していこうという動きについては、いろいろ、どんどんやれることをやっているという、そんな状況だと思います。

 井口委員長 

   よろしいですか。

 五代委員 

   本当にそうですね。今後のプロジェクトについては、ごく当たり前のことなんで、今さら、がさがさ言うことでもないかなと、細かく一々説明をすることだろうかと思っているんですけれども、今までそうでないものを急に変えようたって、それは無理だから、こうしますと言うんだから、これでよろしいかと思います。

 井口委員長 

   ただ、書いておかないと、また忘れて後戻りしないかという気がするんです。

 五代委員 

   いや、実際には、もちろん掲げるのはいいけれども、何か「インターフエースの改善に資するため」と、ちょっと余りレベルが高くないなというような……。

 井口委員長 

   そんな言葉は要らない?

 五代委員 

   要らないというか、もっと当然のことだからと、いう気がするんですが。

 井口委員長 

   そうすると、念のため、プライム契約というのはプライム・コントラクターにすべてを任せて、サブ・コントラクターはプライム・コントラクターが決める、そういうことですね。
ほかにはいかがでしょうか。

 栗木委員 

   全体のこれだけの短いものの中に、どうやって具体的な表現を盛り込むかという難しさがあるかと思うんですが、私、「業務の運営に関する基本的事項」という中に、例えば教育であるとか、あるいは国際協力で「発展に寄与」というようなことが書いてありまして、一体これが、具体的な業務でどう生かされるのか。そのひとつは、1というのがマトリックスの行、2というのが列のような関係があって、どれかに今、重みがあるような気がするんですね。
   例えばそれは書いてあるものがありまして、宇宙ステーションの教育的な寄与というのは、この短い2行の中で書かれているんですが、恐らく宇宙ステーションもやはり地球観測にも寄与ありというようなこと、あるいは国際協力にも寄与ありというようなことが何か表現できないかなというのが、例えば暗黙的な了解で行きますと、この関連的な1を読んで、はっきり示されてないところは、読者がこれを頭の中で補えというようなニュアンスがあるんですけれども、極めて技術屋のセンスから行くと、マトリックスでもひとつ作って、○とか何かをつけるとサッとわかるかなという、そういう気もするんですが、何か工夫があるか、あるいはそれを入れ込んでしまうと、かえって具体的な業務というのはくどくどしくなってしまうのか、そこがちょっと私わからないところなんです。場合によっては、その業務の中に書かれているところもあり、書かれてない、前の1の中のいろんな基本的事項が拾い出されているものもあり、出されてないものもありというようなところがありまして、これが一様でないなという感じがするんですが。

 芝田宇宙政策課長 

   今の段階で、まだこれはポイントなものですから、実際にはこれは文章化するという作業が今後ございますので、文章化するときに、その辺、かなり工夫できるのかなと。

 栗木委員 

   そうですね。やはりどちらかと言うと、この観念的なうたい文句が、一体業務のどこでもって実現されるのかな、恐らく読み手はプライマリーにはNASDAさんが受けとめられるんでしょうが、一方では、やはり社会に対しての発言であると、大きな重要な役割もあると思いますので、なるべく、わかり切ったことであっても、そこはなるべく丁寧に書いた方がいいと思います。

 井口委員長 

   細かいことなんですけれども、2ページ目の上の方で、「人材の育成・教育」というのがあるんですが、宇宙に関する研究開発体制という、他省庁との連携、関係省庁との連携とか、他の公的研究機関、何となくNASDAだけですべて決めることができるわけではなくて、国立研究所がつくばにありますし、それから大学もあるわけで、そういうものとの連携を密にするというのも、これからの、特に基盤技術の強化には必要なことだと思いますので、少し細かなことになりますけれども、どこかで明確に書かれているとありがたいと思います。
   それから、2ページ目の一番下のところに、「成果の還元」というのがありますが、次回ぐらいに利用部会を立ち上げますね。そこでは、要するに、今までいろんなものの観測データなどの成果が出ているわけですけれども、それを勝手に使ってくださいよと言っただけでは、なかなか利用が進まないので、もうちょっと積極的に、ニーズを調べると同時に、出た成果をどうやって利用しやすいものにしていくか、こちら側も努力するという、それだけの積極的な対応をすることになるんだろうと思うので、その辺のことがもうちょっと書かれていると、よくわかるかなという感じがします。

 長柄委員 

   「成果の還元」というのはわかりませんよ。僕は、「利用の拡大」とかなんとかいう言葉がないと、何か「還元」というのは、お金を税金でいただいたから、それを戻すというのではなくて、そもそも開発するのは利用だと。だから利用を拡大するということにNASDAはそれなりの努力を払うよと。いろんな宇宙観測とかISSとかいろんなことをやるわけで、「利用の拡大」という言葉が、「利用の拡大」に対してしかるべく措置するぞというのがどこかに要ると思いますね。

 井口委員長 

   それから、3ページ目の、もう既に今度のプロジェクトは進んでいるわけですけれども、今、栗木委員の方で進めている評価のやり方とか、それから開発のステージ、A、B、C、Dと書いて今進んでいるわけですけれども、それに当てはめたときに、今どこの位置にあるのかというのを再確認するとか、それから評価というのを数年前ぐらいから、関心が高まったもので、それ以前に始められたプロジェクトもあると思いますが、それを今もう一度見直して再確認するか、あるいは再意義づけというんですか、そういうものをできないものもあるかもしれませんし、できるものもあるかもしれません。そういうものを見直すというのは、これは計画評価部会でしてくださるんですか。

 栗木委員 

   計画評価部会で、今、長柄先生、多少先取りしてやっていただいていると思っています。

 長柄委員 

   アニュアルレビューといいますか、毎年毎年、現状をレビューするということで、必要ならば目標を変更するとか、方向転換するとかいうことはあろうかと思います。そういうアニュアルレビュー的なことは、もう既に走っているもの、これはやります。

 井口委員長 

   それからもう1点、私は外部というか、自動車の世界から来たものですから、極端な言い方をすると、NASDAというのは、何かブラックボックスに見えるんです。中で何がどういうふうになっているのかわからない。インプットでお金は与えられる、アウトプットは確かに出てくるんですけれども、間は見えなくてもいいのかという、まあ一種の透明性ですね。もちろん理事長の名前ははっきりしていますし、理事ももちろんすべて公表されているんですけれども、どなたが何をやっているのかという、人が見えないという感じがするものですから、外から来た者にとっては。もうちょっとグラスボックス化したらどうだからというのは、極端な言い方ですけれども、そういう観点に関してはいかがですか。

 五代委員 

   私の思うには、NASDAの初期のころというのは、例えば気象衛星、放送衛星がございますね。そうすると、グループでやるという、そういう感覚が非常に強かったように思います。しかし、だんだんと先端技術とか、今度は新しいことをやるという場合には、それはもちろんグループでやるんですけれども、やはり人が見えてこないとといけない。リーダーですよね。プロマネかもしれないし、別かもしれない。そういうようなのが出るような、まず自分たちでそういう意識を持つ。要するに、出るくいは打たれるみたいな風潮は排しまして、あるいは、みんながやったんだからどうだということではなくて、やっぱりそういう、人が出てくる、人が見えてくるというのは非常に重要だと思うんです。私もそういうことを今まで言ってきていますけれども、過去は必ずしも一番最初みたいなことで、グループでみんなでやる、それが成果なんだという文化がちょっとありましたので、そこはなかなか変わりにくい。特に技術開発、先端技術となると、やっぱり人が中心になりますよね。

 長柄委員 

   要するに、NASDAの業務で基盤技術開発、一番最先端のことをやるのは、どちらかといいますと、個人、要するに個人の能力があるかないかが非常に物を言う仕事と、それからプロジェクトのような場合は、プロジェクトリーダーの裁量とその集団の力ですね、集団としての力が問題になるし、両方あるんですが、NASDAは従来、通信衛星とか放送衛星とかああいうことから始まったことがあって、どうしても個人の能力というものは余り表に出さないという仕事の進め方、集団の力で仕事をするというふうにやってきたから、そういう文化ができている。しかし、今後こういう最先端のことをいろいろやっていこうとしますと、やっぱり個人の能力によって、いろいろ仕事を引っ張っていくとか、いろんな違った非常に多様な人が存在するという、大学ほどでないにしても、そういう色彩を持たないと、両方の色彩を十分持つような文化にしないと、多分だめだろうと思う。今まで、五代さんがおっしゃったように、集団の方を重視したがために、そういう文化なんだろうと思うんですね。

 五代委員 

   今は変わりつつあると思うんですが、まだ不十分ですね。

 井口委員長 

   すばらしい人がたくさんいるんですよね。私なんかは、ついこの間までわからなかった。いろいろ接してみると、すばらしい研究者、技術者がたくさんいるんですね。そういう人たちがいるということを世の中の人が知らないということは、世の中に対しても損だし、NASDAにしても損じゃないかと思うんですよ。そういう意味も含めて、今、五代委員もおっしゃった、また長柄委員もおっしゃったような方向を、それはまあ文化を変えるというのはなかなか難しくて、時間がかかるかもしれないけれども、やる気になればかなり短期間でできるのではないかという気がするんですけれどもね。まあ、それをここに書き込むかどうかは別かもしれません。
   ほかにいかがでしょうか。

 栗木委員 

   言葉の上の問題で、2ページ目の「経営の効率化」ということの「経営」に波線がついてまして、どなたか直されたか、私じゃないんですが、直されて、「経営」というのは大変ぴったりした言葉ではないか。よく「プロジェクトマネジメント」というと、「プロジェクト管理」と訳すんですけれども、あれは「管理」ではなくて本当に「経営」でして、時間とリソースとをどうやってうまくやりくりしていくか、「やりくり」に近いんですね。ですから、なかなか日本語でまだ定着していないで、「プロジェクトマネジメント」はどうしても「プロジェクト管理」と訳したがるんですが、是非この文章を作るときに、「プロジェクト経営」というような新しい日本語を定着していただければ、今後のいい指針になるのではないかなと思います。

 長柄委員 

   井口委員長がおっしゃった、産官学協力ですか、NASDAと大学なり企業なり研究所が協力してやるというんだったら、この3の「経営の効率化」のところに、もうちょっと何か新しい項目というか、○で書けばいいんではないですか。

 五代委員 

   そうですね。私も産業との関係だと、実は一方通行的に、NASDAが開発したものを民間が産業化すると書いてあるけれども、その逆ではないかと。一緒にやるとか、いろんなパターンがあると思うんですね、今までと違うパターンが。だから、必ずしも他の関係省庁とだけ連携とかいうわけでもなくて、もっとも、民間とも対等な協力というのか、分担とかもあり得ると思うので、少し幅を広げておいた方がいいかなと思います。

 井口委員長 

   それぞれの役割があるんだろうと思うんですね。私が前から言っている、今までの宇宙開発というのは身分制度があって、宇宙開発委員会が一番上の武士で、その次に士農工商か何か知らないけれども、その次にNASDAがあって、下がメーカーのような感じがしていたんですけれども、そうではなくて、技術開発というのは全部対等だけれども役割が違うということですね。だから、メーカーの役割が当然あるわけで、それとNASDAの役割とどううまく連携するかという、そういう観点から書いていただけるとありがたいと思います。

 五代委員 

   別なんですけれども、どこに書いてあるというわけでもないんですが、今、現時点、ごく近いところでは非常に重要なプロジェクトを周知をしましょう、それはまあ結構ですと。ただ、先の計画というのは、やっぱり絶えず考えて少しずつでも、止まっていたら動かないわけですから、少しずつでも芽を出して育てていく。別にうんとお金とか、うんと人手がかかるわけではなくて、ある戦略に沿って、そういうことを絶えずやっていくことが必要だろうと。そういう基礎的な、大学の基礎研究と全く違いますけれども、専攻なんとか、あるいは基盤なんとかでもいいんですけれども、そういうものを計画的にやっぱりきちんと進めることは重要ですよということだと思うんですよ。

 井口委員長 

   進める前に考えなければいけない。

 五代委員 

   そこで、戦略に沿ってと私は言ったんです。戦略をまず考えて、それに沿って考えると。

 井口委員長 

   一番最初のときは、「予見」という言葉もありますけれども、将来の二、三十年先にはどうなるかわからないが、しかし、もしそちらの方向に行ったとすれば非常に大きな影響をもたらすようなことは、非常にリスクは大きいけれども、やってみることも必要ですね。そのあたりの、今、五代委員、おっしゃったような感じを何かうまい言葉でまとめていただけると……。

 長柄委員 

   私は、従来、こういうプロジェクトをやろうということがほぼ決まった段階で研究を始めると。それを、もうやめましょうやと。むしろ最先端のいろんな技術の可能性を追求するとか、基盤的な技術をちゃんとやるとかいうことをかなり手広くやっておきまして、そういうところで技術ができたものをプロジェクトにまとめ上げると。そうすればプロジェクトはすぐに、プロジェクトをやるために技術を開発するというのではなくて、技術なり、最先端のセンサなり何なりができたもので、プログラムなりプロジェクトを組み上げるというふうな方法ですね。そういう意味で、ここで言う基盤技術とか、基盤技術というのはそれでいいと思うんですけれども、この先端技術ですね、最先端の技術もかなり手広くやっとおくと、どういうプロジェクトをやるからこの先端技術をやるというのではなくて、先端技術をやっておいて可能性を広げた上で、次のプロジェクトをどう組むかということですね。
   だから、そういうふうなことで、お金がかかるわけじゃありませんけれども、最先端の技術についての追求というんですか、それをちゃんとやりましょうというのはお持ちなのかどうかわかりませんが、ちょっといるかもしれませんよ。

 五代委員 

   おっしゃるとおりで、NASDAでもどこでもいいんですけれども、人がいますと。その中に全員がプロジェクトをやるのに向いているわけでもないわけですね。先端的なものにはすごい力を発揮する人とか、ある年限やることによって力がどんどん出てくるという人もいますから、適材適所というか、やっていく必要があるし、その場もあると思うんですね。全員、こちら向けとかそういう話ではないとは思います。

 長柄委員 

   特に、大学だとか研究所とNASDAあたりが協力して、大いにやろうなんていうのは、そういう先端的なところでは非常にやりやすい。NASDAに全部その技術者がいなくても、大学だとかそのあたりに、非常にいろんなアイデアを持ったりしている方がいらっしゃいますから、多分そういうところで大学との協力が非常に生きてくるんだと思います。

 井口委員長 

   何かうまい言葉でまとめていただけませんか。

 五代委員 

   もう1つよろしいですか。3ページ目の真ん中に「将来、先端的ロケット」云々と波線のところですね。これ、もう少し拡大解釈しますと、これは今ロケットの話をしていますけれども、これは非常に重要だと思うんですが、技術開発、例えば普通は、ミッション目的プロジェクトなんですね、そうではなくて、技術開発プロジェクトというカテゴリーがあっていいんではないか。そうすると、今、長柄さんがおっしゃったように、そういうのが、これも大中小いろいろあると思うんですが、それが成熟してきてでき上がってくれば、それがこのミッションオリエンテッドなプロジェクトのベースになるということで、今ではなかなか技術開発プロジェクトということが立てにくいというか、予算要求もしにくいとかということがあるんですが、それが継続的に行われることによって、非常に技術基盤があるし、将来へのプロジェクトの成功に非常につながると思うんですね。

 井口委員長 

   ミッションという言い方がいいですかね。ミッションオリエンテッドな……。

 五代委員 

   ミッションオリエンテッド、そう、技術開発プログラムですかね。

 長柄委員 

   従来、例えばNASAのあれでしたら、エアロ・スペース・テクノロジーの中にニューミレニアム・プログラムなんてありまして、要するに、最新技術を開発して宇宙実証をする、これは本当の技術開発、何に使おうというのではなくて、要するに、非常に斬新なテクノロジーをまず地上で研究して、それを宇宙で実証しようというそういうプログラムがあるわけですね。それで、これ、公募でやっておられて。そういうことですね。

 五代委員 

   そうですね。

 長柄委員 

   ですから、この基盤というか最先端といいますか、そういうプログラムをちゃんと作って、何のためにやるというのではなくて、先端技術なり基盤技術をとにかく作り上げる、いいものができればそれをプロジェクトに採用すると。

 澤田委員 

   それは公募みたいな形でやるんですか。

 長柄委員 

   そうです。

 澤田委員 

   これ、何かフィックスすると、どうにもならなくなってしまう恐れがあるね。

 長柄委員 

   公募ですね、非常にいいアイデアを……。

 澤田委員 

   口だけが残るとか、どうにもならないのだけ残ってしまうとか。国の研究所の弊害なんですよ、これは。大学にもそういう先生たちが一体いるのかどうかというのは非常に疑問だけれども、広く、日本だけでなくたっていいんじゃないかという気もするけれどもね。

 五代委員 

   若干筋道、こういう方向ですよという、それはいくんですけれどもね。

 澤田委員 

   そうそう。公募でするテーマも決めていくというようなね。

 五代委員 

   それで、だんだん範囲を広げていく。ですからやっぱり戦略が要るんだろうと。

 澤田委員 

   何かさっき、金があるからこれやりますと、あいつ、暇だからやらせておこうという話にそのうちなってしまう恐れが多分にあるから、そこは運用をうまくしないと、そんなに研究者というのは器用じゃなくて、これしかできないというのが研究者ですからね。あれもこれもできますなんていう研究者はいないんですから。

 五代委員 

   もう1つ、よろしいですか。
要するに、「宇宙もの」というのは非常に時間がかかってしまって、これは予算がつかないとかそういうのもありますけれども、それを除いたりしても、3年とか数年というように、民生はどんどん今早くなって、もちろん成熟度が違いますけれども、10年というようなものだと、実際にはプランニングなんかを入れると、大体のものは10年ぐらいになってしまう。
   そうすると、例えばサイエンスの人だったら、これ、やっぱり競争ですよね。世界のサイエンスとの競争でね。技術開発についてもやっぱりスピードというのは重要です。それから、コマーシャル的にも産業化、これも同じスピードが要るんです。1つは、スピードというのが余り遅過ぎるなというのが感じられる。もっとも、余り早く急いですれば、拙速で失敗する。
   もう1つの要素は信頼性の話で、拙速をすれば危ない、だけれども高い信頼性はほしい。
   それからもう1つは、まあ経済的にというか、やはり限られた資源の中で進めるわけですから、効率的ともいいますか、これゴールディンなんかがやったのは、極端に進むと失敗しますが、余り遅いのも間違いなく問題。この3つがどういうふうにしたらうまくバランスがとれるかというので、私は、例えば衛星なんかでいった場合に、これは少し時間をかけても、絶対確実で、少し高くてもいいという衛星もあれば、もっと小さくて若干リスクはある、だけど早く成果を得られる可能性があるというもの、あるいはもう1つ、もっとリスクはあるかもしれないが、もっと小さいものであれば、もうやってみるというのもあると思います、まあ昔型かもしれませんけれども。
   そういうような規模で、大中小みたいなプロジェクトをバランスよく回転させるように、将来はしていかなければいけないと思います。大きいのも必要ですし、早いのも必要、だけどみんなそれを1つでやってしまおうというのは無理があると思うんですね。そういうような考え方というものをこれから少し検討してもらったらどうですか。

 井口委員長 

   その辺、最終的なこととなると、我々、宇宙開発委員会がある程度やらなければいけないわけで。

 長柄委員 

   イギリスの衛星みたいにリスクが非常に高くても、早く、小さいものですから、その考えは一応確認されていると思うんですが、まだ実際に入ってない。ですから、今後、今の最先端、例えばNASAのニューミレニアムみたいなものは、これは成功すればもうけものというふうな感じの打上げですよね。とにかく、地上でいろいろ試験をするよりは、宇宙で一挙に試験をしてしまおうというような感じのものがありますしね、だからそれはプログラムの立て方だと思いますね。そういうところはそういうプログラムをやるんだよということで……。

 五代委員 

   えてして、うっかりすると、みんな全部を満足させてしまうようなことになってしまう。

 長柄委員 

   だから、いろんなプログラムなりプロジェクト、いろんな多様性を持たせるといいますか、資源を送って、時間をかけてもいいから着実にやらなくてはいけないものというのと、手抜きをして早く、しかしリスクが高いぞというような、多様なものが混ざり合っていかなくてはいかんだろうと思いますね。

 栗木委員 

   やっぱり多様性も求めると同時に効率性も考えますと、競争原理みたいなものがそこに入るべきではないでしょうかね。特にねらいと、それから、それがどう実現されていくかという過程と、その成果とを含めて、そういうものは、やはり提案があって採択して評価するという、そのプロセスをやはり導入していかないと、そのスピードもまた上がらないんじゃないかなと。

 井口委員長 

   日本の場合には、全体として規模が小さいということもあって、大きなものを競争発注するというのは、なかなか難しいですけれども、小さいものはできないはずはない。

 五代委員 

   できますよね、小さければ。

 井口委員長 

   だから競争原理を基本にするとか、そういう考え方というのはあり得ると思いますね。
   それと、説明のときには、スピードというのをおっしゃいましたけれども、どこに入っているんですか。

 芝田宇宙政策課長 

   2ページの3のところで、ちょっと「効率化」という言葉が適切でなかったかもしれませんが。

 井口委員長 

   速さですよね。即応性というのか。五代委員のおっしゃったように、スピード、コスト、信頼性とか、この辺をどうバランスというのか、どこかに触れておいたっていいわけですけれども、その辺の見方というのを、ひとつ評価の方で少し明確にしておいていただけるとありがたいですね。
   いろんなニュースによると、「FBC」、Faster、Better、Cheaperというのは、監査委員会がこれはよくないという評価をしたということに対して、いや、とんでもない、成功したという話があって、またそれに対して、監査委員会が、きょうのホームページを見ると、Faster、Better、Cheaperという考え方はいいんだ、けれども、それをちゃんと実現するためだけの体制がNASAになかったんだと、そういう言い方をしているというのが出ていましたけれどもね。

 五代委員 

   私、前から実はですね。ゴールディンさんがFaster、Better、Cheaperを言う前に、例えばHOPE−Xの前段階として、OREX、HYFLEX、ALFLEX、ああいうふうに1つが数十億円のプログラム、あれはやっぱり大変で、その間にトラブルがいっぱいありましたけれども、実力がついたし、その先を進めようということができたと思うんです。問題は、Fasterはわかりますね、Betterという言葉は極めてあいまいで、私も、Betterというのをどう思うというと、大体みんな性能向上とかそう考える。性能向上して早くて安いのができないですよね。だから、その辺のさっきのもとへ戻ると、やっぱりバランスだと思うんです。NASDAでも、結構浸透したけれども、やっぱりみんな解釈が結構怪しかったなあと、人にいろいろ聞いてみますと、思いますね。

 井口委員長 

   そういうことがありますので、実はBetterという話が出ましたので、3ページ目の真ん中の、先ほど五代委員がおっしゃった、波アンダーラインの引いてあるところですけれども、「先端的ロケットの技術開発プロジェクトを策定する場合には、一方で我が国としての輸送手段を保持することの必要性」、つまり何かわかりにくい表現になっていますけれども、私の理解としては、要するに、打上げというプロジェクトという作業は常にできるようなものを実現しよう。今、打上げは2年間ストップしてしまっているわけですね、H−2Aができないために。ということで、ほかの衛星などが止まってしまっているものがあるんですね。これは非常に、産業技術に大きなマイナスのインパクトを与えていて、そういう技術者というのはいなくなってしまう。
   だからやっぱり、あるところで産業技術を育てるには、定常的に何かが続いている必要があるわけですね。そのために、技術開発としてのロケットあるいはエンジン開発と、それから打上げという業務を定常的に行うというプロジェクトを別な考えで持っていったらいいのではないかということです。それから先ほどのBetterに関しては、こういう今までの批判があるんですけれども、今までは、例えばH−2Aにしろ、ちょっとずつ変えているんです。一度成功したら全然変えないで、打上げの方のプロジェクトに入れてしまう、もう一切変えないで。そういうプリンシプルが、そこを分けることによって実現できるんではないかという気もするんですけれども。

 五代委員 

   かなりそういうつもりで、あるところへ凍結というとおかしいんですけれども、これ、なかなか会社の末端までどうなっているかというと、ちょっとあれですね。

 栗木委員 

   似たようなところは、衛星のバス部は、私も変えないで、ずっと何機かいった方が……。

 井口委員長 

   つまり、技術者だから、こうやったらいいということはわかっていると、どうしても変えたくなるんですね。

 栗木委員 

   ですけれども、それは変えないという我慢をしないと、努力をしないといけないんです。

 五代委員 

   確かに致命的問題があるから変えるというのと、ちょっと変えたいというのはなかなか線引きが難しいんですよね。それで、その辺のところまで企業のそういう実際やっている設計所の最後に設計する人、そこまではっきり意識があるか、どう切るか、すごい難しいですね。基本は言ってあるんですよね。栗木先生と全く同じなんですけれども。

 井口委員長 

   変えたければ、その技術開発の方で変えてくれと。打上げの方はもう変えないでほしい。

 栗木委員 

   バス機器変えないで上に載っけるものを変えてくれ、そういう感じなんですけれどもね。

 井口委員長 

   そういう考え方もあると思いますので、それも踏まえて……。
   ほかに何か、今の時点でお気づきのところはありませんか。

 五代委員 

   衛星のことには、余りないんですが、例えば地球観測、「日本独自の」ということだけ書いてあるんですが、ものによっては、世界、要するに国際協力でいろいろやったりするのがあるんですよね。そういうのは何かのときに書いていただいた方がいいんじゃないでしょうか。

 長柄委員 

   次の段階はもう、ほぼフルテキストのものが出てくるでしょう。そうしないと、余り2ページ、3ページ議論していても進まないと思うんですね。

 芝田宇宙政策課長 

   1回、NASDAからも御意見をお伺いしてからかなと思っていたんですけれども、作業が間に合えば本文化しますし、もしNASDAの方がその前に何か意見を表明してくだされば、それを踏まえてから本文化しようと思っていますが。

 井口委員長 

   来週、それをやることになりますか。つまり、連休に入るから、連休の間は、皆さん方は休めるから、その週あたり仕事をするのか。

 芝田宇宙政策課長 

   ちょっとその辺も踏まえて、よく検討します。
   ちなみに連休の5月2日の水曜日は、特段の反対がなければ、休会の方向で今考えさせていただきたいと思います。

 井口委員長 

   それでは、4番目の「その他」でございますが、これは第14回議事録要旨でございますので、御覧くださいますようにお願いいたします。
   それでは、以上で、第15回の宇宙開発委員会を閉会にさせていただきます。どうもありがとうございました。

午後3時30分閉会




(研究開発局宇宙政策課)

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