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付録1

LNG推進系飛行実証プロジェクトの評価票の集計及び意見

評価結果
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
1  技術的対策の方向性
かっこ1) 複合材推薬タンクの不適合に伴う金属タンクへ設計変更
1 3.5 3.5 0
かっこ2) エンジン燃焼中の燃焼圧力の過大な変動に対する対策
1 4 2 1
2  開発計画
0 2 5 1
3  GXロケット計画支援の方向性

1  技術的対策の方向性
 
(1)  複合材推進薬タンクの不適合に伴い金属タンクへ設計を変更したという技術的対策の方向性が、LNG推進系基盤技術の修得及びその成果のGXロケット計画への技術移転に対し妥当であるかを評価して下さい。
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
複合材推薬タンクの不適合に伴う金属タンクへ設計変更 1 3.5 3.5 0

評価根拠のコメント
【妥当】
1  複合材推薬タンクの採用については相当の検討、実験・解析が破壊力学による評価を含め行われ、現状では、本タンクはプロジェクトの要求を満たすことは出来ないと考えられる。仮に研究段階にまで戻って本タンク技術のさらなるブレイクスルーを目指すとしても、時間と費用、成否の点で、商用ロケットの開発という目的下では現実的ではない。一方、金属タンクは、実績があり課題も少ないと考えられる。
 したがって技術的な観点からは金属タンクに変更することは妥当と考えられる。
 なおタンクの設計変更およびエンジン自体の課題により、ロケットの性能が所期の値より低下しまた開発費用も増加していることは留意しておく必要がある。
【概ね妥当】
2  平成22年度という期限を厳密に守るのであれば,事業的側面から安全側に考えて,新たな不具合発生の可能性が極めて低い金属製タンクへの設計変更は止むを得ない.
 しかし一方で,複合材製タンクは汎用性が高く,既に多くの技術の習得が進んだ現時点では,少なくともJAXA(ジャクサ)単独ででもこれに関わる技術開発を継続することが望ましい.

3  LNG推進系の開発にとって目玉の一つである複合材推進薬タンク技術の修得という目的から外れるが、やむをえぬ措置である。
 然しながら商用ロケット開発と言う目標設定において、根幹をなす部分が結果的に成立しないと言うことは、技術的裏付けが不足していた計画であったと言わざるをえない。

4  複合材推薬タンクは本プロジェクトにとっての不可欠な要素ではないので取り合えず金属タンクで設計する事は止むを得ない。将来の課題としてはより軽量な複合材タンクはロケットの一つの要素技術として開発を継続すればよい。
 しかしながらタンクの問題以外にもエンジン比推力低下、質量増加等いずれも研究段階で見通しをつけておくべき課題であると考えられるところから本開発計画が杜撰であったと言われても止むを得ないと思う。

5  《事務局注:「概ね妥当」と「疑問がある」の両方にチェック》
 複合材タンクからアルミタンクへの見直しは、ローカルには妥当であるが、開発失敗に伴い、本来なら計画全体の見直しが必要である。推進薬タンクの設計変更と、LNG推進系基盤技術習得との関連性を見出すのは困難である。元々アルミとCFRPは熱膨張率の差が大きいので、複合材タンクとして纏めることは極めて難しい。この組み合わせはリスクが高いので、設計者なら先ず避けて通る組み合わせである。アルミとCFRPの組み合わせで複合材タンクが出来ないのだから、金属タンクに変更するのは当然の帰結であるが、複合材タンクあってのガス押し式推進系であった筈である。また複合材タンクの他にも、開発の初期段階から低圧燃焼の液々衝突式のインジェクタでは予定した性能が出ないことが明確になっている。その他質量増加も加わって、当初目指した打上げ性能が得られなくなった。そのため1段推進系も当初計画とは完全に異なったシステムとなっており、GXロケットそのものも当初計画とは完全に異質のものとなっている。CFPRタンクが失敗に終わったのにも係わらず、小手先の変更で開発を進めてきた方法論は極めて疑問である。ロケットはトータルシステムとして整合していることで始めて意味のあるものとして成り立つものである。LNG推進系基盤技術の修得及びその成果のGXロケット計画への技術移転、そのものの意義が変質している。
【疑問がある】
6  当初の目論見では、タンクの圧力を高めることでタービンなどの複雑な機構を排除し、かつ、それでも重量増加を最小に抑えることで2段ロケットとして成立すること、また、簡単なシステムにすることでコストを下げ信頼度を上げることを目指していたはずで、それが実現できて初めて1世界的にもユニークでコスト競争力のある推進系、2GXロケットの2段として利用できる推進系、となるわけであり、それが当初国の開発予算をつけた際のRationaleであったはずである。その前提が崩れた段階で、この開発および実機による実証自体の価値自体が(ゼロにはならないが)相当ゼロに近いレベルにまで下がったと思われる。
 GXへの技術移転に関しても、当初のスペックが相当のレベルでダウン(ペイロードが50パーセント以下)し、かつ複雑化によりコスト増・信頼性低下をもたらしたにもかかわらずビジネスモデルとして成立し続けられるという主張は納得しがたく、こんな中途半端な状態での技術移転の意義があるのか、大いに疑問である。

7
技術習得の中途半端な断念:
 たどり着いた対策を基本として、更に、実現性を探る方が良い。(メタル選択は、予想される最悪事態のバックアップ)
独自可能な技術アピールの消失:
 複合材タンクは、技術の先進性を日本が世界に誇れる恰好の目標アイテム。
技術波及効果の看過:
 大小さまざまな高圧クライオ容器の複合材成型は、GXのように機能と要素構成の極端な簡単化を狙う構造に肝心かなめとなる技術、さらに、GXの展開シナリオ(大型ブースターあるいは宇宙軌道小スラスターなど)を左右する要因。

8  LOX/LNG推進剤は、LOX/ケロシンには及ばないもののLOX/LH2よりも比重が大きいことから、打上ロケットの初段に適しており、また、LNGはLH2に比較すると宇宙での貯蔵性にも優れていることから軌道間輸送機(OTV)にも適している。更に、LNGはLH2よりも安価であり、ケロシンより低公害であることからLOX/LNG推進系は将来有望である。以上のような基本的な観点からLNG推進系の基盤技術を見た場合、初段用推進系としては燃焼圧力の高圧化が必要であるが、初段用推進剤タンクの容量は大きく、タンク加圧方式はターボポンプ供給方式に比較して重量の点で不利である。また、OTV用推進系としては推進剤の気化を抑制した貯蔵性の向上が必要であるが、推進剤タンクを加圧すると低温推進剤の温度が上昇するため、長時間の貯蔵性に問題がある。しかし、打ち上げロケットの上段推進系のタンクとしては、過度な高圧化や貯蔵性も必要ないので、GXロケットの2段目として、複合材タンクを用いた加圧方式を選択することによって、軽量化やシステムの簡素化による高信頼性化、低コスト化を目指したことは評価できる。しかし、複合材タンクの不具合によって、従来の金属タンクに変更し、ブーストポンプを追加したことによって、タンク加圧供給方式よるシステムの簡素化もなく、ターボポンプ供給方式による高燃焼圧力化にも繋がらないものとなり、むしろ両供給方式の悪い部分を抱え込む状態になっている。
 以上の観点から、推進剤タンクを金属タンクに変更するのであれば、ブーストポンプ供給方式ではなく、本格的なターボポンプ供給方式に変更し、再生冷却式燃焼器を用いたガスジェネレーターサイクルにすることによって、先に述べたLOX/LNG推進系の利点を活かした将来の基盤技術が構築できるものと考える。

(2)  エンジン燃焼中の燃焼圧力の過大な変動は、JAXA(ジャクサ)が提示している技術的対策の方向性に沿って、対策を着実に実施すれば克服可能なものと見ることができるかを評価して下さい。
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
エンジン燃焼中の燃焼圧力の過大な変動に対する対策 1 4 2 1

評価根拠のコメント
【妥当】
1  燃焼圧のスパイクは,分科会の議論でも今後の長時間燃焼で絶対に生じないという結論は出ていないと判断するが,これが生じた場合にも制御は可能であるという点では合意は得られていると思う.

【概ね妥当】
2  平成18年10月13日付JAXA(ジャクサ)の回答書31ページの通りであれば多少総花的な点はありますが良いと思う。

3  エンジン燃焼中の燃焼圧力の過大な変動は、噴射面または燃焼室に未燃推進薬が蓄積、燃焼したことによる可能性が高いと推定されている。これに対する対策としてフィルム冷却流量を削減し、混合比を均一化すること、および噴射器を変更して燃焼面を噴射面に近づけることが計画されている。この対策によって燃焼圧力の過大な変動は抑制されることについては概ね妥当であると評価できる。
 しかし、この対策による副作用に注意する必要がある。この対策の有効性は270秒間程度の燃焼試験によって確認されたものであり、実際の飛行時の燃焼時間(500秒間)において予測される副作用として、噴射面の焼損やアブレーター燃焼室壁の焼損等が考えられる。
 したがって、燃焼圧力の過大な変動の問題は、以上のような副作用と合わせて、今後に予定される長時間燃焼試験の結果を踏まえて総合的に解決する必要がある。

4
燃焼室冷却および噴射方式に則した変動メカニズム究明:
 膜冷却に伴う過剰な燃料溜まりに起因するパルス燃焼は、F-1エンジン開発においても、燃焼室と噴射器エレメントの連成振動や噴射形成される燃焼面位置の変動とならび大きな開発課題だったと聴き及ぶ。圧力変動の源は熱放出の時間微分なため、これをシミュレーション制御する実験は困難であり、実機レベルの丹念なデータ収集と分析結果に拠らざるを得ないと判断する。長秒時の追試を含め、着実な燃焼試験をもとに改良を加える対策・方向性は妥当と判断する。
噴射面焼損など対策に介在する危険性:
 火炎位置を噴射面に近づける対策は、精度ある熱収支予測(隅部と中央の干渉を含め)が前提となろう。定性的にせよ、計算機シミュレーションはじめ、あらゆる解析手法を駆使して熱流動伝達現象ごとの各エネルギー項のブレークダウンを至急探って、実験データと突合せ実施することを勧める。


5  エンジン燃焼中の燃焼圧力の過大変動については、相当の検討・実験・解析により現象の詳細がかなり見極められていると考えられ、またLNGエンジン技術課題評価委員会における専門家の評価も行われている。したがって提示されている方向性はおおむね妥当と考えられる。
 この場合、今後現象について改善策を実行していく中で、技術課題評価委員会でも指摘されている種々の可能性、考え方、対応も念頭に置き、必要に応じさらに専門家の意見を聞いて、状況変化やさらなる課題発生時に迅速かつ的確に対処しうるようあらかじめ方向性を確認しておくことが望まれる。
 この種の問題の解決には、的確なエンジニアリングジャッジメントが重要と思われる。そのためには、最初にすべての可能性を列挙し徹底的に検討して、するべきこととしなくてもよいことを明らかにして問題の本質を捉えるようにし、次に経済的、時間的な面も考慮して対応の優先順位をあらかじめ付けておく。これにより、開発における無駄や、予測が異なった場合の迅速な対応が可能となり、経済的、時間的ロスを最小限にとどめることができると考えられる。
【疑問がある】
6  まだまだ現象の物理的理解には程遠く、提示されている案も「現状の理解」に基づいたものでしかなく、まだまだ今後、数多くの試験により「仮説の立案から検証」のプロセスをイタレーションしていく必要があると思われる。提示されたプランはすべて予想通りにいくことが前提となっており、そんなに甘くはないと思う。甘くないことはこれまでの開発で明確になったはずである。LNG推進系の技術習得としてみた場合、ここは、じっくりと時間をかけて徹底的に「現象の把握・理解・モデルの構築」に努め、その結果をもとに理論的根拠にのっとった対策をとるべきであり、それが将来の大きな力となるはずである。安易に代替案に走るのは、この追求を放棄することであり、その意味ではよくない。
 問題は22年度引渡しと言う納期が決められていることで、そのような状況で研究開発を続けると、間に合わなくなると代替案に走る必要があったりして、本来めざすべき「現象の根本的理解」につながらず、またしても中途半端な成果になってしまうと思われる。これまでの試験結果から、「そんなに簡単なメカニズムで説明できる系ではない」ことが判明したのだから、それに対応したじっくりした研究開発戦略で対応していく必要があろう。
 「研究」の側面と「間に合わせなければならない」という「開発」は切り離して考えていかねば、常に中途半端なアウトプットとなる。

7  方向性は定性的には妥当であると思われるが、未だ提案されている対策がフィジブルであることが確認されていない。燃焼器は極めてセンシティーブな要素であり、僅かな設計変更で特性が大幅に異なる可能性が高い。更に開発中のエンジンの特性として、対策が妥当であったかどうかは、長時間試験の結果でないと最終的な確認が出来ない可能性もあり、開発のリスクが高い。従って、この段階で対策が上手く行くという前提でその他の作業を進めることには問題がある。最小限でも後半年から1年の成果を見て開発リスクの有無を判断する必要がある。これまでわが国で開発してきた液体ロケットエンジンは、ほぼ同様なコンセプトのエンジンが外国では既に完成あるいはそれに近い状態にあって、必ず答えがあるシステムであった。それに対して今回開発を目指しているLNGエンジンは、システムの良否は別として、世界で始めての方式であり、また燃焼ガスのすぐ隣で氷結が発生すると言う極めて特異なエンジンである。従って必ず答えがあるとは限らない。その根本的な差を十分認識する必要がある。
【評価不能】
8  当事者が妥当な対策であると考えるのならば、小委員会に諮るまでもなく、対策を施した噴射器(お金や時間がかかるのであればサブスケール)の燃焼試験を早急に実施すべきであって、その結果をもって当該委員会に諮って欲しい(フルスケール供試体製作に時間がかかるのであれば、サブスケールで燃焼実験を先行させ、その結果を提示の上で議論すべきものと考える)。
 現時点での評価は困難である。

2  開発計画
   今回の計画見直しに至った原因の分析を踏まえ、スケジュール、実施体制等の開発計画が、LNG推進系基盤技術の修得及びその成果のGXロケット計画への技術移転に対し的確なものとなっているかを評価して下さい。
 特に、関係企業との責任分担関係及びJAXA(ジャクサ)のプロジェクトチームに付与される権限と責任の範囲が明確になっているかについて評価して下さい。
  妥当 概ね妥当 疑問がある 評価不能
開発計画 0 2 5 1

評価根拠のコメント
【概ね妥当】
1
研究から開発へとフェーズを移す困難さ:
 コンコルドなどを見れば、ロケットに限らず、設計段階で研究と開発の両フェーズを行き来する事態になると容易に開発費が4倍にも達する例は多い。研究では現象の根源まで探ろうと際限ない、一方、開発では期限内に仕上げようと短視眼に陥りやすい。今回の見直しは、丁度狭間での選択と映り、評価は概ね妥当と判断せざるを得ない。
LNGエンジン仕様のふがいなさ:
 アブレーティブ冷却で衝突型噴射をLOX−LNGに適用する設計は、再生冷却をメタンでなくLNGで実施する冒険に比べれば、良い選択であろうし、同軸噴射との比較データも得られて知見が広がる。しかし、燃焼器技術到達レベルの点から下位である。また、何といっても、ISPを大きく下方修正せざるを得ない点は不甲斐ない。燃焼効率やノズル効率の向上の目処を示さないとGXにも載せてもらえそうにないと自覚を促したい。JAXA(ジャクサ)内部はもちろん、大学はじめ他機関と連携して、燃焼不安定対策と同様、早急に改良を図るべきであろう。
事業性(ビジネス)への懸念:
 GXをビジネスと直結するには時期尚早の印象がしてならない。ただ、当初の極端な簡単設計概念が成立するなら、実験(研究)機と実用機の中間的位置づけとしてのハードウエア役割が果たせて十分意義あるプロジェクトに成り得ると思われ残念である。国内で展開された技術をシステム統合を通じてハードウエアにまとめる過程は大変重要であり、また、海外からの技術移転といえども、運用・評価を独自で行えるインフラを構築できるなら意義が見出せよう。LNGエンジンの仕様変更を踏まえて、GX仕様の見直しは必至と思われるが、LNGエンジンを上段に積むことの意味を(将来のブースターないし軌道スラスター化、さらに、メタンエンジンとの関係も含めて)再考しながら、企業側から開発の魅力とスケジュールをアピールする努力が望まれる。要は、宇宙への関心を広げる中で、ビジネスを探ってゆくわけであろう。日本では、前者の役割をJAXA(ジャクサ)が握っているため、企業側とJAXA(ジャクサ)プロジェクトチームという構図にならず、JAXA(ジャクサ)と企業側という構図になってしまう点が両者の責任体制の分担を議論する際に課題といえるかもしれない。企業側がコンソーシアムを組み、JAXA(ジャクサ)を事業性からリードする実施体制も一考かもしれない。

2  今回の計画見直しに至った原因の技術的分析は十分に行われ、取り組み方についても若干の分析は行われている。
 その結果を反映して今回計画されたスケジュールは、ロケット性能と経済性を犠牲にしつつも、開発のリスクをあらかじめ分析し、実績の重視、現試験設備に対応した構造、実物大あるいは実燃焼時間による試験など、技術的、時間的に出来るだけ確実に所期の目的を達成できるよう努めている。
 実施体制についてはこれまでと基本的には大きな枠組みの変更はなく、またこれが計画見直しの原因になったとは判断されない。
 以上から、スケジュール、実施体制等の開発計画はおおむね妥当と判断される。
 なお、これまでの開発の状況について考えて見ると、プロジェクトマネジメントにもっと力を注ぐ必要があるように思われる。困難な課題や予測されない事態への対応では、プロジェクト員全員が目的を確認し同じくして協力し、洞察力と技術力をもち、自由でありかつ統制されている組織と人の実現が重要と思われる。
 プロジェクトの最終目標(ロケットの性能、高度および重量)についてはさらに十分に議論されるべきと考えられる。
【疑問がある】
3  まず、以下のような理由で、見直し案のLNG推進系による2段ロケットは、GXがビジネスとして進めていく上で不適合であると考えざるを得ない。
1  ペイロードが当初よりも50パーセント近く(一部それ以上)もダウンしてしまった。
2  2段の設計変更で、当初考えていたシンプルなシステムから「いろんなところにパッチをあてたような」複雑でこってりしたシステムになってしまい、コストが大幅に増、信頼性も低下してしまうことが予想される。
3   2により、LNG推進系を採用する意義自体もなく、対案として既存の2段ロケット(LE-5など)を使わない理由がなくなってしまった。
 またLNG系の基盤技術の習得と言う観点からも、一歩先を目指している諸外国の動向などと比較しても中途半端な目標設定となっている。つまり、ビジネスと研究開発の妥協案をとろうとするあまり、結局、どちらにとっても中途半端な目標スペックになってしまっている。
 もう一つの大きな危惧は、このプロジェクトを進めるチームのモチベーションの問題である。JAXA(ジャクサ)のLNG開発のこれまでの経緯を見ても、いいかげんな予測(当初のISPや重量予測など)、遅い対応などずさんなプログラム管理が見え見えである。このような低レベルのモチベーションでいいものができる道理もなく、モチベーションを再度高める意味でも、目標再設定を含めてプログラムの大幅な改革が必要な時期に来ていると考える。これを先延ばしにするともっと悲惨なことになると予想される。

4  A.もともと平成14年6月18日付プロジェクトの評価報告書によれば「他の選択肢との比較検討がほとんど実施されていない・・・。」「基盤技術の成熟化を図るため、今後、燃焼反応・・・に関する解析を実施して試験データと併せて総合的な検討を行うべきである。」等の理由から開発段階への移行は否定された。
 B.にもかかわらず平成15年3月10日付プロジェクト評価報告書によれば「最優先の目標である燃料、複合材構造などの基板技術の開発・成熟を果して臨むこととし、・・・」「今後適切に情報が開示され、開発過程に於いても適時適切にプロジェクトの進行状況が評価される事を前提に、・・・」と条件付ながら開発段階への移行が認められた。
 今回の中間評価に於いて、JAXA(ジャクサ)から提示された資料に於いても上述の基本的な問題に、応えているとは言い難く、平成18年8月のJAXA(ジャクサ),LNGエンジン技術課題評価委員会の報告書に於いても何人かの専門家は未だ疑問を表明されている。
 基本的な部分で課題を積み残したまま先へ先へと進めるやり方が今までの大幅予算超過或いは大幅な日程遅れを生じた遠因であると思われるし、このままこのやり方を続けるのであれば「平成22年民間引渡し」「予算追加250億円」も鵜呑みにはには出来ない。
 プロジェクトの開発状況について(平成18年9月26日JAXA(ジャクサ))の106ページの開発スケジュールを見ても(おそらく従前と変わらず)どこがクリティカルパスであるのか、どのイベントが最重要なのか等の記述がないので「全てがうまくいけばこうなります。」という記述にしか読めない。
 当面は期限を決めて最大の問題点である燃焼圧変動に絞って検討し、解決策が見出せた時点で新たな開発計画をスタートさせては如何でしょうか。

5  官民が共同で最新技術を開発し実用化しようという本プロジェクトの目的は,今後の我が国の宇宙開発におけるパイロット的手法として大いに推進すべきものである.しかしながら基盤技術開発と事業化のための開発を同時並行的に行うことが最善だとは思えない.本来JAXA(ジャクサ)は技術基盤の整備を産学の協力を得ながら着々と進め,技術開発が進んだ段階でこれを速やかに民間に移転すべきであろう.
 本プロジェクトは既に相当の段階に進んではいるが,宇宙開発における官民共同プロジェクトの推進に関する方針についてのコンセンサスを今一度確認した上で,22年度という期限とは別にJAXA(ジャクサ)としては最先端の要素技術開発を進めるべきである.一方で,事業化に関わる部分は全面的に企業側が責任を持つべきであり,必要な技術はこれがJAXA(ジャクサ)側にあれば速やかに取得するという立場で臨むことを期待する.

6  LNG推進系は、世界的に見ても実用化された例はなく、その基盤技術の修得にはリスクが伴う。従って、その成果を予定されたスケジュールに沿って打上ビジネスを志向するGXロケット計画に技術移転することには無理がある。ビジネスを志向するのであれば、できるだけ既存の技術やハードウエアーを流用し、新規の開発要素はできるだけ避けて、コストおよびスケジュールを計画内に収めるのが基本である。GXロケットの初段に用いる予定の米国のアトラスロケットの初段には、ロシアで開発された既存のRD-180エンジンを用いており、先に述べた趣旨に沿ったものである。しかし、GXロケットの上段では、全く相反する趣旨のLNG推進系の研究開発が行われており、ビジネスを志向する開発なのか、将来の基盤技術の修得を志向した研究開発なのか、当該プロジェクトの趣旨が曖昧である。
 GXロケット全体の健全性を前提とした2段LNG推進系の開発でなければならない。従って、関係企業はLNG推進系を供給するJAXA(ジャクサ)に対してGXロケット全体に関する主要な情報を開示できる体制にすべきである。そして、双方でGXロケットの健全性を逐次検証すべきである。特に、打上能力や射場での飛行安全に関する情報交換を密にすべきである。

7  実機開発にGOが掛かってほぼ4年を経過して技術成果がほぼ0と言うことは、開発の方法論および体制に問題があったと言わざるを得ない。また、新規技術開発において技術実績の評価と取入れ、更に積上げ方式の開発を行ってこなかったのは、方法論としては問題である。
 先ず問題と思われるのは、新しいテクノロジーの開発では基礎研究の結果に基づいて設計が進められるのに対し、分科会の席で報告された韓国の例のような、基礎的なデータの積み上げが為されていない。また全機システム設計に、JAXA(ジャクサ)が直接的にはタッチしていないことも問題である。ロケットのシステム設計は、機体の設計のみでは無く試験設備、射場設備の設計から射場運用および打上げ後の追跡管制、地上安全等、非常に幅の広い総合作業であり、多分野の専門家の経験と知恵が必要な作業である。G-G間のテクノロジートランスファ合意が為されていない限り、Lockheed-Martinがその指導をしてくれているとは思えないし、仮にそうだとしても種子島特有の条件があり、打上げ能力一つにしても大きく影響される。打上げ条件を精査した結果、高度500キロメートルの打上げ能力も季節によっては公表値から大きく低下することが明らかとなった通りである。当初にミッション計画である高度800キロメートル軌道の打上げ能力は更に大幅に低下することは明らかである。JAXA(ジャクサ)の直接の関与が無い限り、ロケット全体システムの設計およびその妥当性評価は不可能であると考える。
 JAXA(ジャクサ)とGX社の間では、インタフェース会議で事を決めているというのも、初めての作業形態ではないか。GXロケットはAtlasシリーズの1つに加えられると言うギャラクシー社の説明も釈然としないが、日本の企業と政府が資金を出して開発し、種子島から打ち上げる以上日本のロケットであり、米国企業のために開発するロケットではない。日本のロケットである以上、ロケット打上げ責任を負ったJAXA(ジャクサ)の指導の基で、JAXA(ジャクサ)と民間メーカが一体となって開発するのが正しい方法であり、JAXA(ジャクサ)が全機システム設計に直接的には関与しないと言うのは、体制としては不適切と考える。また、号機毎の解析作業が米国企業のツールを使用して米国に於いて実施されると言う体制も、衛星ミッション如何では問題となる可能性がある。
 ロケット全体の設計内容に関しての説明が無かったので、全機システム設計がどこまで進んでいるかわからないが、サブシステムの設計仕様は、エンジンのフィジビレィティが確認出来て初めて固まるというのが常識的である。Nロケットの開発時、米国のMcDonnel-Dougls社およびRocketdyne社の技術指導の基での開発でも、開発開始から初号機打上げまで4.5年を要している。この場合は、2段推進系の仕様がDeltaロケットとかなり類似であったため、推進系関連部品には既存品が多くあったが、推力11.5トンクラスの低圧燃焼推進系は極めてユニークな仕様であるため、部品の開発に時間を要する可能性も高い。従って平成22年完成は、開発スケジュール上も極めてクリティカルであると思われる。
 わが国では、推進系分野に置いても、これまで米国の技術援助に基づいたNロケット2段推進システムの開発、0からスタートして全て自主開発を行ってきたH-1, H-2, H-2AのLOX/LH2推進系の開発等、国際的にも認められている開発実績がある。LNG推進系開発のこれまでの経緯を見ると、これらの経験が生かされてきたとは思われない。
【評価不能】
8  上記1-(2)の問題に目処がつかない限りは開発計画全体(スケジュール、費用)への影響が大きすぎるので、現時点で回答保留とせざるをえない。バックアップ技術による開発シナリオも必要と考えるが、技術的裏付けをしっかりしていない限り同様なパスを繰り返すことになる。
 いずれにしても万難を排して、上記1-(2)に早急に着手すべきと考える。
 関係企業との責任分担関係及びJAXA(ジャクサ)のプロジェクトチームに付与される権限と責任の範囲について、及び当該委員会の所掌範囲も含めて再確認すべきと考える。特に以下の事項についてどのように考えるべきか。
1  打ち上げ能力の許容範囲(棚次委員の指摘している高度800キロメートルの太陽同期軌道への能力が約3分の1程度まで低下すること)等「重要仕様の変更とそれに伴う費用の発生」にかかわる決定の権限と責任の所在。
2  1-(2)の結果次第ではシナリオ2へ移行することになると思われるが、1-(2)に費やすべき時間・費用の制約に対する決定の権限と責任の所在。
3  シナリオ2への移行にかかわる決定の権限と責任の所在。

3   GXロケット計画支援の方向性
   本件審議の過程において、LNG推進系技術開発の進め方に関連し、まず第1段階としてブーストポンプ・アブレーター方式を目指すとの点について、種々の意見が出ました。この開発のステップの踏み方は開発成果の移転を通じての支援を受ける側である民間事業者からの開発成果引渡し時期(平成22年度)に関する強い要望を受けてのものであるとの説明がありました。
 ついては、上記のような状況を勘案し、提案の開発のステップの踏み方とGXロケット計画支援の方向性についてご意見を下さい。

コメント
1  前記2項でも述べたが,先端技術開発と事業化推進が同時に進行している現状は,好ましい姿ではない.しかし現時点では,事業者側の要望を尊重すべきである.
 一方で事業者側は,採算性や(1段目エンジンの供給確保などの外的な要因を含めた)事業の成立性に多くの疑問がある中で,本事業を自身の責任と資金で進めていく覚悟を明確にし,これ以上の国からの支援獲得には慎重に対処すべきである.

2  1、2で述べたことの繰り返しになる。部分的に追加コメントする。
 前に述べた理由で、LNGの目標設定は22年度という引渡し時期にとらわれることなく、将来に向けて最適なスケジュールを引いて、その中で行うべきであると考える。ただし、ビジネス的に22年度引渡しが極めて重要な用件であると国が納得した場合は再考を要する。以下に検討の道筋を述べる。
 ビジネス的に見た場合、GXロケット側が提示された2段のスペックでビジネスモデルが成り立つということが正しいのであれば、技術移転に関しては意義があると考えるが、今の段階ではその根拠が薄弱である。今回のプロジェクトは、ビジネスのために特定企業が行う開発に対し、国が金銭的支援をするという始めての試みであり、今後の先例となるので、注意深い対応が必要である。「売れないロケット」に国が投資したとなると、アセスメントをちゃんとしたのかということを問われ、大きな問題になることが予想される。
 ビジネスとしての成立性を、会社が「成立性あり」と主張するのを信じるだけでなく詳細情報を精査して国が独自の判断をすべきか、そこは内政干渉のようで難しいところであるが、個人的な意見としては、技術の専門家だけでなく、ビジネスや経済の専門家なども入れて、どこまで会社がリスク分析、市場予測、ラーニングカーブのモデル化などを正確にかつ公平に行っているかの評価を非公開で実施すべきだと考える。また、LNG系とは直接関連はないが、1段ロケットをLM社に任せていること、ロシアのエンジンを使っていることに関し、どのようなリスクが生じ、それに対しての対策は万全であるか、G-Gの契約が必要であれば、それも国がちゃんと担保できるか、などのプログラムリスクの評価も必要であると考える。22年度の引き渡し要求も、きっちりとした理由があるかどうかを評価すべきであろう。その結果、ビジネスにおける十分な勝算が見込まれ、22年度引渡しがその重要な前提になる、ということであれば、LNG系の将来計画をそれにあわせて一部カスタマイズすることはアクセプタブルであると考える。

3  平成15年の評価小委員会で検討したLNG推進系システムは「複合材タンク、ガス押し式エンジンの採用」によって1開発期間の短縮、2高信頼性システムの実現、3低コスト打ち上げを目指すことが主眼であつた。従って、システムは「複合材タンクからガス押し式エンジンから低燃焼圧力から低比推力」となるが、「総合的にメリットが有る」と評価するものであった。
 今回の小委員会で「複合材タンクの不適合とエンジンに問題を抱えていること」が明らかになったが、民間事業者からの開発成果引渡し時期(平成22年度)に関する強い要望に応えるためには1エンジンの問題を1-(2)に沿って、早急に目処を付けるべきであり(注1)、2エンジン問題に解を見出せない場合に対応する抜本的対策(注2)を立てておく必要がある。
(注1)  対策を施した噴射器(お金や時間がかかるのであれば、サブスケールでも可)の燃焼試験を早急に実施すべきである。この際、期限と費用に上限を設け、その範囲内で解が得られない場合には直ちに抜本的対策(注2)へ移るべきと考える。
(注2)  ターボポンプ、再生冷却燃焼器方式とするロードマップ第二段階へ切り替えるべく具体的計画を立てておく必要がある(この場合、開発成果引渡し時期の遅れも考慮されるべきである)。燃焼の最大の問題は「LNGを液体のままで燃焼させること」に起因している。LNG再生冷却とすればLE-5エンジンと同様に気液同軸型噴射器が適用でき、安定・高性能な燃焼が可能である。
付記: LNG再生冷却燃焼器の冷却特性、燃焼特性について、小型燃焼器による燃焼実験を旧NALが実施している。LNG冷却性能については液水の設計手法が適用できること、カーボンのコーキングは無視できること、燃焼性能についても、液酸/液水の設計手法が適用出来て、安定・高効率燃焼が得られることなどが示されている。またLE-5のLNG化について旧NASDA(ナスダ)、MHIで検討されていると記憶している。

4  前述の様に最重要課題である「燃焼圧変動」の解決への見通しが不確かな状況で、引渡し時期優先で、他の開発項目を確定する事は矛盾している。

5  現状のLNG推進系の能力は、当初の計画値から大きな隔たりがある。日本ではこの30年間にLE−5系、LE−7系の液水・液酸エンジンを開発した経験があり、関連する技術のデーターやノウハウが官民に蓄積されている。従って、第一段階を経て、第二段階に進める開発手法が不可欠であるとは思われない。
 韓国では、官民の共同でLNG推進系の開発が進められており、今年3月にはBBMレベルのエンジン試験に成功し、近い将来にフライトモデルまで到達する可能性がある。このエンジン(CHASE-10)は、推力10トン級で、燃焼室圧力70気圧のターボポンプ供給方式のガスジェネレーターサイクルを採用しており、1999〜2004年に基礎研究、主要な要素研究を経て、2004〜2006年にBBMレベルのエンジンシステムを製作し、燃焼試験によって性能を確認している。
 このような韓国でのLNG推進系の研究開発の状況や先に述べたように日本では液水・液酸エンジンに関する豊富な経験とデーターがあることおよびLNG推進系についてのこれまでの成果を踏まえれば、民間事業者が要望する開発成果引渡し時期(平成22年度)まで、あるいは更に1年程度の時期には計画されている第二段階の推進系を完成できるものと考える。従って、第一段階を経ることによる経費と時間を節約でき、GXロケットが当初に掲げた打上能力に近いものが早期に達成できるものと思われる。

6  時間の制約が言われているが、スケジュール最優先で技術開発を進めることは、これまで国際的にも、またわが国の宇宙開発でもタブーとされてきた方法論の筈である。時間に縛られて中途半端な開発を進めることは、将来に対するリスクを高め、また先送りするだけであると考える。
 国が資金を投じて開発を行う場合、その目的は何かを明確にする必要があるが、今回のプロジェクトの場合は、会議の場でも議論されているように、主要な目的は次の2項目である。即ち、将来に備えた国際的に競争力を持てる技術開発と、当面の日本企業の事業開拓支援である。
 前者に関しては、液々式のインジェクタを持った低圧燃焼エンジンは,技術的なリスクが高く、逆に将来性の無い孤立技術である。LOX/LNG推進系は取扱う温度範囲および推進薬取扱い上の危険性等からもLOX/LH2推進系の範囲内に留まるものである。またそのほかの点を考えてみても、韓国で研究されているようなLNGに求められる純度の問題のようなLNG推進系に固有な基盤技術を除いては、LOX/LH2推進系が完成されている現状からして、新たに習得すべき重要な推進系関連技術があるとは思われない。一般論としても2段階開発は時間と膨大な費用を必要とする開発方式であるが、液々衝突式インジェクタを持ったエンジンとLOX/LNGエンジンに通常採用されている液―ガス式インジェクタを持ったエンジンとは異質のエンジンであるので、LNG推進系の2段階開発はわが国の技術開発として正しい方法論とは言えない。個人的にはLOX/LNG推進系の適合するミッションに関しては、もう少し見極めを要すると考えるが、何れにしろ、国として研究開発を進めるべきは将来性のあるターボポンプ式の高圧燃焼エンジンの1段階開発であるべきである。
 後者の観点は宇宙開発委員会の評価範囲外との由であるので、此処では参考意見として述べるが、この点に関しても、国としては場合によっては第3者機関に委託する等で、合理性確認の義務がある。よく知られているように、太陽同期軌道のコマーシャルミッションの将来需要予測は精々年2〜3機と言われており、需要の殆どは所謂ガバメントミッションである。また、低軌道ミッションに付いても、大学の研究教育用も含んで、事実上全てガバメントミッションである。コマーシャル分野では、Globalstarは会社破産前に製造済みの地上予備衛星をSoyuzで打上げる計画があるが、その他Iridium等の低軌道ミッションは現実の動きとしては明確ではなく、また最近では大型アンテナを搭載し、且つスポットビームを持ったモバイル通信静止衛星が数多く打上げられる動きから、実現はかなり厳しいのではないかと思われる。逆にこの分野の打上げロケットとしては、Delta-2,Soyuzの外に、打上げ費用30ミリオンUSドル程度以下の低プライスで、800キロメートルの太陽同期軌道への打上げ能力1〜1.5トン程度の打上げ能力を持ったロケットであるインドのPSLV,ロシアのRockot、ヨーロッパのVega等目白押しであり、競争は厳しい。一方米国では、極最近Lockheed-MartinBoeing合弁のUnited Launch Allianceが正式に認可される運びとなり、この会社はAtlas-5,Delta-4,Delta-2の、3種類の衛星の販売、打上げを行うことになる。GXロケットもこの販売網に加えられる由であるが、GXの1段はAtlas-3の1段でありAtlas-5の1段とほぼ同価格或いはそれ以上、2段は量産ベースに乗っているCentaurに較べてGXの2段の方が安くなるとは考えにくいことから、常識的に考えて、GXに競争力があるかは極めて疑問である。
 このところ宇宙開発の動向は大きく動きつつあり、わが国としても世界に遅れを取らないためには、今の時点で何をなすべきかが極めて重要である。このような環境下で、わが国として多くの労力と資金を投入して現設計仕様のGXロケットを打上げることにどのような意義があり、また国際的にどのような評価を受けるかを、冷静に判断する必要がある。

7
魅力ある開発シナリオとわかり易い打ち上げ舞台
 これまで4年間の開発遅れをもって、複合材タンクプラスガス押し方式から、メタルタンクプラスブーストポンプ方式に計画が変更されたわけで、初期設計の目玉はすべて消失している。唯一、変わらぬ仕様は、LNGエンジンである点だけで、それも再生冷却という高度な技術に進むとなれば、怪しくなるように思える。複合材タンクの復活をはじめ、将来の開発シナリオに魅力を与える目標がないと、現在の第一ステップで打ち上げを目指していることは何かそして成功する鍵を手にしているのかが曖昧となる。それを具体的に明示すること、そしてGXが提示している平成22年までの期限に適い、かつ、世界に通用するLNG推進系技術実証に絞ったエンジン供給に全力を尽くすことがJAXA(ジャクサ)に求められていると思う。総じて、燃焼器不安定変動メカニズムなどの現象解明のための基礎知見は共通するところも多く、応用力を設計に多様に活かすことが肝心であり、打ち上げ成功という舞台を着実に踏んでゆくことからJAXA(ジャクサ)全体の実力アップが認められるようになる点は言うまでもない。
技術力と事業力を備えた国産グローバル企業:
 企業側にとって、ボーイングやエアバスのようなグローバル企業がいない現状は、国産の特徴あるエンジンを工夫し、海外と交渉能力をもつようなレベルを目指して、国内コンソーシアムを組むなど活動努力に励めば、報われる可能性が生まれる隙間があるということであろう。従って、大事な点は、現時点でのビジネスの成立性の証明でなくて、世界に誇る技術力の素晴らしさと貢献度をアピールして国(国民)の支援を得ることにあると考える。JAXA(ジャクサ)から技術移転を受けるのでなく、技術高揚を迫る役割に立つ発想転換が必要であり、また、積極的に海外と交渉し、その制約・経験などノウハウを今度はJAXA(ジャクサ)を介して国に伝え、技術立国としての支援を堂々と要請することが大切と考える。国民の支援なくて開発費の目処はつかぬことを覚悟するべきであり、そのためならば、GXの仕様を含めての大胆な計画見直しも率先して提案するほどの若く柔軟な体質を期待したい。

8  LNG推進系は世界的にも注目されており、民間の商用性のGXロケット開発を国が支援するという官民協働の基本方針のもと、基盤技術の修得の観点からも、プロジェクトは民間の引き渡し時期についての要望を満たすべく推進されるべきと考える。
 今回の変更では技術的な確実性を高めたことにより、性能と経済性の面で原計画より厳しくなっており、この点でより一層の努力が必要である。

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