【青江部会長】 本日は、宇宙発のイノベーションをどう創出していくのか、それを通じて成果をどう国民・社会に返していくのかといったことについて御議論いただきたい。
「イノベーション」という用語については、これをいかにとらえるかということについては相当幅があるのではないかと思う。ちなみに、第3期科学技術基本計画においては、イノベーションというものを「科学的発見や技術の発明を洞察力と融合し、発展させ、新たな社会的価値や経済的価値を生み出す革新」と定義しているようだが、一応この定義に従うとしても、相当幅があると思う。
例えば、宇宙の探査による大発見によって、多くの人々の世界観或いは価値観の変革、これこそがイノベーションの最たるものだと考える人も多分いらっしゃるだろう。また、ロケットのモーターケースとノズルの部分のフレキシブルジョイントという技術が、建物の耐震用の免震ゴムに発展して、現に使用されている。そして、その使用が浸透しつつあるが、こういったものをイノベーションととらえる人もいるだろう。
一方で、そういったものは「技術のスピンオフ」と「波及効果」といった形で表現し、もっと大きな社会的或いは経済的な影響のあるものをイノベーションとしてとらえるべきではないかと言う人もいる。
ここでイノベーションの定義について議論していただくということになれば、時間がいくらあっても足りないと思うので、先ほど挙げたようなものについては、どちらもイノベーションとして含めていただいて、宇宙開発の分野において、その成果を、先ほど申し上げた広義のイノベーションを通じて、国民に還元していくにはどういう方策がいいのかということを中心に御議論いただきたい。
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資料7−1−1「宇宙分野における成果の社会還元とイノベーションの創出について」について、事務局の池原参事官より説明があった。
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資料7−1−2「イノベーション:常識なんてぶっ飛ばせ 日本の宇宙開発は地球のため」について、米倉特別委員より説明があった。
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資料7−1−3「Do Innovation−大学・独法機関とその現場の者の視点 −同床異夢から理解共有へ−」について、独立行政法人産業技術総合研究所の池上徹彦理事より説明があった。
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資料7−1−4「JAXA(ジャクサ)におけるイノベーションの創出について」について、独立行政法人宇宙航空研究開発機構の樋口理事より説明があった。 |
【井口委員長】 樋口理事もおっしゃったように、何もJAXA(ジャクサ)の人だけがすべてを行う必要はない。生まれた技術内容を公開して、他の人にやってもらえば一番いいと思う。例えば、カーナビゲーションの普及について言えば、当初は日本の宇宙関係の人は何もしなかったのではないかと思う。特定非営利法人ITS Japanというのは10年前にできて、最初の理事長は私が務め、仲間と一緒に今までやってきた。
もう一つは、私はいろいろな失敗の後始末ばかりやってきたせいもあって、周りの人に「宇宙というのは一発勝負である。巨大なシステムであって、高性能で、非常に複雑なものであるにもかかわらず一発勝負でやらなきゃいけない。」ということを言い続けてきたら、産業技術総合研究所の吉川弘之理事長が「これは一発勝負のものづくりじゃないか。」とおっしゃった。それを総合科学技術会議の柘植綾夫議員が聞いて、私に教えてくれたから、私も一生懸命それを言ってきた。
ところが、実際に宇宙をやっている人は、自分がやっていることの価値をあまりわかっていない。かえって他の人の方がわかっていたりする。だから、宇宙をやっている人に言ってもあまり反応がよくない。
したがって、別に宇宙をやっている人がやる必要は全くない。外に情報を流してほしいと思う。
【青江部会長】 JAXA(ジャクサ)からの説明は、JAXA(ジャクサ)の業務こそ、それこそ米倉先生が言われるところのパラダイムチェンジの大きなものを生み出すものである、ということであった。現に実績もあり、だからJAXA(ジャクサ)がやっていることこそイノベーションの源であり、他の分野に比べ、よりイノベーションの宝庫だということだということである。
【米倉特別委員】 JAXA(ジャクサ)の計画部会で説明は、今回のものが一番よかった。本当にそのとおりだと思う。井口委員長が言われたが、自分たちで自分たちの価値はなかなかわからないと思う。それを触媒のように、「いや、違う、そうではない」と言ってくれるのは、やはり何らかの異質な知識との融合が大事であり、それをどうやって作っていくのかということが重要である。
すごいなと思ったことは、資料にあるような、カーナビゲーション、エアバッグ、レーザーメスなど、全然JAXA(ジャクサ)がやったことではないではないかと思いながら聞いていたが、その種の今おっしゃられたような知識をどうやって作っていくのかということまで意識するということが、実は今の日本の財政状況とか国民感情からいうと、かなり求められている。
「米航空宇宙局(NASA(ナサ))が開発」と聞くと結構我々は信じるが、「JAXA(ジャクサ)が開発」と聞いても、あまりあてにならないのではないかということもあり、信頼は相当意識して作っていかなければいけないものだと思う。ブランドというのは、ものではなくてコミュニケーションプロセスである。それをどうやって作るかということを大きな柱にして、知識をそこに流していくということ、また、ブランドを作っていくということ、この2本の柱でやれば、日本の中で宇宙開発を行う意味も、研究者自信も、「ああ、そういうことなのか」と見えてくるような気がする。
【茂原特別委員】 米倉先生がブランドということをおっしゃった。これは私も大賛成である。ブランドというのは、要するに最終の消費者(エンドユーザー)というか、そういう方との双方向のコミュニケーション、信頼、それによって生じる。JAXA(ジャクサ)の資料の資料であるが、3ページと4ページの間に大きなギャップがあると思う。これはどうしても指摘せざるを得ない。
3ページというのは、世界が今までに果たしたイノベーションが書いてある。宇宙開発は、世界でGPS、気象衛星、通信・放送衛星等、大きなイノベーションを生んだ。しかし、日本発のイノベーションのアイディアは科学衛星の分野を除いて非常に少ない。4ページはこれからのJAXA(ジャクサ)発のイノベーションを描いているが、過去世界がイノベーションを実現してきたから、JAXA(ジャクサ)もそのまま仕事を継続すれば将来のイノベーションが実現するという論旨には、無理があると思う。
【青江部会長】 それは認識違いだと思う。何もないことはない。
【茂原特別委員】 でも、気象衛星、通信放送衛星とかGPSとか、それらは要するに海外のシステムを持ってきて、それを日本で実用化したということであって、日本独自のアイディアから生まれたものではない。
例えばGPSでも、残念ながら宇宙部分はアメリカの衛星を使っており、測位のロジックはブラックボックスでアメリカから買っている。その利用技術はものすごく発達したが、例えばカーナビゲーションでも、日本の民生技術が民生市場に花を咲かせたのであって、日本の宇宙のイノベーションがそこに大きく貢献したとは言い難い。カーナビゲーションから学ぶとすると、こういうGPSを日本のイノベーションに使おうとしたら、宇宙だけではなく、民間市場の中でどういう新しい商品を作っていくか。これからの日本がやっていくべきことを示唆している。
民生市場へのスピンオフ、共存共栄を考えるなら、最後は、1)供給者側からユーザ側への視点の180度転換、2)スピンオフできる人材の育成が、根幹になる。昨今、JAXA(ジャクサ)が一生懸命意識改革に努力されているのは理解をしているが、いまでもまだいろいろなところで接触する担当の方が、従来の発想を変えずに対応されることが多く、やはり厳しい目線でコメントせざるを得ない。
スピンオフも、本当に望ましいのは、単なる技術要素ではなく、すぐれた洞察力、技術、経験のつまった人材のスピンオフである。JAXA(ジャクサ)に育った人が、積極的に外に出て宇宙なり民の市場でベンチャー企業を立ち上げていく、また積極的に乞われて外の市場、企業に新しい活動の場を拡げていく、そういう姿を実現するように努力をして欲しい。宇宙にはまだ大変に優秀な若い人達が入ってくるのだから、そういう人達を育てて送り出すのも、成果の還元の重要な要素と信じています。
【野本委員】 茂原先生がおっしゃったことは少し先入観があるように思う。確かに旧宇宙開発事業団(NASDA(ナスダ))の時代というのは多分そうだったのかもしれない。私のイメージとしては、NASDA(ナスダ)の時代というのは決していいイメージではないところもあるが、JAXA(ジャクサ)に変わってからものすごく努力していると思う。だから、昔のNASDA(ナスダ)の時代のイメージでこうじゃないかと言うのは、今のJAXA(ジャクサ)に対して気の毒な気がする。
現在、JAXA(ジャクサ)が行っている、オープンラボにせよ何にせよ、まだ始まったばかりで、成果が出てくるところまで来ていないから、評価してくれといってもなかなか難しいものがあるとは思う。だからといって、何もやっていないじゃないかと頭を叩くことばかりやっていたら、せっかく出てきた芽も摘まれてしまうわけである。今一生懸命芽を出そう、一生懸命違う方向に行こうとしている、その姿勢はやはり評価して、育てないと、育つものも育たないわけだから、そこは今のJAXA(ジャクサ)をちゃんと見てあげてほしいと思う。
もちろん今のJAXA(ジャクサ)にも問題点はたくさんある。オープンラボでやっていることが果たして、それが一番いい方法かどうかというのも分からない。しかし、今一生懸命取り組んでおり、その姿勢はやはり評価していかなければいけないと思う。
イノベーションというのも、JAXA(ジャクサ)だけでできるわけではないこともたくさんあるが、とにかくJAXA(ジャクサ)ができることを今やっていることは確かだし、それを応援していくのが私たちの姿勢ではないかと思う。だから、NASDA(ナスダ)の時代のイメージで見るのはおやめになっていただきたいというのが私の意見である。
【青江部会長】 JAXA(ジャクサ)になってから、産学連携部という組織も作り上げたし、いろいろな試みもしてきた。それをちょっと御説明いただきたい。
【樋口理事】 今、いろいろ変えようとしている。ただ研究開発をやっていればいいというのはどうもおかしいということは思っていて、一つは産学連携部というのを作って、ここにいる部長の石塚も産業界から来ているが、産学連携部の活動を組織全体に広げていきたいということで、とにかく今までと違うことをやることにブレーキをかけないという前提で始めている。
もちろん、失敗もあって、いろいろな迷惑もかけてはいるが、一番大きなことは、とにかく既存のコミュニティでなくて、違うコミュニティと話をしようということを最大の方針とし、違う文化ととにかく触れようということが基本にあって、一つはオープンラボというのを立ち上げた。これはウェブで、宇宙に興味のある人から提案を募り、その提案に対して、それは面白そうだ、私もやろうという感じでグループができてきた。そこで、ユニットというのを作って、ある種の宇宙との関わりを持ってきて、これはおもしろそうだというものに対して、研究費なり活動費を出して、本物になるかどうかやってみようという制度を作った。これがオープンラボであり、これには二つの方法がある。
一つは、宇宙に関連して何か事業をやりたいという提案があったら、それを支援する。それから、JAXA(ジャクサ)の中で実はこういう技術が必要だが、それがどうもうまくいかないという時に、それをウェブに載せる。そうすると、私はこういう技術を持っているが、この技術を使ってもらえないか、という提案が来る。例えば、ものすごく紫外線に強い半導体を研究されている方がいたとして、或いは、濡れ性と言っているが、ワイパーで雨粒がべたっとつかないような性能が、無重力実験では非常に大事なので、そういう技術を持っている人はいないかと言ったとして、そういった技術を持つ人が手を挙げてきたときに、我々の無重力実験に使えそうだということで採用をする。
それから、先ほどの浄水技術も資料にあるが、大阪の小さな企業がおもしろい水の循環技術を持っていて、これは宇宙ステーションに持っていけるのではないかということで立ち上げた。
逆に我々のコンテンツ、宇宙科学研究の際の太陽系の星空のデータを、即プラネタリウムのソフトに導入したい、そういう商売をやりたいという人が出てきて、大平技研という企業は御存知だと思うが、これは既にプラネタリウムとしてすごく売れている。そういった形で、事業と科学成果とを直接つないでしまおうという活動もオープンラボの中でやり始めて、少しずつ成果が見え始めている。
最初は産学連携部だけで始めたものを、他の部門もやりたいということが出てきて、JAXA(ジャクサ)全体の活動に変わりつつある。まだ完全ではないのはわかっているが、そういう活動を始めていて、その辺のことが資料の17ページ以降に書いてある。
【茂原特別委員】 何か誤解をされたようだが、私は、JAXA(ジャクサ)の今の動きを決して否定してはいない。それをもっと先に延長するためにはどういうことをしたらいいか、という視点で申し上げたつもりである。やはり最後は人材だから、人材がもっと交流し、外に出ていくということを次の段階として希望したのであり、決して否定はしていない。
付言すると組織の意識改革の評価は、最終的には「ユーザが結果」で評価をするものであり、その過程で外から云々するものではない。私自身は自分の経験から、身内の人間として「身内ほめ」は止めて、結果から見たときの厳しい目線で評価を続けていきたいと思っています。
【大森理事】 JAXA(ジャクサ)に対して厳しい意見と激励があったが、私は自分の所属している情報通信研究機構のことを言われているように思って聞いていた。生まれてきた技術をどうやって国民生活の役に立てるか、ということについて、このぐらい役立てている、そのための組織の改変をし、仕組みを作ったり努力していると説明することは重要である。それは情報通信研究機構も同じであり、非常に大事なことであるが、一方で、本来の仕事は何であろうか、何のためにやっているかということを考えると、2,000億円もの税金をつぎ込んで宇宙開発をしている意味は何かといえば、ユーザーは国民なわけであるから、国民の生命とか財産を守ということが、やはり一番大事だと思う。そのために、災害時に衛星が役立っているとか、最先端の技術を開発するということだと思う。その結果、スピンオフが生まれて、今、いろいろ御紹介があったような波及効果があるということを、国民に知らせるのは大事なのであるが、何のためにやっているのかということを、我々の機関は税金を使っているので、常に問われるわけである。そこの議論がやはり大事で、それをイノベーションと言っているが、そのイノベーションという言葉のイメージから、すぐスピンオフに話が行きやすいような気がするのである。
また、宇宙開発というのは、いわゆる知的好奇心を満たす科学としての側面があるので、国民はおそらく、日本がすばらしい世界的な科学的発見をすることも望んでいるだろう。
それらの、両方があると思うのだが、そもそも国民の税金を使って行うべき本来の仕事を忘れないようにしていただいた上で議論していただくのがいいのではないかと思う。
【井口委員長】 宇宙から離れて、外からJAXA(ジャクサ)を見ることを考えると、JAXA(ジャクサ)の職員はせいぜい2〜3千人しかいないのである。そのぐらいの人数で何から何までやれといっても無理である。そうすると、もう他のことは考えずに、本質のところを徹底的にやってほしいと思う。そのぐらいの仕事があるわけである。その代わり、周りに情報を流す方式というのは、リナックス方式だとかウィキペディア方式などというのがどのぐらい役に立つかはわからないが、そういうものがあるわけであるから、周りを味方にして、そういう人たちに考えさせることをやらないと、JAXA(ジャクサ)だけで何から何までというのは、難しいのではないかという気がしている。
【河野特別委員】 科学者の立場から考えてみると、本業がしっかりしていれば、後はついてくると思うぐらいでいいのではないかと思う。ものすごく巨大な組織であれば、いろいろなことをする余裕があるだろうが、JAXA(ジャクサ)に関してはそれほど大きな組織ではないし、委員長がおっしゃったように、関わっている人の数が非常に限られているから、その中で、複雑な大規模システムである衛星を打ち上げ、その他いろいろなことをやるだけで相当精いっぱいのことをやっている。無理をすることによって、アブハチ取らずになるのではないか。しかし、世の中は昔と違って税金の使われ方ということに対して非常に敏感になっており、説明責任を求められている。
委員長がおっしゃったような、周りに同調者がいっぱいいて、周りの人がすべてやってくれるというのはちょっと無理があると思うので、結局は、ある種の広報のようなものにある程度の力を割かざるを得ない。それは正規の業務の範囲内でやるべきであり、10の資産があるとすれば、昔は広報にはほとんどお金を使っていなかったのであろうが、おそらく今であれば2割ぐらいを広報のような、税金を払っている方に理解していただくための努力に使う必要があるのではないかと思う。そういう説明責任は、あらゆる機関に及んでいる。
その典型が大学だと思うが、かつて大学は「象牙の塔」と言われて、外に対する説明などしないで、学生にある種のトレーニングを施し、世の中に送り出せばよかった。ところが、今やそれだけでは済まなくなって、私立大学はもっと前からそうであろうが、国立大学も法人化の結果として、経営の観念とかを言われるだけでなく、すぐその評価ということが言われる。やはり、どれだけ日本の税金を払っている国民のために大学が役立っているかというのは知らせる努力が必要で、それをうまくやったところは、ちょっと言い方が悪いかもしれないが、中身がどうであれ、やはり世の中の受けがよく、それでしばらくやっていけるわけである。
だから、言い方はあまりよくないが、10の資源があるときに、おそらく2ぐらいの資源をそういうことに投入しなければいけないのは、世の中の趨勢として認めた上で、残りの8に関しては、これは、やはり本業である宇宙開発、宇宙研究を推進し、かつ、そこでいい成果を挙げるために全力投球すべきだと思うのである。
今何でも世の中イノベーションと言うが、イノベーションにおつき合いするのは、さっき言った10ある資源のうちの2くらいに関してはやることにして、残りの8割は、やはり本業にいそしんでいただきたい。それには、やはりちゃんとした衛星を打ち上げ、それに必要な基礎技術を開発し、かつ、その衛星を使った科学的な探査をやるのであれば、それが科学的に本当の成果を生むような努力をする。やはりこれに尽きるのではないかと思う。だから、本日の議題ではあるが、あまりイノベーションにこだわるのはやめた方がいいと思う。
【米倉特別委員】 イノベーション研究センターにいる者としては、ちょっと黙って聞き流してはいられないが、今のような意味を含めてイノベーションというのが本当に問われていると思う。僕は大学の評価も確かにおっしゃるような面があったが、自分たちを含めてかつての日本の大学はかなりいい加減であったから、一度そういう波を通って新しい姿を発見していくという過程は意味があったのではないかと思う。
今のイノベーションも、ただ流行で言っているだけではないと思う。ただ、話を聞いていて、確かに基幹技術とか科学は重要であるが、僕が言いたかったのは、JAXA(ジャクサ)はリードユーザーであるからこそ、そこから出てくる豊富なスピンアウトまで射程に入れるんだというコミュニケーションが大事であるということを言いたかったのである。であるから、単純に「なんちゃって」ベンチャーにできる話だとは絶対に思っていない。
もう一つは、新幹線というのは世界銀行からお金を借りて、30年かけて、公共料金できちんと借りたお金を返せたすばらしい例なのである。技術だけを売ろうとしているのであるが、途上国にとっては、国際コンソーシアムを作り、そこからお金を借りて公共料金にして毎年返していくというソフトウェアが、実は日本の大事な蓄積なのである。先ほど言ったように、大型プロジェクトをやって、ものすごいシステム設計をして、ソフトウェアを一体これからどういう形で外に提供できるか、この辺も実は大事なことで、そういうことを視野に入れて研究をすると、単純に技術だけではなく、一発勝負のものづくりが目に見えて評価されるのではないか。
一つだけ違和感があるのは、この「オンデマンド超高速航空輸送機」である。なぜかというと、今のソフトウェアと同じで、DARPA(Defense Advanced Research Projects Agency)の最大の成果は、やはりインターネットだと思う。情報が持っている力とか、そのシステムを構築する力が本当はもっとも大事なので、日帰りできるアメリカ旅行は、あってもいいかと思うのであるが、それはこの状況でJAXA(ジャクサ)が言うことではないとちょっと思った。
【樋口理事】 宇宙ではなく航空の話なので、別途どこかで説明させていただく。
【森尾委員】 二つのことを申し上げたい。一つはイノベーションである。私はやはり、樋口理事がおっしゃったように非連続なものということが、イノベーションの大切なことだと思う。JAXA(ジャクサ)の資料の2ページを見ていただくとよくわかるが、非連続の新しい技術というのは、現在普及している技術より必ず劣っている。樋口理事は遠慮されて、下の方に「現在」と書いてあるが、新しいものを取り込んで事業化しようとする時に、新しい技術に取り組んでいるのは少数派で、みんなで集まって何をやろうかと決めたら、こういったものは選ばれない。例えば私はソニーにいたが、ソニーがトランジスタラジオをやると言ったときも、専門家ほど、あんなものはラジオに使えないからやめておけと言った。それでもやったら、ラジオというものが作れた。それが真空管を駆逐したということであるから、私は、イノベーションの本質的なものはそういうところにあると思っている。だから、みんなで改良して、次はこれをやろうみたいなことでは、イノベーティブなものはあまり生まれてこない。大切なのは、そういうリスクをみんなで許容するということである。日本は失敗すると1億総評論家になってしまい、失敗した人を責めることが多いと思うが、やはりこういうイノベーティブなことをやろうとすると、リスクも当然大きいわけであるから、失敗を許容して、こういうものをやることを勇気づけるような国としての文化が必要である。宇宙発の成果がみんな欧米のもので、JAXA(ジャクサ)発のものが少ないのではないか、3ページのいろいろな例もほとんど外国だという話がさっきあったが、私は、日本のそういう失敗を許さない文化が、新しいものを生み出させないことにつながっているのではないかと思う。
ただし、GPSは確かにアメリカ発かもしれないが、それを、携帯に入るまでに昇華したというか、技術を高めたのはやはり日本なのである。アメリカは軍事用と、トラック業界に使うくらいしか考えていなかったが、日本はそれをカーナビゲーションに使った。最初の頃は、車が道路でないところを走っていたりしていたのであるが、日本人のすごいところは、それをマップマッチングという、道路のあるところをどちらかに決めるということで、だんだん実用性を高めてきて、結局地図のデジタル化は日本が一番早くできて、今のような便利なものができ上がった。そういうところまで持っていくのが日本の特徴であり、将来成長をするかもしれないものにあまり水を差さないでいただきたい。国全体で常にそういう雰囲気を作っていただきたい。
もう一つは、スピンオフについてであるが、過去大ヒットした商品、要するに世の中の新しい文化を作ったとか、新しい産業を興したものを考えると、技術だけでできたものというのは少なくて、新しい技術ができて、それをどう使うかという使い方、それはプロダクトプランニングというが、その技術をどういう商品にして、それを国民にどう知ってもらうかというマーケティングが重要である。少なくともこれらの連携がないと、技術だけでは、全く新しい爆発的なヒット商品はできないと思う。そういう意味で、私は、JAXA(ジャクサ)が宇宙オープンラボをやっておられるのは本当にいいと思うのであるが、JAXA(ジャクサ)にそういうマーケティングであるとかプロダクトプランニングの専門家がいっぱいいるわけではないので、せっかくこういういいことをされているのだから、もっと、広報に力を入れて、こういう技術があるということをもっといろいろ、広く違う分野に知ってもらう努力をしていただければ、日本発のスピンオフももっともっと活発に出てくるのではないかと思うので、それはぜひお願いしたいと思う。
【山田特別委員】 広報の話があって私が思ったのは、先日、気象予報士を十何人か集めて話をした時に、JAXA(ジャクサ)のことを知っている人がほとんどいなかったということである。私たちが天気予報をできるのは気象衛星があるからにもかかわらず、こんな状態だというのにすごく衝撃を受けた。
それから、毎年毎年、気象予報士が増えていて、それで、ものすごく質が落ちていると言われている。1回の国家試験でなることができ、人気もあるので、どんどん数が増えているが、JAXA(ジャクサ)や、気象衛星がどうやって打ち上げられているかもわからない気象予報士が増えているという矛盾を感じており、そういう気象予報士が増えるのであれば、もっと質が高い気象予報士が少数いる方がいいのではないかと思う。
そんな中で、もっとJAXA(ジャクサ)がどんなことをしていて、私たちが天気予報をすることができるのかということについて、もっとコミュニケーションが図れればと思う。
私たちは、気象庁が出した天気予報をもとに予報をするので、わからないこと、不明確なことは必ず気象庁に電話して、朝の5時でも夜中でも聞く。気象庁の方は24時間、嫌な顔一つせずに答えてくれるが、例えばJAXA(ジャクサ)にも土砂災害であるとか、もっと明確な情報が多分あると思うので、それを私たちがもっと細かくどうにかして伝えることができるのではないかと思う。イノベーションという中で、そういたコミュニケーションがもっと図れればと思っている。
【池上理事】 確かに最近のイノベーションというのはイノベーション症候群的ではあるが、一つ言えることは、先ほど御指摘があったように、市場があるということと、市場がなくても自主的に市場に近いような競争環境があるということが、イノベーションの基本的な条件ではないかと思う。そういう観点でいうと、確かにJAXA(ジャクサ)は閉じているという話があるし、まだまだ開くチャンスがあり、イノベーションを創出するためには競争的な環境がない限りにおいて無理ではないかという感じがしている。むしろ、競争があった方が、いわゆるイノベーションの創出にはいいということが一点である。
もう一つは広報の話なのだが、見えないものを見えるようにするのがプレゼンテーションであり、そのねらいというのは自分の考えを相手に見えるようにして、相手の脳をうまく使うことだということなのである。であるから、ただ見せるのではなく、相手の脳をうまく使うような広報なりプレゼンテーションなりという発想は、おそらく日本にはあまりなかったと思うが、そういう方法を用いて、確かに2,000人の職員では少ないかもしれないが、もっと多くの人間を巻き込んでいけるのではないかという感じがした。
【青江部会長】 我が国が毎年宇宙開発に投じているおよそ2,500億円に対して、国民への還元が少ないという感じが多分一般的なのだと思うが、それは広報のせいなのか、本当に少ないのか、どちらであるかよくわからない。JAXA(ジャクサ)の言い分は、その本来業務こそイノベーションであり、世の中の人の物事の考え方を変えているではないかということである。世の中の人にもっと、イノベーションだということはちゃんと理解してくれ、それをちゃんとやらせてくれ、ということを、JAXA(ジャクサ)の人は言っておられるのだと思う。スピンオフも副産物としてあるであろうということである。その部分はもっとうまく使うようにということで、JAXA(ジャクサ)に統合後いろいろなことを始めた。その点を理解してほしい、ということが、JAXA(ジャクサ)の言い分だと思うのである。
【池上理事】 それについては、やはり現場の人が「Do Innovation」と自分を主語として置いた場合に、そこで納得するような答えが出てこない限りにおいてはなかなか難しい。やはり「絵に描いた餅」だと思う。それは遠近法で描かれた絵であって、これでは、時間と空間が止まってしまっているということである。いかにしてそれぞれのレベルで「Do Innovation」ということを議論するか、ということだと思うのであるが、あまりいい答えは出てこないだろう。過去、例えば研究の現場にいる人間は、本当に飛躍的であるということをおそらく感じていないと思う。私も通信分野をずっと研究してきたが、やはり自分の頭の中ではずっと連続的であって、ただ、過去を振り返ると、なぜあの時にああいう発想を思いついたのか、ということを思うことがある。やはり現場の研究者と技術者がどうかという話で、やはり内部職員を大切にしなければいけない。やはり、国のやり方が悪いのは、外から人を持ってくればいいというが、それで、うまくいっている国はない。もっと言うと、流動性を上げるということが一番重要なのである。中の職員が自分で将来を決めるようなことであれば、「Do Innovation」は非常にうまくいくのではないかと思う。
【中須賀特別委員】 繰り返しになるかもしれないが、JAXA(ジャクサ)がどういうことをやらねばならないかということは置いておいて、イノベーションというところにこだわって考えてみると、やはりモチベーションがすごく大事であると思う。これは大学で学生を教えている中でも、やはりモチベーションがないところにイノベーションは起こらないと思った。では、そのモチベーションはどこから来るのかということを、突き詰めていかないとイノベーションは起こらないと思っている。
一つは、例えば宇宙で、いつも何度も言っていることであるが、何かをやりたい、とにかくこういうことをやりたい、こういうデータがほしい、こういうことを実現したいと思ったときに、でも今の技術だとできないというときに、どうやったら実現できるのかということを真剣に考え抜くというところに、まず一つモチベーションが生まれる土壌があるのだと思う。それはやはり、旧宇宙科学研究所でずっとやられていた宇宙探査のいろいろなプロジェクトの中で、ロケットのサイズが決まっている、衛星もこれぐらいの重さしかできないという中でどうやって山のようにやりたいことを実現していくのかということを真剣に考える中で、新しい技術がいろいろ生まれてきたという経緯があるのではないかと思う。そういう意味で言うと、宇宙を本当に徹底的に使いたいという気持ちがちょっと弱過ぎるのではないか。それがないので、本当に新しい技術が出てこないということも一つ言えると思う。
それから、もう一つは、やはり経済原理だと思う。宇宙で新しい技術を開発することで大もうけできるのだということがあれば、もっと多くの人が新しい技術を考えるだろうと思う。ところが、今はそうはほとんどない。逆に言えば、そういうことができるような仕組みを作っていくということが、モチベーションの一つの土壌になると思う。そのためには具体的にどうしたらいいかというと、例えば、利用という観点からモチベーションを作り出すことである。イノベーションを創出するという意味で言うと、例えば衛星からのデータをしばらくの期間、無料で自由に使ってかまわないということにして、これをもっともっと使いやすい形で使ってくれという形にして、それを使ってビジネスの実験をやってくれということにしてはどうか。それをやることで、もうかるかもうからないかはわからないが、初期投資がほとんどゼロでいろいろ試せるという環境を作ってあげれば、本当にもうけたいと思う人が、それを使っていろいろ実験をするということが起こるのではないかと思う。やはり、モチベーションが強烈に強い人たちが、いいアイデアを生むと思うし、いいビジネスモデルも作っていくであろうという気がする。だから、そういうモチベーションが生まれるような仕組み作りが大事だということである。
それから、宇宙に携っている人たちは、本当に宇宙を使いたいのだという気持ちをもっと強く持つことが必要である。強く持てということは難しいかもしれないが、逆に言えば持っている人たちのそのモチベーションをもっと生かせるような仕組みづくりが必要だという気がしている。
【茂原特別委員】 先程からいろいろと、これをあれをという話があったが、そのときに必ずリソースの話が出てくる。人材がおよそ2,000人しかいないということであればそれを前提にして、それをいかに活用するかということが重要である。その人のモチベーションがもちろん大事であるし、あとは前にも触れたように視点が大事である。宇宙だけということに限って考えているとなかなかよい発想が出てこないので、そこで地上のいろいろな分野とつなげて、新しい目線で考えると、同じ2,000人でも、それが1.5倍にも2倍にも活用できると思う。そのために私は、広い視線を、ユーザ指向でお客さんとコミュニケーションをしっかりしてほしい、ということを申し上げたつもりである。企業なども人材が限られている。その中でどうやって最大の利益を出すかということを考え、その中から「選択と集中」をおこなう。組織目的を最大化するために、どのように資源を配分するかは、どの組織でも基本の課題。
同時にJAXA(ジャクサ)は日本の宇宙開発の大きな核をなす実行機関、開発に着手したものは最後の成果まで責任ともつという主体組織である。特にプロジェクトのスタートに際しては、公益を考えながら、厳しい取捨選択をしていくことが必要であろう。
【河野特別委員】 私は、基本的にJAXA(ジャクサ)がおやりになっている広報活動というのは、例えばNASA(ナサ)などに比べたら、比較にならない、桁が違うと思う。NASA(ナサ)がどうやっているのかをよくは知らないが、彼らがウェブにかける費用は相当なものであろうと想像する。NASA(ナサ)の本業である、衛星を打ち上げてその衛星で科学的探査をやるとか、その種のことについて携わっている友達が結構いるが、彼らの様子を見ていると、例えば、今アメリカ政府は、有人飛行でもって月さらには火星探査をやるということを言い出して、予算は確かにそちらに流れているが、NASA(ナサ)の組織の中にある研究所で、例えば、今まで測地衛星をやっていた人、或いは惑星探査に携わるようなことをやっていた人が、それでもって踊らされているということは全然感じない。彼らは明らかに研究のプロであって、それだけやっているわけである。ただし、惑星探査なり測地衛星の成果というのは、学問的には最初から非常にわかりやすいし、どんどん学術誌の中に論文が出てくる。
だが、その後、こんな成果が出たというのが、早い段階でNASA(ナサ)のホームページに出るのである。しかも、すごいところは、新しいのが出てくると、前のものが置きかわってなくなってしまうということはなく、何十年前の探査であっても、一生懸命探せばどこかに載っている。要するに、データの蓄積(アーカイブ)がしっかりしているから、今の何がおもしろいかということだけではなく、それにつながる過去の経験の蓄積のようなものを、我々が外からたどることができる。それが1点である。
もう一つは、先程、気象予報士の方でもJAXA(ジャクサ)を知らないというようなお話があったが、NASA(ナサ)の場合はいろいろな入口があって、要するに客層ごとに違う情報を流している。だから一般の人が見に来ておもしろいような、画像がすばらしいようなサイトもある。高校の先生とかが講義に使いたいようなものを非常に集中的に集めてあって、検索のキーワードを入れると、それに適合するようなものがすぐに出てくるようなサイトもある。それから、我々研究者が知りたいようなことを集めたようなサイトもあるわけである。相当な予算をNASA(ナサ)としては投じているということである。ただ、それはNASA(ナサ)の組織全体が職員みんなにそういう意識を持たせてやっているのだとは私は思わない。例えば研究をする人たちは本当に研究だけをしているのであって、それがどうやってエンドユーザーのところまで行くか、ということは考えてもいない。彼らが考えるのは、明らかに研究者として、Science誌に出したい、Nature誌に出したい、専門の学会誌に出したいということである。そこで大体終わっているわけである。それが出れば、こんなすごい成果が出たからと次のプロジェクトを作ろうとする。必ずそういうことでサイクルをやっている。だから、僕はそれで全然構わないと思っている。だけど、今のJAXA(ジャクサ)を見ていると、一つは一般的な広報の水準があまり高くないので、大勢の人が毎日、今日は何かおもしろいことがないかと見に来るような、NASA(ナサ)みたいな興奮はない。それから、もう一つは、対象ごとにある意味でサービスをするような広報というのがほとんどない。
それから、研究者として一番痛感しているのは、例えば、太陽物理学衛星「ようこう」で取ったすごいデータがあるが、量が多いために確かに蓄積するのは大変であるが、それを手に入れようと思っても、JAXA(ジャクサ)のサイトからは入手できないのである。それを蓄積しているサイトがアメリカにあったりするわけで、これは本当に言語道断であると常に思う。これは研究者コミュニティでの話であり、納税者とは直接関係ない話かもしれないが、10の予算があったときに、そのうちの2割ぐらいは、おそらくそういう広報のようなことに使って、興味を持つようなものがこんなにあるというのを見せてもらうのがよいと思う。小惑星探査機「はやぶさ」のときには、確かに非常におもしろい画像がリアルタイムで出てきたので、ウェブへのアクセスはたくさんあったと聞いているが、NASA(ナサ)を見るともっと学習すべきところがいっぱいあるのではないかと思う。それはNASA(ナサ)とJAXA(ジャクサ)の予算規模の違いではなく、やはりある種の姿勢の問題があると思うのである。 |