平成19年1月15日(月曜日)10時~12時
三田共用会議所 第3特別会議室
青江茂 (推進部会部会長)
池上徹彦 (委員)
野本陽代 (委員)
森尾稔 (委員)
松尾弘毅 (委員長)
小林修 (推進部会特別委員)
佐藤勝彦 (推進部会特別委員)
澤岡昭 (推進部会特別委員)
鈴木章夫 (推進部会特別委員)
高柳雄一 (推進部会特別委員)
中西友子 (推進部会特別委員)
廣澤春任 (推進部会特別委員)
廣田陽吉 (推進部会特別委員)
水野秀樹 (推進部会特別委員)
宮崎久美子 (推進部会特別委員)
池原充洋 (研究開発局参事官)
笹川光 (研究開発局参事官付宇宙科学専門官)
萩原貞洋 (研究開発局参事官付参事官補佐)
瀬下隆 (研究開発局参事官付参事官補佐)
井上一 (独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))宇宙科学研究本部長)
中島俊 (LUNAR-Aプロジェクトマネージャ)
藤村彰夫 (宇宙科学研究本部教授)
初めに、事務局から、参考資料1−1に基づき委員の交代について紹介があった。
事務局から推進1−1−1に基づき説明を行った。次に、JAXA(ジャクサ)から推進1−2−1に基づき説明を行った。主な質疑は以下のとおり。
まず、このLUNAR-Aを中止するという大英断については、心から敬意を表したいと思う。ペネトレータの開発について、個人的に、多少関係ある専門分野にいたもので、感想を申し上げたい。
1999年頃に、当時の宇宙科学研究所でこの検討が始まり、私も工学委員会の一員として、その提案とか内容について伺った。その話を聞いたときに、本当に驚いた。私は当時、高速で物を衝突させるために、火薬を使った発射装置を作って衝突させる実験をやっていた。90年頃、ヨーロッパで会合があったときに、ドイツとフランスの国境にある研究所で、エルンストマッハ研究所であるが、そこで軍事研究の一環として、今、図に出てきたようなペネトレータそのもののようなものの開発が行われていた。それは、非常に高性能な大砲から発射された弾の挙動、加速などを測定するためのもので、銃口から出てきたときの加速度が5,000Gからちょうど1万Gぐらいの非常に大きな加速を受けている弾の挙動を調べる研究をやっていた。そういう大きなGのもとで、どうやってデータを計測して、無線でデータを送るかという研究の現場を見せてもらった。アメリカの軍事関係の研究所の人は大変驚き、その技術をアメリカが手に入れることができないかということで、質問があったときには、応分のお金を払えば売るというような返事を覚えている。
1990年当時、このようなテーマが軍事関係の研究所で非常に大きな課題になっていたと思うが、日本では、防衛庁はそういう研究は全くやってなかった。一番近い研究をやっていたのは、相模原にある第4研究所で、トーチカ(コンクリートで堅固に構築した防御陣地)へ弾がぶつかったときの動的な挙動を研究することがやられており、当時東京工大にいた私のところにいろいろアドバイスの相談があったが、軍と国立大学の共同研究は、現在もそうかと思うが、非常に難しい問題があり、できなかった。日本では軍事研究、欧米では軍事科学と呼んでいるが、その分野が非常に遅れている。そういう中で、宇宙科学研究所が独自にこういう問題にチャレンジするということに対して、どこまで覚悟があるのかという印象を持ち、非常に驚いたわけである。難儀するぞという印象を持った。結局3年の予定が10年以上かかり、19年度に完成すれば本当にすばらしいと思うし、世界の軍事研究者からは注目されると思う。日本の防衛庁も注目すると思う。そういう背景の中で、よくここまでおやりになったという気がするが、今思えば、無謀な一面もあったのではないかという印象を持っている。
技術的な話を二つばかり確認したいのだが、まず一つは、母船の劣化の問題だが、通常、保管状態がよければあまり劣化しないのではないかと思う。例えば、ロシアのロケットは25年保管したものをそのまま打ち上げるといったことを最近でも平気でやっている。劣化したことが事実としても、なぜそうなったのか。例えば、アメリカのモスボールというのも、設備を長い間保管状態にしてもそのまま使えるということで、なぜ劣化したのかというのがよくわからない。そこで反省事項等はないものかというのが一つ。
もう一つは、このペネトレータは技術的には立派なものだと思うが、10年近くトラブルが続いていて、2〜3年前もまだまだという話を聞いていたが、ここ1〜2年のうちに急速に進んだのはどういうことかということである。
最初の話の劣化の理由だが、FMができてから、直後にすぐ窒素封入していたわけではなく、しばらくの間クリーンルームに置いて、ペネトレータとの結合、電気的、機械的な試験をするようなことがあったので、ずっと窒素封入していたわけではない。そういうことが影響しているのかと思うが、実際にいろいろ試験をしていく上で、機器に不具合が起きて、開けてみると錆びていたとか、腐っていたとかということが起きており、その当時も、どうしてそういうことが起きたのかをメーカーさんを含めていろいろ検討した。製造時の問題とかいろいろ検討したが、特定なところまではたどり着いてない。
それから、ここ2〜3年で急激にばたばたと解決したわけではなく、FMになってから、幾つか技術的な課題が出て、それを一つ一つつぶしてきて、もう3年ぐらい前、2004年8月に宇宙開発委員会に報告するまで、総点検の前の試験のあたりでは、私自身としては、ハードウエア的にはもうほぼ完成していたと思っていた。その前の試験で、貫入させた砂の中でシーケンス異常が起こり、砂の中にあるペネトレータと外にある送受信機の間で交信するという試験がうまくいかなかったが、それを掘り起こして、研究室に持ってきて、一度リセットして動かすと、ちゃんと通信がとれたということで、いわゆるハードウエア的な問題ではないのではないかと思っていた。ただ、そういう不確実性のあるものを飛ばすわけにはいかないので、その部分について最終的に詰めなければいけないということで、ここ2〜3年やってきたわけである。3年ぐらい前に、ハードウエア的にはある程度物は、私自身はでき上がっていたと認識している。
そうすると、やはりもともと10年ぐらいかかっても不思議はなかった程度の技術的なチャレンジだったと、そういう理解でよろしいわけか。
今となってはそういうふうに考えている。
JAXA(ジャクサ)内部での外部評価なりを実施されて、技術的なことその他について把握されているのはよくわかるが、こういうことに至った体制の評価については、どういうことをされているのか。つまり、計画年限内にとても実現できないミッションを決めたという体制についてである。それと、これだけ遅れたことを、途中で早く中止できなかったかということについての宇宙科学研究本部としての体制の問題。それについての自己評価と外部からの評価とか、そういうのはあったか。
まず、最初の段階でめどが立っていないものを選んだのではないかという指摘について、その当時の判断としては、これは技術的なめどはあるという判断で計画が動き出した。私の理解では、最終的には、少し斜めに入ったときに受ける衝撃が実は一番危険が高い状態になるわけだが、そこの試験についてきちっとした見通しがなかったことが問題だったと思う。
その時点では、真っすぐ貫入して問題なかったという事実のもとに計画が動いて、最終的な試験を行い出したときに、その問題に気がついたという経緯だったと思う。そういう意味で、技術的な最初のその辺に関する見通しが甘かったということが問題だった。
それから、そういう事態で動き出した後、ここまで来てしまったということについては、ここにも書いてあるように、途中途中、最初の我々のやり方だと、プロトタイプモデル(PM)というものを作って、新しく技術を導入した部分については、めどを立てた上でフライトモデルを作るわけだが、その段階で、ペネトレータについては技術的な見通しが立っていなかったという判断をして、止めるなら止めるという状況をきちっとやってこなかったことは一つ大きな反省点だと思う。だから、今後については、そのような節目節目で、中止ということも視野に入れて、きちっと評価を行っていくということが我々にとっては非常に大事なことだと思っている。
先日の計画部会宇宙科学ワーキンググループでも、体制の問題は議論されたし、いい方向にいっているとは思うが、やはり個々のことで技術的な問題はいつでもあるし、十分な批判をもとに実施されたかとなると心配なわけである。澤岡先生がコメントされたように、非常に難しい技術であることはわかっていたし、近傍の先生方、科学者、例えば、X線天文学をやっている人なりを含めた理学委員会全体で選定をしているわけだから、互いに科学者の間の批判とかが十分機能していたのかどうかというのが気になるところである。
形式的なお答えになるかもしれないが、このLUNAR-A計画については、途中途中、宇宙理学委員会にすべて報告をして、宇宙理学委員会としての判断も踏まえて、宇宙開発委員会に報告をし、各時点でのプロセスはきちっと経てきた。その中身が十分であったかどうかということは、また別途、それぞれの過程で見直すべきところはあるのかもしれないが、形式的にはきちっと手順は踏んできている。
関連してお尋ねしたいが、33ページに「得られた教訓」というのが三つ書いてある。これらが今回の反省・総括から出てきた教訓だとして、これから先、失敗を繰り返さない仕組みは何かあるか。心構えとして、これらをみんなに語り継いでいこうというだけでは多分ないのだろうと思う。宇宙科学研究本部だけのことではなく、JAXA(ジャクサ)全体のことだろうと思う。
JAXA(ジャクサ)の中に、チーフエンジニアオフィスという組織ができて、そこを中心に、私どもがやったようなミスが起こらないようなチェックを今後やっていくということで動き出している。
補足すると、科学衛星のみならず、地球観測等々の衛星もすべて含めて、一つの同じ考え方で、しかるべきときに、今のチーフエンジニアオフィスを使って審査をして、JAXA(ジャクサ)としてプロジェクトの状況を判断していくというプロセスを整理し直している。それを是非きちっと機能するようにしていきたいと思う。
スタート時の甘さ、いわゆる見込みが甘かったということを言っておられるわけであるが、これは何もLUNAR-Aだけではなく、ほかにも事例はあるわけである。それに対する一つの答えとして、フロントローディングという考え方で、前段階での研究開発というものに非常に力を入れて、具体的なプロジェクトをスタートさせるというやり方をとるということだが、それぐらいの仕組みだけで、本当にこういった立ち上がり時の甘さ、見込みの甘さというものは回避できるのかということである。これは宇宙開発委員会の問題でもある。宇宙開発委員会も事前評価をして、これでいけると言ったわけだから、その限りにおいては一種の同罪だということなので、我々の反省でもある。
少し個人的な意見を言わせていただくと、おっしゃっていることを必ず起こらないようにすることは多分不可能なのだろうと思う。どうしても、どこか途中の段階で判断をして、ここでやめなさいという種類のことが働く必要があるのではないかと思う。
例えば、NASA(ナサ)だと、ある段階でぴしっとやめるという判断をして、やめることも選択肢の中に含めた厳しい評価をやっているが、JAXA(ジャクサ)としても、それは必要なことかと思う。
体制に関連する質問だが、ここで書かれているのは、同時並行で開発したことが悪いという言い方をしているが、これは、私、企業にいた経験から申し上げたいのだが、あるプロジェクトを実行する上では、御案内のとおり、モジュール化して、同時並行でいくわけである。いついつまでにやるという線表をかいてやっていくわけだが、これが悪いというのは、プロジェクト自体が最初からプロジェクトになじむようなものではなかったということを言っているのか。私なんかむしろ、現実問題としては、かつては、よさ悪さを含めて、大学のカラーが非常に強い研究所で進められたものであり、こういうことが起こっても、それほど不思議ではないという状況だったが、今のJAXA(ジャクサ)ではこのようなことはなかなか起こらないのではないかと理解している。だから、同時並行で進めたことが悪いという意味が、私はよくわからない。どういう考えで、こういうような表現を使っているのか。
実は、私どもとしては、過去にあるいは現在も、普通の衛星ではこういうやり方でやってきているわけである。それで、まさにペネトレータの難しさに関する認識が欠けていたために、本来ならば間に合って、ここで合流するだろうという安易な見通しがあった。そこが一番問題だった。だから、まさにペネトレータの難しさに関する認識がなかった。そこが問題であったということに尽きて、それでこういうことになってしまったということだと思う。
それに関連して、多分、日本のこの手の開発について、いつも問題になることで、先ほど佐藤委員からも指摘があったと思うが、専門家が入ってしまうと、どうしてもそれに対するチェックがきかない。研究者同士で、もっと密なる議論、若干距離がある分野にいる人も含めた議論をすることにより、専門家の考えをさらに深めていくということが可能ではないかと思うが、日本の場合、一般的にいうとそれは非常に弱いという感じがする。現場の中で、反省を含めて、これについての議論は相当されたのか。
このLUNAR-A計画が立ち上がったときには、宇宙理学委員会でも宇宙工学委員会でもかなりの検討がされたはずである。ただ、先ほど、ちょっと申し上げたように、ペネトレータのめどがあるという判断については、真っすぐ貫入した場合についての試験が通っていただけのような経緯だった。つまり、安全率をどれぐらい見て、どこまで厳しく判断をしておくかというあたりが、基準があいまいだったのではないか。これは、少し個人的な感想になってしまうかもしれない。
開発途中で、我々はいろいろな誤差とかエラーを含めて、真っすぐ貫入することはあり得ず、斜めに貫入するケースで考えておかなければまずいということで、いろいろ問題が出てきたわけだが、プロジェクトをスタートしたときは、真っすぐ貫入するようなデータで、これはうまくいきそうだと考えていた。実は私、スタートしたとき参画してないので、そのときの状況はよく知らないが、どうもそのようなことのようである。
人材について伺いたいのだが、何百も論文が出されたということは、相当たくさんの研究者を輩出・育成してきたことだと思う。そこで、このプロジェクトで研究全体を占める人材の中でどういうところを育成したかという位置づけをレビューされているかどうかということを聞きたい。またこの計画が中止になると、今までここにかかわっているかなりの人たちをどういうふうに振り分けていくかというプランはお持ちなのか。
レビューをされているかという話については、サイエンティストの間のレビューということはされていない。つまり、それはサイエンティスト自身の自主性に任されているということで、全体がミッションとしてどういうふうになっているかというレビューはされてはいない。
それから、どのように振り分けられていくのかという話については、今、この科学というものは、日本だけではなくて、世界中が注目している科学であり、参画されている人たちというのは、そういう意味からいうと、内部探査に向けての最先端をやろうという人たちであるので、それについて特別にどうするということは今なされていない。若い人たちがこれに参画しているが、特に若い人たちというのは、最先端の内部探査に向けての科学というものに対して夢を持って進めているという状況である。
夢を持って進められるのはいいが、このプロジェクトは終わりになるので、せっかくこれだけ育ってきた技術者たちを、その後も適材適所に配置するなど面倒を見るようなシステム作りとかいうのも必要ではないだろうか。
是非必要だと思っており、資料の27ページの今後のミッション改良研究等で、ミッションが決定されれば、さらに3年ぐらいでペネトレータの改良が進み、さらにサイエンスが進んでいくと考えているので、このような3年の計画等を使って、サイエンティスト、あるいは技術者の維持管理はしていきたいと考えている。また、先ほど言ったように、LUNA−GLOBなり外国からのミッションのオファー等も来ているので、そういう方向で進めていきたい。
要は、中西先生の言いたいことは、論文も四百幾ら出してきたし、人も育ててきたではないか、途中で中止になったが。そこのところをもう少し強く言ったらどうかという趣旨のことを多分言っていただいているのではないかと思う。だから、世の中の人に、もっと言うべきこと、単にどぶに捨てたのではないということがもう少したくさんあるのではないかと。
先ほど来申し上げているとおり、ペネトレータに関してはやめるというわけではなく、今後とも継続するので、そういうサイエンティストとかエンジニアが散逸するということは我々としても避けたいと思っている。
サイエンスの価値からすると、こういう状況になったのはとても残念だと思う。29ページの対応策についての質問だが、10年経過したから、劣化によって問題が生じるということと、2番目の、現在のLUNAR-Aシステムはリスクの高い設計で再設計が必要ということの二つは全然違う問題だと思う。二つ目の、もしもまた新しい母船を作った場合は80億円かかると書いてあるが、この80億円というのは、再設計した上で作った場合の費用か。
現在ある図面で、同じものを作るのにそのぐらいかかるということである。
正確に言うと、電子部品等は今まで使っていた部品が使えないので、今ある部品で作るために再設計というものはところどころ出てくると思う。
そういうことならば、リスクの高い設計でなぜ設計していたのか。
1990年代にスタートした時点では、その辺の信頼性に対する考え方について、かなり現時点と差がある。JAXA(ジャクサ)になってからは、ミッションサクセスのためにどういうことを考えなければいけないかという観点からチーフエンジニアオフィスのレビューを受けたわけだが、そういうところの評価からいうと、1990年にスタートしたときに考えていたような設計だと、信頼性やミッションサクセスという点でリスクが多いので、JAXA(ジャクサ)としてはとるべきではないという評価を受けたということである。
開発がすべて成功するとは限らない。私たちは個人的には、30年ぐらい官庁の仕事をやっているが、失敗は1回もなかったのではないかなというのが私の経験だが、今回、こういう決断は、悪いことでもないし、こういうことをはっきりしていく必要がある。
ただ、いろいろ言われる中で、私たちも、ロケットのいろんな不具合があったときに、再発防止策ということで、海外のNASA(ナサ)だとか、ドイツ、フランス、いろんなところのディスカッション、議事録を読ませていただき、少なくとも経営的な見方でいろいろやらないといけないという話の記述が大分あり、注目して読んでいた。
そういう意味で、フロントローディングという話も、システムは、産み方ではなくて育て方という世界ではなくて、最初から頑張っておかないと、なかなかうまくいかないというのは、我々も仕事をやっていて、ある意味では常識になっている。ただ、こういうふうに結果として問題が出たとなると、私が聞きたいのは、宇宙科学研究所からJAXA(ジャクサ)になったときに、どういうチェックポイントで評価されるかということで、先ほどチーフエンジニアオフィスという話があったが、新しい組織のどこに入っているのかというところも書いていただいた方が、評価するとき、評価しやすい。
逆に言うと、説明するときに、そういうところが重要であれば、何か入れていただいて、ここでチェックするんだと。宇宙科学ミッションは、宇宙理学・工学委員会ということで、二つ足したようなところでチェックポイントがあるかもしれないが、そこら辺のかかわり合いも、わかりにくいと思った。
それから、もう一つは、中止となると、ロケットと衛星で176億の投資をしているわけで、具体的には、全部使わないと思う。流用とあるが、幾分かは本当に捨てるものが出てくるのではないかという気がする。そういうところは、社会的にも、どの程度が本当に捨てるものか明確にしていく必要があるのではないかという気がする。
最初のチーフエンジニアオフィスのJAXA(ジャクサ)内における位置づけに関して、資料を再製作して提示したいと思う。
それから、確かに利用できるものというのは、すべてが利用できるわけではなく、予算の中のある部分に関しては、ソフトウエアの製作とか、人工費等でもう既に使用されたものもあるので、今まさにおっしゃられたとおり、100パーセント再利用できるということはあり得ないと考えている。
ただ、そこに書いた電子機器等に関しては、今後のペネトレータの研究開発に利用できるということは、ある程度めどをつけているし、あるいは、ほかのプロジェクトの地上試験用等に利用もできるということで、32億円という数字は、ある程度調査した上で出した数字である。そのほかに関しては、先ほど申し上げたソフトウエアとか人工費等で既に取り返しのつかないようなものもあるので、100パーセント再利用できるということではない。それは指摘のとおりである。
今おっしゃっているのは、衛星の32億円は流用できるという数字である。ただ、66億円の流用先は検討中ということだが、ハードウエア、ソフトウエアを含めて、今時点では、そのうちどれくらいは使えそうだ、有効利用ができそうだ、逆に、どれくらいはごみとして捨てざるを得ないということは言えないのか。
24億円のものは、今保管していて、これはハードウエアの値段なので、現在存置している。母船の中の32億円以外のものに関しては、先ほど来申し上げているとおり、今後の固体ロケット用の関係試験用のペイロードとして使いたいと考えているが、その中の66億円をすべてというわけではない。ソフトウエアとかそういうもので、もう既に使用してしまったものもあるので、すべてというわけではない。その内訳はまだ今出てない。
僕ら民間でも同じような話だが、国のお金だから、そこら辺が不透明にならないようにデータとして押さえるべきところはやっておかなくてはいけないのではないかという意見である。
もう一つ、54億円については、これからペネトレータを作っていくということだから、54億円は、いわゆる途中の数字と理解するのか。
ここに書いた数字は、一応、来年度の貫入試験において完成すると見通しを立てているので、そうすると、ペネトレータの部分に関しては完成済みという位置づけになる。月に行って実証はできないが、地上では一応開発済みという位置づけになると思う。
ヒューマンリソースがどのぐらいかというのが出てないが、どのぐらい人間を使ったかというのは出てくるのか。研究者でも構わないが。別に人月を出さなくても結構だが。あるいは、研究者がどのぐらいタッチしたかということは出るのか。それは今後お願いする。
私は、最初の見込みが甘かったといえば甘かった、これは仕方がないと思うが、最初にこれを考えたのは平成2年。平成3年から実際にスタートされたということだから、そのときに、今の状況で考えると、恐らく20年ぐらい。早くても2009年か2010年ぐらいの打上げ。平成2年の段階で、こういうことをやりたいが20年ぐらいかかると言ったら、果たして当時の宇宙開発委員会がオーケーしたかどうか。これは非常に怪しいものだと思うので、そのぐらい難しいことにチャレンジされたというのは、私は評価したいと思う。
並行して出された成果としては、超高感度の地震計とか、いろんなことがあるが、恐らくここの反省にも書いてあるように、平成2年度、3年度にスタートされたときに、開発ということなので、実際のモデルを作ることをスタートするということであるが、研究レベルだったらまだよかったという気がする。そこが間違えたところで、そこは「得られた教訓」にも書いてあるわけだが、ただ、世の中の組織というのは、クリエーティブな人がマネジャーとして優秀かというと、必ずしもそうでもないというのは世の中にいっぱいある。いや、このプロジェクトを申し上げているわけではないが、多分、科学者でも技術者でも、クリエーティブであればあるほど、マネジメントというか、与えられたリソースをうまく活用して、目的をうまく達成されるというのをマネジメント力とすると、世の中一般にそういうことは苦手な人が多いと思う。だから、これは組織が常に抱える課題であり、今後の教訓、得られた教訓というところでその辺も書いてあるように思えるので、それは是非生かしていただきたいと思う。
ただ、一つ気になるのは、過去何度も延期された中で、例えば、平成6年にフライトモデルを始める前だが、M5の失敗でこれが延期になったとかいうのがある。それから、実際のフライトモデルを作り始めたら、分離機構とかポッティングとか、ペネトレータ自身の問題で延期になっているが、その後もまたロケットの問題で延期になっている。つまり、度重なる延期の中で、半分近い延期の理由が、自身のプロジェクトの進行状況のためではなくて、ほかの理由で延期になっているということが、これに携わっている人たちの危機意識というか、与えられた期日までに達成しなければいけないという意識を弱めてしまうという悪い効果があると思う。その辺は、「得られた教訓」には全く表現されてないが、私はそれは絶対あったはずだと思う。でなければ、もっと早く路線変更の議論ができたのではないかと。
逆に言うと、これだけ小刻みに延期しなければ、一たん研究段階に戻ってでも、もっと集中的にペネトレータをやろうと言っていれば、今頃既に打ち上がっていたかもしれないという、そういう残念な気もする。もしこれだけの情報が世の中に開示されて、どこかの国が日本より早く、このペネトレータ技術を使って、科学的な成果を上げたとしたら本当に残念な結果になる。反省の中に含まれてないが、その辺で、もし違うやり方があれば、もっと早くこれが達成できたのではないかということがあるのではないかと思うが、その辺も反省材料に是非していただきたいと思うが、いかがか。
正直な状況を申し上げると、従来から、科学衛星についてくる予算というのは、フライトモデルにつくお金が、年度にまたがって国債として出されてしまうので、実は、フライトモデルを作り始めたという段階で、国からの予算執行は終わってしまっていると言えるような状況に置かれていた。だから、打上げが延ばされたからといっても、国としては予算が決められて動いており、実はもう研究に戻りようがないような状況だったと思う。
おっしゃるように、ほかの理由で延びている場合が多かったという指摘はそのとおりだと思うが、ただ、ペネトレータの開発としては、その時点時点で一つ一つ問題を解決しながら進んでおり、解決された問題は、次はもう二度と失敗していないという非常に確実なステップを踏んできている。開発者がそれで気持ちが緩んだということは全くなかったと思う。
対応策のところの説明では、ペネトレータとか母船を今後どうするかという話が主体になっているが、ただ、このプロジェクトの最初の目的はあくまでも月の構造に関するデータを取得することが本来のミッションである。その手段として、ペネトレータとか母船の開発が必要になったと考えるが、ミッションそのものについて、今後どういうふうに対応するのか。計画していたデータがとれなくなったことについて、今後どういうふうに対応していくかという視点から見た説明がもう少しあってもいいのではないかと思う。ただ今後のプログラムの中でペネトレータを使えるようにしようとかいった話ではなくて、本来、何のためにこのプロジェクトがあったかということを考えて、それに対する対応案も何か、腹案ぐらいは示されてもいいのではないかという気がしているが、いかがか。
現状、月でなぜこれほど内部探査がされていないかというと、アメリカ、あるいはヨーロッパにしろ、今まで無人機において内部探査を行うのに最も有効な地震計、あるいは熱流量計というものを設置できた例というのはない。それはどうしてかというと、技術的に非常にハードルが高かった。有人のみが、今までアポロで成功している。例えば、無人のランダー等で地震計が設置できれば、これは代替がきくんではないだろうかということは当然検討しているが、アメリカのアポロの計画にしろ、あるいはバイキングの計画にしろ、無人着陸機において、うまく地震の計測、あるいは内部に関する情報を取得できた例はないし、テクニカルには、むしろペネトレータで内部探査をやる方が近道であり、有効であるという判断をしている。したがって、ペネトレータについてこれだけ強く申し上げているわけであり、ほかの代替手段があれば、そちらに乗り移るということは可能だが、今のところ、有効にデータを取得できる方法はないものだと理解している。
その例が、参考資料の中の45ページにある。これは外乱の例だが、着陸船等が月震に与える外乱ということで、ここに例が、アポロ11号の着陸船による例が書いてある。これは非常に大きな着陸船の話だが、着陸船それ自身が振動源になり、地球等に比べて圧倒的に静かな月、あるいは、ほかの惑星で内部を調べようと思ったときには、着陸機それ自身がノイズ源になってしまって、中がはかれないという状況が起こっている。この場合にも、着陸機から大体20メートルぐらい離れている。あるいは、さらに、この後の計画では200メートルぐらい離れている。それにもかかわらず、着陸船等からは非常に大きなノイズが出ていて、うまく測れないということがわかっている。したがって、ペネトレータというものがそれ用に、そういうことを避けて観測するために作られた、あるいは、それを目的として作っているので、こういうものは有効であろうとは考えており、これ以外には内部を探査する方法は現実的にはないだろうと思っている。
ただ、今後、地震計等が、着陸船等に有効に使える波長帯域のものが作られれば有効なんだが、今、そういうテクニカルなものも存在してないので、それについては今、やりようがないんだろうと思っている。
私が聞きたかったのは、そういう月の情報を得るために、今後の対応策として、JAXA(ジャクサ)の戦略的月・惑星探査プログラムの一部として取り組むとかといった効果的に実施可能な提案、あるいはその可能性みたいなものについてである。また、ペネトレータについては来年度、完了させるという話であるが、それがどういうふうに生かす計画であるのかが見えてこないのかということである。
現在、SELENEまで決まって、SELENEは来年上がるが、その先のものに関して、今、月探査、正式な名前は忘れたが、そこで今検討を進めている。ペネトレータの適用に関しても。ただ、我々としては、できたものはなるべく早い時期に打ち上げたいということで、今、一番早いチャンスが、ロシアのLUNA−GLOBであろうと思って、それに適用することを何しろ今考えたいと思っている。目的は、まさにロシアがやりたいことも我々がやりたいことも同じ。当初、我々が考えていたことを、同じようなことをやりたいと。ただ、ロシアはそういう実証された技術を持ってない。それで、日本のペネトレータを搭載したいというのが彼らからの申入れである。
ペネトレータの技術が完成したら、国内外問わずに大いに活用して、いろいろ有用なデータをとっていただくように是非お願いしたいと思っている。
スタートのときの評価のやり方で、もうちょっと厳密にという話も随分出てきたが、先ほど来の議論に出ているように、やはり宇宙開発、特に科学ミッションというのはチャレンジなので、失敗しないようにということをあまり最初に強調すると、せっかく出始めた芽をつんでしまうのではないか。国の予算を使うわけだから、もちろん甘いのはいけないが、チャレンジを何とかプロモートするというのは非常に大切なことだと思うので、先ほどJAXA(ジャクサ)から出たように、中間評価というか、やってみてだめだったら方向転換する。途中で方向転換する勇気をプロモートするようなことを是非こういうところではやるべきではないかと思うので、一言だけそれを言わせていただいた。
先ほどから聞いていて、惑星固体科学のすばらしい探査技術を日本が世界に先駆けて手に入れたと言える。これは、LUNAR-Aプロジェクトがなかったら手に入らなかったわけである。逆の考え方でいくと、「得られた教訓」の中に言及されているが、挑戦的な技術開発項目を先行して開発して行けるのか、何かプロジェクトがくっつかないときもそれがやれるのか。つまり、LUNAR-Aというプロジェクトがあったおかげで、これだけすごい、予想とははるかに覆ったわけだが、とにかく目的としたものは手にしたわけである。そういう意味で、LUNAR-Aというプロジェクトがもしなかったら、今、日本はこの技術を持っていないわけである。教訓のところに書いてあるように、切り離して、先行してやれるような、そういう環境はあるのかどうかということを聞きたい。
量的に十分かどうかは別として、今、実際の衛星計画が立ち上がる前に、それぞれの計画に核となる技術的な見通しを立てるための予算は用意して、それは随分有効に使われている。当時、そういうようなものはなかったという事情はあったかと思う。
ちょっとお尋ねしたいが、途中で勇断をもって方向転換ないし、やめる、それをプロモートする仕組みというのは、どんなことがあり得るのか。要するに、責めないということか。
そういうことではなくて、やはり何事にも最初に開発目標というものがある。そうすると、普通の開発計画だったら、節目の時点で、目標に対する達成度というのは必ず評価していくわけである。例えば、5年計画だったら、2年たったらどこまで進んでいるとか。それで、最初の計画と達成度を評価して、それが大幅に狂っていたら、技術的、スケジュール的あるいはコスト上、そういうもので評価していくということだと思う。それとささいなことを言わせていただくと、そこで技術の達成度がどこまで達成されているかというところになると、その評価自体をどこでやるかということが結構問題である。今日は、中島先生から、大体完成しているという話を聞いたが、それは別に信用しないわけではないが、この場では具体的な内容は議論されてない。そのあたりの議論をどこでどういうふうに評価していくかということも大切だと思う。ちょっと論点がずれているかもしれないが、いずれにしろ、計画に対して達成度、それに対して、その見通しとか、中間での評価をやっていかないと、結果だけ評価するというのはあまり実りのある作業ではないと思う。
今の議論もさることながら、11ページを見ていたが、フライトモデルを作ってから、宇宙開発委員会なり推進部会なり、あるいは前身の調査検討部会とのかかわりでいうと、どんな関係にあったのか。
というのは、ISASなりJAXA(ジャクサ)のプロジェクトをプロモートされている方に今日報告いただいたが、10年間放っておいて、何で今のこの時期にというようなことでお話ししているが、それを見ていた推進部会側、あるいは宇宙開発委員会側にも、何か適当なタイミングで、どうなっているのとか、あるいはこうしたらという議論をする場、そういったものがあってよかったのではないか。だから、これは部会長にお願いする話か、事務局にお願いする話かわからないが、例えば、年度当初に、すべての研究段階、あるいは開発研究段階にあるプロジェクトをひとまず洗い出して、最低2年に1回ぐらいは報告して頂くとか、そういったレビューをもう少し密にやった方が、「これはこうしたら」とか、「何か困ってないのか」という議論ができるのではないか。
考えさせていただきたいと思う。
宇宙科学研究所に在籍していたものとして、本日、この大きな決断の話を、感慨を持ってうかがった。今後海外との協力も検討していくという話、これは重要なことと思う。サイエンスの目標、つまり、月の内部探査をきちんと行うこと、日本が世界に先駆けて行うこと、その実現のためには、国際協力でも十分いいわけで、そういう意味で、最後のページに示されたロシアとの協力、あるいは、口頭で言及されたドイツとの協力、などの検討を前向きに進めていただきたい。ただし、その際、相手のプロジェクトの確実性を、慎重に見きわめることが大切と思う。
それから、一旦、共同観測計画が進むとなったときには、これだけのペネトレータ技術を持っているのであるから、観測に関して強いリーダーシップを持って参加していくこと、単に積んでもらうという立場ではなく、強い形で共同計画に臨むこと、それを期待したい。
まことにごもっともな指摘である。気をつけて進めたいと思う。
事務局から推進1−2に基づき説明を行った。主な質疑は以下のとおり。
評価票の3項目は、評価という意味では妥当だと思うが、推進部会の委員としてはより実りある方向について発信できればありがたいというのが私の気持ちである。つまり、この失敗から学ぶことというか、これから宇宙科学研究本部の方向について建設的な意見、コメントができるならありがたい。
また LUNAR-A自身は実現できなかったが、先ほど議論があるようなペネトレータを有効に使って、発展させていくという将来に向けての発信ができればありがたい。確かにこれらの意見、コメントは評価ではないと言われるかもわからないが、何か表明させていただけないかという気持ちがする。
その点、私ども自身も、先ほど、宇宙開発委員会も同罪と申し上げたが、そういう気持ちがあり、今指摘のあったような、スタート時や途上においての、委員会自身も反省するところがある。その点もあるので、今先生がおっしゃられたようなことを、できる限り提起いただいて、私としては、気持ちだけの問題ではなくて、仕組みにでも転嫁して生かすようなことも考える必要があると思っているが、いずれにしても、今先生が言われたようなことは書いていただく。ついては、この3項目の中のどこかで、今言われたようなことを皆さんに書いていただくには、どこが一番いいかなと今思っているのだが。付録はちょっと。4を作ってもいいのだが。
以前、準天頂だったか、具体的なプロジェクト名は忘れたが、たしか、「その他」というような提案の欄があったかと思うので、もしできるならば、そういった欄を作っていただき、今、部会長から発言のあったような点を含めて提案できるように。多分、委員の方々もいろいろ思いがおありかと思うので。
では、そういうことで。
「プロジェクトの成果」という項目についての評価だが、これは、最初の目標に対する成果として評価するのか、あるいはプロジェクト中止を前提として出てきた対応案などを認めた上での成果として評価をすればいいのか、ちょっと悩んでしまう。
後者ではいかがか。
わかった。
私の希望だが、単に到達したかどうか、オール・オア・ナッシングではなくて、いろんな成果があると思う。できる限り、先ほど鈴木委員が言われたような、方向転換をきちんと評価するというか、プロモートするというものの一環にもあると思うが、出てきたものをできる限り表に引っ張り出してあげるというような評価をしていただくとありがたいと思う。厳しさも必要だが、いろんなことを生み出してきていると思う。そこのところを、いろんな角度から見て、引っ張り出していただくといいかという気はする。それでは、第1回の推進部会、このあたりで終了させていただきたいと思う。評価票は、よろしくお願い申し上げる。
─了─
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