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技術士制度の改善方策について

平成12年2月23日
技術士審議会

 我が国においては、科学技術創造立国の実現を目指し、技術革新による産業フロンティア創出と国際競争力強化を図るため、これを支える技術系人材の育成、確保が重要な課題となっている。
 また、経済活動のグローバリゼーションに伴い、「国境を越えて活躍できる技術者」の具体化が急速に進展しており、我が国としても適切な対応を図ることが必要となっている。
 このような状況の中で、平成11年7月に閣議決定された「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」においても、「技術士制度を、技術の変化に柔軟に対応し、より広範囲な技術者のために活用できる国際的に整合性のとれた制度に改善することにより、海外の技術者との相互移動を促進するとともに、技術者の活性化を図る」ことが示されている。
 さらに、高度化、複雑化の著しい科学技術に対する信頼性や安全、安心の確保の観点から、技術的実務能力はもちろんのこと、高い職業倫理を要件とする技術者資格に対する期待が高まっている。

 当審議会としては、これらの経済社会情勢の変化等を踏まえ、科学技術庁(「技術者資格問題連絡懇談会」)をはじめ関係省庁や関係機関より意見を聴取しつつ、技術士制度の改善について調査・審議を行い、ここに改善の要点をとりまとめたので報告する。

 本報告書の内容については、政府において実現を図ることを求めるが、その際、本制度の活用の促進等の観点から、関係省庁の緊密な連携協力の下、制度の改善に取り組むことが重要と考える。

第1章 基本的な考え方

1-1 技術に携わる者の備えるべき倫理要件

 現代社会において、技術は社会の隅々まで浸透し、多くの便益をもたらし、安全で豊かな生活を可能とすると同時に今後の経済社会の発展の基盤として不可欠な存在となっている。しかしながら、一方で、技術は安全問題や環境問題を生じさせる場合もある等、技術が社会に及ぼす影響の大きさは、正の効果も負の効果も拡大する傾向にある。
 従って、技術に携わる者は、実務担当能力を有することはもちろんのこと、社会や公益に対する責任を企業等の活動の前提とする旨の高い職業倫理を備えることが必要である。
 また、自己の能力の範囲を明確に認識し、業務遂行上、専門的な助力の必要性に関して的確に判断し、適切に助力を得ること等も重要である。
 こうした職業倫理を徹底するためには、技術者が属する企業等を含め社会全体がその重要性等について十分に理解することが不可欠である。

1-2 急速に進展する技術者資格の国際的な相互承認への対応

 経済社会のグローバリゼーションに伴う国際情勢の変化に対応して、世界貿易機関(WTO)により専門職業人の自由な移動促進の枠組みが策定されるとともに、欧州においてはヨーロッパ技術者[EuropeanEngineer(EurIng)](FEANI)、カナダ、米国、メキシコの3国においては技術者免許相互承認(NAFTA)が制度化されている。こうした状況の中、アジア太平洋経済協力(APEC)域内での技術者の自由な移動を目的としたAPEC技術者資格相互承認プロジェクトが1995年に提案され、既に、APEC人材養成作業部会の下で、技術者資格の概念や相互承認の枠組みが合意され、相互承認協定の原則に関する協議に移行する段階にある。
 即ち、国境を越えて活躍できる技術者(グローバルエンジニア)の具体化は加速度的に進行している。
 こうした国際的な動向に対応し、我が国の技術者が、国際的にその能力を適切に評価され、不利益を被らないよう、必要な対応を図ることは極めて重要である。

1-3 質が高く、十分な数の技術者の育成、確保

 科学技術創造立国を目指す我が国としては、技術革新による産業フロンティア創出と産業の国際競争力の強化の観点から、質が高く、かつ、十分な数の技術者を育成、確保することが重要な課題である。
 このためには、技術者教育の段階から、技術士資格付与、継続教育までの生涯に亘り、一貫した整合性のあるシステムを構築し、これが十分に機能することが重要である。
 かかる観点から、技術士制度については、高等教育機関の技術者教育に関する専門認定が制度化された段階において整合性、一貫性のあるものとなるよう、また、多くの技術者、学生が技術士を目指すよう、必要な改善を図ることが重要である。

1-4 有資格の技術者の普及の必要性等

 前述の1-2及び1-3に加え、技術者資格が確固たる地位を得ている諸外国との技術業務の連携・協力の増大に伴い、その業務の実施上、我が国側に対し、単なる技術者ではなく有資格の技術者が求められる局面が増加していること、雇用体制の変化に伴い技術者の流動化が進みつつあること等の情勢変化に対応するためにも、我が国においても、諸外国と同様に、個々の技術者の能力資格の普及が重要である。
 このような観点から、技術士資格をみると、分野によりかなりの活用が図られているものの、全体としては、十分な状況とは言えない。
 このため、技術者資格の国際的な相互承認が及ぼす影響及び効果、また、高い職業倫理を備え、十分な知識、経験を有する技術士を活用することの有用性、重要性等について、社会的認識の喚起、増進を図りつつ、技術士資格の活用を我が国の技術活動の全般に亘って飛躍的に拡大することが重要である。

1-5 技術士の数

 技術士の資格については、一部の業務資格取得上等の特典があるものの、基本的には、弁護士や医師のような業務独占資格でなく、名称独占資格であること、我が国においては、従来、組織としての技術力が重視されてきたこと等により、社会的な評価は十分ではなく、一部の分野以外では活用が進んでいない状況にある。このため、技術士資格に関する周知度も低く、米国のプロフェッショナル・エンジニア(約41万人)や英国のチャータード・エンジニア(約20万人)等の欧米の先進主要国に比べ、我が国の技術士の総数は約4万人と格段に数が少ない状況にある(参考6参照)。また、国内の他の資格との比較においても、例えば、業務独占資格である一級建築士は約29万人であり、技術士資格が普及していないことが明らかとなっている。
 今後、技術者資格の国際相互承認の具体化等の諸状況の変化の下、活用の促進とともに、以下のような具体的な改善により、技術士資格取得志望者、特に、現在、活用が進んでいない部門を中心に全部門に亘って資格取得志望者数が拡大し、技術士の質を維持しつつ、技術士の数が増大することは、科学技術創造立国を目指す我が国として極めて重要である。我が国の技術士の人数については、当面の目標と考えられる欧米程度に向けて増大し、我が国の約240万人(参考8参照)の技術者に活用される制度となることを期待する。

第2章 具体的改善方策

 技術士制度については、第1章に記述したように、国境を越えて活躍できるよう資格の主要な要件について国際的な整合性を確保するとともに、多くの者が技術士を目指すよう、次のとおりの改善を図ることが適当である。
 また、技術士資格の英文表示については、技術士が高い職業倫理を備え、十分な知識、経験を有し、自律して業務を行える専門職としての技術者資格であり、コンサルティングエンジニアから、建設業、製造業等の企業に勤務するエンジニアまで幅広い分野・業種において種々の業態により活用されていることを踏まえ、また、外国の相当する資格との整合性を考慮して、適切な呼称を検討することが重要と考える。

1 制度改善について

(1)職業倫理

 APEC技術者の要件(参考4参照)に示されているように、国際的に技術者資格には、企業等の活動の前提として、社会や公益に対する責務が求められている。我が国においても社団法人日本技術士会では、この旨言及した倫理要綱を定めている。しかしながら、前述のような国際的な同等性の観点とともに、現代社会が技術に依存し、技術が社会に及ぼす影響の大きさが拡大していることを踏まえ、技術士の備えるべきこととして、公共の安全、環境の保全等の公益を害することのないよう業務を行うことが技術士活動の前提である旨の社会的な責務を明示し、徹底を図ることが適当である。
 また、自己の能力範囲を超える場合には適切な専門的助力を得る等の職業倫理についても、技術士試験や継続教育を通じて、その徹底を図ることが適当である。

(2)技術士試験のあり方

1.【技術士試験の構成】

 現在の技術士試験については、7年の実務経験のみをもって第二次試験を受験する場合と第一次試験合格後、技術士補の登録を経て、4年の実務経験をもって第二次試験を受験する場合から成る。他方、国際的な同等性の観点から、幅広い分野の基礎的な学識等を備えていることを確認する必要があるため、技術士試験については、技術士として備えるべき幅広い技術に関する基礎的な学識や職業倫理等を確認する第一次試験、及び当該受験分野に係る実務経験や専門的学識等を確認する第二次試験により行うこととし、現行の7年の実務経験のみをもって直接第二次試験を受験する経路については廃止することが適当である(参考3参照)。
 即ち、技術士の資格取得に至る方途は、第一次試験を受験し、所要の実務経験を経て、第二次試験を受験することを基本とすべきである。

 なお、現在、現行制度の実務経験7年のみをもって受験資格を目指しつつある者等については、適切な経過措置を講じるべきと考える。

2.【第一次試験の目的】

 第一次試験は、数学、自然科学、及び技術に関する基礎的な知識とその応用能力とともに、職業倫理やコミュニケーション能力等の修得の確認を目的とすることが適当である。

3.【第一次試験の受験要件等】

 第一次試験の目的は、上記2)に示すように技術士としての基礎的な能力を確認する試験であり、また、国際的な同等性の確保の観点から、第一次試験は大学のエンジニアリング課程(工学のみならず、農学、理学等に係る技術系を含む)により習得すべき能力を確認することが適当である。
 なお、これ以外の教育を受けた者についても、受験でき得ることを確保すべきである。
 高等教育機関の技術者教育の専門認定については、現在、日本技術者教育認定機構(JABEE)による認定が準備中である。こうした認定が機能する段階には、技術者教育と資格付与の整合性、一貫性をとることの重要性に鑑み、認定された教育プログラム修了者に対し、第一次試験の学科試験免除等の優遇措置を行い得るような制度とすべきであるが、具体的には、認定の実施状況を踏まえつつ、所要の措置を講じることが適当である。

4.【第二次試験の目的】

 第二次試験は受験技術部門に係る実務経験、高等の専門的応用能力の他、技術士に必要な学識についての確認を目的とすることが適当である。

5.【第二次試験の受験要件等】

 第二次試験については、第一次試験を合格し、かつ所要の実務経験を有することを受験要件とすることが適当である。
 具体的な第二次試験受験要件については、技術士補を経て第二次試験を受験する場合において、第一次試験合格者の約4分の1の者が、指導技術士の確保ができないとの理由により、技術士補の登録を行っていないとの状況を踏まえ、
 1)技術士補の資格を得て指導技術士の下で修習する場合及び
 2)7年間の実務経験と第一次試験合格による場合に追加して、新たな方途として、
 3)優れた技術者の指導の下での4年間を基本とする修習プログラムの実行
 により受験可能とする方途を加えることが適当である。この新たな方途については、技術士補が指導技術士の下での実務経験を集積する場合と同等となるよう配慮することが必要である。この方途が、十分に吟味された実務、研鑽等による修習プログラムとなるよう、学協会等の連携・協力による社団法人日本技術士会の支援を受けつつ、実務経験を積み、受験するような仕組みを設けることが考えられるが、具体的な方法等については、さらに検討を進める必要がある。
 以上の第一次試験に合格し、技術士資格の取得を目指して、修習を行っている者については、技術士補を含めた3つの方途に共通した呼称を検討すべきであり、例えば修習技術者と言う呼称が考えられる。
 なお、技術士補の資格を得て受験する場合を含め、修士課程年数等については、内容等に応じ、実務経験年数として算定すべきである。

 また、技術動向の変化等に柔軟に対応できるよう、第二次試験における受験技術部門については、教育機関における履修技術分野等による制約は設けないことが適当である。

6)【技術部門】

 技術業務の複雑化、高度化、大規模化等に伴い、当該技術業務自体はもちろん、外部環境への影響まで含めて、業務を的確に遂行するため、総合的に監理することの必要性が増大しており、これが適切に行われない場合には、予期せぬ負の効果が発現する場合もある。
 即ち、技術業務の遂行に当たって、業務を構成する個々の作業や工程等の要素毎の技術的な管理の積み上げによる全体の管理に追加して、業務をシステムとしてとらえ、多面的かつ並列的に俯瞰した一元的な把握、分析に基づき、採用技術やプロセスの改善により、安全性の向上と経済性の向上を両立させることを目指した総合的な技術的監理が必要となっている。
 既に技術士の資格を取得し、責任ある立場で一定の年数以上技術業務に就いている技術士は、基本的にこのような総合的な技術的監理に関する能力を備えているものと考えられる。
 以上を踏まえ、新たな技術部門として、総合的な技術的監理に係る部門の設置について検討することが必要である。なお、本部門に必要な能力としては、他の部門に比べ、長い実務経験年数を受験要件とする等広範な技術力を必要とし、具体的には
 1)技術士資格取得の後に就く実務のような高度な実務経験を含め、十分な実務経験を積むことにより得られる、設計の審査・照査、信頼性評価等の能力を基本とし、これに、
 2)代替案の評価・選択等のリスクマネージメント、知的資源管理、人的資源管理等に係る能力を加えて評価し、認定することが考えられるが、その活用、既に技術士の資格を有する者の認定方法や試験の実施方法を含めてさらに検討を進める必要がある。
 また、既存の技術部門に関しては、社会的な需要や科学技術の進展状況を踏まえるとともに、技術士制度の活用の観点も加え、別途、技術部門等についての見直しを行うことが適当である。

7)【試験の実施方法等】

 技術士の資格は、高い職業倫理を備え、十分な知識や経験を有し、自律して技術業務を行える水準に達した者の能力を認定するものであり、その後、経験を積むこと等により、技術士としての能力の向上を図るものである。この基本的な認識を踏まえつつ、出題の偏りを避け、対象分野全般に亘る出題を行う等、受験者の能力をより適切に確認するよう、試験方法や出題方法等の改善のための検討を進める必要がある。

(3)継続教育

 技術業務は、新たな知見や技術を取り入れ、常に高い水準とすべきであることから、社団法人日本技術士会は、技術士の研鑽のための研修会の開催等を実施しているところであるが、諸外国においては、技術者資格要件として明示的に継続教育を求めている。また、継続的に技術能力を開発し、これが証明されることは、技術者の能力証明としても意義がある。
 このため、技術士資格取得者に対する継続教育を求めることが、適当である。
 なお、継続教育のあり方、内容等に関する検討とともに、技術士の活用を促進する観点も加えて、継続教育の実績等に関する定期的な登録等の措置を講じることについて具体化のための検討を進める必要がある。

(4)外国の技術者資格を有する者の認定

 技術者資格の国際的な相互承認に対応し、技術士制度を開かれた制度とするため、外国の技術者資格を有する者で、我が国の技術士資格と同等の能力を有する旨の認定を受けたいとする者については、一定の基準による審査の上、技術士と同等の能力を有する者として認定できるようにすることが適当である。但し、外国の資格が規定する業務範囲と我が国の資格が規定する業務範囲に違いがあり、所要の調整を必要とする場合等は、条件を付すことが考えられ、そのような対応が可能な仕組みにしておくべきである。

(5)社団法人日本技術士会と学協会等との連携協力

 今回の改善に係る第二次試験受験のための修習プログラム履行への支援及び継続教育の実施に係る事務のうち、各技術分野に共通的かつ一般的なことについては、技術士試験の実施に関する事務を行う社団法人日本技術士会が、学協会等との連携協力を得つつ、実施することが適当である。また、継続教育における実務的、専門的な教育等については、専門能力等を有する学協会等による実効性の高い研究集会への参加実績を活用する等、効果的かつ効率的に実施すべきである。
 このため、社団法人日本技術士会と学協会等との密接な連携協力のために協議する体制の構築が重要と考えられる。

2 技術士制度の普及拡大と活用の促進について

(1)科学技術創造立国の実現を目指す我が国が必要とする、質が高く、かつ、十分な数の技術者の育成、確保に当たり、技術士制度は、技術者が能力向上を目指し研鑽する動機を与える等技術者の育成上の重要な機能を果たすことから、制度の普及拡大は、我が国の技術力の向上を図る上で、極めて重要な課題である。また、技術業務の水準の維持向上を図る上で、継続教育により最新の技術、知見を備え、専門的応用能力等を有する技術士の制度が普及することは、効果があるものと考えられる。

技術士制度の普及拡大を図り、受験者数を拡大していくには、前述した制度の改善とともに、技術士の活動領域を拡大し、資格取得の動機を付与することが効果的であることから、
 1)技術士資格は、高い職業倫理等を有し、責任をもって業務を遂行できる技術者としての能力を保証する技術分野に横断的かつ基盤的な資格であり、一方業務資格は特定専門分野に係る技術的能力を保証する資格であるとの基本的な性格を踏まえ、具体的に各々の資格が規定する能力の範囲、水準等を勘案し、技術士資格と業務資格との相互連携を促進すること
 2)技術業務の説明責任を果たす一環として、技術士資格を当該業務の安全確保等に関する能力が一定の水準にあることについての証明(尺度)として活用すること
 3)修習技術者について、実務経験等はないものの、一定の能力を有することに鑑み、その能力に応じた活用を図ること等の検討、具体化を進め、公的事業をはじめ産業界の活動も含めた我が国における技術活動全般に亘って技術士制度の活用を促進することが重要である。

(2)技術士の活用を促すには、技術者資格の国際相互承認が産業競争力等に及ぼす影響や効果、及び、個々の技術者の能力認定である技術士資格を有することによる活動領域や機会の拡大の意義、重要性等についての的確な認識が必要である。しかしながら、現状においては、本制度の存在すら知られていない場合がある等の状況にあり、技術士制度に関する社会的認識を喚起、増進するよう、政府及び関係機関は周知に努めることが必要である。

(3)技術士制度の認知が深まることにより、技術者の処遇改善、技術者の活性化に繋がるものと考えられる。また、我が国における技術者育成システムが国際的に通用することは、我が国への留学生等の増加を促進する要因になるものと考えられ、国際社会に対する貢献とともに、我が国が技術に関する国際的な展開を図る上で極めて重要な意義があるものと考えられる。

お問合せ先

技術士審議会事務局・科学技術振興局科学技術情報課

(技術士審議会事務局・科学技術振興局科学技術情報課)

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