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科学技術創造立国を目指す我が国の学術研究の総合的推進について-「知的存在感のある国」を目指して-答申 (概要)

平成11年6月
学術審議会

第1章 学術研究の意義と目指すべき方向

1 学術研究の意義

(1)文化・文明の基盤となる学術研究

 学術研究は、人文・社会科学から自然科学にまで及ぶ知的創造活動であり、人類共通の知的資産を形成するとともに、産業、経済、教育、社会などの諸活動・制度の基盤となるものである。また、人間の精神生活の重要な構成要素を形成し、広い意味での文化の発展や文明の構築に大きく貢献することが期待されるものであり、国が中心になってその振興に努めるべきである。

(2)21世紀の新しい文明の構築に貢献する学術研究

1.20世紀の文明を支えた学術・科学技術

 学術研究は、科学技術の中核にして基盤となるものである。科学技術は今世紀の文明を支えてきたが、他方、温暖化現象、酸性雨等の地球環境問題やエネルギー・資源問題など、「20世紀型科学技術」からもたらされた負の面も目立つようになっている。

2.21世紀の新しい文明構築のための学術研究
  • 新たな発展のためのフロンティアを切り開く先導的・独創的な学術・科学技術の役割が一層重要である。
  • 自然等との調和を内包する持続的発展に適した、言わば「21世紀型科学技術」及びその中核・基盤となる学術研究を推進する必要がある。
  • 精神的充足感に重点を置く価値体系として「新しい豊かさ」を目指すことが必要である。
3.先導的・独創的な学術研究推進による「知的存在感のある国」の構築
  • 我が国は、今こそ先導的・独創的学術研究の推進により、新たな文明の構築に貢献し、言わば「知的存在感のある国」を目指すべきである。
  • また、我が国が「知的存在感のある国」となるためには、研究成果等の情報を積極的に海外へ発信することが重要である。

2 学術研究の目指すべき方向

(1)世界最高水準の研究の推進

 今後、我が国は、できるだけ多くの分野で、世界の研究者を引き付ける世界最高水準の学術研究を活発に展開していくことを目指して、その振興を図るべきである。

(2)21世紀の新しい学問の創造と研究遂行体制の刷新

 人類社会が直面している課題の中には、幅広い英知の結集により初めて解決されるものも多く、人文・社会科学から自然科学まで幅広い学問の統合や融合が必要である。

(3)社会への貢献

 大学等と、試験研究機関等や企業等が、目的、特性を踏まえつつ、有機的かつ密接な連携

  • 協力関係を築くための仕組みを一層整備する必要がある。

3 学術研究の特性

(1)研究者の自主性の尊重

(2)学問の全分野にわたる知的資産の形成・承継

(3)大学等のシステム全体の機能としての教育と研究の総合的推進

第2章 学術研究の振興に当たっての具体的施策

1 優れた研究者の養成・確保

 困難な課題に挑戦していく精神はもとより、俯瞰(ふかん)的な視野を持って研究に取り組む能力や自立性、主体性、創造力、構想力を持つ研究者の養成・確保が必要である。

(1)大学院における教育・研究指導の改善・充実

 最近の若手研究者については、細分化された専門分野の個別課題のみに関心が集中する傾向があり、博士課程においては、専門分野を超えて幅広い分野の教育を行うことができるように、カリキュラムを含む教育体制を一層整備することが必要である。

(2)博士課程在学者に対する施策

 日本学術振興会のDC特別研究員については、今後、博士課程修了者の需給予測、採用者の質に留意しつつ、博士課程在学者数に応じて拡充する必要がある。

(3)博士課程修了者に対する施策

 PD特別研究員については、各分野の博士課程修了者の需給予測を踏まえつつ、真に優秀な人材の確保や研究者としての適切な経歴形成の観点から拡充する必要がある。

(4)若手研究者のプロジェクト研究への参加の促進

 研究費を活用し、労働者派遣事業者との契約による受入れを促進するなど、環境を整備していく必要がある。

(5)若手研究者の適切な経歴形成と研究者全般の流動化の促進

 支援制度に支えられた期間を経て、常勤の職に就くことが一般的な研究者の経歴となるように、環境を整備する必要がある。
 博士課程修了者の情報や博士課程修了者の受入れを希望する大学等に関する情報を収集・提供する仕組みを創設する必要がある。

(6)研究者の養成・確保における国際的連携

(7)経験豊かな研究者の活躍の機会の確保

(8)女性研究者の活躍の機会の拡大

2 研究組織・体制の機動的な整備

(1)我が国の研究体制の現状と目指すべき方向

 新しい研究領域や分野を開拓し、新しい学問を創造していくためには、COEの形成に留意しつつ、多様な学問の動向に応じて、効果的な研究組織・体制を柔軟に編成するとともに、流動化を促進する必要がある。

(2)大学等の研究機関の今後の役割

1.研究組織の多様性の確保

 各研究組織がそれぞれの役割と使命を吟味して、その特色を生かす在り方を検討することが必要である。

2.大学の研究組織の役割と使命

 附置研究所等については、COE性発揮の観点から、組織の再編成や転換・廃止等を含めてその在り方を再検討することが必要である。

3.附置研究所等と学部・大学院との関係
4.大学共同利用機関の役割と在り方

(3)研究組織の活性化のための方策

 研究組織の活性化のため、制度やその運用の弾力化を含めた積極的な対応が必要である。

1.研究組織の柔軟な編成
  • 各大学等が、自らの判断と責任により、学術研究の動向に応じて、研究組織やその内部組織である研究部門などの編成を、一層柔軟に設計できるようにする必要がある。
  • 積極的な研究活動の展開のためには、機能強化に向けた組織の再編成や廃止・転換を含む思いきった見直しが必要である。
2.研究機関間の連携・協力の強化

 大学や研究機関が、他の大学等に研究ユニットを柔軟に設置できるような仕組みを設ける必要がある。

3.研究者の流動化の促進

 研究課題や研究者が一定期間ごとに入れ替わるタイプの研究組織(いわゆる「流動的研究施設」)の設置を促進することが望まれる。

(4)重点分野の特定や研究体制の在り方に関する検討の場の設置

 学問分野全体を視野に入れた上で、バランスのとれた研究体制の整備を進めていくためには、重点的に整備すべき研究領域について専門的な観点から審議する仕組みや、個々の大学の枠を超えて各領域の研究組織の在り方についてレビューし提言する仕組みを本審議会に設けることが適切である。

3 競争的研究環境の整備

 競争と評価を通じて適切な資源配分が行われることが肝要である。

(1)研究資金の配分システムの整備

1.デュアルサポートシステムの意義
2.基盤的研究資金の確保と競争的研究資金の拡充
  • 基盤的研究資金と競争的研究資金によるデュアルサポートシステムを維持しつつ、基盤的研究資金の確保と競争的研究資金の拡充を図ることにより、相対的に競争的研究資金の比率を高めていくことが必要である。
  • 研究費を人件費の一部に充当する方向で施策を講じていく必要がある。
3.オーバーヘッド制度の確立

 オーバーヘッドを徴収する制度は、競争的研究環境を創出する上で、有効な方策である。デュアルサポートシステムを維持しつつも、将来的にはアメリカの制度の長所を取り入れる方向を目指しつつ、当面実施可能な具体策を検討する必要がある。

4.研究費の弾力化

 国立大学等における受託研究費や共同研究費についても、これまで以上に弾力的な使用を可能にする方途を検討する必要がある。

(2)競争的研究資金の拡充・制度改善

1.科学研究費補助金の拡充・制度改善
2.日本学術振興会の「未来開拓学術研究推進事業」の拡充・制度改善

(3)研究評価の充実

1.学術審議会における研究評価に関する審議状況
2.研究面の機関評価の現状
3.自己点検・評価の充実の必要性

 効果的・効率的な自己点検・評価が行われ、その成果が活用されるように、自己点検・評価の共通的な基準や手法の研究・開発、成果の公開・流通などを推進していく必要がある。

4.第三者評価の必要性
5.第三者評価の方法・基準
6.第三者評価システムを構築する際の留意点

 本審議会は、これまで実質的に行ってきた第三者的な立場からの機関評価的な機能を含め、これまでの役割を引き続き担っていくことが必要である。

4 世界水準の研究基盤の整備

 研究施設・設備、研究支援体制、学術情報基盤・学術資料等の整備の立ち後れが隘路(あいろ)となって、研究費の拡充に見合った研究成果が上がらなくなる可能性も指摘されている。

(1)政府支出の学術研究関係経費の拡充

 大学等に対する投資水準の低下は、長期的には、学術研究の基盤の弱体化を招く恐れがあり、今後一層の配慮が必要である。

(2)研究施設・設備の整備

1.研究施設

 学問の動向、研究活動の状況、COEの形成などの観点から重点的整備が必要である。

2.研究設備
  • いかなる分野の研究遂行においても必要不可欠な基盤的設備の計画的な整備、新しい研究分野の開拓に資するような先導的設備の重点的整備が必要である。
  • 効率的な整備のためにレンタル方式の推進が必要である。

(3)研究支援体制の整備

1.研究支援職員の量的充実と支援体制の強化
  • リサーチアシスタントや研究支援推進事業の拡充が必要である。
  • 研究支援のための独立した組織(技術部・室)が確立される方向で組織整備が必要である。研究支援者の確保にあたっては、研究費により労働者派遣事業を活用することが現実的な対応であり、労働者派遣事業者との契約による受け入れを促進するなどの環境を整備していくことが必要である。さらに、かつて技術職であった者など研究支援者の人材に関する情報や、そうした人材を求めている大学等に関する情報を集中的に収集・提供する方向で具体策を検討する必要がある。
2.研究支援職員の養成・資質向上等

 研究支援者の養成に努めることが重要であり、修士課程修了者や学部卒業者が、例えば一定の期間、研究支援組織がある大学等において、奨励金の支給を受けながら技術者としての実務研修を受ける仕組みについて検討することが必要がある。

3.研究支援職員の処遇の改善

(4)学術情報基盤・学術資料の整備

1.学術情報基盤の整備
  • 学術情報ネットワーク、コンテンツ、アプリケーションの充実が必要である。
  • 資料購入予算の確保、目録所在情報の遡及(そきゅう)入力、電子図書館的機能の整備・充実等の大学図書館の整備、大学図書館、大型計算機センター等の情報関連組織の有機的な連携強化や再編成、保存図書館(集中文献管理センター)の整備の検討を行うべきである。
2.学術資料の整備

 実験動物を含む生物遺伝資源、放射性同位元素等の整備、大学博物館の整備を推進すべきである。

5 人文・社会科学研究の振興と統合的研究の推進

(1)人文・社会科学研究の重要性

(2)人文・社会科学研究の特性を踏まえた振興方策

(3)人文・社会科学研究の現状を踏まえた振興方策

  • 人文・社会科学研究の特性に配慮した評価が必要であり、広がりを持った専門研究者の連携の下に、国際的な視点も含む評価を行うことが必要である。
  • 人文・社会科学の動向や研究状況などを分析・評価する審議組織の設置が必要である。
  • 人文・社会科学研究を振興する際、社会的課題への積極的取組を推進することが必要である。

(4)統合的研究の推進

6 学術国際交流の推進

 学術研究の発展は、経験や発想の異なる研究者からの触発によって促進されることが多いため、より一層学術国際交流が推進されることが期待される。

(1)大学等の国際化の推進

1.外国人研究者雇用の推進

 外国人研究者の雇用・受入れを自ら目標を設定した上で、積極的に推進する研究組織については、目標実現に向けた重点的支援を行うべきである。

2.外国人研究者招へいの拡充

 日本学術振興会の招へい事業については、世界的に著名な研究者を研究等のため招へいする制度の検討を進めるべきである。

3.研究者の海外派遣機会の拡充
4.外国人研究者受入れ体制・環境の整備充実

(2)学術国際交流・協力の戦略的推進

1.学術国際交流の戦略的推進方策の検討

 学術研究の国際戦略を検討する審議の場を形成すべきである。

2.戦略的学術国際交流を支える研究費の措置
3.国際共同研究の円滑な実施のための枠組み整備
4.海外研究拠点の設置

(3)アジアを中心とした学術国際協力・交流の推進

 我が国を含むアジア地域について、ヨーロッパ、アメリカと並ぶセンター・オブ・ラーニングとして、学問上、研究上重要な地域へと変容を図る観点から、日本学術振興会事業の充実・強化等が必要である。

7 社会的連携・協力の推進

(1)学術研究における産学連携等の推進

1.産学連携の現状と目指すべき方向

 今日、産学連携は、大学等の責務としての社会貢献を進める上でも、学術研究の進展の上でも、ますます重要である。大学等が自らその研究成果を社会全体に還元する有効なシステムとして産学連携を推進すべきである。

2.産学連携の推進のための体制等の整備

 企業のニーズと大学等のシーズをつなぐ「産学のコーディネーター」の配置など、国立大学の地域共同研究センター等の更なる整備・拡充を進めることが必要である。大学における産学連携の先進的な取組を支援するため、国が、内外の事例を収集しつつ、大学等と共同してモデル開発を行い、それらを広く関係者に紹介することが期待される。

3.大学等と企業との望ましい関係の構築

 産学連携に係るルールをより明確にする必要があり、今後、国等がそのモデルを示すことなどにより、各大学等における取組が推進されることが期待される。大学等内に産学連携の在り方と倫理に関する委員会組織を設置することも検討すべきである。

4.産学連携に係る諸制度の改善

 人事・会計上の一層の弾力化を推進する必要がある。
 私立大学の受託研究収入の非課税化を推進すべきである。

5.研究成果の社会における有効活用

 特許取得や社会での実用化促進のため、研究者の啓発や技術移転機関(TLO)の設置支援等に努める必要がある。

6.地域との連携・協力の推進

(2)学術研究に関する国民理解の増進

1.学術研究に関する国民理解の現状
2.学術研究に関する国民理解増進のための方策

8 学術・科学技術の調和

(1)大学等と試験研究機関等の連携・協力

 関連機関間において研究者等関係者による協議の場を設けることが大切。また、各研究分野の特性等を踏まえつつ、情報交換、施設設備の利用、研究者交流、更には共同研究の実施等を図っていくことが必要である。

(2)学術・科学技術の調和

 学術と科学技術の調和を図るためには、総合科学技術会議の活動に大学等の研究者の意見を適切に反映させていくことが必要である。審議会を活用して、文部科学省に研究者の意見を集約するシステムを構築することが必要である。

お問合せ先

学術国際局学術課

-- 登録:平成21年以前 --