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原子力関係機関等における今後の連携・協力の在り方について(報告) (学術審議会特定研究領域推進分科会原子力部会 平成11年4月16日)

平成11年4月16日
学術審議会特定研究領域推進分科会
原子力部会

1.はじめに

 本部会は、平成10年1月の文部大臣からの諮問「科学技術創造立国を目指す我が国の学術研究の総合的推進について」のうち、特定分野の推進及びこれに関連する研究機関等の在り方として、今後の原子力分野の研究の展望を踏まえつつ関係機関間の連携・協力の在り方について検討を行った。
 検討に当たっては、これまでの本部会報告を踏まえるとともに、大学等における研究を主眼としつつも、学術研究と科学技術研究の総合的で調和のとれた振興を図るとの観点から、関連特殊法人機関等との関係についても視野に入れた検討を行った。

2.原子力研究の現状

 原子力分野の研究は、エネルギー供給技術としての原子炉とその核燃料サイクル技術に関する研究及び原子炉や加速器により発生する放射線や放射性物質の利用に係る研究からなるいわゆる原子力利用研究と、将来における新しいエネルギー源の開発を究極の目的として高温プラズマの生成・閉じ込めと関連する炉工学技術の研究を中心に推進されている核融合研究から構成される。
 これらの研究は、いずれも大型で高度かつ特殊な研究設備を必要とすることが少なくないことから、一部の大学及び研究機関に研究拠点となる組織と必要な施設・設備を設置して集中的に実施されてきており、一般の大学の研究者は、これらの組織との共同研究に参加する一方、これらの施設・設備のうち共同利用に供されるものをも利用しつつ広範な研究課題についての基礎研究を自ら進めてきている。
 大学における原子力利用研究は、原子力エネルギーの生産・利用及び放射線・放射性物質の利用に係わる研究を研究者の自由な発想に基づいて進めており、このような研究を通じて人材養成の責任を果たすとともに、日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構等(以下、「研究開発機関」という。)における研究開発活動を基礎的・基盤的な側面から支えつつ、将来におけるこれらの機関における研究開発のシーズとなる新たな原理・原則の発見や科学技術のさらなる発展につながるパラダイムの創出等に貢献してきている。
 また、大学における核融合研究は、大学共同利用機関の核融合科学研究所及び大学(以下「大学等」という。)において、ヘリカル、トカマク、タンデムミラー、レーザー核融合等の異なる方式による多岐にわたる研究を推進し、さらには、炉材料、超伝導等の炉工学の研究を広範に行っている。1989年に設立された核融合科学研究所においては、1998年度から大型ヘリカル装置の共同利用による実験研究が開始され、研究は新たな段階に入っている。
 原子炉によるエネルギー供給に関する研究開発については、我が国のエネルギー政策において資源の観点のみならず環境の観点からも大きな役割が期待されており、総合的な科学技術研究としても位置付けられ、主に、日本原子力研究所や核燃料サイクル開発機構において行われてきている。
 日本原子力研究所は、原子力基本法に基づき原子力の開発に関する研究等を総合的かつ効果的に行うことを目的として1956年に設立され、今日では、原子炉等の安全性に関する研究をはじめとする原子力エネルギー利用に関する研究、トカマク方式による実験炉の開発を目指した核融合研究、放射線や放射光・中性子ビーム等を利用した研究などを中心に多様な研究開発を行っている。また、核燃料サイクル開発機構は、原子力基本法に基づき1967年に動力炉・核燃料開発事業団として設立され、高速実験炉「常陽」、新型転換炉「ふげん」及び高速増殖原型炉「もんじゅ」を建設・運転し、再処理施設の技術開発等を推進した後、1998年10月に新機関として改組されたもので、高速増殖炉及びこれに必要な核燃料物質の開発、高レベル放射性廃棄物の処理処分技術の開発及びこれらに必要な研究を行っている。
 今日、発電を中心とした原子力利用が進む一方において、原子炉施設の運転管理の在り方や放射性廃棄物の処理・処分を含むバックエンド対策、将来におけるエネルギー供給の安定的確保を目指す新型動力炉開発の在り方等が新たな社会的課題となっている。
 他方、ユニークなプローブとしての中性子・放射線等の利用に関しては、医学や工業的応用研究など多方面でその実用化が進む一方で、学術研究の手段としての地位を確立して利用分野や方式の多様化が進められている。その結果、新たな大強度中性子源の開発、原子炉中性子の一層高度な制御技術の開発が求められるなど、研究に必要な施設設備の性能の向上が求められている。また、核融合研究においては、核融合実験炉の建設を目指した国際協力が進展し、我が国独自の基盤的科学技術の開発の視点に加えて、より広い視野に立った研究体制の構築が求められるようになっている。
 このように原子力分野の研究が多様化し、拡大している現状においては、様々な分野に多くの研究者を有する大学等における広範な基礎的・基盤的研究は一層重要性を増してきている。したがって、学術研究を行う大学等は、引き続きその研究環境の整備充実を図りつつ、研究開発機関とのより密接な連携・協力を進め、これを通じて我が国の置かれた状況に相応しい原子力に関する研究の推進体制の構築を目指すことが重要である。
 なお、国として推進する原子力の研究、開発及び利用については、原子力委員会が企画し、審議し、決定することとされているが、昭和30年の原子力委員会設置法案の審議に際して、矢内原忠雄国立大学協会会長(当時東京大学長)等が、大学における研究の自由を確保するため、国会等に対し法律の適用範囲から大学を除外されたいとの趣旨の申し入れを行い(矢内原原則)、その結果、法律に附帯決議が附され、今日までそのような扱いになっている。

3.今後の原子力研究

(1)今後の原子力利用研究

 大学においては、主に試験研究用原子炉を用いた中性子散乱、照射効果、放射化分析、放射線計測、原子核理工学、原子炉システム工学等の基礎研究を、京都大学、東京大学及び私立大学等に設置された研究用原子炉の共同利用により進めているほか、原子炉の物理、熱水力、構造、材料、安全性、核燃料サイクル、システム技術等に関する基礎研究を、日本原子力研究所の研究用原子炉、材料試験炉及び加速器、核燃料サイクル開発機構(旧動力炉・核燃料開発事業団)の原子炉等における共同利用の制度や共同研究の制度等を活用して活発に進めてきている。
 エネルギーを巡る資源・環境問題等の動向や放射線・放射性物質の処理・利用の学術的・技術的応用の重要性に鑑み、今後とも、我が国は、長期的観点に立って、人類の持続的発展に貢献する原子力利用に係わる技術開発を引き続き先進的に進めていく必要がある。このため研究開発機関は、大学や民間等との連携・協力を強化しつつ、革新的で有望な技術を発掘、検証し、その実用化に向けて研究開発に努めることが重要である。
 また、大学は、より長期的な視野に立って、原子力エネルギーの利用に係わるシステム工学、量子工学、極限環境下燃料・材料工学、アクチニド元素を含む放射性物質の科学、放射線影響学や原子炉の安全工学等の分野において基礎・基盤研究を推進し、人材の供給はもとより、革新的な知見・方法論や基礎・基盤的な学術データの提供等を通じて、研究開発機関が行う研究開発活動を積極的に支えていく必要がある。
 さらに、原子炉や加速器を活用した物質科学、生命科学、医学及び産業応用研究等の原子力利用研究についても、これらが我が国の科学技術の更なる発展に大きく貢献する可能性を有することに鑑み、今後、研究内容の多様化や高度化を図る必要がある。

(2)今後の核融合研究

 核融合研究は、高温プラズマの制御を目指すプラズマ物理学と核融合炉の建設・運転に必要な技術開発を支える炉工学に研究の基盤を有する。
 我が国においては、日本原子力研究所に世界の三大トカマク装置の一つに数えられる大型トカマク実験装置(JT-60)を、また、核融合科学研究所に世界最大級の大型ヘリカル装置(LHD)を有しているとともに、国際熱核融合実験炉計画(ITER計画)など様々な国際共同研究に研究開発機関や大学等の研究者が主体的に参加し、多くの成果を挙げてきている。このため今日では、我が国の核融合研究は、国際的に見てフロントランナーとしての評価が定着している。
 核融合研究の推進には、プラズマ物理学から炉工学にまたがる広範囲の研究のインテグレーション(統合)が必要とされているが、大学等には多方面にわたる多くの研究者と研究基盤があり、このことが大学等の研究者による数多くの先駆的業績につながり、ひいてはこの分野の研究の総合的な推進に貢献するもととなっている。
 今後、大学等は、引き続き種々のプラズマ閉じ込め方式の先駆的・基礎的研究を着実に進めるとともに、1998年度から開始された核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)の共同利用による実験研究を積極的に進め、併せて、核融合炉の実現に必要な広範にわたる工学的知識基盤の体系化を目指す核融合炉工学の先駆的研究を、より総合的に推進する必要がある。
 また、このような幅広い研究の推進に当たって、現在、核融合科学研究所を中心とする全国の大学等の研究者が参加する核融合研究のネットワークを通じた活動を活性化させる努力が続けられているが、今後その充実が期待される。
 これらを通じて大学等は、核融合に関する研究の体系化や優れた人材の育成を推進するとともに、日本原子力研究所等における研究開発活動に対する相互補完的・協力的機能を一層充実する必要がある。

4.原子力関係機関及び大学の間の連携・協力の在り方

(1)連携・協力の意義

 大学等及び研究開発機関は、それぞれ学術研究の推進及び原子力技術の応用を目的とする研究開発の推進という使命を有しており、その達成のために必要とする人材、施設設備等を自ら確保すべきことはもとよりである。しかしながら、大学等と研究開発機関がそれぞれの使命を達成するために必要な資源を他に求めることが可能である場合にその実現を図ることは、相互裨益の観点からも国民経済的な観点からも合理的である。
 また、大学等や研究開発機関が設置している研究施設が我が国あるいは世界に限られた数しか設置されていない施設である場合、その施設の運転時間を一部ではあってもそれを用いて優れた成果を挙げる可能性のある国内外の多方面の研究者に可能な限り開放することは、科学技術の総合的発展に貢献する観点から重要である。
 共同研究は、一方又は双方の使命を達成するための主要な研究活動の一環として計画実施され、合意された計画の基本目的に沿って研究を共同で推進するものである。優れた実用技術の研究開発には革新的な概念や要素技術が必要であるが、これらは大学等における関連の学術の幅広い基礎・基盤的研究との連携協力から生まれることが少なくない。一方、大学等は多くの基礎・基盤的研究分野の研究者を有するが、このような研究者が共同研究等を通じて開発や実用化の現場における研究開発活動に参画することは、新しい基礎・基盤的研究課題を見出すなど学術研究の推進に有益な様々の知的刺激を得ることを可能にする。総合科学技術の性格が強い原子力分野の研究における大学等と研究開発機関間の連携・協力においては、多方面でこうした相互裨益の関係が成立する可能性が高い。
 そこで、今後、大学等と研究開発機関との間においてこのような大型研究施設の共同利用及び共同研究の推進等連携・協力関係をさらに強化することは、それぞれの使命はもとより組織の設置形態や人事を含む管理運営形態が異なることから多くの調整すべき課題があるものの、大学等と研究開発機関の総合的発展を図る観点からも重要視されなければならない。
 そのため、今後、共同利用を前提とする大型研究施設の建設に当たっては、その計画段階から関係する大学等及び研究開発機関の研究者が積極的に参画し、共同利用を効果的に行う観点からそれぞれが必要とする設備等の整備が適切に実現されることが望ましい。
 また、大学等と研究開発機関とが一つの総合的な研究課題の解決のために共同研究を行う場合には、「基礎」と「開発」という研究者の所属する組織の使命にとらわれることなく、それぞれの専門性に即して柔軟に研究分担を行うことも重要である。
 さらに、これらの強化された連携・協力を効果的に実現していくためには、それぞれの機関が、その使命の達成に当たって、これを有力な手段として認識し、これを増進させる可能性を常に追求する姿勢を持ち努力することが必要である。今日における行財政事情等をも踏まえれば、国際的にも特色ある大型研究設備を建設利用して実施される核燃料サイクル技術の研究開発、原子力安全研究、高温ガス炉等新しいタイプの原子炉の開発、核融合炉の研究開発等の推進に当たっては、このことがとりわけ留意される必要がある。
 なお、いわゆる矢内原原則の取扱いについては、原子力の研究を含め大学における学術研究は研究者の自主性を基本にするものであることや原子力委員会と総合科学技術会議等の所掌の関係を十分考慮し検討する必要がある。

(2)原子力利用研究における大型研究施設の共同利用及び共同研究

 放射線・放射能の発見後100年に亘って原子力が人類に与えたインパクトは計り知れないものがあるが、とりわけ研究用原子炉は中性子源として、核物理、物性研究等の基礎科学、材料照射等の応用科学の進展に不可欠な研究設備であった。
 現在我が国には核燃料サイクル開発機構の高速実験炉「常陽」及び高速増殖原型炉「もんじゅ」を含めて10基以上の研究用原子炉があり、新型原子炉の開発をはじめ、材料・燃料の照射実験、放射化分析、ラジオグラフィー、即発ガンマ線分析、中性子散乱など科学技術の広範な分野の研究用として、さらには、工業用・医療用ラジオアイソトープ(RI)の製造、半導体製造、医療照射などの応用を含めて様々な用途に利用されている。
 原子力利用研究には、エネルギー技術開発研究と放射線や粒子線の利用研究とがあるが、研究炉は、前者においては核分裂のみならず核融合、核変換の研究のためにも引き続き重要な役割を果たしていくことが期待されており、また後者においては近年研究用原子炉を上回る大強度中性子源あるいは核破砕用加速器の開発計画があるものの、近年関心の高まりつつある環境科学、生命科学、材料科学等の分野において重要な研究手段となっており、いくつかの国において新しい研究用原子炉の建設が計画され実現をみている。
 大学による日本原子力研究所の研究用原子炉等の共同利用は、1958年の「JRR-1」の共同利用の開始以来40年に及んでおり、今日では、東京大学原子力研究総合センターを通じて年間延約7,000人の大学の研究者が研究用原子炉や加速器等を利用している。
 このうち、中性子散乱の研究については、東京大学物性研究所が日本原子力研究所の研究用原子炉「JRR-3M」に主たる測定装置を設置し、年間延約6,000人の大学の研究者の利用に供している。さらに材料の研究については、東北大学金属材料研究所附属材料試験炉利用施設を通じて、日本原子力研究所の材料試験炉「JMTR」の照射利用が行われ、1984年からは、核燃料サイクル開発機構の高速実験炉「常陽」についても同様の利用が行われており、合わせて年間延約2,000人の大学の研究者による利用が図られてきている。これらの利用状況は、これら研究施設の共同利用割当て時間から見た場合限界に近い高い水準にある。
 このような研究開発機関の大型研究施設の大学の研究者による共同利用については、研究開発機関側及び大学側の運営組織双方の努力により、これまで大学に多くの成果をもたらしてきたが、今後、双方の連携・協力の強化を図る観点から、その利用体制、利用料金等の課題について、双方によるなお一層綿密な協議及び検討が必要である。
 特に、核燃料サイクル開発機構は、今後、大学との連携を強化する観点から、大学における原子力工学分野の基礎・基盤研究の充実にも資するために、高速実験炉「常陽」、高速増殖原型炉「もんじゅ」、アクチニド取扱い施設等を大学の研究者が自らの創意工夫で行う研究の実施に利用できるように配慮し、大学関係者と協議して、必要に応じて、これら施設の共同利用のための制度を整備すべきである。
 さらに、大学と研究開発機関は、関係分野の研究開発を各界の英知を結集して総合的に推進する観点から、共同研究のための制度の整備・充実を図るべきである。新たに創設された核燃料サイクル開発機構の「核燃料サイクル研究推進制度」は、日本原子力研究所の「原子力基礎研究推進制度」と並んで、核燃料サイクル開発機構における核燃料サイクル技術の基盤を強化するとともに、大学における原子力分野の知見の充実を図る観点から有意義な制度であり、今後、その規模の拡大が図られることが期待される。
 なお、これらの制度による共同研究は、研究開発プロジェクト推進に関連する期待される成果を明示した基礎・基盤研究のみならず、長期的観点に立って将来のこの分野の発展の礎となる革新的、先進的な課題にも重点を置くべきである。このため、この共同研究の推進にあたっては、大学と研究開発機関が内外の学識経験者から構成される運営組織を設立して、重要課題分野の選定、公募による参加者の採択、研究の評価等を適切に行っていくことが重要である。

(3)核融合研究における大型研究施設の共同利用及び共同研究

 現在の核融合研究は、大型装置による実験を中心とした研究の段階にあり、核融合科学研究所の大型ヘリカル実験装置(LHD)及び日本原子力研究所の大型トカマク実験装置(JT-60)が主たる装置である。このほか、複数の中型・小型の実験装置が大学及び日本原子力研究所において稼働している。
 これらの大型装置は、それぞれが固有のミッションを有しており、その開発・運転自体が研究活動の中心をなしている。従って、装置によっては、又は実験の状況によっては、共同利用施設として広範な利用に開放するには至らない場合があり得る。しかしながら、日本原子力研究所と大学等との間では、これまでプラズマ・炉工学分野を中心に年間40件程度の委託・受託研究や年間30件程度の高性能トカマク開発試験装置(JFT-2M)等を利用した共同研究が実施されている。
 この分野では、これまでの研究の進展により、プラズマ閉じ込めの核心部分にも様々なコンセプトに共通する重要な課題があることが明らかになってきていることから、核融合炉心プラズマ条件近傍での物理実験が可能である装置を有する核融合科学研究所と日本原子力研究所とが、大学の研究者の参加も得て、核融合炉心プラズマ物理の共同研究を一層推進することが有意義である。
 また、今後の核融合研究の進展には、核融合炉工学、とりわけ炉材料の研究や安全研究についての体制の構築が重要である。そのため、日本原子力研究所の材料試験炉「JMTR」及び核燃料サイクル開発機構の高速実験炉「常陽」を中心とする原子炉照射実験のための共同利用体制の強化や日本原子力研究所のトリチウム安全施設における共同研究の促進を図るとともに、核融合炉材料開発に不可欠な課題とされる強力中性子源の整備について、大学等と研究開発機関が協力して推進を図ることが必要である。
 このため、核融合研究における連携・協力の在り方について協議するため、これまでの仕組みに加えて、大学、核融合科学研究所及び日本原子力研究所等の研究者を中心とした直接的で密接な協議の場を設けることが望ましい。

(4)研究成果の相互利用

 大学等及び研究開発機関における様々な大型研究の推進に当たっては、研究の基本方針の策定から、その研究進展状況及び結果の評価に至るあらゆる過程に双方の研究者の参加を促進するとともに、その成果を可能な限り相互利用できるようにすることが効果的である。
 このため、大学等と研究開発機関は協力して、研究現場で産み出される多種多様の知識を双方に適宜適切に開示することが必要である。さらに、それらを利用した各種データベース・知識ベースの開発はもとより、技術開発政策、技術開発過程研究等分野を超えた知的資産形成の観点に立った研究も効果的に行われるよう、これらの間に総合的情報ネットワークを構築していくことが重要である。
 例えば、大学等の研究者が日本原子力研究所の材料試験炉等を用いて蓄積・開発した豊富な照射実験データや高度な照射技術は、その応用と継承が図られるよう、積極的に体系化・データベース化され、関連の研究者や技術者に対して公開されることが望ましい。また、核融合研究における理論シミュレーション技術・計測診断技術の開発、核融合装置のための加熱技術の開発、核融合材料の研究開発、核データ・原子分子過程のデータベース等の開発については、大学等と研究開発機関の間において、その成果等の相互利用を進めることが有意義である。
 なお、このような連携・協力を効果的に進めていくことができるためには、大学にある中小型研究設備を、規制の高度化も踏まえて、必要に応じて部局間・大学間で整理統合も図りつつ、大学院学生等の教育の場としてはもとより、独創性ある基礎研究の場として特徴あるものに適時に更新・充実していくことが重要である。このことはさらに、この分野で新たな地平を切り開く意欲のある研究者・技術者を養成する観点からも重要である。

(5)国際協力への対応

 原子力研究のようないわゆる巨大科学技術の推進においては、国際協力の必要性は極めて大きく、これまで我が国も、人類の知的資産という国際公共財の創出を目指し、諸国との相互裨益の観点から主体的に取り組んできている。
 原子力研究に係る国際協力の現在の主な枠組みである国際原子力機関(IAEA)及び国際エネルギー機関(IEA)等を通じた研究活動や国際熱核融合実験炉計画(ITER計画)のような国際共同研究、あるいは各種の二国間協力等に対する我が国の対応の在り方については、大学等の豊富な人的資源を国際協力に活用する観点からも、研究開発機関と大学等とがより一体として対応できるようにすることが有益であり、その体制について検討を行う必要がある。

(6)研究者の流動化の促進

 大学等の研究者の研究開発機関への派遣については、すでに、研究開発機関による客員研究員制度、博士研究員制度、専門研究員制度、特別研究生制度(大学院学生)などにより多彩な人材の派遣が図られているほか、連携大学院制度により、研究開発機関の研究者が大学の客員教員となる道も開かれている。
 しかしながら、大学等と研究開発機関間の連携・協力を強化する観点からは、例えば、大学等の研究者が研究開発機関における研究開発活動に長期間参加する場合に、所属する大学等における教育・研究の業務を一定期間離れてこのような活動に従事することを可能とする方策や、大学が研究開発機関の研究者を共同研究者として長期間にわたって受け入れる仕組みなど、研究者の流動性を一層高める方策について検討が必要である。

5.まとめ

 原子力分野の研究においては、大学等では広範な基礎的・基盤的研究と長期的な観点に立った人材養成を行い、日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構等の研究開発機関では、原子力技術の応用を目的とする研究開発を行っている。双方は、これまで当該機関が有する大型研究施設を大学等の研究者が共同で利用することや、適宜適切な研究課題について共同研究を進めてきている。しかしながら、原子力分野の研究が多様化し、拡大している現状においては、様々な分野に多くの研究者を有する大学等における広範な基礎的・基盤的研究は一層重要性を増している。
 このような状況から、大学等と研究開発機関は、それぞれの役割を十分踏まえつつ、原子力研究全般を通じて、より一層密接かつ効果的な連携・協力体制を構築することが必要である。
 とりわけ、核融合研究の推進に当たっては、これまでのプラズマ物理や核融合炉工学の研究の進展を踏まえ、今後の研究に不可欠な炉材料の研究や安全研究の進め方を含め核融合研究における連携・協力の在り方について協議するため、これまでの仕組みに加えて、大学、核融合科学研究所及び日本原子力研究所等の研究者を中心とした直接的で密接な協議の場を設けることが望ましい。
 また、大学等と研究開発機関間における大型研究施設の共同利用や共同研究の一層の促進を可能とする措置について積極的かつ柔軟に検討するとともに、研究成果の相互利用、国際協力への共同対応、研究者の流動性の向上を図る必要がある。
 さらに、大学等と研究開発機関は、連携・協力の進展を踏まえつつ、より有機的かつ有効な研究体制について検討する必要がある。

学術審議会特定研究領域推進分科会原子力部会(第16期)委員

〔委員〕 阿部 博之 東北大学長
  奥島 孝康 早稲田大学長
  菅原 寛孝 高エネルギー加速器研究機構長
(部会長) 増本 健 財団法人電気磁気材料研究所長
  水野 繁 前日本たばこ産業株式会社代表取締役社長
〔専門委員〕 石井 慶造 東北大学教授(大学院工学研究科)
  井上 信幸 京都大学教授(エネルギー理工学研究所長)
  植松 邦彦 核燃料サイクル開発機構特別技術参与
  河村 和孝 東海大学教授(非常勤)
  岸本 浩 日本原子力研究所理事
  近藤 駿介 東京大学教授(大学院工学系研究科)
  住田 健二 原子力安全委員会委員
  宅間 宏 日本原子力研究所関西研究所光量子科学研究センター客員研究員
  藤井 保彦 東京大学教授(物性研究所附属中性子散乱研究施設長)
  藤原 正巳 核融合科学研究所長
  早田 邦久 日本原子力研究所東海研究所副所長
  高橋 克郎 核燃料サイクル開発機構技術展開部長
  松井 秀樹 東北大学教授(金属材料研究所附属材料試験炉利用施設長)
  松田 慎三郎 日本原子力研究所那珂研究所核融合工学部長
  森山 裕丈 京都大学教授(原子炉実験所)

お問合せ先

学術国際局研究機関課

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