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科学研究費補助金の評価の充実について(報告) (学術審議会科学研究費分科会企画・評価部会 平成10年6月22日)

平成10年6月22日
学術審議会科学研究費分科会企画・評価部会

はじめに

 科学研究費補助金の評価の充実については、平成9年7月に学術審議会がとりまとめた「科学研究費補助金の充実について(中間まとめ(2))」における「2.(2)研究計画及び研究成果の評価について」を受け、同年8月、科学研究費分科会企画部会の下に「科学研究費補助金の評価に関する調査・分析会議」(以下「調査・分析会議」という。)を設置し、検討を重ねてきた。
 この間、平成9年8月には科学技術基本計画を受けた「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」が、また、同年12月には学術審議会で「学術研究における評価の在り方について(建議)」がとりまとめられた。さらに、財政構造改革の視点からも事前・中間・事後における外部評価の実施、評価結果の公表、研究資金の配分への反映等の必要性が指摘されるなど、研究評価の重要性の認識は社会の各方面で一層の高まりを見せている。
 本部会では、調査・分析会議における専門的な検討結果に基づき審議を重ね、このたび、以下のとおり見解をとりまとめたのでここに報告する。
 なお、本部会では、科学研究費補助金の全ての研究種目について検討を行ったわけではない。例えば、COE形成基礎研究費等については、学術審議会の新プログラム・COE特別委員会において検討されている。従って今後は、これらの動向をも視野に入れつつ総合的な評価の改善等に取り組む必要のあることを申し添える。
 また、科学研究費補助金の評価の改善・充実についての検討は、今後とも学術研究の推進の在り方、社会の諸要請への対処などの観点から不断の改善努力が必要である。本部会としても、引き続き国内外における学術研究の動向等を踏まえつつ、審査・評価の一層の向上を目指すこととしている。

1.総論

 審議の開始に際し、先ず、科学研究費補助金の審査・評価の現状について概観した。その結果、種々改善の余地はあるものの、現在の事務体制等を考慮すれば、これまでの申請件数や配分件数を前提とした研究費の配分システムとしては、大綱的に見て良く機能していると言いうる水準にあるとの認識で一致した。
 また、研究者による自由闊達な創造性の発揮を研究推進の源泉とする学術研究の本来的性格に鑑みれば、形式的・画一的な評価や、過度に厳格な評価は厳に慎むべきであって、むしろ中・長期的に見た場合には、柔軟にして適切な評価こそが学術研究の十分な進展に寄与するものであり、人類・社会の発展に貢献するものであるとの判断で一致した。
 本部会では、以上のような前提に立って、中間・事後評価の充実方策を中心に学術研究の活性化の観点から検討することとした。

2.各論

(1)評価の専門組織の設置

 学術審議会科学研究費分科会は、従来、「企画部会」と「審査部会」とで構成され、このうちの「企画部会」において科学研究費補助金による学術研究の推進方策や制度改善等について審議するとともに、併せて、特別推進研究の課題選定や特定領域研究の領域設定の審査などを担当してきたが、昨今は、申請件数の増大等のため、審議時間のほとんどを審査のために費やさざるを得ない状況になっている。
 このような状況のなかで、平成10年3月に発足した第16期学術審議会科学研究費分科会では、従来の2部会体制から「企画・評価部会」、「審査第一部会」及び「審査第二部会」の3部会体制にすることを決議し、科学研究費補助金に係る企画と審査・評価とをそれぞれ専門の部会で審議することとした。
 「企画・評価部会」では、科学研究費補助金の全種目を俯瞰的に見つつ、制度・評価の在り方等を総合的に検討することを予定しており、これにより、例えば、今後、審査・評価結果の公表や開示の拡大に伴って増加すると予想される被評価者からの反論機会の要求等への対処など、従来は検討できなかった新しい課題についても検討が深められると考えている。
 なお、本部会の審議に当たっては、評価が仮にも学術研究の画一化をもたらすものとならないよう配慮することが必要となる。また、今後は、本部会の委員に、いわゆる「研究者」以外の者の参画を求めることの可能性についても検討する余地があるものと考えられる。

(2)特別推進研究及び特定領域研究の中間・事後評価の実施と公開

 研究評価の充実策の検討に当たっては、評価する立場のみならず評価される立場へも配慮すること、また、個々の研究内容についての厳正な評価を実施することとその結果を公表・開示することとは区別して考えることが必要である。
 即ち、研究者本人に対しては、今後の研究活動の水準向上のためにも評価の内容を正確かつ適切に伝達することが有益であるのに対し、評価結果の外部への公表については、学術審議会における評価の厳格さや透明さについての国民の理解を得ることに主眼をおいてなされるべきものであり、個々の研究者や研究内容に対する否定的評価を徒らに公表するようなものであってはならない。
 従って、評価結果の外部公表の内容としては、実際の審査に用いた評価基準などを示しつつ、全体としてどのように厳正に評価し、その結果としてどのような指導・助言等の措置をとったかを総論的に示すことが適当であると考えられる。
 また、昨今の情報媒体の多様化に鑑みれば、従来の紙面による公表に加え、文部省(科学研究費補助金)のホームページの活用も考えるべきものと思われる。
 なお、本件と関連して委員から、研究者自身による自己評価の努力が足りないのではないかとの指摘があった。自分の研究の意義と達成度を主張した上でピアレビューを受けること、また、そのような習慣をつくることが日本の学術研究の発展のために重要であると考えられる。

(3)基盤研究等

1)基盤研究(A)の助成期間の長期化(2~4年を2~5年に)と中間評価の実施

 研究者や研究内容の評価は、多くの場合、学協会等における研究論文の発表等を通じてなされており、実質上、これらが研究者にとって最も厳しくかつ公正な事後評価となっている。
 従って、基盤研究等における個々の研究課題の評価は、このような背景と行政効率の問題にも鑑み、採択時の審査のみで十分であるというのがこれまでの学術審議会等における支配的な意見となっている。
 本部会の審議の過程でも同様の意見が多くを占めたが、これ以外にも、毎年の評価は不要だとしても、長期の助成を受けるものについてはどこかに厳しいチェックポイントを作るべきであるとする意見や、我が国の研究環境からすれば助成期間を延長して中間評価をするというよりは、むしろ最初の研究期間は3年に短縮したうえで「延長の申請」を可能とした方が現実的かつ有効な評価が可能になるのではないか、との意見もあり、結論をみるまでには至らなかった。
 なお、この問題については、単に評価の見直し・強化のためだけではなく、科学研究費補助金の制度全体の在り方という視点からの検討が必要と思われる。

2)審査の結果(評点)の申請者への開示

 科学研究費補助金の審査の透明性と信頼度を高めるため、平成8年度より審査に当たったすべての研究者の氏名等の公表、及び、特別推進研究等の不採択理由の申請者への開示が始まっているが、これをさらに一歩進める方途として、基盤研究等の第1段審査の結果(評点)の申請者への開示が考えられる。
 しかしながら、第1段審査の結果(評点)の開示を進める際には、次の諸点に留意することが必要になる。
 適正な審査を得るためには個々の審査員と審査結果(評点)との関係をできるだけ見えにくくすべきであるということである。審査員の氏名等については、先述のとおり、既に平成8年度より審査終了後に公表しているが、今回、新たに評点等を開示することとした場合でも、そのために当該評点を付した審査員が容易に推測できてしまうようなことになっては、審査員の忌憚のない意見、評価を得ることは困難となり、審査の意義が失われてしまうおそれもある。
 本部会では、以上のような基本認識のもとに審議を重ねた結果、開示をする場合には当面、次のような方法が望ましいと判断した。これらの意見を可能な範囲で活かす方向で開示システムの具体化を進めることが望まれる。

  • 開示を望まない者への配慮も必要であることに鑑み、申請者には、不採択の場合の結果開示の希望の有無をあらかじめ申告させ、希望のある者に通報できるようにする。
  • 基本的には、申請者の研究計画が全申請課題の中でどの程度の位置にあるかが示せればよい。これだけでも不採択課題の申請者には、良い意味でのインパクトを与えることができよう。
  • 各研究種目における分科(細目)ごとの得点分布と、申請者の研究課題に対する総合評点(A・B・Cの3ランクぐらいの表示、等)を開示する。
  • 2段審査の不採択理由の開示については、技術的困難が多いと考えられるので、将来の検討課題とする。

 なお、今後不採択理由の開示が一般化するにつれ、申請者からの反論の機会の要求が強まることが予想されることから、これへの対応を考えておく必要があること、また、研究者のプライバシーや学術研究におけるアイデアの保護等を考えれば、不採択の課題名等の情報は公表すべきではないと考える。

(4)特別研究員奨励費

 採択課題名、審査方針等の公表が課題となっていたところ、その審査方針については平成10年度より「科学研究費補助金の審査方針」の一部として明示され、公表されることになった。
 また、採択課題名等についても、平成10年度から学術情報センターの科学研究費補助金採択課題データベースにより、公表が開始されるなど、改善の努力が認められる。

(5)研究実績・成果の自己申告制度と事後評価

 科学研究費補助金の審査資料となる研究計画調書の中に、それまでの研究の実績・成果に関する自己申告制を導入することは、事後評価の制度化の面からも、また、事前評価の充実という面からも極めて有意義である。
 さらに、基盤研究等の比較的小型の研究費に対する事後評価の導入手段として必要かつ十分な条件を満たしているとも考えられる。
 平成10年度より基盤研究と特定領域研究の両研究種目においてこの制度が導入され、さらに、国際学術研究についても平成11年度に係る公募からこれが導入された。研究者にとっては自身の研究を振り返ることにもなり、かなりのインパクトを与えることができるものと思われる。

(6)審査の更なる中立性・公平性の確保方策

 科学研究費補助金の審査への一般知識人の参画は、一見、審査の中立性や公平性の確保策として効果的であるかのように見える。しかしながら、最先端の独創的・先駆的な研究や真に学術的・専門的な研究についての的確な審査能力をこれらの人々に求めることは一般的には困難といえ、どのような場合に参画を求めるかは、慎重な検討が必要である。
 即ち、研究者は、基礎的・独創的・先駆的な研究の推進を通じて世界の知的資産の形成に貢献するわけであるが、研究者の構想段階にある研究計画を正しく評価しうる者は、その内容・意義等を理解しうる、優れた同業者以外にはあり得ない。
 また、一般知識人の審査への参画は、場合によっては、非専門的な先入観念による評価に陥る恐れのあることに注意する必要がある。
 しかし、「評価方法の評価」等、評価の適正化や評価システムの在り方等に関する審議の場への一般有識者の参画については、今後、検討すべきものと考えられる。
 なお、外国人研究者の審査への参画については、研究計画の全面的英文化、審査作業の長期化の回避、所要経費の確保等の見通しを十分に測る等、コスト・パフォーマンスの問題もあり、引き続き慎重な検討が必要であると思われる。

(7)その他

1)サンプル調査について

 今回の審議に当たって、全国の研究者を対象にサンプル調査の実施を検討したが、何を調査対象にすれば制度の改善につながるのかを明確につかむのは特に人文・社会科学系では難しい等の意見があり、今回は実施しないこととした。

2)研究成果報告について

 「研究成果報告書」(冊子体)は国会図書館等に配備され、科学研究費補助金による研究の成果物として国民に広く公開されている。
 これについて、誰を読者として想定するのかが明確でないため書き方が中途半端になっているとの指摘があり、種々の角度から討議を行った。
 その結果、研究者は質の高い学術論文を世に問うことが本務であることに鑑みれば、研究成果報告書も、基本的には同業の研究者に対する成果の報告としてまとめるべきであると言う意見が大勢を占めた。
 一方、一般社会へ向けての成果の発信については、一般論としては鋭意努力すべきであり、特に一定規模以上の大型研究費については、その努力が必要とされる。ただし、小規模な研究についてまで画一的にその義務を課すのは学術研究上マイナスの効果をもたらす可能性について配慮しておかなければならない。
 なお、ジャーナリズム等を通じての成果の発信は、学術研究が一般社会からの信頼を獲得する上で、効果的であると考えられ、今後検討されるべき課題である。ただし、これは、学術研究と一般社会とのインターフェースをどう構築するかという基本的な問題に関わる事柄であり、今後、各方面で大いに検討されるべきものと考えられる。

(以上)

第16期学術審議会科学研究費分科会企画・評価部会

(委員) 阿部 謹也 一橋大学長
  阿部 博之 東北大学長
  池端 雪浦 東京外国語大学教授(アジア・アフリカ言語文化研究所)
  奥島 孝康 早稲田大学長
  鈴木 昭憲 東京大学名誉教授
  谷口 維紹 東京大学教授(大学院医学系研究科)
  豊島 久真男 大阪府立成人病センター総長
  野依 良治 名古屋大学教授(大学院理学研究科長)
  蓮實 重彦 東京大学長
  増本 健 財団法人電気磁気材料研究所長
  山本 明夫 早稲田大学教授(大学院理工学研究科)
(専門委員) 石井 紫郎 国際日本文化研究センター教授
  志村 令郎 生物分子工学研究所長

学研究費補助金の評価に関する調査・分析会議

(委員) 鈴木 昭憲 東京大学名誉教授
  野依 良治 名古屋大学教授(大学院理学研究科長)
(専門委員) 石井 紫郎 国際日本文化研究センター教授
  志村 令郎 生物分子工学研究所長

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学術国際局研究助成課

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