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科学研究費補助金の充実について(中間まとめ(2))(学術審議会)

平成9年7月25日
学術審議会

はじめに

 本審議会は、平成7年の科学技術基本法の制定、それに続く科学技術基本計画の閣議決定等、学術研究を取り巻く昨今の情勢を踏まえて審議を行い、その結果を昨年7月に「科学研究費補助金の充実について(中間まとめ)」として公表した。
 本審議会ではその後の状況変化等を踏まえさらに検討を重ねてきたが、このたび「中間まとめ」で指摘した事項のうち、次のことについて意見を取りまとめたので報告する。

1.科学研究費補助金の拡充について

 先の「中間まとめ」においては、平成8年度に科学研究費補助金の予算規模が一千億円を超えたことを評価する一方、大学等における独創的・先駆的研究を格段に推進する上で不可欠の経費として、我が国の研究基盤の形成に果たす科学研究費補助金の役割の重要さに照らし、一層の充実を図る必要があることを指摘したところである。
 平成9年度の予算においては、科学研究費補助金は、厳しい財政状況下にも関わらず、対前年度比104億円(10.2%)増の1,122億円が計上されたことは大いに評価されるべきである。関係者の科学研究費補助金の重要性に関する理解とその努力を多とするとともに、財政構造改革の中ではあるが、今後ともその拡充に不断の努力を求めたい。

2.科学研究費補助金の制度の改善について

(1)「重点領域研究」の改善について

 「重点領域研究」は、学術的・社会的要請の強い領域の研究を格段に推進することを目的として、昭和62年度に設けられた。以来今日まで、新たな研究領域の研究の推進に寄与するなど、我が国における学術研究の推進に大きな役割を果たしてきた。しかしながら、手続きの面で領域の提案(申請)から実際の研究を開始するまでに1年半を要するなど、昨今の学術研究の急速な進展と高度化への対応や、難病克服等、学術研究への社会からの多様な要請に的確かつ迅速に応えるためには、より一層弾力的かつ機動的なものとすることが必要である。
 また、一つの重点領域研究の中で展開される個々の研究課題については、従来は、研究分担者として多数の研究者が参加する形態のものが多く、ややもすれば個々の参加研究者の役割が明確でないとの指摘も聞かれた。限られた予算の中での研究の効率的推進のため、今後は、個々の研究課題については、少人数または個人の研究者で組織する研究を中心とし、それぞれの研究者がより明確な目的意識を持ち、創造性を存分に発揮しつつ研究できる仕組みを整備していくことが重要である。
 このような状況に鑑み、重点領域研究を次の2つのタイプに再編することとし、研究者の要請に一層的確に対処するとともに、より厳正、かつ公正な審査の確保を図ることが適当である。

1)「重点領域研究(A)」

 比較的大規模のグループによる領域研究の推進を図る。
 ア 複数の計画研究と公募研究で領域研究を推進する。
 イ 計画研究の研究組織は、少人数または個人の研究者で構成する。
 ウ 計画研究のうち総括班については、研究領域が採択された年度内に実質的に研究が開始できるようにする。
 エ 審査は、原則的に従来の方式を引き継ぐ。

2)「重点領域研究(B)」

 萌芽的な研究領域の立ち上げなど、機動的な中規模のグループによる研究の推進を図る。
 ア 複数の計画研究により実施し、従来の公募研究は募らない。
 イ 計画研究の研究組織は、少人数または個人の研究者で構成する。
 ウ 研究領域が採択された年度内に、領域を構成する全研究課題について実質的に研究が開始できるようにする。
 エ 審査は、従来の書面審査及びヒアリングによる審査に加え、第三者的な立場の研究者によるレビューを実施し、この評価も参考とする。
 なお、領域設定については原則公募することとするが、学術審議会の提言によるものを積極的に考慮することとし、科学研究費分科会企画部会において、機動的かつ柔軟な運用を図ることとする。
 また、学術審議会の提言により、分野を設定して領域を公募することも検討する。

(2)研究計画及び研究成果の評価について

 科学研究費補助金の交付を受ける研究課題の評価については、申請段階での研究計画の評価、研究実施中の中間評価及び終了後の研究成果の(事後)評価が問題になる。このうち申請段階での評価は、配分審査の形で全ての申請について厳格に行われている。
 これに対して、研究実施中の評価及び研究終了後の評価は、「基盤研究」等に関しては、この規模の学術研究の基礎的性格、行政効率等に鑑み、独立に行うことにしていない。しかし、研究者が新たな研究計画を申請した場合は、当然過去に助成を受けた研究の成果も考慮して審査されるため、その意味で、間接的に研究終了後の成果の評価が行われているということができる。
 一方、科学研究費補助金の中でも比較的高額の経費が交付される「特別推進研究」「重点領域研究」等については、研究実施中の評価及び研究終了後の評価も厳正に行われている。
 しかしながら、科学技術基本計画及びこれに基づき科学技術会議で検討中の「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針(案)」の指摘を待つまでもなく、限られた財政資金の重点的・効率的配分、柔軟かつ競争的で開かれた研究環境の実現、さらには研究への国費の投入に対する国民の理解と支持の獲得のためには、研究評価の一層の充実、改善を進めることが求められる。
 本審議会においても、学術研究体制特別委員会にワーキング・グループを設けて、学術研究における評価の在り方について集中的に検討を行い、今回それを踏まえ「中間まとめ」を行ったところである。今後も引き続き、大学等における学術研究の特性に即した研究評価の在り方について検討を行っていくが、その一環として科学研究費補助金に関する評価についても、上記のような現状に対して、いかなる改善方策を施すべきか、専門的立場から掘り下げて検討を行い、適用可能なものから具体化を図ることが必要である。
 本審議会では、そのための検討作業を行い、向こう1年間を目途に方策を取りまとめることとした。具体的には、学術研究の特性に配慮しつつ、配分審査の一層の改善や、現在、研究継続中、研究終了後の審査を行っていない研究種目に関する、中間・事後評価、不採択の場合の理由の申請者への開示の在り方等について検討を行う。これを踏まえ、平成10年度より順次実施を図っていくこととする。

(参考資料)

重点領域研究の改善案の例

事項 重点領域研究(A) 重点領域研究(B)
組織 従来の大規模グループによる領域研究。公募研究を募る。 機動的な中規模グループ(典型的には10人~20人程度)による領域研究。公募研究は募らない。
規模 研究経費は、典型的には年間2億円から6億円程度。 研究経費は、典型的には年間2,000万円から2億円程度。
計画研究 ○計画研究の組織は、少人数または個人(研究(2)の形態)とする。ただし、総括班(及び各研究項目ごとの調整班)を設ける場合には、その研究組織は研究(1)の形態とすることができる。
審査等 ○領域の審査は、企画部会で書類審査及びヒアリングにより行う。
○個々の研究課題の審査は、従来どおり領域採択決定後、領域ごとに設けた審査会で行う。
○研究課題について、複数年の採択(2~3年を目途)を行う。
○審査は、企画部会で書類審査及びヒアリングにより行う。
○審査にあたり、個々の研究計画について、第三者的な立場の研究者によるレビューを実施し、その評価を参考にする。
○ヒアリングを行う研究領域数が多くなる場合は、審査員の負担を考慮し、書類審査等で極めて優れた領域については、ヒアリングを行わないことを検討。
○研究課題について、複数年の採択(2~3年を目途)を行う。
申請時期 ○十分な審査期間を確保するため、申請時期を早める。

附属資料1

学術審議会(第15期)委員名簿

(任期平成8年2月16日~平成10年2月15日)

  阿部 謹也 一橋大学長
  池端 雪浦 東京外国語大学教授(アジア・アフリカ言語文化研究所)
  石井 紫郎 国際日本文化研究センター教授
  伊藤 正男 日本学術会議会長
(会長) 猪瀬 博 学術情報センター所長
  井村 裕夫 京都大学長
  宇井 理生 東京都臨床医学総合研究所長
  江崎 玲於奈 筑波大学長
  大崎 仁 日本学術振興会理事長
  太田(原田) 朋子 国立遺伝学研究所名誉教授
  奥島 孝康 早稲田大学総長
  河合 隼雄 国際日本文化研究センター所長
  志村 令郎 生物分子工学研究所長
  鈴木 昭憲 東京大学名誉教授
  高久 史麿 自治医科大学長
(副会長) 天滿 美智子 津田塾大学名誉教授
  豊島 久真男 大阪府立成人病センター総長
  鳥井 弘之 日本経済新聞社論説委員
  中村 桂子 生命誌研究館副館長
  西川 哲治 東京理科大学長
  西澤 潤一 東北大学名誉教授
  野依 良治 名古屋大学教授(大学院理学研究科長)
  増本 健 財団法人電気磁気材料研究所長
  水野 繁 株式会社整理回収銀行社長
  三田 勝茂 株式会社日立製作所取締役会長
  山本 明夫 早稲田大学教授(大学院理工学研究科)
  吉川 弘之 東京大学名誉教授

(職名は平成9年5月20日現在)

附属資料2

学術審議会科学研究費分科会運営会議(第15期)委員名簿

  石井 紫郎 国際日本文化研究センター教授
  奥島 孝康 早稲田大学総長
  志村 令郎 生物分子工学研究所長
(分科会長) 高久 史麿 自治医科大学長
  西澤 潤一 東北大学名誉教授
  野依 良治 名古屋大学教授(大学院理学研究科長)
  増本 健 財団法人電気磁気材料研究所長

学術審議会科学研究費分科会企画部会(第15期)委員名簿

委員
  阿部 謹也 一橋大学長
  石井 紫郎 国際日本文化研究センター教授
  奥島 孝康 早稲田大学総長
  志村 令郎 生物分子工学研究所長
  鈴木 昭憲 東京大学名誉教授
(部会長) 高久 史麿 自治医科大学長
  豊島 久真男 大阪府立成人病センター総長
  西澤 潤一 東北大学名誉教授
  野依 良治 名古屋大学教授(大学院理学研究科長)
  増本 健 財団法人電気磁気材料研究所長
  山本 明夫 早稲田大学教授(大学院理工学研究科)
専門委員
  伊賀 健一 東京工業大学教授(精密工学研究所)
  菊池 城司 大阪大学教授(人間科学部)
  谷口 維紹 東京大学教授(医学部)
  水谷 修 国立国語研究所長

(職名は平成9年7月25日現在)

お問合せ先

学術国際局研究助成課

-- 登録:平成21年以前 --