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学術研究における評価の在り方について(中間まとめ) (学術審議会)

平成9年7月25日
学術審議会

はじめに

1.評価の基本的考え方
 1 学術研究の意義と使命
 2 評価の視点
 3 評価者について
 4 評価支援体制の整備
 5 評価結果の社会への発信

2.研究課題の評価の在り方
 1 基本的考え方
 2 現状と改善の方向

3.研究面における大学等の評価の在り方
 1 基本的考え方
 2 現状と改善の方向

はじめに

 世界の学術研究の進展に対する我が国の貢献への期待とともに、地球規模の課題の解決や新産業の創出等に関する学術研究への期待がますます高まっている今日、創造性豊かな学術研究の推進を図る観点から、研究に対する評価の在り方が問い直されている。
 学術研究においては、従来から、研究者間における学問的な相互評価が有効に機能しており、研究の活性化、研究資源の有効使用等、様々な観点から評価が行われている。
 しかし、近年、学術研究水準の飛躍的向上への期待が高まる一方、個々の研究に要する経費が著しく高額化しているという背景の中で、従来にも増して、研究費の有効使用や研究機関の効果的な機能整備といった観点から、また、国民に対する説明責任の観点からも、評価の充実が要請されるに至っている。
 本審議会は、このような状況を踏まえ、平成4年の答申「21世紀を展望した学術研究の総合的推進方策について」において、研究評価の重要性を指摘した。その後も、評価に関する調査研究を実施するとともに、その結果も踏まえ、学術研究における評価の在り方について、引き続き審議を重ねてきている。
 このたび、平成8年7月に閣議決定された科学技術基本計画に基づいて、国費によって実施される研究開発全般を対象とする「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方についての大綱的指針」(以下「大綱的指針」という。)が策定され、科学技術に係る研究開発評価の一層の効果的実施が図られることとなった。
 本審議会としては、この際、人文・社会科学等、大綱的指針が対象としていない分野も含め、広く大学等における研究に対する評価が学術研究の本質と特性に即して適正に行われ、創造性豊かな学術研究の発展に資するものとなることが必要であると考える。
 このような観点から、学術研究における評価の在り方についてのこれまでの審議の成果を取りまとめ、中間まとめとして公表することとした。今後、この中間まとめに対する意見を求め、これを参考にするとともに、評価についての各般の検討状況も踏まえながら、引き続き審議を進め、最終的な取りまとめを行うこととしたい。

1.評価の基本的考え方

1 学術研究の意義と使命

 学術研究の中核的担い手である大学及び大学共同利用機関(以下「大学等」という。)は、広く人文・社会・自然の諸科学にわたる様々な分野において蓄積されてきた人類の知的資産を正しく継承しつつ、それを新たな知的創造活動によって発展させること、及びその研究成果を踏まえた教育活動によって人材を育成すること、並びにこれらを通じて国家社会及び国際社会の発展に貢献することを使命としている。
 このような使命を担う大学等の学術研究は、それ自体優れた文化的価値を形成しており、国の文化を発展させ、ひいてはその国際的地位を高めるなど、国家社会発展の重要な基盤・原動力となっている。また、学術研究は、各方面の人材養成をはじめ、広範な社会諸分野の活動の知的・精神的基盤として大きな役割を果たすとともに、科学技術の発展の基盤として、産業の発展・創出、国際競争力の向上、地球的規模の課題の解決、国民生活の向上などに貢献している。
 このような意義を有する学術研究は、研究者の自由闊達な発想と研究意欲を源泉として展開されることによって、初めて優れた成果を期待できるものであり、大学等における研究に学問の自由が保障されているのも、そのためである。
 大学等の研究者は、自由な研究環境の保障が、大学等がその使命を全うするために必要なものであることを自覚し、自らを厳しく律して研究を推進することが望まれる。同時に、以下に述べる学術研究における評価の在り方を踏まえた、評価の定着と社会への情報発信に努めることが望まれる。

2 評価の視点

 学術研究は、研究者の自由な発想と研究意欲を源泉として行われるものであるため、研究の目的、性格、規模、方法などは極めて多様であり、また、学術研究の成果の中には、長い年月を経て予想外の発展を導くものも多い。したがって、画一的・短期的な視野から、目に見える成果のみを性急に期待するような姿勢では、優れた学術研究を育むことはできない。学術研究における評価については、このような学術研究の特性を十分に踏まえるとともに、評価を通じて研究活動を鼓舞・激励し、活性化を図る観点を重視して行われなければならず、このような観点を欠いた、自己目的的な評価(評価のための評価)に陥ってはならない。
 学術研究における評価の視点としては、大別して、学問的意義と社会・経済への貢献の二つがある。これらの視点は、それぞれ異なる評価軸を形成するが、学術研究においては、社会・経済への貢献を強調するあまり、固有の学問的意義についての評価を曲げることがあってはならず、学問的意義についての評価を中心としつつ、研究の分野、目的などに応じて、社会・経済への貢献という視点を考慮することが適当である。
 学問的意義という視点からの評価については、その基準として、研究水準、独創性、当該研究の今後の発展の可能性、他の研究分野・学問分野への貢献などが考慮されるべきである。社会・経済への貢献という視点からの評価については、その基準として、新技術の創出、特許等の知的財産の形成、新産業基盤の構築、生活基盤の強化、政策形成への寄与、人類・文化の発展への貢献、などを考慮することが適当である。また、同時に、教育上の観点、次代を担う人材養成への貢献の観点も必要となる。なお、当然のことながら、個々の研究計画の評価に当たっては、このような視点に加え、研究資源の効果的な使用の観点から、計画の妥当性、研究遂行能力等についても考慮する必要がある。
 なお、人文・社会科学については、文化や伝統との関わりが密接であり、価値観の多様性を反映して評価の尺度も単純・一義的ではないという特性があるため、数値的指標の有効性や評価の普遍性に限界があることについて十分な配慮がなされることが必要である。
 研究面における大学等の機関評価については、その設置目的に照らして、研究活動のみならず、研究環境、組織、管理・運営等、目的達成に必要な諸要素全体について行うことが必要である。また、研究活動については、機関全体としての状況のみならず、所属する個々の研究者の活動状況も対象とする必要がある。大学については、多様な内部組織から構成されており、各組織の設置目的も、教育・研究・社会サービスなど、多元的な要素を総合したものである場合が多く、評価に当たっては、その点を十分考慮して、一面的評価に陥らないようにしなければならない。特に、研究活動と教育活動との間の有機的関係とバランスの重要性に留意する必要がある。

3 評価者について

 我が国において研究評価を制度として構築し、定着させることは、重要であるが、必ずしも容易ではない課題である。学術研究の評価は、最終的には評価者の主観的な判断によるところが大きいだけに、学問的な識見や予測能力と国際的・学際的な視野の裏付けの下に、公平無私にして厳正な判定を下せる、優れた評価者の確保が不可欠である。
 特に、相補的な属性を持った優れた評価者の選考、評価者の固定化や特定者への集中の回避、などを通じた公正な評価を可能とするために、優れた評価者を多数確保する必要がある。同時に、選考された評価者がその能力を十分発揮できるよう、評価者が評価活動に従事しやすい条件や環境の整備が図られる必要がある。なお、評価目的や対象に応じた適切な評価者の構成(合議制によるか、単独又は少数によるかを含む)とすることも重要である。
 また、学術研究が国際的・学際的な広がりの中で展開されている現状においては、評価者には、国際的・学際的な視野を有する研究者や異分野の研究者を確保するとともに、優れた業績を有する外国人研究者を加えたり、その意見を求めたりすることも考慮する必要がある。
 さらに、研究の推進に巨額の研究資金を必要とする大型研究プロジェクトや社会的影響の大きい研究などについては、研究内容についての評価に加えて、社会的影響や意義について、外部有識者の意見を求めるなどによる評価を併せて行うことが重要である。
 評価者の在り方に関しては、利害関係のある研究課題の評価への対応や守秘義務など、評価者の倫理の問題をはじめ、評価者の任期や再任の在り方、評価者の評価、評価者の選出・選考システムの在り方、優れた評価者を育成し、評価能力の開発・向上を図るシステムの在り方、評価の社会的受容を向上させるための工夫(例えば、事後における評価者の氏名の公表)などについて、十分検討する必要がある。

4 評価支援体制の整備

 評価の充実のためには、研究者個人に係る論文数、論文被引用回数、著作物などの評価指標として活用し得る客観的データ、国際的研究動向、評価結果に関する情報、研究資源の配分状況その他の、我が国全体の情報の収集・整理・分析・提供を行い得る体制が必要である。既に、学術情報センターにおいて、大学等における研究者の研究課題・発表論文等のデータベースの整備等が進められているが、データの種類及び質・量の一層の整備・充実を行うとともに、これを活用するシステムの充実を図る必要がある。
 また、適切な評価を行うシステムを築くためには、評価に係る直接経費が確保されることが重要である。欧米諸国においては、研究プログラムの1%相当額が、評価の直接経費として確保されることが望ましいと言われている。我が国において一層充実した、適切な評価を継続的に実施するためには、評価を実施するための経費措置の充実を図ることが必要である。さらに、評価の方法についての研究を進めるとともに、評価の実施を支援する専門的な人材・人員の確保・育成等を図ることも重要な課題である。
 なお、評価に伴う作業負担が過重で、研究活動等に大きな支障が生ずるような事態は回避しなければならない。

5 評価結果の社会への発信

 評価の公正さ・適切さを確保するとともに、社会の理解と支持を得るために、各種の場や手段を通じ、評価結果を社会に向けて積極的に発信していくことが重要である。さらに、このような取組を通じ、国民各般からの意見を汲み取り、大学等の研究教育活動の活性化や将来の学術研究の振興等に生かしていくことも大切である。
 なお、評価結果の社会への発信については、その方法次第で、研究の創造性を高めることも、逆に萎縮させてしまうこともあり得ることや、個人情報の保護に十分留意し、その具体的な方法等について慎重な配慮がなされることが望ましい。

2.研究課題の評価の在り方

1 基本的考え方

 学術研究は、問題の設定・研究計画の策定に始まり、研究成果の取りまとめに至る一連の知的創造活動であり、その評価も、このような諸要素に即して行われる。本中間まとめでは、これらを一括し、研究課題の評価として捉えている。
 このような研究課題の評価については、いかなる目的で、いかなる種類・方法・規模の研究(評価の対象)を、誰が、どの段階・時期で評価するか、が問題となる。評価の目的としては様々なものが考えられるが、究極の目的は、研究活動の活性化による創造性豊かな学術研究の推進であり、いかなる観点から評価の問題を考えるにせよ、研究活動の活力を削ぐようなことがあってはならない。
 評価の対象については様々な分類が可能であるが、研究資金の性格との関係を考慮すると、1)経常的な研究資金による研究の評価、2)一般的な公募型研究の評価、3)学術政策上の見地から推進される研究の評価、の3類型に分けて、研究評価の在り方を整理できる。学術研究の進展は、基本的には、1)による小規模の萌芽的研究等に始まり、その成果の評価等に基づいて、2)の公募型の競争的資金を獲得する。そのうち、高く評価されるいくつかのものが、3)の政策的重点配分の対象に成長していく。このような形で学術研究は有機的な体系を成しており、この体系の軸となっているのが評価にほかならない。このような体系を成す学術研究における研究課題の評価は、学術研究の多様性とそれらの研究を支える多様な研究資金の性格に応じて、行われなければならない。また、研究費の配分などに関わる、研究資金の有効使用の観点に立つ研究評価は、評価時期(事前・中間・事後)に応じて、評価の意図を明確にするとともに、評価基準を明示して行うことが重要である。研究課題の評価は、最終的には評価者の主観的判断によるところが大きいが、結果の客観性を高めるために、論文数、論文被引用回数といった客観的指標データを、その限界に留意しつつ、活用することも有効であろう。

1)経常的な研究資金による研究の評価

 学術研究においては、学問の全分野にわたり、個々の研究者の自由で多彩な発想に基づく独創的な研究の芽生えを育てることが重要である。その意味でも、研究者が経常的に使用できる研究資金による研究は、学術研究発展の基礎を培うものである。このような研究に対しては、自由闊達な雰囲気を損ねたり、将来の研究発展の芽を摘み取ることのないよう、資金配分のための個別の研究評価を行うことは適当ではない。この種の研究については、学界等における評価、及び各大学等の行う自己点検・評価の一環としての研究者の研究活動状況に対する評価に委ねることが適当である。
 研究者は、このように、創造性豊かな研究の育成のために必要な配慮がなされていることを十分自覚し、研究活動の活性化に一層努めなければならない。

2)一般的な公募型研究の評価

 創造性豊かな優れた学術研究を育成するためには、経常的な研究資金による研究の充実を図るとともに、研究者の自由な発想に基づく研究を公募し、優れた研究を選択的に支援することが効果的である。この選択的支援のための研究計画の事前評価は、研究者の競争による優れた研究の育成のために、研究計画についての専門研究者による厳正な審査に基づいて行われることが必要である。また、研究計画の錬成を図るために、評価結果に対する理由を、申請者本人に開示することが望ましい。
 選択後の中間評価は、通常の場合は、研究の進行状況の確認程度にとどめることが適当である。研究期間が比較的長く、かつ配分される研究資金が高額の場合には、専門研究者による中間評価を実施し、研究の進捗状況の把握と研究の活性化を図るほか、評価結果によっては、研究計画の変更を求めることや研究支援の中止も考慮する必要がある。
 事後評価は、第一義的には、研究成果を問うものであり、論文の投稿や学界等における研究発表等を通じた研究成果の評価を中心として行われることが望ましい。なお、研究資金が高額の場合には、特に専門研究者による評価や公開シンポジウムの開催等を通じた評価も行い、その結果を積極的に社会へ発信しつつ、社会の批判を仰ぐことが望ましい。また、事後評価は、事前・中間評価に対する評価としての意義を有するとともに、次の研究に対する配分審査(事前評価)につながる性格を有することとなる。

3)学術政策上の見地から推進される研究の評価

 経常的な研究資金による研究や一般的な公募型研究の成果を踏まえつつ、学術上、社会・経済上の必要性を考慮して、学術政策上重点的あるいは計画的に推進する研究プロジェクトについては、公募方式によることなく、政策目的に即して研究プロジェクトを選定することが適切である場合が少なくない。このような場合、指導的研究者、関係分野の第一線の研究者が中心となって、研究プロジェクトの立案・選定を行い、かつ、立案・選定に当たる研究者等の氏名の公表などによって選定過程を透明にすることが必要である。研究プロジェクトの選定(事前評価)は、公募方式の採否にかかわらず、当該専門分野の研究者の厳正な判断により行われるべきことはもちろんであるが、学術政策の目的達成の見地から、プロジェクトの目的・性格に照らして適切な場合には、他分野の研究者、各方面の有識者の参加を得ることが必要である。中間評価、事後評価についても同様である。
 当初の研究推進の目的に照らして進捗状況の把握等を行うため、原則として中間評価を行い、評価結果によっては、研究計画の変更を求めることや研究支援の中止も考慮する必要がある。
 研究推進の目的に適合しているか否かの観点から、事後評価を行うとともに、原則として、公開シンポジウムの開催等を通じた評価も行い、その結果を積極的に社会へ発信しつつ、社会の批判を仰ぐことが望ましい。
 特に、公募方式によらないで決定した研究プロジェクトについては、中間又は事後評価において、当該研究プロジェクトの立案・選定に当たった研究者等以外の者を評価者とし、プロジェクトの立案・選定自体を含めて評価する方式も考慮する必要がある。このような評価は、評価の評価、評価者の評価としての意義を有することとなる。

(大型研究プロジェクトの評価)

 特定の大学共同利用機関が中心となって、巨額の研究資金と多くの研究者集団により実施される大型研究プロジェクトについては、他の学術研究分野に与える影響も大きいことから、その研究計画については、事前・中間・事後の各段階において、透明性・客観性の高い厳正な評価が実施される必要がある。特に、計画の立案段階における事前評価は重要であり、大型研究プロジェクトを学問的意義と並んで社会・経済への貢献という視点からも意義あるものとするために、まず関係研究者集団による真剣な討議を経て研究計画がまとめられた後、当該研究計画について、外国人研究者も含む専門研究者による評価や外部有識者の意見を求めるなどによる評価を行うという形で、事前評価が行われることが必要である。
 また、中間評価として、専門研究者による評価や外部有識者の意見を求めるなどによる評価を行い、研究計画に照らして進捗状況等を点検・評価し、必要に応じ評価結果を公開するとともに、その後の方針の決定を速やかに行う必要がある。その際、目標の達成度が低い場合は、縮小や変更、あるいは、種々の要素を勘案した上で、研究支援の中止等の措置を講ずることも考慮する必要がある。
 事後評価としては、研究推進の目的に適合しているか否かの観点から、研究成果、波及効果等について、当事者以外の第三者的立場にある研究者による評価や外部有識者の意見を求めるなどによる評価、公開シンポジウムの開催等を通じた評価を行い、その結果を積極的に社会へ発信しつつ、社会の批判を仰ぐことが必要である。このような事後評価は、当該大型研究プロジェクトの評価としての意義のほか、当該研究グループ及びその研究リーダーの研究遂行能力の評価や、次期計画の事前評価としての意義も有することとなる。

2 現状と改善の方向

1)経常的な研究資金による研究の評価

 経常的な研究資金による研究の評価については、従来から、研究者による論文の投稿や学界等における研究発表等を通じた評価が中心となっている。今後も、専門研究者間における相互評価の一層の洗練を図るとともに、様々な形で自主的な評価への取組が展開されていく必要がある。また、このような評価は、研究者が所属する大学等における自己点検・評価の一環として行うことも可能であり、一層積極的に展開されることが望ましい。

2)一般的な公募型研究の評価

 研究者の自由な発想に基づく研究を公募し、優れた研究を選択的に支援する研究資金である科学研究費補助金における評価の現状は、別紙1のとおりである。従来から、研究者と有識者によって構成される本審議会が、経費の区分に応じて、様々な形で評価のための組織としての役割を果たしている。例えば、科学研究費については、各分野の研究者約2000名が原則2年の任期で審査員に委嘱されている科学研究費分科会が、専門研究者による厳正な評価のための組織としての機能を果たしている。
 このような本審議会における科学研究費補助金に係る評価は、評価システム自体についても、制度創設以来、研究資金が高額の場合の中間・事後評価を含め、不断の改善努力がなされ、厳正な運用が行われている。また、配分審査の審査員全員の氏名を審査終了後公表するとともに、特別推進研究と重点領域研究(領域の採否)の審査については、申請者への不採択理由の開示を行うなど、透明性の確保のための改善も積極的に図られている。今後、不採択理由の申請者への開示の一層の拡大を図るとともに、優れた研究成果を社会へ発信していくシステムの整備について検討していくことが必要である。
 そのほか、研究種目の目的・性格に応じた配分審査や、中間・事後評価の在り方などについても、引き続き充実のための検討を行っていくことが必要である。

3)学術政策上の見地から推進される研究の評価

 学術政策上の見地から推進される研究については、学術研究全体の国際的動向や研究資源配分の全般的な状況等を適時・的確に把握し、これを踏まえつつ、学術研究の推進状況全体についての評価を行うことが、今後ますます重要となる。このような評価の機能は、従来から、本審議会が中心となって、その役割を果たしているが、学術研究の一層の振興のため、その役割を一層積極的に果たしていくことが、本審議会に求められている。
 学術政策上の見地から創成的又は学際的な学問領域の創造等を推進する創成的基礎研究費(新プログラム方式による研究)については、別紙2のとおり、本審議会の新プログラム・COE特別委員会により、事前・中間・事後の各段階において、様々な形で評価が実施されている。今後とも、評価結果の社会への発信や、研究プロジェクトの選定自体も含めた評価等に一層努めることが必要である。
 我が国の未来の開拓につながる学術研究の重点的推進を目的とする日本学術振興会の未来開拓学術研究推進事業については、別紙2のとおり、我が国の指導的研究者を中心に構成される事業委員会が、事業の運営全体について責任を持つが、個々の研究プロジェクトの立案・選定については、事業委員会が選定した重要分野ごとに設けられる研究推進委員会がこれに当たっている。研究推進委員会は、当該分野の第一線の研究者によって構成され、選定した研究プロジェクトの遂行についても指導・助言に当たることになっている。その意味では、研究推進委員会が、実質的には、中間評価、事後評価も行うことになるが、これとは別に評価委員会を設けて、中間評価、事後評価を行うことが予定されている。
 事業委員会と研究推進委員会のメンバーや活動状況については、既に公表されているところであるが、今後、研究推進委員会ごとの公開シンポジウムの開催等により、研究プロジェクトの立案・選定理由、研究の遂行状況等を、広く関係者に周知する努力が必要である。また、中間評価、事後評価については、その在り方を十分検討し、適切なシステムを整備する必要がある。

(大型研究プロジェクトの評価)

 世界最先端の研究の推進や国際的要請への対応などの観点から、特定の大学共同利用機関が中心となって、重点的研究資金により推進する大型研究プロジェクトについては、本審議会の学術研究体制特別委員会と特定研究領域推進分科会が、評価のための組織としての役割を果たしている。具体的には、別紙3のとおり、計画段階での評価をはじめ、事前・中間・事後の各段階における外部有識者の意見を求めるなどによる評価の実施など、様々な形で評価が実施されており、評価体系の整備も、かなり進められてきている。今後、大型研究プロジェクトの一層効果的な推進を図るとともに、社会の理解と支持を得ていくためには、外国人研究者や外部有識者の意見を求めるなどによる評価の充実、評価結果等の社会への発信に一層努めることが必要である。
 なお、国際共同研究については、関係国間等の連携・協力による、効果的・効率的な評価を行う必要がある。

3.研究面における大学等の評価の在り方

1 基本的考え方

 学術研究の中核的な担い手である大学等は、学問の府として自律的な研究教育が保障され、自らの創意によって常に研究教育水準の向上に努めることが社会的に期待されている。大学等は、研究教育水準の向上や活性化に努めるとともに、その社会的使命を果たしていくために、不断の自己点検・評価を行い、研究教育活動の改善に努めていかなければならない。
 研究面における大学等の機関評価については、このことを踏まえ、各大学等における自己点検・評価を基本に考えることが必要である。自己点検・評価を効果的に実施するためには、例えば、全学・全機関的な自己点検・評価のための組織を設けるとともに、学部等の部局ごとに自己点検・評価を行うための委員会を設けるなど、各大学等の実情に応じた適切な実施体制を整えることが望ましい。また、必要に応じ、このような組織に、当該大学等以外の研究者や外国人研究者、さらには有識者の参加を求めることが適当である。さらに、このような各大学等における自己点検・評価の結果については、社会への積極的な発信に努め、それに対する国民各般からの意見を汲み取り、大学等の研究教育活動の活性化等に生かしていくことも大切である。
 評価に当たっては、組織全体及び各構成単位(学部・研究科、研究所等)について、それぞれの設置目的に照らし、研究活動の成果を中心としつつ、研究体制全般も対象とする必要がある。
 なお、「1.評価の基本的考え方」の「2.評価の視点」で述べたように、大学は通常、教育・研究・社会サービスなど多様な目的・機能をもつ組織から構成されており、研究機能に加え、教育・人材養成機能、あるいは、これらを通じて、産業界や地域社会への協力を含む、社会貢献の機能も果たしている。そのため、研究面における大学等の機関評価に当たっては、研究機能と他の諸機能との関係を十分考慮しながら、評価を行う必要がある。

2 現状と改善の方向

1)自己点検・評価

 大学等の機関評価の基本ともなる自己点検・評価については、平成3年の大学設置基準等の改正により、自己点検・評価の実施努力規定が設けられたが、この改正を提言した大学審議会の答申においては、研究活動の評価を含む大学の自己点検・評価項目の例示もなされている。これらを踏まえ、現在、自己点検・評価を行うための全学・全機関的な組織や教授会等を中心として、組織的な取組が各大学等において積極的に展開されている。また、自主的な判断により、外部の研究者や有識者の参加を求める等の取組も、かなり進んできている。
 今後、各大学等が、その実情に応じた実施のための体制の整備、外部の研究者や有識者の参加の促進、評価基準や方法の改善・充実などの取組の一層の推進等に努めて、当該研究分野等の特性を踏まえた、定期的な自己点検・評価の一層の定着を図る必要がある。また、各大学等のこのような取組を支援していく必要がある。このほか、実施内容の充実等のため、各大学等が自己点検・評価を実施する際の参考となるマニュアル等を大学・研究機関の団体等が作成し、各大学等に提供することが望まれる。
 また、自己点検・評価の結果の社会への発信も、かなり進んできてはいるが、更に分かりやすい形での情報発信に努めることが必要である。

2)大学共同利用機関についての評価

 大学共同利用機関は、全国の大学等の研究者が交流し、共同研究を推進する場であるとともに、特色ある施設・設備や資料の共同利用の場であり、開かれた組織として、各分野の研究の発展に大きく貢献することが期待されている。
 このような観点から、今後、すべての大学共同利用機関で、当該機関を利用する研究者を含む、外部の研究者の参加を得た自己点検・評価を組織的・体系的に行うための、全機関的な組織の整備を図ることが必要である。そのため、大学共同利用機関が自主的に行う外部評価を支援する措置の充実が必要である。
 大学共同利用機関においては、その適切な管理・運営を図るため、外部の研究者や有識者によって組織される評議員会、及び同一研究分野の研究者の参加を得て組織される運営協議員会が設置されており、研究教育活動についての評価も行われている。今後、評議員会及び運営協議員会が有する評価機能の活用に一層努めるとともに、評価結果の社会への積極的な発信を行うため、大学共同利用機関が行う研究活動・成果・評価結果等の国内外への公開活動を積極的に支援する措置の導入が必要である。
 なお、全国共同利用の国立大学附置研究所等についても、大学共同利用機関と同様に、自主的に行う外部評価を支援する措置の充実、及び研究活動・成果・評価結果等の国内外への公開活動を積極的に支援する措置の導入が必要である。
 大学共同利用機関の大規模な整備等に当たっては、当該機関を利用する研究者の意見も反映させた自己点検・評価を行うのはもとより、多角的に評価を行う必要があるが、従来から、本審議会の学術研究体制特別委員会や特定研究領域推進分科会などが、必要に応じ、さらに外部有識者や外国人研究者の意見も求めつつ、様々な形で、評価のための組織としての役割を果たしている。今後とも、本審議会として、評価結果等の社会への発信に努めるなど、不断の改善・充実を図りつつ、厳正な評価の実施に努めていくことが必要である。

(附属資料1) 第15期学術審議会委員名簿

阿部 謹也 一橋大学長
池端 雪浦 東京外国語大学教授(アジア・アフリカ言語文化研究所)
石井 紫郎 国際日本文化研究センター教授
伊藤 正男 日本学術会議会長
(会長) 猪瀬 博 学術情報センター所長
井村 裕夫 京都大学長
宇井 理生 東京都臨床医学総合研究所長
江崎 玲於奈 筑波大学長
大崎 仁  日本学術振興会理事長
 太田(原田) 朋子  国立遺伝学研究所名誉教授
奥島 孝康 早稲田大学総長
河合 隼雄 国際日本文化研究センター所長
志村 令郎 生物分子工学研究所長
鈴木 昭憲 東京大学名誉教授
高久 史麿 自治医科大学長
(副会長) 天滿 美智子 津田塾大学名誉教授
豊島 久真男 大阪府立成人病センター総長
鳥井 弘之 日本経済新聞社論説委員
中村 桂子 生命誌研究館副館長
西川 哲治 東京理科大学長
西澤 潤一 東北大学名誉教授
野依 良治 名古屋大学教授(大学院理学研究科長)
増本 健 財団法人電気磁気材料研究所長
水野 繁 株式会社整理回収銀行社長
三田 勝茂 株式会社日立製作所取締役会長
山本 明夫 早稲田大学教授(大学院理工学研究科)
吉川 弘之 東京大学名誉教授

(職名は平成9年5月20日現在)

(附属資料2) 学術審議会学術研究体制特別委員会(第15期)委員名簿

池端 雪浦 東京外国語大学教授(アジア・アフリカ言語文化研究所)
石井 紫郎 国際日本文化研究センター教授
伊藤 正男 日本学術会議会長
猪瀬 博 学術情報センター所長
宇井 理生 東京都臨床医学総合研究所長
江崎 玲於奈 筑波大学長
大崎 仁 日本学術振興会理事長
奥島 孝康 早稲田大学総長
鈴木 昭憲 東京大学名誉教授
高久 史麿 自治医科大学長
(主査) 天滿 美智子 津田塾大学名誉教授
鳥井 弘之 日本経済新聞社論説委員
中村 桂子 生命誌研究館副館長
西澤 潤一 東北大学名誉教授
水野 繁 株式会社整理回収銀行社長
三田 勝茂 株式会社日立製作所取締役会長

(職名は平成9年5月20日現在)

(附属資料3) 学術審議会学術研究体制特別委員会(第15期)学術研究における研究評価に関するワーキング・グループ委員名簿

伊賀 健一 東京工業大学教授(精密工学研究所長)
(副主査) 石井 紫郎 国際日本文化研究センター教授
猪瀬 博 学術情報センター所長
(主査) 井村 裕夫 京都大学長
大崎 仁 日本学術振興会理事長
黒川 清 東海大学教授(医学部長)
鈴木 昭憲 東京大学名誉教授
鳥井 弘之 日本経済新聞社論説委員
中井 浩二 東京理科大学教授(理工学部)
野依 良治 名古屋大学教授(大学院理学研究科長)
村上 陽一郎 国際基督教大学教授(教養学部)

※は学術審議会専門委員

(職名は平成9年5月20日現在)

お問合せ先

学術国際局学術課

-- 登録:平成21年以前 --