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2 修士レベルの教員養成の実態

 教員養成における修士レベルの教育の成果は、最終的には専修免許状へとつながっていくものであるが、その取得方法は下記のように大きく2種類に分けられる。
 第一に、専修免許状の課程認定を有する大学院修士課程に在学した場合、その修了要件を満たし修士の学位を取得すれば、通常は専修免許状の授与要件をも満たすこととなり、専修免許状の取得が可能になる。
 第二に、一種免許状を有する現職教員が、所要の教職経験年数を基礎に大学院修士課程等で所要の単位を修得すれば、専修免許状を取得することが可能になる。これを一般に専修免許状への「上進」と称している。
 以下の1.及び2.においては、専修免許状を取得するためのこれら2つの方法に関して、教員養成における修士レベルの教育機会の実態等を明らかにする観点から、大学院修士課程と専修免許状の制度及び現状を、一般に指摘される問題点等にも触れながら述べてみたい。

1.大学院修士課程の制度及び現状

(1)大学院修士課程の制度の概要

a.修士課程の設置及び目的

 大学には、大学院を置くことができる(学校教育法第62条)こととされ、大学院における課程は、修士課程及び博士課程とされている(大学院設置基準第2条)。
 修士課程の目的は、広い視野に立って精深な学識を授け、専攻分野における研究能力を養うこと、又は、高度の専門性を要する職業等に必要な高度の能力を養うこととされている(同基準第3条第1項)。しかしながら、研究者養成の側面を重視する伝統的な大学人の意識もあり、また、特に人文系の分野においては修士課程修了を採用の条件とする職業が少ないことなどもあって、修士課程における教育研究の実態は、おしなべて前者の目的に沿った内容に偏していると指摘されている。
 去る10月26日の大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」(以下「大学審議会答申」という。)においては、大学院の目的や教育研究の内容について、「各課程において研究者養成、高度専門職業人養成などの目的に即した体系的なカリキュラムが編成されていない」と指摘されている。
 なお、博士課程と並び、修士課程には、専ら夜間において教育を行うものを置くことができることとされている(同基準第2条の2)。

(注) 博士課程に関しては、大学院設置基準において、「博士課程は、これを前期2年及び後期3年の課程に区分し、又はこの区分を設けないものとする」(同基準第4条第3項)とされ、「前期2年及び後期3年の課程に区分する博士課程においては、その前期2年の課程は、これを修士課程として取り扱うものとする」(同条第4項)とされている。

b.修士課程の修業年限

 修士課程の標準修業年限は、2年とされているが、専ら夜間において教育を行う修士課程については、その標準修業年限を2年を超えるものとすることができることとされている(大学院設置基準第3条第2項)。
 修士課程の標準修業年限については、大学審議会答申において、「社会人の大学院修士課程への積極的な受入れを図っていくため、各大学の選択により、通常の教育方法に加え週末や夏休み期間中などにおいて集中して授業又は研究指導を行うなどの履修形態の工夫や、一定の職業経験の成果を生かした特定課題研究・修士論文の作成の指導などのカリキュラムの工夫により、1年以上2年未満の修業年限でも修了することが可能なコース」や「社会人学生等の多様な需要にこたえるため、あらかじめ標準修業年限を超える期間を在学予定期間として在学できる長期在学コース」を、各大学の判断により設けることを可能とすべき旨提言されている。

c.修士課程の入学資格

 修士課程の入学資格については、学校教育法第67条において、「大学院に入学することのできる者は、第52条の大学を卒業した者又は監督庁の定めるところにより、これと同等以上の学力があると認められた者とする」ことが原則とされており、ここでいう監督庁の定め(昭和28年文部省告示第5号)においては、「大学(短期大学を含む。)に2年以上在学し、62単位以上修得した者で…小学校、中学校、高等学校若しくは幼稚園の教諭の専修免許状又は一種免許状を有するもの」についても大学院入学資格が認められている(注)。

(注) 平成9年12月18日の本審議会報告「養護教諭の養成カリキュラムの在り方について」においては、「現在教諭についてのみ認められている、大学(短期大学を含む。)に2年以上在学し62単位以上修得した者で専修免許状又は一種免許状を有する場合の大学院等の入学資格を、養護教諭についても同様に認めるよう、所要の制度的措置を講ずる必要がある」としている。

d.修士課程の教育方法等

(a)修士課程における教育方法の原則といわゆる14条特例
 大学院の教育は、授業科目の授業及び研究指導(学位論文の作成等に対する指導)によって行うものとされている(大学院設置基準第11条)が、教育方法の特例として、大学院の課程においては、教育上特別の必要があると認められる場合には、夜間その他特定の時間又は時期において授業又は研究指導を行う等の適当な方法により教育を行うことができることとされている(同基準第14条)。
 この規定に基づき、昼夜開講の専攻が設けられたり、教員養成系の修士課程における現職教員の勤務実態に配慮した履修形態(例えば、1年次にフルタイムで在学し修了要件単位をすべて修得した後、2年次には校務に従事しつつ土曜日や長期休業期間等を活用して引き続き大学院で研究指導を受け、修士論文を作成する形態など)が工夫されている。
 なお、このいわゆる14条特例による上記のような履修形態に関し、とりわけ2年次の研究指導について、制度導入当初は困難が多いとの指摘が大学関係者からなされていたが、最近の日本教育大学協会の調査等では、大学側の努力により現職教員の任命権者や勤務先の学校との連携も徐々に進み、円滑に実施できるようになってきているとのことである。
(b) 遠隔授業の特例
 修士課程では授業を行うに際し、多様なメディアを高度に利用して、当該授業を行う教室等以外の場所で学生に履修させることができることとされている(大学院設置基準第15条による大学設置基準第25条の準用)。
 ここでいう多様なメディアとしては、具体的には、通信衛星、光ファイバー等があり、大学とは別途の場所に学修の場等を設け、同時性・双方向性を確保しながら授業が進められることとなる。

e.修士課程の修了要件

 修士課程の修了要件は、大学院に2年以上在学(優れた業績を上げた者については1年以上の在学でも可)し、そこで30単位以上を修得し、かつ、必要な研究指導を受けた上、修士論文の審査及び試験に合格することとされている(大学院設置基準第16条第1項)。
 上記の修了要件の例外として、修士課程の目的に応じ適当と認められるときは、特定の課題の研究の成果の審査をもって修士論文の審査に代えることができることとされている(同基準第16条第2項)。このいわゆる特定課題研究がいかなる性格・形態のものであるかについては、それぞれの研究科や専攻により特色があるが、例えば、教員養成系の大学院の場合、厳密な意味での修士論文の形式を採るものでなくとも、質的に十分それに相当する内容を持った授業実践記録をはじめ様々な内容・形態のレポート等がこれに該当する。

f.通信教育を行う修士課程

 平成10年3月31日の大学院設置基準の一部改正により、大学院には、通信教育を行う修士課程を置くことができることとされた(同基準第25条)。それを受け、現在、平成11年度の開設に向けて、私立の数大学が通信制の修士課程の設置申請を行っているところである。
 通信教育を行い得る専攻分野は、通信教育によって十分な教育効果が得られる分野に限定され(同基準第26条)、それに該当するか否かは、個々に具体的な教育内容等を勘案して判断されるべきものとされている。

(2)大学院修士課程の現状及び規模の推移

a.大学院修士課程の現状

 平成9年度において大学院を置く大学数は420、大学院修士課程(博士前期課程及び5年一貫制博士課程を含む。)を置く研究科数は973に上っている。
 平成9年度の修士課程への入学者数は、博士前期課程及び一貫制博士課程への入学者数を含めて57,065人、在学者数は、博士前期課程及び一貫制博士課程の1・2年次在学者数を含めて119,406人である。このほかにも、大学院には、修士課程・博士課程全体で科目等履修生が1,742人(平成8年度値)在学している。
 平成9年度の修士課程への社会人の入学者数は4,305人、社会人特別選抜を実施する大学院研究科数は478となっている。また、夜間の修士課程の専攻数は23、昼夜開講制の修士課程の専攻数は664であり、それらの在学者数は合わせて1,564人に上っている。

b.国立教員養成系大学院修士課程の現状

 特に教員養成と関係の深い国立の教員養成系の大学院は、現在すべての教員養成大学及び教員養成学部を置く大学に設置されており(全都道府県にわたり合計48研究科)、そのすべてに修士課程が置かれている。
 これらの修士課程への平成9年度の入学者数は3,221人であるが、うち、現職教員は1,009人に上り、そのうちの489人が現職教員の再教育を目的とする上越・兵庫・鳴門の3教育大学(以下「新教育大学」という。)の大学院修士課程に入学している。
 これらの国立の教員養成系の大学院に在学する現職教員は、通常、都道府県・指定都市の教育委員会から「研修」の身分で派遣されている。その履修形態については、新教育大学の大学院修士課程では2年間フルタイムで教育が施されるのが通例であり、他の大学院修士課程では1年次のフルタイム在学の後2年次には校務への復帰を前提に長期休業期間等に研究指導等が行われることが多い。
 上記のようなフルタイム在学を伴う履修形態のほか、現職教員の再教育を目的とした夜間の修士課程が、現在、東京学芸大学及び大阪教育大学の大学院に設置され、そこに在学する学生の多くは校務に従事しながら夜間等に大学院で学修する現職教員である。

c.修士課程の量的拡大と教員の学歴構成

 大学院修士課程の在学者数は増加の一途をたどり、特に最近の10年間では、昭和62年の5万4千人から平成9年の11万9千人へと2倍以上に増加している。それに博士後期課程在学者数等を加えた大学院学生の総数でみても、7万9千人から17万1千人と2倍以上になっている。
 このような国・公・私立を通じた大学院修士課程の規模の拡大傾向は今後とも続くものと予測され、大学審議会では西暦2010年(平成22年)の大学院在学者数(修士課程及び博士課程の在学者数の合計)を現状の約1.5倍に当たる25万人と推計している(大学審議会答申による。)。
 学部から大学院への進学率もかつてはおおむね4%台で推移していたが、昭和59年に5%を超えて以来一貫して上昇を続け、平成6年には9%を超えた(統計上直近の平成9年度には8.8%)。
 なお、この間に、大学(学部)・短期大学(本科)への進学率は30%台半ばから50%近くへ、うち、大学(学部)への進学率だけに限ってみても20%台半ばから30%程度へと著しく上昇している。
 このような修士課程の規模の拡大等は、高等学校以下の教員の学歴構成にも大きな影響を及ぼしており、公立学校の教員採用者についてみると、大学院(4年制大学の専攻科も含む。)修了者の割合は、昭和61年度に小学校0.7%、中学校1.6%、高等学校9.4%であったものが、平成9年度には小学校4.4%、中学校8.2%、高等学校15.3%へと大きく伸びている。
 また、国・公・私立の学校の学歴別教員構成を平成7年度の文部省「学校教員統計調査報告書」で見てみると、大学院修了の学歴を有する者の割合は、小学校1.0%、中学校2.5%、高等学校7.8%となっている。

2.専修免許状の制度及び現状

(1)専修免許状の制度

 専修免許状は、一種免許状(学士の学位が基礎資格)及び二種免許状(準学士の称号が基礎資格)とともに、昭和63年に創設された新たな免許種で、修士の学位を基礎資格とするものである。
 専修免許状を含む普通免許状は、教育職員免許法(以下「免許法」という。)第5条第1項により、免許状の種類に応じ、一定の学位を有し大学において所要の単位を修得した者又は教育職員検定に合格した者に授与することとされている。
 うち、後者の教育職員検定の合格により免許状が授与される場合は、特別免許状及び臨時免許状の授与を受ける場合、中学校又は高等学校それぞれの他教科の免許状の授与を受ける場合など制度上多様であるが、下記b.においては、本答申に直接関係する専修免許状への上進の場合についてのみ述べることとする。

a.大学の教員養成教育による専修免許状取得

(修士の学位と所要の単位修得により専修免許状を取得)
 教諭の普通免許状授与に係る基準を規定した免許法別表第1においては、専修免許状の最も基本的な授与要件として、修士の学位を有すること及び大学において「教科に関する科目」「教職に関する科目」「教科又は教職に関する科目」等の区分に応じ所要の単位を修得していることの2つが規定されている。
 うち、修士の学位を有することには、大学院の課程(修士課程又は博士課程。以下同じ。)又は4年制大学の専攻科に1年以上在学し、30単位以上修得した場合を含むこととされている(同表備考第2号)。
 また、免許状の授与要件となる単位については、文部大臣により教職課程の認定を受けた課程で修得するものとされ(同表備考第5号イ)、教諭の専修免許状に係る「教科又は教職に関する科目」のうち、一種免許状に係る「教科又は教職に関する科目」との差引き分については、課程認定を受けた大学院の課程又は4年制大学の専攻科の課程において修得するものとされている(同表備考第7号)。
 養護教諭の専修免許状の授与要件についても、おおむね上記の教諭の場合と同様の構造・内容の基準が、免許法別表第2に規定されている。

b.免許法認定講習等による専修免許状への上進

(教職経験年数と所要の単位修得を基礎要件に専修免許状を取得)

(a) 大学における単位修得による上進

 現職教員が所持する一種免許状を専修免許状へ上進する場合については、一種免許状取得後3年間の教職経験年数及び大学における15単位の修得が基礎要件として定められ(免許法別表第3)、それを満たす者に対し授与権者である都道府県教育委員会が教育職員検定を課した上で、その合格者に専修免許状を授与することとされている。
 その際の単位修得については、教職経験のない現役学生等が専修免許状を取得する場合(上記a.の方法による)と異なり、教職課程の認定を有していない大学院の課程又は4年制大学の専攻科の課程(フルタイムでの在学のほか科目等履修生による在学などによることも可)においても専修免許状取得のための単位修得が可能とされている(同表第4欄)。
 専修免許状の課程認定を受けている大学院は全大学院の7割以上にも上るが、現職教員が上進により専修免許状を取得する場合は、上記のように課程認定の有無にかかわらずいずれの大学院においても単位修得が可能とされており、更に便宜が図られている(一種免許状又は二種免許状への上進の場合も同様。)。このことにより、例えば、小学校における教職経験3年を超える現職教員が、中学校又は高等学校の課程認定しか有しない修士課程において教科又は教職に関する科目の単位修得をすることにより、当該現職教員の小学校教諭の一種免許状を専修免許状に上進することなども可能となる。
 なお、現職養護教諭の専修免許状への上進要件についても、免許法別表第6におおむね上記の教諭の場合と同様の規定がある(下記(b)及び(c)についても同じ。)。

(b) 免許法認定講習等による上進

 上進により教諭の専修免許状を取得する場合の単位については、上記(a)の大学院の課程又は4年制大学の専攻科の課程で修得するもののほか、免許法認定講習、同公開講座、同通信教育又は同単位修得試験によっても修得することが可能とされている(免許法別表第3備考第4号)。
 免許法認定講習は、文部大臣の認定に係る免許状の上進のための講習であり、大学のほか、都道府県・指定都市教育委員会も、大学の指導の下に運営することを条件に、同講習を開設することができることとされている。また、免許法認定公開講座も同様に文部大臣の認定に係るものであるが、開設主体は大学に限られる。
 平成9年度におけるこれらの開設等の実績は、免許法認定講習が942科目開設・48,488人受講(うち専修免許状への上進に係るものは14科目・268人)、免許法認定公開講座が71科目開設・2,991人受講(同9科目・661人)となっており、一種免許状への上進に係るものがその大半を占めている。
 都道府県・指定都市教育委員会が主催する免許法認定講習については、その講師の半数以上が大学の教員でなければならないこととされ(免許法施行規則第37条第2項)、質の確保のための配慮がなされている。しかしながら、二種免許状から一種免許状に上進するための免許法認定講習については、実態として、大学の授業と比べて単位認定の基準が緩やかであり、質の確保が必ずしも十分にできていないのではないかとの指摘が特に大学関係者からある。
 免許法認定通信教育は文部大臣が認定する上進のための単位修得に係る通信教育であり、同単位修得試験は文部大臣が大学に委嘱して行う上進のための単位修得に係る試験であるが、現在は実施実績がない。

(c)教職経験年数による要修得単位数の逓減

 教諭の専修免許状への上進要件15単位については、3年間という教職経験に係る最低必要年数を経過して後、1年につき3単位ずつ免許状取得に必要な単位数が逓減し、最終的に教職経験6年経過により下限の6単位まで減じられる制度となっている(免許法別表第3備考第6号)。
 この上進単位の逓減制度については、教員免許状の質の確保の観点から、制度そのものを存置することの妥当性はじめ、年間逓減単位数、逓減後の最低要修得単位数等の在り方をめぐって様々な指摘がなされているところである。

(2)専修免許状の授与実績等

a.新規学卒者の専修免許状取得状況

 専修免許状の取得者は、平成元年度に初めて専修免許状が取得できるようになってから一貫して増加し、平成9年3月の新規学卒者の場合、普通免許状全体の延べ取得件数(複数免許状取得者が存在)216,119件に対し、専修免許状の延べ取得件数は11,643件と、約5.4%を占めるに至っている。
 また、学校種ごとの普通免許状の延べ取得件数に占める専修免許状の割合は、小学校4.9%、中学校5.8%、高等学校7.9%等となっている。

b.現職教員等も含めた専修免許状の授与状況

 視点を変えて、専修免許状がどの程度授与されているかを、都道府県教育委員会による年間の授与件数調査(新規学卒者のほか、過年度卒業者、現職教員等への授与実績も含めたもの)により見てみると、平成8年度中の専修免許状の授与件数合計14,407件に対し、大学院等における専修免許状取得に本来必要な単位数(24単位)の修得により授与されたもの(現職教員が「研修」の身分で修士課程に在学し、修士の学位とともに専修免許状の授与を受ける場合も、通常これに含まれる。)が13,506件(93.7%)、現職教員が大学院等における科目等履修や都道府県・指定都市が主催する免許法認定講習等を受講して授与されたものが899件(6.2%)等となっている。
 ただし、後者の899件の中には、専修免許状制度創設時の経過措置により高等学校の専修免許状の授与を受けた場合(高等学校の旧一級免許状から現行専修免許状への切替えに係るもので、その対象者は平成5年度末までに高等学校において旧二級免許状による15年の教職経験を有する者に限定される。)の授与件数660件が含まれており、これを差し引くと、科目等履修や免許法認定講習等での一定の単位修得による本来の上進(免許法別表第3の基準に基づく上進)をした者は239人という結果になる。

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教育助成局教職員課

-- 登録:平成21年以前 --