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修士課程を積極的に活用した教員養成の在り方について (教育職員養成審議会大学院等特別委員会中間報告)

平成10年6月23日
大学院等特別委員会

1 はじめに

2 基本的考え方

3 具体的施策
 1.修士課程の改善に関する措置
 2.上進制度の改善等
 3.国、都道府県等による措置

4 更に検討を要する事項

5 おわりに

1 はじめに

 本中間報告は、教育職員養成審議会大学院等特別委員会における審議経過を中間的に取りまとめ、本審議会総会にその概要を報告するものである。
 平成8年7月29日の文部大臣から本審議会への諮問「新たな時代に向けた教員養成の改善方策について」のうち、「修士課程を積極的に活用した養成の在り方」、「養成と採用・研修の連携の円滑化」及び「教員養成に携わる大学教員の指導力の向上」並びにそれらに関連する事項を専門的な立場から調査審議するため、平成9年9月26日の本審議会総会において、本特別委員会の設置が決定された。
 その後、本特別委員会は、同年10月22日の第1回会合以来今日まで合計14回の会合を開催し、「修士課程を積極的に活用した養成の在り方」を中心に精力的に検討を重ねてきた。このことについては、諮問に際しての文部省からの説明においても複数の視点が示され、多くの検討課題が含まれていることから、本特別委員会としても幅広く議論を行ってきたが、これまでに、教員養成教育の一環として可能な限り多くの現職教員に修士レベルの教育を受ける機会を開く必要があり、そのために所要の措置を講ずる必要があるという点において、委員の間で基本的なコンセンサスが得られたところである。
 現行の教員養成制度は学部卒の一種免許状を標準として構築されており、それにより「実践的指導力の基礎」を担保するという基本的考え方は今後とも維持されるものと考えるが、校内暴力、いじめ、登校拒否等学校をめぐる様々な課題や国際化・情報化等の社会の変化にかんがみれば、現職教員には教員としての生涯を通じ一層の資質能力の向上が求められているものと考える。そのため、従来から現職教員を対象とする様々な内容・方法の研修が実施されているが、より体系的・効果的に専門的な資質能力を形成するためには、教員養成大学・一般大学の大学院の修士課程を積極的に活用し、現職教員が自らの教育実践を適切に理論化することや最新の研究成果に基づく理論を教育実践の中に効果的に生かすことなどが可能となるよう、高度かつ充実した内容の再教育を現職教員に施すことが必要であると考える。
 本中間報告は、上記のような方向の下に、その実現のための具体的方策を示したものであるが、総会への報告の後には本中間報告の内容を広く世に問い、本特別委員会として関係団体等からの意見を聴取した上で更に検討を重ね、本年秋を目途に最終的な報告を取りまとめることとしたい。

2 基本的考え方

 教員に求められる資質能力は、社会の変化や学校教育をめぐる状況などを反映し、今後とも高度化・多様化することが見込まれる。
 平成9年7月28日の本審議会第1次答申では、今後教員に求められる資質能力とそれを確保するための具体的方策が明らかにされ、これを受けて現在教員免許制度の整備等が行われているところである。この新基準による教員養成教育が本格的に実施されるようになれば、現行基準下では十分でない内容を、教員志願者に適切に修得させることが可能となり、充実した教員養成が行われるようになる。
 しかし、上記のように更に将来を見通した場合、開放制の教員養成制度を維持しながら、各教員が得意分野と個性を持ち、互いに連携協力しつつ様々な課題に柔軟に対応できるよう、学部卒レベルの教職・教科等に関する知識・技能を既に有していることを前提に、より高度の資質能力を修得する機会を現職教員に提供することが必要と考える。
  現職教員が大学院で学ぶ機会としては、現在、任命権者による職務命令により、長期派遣研修の扱いで2年間又は1年間、現職教員の再教育を主な目的とする3つの教育大学はじめ国立の教員養成大学・学部の修士課程に在学する形態が主であるが、その対象となる者は量的にかなり限定されているのが実情である。今後はこのような形態のほか、可能な限り多くの現職教員を対象に、広く国・公・私立の教員養成大学・一般大学の修士課程に一定期間在学し、自らの能力・適性、興味・関心等に応じて教職・教科等の各専門分野についてより高度の知識・技能を修得する機会を整備することが重要である。
 近年の大学院の動向を見ると、とりわけ修士課程については今後とも量的拡大が見込まれるとともに、夜間課程や通信制課程の開設、遠隔教育等による授業方法の工夫など現職教員はじめ社会人を受け入れる環境が急速に整いつつあり、関係者の協力が得られれば、質的・量的に充実した現職教育の機会が確保できるものと考える。また、一定期間学校を離れて修士課程に在学し、最新の学問の成果に触れることは、現職教員がリフレッシュし、その視野を広げる上で極めて貴重な機会であると考える。
 このため、現職教員がフルタイム又はパートタイムで修士課程に在学して修士の学位又は専修免許状を取得する学修の形態を広く想定し、可能な限り多くの現職教員に修士レベルの教育機会を提供すべく所要の条件整備を行うとともに、修士レベルの教育を受け、専修免許状を取得した教員に対しては、給与はじめ所要の処遇改善を図る必要がある。

3 具体的施策

1.修士課程の改善に関する措置

 各大学において修士課程を積極的に活用した教員養成を推進する観点から、下記に掲げるような現職教員の積極的受入等のための措置を講ずる必要がある。
 なお、これら諸措置のほか、今後、修士レベルの教育を受けた現職教員等が増加することを機会に、教職経験を有する者を、大学の教職課程を担当する常勤・非常勤の教員として積極的に採用し、その実践的指導力を教員養成教育に活用することが望まれる。

(1)修士課程の修業年限の弾力化

 修士課程の修業年限の扱いについては、現在大学審議会において検討中であり、同審議会の検討結果を待って対応すべき事柄であるが、修士課程を積極的に活用した教員養成の機会を充実する観点からは、教育内容の充実を図りつつ、基本的に、現職教員対象の1年制のコースの開設が可能となることが望ましい。

(2)校務に従事しながら修士レベルの教育を受ける機会の整備

 現職教員が、日々校務に従事しつつ、夜間、週末、長期休業期間等を活用して、教員養成大学・一般大学の修士課程に通学し授業を受ける機会を積極的に拡充する必要がある。
 このため、関係者の協力を得つつ、都道府県・市町村の教育センター、他大学等の施設を活用したり、衛星通信等を活用した遠隔教育を併用するなどして、修士課程に通学が困難な地域に居住する現職教員についても、可能な限り修士レベルの教育を受ける機会が得られるよう工夫する必要がある。
 また、大学院設置基準に係るいわゆる「14条特例」による2年次目の研究指導を1年を超えて受けることや、その際に修士論文を課題研究で代替すること(同基準第16条第2項)を認めるなど、現職教員を受け入れる修士課程においては、高度専門職業人養成の視点に留意し、現職教員が在学し易い環境づくりに配慮する必要がある。
 なお、通信制の修士課程が本年3月に制度化されたことから、今後同制度の定着状況等を踏まえつつ、教員養成への活用方策についても適宜検討する必要がある。

(3)修士課程における教育研究の充実

 教員養成において修士課程を更に積極的に活用していくためには、修士課程における教育研究の内容が現職教員のニーズに相応しく、教員としての職務遂行に有意義なものであることが必要である。
 教員養成大学・一般大学の修士課程は、それぞれ教育研究上の特色を有しているが、いずれの場合においても、単に専門的な学問研究の成果についての知識の伝達に終わることなく、これら知識を手掛かりに教職・教科等の本質と魅力を理解し、それを教科指導、生徒指導等における創造的な活動に生かす能力を涵養することが求められる。
 各大学においては、このような観点から、修士課程における現職教育について適切な配慮をすることが必要である。

(4)カリキュラム開発研究の推進等

 専修免許状に係る教職課程において、教員養成の充実の観点から、教職・教科等の各分野の専門教育の改善等を図るためのカリキュラム開発研究等を推進することとするとともに、都道府県教育委員会等の協力を得て、学校教育に係る共同調査・共同研究の実施や、教員養成の充実のための諸事業の共同実施などを積極的に推進する必要がある。

(5)大学と都道府県教育委員会等との連携協力

 現職教員の修士課程への受入に当たっては、大学は、任命権者である都道府県教育委員会等との連携協力を十分密にし、その要請等を踏まえつつ、当該修士課程における教育が充実したものとなるよう努力する必要がある。

2.上進制度の改善等

 修士レベルの教育機会として、フルタイムで現職教員が修士課程に在学し修士の学位及び専修免許状を取得するケースについては、派遣側(都道府県教育委員会等)・受入側(大学)の双方の諸事情から見て、人数に限界があることから、現行の上進制度を活用し、現職教員が修士レベルの教育を受けて専修免許状を取得することを促進する必要がある。このため、下記の点を改善することとする。

(1)上進制度の改善

 上記1.に掲げた諸措置により、これまで以上に多様な形態での修士課程への在学が可能となることを踏まえ、教員在職6年で6単位まで逓減する、一種免許状から専修免許状への現行の上進制度については、修士の学位とともに専修免許状を取得する場合との均衡を考慮し、その在り方を検討することとする。

(2)専修免許状に係る認定講習の見直し

 上進単位の授与に係る認定講習についても、その授業内容及び単位認定に関し課題が指摘されているので、専修免許状への上進に係るものについては、開設者等を含めその在り方を抜本的に見直す必要がある。

3.国、都道府県等による措置

 国、都道府県等は、現職教員が修士課程に在学し易い環境づくり等の観点から、下記のような支援措置を講ずる必要がある。

(1)修士課程へのフルタイム在学を容易にするための措置

 修士課程へのフルタイム在学による長期派遣研修については、現状においても年間1千人以上の現職教員がその対象となっており、充実が図られているところであるが、上記のように可能な限り多くの現職教員を対象に修士課程での現職教育の機会を付与することを考えた場合、研修等定数の充実に加え、新たな措置が求められる。
 このため、現職教員の意欲と自発性を尊重しつつ修士課程への在学を促進する観点から、現職教員が修士課程にフルタイムで在学する場合についての新たな休業制度の創設など適切な措置を検討する必要がある。
 また、上記1.(2)に掲げたように、修士課程に1年間フルタイムで派遣され、残りの1年を小学校、中学校等で校務に従事しつつ修士課程に在学する場合において、任命権者や校長は、当該教員の負担軽減の観点から配慮をする必要がある。

(2)修士課程への長期在学を念頭に置いた条件整備

 現状のように昼間の修士課程に現職教員がフルタイムで在学する場合のほか、今後は、夜間、週末、長期休業期間等や通信制の活用により現職教員が長期にわたり在学する等のケースが多数となることを念頭において、例えば現職教員が勤務する小学校、中学校等における授業時数の軽減のための非常勤講師の措置など、所要の条件整備を進める必要がある。

(3)若手教員を対象とする計画的・重点的な措置

 可能な限り多くの現職教員が多様な形態により修士レベルの教育を受けることが望まれるが、中・長期的視点に立った場合、今後、特に中堅以下の若手教員を対象として計画的・重点的な措置を講ずることを検討する必要がある。

(4)修士レベルの教育を受けた者を対象とした処遇改善

 現職教員のうち、修士レベルの教育を受け、専修免許状を取得した者については、給与上の措置など適切な処遇改善を検討する必要がある。

(5)教員養成教育の改善を図るための条件整備

 修士課程を積極的に活用した現職教育を推進することに伴い、大学における修士レベルの教員養成教育の改善を図る観点から、大学について、所要の条件整備を検討する必要がある。

4 更に検討を要する事項

 本特別委員会においては、上記3に掲げたもののほか、例えば、下記のような意見が出されており、これらは今後最終報告に向けての検討課題となる。

1)修士課程での現職教育に係る中・長期的目標値の設定

2)専修免許状に係る課程認定基準(教職に関する科目の必修化等)の在り方

3)学校種や教科など専修免許状により教授等が可能な範囲(学校経営、生徒指導など教科以外の領域を含む。)についての考え方

4)教員養成教育を受けていない者を対象とした専修免許状取得のための修士レベルの教員養成教育の在り方

5 おわりに

 以上大学院等特別委員会のこれまでの審議経過を踏まえつつ、修士課程を積極的に活用した教員養成のための諸方策を掲げた。
 今回本中間報告において提言した修士課程を積極的に活用した現職教育の方向性は、これまでごく限られた教員を対象に長期の現職研修として実施されてきた「大学院派遣」による現職教育の在り方とは、質的にも量的にもまったく趣を異にするものである。
 本報告で提言した諸措置により、多くの現職教員が修士課程に在学するようになることとなるが、各大学においても、修士課程における教育内容・方法等が現場での実践とニーズを踏まえた専門職業人の養成に相応しいものとなり、真に現職教員の資質・能力の高度化が図られるよう工夫を図り、その結果修士課程に在学する現役学生にも望ましい効果がもたらされることを期待したい。
 さらに、初任者研修、5年目・10年目等の教職経験者研修や管理職等の職能に応じた研修など現職教員を対象とした研修についてもその体系的な整備の在り方などに関し当然に影響が生じることから、養成と研修との連携について、引き続き検討が必要となる。
 最後に、関係各位には、本中間報告に対し、忌憚のない建設的な意見を寄せられるようお願いしたい。

お問合せ先

教育助成局教職員課

-- 登録:平成21年以前 --