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新たな時代に向けた教員養成の改善方策について (教育職員養成審議会・第1次答申)

平成9年7月
教育職員養成審議会

目次

はじめに

1 教員に求められる資質能力と教職課程の役割
1.教員に求められる資質能力
(1)いつの時代も教員に求められる資質能力
(2)今後特に教員に求められる具体的資質能力
(3)得意分野を持つ個性豊かな教員の必要性

2.大学の教職課程の役割
(1) 教員の資質能力の形成過程
(2) 養成段階で修得すべき最小限必要な資質能力
(3) 養成と初任者研修との関係

2 教員養成カリキュラムの改善
1.教員養成カリキュラムの基本構造の転換
(1) 構造転換の必要性
(2) 構造転換の基本的方向:選択履修方式の導入
(3) 構造転換により期待される効果

2.教職課程の教育内容の改善
(1) 教育内容に係る問題点
(2) 教育内容を改善するための基本的視点
(3) 具体的改善方策

3 カリキュラム以外の免許制度の弾力化
1.社会人の活用促進
(1) 特別非常勤講師制度の改善
(2) 特別免許状制度の改善
2.盲・聾・養護学校に係る免許制度の弾力化
3.その他の弾力化措置

むすび

[別添]
 現行基準と新基準との比較

[附属資料]
 1.平成8年7月29日付け諮問
 2.文部大臣諮問理由説明
 3.教育助成局長補足説明
 4.審議経過
 5.委員名簿

はじめに

 21世紀を目前にひかえ、今日の社会はかつて予想できなかったほど大きな変化に直面している。教育の分野でも、子どもたちの発達過程において様々な問題が生じ、学校教育にも課題が山積している。
 こうした状況に対し、昭和60年代初頭には臨時教育審議会が生涯学習体系への移行等を提言し、その後各般にわたる教育改革施策が推進されている。昨年7月には第15期中央教育審議会が「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」第1次答申を行い、国際化・情報化の進展、科学技術の発達、少子・高齢化の進行や環境問題の深刻化などの中で、[生きる力]の育成を基本とした方向に我が国の学校教育を転換すべきことを提言したところである。
 学校教育の成否は、幼児・児童・生徒の教育に直接携わる教員の資質能力に負うところが極めて大きく、これからの時代に求められる学校教育を実現するためには、教員の資質能力の向上がその重要な前提となる。また、今日学校ではいじめや登校拒否など深刻な問題が生じており、教科指導の面でも、生徒指導や学級経営の面でも、教員には新たな資質能力が求められている。
 このような中で、平成8年7月29日、本審議会は、文部大臣から諮問「新たな時代に向けた教員養成の改善方策について」(以下「諮問」という。)を受けた。
 諮問には、1)教員養成課程のカリキュラムの改善について、2)修士課程を積極的に活用した養成の在り方について、3)その他関連する事項の3つが検討事項として掲げられた。本審議会では、これらのうち特に早期に結論が求められた、1)の全体及び3)のうち特別非常勤講師制度の改善についてまず検討を加え、その結果を本答申として取りまとめたものである。それら以外のものについては、今後引き続き審議することとしている。
 本答申を取りまとめる過程では、関係団体からの2次にわたるヒアリング、教員養成の実施状況に関する大学対象の調査、最近の新規採用教員の資質能力や大学の教員養成に対する評価等に関する都道府県・政令指定都市教育委員会対象の調査等を実施しつつ、総会で17回の審議を行ったほか、カリキュラム等特別委員会でも17回の審議を行った。本審議会は、これらを通じて、今日の学校教育の実情を認識するとともに、教員の資質能力の向上が極めて広範な層から強く要請されており、大学における教員養成の早急な改善を求める厳しい意見が世に多数存在することを痛感した。
 「教員に求められる資質能力とは何か」という課題は本審議会発足以来の一貫したテーマであり、その「資質能力」の中には、いつの時代も変わらないものもあるし、そのときどきの社会の状況により特に重視されるものもある。今日においても、教員に求められる一般的資質能力、すなわちいつの時代も変わらず求められる資質能力の重要性は、当然のこととして強調されなければならない。しかし、上記のような社会的要請を踏まえれば、学校が現在直面している課題に適切に対処しこれからの時代に求められる学校教育の実現を図る観点から、教員の資質能力の向上を図ることが特に必要であると考える。
 今回の検討事項のうち、大学における教員養成カリキュラムの改善に関連しては、昭和63年に専修免許状制度の創設や「教職に関する科目」に係る免許基準の引上げを内容とする改正がなされた経緯がある。しかし、その後、平成3年の大学設置基準の大綱化により大学の授業科目区分が弾力化され、カリキュラム編成に際しての大学の自主性が大幅に拡大されており、教員免許制度についてもこうした方向での見直しが求められている。そしてそれ以上に、学校教育を巡る動きは極めて急であり、とりわけいじめや登校拒否などの深刻な問題を契機として、教員の指導力が国民から強く問われている状況にある。さらに、先にも触れた中央教育審議会の答申に基づき、子どもたちに[生きる力]をはぐくむことのできる教員の養成を急がなければならない。
 こうしたことから、本審議会としては、新たに求められる資質能力を持った教員の養成について、手をこまねいていることは許されないと判断し、大学の養成段階においても可能な限りの対応を行う方向で、教員養成カリキュラムの見直しを行った。
 本答申では、その主要部分である今後の教員養成カリキュラムの在り方については、以上のような考え方に基づき、選択履修方式の導入を柱とする構造転換を図るとともに、様々な社会的要請を踏まえた教育内容の改善方策を提言したものである。また、特別非常勤講師制度をはじめとするカリキュラム以外の教員免許制度の弾力化についても、近年の行政分野における規制緩和の流れ等を踏まえつつ、必要な提言を行うこととした。
 本審議会としては、この答申に掲げた諸提言が早急に実現に移され、我が国教員の資質能力の更なる向上が図られることを願ってやまない。特に国民の強い期待をふまえれば、本答申における提言のうち、制度改正を要する事柄以外のもので行政や各大学において主体的に取り組むことが可能なものについては、ただちに運用の改善等に着手し、社会的要請に積極的に応えていく必要があると考える。
 ところで、昨年7月に諮問を受けて以来1年間にわたって本審議会が審議を行う間にも、教員養成を巡る状況にはいくつかの重要な変化が生じている。
 まず、財政構造改革が国を挙げての喫緊の政策課題と位置付けられる中で、現在進行中の教職員配置改善計画について2年間の繰延べが閣議決定された。このような状況の下、児童・生徒数や現職教員の年齢構成の影響により、近年減少を続け昨年度は1万6千人余りの水準にまで落ち込んでいる公立の小・中・高等学校・特殊教育諸学校の教員採用は、今後更に減少することが予想される。
 それとともに、国立教員養成系大学・学部の教員養成課程の入学定員を今後3年間のうちに現在の約1万5千人から5千人程度削減する計画が発表され、小学校教員の養成に期待される教員養成系大学・学部の役割にかんがみ、中学校等の教員養成課程を中心に入学定員の削減が行われる予定である。これが実施されると、国立大学の教員養成課程の規模は、15年足らずの間に半減することとなる。
 また、議員提案に係る「小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教育職員免許法の特例等に関する法律」(以下「介護等体験特例法」という。)が、去る6月に衆参両院においてともに全会一致で可決・成立し、平成10年度から施行される予定である。
 さらに、同じく6月の中央教育審議会第2次答申では、[生きる力]をはぐくむ上で、一人一人の能力・適性に応じた教育を重視すべきとの考えに立って、中高一貫教育の導入等の提言がなされるとともに、高齢社会に対応する教育の在り方が示された。
 教員養成には、このほかにも教育課程審議会における審議をはじめ教育改革を巡る様々な動きが関連するものと思われ、それらを適切に踏まえ、今後とも、社会的要請に応えつつ、質の高い教員を養成することが関係者に求められる。それは決して容易なことでないが、このようなときこそ、教職課程を有する各大学の改革に向けての熱意と創意工夫が問われることとなる。
 もとより、教員の資質能力の向上は、教員としての日頃の着実な教育実践を前提に、養成・採用・研修の各段階を通じて図られるべきものであり、養成段階の充実のほか、既に文部省から昨年4月に調査研究結果が公表されている採用段階の在り方の改善や、現在文部省により全国的な実施状況調査が進められている初任者研修や自治体により体系的整備が図られている各種現職研修など研修段階の各種施策の見直し・充実が、併せて積極的に進められるべきことはいうまでもない。今回の諮問における検討課題の一つに「養成と採用・研修との連携の円滑化」も挙げられており、今後本審議会として採用や研修の問題についても積極的に論議を深め、教員の資質能力の向上の在り方を世に明らかにしていく考えである。

1 教員に求められる資質能力と教職課程の役割

1.教員に求められる資質能力

 諮問における検討事項に対する本審議会の見解を明らかにするに先立ち、その前提となる「教員に求められる資質能力」について検討してみることとしたい。

(1)いつの時代も教員に求められる資質能力

 昭和62年12月18日付けの本審議会答申「教員の資質能力の向上方策等について」(以下「昭和62年答申」という。)の記述(注)等をもとに考えてみると、教員の資質能力とは、一般に、「専門的職業である『教職』に対する愛着、誇り、一体感に支えられた知識、技能等の総体」といった意味内容を有するもので、「素質」とは区別され後天的に形成可能なものと解される。
 昭和62年答申に掲げられた資質能力は教員である以上いつの時代にあっても一般的に求められるものであると考えるが、このような一般的資質能力を前提としつつ、今日の社会の状況や学校・教員を巡る諸問題を踏まえたとき、今後特に教員に求められる資質能力は、具体的にどのようなものであろうか。

(注)「学校教育の直接の担い手である教員の活動は、人間の心身の発達にかかわるものであり、幼児・児童・生徒の人格形成に大きな影響を及ぼすものである。このような専門職としての教員の職責にかんがみ、教員については、教育者としての使命感、人間の成長・発達についての深い理解、幼児・児童・生徒に対する教育的愛情、教科等に関する専門的知識、広く豊かな教養、そしてこれらを基盤とした実践的指導力が必要である」(昭和62年答申「はじめに」)など。

(2)今後特に教員に求められる具体的資質能力

 これからの教員には、変化の激しい時代にあって、子どもたちに[生きる力]を育む教育を授けることが期待される。そのような観点から、今後特に教員に求められる資質能力の具体例を、上記(1)に掲げた一般的資質能力との重複や事項間の若干の重複をいとわず図式的に整理してみると、概ね以下の[参考図]のようになると考える。
 すなわち、未来に生きる子どもたちを育てる教員には、まず、地球や人類の在り方を自ら考えるとともに、培った幅広い視野を教育活動に積極的に生かすことが求められる。さらに、教員という職業自体が社会的に特に高い人格・識見を求められる性質のものであることから、教員は変化の時代を生きる社会人に必要な資質能力をも十分に兼ね備えていなければならず、これらを前提に、当然のこととして、教職に直接関わる多様な資質能力を有することが必要と考える。
 [参考図]今後特に教員に求められる具体的資質能力の例

地球的視野に立って行動するための資質能力


├地球、国家、人間等に関する適切な理解
│  例:地球観、国家観、人間観、個人と地球や国家の関係についての適切な理解、社会・集団における規範意識
├豊かな人間性
│  例:人間尊重・人権尊重の精神、男女平等の精神、思いやりの心、ボランティア精神
└国際社会で必要とされる基本的資質能力
   例:考え方や立場の相違を受容し多様な価値観を尊重する態度、国際社会に貢献する態度、自国や地域の歴史・文化を理解し尊重する態度

変化の時代を生きる社会人に求められる資質能力


├課題解決能力等に関わるもの
│  例:個性、感性、創造力、応用力、論理的思考力、課題解決能力、継続的な自己教育力
├人間関係に関わるもの
│  例:社会性、対人関係能力、コミュニケーション能力、ネットワーキング能力
└社会の変化に適応するための知識及び技能
   例:自己表現能力(外国語のコミュニケーション能力を含む。)、メディア・リテラシー、基礎的なコンピュータ活用能力

教員の職務から必然的に求められる資質能力


├幼児・児童・生徒や教育の在り方に関する適切な理解
│  例:幼児・児童・生徒観、教育観(国家における教育の役割についての理解を含む。)
├教職に対する愛着、誇り、一体感
│  例:教職に対する情熱・使命感、子どもに対する責任感や興味・関心
└教科指導、生徒指導等のための知識、技能及び態度
   例:教職の意義や教員の役割に関する正確な知識、子どもの個性や課題解決能力を生かす能力、子どもを思いやり感情移入できること、カウンセリング・マインド、困難な事態をうまく処理できる能力、地域・家庭との円滑な関係を構築できる能力

 教員に求められる資質能力は、語る人によってその内容や強調される点が区々であり、それらすべてを網羅的に掲げることは不可能であるが、今日の社会の状況や学校・教員を巡る諸課題を念頭に置くと、主として上記のようなものを例示的に挙げ得るものと考える。

(3)得意分野を持つ個性豊かな教員の必要性

 このように教員には多様な資質能力が求められ、教員一人一人がこれらについて最小限必要な知識、技能等を備えることが不可欠である。しかしながら、すべての教員が一律にこれら多様な資質能力を高度に身に付けることを期待しても、それは現実的ではない。
 むしろ学校では、多様な資質能力を持つ個性豊かな人材によって構成される教員集団が連携・協働することにより、学校という組織全体として充実した教育活動を展開すべきものと考える。また、いじめや登校拒否の問題をはじめとする現在の学校を取り巻く問題の複雑さ・困難さの中では、学校と家庭や地域社会との協力、教員とそれ以外の専門家(学校医、スクール・カウンセラー等)との連携・協働が一層重要なものとなることから、専門家による日常的な指導・助言・援助の体制整備  や学校と専門機関との連携の確保などを今後更に積極的に進める必要がある。
 さらに、教員一人一人の資質能力は決して固定的なものでなく、変化し、成長が可能なものであり、それぞれの職能、専門分野、能力・適性、興味・関心等に応じ、生涯にわたりその向上が図られる必要がある。教員としての力量の向上は、日々の教育実践や教員自身の研鑽により図られるのが基本であるが、任命権者等が行う研修もまた極めて重要である。現職研修の体系や機会は着実に整備されつつあるが、今後一層の充実が期待される。
 このようなことを踏まえれば、今後における教員の資質能力の在り方を考えるに当たっては、画一的な教員像を求めることは避け、生涯にわたり資質能力の向上を図るという前提に立って、全教員に共通に求められる基礎的・基本的な資質能力を確保するとともに、さらに積極的に各人の得意分野づくりや個性の伸長を図ることが大切である。結局は、このことが学校に活力をもたらし、学校の教育力を高めることに資するものと考える。

2.大学の教職課程の役割

(1)教員の資質能力の形成過程

 昭和62年答申で指摘されているように、「…教員としての資質能力は、養成・採用・現職研修の各段階を通じて形成されていくものであり、その向上を図るための方策は、それぞれの段階を通じて総合的に講じられる必要」があり、「教員の職責にふさわしい資質能力は、教員養成のみならず教職生活を通じて次第に形成されていくもの」である。
 このように、教員の資質能力は、養成段階を含め教員の生涯にわたり絶えずその向上が図られるべきものであるが、以下の説明では、特に大学を中心とした教員養成の果たすべき役割を明らかにする観点から、養成・採用・現職研修の各段階の役割分担のイメージを整理してみた。 なお、教員養成は指定教員養成機関等でも行われているが、以下においては、説明の便宜上主として大学を念頭に置いて記述した。

[参考図]教員の資質能力の形成に係る役割分担のイメージ

養成段階  専攻する学問分野に係る教科内容の履修とともに、教員免許制度上履修が必要とされている授業科目の単位修得等を通じて、教科指導、生徒指導等に関する「最小限必要な資質能力」(採用当初から学級や教科を担任しつつ、教科指導、生徒指導等の職務を著しい支障が生じることなく実践できる資質能力)を身に付けさせる過程。

↑↓

採用段階  開放制による多様な教員免許状取得者の存在を前提に、教員としてより優れた資質能力を有する者を任命権者が選考する過程。

↑↓

現職研修段階  任命権者等が、職務上又は本人の希望に基づいて、経験年数、職能、担当教科、校務分掌等を踏まえた研修を施し、教員としての専門的資質能力を向上させる過程。うち、初任者研修は、初任者に採用当初から学級や教科を担任させつつ、上記の養成段階で修得した「最小限必要な資質能力」を、円滑に職務を遂行し得るレベルまで高めることを目的とするもの。現職研修段階には、このようないわば狭義の研修のほか、教員グループによる自主研修や教員自身の研鑽、さらには日々の教育実践を通じて資質能力の形成が図られる過程も含まれる。また、研修の内容としては、教員としての職務に直接的に関わるものはもとより、視野を広げることを目的とした社会体験研修なども含まれる。

 養成と現職研修の分担関係について、上図では養成段階で修得すべき水準を「教科指導、生徒指導等に関する『最小限必要な資質能力』」すなわち「採用当初から教科指導、生徒指導等の職務を著しい支障が生じることなく実践できる資質能力」ととらえる一方、初任者研修を「採用当初から学級や教科を担任させつつ、…養成段階で修得した『最小限必要な資質能力』を、円滑に職務を実施し得るレベルまで高めることを目的とするもの」としている。 養成段階で修得することが求められる知識、技能等の水準をどのように考えるかについては、初任者が実際に教科指導、生徒指導等に当たる場面を想定してみると理解しやすい。 そもそも学校教育は幼児・児童・生徒の人格形成に大きな影響を及ぼすものであり、学校を通じ一定水準以上の教育を全国的に提供することは、国民の憲法上の権利にも関わる極めて重要な教育行政上の課題である。これを制度的に担保するため学校教育に関し教育内容の大綱的基準が法令で明確に規定され、その基準に基づいて教育を施すことが必要とされている。実際、教員の資質能力が不十分なために、児童・生徒の学力が低下したり、いじめ・登校拒否など生徒指導上の問題への対処が十分でなかったりすることは、学校と家庭・地域との信頼関係をも揺るがす重大な問題につながりかねない。 このようなことと、初任者であっても採用直後から学級担任や教科担任の重責を担わなければならないことを考え合わせると、大学の責任において、教員を志願する者に一定水準以上の知識、技能等を修得させる必要があることは明らかである。新任教員の採用に当たって、こうした最小限必要な資質能力を備えた教員を確保するよう努めることは、採用に当たる都道府県教育委員会等の責務にほかならないが、その前提として、大学は、必要な資質能力を備えた者の養成を怠るようなことがあってはならない。 なお、養成段階と初任者研修をはじめとする現職研修段階との分担については、以上のように整理できるわけであるが、実際にこれら一連の過程を通じ教員の資質能力を円滑に向上させるためには、大学と都道府県教育委員会等とが、日常的に情報交換や人的交流を行いつつ、養成又は研修に係るカリキュラム内容を相互に十分理解し、一人一人の教員に対し生涯にわたり適時適切な学習機会を確保するよう努めることが不可欠と考える。

(2)養成段階で修得すべき最小限必要な資質能力

 上記1の冒頭部分にも掲げたように、教員の「資質能力」の意味内容を「専門的職業である『教職』に対する愛着、誇り、一体感に支えられた知識、技能等の総体」ととらえ、さらに、養成段階で修得すべき「最小限必要な資質能力」を「採用当初から学級や教科を担任しつつ、教科指導、生徒指導等の職務を著しい支障が生じることなく実践できる資質能力」とすると、養成段階で教員を志願する者に特に教授・指導すべき内容は、必要最小限でも、下図のような範囲にわたる必要があると考える。

[参考図]養成段階で特に教授・指導すべき内容の範囲

A:教職への志向と一体感の形成

 教職の意義、教員の役割、職務内容等に関する理解を深めさせることを通じ、教員を志願する者に教職に対する自らの適性を考察させるとともに、教職への意欲や一体感の形成を促す観点から、指導・助言・援助を行う。 このようなことは、教職課程全体の履修を通じて繰り返し行われるべきものであり、したがって、以下の3つのカテゴリーは相互に深く関連するものである。

教職課程における履修計画・内容等についての指導 教員を志願する者一人一人に理想とする教員像を明確にさせるとともに、各人がその理想を実現するため、教職課程においてどのように科目履修等を行ったらよいかについて指導・助言するもの。
教職についての理解を深めるための指導 教職の意義や教員の役割、職務内容等に関する知識の修得を通じ、教員を志願する者が教職についての理解を深め、将来教職に就くことについて多角的に考察する過程を援助し、動機付けを図るもの。
選択・決定の指導 教育実習その他の体験を通じた教職の実体験・類似体験や他の職業との比較などの機会を教員を志願する者に与えることにより、自らの教職への意欲、適性等を熟考させるとともに、最終的な進路選択について指導・助言するもの。
B:教職に必要な知識及び技能の形成

 教科指導、生徒指導等学校における教育活動を進める上で必要な知識及び技能を、当該教育活動に関する学問的研究の基礎を含めて理解させる。(以下は、教育職員免許法施行規則(以下「施行規則」と略称)第6条表の「教職に関する科目」との関連を考慮して整理してある。)

理論的な知識等の教授 基礎的・理論的な内容に係る知識等を教授。典型的には施行規則第6条表第2欄の教育の意義及び基礎理論に関する科目群の授業。
理論と実践との結合 事例研究など具体的な内容・方法も適宜取り入れつつ、教育実践に直接関連する教科指導、生徒指導等の理論及び方法に係る知識及び技能を教授。典型的には施行規則第6条表第3~5欄の教科指導、生徒指導等に関する科目群の授業。
実践的な技能等の教授 応用的・実践的な内容に係る技能等を教授。典型的には「教育理論と教育実践とが相互規定的に機能する場を提供する」(注)教育実習。

(注) 本審議会教育実習に関する専門委員会報告(昭和53年)より。

C:教科等に関する専門的知識及び技能の形成

 学校教育における教科の内容に関する諸学問領域に係る専門的知識及び技能を修得させる。大学教育においては、教養教育や専門教育を通じてそれらが教授されることとなるが、その場合、各学校種・教科種に応じ、内容的にそれぞれ適切な広がりと深みを持たせることに特に配慮して、必要な知識及び技能の形成が図られる必要がある。

 教職課程における実際の教育の場面では、上記[A:教職への志向と一体感の形成]、[B:教職に必要な知識及び技能の形成]、[C:教科等に関する専門的知識及び技能の形成]の各項目に属する内容については、特定の授業科目の中で複数の内容にわたり教授されたり、複数の内容に係る授業科目が相互に影響を及ぼし合うなどの状況が通常と考える。
 [B:教職に必要な知識及び技能の形成]及び[C:教科等に関する専門的知識及び技能の形成]に属する内容については、免許制度上「教職に関する科目」及び「教科に関する科目」として単位修得が義務付けられているため、各大学の教職課程において例外なく授業科目が開設されているが、[A:教職への志向と一体感の形成]に属する内容に係る授業科目の開設例は稀である(注)。
 (注) [教職課程における履修計画・内容についての指導][教職についての理解を深めるための指導]については、多くの大学では年度当初1~2回程度の口頭での説明や、関係する内容を記載した冊子の配布などにより行われているに過ぎない。また、[選択・決定の指導]については、いわゆる一般大学・学部ではほとんどの場合実習協力校での教育実習そのものが唯一のこのような機会となっている。
 [A:教職への志向と一体感の形成]に属する内容や、[B:教職に必要な知識及び技能の形成]のうち例えば教員就職後の教育実践で必要な教材研究、教授法、評価、発達段階を踏まえた子どもたちの理解などに係る基礎的な知識や方法論については、原則として養成段階で確実に修得すべきと考える。これに対し、それ以外の[B:教職に必要な知識及び技能の形成]に属する内容(例えば、授業、生徒指導の技術等)については、教員就職後の現職研修や教育実践によってもそれらに係る知識、技能等の向上が継続的に図られるものであり、その意味で、養成段階において修得すべき内容は最小限必要な範囲のものであれば足りると考える。
 [C:教科等に関する専門的知識及び技能の形成]に属する内容に関わっては、社会の変化が著しく、学問研究の進展もめざましいこと等を考慮すると、教員には、単に知識等を学ぶだけでなく、そのときどきに学校教育において子どもたちに授けることが必要な内容について適切に教科指導等を行う能力が求められることとなる。したがって、教科等に関する専門的知識及び技能の教授に当たっては、単にそれぞれの学問分野の研究成果や特定の技能の修得にとどまらず、教職に就いてから後も、社会の変化や学問研究の進展等に自ら対応し、自立的に学習を進めることができる基礎的な能力を養うことが、特に求められる。
 なお、とりわけ[A:教職への志向と一体感の形成]に関わっては、上記1(3)で述べた得意分野を持つ個性豊かな人材を確保する視点も踏まえつつ、大学入学者選抜においても適切な工夫や配慮がなされることが望まれる。

(3) 養成と初任者研修との関係

1)初任者研修の性格
 初任者研修の目的・性格は、昭和62年答申の「…新任教員に対して実践的指導力と使命感を深めるとともに幅広い知見を得させることを目的とする…」「…大学の養成課程において修得した、教科・教職についての基礎的、理論的内容と実践的指導力の基礎の上に立って、これを行うものとし、…」といった記述からもわかるように、大学の教職課程で修得した「基礎的、理論的内容と実践的指導力の基礎」等を前提に、それを更に深めるために行われるものであるといえる。具体的には、例えば上記(2)[参考図]中の[B:教職に必要な知識及び技能の形成]に分類されるような知識及び技能のうちの多くのものについては、採用後の初任者研修や教育実践を通じその幅の拡充と水準の向上が図られるものである。 なお、ここでいう「実践的指導力の基礎」とは、「採用当初から教科指導、生徒指導等を著しい支障が生じることなく実践できる資質能力」にほかならない。初任者研修制度がいわゆる試補制度のようなものとはされず、あくまで教員として正式採用された者を対象とするオン・ザ・ジョブ・トレーニングを基本にしていること、また、初任者であっても学校教育の水準の確保に大きな責任を負うものであることを考えれば、このような意味の「実践的指導力の基礎」を教員を志願する者に修得させることが大学の責務であることについては、論じるまでもなかろう。

2)養成・研修の並行的充実の必要性
 初任者研修については導入から既に10年が経過し一応の定着を見たとの評価がある一方、校外研修のカリキュラム内容や校内研修の実施体制などに関しては改善を要する点が多々見られるとの指摘もあり、今後適切に見直しを行いつつ内容の一層の充実を図ることが求められる。 このような初任者研修改善の動向と併せ、養成段階で修得させる内容についても継続的に充実を図っていく必要がある。その際、あくまで両者がそれぞれの責務を全うするとともに、両者相俟って教員の資質能力の向上が図られることが肝要と考える。 なお、諮問における検討事項には、「養成と採用・研修の連携の円滑化」が掲げられており、このことについては、本答申後に、本格的な審議を行うこととなる。その中において、大学における教員養成との関係で、初任者研修をはじめとする現職研修の在り方についても、更に検討することとした

2 教員養成カリキュラムの改善

 以下では、大学における教員養成カリキュラムの改善方策について、その基本構造と教育内容の2つの視点から検討を加えることとする。
 なお、ここで想定されているのは主として教諭の養成カリキュラムであり、養護教諭の養成カリキュラムについては、保健体育審議会における審議状況等をも踏まえつつ、別途検討が必要であることを付言しておきたい。また、以下では基本的に専修免許状をも念頭に置きつつ検討を加えたが、専修免許状の在り方は修士課程における教員養成の在り方と密接に関わる事柄であり、今後の本審議会における検討に当たって留意が必要である。

1.教員養成カリキュラムの基本構造の転換

(1)構造転換の必要性

1) 現行制度の概要
 教育職員免許法(以下「免許法」と略称)により、教員免許状の取得に当たって修得することが必要とされる科目は、「教科に関する科目」と「教職に関する科目」の二つに区分されている。
 「教科に関する科目」は、例えば、国語における国文学、数学における解析学など初等中等教育段階での教科内容の背景となる専門的な知識及び技能の修得に係る科目群であり、これに対し「教職に関する科目」とは、教科指導、生徒指導等に関する科目、教育実習など学校での教授・指導に直接資する知識及び技能を修得させるための科目群である。
 この二つの科目群については、免許法第5条別表第1に、各免許種ごとの修得単位数の総枠が示されている(別添「現行基準と新基準との比較」参照)。さらに、2(1)でも触れるが、それぞれの科目群について、修得すべき具体的な科目や単位数が施行規則に詳細に規定されている。

2)改善の必要性
 このように、現行の免許基準は、修得すべき科目とその単位数が免許法及び施行規則で詳細に規定されているため、大学による創意工夫の余地が少ないとの指摘がある。特に平成3年の大学設置基準の大綱化により、カリキュラム編成に際しての大学の自主性が大幅に拡大された中で、このような現行免許基準による制約が、教員養成に係る柔軟な取組みを阻害しているのではないかとの声も聞かれる。
 また、「教科に関する科目」と「教職に関する科目」とのバランスについても、現行制度では、小学校・幼稚園の免許状を取得する場合は所要の単位数の大半が「教職に関する科目」であるのに対し、中学校・高等学校では逆に「教科に関する科目」が大部分を占めている。このことに関して、小学校とともに義務教育の一翼を担い、生徒の発達段階から生徒指導等に関する課題も重要になる中学校について、教科指導、生徒指導等に大きく関わる「教職に関する科目」の比重を高めるべきであるという声も強い。
 これらは教員免許制度において教職課程の枠組みをどのように考えるかという問題であり、教員養成カリキュラムの基本構造の転換を必要とするものである。

(2)構造転換の基本的方向:選択履修方式の導入

 先に述べたように、教員の資質能力の向上を図るに当たっては、特に養成段階において教員を志願する者に最小限必要な資質能力を確実に身に付けさせるとともに、更に積極的に得意分野づくりや個性の伸長を進めることが必要である。
 このような観点に立ち、かつ、教職課程の履修による大学教育の過密化を回避しつつ教員養成カリキュラムの基本構造の転換を図るため、各学校種の1種及び2種免許状について、新たに「教科又は教職に関する科目」の区分を設け、選択履修方式を導入する(注)ことを提言する。
(注)専修免許状に関しては、昭和63年の専修免許状制度創設当初から「教科又は教職に関する科目」について選択履修方式が採られている。
1)選択履修方式の導入により、大学の裁量による科目開設と教員志願者の意欲・進路希望に基づく科目選択を実現する
 各学校種の1種及び2種免許状について、免許状取得に必要な総単位数は現状のままとしつつ、下記2)で削減する必修部分の単位数の枠を活用し、新たな区分として「教科又は教職に関する科目」(仮称、以下同じ。)を設けることとする。
 「教科又は教職に関する科目」として具体的にどのような科目を開設するかについては、基本的に各大学の裁量に委ねることとし、また、「教科又は教職に関する科目」に属する諸科目のうちのどれを履修するかについては、教員を志願する者それぞれが自らの意欲と進路希望に基づき主体的に判断することとする。その際、大学でより適切な履修指導等が行われることを確保する必要がある。

2)必修部分の単位数を削減するとともに、科目履修の区分を弾力化する
 教員養成カリキュラムの構造転換を図るため、科目の名称や単位数が具体的に指定されている部分(特に施行規則第2条~第10条)を見直し、内容の精選が可能なもの等については単位数を削減すべきである。併せて、科目ごとの単位数の指定や科目履修区分の設定についても必要な見直しを行い、制度の弾力化を図る必要がある。

(3) 構造転換により期待される効果 

1)大学の創意工夫によるカリキュラム編成
 新たに導入される「教科又は教職に関する科目」については、単位数の総枠のみが制度上規定されることとなり、履修すべき科目や科目ごとの単位数は指定されない。その結果、大学における授業科目開設の自由度が高まり、各大学の特色を発揮しやすくなるとともに、教員を志願する者がすべて同じような科目を修得している現状も改められる。
 さらに、採用側も「何を学んできたか」を前提に丁寧な採用選考を行うことが見込まれる(下記3)参照)ことから、大学側は、採用側をはじめ社会の諸要請を踏まえて、開設授業科目の種類や授業の内容・方法について適切な工夫を加えることとなる。その結果、大学の教職課程において、それぞれの創意工夫により多様なカリキュラム編成が促される効果が期待できる。

2)重点履修による得意分野づくりと個性伸長
 多様で質の高い教員養成カリキュラムが編成されるようになると、教員を志願する者は、自らの意欲や進路希望に応じて、例えば、教科指導、生徒指導・教育相談、教育実習や各種の体験的実習といった特定の領域等を重点的に履修することが可能となる。その結果、教員を志願する者の得意分野づくりや個性の伸長が促される効果が期待でき、教え方に長けた教員、子どもたちの心の悩みがよく理解できる教員、子どもたちはじめ様々な人々とのふれあい体験が豊かな教員などが多数誕生することが見込まれる。
 ただし、このような選択履修方式の趣旨が十分に実現されるためには、教職に関する理解の増進を含む教職への志向と一体感の形成に関する授業科目を制度上新たに設けるほか、大学において、卒業までに修得する科目等の履修指導等をこれまで以上に適切に行うことが是非必要である。

3)きめ細かな採用選考や現職研修の促進
 都道府県教育委員会など採用側も、学校教育の現状を踏まえつつ、採用選考に当たって重視する分野を重点的に履修してきた者を優先的に採用したり、採用選考において各人の履修分野について丹念な面接試験を行うことなどによって、得意分野を持つ個性豊かな教員を確保することが可能になる。
 なお、このような採用選考を円滑に実施するためには、大学側による授業科目開設や教員を志願する者の選択履修が支障なく行われるよう、採用側は、教員の資質能力や配置についての将来的な展望を十分踏まえつつ、時間的余裕を持って採用の際に重視する分野を公表する必要がある。また、採用側には、本答申における提言内容を十分に理解し、大学による教員養成カリキュラムの改善動向を適切に踏まえた選考方法や試験問題を工夫・改善することが求められることは、いうまでもない。
 採用後も、それぞれの教員に対し、大学時代に重点的に履修した分野を基礎としつつ得意分野について高度な内容の研修を課したり、逆にそれ以外の分野を補強する研修を計画的に課すなど、採用側による様々な工夫が期待される。

[参考図]選択履修方式のイメージ

採用側

大学

教員志願者
採用選考に当たり重視する分野を公表 多様な科目を多数開設教授内容・方法も工夫 意欲や進路に応じ重点領域を決めて選択履修
面接等により専門性や適性を十分に検証 適切な履修指導等を実施 得意分野づくり、個性伸長の努力

得意分野を持つ個性豊かな教員を教育界に確保

2.教職課程の教育内容の改善

(1)教育内容に係る問題点

 教職課程において課される「教科に関する科目」については、施行規則第2条~第5条に修得すべき具体的な科目の名称や単位数が規定されている。これら「教科に関する科目」の大部分は、本来大学の卒業要件に算入されるものである。
 また、「教職に関する科目」についても、施行規則第6条表で、第2欄~第6欄の各区分ごとに科目の名称や単位数が各免許種について示されている。「教職に関する科目」については、運用上一般教育科目等と兼ねることができないこととされており、一般大学・学部では、原則として卒業要件に加えて修得が求められることとされている。
 教職課程の教育内容は、開設授業科目が具体的にどのようなものであるかによって大きく左右されるが、このことについては、各方面から様々な問題点の指摘や改善意見の提案がなされている。それらのうちの主なものを挙げてみると、概ね以下のとおりである。
 なお、これらの事柄に関し適切な努力を払っている大学が存在することも、本審議会として十分認識しているところである。

1)教員に対する社会的要請と教職課程の教育内容の実態との乖離

○ 国際化・情報化の進展やいじめ・登校拒否など学校教育を巡る深刻な問題に教職課程の教育内容は十分に対応できているか。また、平成8年7月の中央教育審議会第1次答申で提言された[生きる力]とも関わり、子どもたちの個性を生かし課題解決能力を育てる教育を実践できるような適切な教育内容が教職課程に用意されているか。
 これらについては、制度により義務付けるよりも、社会的要請を踏まえて各大学が主体的に教育内容を工夫できるようにした方がよいとの見解もあるが、その場合、どこまでを最小限必要な内容として義務付け、どこまでを大学の判断に委ねるのか。

○ 子どもたちはもとより、上司や同僚教員、保護者や地域住民などと良好な人間関係を形成・維持することができない若い教員が増えているのではないか。このようなことについての大学の認識と対応はどうか。

○ 教員養成カリキュラムにおける科目構成の在り方を考えてみたとき、社会の変化等に伴い必要性が低下していたり、他の領域と比較して著しく量的バランスを欠いている科目や科目群が存在するなど、整理すべき余地がかなりあるのではないか。

2)免許制度の画一性・硬直性

○ 現行免許制度は履修すべき科目をかなり細かく指定し、その部分の総量が1種免許状では59単位(幼稚園の1種免許状の場合は51単位。卒業要件は学部の場合は大学設置基準上124単位とされている。)にも上っていることから、大学にとって創意の余地が乏しい窮屈なカリキュラムになっているのではないか。また、免許状取得を希望する教員を志願するすべての者に基本的に同一内容の履修を求める結果、実態としては総花的で特定の専門領域の知識及び技能を深めにくいカリキュラムになっていないか。

○ 「教科に関する科目」に関しては、高等学校のように教科に係る指導内容の専門性が高い場合には一定の意義があろうが、義務教育段階に属する中学校については、小学校との接続等も考えてこれまでより「教職に関する科目」の比重を高めた方がよいのではないか。
 また、小学校の「教科に関する科目」(各教科2単位ずつ)はどのようなことをねらったものと考えたらよいのか。全教科を必修とすべきものなのか。さらに、幼稚園については教科という概念自体が幼稚園教育要領上存在しないのに「教科に関する科目」を課す必要があるのか。

○ 施行規則第3条、第6条等の表については、教育実践に真に有効なものかどうかという観点から、各欄ごと、各科目ごとに多角的に見直しを図るべきではないか。その結果、科目の廃止、科目に包含すべき内容の整理、欄内の科目区分の撤廃、単位数の削減、欄の間の科目の移動等について広く再検討されてよいのではないか。

○ 「教職に関する科目」は、一般大学・学部の場合、原則として卒業要件に加えて修得が求められることとなるが、このことについては、見直しが必要ではないか。

○ 上記のようなことについては、近年の大学設置基準の大綱化や規制緩和の流れなどにも合致するものとして、積極的に検討すべきではないか。

3)不十分な教育内容・方法

○ 教員養成教育の中で、教科の専門性(細分化した学問分野の研究成果の教授)が過度に重視され、教科指導をはじめとする教職の専門性がおろそかになっていないか。教員スタッフの専門性に偏した授業が多く、「子どもたちへの教育」につながるという視点が乏しいのではないか。
 その背景に、各大学において、教職課程が専門的職業人たる教員を養成することを目的とするものであるという認識が、必ずしも明確な形で関係者に共有されていないことがあるのではないか。

○ 教職課程においては授業科目の名称に相応しい包括的・体系的な教育が必ずしも十分になされていないのではないか。

○ 教職課程における開設授業科目の間で教授内容の整合性・連続性は考慮されているのか。体系的な知識及び技能の教授が求められる教職課程において、このような調整がなされなくてもよいのか。

○ とりわけ生徒指導や特別活動に係る科目については、扱う内容が伝統的学問領域と必ずしも整合しないなどのため、学校の実態を踏まえた実践的内容が求められているにもかかわらず、適切な担当教員が確保できなかったり、ごく狭い領域に偏して教授されている例が見られるといわれる。
 そのようなことはこれら科目が制度上位置付けられて間もないゆえの過渡的な現象なのか。そうであるとすればどうしたら早急に改善できるのか。そうでないとすればどこに問題の本質があるのか。

○ 教育実習では、教科指導やホームルーム指導以外の内容が計画的に扱われている例はほとんどないのではないか。教員を志願する者にとって、教育実習は実践に触れ自らの進路を考える極めて貴重な機会であるにもかかわらず、このような実態は大きな問題でないか。また、事前・事後指導についても、大学で修得する理論・方法と実習本体とを円滑に接続するものとして十分に内容が工夫されているといえるか。

(2)教育内容を改善するための基本的視点

 上記では教職課程の教育内容に係る主な問題点を挙げた。それらを踏まえ、以下では教職課程の教育内容を改善するための基本的視点を明らかにしてみたい。

1)今日求められる資質能力の形成を促進する視点

 改善の第一の視点は、I1において行った教員に求められる資質能力に関する検討を踏まえ、教職課程の教育内容をどのような方向で改善したらよいかということである。I1(2)の[参考図]で示した[地球的視野に立って行動するための資質能力][変化の時代を生きる社会人に求められる資質能力][教員の職務から必然的に求められる資質能力]の3つの柱を念頭に置きながら改善の方向を整理してみると、以下の(a)~(c)のようになる。

(a)地球的視野に立って行動するための資質能力

 今日は極めて変化の激しい時代であり、世界の人々の日々の営みは国境を越えて様々に影響を及ぼし合うようになってきている。21世紀を生きる子どもたちには日本国民であるとともに「地球市民」であることが求められ、したがって、子どもたちの教育に直接当たる教員にもそれに相応しい資質能力が不可欠である。
 このような資質能力の基礎を教員を志願する者に適切に修得させる一つの方途として、人間尊重・人権尊重の精神はもとより、地球環境、異文化理解、民族対立・地域紛争と難民、人口と食糧、社会への男女の共同参画といった人類共通のテーマや、少子・高齢化と福祉、家庭の在り方など我が国社会全体に関わるテーマのうちのいくつかについて、ディスカッション等を中心に十分理解を深めさせるとともに、それらの内容を発達段階に応じてどのように教えたらよいかについて教員を志願する者に自ら考えさせるような授業が、大学の教職課程において適切に工夫される必要がある。併せて、教職課程全体を通じ、国際化、情報化、地球環境等に関する内容について、それぞれの問題の全体像を念頭に置きつつ、随所で適切に取り扱う努力が大学に求められる。
 また、教員が、公共の精神や道徳性を涵養しつつ子どもたちの豊かな人間性を育てる任に当たることにかんがみれば、教員を志願する者自身に思いやりの心やボランティア精神を適切に身に付けさせることが極めて大切である。このような内容を効果的に取り入れた授業を行うことはもとより、教員を志願する者が課外も含め広く各種のふれあい体験の機会を得ることが可能となるよう、大学は配慮する必要がある。

(b)変化の時代を生きる資質能力

 教員は、教職という専門的職業に従事する社会人である。しかも子どもたちの教育に直接当たり、その人間形成に大きな影響を及ぼすというその職務の性質からすれば、教員には優れた資質能力を備えた社会人であることが当然に求められる。
 現代社会に生きる社会人に共通して求められる資質能力の第一は、創造力や応用力などに裏付けられた課題解決能力、さらにはそれを生涯にわたり高めていくことのできる自己教育力であろう。
 専門的職業従事者の職務には、一般に定型的処理になじまずその都度状況を分析し判断し答を出していかなければならないものが数多く含まれる。教員の職務もまたこのような性格が強く、大学の教職課程では、教員を志願する者の課題解決能力、創造力、応用力等の涵養や継続的自己教育力の育成に重点を置いて、授業の内容・方法を工夫することが求められる。
 第二に、人間関係を円滑に保つ能力が重要である。
 子どもたちはもとより、上司や同僚教員、保護者や地域住民などと良好な人間関係を形成・維持することは、教員が職務を円滑に遂行する上で極めて重要なことである。教職課程で修得する知識及び技能は一般にこのような能力の涵養に直接寄与するものとはいえないが、例えば介護等の福祉体験やボランティア体験などは、共感的に人間関係を形成しそれを円滑に維持することを学ぶ上で高い効果が期待できる。通常の友人関係等と異なった環境に身を置き、様々な状況にある人々とふれあうことにより、人間関係の本質を学ぶ貴重な機会が得られるものと考える。
 第三に、国際化、情報化等社会の変化に対応する実際的な能力として、しばしば話題に挙がるように、外国語によるコミュニケーション能力やコンピュータの基礎的な活用能力などが求められよう。これらについては、教職課程を有するか否かにかかわらず既に多くの大学で相応の内容が教授されているが、それらが実際に使える知識や技能を修得させるだけの質を備えたものであることが不可欠である。

(c)実践的指導力につながる資質能力

 最後に、教員の職務内容に具体的・直接的に関わる資質能力としてどのようなものが必要であろうか。
 まず第一に、幼児・児童・生徒観、教育観といった、子どもや教育に関する適切な理解が求められる。今日、いじめや登校拒否、生徒の薬物乱用など学校を巡り深刻な問題が生じている中で、特に若い教員には子どもや学校教育に対するしっかりしたものの見方が必要であると考えるからである。
 これらは、本来、教職課程の教育内容、とりわけ「教職に関する科目」群の中で扱われる内容全体の履修等を通して徐々に形成されていくべきものである。
 また、生きた幼児・児童・生徒観、教育観を身に付けるためには、子どもたちと実際にふれあったり子どもたちの様子を観察する機会が大切である。教育実習はもとより選択科目や課外における諸活動を通じ、このような機会が少しでも多く教員を志願する者に提供されることが望まれる。その際、障害のある子どもたちとのふれあいの機会の確保等にも十分留意する必要がある。
 第二に挙げられるのは、教職に対する情熱・使命感、子どもに対する責任感、興味・関心といった事柄である。
 このような資質能力の形成はむしろ本人の志向や性格によるところが大きく、教職課程での対応は、どうしても動機付けや体験の機会の設定などが中心になると考えられる。具体的には、前述のように各種のふれあいや観察の機会を設けたり、教職に関する理解の増進等を適切に図ることなどが効果的であろう。
 最後に挙げられるのは、当然のこととして、教科指導、生徒指導等を適切に行うための実践的指導力の基礎である。
 このことについては、教職課程において、教科指導、生徒指導等に係る授業科目や教育実習はじめ各種のふれあい体験の機会の充実を図ること、とりわけ中央教育審議会により提言された[生きる力]の育成にも関連して、子どもたちの個性を生かし課題解決能力を育てる教育を実践する観点から、教職課程におけるそれらの授業科目等の内容・方法の抜本的な充実を図ることが急務である。その際、大学で教授される学問的な方法論をもとに、将来実践の場で柔軟に活用できるだけの資質能力を育てる視点が特に重要である。

2)現行制度等をより柔軟で効果的なものにする視点

 教職課程の教育内容改善の第二の視点は、第一の視点に示された改善の方向を適切に実現するため、大学設置基準の大綱化や社会の規制緩和の流れを踏まえ、どのように免許制度の画一性・硬直性、教育内容・方法の不十分さといった事柄を改善していくかということである。
 まず、既に「1.教員養成カリキュラムの基本構造の転換」において提言したように、選択履修方式の導入を図り、それと併せて「教科に関する科目」等の在り方の見直し、各科目・科目群に割り当てられている単位数の見直し、履修区分の弾力化等を進めることにより、画一性・硬直性が指摘される現行の教員養成カリキュラムを柔軟なものに改める必要がある。
 また、教職課程における教育内容の充実を図る観点からは、授業科目間の内容の整合性・連続性、包括性・体系性の確保等につき適切な措置を講ずるとともに、教育内容・方法の実践性の向上や教職課程におけるファカルティ・ディベロップメント(注)の促進等を図る必要がある。
(注)教員が授業内容・方法を改善し、向上させるための組織的な取組みの総称。

(3)具体的改善方策

 この(3)においては、上記(2)に掲げた基本的視点に沿って、教職課程の教育内容に関する具体的な改善方策を提言することとする。

◎:法令改正が必要な事項、うち●は法律改正事項が含まれるもの
□:運用の改善で対応できる事項(◎●□の扱いは3でも同様)
1)時代の要請を踏まえた改善を図る
(a)地球的視野に立って行動するための資質能力を育てる

◎ 人間尊重・人権尊重の精神はもとより、地球環境、異文化理解など人類に共通するテーマや少子・高齢化と福祉、家庭の在り方など我が国の社会全体に関わるテーマ(詳細は上記(2)1)(a)参照)について、教員を志願する者の理解を深めその視野を広げるとともに、これら諸課題に係る内容に関し適切に指導することができるようにするため、「教職に関する科目」として新たに「総合演習」(仮称、2単位)を設ける必要がある。
 この「総合演習」においては、上記のような諸課題のうちのいくつかについて選択的にテーマを設定した上で、ディスカッション等を中心に演習形式の授業を行うものとする。授業方法については、履修学年等に応じ、例えば、可能な限り実地の見学・参加や調査等を取り入れるなどして教員を志願する者が現実の社会の状況を適切に理解できるよう必要な工夫を凝らすことや、幼児・児童・生徒への指導という観点から指導案や教材を試行的に作成したり模擬授業を実施することなども、期待される。
□ 「教科に関する科目」及び教科指導等に関する科目について、教職課程の教育内容全体を念頭に置きつつ、国際化、情報化、地球環境などの今日的なテーマに留意した教育内容が十分に確保されるよう、各大学は配慮する必要がある。
□ 教員を志願する者の豊かな人間性を培う観点から、大学在学中の福祉体験、ボランティア体験、自然体験等を奨励するため、教職課程に選択科目を開設することなども含め、大学による適切な配慮が求められる。
 また、介護等体験特例法に基づく介護等体験が平成10年度大学入学者から課されることとなるが、大学は、教員を志願する者が介護等体験を行う上で必要な情報提供を行うなど、その円滑な実施のため適切な配慮をする必要がある。さらに、同法の趣旨が今後改善される教員養成カリキュラムの中にも十分に生かされるよう、各大学の創意が求められる。

(b)変化の時代を生きる資質能力を育てる

◎ 国際化・情報化の進展を踏まえ、科目「外国語コミュニケーション」及び「情報機器の操作」(それぞれ仮称、各2単位)の履修を施行規則第66条の4において義務付けることとする(日本国憲法及び体育の扱いと同様のものとして制度化する。)。
 特に後者に関しては、学校教育に情報化の波が押し寄せている現実を踏まえると、教員にとってコンピュータの基礎的な操作能力は不可欠であり、養成段階において教員を志願する者全員に必要な内容を適切に修得させることが必要である。その際、ハード・ソフトの両面における技術革新等に対応し、教職課程における教育内容を適宜工夫改善する必要がある。
 なお、学校教育における情報化への対応は、現職教員のみによる対応では限界がある。コンピュータ等の専門家の学校での活用を促進することの重要性についても、ここで併せて指摘しておきたい。
□ 大学は、教職課程の授業科目において、教員を志願する者の課題解決能力の育成を図る観点から、事例研究、討議学習等の方法を積極的に採用するなど、授業方法を適切に工夫する必要がある。
 また、課外でも、大学院学生(特に現職教員)等の協力も適宜得るなどして、教職に関し教員を志願する者の自主的な研究活動を奨励することが望ましい。その際、必要に応じ教育委員会や学校の協力も得ることが大切である。
□ 教員を志願する者の人間関係に係る能力を高める観点からも、上記末尾でも述べたような各種のふれあい体験や、サークル活動等への教員を志願する者の参加の機会を豊かなものとするよう、大学は十分配慮する必要がある。

(c)実践的指導力の基礎を強固にする

ア.教職への志向と一体感の形成に関する科目の新設等
◎ 教職に関する理解の増進を含む適切な指導を通じ、教員を志願する者に「教師とは何か、教職とは何か」ということについて深く考察するきっかけを与えることをねらって、「教職への志向と一体感の形成に関する科目」(仮称、2単位)を新設する必要がある。
 この科目は、教職の意義、教員の役割・職務内容等に関する知識の教授や、自らの進路に教職を選択することの可否を適切に判断することに資する各種の機会の提供などを、主な内容とするものとする。
 このような趣旨にかんがみれば、この科目について、1年次配当の授業科目としたり、教育の本質・目標等に係る他の「教職に関する科目」の授業と適切に内容調整しつつ有機的に関連を持たせたりするなど、履修方法等に適宜工夫を凝らす必要がある。
 また、この科目については、小・中学校等における教職経験が豊富で、特色ある教育活動を展開している教員による指導が効果的であると考える。
□ 「教職に関する科目」群については、授業科目の名称から想定される内容が包括的に教授されていなかったり、科目間で本来必要な授業内容の一貫性が欠けているような実態がかなりあるとみられる。
 このような状況を改めるため、各大学は、選択履修方式の導入に併せて教職課程における履修指導等の強化を図るとともに、総合的視点に立って特色ある教員養成を進める観点から、各授業科目に関する内容調整や情報交換を促す、例えば「教員養成カリキュラム委員会」といった仕組みを適切に整備する必要がある(下記イ.及びキ.も参照のこと。)。
 授業方法についても、大学の教員のみならず現職教員を含め様々な人材の活用や、学校における実際の授業等の観察、それに代わるビデオ又はインターネット、衛星通信等マルチメディアの積極的活用を図ることなども工夫すべきである。

イ.教育実習の充実
《教育実習本体:必修部分》
◎ 中学校の1種及び2種免許状に係る「教育実習」の最低修得単位数を5単位(うち事前・事後指導1単位)に改める。
 その理由としては、1)中学校教育を巡っては生徒の発達段階から特に生徒指導等に係る課題が多いにもかかわらず、現行の3単位(うち事前・事後指導1単位)では授業実習を行うのが精一杯で、特別活動や部活動も含め教育活動全体を通じて生徒に関する理解を深めたり、学校運営や教員の職務の実態に触れる時間が十分確保できないこと、2)本審議会が都道府県・政令指定都市教育委員会を対象に行った調査によると、中学校については、教育実習期間の延長に賛成する教育委員会が多数に上っており、高等学校等と相当の差異が認められたこと、3)関係する校長会も基本的にこのような方向に賛同し、協力の態度を明らかにしていること,iv)同じ義務教育段階に属する小学校では最低修得単位数が現行制度上5単位とされていること、が挙げられる。
◎□ 現行制度でも、取得しようととする免許に対応する学校以外の学校においても教育実習を行うことができることとされており、そのようなことは、幼児・児童・生徒の発達の状況をより適切に理解する上で望ましいことであるにもかかわらず、実際の運用例は少ない。
 また、教育実習の一部を盲・聾・養護学校や特殊学級において実施することについては、障害のある子どもたちに対する個に応じた指導を観察・体験することで、教職に関する理解と自覚を深めるとともに、教育者としての使命感や実践的指導力の基礎を一層高める観点から、大きな意義があるものと考える。
 これらのことにかんがみ、施行規則第6条表備考第7号に規定された制度がより積極的に運用されるよう、条文の表現を工夫する必要がある。
□ 附属学校や実習協力校等の活用のほか、教育委員会等や学校と協力しつつ、例えば、1年次の観察的な実習2週間と3・4年次(短期大学においては主として2年次)の本実習2週間とに分けて行うことなど、教育実習の回数、時期、実施先、方法等については、各大学の判断により適宜工夫する必要がある。
 その場合、これらの趣旨を教育委員会等や学校が十分理解することが重要であり、そのための趣旨徹底の努力とともに、実習学生の円滑な受入に係る協力体制の整備を図る必要がある。
□ 本審議会が行った調査の結果によれば、教育実習の内容は授業実習に偏している。このような状況を改めるため、大学は、附属学校や実習協力校等との連携を密にし、学級経営、生徒指導、教育相談、進路指導、道徳、特別活動(特に学級活動以外の部分)、部活動等に係る教育実習が質量ともに適切に確保されるよう、十分留意すべきである。

《事前・事後指導:必修部分》
◎ 教育実習の事前・事後指導における「教育実習に準ずる経験」の対象施設として、現行制度においては、学校以外のものでは専修学校及び社会教育施設が挙げられている(施行規則第6条表備考第8号)が、事前・事後指導をより多様かつ効果的に実施できるようにするため、対象に社会福祉施設及びボランティア団体を追加することが適当である。
□ 事前指導をより効果的なものとするため、教育実習の意義・心得、指導案の作成、教材研究や教材の試行的作成などはもとより、ビデオや授業実践記録を活用しての授業研究、附属学校や実習協力校等における実際の授業等の観察やそれらへの参加、模擬授業の実施などについても、大学は適切に考慮すべきである。
□ 事後指導についても、単なる反省会や体験レポートの作成にとどまらず、実習時の授業実践記録に基づき指導案や教材について分析を加えたり、現職教員の参加を得て実習中の具体的な問題点・疑問点についての討論会を行ったりするなど、内容・方法を十分に工夫する必要がある。

《多様な実習機会の確保:必修部分を超えるもの》
□ 現行制度では免許状取得に必要な単位数(例:小学校では5単位)を超える教育実習は、免許状取得に係る単位数(例:小学校の1種免許状では59単位)に算入されないが、新たな選択履修方式の下では、選択履修に係る教育実習の単位を免許状取得に必要な単位数(「教科又は教職に関する科目」に係る単位数)に算入することも可能になる。
 このようなことを踏まえ、各大学は、必修部分を超える教育実習についても、積極的に企画・実施することを検討する必要がある。
 その場合、教育委員会等や学校と協力しつつ、例えば、教員採用内定者を主たる対象に4年次(短期大学においては主として2年次)後期に半期科目又は集中科目を開設し学校において更に実践的な教育実習を行うことなどについても、工夫する必要がある。
□ 休業土曜日を活用した子どもたちとのふれあいの機会の設定、学校・教育委員会・大学の連携による子どもたちとの合宿・交流事業の実施、教育委員会の協力により教員を志願する者が毎週学校の授業等の補助を行う試みなど、近年、教職課程において様々な取組みが工夫されている。
 各大学においては、このような多様な取組みを積極的に進めるとともに、「教科又は教職に関する科目」に属する授業科目として単位認定することも含め、教員養成カリキュラムへの適切な位置付けについて検討する必要がある。
□ 必修部分を超える教育実習については、各大学の判断により、上記のような子どもたちを対象としたもの以外にも、福祉体験、ボランティア体験、自然体験など、多様な内容・方法の体験的実習を広く含めることが可能であり、各大学の創意工夫が期待される。

《教育実習等における教授内容の整合性の確保》
□ 事前指導・教育実習本体・事後指導それぞれの内容の整合性・連続性、教科指導、生徒指導等に係る諸科目と教育実習との内容の整合性・連続性等を適切に確保する観点から、大学は、上記ア.末尾に掲げた「教員養成カリキュラム委員会」などの仕組みを適切に活用するなどして、教職課程の中でこれら科目間の授業内容等の調整を十分に行う必要がある。

《大学と実習協力校との連携協力体制》
□ 教育実習に係る連携協力の体制について、本審議会が行った調査では、大学側はかなり連携ができていると自己評価しているものの、都道府県・政令指定都市教育委員会の側は概ね逆の評価であった。
 このようなことを踏まえ、大学を中心に、両者の連携関係や指導体制の強化に一層努力する必要がある。

ウ.教育相談(カウンセリングを含む。)に係る内容の充実
◎□ 小学校に係る「生徒指導及び教育相談に関する科目」及び中学校・高等学校に係る「生徒指導、教育相談及び進路指導に関する科目」の最低修得単位数を現行の2単位から4単位に改める必要がある。併せてこれら科目において取り扱われる「教育相談」に係る内容の中に「カウンセリング」に係るものが含まれることを制度上明記すべきである。
 こうした改善を図る理由は、現在、学校では多くの教員がいじめ、登校拒否、薬物乱用など児童・生徒の生命・健康にも関わる問題に直面し、様々な努力にもかかわらずそれらへの決定的な対処方法が見出だせないまま日々苦慮している現実を踏まえ、上記のような生徒指導上の問題等に現職教員がより適切に取り組むことができるよう、教育相談(カウンセリングを含む。)を中心に生徒指導等に係る科目の内容を充実する必要があると考えたからである。
 とりわけカウンセリングの意義、理論や技法に関する基礎的知識を教員が持つことで、児童・生徒をより深く理解しより適切に接することや、カウンセラーや専門機関と円滑に連携することが可能となり、教科指導・生徒指導等の両面において高い教育効果が期待できる。
 なお、ここで求められるのはあくまで教員を志願する者がカウンセリングに関する基礎的知識を修得することであり、カウンセリングの専門家の養成そのものではないことに留意し、その趣旨の徹底が図られるべきである。また、ただ単に教員の資質能力の向上に期待するだけでは上記のような諸問題の解決は困難であり、家庭や地域社会の自覚と主体的取組みが必要であることは、いうまでもない。

◎ 幼稚園教諭免許状取得に際し、幼児理解及びカウンセリングを含む教育相談に関する内容に係る科目(2単位)を、「教職に関する科目」として新設する必要がある。
 その科目を教授するに当たっては、幼稚園に在園する幼児の発達段階等にかんがみ、特に家庭教育と幼稚園教育との連携の視点に十分留意する必要がある。

◎ 小学校教諭免許状取得に際しても、児童の発達段階等に相応しい進路に関する指導について、養成段階で適宜教授するようにする必要がある。

□ 学校における様々な生徒指導上の問題等をより円滑に解決することができるよう、「生徒指導及び教育相談に関する科目」等の授業においてカウンセリング等に関する内容を教授するに当たっては、単なる知識の教授にとどまらず、養護教諭、学校医、スクールカウンセラー等の専門家の職務の実際や、それらの者との連携の在り方等についても適切に取り扱うようにする必要がある。

エ.特殊教育に係る内容の必修化
◎ 障害のある子どもたちの心身の発達及び学習の過程に係る内容を、現行の「幼児、児童又は生徒の心身の発達及び学習の過程に関する科目」の中に含めるべきことを制度上明記し、すべての学校段階に属する教員の特殊教育に関する理解を深めることとする。

オ.理科教育の充実
□ 子どもたちに豊かな科学的素養を培うためには、教員の指導力の向上が不可欠である。
 「科学好き」の子どもたちを育てる視点を教職課程全体を通じて重視するとともに、理科等に係る「教科に関する科目」及び教科指導等に関する科目において、子どもたちの興味・関心を喚起する実験や観察の手法を重視するよう大学は配慮する必要がある。
 実験等に関連して、理科に係る教職課程において、理科教育振興法に基づく補助対象物品の備付けがなされていない例なども指摘されており、早急に改善が求められる。

カ.各教科の指導法等に関する科目の重視
◎□ 教科指導は生徒指導等と並び学校教育の根幹をなすものであることにかんがみ、児童・生徒に適切に学力を身に付けさせるため、特に児童・生徒の学習意欲の喚起を図る観点から、ティーム・ティーチング(以下TTと略称)、実験・実習等に係る知識及び技能をも重視しつつ、各教科の授業やそのための教材研究などを中心に、その一層の充実を図る必要がある。
 具体的には、中学校及び高等学校の1種免許状について、各教科の指導法に係る単位数(現状では実質的に2単位程度平均)がそれぞれ8単位、4単位程度実質的に確保されるよう、制度的措置を講ずるとともに、その内容の一層の充実を図る必要がある。
 また、中学校の2種免許状や小学校、幼稚園及び盲・聾・養護学校に係る教職課程においても、各教科の指導法等に関する内容について、一層の充実を図るべきである。

キ.教育内容の一貫性等の確保等
◎□ 大学は、「教職に関する科目」中の各科目の内容の整合性・連続性を確保し、教職課程における効果的な教育方法を工夫する必要があり、制度的にもその旨を明確化する必要がある。
 その際、「教職に関する科目」に属する開設科目の授業内容が各大学間・各教員間で区々である実態にかんがみ、大学の教員養成カリキュラムに対する社会的要請に十分留意しつつ、大学関係者を中心に、授業内容等に係る研究開発を行うことが望まれる。
◎ 各教科、道徳及び特別活動の指導法等に関する各科目等については、学習指導要領に掲げる事項に即して包括的な内容を教授する必要があり、制度的にもその旨を明確化する必要がある。
◎ 発達段階全体を見通した子どもたちに対する教員の適切な理解を促進するため、「幼児、児童又は生徒の心身の発達及び学習の過程に関する科目」を「幼児、児童及び生徒…」と改める必要がある。
□ 各大学においてシラバスの作成、授業科目の内容の調整、教育学系教員・心理学系教員等によるリレー講義等の企画・実施、学校や教育委員会等との連携など、カリキュラムの改善を促すため、上記ア.及びイ.で述べた「教員養成カリキュラム委員会」を積極的に活用する必要がある。

ク. 効果的な教育方法の導入
□ 教職課程の授業内容については、理論中心で実践との関連性が十分でないとの指摘がしばしばなされるが、授業方法についても、過度に講義中心であるなど十分に工夫されているとはいえない。教職課程において、各大学・教員は、より具体的・実践的で理解しやすく、教員を志願する者の興味を喚起する授業方法を工夫する必要がある。

□ 上記(a)及び(b)やイ.でも既に触れたが、教職課程における授業方法を改善するための一つの方策として、福祉体験、ボランティア体験、自然体験等に係る体験的実習を重視する必要がある。
 その理由は、これらは、教育実習や学校での観察・参加のように、子どもを対象にした教職に直接関わるものでは必ずしもないが、このような体験を通じ、教員の資質能力の形成に当たり本質的に重要と考えられる「人との豊かなふれあいの機会」を得ることが期待できるからである。
 とりわけ、選択履修方式の導入に伴って大学の教員養成カリキュラムの改善が促され、教員採用に際しても上記のような体験的実習に係る授業科目の履修が適切に評価されることとなれば、より適切に子どもたちの心を理解できる優れた人材を学校に迎え入れることが可能になる思われる。
 本審議会が都道府県・政令指定都市教育委員会を対象に行った調査でも、教員の採用権者がこのような体験を極めて重視していることが明らかになった。

□ 大学は、学校や教育委員会等と適切に連携しつつ、学校における実際の指導事例等をもとにした討議、観察、参加、体験、調査など、教員を志願する者の知識及び技能をより具体的なレベルまで深める授業方法を工夫する必要がある。
 さらに、こうして蓄積された大学の教育・研究の成果が日常的交流を通じて学校や教育委員会等に還元されるチャネルが確立されれば、大学と学校・教育委員会等のいずれにとっても大きなメリットが期待できる。
 その際、大学院に在学する(あるいはかつて在学した)現職教員を核に、大学と学校との情報交換ルートを確保することなどは、極めて有効な連携手段であり、各大学において重視することが望まれる。

□ 大学は、現職経験を有する優れた者を大学の常勤教員又は非常勤講師に積極的に登用するとともに、大学教員と現職教員とのTTなど現職教員等を活用した効果的な教育方法を工夫する必要がある。

□ 企業関係者、福祉関係者、社会教育関係者等学校教育の外部の人材を積極的に活用することも、教職課程の授業内容と社会との接点を確保する上で極めて重要である。このため、教職課程に対する社会的要請を適切に把握したり、外部との連携を具体的に進めるための組織を設けるなど、継続的・積極的に努力することが大学に望まれる。

□ 教職課程における効果的な教育方法等の在り方について、大学関係者を中心に開発研究を行う必要がある。それらの成果をもとに、教授法に関するノウハウの蓄積がある教職課程が中心となり、我が国の大学における教授法の開発研究を促す効果も期待される。

2)現行制度やその運用をより柔軟で効果的なものにする

● 既ににおいて提言したが、教員を志願する者の得意分野づくりや個性の伸長を進める観点から、教職課程に選択履修方式を導入することとする。
 これを受け、1種及び2種の免許状に新たな科目区分として「教科又は教職に関する科目」を設け、所要の単位数を割り当てることとする。併せて「教科に関する科目」の必修単位数を現行の半分以下の分量にすることを目途に削減するとともに、上記1)~の改善提言を踏まえて「教職に関する科目」の単位数を増加する必要がある。
 ここで、「教科に関する科目」の必修単位数を削減することとしたのは、免許状取得に必要な単位のほか、例えば学部の場合、卒業要件として60単位以上の専門教育科目等の単位修得が必要であり、それらと削減後の「教科に関する科目」の単位数(中学校及び高等学校に係る新1種免許状の場合、削減後も現行2種免許状並みの20単位を確保している。)とを合わせれば、養成段階において求められる教科に関する専門的知識及び技能が、その水準を低下させることなく十分に修得可能と考えたからである。
 なお、教科指導等については、「教職に関する科目」の中で更に重視することととしている(上記1)カ.参照)。

□ 上記の措置とともに,現状では運用上一般大学・学部において原則として卒業要件に更に付加されている「教職に関する科目」の扱いについて,大学の判断により,卒業要件に含めることを可能にするように改めることとする。

□ 課程認定に当たり,「教職に関する科目」等に係るいわゆる他学部等聴講の許容範囲を,大学間協定の締結等を前提に,他大学にも拡大する必要がある。□本答申で新設が提言された授業科目等を実際に開設するに当たっては,既存の学問分野との関わりで教員確保が必ずしも容易でなかったり,複数の学部・学科等の協力の下で幅広い内容を扱う方が適切な場合も想定される。
 このため,課程認定に際しての「教職に関する科目」の専任教員数の基準を緩和し,社会人や現職教員の非常勤講師としての活用や,複数の学部・学科等の教員による連携協力を積極的に促す必要がある。

◎ 施行規則第6条表(「教職に関する科目」)における科目の名称に係る区分を撤廃し,例えば,各欄において授業科目に含めるべき事項を列記するような方式に変更する必要がある。また,現行第2欄の単位数を可能な範囲で整理することとする。
 「教育の方法及び技術(情報機器及び教材の活用を含む。)」に関する内容については,現行制度では第2欄中に単独科目として区分されているが,新制度では現行の第3欄相当の部分に位置付けることが適当である。

◎ 施行規則第2条及び第5条に規定する小学校及び幼稚園の「教科に関する科目」について,それぞれ小学校の1教科以上に係る内容の履修で足りることとする。その際,教員就職後,特に音楽,体育等いわゆる実技教科等の指導に支障が生じることのないよう,当該教科に係る教員を志願する者一人一人の知識及び技能の修得状況等に応じ履修指導等を適切に行うことが,大学に望まれる。
 また,施行規則第3条表(中学校における「教科に関する科目」)第3欄及び第4条表(高等学校における「教科に関する科目」)第3欄にそれぞれ掲げられた各科目ごとの最低修得単位数の細目は,廃止することとする。

□ 上記のほか,教職課程において免許制度を実際に運用するに際し,授業科目間の内容の重複や特定の授業科目に本来求められる内容の欠如,工夫に欠けた授業方法などの実態を改める必要がある(上記1)(c)キ.ク.等も参照)。

□ 平成3年の大学設置基準の大綱化に伴い,各大学においては自己点検・自己評価が努力義務として課され,その後の大学改革の過程において,様々な取組みが各大学で行われている。教職課程についても,その対象とされるべきことは当然であり,特に本答申に基づいてカリキュラム改善が進められた場合,自己点検・自己評価の重要性は一層大きなものとなる。
 各大学においてこのような取組みを活発にするとともに,教育委員会等や学校の関係者を含め,外部の者による評価を積極的に進める必要がある。

3 カリキュラム以外の免許制度の弾力化

2では教員養成カリキュラムの内容について具体的改善方策を示したが、それ以外に免許制度の弾力化を図るべき事柄は、以下のとおりである。

1.社会人の活用促進

 学校教育の水準の維持・確保に留意しつつ、以下の弾力化措置を講ずるものとする。

(1)特別非常勤講師制度の改善

● 小学校及び盲・聾・養護学校の特別非常勤講師制度に関し、対象を全教科(盲・聾・養護学校にあっては施行規則第62条~第65条の2に規定する特殊教科を含む。)に拡大する。

● 特別非常勤講師については、現行制度では、免許法第3条第3項により、免許状の授与権者である都道府県教育委員会の許可事項とされているが、これを緩和し、学校の設置者から授与権者への届出で足りることとする。

(2)特別免許状制度の改善

● 小学校及び盲・聾・養護学校の特別免許状制度について、特別非常勤講師制度の場合と同様、対象を全教科に拡大する(注)。
 (注)小学校の場合も、特別免許状の授与は各教科ごとに行われる。

● 特別免許状の有効期間については、現行制度では「3年以上10年以内において都道府県の教育委員会規則で定める期間」(免許法第9条第2項)とされているが、これを緩和して「5年以上10年以内…」と改める。

● 学校教育に社会の優れた人材をより積極的に迎え入れる観点から、特別免許状から普通免許状への上進制度を創設する。

2.盲・聾・養護学校に係る免許制度の弾力化

◎ 特殊教育教員の免許状の複数取得を容易にする観点から、施行規則第7条表(盲・聾・養護学校における「特殊教育に関する科目」)のうち、第1欄については盲・聾・養護学校教諭の免許状取得に当たり共通に認められる科目とする。

●□ 精神薄弱者及び精神薄弱を併せ有する重複障害者に係る国語、社会、数学等いわゆる一般教科の扱いについては、学習指導要領に基づく教科を合わせた指導等がより円滑に行われるよう、基礎免許状による担当部・担当教科の制約(免許法第3条第3項に係るもの)を撤廃することとする。
 また、養護訓練を含む特殊教科についてはいわゆる基礎免許状の制約がないが、このことについて必ずしも十分な理解が得られていないことから、その位置付けを更に明確にする必要がある。

● このほか、1に掲げたように特殊教育に係る特別非常勤講師及び特別免許状の対象範囲の拡大を図る。

3.その他の弾力化措置 

◎ 中学校に係る免許状において従来に比して「教職に関する科目」の単位数が増加すること等を踏まえ、小学校・中学校に係る複数免許取得の場合等の特例を規定するなど、異なる学校種(特に隣接する学校種)の免許状の複数取得を容易にする観点から制度の弾力化を図ることとする。その際、各免許種の専門性の確保には十分留意する必要がある。

◎ 編入学、国内外の大学との単位互換等に伴う免許状取得に必要な単位の「読替え」については、現行制度上明確な基準がなく制度の運用に一部混乱が生じているため、新たな基準を定めることとする。

● 大学(学部)の専攻科において専修免許状の取得が可能であることとのバランスや昭和63年の免許制度改正以降の状況変化を考慮し、学位授与機構の認定に係る短期大学の専攻科において1種免許状(高等学校を除く。)を取得できるようにすることとする(注)。

(注)昭和63年以前の制度において大学(学部)の専攻科において修士課程修了程度の高等学校1級免許状が取得可能とされていた経緯もあり、現行制度では、大学(学部)の専攻科においては専修免許状が取得可能であるが、短期大学の専攻科においては1種免許状が取得できないこととされている。ところが昭和63年の免許制度改正後の状況の変化として、短期大学の専攻科のうち学位授与機構の認定に係るものについては、専攻科での学修と大学での一定の単位修得等を条件に学士の学位取得が可能になっている。

◎ その他法令の規定の不備等により運用に支障が生じている点等について、適宜制度の明確化等を図る必要がある。

むすび

 本答申における諸提言が、教員の資質能力の向上を図る上で十分な効果を上げるためには、国、大学等の教員養成機関、教員養成に協力する各種機関、教員の採用権者、現職教員、教員を志願する者など、教員養成に関わるすべての人々の理解とそれぞれの役割の自覚が必要である。提言の具体化に当たり、まずもって、これら関係者の一層の努力と協力を強く期待したい。
 このことと関わり、ここで特に強調しておきたいのは、教員の採用側としての教育委員会等の役割である。本答申を踏まえ、各大学は教員養成カリキュラムの改善に着手することとなるが、教育委員会等においても今回の諸提言の趣旨を十分理解し、それを踏まえた教員採用の方法を適切に工夫するとともに、教員養成カリキュラムと現職研修カリキュラムとの連続性の確保にも十分に意を用いる必要がある。
 本答申における提言は、諮問に掲げられた検討事項のうち、教員養成課程のカリキュラムの改善と特別非常勤講師制度の改善に係るものが中心である。修士課程を積極的に活用した養成の在り方はじめ残されたいくつかの検討課題については、今後、本審議会として更に審議を進め、結論の得られたものから答申を行うこととしたい。また、近年の教員採用の状況など教員養成に関わって今後留意を要する事柄もいくつかある。
 最後にこれらについて若干付言し、本答申のむすびとしたい。

1.今後の審議について

 昨年7月の諮問に掲げられた検討事項のうち、本答申において取り扱われていないのは、1)修士課程を積極的に活用した養成の在り方、2)養成と採用・研修との連携の円滑化、3)教員養成に携わる大学教員の指導力の向上、の3点である。
 うち、1)については、総会における自由討議等において、修士課程で現職教員の再教育を充実すべきこと、教員養成に修士課程をより積極的に活用することと育英奨学等それを促す措置の必要性などに関し指摘が既になされているが、詳細については今後改めて審議を深める必要がある。
 また、2)及び3)については、本答申においても、問題点の指摘を中心に部分的に触れられているが、具体的かつ体系的な改善方策を明らかにすることは今後の課題である。
 なお、本文でも記したが、本答申において提言した教員養成カリキュラムの改善方策に関わり、養護教諭の養成カリキュラムについては、保健体育審議会の審議状況等も踏まえ、今後更に具体的に検討する必要がある。

2.その他教員養成に関わり留意すべき事柄について

 「はじめに」でも触れたように、教員養成を巡る状況の変化は著しく、新たに多くの課題が生じている。
 とりわけ、教員採用の在り方は教員養成に直接的に影響を及ぼすものであり、採用方法について引き続き改善を図るとともに、採用の量的側面についても、各大学が安定的に教員養成を行うことができるよう、将来に予想される教員需要増をも念頭に置きつつ、採用数の確保や年度較差の平準化など、可能な措置を講ずることを関係者に要望したい。
 また、介護等体験特例法に基づき、平成10年度以降、小・中学校の教員免許取得希望者に介護等体験が義務付けられることに伴い、本答申で提言された新たな教員免許基準との関係や制度の具体的運用が課題となる。
 さらに、去る6月の中央教育審議会第2次答申で提言された中高一貫教育の導入については、学校制度上の位置付け等を見極めつつ、必要に応じ、教員免許状の取扱い等に関し検討を行う必要がある。
 このような諸課題の取扱いについては、本審議会としても十分に留意し、適切に対応する必要があると考える。

お問合せ先

教育助成局教職員課

-- 登録:平成21年以前 --