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今後の専門高校における教育の在り方等について(答申)(平成10年7月23日 理科教育及び産業教育審議会)

平成10年7月23日
理科教育及び産業教育審議会

はじめに

1 専門高校の現状と課題

2 専門高校における教育の改善・充実のための視点

3 専門高校における教育の改善・充実の具体的方策

4 地域や産業界とのパートナーシップの確立

5 関連して改善が望まれる事項

(参考)各教科の科目構成  (PDF:979KB) PDF
(1)教科「農業」
(2)教科「工業」
(3)教科「商業」
(4)教科「水産」
(5)教科「家庭」
(6)教科「看護」

はじめに

 理科教育及び産業教育審議会は、平成9年5月13日に文部大臣から「今後の専門高校における教育の在り方等について」諮問を受け、それ以来関係団体からのヒアリングや関係施設の視察等も実施しながら、専門高校における教育の在り方等について審議を行い、平成9年10月1日には、その基本的な考え方を中間まとめとして公表した。
 その後、本審議会は、さらに個別・具体的な改善方策について検討を重ね、ここに答申を取りまとめた。

 専門高校は、これまで有為な職業人の育成などの面で重要な役割を果たしてきた。特に中堅技術者、事務従事者などの育成を中心に我が国の産業経済の発展への寄与は極めて大きなものがある。
 我々は、今後我が国が豊かで活力ある社会を維持していくためには、このような専門高校の役割はますます重要なものになると確信すると同時に、専門高校に学ぶ生徒たちが一つの得意な分野で技術や技能をしっかり身に付け、自らの勤労観・職業観を確立し、誇りを持って社会で活躍していくことを切に願うものである。

 検討に当たって我々が特に留意したのは、次の二つの観点である。
 一つは、産業構造・就業構造の変化、科学技術の高度化、情報化、国際化、少子高齢化等現在進行している社会や経済の変化が、今後更に急速に進んでいくと見られることである。これらの変化は専門高校における教育を取り巻く状況として極めて大きな意味を持つものである。
 いま一つは、生徒一人一人の多様な個性を生かし、「ゆとり」のある中で自ら学び、自ら考え、自ら判断する等の「生きる力」を育成するための教育を展開していくという学校教育全体の改善課題は、専門高校においても重要な課題であるということである。
 我々は、併せて関係審議会の審議の動向にも留意した。中でも、平成8年7月、中央教育審議会から、「ゆとり」の中で「生きる力」をはぐくむことを目指し、学校教育の仕組みを完全学校週5日制に移行させていくことが提言されていること、その提言の趣旨を踏まえて、教育課程審議会において、今後の初等中等教育諸学校の教育内容の在り方について審議が進められていること等には特に配慮した。

1 専門高校の現状と課題

(専門高校の果たす役割と意義)

 人は、専門性を身に付け、職業を持つことによって、自らの個性を発揮し、誇りを持ち、自己実現を達成するとともに、社会とかかわり、社会的な責任を果たすことができる。その意味で、しっかりとした勤労観・職業観を育成し、職業生活に必要な専門的知識や技術・技能の基礎・基本を身に付けることを目的とする職業に関する専門教育の意義は極めて大きなものがある。今後の教育の在り方として、「ゆとり」の中で「生きる力」をはぐくむことを重視することが中央教育審議会から提言されている。職業は人が生きる上での重要な活動の一つであるので、職業に関する専門教育は、この「生きる力」の育成を図る上で主要な柱の一つともなるべきものであると我々は考える。
 専門高校は、農業、工業、商業、水産、家庭、看護などに関する学科が置かれ、それぞれの分野の職業に関する専門教育を行う場として重要な役割を果たしている。平成9年度現在、専門高校には高等学校の全生徒約436万人のうちの23.5%、約102万人が学んでいる。
 専門高校は、これまで、中堅技術者、事務従事者などを中心に我が国の産業経済の発展を担う多くの人材を輩出してきた。また、いわゆる座学だけではなく、実験・実習に多くの授業時間を充て、ものづくり等の実践を通して、望ましい勤労観・職業観をはぐくむとともに、豊かな感性や創造性を養う総合的な人間教育の場としても大きな機能を果たしてきた。
 近年、技術革新、国際化、情報化、少子高齢化等により、我が国の社会は大きく変化してきており、それに伴い就業構造の変化や職業生活において必要とされる専門能力の高度化が進んでいる。また、例えば製造業の現場において、機械中心から人中心の製造方式への転換が行われるなど、個人の創造性が重視され始めている。さらに、国民の意識や価値観も、心の豊かさの重視、多様性・選択の自由の拡大などの方向へ変わりつつある。
 このような状況を踏まえると、今後の社会においては、自ら考え、判断し行動できる資質や能力を持つとともに、高度の専門的な知識や技術・技能を有する人材(スペシャリスト)がこれまで以上に必要とされると思われる。
 したがって、今後の専門高校は、このようなスペシャリストの基礎を培うという役割を担うことが期待される。また、これまでも重視されてきた実験・実習などによる体験的・実践的な学習は、生徒の学習意欲の喚起や問題解決能力の育成等に資するものであり、今後も引き続き専門高校における学習の中心を成すべきものである。さらに、専門高校の教育に大きな責任を持つ教員も自らの専門性の向上に努め、地域や産業界とも協力しながら、専門高校の教育の改善・充実に大きな役割を果たしていくことが期待される。
 以上のような期待にこたえ、専門高校の教育内容や指導方法等の一層の改善・充実を図っていくためには、次のような点が課題であると我々は考える。

(生涯学習の視点を踏まえた教育の在り方)

 第一は、産業構造・就業構造の変化、科学技術の高度化等が進む中で、生涯学習の視点を踏まえた教育の在り方を考えていく必要があるということである。
 これまで、専門高校における教育は職業生活において必要とされる専門的知識や技術・技能を身に付けた職業人を育成するための教育、完成教育としての職業教育という側面が強調されてきた。その背景には、専門高校は職業教育をしっかりと行う場であるという意識が、関係者を含め広くあったものと思われる。しかし、近年の科学技術の進展等に伴い、産業界において必要とされる専門的知識や技術・技能は高度化するとともに、従来の産業分類を超えた複合的な産業が発展してきている。加えて、就社から就業へといった職業観の変化等も進んでおり、これまでの卒業後すぐに特定分野の産業に従事することを前提にした教育課程では、社会のニーズや生徒の希望に十分に対応できなくなってきている。
 実際、生徒の卒業後の進路を見ると、昭和60年度においては専門高校卒業後すぐに就職する者の割合は約8割であったが、平成8年度には約6割に減少している。一方で、大学や専門学校等に進学する者の割合は、同時期に約2割から約3割5分へと増加している。
 こうした状況を踏まえると、専門高校における教育内容の検討に当たっては、生徒が高等学校卒業後においても大学等の教育機関や職場等において継続して専門能力を向上させるための機会を必要としていることを考慮しなければならない。
 すなわち、生涯にわたって学習する意欲と態度を育成するとともに、基礎となる知識や技術・技能、学び方などを確実に身に付けさせることを重視した教育の在り方を検討する必要がある。

(社会の変化や産業の動向等に対応した教育内容の見直し)

 第二は、社会の変化や産業の動向等に適切に対応するため、新たな教科の創設を含め、教育内容の見直しを更に進める必要があるということである。
 専門高校における教育内容は、不断に見直しが行われており、例えば、平成6年度から実施されている現行学習指導要領においては、情報関連科目の充実や問題解決能力の育成をねらいとする「課題研究」の新設、標準的な学科の構成を改めるなどの改善が図られた。しかし、職業に関する専門教科の構成は、昭和45年の改訂以降変わっていない。
 一方、就業者数の産業部門別の割合を見ると、昭和45年には第1次産業17.4%、第2次産業35.2%、第3次産業47.3%であったが、平成8年にはそれぞれ5.5%、32.7%、61.3%と大きく変化している。特に近年、技術革新、国際化、情報化、少子高齢化等による社会や産業構造の変化は、激しさを増している。また、専門高校に学ぶ生徒の割合は、昭和45年には全高校生の40.8%を占めていたが、平成9年には、23.5%となっている。
 こうした状況を踏まえると、現行の教科構成では、社会や産業構造の変化等に十分に対応しきれていない面があると言わざるを得ず、教科の新設を含めた教育内容の見直しを検討する必要がある。

(生徒一人一人の個性を育て伸ばしていく教育の在り方)

 第三は、生徒一人一人の個性を育て伸ばしていく教育を一層推進していく必要があるということである。
 高等学校への進学率は、平成9年度現在約97%である。高等学校には、就職を希望する者、大学等への進学を希望する者などがおり、生徒の能力・適性、興味・関心、進路希望等は多様化している。また、中学校における進路指導の改善は進んでいるが、なお社会の高学歴化に伴う普通科志向や根強く残る高等学校間の序列意識の影響等により、明確な目的意識を持たずに高等学校に入学する生徒が少なからずいるという問題がある。
 例えば、文部省の平成6年度「学校教育と卒業後の進路に関する調査報告書」によれば、専門高校に入学した動機として、回答者の60.3%が「将来の仕事に役立つ知識や技術を身に付けるため」と答えている一方で、43.4%が「中学校の時の成績だとこの高校が適当だったから」と答えている。また、中途退学する者の割合も、近年微増しており、平成8年度の全日制公・私立高等学校の専門学科における在籍者に占める中退者の割合は3.3%となっている。
 こうした状況を踏まえて、今後の専門高校の教育においては、特に生徒一人一人が自らの興味・関心、能力・適性等に基づき、意欲を持って主体的に学習を進め、それぞれの個性を育て伸ばしていくことを重視した教育の在り方を検討していく必要があると考える。

(地域や産業界と連携した教育の在り方)

 第四は、専門高校における教育の改善・充実を図るためには、地域や産業界と連携した教育の在り方を考えていく必要があるということである。
 専門高校には、地域の伝統工芸や地場産業をはじめ、各分野にわたる地域産業振興の期待を担って設立されたものも少なくない。現在でも、専門高校を卒業後就職した者のうち8割以上が県内に就職しているなど、専門高校においては一般的に地域の様々な期待やニーズにこたえながら教育活動が行われている。近年、各地域においては、経済の多様かつ構造的な変化や地域密着志向の高まりといった人の価値観の変化に伴い、地域の活性化に向けた新たな取組、人材確保等の必要性が増しており、専門高校にはこれまで以上に地域社会を担う人材を育成し、地域との結び付きを強めていくことが求められている。
 また、現在、専門高校に対しては、産業社会の進展に対応した最新の知識や技術を身に付け、我が国の産業社会を支える人材を育成することに関し、各界から大きな期待が寄せられている。こうした期待にこたえるため、既に述べたとおり専門高校における教育内容は不断に見直されているが、産業界等における知識や技術の進歩の速度は速く、このような変化に十分に対応するためには、教員が学校の施設・設備によって指導することに加え、産業界等の協力を得ることが不可欠である。
 さらに、平成14年度に予定されている完全学校週5日制の実施に当たっては、学校における教育内容の厳選と学校外活動の充実や家庭及び地域社会の教育力の充実が必要であり、この意味でも産業界や地域との連携が課題となっている。
 以上のようなことから、地域と連携した教育の在り方をより積極的に考えていく必要がある。

2 専門高校における教育の改善・充実のための視点

 我々は、以上のような点を専門高校における課題と考え、これらに適切に対応していくための方策を種々検討した結果、専門高校の教育の在り方に関し、次のような視点から改善・充実を図っていくことが必要であると考えた。

1 専門性の基礎・基本の重視

 第一の課題にこたえるためには、今後の専門高校においても、将来のスペシャリストとして必要とされる専門性の基礎・基本をしっかりと身に付けさせることに教育の重点を置くことが重要である。
 社会や産業界が求める、時代にあった、あるいは高度な専門的知識や技術に柔軟に対応し得る資質や能力のある人材の育成は、高等学校教育のみにおいて完成されるものではなく、卒業後においても大学等の教育機関や職場等において継続して教育を受けるなど、生涯にわたる専門能力の向上を通して実現されるものである。
 したがって、専門高校においては、これを前提にして専門性の基礎・基本に重点を置き、教育内容の厳選を図る必要がある。

2 社会の変化や産業の動向等に適切に対応した教育の展開

 第二の課題にこたえるためには、現在進行している社会の国際化、情報化、少子高齢化や環境問題等の諸課題を踏まえて、専門高校における教育内容の見直しを行う必要がある。また、その際には、これらの問題に主体的に対応し得る問題解決能力や豊かな創造性等を有する人材の育成という観点に立った検討を行う必要があると考える。
 なお、情報化及び高齢化に関しては、いわゆる情報産業や福祉産業がそれぞれ独立の一領域を形成するに至っており、高度な情報技術者や新たな産業領域の形成に役立つような人材、介護サービスなどの充実のための人材の育成が社会的に要請されている。高等学校におけるこうした人材の育成のためには、従来の教科の枠組みの中だけでは十分に対応できるものではなく、それぞれ新たに教科を創設し、教育内容の充実を図る必要がある。

3 生徒一人一人の個性を育て伸ばしていく教育の展開

 第三の課題にこたえるためには、専門高校における生徒の多様な実態に対応し、生徒の学習の選択幅をできる限り拡大し、多様な特色ある学校づくりを行うことが大切である。
 また、これまでの専門高校における教育は、ともすれば画一的な内容で、かつ教師が知識や技術を一方的に教え込むような場合も見られたが、生徒が自ら学び、考え、創意工夫することや、生徒が望ましい勤労観・職業観を身に付け、適切かつ主体的に進路を選択できるよう支援することに、より重点を置く必要がある。

4 地域や産業界とのパートナーシップの確立

 第四の課題にこたえるためには、専門高校と地域や産業界との間にパートナーシップ(双方向の協力関係)を確立し、連携しながら教育活動を展開することが重要である。
 そのためには、まず専門高校を地域や産業界に開く活動が大切である。専門高校の持つ施設や設備の地域の人々への開放や学習機会の提供などにより、地域の活性化に貢献するとともに、学校と地域や産業界との連絡会議を設置し、地域や産業界の意見を専門高校の教育活動に反映させることが望まれる。
 一方で、学校における教育活動に地域や産業界の持つ教育力を積極的に取り込んでいくことが必要である。特に、生徒が社会における実践的な知識や技術・技能を身に付けることができるようにするためには、地域や産業界の人々を非常勤講師として招いたり、生徒の就業体験活動への協力を依頼したりするなど、地域や産業界の教育力を活用することが極めて有効である。

5 継続教育機関との連携の推進

 既に述べたとおり、職業生活において必要とされる専門的知識や技術・技能を身に付けるために必要な専門教育は、高等学校段階における教育のみでは十分ではなく、高等学校卒業後も、大学をはじめとする高等教育機関、各省庁等が所管する研究・研修機関や職場等において継続的に専門能力の向上を図ることが不可欠である。
 その際、それぞれの場における専門教育が個々ばらばらに行われるのではなく、それぞれの特色に基づきながら、十分に連携をとり、また全体として整合性のとれた教育が行われることが重要である。

6 各学校の創意工夫を生かした教育の展開

 以上のような改善・充実のための視点に加え、各学校が、地域や学校、生徒の実態等に応じて、創意工夫を生かした特色ある教育を展開できるようにすることが大切である。また、専門高校における教育は、社会や産業界の急激な変化にも柔軟に対応することが必要とされている。
 こうしたことから、国として定める教育課程の基準等については、可能な限り弾力的なものとする必要がある。

3 専門高校における教育の改善・充実の具体的方策

 以上のような六つの視点を踏まえ、専門高校における教育の改善・充実のための具体的方策を検討した結果、我々は次のような結論を得た。

1 専門高校における教育課程の基本的な基準等について

(1)専門教育に関する必修単位数について

 専門学科における専門教育に関する教科・科目の必修単位数については、これからの学校教育においては「ゆとり」を確保する必要があること、特に完全学校週5日制の実施を控え、高等学校卒業までに修得させる単位数や必修教科・科目の単位数を削減する方向にあることに加え、専門高校の今後の教育の在り方としても、専門性の基礎・基本の重視、継続教育を前提にした教育の実施、生徒の選択履修の幅の拡大等が課題であることにかんがみ、現在の30単位を25単位に削減することが適当である。
 また、現在講じられている、普通教育に関する教科・科目の単位を専門教育に関する教科・科目の単位数に含めることができる措置については、各学校ができる限り弾力的に教育課程を編成できるよう今後も継続していくこととするが、専門教科・科目の履修単位数をあまりに少なくすることは、専門学科の教育目的の達成を困難にするので、商業に関する学科については外国語に属する科目の単位を5単位まで、その他の専門学科については普通教育に関する教科・科目の単位を5単位まで専門教育に関する教科・科目の必修単位数に含めることができることとするのが適当である。専門教育に関する教科・科目の履修をもって必修教科・科目の一部又は全部に替えることができる措置については、現行の取扱いのとおりとする。
 なお、各専門高校において教育課程を編成・実施するに当たっては、関連する普通教科・科目と専門教科・科目の有機的な連携を図るよう配慮する必要がある。

(2)原則履修科目の在り方について

 原則履修科目の在り方については、生徒の多様な実態等に応じた多様な教育課程を各学校において編成する必要性が高まっている状況にあることを踏まえつつ、原則履修という形でその学科における基本的な学習の目安、専門性の基礎・基本の中核となるものを示すという積極的な意義を生かすため、原則として次のような二つの科目を各学科共通に原則履修科目とすることが適当であると考える。
 第一は、各教科における基礎的・基本的な内容で構成され、より専門的な学習への動機付けや卒業後の進路についての生徒の意識を深めることを目的とした科目である。
 第二は、各教科における「課題研究」のような、問題解決の能力や自発的、創造的な学習態度を育てるための科目である。

(3)標準学科について

 専門学科については、特定の専門分野に細分化しすぎることのないようにとの配慮もあり、その基幹的なものを標準的な学科として学習指導要領の別表に掲げている。一般にこれらを標準学科と称し、現在、六つの専門分野について39の学科(いわゆる小学科)が示されているが、もともと学科とは、基本的には設置者の判断で置くことができるものであり、その目的や内容も設置者において自由に決めることができるものである。
 実際にも、社会の変化や産業の動向、地域性等を踏まえ、近年、様々な学科が設置されてきており、このような動きは今後、ますます進んでいくものと思われる。また、このことは、それ自体、各設置者・学校における創意工夫を凝らした意欲的な取組の成果として積極的に評価すべきものである。このように考えると、標準学科を学習指導要領上に示し、新たな学科を設置する際の指針とする必要性はもはやないと考えられる。さらには、標準学科を示さないことにより、特色ある学科の設置が一層促進されることが期待される。
 ただその場合には、新たな学科の設置が単なる名称の変更に終わることのないようにすることや、専門性の基礎・基本を修得するという専門高校の在り方を踏まえ、新たな学科の内容が特定の専門分野に細分化しすぎることのないようにするといった点に留意する必要があると考える。

(4)生徒の選択幅の拡大のための工夫

 生徒一人一人の個性を育て伸ばしていく教育を展開するため、専門高校においては生徒の学習の選択幅が拡大されるよう、次のような種々の制度を積極的に活用していく必要がある。

(学科の在り方の工夫)

 専門高校における学科の在り方については、中学校段階では小学科での学習内容を十分理解した上で学科選択を行うことが難しい場合もあることから、産業技術科のような複数の分野にまたがる学科の設置、学科の枠を超えた科目履修ができるいわゆる総合選択制の導入等が一層推進されることが望まれる。また、複数の小学科を設置する専門高校においては、いわゆる一括募集・くくり募集は、生徒に対して進路変更の余地を残し、多様な選択肢の中からの進路決定を可能とするものであり、その積極的な実施が期待される。

(自校以外の学習成果の積極的評価)

 生徒の学習の選択幅を拡大するためには、多様な選択科目の開設を促進することが望まれるが、人的条件、施設・設備等の問題から困難な場合が多い。そこで、他の高等学校と連携し、生徒に他の高等学校の教科・科目を受講する機会を与え、当該学習の成果を自校の教科・科目の単位として認める学校間連携の制度を一層活用することが期待される。その場合、衛星通信等の新しい情報手段を利用することも考えられる。
 さらに、学校外における学修の単位認定については、従来は専修学校における学習成果と技能審査の成果に限られていたが、平成10年4月から、大学等における科目等履修生としての学修、ボランティア活動や就業体験活動等に係る学修なども対象となり、これらのうち高等学校教育に相当する水準を有すると認められるものは、学校長の判断で科目の履修とみなし単位を認定できることとされている。こうした制度の積極的な活用も望まれる。

2 新教科「情報」「福祉」の創設について

(1)教科「情報」について

(教科「情報」の必要性)

 近年、情報化は想像を超える規模・速度で進展し、高度情報通信社会を迎え、情報通信産業は急速に拡大している。政府の「経済構造の変革と創造のための行動計画」(平成9年5月16日閣議決定)によれば、情報通信産業の雇用規模は、平成7 (1995)年の約125万人が平成27(2015)年には約245万人に増加するとの予測が立てられている。
 こうした中で、特にソフトウェアに関し、システム全体の設計・構築や管理・運営を担当するなどの高度な情報技術者の育成や新たな産業領域の形成に役立つような人材の育成が重要な課題となっている。
 このような高度かつ多岐にわたる情報技術者等は、もとより高等学校段階の教育のみで育成できるものではないが、情報分野に興味・関心を持つ若者に、高等学校において情報科学の基礎など情報を扱う上での基礎的・基本的内容を学習する機会を提供するとともに、情報手段を駆使した実習等を通じて創造的で豊かな感性を育む場を用意することは、人材育成の上でも意義のあることと考えられる。
 しかし、こうした教育は、従来の教科「工業」「商業」等の枠組みの中だけでは十分に対応できるものではなく、これからの情報化社会を支える人材育成のため、専門教育に関する教科「情報」を新たに設ける必要がある。

(教科のねらい)

 教科「情報」は、情報に関する基礎的・基本的な知識と技術を習得させ、現代社会における情報の意義や役割を理解させるとともに、高度情報通信社会の諸問題を主体的に解決し、社会の発展に寄与する創造的・実践的な能力と態度を育てることをねらいとする。

(科目の構成等)

 上記のねらいを達成するため、教科「情報」は次のような目標や内容を持った11の科目で構成することが適当である。

「情報産業と社会」

<目標>
 情報産業と社会のかかわりについての基本的な知識を理解させ、情報への興味や関心を高めるとともに、情報に関する広い視野を養い、創造する力を伸ばし、情報分野の発展に寄与する能力と態度を育てる。

<内容>
(ア) 情報化と社会
(イ) 情報化を支える科学技術

「情報と表現」

<目標>
 情報と表現に関する基礎的・基本的な知識と技術を習得させ、豊かな表現力を伸ばすとともに、情報を適切に表現する能力と態度を育てる。

<内容>
(ア) 情報活用とメディア
(イ) 情報活用の基礎
(ウ) 情報発信の基礎
(エ) 発表能力の基礎

「アルゴリズム」

<目標>
 データ構造とアルゴリズムに関する知識と技術を習得させ、実際に活用する能力と態度を育てる。

<内容>
(ア) 数値計算の基礎
(イ) データの型とデータの構造
(ウ) 並べ替え
(エ) 検索
(オ) データベースの概要

「情報システムの開発」

<目標>
 情報システムの設計に関する知識と技術を習得させ、実際に活用する能力と態度を育てる。

<内容>
(ア) 情報システムの概要
(イ) 情報システムの設計
(ウ) ソフトウェアテスト
(エ) 運用保守

「ネットワークシステム」

<目標>
 情報通信ネットワークシステムに関する知識と技術を習得させ、実際に活用する能力と態度を育てる。

<内容>
(ア) ネットワークの基礎
(イ) ネットワークの設計
(ウ) ネットワークの運用と保守
(エ) ネットワークの安全対策

「モデル化とシミュレーション」

<目標>
 様々な現象を数理的にとらえ、コンピュータで解析し、視覚化するための知識と技術を習得させ、実際に活用する能力と態度を育てる。

<内容>
(ア) モデル化とその解法
(イ) 現象のモデル化とシミュレーション

「コンピュータデザイン」

<目標>
 コンピュータによるデザインに関する基礎的な知識と技術を習得させ、実際に創造し応用する能力と態度を育てる。

<内容>
(ア) 造形表現の基礎
(イ) 造形心理と意味の生成
(ウ) デザインの基本要素と構成

「図形と画像の処理」

<目標>
 コンピュータによる図形の処理技法や画像の処理技法、立体図形の表現に関する知識や技術を習得させ、実際に活用する能力や態度を育てる。

<内容>
(ア) 画像のデジタル化
(イ) 画像の変換と合成
(ウ) 図形の表現
(エ) 立体図形による表現

「マルチメディア表現」

<目標>
 マルチメディアによる表現活動を通して、マルチメディアによる伝達効果とその特質を理解させ、作品を構成し企画する実践的な能力や態度を育てる。
<内容>
(ア) 静止画の設計と表現
(イ) 動画の設計と表現
(ウ) 音・音楽の設計と表現
(エ) 作品の作成

「情報実習」

<目標>
 各領域の専門分野に関する技術を実際の作業を通して総合的に習得させ、技術革新に主体的に対応できる能力と態度を育てる。
<内容>
(ア) システム設計・管理領域に関する実習
(イ) マルチメディア表現領域に関する実習
(ウ) その他の実習

「課題研究」

<目標>
 情報に関する課題を設定し、その課題の解決を図る学習を通して、専門的な知識と技術の深化、総合化を図り、問題解決の能力や自発的、創造的な学習態度を育てる。

<内容>
(ア) 作品の作成
(イ) 調査、実験、研究
(ウ) 産業現場等における実習
(エ) 職業資格の取得

(卒業後の進路と資格等)

 卒業後の進路については、ネットワーク管理関連産業、プログラム開発関連産業、データベース管理関連産業、電子出版関連産業、コンピュータ・グラフィック製作関連産業、マルチメディア表現関連産業など、情報化の進展に伴う多様な情報関連産業への就職、情報関係の大学、短期大学、専門学校等への進学が考えられる。
 各学校においては、第二種情報処理技術者や情報処理活用能力検定、マルチメディア検定、画像情報処理技能検定、マルチメディアソフト制作者能力検定などの関連職業資格等の取得や大学等進学に対応した弾力的な教育課程を編成するように工夫する必要がある。
 なお、指導に当たっては、情報に関する知識と技術が想像を超える速度で進展していることに十分に配慮する必要がある。

(教科「工業」「商業」等における情報教育との関係)

 これまで専門学科における情報に関する教育は、主に工業の情報技術科、商業の情報処理科において行われてきた。情報技術科では、工業の各分野におけるコンピュータを利用した制御技術や情報関連機器の製造等の技術の習得、情報処理科では、経営活動に必要な情報処理・情報活用能力の育成が図られている。また、工業・商業以外の各教科においても、各専門分野の情報に関する基礎的な学習が行われている。このような各教科において行われるそれぞれの産業分野にかかわる情報に関する教育は、産業社会全体に情報化が浸透している今日では、引き続き充実を図る必要がある。一方、新たに創設される教科「情報」は、従来の産業の枠にとらわれず、情報をコンピュータで扱う場合における、情報の意義、役割、表現方法等に着目した学習を中心に展開することとなる。

(2)教科「福祉」について

(教科「福祉」の必要性)

 近年、生活水準の向上に伴う健康への関心の高まりや生活様式・意識の変化により、国民の福祉ニーズは高度化、多様化するとともに、著しく増大しており、高齢者や障害者等へのよりきめ細かな介護サービスに対応できる専門的な知識や技術を有する人材の育成と確保が不可欠となっている。
 例えば、我が国の高齢化は、少子化の進展とあいまって急速に進んでおり、それへの対応は大きな課題となっている。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(中位推計)によれば、平成7年現在14.6%である65歳以上の者の割合は、平成18(2006)年には20.2%、平成27(2015)年には、25.2%となり、4人に1人が高齢者という超高齢社会を迎える。それとともに、介護を要する高齢者も急増し、その数は、平成5年の200万人から、平成12(2000)年の280万人、平成37(2025)年には520万人に達するものと見込まれている(厚生省「国民生活基礎調査」等より推計)。
 中央教育審議会の第二次答申においても指摘されているとおり、このような超高齢社会においては、高齢者を思いやる気持ちやいたわる気持ちなど、豊かな人間性を育む教育が一層重要となると同時に、これら高齢者、とりわけ要介護高齢者の自立を支援する能力や技術を持った人材を育成する必要性も高まっている。
 また、障害者についても、政府全体として総合的・計画的な取組が進められており、その重点施策実施計画である「障害者プラン」においても、障害者の社会的自立を促すとともに、介護サービスの充実のための人材の育成を図ることとされている。
 こうしたことから、福祉関連業務に従事する者に必要な社会福祉に関する基礎的・基本的な知識と技術の習得、社会福祉の理念と意義の理解、社会福祉の増進に寄与する能力と態度の育成に関する教育体制を充実し、これらの人材の育成を促進するため、専門教育に関する教科「福祉」を新たに設ける必要がある。

(教科のねらい)

 教科「福祉」は、社会福祉に関する基礎的・基本的な知識と技術を総合的、体験的に習得させ、社会福祉の理念と意義を理解させるとともに、社会福祉に関する諸課題を主体的に解決し、社会福祉の増進に寄与する創造的能力と態度を育てることをねらいとする。

(科目の構成等)

 以上のようなねらいを達成するため、教科「福祉」は次のような目標や内容を持った7科目で構成することが適当である。

「社会福祉基礎」

<目標>
 社会福祉に関する基礎的な知識を習得させ、現代社会における社会福祉の意義や役割を理解させるとともに、社会福祉の向上を図る能力と態度を育てる。

<内容>
(ア) 現代社会と社会福祉
(イ) 社会福祉の理念と意義
(ウ) 社会福祉の歴史
(エ) 社会福祉分野の現状とこれからの課題
(オ) 社会福祉の担い手と福祉社会の創造

「社会福祉制度」

<目標>
 社会福祉の法制度、社会福祉施設、社会福祉サービスなどに関する知識を習得させ、社会福祉の現状を理解させるとともに、社会福祉のサービスの向上を図る能力と態度を育てる。

<内容>
(ア) 社会福祉の法と制度
(イ) 社会福祉制度の現状と課題
(ウ) 社会保険制度
(エ) 社会福祉関連サービス
(オ) 社会福祉施設の運営

「社会福祉援助技術」

<目標>
 対人援助に関する知識と技術を総合的に習得させ、援助技術における実践的な能力と態度を育てる。

<内容>
(ア) 社会福祉援助活動の意義と方法
(イ) ケースワーク
(ウ) グループワーク
(エ) コミュニティワーク
(オ) レクリエーションの考え方と展開
(カ) コミュニケーションの技法
(キ) 福祉用具の種類と操作

「高齢者・障害者介護」

<目標>
 高齢者と障害者に対する理解を深め、高齢者と障害者の介護に関する基礎的な知識と技術を習得させるとともに、介護を適切に行う能力と態度を育てる。

<内容>
(ア) 高齢者の生活と心身の特徴
(イ) 障害者の生活と心理
(ウ) 自立生活支援と介護
(エ) 地域生活を支えるシステム
(オ) 介護における安全管理と従事者の倫理

「社会福祉実習」

<目標>
 社会福祉に関する基本的な知識と技術を習得させ、介護の実際に必要な能力と態度を育てる。

<内容>
(ア) 介護技術の基本と実際
(イ) 高齢者と障害者の介護
(ウ) 社会福祉現場実習

「社会福祉演習」

<目標>
 課題解決や事例研究などの学習を通して、専門的な知識と技術の深化、総合化を図るとともに、問題解決の能力や自発的、創造的な学習態度を育てる。

<内容>
(ア) 調査、研究
(イ) 事例研究
(ウ) ケアプラン

「福祉情報処理」

<目標>
 社会における情報化の進展と福祉サービスとのかかわりについて理解させるとともに、情報を収集・加工・発信する技術を習得させ、福祉の各分野で情報を活用する能力と態度を育てる。

<内容>
(ア) 高度情報通信社会とコンピュータ
(イ) コンピュータの活用
(ウ) 福祉サービスとコンピュータ活用
(エ) 情報のモラルとセキュリティ

(卒業後の進路と資格等)

 卒業後の進路については、高齢者や障害者の福祉施設、在宅介護サービス等の福祉関連施設・産業、病院、児童福祉施設、盲・聾・養護学校等への就職、大学・短期大学等の社会福祉、保育、看護等の学部・学科、専門学校等への進学が考えられる。
 各学校においては、地域の実情や生徒の進路希望等に応じて、介護福祉士、ホームヘルパー等の福祉関連職業資格等の取得や大学等進学に対応した弾力的な教育課程を編成するように工夫する必要がある。
 なお、指導に当たっては、障害者や障害者福祉に対する理解を深めるため、専門高校と盲・聾・養護学校との相互の連携を図ることも重要である。

3 職業に関する各専門教科・科目の内容の改善について

 職業に関する各専門教科・科目の内容については、特に、専門性の基礎・基本の重視、社会の変化や産業界の動向等に適切に対応した教育の展開という視点から見直していく必要がある。同時に、教育課程審議会の審議のまとめに示されているように、完全学校週5日制の下で「ゆとり」の中で「生きる力」をはぐくむため、教育内容の厳選を図る必要がある。
 今後の専門教育の在り方としては、農業、工業、商業など、それぞれの「業」という特定の産業分野の存在を前提にしながら、それと直接に関係した教育内容の充実を図るというこれまでの考え方を踏襲するのではなく、「農」「工」「商」といった教科の専門性に着目し、より広い観点から教育内容をとらえることも望まれる。
 その際、専門性の基礎・基本に当たるものは、時代の変化に応じて変わるものであり、「新しい専門的事項」が常に新たに構築される必要があることにも留意しなければならない。
 なお、現行の学習指導要領においては、職業に関する各専門教科・科目については、教育すべき内容が項目のみで示されている。このことが教科書や実際の指導において、教育内容を高度なものとしているとの指摘がある。このような指摘をも踏まえ、学習指導要領上、各教科・科目の内容の範囲・程度及びその取扱いについて具体的かつ限定的に明示する必要があると考える。
 また、生徒が理解しやすい授業を展開するため、分かりやすく使いやすい、かつ時代に即した教科書や補助教材の在り方、新しい情報手段の活用等による指導方法の改善についても検討することが望まれる。

(1)教科「農業」について

(改善の視点)

 農業に関しては、生活のゆとりや心の豊かさを求める国民の要望から、安全な食料の供給のみならず、国土環境の保全や余暇空間の提供など多様な機能が期待されている。また、ウルグアイ・ラウンド農業合意の実施等の社会の変化により、農産物市場の国際化や食料消費の外部化・サービス化が進展しており、一方、バイオテクノロジーや環境制御などの農業の技術革新が進展している。
 このような状況を踏まえ、農産物流通や人的交流等の国際化と情報化の進展、バイオテクノロジーの急速な進展、地球環境問題、食品産業の発展及び農業・農村と生物の特性を活用した対人サービスの増大に対応した教育内容の改善を図る。

(改善の具体的事項)

ア 教科の目標
 教科の目標については、農業の各分野の学習を通して、農業に関する諸課題について関心を持ち、解決を目指して思考を深め、創意工夫する力を育成するとともに、創造性・科学性を育成するという趣旨を明確にする。

イ 科目の構成等
 上記の改善の視点に立ち、科目の新設、削除、整理統合等を行い、現行の36科目を次の29科目とする。

<科目構成>
 農業科学基礎、環境科学基礎、課題研究、総合実習、農業情報処理、作物、野菜、果樹、草花、畜産、農業経営、農業機械、食品製造、食品化学、微生物基礎、生物工学A、生物工学B、農業経済、食品流通、森林科学、森林経営、林産加工、農業土木設計、農業土木施工、造園計画、造園技術、測量、生物活用、グリーンライフ

新設する科目とそのねらいは次のとおりである。

「環境科学基礎」

 農業生物の育成と環境の保全・創造についての体験的・探求的な学習を通して、農業と環境に関する基礎的な知識と技術を習得させ、環境及び環境学習についての興味・関心を高めるとともに、科学的思考力と問題解決能力を伸ばし、農業の各分野の発展を図る意欲的な態度を育てることをねらいとする。

「グリーンライフ」

 市民農園やグリーン・ツーリズムなど農業・農村の持つ特性を活用した余暇活動の援助に関する知識と技術を習得させ、農業生産、地域の環境・文化と対人サービスの特性を理解させるとともに、生活の改善と地域の環境・文化の継承を図る能力と態度を育てることをねらいとする。

削除する科目は次のとおりである。

「養蚕」

 養蚕を主たる学習内容とする学校・学科はほとんどなく、教育課程に取り上げられることも少ないことから削除する。

「農地開発」

 「農業土木施工」と内容の重複があるとともに、農地の整備については、農業土木施工の学習を通して学ぶことが効果的であることから削除する。

「食品製造機器」

 「食品製造」と内容の重複があるとともに、機器については、食品製造の学習を通して学ぶことが効果的であることから削除する。

整理・統合する科目は次のとおりである。

「農業科学基礎」

 農業に関する基礎的な知識と技術を習得させ、問題解決能力を伸ばすためには、生育と栽培環境との関係を理解させることがより効果的であることから、「農業基礎」と「栽培環境」を「農業科学基礎」に整理統合する。

「畜産」

 家畜の特性や飼育環境を理解し、飼育に必要な知識と技術を習得するためには、家畜の生理、栄養と飼料は統合的に学習することがより効果的であることから「飼料」を「畜産」に整理統合する。

「食品製造」

 「食品加工」は「食品製造」との重複部分が多いことから、内容を厳選し、「食品製造」に整理統合する。

「農業経済」

 農業生産及び流通の働きを理解し、経営の改善を図る能力を育てるためには、国民経済の立場から理解する「農業経済」と農家経済の立場から理解する「農業会計」とを併せて学習することがより効果的であることから、内容を厳選し、「農業会計」を「農業経済」に整理統合する。なお、複式簿記と財務諸表については、農業経営の基本的要素であることから「農業経営」に移行する。

「森林科学」

 森林のもつ多面的な機能を理解し、森林の生産性と環境保全機能の向上を図る能力を育てるためには、森林の保育と基盤整備とを併せて学習することがより効果的であることから、「育林」と「林業土木」を「森林科学」に整理統合する。

「農業土木施工」

 「農業水利」の利水・治水と「農業土木施工」の農業土木工事は、国土環境保全のための施工として関連が深いことから、内容を厳選し、「農業水利」を「農業土木施工」に整理統合する。なお、水の基本的性質については「農業土木設計」に移行する。

「造園技術」

 造園を合理的に施工・管理する能力を育てるためには、造園の施工・管理と緑化植物の育成・管理とを併せて学習することがより効果的であることから、「造園施工・管理」と「造園緑化材料」を「造園技術」に整理統合する。

「生物活用」

 園芸作物の栽培など生物とのふれあいを通して健康と生活の向上を図る能力と態度を育てるためには、園芸作物の利用と動物の利用とを併せて学習することがより効果的であることから、「生活園芸」に動物の利用を加え、「生物活用」に整理統合する。

名称変更する科目は次のとおりである。

「微生物基礎」

 「応用微生物」の内容は、微生物の基礎についての学習であることから、「微生物基礎」に名称変更する。

「生物工学A」及び「生物工学B」

 「生物工学基礎」は、植物と微生物のバイオテクノロジーを取扱う基礎的な科目である。これを植物のバイオテクノロジーを取扱う科目と、微生物と動物のバイオテクノロジーを取扱う科目とに分け、それぞれ「生物工学A」と「生物工学B」に名称変更する。

「森林経営」

 「林業経営」の主たる学習内容は、森林の測定・評価や林業の計画・管理など、森林の経営に関する学習であることから、「森林経営」に名称変更する。

(2)教科「工業」について

(改善の視点)

 工業に関しては、電子技術の発達により生産の自動化や情報通信技術の高度化などの技術革新が進展する一方、生産工場の海外移転や製造部品の輸出入が増加するなど製造業の国際化が一段と進んでいる。近年は、化石燃料の使用による地球温暖化や産業廃棄物に伴う環境問題などへの配慮が要請され、環境の保全や資源のリサイクル、クリーンエネルギーの利用など、安全性を確保し地球との共生を図る環境技術が強く求められている。
 このような状況を踏まえ、マルチメディア、高度情報通信技術、製造技術のシステム化等の技術革新、製造業の国際的な展開に対応した外国語による会話力や技術文書の理解力、環境問題に対応した教育内容の改善を図る。

(改善の具体的事項)

ア 教科の目標
 教科の目標については、「いかに作るか」から「どのようなものをいかに作るか」という能力を重視し、環境に配慮し資源を大切に使うことも含めて、創意工夫を生かす実際的な技術者を育成するという趣旨を明確にする。

イ 科目の構成
 上記の改善の視点に立ち、科目の削除、整理統合等を行い、現行の74科目を次の60科目とする。

<科目構成>
工業技術基礎、課題研究、実習、製図、工業数理基礎、情報技術基礎、材料技術基礎、生産システム技術、工業技術英語、工業管理技術、機械工作、機械設計、原動機、電子機械、電子機械応用、自動車工学、自動車整備、電気基礎、電気機器、電力エネルギー技術、電子技術、電子回路、電子計測制御、通信技術、電子情報技術、プログラミング技術、ハードウェア技術、ソフトウェア技術、マルチメディア応用、建築構造、建築施工、建築構造設計、建築計画、建築法規、設備計画、空気調和設備、衛生・防災設備、測量、土木施工、土木構造設計、土木基礎力学、社会基盤工学、工業化学、化学工学、地球環境化学、材料製造技術、工業材料、材料加工、セラミック化学、セラミック技術、セラミック工業、繊維製品、繊維・染色技術、染織デザイン、インテリア計画、インテリア装備、インテリアエレメント生産、デザイン史、デザイン技術、デザイン材料

削除する科目は次のとおりである。

「造船工学」、「工業計測技術」、「地質工学」

 これらの科目を学習する生徒は極めて少数になっており、その他科目として各学校の実情に応じて学習させることが適当となっていることから、削除する。

整理統合する科目は次のとおりである。

「機械工作」

 工作機械や生産方法の自動化に伴い、「計測・制御」で扱っている生産に関する制御技術や管理技術は「機械工作」と一体化して学習する方が効果的であるため、「計測・制御」の制御に関する内容を厳選し「機械工作」に統合する。なお、計測の内容は実習の中で実際的に扱うこととする。

「電力エネルギー技術」

 「電力技術」は電力の基礎的技術であり、「電力応用」は電力の応用技術であることから、両者を統合し一貫して学習する方が効果的であるため、内容を整理統合し、「電力エネルギー技術」とする。

「設備計画」

 「設備計画」は、設備工業に関する計画や設計を扱い、「設備施工」はそれに基づく施工の管理・運営に関する内容を扱うことから、一貫して学習する方が効果的であるため、両者の内容を整理し、「設備施工」を「設備計画」に統合する。その際、「設備施工」の空気調和の内容を「空気調和設備」に、衛生・防災の内容を「衛生・防災設備」にそれぞれ統合する。

「土木基礎力学」

 土木の基礎力学に関する内容は「水理」で水の力学を、「土質力学」で土の力学を、「土木設計」で土木力学の基礎をそれぞれ扱ってきたが、これらは土木に関する基礎力学として一体的に学習する方が効果的であるため、内容を整理統合し、「土木基礎力学」とする。

「工業化学」

 「工業化学」が基礎的内容を、「化学工業」がその利用技術を扱っていることから、一貫して学習する方が効果的であるため、内容を整理し、「化学工業」を「工業化学」に統合する。

「化学工学」

 「化学工学」は化学プラントに関する基礎的内容を、また「化学システム技術」は化学プラントの運用に必要なシステム技術を扱っており、一貫して学習する方が効果的であるため、内容を整理し、「化学システム技術」を「化学工学」に統合する。

「地球環境化学」

 地球環境や生活環境を安全に管理運営する技術は、「化学工業安全」、「環境工学」、「環境保全」においてそれぞれ扱われてきたが、一体的に学習する方が効果的であるため、3科目の内容を整理統合して「地球環境化学」とする。

「セラミック化学」

 「セラミック化学」はセラミックの基礎的性質を、「セラミック材料」はその製造及び利用法を扱っており、セラミック材料の基礎から利用法まで一貫して学習する方が効果的であるため、内容を整理し「セラミック材料」を「セラミック化学」に統合する。

「繊維・染色技術」

 「染色技術」の内容で、染色加工や着色に関する学習は実習として実際的に学習する方が効果的であるため、知識として必要な「染色技術」の内容を「繊維・染色技術」に統合する。なお、「染色技術」の実際的な学習は実習で扱うこととする。

「インテリアエレメント生産」

 「木材工芸」で扱う工芸品の加工や仕上げ方法は地域により差異があるため、「木材工芸」の共通的な材料や加工に関する内容は「インテリアエレメント生産」に整理統合し、その他の実際的な技術は実習で扱うこととする。

名称を変更する科目は次のとおりである。

「工業技術基礎」

 「工業基礎」の内容に、基礎的な環境技術や人と技術と環境の在り方などの内容を加え、これらを体験的・実際的に理解させることとし、名称を「工業技術基礎」に変更する。

「工業数理基礎」

 「工業数理」における高度な内容を厳選し基礎的な工業の数理現象を扱うこととし、名称を「工業数理基礎」に変更する。

「生産システム技術」

 「電子基礎」の電気・電子技術に関する内容を基礎的、基本的な内容に厳選し、機械技術や生産方法をシステム化する技術を取り入れ、名称を「生産システム技術」に変更する。

「工業技術英語」

 国際化の進展に伴い、「工業英語」の内容に、製品の技術的説明に必要な英会話、取扱い説明書など英語の技術文書の読み取りと作成、インターネットを利用した文書の送受信などの学習を取り入れ、より実際的な能力を高める内容とし、名称を「工業技術英語」に変更する。

「マルチメディア応用」

 コンピュータの応用技術が、業務内容の情報処理技術からマルチメディア技術を応用したシステム技術に移行していることから、「コンピュータ応用」に、マルチメディアのハード技術を取り入れ、名称を「マルチメディア応用」に変更する。

「土木構造設計」

 「土木設計」の基礎的な力学に関する内容を「土木基礎力学」に整理統合することから、「土木設計」の内容を土木構造物の基礎的な設計とし、名称を「土木構造設計」に変更する。

「社会基盤工学」

 「土木計画」に、景観や自然環境との調和など、社会基盤に関する基礎的な内容を取り入れ、名称を「社会基盤工学」に変更する。

(3)教科「商業」について

(改善の視点)

 商業に関しては、経済の国際化、情報化、サービス化の急速な進展にともない、市場の国際化、オフィスの情報化、サービス産業の拡大等の変化が生じている。また、国際的な会計基準への移行、流通システムの合理化、新たなビジネスの創造などグローバル経済への対応が一層求められている。
 このような状況を踏まえ、経済社会の変化に柔軟に対応できる人材の育成を図る観点から、実践的な語学力、情報・会計リテラシーなど、ビジネスの基礎・基本についての内容を充実するとともに、情報化の進展に対応し、販売・会計等の経営活動にかかわる情報の分析と活用に関する内容の改善を図る。

(改善の具体的事項)

ア 教科の目標
 教科の目標については、経済の国際化やサービス化の進展に対応する観点から、ビジネス教育の視点を明確にする。

イ 科目の構成等
 上記の改善の視点に立ち、科目の新設、整理統合等を行い、現行の21科目を次の17科目とする。

<科目構成>
 ビジネス基礎、課題研究、総合実践、商品と流通、商業技術、マーケティング、英語実務、経済活動と法、国際ビジネス、簿記、会計、原価計算、会計実務、情報処理、ビジネス情報、文書デザイン、プログラミング新設する科目とそのねらいは次のとおりである。

「ビジネス基礎」

 ビジネスに関する基礎的な知識と技術を習得させ、経済社会の一員としての望ましい心構えやマナーを理解させるとともに、ビジネスの諸活動に適切に対応する能力と態度を育てることをねらいとする。

整理統合する科目は次のとおりである。

「商品と流通」

 「流通経済」と「商品」は、サービス経済化に対応し、商品、流通、サービスを一体的に指導することの方が効果が高いこと、また、指導内容の重複が多いことから、内容を整理し、「商品と流通」として統合する。

「商業技術」

 「計算事務」と「商業デザイン」は、珠算、商業デザイン等の商業技術を統合し、生徒の興味・関心に応じて学ばせるため、「商業技術」に統合する。その際、商業計算は「情報処理」等で扱うこととする。なお、珠算については、伝統的な計算技術としての価値や教育的な役割を重視して内容を改善する。

「国際ビジネス」

 「商業経済」、「経営」及び「国際経済」は、経済・経営の基礎的学習を充実するとともに、国際経済に関する内容の重複を整理するため「国際ビジネス」として統合する。

「ビジネス情報」

 「情報管理」と「経営情報」は、経営活動における各種の情報を分析し活用する能力の育成を図るため、「ビジネス情報」として統合する。

名称を変更する科目は次のとおりである。

「経済活動と法」

 広く経済活動に結び付けて法規を学習できるように内容を改善するため、「商業法規」の名称を変更する。

「原価計算」

 簿記の内容を削減し科目の性格を明確にするため、「工業簿記」の名称を変更する。

「会計実務」

 税に関する内容を削減し、簿記会計の知識を活用する能力の育成に重点を置くため、「税務会計」の名称を変更する。

「文書デザイン」

 文書の作成に図形の処理などを加えプレゼンテーションを効果的に行えるようにするため、「文書処理」の名称を変更する。

(4)教科「水産」について

(改善の視点)

 水産に関しては、平成8年7月に国連海洋法条約が我が国においても効力を生じ、新たな漁業管理制度が始まり、水産資源の適切な管理が求められることとなった。このため、今後は漁場環境の保全と資源管理型漁業の定着化や広域的な展開、作り育てる漁業の実施の拡大、水産技術の開発等が重要になっている。
 また、ダイビングなどの海洋性レクリエーション産業の拡充など、海洋を取り巻く産業の多様化も進んでいる。
 このような状況を踏まえ、水産や海洋を幅広くとらえた学習の中から、「海、船、魚」に興味・関心を持たせ、望ましい勤労観・職業観を形成するとともに、水産技術の高度化、海洋環境問題、海洋性レクリエーションなど海を取り巻く産業の変化、水産物流通や人的交流等の国際化や情報化の進展、通信技術の進展等に対応した教育内容の改善を図る。

(改善の具体的事項)

ア 教科の目標
 教科の目標については、海を取り巻く産業の変化等に着目するとともに、水産や海洋を幅広くとらえて学習するという趣旨を明確にする。

イ 科目の構成等
 上記の改善の視点に立ち、科目の新設、整理統合等を行い、現行の24科目を次の20科目とする。

<科目構成>
 水産基礎、課題研究、総合実習、水産情報技術、漁業、航海・計器、漁船運用、船用機関、機械設計工作、電気工学、通信工学、電気通信理論、栽培漁業、水産生物、海洋環境、操船、水産食品製造、水産食品管理、水産流通、潜水

新設する科目とそのねらいは次のとおりである。

「潜水」

潜水に関する基礎的な知識と技術を習得させ、水産や海洋の各分野に活用する能力と態度を育てることをねらいとする。

整理・統合する科目は次のとおりである。

「水産情報技術」

 水産における情報化の進展に対応するとともに、情報教育の体系化を踏まえ、「水産情報技術」と「水産情報処理」を統合し、「水産情報技術」とする。

「水産流通」

 水産物流通の変化に対応するとともに、科目間の内容の重複を避けるため、「水産経済」と「水産食品流通」を「水産流通」に再構成する。

「海洋環境」

 海洋や陸水等の環境保全と管理、海洋工事等に関する知識、技術をより系統的に学習できるようにするため、「水産工学」と「漁場環境」を「海洋環境」に再構成する。

「通信工学」

 通信機器に関する知識・技術とその運用を一体的に学習できるようにするため、「通信技術」を「通信工学」に統合する。

「水産食品管理」

 水産食品の衛生や品質管理の高度化等に対応して、「水産食品化学」と「水産食品衛生」を統合し、「水産食品管理」に再構成する。

名称変更する科目は次のとおりである。

「水産基礎」

 水産や海洋に関する基礎的な知識と技術に重点を置くこととし、「水産一般」を名称変更し、「水産基礎」とする。

(5)教科「家庭」について

(改善の視点)

 家庭に関しては、社会の少子高齢化が進むとともに、女性の社会進出や単身赴任などの増加による家事の社会化・外部化が進行している。また、国民のニーズは、ものの豊かさから心の豊かさへ、画一・均質から多様性・選択の自由の拡大などの方向へと向かっており、生活関連産業は、多様な消費者ニーズに対応して、高度化、サービス化していく状況が見られる。
 このような状況を踏まえ、保育や家庭看護と介護などに関する教育内容の充実を図るとともに、生活関連産業の高度化、サービス化、消費者ニーズの多様化等に対応した教育内容の改善を図る。さらに、調理師養成制度の改正や保母の受験資格など、職業資格要件の変更等に対応した科目構成や教育内容の改善を図る。

(改善の具体的事項)

ア 教科の目標
 教科の目標については、生活産業の各分野で必要とされる資質や能力の育成を重視するという趣旨を明確にし、普通教育としての家庭科と職業に関する専門教育としての家庭科が一つの目標として示されている扱いを改め、それぞれの目標を区別して示すこととする。

イ 科目の構成等
 上記の改善の視点に立ち、科目の新設、削除、整理統合等を行い、現行の23科目を次の19科目とする。

<科目構成>
 生活産業基礎、課題研究、家庭情報処理、消費生活、発達と保育、児童文化、家庭看護・福祉、リビングデザイン、服飾文化、被服製作、ファッションデザイン、服飾手芸、フードデザイン、食文化、調理、栄養、食品、食品衛生、公衆衛生

新設する科目とそのねらいは次のとおりである。

「生活産業基礎」

 生活と産業とのかかわりや生活に関連する職業について理解させ、生活関連産業に関心を持つとともに、必要な知識と技術を進んで習得しようとする意欲と実践的な態度を育てることをねらいとする。

「食文化」

 食生活の変遷や発展、我が国と世界の食文化に関する基礎的な知識と技術を習得させ、食文化を伝承するとともに創造することのできる能力と態度を育てることをねらいとする。

削除する科目は次のとおりである。

「家庭経営」及び「被服管理」

 普通教育の家庭科の科目や他の専門科目の内容との重複を厳選するため削除する。

整理統合する科目は次のとおりである。

「発達と保育」

 「保育」、「小児保健」、「児童心理」及び「児童福祉」については、保母試験の受験資格廃止に対応して内容を見直し、乳幼児の生活と発達、保育の意義と基本原理などに重点を置いて、「発達と保育」に整理統合する。

「児童文化」

 「保育」及び「保育原理・技術」については、保母試験の受験資格廃止に対応して内容を見直し、乳幼児の遊び、児童文化財と創作活動などに重点を置いて、「児童文化」に整理統合する。

「服飾文化」

 服飾についての文化的側面の学習を重視して、「被服」、「被服製作」の着装、「服飾デザイン」の服飾の変遷、服飾と流行などの内容を、「服飾文化」に整理統合する。

「被服製作」

 「被服材料」については、被服材料の加工等、高度な内容が含まれることから、基礎的・基本的な事項に精選するとともに、製作と統合的に学習することの効果が大きいことから、その内容を「被服製作」に整理統合する。

名称を変更する科目は次のとおりである。

「消費生活」

 「消費経済」については、消費者ニーズの多様化等に対応するとともに、実際的・具体的な学習活動ができるよう内容を再構成し名称を変更する。

「リビングデザイン」

 総合的な科目「住居」を職業教育の視点を重視して内容を再構成し名称を変更する。

「ファッションデザイン」

 「服飾デザイン」については、衣服を中心とした扱いから、身に付けるものを総合的に考えてデザインする視点を重視して内容を再構成し名称を変更する。

「服飾手芸」

 「手芸」については、ファッションデザインの表現の手法や被服材料の技法の習得に重点を置いて内容を再構成し、名称を変更する。

「フードデザイン」

 総合的な科目「食物」を職業教育の視点を重視して内容を再構成し名称を変更する。

(6)教科「看護」について

(改善の視点)

 看護に関しては、高齢化の進展と疾病構造の変化に伴い、患者のクォリティー・オブ・ライフ(生活と人生の質)を重視した在宅医療及び看護に対する社会的要請が増大していることに対応した教育内容の改善を図る。

(改善の具体的事項)

ア 教科の目標
 教科の目標については、看護教育としての基本的なねらいに変更はないので、現行どおりとする。

イ 科目の構成等
 科目構成については、職業資格取得との関連を考慮し、次のとおり現行と同じとするが、生徒がゆとりを持って学習できるよう、「看護基礎医学」や「成人看護」のように内容の範囲が広範である科目については、基礎的事項に重点をおくようにするなど内容の精選を図る。

<科目構成>
 基礎看護、看護基礎医学、成人・老人看護、母子看護、看護臨床実習、看護情報処理

次の科目については名称を変更する。

「成人・老人看護」

 高齢化の進展に対応し、「成人看護」における老人の看護と福祉や在宅看護に関する内容の充実を図り、名称を「成人・老人看護」と変更する。
 なお、准看護婦養成制度の動向を踏まえ、必要に応じて適切な措置を講ずる必要がある。

4 地域や産業界とのパートナーシップの確立

 既に述べたとおり、今後の専門高校の教育の改善・充実を図っていく上で、地域や産業界とのパートナーシップ(双方向の協力関係)をいかに確立していくか、ということが極めて重要な条件の一つである。
 専門高校はもともと地域の産業振興の期待を担って設立されたものも少なくなく、これまでも地域や産業界と連携しながら、教育活動が行われてきている。
 しかし、完全学校週5日制の下で、一層充実した専門教育を行っていくためには、これまで以上に地域や産業界との連携が必要になる。また、単に地域や産業界の協力を仰ぐというだけではなく、専門高校の教育力を地域に還元することにより、専門高校と地域や産業界との間でパートナーシップを築くという視点が不可欠である。
 このような考え方に基づき、地域や産業界と連携した教育を推進するための具体的方策を検討した結果、我々は次のような結論を得た。

1 生徒の在学中における就業体験(インターンシップ)の推進について

(1)インターンシップの推進の必要性

 専門高校においては、これまでも「課題研究」や各科目の実習の一部として、産業現場等における実習(いわゆる「現場実習」)が教育課程上に位置付けられた形で行われてきたところである。現場実習においては、実際的な知識や技術・技能に触れることが可能となるとともに、生徒が自己の職業適性や将来設計について考える機会となり、主体的な職業選択の能力や職業意識の育成が図られるなど、高い教育効果を有するものである。
 しかし、現時点においては、衛生看護科における病院での実習等、資格取得の条件となっているため、長い実践の積み重ねがある分野もある一方で、現場実習を実施している割合を各学科ごとに見ると、農業で約4割、工業で約1割、商業で約2割など、総じて専門高校が現場実習に積極的に取り組んでいるといえる状況ではない。この背景には、受け入れ企業等を見つけるのが容易でない、現場実習の実施事例に関する情報が不足しているなどの理由があると思われる。
 また、現場実習のような教育課程上に位置付けられたもののみならず、地域によっては、学校とは関係なく企業等が主体となって職場体験のプログラムを企画する例も見られる。平成10年4月から、専修学校における学習成果や技能審査の成果と同様、学校外におけるこうした活動についても、単位認定できる途が開かれたところである。
 こうした現状を踏まえると、これまで現場実習として取り組まれてきた実践に基づきつつ、更に幅広く生徒が在学中に自らの学習内容や将来の進路等に関連した就業体験を行うことをインターンシップとして奨励し、専門高校における教育活動の一層の充実や生徒の勤労観・職業観の育成を図ることが必要である。

(2)インターンシップの教育上の意義

 インターンシップは、学校における教育活動だけでは不十分な部分を補完する機能を持ち、学校内の教育と有機的な連携を図ることにより、次のような高い教育効果を期待することができる。
 第一に、職業の現場における実際的な知識や技術・技能に触れることが可能となるとともに、学校における学習と職業との関係についての生徒の理解を促進し、学習意欲を喚起するなど、専門高校における教育内容・方法の改善・充実に資することができる。
 第二に、生徒が自己の職業適性や将来設計について考える機会となり、主体的な職業選択の能力や高い職業意識の育成が促進される。
 第三に、インターンシップの場は、生徒が教員や保護者以外の大人と接する貴重な機会であり、異世代とのコミュニケーション能力の向上も期待できる。

(3)インターンシップの実施形態

 インターンシップの実施形態は、大きく分けて、学校が主体となって行うもの、企業等が主体となって行うものの二つが考えられる。
 学校が主体となって行う場合には、各教科における「課題研究」や各科目の実習、あるいは特別活動の一環として取り組むことが考えられる。また、地域の実態等に応じ、各設置者や学校の判断により、インターンシップを行うための単独の科目を設けることも考えられる。
 そのため、現在、学習指導要領においては、各教科・科目の実習時間数のうち、現場実習をもって替えることができる時間数を10分の7以内に制限しているが、現場実習への取組をより一層弾力的にするために、この制限については廃止することが適当であると考える。
 一方、企業等が主体となってインターンシップのためのプログラムを用意し、それに生徒が参加するということも考えられる。このような学校外における就業体験活動等の単位認定に当たっては、必要に応じてオリエンテーションの実施、計画書の提出、活動レポート等による成果の報告など、学校による事前・事後の適切な指導が望まれる。

(4)インターンシップの実施上の留意事項

(インターンシップと報酬との関係)

 インターンシップは、教育活動の一環として行われるものであり、いわゆるアルバイトとは明確に区別されなければならない。したがって、原則としては、インターンシップによる企業等での就業体験につき、その対価として報酬を得ることは望ましくない。しかし、インターンシップの態様によっては、交通費、食費等の実費や何らかの報酬が支払われる場合も想定される。その場合にもそのことによりインターンシップの教育的意義やねらいが損なわれることがないよう十分に留意する必要がある。

(インターンシップと就職・採用活動との関係)

 高等学校におけるインターンシップは、就職・採用活動と結び付けられるべきものではない。その企画、実施に当たって、学校は受け入れ事業所等関係者にその趣旨やねらいなどについての十分な理解を求め、インターンシップの名を借りた早期の採用活動が行われることにならないよう留意すべきである。

(安全の確保や事故等の防止)

 インターンシップ中の生徒の事故等の防止については、学校、企業等の双方において十分に留意する必要があるが、インターンシップの現場における安全の確保に関しては、企業等において責任を持った対応が必要である。
 また、生徒が企業等に損害を与える場合も含め、万一に備え、学校と企業等との間で責任の所在と役割分担を明確にするとともに、保険への加入等必要な措置をとることが望まれる。

(5)インターンシップの推進方策

 専門高校においては、すでに現場実習という形で、インターンシップへの取組が始められているが、積極的な取組が行われている学校はまだ一部にすぎない。その原因の一つは、インターンシップの実施に必要な情報が不足していることが考えられる。
 そのため、文部省においては、現場実習も含めインターンシップの全般的な状況について把握に努めるとともに、様々な実践例について積極的に情報提供することが望まれる。
 また、学校側のニーズと企業等のニーズを効果的に結び付けるため、各地域ごとに産業教育振興会等を活用しながら、学校と企業、関係行政機関等が協議する場を設けることも考えられる。

2 社会人講師等の積極的活用について

 生徒が産業界等における最新の知識や技術を身に付けたり、望ましい勤労観・職業観を育成するために、各分野の第一線で活躍する学校外の職業人等を学校に招き、学校における教育活動に協力してもらうことは有意義なことである。
 文部省では、教科の領域の一部又はクラブ活動を担任する非常勤講師については、教員免許状を有しない者を充てることができるよう、特別非常勤講師制度を導入しているが、この制度の一層の活用が期待される。また、地域の人々、保護者や教職経験者等によるボランティアとしての学校教育への支援を一層促すことも考えられる。
 社会人講師等の活用を図るためには、日ごろから校長や教職員が積極的に人脈を広げる努力をすることが大切である。また、教育委員会と産業教育振興会、各種の業界団体等とが協力して、学校教育への協力が可能な人材のリストを作成することも効果的である。

3 地域に開かれた学校づくりについて

 専門高校と地域とのパートナーシップを確立するためには、地域からの協力を求めるのみならず、専門高校の教育力を地域に還元していく努力も重要である。そのためには、専門高校を地域に積極的に開いていくことが必要である。
 専門高校においては、その専門教育のために、実験・実習等のための優れた施設・設備等が整備されている。現在でも、これらを活用して市民農園の実施、小中学生を対象としたものづくり教室やパソコン教室の実施など、施設・設備の地域への開放が行われているが、今後一層これらを推進していくべきである。
 また、生徒が自らの学習の成果によって身に付けた専門性を生かしたボランティア活動を推進することも有意義である。

4 専門高校と地域との協力体制について

 専門高校と地域とがパートナーシップを確立し、地域の人材育成に共同して当たっていくためには、例えば、設置者や校長の判断により両者の間で意見交換をする恒常的な場を設けるなど、学校運営に関して地域の意向を把握・反映することが重要である。
 その際には、学校における教育活動に関し、積極的に情報提供するとともに、関係者から学校に対する意見を聞き、それをその学校の教育の改善・充実に反映させ、具体的な成果に結実させることが望まれる。

5 関連して改善が望まれる事項

1 資格取得

 専門高校の生徒が目的意識を持って意欲的に学習活動に取り組むことを促す上で、生徒が専門高校において身に付けた技術・技能を積極的に評価することは極めて意義のあることである。
 このため、専門高校においては、生徒に職業資格の取得等を奨励するため、職業資格に関連した科目の開設や技能審査の成果の単位認定制度の活用等を図る必要がある。また、社会や企業も、こうした生徒の取得した資格や実習作品等の学習成果を積極的に評価することが望まれる。
 資格試験の中には、専門高校の生徒が受験するには求める知識や技術・技能の程度が高すぎたり、受験の要件として、高等学校において多数の科目を修得することを条件にしている例も見られる。特に後者の場合、完全学校週5日制の実施に向け教育内容の厳選が求められている中で、専門高校における教育課程の編成が硬直化するなどの問題点が指摘されている。
 資格取得が持つ積極的な意義にかんがみ、資格取得を目指しつつ、各学校の創意工夫による教育課程の編成が可能となるよう、資格要件の弾力化や学校教育への種々の配慮について、文部省や学校関係者から関係する省庁や団体等に対し、積極的に働きかけることが必要である。

2 進路指導の改善・充実

(1)中学校における進路指導

 中学校における進路指導については、業者テストによる偏差値に依存したものから、生徒一人一人の能力・適性、興味・関心、進路の希望等を配慮したものに改めるために、様々な努力が行われてきた。しかし、高等学校に入学してくる生徒の中には明確な目的意識を持っていない者も依然としており、進路指導の一層の改善・充実が望まれている。
 特に専門高校については、専門高校に関する正確な情報が十分に中学生に伝わっていないという問題がある。
 そのため、専門高校は、自ら積極的に情報提供に努める必要がある。中学生の専門高校への体験入学について、例えば複数の学校での体験を可能とするようその機会を増やしたり、逆に専門高校の教員が中学校に出張授業したりするようなことも考えられる。各都道府県において開催されている産業教育フェア等への中学生の積極的な参加も望まれる。また、情報ネットワークを活用した進路情報の提供も考えられる。さらに、中学校の教員が専門高校についての正しい知識を持つことは極めて重要であり、各種研修において専門高校の見学等の機会を増やし、内容を充実することが望まれる。

(2)専門高校における進路指導

 専門高校における進路指導については、生徒が社会人として求められる基本的なコミュニケーション技術を身に付けるとともに、学校で学んだ専門の基礎・基本を生かして、卒業後にあっても、将来のスペシャリストを目指して様々な場や機会をとらえて学び続ける意欲や態度を育成することが大切になっている。そのため、インターンシップや社会人の講話、それらに基づく進路学習を、入学時から計画的、継続的に行い、生徒が将来、社会人としてどのように生きていくのかを考え、職業や勤労について積極的な態度を持つことができるよう指導・援助する必要がある。
 また、生徒が学校生活によりよく適応し、専門高校で学ぶ意義を理解して目的を持って日々の学習や活動に取り組むよう、入学時のガイダンスや教育相談を一層充実したり、入学後の早い時期に職場見学や職場体験を実施したりすることが望まれる。

3 大学等との接続

 生涯学習の視点に立ち、継続的に専門能力の向上を図るためには、専門高校の卒業後においても継続して学ぶ場を確保することが重要である。
 継続教育の場としては、生徒のニーズに応じ、大学、専門学校、高等学校専攻科など多様な場が用意されていることが望まれる。また、新しい情報手段の利用により学習機会を拡大することも可能であり、例えば、大学教育を全国放送している放送大学は継続教育の場として有効である。
 大学にあっては、入学者選抜において、専門高校卒業生に対する推薦入学や専門高校卒業生選抜の一層の拡大、専門高校において取得した職業資格等の重視、入試での職業科目の出題などの配慮・工夫が求められる。同時に、個々の学生の個性やニーズに対応したきめ細かな教育を行うため、補習教育の実施や専門高校での学習成果を踏まえたカリキュラムの工夫を行うなどの配慮も求められる。
 専門学校についても、専門高校の卒業生のうち約2割が進学しているという実態を踏まえ、専門高校の教育内容に接続した専門学校のカリキュラムの開発など、両者の連携を図ることが望まれる。
 専攻科については、水産や看護の分野を中心に、より高度な技術の習得や職業資格の取得を目指した教育が行われている。専攻科は、専門高校と連続したカリキュラムを編成するのが容易であり、このような特色を生かした教育内容の充実が望まれる。なお、制度的には、専攻科修了者は高等学校卒業者と同様の取扱いとなっており、専攻科での学習成果が社会的に必ずしも十分に評価されていない。こうした社会的評価を改めるため、専攻科の在り方について改善方策を検討する必要がある。

4 普通科における職業教育の充実

 職業生活に必要な基礎的な知識や技術・技能の習得や、しっかりとした勤労観・職業観の育成はすべての人に必要なものである。また、急速な社会の変化に伴い、学校教育終了後も生涯にわたり職業生活に必要な知識や技術・技能の向上に努める必要性が高まってきている一方で、最近の若者は働くことに対する意識が希薄であるとの指摘もなされている。
 したがって、初等中等教育における職業教育は専門高校においてのみなされるべきものという従来の認識を改め、高等学校の普通科等においても、生徒の実態に応じ、働くことの意義、喜び、楽しさや苦しさを学び、職業生活を送るための基礎的な知識や技術・技能に関する学習の機会を充実することが必要である。

5 教員の確保や研修の充実

 専門高校における教育の一層の改善を進めるためには、優れた教員の確保や研修の充実が不可欠である。
 特に、新しく教科「情報」「福祉」が創設されることに伴い、担当する教員の養成、確保のために必要な方策を講じる必要がある。
 また、専門高校においては、各専門分野に関する実践的な知識や技術・技能を身に付けさせるため、実験・実習が重視されている。実験・実習を効果的に行うためには、小人数授業による指導が不可欠となっている。さらに、生徒の選択幅を拡大するため、多様な選択科目を開設したり、コースや類型を設けることも必要となっている。こうしたことを踏まえ、今後、社会人講師等の活用も含め、教員配置の在り方について検討されることが期待される。
 教員の研修に関しては、特に産業界における技術等は日進月歩であり、教員がそうした動きに適切に対応した教育を行うことができるようにするため、職業教育担当教員に対して、産業界や大学等における研修の機会を充実することが必要である。また、今後の学校教育の充実のためには、教員は、学校外の関係者と円滑な関係を構築する能力や生徒に対しガイダンスを行う能力等も求められている。教員研修の場等においても、教員にこうした能力の向上の機会が与えられることが望まれる。

6 施設・設備の充実

 専門高校においては、その専門教育を行う上で必要な優れた実験・実習のための施設・設備等の整備が重要であることは言うまでもない。産業教育振興のための施設・設備については、産業教育振興法に基づく助成措置により、これまで計画的な整備が行われてきたところである。近年、我が国の産業社会は、技術革新や国際的な経済競争の激化等のため、急速に変化している。専門高校においても、高度な専門的知識・技術に柔軟に対応しうる資質、能力のある人材育成を担うことが求められており、最先端の技術教育を踏まえた施設・設備の整備が望まれる。
 そのためには、我が国の産業の動向、技術革新や情報化の進展を踏まえつつ、教育内容や指導方法等の改善と併せて、専門高校における施設・設備の充実を図る必要がある。
 なお、最近の厳しい行財政状況の中にあっては、既存の施設・設備の効果的な活用を一層図ることが重要である。

お問合せ先

初等中等教育局職業教育課

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