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「今後の専門高校における教育の在り方等について」 (理科教育及び産業教育審議会・中間まとめ)

平成9年10月1日
理科教育及び産業教育審議会

○ 審議の経過

 理科教育及び産業教育審議会は、平成9年5月13日に文部大臣から「今後の専門高校における教育の在り方等について」諮問を受けて以降、関係団体からのヒアリングや関係施設の視察等も実施しながら、専門高校における教育の在り方の基本的な方向について審議を行ってきた。
 専門高校は、これまで有為な職業人の育成などの面で重要な役割を果たしてきた。特に中堅技術者、事務従事者などの養成を中心に我が国の産業経済の発展への寄与は極めて大きなものがある。
 我々は、今後我が国が豊かで活力ある社会を維持していくためには、このような専門高校の役割はますます重要なものとなると確信すると同時に、専門高校に学ぶ生徒たちが一つの得意な分野で技術や技能をしっかり身につけ、自らの勤労観・職業観を確立し、誇りをもって社会で活躍していくことを切に願うものである。
 検討に当たっては、特に次の二つの観点に留意した。
 一つは、産業構造・就業構造の変化、科学技術の高度化、情報化、国際化、少子高齢化等、現在進行している社会・経済の変化が、今後さらに急速に進んでいくと見られることである。これらの変化は専門高校における教育を取り巻く状況として極めて大きな意味をもつものである。
 いま一つは、生徒一人一人の多様な個性を生かし、「ゆとり」のある中で自ら学び、自ら考え、自ら判断する等の「生きる力」を育成するための教育を展開していくという、学校教育全体の改善課題は、専門高校においても重要な課題であるということである。
 我々は、特にこの二つの観点に留意して検討を行ったが、併せて、関係審議会の審議の動向にも配慮した。なかでも、平成8年7月、中央教育審議会から、「ゆとり」の中で「生きる力」を育むことを目指し、学校教育の仕組みを完全学校週5日制に移行させていくことが提言されていること、その提言の趣旨を踏まえて、教育課程審議会において、今後の初等中等教育諸学校の教育内容の在り方について、審議が進められていること等には特に配慮した。
 これまでの検討の結果について一応のとりまとめを行ったので、ここに中間まとめとして報告するものである。

○ 審議の概要

1 変わる専門高校とその課題

 今や高等学校は、在籍生徒数が全国で約436万人(平成9年度)、同年齢層の約97%が進学する国民的な教育機関となっている。職業に関する専門学科(家庭、農業、工業、商業、水産、看護の各学科、以下「専門学科」という。)には、このうちの23.5%、約102万人が学んでいる。
 現在、生徒一人一人の個性や興味・関心を最大限に伸ばすことを目指した特色のある高等学校をつくるために、多様な教育課程の編成、生徒の選択幅の拡大など様々な改革が進められている。
 専門高校についても、これらの改革が積極的に進められているが、我々はこれからの専門高校は、生徒一人一人が各々得意分野を持ち、専門性の基礎・基本をしっかりと身につける場として、また「ものづくり」等の実践を通して豊かな感性と創造性を育む場として、なお一層の改革・改善を図っていく必要があると考えた。そして、そのためには、我々は次のような点が課題であると考えた。
 第一は、産業構造・就業構造の変化、科学技術の高度化等が進む中で、生涯学習の視点を踏まえた教育の在り方を考えていく必要があるということである。
 これまで、専門高校における教育は職業生活において必要とされる専門知識・技術を身につけた職業人を育成するための教育、完成教育としての高校教育という側面が強調されてきた。その背景には、専門高校は職業教育をしっかりと行う場であるという意識が関係者を含め、広くあったものと思われる。
 しかし、近年の科学技術の進展等に伴い、産業界において必要とされる専門的知識・技術の高度化や従来の産業分類を超えた複合的な産業の発展、就社から就業へといった職業観の変化等が進み、これまでの卒業後すぐに特定分野の産業に就職することを前提にした教育課程では、社会のニーズや生徒の希望に十分に対応できなくなっている。すなわち、専門高校における教育内容の検討に当たっては、生徒が高校卒業後においても職場や大学等の教育機関において継続して専門能力を向上していくことが必要となっていることを考慮しなければならない。
 関連して、専門高校の生徒の卒業後の進路状況を見ると、就職が昭和60年度の約8割に比べ、平成8年度には約6割に減少している一方、大学や専門学校等に進学する者の割合は、同じ期間に約2割から約3割5分へと増加している。なお、大学等の入学者選抜においては、選抜方法の多様化、評価尺度の多元化等の工夫改善が行われているが、専門高校の教育課程に十分に配慮しつつ、さらにこうした改善が一層進められることが強く望まれる。
 第二は、生徒一人一人の個性を育て伸ばしていく教育の在り方を考えていく必要があるということである。
 高等学校への進学率は、平成9年度現在約97%であり、高等学校には、就職を希望する者、大学等への進学を希望する者など、能力・適性、興味・関心、進路希望等の多様な生徒がいる。また、社会の高学歴化に伴う普通科志向や根強く残る高校間の序列意識等の影響等により、明確な目的意識を持たずに高等学校に入学する生徒が少なからずいることは、専門高校が特定の分野の専門的な教育を行う場であることから、大きな問題といわなければならない。また、これは高等学校における中退率が依然として減少していないという問題とも関連している。
 こうした状況を踏まえて、今後の専門高校の教育においては、特にこれらの生徒一人一人が自らの能力・適性、興味・関心等に基づき、主体的に学習を進め、それぞれの個性を育て伸ばしていくことを重視した教育の在り方を検討していく必要があると考える。
 第三は、社会の変化に適切に対応していくため、新たな教科の創設を含め、教育内容の見直しを検討する必要があるということである。
 社会や産業構造の変化等に適切に対応するため、専門高校における教育内容は不断に見直しが行われている。例えば、平成6年度から実施されている現行学習指導要領においては、情報関連科目の充実や問題解決能力の育成に役立つ「課題研究」の新設、標準的な学科の種類の増加などの改善が図られたところである。こうした措置を踏まえ、各学校・設置者は、様々な取組を行ってきており、例えば、平成8年度までに特色ある学科・コース・類型等として47都道府県9市で、379校、490学科、206コース・類型が設置されている。
 しかし、近年、社会や産業構造の変化が激しさを増しているにもかかわらず、学習指導要領における職業に関する教科は、昭和45年の改訂以降6教科のままであることから、専門高校における教科の在り方が、このような変化に対応しきれていない点があり、そのためには教科の新設を含めた教育内容の見直しを検討する必要があると考える。

2 専門高校における教育の改善・充実の基本的方向

 我々は、以上のような点を専門高校における課題と考え、これらに適切に対応していくための方策を種々検討した結果、専門高校の教育の在り方に関し、次のような方向で改善・充実を図っていくことが必要であると考えた。

(1)専門性の基礎・基本の重視

 近年の科学技術の進展等に伴い、社会や産業界においては、時代にあった、あるいは、高度な専門的知識・技術に柔軟に対応しうる資質、能力のある人材が求められている。しかし、このような人材の育成は、高校教育のみにおいて完成されるものではなく、卒業後においても職場や大学等の教育機関において継続して教育を受けるなど、生涯にわたる専門能力の向上を通して実現されるものと考えられる。
 また一方で、我が国においては生涯学習体系への移行が着実に進み、大学における社会人特別選抜の実施の拡大等、人々が人生の各時期に応じて必要な学習を行う場が漸次整備されてきている。
 このような状況を踏まえると、今後の専門高校においても、将来のスペシャリストとして必要とされる「専門性」の基礎・基本をしっかりと身につけさせることに教育の重点を置くことが重要であり、このような考え方に従って、専門高校はその教育の在り方の改善に努める必要があると考える。
 なお、生涯学習の視点に立ち卒業後の継続教育を前提にした教育を有効に実施していくためには、一つ一つの知識や技術には、それを習得する上での適時性があるということを念頭におきながら、専門高校段階で身につけるべき内容を整理する必要がある。

(2)生徒一人一人の個性を育て伸ばしていく教育の展開

 生徒一人一人の多様な個性を育て伸ばしていくためには、各学校・設置者の工夫による特色ある学科・コース・類型等の設置、多様な科目の開設等を一層進めるとともに、単位制、学校間連携、専修学校における学習成果や技能審査の成果の単位認定等の制度の活用を図り、必修教科・科目等による基礎・基本の学習に加え、生徒が幅広く学習できるよう選択履修の幅の拡大に努めることが特に重要であると考える。
 その際には、安易な科目選択に偏ることがないよう、生徒の適切かつ主体的な科目選択や進路決定を援助するために、学校におけるガイダンス機能の充実を併せて図る必要がある。
 同時に、生徒の学習意欲を向上させるためには、中学校、高等学校を通じて進路指導の充実、望ましい勤労観・職業観の育成や、授業において、教師が知識や技術を一方的に教え込むのではなく、生徒が自ら学び、自ら考え、創意工夫することをより重視した指導が望まれる。
 また、生徒が目的意識を持って意欲的に学習活動に取り組むことを促す上で、生徒が専門高校において身につけた技能・技術を社会や企業が積極的に評価することは極めて意義のあることであり、そのための評価の仕組みを整備することも重要である。このためには、技能審査の成果の単位認定制度の一層の活用、新しい技能・技術検定の創設等について更に検討する必要がある。一方、専門高校の側からも、生徒の技能・技術について社会へ積極的にアピールすることも重要なことと考える。
 なお、これに関連して各種の職業資格等に関し、その取得の要件として、高等学校において数多くの教科・科目の修得を求めたり、大学卒業等の学歴要件を定めている場合が見られるが、このことが特色ある多様な教育課程の編成を阻害したり、個人のキャリア形成の上で障害となることがあると考える。この問題については、関係省庁との連携を図ることも含め、今後更に検討していく必要があると考える。

(3)社会の変化や産業の動向に適切に対応した教育の展開

1)教育内容の改善の方向

 現在、我が国においては社会の国際化や情報化、高齢化等の大きな変化が進みつつあり、これに伴って経済のサービス化、国際化も進行している。また、環境問題という地球規模の課題にも直面している。これらはあらゆる産業分野に影響を及ぼしている問題であり、専門高校における教育内容の見直しをも迫るものとなっている。
 例えば、国際化については、人と人との相互理解・相互交流がその基本であり、異文化を理解し尊重する態度や外国語による実践的なコミュニケーション能力の育成の重要性を増大させている。また、環境問題は人類の生産活動そのものに由来し、専門高校における産業に関する教育に密接に関連するものである。専門高校における各教科の教育内容の改善に当たっては、これらの問題に主体的に対応しうる問題解決能力や豊かな創造性等を有する人材の育成という観点に立った検討を行う必要があると考える。
 なお、情報化、高齢化に対する対応については、別途述べるとおりである。
 さらに、(1)で述べた専門性の基礎・基本を重視した教育活動を展開していくに当たっては、そこで扱われる教育内容は不断に見直されることが必要であり、時代の変化に応じた「新しい専門的事項」が常に新たに構築される必要があることにも留意しなければならない。
 また、今後の専門高校の在り方として、農業、工業、商業など、それぞれの「業」という特定の分野の存在を前提にしながら、それと直接に関係した教育内容の充実を図るというこれまでの考え方を踏襲するのではなく、「農」「工」「商」といった教科の専門性に着目し、より広い視点から教育内容をとらえることも考えられてよい。

2)情報化への対応

 これまで専門学科における情報に関する教育は、主に商業の情報処理科、工業の情報技術科において行われ、情報化の進展に対応してその見直しが図られてきた。その内容は、情報処理科においては、経営活動に必要な情報処理・情報活用能力の育成、情報技術科においては工業の各分野におけるコンピュータを利用した制御技術やプログラミング技術、情報関連機器の製造等の技術の習得が中心となっている。また、商業・工業以外の各教科においても、各専門分野の情報に関する学習の基礎となる科目が設置されている。
 しかしながら、近年、情報化は想像を超える規模・速度で進展し、高度情報通信社会を迎え、情報通信産業は急速に拡大している。政府の「経済構造の変革と創造のための行動計画」(平成9年5月16日閣議決定)によれば、情報通信産業の雇用規模は、1995年の約125万人が2015年には245万人に増加するとの予測が立てられている。
 こうした中で、特にソフトウェアに関し、システム全体の設計や管理・運営を担当するなどの高度な情報技術者の育成や新たな産業領域の形成に役立つような人材の育成が重要な課題となっている。
 このような高度かつ多岐にわたる情報技術者等は、もとより高等学校段階の教育のみで育成できるものではないが、情報分野に興味・関心を持つ若者に、高等学校において情報科学の基礎など情報を扱う上での基礎的・基本的内容を学習する機会を提供するとともに、情報メディアを駆使した実習等を通じて新鮮な感性を育む場を用意することは、人材育成の上でも意義のあることと考えられる。
 しかし、こうした教育は、従来の「商業」「工業」等の枠組みの中では十分に対応できるものではなく、これからの情報化社会を支える人材育成のため、専門教育に関する教科「情報」(仮称)を新たに設ける必要がある。
 なお、この専門教育に関する教科「情報」(仮称)における具体的な学習内容、教科「工業」及び「商業」の情報関連科目や別途新設が検討されている普通教育に関する教科「情報」(仮称)における学習内容との関係、専門教育に関する教科「情報」(仮称)を学習した生徒の卒業後の進路の在り方等については、更に検討する必要がある。

3)高齢化や福祉ニーズへの対応

 近年、生活水準の向上に伴う健康への関心の高まりや生活様式・意識の変化により、国民の福祉ニーズは高度化、多様化するとともに、著しく増大しており、高齢者や障害者等へのよりきめ細かな介護サービスに対応できる専門的な知識・技術を有する人材の養成と確保が不可欠となっている。
 例えば、我が国の高齢化は、少子化の進展と相まって急速に進んでおり、それへの対応は大きな課題となっている。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(中位推計)によれば、平成7年現在14.6%である65歳以上の者の割合は、平成18(2006)年には20.2%になった後、平成27(2015)年には、25.2%となり、4人に1人が高齢者という超高齢社会を迎える。それとともに、介護を要する高齢者も急増し、その数は、平成5年の200万人から、平成12(2000)年の280万人、平成37(2025)年には520万人に達するものと見込まれている(厚生省「国民生活基礎調査」等より推計)。
 この超高齢社会に対応する教育の在り方については、中央教育審議会の第二次答申において、高齢者を思いやる気持ちやいたわる気持ちなど、豊かな人間性を育むことが重要であるなどの具体的な提言が行われているが、同時に、これら高齢者、とりわけ要介護高齢者の自立を支援する能力や技能をもった人材養成の必要性も高まっている。
 また、障害者についても、政府全体として総合的・計画的な取組が進められており、その重点施策実施計画である「障害者プラン」においても、障害者の社会的自立を促すとともに、介護サービスの充実のための人材養成を図ることとされている。
 こうしたことから、福祉関連業務に従事する者に必要な福祉に関する基礎的・基本的な知識と技術の習得、福祉の理念と社会的意義の理解、社会福祉の増進に寄与する能力と態度の育成に関する教育システムを充実し、これらの人材の養成を促進するため、専門教育に関する教科「福祉」(仮称)を設ける必要があると考える。
 なお、専門教育に関する教科「福祉」(仮称)における具体的な学習内容、教科「家庭」等における学習内容との関係、専門教育に関する教科「福祉」(仮称)を学習した生徒の卒業後の進路の在り方等については、更に検討する必要がある。

(4)産業界や地域との連携の強化

 専門高校には、伝統工芸品産業や地場産業をはじめ、各分野にわたる地域産業振興の期待を担って設立されたものも少なくない。こうした例も含め、専門高校は地域社会と深い関わりを持ちながら発展してきたといえる。
 現在でも、専門高校を卒業後就職した者のうち8割以上が県内に就職しているなど、専門高校においては一般的に地域の様々な期待やニーズに応えながら教育活動が行われている。
 また、各地域においては経済の多様かつ構造的な変化に伴い、活性化に向けた新たな取組み、人材確保等を行う必要性が高まっており、専門高校にはこれまで以上に地域社会を担う人材を育成し、地域との結びつきをより強めていくことが求められている。
 具体的には、地域の伝統産業における技能の伝承への貢献、企業等外部からの寄付金により運営される「地域連携講座」の開設、公開講座の開催等による社会人に対する学習機会の提供等の方策が考えられる。文部省では「専門高校等と産業界の連携推進事業」を実施するなど、その具体化に努めているところであるが、各専門高校においても、専門高校と地域との連携・協力の重要性について改めて認識し、積極的な取組を行う必要がある。

(5)各学校の創意工夫を生かした教育の展開

1)専門教育の必修単位数について

 これからの学校教育の目指す方向は、知識習得に偏りがちであった教育から、「ゆとり」の中で、自ら学び、自ら考え、自ら判断する等の「生きる力」を育成する教育への転換を図ることである。現在、30単位とされている専門学科における専門教育に関する教科・科目の必修単位数については、この中央教育審議会第一次答申において提言された「ゆとり」を確保する観点から検討する必要がある。
 特に、完全学校週5日制の実施を控え、高等学校卒業までに修得させる単位数や高等学校における必修教科・科目の単位数を削減することが適当であるといった意見との関連に加え、生徒の多様な実態に応じた教育課程のより弾力的な編成を可能とするという観点から、国の定める基準としては、25単位ないし28単位の範囲内に必修単位数を縮減することが適当と考えるが、具体的な単位数については、卒業までに修得させる単位数や必修の単位数などとの整合性をも勘案しつつ、更に検討を進める必要がある。
 また、現在講じられている普通教育に関する教科・科目の単位を専門教育に関する教科・科目の単位数に含めることができる措置、専門教育に関する教科・科目の履修をもって必修教科・科目の一部又は全部に替えることができる措置の取扱いについても、今後検討を進める必要がある。
 なお、これら単位数の縮減は以上のような観点から行われるべきものであって、専門教育の軽視を意味するものでないことは当然であるが、更に具体的な教育内容の在り方等については、専門性の基礎・基本を重視するという考え方に基づいて更に検討する必要がある。

2)原則履修科目の扱いについて

 原則履修科目は、各学科において原則として履修させるものとして学習指導要領において示されている。
 この原則履修科目の内容は、看護科での6科目・39~41単位から、家庭科での2科目・4~8単位まで学科によって差異がある。
 この科目の今後の在り方については、各学校がより一層特色ある教育課程を編成できるようにするため原則履修科目を定めないとの考え方、各学科ごとに履修すべき科目が定められている現行の在り方を見直し、学科の如何を問わず、専門学科のすべての生徒に共通に履修させる科目を新たに位置付けるという考え方、現行の原則履修科目の枠組みを基本的に維持しつつ、生徒の学習の実態等を考慮しながら、その内容の厳選を図り、履修科目・単位数について縮減を図るという考え方がある。
 我々は、これらの考え方について、その意義・問題点等、種々検討を行ったが、生徒の多様な実態等に応じた多様な教育課程を各学校において編成する必要性が高まっている状況にあることを踏まえつつ、一方で、原則履修という形でその学科における基本的な学習の目安、専門性の基礎・基本を示すという積極的な意義を生かすため、原則履修科目については、現行の枠組みにも配慮しながら、各教科とも共通的な考え方で見直すとともに、単位数を縮減することが適当ではないかと考える。
 なお、具体的な縮減単位数等については、高等学校共通の必修教科・科目の単位数等との関連を考慮しつつ、更に検討することとする。

3)標準学科について

 専門学科については、特定の専門分野に細分化しすぎることのないようにとの配慮もあり、その基幹的なものを標準的な学科として学習指導要領の別表に掲げている。一般にこれらを標準学科と称し、現在、6つの専門学科について39の学科(いわゆる小学科)が示されているが、もともと学科とは、基本的には設置者の判断で置くことができるものであり、その目的や内容も設置者において自由に決めることができるものである。
 実際にも、地域性や産業・社会の発達状況等を踏まえ、近年、様々な小学科が設置されてきており、このような動きは今後、ますます進んでいくものと思われる。また、このことは、それ自体、各設置者・学校における創意工夫を凝らした意欲的な取組の成果として積極的に評価すべきものである。このように考えると、標準学科を学習指導要領上に示し、新たな学科を設置する際の指針とする必要性はもはや乏しいのではないかと考えられる。更には、標準学科を示さないことにより、特色ある学科の設置が一層促進されることが期待される。
 ただその場合には、新たな学科の設置が単なる名称の変更に終わることのないようにすることや、専門性の基礎・基本を修得するという専門高校の在り方を踏まえ、新たな学科の内容が特定の専門分野に細分化しすぎることのないようにするといった点に留意する必要があると考える。
 なお、専門高校における学科の在り方を考えると、中学生段階では小学科での学習内容を十分理解した上で学科選択を行うことが難しい場合もあることから、高校における学習を一定程度経験した上で専門分野を選択できるようにするなどの方策をとることも考えられる。また、複数の小学科を設置する高校においては、いわゆる一括募集・くくり募集は、生徒に対して進路変更の余地を残し、多様な選択肢の中からの進路決定を可能とするものであり、その積極的な実施が求められよう。

3 各教科の改善の方向

 職業に関する各教科・科目については、社会や産業構造の変化等に伴い、教育内容の厳選を図ることを含め、常に見直していく必要がある。また、2(1)で触れたように、生涯学習の視点を踏まえつつ、将来のスペシャリストとして必要な専門性の基礎・基本を培うといった面からの改善も不可欠である。

<各教科の改善事項>

 各教科ごとの教育内容の具体的な改善の在り方については、今後さらに検討を行うが、その改善の方向としては、次のような諸点が重要であると考えている。

1)家庭・衣食住等の生活関連産業の高度化・サービス化、消費者ニーズの多様化、少子高齢化の進展等に対応した教育内容の改善。
・調理師資格の取得要件の変更に対応した新たな科目の設置や関係科目の見直しを図るとともに、保母の受験資格要件の変更に対応した科目の見直し。

2)農業・農産物流通や人的交流等の国際化と情報化の進展及びバイオテクノロジーの急速な進展に対応した教育内容の改善。
・地球環境問題、食品産業の発展、農業や農村の特性を活用した対人サービスの増大に対応した教育内容の改善。

3)工業・マルチメディアや高度情報通信技術、製造技術のシステム化等の技術革新の進展に対応した関連技術分野の教育内容の改善。
・製造業の国際的な展開に対応した、外国語による会話や技術文書の理解等についての教育内容の改善。環境問題に対応した関連技術分野の教育内容の改善。

4)商業・経済の国際化やサービス化の進展に対応するため、実践的なコミュニケーション能力、情報・会計リテラシー等ビジネスの基礎・基本の教育内容の改善。
・高度情報通信社会に対応した情報活用能力の育成と経営活動にかかわる情報の分析と活用に関する内容の改善。

5)水産・水産技術の高度化、海洋環境問題、海洋性レクリエーションなど海を取り巻く産業の変化等に対応した教育内容の改善。
・水産物流通や人的交流等の国際化や情報化の進展に対応した教育内容の改善。
・通信技術の進展等に対応した教育内容の改善。

6)看護・准看護婦養成教育から看護婦養成教育への移行にも対応できるような科目構成及び内容の見直し。
・生徒の進路希望の多様化に伴い、看護系大学等における継続教育を視野においた教育内容についての検討。
 なお、学習指導要領において、職業に関する各教科・科目については、教育すべき内容がその項目のみ示されている。このことが教科書や実際の指導において、教育内容を高度なものとしているとの指摘がある。このような指摘をも踏まえ、学習指導要領上、各教科・科目の内容の程度・範囲及びその取り扱いについて明示する必要があると考える。

○ 今後の検討課題

 本審議会は、これまで専門高校の在り方、専門学科の改善・充実及び各教科の改善の方向等、専門高校における教育の在り方の基本的な事項について検討を行ってきた。今後はこれらの検討の成果を踏まえ、より個別・具体的な事項を中心に検討を重ねていくこととしている。例えば、産業界や地域との連携の在り方については、現在高等教育レベルにおいて実施されているインターンシップの高等学校段階への導入をも視野に入れた現場実習等の充実方策、地域に開かれた学校づくり、社会人講師の積極的な活用の在り方等について具体的な検討を行う必要があると考えている。
 また、完全学校週5日制の下での職業資格の取得の問題や、教育課程編成や科目履修の一層の弾力化、個々の専門教科・科目の構成・内容、専門高校生の多様な進路の確保等についても検討を行っていきたい。
 さらに、これらの改善事項に関わる教員の確保、研修の充実、施設・設備等の条件整備の在り方についても検討が必要である。
 なお、現在、中央教育審議会においては、「幼児期からの心の教育の在り方について」審議を行っている。本審議会においては、望ましい勤労観・職業観の育成についても検討を行ってきたところであるが、今後の中央教育審議会の審議の動向に留意しつつ、引き続き審議を深めていきたい。
 本審議会としては、これらの審議を行ったのち、平成10年秋を目途に今後の専門高校における教育の在り方等について答申することとしたい。

お問合せ先

初等中等教育局職業教育課

-- 登録:平成21年以前 --