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幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について(審議のまとめ)(教育課程審議会(平成10年6月22日))

平成10年6月22日
初等中等教育局小学校課

審議の経過
1.教育課程の基準の改善の方針
 1 教育課程の基準の改善の基本的考え方
 (1)教育課程の基準の改善に当たっての基本的考え方
 (2)教育課程の基準の改善のねらい
 (3)各学校段階・各教科等を通じる主な課題に関する基本的考え方
 2 各学校段階等を通じる教育課程の編成及び授業時数等の枠組み
 (1)教育課程の編成
 (2)「総合的な学習の時間」
 (3)授業時数の基本的な考え方等
  ア 年間総授業時数
  イ 小学校、中学校、高等学校等の年間授業週数
  ウ 小学校、中学校、高等学校等の授業の1単位時間
 3 各学校段階等ごとの教育課程の編成及び授業時数等
 (1)幼稚園の教育課程の編成及び教育時間等
 (2)小学校の各教科の編成及び年間授業時数
 (3)中学校の各教科の編成及び年間授業時数
 (4)高等学校の各教科・科目の編成、必修の各教科・科目の単位数、卒業に必要な各教科・科目の修得総単位数等
 (5)盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の編成と年間授業時数等
 (6)中高一貫教育の教育課程の編成等
 4 各教科・科目等の内容
 (1)幼稚園
 (2)小学校、中学校及び高等学校
  1)国語
  2)社会、地理歴史、公民
  3)算数、数学
  4)理科
  5)生活
  6)音楽、芸術(音楽)
  7)図画工作、美術、芸術(美術、工芸)
  8)芸術(書道)
  9)家庭、技術・家庭
  10)体育、保健体育
  11)外国語
  12)情報
  13)専門教育に関する各教科・科目
  ア 職業に関する各教科・科目
  (ア) 家庭
  (イ) 農業
  (ウ) 工業
  (エ) 商業
  (オ) 水産
  (カ) 看護
  (キ) 福祉
  (ク) 情報
  イ その他の専門教育に関する各教科・科目
  14)道徳教育
  15)特別活動
 (3)盲学校、聾学校及び養護学校
2.教育課程の基準の改善の関連事項
 1 教科書及び補助教材
 2 指導方法
 3 学習の評価
 4 大学、高等学校など上級学校の入学者選抜
 5 教師
 6 学校運営
 7 家庭及び地域社会における教育との連携
 別表1
 別表2
 別表3

審議の経過

 本審議会は、平成8年8月、文部大臣から「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について」諮問を受けた。以後、今日まで、幼児児童生徒の実態、教育課程実施の経験、社会の変化などを踏まえて、初等中等教育の教育課程の基準の改善について検討を行ってきた。また、検討に当たっては、「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」の中央教育審議会の第一次及び第二次答申に留意した。
 中央教育審議会の第一次答申は、21世紀を展望し、我が国の教育について、[ゆとり]の中で[生きる力]をはぐくむことを重視することを提言している。[生きる力]について、同答申は「いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力」、「自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性」、そして、「たくましく生きるための健康や体力」を重要な要素として挙げている。また、同答申は[ゆとり]の中で[生きる力]をはぐくむ観点から、完全学校週5日制の導入を提言するとともに、そのねらいを実現するためには、教育内容の厳選が是非とも必要であるとしている。
 本審議会は、このような指摘に十分留意して審議を行った。そして、平成9年11月には、それまでの審議結果を、「教育課程の基準の改善の基本方向について(中間まとめ)」として公表した。
 その後、本審議会は、初等教育、中学校教育、高等学校教育及び特殊教育の各分科審議会等、各教科等別の委員会を設けて、各学校段階別、各教科等別の教育内容の改善について具体的な検討を行ってきた。検討に当たっては、中間まとめに寄せられた意見等や、中央教育審議会の「幼児期からの心の教育の在り方について」及び「今後の地方教育行政の在り方について」の中間報告の趣旨、並びに、高等学校の職業に関する各教科・科目については、理科教育及び産業教育審議会の審議を踏まえるとともに、「教育改革プログラム」が改訂され、完全学校週5日制が当初の予定を1年早めて平成14年度から実施されることとされたことに留意した。
 また、中央教育審議会第二次答申において提言され、学校教育法等の一部改正により選択的に導入することとされた中高一貫教育の教育内容の在り方についても検討を行った。
 本審議会は、本年夏に答申を予定しているが、それを前にして、以下にその審議を取りまとめたので、ここに公表するものである。
 本審議会としては、この審議のまとめに対する意見などを踏まえ、最終的な審議を行い、答申を取りまとめたいと考えている。

1.教育課程の基準の改善の方針

1 教育課程の基準の改善の基本的考え方

(1)教育課程の基準の改善に当たっての基本的考え方

(子どもたちの成長への願いと学校への期待)

 子どもたちは、幼児期から思春期を経て、自我を形成し、自らの個性を伸長・開花させながら発達を遂げていく。教育は、こうした子どもたちの発達を扶ける営みである。もちろんその営みは学校のみが担うものではなく、学校、家庭、地域社会が連携を図り、それぞれがその教育機能を十分発揮してはじめて子どもたちのよりよい発達が促されるものである。
 我々は、後でも述べるように、子どもたちの生活の在り方や学習の環境を変え、学校、家庭及び地域社会の役割を見直し、学校では学ぶことの動機付けや学び方の育成を重視し、家庭や地域社会で担うべきものや担った方がより効果が得られるものについては家庭や地域社会において担うなどして、よりバランスのとれた教育が行われることが必要であると考える。
 家庭や地域社会における教育については、子どもたちがもっと社会体験や自然体験などの様々な活動を体験し、それらと、学校における教育活動とを更に有機的に関連付けることによって一層教育効果を高めることができるし、また、学校で学習した知識・技能や学び方などは、家庭や地域社会において生きて働く力として用いられることによって一層深められ、根付いていくと考える。
 子どもたちの教育環境を構成する様々な場の中で、学校は、子どもたちの発達の状況を踏まえて、組織的・計画的・継続的な教育を行って、子どもたちの発達を促すという特質をもっている。このような学校教育の特質を踏まえ、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校を通じ、それぞれの学校が子どもたちの発達の状況や教育課程実施の現状、教育課題等を踏まえつつ、系統性のある教育課程を用意し、それぞれの教育課題の実現をしっかりと果たしていくことは極めて重要なことである。
 ところで、我々の任務は、これからの教育課程の基準はいかにあるべきかを提示することであるが、その具体的な実現に当たっては、教育活動を展開する各学校が、その場にふさわしい環境を備えていることが不可欠である。
 特に重要だと思われるものをいくつか挙げると、まず、学校は子どもたちにとって伸び伸びと過ごせる楽しい場でなければならない。子どもたちが自分の興味・関心のあることにじっくり取り組めるゆとりがなければならない。また、分かりやすい授業が展開され、分からないことが自然に分からないと言え、学習につまずいたり、試行錯誤したりすることが当然のこととして受け入れられる学校でなければならない。さらに、そのためには、その基盤として、子どもたちの好ましい人間関係や子どもたちと教師との信頼関係が確立し、学級の雰囲気も温かく、子どもたちが安心して、自分の力を発揮できるような場でなければならない。
 このような教育環境の中で、教科の授業だけでなく、学校でのすべての生活を通して、子どもたちが友達や教師と共に学び合い活動する中で、自分がかけがえのない一人の人間として大切にされ、頼りにされていることを実感でき、存在感と自己実現の喜びを味わうことができることが大切であると考える。
 また、子どもたちの学校生活は、登校してから下校するまでの様々な活動で成り立っている。各教科等の授業を中心に、例えば、始業前の時間、休み時間、また、授業終了後の放課後に、友達同士の自由な遊びがあり、部活動があり、また、読書など一人一人思い思いの過ごし方をする時間がある。こうした子どもたちの主体的な活動は、子どもたちの成長にとって極めて大きな意義をもっている。各学校は子どもたちが伸び伸びとこうした活動で過ごせるよう様々な工夫を凝らしてほしい。我々は、このような子どもの学校生活全体のうち、どこの学校に学んでも子どもたちに提供されるべき教育内容について、そのあるべき姿を検討したものであり、それは各学校の教育活動のすべてにわたっているものではない。各学校においては、それぞれに子どもたちの実情を十分に把握し、子どもたちの学校生活を全体として考え、よりよいものにしていく努力が極めて重要であることを指摘しておきたい。

 我々は、以上のような子どもたちの成長への願いと学校への期待をもちながら、教育課程の基準の改善について検討を行った。
 検討に当たっての基本的な考え方は次のとおりである。

(各学校段階の役割の基本)

ア 第一は、それぞれの学校段階の役割の基本については、次のように考えたということである。
 幼稚園においては、幼児の欲求や自発性、好奇心などを重視した遊びや体験を通した総合的な指導を行うことを基本とし、人間形成の基礎となる豊かな心情や想像力、ものごとに自分からかかわろうとする意欲、健全な生活を営むために必要な態度の基礎を培い、小学校以降の学習の基盤を養うことが求められていること。
 小学校においては、個人として、また、国家・社会の一員として社会生活を営む上で必要とされる知識・技能・態度の基礎を身に付け、豊かな人間性を育成するとともに、自然や社会、人、文化など様々な対象とのかかわりを通じて自分のよさ・個性を発見する素地を養い、自立心を培うことが求められていること。
 中学校においては、義務教育の最終段階として、また、中等教育の前期として、個人として、また、国家・社会の一員として社会生活を営む上で必要とされる知識・技能・態度を確実に身に付け、豊かな人間性を育成するとともに、自分の個性の発見・伸長を図り、自立心を更に育成していくことが求められていること。
 高等学校においては、義務教育の基礎の上に立って、自らの在り方生き方を考えさせ、将来の進路を選択する能力や態度を育成するとともに、社会についての認識を深め、興味・関心等に応じ将来の学問や職業の専門分野の基礎・基本の学習によって、個性の一層の伸長と自立を図ることが求められていること。
 盲学校、聾学校及び養護学校においては、幼稚園、小学校、中学校及び高等学校に準ずる教育を行うとともに、障害に基づく種々の困難を改善・克服するために必要な知識や技能等を養い、個性を最大限に伸長し、自立し、社会参加するための基盤となる資質や能力の育成を図ることが求められていること。

(子どもの現状、教育課程実施の現状と教育課題)

イ  第二は、子どもの現状、教育課程実施の現状と教育課題を踏まえるということである。
 子どもや子どもの生活の現状については、中央教育審議会第一次答申において、子どもたちは、ゆとりのない忙しい生活を送っていること、社会性が不足し、規範意識が低下していること、自立が遅くなっていること、肥満傾向や視力の低下が見られること、体力・運動能力の低下傾向が見られることなどの問題点が指摘されている。
 いじめ、不登校、凶悪化する青少年非行などの憂慮すべき状況、子どもたちの倫理観や社会性の不足、社会全体のモラルの低下などの状況等を背景として、中央教育審議会からは幼児期からの心の教育を充実し、学校、家庭、地域社会が一体となって新しい時代を拓く心を育てることの重要性も指摘されている。他方、学校において、道徳教育に対する姿勢や考え方の相違なども背景として、道徳教育についての各教師の理解と取組、学校全体としての実践が必ずしも十分でない状況も指摘されている。
 また、高等学校については、中学校卒業生の約97%が進学し、能力・適性、興味・関心等の多様な生徒が在学する状況の中で、学校生活や学業に適応できずに退学するに至る者の数も相当数に上っている。
 我々は以上の状況を十分認識する必要があると考えた。
 現行の教育課程実施上の現状と課題については、文部省が平成5年度から平成7年度にかけて実施した「教育課程実施状況に関する総合的調査研究」の調査結果によれば、子どもたちは計算などの技能や文章の読み取りの力、自然事象や社会的事象についての基礎的知識はよく身に付けており、学習に対する関心や意欲も高いという状況が見られる。また、IEA(国際教育到達度評価学会)の国際調査結果によれば、我が国の子どもたちの学力は国際的に見ても高い水準にあることがうかがえる。こうした調査結果のほか、研究指定校等における実践や各種の資料・調査などを含めて総合的にみると、現行の教育課程の下における我が国の子どもたちの学習状況は全体としてはおおむね良好であると言えると思われるものの、次のような問題もある。すなわち、これらの調査等によれば、過度の受験競争の影響もあり多くの知識を詰め込む授業になっていること、時間的にゆとりをもって学習できずに教育内容を十分に理解できない子どもたちが少なくないこと、学習が受け身で覚えることは得意だが、自ら調べ判断し、自分なりの考えをもちそれを表現する力が十分育っていないこと、一つの正答を求めることはできても多角的なものの見方や考え方が十分ではないこと、また、算数・数学や理科の学習について国際比較すると、得点は高いものの、積極的に学習しようとする意欲等が諸外国に比べ高くはないなどの問題である。
 各教科等の教育内容の改善を検討するに当たって、我々はこうした子どもの現状、教育課程実施の経験等を十分踏まえることに努めた。

(「時代を超えて変わらない価値あるもの」を身に付ける)

ウ 第三は、教育においては、どんなに社会が変化しようとも「時代を超えて変わらない価値あるもの」を子どもたちがしっかりと身に付ける必要があるということである。
 このことについては、中央教育審議会第一次答申において、正義感や公正さを重んじる心、自らを律しつつ、他人と協調し、他人を思いやる心、人権を尊重する心、自然を愛する心などの豊かな人間性を培うこと、国語をしっかりと身に付けること、我が国の歴史や文化を学び、それらを大切にする心を培うこと、たくましく生きるための健康や体力を培うことなどの重要性が指摘されている。
 我々も、このことについて十分認識し、これからの学校教育において、このようないかに社会が変化しようとも時代を超えて変わらない価値あるものを、子どもたちにしっかりと身に付けさせることが重要な課題であると考えた。

(社会の変化に柔軟に対応し得る人間の育成)

エ 第四は、教育においては、社会の変化を見通しつつ、これに柔軟に対応し得る人間の育成を期する必要があるということである。
 学校では教師と子どもたちとの信頼関係を基盤に教育活動が展開され、時代を超えて変わらない価値あるものを子どもたちにしっかりと身に付けていかなければならないが、学校教育は言うまでもなく、次代を担う子どもたちの教育を行う場であり、これからの社会の変化を見通し、その変化に適切に対応できる力を育成することもまた極めて重要であると言わなければならない。
 今日、我が国は、国際化、情報化、科学技術の進展、環境問題への関心の高まり、高齢化・少子化など社会の様々な面での変化が急速に進んでおり、今後一層の激しい変化が予想されている。これらの社会の変化は、子どもたちの教育環境や意識に大きな影響をもたらし、教育上の様々な課題を生じさせるものと思われる。
 このような激しい変化が予想される社会において、主体的、創造的に生きていくためには、中央教育審議会第一次答申においても指摘されているとおり、自ら考え、判断し行動できる資質や能力の育成を重視していくことが特に重要なこととなってくる。そして、そのためには、これからの学校教育においては、これまでの知識を一方的に教え込むことになりがちであった教育から、自ら学び自ら考える教育へと、その基調の転換を図り、子どもたちの個性を生かしながら、学び方や問題解決などの能力の育成を重視するとともに、実生活との関連を図った体験的な学習や問題解決的な学習にじっくりとゆとりをもって取り組むことが重要であると考えた。

(完全学校週5日制下の教育内容の在り方)

オ 第五は、平成14年度(2002年度)から実施することとされている完全学校週5日制を円滑に実施するための教育内容の在り方を検討したということである。
 中央教育審議会第一次答申では、これまでの学校週5日制の実施の経験を踏まえ、子どもたちにゆとりをもたせ、家庭や地域社会における生活の比重を高め、学校、家庭及び地域社会の教育全体の在り方を改善する必要があることを指摘しつつ、我が国の学校教育に完全学校週5日制を導入することを提言している。
 変化の激しいこれからの社会においては、生涯を通じ、いつでも自由に学習機会を選択し、楽しく学び続けることが重要であるとの生涯学習の考え方を更に進めていくことが必要である。我々は、完全学校週5日制の導入を契機に、教育は学校教育のみで完結するのではなく、学校教育では生涯学習の基礎となる力を育成することが重要であるとの考え方に立って、教育内容の改善を図る必要があると考えた。

(教育内容の厳選と基礎・基本の徹底)

カ 第六は、教育内容の厳選を徹底し、基礎・基本の確実な習得を図るようにしなければならないということである。
 中央教育審議会第一次答申において指摘されているとおり、[ゆとり]の中で[生きる力]を育成するためには、学力を単なる知識の量と捉える学力観を転換し、教える内容をその後の学習や生活に必要な最小限の基礎的・基本的内容に厳選する一方、その厳選された基礎的・基本的内容については、子どもたちの以後の学習を支障なく進めるためにも繰り返し学習させるなどして、確実に習得させなければならないと考えた。
 我々は、教育内容の厳選について、完全学校週5日制を実施するための授業時数の縮減・教育内容の削減にとどまってはならないと考えた。こうした、単なる完全学校週5日制対応のためということでなく、子どもたちの学習の現状や教育課題を踏まえ、授業時数の縮減以上に思い切って教育内容を厳選し、もっぱら覚えることに追われていると指摘されるような状況をなくして、子どもたちがゆとりの中で繰り返し学習したり、作業的・体験的な活動、問題解決的な学習や自分の興味・関心等に応じた学習にじっくりと創意工夫しながら取り組めるようにすることに努めた。
 このため、各教科等を通じて、子どもたちにとって理解が困難であったり高度になりがちになったりする内容、単なる知識の伝達や暗記に陥りがちな内容、各学校段階間又は各学年間、各教科間で重複する内容、学校外活動や将来の社会生活で身に付けることが適当な内容などについて削除したり、上学年へ移行統合したり、取扱いを軽減したりすることなどにより、教育内容を厳選することに努めた。

(学習の指導と評価の在り方)

キ 第七は、これからの学校教育における学習の指導と評価の在り方が極めて重要であるということである。
 我々は、自ら学ぶ意欲や思考力・判断力・表現力などの資質や能力の育成を重視するこれからの学校教育においては、従来のような知識を教え込むような授業の在り方を改め、子どもたちが自分で考え、自分の考えをもち、それを自分の言葉で表現することができるような力の育成を重視した指導を一層進めていく必要があると考えた。また、指導に当たって教師は子どもたちと共に学び考え、子どもたちの問題解決を助けていくという姿勢が大切であると考えた。こうした指導を進めていく上で、学習の評価の在り方は極めて大きな影響をもつものである。いくら理想的な指導の在り方を説いても、例えば従来どおり知識の量を測るような評価が重視されていては、指導の改善は進まないと言わざるを得ないからである。
 学力については、中央教育審議会第一次答申も指摘しているとおり、これを単なる知識の量と捉えるのではなく、自ら学び自ら考える力などの[生きる力]を身に付けているかどうかによって捉えるべきであると考える。ただし、当然のことながら、自ら学び自ら考える力を育成する基盤として、一定の基礎的・基本的な知識や技能等を身に付けていることが不可欠であり、そのため、教師は、カで述べたように、子どもたちにこうした基礎的・基本的な知識や技能等を繰り返し学習させるなどして、確実に習得させる必要がある。
 このような考え方に立って、指導の改善に生かす評価という観点から、学習の結果だけでなくその過程を一層重視したり、子どものよい点や可能性、進歩の状況を積極的に評価するなど評価の在り方を見直す必要があると考える。また、その際には、各教科の学習の評価の在り方についても、すべて共通の評価方法によって行っている現在の在り方を見直し、学校段階・学年段階、教科の特質等を考慮しつつ改善を図る必要があると考える。

(2)教育課程の基準の改善のねらい

 このような基本的考え方に立って、幼児児童生徒の実態、教育課程実施の状況、社会の変化などの分析、検討を行うとともに、将来の教育課程の基準のあるべき姿を展望する中で、我々は次の四点を今回の教育課程の基準の改善のねらいとして掲げることとした。
 まず、「1)豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること」である。このことは、幼児児童生徒の現状や国際化の進展等を踏まえて、これからの時代を担う幼児児童生徒を育成する学校教育の在り方を考えるとき、時代を超えて変わらない調和のとれた人間形成は特に重要であると考えられるからである。したがって我々は、これを改善のねらいの第一に掲げることとしたものである。
 次いで、「2)自ら学び、自ら考える力を育成すること」である。これからの激しい変化が予想される社会を生きていく幼児児童生徒の教育の在り方を考えるとき、多くの知識の習得に偏りがちであったこれまでの学校教育の基調を転換することが重要であると考え、これをねらいの第二に掲げることとした。
 第三には、各学校が「3)ゆとりのある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実すること」を掲げることとした。第一、第二のねらいを実現するためには、その基盤としてこの点が不可欠であると考えられるからである。
 そして、第四には、「4)各学校が創意工夫を生かし特色のある教育、特色ある学校づくりを進めること」を掲げた。第一、第二、第三のねらいは、各学校の具体的な教育活動を通して実現されるものであり、各学校が地域や学校、幼児児童生徒の実態を踏まえ、創意工夫を生かした特色ある教育の展開、特色ある学校づくりが極めて重要であるからである。
 それぞれの具体的内容は次のとおりである。

1) 豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること

 幼児児童生徒を取り巻く環境の変化、いじめ問題等の深刻さ、都市化や少子化などに伴う社会体験や自然体験などの減少の状況などを考えるとき、自我の形成を図り、調和のとれた豊かな人間性の育成や社会性の育成を図ることは、これからの学校教育において一層重視されなければならない。
 そのためには、(1)ウでも述べたように、他人を思いやる心、互いを認め合い共に生きていく態度、自他の生命や人権を尊重する心、美しいものや自然に感動する心、ボランティア精神、未来への夢や目標を抱き自らその実現に努める態度などを育成するとともに、社会生活上のルールや基本的なモラルなどの倫理観の育成を重視し、規範意識や公徳心、正義感や公正さを重んじる心、善悪の判断、強靱な意志と実践力、自己責任の自覚や自律・自制の心、また、たくましく生きるための健康や体力の基礎をはぐくむことが必要である。これからの学校教育においては、こうした資質や能力をしっかりと培わなければならない。
 また、国際化の進展に伴い、国際社会の中で日本人としての自覚をもち主体的に生きていく上で必要な資質や能力を育成することも極めて重要である。我が国や郷土の歴史や文化・伝統に対する理解を深め、これらを愛する心を育成するとともに、広い視野をもって異文化を理解し国際協調の精神を培うことは、これからの学校教育において一層重視する必要がある。

2) 自ら学び、自ら考える力を育成すること

 変化の激しいこれからの社会を考えたとき、(1)エで述べたように、多くの知識を教え込むことになりがちであった教育の基調を転換し、学習者である幼児児童生徒の立場に立って、幼児児童生徒に自ら学び自ら考える力を育成することを重視した教育を行うことは極めて重要なことである。
 そのためには、幼児児童生徒の発達の状況に応じて、知的好奇心・探究心をもって、自ら学ぶ意欲や主体的に学ぶ力を身に付けるとともに、試行錯誤をしながら、自らの力で論理的に考え判断する力、自分の考えや思いを的確に表現する力、問題を発見し解決する能力を育成し、創造性の基礎を培い、社会の変化に主体的に対応し行動できるようにすることを重視した教育活動を積極的に展開していく必要がある。また、知識と生活との結び付き、知の総合化の視点を重視し、各教科等で得た知識・技能等が生活において生かされ、総合的に働くようにすることに留意した指導も重要であると考える。
 各学校において、それぞれの地域や学校の実情を踏まえ、例えば、各教科等や今回創設される「総合的な学習の時間」などにおいて、体験的な学習、問題解決的な学習、調べ方や学び方の育成を図る学習などが重視されるとともに、自ら調べ・まとめ・発表する活動、話し合いや討論の活動などが活発に行われることが望まれる。

3) ゆとりのある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実すること

 完全学校週5日制を円滑に実施し、生涯学習の考え方を推進していくためには、(1)オ及びカで述べたように、時間的にも、精神的にもゆとりのある教育活動が展開される中で、厳選された基礎的・基本的な内容を幼児児童生徒がじっくり学習し、その確実な定着を図るとともに、幼児児童生徒が自分の興味・関心等に応じ選んだ課題や教科の学習に主体的に取り組み、学ぶことの楽しさや成就感を味わうことができるようにすることも必要なことである。
 そのためには、家庭や地域社会における教育との関連や各学校段階間の関連を考慮し、個人として、また国家・社会の一員として望ましい人間形成を図る上で必要な基礎的・基本的な内容を明確にしつつ、教育内容の厳選を図る必要がある。特に義務教育においては、共通に学習すべき内容は社会生活を営む上で真に必要な内容に厳選する必要があると考える。
 また、一人一人のよさや可能性を伸ばし、個性を生かす教育の一層の充実を図ることも重要なことであり、そのために、各学校段階を通じて、幼児児童生徒の興味・関心等を生かし、主体的な学習の充実を図るとともに、個に応じた指導の一層の工夫改善を図ることが大切であると考える。このような考えの下に、教育課程の基準としては、小学校高学年から、選択能力の育成を重視し課題選択などを取り入れ、中学校においては、学年段階に応じ漸次選択幅の拡大を図るとともに、高等学校においては、生徒による選択を基本とし、共通に履修させる内容はいずれの分野に進路を選択しようとも最低限必要な内容にとどめるようにすることが望ましいと考える。

4) 各学校が創意工夫を生かし特色ある教育、特色ある学校づくりを進めること

 以上述べてきたねらいを効果的に実現するためにも、各学校には、地域や学校、幼児児童生徒の実態等に応じて、創意工夫を生かした特色ある教育を展開し、特色ある学校づくりを進めることが強く求められている。
 そのためには、こうした各学校の特色ある教育活動の展開を促すよう、教育課程の基準の一層の大綱化、その運用の弾力化を図る必要があると考える。このような考え方の下に、教育内容を厳選するほか、各学校段階や各教科等の特質に応じて目標や内容を複数学年まとめて示すようにしたり、取り扱うべき教材を細かく指定することは行わないなど内容等の示し方を大綱化する。また、日課表や時間割を各学校が創意工夫を生かして編成できるようにするなど1単位時間や授業時数の運用の一層の弾力化を図る必要があると考える。今回、新たに「総合的な学習の時間」を創設するとともに、中学校及び高等学校において選択の幅を拡大し、各学校の創意工夫を生かした教育活動が一層展開できるようにしたのもこのような考えに基づくものである。
 特色ある教育活動を展開する上で、各学校が、幼児児童生徒が家庭や地域社会において行った体験や活動を生かした指導に努めるとともに、家庭や地域社会の人材・施設や様々な活動との連携を図った教育を行うことは極めて意義のあることと考える。こうした取組を通じ、学校と家庭・地域社会が十分連携を図るとともに、開かれた学校づくりを一層推進していくことが大切であると考える。

(3)各学校段階・各教科等を通じる主な課題に関する基本的考え方

 以上のようなねらいの下に、各学校段階について各教科等の教育内容の改善を行う必要があると考えるが、各学校段階ごと、各教科等ごとの改善の方向、内容を示す前に、道徳教育、国際化、情報化、環境問題、少子高齢社会への対応など、各学校段階・各教科等を通じた横断的・総合的な課題についてどのように対応していくべきと考えたかについてここに示しておく。

(道徳教育)

ア 道徳教育は、豊かな心をもち、人間としての生き方の自覚を促し、道徳的実践力を育成することをねらいとする教育活動である。現在、小学校及び中学校においては「道徳」の時間を設定し、この時間をはじめとした学校の教育活動全体を通じて、また、高等学校においては人間としての在り方生き方の教育の視点に立って公民科や特別活動をはじめとした学校の教育活動全体を通じて行うこととされている。
 今日、社会が豊かになり、また少子化が進む中で、これまで家庭や地域社会が幼児児童生徒に果たしてきたしつけや倫理観、社会性の育成などの教育機能が低下してきていること、また、日本のよき伝統が次第に失われてきていることが指摘されており、中央教育審議会からは、心の教育の重要性が指摘されている。我々は、こうした点等を踏まえ、家庭や地域社会の教育機能の回復を願いつつ、学校も一体となり、真に一人一人の道徳的自覚を促し、自立をはぐくむ中で、人間としてよりよく生きていく道徳的実践力を育成する視点に立って、社会生活上のルールや基本的なモラルなどの倫理観、我が国の文化や伝統を尊重し継承・発展させる態度や国際協調の精神の育成など、学校における道徳教育は更に充実されることが必要であると考える。
 このため、幼児児童生徒の発達段階を踏まえた創意工夫を生かした指導が重点的に展開されるようにするとともに、ボランティア活動や自然体験活動などの体験的・実践的な活動を積極的に取り入れる必要があると考える。とりわけ、人としてしてはいけないことや善悪の判断、基本的なしつけなどは幼児期や小学校低学年の時期の指導が重要であり、学校においても家庭との連携を図りつつ、繰り返し指導しその徹底を図る必要があると考える。
 また、体験的・実践的な指導を充実する上で重要な機能を果たす特別活動については、特にボランティア活動の一層の充実を期したいと考える。ボランティア活動は、地域社会の一員であることを自覚し、互いが支え合う社会の仕組みを考える上で意義のあることであると同時に、単に社会に貢献するということだけでなく、自分自身を高めるためにも必要なことであり、大切なことであるという意味で、大きな教育的意義があると考える。

(国際化への対応)

イ 国際化が急速に進展する中で、国際社会に生きる日本人の育成という視点に立った教育の展開は、今後一層重要なものとなってくる。国際化の進展に対応した教育は、広い視野をもって異文化を理解し、異なる文化や習慣をもった人々と偏見をもたずに自然に交流し共に生きていくための資質や能力の育成を図ることをねらいとするものであるが、そのためには、我々はまず我が国の歴史や文化・伝統に対する誇りや愛情と理解を培う教育が重要であると考える。
 現在、国際化の進展に対応した教育は、社会科、地理歴史科、外国語科を中心に各教科、道徳、特別活動の特質等に応じて行うこととされているが、各教科等に加え「総合的な学習の時間」においてもこのような視点に立った教育の充実を図っていくことが必要である。なお、今後、国際化の進展に対応した教育を進めるに当たっては、これまでとかく欧米先進諸国に目を向けがちであったことを改め、アジア諸国等に一層目を向けるよう留意することが大切であると考える。
 また、外国語教育については、自分の考えや意思を適切に表現できる基礎的・実践的コミュニケーション能力の育成を一層重視しつつ、中学校及び高等学校において外国語を必修とするなどの改善を図る必要があると考える。
 また、小学校における外国語の取扱いとしては、各学校の実態等に応じ、「総合的な学習の時間」や特別活動などの時間において、国際理解教育の一環として、児童が外国語に触れたり、外国の生活や文化などに慣れ親しんだりするなど小学校段階にふさわしい体験的な学習活動が行われるようにする必要があると考える。

(情報化への対応)

ウ 今後、ますます高度情報通信社会が進展していく中で、児童生徒が、溢れる情報の中で情報を主体的に選択・活用できるようにしたり、情報の発信・受信の基本的ルールを身に付けるなど情報活用能力を培うとともに、情報化の影響などについての理解を深めることは、一層重要なものになってくると考える。
 現在、情報に関する教育については、小学校段階で教具としての活用を通してコンピュータに触れ、慣れ親しむことを基本とし、中学校段階で技術・家庭科の選択領域「情報基礎」においてコンピュータの役割や機能を理解させ、情報を適切に活用する基礎的な能力を育成するとともに、中学校及び高等学校において数学、理科、家庭科でコンピュータの原理等を扱うこととされている。
 平成11年度までに公立学校において、小学校で2人に1台、中学校・普通科高等学校・盲学校・聾学校・養護学校で1人に1台の水準で教育用コンピュータの整備が進められている。また、学校における情報通信ネットワークについては、中学校・高等学校・盲学校・聾学校・養護学校は平成13年度までに、小学校は平成15年度までに、すべての学校がインターネットに接続できるよう計画的な整備が進められている。
 今後は、児童生徒の発達段階に応じて、各学校段階を一貫した系統的な教育が行われるよう更に関係教科等の改善充実を図り、コンピュータや情報通信ネットワーク等を含め情報手段を活用できる基礎的な資質や能力を培う必要があると考える。
 具体的には、小学校、中学校及び高等学校を通じ、各教科等の学習においてコンピュータ等の積極的な活用を図ることとし、学校段階ごとには、小学校においては「総合的な学習の時間」をはじめ各教科などの様々な時間でコンピュータ等を適切に活用することを通して、情報化に対応する教育を展開する。中学校においては技術・家庭科の中でコンピュータの基礎的な活用技術の習得など情報に関する基礎的内容を必修とし、高等学校においては、情報手段の活用を図りながら情報を適切に判断・分析するための知識・技能を習得させ、情報社会に主体的に対応する態度を育てることなどを内容とする教科「情報」を新設し必修とすることが適当である。
 なお、情報に関する教育の推進に当たっては、人間関係の希薄化や実体験の不足の招来など、情報化が児童生徒に与える「影」の部分に十分留意することが望まれる。

(環境問題への対応)

エ 環境問題に対する社会の関心が一層高まる中で、環境やエネルギーについての理解を深め、環境を大切にする心を育成するとともに、環境の保全やよりよい環境の創造のために主体的に行動する実践的な態度や資質、能力を育成することは今後ますます重要なものとなってくる。
 環境教育は、現在、小学校、中学校及び高等学校を通じて、社会科、公民科、理科、技術・家庭科、家庭科や保健体育科を中心に各教科等の特質等に応じ、また、それらの連携を図りつつ、環境問題や環境と人間とのかかわりに対する理解を深めることとされている。
 今後は、各教科、道徳、特別活動及び「総合的な学習の時間」のそれぞれにおいて、地域の実情を踏まえた環境に関する学習を充実するとともに、児童生徒の発達段階に応じて、例えば身近な自然環境から地球規模の環境までを対象に環境を調べる学習など、問題解決的な学習や作業的な学習、体験的な学習を一層重視する必要があると考える。

(少子高齢社会への対応等)

オ 高齢化が急速に進展し、少子化の進行もあいまって、少子高齢社会が現実のものとなっていることを考えるとき、これからの社会を生きていく幼児児童生徒に、その発達段階に応じて、少子高齢社会についての理解を深め、男女が協力して、子どもを産み育て、高齢者のために主体的に行動し実践する態度を育成するとともに、他者を尊重する態度や尊敬する気持ち、他人を思いやる気持ちや共に生きていくという考え方などをはぐくむことは極めて大切である。
 少子高齢社会に対応した教育としては、現在、小学校、中学校及び高等学校を通じて社会科、保健体育科、技術・家庭科、家庭科などの教科等を中心として、少子高齢社会についての理解を図り、その課題について考えさせることとされている。
 今後は、各教科、道徳、特別活動及び「総合的な学習の時間」において、それぞれの教科等の特質に応じ、少子高齢社会に関する基礎的理解、家族関係や子育ての意義、介護・福祉など少子高齢社会の課題に関する理解を深めるとともに、実際に幼児、高齢者や障害のある人と交流し、触れ合う活動や、介護・福祉に関するボランティア活動を体験することを重視する必要がある。
 さらに、児童生徒に対し、生涯にわたり心身ともに健康な生活を送るための基礎的な健康や体力をはぐくむことは極めて大切なことであり、体育・保健体育科、家庭科などの各教科、道徳、特別活動及び「総合的な学習の時間」において、体験的な活動等を通して、健康の大切さや自分の体に気付き、広く健康の課題に対処できるように指導を充実する必要がある。
 また、親が安心して子どもを産み育てることができるよう、特に幼児期の教育環境を整えることは極めて重要なことであり、保育所とともに幼稚園の運営の在り方について改善充実する必要がある。

(横断的・総合的な学習、教育課程の基準の大綱化・弾力化)

カ 児童生徒一人一人の個性を伸長する教育を行うためには、まず何よりも児童生徒の実態、地域の実情等を踏まえて、各学校が創意工夫を存分に生かした特色ある教育活動を展開することが重要である。
 現在、国、地方公共団体、学校等を通じた地方教育行政制度全体について見直しを行っている中央教育審議会においても、学校の自主性・自律性を確立し、教育委員会は学校の自主的取組を支援することに重点を置くとともに、国は教育委員会の主体的な取組を一層重視する方向で検討が行われている。
 各学校の創意工夫を生かした指導が一層行われるようにするとともに、児童生徒の主体的な学習を促す観点から、学習指導要領における各教科・科目の内容の示し方については、教育内容の厳選や基礎・基本の明確化に努めつつ、学校段階や教科等の特質に応じて、目標や内容を複数学年まとめて示したり、各学校がその特色に応じ、また児童生徒がその興味・関心等に応じ、選択できる幅を広げたりするなどの大綱化や弾力化を図る必要がある。
 また、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校に「総合的な学習の時間」を創設し、各学校が創意工夫を生かした特色ある教育活動を一層展開できるようにするとともに、国際理解・外国語会話、情報、環境、福祉・健康などの課題について横断的・総合的な学習を推進できるような仕組みを整えることとする。

2 各学校段階等を通じる教育課程の編成及び授業時数等の枠組み

(1)教育課程の編成

 各学校の教育課程は、現行では、小学校及び中学校では各教科、道徳及び特別活動の3領域、高等学校では各教科及び特別活動の2領域、盲学校、聾学校及び養護学校ではこれらに養護・訓練を加えた4領域又は3領域により編成することとなっている。
 我々は、教育課程の編成については、原則として、現行を踏襲することが妥当と考えるが、学校の創意工夫を生かした教育活動のより一層の展開を促すため、1(3)カで述べたように、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程に新たに「総合的な学習の時間」を設けることとした。
 そこで、各教科、道徳、特別活動等についての改善内容を述べる前に、この「総合的な学習の時間」の趣旨、ねらい等について述べておく。

(2)「総合的な学習の時間」

ア  「総合的な学習の時間」の創設の趣旨

 「総合的な学習の時間」を創設する趣旨は、各学校が地域や学校の実態等に応じて創意工夫を生かして特色ある教育活動を展開できるような時間を確保することである。また、自ら学び自ら考える力などの[生きる力]は全人的な力であることを踏まえ、国際化や情報化をはじめ社会の変化に主体的に対応できる資質や能力を育成するために教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習をより円滑に実施するための時間を確保することである。
 我々は、この時間が、自ら学び自ら考える力などの[生きる力]をはぐくむことを目指す今回の教育課程の基準の改善の趣旨を実現する極めて重要な役割を担うものと考えている。

イ  「総合的な学習の時間」のねらいや学習活動等について

(ア)「総合的な学習の時間」のねらいは、各学校の創意工夫を生かした横断的・総合的な学習や児童生徒の興味・関心等に基づく学習などを通じて、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てることである。また、情報の集め方、調べ方、まとめ方、報告や発表・討論の仕方などの学び方やものの考え方を身に付けること、問題の解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む態度を育成すること、自己の生き方についての自覚を深めることも大きなねらいの一つとしてあげられよう。これらを通じて、各教科等それぞれで身に付けられた知識や技能などが相互に関連付けられ、深められ児童生徒の中で総合的に働くようになるものと考える。

(イ)「総合的な学習の時間」の教育課程上の位置付けは、各学校において創意工夫を生かした学習活動であること、この時間の学習活動が各教科等にまたがるものであること等から考えて、国が目標、内容等を示す各教科等と同様なものとして位置付けることは適当ではないと考える。このため、国が、その基準を示すに当たっては、この時間のねらい、この時間を各学校における教育課程上必置とすることを定めるとともに、それに充てる授業時数などを示すにとどめることとし、各教科等のように内容を規定することはしないことが望ましいと考える。
 高等学校については、生徒の学習成果がこの時間のねらいからみて満足できると認められるものについては単位を与え、この単位は卒業に必要な修得単位数に含めることが適当である。
 「総合的な学習の時間」のこのような特質にかんがみ、教育課程の基準上の名称については「総合的な学習の時間」とすることとし、各学校における教育課程上の具体的な名称については各学校において定めるようにすることが妥当であると考える。

(ウ)「総合的な学習の時間」の学習活動は、(ア)に示すねらいを踏まえ、地域や学校の実態に応じ、各学校が創意工夫を十分発揮して展開するものであり、具体的な学習活動としては、例えば国際理解、情報、環境、福祉・健康などの横断的・総合的な課題、児童生徒の興味・関心に基づく課題、地域や学校の特色に応じた課題などについて、適宜学習課題や活動を設定して展開するようにすることが考えられる。その際、自然体験やボランティアなどの社会体験、観察・実験、見学や調査、発表や討論、ものづくりや生産活動など体験的な学習、問題解決的な学習が積極的に展開されることが望まれる。
 なお、具体的な学習活動として、小学校において、国際理解教育の一環としての外国語会話等が行われるときには、各学校の実態等に応じ、児童が外国語に触れたり、外国の生活や文化などに慣れ親しんだりするなど小学校段階にふさわしい体験的な学習活動が行われるようにすることが望ましい。さらに、高等学校においては、「課題研究」や「産業社会と人間」との関連を考慮し、生徒が主体的に設定した課題について知識・技能の深化・総合化を図る学習や、自己の在り方生き方や進路について考察する学習なども、この時間において適切に行われるよう配慮することが望まれる。
 各学校においてこの時間を展開するに当たっては、ある時期に集中的に行うなどこの時間が弾力的に設定できるようにするとともに、グループ学習や異年齢集団による学習など多様な学習形態や、外部の人材の協力も得つつ、異なる教科の教師が協力し、全教職員が一体となって指導に当たるなど指導体制を工夫すること、また、校内にとどまらず地域の豊かな教材や学習環境を積極的に活用することを考慮することも望まれる。

(エ)「総合的な学習の時間」の授業時数等については、この時間を活用して各学校で多様な学習活動を展開するためには、ある程度まとまった時間が必要であることなどを考慮し、小学校においては、別表1のとおりとし、中学校においては別表2のとおりとすることとする。小学校については、低学年において総合的な性格をもつ教科である生活科が設定されていることや生活科を中核とした他教科との合科的な指導が進められていることなどを考慮して、第3学年以上に設定することとした。また、中学校については、各学校において一層創意工夫を生かした特色ある教育課程の編成が行えるよう、下限及び上限の幅をもって設定することとした。
 高等学校については、一人一人の生徒の実態に応じた多様な学習や各学校の特色に応じた教育の展開を可能とするため、「総合的な学習の時間」に充てる授業時数及び単位数に幅を設けるものとする。

(オ)「総合的な学習の時間」の評価については、この時間の趣旨、ねらい等の特質が生かされるよう、教科のように試験の成績によって数値的に評価することはせず、活動や学習の過程、報告書や作品、発表や討論などに見られる学習の状況や成果などについて、児童生徒のよい点、学習に対する意欲や態度、進歩の状況などを踏まえて適切に評価することとし、例えば指導要録の記載においては、評定は行わず、所見等を記述することが適当であると考える。

(3)授業時数の基本的な考え方等

 完全学校週5日制下の教育課程を考えるとき、年間総授業時数等をどうするかは極めて重要な検討課題である。年間総授業時数は、年間に何週・何日の授業を行うか、1週間に何時間授業を行うかによってその総枠が決まることになるが、我々は、我が国のこれまでの授業時数の運用の実態、児童生徒の学習負担の状況と教育水準、諸外国の授業時数の状況等を踏まえ、以下のような経緯で検討を行ってきた。
 我々は、まず、これまでの月1回及び月2回の学校週5日制の実施状況について分析・検討を行った。平成元年度以降、全国の幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校に委嘱して行った調査研究協力校(平成6年度は733校)の研究報告、全国の学校の5~10%程度を抽出して行った平成7年度の月2回の学校週5日制の実施状況調査等を基に分析すると、各学校においては学校行事等の精選、短縮授業の見直しなどの工夫により、全体として児童生徒の学習負担も従前と比べ特に変化はなく、おおむね順調に運用されてきていると判断した。
 次に、年間授業週数については、現在は、小学校、中学校及び高等学校等を通じ、年間35週にわたって教科等の授業が行われるとともに、入学式、卒業式、運動会、修学旅行等の学校行事を含めて、長期休業日等を除く40週にわたって教育活動が行われているのが実態である。そして、1年間を通したこのような学校の教育活動は、長年積み重ねられ、我が国の社会また児童生徒の生活にしっかりと定着していることなどを考慮し、年間授業週数は、現行どおりとすることが適当であると考えた。
 次に、1週間の授業時数については、完全学校週5日制の実施に伴い、現行に比し月2回の土曜日分の授業時数がなくなることになるが、その場合、月2回の学校週5日制がおおむね順調に実施されてきていることを前提に、児童生徒の学習負担を増加させないこと及び生活上のゆとりを確保することを重要なことと考え、月曜日から金曜日までの1週間の授業時数を現行以上に増やすことはせず、そのなくなる分の年間70単位時間(週当たりに換算して2単位時間)の授業時数を削減するのが適当であるとの意見が出された。しかし、この考えに対しては、現行の我が国の総授業時数は諸外国のそれと同程度であり、現行以上に削減することは一定の教育水準を確保する観点から問題はないか。また、児童生徒が体験や実験、問題解決的な学習、主体的な学習活動に時間をかけてじっくり取り組めるようにするとともに、授業内容を確実に身に付けることができるようにするためには授業時数の削減はあまり行わず、教育内容を思い切って厳選することこそ必要ではないか、そのためには、授業時数の削減は、年間35単位時間(週当たりに換算して1単位時間)程度にとどめるのが適当ではないかとの意見もあった。また、こうした意見に対しては、教育水準を考えるに当たっては、教育水準の問題は単に時間数の多少の問題ではなく、今回行おうとしている学力観や評価観の転換により学力の質を変えると考えるべきではないかという意見が出された。さらに、諸外国の授業時数については、教師の裁量によりその中で適宜休憩を取ることができる国もあるなど授業時数の示し方は様々であり、一概に授業時数のみで形式的に教育水準を比較することはできないのではないかという意見も出された。
 以上のような様々な検討経過を経て、総授業時数等については、以下のようにすることとした。
 ゆとりを論じる場合には、授業時数の総枠だけではなく、いかにゆとりをもってそれぞれの授業を展開することができるように教育内容を厳選するかが重要であり、我々は、繰り返し述べるとおり、授業時数の縮減以上に教育内容の厳選を徹底的に行い、基礎的・基本的な事項に絞り込む必要があると考えた。

ア 年間総授業時数

 完全学校週5日制の実施に伴い、年間総授業時数を縮減する場合の具体的な縮減幅については、現行の授業日となっている土曜日分の授業時数である年間70単位時間(週当たりに換算して2単位時間)程度を削減することが適当である。各学校段階・各学年段階ごとの具体的な授業時数については、「3  各学校段階等ごとの教育課程の編成及び授業時数等」のところで述べる。

イ 小学校、中学校、高等学校等の年間授業週数

 小学校、中学校及び高等学校等の各教科等の授業は、現行では年間35週以上にわたって行うこととされている。ただし、高等学校では、特に必要がある場合には特定の学期又は期間に授業を行うことができることとされている。
 この年間授業週数の基本的な仕組みについては現行どおりとするが、教科等や学習活動によっては年間を通ずることなく特定の時期に集中して行った方が効果的な場合もあることを考慮し、各学校の創意工夫を生かした時間割や教育課程が編成されるよう、小学校、中学校及び高等学校等を通じ一層弾力的な扱いをすることができるようにすることが適当である。

ウ 小学校、中学校、高等学校等の授業の1単位時間

 小学校、中学校及び高等学校等の各教科等の授業の1単位時間については、現行では、小学校は45分、中学校は50分を常例とし、高等学校は50分を標準とされている。ただし、各教科等の特質に応じ、指導方法の工夫によって教育効果を高めることができる場合には、年間の授業時数を確保しつつ、適切な計画の下に授業の1単位時間を弾力的に運用することができることとされている。
 各教科等のそれぞれの授業の1単位時間については、現状を更に進め、各学校において、各学年及び各教科等の年間総授業時数を確保しつつ、各教科等や学習活動の内容の特質に応じて授業時間の区切り方を変えるなど、創意工夫を生かして一層弾力的に日課表や時間割を編成できるようにすることが適当である。

3 各学校段階等ごとの教育課程の編成及び授業時数等

 では、次に、各学校段階について、それぞれの教育内容はどのような領域で構成されるべきか、また、その授業時数等は、年間において、また1週間を単位としていかにあるべきかについて述べることとする。

(1)幼稚園の教育課程の編成及び教育時間等

ア 幼稚園の教育課程の編成

 現行の幼稚園教育要領は、幼稚園教育の基本として教育は環境を通して行うものであることを明示し、幼児の主体的な活動としての遊びを中心とした生活を通して、一人一人に応じた総合的な指導を行うこととしている。
 幼稚園においては、幼児の遊びを中心とした楽しい集団生活の中で、豊かな体験を得させ、好奇心をはぐくみ、健康な心と体を育て、幼児期にふさわしい道徳性の芽生えを培うなどの教育を通して、小学校以降の生活や学習の基盤を養う必要があると考える。
 現行幼稚園教育要領においては、教育内容について、幼稚園修了までに幼児に育つことが期待される心情、意欲、態度などを「ねらい」として示し、その「ねらい」を達成するために幼児が経験し、教師が指導する事項を「内容」として示している。そして、この「ねらい」と「内容」は、幼児の発達の側面から、「健康」、「人間関係」、「環境」、「言葉」及び「表現」の5領域にまとめて示されている。
 現行の幼稚園教育要領が施行された平成2年4月から現在までの幼稚園教育の状況をみると、幼稚園の教育活動はおおむね円滑に展開されているものと考えられ、領域構成は、現行の5領域を維持することが妥当であると考える。

イ 幼稚園の教育時間等

 幼稚園の教育時間等については、現行では、1日の教育時間は4時間を標準とし、1年間の教育週数は39週を下ってはならないこととしている。幼稚園教育の実施の状況からみて、基本的にはこれを維持していくことが妥当と考えるが、地域に開かれた幼稚園づくりや預かり保育など地域の実情や保護者の要請等を踏まえ、幼稚園運営の弾力化を一層進めていくことが適当である。

(2)小学校の各教科の編成及び年間授業時数

ア 小学校の各教科の編成

 現在、小学校における各教科の編成は、低学年においては国語、算数、生活、音楽、図画工作及び体育の6教科、中学年においては国語、社会、算数、理科、音楽、図画工作、体育の7教科、高学年においてはそれに家庭を加えて8教科により行われている。
 小学校教育においては、幼稚園教育における幼児の遊びを中心とした総合的な活動を基盤として、集団による教科の系統的な学習に次第に慣れるようにし、児童の興味・関心等を生かしつつ、日常生活やその後の学習の基礎になる読・書・算などの基礎的・基本的な内容を繰り返し指導し、確実に習熟させる必要がある。
 こうした小学校教育の基本的な役割やこれまでの教育課程の実施の経験を踏まえるとき、教科の構成は現行どおりとすることが適当であると考える。
 また、幼稚園及び中学校との一貫した教育課程の編成を図るために、特に改善に当たって重視すべき事項として、幼稚園と小学校との接続を図る観点から、具体的な活動や体験を重視する必要があると考える。また、低学年においては生活科を中核とした合科的な指導を一層推進するとともに、中学年以上においても合科的・関連的な指導を進め、さらに、小学校と中学校との接続を図る観点から、小学校高学年から課題選択などの選択的要素を取り入れ、選択能力の基礎を養うようにすることが適当であると考える。

イ 小学校の年間授業時数

 小学校の各学年の年間総授業時数は、現行では、第1学年で年間 850単位時間(週当たりに換算して25単位時間)、第2学年で年間 910単位時間(週当たりに換算して26単位時間)、第3学年で年間 980単位時間(週当たりに換算して28単位時間)、第4学年以上で年間1015単位時間(週当たりに換算して29単位時間)となっている。この点について、上記2(3)ア を踏まえ、各教科等の教育内容の厳選や「総合的な学習の時間」の授業時数等を考慮しつつ、検討した結果、各学年とも年間70単位時間(第1学年にあっては68単位時間。各学年とも週当たりに換算して2単位時間)削減することが適当であると考えた。
 また、小学校の各学年の各教科、道徳、特別活動及び「総合的な学習の時間」ごとの授業時数については、これまで述べてきた小学校教育の役割、基礎・基本や教育内容の厳選の考え方などを踏まえて検討した結果、別表1のとおりとすることが適当であると考える。この場合の各教科等の授業時数の配当の考え方は、26ページの(参考)のとおりである。
 特別活動の授業時数については、現行では学級活動とクラブ活動に標準授業時数を配当しており、児童会活動と学校行事については学校において適切な授業時数を充てることとしている。このうちクラブ活動の授業時数については、「総合的な学習の時間」の創設、教育課程外の活動や学校外活動との関連を考慮し、地域や学校の実態に応じて学校において適切な授業時数を配当できるようにすることが適当である。

(3)中学校の各教科の編成及び年間授業時数

ア 中学校の各教科の編成

 現在、中学校における各教科の編成は、必修教科と選択教科によって行われることになっている。必修教科は国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育及び技術・家庭の8教科、選択教科はこれらの教科、外国語及び中学校学習指導要領に定めるその他特に必要な教科で構成されている。各学年の選択教科の種類については、第1学年では外国語及びその他特に必要な教科、第2学年では音楽、美術、保健体育、技術・家庭、外国語及びその他特に必要な教科、第3学年では国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、技術・家庭、外国語及びその他特に必要な教科となっている。
 中学校教育においては、小学校教育の基礎の上に、社会生活を営む上で必要とされる基礎的・基本的な知識・技能・態度を確実に身に付けるようにするとともに、生徒の能力・適性、興味・関心等が次第に多様化してくることに適切に対応する観点から、選択の幅を一層拡大して、個性の伸長を図る教育を進めていく必要があると考える。
 我々は、中学校教育のこのような特質やこれまでの教育課程の実施の経験を踏まえて、各教科の編成について検討を行い、基本的には現行の教科の構成を妥当なものと考えた。ただし、外国語科は、現在選択教科となっているが、国際化の進展に対応し、外国語を使って日常的な会話や簡単な情報の交換ができるような基礎的なコミュニケーション能力を身に付けることがどの生徒にも必要になってきているとの認識に立って、これを必修教科に加えることが適当であると考えた。
 また、前回の教育課程の基準の改訂において、選択教科の選択履修の幅を拡大したが、こうした措置によって、興味・関心のある教科の選択を通して、生徒の学習意欲の高まりや主体的な学習活動が見られるなどの成果を上げてきており、更にこれを進め得るようにすることが適当であると考えた。
 こうした検討を踏まえて、教科の編成については次のように改善することが適当であると考える。

(ア)必修教科の種類は、現行の8教科に外国語科を加えて、9教科とする。

(イ)選択教科の種類を拡大することとし、全学年で現行の第3学年と同様にすべての教科について開設することができるようにする。また、選択教科の内容については、各学校の主体的な判断により生徒の特性等に配慮しつつ、課題学習、補充学習、さらに学習を進めたいと考えている生徒に対するより進んだ内容を含む発展的な学習も含め一層多様な学習活動ができるようにする。

イ 中学校の年間授業時数

 中学校の各学年の年間総授業時数は、現行では、各学年とも年間1050単位時間(週当たりに換算して30単位時間)となっている。この点について、上記2(3)ア を踏まえ、各教科等の教育内容の厳選や「総合的な学習の時間」の授業時数等を考慮しつつ検討した結果、各学年とも年間70単位時間(週当たりに換算して2単位時間)削減することが適当であると考えた。
 また、中学校の各学年の必修教科、選択教科、道徳、特別活動及び「総合的な学習の時間」ごとの授業時数については、選択学習の幅を拡大するという方針に基づき、具体的には次のような考え方の下に別表2のとおり改善することが適当であると考える。
 この場合の各教科等の授業時数の配当の考え方は、26ページの(参考)のとおりである。

(ア)学年段階ごとの必修教科と選択教科のそれぞれの授業時数は、次のような考え方の下に配分する。

  1. 第1学年は、必修教科を基本とし、学校の判断により、生徒が選択教科を履修することもできるようにする。
  2. 第2学年は、必修教科を基本としつつも、すべての生徒が選択教科を1教科以上履修できるよう、一定の選択教科の時数を確保する。
  3. 第3学年は、必修教科を基本としつつも、生徒が自己の特性等に応じて、2教科以上多様な選択教科を履修できるよう、選択教科の時数を第2学年よりも一層拡大する。

(イ)必修教科の授業時数は、上記( の考え方に立ちつつ、その教育内容を基礎的・基本的な内容に厳選し、全体として縮減する。各学年の必修教科、道徳及び特別活動の授業時数については、これまで述べてきた中学校教育の特質等を踏まえ、義務教育の最終段階として、小学校教育の基礎の上に、個人として国家・社会の一員として社会生活を営む上で必要な基礎的・基本的な内容を身に付けさせる観点に立って配当する。

(ウ)選択教科に充てる授業時数については、現行では外国語科を含め第1学年で週当たり3~4単位時間、第2学年で週当たり3~6単位時間、第3学年で週当たり4~8単位時間であるが、実態としては外国語科はほとんどすべての生徒が履修しており、約半数の中学校では外国語科を除いて第2学年で週当たり1単位時間、第3学年で週当たり2単位時間であるという状況にある。
 各学年の選択教科の授業時数については、このような学校の実態を踏まえつつ、上記(ア)の考え方に立って配当する。

(エ)現行では外国語科を除く各選択教科の授業時数は年間35単位時間の範囲内の時数を充てることとしているが、生徒の特性等に応じた多様な学習活動を一層展開できるようにするため、この上限の時数を年間70単位時間に拡大する。

(オ)現行では、教科等によっては下限及び上限の幅をもって授業時数を示しているが、必修教科については、教育内容の厳選の趣旨を一層明確にするため、このような示し方を行わないこととする。選択教科及び「総合的な学習の時間」については、各学校において創意工夫を生かした特色ある教育課程の編成が行われるよう下限及び上限の幅をもって授業時数を示す。
 選択教科は当該教科固有の目標の達成を目指す学習を行うものであり、「総合的な学習の時間」は2(2)イ(ア)のねらいの下に各教科等で身に付けられた知識や技能等を相互に関連付け総合的に働くようにすることを目指す学習を行うものである。
 各学校においては、このようなそれぞれの性格を踏まえ、学校や生徒の実態を考慮して、選択教科及び「総合的な学習の時間」それぞれの授業時数を適切に配当するものとする。

(カ)特別活動の授業時数については、現行では学級活動とクラブ活動に充てる標準授業時数として年間35~70単位時間を配当しているが、必修のクラブ活動については、部活動が一層適切に行われるよう配慮しつつ、部活動との関連や学校外活動との関連を考慮しこれを廃止することとし、学級活動のみに標準授業時数を配当する。

(別表1)小学校の各教科、道徳、特別活動及び総合的な学習の時間の年間標準授業時数
区分 各教科の授業時数 道徳の
授業時数
特別活動の
授業時数
総合的な学習の
時間の授業時数
総授業時数
国語
社会
算数
理科
生活
音楽
図画工作 家庭
体育
第1学年 272

114

102
68
68

90
34
34

782
第2学年 280

155

105
70
70

90
35
35

840
第3学年 235
70
150
70

60
60

90
35
35
105
910
第4学年 235
85
150
90

60
60

90
35
35
105
945
第5学年 180
90
150
95

50
50
60
90
35
35
110
945
第6学年 175
100
150
95

50
50
55
90
35
35
110
945

(注)
1.この表の授業時数の1単位時間は、45分である。
2.特別活動の授業時数は、学級活動に充てる授業時数である。

(別表2)中学校の各教科、道徳、特別活動及び総合的な学習の時間の年間標準授業時数
区分
必修教科の授業時数 道徳の
授業時数
特別活動の
授業時数
選択教科に
充てる業時数
総合的な学習の時間
の授業時数
総授業時数
国語
社会
数学
理科
音楽 美術
保健体育
技術・家庭
外国語
第1学年
140
105
105
105
45
45
90
70
105
35
35
0~30
70~100
980
第2学年 105
105
105
105
35
35
90
70
105
35
35
50~85
70~105
980
第3学年 105
85
105
80
35
35
90
35
105
35
35
105~165
70~130
980

(注)1.この表の授業時数の1単位時間は、50分である。2.特別活動の授業時数は、学級活動に充てる授業時数である。

(参考)各教科等の授業時数の配当についての考え方

1 小学校及び中学校の各教科等ごとの授業時数については、おおむね次のような基本的考え方に立って配当している。

○ 小学校、中学校を通じ、国語の力、計算や数学的処理能力、社会や自然の理解、豊かな情操や人間性、健康や体力を調和的に育成するよう時間を配当する。
○ 小学校段階では、読・書・算の基礎的能力、豊かな情操や人間性、健康や体力を培う教科等の時間数の確保を重視する。
○ 中学校段階では、小学校教育の基礎の上に立って、必修教科等において公民的資質や科学的素養、豊かな人間性、健康や体力、外国語のコミュニケーション能力を育てる教科等の時間数を確保する。また、生徒の興味・関心等に応じた学習が一層行えるようにすることを重視し、選択履修の幅を拡大する観点から、開設できる選択教科の種類を拡大するとともに、選択教科の時間数を確保する。

2  小学校及び中学校の各教科等の各学年ごとの授業時数については、おおむね次のような基本的考え方に立って配当している。
○ 国語については、小学校において、読み書きの基礎を繰り返し学習し徹底させるため、低学年・中学年を中心に時数を多く配当し、高学年から中学校へと学年が上がり基礎が身に付いていくにつれて時数を逓減する。
○ 算数・数学については、小学校において、計算の基礎を繰り返し学習し確実に身に付けるため一定時数を配当し、中学校は、小学校の基礎の上に立った応用段階であることから、時数を小学校よりも減ずる。
○ 社会、理科については、小学校での基礎的な学習の段階から、中学校段階へと発達が進むにつれて学習が深化するため、学年が上がるにつれて時数をおおむね逓増する。
○ 生活については、「総合的な学習の時間」との関連も考慮しつつ、各学年同一の時数を配当する。
○ 芸術(音楽、図画工作、美術)については、豊かな情操を培うため一定時数を配当するが、小学校では発達を考慮し低学年により多くの時数を配当し、中学校では自己の興味・関心等に応じた学習が行われることも考慮して学年が上がるにつれて時数を逓減する。
○ 家庭、技術・家庭については、必要な知識・技能の習得を図るため、家庭領域、技術領域のバランスに配慮しつつ一定時数を配当する。
○ 体育、保健体育については、小学校・中学校各段階を通じ健康や体力を培うため、各学年同一の時数を配当する。この場合、保健領域には小学校中学年から一定時数を配当する。
○ 外国語については、外国語によるコミュニケーション能力の継続的な育成を図るため、各学年同一の時数を配当する。
○ 道徳、特別活動については、小学校・中学校各段階を通じ豊かな人間性を培うため、各学年同一の時数を配当する。

(4)高等学校の各教科・科目の編成、必修の各教科・科目の単位数、卒業に必要な各教科・科目の修得総単位数等

ア  高等学校の各教科・科目の編成及び必修の各教科・科目の単位数等

 現在、高等学校における各教科・科目の編成は、普通教育に関する教科として、国語、地理歴史、公民、数学、理科、保健体育、芸術、外国語及び家庭の9教科、専門教育に関する教科として、家庭、農業、工業、商業、水産、看護、理数、体育、音楽、美術及び英語の11教科が設けられ、さらにこれらの教科に属する各科目によって構成されている。
 普通科においては普通教育に関する教科・科目を中心として、専門学科においてはそれに加えて専門教育に関する教科・科目により教育課程が編成されることとなっている。総合学科においては、普通教育と専門教育を選択履修を旨として総合的に施すため、多様な教科・科目を設けて教育課程が編成されることとなっている。そして、普通科、専門学科、総合学科のいずれの学科においても、これらの教科・科目のうち、外国語を除く普通教育に関する教科・科目の中から教科ごとにそれぞれ1~2科目、4~8単位(保健体育については体育7~9単位、保健2単位)をすべての生徒が履修すべきものとされ、専門学科においては、これに加えて専門教育に関する教科・科目から30単位以上を、また、総合学科においては、学習指導要領上には位置付けられていないが、原則として「産業社会と人間」、情報に関する基礎的科目及び「課題研究」を履修することとされている。
 高等学校教育においては、義務教育の基礎の上に立って引き続き基礎的・基本的な知識・技能・態度を身に付けるための指導を行いつつ、能力・適性、興味・関心等が多様化する生徒に対し、将来の進路を見据え、一人一人の能力・適性等に応じ、個性の伸長を図ることを一層重視した教育を展開するため、生徒の選択の幅を拡げていく必要があると考える。しかし、高等学校の段階においては、将来いずれの進路を選択する生徒にも、最低限必要となる知識や技能等については、ある程度幅広い分野について学ばせる必要があると考える。
 また、能力・適性、興味・関心、進路希望等の多様な生徒に対応するためには、更に各学校が教育課程上の特色を発揮し、その編成・実施上の工夫を柔軟に行えるようにする必要があり、国として定める教育課程の基準は可能な限り抑制的に示すにとどめることが適切である。
 我々は、高等学校教育のこのような特質やこれまでの教育課程実施の経験を踏まえて、高等学校の各教科・科目の編成等について検討を行い、基本的には現行の教科の構成を妥当なものと考えた。ただし、特に次のような改善を行うことが必要であると考えた。

(ア)必修教科・科目の設定等

  1.  普通科、専門学科及び総合学科を通じて、ある程度幅広い分野について一定の基礎的・基本的な内容をバランスよく身に付けておくことが必要であり、高等学校の段階では、そのような内容を必修として課すことが適当である。
     このような観点から、例えば、数学や理科の教科においては、多様な分野に進む生徒のために、中学校で学習した内容を基礎とした数学史的な話題や日常の事象についての統計的な処理などを学び、数学的な見方や考え方を身に付けたり、また、科学の歴史、科学と人間生活とのかかわりなどを学び、科学的な見方や考え方を身に付けたりすることができるよう、新たな科目「数学基礎」、「理科基礎」をそれぞれ設け、選択履修が可能なようにすることが適当である。
  2.  現在、外国語科は選択教科となっているが、国際化の進展に対応し、外国語を使って日常的な会話や簡単な情報の交換ができるような実践的コミュニケーション能力を身に付けられるよう、外国語科を必修とすることが適当である。
     また、情報化の進展に伴い、情報及びコンピュータや情報通信ネットワーク等の情報手段を適切に選択し活用するための知識、技能を身に付けることや、情報化の進展が人間や社会に及ぼす影響などを理解することは不可欠となっている。このような情報社会に主体的に対応する能力が身に付けられるよう、新たに普通教育としての教科「情報」を設け、必修とすることが適当である。
  3.  必修教科・科目の設定の具体的な方法としては、国の基準上、履修すべき単位の総数が縮減できるように、各教科において必修となる科目として、可能な限り小さい単位数の科目を設けるという考え方に立って設定することが適当である。
     なお、審議の過程においては、設定方法として、各学校の主体性を一層発揮して、教科の枠にとらわれず特色ある教育課程を編成し得るようにするため、学習指導要領において複数の教科をまとめるカテゴリー(教科群)を設定し、カテゴリーごとに履修すべき単位数を示すとともに、それぞれのカテゴリーごとに各学校が所定の単位数を満たすよう必修教科・科目を指定し、履修させる方法を設定してはどうかという意見もあった。しかし、これに対しては、それぞれの学校がその特色を最大限に発揮することができるという面もある一方、新たに設けるカテゴリーと現行の教科との整合性についてさらに慎重な検討が必要であり、将来の教科の再編・統合を含めた教科等の構成の在り方についての検討の中で更に検討する必要があるとされた。
  4.  必修教科・科目の具体的な設定に当たっては、生徒の実態に応じた一層適切な教育課程が編成できるよう、必修科目は、新たに設ける科目及び同一教科の中の他の基礎的な一又は複数の科目の中から選択的に履修できるようにすることが適当である。

 以上の方針に基づき、各教科・科目及びその標準単位数は、別表3のとおりとするのが適当である。また、同表の各教科・科目のうちすべての生徒に履修させる必修の教科・科目は、次のように定めるのが適当であると考える。
 国語 「国語表現Ⅰ」及び「国語総合」のうちから1科目
 地理歴史 「世界史A」及び「世界史B」のうちから1科目並びに「日本史A」、「日本史B」、「地理A」及び「地理B」のうちから1科目の2科目
 公民 「現代社会」、又は「倫理」及び「政治・経済」
 数学 「数学基礎」及び「数学Ⅰ」のうちから1科目
 理科 「理科基礎」、「理科総合A」、「理科総合B」、「物理Ⅰ」、「化学Ⅰ」、「生物Ⅰ」及び「地学Ⅰ」のうちから、「理科基礎」、「理科総合A」又は「理科総合B」のいずれか少なくとも1科目を含む2科目
 保健体育 「体育」及び「保健」
 芸術 「音楽Ⅰ」、「美術Ⅰ」、「工芸Ⅰ」及び「書道Ⅰ」のうちから1科目
 外国語 「オーラル・コミュニケーションⅠ」及び「英語Ⅰ」のうちから1科目(英語以外の外国語を履修する場合は、1科目2単位以上)
 家庭 「家庭基礎」、「家庭総合」及び「生活技術」のうちから1科目
 情報 「情報A」、「情報B」及び「情報C」のうちから1科目

 必修の各教科・科目の合計単位数については、現行では、普通科で最低38単位、専門学科及び総合学科で最低35単位となっているが、以上の必修の設定の方法により、すべての学科において最低31単位とする。

e 「総合的な学習の時間」については、2(2)イで述べたとおり、各学校において教育課程上必置とし、すべての生徒がこの活動を行うものとする。ただし、この時間の学習活動が各教科等にまたがるものであることから、国において、各教科等のように内容は示さないこととすることが適当である。
 「総合的な学習の時間」の授業時数については、多様な学習活動が展開できるようにするためある程度まとまった時間が必要である一方、各教科等の授業時数を確保することも考慮し、各学校の特色に応じた実施を可能とするため、卒業までに105ないし210単位時間を配当するとともに、これに付与する単位数は3ないし6単位とすることが適当である。
 また、職業に関する学科においては、職業に関する各教科に (で述べる原則履修科目を設けることとし、その際、「課題研究」の履修をもって「総合的な学習の時間」の活動を行ったものとみなすとともに、「総合的な学習の時間」の活動において生徒が主体的に設定した課題について知識・技能の深化・総合化を図る学習活動等を行った場合には、「課題研究」を履修したものとみなすことができるようにするのが適当である。
f 現在、職業に関する学科や総合学科において原則履修科目とされている「課題研究」のような、生徒が主体的に設定した課題について知識・技能の深化・総合化を図る学習や、総合学科において原則履修科目とされている「産業社会と人間」のような、自己の在り方生き方や進路について考察する学習は、今後、どの学科においても適切に取り組むことが望まれる。

(イ)普通教育に関する教科・科目
 現在、普通教育に関する教科・科目については、地域、学校及び生徒の実態、学科の特色等に応じ、特に必要がある場合に、学校の判断で学習指導要領に示す教科・科目以外の教科・科目を設けることができることとされているが、こうした教科・科目は、地域や学校の実態等に応じた特色のある教育課程を編成するために、各学校の判断によってより柔軟に設けられるようにする必要がある。そして、この措置を生かして、例えば、幅広い教養を身に付ける観点から科学、芸術、哲学などの様々な分野に関する基礎的な学び方や考え方を追究するような教科・科目を設けたり、体験活動等に関する教科・科目を設け、学校外における学修の単位認定を行うことなどが積極的に行われることが望まれる。

(ウ)専門教育に関する教科・科目
 専門学科における専門教育に関する各教科・科目の必修単位数は、高等学校の卒業に必要な修得総単位数及び必修教科・科目の単位数の削減との関連、生徒の多様な実態に応じた教育課程の編成を可能にするなどの観点から、現行の30単位を25単位に削減することが適当である。
 教科の種類については、現在、専門教育に関する教科としては、11教科が設けられているが、さらに、職業に関する教科として、高齢化の進展に伴い、介護福祉士など福祉に関する人材の養成の必要性に対応するための教科「福祉」を新設するとともに、高度情報通信社会における情報関連の人材の養成の必要性に対応するための教科「情報」を新設することが適当である。
 また、現在、職業に関する学科については、その学科における基本的な学習の目安、専門性の基礎・基本の中核となるものを示すため、各教科ごとに原則履修科目を定めている。我々は、国が定める教育課程の基準として、各教科について原則履修科目を定めることの必要性を認めつつ、各学校の判断による特色ある教育課程編成を促す観点から、これをできる限り抑制的に示すこととし、原則として、次の二つの科目を各教科共通に原則履修科目とすることが適当であると考える。すなわち、各教科における基礎的・基本的な内容で構成され、より専門的な学習や卒業後の進路についての生徒の意識を深めることを目的とした科目、及び問題解決の能力や自発的、創造的な学習態度を育てるための「課題研究」等の科目の2科目とすることが適当であると考えた。
 なお、専門学科については、現在、その基幹的なものを標準的な学科として学習指導要領の別表に掲げているが、地域性や産業・社会の進展等を踏まえ、各設置者・学校における創意工夫を凝らした特色ある学科の設置が促進されるよう、標準学科の例示は廃止することが適当であると考える。

(エ)総合学科
 現在、総合学科においては、普通教育に関する必修教科・科目及び総合学科としての原則履修科目を履修させるとともに、教育課程の編成に当たっては、原則履修科目及び専門教科・科目を合わせて30単位以上開設することとされている。
 今回、新たに、すべての学科に共通の必修教科として情報科を新設すること及び「総合的な学習の時間」を教育課程上必置とすることを踏まえ、総合学科においては、学習指導要領において「産業社会と人間」を原則履修科目として位置付けるとともに、教育課程編成に当たっては、「産業社会と人間」及び専門教科・科目を合わせて25単位以上開設することとするのが適当である。

(オ)履修形態の多様化・弾力化
 各学校における教育課程の編成に当たっては、生徒の選択をできるだけ生かすことができるよう、自校以外の学習成果の単位認定、学習指導要領に示す教科・科目以外の教科・科目の開設、職業に関する教科・科目における現場実習による実習の代替など、履修形態の多様化・弾力化のための仕組みが更に柔軟に活用されるようにすることが望まれる。

イ 高等学校の卒業に必要な各教科・科目の修得総単位数等

 ところで、高等学校の卒業に必要な修得総単位数等については、生徒が自らの能力・適性、興味・関心等に基づき、主体的に学習を進め、それぞれの個性を伸ばしていくことができるよう、次のように改善するのが適当である。

(ア)卒業に必要な修得総単位数
 高等学校の卒業に必要な各教科・科目の修得総単位数については、全日制、定時制及び通信制の課程の区別に関わりなく、高等学校の卒業に必要な修得総単位数は同じであることが適当であることなどを踏まえ、卒業に必要な修得総単位数については、現行の80単位を完全学校週5日制の実施に伴う授業時数の減少を考慮し、74単位とすることが適当である。

(イ)週当たりの標準授業時数
 全日制課程における週当たりの標準授業時数については、完全学校週5日制の実施に伴い、現行の32単位時間を30単位時間とする。ただし、単位制高等学校などにおいては、授業の実施形態や履修形態が多様であり、生徒が多様な科目のうちから選択履修することを旨とする特質に応じ、例えば、1日6単位時間を上回って多くの科目を開設し、生徒の自由な選択を可能とするため、標準授業時数によらないことができるようにするのが適当である。

(ウ)特別活動の授業時数
 現在、特別活動の授業時数は、ホームルーム活動及びクラブ活動について合わせて週当たり2単位時間以上配当することとし、ホームルーム活動には週当たり1単位時間以上配当することとされている。このうち、クラブ活動については、部活動が一層適切に行われるよう配慮しつつ、部活動との関連や学校外活動との関連を考慮しこれを廃止することとし、ホームルーム活動について週当たり1単位時間以上配当することとするのが適当である。

ウ  定時制・通信制の課程

 定時制課程においては、勤労形態の多様な勤労青年のほか、中途退学者等多様な入学動機をもつ者、生涯学習の一環で学ぶ者など、そこに学ぶ生徒の実態は極めて多様なものとなっている。このような状況を踏まえ、今後は、各学年への各教科・科目の配当を一層弾力化するなどの教育課程編成上の工夫や、個に応じた指導を一層充実する観点から、単位制の活用を一層積極的に進める必要がある。また、多様な学習の機会を確保していくため、通信制課程との併修、実務代替等の自校以外の学習成果の単位認定制度の積極的な活用が望まれる。
 通信制課程については、様々な事情で毎日通学することが困難な生徒の学習の場を確保する上で重要な役割を果たしている。学習時間の柔軟な設定等を行い、今後とも、教育・指導の充実を図っていくことが大切である。また、マルチメディアの進展の状況等を踏まえつつ、今後、通信制課程における指導形態の在り方について検討することも必要と考えられる。

エ 単位制高等学校

 単位制高等学校については、生徒一人一人の主体的な学習計画に基づいて学習機会が確保されるなどの趣旨を生かした教育が一層推進される必要がある。このため、今後とも一層多様な科目を開設し、選択幅の広い教育課程を編成するとともに、生徒が能力・適性、興味・関心、進路希望等に応じた適切な科目の履修ができるよう、ガイダンス機能の充実を図る必要がある。また、教師と生徒及び生徒相互の好ましい人間関係の一層の育成のため、集団活動の機会の確保やその内容の充実を図る必要がある。 

(別表3)高等学校の各教科・科目及び標準単位数
教科 科目 単位数
国語 国語表現Ⅰ
国語表現Ⅱ
国語総合
現代文
古典
古典講読
2
2
4
4
4
2
地理歴史 世界史A
世界史B
日本史A
日本史B
地理A
地理B
2
4
2
4
2
4
公民 現代社会
倫理
政治・経済
2
2
2
数学 数学基礎
数学Ⅰ
数学Ⅱ
数学Ⅱ
数学A
数学B
数学C
2
3
4
3
2
2
2
理科 理科基礎
理科総合A
理科総合B
物理Ⅰ
物理Ⅱ
化学Ⅰ
化学Ⅱ
生物Ⅰ
生物Ⅱ
地学Ⅰ
地学Ⅱ
2
2
2
3
3
3
3
3
3
3
3
保健体育 体育
保健
7~8
2
芸術 音楽Ⅰ
音楽Ⅱ
音楽Ⅱ
美術Ⅰ
美術Ⅱ
美術Ⅱ
工芸Ⅰ
工芸Ⅱ
工芸Ⅱ
書道Ⅰ
書道Ⅱ
書道Ⅱ
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
外国語 オーラル・コミュニケーションⅠ
オーラル・コミュニケーションⅡ
英語Ⅰ
英語Ⅱ
リーディング
ライティング
2
4
3
4
4
4
家庭 家庭基礎
家庭総合
生活技術
2
4
4
情報 情報A
情報B
情報C
2
2
2

(5)盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の編成と年間授業時数等

 近年、障害のある人々に関する様々な施策が総合的・計画的に進められ、これらの人々が主体的に参加できるような社会づくりが進展している中で、障害のある幼児児童生徒が自立し、社会参加していくための基盤を培う特殊教育の果たす役割は、ますます重要になっている。
 障害のある幼児児童生徒に対しては、現在、盲学校、聾学校及び養護学校、小学校及び中学校の特殊学級又は通級による指導などを通して、一人一人の障害の種類や程度等に応じて、様々な工夫と配慮の下に、手厚く、きめ細かな教育が行われている。一方、障害の重度・重複化、多様化傾向の拡大、高等部への進学率の上昇、早期からの教育的対応に対するニーズの高まり、卒業後の進路の多様化、交流教育の推進等、時代の進展とともにこれを取り巻く諸状況も大きく変化してきている。また、国際化、情報化等の進展など、社会の様々な面での変化も急速に進んでいる。
 このような様々な状況の変化を踏まえ、障害のある幼児児童生徒が自己の持つ能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し、社会参加するための基盤となる[生きる力]を培うことをねらいとして、障害に基づく種々の困難を改善・克服する教育活動を一層重視し、主として次の五つの視点から盲学校、聾学校及び養護学校等の教育課程を改善することとする。

  1. 幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の教育課程の基準の改善に準じた改善
     幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の教育課程の基準の改善の趣旨を踏まえ、基本的にはこれらの改善に準じた改善を図る。
  2. 障害の重度・重複化、多様化への対応
     幼児児童生徒の障害の重度・重複化、多様化に適切に対応し、個に応じた指導を一層重視する観点から、教育課程の基準の改善を図る。
  3. 早期からの適切な教育的対応
     障害のある幼児に対しては、早期からの適切な教育的対応が有効であるという観点から、3歳未満の乳幼児を含む教育相談及び幼稚部の教育内容等の改善・充実を図る。
  4. 職業的な自立の推進
     高等部卒業後の進路の多様化や雇用状況の変化等を踏まえ、生徒の職業観や勤労観を育成し、職業的な自立を一層推進する観点から、学科の編成、教育内容等の改善・充実を図る。
  5. 軽度の障害のある児童生徒への対応
     特殊学級や通級による指導の対象となる児童生徒に対し、障害の多様化等の実態に対応した適切な教育を一層進めるため、指導内容等の改善・充実を図る。
ア 盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の編成

(ア)教育課程の編成等

  1. 教育課程の編成
     現在、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程は、幼稚部については、幼稚園に準じた領域(健康、人間関係、環境、言葉及び表現)に加えて養護・訓練で編成され、また、小学部、中学部及び高等部については、小学校、中学校及び高等学校に準じた各教科、道徳、特別活動に加えて養護・訓練で編成されている。知的障害者を教育する養護学校の各教科については、児童生徒の実態に応じた教育を行うため、例えば中学部における職業・家庭や高等部における職業など独自の教科が設けられているとともに、全教科について、その障害の学習上の特性も考慮した目標・内容が示されている。
     盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程については、教育課程の実施の経験等からみて、基本的に現行どおりとしつつ、これに、小学校、中学校及び高等学校に準じて新たに「総合的な学習の時間」を加えて編成することとする。なお、「養護・訓練」については、4(3)に述べるとおり、名称を「自立活動」に改める。
  2. 「総合的な学習の時間」の創設
     盲学校、聾学校及び養護学校においても、各学校の創意工夫を生かして特色ある教育活動を展開できるような時間、教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習をより円滑に実施するための時間を確保する必要があるため、基本的には、小学校、中学校及び高等学校に準じて「総合的な学習の時間」を設けることとする。
     ただし、知的障害者を教育する養護学校の小学部については、全学年に総合的な教科である生活科が設定されていること、領域や教科を合わせた指導が行われていることなどから、「総合的な学習の時間」と同様の趣旨の指導を行うことが可能であるため、これを設けないこととする。
     また、重複障害者については、学習が著しく困難な場合、現行では、養護・訓練を主とした指導を行うことができるようになっていることから、「総合的な学習の時間」についても、同様に弾力的な取扱いができるようにすることが適当である。
  3. 知的障害者を教育する養護学校の教科及び学科の新設
     知的障害者を教育する養護学校においては、国際化、情報化の進展等社会の変化に対応し、生徒の日常生活を豊かにするとともに、卒業後の社会生活への適応を円滑に進めることができるようにする観点から、新たに選択教科として、中学部には「外国語」を、高等部には「外国語」及び「情報」を設けることとする。また、高等部においては、生徒の多様な実態、進路希望等に即した職業教育を進める観点から、流通業やサービス産業に関する基礎的・基本的な内容で構成する教科として「流通・サービス」を新たに設けるとともに、「盲学校、聾学校及び養護学校の高等部の学科を定める省令」において、新たな学科として「商業科」や多様な職業に関する基礎的・基本的な教育を行う「産業科」を設けることとする。

(イ)訪問教育に係る教育課程

 障害があるため通学して教育を受けることが困難な児童生徒に対する訪問教育は、小学部及び中学部においては、既に盲学校、聾学校及び養護学校小学部・中学部学習指導要領における訪問教育に関する特例の規定に基づいて実施されており、高等部においては、平成9年度より試行的に実施され、平成10年度には、全都道府県において試行的な実施が行われている。
 このような状況を踏まえ、高等部における訪問教育に係る教育課程の基準については、小学部及び中学部との関連を図りつつ、重複障害者のうち学習が著しく困難な生徒についての特例など学習指導要領に必要な規定を整備する。

(ウ)個別の指導計画

 個々の幼児児童生徒の障害の状態等は、一人一人異なることから、個々の実態を的確に把握し、それに応じてきめ細かな指導を行う必要がある。このため、養護・訓練の指導においては、個々の幼児児童生徒の的確な実態把握に基づき、それに応じた指導内容・方法等を工夫して、継続的、発展的な指導が一貫して行われるようにするなど、個に応じた指導の一層の充実を図るため、個別の指導計画を作成して指導する必要がある。
 また、重複障害者等についても、個々の実態を的確に把握して、種々の特例を活用した教育課程を編成するとともに、更に一人一人の実態に応じ、個別の指導計画を作成し、先々の見通しをもった計画の下に、指導内容・方法等を工夫した指導を進めていくことが大切である。

(エ)教育課程編成の特例

 盲学校、聾学校及び養護学校の学習指導要領では、児童生徒の障害の状態等に応じた適切な教育を行うことができるよう、様々な教育課程編成上の特例が定められている。
 これらの規定については、児童生徒の今後一層の障害の重度・重複化、多様化に対応して、適切な教育が展開されるようにするため、次のような一層の弾力化を図る必要がある。

  1. 小学部及び中学部において教科の学習が困難な児童生徒に対しては、児童生徒の在籍する当該学年(学部)の下の学年(学部)の教科の目標や内容に替えることができるようになっているが、これを更に拡大し幼稚部の領域の内容も取り入れることができるようにする。
  2. 高等部の教科・科目の学習が困難な場合には、中学部の教科の目標・内容に代替して教育を行うことができるようになっているが、障害の状態が極めて重度で、中学部の教科の目標・内容に代替してもなお学習が困難な場合には、小学部の教科の目標・内容と代替できるよう、代替の範囲を拡大する。
  3. 肢体不自由者及び病弱者を教育する養護学校高等部においては、療養中の生徒が、各教科・科目の一部を通信による教育によって履修することができるようになっているが、その対象となる学校種を盲学校、聾学校及び養護学校全体に拡大する。

(オ)高等部の標準的な学科

 盲学校、聾学校及び養護学校の高等部については、学習指導要領に標準的な学科が示されているが、近年、学習指導要領に示す標準的な学科以外の多様な学科が設置されてきており、社会の変化や多様な進路希望等に対応した学科の設置促進を図る観点から、これを示さないこととすることが適当であると考える。

(カ)他の教育機関等における学習の成果の単位認定

 高等学校においては、生徒の多様な実態に対応し、他校での学習の成果を自校の教科・科目の単位として認めたり、専修学校における学習の成果や技能審査の成果、ボランティア活動、就業体験等に係る学校外の学修についても、自校の単位として認定したりすることができることとされている。
 近年、高等部においても、生徒の実態の多様化を踏まえて、生徒の主体的な学習活動を促し、学習の選択幅を拡大することをねらいとして、高等学校と同様に他の教育機関における学習の成果等について単位の認定を行うことができるようにする必要がある。

イ  授業時数等

(ア)盲学校、聾学校及び養護学校の小学部及び中学部の年間総授業時数並びに盲学校、聾学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校の高等部の卒業に必要な修得総単位数については、それぞれ、現行どおり、小学校、中学校及び高等学校に準ずることとする。また、知的障害者を教育する養護学校の高等部については、現行どおり、高等学校の年間授業週数及び週当たりの授業時数に見合う授業時数を年間授業時数とすることとする。

(イ)小学部及び中学部の各教科等の各学年ごとの年間授業時数については、現行どおり、小学校及び中学校に準じた年間総授業時数の中で、各学校が適切に定めることとする。

(ウ)養護・訓練の授業時数については、現行では、盲学校、聾学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校の小学部及び中学部においては、年間105単位時間を標準とし、また、高等部においては、週当たり3単位時間を配当することを標準として示しているが、「総合的な学習の時間」の創設等を踏まえ、児童生徒の実態等に応じた指導が一層適切に行われるようにするため、国が標準授業時数を示すことはせず、必要な授業時数を各学校が適切に定めることとする。

(エ)盲学校、聾学校及び養護学校における「総合的な学習の時間」が、児童生徒の実態に応じ、各教科等や養護・訓練の指導との十分な連携の下に、適切かつ効果的に行われるよう、国が標準授業時数を示すことはせず、必要な授業時数を各学校が適切に定めることとする。

(オ)年間授業時数の基本的な仕組みについては、現行どおりとするが、小学校、中学校及び高等学校と同様に、各学校の創意工夫を生かした年間35週にとらわれない時間割や教育課程の編成、また、授業の1単位時間の運用について、一層弾力的に取り扱うことができるようにする。

ウ 特殊学級及び通級による指導等に関する教育課程

(ア)特殊学級及び通級による指導

 特殊学級は、障害の程度が比較的軽度な児童生徒に対し、きめ細かな教育を行うため、小学校及び中学校において特別に編制された小人数の学級である。教育課程については、基本的には、小学校及び中学校の学習指導要領によることとなるが、障害の状態等に応じた適切な教育を行うため、特に必要がある場合には、盲学校、聾学校及び養護学校小学部・中学部学習指導要領を参考とした特別の教育課程を編成することができることとされている。
 また、通級による指導は、小学校及び中学校の通常の学級に在籍している軽度の障害のある児童生徒のうち、障害の状態等に応じた特別な指導を一部必要とする者のための教育形態として平成5年度に新たに制度化されたもので、通常の学級の教育課程に加え、又は一部に替えた特別の教育課程を編成することができることとされている。

  1. 特殊学級
     特殊学級の指導について全校的な理解と取組が進められるようにするため、小学校及び中学校の学習指導要領に、特殊学級に関して、指導計画作成等に当たって配慮すべき事項を明記し、児童生徒の障害の状態等に応じた指導の一層の充実を図る。
  2. 通級による指導
     平成5年度の制度化以降、対象となる児童生徒が増加傾向にあり、これに伴う障害の状態の多様化等に適切に対応するため、今後、通級による指導に対する全校的な理解と取組を進めるとともに、個々の実態に応じた指導計画の作成及び指導内容等について一層工夫していく必要がある。このため、小学校及び中学校の学習指導要領に、通級による指導に関して、指導計画作成等に当たって配慮すべき事項を明記し、児童生徒の障害の状態等に応じた指導の一層の充実を図る。

(イ)交流教育

 障害のある幼児児童生徒と障害のない幼児児童生徒や地域社会の人々とが共に活動し互いに触れ合う機会を設けることは、すべての幼児児童生徒にとって豊かな人間性や社会性をはぐくむ上で大きな意義があるとともに、地域社会の人々が障害のある幼児児童生徒とその教育に対する正しい理解と認識を深める上で極めて重要であり、このような観点から交流教育の一層の充実を図る必要がある。
 このため、盲学校、聾学校及び養護学校と幼稚園、小学校、中学校、高等学校や地域社会の人々との交流について、幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の学習指導要領等に明確に位置付けるとともに、盲学校、聾学校及び養護学校の学習指導要領等については、その意義を一層明確に示す。

(ウ)学習障害児への対応

 学習障害(基本的には、全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定の能力の習得と使用に著しい困難を示す様々な障害)については、この分野の研究自体が比較的新しいこともあり、各学校における理解が未だ十分でない状況にある。この点で、まず学校教育において、教育上配慮すべき障害の一つであることについて、広く啓発を図る必要があると考える。また、このような児童生徒については、特殊教育の専門家の指導・助言を得ながら、個別の指導計画を作成するなど、児童生徒の実態に即した適切な指導が行われるようにする必要があると考える。

(6)中高一貫教育の教育課程の編成等

 学校教育法等の一部改正により選択的に導入することとされた中高一貫教育については、その教育課程の編成等について次のとおりとすることが適当である。

ア 中高一貫教育の教育課程についての考え方

 中高一貫教育は、中学校教育と高等学校教育を接続し、6年間の計画的・継続的な教育課程及び学習環境の下で、一貫した教育を行うものであり、ゆとりある安定的な学校生活が送れることや、6年間の計画的・継続的な教育指導ができ、生徒の多様な個性の伸長や優れた才能の発見ができるなどの意義を有するものである。
 中高一貫教育においては、このような意義を十分生かして、基礎的・基本的な内容をしっかりと身に付けさせるとともに、社会体験や自然体験を中心とした様々な体験学習を積極的に取り入れることなどにより、豊かな教育活動を展開していくことが望まれる。
 中高一貫教育は、現行義務教育制度の下に導入されるものであることから、その教育内容については、基本的には中学校及び高等学校のそれぞれの教育内容に準じることになるが、中高一貫教育としての特色ある教育課程を編成することができるよう、一定の特例措置を講ずることが適当であると考える。

イ 中高一貫教育の教育課程の編成等

(ア)中等教育学校は、前期3年と後期3年の課程に区分され、それぞれ中学校及び高等学校と同様の目的・目標を有することから、前期課程については中学校の教育課程の基準、後期課程については高等学校の教育課程の基準を準用することとしつつ、中高一貫教育の利点を生かして、生徒の個性や創造性を伸ばすことのできる特色ある教育課程を編成することができるよう、次のような特例措置を設けることが適当である。

  1. 前期課程においては、当該学校が6年間を通じた特色ある教育課程を編成し、生徒の特性等に応じて多様な選択ができるよう、次の特例を設ける。
    1) 各選択教科の授業時数の上限を緩和する。
    2) 各学年において、必修教科の授業時数を、一定の範囲内(年間70単位時間
    (週2単位時間)程度)で、必修教科の内容を代替することのできる内容の選択教科の開設のための授業時数に充てることができるようにする。
  2. 後期課程においては、「その他の科目」、「その他特に必要な教科」を活用して、前期課程との関連を図った教育が展開できるようにする。このため、これらの教科・科目の修得単位数について、普通科において卒業に必要な単位数に含めることができる上限(20単位)を緩和する特例を設ける。

(イ)また、同一の設置者が設置する中学校及び高等学校において中高一貫教育を実施する場合についても、中等教育学校と同様の特例措置を講ずることが適当である。

(ウ)既存の市町村立中学校と都道府県立高等学校が連携して中高一貫教育を行う場合には、中学校と高等学校の間で協議を行って教育課程を編成し、特色ある教科の開設、教職員・生徒の交流、授業の共同実施等、各学校の創意工夫を生かした特色ある教育課程の編成・実施が展開されることが望まれる。

4 各教科・科目等の内容

 では、次に、各学校段階における教育内容(各領域、各教科、道徳、特別活動)をどのような考え方の下に、どのように改善されるべきかなどについて述べる。

(1)幼稚園 

ア 幼稚園教育においては、遊びを中心とした生活を通して、一人一人に応じた総合的な指導を行うという基本的考え方を引き続き充実発展させていく。幼児の主体的活動が十分に確保されるよう、教師が幼児理解に基づき計画的に環境を構成することや遊びへのかかわりなどにおける教師の基本的役割について共通理解をすることの重要性等について、幼稚園教育要領において一層明確化する。
イ 「ねらい」及び「内容」については、豊かな生活体験を通して自我の形成を図り、[生きる力]の基礎を培うために、次のような事項が全体を通じて十分達成できるように改善する。

(ア)心身の健康を培う活動を積極的に取り入れること
 幼児を取り巻く環境や生活の変化に対応し、幼児の健康な生活リズムをつくりだし、戸外で伸び伸びと体を動かして遊ぶ活動を積極的に取り入れるとともに、友達と十分に遊ぶことによって自己の存在感や充実感を味わう体験を一層重視する。また、悩みや葛藤の経験を通して友達の存在に気付くといった自我の形成にかかわる体験や社会生活上のルール、幼児期にふさわしい道徳性を生活の中で身に付けるような指導を充実する。その際に、人としてしてはいけないことがあることに気付くようにするとともに、何がよくて何が悪いかを考えさせるようはっきりと指導するようにする。

(イ)自然体験、社会体験などの直接的、具体的生活体験を重視すること
 幼児が自然にじっくり触れる機会を生み出すために、園外での活動を積極的に取り入れるとともに、身近に自然を体験する機会を一層充実する。また、高齢者をはじめ地域の人々との触れ合いの体験などの社会体験を積極的に取り入れる。その際、時には幼児がまわりの大人の手を借りずに、何かをやり遂げ、充実感を味わう体験が得られるように配慮する。

(ウ)幼児期にふさわしい知的発達を促す教育の在り方を明確に示すこと
 幼児は遊びの中で周囲の環境や友達と直接かかわることを通して、好奇心や探求心を抱き、物事の法則性に気付いたり、自分なりに考えたり、感情のコントロールや思いやり、協力することの大切さなども体験的に学んでいく。また、言葉や記号などを用いることを通して、文字や数量に対する感覚やその記号的意味に気付いていく。そこで、このような幼児期にふさわしい知的発達を促す教育の在り方を示し、自ら学び自ら考える力の基礎の形成に資するようにすることとする。なお、こうした指導は、知識の獲得を中心として一斉にあるいは画一的に指導したり、それを他の幼児と比較して評価したりするような知識偏重のいわゆる早期教育とはもとより異なるものである。

(エ)自我が芽生え、自己を抑制しようとする気持ちが生まれる幼児期の発達の特性に応じたきめ細かな対応を図ること
 幼児期は、自我が芽生える時期と他者の存在を意識して思いやり、自己を抑制しようとする気持ちが生まれるようになる時期に分かれる。幼児期のこうした発達の特性を考慮したそれぞれの時期にふさわしい活動ができるよう、幼児の発達の特性に配慮した指導計画の作成など具体的な手がかりを示すこととする。

(オ)集団とのかかわりの中で幼児の自己実現を図ること
 幼児を取り巻く環境や生活の変化に対応し、幼児の主体的な活動を通した友達との相互交渉を一層豊かにするとともに、友達と一緒に何かをやり遂げようとする中で責任を持とうとする気持ちや我慢することを学ばせることが重要である。このような集団とのかかわりの中で幼児の自己実現が図られるよう、一人一人を生かした集団活動の機会が十分に確保されるようにする。
 これらの事項については現行幼稚園教育要領の5領域に相互に関連するので、複数の領域に工夫して記述するよう配慮する。

ウ 小学校との連携

 小学校以降の生活や学習の基盤は、様々な人との出会い、自然や事物との触れ合い体験など、幼児期の発達にとって必要な事柄を経験することにより育成されるものである。幼児の指導に当たっては、幼児一人一人が幼児期にふさわしい生活を十分に体験できるようにし、物事に進んで取り組む意欲と自信を身に付けさせるとともに、創造的な思考や主体的な生活態度の基礎を培うことに十分配慮することが大切である。また、その際には、小学校における生活科などとの関連に留意し、幼稚園における主体的な遊びを中心とした総合的な指導から小学校への一貫した流れができるよう配慮する必要がある。

エ 幼稚園運営の弾力化

 幼児を取り巻く環境の変化、家庭や社会のニーズの多様化に対応し、幼稚園が家庭や地域との連携を深め、積極的に子育てを支援していく地域に開かれた幼稚園づくりや通常の教育時間の終了後、希望する幼児を対象に幼稚園において引き続き教育を行う預かり保育など幼稚園運営の弾力化を推進する。預かり保育については、家庭との緊密な連携の下、幼稚園において適切な指導体制を整え、幼稚園教育の基本的な考え方を踏まえるとともに、幼児の生活リズム、心身への負担等を考慮して幼児期にふさわしい生活を送ることができるよう、教育課程に基づく日々の教育活動との関連に配慮して実施することが重要である。
 また、幼稚園とともに幼児期の子どもを預かる場として保育所があるが、幼稚園と保育所の在り方については、両施設の合築等による共用化など運用の弾力化を推進するとともに、教育内容・保育内容、子育て支援、教師・保母の養成・研修の在り方などについて両施設間の連携を促進し、保護者や幼児の立場に立って、利用しやすい環境の整備が図られ、幼児の健やかな成長がはぐくまれるようにすることが強く求められる。このことは、我が国社会において少子化が進行している今日、特に留意する必要がある。

(2)小学校、中学校及び高等学校 

1) 国語
ア 改善の基本方針

(ア)小学校、中学校及び高等学校を通じて、言語の教育としての立場を重視し、国語に対する関心を高め国語を尊重する態度を育てるとともに、豊かな言語感覚を養い、互いの立場や考えを尊重して言葉で伝え合う能力を育成することに重点を置いて内容の改善を図る。特に、文学的な文章の詳細な読解に偏りがちであった指導の在り方を改め、自分の考えをもち、論理的に意見を述べる能力、目的や場面などに応じて適切に表現する能力、目的に応じて的確に読み取る能力や読書に親しむ態度を育てることを重視する。
 そのため、現行の「表現」及び「理解」の各領域と[言語事項]の構成を改め、「話すこと・聞くこと」、「書くこと」及び「読むこと」の領域と[言語事項]から内容を構成するとともに、実践的な指導の充実を図る観点からも、説明や話し合いをすること、記録や報告をまとめることなどの言語活動例を示すようにする。その際、各領域の指導が調和的に行われるよう、各学校段階の特質等に応じてそれらの指導時数の目安を示すことを考慮する。

(イ)教材は、児童生徒の心身の発達段階を考慮し、各領域にふさわしいものを調和的に取り上げ、文学的な文章に偏らないようにする。また、広く我が国の言語文化に親しみ、ものの見方や考え方を豊かにするような教材を取り上げるように配慮する。

(ウ)古典に関する指導については、我が国の文化と伝統を尊重し、生涯にわたって古典に親しむ態度の育成を重視する。

(エ)小学校及び中学校における漢字の指導については、現在、中学校修了までに学年別漢字配当表の漢字(1006字)を使い慣れ、常用漢字の大体を読むこととされている。確実に漢字の力を育成するようにするため、児童生徒の学習負担の実態に配慮し、読みの指導は基本的に現行どおりとしつつ、書きの指導については上の学年に移行する。その際、学年ごとに配当されている漢字の書きについては、当該学年では漸次文や文章の中で書くようにし、上の学年までに文や文章の作成に当たって十分使用できるよう時間をかけて指導することとする。
 また、学年別漢字配当表に示す漢字の学年ごとの取扱いを一層弾力化する。

(オ)書写の指導については、文字を正しく整えて生活に役立つ書写の力を育成するため指導の在り方の改善を図る。

イ 改善の具体的事項
(小学校)

 日常生活に必要な話す・聞く、書く、読むなどの基礎的な内容を繰り返し学習し確実に言語能力を育成することを重視し、内容の改善を図る。

(ア)「話すこと・聞くこと」の領域では、目的や場面に応じて、自分の考えをもって相手に分かるように話したり相手の話の要点を聞いたりする能力の育成を重視する。そのため、簡単なスピ-チや説明をすること、話し合いをすることなどの言語活動例を示す。
 「書くこと」の領域では、相手や目的に応じて、必要な事柄を集めたり選択したりして内容や文章を構成する能力の育成を重視する。そのため、手紙を書くこと、記録や報告をまとめることなどの言語活動例を示す。
 「読むこと」の領域では、目的や意図に応じて、要点や要旨などを読み取る能力や読書に親しむ態度の育成を重視する。そのため、読み聞かせや読書紹介、学校図書館を利用して調べることなどの言語活動例を示す。

(イ)児童の発達段階や中学校との関連に十分配慮しつつ、学校や児童の実態に応じて重点的に指導できるよう、目標や内容を2学年まとめて示すようにする。

(ウ)現在、どの学年でも指導することになっている指導事項について全体として精選し、例えば、段落分けの指導は第3・4学年で、人物の気持ちの読み取りの指導は第5・6学年で重点的に取り扱うようにするなど、児童の発達段階に応じ重点的な指導が行われるようにする。

(エ)文字、表記、語句、文章構成、言葉遣いなどの〔言語事項〕については、基礎的な言語能力を養うとともに、児童の発達段階に応じ重点的な指導が行われるよう、中学校の内容との関連を図りつつ、基礎的な文字や表記、音声言語、簡単な文や文章の組立てや構成などについての内容の指導を重視する。

(オ)古典に親しむ態度を育成するため、親しみやすい文語調の文章について音読を中心に指導することとする。

(中学校)

 社会生活に必要な言語能力を確実に育成することを重視し、内容の改善を図る。

(ア)「話すこと・聞くこと」の領域では、話し合いの目的や方向に沿って効果的に話したり、相手の意図を理解しながら聞いたりする能力の育成を重視する。そのため、説明や討論などの言語活動例を示す。
 「書くこと」の領域では、相手や目的に応じて効果的な文章を書くことのできる能力の育成を重視する。そのため、通信文を書くこと、記録や報告をまとめること、資料を作成することなどの言語活動例を示す。
 「読むこと」の領域では、目的や意図に応じて的確に読み取る能力や進んで読書に親しむ態度の育成を重視する。そのため、学校図書館を活用して様々な形態の文章を読み自分の考え方を深めるなどの言語活動例を示す。

(イ)学校や生徒の実態に応じて重点的に指導できるよう目標や内容を、例えば、第1学年と第2・3学年にまとめて示すようにする。

(ウ)現在、どの学年でも指導することになっている指導事項について全体として精選し、例えば、主題や要旨を読み取る指導は第1学年で、相手や目的に応じて叙述を工夫する指導は第2・3学年で重点的に取り扱うようにするなど、学校や生徒の実態に応じ重点的な指導が行われるようにする。

(エ)〔言語事項〕については、基礎的な言語能力を高めるため、小学校の内容との関連を図りつつ、各領域の学習に役立つよう語句や語彙、文や文章の組立てや構成などについての内容の指導を重視する。

(オ)古典の指導については、古典に親しませることに重点を置く。その際、言葉のきまりについては、細部にわたることなく教材に即して必要な範囲で指導することにとどめる。
 また、文学史については扱わない。

(高等学校)

 中学校までに培われた言語能力をさらに総合的に発展させるとともに生徒の能力・適性、興味・関心等に応じた指導を一層充実して、社会人として必要とされる言語能力の基礎を確実に育成するため、以下の科目から構成し、選択履修が一層柔軟に行われるようにする。また、各科目においては、例えば、適切な情報を活用しつつ、話すこと・聞くこと、書くこと及び読むことに関する学習が行われるよう、言語活動例を示すなどの工夫を行うものとする。

(ア)「国語表現Ⅰ」は、現行の「国語表現」及び「現代語」の内容を合わせて改善したものとする。「話すこと・聞くこと」及び「書くこと」の領域を中心として内容を構成し、適切に話したり書いたりする力など社会生活に生かすことのできる言語能力を育成する。そのため、特に、自分の考えをもち、論理的に意見を述べたり、相手の立場や考えを尊重して話し合ったりする態度や能力、目的や場面などに応じて適切に表現する能力の育成を重視する。また、進んで表現する意欲を喚起し現代の国語の向上を図る観点から、国語の表現の特色や現代の語句、語彙の成り立ちなどを理解するとともに、古典の表現法や語句、語彙等も関連的に取り扱うようにする。

(イ)「国語表現Ⅱ」は、「国語表現Ⅰ」の内容を高めたものとする。「話すこと・聞くこと」及び「書くこと」の領域のうちいずれかを中心にして扱うこともできるものとする。

(ウ)「国語総合」は、現行の「国語Ⅰ」の内容を改善したものとする。総合的な言語能力を伸ばすため、文章や作品等の読解学習が中心となっている現状を改め、「話すこと・聞くこと」、「書くこと」及び「読むこと」の各領域の学習が調和的に行われるよう内容を改善する。その際、「話すこと・聞くこと」の領域においては、論理的に意見を述べたり、相手の立場や考えを尊重して話し合ったりする態度や能力の育成を重視する。「書くこと」の領域においては、目的や場面などに応じて適切に表現する能力の育成を重視する。また、「読むこと」の領域においては、目的に応じて的確に読み取る能力や読書に親しむ態度の育成を重視するとともに、古典の世界に親しみがもてるよう指導の在り方について工夫する。〔言語事項〕については、各領域の学習に役立つよう、様々な目的や場に応じた話し方や言葉遣い、文や文章の組立てなどの内容を重点的に取り上げるとともに、国語の成り立ちや特質、言語の役割等について基礎的な理解ができるようにする。

(エ)「現代文」は、現行の「現代文」の内容を改善したものとする。近代以降の様々な種類の文章を教材として取り上げ、各領域の言語活動を通して、読むことの能力を伸ばすとともに、読んだことを基にして進んで表現したり読書に親しんだりする態度や能力が育成できるよう内容を改善する。

(オ)「古典」は、現行の「古典Ⅰ」及び「古典Ⅱ」の内容を合わせて改善したものとする。ある程度系統的に古典に接し、各領域の言語活動を通して読むことの能力を伸ばし、古典に親しむ態度を育成する。

(カ)「古典講読」は、現行の「古典講読」の内容を改善したものとする。教材として、古文と漢文のうち、まとまりのある文章や作品を取り上げ、各領域の言語活動を通して、古典に親しむ態度を育成するとともに、我が国の文化と伝統に対する関心を深める。この場合、古文と漢文の両方又はいずれか一方を取り上げることができるものとする。

2) 社会、地理歴史、公民
ア 改善の基本方針

(ア)小学校、中学校及び高等学校を通じて、日本や世界の諸事象に関心をもって多面的に考察し、公正に判断する能力や態度、我が国の国土や歴史に対する理解と愛情、国際協力・国際協調の精神など、日本人としての自覚をもち、国際社会の中で主体的に生きる資質や能力を育成することを重視して内容の改善を図る。

(イ)児童生徒の発達段階を踏まえ、各学校段階の特色を一層明確にして内容の重点化を図る。また、網羅的で知識偏重の学習にならないようにするとともに、社会の変化に自ら対応する能力や態度を育成する観点から、基礎的・基本的な内容に厳選し、学び方や調べ方の学習、作業的、体験的な学習や問題解決的な学習など児童生徒の主体的な学習を一層重視する。

イ 改善の具体的事項
(小学校(社会))

 各学校が地域の実態を生かすとともに、児童が地域社会や我が国の産業、国土、歴史などに対する理解と愛情を一層深め、興味・関心をもって楽しく学習に取り組めるようにすることを重視して内容の改善を図る。

(ア)第3学年及び第4学年においては、現在、地域に関する内容の学習を行い、第3学年では市町村、第4学年では都道府県までを中心に扱っているが、これについて、次のような改善を図り、各学校で地域に密着した学習が一層弾力的に展開できるようにし、児童が地域社会への理解を一層深めるようにする。

  1. 目標及び内容を2学年まとめて示し、地域に関する学習が一層弾力的に行えるようにする。
  2. 地域の公共施設の利用や人々の諸活動に関する内容と市町村の様子に関する内容、地域の生産活動と消費生活に関する内容、第3学年の地域の移り変わりと第4学年の地域の先人の開発などの努力に関する内容を、それぞれ集約、統合する。
  3. 現行の第4学年の地域における現在の開発に関する内容は、政治の働きとかかわりが深いことから、第6学年に移行し、国民の日常生活に見られる政治の働きに関する内容に含めて取り扱うようにする。また、現行の第4学年の我が国の国土の様子に関する内容は第5学年に移行する。

(イ)第5学年においては、我が国の産業や国土に関する内容の学習を行っているが、学習が各種の資料や調査を通して一層具体的に展開できるよう、次のような改善を図る。

  1. 我が国の農業や水産業について、取り上げる事例を一層選択できるようにするとともに、貿易の特色や運輸の働きについての内容は、農業や工業などの内容に関連付けて扱うようにする。
  2. 国土の様子に関する内容において、児童にとって抽象的な学習になりがちな人口や資源の分布などに関する事項は、中学校へ移行統合する。
  3. 現行の第5学年の伝統的な技術を生かした工業に関する内容は、自分たちの住んでいる都道府県についての理解を一層深めるようにする観点から、第4学年に移行し、都道府県の産業に関する学習の中で扱うようにする。

(ウ)第6学年の歴史学習については、我が国の今日までの歴史に対する興味・関心と愛情を深めるようにするため、人物の働きや代表的な文化遺産を中心にした歴史学習を一層徹底する。また、取り上げる歴史的事象を一層精選して扱えるようにし、いわゆる通史にならないようにする。

(エ)第6学年の我が国の政治の働きや国際理解に関する内容については、学習が具体的な事例を基に行われるよう、取り扱う範囲を明確にし、学習内容を一層精選する。

(中学校(社会))

 地理的分野、歴史的分野、公民的分野で構成されている現行の基本的枠組みは維持しながら、知識偏重の学習にならないよう留意し、広い視野に立って我が国の国土や歴史、社会生活を成り立たせている政治や経済などに関する理解を深めるとともに、生徒の特性等に応じて主体的な学習が展開できるよう、内容の改善を図る。

(ア)各分野においては、それぞれの特質と相互の関連に留意し、次のような改善を図る。

  1. 地理的分野については、日本と世界の諸地域学習に関する内容を再構成し、日本や世界を地理的に認識する上で基礎的な内容をしっかり身に付けることができるようにするとともに、国土の特色を世界と比較して大きくとらえ、また、幾つかの地域の事例を通して地域的特色を明らかにする視点や方法などを学ぶことができるようにする。
  2. 歴史的分野については、事項を精選して重点化を図り、例えば、古代、中世、近世、近現代のように時代区分を大きくとって内容を再構成し、我が国の歴史の大きな流れを世界の歴史を背景に理解するようにするとともに、歴史についての学び方や調べ方を身に付け、多面的な見方ができるようにする。また、先人が築いてきた文化と伝統を尊重する態度を養い、我が国の歴史に対する理解と愛情を深めるようにする。
  3. 公民的分野については、生徒の発達段階に配慮して、国民主権や国民生活と福祉など政治や経済等に関する基礎的・基本的な内容を具体的事例を通して重点的に学ぶことにより、政治や経済の見方や考え方の基礎と公正に判断する能力と態度を一層養うことができるようにする。その際、例えば、他教科との関連を考慮して現代の社会生活の内容の一部を削除し、国際政治や国際経済の中の高度な学習になりがちな内容については、高等学校公民科へ移行統合する。

(イ)地理的分野の日本と世界の結び付き、歴史的分野の現代の日本と世界、公民的分野の国際社会に関する内容については相互に関連が深いことから、これらを連携させ、現代社会の成り立ちや国際社会の変容を身近な社会生活と関連付けてとらえることができるようにする。

(高等学校(地理歴史、公民))

 中学校社会科との関連や科目の専門性を考慮し、世界や日本の歴史的、地理的認識を深めるとともに、現代社会についての理解や人間としての在り方生き方についての自覚を深めるよう、内容の改善を図る。

(ア)地理歴史科については、現行の基本的な科目構成を維持しつつ、各科目の特質を生かして内容を厳選するとともに、各科目で主題学習による内容を工夫し、また科目内で内容を選択して学習する仕組みを一層拡充して重点を置いて学習できるよう工夫する。
 「世界史A」については、諸文明の歴史的特質と世界の一体化の過程を、地理的条件に留意しながら概観しつつ、現代の諸課題を歴史的な観点から追究することを中心に扱う。
 「世界史B」については、世界の歴史の大きな枠組みと流れをとらえ、現代世界の特質と文化の多様性・複合性を広い視野から考察することにより、歴史的思考力を培うことを一層重視する。
 「日本史A」については、近現代史を一層重視し、我が国の近代社会の成立と発展の過程を我が国を取り巻く国際関係や地理的条件と関連付けて考察できるようにする。「日本史B」については、我が国の歴史に対する認識を深め、歴史的思考力を培うことを一層重視し、我が国の歴史の展開を世界史的視野に立って総合的に学習できるようにする。
 「地理A」については、地図の読図・描図や地域調査など、作業的、体験的な学習の一層の充実を図るとともに、現代世界の諸課題を歴史的背景に留意しつつ地域性を踏まえて追究できるようにする。
 「地理B」については、地理的な見方や考え方の指導を一層重視するとともに、現代世界の地理的認識と地理的な見方や考え方に関する学習を関連付けて体系的に学ぶことができるようにする。

(イ)公民科では、現行の三つの科目の特質を一層明確にするよう内容の改善を図るとともに、内容を厳選する。特に、課題を設定し追究する学習を重視し、各科目でそれぞれの特質に応じた諸課題を選択的に取り上げて考察し、社会的事象に対する客観的で公正な見方や考え方を深めることができるようにするとともに、現代社会の諸課題と人間としての在り方生き方について考える力を一層養うことができるようにする。
 「現代社会」については、多様な角度から現代社会をとらえたり、倫理、社会、文化、政治、経済の領域にかかわる現代社会の諸課題を取り上げて考察したりすることができるようにすることに重点を置く。
 「倫理」については、自己や現代社会の倫理的課題を主体的に追究し、人間としての在り方生き方について理解と思索を深め、生きる主体としての自己の形成が図れるようにすることに重点を置く。
 「政治・経済」については、政治や経済の基本的な概念や理論を学習したり、それらを活用して現代社会の動向や課題について考察したりすることができるようにすることに重点を置く。

3) 算数、数学
ア 改善の基本方針

(ア)小学校、中学校及び高等学校を通じ、数量や図形についての基礎的・基本的な知識・技能を習得し、それを基にして多面的にものを見る力や論理的に考える力など創造性の基礎を培うとともに、事象を数理的に考察し、処理することのよさを知り、自ら進んでそれらを活用しようとする態度を一層育てられるようにする。

(イ)そのために、実生活における様々な事象との関連を考慮しつつ、ゆとりをもって自ら課題を見つけ、主体的に問題を解決する活動を通して、学ぶことの楽しさや充実感を味わいながら学習を進めることができるように内容を改善する。

イ 改善の具体的事項
(小学校(算数))

 教育内容を厳選し、児童がゆとりをもって学ぶことの楽しさを味わいながら数量や図形についての作業的・体験的な活動など算数的活動に取り組み、数量や図形についての意味を理解し、考える力を高め、それらを活用していけるようにする。特に、小学校での教育が以後の学習の基礎となることから、基礎的・基本的な知識と技能については繰り返し学習し確実に身に付けられるようにする。
 領域構成については、現行どおり「数と計算」、「量と測定」、「図形」及び「数量関係」とする。「数と計算」の内容は、小学校算数の中心となるものであり、一層重点を置いて指導するようにする。また、学年配当に当たっては、低学年では特に「数と計算」の内容を重点的に扱い、学年が上がるにつれて次第に「量と測定」、「図形」及び「数量関係」の内容を増やしていくようにする。

(ア)「数と計算」の領域では、数と計算の意味を理解すること、数の大きさへの感覚を豊かにすること、計算の結果への見通しをもつことについての指導に重点を置き、例えば、桁数の多い整数や小数の計算、帯分数を含む複雑な分数の計算など、計算の内容の範囲や程度を軽減したり、小数や分数の導入を上の学年へ移行したり、不等号の式の内容などを削除したりする。

(イ)「量と測定」の領域では、量の単位の意味を理解すること、量の大きさへの感覚を豊かにすること、基本的な図形の面積や体積を求めることについての指導に重点を置き、例えば、柱体と錐体の表面積の内容などを中学校へ移行統合したり、台形と多角形の面積、取扱いが行き過ぎになりがちな単位の換算の内容などを削除したりする。

(ウ)「図形」の領域では、ものの形の特徴をとらえて図形の分類をすること、基本的な図形の作図や構成をすることについての指導に重点を置き、例えば、図形の合同、図形の対称、縮図や拡大図、錐体などの立体図形の内容などを中学校へ移行統合したり、正多角形の内容などを削除したりする。

(エ)「数量関係」の領域では、目的に応じて資料を分類整理すること、数量の関係を基本的な表やグラフに表現して調べることについての指導に重点を置き、例えば、文字式、比例や反比例の式、物事の起こり得る場合の調べ方の内容などを中学校へ移行統合したり、度数分布の内容、取扱いが行き過ぎになりがちな比の値の内容を削除したりする。

(中学校(数学))

 生徒がゆとりをもって、数量や図形などに関する基礎的・基本的な知識を確実に理解できるようにするとともに、自ら課題を見つけ考える問題解決的な学習を積極的に進めることができるようにする。
 領域構成については、現行どおり「数と式」、「図形」及び「数量関係」とする。

(ア)「数と式」の領域では、文字を用いて考えることの必要性についての理解を深めたり、式の意味を積極的に読み取り自分なりに説明したりすることなどの基礎的・基本的な能力や態度の育成に重点を置き、例えば、文字を用いた式の計算については軽減を図るとともに、一元一次不等式や二次方程式の解の公式の内容などについては、高等学校へ移行統合する。

(イ)「図形」の領域では、自ら課題を見いだし、解決するために、根拠を明らかにし、筋道を立てて説明する表現力や論理的な思考力の育成を重視して、図形の証明に関する内容に重点を置く。このため、例えば、証明に関する学習がゆとりをもってできるように、図形の相似の内容を上の学年へ移行したり、複雑な思考を要する接線と弦がつくる角など円の性質に関する内容の一部、また、三角形の重心の内容などについては高等学校へ移行統合したりするとともに、取扱いが行き過ぎになりがちな立方体の切断の内容などを削除する。

(ウ)「数量関係」の領域では、物事の変化をとらえる手だてや考え方及び不確定な事象の起こる程度について正しく判断できる力などの基本的な知識や能力を身に付けることに重点を置き、例えば、資料の整理に関する内容、いろいろな事象と関数の内容及び標本調査の内容などを高等学校へ移行統合して扱うとともに、数の表現に関する内容を削除する。

(エ)生徒が自ら課題を見つけ、主体的に問題を解決していく活動を通して数学的な見方や考え方をさらに深めていくことができるよう、課題学習を一層活発に行うようにする。

(高等学校(数学))

 生徒の能力・適性、興味・関心、進路希望等に応じて多様な選択履修ができるよう数学学習の系統性と生徒選択の多様性の双方に配慮し、各科目の構成及び内容等を次のように改善する。

(ア)科目の構成は、「数学基礎」u数学Ⅰ」、「数学Ⅱ」、「数学Ⅱ」、「数学A」、「数学B」及び「数学C」とする。

(イ)「数学基礎」は、数学への興味・関心等を高めるとともに、具体的な事象を通して数学的な見方や考え方のよさを認識することをねらいとして内容を構成する。
 具体的には、例えば、中学校数学で学習した内容を基礎とした数学史的な話題、日常の事象についての統計処理及び生活における数理的な考察などを扱うこととする。

(ウ)「数学Ⅰ」、「数学Ⅱ」、「数学Ⅱ」及び「数学A」は、内容を見直し、次のような内容に再構成する。
 「数学Ⅰ」は、高等学校数学における基礎的・基本的な知識を習得し、活用する能力などを身に付ける科目として、中学校数学の内容との関連を踏まえ、中学校から移行される内容の幾つかをこの科目で扱うとともに、現行の「数学Ⅰ」の内容の一部を「数学A」に移し、数と式の計算、関数、図形と計量など基礎的な内容で構成する。
 「数学Ⅱ」は、「数学Ⅰ」に続く科目であることから、「数学Ⅱ」への系統性に配慮しつつ、ゆとりある学習ができるように、例えば、関数、図形、式などの広い範囲の内容で構成する。
 「数学Ⅱ」は、「数学Ⅱ」に続く科目として、数学を深く学習したい生徒が主に履修することになることを踏まえ、例えば、微分・積分を中心とした内容で構成する。
 「数学A」は、具体的な事象を数学的に処理するための基礎を身に付ける科目として、例えば、平面図形や確率など、これまで中学校で扱われていた内容の一部や現行の「数学Ⅰ」で扱われている内容の一部で構成する。

(エ)「数学B」及び「数学C」は、生徒の能力・適性、興味・関心等に応じて、その内容を部分的に選択して履修させる科目として、次のような内容で構成する。
 「数学B」は、例えば、数列、ベクトル、コンピュータと数学などで構成する。
 「数学C」は、例えば、確率分布、統計処理、行列などで構成する。

(オ)「数学Ⅱ」は「数学Ⅰ」を履修した後に、「数学Ⅱ」は「数学Ⅱ」を履修した後に履修させるようにする。

(カ)「数学A」、「数学B」、「数学C」の履修の方法については、次のようにする。
 「数学A」は、「数学基礎」又は「数学Ⅰ」と並行あるいはそれらの科目に引き続いて履修させるようにする。
 「数学B」は、「数学Ⅰ」を履修した後に履修させるようにする。
 「数学C」は、「数学Ⅰ」及び「数学A」を履修した後に履修させるようにする。

4) 理科
ア 改善の基本方針

(ア)小学校、中学校、高等学校を通じて、児童生徒が知的好奇心や探究心をもって、自然に親しみ、目的意識をもって観察、実験を行うことにより、科学的に調べる能力や態度を育てるとともに、科学的な見方や考え方を養うことができるようにする。

(イ)そのため、自然体験や日常生活との関連を図った学習及び自然環境と人間とのかかわりなどの学習を一層重視するとともに、児童生徒がゆとりをもって観察、実験に取り組み、問題解決能力や多面的・総合的な見方を培うことを重視する。

イ 改善の具体的事項
(小学校)

 身近な自然について児童が自ら問題を見いだし、見通しをもった観察、実験を通して、問題解決の能力を育てるとともに、学習内容を日常生活と一層関連付けて実感を伴った理解を図り、自然を愛する心情と科学的な見方や考え方を養うことができるようにすることを重視して内容の改善を図る。
 領域構成については、現行どおり「生物とその環境」、「物質とエネルギー」及び「地球と宇宙」とする。

(ア)児童が事象を比べたり、変化にかかわる要因を抽出したり、計画的に観察、実験を行ったり多面的に考察したりするなどの問題解決の能力を育成するとともに、ものづくりや自然災害など日常生活と関係の深い内容などを充実するため、次のような改善を図る。

  1. 「生物とその環境」については、児童が動植物の生活の実際や成長に関する諸現象を観察、実験を通して追究することについての指導に重点を置いて内容を構成する。
     その際、例えば、動植物の運動や成長と天気や時刻の関係などは削除するとともに卵生と胎生、植物体の水の蒸散などは中学校へ移行統合する。また、男女の体の特徴などは他教科の指導で取り上げられることを考慮して削除する。
  2. 「物質とエネルギー」については、児童が物質の性質や状態の変化について観察、実験を通して追究したり、物質の性質などを活用してものづくりをしたりすることについての指導に重点を置いて内容を構成する。
     その際、例えば、植物体の乾留などは削除するとともに、ものの性質と音、重さとかさ、水溶液の蒸発による物質の分離、中和、金属の燃焼などは中学校へ移行統合する。
  3. 「地球と宇宙」については、児童が地表、大気圏及び天体に見られる諸現象について観察したり、地表や大気圏の諸現象を自然災害などの視点と関連付けて追究したりすることについての指導に重点を置いて内容を構成する。
     その際、例えば、石と土などは削除するとともに、空気中の水蒸気の変化、太陽の表面の様子、北天や南天及び全天の星の動き、堆積岩と火成岩などは中学校へ移行統合する。

(イ)児童の興味・関心に基づいた学習を一層充実したり、地域の実態に即して地域にある事物や現象を生かした指導ができるようにするため、特に、高学年において課題選択を導入する。

(中学校)

 身近な自然の事物・現象について生徒が自ら問題を見いだし解決する観察、実験などを一層重視し、自然を探究する能力や態度を育成するとともに、日常生活と関連付けた理解を図り、科学的な見方や考え方、自然に対する総合的なものの見方を育てることができるように内容の改善を図る。

(ア)第1分野(物理的領域及び化学的領域)、第2分野(生物的領域及び地学的領域)という現行の基本的枠組みは維持しつつ、内容については、科学的思考力や問題解決能力の育成及び科学に関する基本的概念の形成を目指して、学年進行に応じて、直接的な体験・観察に基づく学習から、分析的、総合的なものの見方を育てる学習へ発展するよう次のような改善を行う。

  1. 第1分野については、光や音など感覚を通して直接体験できる現象についての学習から、学年が進むにつれて化学変化、電流、運動の現象など自然の規則性を見つけて考察する学習、さらにエネルギー、科学技術と人間など総合的な見方を育てる学習になるよう内容を構成する。
     その際、例えば、溶質による水溶液の違いについては削除するとともに、比熱、電力量、イオン、中和反応の量的関係、力の合成と分解、仕事などを高等学校に移行統合する。
     また、情報手段の発展に関する内容は、他教科の指導で取り上げられることを考慮して削除する。
  2. 第2分野については、植物や動物、大地の変化など直接観察を重視した学習から、学年が進むにつれて生物の殖え方、天体など規則性を見つけて考察する学習、さらには、環境、自然災害など総合的なものの見方を育てる学習になるよう内容を構成する。
     その際、例えば、月の表面の様子や天気図の作成については削除するとともに、大地の変化の一部並びに日本の天気の特徴、遺伝の規則性や生物の進化などを高等学校に移行統合する。

(イ)生徒の興味・関心に基づき問題解決能力を育成するため、野外観察を一層充実するとともに生徒自ら観察や実験の方法を工夫したりして課題解決のために探究する活動を行うこととする。

(高等学校)

 探究的な学習をより一層重視し、自然を探究する能力や態度を育成するとともに、生徒一人一人の能力・適性、興味・関心、進路希望等に応じて豊かな科学的素養を養うことができるよう、科目の構成及び内容等を次のように改善する。

(ア)科学が、これまで自然の謎の探究・解明にいかに挑戦し文明の発展に寄与してきたかを知るとともに、過去の実験を再現したり、課題を解決する過程や、科学が直面している問題や科学と人間生活とのかかわりについて学び、科学的なものの見方や考え方を養う新たな科目「理科基礎」を設ける。

(イ)現行の「ⅠAを付した科目」と「総合理科」の内容の一部を統合し、新たな科目「理科総合A」及び「理科総合B」を設ける。
 「理科総合A」については、「科学技術と人間とのかかわり」を中心に、物質やエネルギーなど日常生活と関係の深い自然の事象を探究する活動を行い、自然を総合的に見る見方や自然を探究する能力と態度を養う。
 「理科総合B」については、「生物とそれを取り巻く環境」を中心に、生命現象や地球環境にかかわる自然の事象を探究する活動を行い、自然を総合的に見る見方や自然を探究する能力と態度を養う。

(ウ)現行の「ⅠBを付した科目」「Ⅱを付した科目」のうち、より基本的な内容で構成し、観察、実験、探究活動などを行い、基本的な概念や探究方法を学習する科目として「物理Ⅰ」、「化学Ⅰ」、「生物Ⅰ」、「地学Ⅰ」を設ける。

(エ)上記(ウ)で述べた科目の内容を基礎に、観察、実験や課題研究などを行い、より発展的な概念や探究方法を学習する科目「物理Ⅱ」、「化学Ⅱ」、「生物Ⅱ」、「地学Ⅱ」を設ける。これらの科目については、生徒の能力・適性、興味・関心等に応じてその内容を部分的に選択して履修させるようにする。

(オ)「Ⅱを付した科目」は「Ⅰを付した科目」を履修した後に履修させるようにする。

5) 生活
ア 改善の基本方針

 児童が身近な人や社会、自然と直接かかわる活動や体験を一層重視し、こうした活動や体験の中で生まれる知的な気付きを大切にするとともに、各学校において、地域の環境や児童の実態に応じて創意工夫を生かした教育活動や、重点的・弾力的な指導が一層活発に展開できるよう内容の改善を図る。

イ 改善の具体的事項

(ア)現在、第1学年と第2学年に分けて示している内容を、地域や児童の実態に応じた弾力的な指導ができるようにするため、2学年をまとめて示すこととし、2学年で行うこととなっている合計12の内容を、学校と生活、家庭と生活、地域と生活、公共物や公共施設の利用、季節の変化と生活、自然や物を使った遊び、動植物の飼育・栽培、自分の成長の8の内容で構成することとする。

(イ)各学校において、地域にある自然や施設を活用するなどして地域や児童の実態に応じた多様な活動や体験が一層展開できるようにするため、例えば、公園、乗り物や駅といった具体的な公共施設名などを削除し、扱う対象や場を広く選択できるようにする。

(ウ)具体的な活動や体験を行う中で、児童が身近な幼児、高齢者、障害のある児童生徒など多様な人々と触れ合うことができるよう配慮する。

(エ)「総合的な学習の時間」との関連に配慮し、児童が一層自分の思いや願いを生かし、主体的に活動することができるようにするため、内容の取扱いにおいて、国語、音楽、図画工作などをはじめとした他教科等との合科的・関連的な指導を一層推進する。

6 音楽、芸術(音楽)
ア 改善の基本方針

 小学校、中学校及び高等学校を通じて、次の観点を重視して改善を図る。

(ア)表現及び鑑賞にかかわる幅広い活動を通して、音楽を愛好する心情と音楽に対する感性を育て、音楽活動の基礎的な能力を伸ばし、豊かな情操を養う指導が一層充実して行われるようにする。

(イ)児童生徒が楽しく音楽にかかわり、音楽活動の喜びを得るとともに、生活を明るく豊かにし生涯にわたって音楽に親しむことを促すことを重視し、表現活動及び鑑賞活動の関連を図りつつ、各学校が創意工夫を生かして、児童生徒一人一人が個性的、創造的な学習活動をより活発に行うことができるようにする。

(ウ)各学校段階の特質に応じて、我が国や諸外国の音楽文化についての関心や理解を一層深める表現活動及び鑑賞活動の充実を図るとともに、国歌「君が代」の指導の一層の充実を図る。

イ 改善の具体的事項
(小学校(音楽))

 児童一人一人が感性を豊かに働かせながら音楽にかかわり、楽しい音楽経験を得られるようにする観点に立って、次のような改善を図る。

(ア)学校や児童の実態等に応じて弾力的な指導が行われるようにするため、目標と内容を2学年まとめて示す。また、具体的な楽器名を削除し、扱う楽器の選択幅を広げるようにする。

(イ)児童がゆとりをもって音楽活動に取り組むことができるよう、音符、休符及び記号など知識理解に関する内容については全学年を通じて弾力的な取扱いができるようにするとともに、現在、取り扱っているハ長調とイ短調、ヘ長調とニ短調のうち、取扱いが高度になりがちなヘ長調とニ短調の視唱や視奏を削除する。

(ウ)「表現」領域においては、各学年段階の発達に即して、自分の思いを生かした表現活動が一層活発に行われるようにするため、例えば低学年や中学年では、ふし遊びやリズム遊び、様々な音を活用した音楽づくり、高学年では簡単な旋律やリズムをつくって自分なりに表現する活動などの具体的な活動を示すようにする。
 また、高学年においては、合唱や合奏などの表現形態を学校や児童の実態等に応じて選択できるよう配慮する。

(エ)「鑑賞」領域においては、児童が進んで音楽を聴き、演奏のよさや音楽の美しさを感じ取り、様々な音楽に親しむ活動が一層充実するようにする。

(オ)表現及び鑑賞の教材については、次の各点に留意して示すこととする。

  1. 歌唱、器楽、鑑賞の教材について、学校や児童の実態等に応じた弾力的な指導が行われるようにするため、年間に取り扱う曲数は示さないこととする。
  2. 歌唱共通教材については、日本のよき音楽文化を世代を超えて歌い継ぐようにするため、現行と同様、長い間多くの人々に親しまれてきた文部省唱歌や、各学年の指導内容として適切なものの中から選択して、これを示すこととする。
  3. 鑑賞教材については、各学校が創意工夫ある指導を進め、学校や児童の実態等に応じて多様な楽曲から選択できるよう共通教材は示さないこととするが、児童が我が国及び諸外国の音楽に一層関心を深め親しむことができるよう教材選択の観点を示すこととする。

(カ)国歌「君が代」は、いずれの学年においても指導することを一層明確に示すこととする。

(中学校(音楽))

 生徒が感性を豊かに働かせ個性を生かして楽しく充実した音楽活動を展開し、音楽の喜びを享受できるようにする観点に立って、次のような改善を図る。

(ア)表現活動については、合唱や合奏などの表現形態を学校や生徒の実態等に応じて選択できるようにするとともに、第2学年及び第3学年では歌唱や器楽の小アンサンブルなど、一人一人が興味や関心をもつ学習内容なども選択して学習できるようにする。また、現在は2♯、2♭程度までの楽譜の視唱に慣れさせるとしている読譜指導については、1♯、1♭程度の楽譜の視唱に慣れ親しませるようにすることとする。

(イ)生徒の発達段階に応じて、様々な音を用いたり、曲想を工夫するなどの自由な発想を生かした表現活動や鑑賞活動を一層活発に行い、音楽の美しさを感じ取ることができるようにする。

(ウ)歌唱及び鑑賞の教材については、各学校が創意工夫ある指導を進め、地域や学校の実態等を生かした多様な音楽活動が展開できるよう、共通教材は示さないこととするが、これまで歌い継がれ親しまれてきた我が国の歌曲を含めて取り上げられるよう教材選択の観点を示すこととする。

(エ)我が国の伝統的な音楽文化のよさに気付き、尊重しようとする態度を育成する観点から、和楽器などを活用した表現や鑑賞の活動を通して、我が国や郷土の伝統音楽を体験できるようにする。

(高等学校  芸術(音楽))

 生徒が感性を豊かに働かせ個性を生かし、発展的に学習内容を深めるとともに、生涯にわたって音楽を愛好し表現や鑑賞の活動をしていくための資質や能力を育てるようにする観点に立って、次のような改善を図る。

(ア)「音楽Ⅰ」においては、現行では「表現」領域の歌唱、器楽、創作のすべての分野と「鑑賞」領域を学習することとしているが、芸術としての音楽を総合的に学習することを基本としつつ、個性に応じて、例えばある楽曲について、歌唱や器楽の表現方法や表現形態を選択して学習できるようにする。

(イ)「音楽Ⅱ」においては、現行では「表現」領域の歌唱、器楽、創作のいずれかの分野に重点を置いて学習できることとしているが、生徒の特性、地域や学校の実態等を考慮して、「表現」領域の歌唱、器楽、創作のいずれかの分野を選択して学習できるようにする。

(ウ)「音楽Ⅱ」においては、さらに音楽に親しむため、現行と同様に「表現」領域の歌唱、器楽、創作又は「鑑賞」領域のいずれかを選択して学習できるようにする。

(エ)「音楽Ⅱ」は「音楽Ⅰ」を履修した後に、「音楽Ⅱ」は「音楽Ⅱ」を履修した後に履修させるようにする。

7) 図画工作、美術、芸術(美術、工芸)
ア  改善の基本方針

 小学校、中学校及び高等学校を通じて、次の観点を重視して改善を図る。

(ア)表現及び鑑賞にかかわる幅広い活動を通して、美術を愛好する心情と美に対する感性を育て、造形的な創造活動の基礎的な能力を伸ばし、豊かな情操を養う指導が一層充実して行われるようにする。

(イ)児童生徒が生活を明るく豊かにし生涯にわたって楽しく描いたりつくったりする創造活動を促すことを重視し、表現や鑑賞の喜びを味わうとともに、豊かな表現活動や鑑賞活動をしていくための基礎となる資質・能力を一層育てられるようにする。  

(ウ)各学校段階の特質に応じて、各学校がゆとりをもち、創意工夫を生かした教育活動を展開できるよう、内容をまとめて示し、それらを選択したり一体的に扱ったりできるようにする。

(エ)各学校段階の特質に応じて、我が国やアジアなど諸外国の美術文化についての関心や理解を一層深められるよう鑑賞の充実を図る。その際、地域の美術館等の活用も図るよう配慮する。

イ 改善の具体的事項
(小学校(図画工作))                           

 児童が楽しく造形活動にかかわり、個性を生かした多様で創造的な活動をしていくために、その基礎となる感覚・感性や想像力、技能などの資質・能力を育てる観点に立って、次のような改善を図る。

(ア)学校や児童の実態等に応じて弾力的な指導が行われるようにするため、目標と内容を2学年まとめて示す。

(イ)「表現」の領域については、多様で創造的な表現を促す観点から、現在低学年と中学年において指導することとしている、材料などをもとにして楽しく造形活動を行う内容を、高学年でも指導することとする。また、絵に表すことや立体に表すこと、つくりたいものをつくることの内容を一層関連付けたり一体的に扱えるようにする。

(ウ)手などを十分に働かせ、材料や用具を選択し工夫してつくるなどして、造形感覚や工作などの創造的な技能、デザインの能力を高めるようにするため、工作に充てる授業時数を十分確保するようにする。      

(中学校(美術))

 生徒がゆとりをもって楽しく美術の活動にかかわりその喜びを味わい、個性を生かした多様で創造的な表現や鑑賞の活動をしていくために、その基礎となる感覚・感性や想像力、技能などの資質・能力を一層育てる観点に立って、次のような改善を図る。

(ア)学校や生徒の実態等に応じて弾力的な指導が行われるようにするとともに、柔軟な発想力や形・色・材料で表す技能などの基礎的能力を総合的に身に付けられるようにするため、絵画と彫刻、デザインと工芸をそれぞれまとめて示し、それぞれのうちから表現分野や表現方法などを選択したり一体的な表現をしたりすることができるようにする。

(イ)視覚的な表現によって自らが伝えたい内容をより相手に的確に伝達し交流する能力の育成を一層重視し、スケッチや図、コンピュ-タ等映像機器などを使った多様な表現方法が行われるようにする。   

(ウ)我が国及び諸外国の美術文化や表現の特質などについての関心や理解、作品の見方を深める鑑賞の指導が一層充実して行われるようにする。その際、我が国の美術を重視する。また、「鑑賞」に充てる授業時数を十分確保するようにする。

(エ)材料の加工技術や道具の使用方法など他教科と重複する内容について精選を図る。

(高等学校  芸術(美術、工芸))

 生徒が美術の活動の喜びを深め、感性を豊かに働かせ個性を生かして生涯にわたって美術、工芸を愛好し表現や鑑賞の活動をしていくための資質・能力を一層育てるようにする観点に立って、次のような改善を図る。

(ア)芸術(美術)
  1. 「美術Ⅰ」においては、美的体験を豊かにし、生徒が個性を生かし生涯にわたって芸術としての美術を愛好する意欲や資質、創造的能力を育てるため、現行では「表現」領域の絵画、彫刻、デザインのすべての分野を学習することとしているが、絵画と彫刻をまとめて示し、そのいずれかを選択して学習できるようにするとともに、デザインと新たな分野である映像表現のいずれかを選択して学習できるようにする。
  2. 我が国及び諸外国の美術文化や表現の特質などについての関心や理解、作品の見方を深める鑑賞の指導が一層充実して行われるようにする。その際、我が国の美術を重視する。また、「鑑賞」に充てる授業時数を十分確保するようにする。
  3. 「美術Ⅱ」においては、美的体験を一層豊かにして美意識を高めるとともに、美術についての理解を深め、個性を生かした創造的な美術の活動ができるようにするため、現行では「表現」領域の絵画、彫刻、デザインのいずれかの分野を選択して学習することとしているが、「表現」領域の各分野と「鑑賞」領域のいずれかを選択して学習できるようにする。
  4. 「美術Ⅱ」においては、個性をさらに伸ばすことができるようにするため、「美術Ⅱ」の改善と同様に「表現」領域の各分野と「鑑賞」領域のいずれかを選択して学習できるようにする。
  5. 「美術Ⅱ」は「美術Ⅰ」を履修した後に、「美術Ⅱ」は「美術Ⅱ」を履修した後に履修させるようにする。

(イ)芸術(工芸)                             

  1. 「工芸Ⅰ」においては、美的体験を豊かにし、生徒が個性を生かし生涯にわたって芸術としての工芸を愛好する意欲や資質、創造的能力を育てるため、現行の「表現」領域は工芸のデザインと工芸の制作で構成されているが、この構成を改め、分野を選択できるようにする。
  2. 我が国及び諸外国の美術文化や表現の特質などについての関心や理解、作品の見方を深める鑑賞の指導が一層充実して行われるようにする。その際、我が国の工芸を重視する。また、「鑑賞」に充てる授業時数を十分確保するようにする。
  3. 「工芸Ⅱ」においては、美的体験を一層豊かにして美意識を育てるとともに、工芸についての理解を深め、個性を生かした工芸の活動ができるようにするため、現行では「表現」領域は特定の用途や材料によって学習することとしているが、「表現」領域の各分野と「鑑賞」領域のいずれかを選択して学習できるようにする。
  4. 「工芸Ⅱ」においては、個性をさらに伸ばすことができるようにするため、「工芸Ⅱ」の改善と同様に「表現」領域の各分野と「鑑賞」領域のいずれかを選択して学習できるようにする。
  5. 「工芸Ⅱ」は「工芸Ⅰ」を履修した後に、「工芸Ⅱ」は「工芸Ⅱ」を履修した後に履修させるようにする。
8) 芸術(書道)
ア 改善の基本方針

 次の観点を重視して、改善を図る。

(ア)表現及び鑑賞の活動を通して生徒が楽しく書にかかわり、生涯にわたり書を愛好する心情と感性を育てるとともに、書の文化と伝統を尊重する態度を育て、豊かな情操を養うことが一層充実して行われるようにする。

(イ)小学校及び中学校で育成された書写力を一層高めるとともに、表現及び鑑賞の活動の関連を図るなどして題材数を減じ、学習にゆとりをもたせ個性的・創造的な学習活動がより発展的に行えるようにする。

イ 改善の具体的事項

 生徒一人一人が感性を豊かに働かせ、個性を生かして創造的な学習活動を一層活発に行うとともに、生涯にわたって書を愛好し、表現や鑑賞の活動をしていくための資質・能力を育てるようにする観点に立って、次のような改善を図る。

(ア)「書道Ⅰ」においては、小学校及び中学校で育成された書写力を基礎として、生徒が個性や能力を一層生かし、芸術としての書の表現及び鑑賞の能力を高めるため、現行では「表現」領域の漢字の書、仮名の書及び漢字仮名交じりの書のすべての分野を学習することとしているが、漢字の書、仮名の書のいずれかを選択して学習できるようにする。また、「表現」領域の各分野において重複する用具・用材(筆、墨、紙等)の扱いをまとめて示し、一体的に扱えるようにする。

(イ)鑑賞活動の充実を図る観点から内容を見直し、我が国や東アジアの書の文化の理解を一層深めるようにする。

(ウ)「書道Ⅱ」においては、書を愛好する心情と書に対する感性を一層育て、個性を生かした創造的な書の表現及び鑑賞ができるようにするため、現行では、「表現」領域の漢字の書、仮名の書及び漢字仮名交じりの書の分野の中から、漢字の書を含め二つの分野を選択して学習することとしているが、すべての分野の中から一つ又は二つを選択して学習できるようにする。

(エ)「書道Ⅱ」においては、個性をさらに伸ばすことができるようにするため、現行では、「表現」領域の漢字の書、仮名の書、漢字仮名交じりの書のいずれか一つの分野を選択して学習することとしているが、「表現」領域の漢字の書、仮名の書、漢字仮名交じりの書又は「鑑賞」領域のいずれかを選択して学習できるようにする。

(オ)「書道Ⅱ」は「書道Ⅰ」を履修した後に、「書道Ⅱ」は「書道Ⅱ」を履修した後に履修させるようにする。

9) 家庭、技術・家庭
ア 改善の基本方針

(ア)衣食住やものづくりなどに関する実践的・体験的な活動を通して、家族の人間関係や家庭の機能を理解し、生活に必要な知識・技術の習得や生活を工夫し創造する能力を育成するとともに、生活をよりよくしようとする意欲と実践的な態度を育成することをより一層重視する観点から、小学校の家庭科、中学校の技術・家庭科及び高等学校の家庭科について、その領域構成や内容の改善を図る。

(イ)男女共同参画社会の推進、少子高齢化等への対応を考慮し、家庭の在り方や家族の人間関係、子育ての意義などの内容を一層充実する。また、情報化や科学技術の進展等に対応し、生活と技術とのかかわり、情報手段の活用などの内容の充実を図る。

(ウ)基礎的・基本的な知識・技術を確実に身に付けさせるため、実践的・体験的な学習を一層重視するとともに、環境に配慮して主体的に生活を営む能力を育てるため、自ら課題を見いだし解決を図る問題解決的な学習の充実を図る。

(ウ)家庭・地域社会との連携や生涯学習の視点を踏まえつつ、学校における学習と家庭や社会における実践との結び付きに留意して内容の改善を図る。

イ 改善の具体的事項
(小学校(家庭))

 家族との触れ合いや衣食住などに関する実践的な学習を通して、家庭生活に関心をもたせるとともに、家庭生活に必要な基礎的技能を身に付けさせ、自分と家族とのかかわりを考え、家族の一員として家庭生活をよりよくしようとする態度を育てる観点から、次のような改善を図る。

(ア)家族の生活と関連させながら衣食住の内容を扱うことを一層明確にし、現行では内容を「被服」、「食物」及び「家族の生活と住居」の領域ごとに示していることを改め、自分と家庭生活、食事のとり方と調理、衣服への関心と小物の製作、快適な住まい方、計画的な生活と買物、家庭生活の工夫などに関する内容で構成し、各内容の関連を図るようにする。

(イ)このうち、例えば、家庭生活の工夫に関する内容においては、家族や近隣の人々との生活の課題について、各内容での学習を生かして取り組むことができるよう、実践的・体験的な学習を重視した内容とする。

(ウ)地域や学校、児童の実態に応じて弾力的な指導が行われるようにするため、内容を2学年まとめて示すこととする。また、現在、例えば、簡単なエプロンやカバー類の製作、じゃがいも料理など、具体的に示している題材は、米飯など必要最小限のものに限って示すこととする。現在「被服」領域で取り扱っている日常着の整理・整とんを「家族の生活と住居」領域で取り扱っている身の回りの整理・整とんに統合し、快適な住まい方に関する内容で扱うようにする。

(エ)食生活に関する内容については、食品の栄養的な組合せや簡単な調理に重点を置いて指導することとし、細かな栄養素の種類と名称などについては中学校に移行する。衣生活に関する内容については、生活に役立つ小物の製作に重点を置いて指導することとし、ほころび直しなど日常生活にかかわりの薄くなった内容を削除する。住生活に関する内容については、快適な住まい方で、保温、換気、照明などから課題を選択して学習するなど、内容選択の幅を広げる。また、金銭の記録の仕方など家庭や日常の生活で行った方が効果的な内容を削除する。

(中学校(技術・家庭))

 生活の自立を図る観点から、ものづくりやコンピュータの活用の基礎的技術の習得とともに、子どもが育つ環境としての家族・家庭の役割や栄養を考えた食生活に関する指導を重視し、次のような改善を図る。

(ア)現行の「木材加工」、「電気」、「家庭生活」、「食物」など11領域に細分化された構成を改め、生活という視点に立って内容を総合化し、学習した知識・技術を実際の生活に一層生かすことができるよう、ものづくりやコンピュータの活用の基礎的技術にかかわる内容を中心とする「技術」と、衣食住の生活や家族・家庭にかかわる内容を中心とする「家庭」の2領域に再編する。

(イ)「技術」及び「家庭」の各領域は、すべての生徒に共通に履修させる基礎的・基本的な内容と、生徒の興味・関心等に応じて選択的に履修させる発展的な内容で構成することとし、基礎的・基本的な内容及び発展的な内容に配当する授業時数及び履修学年は、各学校において適切に設定することとし、国の基準としては規定しないこととする。なお、教科の目標が実現できるよう、「技術」及び「家庭」の各領域に配当する授業時数は、各学校が第1学年から第3学年までの3年間の中でバランスを図るよう配慮することとする。

(ウ)「技術」領域は、技術とものづくり、情報とコンピュータで構成し、木材や金属を主とした製作品の設計・製作、工具や機器の使用方法と加工技術などものづくりの基礎的技術に関する内容と、コンピュータの基本的な構成と操作、コンピュータの利用などコンピュータの活用の基礎的技術に関する内容を、すべての生徒に共通に履修させることとする。また、エネルギー変換を利用した模型等の設計・製作、作物の栽培計画と方法、プログラムと計測・制御などの内容については、生徒の興味・関心等に応じて選択的に履修させることとする。

(エ)「家庭」領域は、生活の自立と衣食住、家族と家庭生活で構成し、栄養を重視した食生活、衣服の選択と手入れ、室内環境の整備と住まい方など生活の自立に必要な基礎的・基本的な内容と、幼児の発達と家族、家庭と家族関係、家庭生活と消費などに関する内容をすべての生徒に共通に履修させることとする。また、食生活の課題と調理の応用、簡単な衣服の製作、幼児の生活と幼児との触れ合いなどの内容については、生徒の興味・関心等に応じて選択的に履修させることとする。

(オ)現行の「電気」領域で取り扱っている電気機器の仕組みについては、ものづくりの基礎的技術に関する内容で、製作品の製作に使用する機器の仕組みに限定して取り扱うこととし、現行の「機械」領域で取り扱っている整備の目的に応じた分解と組立てについては、エネルギー変換を利用した模型等の設計・製作の中で基礎的・基本的な内容に限定して扱うこととする。また、現行の「家庭生活」領域で取り扱っている家庭の収入と支出は削除し、現行の「被服」領域で取り扱っている各種の被服製作については、生徒の興味・関心等に応じて選択的に履修させることとし、簡単な衣服の製作として基礎的・基本的な内容に限定して扱うこととする。

(カ)各学校が創意工夫を生かして教育課程を編成できるようにするとともに、地域や学校、生徒の実態に応じて弾力的な指導が行われるようにするため、例えば、現行の「食物」領域における日常食の調理について、魚や肉などの食品名と焼く・煮るなどの調理方法を具体的に示している扱いを改め、扱う題材を大綱化して示すこととする。

(高等学校(家庭))

 男女共同参画社会の推進、少子高齢化等への対応を考慮して、家族や生活の営みを人の一生とのかかわりの中で総合的にとらえ、家庭生活を主体的に営む能力と態度を育てる観点から、次のような改善を図る。

(ア)家族・家庭の機能、子どもの発達と保育、高齢者の生活と福祉などについてライフステージごとの課題とかかわらせて扱うことにより、生徒自身の問題としてとらえさせるとともに、衣食住や消費生活と環境などに関する基礎的・基本的な知識と技術を習得させることを重視する。

(イ)科目構成は、新たな科目として設ける「家庭基礎」、現行の「家庭一般」を改善した「家庭総合」及び「生活技術」の3科目とし、生徒の多様な能力・適性、興味・関心等に応じて選択的に履修できるようにする。

(ウ)「家庭基礎」は、少子高齢社会における課題を踏まえ、家庭生活を主体的に営むための基礎的・基本的な知識と技術の習得に重点を置き、人の一生と家族・福祉、家族の生活と健康、消費生活と環境などの内容で構成する。

(エ)「家庭総合」は、生活に必要な知識と技術を習得させ、生活課題を主体的に解決できるようにすることに重点を置き、子どもの発達と保育・福祉、高齢者の生活と福祉、生活の科学と文化などの内容を充実する。

(オ)「生活技術」は、生活と技術とのかかわりを考え、家庭生活を合理的に管理するために必要な生活技術に重点を置き、家庭生活と技術革新、食生活の設計と調理、衣生活の設計と製作、住生活の設計とインテリアデザインのうちから2又は3の項目を選択して履修できるようにする。

(カ)衣食住に関する内容については、例えば、「家庭基礎」では、家族の生活と健康に重点を置き、「家庭総合」では、衣食住の生活の科学と文化に重点を置き、「生活技術」では、調理、被服製作、住空間の設計などの実習に重点を置くとともに、地域や学校、生徒の実態に応じて弾力的な指導が行われるようにするため、内容選択などの扱いができるようにする。

(キ)学習した知識と技術を生かして、生活を見直し、課題を見いだしてその解決を図るなど、問題解決能力の育成や地域に対するボランティア活動を一層重視する観点から、ホームプロジェクトの実践と学校家庭クラブ活動を充実する。

10) 体育、保健体育
ア  改善の基本方針

(ア)明るく豊かで活力のある生活を営む態度の育成を目指し、生涯にわたる豊かなスポーツライフ及び健康の保持増進の基礎を培う観点に立って内容の改善を図る。その際、心と体をより一体としてとらえて健全な成長を促すことが重要であるという考え方に立ち、体育と保健をより一層関連させて指導できるようにする。特に、運動に興味をもち活発に運動する者とそうでない者に二極化していたり、生活習慣の乱れやストレス及び不安感が高まっている現状を踏まえ、児童生徒が運動が好きになり、健康な生活習慣を身に付けることができるようにする。

(イ)体育については、自ら運動する意欲を培い、生涯にわたって積極的に運動に親しむ資質や能力を育成するとともに基礎的な体力を高めることを重視する。このため、児童生徒の発達段階に応じて、運動を一層選択して履修できるようにすることや体力の向上を図る上で内容を重点化するなどの改善を図る。
 また、児童生徒の体力等の現状を踏まえ、心と体をより一体としてとらえる観点から、新たに自分の体に気付き、体の調子を整えるなどの「体ほぐし」(仮称)にかかわる内容を示す。この新たな内容は現行の「体操」領域に示すとともに、その他の運動領域等の活動や保健における心の健康に関する学習などとしても、取り入れられるようにする。これに伴い「体操」領域の名称を変更する。また、指導に当たっては、運動を通して仲間との交流を深め、他人と協調し思いやる心をはぐくむことに配慮する。
 武道については、我が国固有の文化に触れるための学習が引き続き行われるようにする。

(ウ)保健については、生涯を通じて自らの健康を適切に管理し、改善していく資質や能力の基礎を培うため、健康の大切さを認識し、健康なライフスタイルを確立する観点に立って、内容の改善を図る。その際、近年の成育環境、生活行動、疾病構造等の変化にかかわって深刻化している心の健康、食生活をはじめとする生活習慣の乱れ、生活習慣病、薬物乱用、性に関する問題等について対応できるようにする。また、新たに、自然災害等における安全の確保についても取り上げるとともに、健康・安全と運動とのかかわりについて、体験的な活動などを通して実践的な理解を深めるようにする。
 児童の発育・発達の早期化や生活習慣の乱れなどに対応するため、現在、小学校において高学年から指導している保健に関する内容を中学年から指導するようにする。

(エ)自然の中での遊びなどの体験が不足している現状から、各教科等との関連を図りつつ、地域や学校の実態に応じて、戸外で身体活動を行う自然体験的活動を積極的に取り入れていくようにする。

イ 改善の具体的事項
(小学校(体育))

 児童の発達段階に応じて各種の運動に親しむことにより運動が好きになるようにするとともに、身近な生活における健康・安全に関する実践的な理解を図るため、次のような改善を行う。

(ア)低学年の運動領域(「基本の運動」及び「ゲーム」)及び中学年の運動領域(低学年の運動領域に加えて、「器械運動」、「水泳」及び「表現運動」)については現行どおりとするが、現在の児童の体の状況及び発達段階に応じた運動の指導に重点を置くことができるように内容の改善を図る。また、現在、各学年ごとに指導することとしている運動をいずれかの学年で指導することができるようにするとともに、学校や地域の実態に応じて多様な運動も指導することができるようにする。

(イ)高学年の運動領域(「体操」、「器械運動」、「陸上運動」、「水泳」、「ボール運動」及び「表現運動」)については現行どおりとするが、「体操」を除いた領域については、現在、各学年ごとに指導することとしている運動をいずれかの学年で指導することができるようにする。また、学校や地域の実態に応じて多様な運動も指導することができるようにする。

(ウ)「体操」領域については、主として巧みな動きを高めることに重点を置いて指導するとともに、自分の体の状態に気付き体の調子を整えることを重視し、内容を改善する。

(エ)「保健」領域については、中学年は、健康な生活及び体の発育・発達、高学年は、けがの防止と病気の予防及び心の健康に関する内容で構成し、食生活をはじめとする望ましい生活習慣の形成、生活習慣病の予防及び薬物乱用防止に関する内容について取り上げる。
 また、体の発育・発達や性に関する内容について、児童の発達段階を踏まえ重点化するとともに、健康な生活については、日光と健康とのかかわりの内容を削除する。
 心の健康については、自他の心身の発育・発達の違いに気付き肯定的に受けとめること、不安・悩みへの対処及び人とのかかわり方に重点を置く観点に立って、内容の改善を図る。

(中学校(保健体育))

 個に応じた指導の充実を図り、運動の楽しさや喜びを味わうことができるようにするとともに、主として個人生活における健康・安全に関する科学的な理解を図るため、次のような改善を行う。

(ア)運動領域(「体操」、「器械運動」、「陸上競技」、「水泳」、「球技」、「武道」及び「ダンス」)については現行どおりとするが、第2学年において、現在、「器械運動」、「陸上競技」、「水泳」については、その中から2領域を選択していることを改め、第3学年と同様1領域又は2領域を選択して履修することができるようにする。

(イ)「体操」領域については、主として動きを持続することに重点を置きつつ調和のとれた体力を高める指導ができるようにするとともに、自分の体の変容に気付き体の調子を整えたり自ら体力を高めることを重視し、内容を改善する。

(ウ)「器械運動」領域については、生徒の能力に応じて指導することができるよう、現在、マット運動、鉄棒運動、平均台運動、跳び箱運動の中から2又は3の運動を選択して履修できるようにしていることを改め、選択する運動の数を示さないこととする。

(エ)「体育に関する知識」の領域については、近年のスポーツ科学の成果を踏まえ、体力の高め方や運動の学び方と関連する内容に重点化するとともに、現在主として第1学年及び第2学年において履修させていることを改め、運動の実践との関連を図る観点に立って、全学年を通じて履修させることとする。

(オ)「保健」分野については、心身の機能の発達と心の健康、健康と環境、傷害の防止、疾病の予防及び健康と生活に関する内容で構成し、食生活、性、薬物乱用防止及び自然災害等における安全の確保に関する内容を重視する。
 その際、小学校と同様、体の発育・発達や性に関する内容を重点化するとともに、疾病の応急措置を高等学校に移行統合し、騒音に関する内容を削除する。
 また、心の健康に関する内容については、思春期における自分らしさの形成やストレスへの対処に重点を置く観点に立って、内容の改善を図る。

(高等学校(保健体育))

 中学校との関連を図り、運動を得意にすることができるようにするとともに、個人生活及び社会生活における健康・安全に関する総合的な認識を深め、生涯を通じて自らの健康を適切に管理し、改善していく資質や能力の基礎を培うことを重視し、次のような改善を行う。

(ア)運動領域(「体操」、「器械運動」、「陸上競技」、「水泳」、「球技」、「武道」及び「ダンス」)については現行どおりとするが、第3学年において、現在、「器械運動」、「陸上競技」、「水泳」、「球技」、「武道」、「ダンス」については、その中から3領域から4領域を選択していることを改め、2領域から4領域を選択して履修することができるようにする。なお、その際、「武道」又は「ダンス」のいずれかを含むようにする。

(イ)「体操」領域については、主として力強さとスピードのある動きなど、個に応じて体力を全面的に高めることに重点を置いて指導ができるようにするとともに、自分の体の変容に気付き、体の調子を整えたり自ら体力を高めることを重視し、内容を改善する。

(ウ)「体育理論」の領域については、理論と実践の一体化を図るとともに、体力の高め方、運動の学び方及び現代社会におけるスポーツの意義や課題に関する内容に重点化する。

(エ)科目「保健」については、現代社会と健康、環境と健康、生涯を通じる健康及び社会生活と健康に関する内容で構成し、感染症の新たな課題についても取り扱うことができるようにする。
 その際、他教科との関連を考慮し、生態系の仕組み、母子保健、高齢化社会の問題、食品衛生等の内容の一部を削除する。
 また、心の健康に関する内容については、自己の可能性を最大限に生かして自己を高めていくことの大切さや欲求、ストレスへの対処に重点を置く観点に立って、内容の改善を図る。

11) 外国語
ア 改善の基本方針

(ア)これからの国際社会に生きる日本人として、世界の人々と協調し、国際交流などを積極的に行っていけるような資質・能力の基礎を養う観点から、外国語による実践的コミュニケーション能力の育成にかかわる指導を一層充実する。その際、外国語の学習を通して、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度と、視野を広げ異文化を理解し尊重する態度の育成に留意する。

(イ)実践的コミュニケーション能力の育成を図るため、言語の実際の使用場面に配慮した指導の充実を図る。

(ウ)中学校及び高等学校の外国語科の位置付けについては、国際化の進展に対応し、外国語を使って日常的な会話や簡単な情報の交換ができるような基礎的・実践的なコミュニケーション能力を身に付けることがどの生徒にも必要になってきているとの認識に立って、必修とすることとする。その際、中学校においては、英語が国際的に広くコミュニケーションの手段として使われている実態などを踏まえ、英語を履修させることを原則とする。

イ 改善の具体的事項
(中学校)

 基礎的・実践的コミュニケーション能力を育成することを重視する観点に立って、次のような改善を行う。

(ア)学習段階を考慮して、「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び「書くこと」の四つの領域の言語活動の有機的な関連を図った指導を展開しながら、音声によるコミュニケーション能力を重視し、実際に聞いたり話したりするコミュニケーション活動を多く取り入れることとする。

(イ)ゆとりある弾力的な指導を一層可能にするため、現在は学年ごとに示している四つの領域の言語活動の内容を、3年間を通して一括して示すこととする。また、例えば、あいさつや依頼をすることなど日常的な言語の使用場面や言語のはたらきを例示し、それらを有機的に組み合わせることにより実際に言語を使用する幅広い言語活動が展開できるようにする。

(ウ)言語活動を行う上で必要となる音声、文や文型、文法事項、語及び連語などの言語材料については、基本的な事項に整理するとともに、文法事項や語数など内容の一部を削除する方向で見直す。

(エ)教材については、国際理解に役立つものを重視して取り上げるようにするとともに、コミュニケーション能力の育成を図る観点から、実際に使用する経験を重ねながら言語の習熟を図ることを重視して、言語を使用する場面や言語のはたらきに配慮したものを取り上げるものとする。

(オ)指導に当たっては、個別指導、小集団による活動、視聴覚教材の使用など生徒の能力や適性などに配慮した様々な工夫を図るとともに、ネイティブ・スピーカーなどの協力を得て行う授業を積極的に取り入れることや、インターネット等の情報通信ネットワークや教育機器などを指導上有効に生かすことに配慮する。

(高等学校)

 中学校の学習を踏まえながら、四つの領域の言語活動の有機的な関連を図った指導を展開する中で、実践的コミュニケーション能力を育成するとともに、生徒の個に応じた指導を一層充実する観点に立って、次のような改善を行う。

(ア)英語の各科目は「オーラル・コミュニケーションⅠ」、「オーラル・コミュニケーションⅡ」、「英語Ⅰ」、「英語Ⅱ」、「リーディング」及び「ライティング」とする。

(イ)「オーラル・コミュニケーションⅠ」は、中学校の学習を踏まえ、「聞くこと」及び「話すこと」の音声によるコミュニケーション活動の指導を重点的に行うことをねらいとして内容を構成する。その際、例えば、情報や自分の考えなどを整理して発表したり、話し合うなどの発表能力や表現能力を育成するために、簡単なロール・プレイ、スピーチ、ディスカッションなどやそれらの基礎になる活動を含めるようにする。

(ウ)「オーラル・コミュニケーションⅡ」は、「オーラル・コミュニケーションⅠ」の基礎の上に、さらに「聞くこと」及び「話すこと」の音声によるコミュニケーション活動の指導を発展的に行うことをねらいとして内容を構成する。

(エ)「英語Ⅰ」は、中学校での学習事項の一層の習熟を図り、「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び「書くこと」の四つの領域を総合的、有機的に関連付けたコミュニケーション活動の指導を行うことをねらいとして内容を構成する。

(オ)「英語Ⅱ」は、「英語Ⅰ」の基礎の上に、コミュニケーション活動の指導を発展的に行うことをねらいとして内容を構成する。

(カ)「リーディング」は、英語を読んで情報や書き手の意図などを場面や目的に応じて素早く捉えたり的確に把握するなど、文字によるコミュニケーション能力を高めるような指導を行うことをねらいとして内容を構成する。

(キ)「ライティング」は、英語を書いて情報や自分の考えなどを場面や目的に応じて的確に相手に伝えるなど、文字によるコミュニケーション能力を高めるような指導を行うことをねらいとして内容を構成する。

(ク)言語活動、言語材料、教材、指導上の工夫及び配慮事項については、各科目のねらいに配慮しつつ、中学校と同様の趣旨で改善を図る。

(ケ)「オーラル・コミュニケーションⅡ」は「オーラル・コミュニケーションⅠ」を履修した後に、「英語Ⅱ」は「英語Ⅰ」を履修した後に履修させるようにする。また、「リーディング」及び「ライティング」は、「オーラル・コミュニケーションⅠ」又は「英語Ⅰ」を履修した後に履修させるようにする。

(コ)英語以外の外国語については、その科目の構成、内容、指導方法等を弾力的に扱うことができるようにし、地域の実情や学校の実態に応じ、その履修が一層推進されるよう配慮する。

12) 情報
ア 教科設定の趣旨とねらい

 高等学校における普通教育に関する教科「情報」は、次のような趣旨に基づいて設定する。

(ア)情報化の進展を背景に、これからの社会に生きる生徒には、大量の情報に対して的確な選択を行うとともに、日常生活や職業生活においてコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を適切に活用し、主体的に情報を選択・処理・発信できる能力が必須となっている。

(イ)また、社会を構成する一員として、情報化の進展が人間や社会に及ぼす影響を理解し、情報社会に参加する上での望ましい態度を身に付け、健全な社会の発展に寄与することが求められている。

(ウ)我が国社会の情報化の進展の状況を考えるとき、情報及び情報手段をより効果的に活用するための知識や技能を定着させ、情報に関する科学的な見方・考え方を養うためには、中学校段階までの学習を踏まえつつ、高等学校段階においても継続して情報に関する指導を行う必要がある。

イ 科目構成及び内容構成の考え方等

(ア)普通教科「情報」には、生徒が興味・関心等に応じて選択的に履修できるように、「情報A」、「情報B」、「情報C」の3科目を置くものとする。

(イ)各科目の内容は、履修する生徒の興味・関心の多様性を考慮し、次のようなものとする。

  1. 「情報A」においては、コンピュータや情報通信ネットワークなどを活用して情報を選択・処理・発信できる基本的な技能の育成に重点を置く。
     内容は、例えば、情報活用と情報手段の関係、情報の収集・発信・処理と情報手段の活用、情報手段の発達に伴う生活の変化などで構成する。
  2. 「情報B」においては、コンピュータの機能や仕組みを通して、コンピュータの活用について科学的に理解させることに重点を置く。
     内容は、例えば、問題解決におけるコンピュータの活用の方法、コンピュータの仕組みと働き、情報処理の定式化とデータ管理、情報社会を支える情報技術などで構成する。
  3. 「情報C」においては、情報通信ネットワークなどが社会の中で果たしている役割や影響を理解し、情報社会に参加する態度を育成することに重点を置く。
     内容は、例えば、デジタル表現、情報通信ネットワークとコミュニケーション、情報の収集・発信と自己責任、情報化の進展と社会への影響などで構成する。

(ウ)教育課程の編成・実施に当たっては、各教科等との連携に配慮し、情報科での学習成果が、他教科等の学習に役立つよう、履修学年や課題の選定、指導計画の作成等を工夫するものとする。

(エ)指導計画の作成に当たっては、各科目の目標及び内容に即してコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を実際に活用した学習活動を重視する。

ウ 情報科の必修に係る経過措置

 情報科は必修とするが、教員養成に関する条件整備が必要なことを考慮し、特別の事情がある場合には、当分の間、数学や理科等に関する科目において、情報科を設定した趣旨にふさわしい内容(2単位相当分)を履修することをもって、情報科の履修に替えることができることとする経過措置を設けることが適当である。この場合においても、できる限り早期に情報科の教育を行うことができるよう条件整備に努める必要がある。

13) 専門教育に関する各教科・科目
ア  職業に関する各教科・科目

 職業に関する各教科・科目の内容の改善については、現在、理科教育及び産業教育審議会で鋭意審議が行われているが、本審議会ではその審議の経過を踏まえつつ検討を行い、次のように改善することが適当であると考えた。
 職業に関する各教科・科目については、産業構造・就業構造の変化、科学技術の高度化、情報化、国際化、少子高齢化などの社会の変化や産業の動向等に適切に対応するとともに、生徒一人一人の多様な個性を生かすため、生徒の選択幅を拡大する観点に立って、次のような改善を図る。

  1. 職業に関する各教科・科目については、生涯学習の視点を踏まえつつ、将来のスペシャリストとして必要な専門性の基礎的・基本的な知識と技術を確実に習得させるため、その内容を精選して構成するとともに、実験・実習等の実際的、体験的な学習の充実を図る。
  2. 各学校がより一層創意工夫を生かして教育課程を編成できるようにするとともに、生徒一人一人の多様な個性を生かすため生徒の選択幅を拡大する観点から、職業に関する各学科の原則履修科目等の在り方を見直す。
  3. 高齢化の進展等に伴い、介護福祉士などの福祉に関する人材の養成の必要性に対応するため、教科「福祉」を新たに設けることとする。
  4. 高度情報通信社会における情報関連人材の養成の必要性に対応するため、教科「情報」を新たに設けることとする。
  5. 専門高校における教育の改善充実を図るためには、地域や産業界と連携した教育を展開することが重要であり、専門高校と地域や産業界との間に双方向の協力関係(パートナーシップ)を確立し、連携しながら教育活動を展開できるよう改善を図る。
  6. 現行の学習指導要領においては、職業に関する各教科・科目については、教育内容が項目のみで示されており、このことが教科書や実際の指導において、教育内容を高度なものにしているとの指摘がある。このような指摘も踏まえ、学習指導要領上、各教科・科目の内容の程度・範囲及びその取扱いに当たっての配慮事項等を具体的に記述するようにする。

(ア)家庭
 社会の少子高齢化が進展するとともに、女性の社会進出や単身赴任などの増加による家事の社会化・外部化が進んでいる。また、国民のニーズは、ものの豊かさから心の豊かさへ、画一・均質から多様性・選択の自由の拡大などの方向へと向かっており、生活関連産業は、多様な消費者ニーズに対応して、高度化、サービス化していく状況が見られる。
 このような状況を踏まえ、保育や家庭看護と介護などに関する教育内容の充実を図るとともに、生活関連産業の高度化、サービス化、消費者ニーズの多様化等を踏まえて内容の改善を図る。
 また、調理師養成制度の改正や保母の受験資格など、職業資格要件の変更等に対応した科目構成や内容の改善を図る。

(イ)農業
 我が国農業においては、安全な食料の安定的な供給にとどまらず、国土環境の保全や余暇空間の提供など多様な機能が期待されている。また、ウルグアイ・ラウンド農業合意の実施等の社会の変化により、農産物市場の国際化や食料消費の外部化・サービス化が進展するとともに、バイオテクノロジーや環境制御などの農業の技術革新が進展している。
 このような状況を踏まえ、農産物流通や人的交流等の国際化と情報化の進展、バイオテクノロジーの急速な進展、地球環境問題、食品産業の発展及び農山村滞在型余暇活動の活発化などへの対応に留意して内容の改善を図る。

(ウ)工業
 我が国工業においては、電子技術の発達により生産の自動化や情報通信技術の高度化などの技術革新が進展する一方、生産工場の海外移転の増加や製造部品の輸出入が増加するなど製造業の国際化が一段と進んでいる。また、化石燃料の使用による地球温暖化や産業廃棄物に伴う環境問題などへの配慮が特に要請され、環境の保全や資源のリサイクル、クリーンエネルギーの利用など、安全性を確保し地球との共生を図る環境技術が強く求められている。
 このような状況を踏まえ、マルチメディア、高度情報通信技術、製造技術のシステム化等の技術革新、製造業の国際的な展開に対応した外国語による会話力や技術文書の理解力、環境問題などへの対応に留意して内容の改善を図る。

(エ)商業
 我が国商業においては、経済の国際化、情報化、サービス化の急速な進展に伴い、市場の国際化、オフィスの情報化、サービス産業の拡大等の変化が生じている。また、国際的な会計基準への移行、流通システムの合理化、新たなビジネスの創造などグローバル経済への一層の対応が求められている。
 このような状況を踏まえ、経済社会の変化に柔軟に対応できる人材の育成を図る観点から、実践的な語学力、情報・会計リテラシーなど、ビジネスの基礎・基本についての内容を充実するとともに、情報化の進展への対応に留意して、購買・販売・財務等の経営情報の処理と活用に関する内容の改善を図る。

(オ)水産
 我が国水産においては、国連海洋法条約が我が国においても効力を生じ、新たな漁業管理制度が始まり、水産資源の適切な管理が求められることとなった。このため、今後は漁場環境の保全と資源管理型漁業の定着化や広域的な展開、つくり育てる漁業の実施の拡大、水産技術の開発等が重要になっている。
 また、ダイビングなどの海洋性レクリエーション産業の拡充など、海洋を取り巻く産業の多様化も進んでいる。
 このような状況を踏まえ、水産や海洋を幅広くとらえた学習の中から、「海、船、魚」に興味・関心を持たせ、望ましい勤労観・職業観を形成するとともに、水産技術の高度化、海洋環境問題、海洋性レクリエーションなど海を取り巻く産業の変化、水産物流通や人的交流等の国際化や情報化の進展、通信技術の進展などへの対応に留意して内容の改善を図る。

(カ)看護
 高齢化の進展と疾病構造の変化に伴い、患者のクォリティー・オブ・ライフ(生活と人生の質)を重視した在宅医療及び看護に対する社会的要請が増大していることを踏まえて内容の改善を図る。

(キ)福祉
 近年、生活水準の向上に伴う健康への関心の高まりや生活様式・意識の変化により、国民の福祉ニーズは高度化、多様化するとともに、著しく増大しており、高齢者や障害のある人々等へのよりきめ細かな介護サービスに対応できる専門的な知識・技術を有する人材の育成と確保が不可欠となっている。
 障害のある人々に対する社会的自立を支援する取組は、政府全体として総合的・計画的に進められており、その重点施策実施計画である「障害者プラン」においては、介護サービスの充実のための人材育成を図ることが極めて重要な課題となっている。
 また、中央教育審議会の第二次答申においても指摘されているとおり、高齢社会においては、高齢者を思いやる気持ちやいたわる気持ちなど、豊かな人間性をはぐくむ教育が一層重要となると同時に、これら高齢者、障害のある人々、とりわけ要介護高齢者の自立を支援する能力や技能を持った人材を育成する必要性も一層高いものとなっている。
 こうした状況を踏まえ、福祉関連業務に従事する者に必要な社会福祉に関する基礎的・基本的な知識と技術の習得、社会福祉の理念と意義の理解、社会福祉の増進に寄与する能力と態度の育成に関する教育体制を充実し、これらの人材の育成を促進するため、専門教育に関する教科「福祉」を設けることとする。

(ク)情報
 近年、高度情報通信社会を迎え、情報化は想像を超える規模・速度で進展している。こうした中で、特にソフトウェアに関し、システム全体の設計や管理・運営を担当するなどの高度な情報技術者の育成を含め情報関連分野に従事する人材の育成は重要な課題となっている。
 このような高度かつ多岐にわたる情報技術者等は、もとより高等学校段階の教育のみで育成できるものではないが、情報分野に興味・関心を持つ若者に、高等学校においても情報科学の基礎など情報を扱う上での基礎的・基本的な内容を学習するとともに、情報メディアを駆使した実習等を体験させる場を提供することは極めて重要になっている。
 しかし、こうした教育は、従来の教科「商業」、「工業」等の枠組みの中では十分に対応できるものではなく、専門教育に関する教科「情報」を新たに設けて対応することとする。

イ その他の専門教育に関する各教科・科目

 職業以外の専門教育に関する各教科・科目については、専門教育を主とする学科(例えば、理数、体育、音楽、美術、英語に関する学科など)の特色が一層生かされるよう、また、社会の変化に対応し、生徒一人一人の個性を一層伸長する観点から、例えば、新たな科目を設けたり、内容を選択して学習したり、重点的に学習したりすることを拡充して、主体的・問題解決的な学習を充実するなどの見直しを行うことが適当である。

14) 道徳教育
ア 改善の基本方針

 次代を担う児童生徒が、未来への夢や目標を抱き、自らを律しつつ、自分の利益だけでなく社会や公共のために何をなし得るかを大切に考え、広く世界の中で信頼される日本人として育っていくことは極めて重要なことである。今日、日本のよき伝統が次第に失われ、大人社会が次世代を育てる心を失う危機に直面していることなどが指摘される中、児童生徒の指導に当たる教職員の意識の向上や指導方法の改善を促しつつ、特に次のような点について改善を図ることとする。

(ア)体験活動等を生かした心に響く道徳教育の実施
 道徳の時間においては、道徳教育のかなめとして授業時間数を確保し、各教科等との関連や児童生徒の日常生活を考慮した重点的な指導を実施する。指導に当たっては、児童生徒と共に考え、悩み、感動を共有していくという姿勢を基に、道徳的価値の自覚が一層図られるよう体験活動等を生かした多様な取組の工夫や魅力的な教材の開発や活用を行うとともに、校長が指導力を発揮し、学校全体で取り組む必要がある。
 また、児童生徒の心に響く道徳教育は、道徳の時間のみならず、各教科、特別活動及び「総合的な学習の時間」などあらゆる教育の場面で行われる必要がある。共に学ぶ楽しさや自己の成長に気付く喜びを大切にし、各教科等の学習においても自らの生き方に直接かかわることを実感させるなど、道徳教育に資する学習が進められることに留意する。

(イ)家庭や地域の人々の協力による道徳教育の充実
 学校の道徳教育に地域の人材等の協力を積極的に求めたり、学校間の多様な交流を図ったりするとともに、学校、家庭、地域を通じた、道徳性を培う体験活動を深める学習を一層活発に展開し、各学校の創意工夫と特色を生かした道徳教育の充実を図る。

(ウ)未来へ向けて自らが課題に取り組み、共に考える道徳教育の推進
 生命を尊重する心や自立心、自己責任、善悪の判断などの基本的なモラル、我が国の文化や伝統を尊重し継承・発展させる態度、国際協調の精神などを育成し、児童生徒自らが、内面を見つめ、直面する課題や悩みに主体的に取り組み、共に考え、未来に向けて人生や社会を切り拓く実践的な力をはぐくむ指導の充実を図る。

イ 改善の具体的事項

(ア)小学校及び中学校における道徳の時間については、次のような改善を図る。
 学校の創意工夫を生かし、各教科等との関連や家庭、地域社会との連携を図りながら、例えば、小学校では2学年を通して、中学校では3学年を通した重点的な指導や指導項目間の関連を十分にもたせた指導ができるようにする。
 また、児童生徒の発達段階や特性を十分に踏まえつつ、内面に根ざした道徳的実践力の育成が図られるよう、例えば、次のような工夫が促進されるようにする。
 ボランティア活動、自然体験活動、生や死の問題を考える活動、学校間の交流活動等を生かす工夫。観察や調査、実物に触れる活動、様々な立場について考える役割演技、コミュニケーションを深める活動、感性や情操をはぐくむ活動等を取り入れる工夫。地域の人材から様々な生き方や考え方を直接学ぶ工夫。学校図書館や公共図書館、博物館等を利用した発展的な学習の工夫。

(イ)小学校及び中学校において道徳の時間をはじめ学校教育全体で取り組む道徳教育については、特に次のような点に留意して指導の工夫を図る。
 小学校の低学年では、特に社会生活上のルールを身に付け、「よいことはよい、悪いことは悪い」と自覚できるよう繰り返ししっかり指導すること。中学年では、自主性をはぐくむ中で、みんなと協力し助け合いながら学習や生活ができるようにすること。高学年では、自立心をはぐくみ、我が国の文化や伝統への理解を深め、自らの属する集団や社会に主体的にかかわっていけるようにすること。中学校では、自らの人生や将来を考えながら規律ある生活ができ、国民としての自覚と国際協調の精神を身に付けるようにすること。
 また、思春期にある小学校の高学年や中学校では、児童生徒の悩みや心の揺れ、学級や学校生活における具体的事柄や葛藤などの課題等を積極的に取り上げ、人間の心や生き方等について話し合い、自己や他者との関係を深くみつめられるようにすること。

(ウ)高等学校における道徳教育は、人間としての在り方生き方に関する教育を学校の教育活動全体を通じて行うが、特に公民科やホームルーム活動を中心に各教科・科目等の特質に応じて、生徒が主体的に探究し豊かな自己形成ができるよう指導の一層の工夫を図る。その際、自由や権利だけでなく自らの義務と責任を果たそうとする態度、社会や自然と積極的にかかわろうとするボランティア精神、男女の理解協力や性モラル、自らの人生を切り拓くことへの意欲、よりよき国家・社会の形成者としての倫理観、国際社会に主体的に貢献しようとする意欲等の育成を重視する。

(エ)指導計画の具体化や授業等の実施、魅力的な地域教材の開発や活用等に、保護者や地域の人々に積極的な参加・協力を求めるようにする。また、小学校及び中学校においては、道徳の時間の指導を学級担任にのみゆだねるのでなく、校長や教頭をはじめ他の教師等も積極的に参加し、必要によりティーム・ティーチングによる指導等に積極的に取り組むようにする。

(オ)副読本、視聴覚資料等の教材については、多様な学習活動が展開できるよう、例えば、体験活動等を盛り込んだ資料、児童生徒の心に響く読み物資料、テレビやビデオ、インターネット等の情報通信ネットワークを利用した資料等の開発や活用を促進し、道徳の時間はもとより日常生活での学習や保護者や地域の人々と協力した学習等にも活用できるようにする。

15) 特別活動
ア 改善の基本方針

(ア)特別活動が、集団活動を通した教育活動としての特質を生かし、集団の一員としての自覚を深め、児童生徒の個性の伸長と調和のとれた豊かな人間性を育成するとともに、学級(ホームルーム)や学校生活の基盤の形成に重要な役割を果たしていることを踏まえ、特に、好ましい人間関係の醸成、基本的なモラルや社会生活上のルールの習得、協力してよりよい生活を築こうとする自主的、実践的な態度の育成、ガイダンスの機能の充実などを重視する観点に立って、内容の改善を図る。

(イ)家庭や地域と協力し連携を深めながら、自然や文化との触れ合い、地域の人々との幅広い交流など、自然体験や社会体験等の充実を図る。

(イ)国際社会の中で主体的に生きていく上で必要な日本人としての自覚や国際協調の精神を培い、国旗及び国歌の指導の徹底を図る。

イ 改善の具体的事項
(小学校)

(ア)現在、特別活動は、「学級活動」、「児童会活動」、「クラブ活動」及び「学校行事」で構成されており、その内容構成は現行どおりとする。

(イ)「学級活動」については、児童の自発的、自治的な活動が一層活発に行えるようにする観点から、児童が自らよりよい学級や学校生活を目指して諸問題の解決に取り組む活動を重視することとし、学級内の組織づくりや運営にかかわる例示を加えることとする。ただし、情報の適切な活用については、教科等で適切な指導が行われることになることを考慮して削除する。
 児童の発達段階に応じてガイダンスの機能を充実する観点から、夢や希望をもち目標に向かって生きる態度の形成にかかわる例示を加えることとし、不安や悩みの解消や意欲的な学習態度の形成はこれに統合する。また、心身の健康や学校給食に関する指導の充実を図る。

(ウ)「児童会活動」については、教師の適切な指導の下に、児童の異年齢集団による自発的、自治的な活動を一層活発に行えるようにするため、学級活動などとの関連を一層図るとともに、活動に必要な場や機会を年間を通じて計画的に確保するようにする。

(エ)「クラブ活動」については、学校や地域の事情等を考慮しつつ、児童の興味・関心を踏まえて計画的に実施できるよう、学校において適切な授業時数を充てるようにする。

(エ)「学校行事」については、ボランティア精神を養う活動を充実するとともに、自然体験、幼児・高齢者や障害のある人々との触れ合いなどを積極的に取り上げるようにする。また、各学校が取り上げる活動について地域や学校の実態に応じて重点化を図るとともに、行事間の関連や統合を図ったり、練習や準備の在り方を見直したりして行事を精選する。

(中学校)

(ア)現在、特別活動は、「学級活動」、「生徒会活動」、「クラブ活動」及び「学校行事」で構成されているが、「学級活動」、「生徒会活動」及び「学校行事」により構成することとする。「クラブ活動」は、放課後等の部活動や学校外活動との関連や、今回創設される「総合的な学習の時間」において生徒の興味・関心を生かした主体的な学習活動が行われることなどを考慮し、部活動が一層適切に行われるよう配慮しつつ、廃止することとする。

(イ)「学級活動」については、小学校と同様の趣旨で改善することとし、学級や学校における生活の充実向上にかかわる例示を加え、情報の適切な活用などの例示は、教科等で取り上げられることを考慮して削除する。
 社会の一員としての自覚を深め、人間としての生き方の指導の一層の充実を図る観点から、ボランティア活動など社会参加の意義の理解を例示に加えることとする。また、心身の健康や学校給食に関する指導の充実を図る。   

(ウ)「生徒会活動」については、教師の適切な指導の下に、生徒の異年齢集団による自発的、自治的な活動を一層活発に行えるようにするため、学級活動などとの関連を一層図るとともに、活動に必要な場や機会を年間を通じて計画的に確保するようにする。

(エ)「学校行事」については、小学校と同様の趣旨で改善する。その際、ボランティア活動など社会参加の活動を明示する。

(オ)将来の生き方を考える態度や主体的に適切な選択を行う能力を育成することの重要性にかんがみ、ガイダンスの機能を充実し、例えば、選択教科や進路等の選択に関し、各教科等との関連を図りつつ、計画的・組織的に指導したり、入学時の学校生活への適応及び円滑な人間関係の形成について計画的に指導するものとする。

(高等学校)

(ア)現在、特別活動は、「ホームルーム活動」、「生徒会活動」、「クラブ活動」及び「学校行事」で構成されているが、「ホームルーム活動」、「生徒会活動」及び「学校行事」により構成することとし、「クラブ活動」については、中学校と同様の趣旨で廃止する。

(イ)「ホームルーム活動」については、小学校及び中学校の「学級活動」と同様の趣旨で改善することとし、ホームルームや学校内の生活上の組織づくりや運営にかかわる例示を加え、情報の適切な活用などの例示は、教科等の指導で取り上げられることを考慮して削除する。
 社会の一員としての自覚を深め、人間としての在り方生き方の指導の一層の充実を図る観点から、ボランティア活動など社会参加の意義の理解や自己責任にかかわる例示を加えるなど、内容の改善を図る。また、心身の健康に関する指導の充実を図る。

(ウ)「生徒会活動」及び「学校行事」については、中学校と同様の趣旨で改善する。

(エ)ガイダンスの機能については、中学校と同様の趣旨で充実する。

(3)盲学校、聾学校及び養護学校

ア 幼稚部

(ア)盲学校、聾学校及び養護学校幼稚部の5領域(健康、人間関係、環境、言葉及び表現)のねらい及び内容等については、基本的には幼稚園に準じた改善を図る。

(イ)障害のある幼児に対し、できる限り早い時期から教育的な手だてを講ずることにより、その後の障害の状態の改善・克服等に大きな効果が見られることから、3歳未満の乳幼児を含む教育相談に関する事項を幼稚部教育要領に明記する。
 障害のある児童生徒に対する教育相談については、盲学校、聾学校及び養護学校の専門性を広く活用する観点から、小学部、中学部及び高等部の学習指導要領にも位置付けることとする。

(ウ)幼児の障害の種類や程度、発達段階等に応じた指導を一層進める観点から、学校種別ごとの指導計画作成上の留意事項についてより具体的に示すよう見直しを行うとともに、重複障害の幼児に対して、より系統的な指導が行われるよう指導上の留意事項を新たに示す。

イ 小学部、中学部及び高等部

(ア)現在、盲学校、聾学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校の各教科の構成及び目標・内容等は、小学校、中学校等に準ずることとなっており、高等部について障害の特性に応じた職業に関する教科・科目が設けられることとなっている。
 各教科の目標及び内容等については、現行どおり、小学校、中学校及び高等学校に準じた改善を図ることとする。また、学校種ごとにそれぞれ示されている各教科の指導上の配慮事項については、児童生徒の障害の状態の重度・重複化、多様化の状況等を踏まえつつ、各教科の指導の一層の充実を図る観点から、例えば、盲学校においては、コンピュータ等の情報手段の活用に関すること、聾学校においては、音声や文字、手話等の多様なコミュニケーション手段の適切な選択と活用に関することなどについて明記することとする。

(イ)知的障害者を教育する養護学校の各教科については、次のように改善する。

  1. 小学部、中学部及び高等部を通じて、社会の変化や個々の児童生徒の実態の多様化等に応じた指導をより適切かつ効果的に進める観点から、各教科の内容を見直すこととする。その際、高等部における必修教科の内容については、高等部への進学率の上昇に伴い、生徒の障害の程度が軽度から重度まで幅広くなってきていることから、基礎的な内容と発展的な内容の2段階に分けて示すなど、生徒の実態の多様化に対応できるようにする。
  2. 選択教科として、中学部及び高等部に「外国語」を、高等部に「情報」を設ける。
     「外国語」については、生徒が外国語や外国の文化に対する関心をもち、国際理解を深めることなどをねらいとし、外国語に親しみ表現すること、初歩的な外国語を読んで理解すること、外国への関心を深めることなどを内容とする。
     また、「情報」については、コンピュータ等の操作を通して、生活に必要な情報を選択・処理・発信する基礎的な能力や態度を育てることなどをねらいとし、機器の基本的な操作、ソフトウェアの利用などを内容とする。

(ウ)高等部の職業に関する教科・科目については、次のように改善する。

  1.  盲学校、聾学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校においては、高等学校に準じて、情報や福祉に関する教科・科目を設置できるようにするなどの改善を図る。また、盲学校の理療科や聾学校の理容科などについて、各学校において、特色ある教育課程を編成できるよう、職業資格の取得要件との関係も考慮しつつ、関係科目の内容等の改善を図る。
  2. 知的障害者を教育する養護学校においては、流通業やサービス産業に関する基礎的・基本的な知識と技術の習得を図り、これらに関する職業に必要な能力と実践的な態度を育てることなどをねらいとし、商品の取扱いや販売、清掃などに関する内容を取り扱う新たな教科「流通・サービス」を設ける。
  3. 企業等における現場実習は、生徒に職業観や勤労観を育成し、学校生活から社会生活への円滑な移行を進める上で重要である。このため、地域や学校の実態、生徒の障害の状態等に応じた現場実習の一層の充実が図られるように留意事項等を明記する。

(エ)クラブ活動の取扱い
 小学部におけるクラブ活動については、小学校に準じて取り扱うこととする。中学部及び高等部においては、生徒の実態や通学の状況から、部活動の実施が困難な場合も見受けられることなどから、学校や生徒の実態等に応じて、各学校の判断によりクラブ活動を実施することができるようにする。

ウ 養護・訓練

 養護・訓練は、障害の状態を改善・克服するための特別の指導領域として、昭和46年に盲学校、聾学校及び養護学校共通に設けられた。その後の障害のある人々を取り巻く社会環境や障害についての考え方、幼児児童生徒の障害の重度・重複化、多様化等、実態が大きく変化してきていることを踏まえ、次のように改善する。

(ア)名称については、この領域が一人一人の幼児児童生徒の実態に対応した活動であることや自立を目指した主体的な活動であることなどを一層明確にする観点から、「自立活動」と改める。

(イ)目標については、個々の幼児児童生徒が自立を目指し、障害に基づく種々の困難を主体的に改善・克服する教育活動であることが一層明確になるようにする。また、学習指導要領総則の一般方針の養護・訓練に関する記述についても、教育活動全体を通じて養護・訓練の指導の充実を一層図る観点から見直すこととする。

(ウ)内容については、現行では18の項目が五つに区分されて示されており、個々の児童生徒の実態に応じて、これらの内容の中から必要な事項を選定し、相互に関連付けて指導することとなっている。
 近年の幼児児童生徒の障害の状態の多様化に対応し、適切かつ効果的な指導を進めるため、具体的な指導事項を選定する際の観点がより明確になるよう、区分の名称について、「身体の健康」は「健康の保持」、「心理的適応」は「心理的な安定」、「環境の認知」は「環境の把握」、「運動・動作」は「身体の動き」、「意思の伝達」は「コミュニケーション」と改める。また、具体的な項目の内容等についても、同様の趣旨から見直すこととする。

(エ)現行の幼稚部における養護・訓練のねらいや内容等については、幼稚部の領域の示し方に合わせて、小学部、中学部及び高等部とは異なった示し方となっているが、養護・訓練の指導の一貫性を考慮して、小学部、中学部及び高等部と同一の示し方とする。

(オ)障害の状態の重度・重複化、多様化に対応した適切かつ効果的な指導を進めるため、医療、福祉等の関係諸機関等との連携協力の必要性についても一層明確に示すこととする。

2.教育課程の基準の改善の関連事項

 教育課程の基準の改善のねらいの実現は、これに関連する教育条件の改善や幼児児童生徒を取り巻く環境の整備に負うところが大きい。特に今回の改善においては、自ら学び自ら考える力の育成を重視する教育への転換を目指しているが、これを具現するためには、教科書をはじめとする教材(学習材)や指導方法、評価、教師、家庭及び地域社会における教育との連携の在り方などの改善は不可欠と言わなければならない。
 本審議会は、これらについて関係機関や学校が改善に向けて努力されることを強く期待するものである。
 また、完全学校週5日制の趣旨を実現し、21世紀に生きる幼児児童生徒に[生きる力]を身に付けるためには、特に保護者や地域住民、関係者の理解が不可欠である。家庭や地域社会が今回の教育課程の基準の改善の趣旨について十分に理解し、その役割を積極的に果たしていくことを強く求めたい。

1 教科書及び補助教材

 教科書は、主たる教材として学習指導に直接大きなかかわりをもっており、教育内容の厳選、学び方や問題解決能力の育成の重視など、教育課程の基準の改善の趣旨が適切に反映された教科書が作成されることが大切である。その際、教科の特質等を勘案しつつ、教育内容の厳選の趣旨を反映し、知識の暗記に陥りがちな教材の精選を図るとともに、学び方や問題解決能力の育成に資する教材を豊富にするなど、教科書の在り方を工夫する必要がある。
 道徳については、体験を重視した趣旨を踏まえるとともに、地域の特色なども生かしつつ、単に読み物資料だけでなく、道徳的価値や人間の生き方などについて多様な学習活動が展開できるような教材の開発や活用を進める必要がある。
 また、「総合的な学習の時間」の創設、学び方や問題解決能力の育成を重視することに伴い、多様な教材や教材に関する情報の収集・提供を通して学校や教師を援助していくことも大切である。

2 指導方法

 基礎的・基本的な内容の確実な定着、自ら学び自ら考える力などの[生きる力]の育成は、教師による日々の教育実践を通して実現されるものであり、教師の指導の在り方は極めて重要なものと言わなければならない。教師は、児童生徒と共に学び考え、児童生徒の問題解決を助けていくという姿勢に立つことが重要である。また、児童生徒の発達段階等を考慮し、一人一人の興味・関心を生かした指導や、学習内容の理解や習熟の程度に応じ、弾力的に学習集団を編成したり、学級編成を弾力的に行うなど、個に応じた指導の工夫改善を一層進める必要がある。その際、異なる教科間の教師の協力も含め、ティーム・ティーチングなどの指導を一層進めるとともに、特別非常勤講師等による授業を積極的に実施したり、保護者や地域の人々の協力を得たりすることも大切である。特に、小学校では、従来の学級担任による全科担任制にとらわれず、専科指導や交換授業など教師の得意分野を生かした指導方法の工夫改善も重要である。
 特に、実践的コミュニケーション能力の育成を重視する外国語教育においては、ネイティブ・スピーカーによる指導の拡充、外国人との交流など指導方法等の工夫改善を図る必要がある。
 また、情報に関する教育における人材の確保、健康や栄養等にかかわる指導における養護教諭や学校栄養職員などの専門性を有する教職員等の参加・協力などを推進していく必要がある。
 帰国児童生徒及び外国人児童生徒に対する日本語指導等の一層の充実を図ることは今後ますます重要なこととなってくるが、これらの児童生徒の特性を伸ばすとともに、海外での経験等を生かし、児童生徒の相互啓発を通じた国際理解教育を進めるための指導方法等の工夫改善を行っていく必要がある。
 教育環境に関しては、コンピュータ等の教育機器についてハード・ソフト両面にわたる整備や情報通信ネットワークの整備充実とその活用を進めるとともに、学校図書館における情報機器や図書、視聴覚資料などの一層の整備充実と活用が求められる。教育環境の整備については、こうした学校内にとどまらず、学校外の様々な教育施設・設備の整備・充実など、地域に豊かな教育環境を用意し、その積極的な活用を図ることが大切である。

3 学習の評価

 児童生徒の学習の評価については、教育課程の基準の改善のねらいを実現し、児童生徒一人一人の学ぶ意欲や思考力・判断力・表現力などの資質や能力の育成に資するよう、その方法の一層の工夫改善を進める必要がある。基礎・基本の徹底や個性を生かす教育を充実する観点からは、学習の過程を重視したり、児童生徒のよい点や進歩の状況を積極的に評価すること、また、児童生徒が自らの学習過程を振り返り、新たな自分の目標や課題をもって学習を進めていけるような評価を行うことなどが求められるとともに、いわゆる絶対評価や相対評価、個人内評価を含め評価の在り方について検討する必要がある。
 指導要録における各教科等の評価については、現在は各教科共通の考え方及び方法によって行われているが、学校段階・学年段階、教科の特質などに応じた評価方法を更に取り入れることについて検討する必要がある。また、こうした評価については、従来にも増して、各学校や教育委員会においてそれぞれが創意工夫を生かした評価方法などを工夫する必要がある。なお、各学校や教育委員会における具体的な取組の参考となるような評価方法等の研究開発を関係機関が積極的に推進することが望まれる。

4 大学、高等学校など上級学校の入学者選抜

 大学、高等学校など上級学校の入学者選抜の在り方は、児童生徒の学習に決定的とも言える大きな影響を与える。選抜の在り方については、各学校における真剣な工夫改善の取組を切に望むものである。
 ゆとりのある学校生活の中で、真に必要な基礎・基本をしっかりと身に付けるとともに、自ら学び自ら考えるなどの[生きる力]を培い、一人一人の個性を伸ばすなどの今回の教育課程の基準の改善の趣旨を生かす観点に立って、大学、高等学校など上級学校の入学者選抜を改善していく必要がある。具体的には、例えば、学力検査の一点刻みの点数によって合否を決定するのではなく、一定以上の点数を獲得していれば、他の資料によって選抜を行っていく方法など、選抜方法の多様化や評価尺度の多元化を一層進める必要がある。また、高等学校入学者選抜においては、中学校の選択教科を学力検査の対象としないが、その学習成果を適切に評価することについては検討する必要がある。
 なかでも学力検査については、単なる断片的な知識の量を競うような出題ではなく、児童生徒の考える力、自らの考えを表出する力などを問うような多様な出題や方法を工夫するなど、教育内容の厳選、学び方や問題解決能力の育成の重視などの方向を尊重した改善が必要である。また、特に外国語については、実践的コミュニケーション能力の育成を重視した外国語教育の改善の方向を尊重し、リスニングを一層取り入れるなどの改善を図る必要がある。
 また、一部の学校に見られる学力試験を偏重した入学者選抜や、いわゆる難問など学習指導要領を逸脱した出題については、その是正を強く求めておきたい。

5 教師

 自ら学び自ら考える力の育成の重視、教育内容の厳選、創意工夫を生かした教育活動のの充実などを進めるに当たっては、教師は教育の専門家として、自らの専門分野の指導力の向上に積極的に努めるとともに、教育課程編成全体にわたる視野をもつことを求めたい。また、教師の指導力の一層の向上のため、改めて養成、採用、研修の一層の改善充実を求めたい。
 教員養成については、教育職員免許法の改正による「教職に関する科目」の充実をはじめとする教員養成課程のカリキュラムの改善を実現するとともに、今回の教育課程の基準の改善に応じた教員養成の在り方や採用の在り方について検討を行う必要がある。
 初任者研修やその他の現職研修においても、教育課程の基準の改善の趣旨が十分理解され、各学校において実現されるよう研修の内容や方法について積極的に見直しを行い、改善を図っていくことが大切である。また、企業体験や実習的な研修、大学・大学院への長期にわたる派遣研修などを豊富にすることが望まれる。
 また、教育課程の基準の改善の趣旨を実現するためには、指導体制の充実が大切であり、教職員の配置について考慮する必要がある。特に、選択履修の幅の拡大などの特色ある教育課程の編成、ティーム・ティーチングなどの指導方法や指導形態の工夫改善、「総合的な学習の時間」における多様な学習形態の工夫など、各学校の創意工夫を生かした取組が円滑に実施できるよう教職員の配置の在り方を検討する必要がある。

6 学校運営

 これからの学校教育においては、各学校において創意工夫を生かした特色ある教育課程を編成・実践し、特色ある学校づくりを進めていくことが特に求められる。そのためには、地域や学校、幼児児童生徒の実態等の正確な把握・分析を基に、それぞれの学校の教育課題を明確にし、校長のリーダーシップの下、異なる学級・学年や教科などの教職員が一致協力して教育課程の編成をはじめとする学校運営に当たることが極めて重要である。
 教育委員会は、教育課程に関する事務も含め、学校運営に関する責任を有しているが、教育課程の基準の弾力化の趣旨を踏まえ、各学校のこうした学校運営について、学校の主体性を尊重し柔軟に支援を行うことが必要である。
 学校はこれまでややもすると校内ですべての学校運営を完結させる傾向にあったが、これからは、学校や地域の実態に応じて、他の学校との連携や交流を進めることが大切である。その際、同一校種のみならず、盲学校、聾学校及び養護学校を含めた異なる校種間・学校段階間での交流を進めるよう配慮する必要がある。
 また、学校がその本来の役割を有効に果たすため、教育課程、行事や会議などについては、その在り方を常に見直す必要があり、本来家庭や地域社会で担うべきものや家庭や地域社会で担った方がよりよい効果が得られるものは、家庭や地域社会がそれを担うよう促していく必要がある。勝利至上主義的な考え方などによる一部に見られる行き過ぎた部活動についても、見直しをする必要がある。
 一部の学校においては教育課程の基準を逸脱した教育課程を編成している例も見られるが、国公私立の学校、その設置者や教育委員会など関係者は、今回の教育課程の基準の改善が学校教育の基調を転換し、学校、家庭及び地域社会の教育全体の在り方を改善するものであることを十分理解し、国公私立を通じてこれらの趣旨が実現されるよう責任をもって取り組む必要がある。
 また、教育委員会は、学校のみならず、家庭や地域全体で幼児児童生徒を育てるための基盤となる地域コミュニティーの育成のために積極的な役割を果たしていくことが求められており、このような観点から教育委員会の機能の充実を図っていく必要がある。

7 家庭及び地域社会における教育との連携

 学校は、家庭や地域社会とともに幼児児童生徒を育てていくという視点に立って、開かれた学校づくりを一層進めていく必要がある。このためには、校長をはじめすべての教職員が自らの責任を自覚し、教育方針や特色ある教育活動の取組、児童生徒の状況など学校教育の状況等を家庭や地域社会に説明し、理解を求め協力を得るとともに、保護者や地域の人々との意思疎通を十分図ることが大切である。さらに、地域の人々の積極的な協力を得たり、地域の施設や環境などを学校の教育活動に生かしたりするなど、家庭や地域社会の支援を受けることも大切である。
 また、休業日を含め学校施設の開放や、地域の人々や幼児児童生徒向けの学習機会の提供を積極的に進める必要がある。
 家庭や地域社会には、幼児児童生徒が多様な生活体験、ボランティアなどの社会体験や自然体験、文化・スポーツ活動などを行えるよう、様々な団体が提供するそれらの活動機会をも活用しつつ、活動の場や機会を充実するよう求めたい。
 夏休みなどの長期休業期間中は、生活体験、社会体験、自然体験などを味わうことのできる貴重な期間であり、例えば、豊かな自然の中で長期間日常と異なる生活体験を味わったり、親子が共同の体験活動や交流活動を行うことを通して親子の絆を深めたり、図書館や博物館などに出かけ普段学校では行うことのできない様々な学習活動をしたりするまたとない機会である。家庭や地域社会においては、夏休みなどの長期休業期間中のもつこのような意義を積極的に活用するとともに、行政においてはこのような機会が積極的に生かされるよう施策の充実に努めること、各職場における理解と協力が望まれる。
 完全学校週5日制の実施に伴い、家庭や地域社会における幼児児童生徒の様々な活動や体験の場や機会を充実するに当たり、教師もその趣旨を踏まえた対応をすることが求められる。例えば、教師も、地域社会の一員として地域の活動にボランティアとして参加したり、地域社会の幼児児童生徒との触れ合いを深めたりすることが期待される。
 また、地域の実態等に応じ、学校施設を活用して幼児児童生徒や地域の人々が参加しやすい文化・スポーツ活動など学習活動や体験活動が活発に行われることも期待したい。

お問合せ先

初等中等教育局小学校課

-- 登録:平成21年以前 --