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教育課程の基準の改善の基本方向について(中間まとめ)

平成9年11月1日
初等中等教育局小学校課教育課程企画室

目次

はじめに

1.教育課程の基準の改善の基本方向

1 教育課程の基準の改善の基本的考え方
(1)教育課程の基準の改善に当たっての基本的考え方
(2)教育課程の基準の改善のねらい
(3)各学校段階・各教科等を通じる主な課題に関する基本的考え方

2 各学校段階等を通じる教育課程の編成及び授業時数等の枠組み
(1)教育課程の領域編成
(2)「総合的な学習の時間」(仮称)
(3)授業時数の基本的な考え方等
 ア 年間総授業時数
 イ 小学校、中学校、高等学校等の年間授業週数
 ウ 小学校、中学校、高等学校等の授業の1単位時間

3 各学校段階等ごとの教育課程の編成及び授業時数等
(1)幼稚園の教育課程の編成及び教育時間等
(2)小学校の各教科の編成及び年間授業時数
(3)中学校の各教科の編成及び年間授業時数
(4)高等学校の各教科・科目の編成並びに卒業に必要な各教科・科目の修得総単位数及び必修の各教科・科目の単位数等
(5)盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の編成と年間授業時数等

4 各教科・科目等の内容
(1)幼稚園
(2)小学校、中学校及び高等学校
 1)国語
 2)社会、地理歴史、公民
 3)算数、数学
 4)理科
 5)生活
 6)音楽、芸術(音楽)
 7)図画工作、美術、芸術(美術、工芸)
 8)芸術(書道)
 9)家庭、技術・家庭
 10)体育、保健体育
 11)外国語
 12)職業に関する各教科・科目
 13)道徳教育
 14)特別活動
(3)盲学校、聾学校及び養護学校

2.教育課程の基準の改善の関連事項

はじめに

 本審議会は、平成8年8月、文部大臣から「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について」諮問を受け、その後、今日までの間、初等中等教育の教育課程の全体を通じた改善の基本的な方向について総括的な検討を行ってきた。検討に当たっては、関係団体から直接意見を聴取するとともに、広く国民一般から意見を募集するなどしてできるだけ幅広い意見を参考に審議を行うことに努めた。
 本審議会は、今後、初等教育、中学校教育、高等学校教育及び特殊教育の各分科審議会等を設けて各学校段階ごとの具体的な検討を行い、平成10年秋を目途に答申することとしているが、各分科審議会における検討の指針となるものとして、これまでの検討の結果についての中間的なとりまとめを行ったので、ここに公表し、広く各界の意見を聴しようとするものである。
 本審議会においては、教育基本法及び学校教育法に定める学校教育の目的と目標に沿い、幼児児童生徒の人間として調和のとれた成長を目指し、国家及び社会の形成者として心身ともに健全で、21世紀を主体的に生きることができる国民の育成を期するという観点に立って検討を行った。
 検討を進めるに当たっては、社会の変化や幼児児童生徒の実態、教育課程実施の経験などを考慮するとともに、平成8年7月に出された中央教育審議会第一次答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」を踏まえることに意を用いた。中央教育審議会の第一次答申においては、21世紀を展望した我が国の教育の在り方について、変化の激しいこれからの社会において[ゆとり]の中で[生きる力]をはぐくむことを重視することを提言している。この[生きる力]について、同答申は「これからの子どもたちに必要となるのは、いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力であり、また、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性であると考えた。たくましく生きるための健康や体力が不可欠であることは言うまでもない」と述べている。
 また、同答申は、「[生きる力]は、単に学校だけで育成されるものでなく、学校・家庭・地域社会におけるバランスのとれた教育を通してはぐくまれる」、「家庭や地域社会での生活時間の比重を増やし、子どもたちが主体的に使える自分の時間を増やして[ゆとり]を確保することは、今日、子どもたちにとって極めて重要なことと考える」として、完全学校週5日制の導入を提言している。そして、完全学校週5日制の下で、[ゆとり]のある教育課程を編成し、[生きる力]を育成するためには、教育内容の厳選が是非とも必要であるとしている。

 本審議会としては、このような指摘に十分留意して審議を行ってきた。
 なお、本審議会においては、道徳教育の充実、教育課程の基準の大綱化・弾力化、学校運営の改善などについて検討を行ってきたが、現在、中央教育審議会において、「幼児期からの心の教育の在り方について」及び「今後の地方教育行政の在り方について」審議が行われており、今後、この審議の動向にも留意しつつ、引き続き審議を深めてまいりたい。また、本年6月の中央教育審議会第二次答申において選択的導入が提言された中高一貫教育は、生徒がゆとりのある安定的な学校生活を送る中で6年間の計画的・継続的な教育指導を展開することができるという意義を有するものである。その教育内容については、基本的には中学校及び高等学校のそれぞれの教育内容に準じることになると考えるが、中高一貫教育としての特色ある教育課程を編成することができるよう、その在り方について本審議会として今後検討していくこととしたい。

1.教育課程の基準の改善の基本方向

1 教育課程の基準の改善の基本的考え方

(1)教育課程の基準の改善に当たっての基本的考え方

(子どもたちの成長への願いと学校への期待)

 子どもたちは、幼児期から思春期を経て、自我を形成し、自らの個性を伸長・開花させながら発達を遂げていく。教育は、こうした子どもたちの発達を扶ける営みである。もちろんその営みは学校のみが担うものではなく、学校、家庭、地域社会が連携を図り、それぞれがその教育機能を十分発揮してはじめて子どもたちのよりよい発達が促されるものである。
 我々は、後でも述べるように、子どもたちの生活の在り方や学習の環境を変え、学校、家庭及び地域社会の役割を見直し、学校では学ぶことの動機付けや学び方の育成を重視し、家庭や地域社会で担うべきものや担った方がより効果が得られるものについては家庭や地域社会において担うなどして、よりバランスのとれた教育が行われることが必要であると考える。家庭や地域社会における教育については、子どもたちがもっと社会体験や自然体験などの様々な活動を体験し、それらと、学校における教育活動とを更に有機的に関連付けることによって一層教育効果を高めることができるし、また、学校で学習した知識・技能や学び方などは、家庭や地域社会において生きて働く力として用いられることによって一層深められ、根付いていくと考える。
 こうした中にあって、学校は、子どもたちの発達の状況を踏まえて、組織的・計画的・継続的な教育を行って、子どもたちの発達を促すという特質をもっている。
 このような学校教育の特質を踏まえ、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校及び養護学校を通じ、それぞれの学校が子どもたちの発達の状況や教育課程実施の現状、教育課題等を踏まえつつ、系統性のある教育課程を用意し、それぞれの教育課題の実現をしっかりと果たしていくことは極めて重要なことと言わなければならない。
 我々の任務は、これからの教育課程の基準は如何にあるべきかを提示することであるが、その具体的な実現に当たっては、教育活動を展開する各学校が、その場にふさわしい環境を備えていることが不可欠である。
 まず、学校は子どもたちにとって伸び伸びと過ごせる楽しい場でなければならない。子どもたちが自分の興味・関心のあることにじっくり取り組めるゆとりがなければならない。また、分かりやすい授業が展開され、分からないことが自然に分からないと言え、学習につまずいたり、試行錯誤したりすることが当然のこととして受け入れられる学校でなければならない。さらに、そのためには、その基盤として、子どもたちの好ましい人間関係や子どもたちと教師との信頼関係が確立し、学級の雰囲気も温かく、子どもたちが安心して、自分の力を発揮できるような場でなければならない。
 このような教育環境の中で、教科の授業だけでなく、学校でのすべての生活を通して、子どもたちが友達や教師と共に学び合い活動する中で、自分がかけがえのない一人の人間として大切にされ、頼りにされていることを実感でき、存在感と自己実現の喜びを味わうことができるようになることが必要であると考える。
 また、子どもたちの学校生活は、登校してから下校するまでの様々な活動で成り立っている。各教科等の授業が中心となっていることはもちろんであるが、始業前の時間、休み時間、また、授業終了後の放課後に、友達同士の自由な遊びがあり、部活動があり、また、読書など一人一人思い思いの過ごし方をすることもあろう。
 こうした子どもたちの主体的な活動は、子どもたちの成長にとって極めて大きな意義をもっている。各学校は子どもたちが伸び伸びとこうした活動で過ごせるよう様々な工夫を凝らしてほしい。我々は、このような子どもの学校生活全体のうち、どこの学校に学んでも子どもたちに提供されるべき教育内容について、そのあるべき姿を検討しているのであり、それは言うまでもなく各学校の教育活動のすべてについての基準を示すものではない。各学校に対しては、現在我々が行っている教育課程の基準の改善についての審議に強い関心を寄せ、教育の専門集団の立場からその内容について十分に研究検討していただくことを強く望むものであるが、同時に各学校においては、このことを含め、子どもたちの学校生活全般について実情を把握し、全体として子どもたちの学校生活を考え、よりよいものにしていく努力が極めて重要であることを指摘しておきたい。

我々は、以上のような子どもたちの成長への願いと学校への期待をもちながら、教育課程の基準の改善について、次のような基本的な考え方に立って検討を行った。

(各学校段階の役割の基本)

ア 第一は、それぞれの学校段階の役割の基本については、次のように考えたということである。
 幼稚園においては、幼児の欲求や自発性、好奇心を重視した遊びや体験を通した総合的な指導を行うことを基本とし、人間形成の基礎となる豊かな心情や想像力、ものごとに自分からかかわろうとする意欲、健全な生活を営むために必要な態度の基礎を培い、小学校以降の学習の基盤を養うことが求められていること。
 小学校においては、個人として、また、国家・社会の一員として社会生活を営む上で必要とされる知識・技能・態度の基礎を身に付け、豊かな人間性を育成するとともに、自然や社会、人、文化など様々な対象とのかかわりを通じて自分のよさ・個性を発見する素地を養い、自立心を培うことが求められていること。
 中学校においては、義務教育の最終段階として、また、中等教育の前期として、個人として、また、国家・社会の一員として社会生活を営む上で必要とされる知識・技能・態度を確実に身に付け、豊かな人間性を育成するとともに、自分の個性の発見・伸長を図り、自立心を更に育成していくことが求められていること。
 高等学校においては、義務教育の基礎の上に立って、自らの在り方生き方を考えさせ、将来の進路を選択する能力や態度を育成するとともに、社会についての認識を深め、興味・関心等に応じ将来の学問や職業の専門分野の基礎・基本の学習によって、個性の一層の伸長と自立を図ることが求められていること。
 盲学校、聾学校及び養護学校においては、幼稚園、小学校、中学校及び高等学校に準ずる教育を行うとともに、障害の状態を改善・克服するために必要な知識や技能等を養い、個性を最大限に伸長し、社会参加・自立に必要な資質や能力の育成を図ることが求められていること。

(子どもの現状、教育課程実施の現状と教育課題)

イ 第二は、子どもの現状、教育課程実施の現状と教育課題を踏まえるということである。
 子どもや子どもの生活の現状については、中央教育審議会第一次答申において、子どもたちは、ゆとりのない忙しい生活を送っていること、社会性が不足し、規範意識が低下していること、自立が遅くなっていること、肥満傾向や視力の低下が見られること、体力・運動能力の低下傾向が見られることなどの問題点が指摘されているが、我々はこうした指摘は十分認識する必要があると考えた。
 現行の教育課程実施上の現状と課題については、文部省が実施した「教育課程実施状況に関する総合的調査研究」の調査結果によれば、子どもたちに計算などの技能や文章の読み取りの力、自然事象や社会的事象についての基礎的知識はよく身に付いており、学習に対する関心や意欲も高いという状況がみられ、また、IEA(国際教育到達度評価学会)の国際調査結果によれば、我が国の子どもたちの学力は国際的に見ても高い水準にあることがうかがえる。こうした調査結果のほか、研究指定校等における実践や各種の資料・調査などを含めて総合的にみると、現行の教育課程の下における我が国の子どもたちの学習状況は全体としてはおおむね良好であると考える。しかし、一方、これらの調査等によれば、過度の受験競争の影響もあり多くの知識を詰め込む授業になっていること、時間的にゆとりをもって学習できずに教育内容を十分に理解できない子どもたちが少なくないこと、学習が受け身で覚えることは得意だが、自ら調べ判断し、自分なりの考えをもちそれを表現する力が十分育っていないこと、一つの正答を求めることはできても多角的なものの見方や考え方が十分ではないことなどの問題点も見られる。
 各教科等の教育内容の改善を検討するに当たっては、これらの教育課程実施の経験を十分踏まえたということである。

(「時代を超えて変わらない価値あるもの」を身に付ける)

ウ 第三は、教育において、どんなに社会が変化しようとも「時代を超えて変わらない価値あるもの」を子どもたちがしっかりと身に付ける必要があるということである。
 第一で述べた各学校段階の役割の基本を念頭に置きつつ、各学校においては、他人を思いやる心、生命や人権を尊重する心、自然や美しいものに感動する心、正義感、公徳心、ボランティア精神、郷土や国を愛する心、世界の平和、国際親善に努める心など豊かな人間性を育てること、国語をしっかりと身に付けさせること、我が国の歴史や文化を学び、それらを大切にする心を培うこと、社会生活を営む上で最小限必要な基礎的・基本的な内容の確実な習得と定着を図ることなど、いかに社会が変化しようとも時代を超えて変わらない価値あるものを子どもたちにしっかりと身に付けさせていかなければならないということである。

(社会の変化に柔軟に対応し得る人間の育成)

エ 第四は、教育においては、社会の変化を見通しつつ、これに柔軟に対応し得る人間の育成を期する必要があるということである。
 学校では教師と子どもたちとの信頼関係を基盤に教育活動が展開され、時代を超えて変わらない価値あるものを子どもたちにしっかりと身に付けさせなければならないが、学校教育は言うまでもなく、次代を担う子どもたちの教育を行う場であり、これからの社会の変化を見通し、その変化に適切に対応できる力を育成することもまた極めて重要であると言わなければならない。
 今日、我が国は、国際化、情報化、科学技術の進展、環境問題への関心の高まり、高齢化・少子化など社会の様々な面での変化が急速に進んでおり、今後一層の激しい変化が予想されている。これらの社会の変化は、子どもたちの教育環境や意識に大きな影響をもたらし、教育上の様々な課題を生じさせている。
 このような激しい変化が予想される社会において、主体的、創造的に生きていくためには、中央教育審議会の第一次答申においても指摘されているとおり、自ら考え、判断し行動できる資質や能力の育成を重視し、個性を伸ばし、国際社会に貢献できる人間を育成していくことが必要である。そして、そのためには、これからの学校教育においては、知識を一方的に教え込むことになりがちであった教育から、自ら学び自ら考える教育へと、その基調の転換を図り、子どもたちの個性を生かし、学び方や問題解決などの資質や能力の育成を重視し、実生活との関連を図りつつ体験的な学習や問題解決的な学習にじっくりとゆとりをもって取り組むことができるようにすることが極めて重要であるということである。

(完全学校週5日制下の教育内容の在り方)

オ 第五は、平成15年度(2003年度)を目途に実施を目指すこととされている完全学校週5日制の下での学校教育での教育内容の在り方を検討するということである。
 中央教育審議会第一次答申では、これまでの学校週5日制の実施の経験を踏まえ、子どもたちにゆとりをもたせ、家庭や地域社会における生活の比重を高め、学校、家庭及び地域社会の教育全体の在り方を改善する必要があることを指摘しつつ、我が国の学校教育に完全学校週5日制を導入することを提言している。
 変化の激しいこれからの社会においては、いつでも自由に学習機会を選択し、生涯を通じ楽しく学び続けることが重要であるとの生涯学習の考え方を更に進めていくことが必要であると考えるが、我々は、完全学校週5日制の導入を契機に、教育は学校教育のみで完結するのではなく、学校教育では生涯学習の基礎となる力を育成することが重要であるとの考え方に立って、教育内容の改善を図る必要があると考えた。

(教育内容の厳選と基礎・基本の徹底)

カ 第六は、教育内容の厳選を徹底し、基礎・基本の確実な習得を図るようにしなければならないということである。
 中央教育審議会第一次答申において指摘されているとおり、[ゆとり]の中で[生きる力]を育成するためには、教える内容をその後の学習や生活に必要な最小限の基礎的・基本的内容に徹底的に厳選する一方、その厳選された基礎的・基本的内容については、子どもたちの今後の学習を支障なく進めるために繰り返し粘り強く学習させるなどして、確実に習得させるようにしなければならないと考えた。

(学習の指導と評価の在り方)

キ 第七は、これからの学校教育における学習の指導と評価の在り方が極めて重要であるということである。
 我々は、自ら学ぶ意欲や思考力・判断力・表現力などの資質や能力の育成を重視するこれからの学校教育においては、従来のような知識を教え込むような授業の在り方を改め、子どもたちが自分で考えたり自分の言葉で表現したりすることを重視するよう指導方法の工夫改善を一層進めていく必要があると考えた。また、指導に当たって教師は子どもたちと共に学び考え、子どもたちの問題解決を助けていくという姿勢が大切であると考えた。
 そのような教育を実現する上で、学習の評価の在り方については極めて大きな影響をもつものと考える。学力については、中央教育審議会第一次答申も指摘しているとおり、これを単なる知識の量と捉えるのではなく、自ら学び自ら考える力などの[生きる力]を身に付けているかどうかによって捉えるべきであると考える。このような考え方に立って、指導の改善に生かす評価という観点を一層重視し、評価の在り方を見直すとともに、各教科の学習の評価の在り方についても、すべて共通の評価方法によって行っている現在の在り方を見直し、学校段階・学年段階、教科の特性等を考慮しつつ改善を図る必要があると考える。

(2)教育課程の基準の改善のねらい

 以上のような基本的考え方に立って我々は教育課程の基準の改善について検討を行った。教育課程の基準の改善のねらいとして挙げられるべき事柄は種々あったが、本審議会としては、まず、幼児児童生徒の現状や国際化の進展等を踏まえ、これからの時代を担う幼児児童生徒を育成する学校教育においては、時代を超えて変わらない調和のとれた人間形成が特に重要であると考え、豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚を育成することを改善のねらいの第一に掲げた。
 また、これからの激しい変化が予想される社会を生きていく幼児児童生徒の教育の在り方を考えるとき、多くの知識の習得に偏りがちであったこれまでの学校教育の基調を転換し、自ら学び自ら考える力を育成することも重要であると考え、これをねらいの第二に掲げた。

 そして、これらのねらいを実現するためには、その基盤として、各学校がゆとりのある教育活動を展開する中で一人一人の幼児児童生徒に基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実することが重要であると考え、これを第三に掲げた。
 また、これらのねらいを実現するためには、何よりも地域や学校、幼児児童生徒の実態を踏まえ、各学校が創意工夫を発揮して、特色のある教育活動を展開することが不可欠であると考え、これを第四として掲げた。
 以上のような4点を我々は、教育課程の基準の改善のねらいとして掲げることとした。
 それぞれの具体的内容は次のとおりである。

1)豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚を育成すること

 これからの学校教育においては、幼児児童生徒を取り巻く環境の変化、いじめ問題等の深刻さ、都市化や少子化などに伴う社会体験や自然体験などの減少の状況などを考慮し、自我の形成を図り、調和のとれた豊かな人間性の育成や社会性の育成を一層重視する必要がある。
 そのためには、相手を思いやる心、互いを認め合い共に生きていく態度、自他の生命や人権を尊重する心、美しいものに感動する心、ボランティア精神、自ら生きる目標を求めその実現に努める態度などを育成するとともに、社会生活上のルールや基本的なモラルなどの倫理観の育成を重視し、規範意識や公徳心、正義感や公正さを重んじる心、善悪の判断、強靱な意志と実践力、自己責任の自覚や自律・自制の心などを育てることに配慮する必要がある。また、たくましく生きるための健康や体力の基礎をはぐくむことも重要である。
 また、国際社会の中で日本人としての自覚をもち主体的に生きていく上で必要な資質や能力を育成することが重要であり、このため、我が国や郷土の歴史や文化・伝統に対する理解を深め、これらを愛する心を育成するとともに、広い視野をもって異文化を理解し国際協調の精神を培うことを重視する必要がある。

2)自ら学び、自ら考える力を育成すること

 これからの学校教育においては、多くの知識を教え込むことになりがちであった教育の基調を転換する必要がある。そして、学習者である幼児児童生徒の立場に立って、その発達の状況に応じて、知的好奇心・探究心をもたせ、自ら学ぶ意欲と主体的に学ぶ力を身に付けるとともに、論理的な思考力、判断力、表現力、問題を発見し解決する能力を育成し、創造性の基礎を培い、社会の変化に主体的に対応し行動できるようにすることを重視する必要がある。また、知識と生活との結び付き、知の総合化の視点を重視し、各教科等で得た知識・技能等が生活において生かされ、総合的に働くよう配慮することが大切である。
 各学校段階、各教科等においては体験的な学習、学び方や問題解決能力の育成を重視した学習を進め、これらを通じて、幼児児童生徒自らが、一人の人間として、国家・社会の一員として、現在及び未来を主体的・創造的に生きていき、豊かな自己実現を図るようにすることが重要である。

3)ゆとりのある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を生かす教育を充実すること

 これからの学校教育においては、自ら学び自ら考える力を育成するため、時間的・精神的にゆとりのある教育活動を展開する中で、厳選された基礎的・基本的な内容を幼児児童生徒がじっくり学習し、その確実な定着を図るとともに、幼児児童生徒が自分の興味・関心等に応じ選んだ課題や教科の学習に主体的に取り組み、学ぶことの楽しさや成就感を味わうことができるようにすることを重視した教育活動を展開していく必要がある。
 このため、家庭や地域社会における教育との関連や各学校段階間の関連を考慮し、個人として、また国家・社会の一員として望ましい人間形成を図る上で必要な基礎的・基本的な内容を明確にしつつ、教育内容の厳選を図る必要があり、特に義務教育で共通に学習すべき内容は社会生活を営む上で必要な内容を中心に構成することに配慮しなければならない。
 また、一人一人のよさや可能性を伸ばし、個性を生かす教育の一層の充実を図るべきであり、各学校段階を通じて、幼児児童生徒の興味・関心等を生かし、主体的な学習の充実を図るとともに、個に応じた指導の一層の工夫改善を図ることが大切である。このため、小学校高学年から、選択能力の育成を重視し課題選択などを積極的に取り入れる。また、中学校においては、学年段階に応じ漸次選択幅の拡大を図るとともに、高等学校においては、生徒による選択を基本とし、共通に履修させる内容は最小限にとどめるようにする必要がある。

4)各学校が創意工夫を生かし特色ある教育を展開すること

 これからの学校教育においては、各学校において、地域や学校、幼児児童生徒の実態等に応じて、創意工夫を生かした特色ある教育を展開できるようにすることが大切である。
 このため、教育課程の基準については、各学校段階や各教科等の特性に応じて、目標や内容を複数学年まとめて示すなど内容等の示し方を大綱化したり、日課表や時間割を各学校が一層創意工夫を生かして編成できるようにするなど1単位時間や授業時数の運用の一層の弾力化を図る必要がある。また、選択学習の幅を拡大するとともに、「総合的な学習の時間」(仮称)を創設し、各学校の創意工夫を生かした教育活動が一層展開できるようにする必要がある。
 また、各学校においては、幼児児童生徒が家庭や地域社会において行った体験や活動を生かした指導に努めるとともに、家庭や地域社会の人材・施設や様々な活動との連携を図った特色ある教育活動を展開する必要がある。このようなことを通じ、学校と家庭・地域社会が十分連携を図るとともに、開かれた学校づくりを一層推進することが大切である。

(3)各学校段階・各教科等を通じる主な課題に関する基本的考え方

 以上のような基本的方針の下に各学校段階の教育課程及び各教科等の教育内容の改善を行う必要があると考えるが、各学校段階ごと、各教科等ごとの改善の方向、内容を示す前に、道徳教育、国際化、情報化、環境問題、高齢社会への対応などの各学校段階・各教科等を通じた横断的・総合的な課題について我々の考えをここに示しておく。

(道徳教育)

ア 道徳教育は、豊かな心をもち、人間としての生き方を自覚し、道徳的実践力を育成することをねらいとして、現在、小学校及び中学校においては道徳の時間をはじめとして学校の教育活動全体を通じて行い、高等学校においては人間としての在り方生き方の教育の視点に立って公民科や特別活動をはじめ学校の教育活動全体を通じて行うこととされている。
 今日、社会が豊かになり、また少子化が進む中で、これまで家庭や地域社会が幼児児童生徒に果たしてきたしつけや倫理観、社会性の育成などの教育機能は低くなっているといわざるを得ないのではないか。こうした状況を踏まえ、我々は、家庭や地域社会の教育機能の回復を願いつつ、真に一人一人の道徳的自覚を促し、自立をはぐくむ中で、人間としてよりよく生きていくことができるようにするという視点に立って、学校における道徳教育は更に充実されることが必要であると考える。
 このため、特に社会生活上のルールや基本的なモラルなどの倫理観が低下していると指摘されている状況を踏まえ、各学校において学校や幼児児童生徒の実態、地域の実情などに応じ、幼児児童生徒の発達段階を踏まえた創意工夫ある指導が重点的に展開されるようにするとともに、日常生活に生かされ実践に結び付くようにするため、体験的・実践的な活動を通した指導を徹底する必要があると考える。
 また、体験的・実践的な指導を充実する上で重要な機能を果たす特別活動については、特にボランティア活動を一層促すことを期したい。ボランティア活動は、地域社会の一員であることを自覚し、互いが支え合う社会の仕組みを考える上で意義のあることであると同時に、単に社会に貢献するということだけでなく、自分自身を高めるためにも必要なことであり、大切なことであるという意味で、大きな教育的意義があると考える。

(国際化への対応)

イ 国際化の進展に対応した教育は、我が国の歴史や文化・伝統に誇りと愛情をもち、理解を深めるとともに、広い視野をもって異文化を理解し、異なる文化や習慣をもった人々と偏見をもたずに自然に交流し共に生きていくための資質や能力の育成を図ることをねらいとして、現在、社会科、地理歴史科、外国語科を中心に各教科、道徳、特別活動の特性等に応じて行うこととされている。
 国際化が急速に進展する中で、国際社会に生きる日本人の育成という視点に立った教育を展開していくことは、今後一層重要なものとなってくる。そのため、各教科等に加え「総合的な学習の時間」(仮称)においてもこのような教育の充実を図っていくことが必要であり、その際は、アジア諸国等に一層目を向けるよう留意することが大切であると考える。また、今後外国の人々との相互交流を深めることの必要性がますます高まることにかんがみ、外国語教育については、自分の考えや意思を適切に表現できる基礎的・実践的コミュニケーション能力の育成を一層重視するとともに、中学校において外国語(英語)を必修とするなどの改善を図ることとする。
 また、小学校における外国語の取扱いとしては、各学校の実態等に応じ、「総合的な学習の時間」(仮称)や特別活動などの時間において、国際理解教育の一環として、児童が外国語に触れたり、外国の生活や文化などに慣れ親しんだりするなど小学校段階にふさわしい体験的な学習活動が行われるようにする必要があると考える。

(情報化への対応)

ウ コンピュータを中心とする情報に関する教育については、現在、小学校段階で教具としての活用を通してコンピュータに触れ、慣れ親しむことを基本とし、中学校段階で技術・家庭科の選択領域「情報基礎」においてコンピュータの役割や機能を理解させ、情報を適切に活用する基礎的な能力の育成を図ることとされ、中学校及び高等学校の数学、理科にコンピュータの原理等の内容が盛り込まれている。
 これからの高度情報通信社会を生きていく児童生徒が、溢れる情報の中で情報を主体的に選択・活用できるようにすることが大切である。そのために、コンピュータや情報通信ネットワーク等の情報手段を活用できる基礎的な資質や能力を培う必要がある。また、併せて、情報の発信・受信の基本的ルールや情報化の影響などについての理解を深めることなども重要である。このため、児童生徒の発達段階に応じて、各学校段階を一貫した系統的な教育が行われるよう関係教科等の改善充実を図る必要がある。具体的には、小学校、中学校及び高等学校を通じ、各教科等の学習においてコンピュータ等の積極的な活用を図る。また、小学校においては「総合的な学習の時間」(仮称)でコンピュータ等の情報手段を適切に活用する。中学校においてはコンピュータの基礎的な活用技術の習得など情報に関する基礎的内容を必修とする。高等学校においても、コンピュータ等の情報手段の活用を図りながら情報を適切に判断・分析するための知識・技能を習得させることなどを内容とする教科「情報」(仮称)を位置付ける必要があると考える。

(環境問題への対応)

エ 環境教育は、現在、小学校、中学校及び高等学校を通じて、社会科や理科を中心に各教科等の特性等に応じ、またそれらの連携を図りつつ、環境問題や環境と人間とのかかわりに対する理解を深めることとされている。
 環境問題に対する社会の関心が一層高まる中で、環境やエネルギーについての理解を深め、環境を大切にする心を育成するとともに、環境の保全やよりよい環境の創造のために主体的に行動する実践的な態度や資質、能力を育成することは今後ますます重要なものとなってくる。こうした状況を踏まえて、各教科、道徳、特別活動及び「総合的な学習の時間」(仮称)のそれぞれにおいて、地域の実情を踏まえた環境に関する学習を充実するとともに、児童生徒の発達段階に応じて、例えば身近な自然環境から地球規模の環境までを対象に環境を調べる学習など、問題解決的な学習や作業的な学習、体験的な学習を一層重視することとする。

(高齢社会への対応)

オ 高齢社会の問題などについては、現在、小学校、中学校及び高等学校を通じて社会科、保健体育科、家庭科などの教科等を中心として、高齢社会についての理解を図り、高齢社会の課題について考えさせることとされている。
 高齢化が急速に進展し、高齢社会が確実に到来することを考えるとき、これからの高齢社会を生きていく幼児児童生徒に、その発達段階に応じて、高齢社会についての理解を深め、男女が協力して高齢者のために主体的に行動し実践する態度を育成するとともに、他者を尊重する態度や尊敬する気持ち、他人を思いやる気持ちなどをはぐくむことは極めて大切である。そのため、各教科、道徳、特別活動及び「総合的な学習の時間」(仮称)のそれぞれにおいて、高齢社会に関する基礎的理解や介護・福祉の問題など高齢社会の課題に関する理解を深めるとともに、実際に高齢者や障害のある人と交流し、触れ合う活動や、介護・福祉に関するボランティア活動を体験することを重視することとする。

(横断的・総合的な学習など)

カ 国際理解・外国語会話、情報、環境、福祉など児童生徒の興味・関心等に基づく課題について横断的・総合的な学習を推進し、学校の創意工夫を生かした特色ある教育活動を一層展開できるようにするため、小学校、中学校及び高等学校等に「総合的な学習の時間」(仮称)を創設する。
 また、各学校の創意工夫を生かした指導が一層行われるようにするとともに、児童生徒の主体的な学習を促す観点から、学習指導要領における各教科・科目の内容の示し方については、学校段階や教科等の特質に応じて、目標や内容を複数学年まとめて示すなどの大綱化や弾力化を図ることとする。

2 各学校段階等を通じる教育課程の編成及び授業時数等の枠組み

(1)教育課程の領域編成

 現行の教育課程は、小学校及び中学校では各教科、道徳及び特別活動の3領域、高等学校では各教科及び特別活動の2領域、盲学校、聾学校及び養護学校ではこれらに養護・訓練を加えた4領域又は3領域により編成することとなっている。
 小学校、中学校及び高等学校等においては、「総合的な学習の時間」(仮称)を教育課程に位置付け、学校の創意工夫を生かした教育活動がより一層展開されるようにするが、これまでの教育課程の実施の経験を踏まえ、その他の教育課程の領域については現行どおりとすることが適当ではないかと考える。

(2)「総合的な学習の時間」(仮称)

 各学校が地域や学校の実態等に応じて特色ある教育活動を自由に展開できるような時間を確保することは重要なことである。また、国際化や情報化をはじめ社会の変化に主体的に対応できる資質や能力を育成するということを考えると、教科の枠を超えた横断的・総合的な学習をより円滑に実施するための時間を確保することも大切なことである。このため、「総合的な学習の時間」(仮称)を創設し、小学校、中学校及び高等学校等において、例えば、国際理解・外国語会話、情報、環境、福祉などについての横断的・総合的な学習などを学校の創意工夫を生かして実施することとする。この時間の内容等については、おおむね次のような方向で更に具体的に検討することとする。

ア 「総合的な学習の時間」(仮称)のねらいについては、各学校の創意工夫の下で行われる横断的・総合的な学習を通じて、自ら課題を見つけ、よりよく課題を解決する資質や能力の育成を重視し、自らの興味・関心に基づき、ゆとりをもって課題解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む態度の育成を図ることとする。
 また、知識内容を教え込むのではなく、情報の集め方、調べ方、まとめ方、報告や発表・討論の仕方などの学び方やものの考え方の習得を重視し、主体的な学習を推進するとともに、各教科、道徳、特別活動それぞれで身に付けられる知識や技能を児童生徒の中で総合化することをねらいとする。

イ 「総合的な学習の時間」(仮称)の学習活動については、例えば、国際理解・外国語会話、情報、環境、福祉などの横断的・総合的な課題などについて、地域や学校の実態に応じ、各学校が創意工夫を十分発揮して学習活動を展開するものとする。その際、自然体験やボランティアなどの社会体験といった実体験、観察・実験、調査、ものづくりや生産活動など体験的な学習、問題解決的な学習を重視する。さらに、高等学校においては、生徒の興味・関心等に応じ一層多様な課題についての学習活動ができるよう配慮する。
 また、ある時期に集中的に行うなどこの時間が弾力的に設定できるようにするとともに、グループ学習や異年齢集団による学習など多様な学習形態や、外部の人材の協力も得つつ、異なる教科の教師が協力し、全教員が一体となって指導に当たるなど指導体制を工夫すること、また、校内にとどまらず地域の豊かな教材や学習環境を積極的に活用することを考慮する。

ウ 「総合的な学習の時間」(仮称)の教育課程上の位置付けについては、小学校及び中学校においては、上記ア、イに述べてきたこの時間の特質にかんがみ、また、教科の枠にとらわれた指導にならないようにするため、教科ではなく教科以外の教育活動として各学年に位置付けることが適当であると考える。ただし、小学校については、低学年において総合的な教科である生活科が設定されていることや生活科を中核とした他教科との合科的な指導が進められていることなどを考慮して、第3学年以上に設定する方向で検討する。なお、学習指導要領上の具体的な位置付けや名称については、更に検討する。
 また、高等学校についても必修とするが、その位置付けについては、高等学校が単位制による教育課程であり、この時間における学習成果を単位として認定することが適切であると考えられることなども考慮しつつ、更に検討する。

エ 「総合的な学習の時間」(仮称)の授業時数等については、「総合的な学習の時間」(仮称)において多様な学習活動が展開できるようにすること、ある程度まとまった時間が必要であること、一方、各教科等の授業時数を確保すること、各学校において円滑に実施されるようにすることなどを考慮し、小学校及び中学校においては、各学年年間70単位時間(週当たりに換算して2単位時間)以上の時間を配当することが適当であるが、各学校段階、各学年段階における具体的な授業時数については、各教科等の教育内容の構成や授業時数との関連を考慮しつつ、更に検討する。また、高等学校については、その位置付けを踏まえ、更に検討する。

オ 「総合的な学習の時間」(仮称)の評価については、試験の成績によって数値的に評価するなど通常の教科と同様の評価は行わず、活動への参加状況や参加意欲、報告書などから学習の成果を適切に評価するなど、評価の在り方を工夫する必要がある。

(3)授業時数の基本的な考え方等

 完全学校週5日制下の教育課程を考えるとき、年間総授業時数等をどうするかは極めて重要な検討課題である。年間総授業時数は、年間に何週・何日の授業を行うか、1週間に何時間授業を行うかによってその総枠が決まることになるが、我々は、我が国のこれまでの授業時数の運用の実態、児童生徒の学習負担の状況と教育水準、諸外国の授業時数の状況等を踏まえ、以下のような経緯で検討を行ってきた。
 我々は、まず、これまでの月1回及び月2回の学校週5日制の実施状況について検討を行った。各学校においては学校行事等の精選、短縮授業の見直しなどの工夫により対応してきており、その結果、全体として児童生徒の学習負担も従前と比べ特に変化はなく、おおむね順調に運用されてきているのではないかと考えた。
 次に、年間授業週数については、現行では、小学校、中学校及び高等学校等の各教科等の授業は年間35週以上にわたって行うこととされており、実態としては長期休業日等を除く40週にわたり授業が行われている。これらについては、完全学校週5日制の実施が児童生徒の家庭や地域社会における体験を行うゆとりを確保するものであること、長期休業日が児童生徒の生活に定着していることなどを考慮すれば、現行どおりとすることが適当であると考えた。
 また、1週間の授業時数については、完全学校週5日制の実施に伴い、現行に比し月2回分の土曜日分の授業時数がなくなることになるが、その場合、月2回の学校週5日制がおおむね順調に実施されてきていることを前提とし、児童生徒の学習負担や生活上のゆとりの観点を考慮すれば、月曜日から金曜日までの1週間の授業時数を現行以上に増やすことはせず、そのなくなる分の年間70単位時間(週当たりに換算して2単位時間)の授業時数を削減するのが適当であると考えた。しかし、この考えに対しては、現行の我が国の総授業時数は諸外国のそれと同程度であり、現行以上削減することは一定の教育水準を確保する観点からどうかという点を考慮しなければならない。また、児童生徒が体験や実験、問題解決的な学習、主体的な学習活動に時間をかけてじっくり取り組めるようにするとともに、授業内容を確実に身に付けることができるようにするためには授業時数の削減はあまり行わず、教育内容を思い切って厳選することこそ必要ではないか。これらの点を考慮すれば、授業時数の削減は、年間35単位時間(週当たりに換算して1単位時間)程度にとどめるのが適当ではないかとの意見もあった。また、これに対しては、教育水準を考えるに当たっては、教育水準の問題は単に時間数の多少の問題ではなく、今回行おうとしている学力観や評価観の転換により学力の質を変えると考えるべきではないかという意見が出された。なお、諸外国の授業時数については、教員の裁量によりその中で適宜休憩を取ることができる国もあるなど授業時数の示し方は様々であり、一概に授業時数のみで形式的に教育水準を比較することはできないのではないかという意見も出された。
 いずれにしても、ゆとりのある教育活動を展開できるよう、教育内容の厳選は、授業時数の縮減の程度以上に徹底的に行い、教育内容を基礎的・基本的な事項に絞り込む必要があることは言うまでもない。
 以上のような様々な検討経過を経て、総授業時数等については、現在のところ以下のように考えている。

ア 年間総授業時数

 完全学校週5日制の実施に伴い、年間総授業時数を縮減する場合の具体的な縮減幅については、年間35単位時間(週当たりに換算して1単位時間)程度を削減するという考え方もあるが、他の曜日の児童生徒の学習負担を増加させないため、現行の授業日となっている土曜日分の授業時数である年間70単位時間(週当たりに換算して2単位時間)程度を削減することを原則として考えるのが適当であると考えた。各学校段階・各学年段階ごとの具体的な授業時数については、後述の「各学校段階等ごとの教育課程の編成及び授業時数等」のところで述べる。

イ 小学校、中学校、高等学校等の年間授業週数

 小学校、中学校及び高等学校等の各教科等の授業は、現行では年間35週以上にわたって行うこととされている。ただし、高等学校では、特に必要がある場合には特定の学期又は期間に授業を行うことができることとされている。
 この年間授業週数の基本的な仕組みについては現行どおりとするが、中学校及び高等学校における選択履修の幅の拡大の中で、選択の機会を一層拡大するとともに、教科等や学習活動によっては年間を通ずることなく特定の時期に集中して行った方が効果的な場合もあることを考慮し、各学校の創意工夫を生かした時間割や教育課程が編成されるよう、小学校、中学校及び高等学校等を通じ一層弾力的にすることが考えられる。

ウ 小学校、中学校、高等学校等の授業の1単位時間

 小学校、中学校及び高等学校等の各教科等の授業の1単位時間については、現行では、小学校は45分、中学校は50分を常例とし、高等学校は50分を標準とされている。ただし、各教科等の特質に応じ、指導方法の工夫によって教育効果を高めることができる場合には、年間の授業時数を確保しつつ、適切な計画の下に授業の1単位時間を弾力的に運用することができることとされている。
 各教科等のそれぞれの授業の1単位時間については、現状を更に進め、各学校において、各学年及び各教科等の年間総授業時数を確保しつつ、各教科等や学習活動の内容の特性に応じて授業時間の区切り方を変えるなど、創意工夫を生かして一層弾力的に日課表や時間割を編成できるようにする。

3 各学校段階等ごとの教育課程の編成及び授業時数等

(1)幼稚園の教育課程の編成及び教育時間等

(幼稚園の教育課程の編成)

ア 現行の幼稚園教育要領は、四半世紀ぶりに全面的に改訂されたが、改訂に際しては、それまで幼稚園教育の基本的な考え方が示されてこなかったことから、幼稚園教育の基本として「幼稚園教育は環境を通して行うものである」ことを明示し、幼児の主体的な活動としての遊びを中心とした生活を通して、一人一人に応じた総合的な指導を行うこととした。教育内容については、幼稚園修了までに幼児に育つことが期待される心情、意欲、態度などを「ねらい」として示し、その「ねらい」を達成するために幼児が経験し、教師が指導する事項を「内容」として示している。この「ねらい」と「内容」は、幼児の発達の側面から、「健康」、「人間関係」、「環境」、「言葉」及び「表現」の5領域にまとめられている。
 現行の幼稚園教育要領が施行された平成2年4月から現在までの幼稚園教育の状況をみると、幼稚園の教育活動はおおむね円滑に展開されているものと考えられ、この領域構成を維持しつつ、このような幼稚園教育の基本的考え方は引き続き充実発展させていくことが適当ではないかと考える。

(幼稚園の教育時間等)

イ 幼稚園の教育時間等については、現行では、1日の教育時間は4時間を標準とし、1年間の教育週数は39週を下ってはならないこととしているが、これを維持しつつ、地域に開かれた幼稚園づくりや預かり保育など地域の実情や保護者の要請等を踏まえ、幼稚園運営の弾力化を進めることが適当であると考える。

(2)小学校の各教科の編成及び年間授業時数

(小学校の各教科の編成)

ア 小学校における各教科の編成については、現行では、低学年においては国語、算数、生活、音楽、図画工作及び体育の6教科、中学年においては国語、社会、算数、理科、音楽、図画工作、体育の7教科、高学年においてはそれに家庭を加えて8教科により編成されている。
 これまでの教育課程の実施の経験に基づけば、教科の構成は妥当なものであり、教科の編成については、現行どおりとすることが適当ではないかと考える。
 なお、幼稚園及び中学校との一貫した教育課程の編成を図るために、特に改善に当たって重視すべき事項としては、幼稚園と小学校との接続を図る観点から、小学校低・中学年を中心に具体的な活動や体験を重視する必要がある。また、低学年においては生活科を中核とした合科的な指導を一層推進するとともに、中学年以上においても合科的・関連的な指導を進めることについて検討する。さらに、小学校と中学校との接続を図る観点から、小学校高学年から課題選択などの選択的要素を取り入れ、選択能力の基礎を養うことに留意する必要がある。

(小学校の年間授業時数)

イ 小学校の各学年の年間総授業時数については、現行では、例えば第1学年で年間850単位時間(週当たりに換算して25単位時間)、第2学年で年間910単位時間(週当たりに換算して26単位時間)、第3学年で年間980単位時間(週当たりに換算して28単位時間)、第4学年以上で年間1015単位時間(週当たりに換算して29単位時間)となっている。これについて、上記2(3)アを踏まえて検討した結果、原則として、年間70単位時間(週当たりに換算して2単位時間)削減することを基本とし、各教科等の教育内容の厳選や「総合的な学習の時間」(仮称)の授業時数を考慮しつつ、各学年ごとに更に具体的に検討していくことが適当であると考える。
 また、小学校の各学年の各教科、道徳及び特別活動ごとの授業時数については、個人として国家・社会の一員として社会生活を営む上で必要とされる基礎的・基本的な内容を身に付けさせることなどに重点を置くこととし、「総合的な学習の時間」(仮称)との関連をも考慮しつつ、各教科等の具体的な教育内容の検討を踏まえて、更に具体的に検討する。
 特別活動の授業時数については、現行では学級活動とクラブ活動に標準授業時数を配当しており、児童会活動と学校行事については学校において適切な授業時数を充てることとしている。このうちクラブ活動の授業時数については、「総合的な学習の時間」(仮称)の創設、教育課程外の活動や学校外活動との関連を考慮し、地域や学校の実態に応じて学校において適切な授業時数を配当できるようにする方向で検討する。

(3)中学校の各教科の編成及び年間授業時数

(中学校の各教科の編成)

ア中学校における各教科の編成については、現行では、必修教科と選択教科に分かれており、必修教科は国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育及び技術・家庭の8教科、選択教科はこれらの教科、外国語及び中学校学習指導要領に定めるその他特に必要な教科により編成されている。各学年の選択教科の種類については、第1学年では外国語及びその他特に必要な教科、第2学年では音楽、美術、保健体育、技術・家庭、外国語及びその他特に必要な教科、第3学年では国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、技術・家庭、外国語及びその他特に必要な教科となっている。
 これまでの教育課程の実施の経験に基づけば、教科の構成は妥当なものではないかと考られる。なお、選択教科の扱いの問題の一つとして、現行では選択教科として位置付けられている外国語科については、国際化の進展に対応してコミュニケーション能力の育成の一層の充実を図るとともに、実際にはすべての生徒が履修している実態を踏まえ、これを必修教科とすることが適当であると考える。
 その際、外国語を必修とするか、国際通用語となっている英語を必修とするかについては、高等学校教育との関連等も考慮しつつ、更に検討することとする。
 また、前回の教育課程の基準の改訂では、選択教科の選択履修の幅を拡大したところであるが、これについては、興味・関心のある教科の選択を通して、生徒の学習意欲の高まりや主体的な学習活動が見られるなどの成果を上げてきている。
 今回の改訂においては、国家・社会の一員として社会生活を営む上で必要とされる知識・技能・態度を確実に身に付けるようにするとともに、生徒の能力・適性、興味・関心等に応じた教育を充実し、生徒の主体的な学習を促進する観点から、中学校を中等教育前期として捉え、高等学校教育との関連を重視する考え方を推進し、選択の幅を一層拡大することが適当であると考える。
 このような考え方に立って、おおむね次のような方向で更に具体的に検討する。

(ア)必修教科の種類については、現行の8教科に外国語科又は英語科を加えて、9教科とすることが適当ではないかと考える。

(イ)選択教科の種類については拡大し、全学年ですべての教科について開設することができるようにする。また、選択教科の内容については、各学校の主体的な判断により生徒の特性等に配慮しつつ、課題学習、補充学習や、さらに学習を進めたいと考えている生徒に対するより進んだ内容を含む発展的な学習も含め一層多様な学習活動ができるようにする。

(中学校の年間授業時数)

イ 中学校の各学年の年間総授業時数については、現行では、各学年とも年間1050単位時間(週当たりに換算して30単位時間)となっている。これについて、上記2(3)アを踏まえて検討した結果、原則として各学年年間70単位時間(週当たりに換算して2単位時間)削減することを基本とし、各教科等の教育内容の厳選や「総合的な学習の時間」(仮称)の授業時数を考慮しつつ、更に具体的に検討していくことが適当であると考える。
 中学校の各学年の必修教科、選択教科、道徳及び特別活動ごとの授業時数については、選択学習の幅を拡大するという考え方に立ち、「総合的な学習の時間」(仮称)との関連を考慮しつつ、各教科等の具体的な教育内容の検討を踏まえ、おおむね次のような方向で更に具体的に検討する。

(ア)学年段階ごとの必修教科と選択教科のそれぞれの授業時数については、次のような考え方とする。

  1. 第1学年は、必修教科を基本とするが、学校の判断により、生徒が選択教科を履修することができるようにする。
  2. 第2学年は、必修教科を基本としつつも、すべての生徒が選択教科を履修できるよう、一定の選択教科の時数を確保する。
  3. 第3学年は、必修教科を基本としつつも、生徒が自己の特性等に応じて、多様な選択教科を履修できるよう、選択教科の時数を第2学年よりも一層拡大する。

(イ)必修教科の授業時数は、必修教科の教育内容を基礎的・基本的な内容に厳選するとともに、上記(の考え方に立って、縮減する。また、各学年の必修教科、道徳及び特別活動の授業時数については、義務教育の最終段階として、小学校教育の基礎の上に、国家・社会の一員として社会生活を営む上で必要な基礎的・基本的な内容を身に付けさせることなどに重点を置くこととし、各教科等の具体的な教育内容の検討を踏まえて、今後更に具体的に検討する。

(ウ)選択教科に充てる授業時数については、現行では外国語科を含め第1学年で週当たり3~4単位時間、第2学年で週当たり3~6単位時間、第3学年で週当たり4~8単位時間であるが、実態としては外国語科はほとんどすべての生徒が履修しており、約半数の中学校では外国語を除いて第2学年で週当たり1単位時間、第3学年で週当たり2単位時間であるという状況にある。
 上記(ア)の考え方に立ち、選択教科の授業時数を具体的にどの程度とするかについては、必修教科の教育内容の具体的な検討などを踏まえ、今後更に具体的に検討する。

(エ)現行では外国語科を除く各選択教科の授業時数は年間35単位時間の範囲内の時数を充てることとしているが、生徒の特性等に応じた多様な学習活動を一層展開できるようにするため、この上限の時数を年間70単位時間に拡大する。

(オ)現行では、教科等によっては下限及び上限の幅をもって授業時数を示しているが、必修教科については、教育内容の厳選の趣旨を一層明確にするため、このような示し方を行わないこととする。選択教科や「総合的な学習の時間」(仮称)については、各学校において創意工夫を生かした特色ある教育課程の編成が行われるような授業時数の示し方を検討する。

(カ)特別活動の授業時数については、現行では学級活動とクラブ活動に充てる標準授業時数として年間35~70単位時間を配当しているが、必修クラブ活動について部活動が一層適切に行われるよう配慮しつつ、部活動との関連や学校外活動との関連を考慮しこれを廃止することとし、学級活動のみに標準授業時数を配当することとする方向で検討する。

(4)高等学校の各教科・科目の編成並びに卒業に必要な各教科・科目の修得総単位数及び必修の各教科・科目の単位数等

(高等学校の卒業に必要な各教科・科目の修得総単位数及び必修の各教科・科目の単位数等)

ア 高等学校の卒業に必要な修得総単位数及び必修教科・科目の単位数等については、生徒が自らの能力・適性、興味・関心等に基づき、主体的に学習を進め、それぞれの個性を伸ばしていくことができるよう、おおむね次のような方向で更に具体的に検討する。

(ア)高等学校の卒業に必要な各教科・科目の修得総単位数については、全日制、定時制及び通信制の課程の区別に関わりなく、高等学校の卒業に必要な修得総単位数は同じであることが適当であるが、完全学校週5日制の実施に伴う授業時数の減少を考慮すれば、これを縮減する必要がある。その際、定時制課程における教育課程編成の実態、後述するクラブ活動の取扱いの変更などを考慮して、卒業に必要な修得総単位数については現行の80単位を74~76単位程度とするのが適当と考えるが、具体的な単位数については更に検討する。

(イ)必修の各教科・科目の合計単位数については、現行では、普通科で最低38単位、専門学科及び総合学科で最低35単位となっている。これについては、高等学校の多様化や生徒の選択による学習を一層推進するため、必要最小限に削減することとし、必修教科・科目の設定の方法などを勘案しつつ、更に検討する。

(ウ)専門教育を主とする学科における専門教育に関する各教科・科目の必修単位数は、高等学校の卒業に必要な修得総単位数及び必修教科・科目の単位数の削減との関連、生徒の多様な実態に応じた教育課程の編成を可能にするなどの観点から、現行の30単位を25~28単位程度とするのが適当と考えるが、具体的な単位数については更に検討する。

(エ)特別活動の授業時数については、現行では、ホームルーム活動及びクラブ活動について合わせて週当たり2単位時間以上配当することとし、ホームルーム活動には週当たり1単位時間以上配当することとされているが、必修クラブ活動について部活動が一層適切に行われるよう配慮しつつ、部活動との関連や学校外活動との関連を考慮しこれを廃止することとし、ホームルーム活動に週当たり1単位時間以上配当することとする方向で検討する。

(オ)全日制課程における週当たりの標準授業時数については、完全学校週5日制の実施に伴い、現行の32単位時間を30単位時間とすることが適当であると考えるが、その学習指導要領上の示し方については、授業の実施形態や履修形態の多様化を踏まえつつ、更に検討する。

(高等学校の各教科・科目の編成)

イ 高等学校における各教科・科目の編成については、現行では、普通教育に関する教科として、国語、地理歴史、公民、数学、理科、保健体育、芸術、家庭及び外国語の9教科、専門教育に関する教科として、家庭、農業、工業、商業、水産、看護、理数、体育、音楽、美術及び英語の11教科並びにその他特に必要な教科が設けられ、さらにこれらの教科を構成する各科目により編成されている。
 普通科においては普通教育に関する教科・科目を中心として、専門学科においてはそれに加えて専門教育に関する教科・科目により教育課程が編成される。さらに、総合学科においては、普通教育と専門教育を選択履修を旨として総合的に施すため、多様な教科・科目を設けて教育課程が編成される。これらの教科・科目のうち、すべての生徒が履修すべき教科・科目については、外国語を除く普通教育に関する教科・科目の中から教科ごとにそれぞれ1~2科目、4~8単位(保健体育については体育7~9単位、保健2単位)とされている。専門教育を主とする学科においては、これに加えて専門教育に関する教科・科目から30単位以上を履修することとされている。なお、総合学科においては、学習指導要領上には位置付けられていないが、原則として一定の科目を履修させることとなっている。
 今日の高等学校には、能力・適性、興味・関心、進路希望等の多様な生徒がおり、これらの生徒に適切に対応するためには、画一的な教育課程を改め、各学校が教育課程上の特色を発揮し、その編成・実施上の工夫を柔軟に行えるようにする必要があり、国として定める教育課程の基準は可能な限り抑制的に示すにとどめる必要がある。
 このような考え方に立って、おおむね次のような方向で更に具体的に検討する。

(ア)普通科、専門学科及び総合学科を通じて共通の必修教科・科目の在り方については、高等学校教育の段階では、一人一人の生徒が将来を見据えて、自己を確立するための基礎を培うとともに、それぞれの個性を一層伸長できるようにすることが求められることから、多様な学習内容の中にも一定の基礎的・基本的な内容をバランスよく身に付けておくことが必要であり、そのような内容を必修として課す方向で検討することが適当である。その際、基礎的・基本的な内容については、単なる知識だけではなく、学び方や問題を発見し解決する能力を育成する内容を中心とすることに十分配慮する必要がある。

  1. 必修教科・科目の設定の具体的な方法としては、現在必修が課されている教科について、国の基準上、履修すべき単位の総数が縮減できるように、各教科において必修となる科目として、可能な限り小さい単位数の科目を設けるという考え方に立って設定することが適当であると考える。
     なお、設定方法としては、各学校の主体性を一層発揮して、教科の枠にかかわらず特色ある教育課程を編成しやすくするため、学習指導要領において複数の教科をまとめるカテゴリー(教科群)を設定し、カテゴリーごとに履修すべき単位数を示すとともに、各学校においてはそれぞれのカテゴリーごとに所定の単位数を満たすよう必修教科・科目を指定し、履修させるという考え方もあった。しかし、この考え方については、地域や学校、生徒の実態を十分に踏まえ、それぞれの学校がその特色を最大限に発揮することができるという面もある一方、新たに設けるカテゴリーと現行の教科との整合性についてさらに慎重な検討が必要であり、これについては、将来の教科の再編・統合を含めた教科等の構成の在り方についての検討の中で生かしていくことが適当であると考えた。
     必修教科・科目の具体的な設定に当たっては、生徒の実態に応じた一層適切な教育課程が編成できるよう、必修科目は、新たに設ける科目及び同一教科の中の他の基礎的な一又は複数の科目の中から選択的に履修できるようにすることが適当であると考える。例えば、数学においては、中学校で学習した内容を基礎とした数学史的な話題や日常の事象についての統計的な処理など、数学的な見方や考え方を社会生活に生かすことのできる内容を取り入れた新たな科目を設け、必修として選択的に履修できるようにすることについて検討することとしてはどうかと考えている。
  2. 現在必修とされていない外国語科の教育課程上の取扱いについては、中学校との関連や必修教科・科目の課し方などを考慮しつつ、更に検討する。
  3. 中学校における学習内容を踏まえ、高等学校における情報教育の推進を図るため、各教科におけるコンピュータ等の適切な活用を一層進めるほか、新たに普通教育としての教科「情報」(仮称)を設け、例えば、コンピュータ等の情報手段の活用を図りながら、情報を適切に判断・分析するための知識・技能を習得させるとともに、情報の発信・受信に当たっての基本的なルールや情報化の影響などについての理解を深めさせるようにする。教科「情報」(仮称)の科目構成及びその具体的内容や教育課程上の取扱いについては更に検討する。
  4. 総合学科において現在原則履修科目とされている「課題研究」や「産業社会と人間」の普通科及び専門学科における取扱いについては、「総合的な学習の時間」(仮称)との関連などを考慮しつつ、更に検討する。
  5. 「総合的な学習の時間」(仮称)については必修とするが、その教育課程上の位置付けについては更に検討する。

(イ)普通教育に関する教科・科目については、現行では、地域、学校及び生徒の実態、学科の特色等に応じ、特に必要がある場合には、学校の判断で学習指導要領に示す以外の教科・科目を設けることができることとされているが、地域や学校の実態等に応じた特色のある教育課程が編成できるよう、これら学習指導要領に示す以外の教科・科目が一層設けられるようにする必要がある。例えば、これらの科目として、幅広い教養を身に付ける観点から科学、芸術、哲学などの様々な分野に関する基礎的な学び方や考え方を追究するような科目を設けることも望ましいと考えられる。

(ウ)専門学科においては、上記(の必修教科・科目に加えて、専門教育に関する教科・科目を最低30単位履修することとされている。専門教育に関する教科としては、家庭、農業、工業、商業、水産、看護、理数、体育、音楽、美術及び英語の11教科が設けられている。
 専門教育に関する教科のうち、職業に関する教科・科目については、高齢化の進展に伴い、介護福祉士など福祉に関する人材の養成の必要性に対応するため教科「福祉」(仮称)を新設すること、高度情報通信社会における情報関連の人材の養成の必要性に対応するため教科「情報」(仮称)を新設することなどについて検討する。さらに、生徒一人一人の多様な個性を生かすため、生徒の選択の幅を拡大する観点から、職業に関する各学科の原則履修科目等の在り方について検討する。
 また、その他の専門教育に関する教科・科目についても、社会の変化に対応し、生徒一人一人の個性を一層伸長する観点から内容を見直す。

(エ)総合学科においては、上記(の必修教科・科目に加えて、「産業社会と人間」、情報に関する基礎的科目及び「課題研究」が原則履修科目とされ、その他は多様な教科・科目の中から履修することとされている。これらの三つの原則履修科目について、学習指導要領上の位置付けを明確にする。これらの位置付けに当たっては、教科「情報」(仮称)の在り方や職業に関する各教科の情報関連科目等との関連、「総合的な学習の時間」(仮称)の教育課程上の位置付けなどとの関連を考慮し検討する。

(5)盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の編成と年間授業時数等

(盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の編成等)

ア 盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の編成は、現行では、幼稚部については幼稚園に準じた領域に加えて「養護・訓練」で編成され、また、小学部、中学部及び高等部については小学校、中学校及び高等学校に準じた各教科、道徳、特別活動に加えて「養護・訓練」で編成されている。なお、精神薄弱者を教育する養護学校の各教科については、精神発達に遅れのある児童生徒の実態に応じた教育を行うため、独自の教科の編成及び目標・内容が示されている。
 小学校及び中学校の特殊学級の教育課程は、特に必要がある場合には、盲学校、聾学校及び養護学校小学部・中学部学習指導要領を参考とした特別の教育課程を編成することができることとされている。また、小学校及び中学校の通級による指導においては、障害の状態等に応じた特別の指導を、通常の学級の教育課程に加え、又は一部に替えた特別の教育課程を編成することができることとされている。
 盲学校、聾学校及び養護学校等の教育課程の編成については、基本的には、幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の教育課程の基準の改善に準じた改善を行うとともに、障害者の社会参加・自立に向けた国際的な動向や我が国における障害者施策の進展など障害者を取り巻く環境の変化や幼児児童生徒の障害の重度・重複化、多様化の実態等に対応する観点から、おおむね次のような方向で更に具体的に検討する。

(ア)盲学校、聾学校及び養護学校においては、小学校、中学校及び高等学校に準じた総授業時数の中で、各教科、道徳、特別活動の指導と併せて、障害の状態の改善・克服を図るための養護・訓練の指導を行っていることから、養護・訓練を含む各教科等の授業時数の確保、中学部における選択教科の取扱い、「総合的な学習の時間」(仮称)の取扱い等について検討する。

(イ)盲学校、聾学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校においては、高等部における職業教育の充実を図るため、情報に関する学科など社会の変化や多様な進路希望等に対応した学科の設置について検討する。

(ウ)精神薄弱者を教育する養護学校においては、一人一人の個性の伸長や円滑な社会生活を進める観点から、中学部及び高等部における選択教科や高等部の新たな教科「外国語(英語)」を設けることについて検討する。また、高等部において新たな学科として「商業科」(仮称)の設置や多様な職業に関する基礎的・基本的な教育を行う学科「産業科」(仮称)の設置について検討する。

(エ)障害の状態が極めて重いことなどにより、高等部において教科・科目の学習が困難な場合に、教育課程編成の特例として現行では中学部の教科の内容との代替が認められているが、これを小学部まで拡大すること、また、小学部及び中学部において教科の学習が著しく困難な児童生徒に対して幼稚部の領域の内容も取り入れることができるようにすることなどについて検討する。

(オ)訪問教育に係る教育課程の基準について、高等部における訪問教育の試行的な実施の状況等を踏まえるとともに、小学部、中学部及び高等部の関連を図りながら、学習指導要領の位置付けや示し方等について検討する。

(カ)個々の幼児児童生徒の可能性を最大限に伸ばし、一層の社会参加・自立を実現していくためには、これまで以上に個に応じたきめ細かな指導の充実を図ることが重要であることから、個別の指導計画の在り方について検討する。

(キ)現行の小学校及び中学校の学習指導要領においては、特殊学級及び通級による指導に関する記述がないことから、これを明記することについて検討する。

(ク)障害のある幼児児童生徒と障害のない幼児児童生徒や地域社会の人々とが、共に活動し互いに触れ合う機会を設けることは、すべての幼児児童生徒の豊かな人間性や社会性を育成する上で大きな意義があるとともに、地域社会の人々が障害のある幼児児童生徒とその教育に対する正しい理解と認識を深める上で重要であることから、交流教育の一層の充実を図る必要がある。このような観点から、盲学校、聾学校及び養護学校と幼稚園、小学校、中学校、高等学校や地域社会の人々との交流について、幼稚園、小学校、中学校及び高等学校の学習指導要領等に明確に位置付けるとともに、盲学校、聾学校及び養護学校の学習指導要領等に更に明確に位置付けることについて検討する。

(盲学校、聾学校及び養護学校の年間授業時数等)

イ 盲学校、聾学校及び養護学校の年間授業時数並びに盲学校、聾学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校の高等部の卒業に必要な修得総単位数については、それぞれ小学校、中学校及び高等学校に準じることとするが、次のような点については更に検討する必要がある。

(ア)現行では、小学部及び中学部の各学年の年間授業時数については、小学校及び中学校に準じた授業時数の中で、各教科等の年間の授業時数を適切に定めること、また、養護・訓練の授業時数は年間105単位時間を標準とし児童生徒の実態に応じて適切に定めることとされており、養護・訓練を含む各教科等の授業時数を適切に確保するための授業時数の設定の在り方について検討する。

(イ)児童生徒の障害の状態、興味・関心、将来の進路希望などが多様化してきていることから、これらの実態に応じた授業時数の弾力的な取扱いについて検討する。

(ウ)中学部及び高等部におけるクラブ活動の授業時数については、クラブ活動の教育課程上の取扱を考慮して、更に検討する。

4 各教科・科目等の内容

 これまでの各教科等の内容についての検討は教科等によって一様ではなく、今後の検討にまつところが多いが、現在までの検討において明らかになった改善の基本的な方向は、次のとおりである。以下に各教科等ごとの改善内容を示しているが、教育内容の厳選については、現時点における例示であり、中央教育審議会第一次答申において指摘されている単なる知識の伝達や暗記に陥りがちな内容、各学校段階間又は各学年間、各教科間で重複する内容、学校外活動や将来の社会生活で身に付けることが適当な内容の精選などの視点に立って、更に厳選するよう引き続き検討を進めていくこととしている。

(1)幼稚園

 幼稚園教育の在り方については、文部省において、学識経験者等を委嘱して調査研究を行い、平成9年6月に中間報告が、同年11月に最終報告がまとめられ、本審議会に報告された。本審議会は、それを参考にしつつ検討を行い、次のように改善することが適当であると考えた。

ア 現状と課題

 現行の幼稚園教育要領への理解は深まり、そのねらいや内容を踏まえた教育の実践が積み重ねられ、おおむね幼児一人一人のよさと可能性が生かされ、伸び伸びと発達している状況にあるが、個々の取組においては、いまだ環境の構成や教師の役割などについて共通理解に不十分な点が見られる。また、殊に今日の幼児がすでに少子時代、情報時代の中に生きており、幼児の心身の発達にこのような環境が大きな影響を及ぼしていることなどを考慮し、幼稚園教育の内容の在り方を検討する必要がある。

イ 内容の改善

 このため、遊びを中心とした生活を通して、一人一人に応じた総合的な指導を行うという幼稚園教育の基本的考え方は引き続き発展させていくことが重要であるが、幼児の主体的活動が十分に確保されるよう教師は幼児理解に基づき、計画的に環境を構成していくことや教師の遊びへのかかわりなどその役割の基本について共通理解をしなければならないことを明らかにすることが必要である。
 このような幼稚園教育の基本的考え方に立って、豊かな生活体験を通して自我の形成を図り、生きる力の基礎を培うために、次のようなことを重点として教育内容の改善を図る必要がある。

(ア)心身の健康を培う活動を積極的に取り入れること
 現行の教育要領においても心身の健康を培うことは重視されているが、幼児を取り巻く環境や生活の変化に対応し、今後の幼稚園教育においては、幼児の健康な生活リズムをつくりだし、戸外で伸び伸びと体を動かして遊ぶ活動を積極的に取り入れるとともに、友達と十分に遊ぶことによって自己の存在感や充実感を味わう体験が一層重視されなければならない。また、悩みや葛藤の経験を通して友達の存在に気付くといった自我の形成にかかわる体験や社会生活上のルール、幼児期にふさわしい道徳性を生活の中で身に付けるような指導を充実する必要がある。また、その際には、安全にかかわることなど人としてしてはいけないことについてははっきりと指導することが必要である。

(イ)自然体験、社会体験などの直接的、具体的生活体験を重視すること
 少子化、情報化、都市化などの進行を背景として、幼児の直接的、具体的体験が減少していることから、幼児が自然にじっくり触れる機会を生み出すために、園外での活動を積極的に取り入れるとともに、園庭で小動物を飼育して生き物の成長をともに体験するなど身近に自然を体験する機会を一層充実する。また、高齢者をはじめ地域の人々との触れ合いの体験などの社会体験を積極的に取り入れる。その際、時には幼児がまわりの大人の手を借りずに、何かをやり遂げ、充実感を味わう体験が得られるように配慮することが必要である。

(ウ)幼児期にふさわしい知的発達を促す教育の在り方を明確に示すこと
 幼児は遊びの中で周囲の環境や友達と直接かかわることを通して、好奇心や探求心を抱き、物事の法則性に気付き、自分なりに考え、さらに、言葉や記号などを用いることを通して、文字や数量に対する感覚やその記号的意味に気付いていく。また、感情のコントロールや思いやり、協力することの大切さなどを体験的に学んでいく。しかし、このような幼児の知的発達を促す教育については必ずしも十分な理解が得られていないのが現状である。したがって、幼児期にふさわしい知的発達を促す教育の在り方を示し、実践していくことにより、自ら学び自ら考える力の基礎を形成していくことが大切であり、そのための具体的な手がかりを示すことが必要と考える。この教育は、知識の獲得を中心として一斉にあるいは画一的に指導したり、それを他の幼児と比較して評価したりするような知識偏重のいわゆる早期教育とはもとより異なるものである。

(エ)自我が芽生え、自己を抑制しようとする気持ちが生まれる幼児期の発達の特性に応じたきめ細かな対応を図ること
 幼児期は、自我が芽生える時期と他者の存在を意識して思いやり、自己を抑制しようとする気持ちが生まれるようになる時期に大きく分かれるが、このような発達の特性を考慮したきめ細かな指導について現行の教育要領では明らかに示されていない。このため、幼児期のこうした発達の特性を考慮したそれぞれの時期にふさわしい活動ができるよう、具体的な手がかりを示すことが必要である。

(オ)集団とのかかわりの中で幼児の自己実現を図ること
 現行の教育要領においては、愛情や信頼感をもち、進んで身近な人とかかわることど人とかかわる力の育成が重視されているが、幼児を取り巻く環境や生活の変化に対応し、今後の幼稚園教育においては、幼児の主体的な活動を通した友達との相互交渉を一層豊かにするとともに、友達と一緒に何かをやり遂げようとする中で責任を持とうとする気持ちや時には我慢することをも学んでいくことが重要である。このように、集団とのかかわりの中で幼児の自己実現が図られるよう一人一人を生かした集団活動の機会が十分に確保されることが必要である。

ウ 幼稚園運営の弾力化

 幼児を取り巻く環境の変化、家庭や社会のニーズの多様化に対応し、幼稚園が家庭や地域との連携を深め、積極的に子育てを支援していく地域に開かれた幼稚園づくりや通常の教育時間の終了後、希望する幼児を幼稚園において引き続き教育を行う預かり保育など幼稚園運営の弾力化を推進することが必要である。なお、預かり保育については、幼児の生活リズム、幼児の心身への負担等を考慮して幼児期にふさわしい生活を送ることができるよう、教育課程に基づく日々の教育活動との関連に配慮して実施することが必要である。
 なお、幼稚園とともに幼児期の子どもを預かる場として保育所があるが、幼稚園と保育所の在り方については、両施設の合築等による共用化など運用の弾力化を推進する。

(2)小学校、中学校及び高等学校

1)国語

ア 現状と課題
 国語科は、国語を正確に理解し適切に表現する能力を高めるとともに、思考力や想像力を養い言語感覚を豊かにし、国語を尊重する態度を育てることをねらいとしている。
 このねらいを実現するため、表現(話すこと・書くこと)、理解(聞くこと・読むこと)の2領域及び言語に関する事項から内容を構成し、児童生徒の発達段階を踏まえ、具体的な言語活動を通して国語の力を育成している。
 児童生徒の学習状況については、文章の各部分を読み取る力、漢字を読んだり書いたりする力などは比較的身に付いている。一方、文章全体の要旨を読み取り自分の言葉でまとめる力、自分の考えをもって筋道立てて表現したりする力などが十分でない状況が見られる。また、読書の時間や読書の量が十分でない面が見られ、言葉の乱れなども指摘されている。

イ 改善の内容
 国語に対する関心を高め国語を尊重する態度を養うとともに、豊かな言語感覚や確かな言語能力を培うために、言語の教育としての立場を一層重視する観点から、例えば、次のような事項について内容の改善を図る。

(ア)従来、文学的な文章の詳細な読解に偏りがちであった指導の在り方を改め、自分の考えをもち、論理的に意見を述べる力、目的や場面などに応じて適切に表現する能力、目的に応じて的確に読み取る能力や読書に親しむ態度を育成する指導を充実させ、例えば、スピーチや説明をすること、話し合いや討論をすること、手紙を書くこと、記録や報告をまとめることなどの学習活動が十分に行われるようにする。
 そのため、小学校、中学校及び高等学校を通じて現在の領域構成を改め、新たに、話すこと・聞くこと、書くこと、読むことに関する領域から構成することについて検討する。

(イ)小学校においては、日常生活に必要な読み書きなどの基礎的な内容を繰り返し学習することによって確実に身に付けるようにするとともに、相手に自分の考えが筋道立てて伝わるように表現したり、目的に応じて大切な事柄を読み取ったりする国語の力を身に付けることを重視する観点から内容を見直す。

(ウ)中学校においては、ものの見方や考え方を深め論理的に表現したり、様々な形態の文章を読んで知識や情報を獲得し活用したりするなど、社会生活に必要な表現力や理解力などの言語能力を確実に身に付けることを重視する観点から内容を見直す。

(エ)高等学校においては、科目構成は、現在の基本的な枠組みは維持しつつも、中学校までに培われた国語の力をさらに総合的に発展させるとともに、生徒の能力・適性、興味・関心等に応じた指導を一層充実する観点から、科目や内容の構成等について検討する。その際、話し言葉の力や作文の能力など社会生活に生かすことのできる国語の力の育成を重視する内容の科目を、必修科目として選択的に履修できるようにすることについて検討する。

(オ)漢字の指導については、小学校、中学校及び高等学校の関連を図り、確実に漢字の力を育成するため、特にワープロ等の普及や辞書の活用などを考慮し、児童生徒の学習負担に配慮しつつ、読みの指導は基本的に現行どおりとし、書きの指導は上学年に移行することについて検討する。また、小学校の学年別漢字配当表の漢字の取扱いの一層の弾力化について検討する。

(カ)古典に関する指導については、我が国の文化と伝統を尊重し、生涯にわたって古典に親しむ態度の育成を重視する。そのため、小学校では、文語調の文章に触れさせ、中学校では、文語文法や文学史等の指導に深入りせず、古典に親しませることに重点を置き、高等学校では、中学校の基礎の上に立って生徒の興味・関心等に応じて幅広く古典に接し、読解・鑑賞の能力を伸ばすようにする。

(キ)文字を正確に書く力を育成するための書写の指導の在り方について検討する。

ウ 厳選例
 以上のような考え方に立って、例えば、次のような内容の厳選を図ることを検討する。

(ア)現在の領域の構成を見直して、各領域にふさわしい教材を調和的に取り上げるようにするとともに、文学的な文章に偏ることのないようにする。その際、教材の取扱いが網羅的かつ詳細に過ぎることのないよう、指導事項の精選及び重点化を図る。

(イ)小学校及び中学校においては、学校や児童生徒の実態に応じて重点的に指導できるよう目標や内容を複数学年まとめて示す。

(ウ)小学校においては、例えば段落分けの指導や人物の気持ちの読み取りなどについては、現在、どの学年でも指導することになっていることを改め、学校や児童の実態に応じて特定の学年で重点的に指導できるようにする。

(エ)中学校においては、例えば読解学習における主題・要旨の把握などについては、現在、どの学年でも指導することになっていることを改め、学校や生徒の実態に応じて特定の学年で重点的に指導できるようにする。

(オ)小学校、中学校及び高等学校の漢字の指導については、児童生徒の学習負担に配慮しつつ、書きの指導は上学年に移行する。

(カ)中学校における古典に関する指導については、古典に親しむことに重点を置き、文語文法や文学史等の指導に深入りしないようにする。

(キ)高等学校においては、取り上げる教材について詳細な読解に深入りしないなど取扱いを工夫することにより、内容の精選を図る。

2)社会、地理歴史、公民

ア 現状と課題
 社会科、地理歴史科、公民科教育は、我が国の国土や歴史に対する理解と愛情を深め、社会に対する多面的な見方を培い、国際社会に生きる民主的、平和的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質を養うことをねらいとしている。
 このねらいを実現するため、小学校では、学年進行に応じて、地域社会や我が国の産業、歴史などに関する内容について、観察・調査、体験など具体的な活動を重視して総合的に学習し、中学校では、地理、歴史、公民の三分野に分化して系統的に学習している。さらに、高等学校では、地理歴史科と公民科に分かれ、世界史や日本史、現代社会などの科目構成によって専門性を重視した学習を行っている。
 児童生徒の学習状況については、年号や地名、地域・日本・世界の社会や産業などに関する知識や提示された課題を調べる態度は比較的身に付けているが、それらの知識を基に様々な視点から諸地域の特色や歴史的事象などを考察したり、また、それらを自分なりに考えて意見を述べたりする能力については、十分でない面が見られる。

イ 改善の内容
 現行の基本的なねらいと基本的枠組みは維持しつつ、網羅的で知識の記憶に偏った学習にならないよう、各学校段階の特色を一層明確化して学習内容の重点化を図るとともに、学び方や調べ方の学習、作業的・体験的な学習や課題学習など児童生徒の主体的な学習を通して、日本や世界の諸事象を多面的に考察し、公正に判断する能力や態度、我が国の国土や歴史に対する理解と愛情、国際協調の精神など国際社会に生きる日本人としての資質をしっかりと育成するよう、例えば、次のような事項について内容の改善を図る。

(ア)小学校については、例えば、次のような改善を図る。
(a)第3学年及び第4学年における地域社会の学習については、生活科との関連を考慮しつつ、各学校で地域に密着した学習が一層弾力的に展開できるようにし、地域社会への理解を一層深めるようにする。また、第5学年における我が国の産業や国土に関する学習については、事例を選択し、各種の資料や調査を通した学習が一層重点的に展開できるようにし、我が国の産業や国土に対する理解と愛情を一層深めるようにする。
(b)第6学年においては、我が国の歴史に対する興味・関心と愛情を深めるようにするため、人物の働きや代表的な文化遺産を中心にした歴史学習を一層徹底し、取り上げる歴史的事象を一層精選して扱えるようにし、通史的な学習にならないようにすることについて検討する。

(イ)中学校については、例えば、次のような改善を図る。
(a)地理的分野については、日本の諸地域学習が網羅的な学習になっている現状にかんがみ、国土の特色を世界と比較して明らかにする学習を重視するとともに、幾つかの事例を通して地域的特色の調べ方などを学ぶことができる学習を新たに導入し、広い視野から国土の理解を深めるとともに、諸地域の特色をとらえる見方や考え方を育成するようにすることについて検討する。
(b)歴史的分野については、世界の歴史を背景に我が国の歴史を学習することを一層徹底するとともに、年号や人名、細かな事柄までも覚え込ませる学習になりがちである現状にかんがみ、時代区分を大きくとって内容の再構成を図り、我が国の歴史の大きな流れを理解し、歴史についての学び方や調べ方を身に付け、多面的な見方ができるようにすることについて検討する。このような学習を通して、先人達が築いてきた文化と伝統を尊重する態度を養い、我が国の歴史に対する理解と愛情を深めるようにする。
(c)公民的分野については、政治や経済などに関する学習が抽象的な用語を詰め込む学習になりがちである現状にかんがみ、国民主権や国民生活と福祉など政治や経済の基本的な仕組みについての学習を具体的な事例を通して一層重点的に行い、社会に対する公正な判断力を身に付けるようにすることについて検討する。

(ウ)高等学校については、例えば、次のような改善を図る。
(a)地理歴史科では、文化史や地誌などの網羅的な学習や難解な事柄の教え込みになりがちである現状にかんがみ、現在の基本的な科目構成を維持しつつ、各科目の特質を生かして内容を精選するとともに、例えば地域の変容や衣食住などについての主題を設定し追究する学習を重視し、歴史的、地理的な見方や考え方を身に付け、多面的な考察を一層深められるようにする。

(b)公民科では、現在の基本的な科目構成を維持しつつ、課題を設定し追究する学習を重視し、現代社会の諸課題と人間としての在り方生き方について考える力を一層養うよう各科目の内容を見直す。

(エ)教科書の記述が網羅的、羅列的にならず学習指導要領の趣旨が適切に教科書に反映されるよう、学習指導要領の示し方を工夫する。

ウ 厳選例
 以上のような考え方に立って、例えば、次のような内容の厳選を図ることを検討する。
(ア)小学校においては、例えば、次のような厳選を図る。
(a)第3学年及び第4学年の地域社会の学習では、各学校で、地域に密着した学習が一層弾力的に展開できるように、目標及び内容を2学年まとめて示し、事例を一層選択して取り扱うようにする。
(b)第4学年と第5学年にわたって学習することとしている我が国の国土の様子に関する学習については、第4学年の内容を第5学年に移行し精選、統合する。
(c)第6学年の歴史に関する学習については、取り上げる歴史的事象を一層精選する。

(イ)中学校においては、例えば、次のような厳選を図る。
(a)地理的分野の日本と世界の結び付き、歴史的分野の戦後の日本と世界、公民的分野の国際社会に関する内容は、一つの項目に精選、統合する方向で検討する。
(b)地理的分野においては、「日本の諸地域」の項目でも幾つかの事例地域を選んで学習できるようにする。
(c)歴史的分野においては、例えば、古代、中世、近世、近代、現代のように時代区分を大きくとって一層我が国の歴史を大観できるようにし、取り上げる歴史的事象を精選する。
(d)公民的分野においては、例えば国際政治や国際経済の中の高度な学習になりがちな内容については削除し、高等学校に移行する。また、例えば「現代の社会生活」のうち家族の望ましい人間関係や、「国民生活の向上と経済」のうち消費者の自立の大切さに関する内容などは、他教科との関連を考慮し削除したり軽減したりする。

(ウ)高等学校においては、例えば、次のような厳選を図る。
(a)地理歴史科においては、生徒の興味・関心を生かして学習できるよう、科目内で内容を選択して学習する仕組みを一層拡充し、重点をおいて学習できるようにする。
(b)公民科においては、他教科と内容が重複するものについては精選する。

3)算数、数学

ア 現状と課題
 算数・数学科は、数量や図形についての知識と技能を身に付けるとともに、数学的な考え方を高め、算数・数学を積極的に活用する態度を育てることをねらいとしている。
 このねらいを実現するため、小学校算数では、数量や図形についての意味を理解し、日常生活に必要な四則計算などの技能を確実に身に付けることを重視しており、また、中学校数学では、算数の学習に積み重ねて、文字式を用いた数学的な表現処理についての能力を高めたり、図形の論証など論理的な思考力を高めたりすることを重視している。さらに高等学校数学では、一層系統的に、数学的な概念の理解を深めたり、数学的な処理の能力を高めたりすることを重視している。
 児童生徒の学習状況については、数量や図形についての基礎的な知識や技能などについては比較的身に付いているものの、数学的な考え方を生かし自分から工夫して問題を解決したり判断したりすることについては十分とは言えない状況がある。小学校の中・高学年から中学校、高等学校へと進むにつれて次第に抽象的な内容が増えていき、算数・数学が比較的得意な者と苦手な者とに分かれ、数学嫌いが増えていく傾向が見られる。また、算数・数学の学習内容には系統性があるため、ある段階で理解が困難になった児童生徒は、その後の学習が遅れがちあるいは困難になるという状況が見られる。

イ 改善の内容
 実生活との関連を考慮しつつ、ゆとりをもった作業的・操作的学習や問題解決的学習を通して、学ぶことの楽しさや充実感を味わいながら、数量や図形に関する基礎的・基本的な知識・技能に習熟させるとともに、数学的に考える力を身に付け、創造性の基礎を培うことを重視し、例えば、次のような事項について内容の改善を図る。

(ア)小学校においては、児童がゆとりをもって、数と計算、量と測定、図形などについての意味を理解し、計算などの技能を繰り返し学習し確実に身に付けていけるようにするために、取り扱う内容の範囲や程度を軽減することについて検討する。
 例えば、分数の一部など複雑な計算を行う内容や、複雑な図形の面積や体積を求める内容などを軽減する一方で、数や量の大きさへの感覚を豊かにすることや、計算の意味理解を深めること、計算の結果への見通しをもつことなどを重視するようにする。

(イ)中学校においては、数量や図形などに関する基礎的な知識を確実に身に付け、積極的に問題解決的な学習活動が進められるようにするために、複雑な計算を必要とする内容を軽減するなどして基礎的・基本的な事項に重点化を図るとともに、論理的な思考力を重視して、例えば、内容の軽減を図りつつ図形の証明に関する学習を重点化するようにする。

(ウ)高等学校においては、科目構成は、現在の基本的な枠組みを維持しつつも、生徒の興味・関心、特性等に応じて多様な選択ができるよう数学学習の系統性と生徒選択の多様性の双方に配慮し、科目や内容の構成を見直すことについて検討する。その際、例えば、中学校で学習した内容を基礎とした数学史的な話題や日常の事象についての統計的な処理など、数学的な見方や考え方を社会生活に生かすことのできる内容を取り入れた新たな科目を設け、必修科目として選択的に履修できるようにすることについて検討する。

ウ 厳選例
 以上のような考え方に立って、例えば、次のような内容の厳選を図ることを検討する。

(ア)小学校においては、例えば、次のような厳選を図る。
(a)数と計算の領域では、複雑な計算技能の取り扱いを軽減するよう、範囲や程度について検討する。また、例えば分数などについて指導内容を上級学年ヘ移行する。
(b)量と測定の領域では、複雑な単位の換算の取り扱いを軽減するよう、範囲や程度について検討する。また、例えば多角形の面積の求め方、立体の体積や表面積の求め方などのうち、児童にとって理解が困難な内容については、削除したり中学校ヘ移行したりする。
(c)図形の領域では、中学校の指導との関連を考慮して、例えば図形の合同や縮図と拡大図などの内容を中学校ヘ移行し統合する。
(d)数量関係の領域では、文字などを用いた式に関する内容を整理・統合する。
 また、例えば反比例など、児童にとって理解が困難な内容を中学校ヘ移行し統合する。

(イ)中学校においては、例えば、次のような厳選を図る。
(a)数と式の領域では、生徒の学習負担を軽減するため、文字を使った式の計算や二次方程式などについて、取り扱う範囲を検討する
(b)図形の領域では、空間図形に関する内容など取り扱いが行き過ぎになりがちな内容については、一部削除する。
(c)数量関係の領域では、資料の整理に関する内容の一部及びいろいろな事象と関数については削除する。
(d)数量関係の領域では、標本調査について高等学校ヘ移行し統合する。

(ウ)高等学校においては、例えば、次のような厳選を図る。
(a)現在の必修科目について、その内容の一部を選択科目へ移行するとともに、履修の選択幅の拡大を図る観点から、選択科目の一部についてその科目内で項目を選択して履修する仕組みを拡充することについて検討する。

4)理科

ア 現状と課題

 理科は、自然に親しみ、自然の事物・現象に対する関心を高め、観察、実験などを行い、科学的に調べる能力と態度を育てるとともに自然の事物・現象についての理解を深め、科学的な見方や考え方を養うことをねらいとしている。
 このねらいを実現するため、小学校では、生き物や身近な自然事象の観察・実験を行い、自然の見方の基礎と自然に関する基礎的な理解を得させ、中学校では、物質やエネルギーに関する事象を扱う第1分野と、生物とそれを取り巻く自然の事象を扱う第2分野に分け、自然に関する理解を深め、高等学校では物理、化学、生物、地学のより系統性と専門性を重視した学習を行っている。
 児童生徒の学習状況については、例えば、植物の部位の名称や化学変化で生成する物質名など比較的単純な自然事象についての知識は身に付いているが、知的好奇心や探究心が十分育っていないという状況がある。また、観察や実験は従前に比べてよく行われるようになってきているが、実験結果に基づいて考察し、根拠を考えたり、自分で課題を見い出し解決する力や科学的な思考力が十分育っていないという状況がある。
 学校段階が進むにつれて、抽象的な学習内容の増加や観察・実験の機会の減少などにより、理科に関する興味・関心が薄れていく状況も見られる。

イ 改善の内容

 現行のねらいや基本的な枠組みは維持しつつ、自然体験や日常生活との関連を一層重視し、児童生徒がゆとりをもって観察・実験に取り組み、自然に対する知的好奇心や探究心を高め、問題解決能力や総合的なものの見方を一層培い、創造性の基礎を育てる観点から、例えば、次のような事項について内容の改善を図る。

(ア)小学校では、身近な自然について児童が自ら問題を見出し、見通しをもって解決していくことが行えるようにするとともに、実感を伴った理解を図るために、例えば、ものづくりや自然災害に関する内容を充実し学習内容を生活経験と関連付けるよう内容を見直す。また、中学年では生活科との関連を考慮し直接体験を一層重視するとともに、高学年を中心に児童が主体的に学習課題を選択できるようにする。

(イ)中学校では、興味、関心や疑問に基づいて自ら問題を見出し、解決していくことができるよう、野外観察や探究活動、課題研究を内容の一部として位置付ける。
 また、低学年では身近な自然の観察に重点を置き、学年進行に応じて、自然の仕組みや規則性を探究する学習に重点を移すとともに、高学年では、環境・エネルギー、科学技術と日常生活、防災等総合的なものの見方を育てる学習へ発展するよう、内容構成を見直す。

(ウ)高等学校では、科目構成は、現在の基本的な枠組みを維持しつつも、生徒の能力・適性、興味・関心、進路等に応じて、科学的なものの見方や考え方を一層伸ばすことができるよう、科目やその内容等を見直す。その際、例えば、中学校で学習した内容を基礎とした科学の歴史や科学と人間生活とのかかわりなどを学ばせ科学的素養を育成する新たな科目を設け、必修科目として選択的に履修できるようにすることについて検討する。

ウ 厳選例

 以上のような考え方に立って、例えば、次のような内容の厳選を図ることを検討する。

(ア)小学校においては、例えば、次のような厳選を図る。
 (a)音や天体関係などに関する内容のうち、取り扱いが行き過ぎになりがちな内容について削除する。
 (b)月や太陽の表面の様子、中和などについては、中学校の理科との関連を考慮し、削除する。
 (c)男女の体の特徴については、他教科との関連を考慮し、削除する。
 (d)物の運動、人や動物の体の働き、土地の変化に関する内容については、課題選択を取り入れる。

(イ)中学校においては、例えば、次のような厳選を図る。
 (a)水溶液や光の内容の一部については、小学校との関連を考慮し、削除する。
 (b)気象関係の内容の一部については、日常生活で身に付けることができることを考慮して削除する。
 (c)電流、イオン、仕事、中和、遣伝、地球の自転などに関する内容のうち、生徒にとって取り扱いが高度になりがちな内容については高等学校に移行することなどを検討する。
 (d)情報手段の発展に関する内容は、他教科との関連を考慮し削除する。

(ウ)高等学校においては、例えば、次のような厳選を図る。
 (a)履修の選択幅の拡大を図る観点から、科目内で項目を選択して履修することができるようにすることについて検討する。

5)生活

ア 現状と課題

 生活科は、具体的な活動や体験を通して、自分と身近な社会や自然とのかかわりに関心をもち、自分自身や自分の生活について考えさせるなどして、自立への基礎を養うことをねらいとしている。
 児童の学習状況については、直接体験を重視した学習活動が展開され、おおむね意欲的に学習や生活をしようとする態度が育っている状況にあるが、一部に画一的な教育活動がみられたり、単に活動するだけにとどまっていて、自分と身近な社会や自然、人にかかわる知的な気付きを深めることが十分でない状況も見られる。

イ 改善の内容

 現行のねらいは維持しつつ、児童が身近な社会や自然、人と直接かかわることのできる活動や体験を一層重視し、創意工夫ある教育活動が一層展開できるようにする観点から、例えば、次のような事項について内容の改善を図る。

(ア)各学校において、地域の自然や施設を活用するなどして地域や児童の実態に応じた多様な活動や体験が一層展開できるようにする。
(イ)児童が身近な幼児や高齢者、障害のある人などと触れ合うことのできる活動を推進する。
(ウ)児童が一層自分の思いや願いを生かし、主体的に活動することができるようにする観点から、他教科との合科的な指導を一層推進し、総合的な学習が行われるようにする。

ウ 厳選例

 以上のような考え方に立って、例えば、次のような内容の厳選を図ることを検討する。

(ア)各学校において、重点的・弾力的な指導が行われるよう、目標と内容を2学年まとめて示す。

6)音楽、芸術(音楽)

ア 現状と課題

 音楽科、芸術科(音楽)は、歌唱、器楽、創作及び鑑賞の様々な活動を通して、音楽性を伸ばし、音楽を愛好する心情と音楽に対する感性を育て、豊かな情操を養うことをねらいとしている。
 児童生徒の学習状況については、全体的には一人一人が意欲的に音楽を楽しんでおり、歌唱や器楽などの基礎的な能力が比較的身に付いている。その一方で、一部に学習活動が過度な技能習得に偏りがちになり、音楽活動の喜びを思いのまま味わうことができにくい状況が見られる。また、我が国や諸外国の音楽文化に対する意識は高まりつつあるが、それらを尊重し親しむなどの面でまだ十分でない状況も見られる。

イ 改善の内容

 児童生徒が楽しく音楽にかかわり、音楽活動の喜びを得、生涯にわたって音楽に親しむ態度を育成することを重視する観点から、表現及び鑑賞の活動の関連を図り、各学校が創意工夫を生かして、児童生徒一人一人が個性的、創造的な学習活動をより活発に行うことができるようにするため、例えば、次のような事項について内容の改善を図る。

(ア)小学校においては、児童が楽しい音楽活動を経験できるよう、各学年段階の発達に即して、自分の思いを生かした表現活動を一層活発に行うとともに、楽器の扱いや知識理解に関する内容の精選を図る。その際、表現活動に関する内容については、ふし遊びやリズム遊び、様々な音を活用した音楽づくりなど、具体的な活動をイメージしやすいよう内容の改善を図る。

(イ)中学校においては、生徒が個性に応じた音楽活動を展開できるようにするため、自由な発想を生かした表現活動や音楽のよさを味わうことができる鑑賞活動を一層活発に行うとともに、第2学年・第3学年では歌唱や器楽の小アンサンブルなど、一人一人が興味や関心をもつ学習内容を選択して学習できるようにする。

(ウ)高等学校においては、現在の基本的な科目構成を維持しつつ、生涯にわたって音楽を愛好することができる資質や能力を育成する観点から、生徒が個性や能力を生かし、学習内容を選択して深められるようにすることを検討する。

(エ)小学校、中学校及び高等学校を通じて、我が国や諸外国の音楽文化についての理解を一層深める観点に立って、教材や内容を検討する。

ウ 厳選例

 以上のような考え方に立って、例えば、次のような内容の厳選を図ることを検討する。

(ア)小学校においては、児童や学校の実態等に応じて弾力的な指導が行われるようにするため、目標と内容を2学年まとめて示す。

(イ)小学校においては、具体的な楽器名を削除し、扱う楽器の選択幅を広げる。

(ウ)歌唱、器楽、鑑賞の教材について、小学校では全体として学習する曲数を減らすとともに、小学校の高学年及び中学校では合唱や合奏などの表現形態を学校や児童生徒の実態に応じて選択できるようにする。

(エ)小学校及び中学校の歌唱及び鑑賞の共通教材については、曲数やその示し方を見直す。

(オ)小学校において理解が困難になりがちな「ヘ長調とニ短調」を削除し、記号の種類や扱いを検討するとともに、中学校における読譜内容を軽減する。

(カ)高等学校の表現領域においては、生徒が興味や関心に応じて、「歌唱」「器楽」「創作」のいずれかを選択できるようにする。

7)図画工作、美術、芸術(美術、工芸)

ア 現状と課題

 図画工作科、美術科、芸術科(美術、工芸)は、表現及び鑑賞の活動を通して、造形的な創造活動の基礎的な能力を育成し、美に対する感性を高め、表現の喜びを味わわせるとともに美術を愛好する心情を育て、豊かな情操を培うことをねらいとしている。
 児童生徒の学習状況については、全体としては興味や関心をもって楽しく造形表現活動に取り組んでおり、表現する喜びを味わっている様子が見られる。その一方で、一部には画一的な表現方法や高度な技法の指導も見られ、児童生徒が表現の楽しさや喜びを十分味わうことができない状況も見られる。また、我が国や諸外国の美術文化の理解を深めることが十分でない状況も見られる。

イ 改善の内容

 児童生徒が生涯にわたり楽しく造形的な創造活動にかかわり、その基礎となる資質・能力を育てるため、感覚・感性や想像力、技能を十分働かせ、個性を生かした多様で創造的な造形活動ができるよう、例えば、次のような事項について内容の改善を図る。

(ア)小学校では、児童一人一人の造形的な創造活動の基礎を培う観点から、いろいろな材料などを使いその形や色から発想して楽しくつくる活動を重視し、全学年において、この学習を展開できるようにする。また、手などを十分働かせ、材料や用具を使ったり感覚を働かせたりするなど造形活動の基礎的な技能を高めることを一層重視する。

(イ)中学校では、生徒が感性を働かせ創造的に表現できるようにするために、「絵画」と「彫刻」、「デザイン」と「工芸」を一体的に扱うことができるようにするとともに、図やコンピュータ等映像機器を使って表現し、交流する基礎的能力の育成を図る内容を一層重視する。

(ウ)中学校や高等学校では、表現活動に偏りがちであった指導を見直し、我が国やアジアなどの美術の特質や作品の味わい方を深めるなどの鑑賞活動を重視する。

(エ)高等学校では、現在の基本的な科目構成を維持しつつ、生涯にわたって芸術としての美術や工芸を愛好することができる資質や能力を育成する観点から、生徒が個性や能力を生かし、学習内容を選択して深められるようにすることについて検討する。

ウ 厳選例

 以上のような考え方に立って、例えば、次のような内容の厳選を図ることを検討する。

(ア)画一的な表現の指導や高度で専門的な技法指導に陥らないようにし、児童生徒が自分に合った表現方法や材料・用具などの選択ができるようにする。

(イ)小学校においては、「絵に表す」表現と「立体に表す」表現を整理統合して一体的に扱うことができるようにする。また、児童や学校の実態等に応じて弾力的な指導が行われるようにするため、目標と内容を2学年まとめて示す。

(ウ)中学校、高等学校においては、表現分野の「絵画」と「彫刻」、「デザイン」と「工芸」などを整理統合し、それぞれの内容のいずれかを選択できるようにする。

(エ)中学校の工芸においては、材料の加工や使用など他教科と重複する内容について精選を図る。

8)芸術(書道)

ア 現状と課題

 芸術科(書道)は、表現及び鑑賞の活動を通して創造的な表現の能力と書を愛好する心情や書の文化と伝統を尊重する態度を育て、豊かな情操を養うことをねらいとしている。
 生徒の学習状況については、字の特徴やよさなどに気付き、自分らしい表現をすることについての関心が高まってきている。一方、一部に学習活動が特定の分野のみの高度な技術習得や表現のみの学習に偏ったりするなど、個性を生かした表現や表現と鑑賞とを関連付けた学習が不十分な状況も見られる。

イ 改善の内容

 現在の基本的な科目構成を維持しつつ、生涯にわたり書を愛好し我が国と東洋の書の文化についての関心・理解を一層深めるよう鑑賞活動を重視し、表現と鑑賞が調和的に行われるようにする。また、小学校及び中学校で育成された書写能力を一層高めるとともに、個性を生かした創造的な表現力を育成するため、書体などを選択して学習できるようにすることについて検討する。

ウ 厳選例

 以上のような考え方に立って、例えば、次のような厳選を図ることを検討する。

(ア)漢字、仮名、漢字仮名交じりの各表現において重複する用具・用材(筆、墨、紙等)の扱いに関する内容を統合するとともに、書体など表現を選択して学習できるようにする。

9)家庭、技術・家庭

ア 現状と課題

 家庭、技術・家庭科は、衣食住やものづくりなどに関する実践的・体験的な活動を通して、生活に必要な知識・技術の習得や生活を工夫し創造する能力を育てるとともに、家庭生活を築いていく意欲と実践的な態度を育てることをねらいとしている。
 このねらいを実現するため、小学校では「被服」、「食物」、「家族の生活と住居」の3領域について実習など日常生活に身近な活動を重視した学習を行い、中学校では技術と家庭に関する11領域から「木材加工」、「家庭生活」など4領域をすべての生徒が履修するとともに、「情報基礎」、「保育」など7領域から興味・関心等に応じて3領域以上を選択して履修し、製作や実習を重視した学習を行っている。さらに、高等学校では「家庭一般」、「生活技術」、「生活一般」の3科目から1科目を選択履修し、生徒の興味・関心等に応じた学習を行っている。
 児童生徒の学習状況については、全般的に意欲的に取り組んでおり、特に、調理やコンピュータ実習などの体験的な学習に対しては興味・関心が高い。一方、基礎的な技術の習得にとどまり、自ら考え工夫して取り組んだり実生活に生かしたりすることが十分でない状況も見られる。また、高等学校における男女必修により、男女が協力して家庭生活を築こうとすることの大切さの認識が育ちつつあるが、被服など生徒の興味・関心に大きな差異のある分野も見られる。

イ 改善の内容

 情報化、少子高齢化等の社会の変化や男女共同参画社会の推進を考慮しつつ、児童生徒に生活と技術とのかかわり、家庭生活や家族関係、子育ての意義などを理解させ、家庭生活をよりよくしようとする意欲と実践的な態度を育てる観点から、自ら課題を見い出し解決を図る問題解決的な学習や実践的・体験的な学習を一層重視し、基礎的・基本的な知識・技術を確実に身に付けさせるとともに、それが家庭や社会における実践に結び付くよう、家庭・地域社会との連携や生涯学習の視点、他教科等との関連を考慮しつつ、例えば、次のような事項について内容の改善を図る。

(ア)小学校においては、家庭生活に必要な基礎的技能を習得させるとともに、家庭生活に関心をもたせ、自分と家族とのかかわりを考え生活をよりよくすることができるようにする観点から、内容構成及び内容の改善を図る。また、自ら考え工夫して取り組むようにするため、例えば、「じゃがいも料理」など食物領域や被服領城において教材を指定している扱いを見直す。

(イ)中学校においては、ものづくりやコンピュータの活用の基礎的技術の習得とともに、家庭の機能についての理解を深め、生活の自立を図る観点から、現行の領域について、その構成を見直すとともに内容の改善を図る。具体的には、例えば、「木材加工」と「金属加工」、「家庭生活」と「保育」を統合するとともに、「情報基礎」をすべての生徒に履修させる領域とし、加えて生徒の興味・関心等に応じて更に深めて学習することができる新たな情報の領域を設けることについて検討する。また、栄養を考えた食生活の在り方に関する指導を重視する。

(ウ)高等学校においては、家庭生活を総合的にとらえ主体的に営む能力や態度を育てるとともに、少子高齢化やサービス経済化等に対応する観点から、家庭生活における男女の協力、親としての責任、高齢者等に対する理解や福祉マインドと介護の基礎、消費者としての自覚などを重視して改善を図る。そのため、現在の科目構成の基本的な枠組みを維持しつつ、家庭生活に最小限必要とされる少子高齢社会の課題などの基礎的・基本的な内容で構成する科目を設け、それらの中から生徒の多様な能力・適性、興味・関心等に応じて選択履修できるようにするなど、科目構成・内容について見直すことについて検討する。

ウ 厳選例

 以上のような考え方に立って、例えば、次のような内容の厳選を図ることを検討する。

(ア)小学校においては、例えば、次のような厳選を図る。
(a)児童や学校の実態に応じた弾力的な指導が行われるようにするため、内容を2学年まとめて示す。
(b)「被服」領域の「日常着の整理・整とん」と「家族の生活と住居」領城の「身の回りの整理・整とん」を統合する。
(c)例えば、「簡単なエプロンやカバー類」、「じゃがいも料理」など教材を指定している扱いを見直し、学校や児童の実態に応じて選択できるようにする。
(d)「栄養素とその働き」については、細かな栄養素の種類と名称など児童の理解が困難な内容は中学校で扱うこととする。
(e)児童の日常生活にかかわりの薄くなった「ほころび直し」などの内容は削除する。

(イ)中学校においては、例えば、次のような厳選を図る。
(a)「整備の目的に応じた分解と組立て」、「電気機器の仕組み」、「家庭の収入と生活費」、「各種の被服製作」など、実際の指導において取扱いが行き過ぎになりがちな内容については基礎的・基本的な内容に限定して扱うこととする。
(b)「木材加工」領域と「金属加工」領域において重複して取り扱っている「製品の設計」に関する内容は、領域の統合により軽減する。

(ウ)高等学校においては、例えば、次のような厳選を図る。
(a)小学校及び中学校と重複する衣食住に関する内容などについて精選を図る。

10)体育、保健体育

ア 現状と課題

 体育・保健体育科は、運動の合理的な実践と健康・安全についての理解を通して、運動に親しむ習慣を育てるとともに健康の増進と体力の向上を図り、明るく豊かな生活を営む態度を育てることをねらいとしている。
 体育は、体操、器械運動、陸上競技(陸上運動)、水泳、球技(ボール運動)、武道(中学校・高等学校のみ)、ダンス(表現運動)及び体育に関する知識(中学校・高等学校のみ)等を主な内容としている。
 児童生徒の学習状況については、全体的には個に応じた多様な活動が行われるなどにより、運動への関心・意欲が高まっている。しかし、中学校において、一部の運動領域の技能の学習状況に差が見られる。また、児童生徒の全体的な体力・運動能力の低下、特に、走る、跳ぶ、投げるなどの運動能力の低下にもかかわらず、児童生徒が運動の必要性を理解し、自ら実践することが十分身に付いているとはいえない状況にある。さらに武道については、我が国固有の文化に触れるための段階的な学習が必ずしも十分ではない状況が見られる。
 保健は、心身の発達と心の健康、傷害の防止、疾病の予防、健康と環境、健康な生活の仕方を主な内容としている。
 児童生徒の学習状況については、健康や安全についての関心が高まり、知識も身に付いているが、生活習慣の乱れなど実際の生活に生かされていない状況やストレス及び不安感が高まっている状況も見られる。

イ 改善の内容

 活力のある生活を支える基礎的な体力・運動能力や自ら運動する意欲を培い、児童生徒が能力・適性等に応じて個人的な運動や集団的な運動などのよさに触れたり、自ら健康の問題を解決することを通して、生涯にわたって積極的に運動に親しむとともに、健康な生活を送る能力や態度を育成することを重視する。このため、体育の分野については、発達段階に応じた体力の向上や運動の選択の幅の拡大を図る観点から、保健の分野については、近年の生活行動や疾病構造等の変化に伴う心の健康、薬物乱用、生活習慣病、防災や性など新たな課題についての指導に重点を置き、健康なライフスタイルを確立する観点から、例えば、次のような事項について内容の改善を図る。

(ア)小学校の体育については、発達段階に応じて各種の運動に親しむことにより運動が好きになるようにする観点から、例えば、高学年の「器械運動」について、運動の取り上げ方の改善を図る。また、体操領域については、主として巧みな動きを高めることに重点をおいて指導できるようにする。
 保健については、児童の発育の早期化や生活習慣の乱れなどに対応するため、中学年においても指導できるよう検討する。また、自分らしさの形成や社会性の発達に重点をおいて指導できるよう心の健康に関する内容を改善する。さらに、生活習慣病の予防及び薬物乱用防止について指導するようにする。

(イ)中学校の体育については、個に応じた指導の充実を図る観点から、現行においても、運動領域・運動種目を選択履修しているが、能力・適性等に応じて一層選択して学習することができるようにする。また、「体育に関する知識」については、現行では、運動と心身の働き、体力の測定と運動の練習を学習内容としているが、近年のスポーツ科学の成果を踏まえた内容に改善を図る。さらに、体操領域については、主として持久力など動きを持続する能力を高めることに重点をおいて指導できるようにする。
 保健については、思春期における自分らしさの形成やストレスの克服に重点をおいて指導できるよう心の健康に関する内容を改善するとともに、性、薬物乱用及び防災に関する指導を重視する方向で検討する。

(ウ)高等学校の体育については、中学校との関連を図り、運動の選択の幅をさらに拡大することについて検討する。体操領域は、主として筋力、スピードなど、体力を全面的に高めることに重点をおいて指導できるようにする。
 保健については、欲求やストレスの健康への影響や自己の可能性を最大限に生かして自己を高めていくことの理解に重点をおいて指導できるよう心の健康に関する内容を改善するとともに、感染症の新たな課題についても取り扱うことができるようにする。

(エ)自然体験的な活動については、学校段階に応じて積極的に取り入れることができるよう検討する。

ウ 厳選例

 以上のような考え方に立って、例えば、次のような内容の厳選を図ることを検討する。

(ア)小学校第1学年及び第2学年では、低学年の発達段階に応じた運動に重点をおくことができるようにする。

(イ)小学校第5学年及び第6学年の「器械運動」では、マット運動、鉄棒運動及び跳び箱運動をいずれかの学年で指導することができるようにする。

(ウ)中学校の体育分野の第2学年では七つの運動領域のうち、「器械運動」、「陸上競技」、「水泳」については、その中から1領域又は2領域を選択して履修することができるようにする。

(エ)高等学校の科目「体育」の第3学年においては、選択の幅をさらに拡大する。

(オ)小学校及び中学校の保健の人の成長や心身の機能の発達に関する内容については、健康の保持増進にかかわる内容に重点をおいて指導するようにし、思春期の心身の変化や性に関する内容については、児童生徒の発達段階を踏まえ重点化する。

(カ)小学校及び中学校の健康な生活に関する内容については、健康なライフスタイルの確立の観点から扱うことを明確にし、他教科との関連を考慮し、例えば食事と健康に関する内容については、栄養素の働きなどにまで取扱いが行き過ぎないようにする。

(キ)中学校及び高等学校の保健の環境に関する内容については、環境への適応と人の健康とのかかわりに重点をおいて指導するようにするとともに、生態系の仕組みについては他教科との関連を考慮し、精選する。

(ク)高等学校の科目「保健」の母子保健、高齢化社会の問題及び食品衛生の内容については、他教科との関連を考慮し、精選する。

11)外国語

ア 現状と課題

 外国語科は、外国語を理解し、外国語で表現する能力を養い、外国語で積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育てるとともに、言語や文化に対する関心を高め、国際理解を深めることをねらいとしている。
 生徒の学習状況については、中学校を中心に、コミュニケーション能力の育成を重視した授業が行われるようになり、外国語や外国文化に対する興味・関心を抱き、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度が身に付いてきている。他方、中学校から高等学校へと学年が進むにつれて、知識中心の学習となり、記憶や機械的な練習などにより、学習に興味を持てず学習に困難を感じる生徒が増えていく傾向が見られる。
 また、中学校・高等学校を通して、簡単な外国語で自分の気持ちや考えなどを表現する能力が十分に育成されていない状況も見られる。特に、高等学校においては、外国語教育の重点が依然として機械的な和訳・外国語訳や文法学習等に置かれ、コミュニケーション能力が育成されていない傾向が見られる。

イ 改善の内容

(ア)外国語の教育課程上の位置付けについては、国際化の進展に対応して、外国語を使って挨拶をしたり、簡単な日常的な会話や情報の交換ができるような基礎的なコミニュケーション能力を身に付けることが不可欠になってきていることや、既にすべての生徒が履修している実態を踏まえ、中学校においては必修教科とすることが適当である。その際、外国語を必修とするか、国際通用語となっている英語を必修とするかについては更に検討する。また、高等学校については、中学校との関連や必修教科・科目の在り方などを考慮しつつ、検討する。

(イ)中学校及び高等学校の外国語教育においては、言語の現実的な使用を念頭においた実践的コミュニケーション能力の育成を目指した指導に一層の重点を置く観点から、例えば、次のような事項について内容の改善を図る。

(a)中学校においては、学習段階を考慮して、4領域のうち、特に「聞くこと」「話すこと」の領域の指導を重視し、実際に聞いたり話したりする活動に重点を置く。また、その言語活動は、挨拶や簡単な日常的な会話など具体的な使用場面やはたらきを考慮した基礎的・基本的なものに厳選し、実際に使用する経験を重ねながら習熟を図ることとする。

(b)高等学校においては、中学校での学習を踏まえ、言語の使用場面やはたらきを広げながら、実際に言語を使用する中で、実践的コミュニケーション能力の伸長を図ることとする。特に「話すこと」「書くこと」による表現力を重視したり、生徒の個に応じた指導を一層充実するなどの観点から、科目の内容や構成を見直すことを検討する。その際、生徒の実態に応じて、中学校での基礎的・基本的な学習内容を踏まえ、それらを実際に活用する経験をさらに重ねながら、習熟を図るような指導もできるようにすることについて検討する。

(c)英語以外の外国語の履修については、生徒が様々な言語に触れることの意義を踏まえ、生徒の興味・関心の多様化に応じた外国語の指導を充実する観点から、一層の推進を図る。

ウ厳選例

 以上のような考え方に立って、例えば、次のような内容の厳選を図ることを検討する。

(ア)中学校においては、特に「聞くこと」「話すこと」の領域を重視する観点から、「電話での応答」「買い物」など具体的な言語の使用場面やはたらきを考慮した言語活動を中心とする。また、文型、文法事項及び語彙などは、このような言語活動に必要な基本的なものに精選し、具体的に明示する。

(イ)高等学校においては、中学校での学習を踏まえて、実践的コミュニケーション能力を一層伸長する観点から、簡単なロール・プレイやスピーチなど具体的な言語の使用場面やはたらきを考慮した言語活動を示す。その際、文型、文法事項及び語彙などは、このような言語活動に必要なものに精選し、具体的に明示する。

(ウ)高等学校においては、個に応じた指導を一層充実する観点から、4領域のうち特定の領域について重点的に学習するなど生徒の学習の選択幅を一層拡大する。

12)職業に関する各教科・科目

ア 現状と課題

 職業に関する教科は、家庭、農業、工業、商業、水産、看護の各教科で構成され、産業の各分野に関する基礎的・基本的な知識と技術を習得させ、産業の意義や役割を理解させるとともに、産業の発展に寄与する能力と実践的な態度を育てることをねらいとしている。
 各教科においては、実験・実習を重視してその学習が行われているが、能力・適性、進路等の多様な生徒が入学しており、それら多様な生徒の実態に十分対応していない面が見られる。
 今日、産業構造・就業構造の変化、科学技術の高度化、情報化、国際化、少子高齢化など職業をめぐる社会の状況が大きく変化するとともに、それに伴い高度の専門的な知識・技術を有する人材(スペシャリスト)が求められる状況の中で、高等学校における職業教育については、継続教育を視野に入れて、専門性の基礎・基本の教育に重点を置くことが必要となっている。また、職業資格の取得要件との関連で、教育内容を検討することも必要である。

イ 改善の内容

 職業に関する各教科・科目の内容の改善については、本審議会において、理科教育及び産業教育審議会の中間まとめを踏まえつつ検討を行い、次のように改善することが適当であると考えた。
 職業に関する各教科・科目について、社会の変化や産業の動向等に適切に対応するとともに、生徒一人一人の多様な個性を生かすため、生徒の選択の幅を拡大する視点から、例えば、次のような事項について内容の改善を図る。

(ア)職業に関する各教科・科目については、生涯学習の視点を踏まえつつ、将来のスペシャリストとして必要な専門性の基礎的・基本的な知識と技術を確実に習得させるため、その内容を精選して構成するとともに、実験・実習等の実際的、体験的な学習の充実を図る。

(イ)高齢化の進展等に伴い、介護福祉士などの福祉に関する人材の養成の必要性に対応するため、教科「福祉」(仮称)を新たに設けることについて検討する。

(ウ)高度情報通信社会における情報関連の人材の養成の必要性に対応するため、教科「情報」(仮称)を新たに設けることや各教科における情報に関する内容について検討する。その際、現在検討が進められている高等学校の普通教育としての教科「情報」(仮称)との関係に配慮する。

(エ)各学校がより一層創意工夫を生かして教育課程を編成できるようにする観点や生徒一人一人の多様な個性を生かすため、生徒の選択幅を拡大する観点から、職業に関する各学科の原則履修科目等の在り方について検討する。

(オ)各教科の改善事項としては、次のようなものが考えられる。

(a)家庭・外食産業やアパレル産業等の生活関連産業の多様化、少子高齢化の進展等に対応するため、関連科目の整理・統合、内容の見直しについて検討する。
・調理師など職業資格の取得要件の変更等に対応するため、科目の新設や関連項目の整理・統合、内容の見直しについて検討する。

(b)農業・食品産業の多様化、バイオテクノロジーの進展、地球環境問題に関わって国土環境の保全等の必要性、観光農園等の農業や農村の特性を活用したサービスの増大等に対応するため、科目の新設や関連科目の整理・統合、内容の見直しについて検討する。

(c)工業・マルチメディアやインターネットなど情報通信技術等の技術革新の進展やクリーンエネルギーを利用した環境保全など環境問題等に対応するため、科目の新設や関連科目の整理・統合、内容の見直しについて検討する。

(d)商業・経済の国際化やサービス化の進展に対応し、実践的な語学力、情報・会計リテラシーなどビジネスの基礎・基本の内容を充実するため、科目の新設や関連科目の構成、内容の見直しについて検討する。
 ・商業における情報化の進展に対応し、販売・会計等の経営活動に関わる情報の分析と活用に関する内容を改善するため、関連科目の構成及び内容の見直しについて検討する。

(e)水産・栽培漁業や水産物の管理など水産技術の進展、遊漁やダイビングなど海のレクリェーション産業の拡大等海を取り巻く産業の変化や海洋環境問題等に対応するため、科目の新設や関連科目の整理・統合、内容の見直しについて検討する。
 ・船舶等における人工衛星を利用した通信技術を活用できるよう関連科目の内容の見直しについて検討する。

(f)看護・准看護婦養成教育から看護婦養成教育への移行にも対応できるよう科目の構成及び内容の見直しについて検討する。

ウ 厳選例

 以上のような考え方に立って、例えば、次のような内容の厳選を図ることを検討する。

(ア)職業に関する各教科の情報関連科目については、中学校技術・家庭科の「情報基礎」と重複する内容を削除する。

(イ)各教科内の科目間で重複する内容については精選する。

(ウ)職業に関する各教科・科目の内容については、学習指導要領において項目のみの示し方になっていることもあり、教科書や実際の指導において高度になるきらいがある。このため、各教科・科目の内容の程度・範囲及びその取り扱いについて、基礎的・基本的な内容に限定されるよう、学習指導要領の示し方を工夫する。

13)道徳教育

ア 現状と課題

 道徳教育は、児童生徒一人一人が、豊かな心をもち、人間としての生き方を自覚し、道徳性をはぐくむことをねらいとして、学校の教育活動全体を通じて行われている。小学校及び中学校では、道徳の時間を中心に、基本的な道徳的価値の全般にわたって計画的・発展的な指導を行うこととされている。
 今日の児童生徒については、規範意識や公徳心、正義感や公正さを重んじる心、相手を思いやる心、互いを認め合う心、生命や人権を尊重する心、美しいものに感動する心などが十分に育っていない、利己的な損得の感情だけで行動しがちである、道徳的価値が内面化されていない、自立心が育っていない等の指摘がある。これまで家庭や地域社会が果たしてきた社会性や倫理観の育成の機能が低下してきているという状況もあり、学校における道徳教育の一層の充実を図ることは重要な課題になっている。
 道徳教育の全体計画や道徳の時間の年間指導計画は、各学校において作成されており、指導の工夫もなされており、小学校の低学年や中学年の道徳の時間では意欲的な学習も見られる。しかし、高学年になるにつれ、テレビの視聴や読み物資料に頼りすぎる指導になりがちであり、学校内外における様々な体験を生かした、児童生徒の内面にはたらきかけていく指導が十分になされていない、道徳の時間に学校が抱える課題や児童生徒に生じる問題を考慮した重点的な指導が十分になされていないなどの状況が見られる。また、学校の教育活動全体を通じて豊かな人間性をはぐくむ体験が十分でないなどの状況がある。

イ 改善の内容

 規範意識や性モラル、公徳心の低下、夢や生きがい感の喪失等の課題を踏まえ、それらに適切に対応し、自ら課題を克服できるよう、児童生徒が道徳的価値の自覚を深め、自他の生命を尊重し、自立をはぐくみ、自らの責任を果たし人間としてよりよく生きていく態度の育成を図る観点から、指導計画や指導方法などの改善・重点化を図り、学校教育全体を通じて体験や実践的活動を重視した指導を実施するようにするため、例えば、次のような事項について内容の改善を図る。

(ア)道徳教育の指導については、特に社会生活上のルールの習得や基本的なモラルなどの倫理観が低下していると指摘されている状況を踏まえ、各学校において、全教職員が協力して、学校や児童生徒、地域等の実態や課題に応じ各学校の創意工夫を生かした指導が教育活動全体を通じて一層行われるようにする。その際、例えば小学校低学年では学校生活への適応や基本的な生活習慣、中学年では自主性をはぐくむ中での節度ある生活態度、高学年では集団や社会の一員としての役割の自覚と責任、中学校では中学生としての規律ある生活態度の確立、国民としての自覚と国際協調の精神、高等学校では社会人として自立し責任をもって生きていこうとする態度、国際社会に主体的に貢献しようとする意欲など、児童生徒の発達段階を踏まえた指導の充実を図るよう配慮する。

(イ)小学校及び中学校における道徳の時間については、次のような改善を図る。

(a)各学校において、学校や児童生徒、地域等の実態や課題に応じて適切な指導が行えるようにするため、例えば時間配当の一層の重点化を図ることについて検討する。

(b)発達段階や学習内容等を考慮して一層の価値の内面化が図られるよう、例えば実際の観察や調査、実物に触れる、ボランティア、劇化といった体験的な活動や感性や情操をはぐくむ活動を積極的に活用する方法を取り入れるようにする。また、特に思春期にある小学校の高学年や中学校の児童生徒の特徴を考慮し、自分とのかかわりにおいて人間の心や生き方についてより深く考えられるよう、例えば学級や学校生活における具体的な事柄等を積極的に取り上げるようにする。

(c)学校、家庭、地域社会における豊かな体験との連携を図り、各教科、特別活動、「総合的な学習の時間」(仮称)などの学習活動と関連をもたせて、より発展的・調和的に道徳性が育成されるようにする。

(ウ)高等学校においては、学校の教育活動全体を通じて道徳教育を行うことを基本とし、特に人間としての在り方生き方教育の視点から、自らの義務と責任を果たそうとする態度やボランティア精神、民主社会の一員としての倫理観が一層育成されるよう、公民科やホームルーム活動などの内容や指導方法等の改善を図る。

(エ)小学校、中学校、高等学校の各教科や特別活動、「総合的な学習の時間」(仮称)などにおける道徳教育については、それぞれの特質に応じて道徳教育に資する学習や豊かな体験や実践的活動が充実できるようにするとともに、各教科等の学習が自らの生き方に直接かかわることを実感できるようにする。

(オ)学校、家庭、地域社会における道徳教育の相互の連携を充実させる観点から、授業や魅力的な地域教材の開発や活用などに、保護者や地域社会の人々の積極的な参加や協力が一層得られるようにする。

(カ)小学校、中学校における道徳の時間の授業に、学級担任のほか、校長や教頭が参加したり、学級の児童生徒の授業等を受け持つ他の教職員がティームティーチングを行うなどの工夫をしたりするとともに、副読本等の教材についても、読み物資料の他に道徳的価値や人間の生き方、自分の心などについて多様な学習活動が展開できるような教材の開発や活用が促進されるようにする。

14)特別活動

ア 現状と課題

 特別活動は、望ましい集団活動を通して、集団の一員としての自覚を深め、児童生徒の個性の伸長と調和のとれた豊かな人間性を育成することをねらいとして、学級(ホームルーム)活動、児童会(生徒会)活動、クラブ活動、学校行事の各内容から構成されている。
 運動会や文化祭などの学校行事への児童生徒の期待や参加意欲は高く、児童生徒は、全体としては充実感をもって特別活動の諸活動に取り組んでいる状況にある。
 しかしながら、学級(ホームルーム)活動では、教師の指導の下では活発に活動するが、児童生徒が自主的に集団生活上の問題を解決するなどの点においては必ずしも十分な状況ではない。
 また、児童生徒の人間関係や連帯感、集団の一員としての自覚や責任感の希薄化、体験不足が問題になる中で、家庭や地域との連携を図りながら、自然体験や地域の人々との幅広い交流など社会体験等を充実する必要がある。

イ 改善の内容

 好ましい人間関係の醸成や豊かな体験的な活動の充実、基本的なモラルや社会生活上のルールの習得、集団の一員としてよりよい生活を築こうとする自主的、実践的な態度の育成などを重視する観点から、各教科、道徳、「総合的な学習の時間」(仮称)の学習や学校外活動との関連を考慮し、例えば、次のような事項について内容の改善を図る。

(ア)学級(ホームルーム)活動については、児童生徒の自発的、自治的な活動を一層充実する観点から、児童生徒が自ら学級や学校生活の諸問題の解決に取り組む活動に重点をおいて指導できるようにすることについて検討する。
 特に、中学校、高等学校における学級(ホームルーム)活動については、集団の一員としての自覚を深め、人間としての在り方生き方の指導の一層の充実を図る観点から、生徒の主体的な活動を生かすよう、体験的、実践的な活動を通して指導できるようにする。

(イ)児童会(生徒会)活動については、異年齢集団による自発的、自治的な活動を一層活発に行えるようにする観点から、活動に必要な場や機会を学校全体として計画的に確保できるようにすることについて検討する。

(ウ)クラブ活動については、部活動や学校外活動との関連や、創設される「総合的な学習の時間」(仮称)において児童生徒の興味・関心を生かした主体的な学習活動が行われることなどを考慮して、小学校においては、地域や学校の実態に応じて一層弾力的に扱うことができるようにするため、学校において適切な授業時数を配当できるようにし、中学校及び高等学校においては、部活動が一層適切に行われるよう配慮しつつ、廃止する方向で検討する。

(エ)学校行事については、自然体験、異年齢集団の活動や高齢者との触れ合い、ボランティア活動等体験的な活動を重視するようにする。また、このため、地域や学校の実態に応じて取り上げる活動について重点化したり、行事間の関連を図った活動を行ったりするなどの工夫を一層推進する。

(オ)特別活動の各内容の指導について、地域の人々との幅広い交流や体験活動を一層充実する観点から、地域の人々の協力を得るとともに地域における活動との連携を図る。

(カ)選択学習の拡大や進路の多様化に伴い、児童生徒が夢や希望をもち主体的に適切な選択を行うとともに、発達段階に応じ将来の生き方を考える態度や進路選択能力の育成を図るため、ガイダンスを充実する。
 また、中学校及び高等学校においては、入学時の学校生活への適応及び円滑な人間関係の形成について計画的に指導できるようにする。

ウ 厳選例

 以上のような考え方に立って、例えば、次のような内容の厳選を図ることを検討する。

(ア)小学校、中学校、高等学校における学級(ホームルーム)活動においては、児童生徒が自発的、自治的な活動に重点的に取り組むことができるようにする観点から、教科などとの関連を考慮し、例えば、情報の適切な活用などに関する活動内容を精選する。

(イ)クラブ活動については、小学校においては、学校において適切な授業時数を配当できるようにし、また、中学校及び高等学校においては、廃止する方向で検討する。

(ウ)学校行事については、家庭や地域社会における活動との関連を考慮し、学校として取り上げるべき教育的価値を有する行事に精選する。また、行事間の関連を図った活動を推進することについて検討するとともに、練習や準備の在り方を見直す。

(3)盲学校、聾学校及び養護学校

 盲学校、聾学校及び養護学校の教育の在り方については、文部省において、学識経験者等を委嘱して調査研究を行い、平成9年1月に第一次報告が、同年9月に第二次報告がまとめられ、本審議会に報告された。本審議会は、それらを参考にしつつ検討を行い、次のように改善することが適当であると考えた。

ア 現状と課題

盲学校、聾学校及び養護学校は、幼稚園、小学校、中学校及び高等学校に準ずる教育を行うとともに、障害に基づく種々の困難を克服するために必要な知識や技能を養い、一人一人の能力と可能性を最大限に伸ばし、可能な限り積極的に社会参加・自立する人間の育成を図ることをねらいとしている。
 このため、これらの学校では、各教科、道徳、特別活動の指導を様々な工夫と配慮のもとに行うとともに、障害の状態を改善・克服するため必要な知識、技能、態度及び習慣を養い、心身の調和的発達の基盤を培うことを目的とした「養護・訓練」の指導を行っている。
 また、児童生徒の障害の種類や程度等により、各教科や領域を合わせた指導や各教科に替えて養護・訓練を主とした指導を行うなど、多様な教育課程を編成した効果的な学習が行われてきている。さらには、一人一人の障害の状態や学習状況等を十分に考慮した個別の目標・課題を設定し、個別指導や小グル-プによる指導などの学習集団の工夫、障害の状態等に応じた教材・教具の開発と活用など、児童生徒の実態に応じた指導内容・方法の工夫に努めている。
 近年、盲学校,聾学校及び養護学校においては、障害が重度であったり、二つ以上の障害を併せ有する者が増加していること、養護学校において、中学部や中学校特殊学級から高等部へ進学する者の割合が高まり、高等部の生徒の実態が多様化していること、通学して教育を受けることが困難な生徒に対する訪問教育は従来の小・中学部での実施に加えて、平成9年度より高等部においても試行的に実施されていることなどの状況がみられ、これまで以上に一人一人に応じたきめ細かな教育が求められている。

イ 改善の内容

 盲学校、聾学校及び養護学校の各教科等の内容については、基本的には、幼稚園、小学校、中学校及び高等学校に準じた改善を行うこととするが、養護・訓練、精神薄弱者を教育する養護学校の各教科、高等部の職業に関する教科、幼稚部の教育内容等について、例えば、次のような改善を図る。

(ア)養護・訓練については,次のように改善する。
 (a)一人一人の幼児児童生徒の実態に対応した活動であることや、自立を目指した主体的な活動であることを一層明確にする観点から、目標及び名称について検討する。
 (b)幼児児童生徒の実態に応じた適切かつ効果的な指導を更に明確にするため、具体的な指導をよりイメージしやすくなるよう内容の構成や示し方について検討する。
 (c)個に応じた指導の一層の充実を図るため、個別の指導計画の作成の必要性をより明確に示すことについて検討する。

(イ)精神薄弱者を教育する養護学校の各教科については、次のように改善する。
 (a)小学部、中学部及び高等部を通じて、社会の変化や個々の児童生徒の実態の多様化等に応じた指導をより適切かつ効果的に進める観点から、各教科の内容や示し方について検討する。
 (b)国際化の進展等に対応し、生徒の日常生活を豊かにするとともに、卒業後の社会生活への適応を円滑に進めることができるようにする観点から、高等部の選択教科として新たに外国語(英語)科を設けることについて検討する。

(ウ)高等部の職業に関する教科については、次のように改善する。
 (a)盲学校、聾学校及び肢体不自由者又は病弱者を教育する養護学校においては、高等学校における職業に関する各教科・科目の改善に準じた改善を行うほか、盲学校の理療科や聾学校の理容科などにおいては、職業資格の取得要件との関連から、関係科目の内容等について検討する。また、情報に関する教科・科目の設置など多様な進路希望に対応した科目の設置について検討する。
 (b)精神薄弱者を教育する養護学校においては、産業構造等の変化や高等部卒業後の進路動向等に対応した教育を進めるため、新たにサービス産業に関する教科を設置することなどについて検討する。
 (c)企業等における現場実習は、生徒の職業意識を高め、学校生活から社会生活への円滑な移行を進める上で重要であり、地域や学校の実態、生徒の障害の状態等に応じた現場実習が一層行われるようにする。

(エ)幼稚部の教育内容については,次のように改善する。
 (a)早期からの教育的対応を一層重視する観点から、3歳未満の乳幼児を含む教育相談に関する事項を幼稚部教育要領に明記することについて検討する。
 (b)小学部、中学部及び高等部との一貫性を考慮した養護・訓練の示し方について検討する。
 (c)幼児の実態に応じた指導を一層進める観点から、学校種別ごとの指導計画作成上の留意事項や重複障害の幼児に対する教育課程の編成等の示し方について検討する。
 (d)精神発達に遅れのある幼児の実態に応じた適切な指導を充実する観点から、精神薄弱者を教育する養護学校における幼稚部の健康、人間関係、環境、言葉及び表現の各領域の内容について、小学部の教科等の内容との関連や幼稚部に在学する幼児の発達段階等を踏まえ、その示し方について検討する。

(オ)特別活動のクラブ活動については、中学校及び高等学校においては廃止の方向で検討することとしているが、盲学校、聾学校及び養護学校においては、生徒の実態や通学の状況等によっては部活動の実施が困難な場合も見受けられるので、その教育課程上の取扱いについて更に検討する。

2.教育課程の基準の改善の関連事項

 教育課程の基準の改善のねらいの実現は、これに関連する教育条件の改善や幼児児童生徒を取り巻く環境の整備に負うところが大きい。特に今回の改善においては、自ら学び自ら考える力の育成を重視する教育への転換を目指しており、教科書をはじめとする教材(学習材)や指導方法の在り方、家庭及び地域社会における教育との連携の在り方などについて、特段の改善が強く求められている。これらの事項を含め、教育課程の基準の関連事項について、基準の改善のねらいを実現できるようにするため、特に改善を要するところを述べると、次のとおりである。
 本審議会は、これらの事項について関係機関や学校において改善が図られることを強く期待する。また、完全学校週5日制の趣旨を実現し、21世紀に生きる幼児児童生徒に[生きる力]を身に付けるためには、家庭や地域社会の役割に期待するところが大きく、今回の教育課程の基準の改善の趣旨について十分な理解と協力をお願いしたい。

1 教科書及び補助教材

 教科書は、主たる教材として学習指導に直接大きなかかわりをもっており、教育内容の厳選、学び方や問題解決能力の育成の重視など、教育課程の基準の改善の趣旨が適切に反映された教科書が作成されることが大切である。その際、教科の特性等を勘案しつつ、教育内容の厳選の趣旨を反映し、知識の暗記に陥りがちな教材の精選を図るとともに、学び方や問題解決能力の育成に資する教材を豊富にするなど、教科書の在り方を工夫する必要がある。
 また、道徳については、体験を重視した趣旨を踏まえるとともに、地域の特色なども生かしつつ、単に読み物資料だけでなく、道徳的価値や人間の生き方などについて多様な学習活動が展開できるような教材の開発や活用を進める必要がある。
 さらに、「総合的な学習の時間」(仮称)の創設、学び方や問題解決能力の育成を重視することに伴い、多様な教材や教材に関する情報を収集し、それらを学校や教員に提供するような配慮も大切である。

2 指導方法

 基礎・基本の確実な定着を図り、自ら学び自ら考える力など[生きる力]をはぐくむようにするため、教師は児童生徒と共に学び考え、児童生徒の問題解決を助けていくという姿勢に立ちつつ、例えば、児童生徒の発達段階等を考慮し、一人一人の興味・関心を生かした指導や、学習内容の理解や習熟の程度に応じ、弾力的に学習集団を編成したり、学級編成を弾力的に行うことなど、個に応じた指導の工夫改善を一層進める必要がある。その際、異なる教科間の教師の協力も含め、ティーム・ティーチングなど協力的な指導を一層進めるとともに、授業に、特別非常勤講師等を積極的に取り入れたり、保護者や地域の人々の協力を得たりすることも大切である。
 また、コンピュータ等の教育機器や情報通信ネットワークの整備充実とその活用を進めるとともに、学校図書館における情報機器や図書、視聴覚資料などの一層の整備充実と活用が求められる。さらに、学校内のみならず、学校外の様々な教育施設・設備の整備・充実など、地域に豊かな教育環境を用意し、その積極的な活用を図ることが大切である。
 特に、実践的コミュニケーション能力の育成を重視する外国語教育においては、ネイティブ・スピーカーとのティーム・ティーチングの改善やインターネットなどを活用した指導法の開発、外国人との交流など指導方法等の工夫改善を図る必要がある。
 さらに、帰国児童生徒及び外国人児童生徒に対する日本語指導等の一層の充実を図ることも大切であり、これらの児童生徒の特性を伸ばすとともに、海外での経験等を生かし、児童生徒の相互啓発を通じた国際理解教育を進めるための指導方法等の工夫改善を行っていく必要がある。

3 学習の評価

 児童生徒の学習の評価については、教育課程の基準の改善のねらいを実現し、児童生徒一人一人の学ぶ意欲や思考力・判断力・表現力などの資質や能力の育成に資するよう、評価方法の一層の工夫改善を進める必要がある。その際、児童生徒が自らの学習過程を振り返り、新たな自分の目標や課題をもって学習を進めていけるようにすることにも配慮する必要がある。
 また、指導要録における各教科等の評価については、現行では共通の考え方及び方法により行われているところであるが、学校段階・学年段階、教科の特性などに応じた評価方法を取り入れることについて検討する必要がある。

4 上級学校の入学者選抜

 入学者選抜については、教育内容の厳選、学び方や問題解決能力の育成の重視などの方向を尊重した改善が必要である。その際、単なる断片的な知識の量を競うような出題ではなく、児童生徒の学び方や考え方、自らの考えを表出する力を問うような多様な出題を工夫する必要がある。また、特に外国語については、実践的コミュニケーション能力の育成を重視した外国語教育の改善の方向を尊重し、リスニングを一層取り入れるなどの改善を図る必要がある。
 また、個性を生かす教育の重視や選択学習の幅の拡大の方向を尊重し、選抜方法の多様化や評価尺度の多元化を一層進めるなど、高等学校及び大学の入学者選抜の在り方についても工夫する必要がある。その際、特に、中学校の選択教科の高等学校入学者選抜における取扱いについては、学力検査においては評価の対象としないが、調査書においてその学習成果を適切に評価するなどの配慮をすることについて検討する必要がある。
 なお、一部の学校に見られる学力試験を偏重した入学者選抜や、いわゆる難問や奇問など学習指導要領を逸脱した出題については、その是正を強く求めておきたい。

5 教員

 自ら学び自ら考える力の育成の重視、教育内容の厳選、創意工夫を生かした教育活動の充実などを進めるに当たっては、教員の意識改革が是非とも必要であり、教員の資質能力の一層の向上のため、その養成、採用、研修の改善充実が求められる。
 教員養成については、教育職員養成審議会の第一次答申で指摘された「教職に関する科目」の充実をはじめとする教員養成課程のカリキュラムの改善を実現するとともに、今回の教育課程の基準の改善に応じた教員養成の在り方や採用の在り方について検討を行う必要がある。
 初任者研修やその他の現職研修においても、教育課程の基準の改善の趣旨が十分理解され、各学校において実現されるよう研修の内容や方法について配慮されることが大切である。また、企業体験や実習的な研修、大学・大学院への長期にわたる派遣研修などを豊富にすることが望まれる。
 また、教育課程の基準の改善の趣旨の実現のためには、指導体制の充実が大切であり、教職員の配置について考慮する必要がある。特に、選択履修の幅の拡大に伴い、その趣旨を十分に生かせるよう教職員の配置の在り方を検討する必要がある。

6 家庭及び地域社会における教育との連携

学校は、家庭や地域社会とともに幼児児童生徒を育てていくという視点に立って、開かれた学校づくりを一層進めるため、休業日を含め学校施設の開放や、地域の人々や幼児児童生徒向けの学習機会の提供を積極的に進める必要がある。また、学校は、校長のリーダーシップの下に主体性を発揮しつつ、学校教育の状況等を家庭や地域社会に知らせ理解求め協力を得るとともに、保護者や地域の人々との意思疎通を十分図ることも大切である。さらに、地域の人々の積極的な協力を得たり、地域の施設や環境などを学校の教育活動に生かしたするなど、家庭や地域社会の支援を受けることも大切である。
 家庭や地域社会においては、幼児児童生徒が様々な生活体験、ボランティアなどの社会体験や自然体験、文化・スポーツ活動などを行えるよう、多様な場や機会を充実するとともに、様々な団体の実施する体験活動との連携を図ることが重要である。
 夏休みなどの長期休業期間中は、生活体験、社会体験、自然体験などを味わうことのできる貴重な期間であり、例えば、豊かな自然の中で長期間日常と異なる生活体験を味わったり、親子が共同の体験活動や交流活動を行うことを通して親子の絆を深めたり、図書館や博物館などに出かけ普段学校では行うことのできない様々な学習活動をしたりするまたとない機会である。家庭や地域社会においては、夏休みなどの長期休業期間中のもつこのような意義を積極的に活用するとともに、行政においてはこのような機会が積極的に生かされるよう施策の充実に努めること、各職場における理解と協力が望まれる。
 完全学校週5日制の実施に伴い、家庭や地域社会における幼児児童生徒の様々な活動や体験の場や機会を充実するに当たり、教員もその趣旨を踏まえた対応をすることが求められる。例えば、教員も、地域社会の一員として地域の活動にボランティアとして参加したり、地域社会の幼児児童生徒との触れ合いを深めたりすることが期待される。さらに、地域の実態等に応じ、学校施設を活用して幼児児童生徒や地域の人々が参加しやすい文化・スポーツ活動など学習活動や体験活動が行われるようにすることにも配慮する必要がある。

7 学校運営

 幼児児童生徒の豊かな人間形成の育成に資する観点から、学校や地域の実態に応じて、他の学校との連携や交流を進めることが大切である。その際、同一校種のみならず、盲学校、聾学校及び養護学校を含めた異なる校種間・学校段階間での交流を進めるよう配慮する必要がある。
 また、学校がその本来の役割を有効に果たすため、教育課程、行事や会議などについて常に見直す必要があり、本来家庭や地域社会で担うべきものや家庭や地域社会で担った方がよりよい効果が得られるものは、家庭や地域社会がそれを担うよう促していく必要がある。勝利至上主義的な考え方などによる一部に見られる行き過ぎた部活動についても、見直しをする必要がある。
 なお、一部の学校においては教育課程の基準を逸脱した教育課程を編成している例も見られるが、国公私立の学校、その設置者や教育委員会など関係者は、今回の教育課程の基準の改善が学校教育の基調を転換し、学校、家庭及び地域社会の教育全体の在り方を改善するものであることを十分理解し、国公私立を通じてこれらの趣旨が実現されるよう責任をもって取り組む必要がある。
 特に、教育委員会は、教育課程に関する事務も含め、学校運営に関する責任を有しているが、教育課程の基準の弾力化の趣旨を踏まえ、各学校において創意工夫を生かした特色ある教育課程編成・実施が一層可能となるよう、柔軟に支援を行うことが必要である。また、教育委員会は、学校のみならず、家庭や地域全体で幼児児童生徒を育てるため必要とされる地域社会の基盤となる地域コミュニティーの育成のために積極的な役割を果たしていくことが求められており、このような観点から教育委員会の機能の充実を図っていく必要がある。

お問合せ先

初等中等教育局小学校課教育課程企画室

(初等中等教育局小学校課教育課程企画室)

-- 登録:平成21年以前 --