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家庭の教育力の充実等のための社会教育行政の体制整備について (報告)

平成12年11月28日
生涯学習審議会
社会教育分科審議会報告

はじめに

 家庭教育はすべての教育の出発点であるが、近年の都市化、核家族化、少子化などに伴い、家庭の教育力が低下していると懸念されている。また、昨今憂慮されている青少年の問題行動の背景には、家庭における教育の在り方が密接に関係していると言われ、家庭における教育機能を高めていくことが極めて重要な課題となっている。家庭の教育力の充実の必要性については、平成10年6月の中央教育審議会答申「幼児期からの心の教育の在り方について」や同年9月の生涯学習審議会答申「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」をはじめ、多くの審議会の答申等で指摘されており、内閣総理大臣のもとに設置されている教育改革国民会議の中間報告(平成12年9月)においてもその重要性が提言されているところである。
 また、住民の学習ニーズの高度化・多様化に伴って、地域における幅広い人々の自主的な学習活動を側面から援助する行政サービスの提供者としての役割を果たす社会教育主事に、地域において社会教育活動を実践・指導している民間の人材を積極的に登用することが求められており、上記の平成10年9月の生涯学習審議会答申においてもその資格要件の緩和について提言がなされているところである。
 このような状況を踏まえ、本分科審議会においては、家庭の教育力の充実に関して社会教育行政の法制面の体制整備を図るとともに、社会教育主事の資格要件の緩和の具体的方策について報告をとりまとめたものである。

1.家庭の教育力の充実のための体制整備について

1)家庭の教育力の充実の重要性

 家庭は、子どもたちが最も身近に接する社会であり、家庭での教育は、基本的な生活習慣や生活能力、自制心や自立心、豊かな情操、他人に対する思いやり、善悪の判断などの基本的倫理観、社会的なマナーなどの基礎を子どもたちにはぐくむものであり、学校や地域社会での子どもたちの活動にも影響を与えるすべての教育の出発点である。
 近年、核家族化、少子化、都市化、産業構造の変化など、家庭をめぐる状況の急速な変化により、親の過保護・過干渉や無責任な放任、育児不安の広がりやしつけへの自信喪失など、様々な問題が生じている。家庭教育は、本来、親の責任と判断において、それぞれの親の価値観やライフスタイルに基づいて行われるものであるが、家庭の様々な問題は看過できない状況となっており、もはや個々の家庭だけに問題の解決を委ねるのは適当ではなく、社会全体の問題として、積極的に家庭における教育力の充実を図っていくことが求められている。
 また、最近の度重なる青少年の凶悪犯罪をはじめ、いじめ・不登校のような問題行動等や、いわゆる学級崩壊など子どもをめぐる様々な問題は、非常に深刻な状況にある。その原因・背景は様々であり、家庭のしつけや学校教育の在り方、地域社会における連帯感の希薄化、青少年を取り巻く社会環境の悪化などの要因が複雑に絡み合っている。しかし、子どもの成長発達の原点として家庭を見た場合、基本的な生活習慣・生活能力の形成や、望ましい心情や態度を養う上で家庭教育が果たす役割は大きく、家庭の教育力の充実が青少年の問題行動等の解決の重要な決め手となることは想像に難くない。思春期にある子どもに親がどう接していくか、家庭におけるしつけの在り方とはどうあるべきか等について、親が学習する機会や、親が悩みや不安を相談するための機能が緊急に拡充・充実されなければならない。
 平成10年9月の生涯学習審議会答申「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」においても、今後の社会教育行政において重要となる視点として、地域社会及び家庭の変化への対応を挙げ、「社会教育行政は、地域社会の活性化と地域の教育力向上に取り組むとともに、家庭の教育力の充実に資する施策の推進が必要となっている」旨指摘している。

2)家庭の教育力の充実に果たす行政の役割

 家庭における教育は、基本的に家庭の責任に委ねられており、それぞれの親の価値観やライフスタイルに基づいて行われるものである。したがって、行政の役割は、本来家庭の責任において行われるべき家庭教育について、子どもの健全な成長が図られるよう、様々な手法により支援していくということである。その具体的な手法としては、家庭教育手帳や家庭教育ノートの配布など家庭における教育の充実に資する情報の提供、親の悩みや不安について相談できる体制の整備、家庭教育手帳の配布時や就学時健診等を活用した子育て講座など親が家庭を見つめ直す契機となるような学習機会の提供などが考えられ、幅広い角度から総合的に支援していくことが重要である。
 また、現在、家庭の教育力の充実に関する取り組みについては、「子育て支援」という観点から、教育委員会のみならず福祉部局を中心にして多くの施策が進められているが、行政が、家庭の教育力の充実に関する施策を推進していくにあたっては、各専門部局がそれぞれの役割に応じて施策を進めつつ相互に連携を図ることが効果的である。
 ところで、家庭教育に関する学習機会の提供、各種支援措置などはその大半が、住民にとって最も身近な公民館等の社会教育施設において実施されており、これらの学習機会の提供者としての市町村の果たす役割には非常に大きなものがある。言い換えれば、家庭における教育の充実・向上を図るには、親等に対する成人教育としての社会教育をより一層充実させる必要があり、市町村をはじめとした地方自治体が取り組んでいる家庭教育を対象とした各種講座、集会、調査研究、指導者の養成・研修などの充実を図ることにより、家庭教育の一層の充実・向上を図ることが可能となる。
 なお、家庭教育に関して各種の学習機会を提供するに当たっては、具体的な学習テーマ、開設形態、事業の実施方法などについて、より多くの参加者が得られるように地域住民の学習需要と学習意欲の状況を的確に把握し反映させることが重要である。
 また、家庭教育に関わるグループの支援の場を積極的に提供したり、学級や講座などの参加者に対して、自発的な学習グループをつくるきっかけができるように配慮することが求められている。
 さらに、家庭における教育を充実させていくため、家庭教育に関する学習についての一般的な学習内容、学習計画、学習方法など、各種の学習活動に関する情報や家庭教育に関する支援を行うボランティアグループや地域の指導者の情報を把握した上で、家庭教育に関する親の多様な学習需要に対応したきめ細かなアドバイスを行い得る体制を整備するとともに、子育てに対する不安を感じる親が、いつでも気軽に悩みを相談し、必要な助言が得られるよう、電話、電子メール、インターネットなどを利用して、24時間子育ての相談に対応できる体制をつくるなど、家庭教育に関する相談体制を整備することが重要である。

3)法制面の整備

 現行の社会教育法においては、家庭の教育力の充実に関する行政の事務について明確な根拠規定がなく、家庭教育学級など、親を対象とした各種講座の開設や指導者の養成などの家庭教育の充実に関する施策は一般的な社会教育行政の中で実質的に推進されている。
 しかしながら、今日、家庭における教育力の充実は緊急かつ重要な課題であり、平成10年9月の生涯学習審議会答申「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」においても、時代の進展に対応して、市町村教育委員会の事務を定めた規定の見直しについて検討していくことが望まれる旨提言していることも踏まえ、社会教育法に家庭の教育力の充実に関する行政の任務について根拠規定を設けることが適当である。これにより、都道府県・市町村の社会教育委員が策定する社会教育計画の中に、社会教育の重要な柱として家庭の教育力の充実に関する施策を位置付けることや、社会教育関係職員の資質として、家庭の教育力の充実を支援する能力を求めること、社会教育行政への家庭教育の関係者の参加を促進することなど、多面的な体制整備が促進されることとなる。
 具体的には、例えば、市町村教育委員会の事務については、現在、社会教育法第5条において家庭教育の充実に関する事務が明文化されていないが、今後、家庭教育に関する講座の開設等についてすべての市町村で一層充実させていくことが必要であることから、それらを市町村教育委員会の事務として規定することが適当である。
 また、社会教育行政に関する教育委員会の諮問機関である社会教育委員は、社会教育法第15条において、学校教育及び社会教育の関係者並びに学識経験者の中から委嘱することとされているが、今後、家庭における教育力の充実について行政が積極的に携わっていく必要があることから、家庭教育に関する様々な活動に携わっている者、例えば、地域の子育てサークルの指導者や子育てに関するボランティア活動従事者などを社会教育委員に委嘱することができるように、同条の規定の見直しを行うことが適当である。
 さらに、地域住民の交流の場であり、学習活動や地域づくりの中心的存在である公民館には公民館長の諮問機関である公民館運営審議会を置くことができるとされているが、今後、公民館を「家庭教育の学習拠点」として充実していくため、公民館運営審議会の委員についても社会教育委員と同様、家庭教育に関する様々な活動に携わっているものを委員に委嘱することができるように、社会教育法第30条の規定の見直しを行うことが適当である。

2.社会教育主事の資格要件の緩和について

 社会教育主事は、社会教育法に基づき都道府県及び市町村教育委員会に置かれる専門的職員であり、同法第9条の3の規定により、社会教育を行う者に専門的技術的な助言と指導を与えることとされている。また、社会教育主事は、同法第9条の4により、社会教育行政に関して一定の専門性を担保するため、一定の基礎資格、実務経験及び専門教育から成る資格要件が定められている。社会教育主事は、社会教育に関する幅広い知識と経験に基づき、地域の社会教育行政の企画・実施など都道府県及び市町村の社会教育行政の中心的な役割を果たしている。
 平成10年9月の生涯学習審議会答申「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について」では、今後の社会教育主事は、社会教育活動に対する指導・助言に加え、様々な場所で行われている社会教育事業に協力していくことや、学習活動全般に関する企画・コーディネート機能といった役割を果たしていくことが期待される旨提言している。また、併せて、地域における社会教育活動を実践・指導する資質を有する民間の人材を幅広く活用する観点から、広く社会人一般が、社会教育主事となる資格を取得できるよう、社会教育法第9条の4に規定する資格要件を弾力化の方向で見直すよう検討する必要がある旨提言している。
 社会教育主事の資格要件のうち、実務経験については、現在、社会教育主事補又は社会教育関係団体の役職員に限定されている。
 しかしながら、今後、社会教育においてボランティア活動等を積極的に推進していくことが重要となっており、そのため、実際にボランティア活動等の指導者としての経験を積んだ者を社会教育主事として採用することは大変有意義である。 このため、ボランティア活動等について指導者として携わった場合など、社会教育主事の職務遂行上意義があると考えられる一定の活動を、社会教育主事の資格要件の実務経験として評価できるよう、社会教育法第9条の4を改正することが適当である。

3.その他

 現代社会では、近年の都市化や核家族化の影響から、様々な体験の機会を子どもたちが日常的に得ることができた時代とは違い、あえて子どもたちに様々な生活・社会体験の機会を提供することが必要となっている。
 また、子どもたちが地域社会に関心や愛着を持ち、社会的に寄与しようとする気持ちを持つようにすることは重要なことであり、子どもたちに奉仕活動などの場を与え、社会的な役割を果たすことの意義を体験的に理解させ、それを通じて地域社会に対する関心、愛着を高めていくことが求められている。
 このような中、子どもたちの奉仕活動・体験活動の重要性については、平成11年6月の生涯学習審議会答申「生活体験・自然体験が日本の子どもの心をはぐくむ」をはじめ、多くの審議会の答申等で指摘されており、内閣総理大臣のもとに設置されている教育改革国民会議の中間報告(平成12年9月)においてもその重要性が提言されているところである。
 奉仕活動・体験活動などは、子どもたちに豊かな人間性を育むことにとどまらず、地域社会への参加の促進や地域連帯感の育成という観点からも大きな役割を果たすことが期待され、学校、家庭、地域社会が連携を図りつつ、これらの活動の場の充実を図っていくとともに、その活動に対して何らかの社会的評価を与えていくことが重要である。
 特に、地域社会における教育、すなわち、社会教育の分野では、社会教育関係団体の自主的な事業、活動の中で、子どもたちによる奉仕活動・体験活動が実施されており、行政としても、これらの活動に対して、その自主性、主体性を尊重しながら、より一層、活発化していくよう支援していくことが望まれる。
 また、学校教育においても、児童生徒の奉仕活動・体験活動の充実を図るためには、社会教育行政、社会教育関係団体等の協力が必要である。
 このように、子どもたちの奉仕活動・体験活動は学校教育、社会教育の双方を通じて充実することが必要である。
 このため、学校教育関係者と社会教育関係者双方が協力して子どもたちの奉仕活動・体験活動を充実・促進するための体制を整備する必要があり、そのために必要な措置を検討する必要がある。

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生涯学習局社会教育課

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